以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
本発明に係る移動通信端末は、図3に示された無線通信システムで利用される。無線通信システムは、複数の基地局1,2,3,4を備える。基地局1,2,3,4は、LTEでのeNB(evolved Node B)である。基地局1,2,3,4の各々は、多数の移動通信端末10と通信可能である。基地局(セル)1,2,3,4はそれぞれセルエリア1a,2a,3a,4aを有する。下りリンクの通信には、OFDMA(直交周波数分割多元アクセス)が使用される。移動通信端末10の各々は、LTEでのUE(user equipment)である。
本発明の実施の形態に係る移動通信端末10は、MIMOに適合されているとともに、干渉抑圧合成(IRC)を実行可能である。
第1の実施の形態
図4は本発明の第1の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図4は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。
図4に示すように、各移動通信端末は、電波を受信する複数の受信アンテナ20と、受信アンテナ20から受信した電波を電気信号に変換するためのOFDMAに適用される受信回路である無線受信部22を備える。
さらに、移動通信端末は、制御信号認識部24、セル固有参照信号(CRS)系列認識部25、セル固有参照信号(CRS)ベクトル測定部26、干渉抑圧合成処理部32、データ信号分離部34、データ信号復調部36、全受信電力推定部38、チャネルインパルス行列推定部40、所望参照信号電力推定部42、干渉雑音電力推定部46、送信ウェイトベクトル推定部48、所望データ信号電力推定部50、信号対雑音干渉比(SINR)計算部52、チャネル状態情報判定部54および送信信号生成部56を備える。これらの構成要素は、移動通信端末の図示しないCPU(中央演算処理装置)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
さらに、移動通信端末は、無線送信部58および少なくとも1つの送信アンテナ60を備える。無線送信部58は、送信信号生成部56で生成された送信信号である電気信号を電波に変換するためのSC−FDMA(Single-Carrier Frequency-Division Multiple Access)に適用される送信回路であり、送信アンテナ60は電波を送信する。
制御信号認識部24は、無線受信部22から出力される信号のうち、所望基地局から受信された制御信号を認識する。制御信号は、例えば、所望基地局のセルID、所望基地局の送信アンテナ数、所望基地局から当該移動通信端末に送信される送信レイヤ数(すなわち送信ストリーム数)などを示す。
CRS系列認識部25(参照信号系列認識部)は、制御信号認識部24で認識された制御信号に示されたセルIDに基づいて、所望基地局から送信されるセル固有参照信号(CRS)の系列であるセル固有参照信号系列(CRS系列)
を認識する。具体的には、移動通信端末にとって既知のCRS系列の群から、セルIDに対応するCRS系列をCRS系列認識部25は選択する。
CRSベクトル測定部26(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるCRSのベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)
を測定する。CRSベクトルは、N
RX次元のベクトルであり、N
RXは移動通信端末の受信アンテナ20の数である。
干渉抑圧合成処理部32は、CRSベクトル測定部26で測定された参照信号ベクトル(CRSベクトル)に基づいて、所望基地局から送信された電波の所望ビームに対する他のビームの影響を抑圧するように干渉抑圧合成受信ウェイト行列
を公知の手法で計算する。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、N
stream×N
RX次元の行列である。N
streamは、所望基地局から当該移動通信端末に送信される送信レイヤ数である。
データ信号分離部34は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列を用いて、無線受信部22から出力される信号のうち、当該移動通信端末宛てのデータ信号を他の移動通信端末宛てのデータ信号から分離する。データ信号復調部36は、データ信号分離部34で分離された当該移動通信端末宛てのデータ信号の復調および復号を行い、データ信号を得る。
全受信電力推定部38は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、全受信電力
を推定する。ここで全受信電力とは、CRSベクトルから想定される所望信号電力と干渉電力と雑音電力の合計であり、送信ストリーム毎に推定される。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
具体的には、全受信電力推定部38は、下記の式(2)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信電力推定部38は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号s
nを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。そして、全受信電力推定部38は、下記の式(3)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの全受信電力
を計算する。
チャネルインパルス行列推定部40は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCRSのN
RX×N
TX次元のチャネルインパルス行列
を推定する。N
TXは所望基地局の送信アンテナの数である。具体的には、チャネルインパルス行列推定部40は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトル
からそのチャネルインパルス行列を公知の手法で計算する。
所望参照信号電力推定部42は、下記の式(4)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(4)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトルである。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
このように、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CRS系列認識部25で認識されたCRS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望参照信号電力を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信電力から所望参照信号電力を減算することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、CRSに関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(5)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列から所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイトベクトル
を推定する。より具体的には、送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列
に基づいて、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列
を推定する。送信ウェイト行列は、N
TX×N
stream次元の行列である。送信ウェイト行列の推定においては、送信ウェイトベクトル推定部48は、移動通信端末および基地局にて共通に所持するコードブック(送信ウェイト行列の群を表す)から、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列にマッチする送信ウェイト行列を選択してもよい。あるいは、送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列に基づいて、公知の手法で送信ウェイト行列を計算してもよい。
送信ウェイトベクトル
は、送信ウェイト行列
(N
TX×N
stream次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される縦ベクトルである。つまり、この縦ベクトルは、送信ウェイト行列の一部である送信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。送信ウェイトベクトル推定部48は、送信ウェイト行列から各送信ストリームごとに送信ウェイト
ベクトルを抽出する。
所望データ信号電力推定部50は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、送信ウェイトベクトルから、下記の式(6)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部50で推定された所望データ信号電力と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(7)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。チャネル状態情報としては、上述したように、チャネル品質インジケータ(CQI)、プリコーディング行列インジケータ(PMI)、ランクインジケータ(RI)のセットが知られている。チャネル状態情報判定部54は、公知の手法で、CQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。
送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。つまり、送信信号生成部56は、チャネル状態情報送信部として機能する。
この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信電力が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCRS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号電力が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CRS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CRSベクトル測定部26が、参照信号ベクトルとして、セル固有参照信号のベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定し、全受信電力推定部38は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいて全受信電力を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CRS系列認識部25で認識されたCRS系列から、所望参照信号電力を推定する。干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。
図2のマッピングの例で示されるように、CRSはCSI−RSよりも高密度(短間隔)で送信されるので、干渉電力を含む全受信電力と所望参照信号電力の推定のために、CRSベクトルおよびCRS系列を使用することにより、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。
第2の実施の形態
図5は本発明の第2の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図5は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図5において、図4と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
図5に示すように、各移動通信端末は、CSI−RS(チャネル状態情報参照信号)系列認識部125と、CSI−RS(チャネル状態情報参照信号)ベクトル測定部126とを備える。CSI−RS系列認識部125およびCSI−RSベクトル測定部126は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
CSI−RS系列認識部125(参照信号系列認識部)は、制御信号認識部24で認識された制御信号に示されたセルIDに基づいて、所望基地局から送信されるチャネル状態情報参照信号(CSI−RS)の系列であるチャネル状態情報参照信号系列(CSI−RS系列)
を認識する。具体的には、移動通信端末にとって既知のCSI−RS系列の群から、セルIDに対応するCSI−RS系列をCSI−RS系列認識部125は選択する。
CSI−RSベクトル測定部126(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるCSI−RSのベクトルであるチャネル状態情報参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)
を測定する。CSI−RSベクトルは、N
RX次元のベクトルであり、N
RXは移動通信端末の受信アンテナ20の数である。
干渉抑圧合成処理部32、データ信号分離部34、データ信号復調部36および全受信電力推定部38の機能は、第1の実施の形態での機能と同じである。干渉抑圧合成処理部32は、CRSベクトル測定部26で測定された参照信号ベクトル(CRSベクトル)
に基づいて、所望基地局から送信された電波の所望ビームに対する他のビームの影響を抑圧するように干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)を公知の手法で計算する。
全受信電力推定部38は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの全受信電力
を推定する。この推定の手法は第1の実施の形態と同様に、式(2)および式(3)に従う。
チャネルインパルス行列推定部40は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCSI−RSのN
RX×N
TX次元のチャネルインパルス行列
を推定する。具体的には、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトル
からそのチャネルインパルス行列を公知の手法で計算する。
所望参照信号電力推定部42は、下記の式(8)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(8)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトルである。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
このように、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望参照信号電力を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信電力から所望参照信号電力を減算することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、参照信号に関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(9)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列から所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイトベクトル
を推定する。より具体的には、送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列
に基づいて、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列
(N
TX×N
stream次元の行列)を推定する。送信ウェイト行列の推定の手法は、第1の実施の形態と同じでよい。
送信ウェイトベクトル
は、送信ウェイト行列
(N
TX×N
stream次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される縦ベクトルである。つまり、この縦ベクトルは、送信ウェイト行列の一部である送信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。送信ウェイトベクトル推定部48は、送信ウェイト行列から各送信ストリームごとに送信ウェイト
ベクトルを抽出する。
所望データ信号電力推定部50は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、送信ウェイトベクトルから、下記の式(10)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部50で推定された所望データ信号電力と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(11)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnから、公知の手法で、チャネル状態情報(CSI)、すなわちCQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。つまり、送信信号生成部56は、チャネル状態情報送信部として機能する。
この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信電力が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号電力が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CSI−RS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CRSベクトル測定部26が、参照信号ベクトルとして、セル固有参照信号のベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定し、全受信電力推定部38は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいて全受信電力を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、所望参照信号電力を推定する。干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。
図2のマッピングの例で示されるように、CRSはCSI−RSよりも高密度(短間隔)で送信されるので、干渉電力を含む全受信電力の推定のために、CRSベクトルを使用することにより正確な適時の全受信電力の推定が可能である。他方、CSI−RSはCRSよりも低密度(長間隔)で送信されるが、所望参照信号電力は、頻繁に大きく変動しないと考えられる。したがって、所望参照信号電力の推定のために、CSI−RSベクトルおよびCSI−RS系列を使用しても、正確な適時の所望参照信号電力の推定が可能である。正確な適時の全受信電力の推定と、正確な適時の所望参照信号電力の推定の結果、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。
第3の実施の形態
図6は本発明の第3の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図6は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図6において、図4および図5と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
この実施の形態では、全受信電力、所望参照信号電力および所望データ信号電力の推定に、参照信号のうちCRSではなくCSI−RSのみを使用する。第2の実施の形態と同様に、CSI−RS系列認識部125(参照信号系列認識部)は、制御信号認識部24で認識された制御信号に示されたセルIDに基づいて、所望基地局から送信されるチャネル状態情報参照信号(CSI−RS)の系列であるチャネル状態情報参照信号系列(CSI−RS系列)
を認識する。
第2の実施の形態と同様に、CSI−RSベクトル測定部126(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるCSI−RSのベクトルであるチャネル状態情報参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)
を測定する。
干渉抑圧合成処理部32は、CSI−RSベクトル測定部126で測定された参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)
に基づいて、所望基地局から送信された電波の所望ビームに対する他のビームの影響を抑圧するように干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)を公知の手法で計算する。
データ信号分離部34、データ信号復調部36および全受信電力推定部38の機能は、第1の実施の形態および第2の実施の形態での機能と同じである。
全受信電力推定部38は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの全受信電力
を推定する。
具体的には、全受信電力推定部38は、下記の式(12)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信電力推定部38は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号s
nを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。そして、全受信電力推定部38は、下記の式(13)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの全受信電力
を計算する。
チャネルインパルス行列推定部40は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCSI−RSのN
RX×N
TX次元のチャネルインパルス行列
を推定する。具体的には、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトル
からそのチャネルインパルス行列を公知の手法で計算する。
所望参照信号電力推定部42は、下記の式(14)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(14)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトルである。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
このように、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望参照信号電力を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信電力から所望参照信号電力を減算することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、参照信号に関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(15)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列から所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイトベクトル
を推定する。より具体的には、送信ウェイトベクトル推定部48は、チャネルインパルス行列推定部40で推定されたチャネルインパルス行列
に基づいて、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列
(N
TX×N
stream次元の行列)を推定する。送信ウェイト行列の推定の手法は、第1の実施の形態と同じでよい。
送信ウェイトベクトル
は、送信ウェイト行列
(N
TX×N
stream次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される縦ベクトルである。つまり、この縦ベクトルは、送信ウェイト行列の一部である送信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。送信ウェイトベクトル推定部48は、送信ウェイト行列から各送信ストリームごとに送信ウェイト
ベクトルを抽出する。
所望データ信号電力推定部50は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、送信ウェイトベクトルから、下記の式(16)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部50で推定された所望データ信号電力と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(17)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnから、公知の手法で、チャネル状態情報(CSI)、すなわちCQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。つまり、送信信号生成部56は、チャネル状態情報送信部として機能する。
この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCSI−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信電力が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号電力が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CSI−RS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CSI−RSベクトル測定部126が、参照信号ベクトルとして、チャネル状態情報参照信号のベクトルであるチャネル状態情報参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)を測定し、全受信電力推定部38は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいて全受信電力を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、所望参照信号電力を推定する。干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。
図2のマッピングの例で示されるように、CSI−RSはCRSよりも低密度(長間隔)で送信される。したがって、干渉電力を含む全受信電力の推定のために、CSI−RSを使用するのは、CRSの使用よりも精度が低いと考えられる。しかしながら、CSI−RSは基地局(セル)の最大で8つの送信アンテナをサポートするので、基地局の送信アンテナの数が多い場合には、CRSを用いた電力の推定よりもCSI−RSを用いた電力の推定が好ましいことがありうると考えられる。また、今後の3GPPの標準化において、CSI−RSの送信間隔およびその他の事項について、変更されることもありえ、その場合には、CSI−RSを使用しても、干渉電力を含む全受信電力の推定の精度が改善されることもありうる。
第4の実施の形態
図7は本発明の第4の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図7は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図7において、図4と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
この実施の形態は、図4に示す第1の実施の形態の変形であり、移動通信端末は、全受信電力推定部38および所望参照信号電力推定部42の代わりに、全受信信号成分推定部138および所望参照信号成分推定部142を有する。全受信信号成分推定部138および所望参照信号成分推定部142は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。以下、第4の実施の形態の第1の実施の形態と異なる特徴を詳しく説明する。
全受信信号成分推定部138は、上記の式(2)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信信号成分推定部138は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号snを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。推定信号snは、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される各送信ストリームごとの全受信信号成分である。全受信信号成分とは、CRSベクトルから想定される所望信号と干渉信号と雑音信号の組合せの信号成分である。このように、全受信信号成分推定部138は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分を推定する。
所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号成分
を計算すなわち推定する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。このように、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CRS系列認識部25で認識されたCRS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信信号成分から所望参照信号成分を減算して、減算結果を二乗することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、CRSに関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(5)’に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
他の動作は、図4を参照して上述した第1の実施の形態と同じである。この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCRS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CRS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CRSベクトル測定部26が、参照信号ベクトルとして、セル固有参照信号のベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定し、全受信信号成分推定部138は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいて全受信信号成分を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CRS系列認識部25で認識されたCRS系列から、所望参照信号成分を推定する。干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。
図2のマッピングの例で示されるように、CRSはCSI−RSよりも高密度(短間隔)で送信されるので、干渉信号を含む全受信信号成分と所望参照信号成分の推定のために、CRSベクトルおよびCRS系列を使用することにより、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。
第5の実施の形態
図8は本発明の第5の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図8は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図8において、図5と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
この実施の形態は、図5に示す第2の実施の形態の変形であり、移動通信端末は、全受信電力推定部38および所望参照信号電力推定部42の代わりに、全受信信号成分推定部138および所望参照信号成分推定部142を有する。以下、第5の実施の形態の第2の実施の形態と異なる特徴を詳しく説明する。
全受信信号成分推定部138は、上記の式(2)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信信号成分推定部138は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号snを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。推定信号snは、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される各送信ストリームごとの全受信信号成分である。このように、全受信信号成分推定部138は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分を推定する。
所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号成分
を計算すなわち推定する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。このように、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信信号成分から所望参照信号成分を減算して、減算結果を二乗することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、参照信号に関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(9)’に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
他の動作は、図5を参照して上述した第2の実施の形態と同じである。この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCRSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CSI−RS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CRSベクトル測定部26が、参照信号ベクトルとして、セル固有参照信号のベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定し、全受信信号成分推定部138は、CRSベクトル測定部26で測定されたCRSベクトルに基づいて全受信信号成分を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、所望参照信号成分を推定する。干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。
図2のマッピングの例で示されるように、CRSはCSI−RSよりも高密度(短間隔)で送信されるので、干渉信号を含む全受信信号成分と所望参照信号成分の推定のために、CRSベクトルおよびCRS系列を使用することにより、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。他方、CSI−RSはCRSよりも低密度(長間隔)で送信されるが、所望参照信号成分は、頻繁に大きく変動しないと考えられる。したがって、所望参照信号成分の推定のために、CSI−RSベクトルおよびCSI−RS系列を使用しても、正確な適時の所望参照信号成分の推定が可能である。正確な適時の全受信信号成分の推定と、正確な適時の所望参照信号成分の推定の結果、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。
第6の実施の形態
図9は本発明の第6の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図9は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図9において、図6と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
この実施の形態は、図6に示す第3の実施の形態の変形であり、移動通信端末は、全受信電力推定部38および所望参照信号電力推定部42の代わりに、全受信信号成分推定部138および所望参照信号成分推定部142を有する。以下、第6の実施の形態の第3の実施の形態と異なる特徴を詳しく説明する。
全受信信号成分推定部138は、上記の式(12)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信信号成分推定部138は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号snを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。推定信号snは、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される各送信ストリームごとの全受信信号成分である。このように、全受信信号成分推定部138は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分を推定する。
所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号成分
を計算すなわち推定する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。このように、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分を推定する。
干渉雑音電力推定部46は、全受信信号成分から所望参照信号成分を減算して、減算結果を二乗することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、参照信号に関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(14)’に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
他の動作は、図6を参照して上述した第3の実施の形態と同じである。この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とCSI−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信信号成分が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とCSI−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号成分が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、CSI−RS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、CSI−RSベクトル測定部126が、参照信号ベクトルとして、チャネル状態情報参照信号のベクトルであるチャネル状態情報参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)を測定し、全受信信号成分推定部138は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいて全受信信号成分を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、CSI−RSベクトル測定部126で測定されたCSI−RSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号成分推定部142は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、CSI−RS系列認識部125で認識されたCSI−RS系列から、所望参照信号成分を推定する。干渉雑音電力は、この全受信信号成分とこの所望参照信号成分の差分の二乗である。
図2のマッピングの例で示されるように、CSI−RSはCRSよりも低密度(長間隔)で送信される。したがって、干渉信号を含む全受信信号成分の推定のために、CSI−RSを使用するのは、CRSの使用よりも精度が低いと考えられる。しかしながら、CSI−RSは基地局(セル)の最大で8つの送信アンテナをサポートするので、基地局の送信アンテナの数が多い場合には、CRSを用いた信号成分の推定よりもCSI−RSを用いた信号成分の推定が好ましいことがありうると考えられる。また、今後の3GPPの標準化において、CSI−RSの送信間隔およびその他の事項について、変更されることもありえ、その場合には、CSI−RSを使用しても、干渉信号を含む全受信信号成分の推定の精度が改善されることもありうる。
第7の実施の形態
第7の実施の形態〜第9の実施の形態の各々に係る移動通信端末は、上記の第1の実施の形態〜第6の実施の形態のいずれかと同じ構成要素を有する。第7の実施の形態〜第9の実施の形態の各々に係る移動通信端末は、さらに、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比または干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力を補正する補正部72を有することにより、さらにSINRを高い精度で計算する。
図10は本発明の第7の実施の形態に係る移動通信端末の構成の一部を示すブロック図である。図10には示されていないが、この移動通信端末は、図4〜図9に示される第1の実施の形態〜第6の実施の形態のいずれかと同じ構成要素を有し、さらに、受信信号品質判定部70と補正部72を有する。
受信信号品質判定部70は、複数の基地局から受信する電波に関する受信信号品質を測定する。受信信号品質判定部70で測定された受信信号品質に基づいて、補正部72はSINR計算部52で計算された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを補正する。この実施の形態では、受信信号品質判定部70は、受信信号品質として、少なくとも3つの基地局から受信する参照信号の少なくとも3つの参照信号受信電力(RSRP)を測定する。
例えば、図3に示すように、移動通信端末10が4つの基地局(セル)1,2,3,4からの電波を受信する環境において、基地局1が所望基地局であると想定する。受信信号品質判定部70は、所望基地局1からの参照信号受信電力RSRP1、干渉基地局2からの参照信号受信電力RSRP2、干渉基地局3からの参照信号受信電力RSRP3および干渉基地局4からの参照信号受信電力RSRP4を測定する。所望基地局1からの参照信号受信電力RSRP1は、干渉基地局からの参照信号受信電力RSRP2、RSRP3、RSRP4より大きい。すなわちRSRP1は最大である。ここで、干渉基地局2からの参照信号受信電力RSRP2が2番目に大きく、干渉基地局3からの参照信号受信電力RSRP3が3番目に大きいと想定する。但し、RSRP2はRSRP3と等しくてもよい。つまり、RSRP2はRSRP3以上である。
補正部72は、複数の参照信号受信電力のうち、2番目に大きい参照信号受信電力と3番目に大きい参照信号受信電力の差分に基づいて、差分が大きいほど増分が大きくなるように、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnを増加させる。上記の例では、補正部72は、複数の参照信号受信電力RSRP1、RSRP2、RSRP3、RSRP4のうち、2番目に大きい参照信号受信電力RSRP2と3番目に大きい参照信号受信電力RSRP3の差分(RSRP2−RSRP3)に基づいて、この差分(RSRP2−RSRP3)が大きいほど増分が大きくなるように、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnを増加させるよう補正する。
補正部72は、例えば下記の手法のいずれかに従って増分Δを決定することができる。増分Δは正の数である。
(1)補正部72は、下記のように関数に従って増分Δを計算してもよい。
Δ=f1(RSRP2−RSRP3)
ここでf1は、差分(RSRP2−RSRP3)が大きいほど増分Δが大きくなる関数である。図11は関数f1の例を示すグラフである。但し、関数f1は図11に示されるものに限られない。
(2)補正部72は、テーブルを参照し、テーブルに基づいて、増分Δを決定してもよい。テーブルは移動通信端末の図示しない記憶装置に記憶されている。図12はテーブルの例である。但し、テーブルは図12に示されるものに限られない。
(3)補正部72は、差分(RSRP2−RSRP3)をある閾値Thと比較し、その比較に基づいて、増分Δを決定してもよい。例えば、差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Thより大きい場合には、補正部72は増分Δを正の値(例えば3dB)と決定し、他の場合には、補正部72は増分Δをなしと決定してもよい。補正部72は、差分(RSRP2−RSRP3)を複数の閾値と比較して、増分Δを決定してもよい。
以上のように増分Δを決定した後、補正部72は、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを増分Δだけ増加させる。つまり、下記の式に従って、補正された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn’を計算する。増分Δは複数の送信ストリームについて共通でよい。なお,増分ΔをdB単位で設定した場合には,各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn及び補正された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn’においてもdB単位で計算を行う。
SINRn’=SINRn + Δ
チャネル状態情報判定部54は、補正された信号対雑音干渉比SINRn’から、公知の手法で、チャネル状態情報(CSI)、すなわちCQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。
IRCの干渉抑圧効果は、支配的な干渉セル(干渉基地局)が少ない場合、かつ支配的な干渉セルに起因する干渉が大きい場合に高い。つまり、干渉セルが少ないほど、干渉抑圧効果は高い。また、支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいほど、干渉抑圧効果は高い。干渉抑圧効果が高ければ、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比は高い。この実施の形態では、この原理を利用して、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比SINRnを補正する。2番目に大きい参照信号受信電力RSRP2は、最大の干渉を起こしている参照信号の受信電力であり、3番目に大きい参照信号受信電力RSRP3は、2番目に大きい干渉を起こしている参照信号の受信電力である。差分(RSRP2−RSRP3)が大きければ、支配的な干渉セルが1つであり、かつ支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいと考えられ、IRCの干渉抑圧効果が高いと考えられる。逆に差分(RSRP2−RSRP3)が小さければ、支配的な干渉セルが2つであり、かつ支配的な干渉セルに起因する干渉が小さいと考えられ、IRCの干渉抑圧効果が低いと考えられる。そこで、補正部72は、差分(RSRP2−RSRP3)が大きいほど、信号対雑音干渉比SINRnを高めるように補正する。このような補正により、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比を精度よく得ることが可能である。
第8の実施の形態
第8の実施の形態に係る移動通信端末は図10と同じ構成要素を有する。つまり、この移動通信端末は、図4〜図9に示される第1の実施の形態〜第6の実施の形態のいずれかと同じ構成要素を有し、さらに、受信信号品質判定部70と補正部72を有する。受信信号品質判定部70は、複数の基地局から受信する電波に関する受信信号品質を測定する。受信信号品質判定部70で測定された受信信号品質に基づいて、補正部72はSINR計算部52で計算された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを増加させる。
この実施の形態では、受信信号品質判定部70は、受信信号品質として、干渉抑圧合成が実施されない場合に想定される、信号対雑音干渉比である非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nを各送信ストリームごとに計算する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nは、公知の手法で計算することができる。
補正部72は、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nに基づいて、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが小さいほど増分が大きくなるように、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnを増加させるよう補正する。補正部72は、例えば下記の手法のいずれかに従って増分Δnを決定することができる。増分Δnは正の数であり、各送信ストリームごとに決定される。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
(1)補正部72は、下記のように関数に従って増分Δnを計算してもよい。
Δn=f2(SINRNIRC,n)
ここでf2は、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが大きいほど増分Δnが大きくなる関数である。図13は関数f2の例を示すグラフである。但し、関数f2は図13に示されるものに限られない。
(2)補正部72は、テーブルを参照し、テーブルに基づいて、増分Δnを決定してもよい。テーブルは移動通信端末の図示しない記憶装置に記憶されている。図14はテーブルの例である。但し、テーブルは図14に示されるものに限られない。
(3)補正部72は、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nをある閾値Thと比較し、その比較に基づいて、増分Δnを決定してもよい。例えば、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが閾値Thより小さい場合には、補正部72は増分Δnを3dBと決定し、他の場合には、補正部72は増分Δnをなしと決定してもよい。補正部72は、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nを複数の閾値と比較して、増分Δnを決定してもよい。
以上のように増分Δnを決定した後、補正部72は、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを増分Δnだけ増加させる。つまり、下記の式に従って、補正された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn’を計算する。なお,増分ΔをdB単位で設定した場合には,各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn及び補正された各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRn’においてもdB単位で計算を行う。
SINRn’=SINRn + Δn
チャネル状態情報判定部54は、補正された信号対雑音干渉比SINRn’から、公知の手法で、チャネル状態情報(CSI)、すなわちCQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。
IRCの干渉抑圧効果は、支配的な干渉セル(干渉基地局)に起因する干渉が大きい場合に高い。つまり、支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいほど、干渉抑圧効果は高い。干渉抑圧効果が高ければ、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比は高い。この実施の形態では、この原理を利用して、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比SINRnを補正する。干渉抑圧合成が実施されない場合に想定される、信号対雑音干渉比である非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが大きい場合には、支配的な干渉セルに起因する干渉が小さいと考えられ、IRCの干渉抑圧効果が低いと考えられる。逆に非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが小さい場合には、支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいと考えられ、IRCの干渉抑圧効果が高いと考えられる。そこで、補正部72は、非干渉抑圧合成・信号対雑音干渉比SINRNIRC,nが小さいほど、信号対雑音干渉比SINRnを高めるように補正する。このような補正により、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比を精度よく得ることが可能である。
第9の実施の形態
図15は本発明の第9の実施の形態に係る移動通信端末の構成の一部を示すブロック図である。図15には示されていないが、この移動通信端末は、図4〜図9に示される第1の実施の形態〜第6の実施の形態のいずれかと同じ構成要素を有し、さらに、受信信号品質判定部70と補正部72を有する。受信信号品質判定部70は、複数の基地局から受信する電波に関する受信信号品質を測定する。受信信号品質判定部70で測定された受信信号品質に基づいて、補正部72は干渉雑音電力推定部46で推定された各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を減少させる。
この実施の形態では、受信信号品質判定部70は、受信信号品質として、少なくとも3つの基地局から受信する参照信号の少なくとも3つの参照信号受信電力(RSRP)を測定する。
例えば、図3に示すように、移動通信端末10が4つの基地局(セル)1,2,3,4からの電波を受信する環境において、基地局1が所望基地局であると想定する。受信信号品質判定部70は、所望基地局1からの参照信号受信電力RSRP1、干渉基地局2からの参照信号受信電力RSRP2、干渉基地局3からの参照信号受信電力RSRP3および干渉基地局4からの参照信号受信電力RSRP4を測定する。所望基地局1からの参照信号受信電力RSRP1は、干渉基地局からの参照信号受信電力RSRP2、RSRP3、RSRP4より大きい。すなわちRSRP1は最大である。ここで、干渉基地局2からの参照信号受信電力RSRP2が2番目に大きく、干渉基地局3からの参照信号受信電力RSRP3が3番目に大きいと想定する。但し、RSRP2はRSRP3と等しくてもよい。つまり、RSRP2はRSRP3以上である。
補正部72は、複数の参照信号受信電力のうち、2番目に大きい参照信号受信電力と3番目に大きい参照信号受信電力に基づいて、2番目に大きい参照信号受信電力と3番目に大きい参照信号受信電力との差分が大きいほど減少分が大きくなるように、かつ2番目に大きい参照信号受信電力が大きいほど減少分が大きくなるように、干渉雑音電力推定部46で推定された各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を減少させる。上記の例では、補正部72は、複数の参照信号受信電力RSRP
1、RSRP
2、RSRP
3、RSRP
4のうち、2番目に大きい参照信号受信電力RSRP
2と3番目に大きい参照信号受信電力RSRP
3に基づいて、差分(RSRP
2−RSRP
3)が大きいほど減少分が大きくなるように、かつ2番目に大きい参照信号受信電力RSRP
2が大きいほど減少分が大きくなるように、干渉雑音電力推定部46で推定された各送信ストリームごとの干渉雑音電力を減少させるよう補正する。
補正部72は、例えば下記の手法のいずれかに従って減少分Δを決定することができる。減少分Δは正の数である。
(1)補正部72は、下記のように、参照信号受信電力RSRP2に適合する関数を選択し、選択された関数に従って減少分Δを計算してもよい。
RSRP2<y1の場合、
Δ=fA(RSRP2−RSRP3)
y1≦RSRP2<y2の場合、
Δ=fB(RSRP2−RSRP3)
y2≦RSRP2の場合、
Δ=fC(RSRP2−RSRP3)
ここでfA、fB、fCは、差分(RSRP2−RSRP3)が大きいほど減少分Δが大きくなる関数である。y1、y2は閾値であり、y1<y2である。図16は関数fA、fB、fCの例を示すグラフである。但し、関数fA、fB、fCは図16に示されるものに限られない。閾値の数および関数の数も限られない。
(2)補正部72は、参照信号受信電力RSRP2に適合するテーブルを選択し、選択されたテーブルに基づいて、減少分Δを決定してもよい。これらのテーブルは移動通信端末の図示しない記憶装置に記憶されている。図17はこれらのテーブルの例である。RSRP2<y1の場合、図17の最上部のテーブルが使用され、y1≦RSRP2<y2の場合、図17の中央のテーブルが使用され、y2≦RSRP2の場合、図17の最下部のテーブルが使用される。但し、テーブルは図17に示されるものに限られない。閾値の数およびテーブルの数も限られない。
(3)補正部72は、参照信号受信電力RSRP2の範囲と、差分(RSRP2−RSRP3)に基づいて、減少分Δを決定してもよい。例えば、RSRP2<y1の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Thより大きい場合には、補正部72は減少分Δを30dBと決定し、RSRP2<y1の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Th以下の場合には、補正部72は減少分Δをなしと決定してもよい。y1≦RSRP2<y2の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Thより大きい場合には、補正部72は減少分Δを40dBと決定し、y1≦RSRP2<y2の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Th以下の場合には、補正部72は減少分Δを10dBと決定してもよい。y2≦RSRP2の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Thより大きい場合には、補正部72は減少分Δを50dBと決定し、y2≦RSRP2の場合、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が閾値Th以下の場合には、補正部72は減少分Δを20dBと決定してもよい。補正部72は、差分(RSRP2−RSRP3)を複数の閾値と比較して、減少分Δを決定してもよい。
以上のように減少分Δを決定した後、補正部72は、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を減少分Δだけ減少させる。つまり、下記の式に従って、補正された各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。減少分Δは複数の送信ストリームについて共通でよい。なお,減少分ΔをdBもしくはdBm単位で設定した場合には,各送信ストリームごとの干渉雑音電力及び補正された各送信ストリームごとの干渉雑音電力においてもdB単位で計算を行う。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部50で推定された所望データ信号電力と補正部72で補正された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(18)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnから、公知の手法で、チャネル状態情報(CSI)、すなわちCQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。
IRCの干渉抑圧効果は、支配的な干渉セル(干渉基地局)が少ない場合、かつ支配的な干渉セルに起因する干渉が大きい場合に高い。つまり、干渉セルが少ないほど、干渉抑圧効果は高い。また、支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいほど、干渉抑圧効果は高い。干渉抑圧効果が高ければ、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は低い。この実施の形態では、この原理を利用して、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力を補正する。2番目に大きい参照信号受信電力RSRP2は、最大の干渉を起こしている参照信号の受信電力であり、3番目に大きい参照信号受信電力RSRP3は、2番目に大きい干渉を起こしている参照信号の受信電力である。参照信号受信電力RSRP2が大きければ、支配的な干渉セルに起因する干渉が大きいと考えられ、差分(RSRP2−RSRP3)が大きければ、支配的な干渉セルが1つであると考えられ、IRCの干渉抑圧効果が高いと考えられる。そこで、補正部72は、2番目に大きい参照信号受信電力RSRP2が大きいほど、干渉雑音電力を減少させるように、かつ差分(RSRP2−RSRP3)が大きいほど、干渉雑音電力を減少させるように、干渉雑音電力を補正する。このような補正により、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比を精度よく得ることが可能である。
第10の実施の形態
図18は本発明の第10の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図18は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図18において、図4と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
図18に示すように、各移動通信端末は、セル固有参照信号(CRS)チャネルインパルス行列推定部150、干渉雑音電力推定部156、送信ウェイト行列供給部158、送信ストリーム間干渉電力推定部160および所望データ信号電力推定部162を備える。これらの構成要素は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
第1の実施の形態と同様に、CRSベクトル測定部26(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるCRSのベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定する。干渉抑圧合成処理部32は、CRSベクトル測定部26で測定された参照信号ベクトル(CRSベクトル)に基づいて、干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。但し、干渉抑圧合成処理部32は、後述する送信ウェイト行列供給部158が供給する送信ウェイト行列にも基づいて、干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。
CRSチャネルインパルス行列推定部150は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCRSの異なるリソースエレメントに対応する2つのN
RX×N
TX次元のチャネルインパルス行列(CRSチャネルインパルス行列)
を推定する。
添字の「m」、「m’」について図19を参照して説明する。図19は、LTE Advancedでの下りリンク送信の1つのリソースブロックにおける各種信号のマッピングの例を示す。図19に示すように、CRSは、基地局(セル)の複数の送信アンテナポートから送信される。添字「m」、「m’」は、CRSチャネルインパルス行列に対応するリソースエレメントREの番号を示す。例えば、添字「m」は図19のリソースエレメントRE1の番号であり、添字「m’」は図19のリソースエレメントRE2の番号である。リソースエレメントRE1,RE2は、図示の例に限られないが、1つのアンテナポートから送信されるCRSの複数のリソースエレメントのうち、なるべく周波数方向に近く(近いサブキャリアであり)、なるべく時間方向に近い(近いOFDMシンボルである)リソースエレメントである。
干渉雑音電力推定部156は、干渉抑圧合成処理部32で得られた干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、CRSチャネルインパルス行列推定部150で得られた複数のチャネルインパルス行列のそれぞれの一部である複数のチャネルインパルスベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部156は、下記の式(19)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、番号mを持つリソースエレメントのCRSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、CRSベクトルと、後述する送信ウェイト行列供給部158が供給する送信ウェイト行列に基づいて計算される。
は、CRSチャネルインパルス行列推定部150で計算されたCRSチャネルインパルス行列
(N
RX×N
TX次元の行列)からアンテナポート番号「a」ごとに抽出される縦ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、CRSチャネルインパルス行列の一部であるチャネルインパルスベクトルである。図19に示すように、CRSは、基地局(セル)の複数の送信アンテナポートから送信される。添字の「a」は、CRSが送信される基地局のアンテナポートの番号を示す。つまり図19の例では、「a」は1か2である。
は、CRSチャネルインパルス行列推定部150で計算されたCRSチャネルインパルス行列
(N
RX×N
TX次元の行列)からアンテナポート番号「a」ごとに抽出される縦ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、CRSチャネルインパルス行列の一部であるチャネルインパルスベクトルである。
送信ウェイト行列供給部158は、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列の候補
(N
TX×N
stream次元の行列)を供給する。添字のiは、移動通信端末および基地局にて共通に所持するコードブック(送信ウェイト行列の群を表す)内での送信ウェイト行列の番号を示す。
送信ストリーム間干渉電力推定部160は、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、CRSチャネルインパルス行列推定部150で推定された1つのCRSチャネルインパルス行列と、送信ウェイト行列の候補から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望基地局から送信される送信ストリーム間干渉電力を推定する。すなわち、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、下記の式(20)に従って、各送信ストリームごとの送信ストリーム間干渉電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、任意の番号pを持つリソースエレメントのCRSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出されるN
RX次元の横ベクトル(干渉抑圧合成受信ウェイトベクトル)である。
は、任意の番号pを持つリソースエレメントのCRSベクトルに対応するCRSチャネルインパルス行列推定部150で計算されたCRSチャネルインパルス行列である。
は、送信ウェイト行列供給部158から供給される送信ウェイト行列の候補(N
TX×N
stream次元の行列)からストリームごとに抽出される縦ベクトル(N
TX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、送信ウェイト行列の候補の一部である送信ウェイトベクトルである。添字のn'は、式(20)で計算される送信ストリーム間干渉電力の送信ストリームとは異なる送信ストリームを示す。
所望データ信号電力推定部162は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、CRSチャネルインパルス行列推定部150で推定された1つのCRSチャネルインパルス行列と、送信ウェイト行列の候補から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望データ信号電力を推定する。すなわち、所望データ信号電力推定部162は、下記の式(21)に従って、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
は、送信ウェイト行列供給部158から供給される送信ウェイト行列の候補(N
TX×N
stream次元の行列)からストリームごとに抽出される縦ベクトル(N
TX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、送信ウェイト行列の候補の一部である送信ウェイトベクトルである。添字のnは、式(21)で計算される所望データ信号電力の送信ストリームと同じ送信ストリームを示す。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部162で推定された所望データ信号電力と、干渉雑音電力推定部156で推定された干渉雑音電力と、送信ストリーム間干渉電力推定部160で推定された送信ストリーム間干渉電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(22)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(19)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(20)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(21)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(22)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。ここまでのステップ1〜ステップ4の処理は、上記の番号iを持つ送信ウェイト行列に対応する。
ステップ4の終了後、送信ウェイト行列の番号iが1つ増加される。そして、送信ウェイト行列供給部158は、次の送信ウェイト行列(番号i+1)を供給する。次の送信ウェイト行列(番号i+1)について、ステップ1〜ステップ4の処理が繰り返される。コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、ステップ1〜ステップ4の処理が実行される。このようにして、コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、リソースエレメント番号mに対応する信号対雑音干渉比SINRnが計算される。これらの多数の信号対雑音干渉比SINRnのうち最大値(各送信ストリームごとに最大値がある)をSINR計算部52はチャネル状態情報判定部54に供給する。チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された最大値の信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。また、最大値の信号対雑音干渉比SINRnに対応する送信ウェイト行列は、チャネル状態情報判定部54がチャネル状態情報を判定する時に、使用される。また、その送信ウェイト行列に対応する干渉抑圧合成受信ウェイト行列を使用して、データ信号分離部34は信号分離を行う。
以上の動作で得られる最大値の信号対雑音干渉比SINRnは特定のリソースエレメント(番号mを有する)と特定のリソースエレメント(番号pを有する)に対応する。移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnの最大値を計算して、その平均的な最大値を使用してチャネル状態情報を判定してもよい。例えば、ステップ1において、複数のリソースエレメント(番号mのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、干渉雑音電力推定部156は、式(19)を適用して、複数の干渉雑音電力を計算して、それらの干渉雑音電力を平均してもよい。ステップ2において、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、複数のリソースエレメント(番号pのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、式(20)を適用して、複数の送信ストリーム間干渉電力を計算して、それらの送信ストリーム間干渉電力を平均してもよい。ステップ3において、所望データ信号電力推定部162は、複数のリソースエレメント(番号pのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、式(21)を適用して、複数の所望データ信号電力を計算して、それらの所望データ信号電力を平均してもよい。ステップ4では、SINR計算部52は、平均の所望データ信号電力と、平均の干渉雑音電力と、平均の送信ストリーム間干渉電力から、信号対雑音干渉比を計算してよい。
この実施の形態においては、CRSチャネルインパルス行列推定部150は、CRSの異なるリソースエレメントに対応する複数のチャネルインパルス行列を推定し、干渉雑音電力推定部156は、それらの複数のチャネルインパルス行列のそれぞれの一部である複数のチャネルインパルスベクトルに基づいて、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉雑音電力を推定する。異なるリソースエレメントが、周波数方向に近く(近いサブキャリアであり)、時間方向に近い(近いOFDMシンボルである)場合には、それらのリソースエレメントについてのチャネル特性はほぼ同じであり、それらのリソースエレメントに由来する複数のチャネルインパルス行列の間の相違は干渉雑音に起因すると考えることができる。したがって、それらのリソースエレメントに由来する複数のチャネルインパルスベクトルに基づいて、高い精度で干渉雑音電力を推定することができる。このように誤差が少ない干渉雑音電力が推定されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
第11の実施の形態
本発明の第11の実施の形態に係る移動通信端末は、第10の実施の形態と同じ構成を有する。第10の実施の形態では、ステップ1において式(19)が使用されるが、この実施の形態では、ステップ1において下記の式(23)が使用される。つまり、干渉雑音電力推定部156は、下記の式(23)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(23)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、番号m'を持つリソースエレメントのCRSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、CRSベクトルと、送信ウェイト行列供給部158が供給する送信ウェイト行列に基づいて計算される。式(23)の他の変数は、式(19)に関連して上述した通りである。
他の特徴は第10の実施の形態と同じである。この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(23)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(20)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(21)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(22)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。ここまでのステップ1〜ステップ4の処理は、上記の番号iを持つ送信ウェイト行列に対応する。
ステップ4の終了後、送信ウェイト行列の番号iが1つ増加される。そして、送信ウェイト行列供給部158は、次の送信ウェイト行列(番号i+1)を供給する。次の送信ウェイト行列(番号i+1)について、ステップ1〜ステップ4の処理が繰り返される。コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、ステップ1〜ステップ4の処理が実行される。このようにして、コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、リソースエレメント番号mに対応する信号対雑音干渉比SINRnが計算される。これらの多数の信号対雑音干渉比SINRnのうち最大値(各送信ストリームごとに最大値がある)をSINR計算部52はチャネル状態情報判定部54に供給する。チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された最大値の信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。また、最大値の信号対雑音干渉比SINRnに対応する送信ウェイト行列は、チャネル状態情報判定部54がチャネル状態情報を判定する時に、使用される。また、その送信ウェイト行列に対応する干渉抑圧合成受信ウェイト行列を使用して、データ信号分離部34は信号分離を行う。
第10の実施の形態と同様に、移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnの最大値を計算して、その平均的な最大値を使用してチャネル状態情報を判定してもよい。
第12の実施の形態
図20は本発明の第12の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図20は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図20において、図18と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
図20に示すように、各移動通信端末は、CSI−RS(チャネル状態情報参照信号)ベクトル測定部126およびCSI−RS(チャネル状態情報参照信号)チャネルインパルス行列推定部170を備える。これらの構成要素は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
第10の実施の形態と同様に、CRSベクトル測定部26(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるCRSのベクトルであるセル固有参照信号ベクトル(CRSベクトル)を測定する。第10の実施の形態と同様に、干渉抑圧合成処理部32は、CRSベクトル測定部26で測定された参照信号ベクトル(CRSベクトル)と送信ウェイト行列供給部158が供給する送信ウェイト行列に基づいて、干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。
第10の実施の形態と同様に、CRSチャネルインパルス行列推定部150は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCRSの異なるリソースエレメントに対応する2つのNRX×NTX次元のチャネルインパルス行列(CRSチャネルインパルス行列)を推定する。第10の実施の形態と同様に、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(19)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力を計算する。第10の実施の形態と同様に、送信ウェイト行列供給部158は、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列の候補(NTX×Nstream次元の行列)を供給する。
CSI−RSベクトル測定部126は、第1の実施の形態と同様に、所望基地局から送信されるCSI−RSのベクトルであるチャネル状態情報参照信号ベクトル(CSI−RSベクトル)を測定する。
CSI−RSチャネルインパルス行列推定部170は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるCSI−RSの任意のリソースエレメント(番号pを有する)に対応するN
RX×N
TX次元のチャネルインパルス行列(CSI−RSチャネルインパルス行列)
を推定する。
送信ストリーム間干渉電力推定部160は、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、CSI−RSチャネルインパルス行列推定部170で推定された1つのCSI−RSチャネルインパルス行列と、送信ウェイト行列の候補から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、送信ストリーム間干渉電力を推定する。すなわち、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、下記の式(24)に従って、各送信ストリームごとの送信ストリーム間干渉電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
については、第10の実施の形態の式(20)に関連して上述した通りである。
所望データ信号電力推定部162は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、CSI−RSチャネルインパルス行列推定部170で推定されたCSI−RSチャネルインパルス行列と、送信ウェイト行列の候補から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望データ信号電力を推定する。すなわち、所望データ信号電力推定部162は、下記の式(25)に従って、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
については、第10の実施の形態の式(21)に関連して上述した通りである。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部162で推定された所望データ信号電力と、干渉雑音電力推定部156で推定された干渉雑音電力と、送信ストリーム間干渉電力推定部160で推定された送信ストリーム間干渉電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、上記の式(22)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算すなわち推定する。
他の特徴は第10の実施の形態と同じである。この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(19)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(20)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(24)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(25)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。ここまでのステップ1〜ステップ4の処理は、上記の番号iを持つ送信ウェイト行列に対応する。
ステップ4の終了後、送信ウェイト行列の番号iが1つ増加される。そして、送信ウェイト行列供給部158は、次の送信ウェイト行列(番号i+1)を供給する。次の送信ウェイト行列(番号i+1)について、ステップ1〜ステップ4の処理が繰り返される。コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、ステップ1〜ステップ4の処理が実行される。このようにして、コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、リソースエレメント番号mに対応する信号対雑音干渉比SINRnが計算される。これらの多数の信号対雑音干渉比SINRnのうち最大値(各送信ストリームごとに最大値がある)をSINR計算部52はチャネル状態情報判定部54に供給する。チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された最大値の信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。また、最大値の信号対雑音干渉比SINRnに対応する送信ウェイト行列は、チャネル状態情報判定部54がチャネル状態情報を判定する時に、使用される。また、その送信ウェイト行列に対応する干渉抑圧合成受信ウェイト行列を使用して、データ信号分離部34は信号分離を行う。
第10の実施の形態と同様に、移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnの最大値を計算して、その平均的な最大値を使用してチャネル状態情報を判定してもよい。この実施の形態では、第10の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
第13の実施の形態
本発明の第13の実施の形態に係る移動通信端末は、第12の実施の形態と同じ構成を有する。第12の実施の形態では、ステップ1において式(19)が使用されるが、この実施の形態では、ステップ1において式(23)(第11の実施の形態に関連して上記)が使用される。
他の特徴は第12の実施の形態と同じである。この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(23)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(24)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(25)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(22)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。ここまでのステップ1〜ステップ4の処理は、上記の番号iを持つ送信ウェイト行列に対応する。
ステップ4の終了後、送信ウェイト行列の番号iが1つ増加される。そして、送信ウェイト行列供給部158は、次の送信ウェイト行列(番号i+1)を供給する。次の送信ウェイト行列(番号i+1)について、ステップ1〜ステップ4の処理が繰り返される。コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、ステップ1〜ステップ4の処理が実行される。このようにして、コードブックに準備されているすべての送信ウェイト行列について、リソースエレメント番号mに対応する信号対雑音干渉比SINRnが計算される。これらの多数の信号対雑音干渉比SINRnのうち最大値(各送信ストリームごとに最大値がある)をSINR計算部52はチャネル状態情報判定部54に供給する。チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された最大値の信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。また、最大値の信号対雑音干渉比SINRnに対応する送信ウェイト行列は、チャネル状態情報判定部54がチャネル状態情報を判定する時に、使用される。また、その送信ウェイト行列に対応する干渉抑圧合成受信ウェイト行列を使用して、データ信号分離部34は信号分離を行う。
第10の実施の形態と同様に、移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnの最大値を計算して、その平均的な最大値を使用してチャネル状態情報を判定してもよい。この実施の形態では、第10の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
上述した第7〜第9の実施の形態は、第10〜第13の実施の形態のいずれにも、組み合わせることが可能である。また、上述した第10〜第13の実施の形態ではコードブックを用いた送信プリコーディングシステムを例に挙げたが、移動通信端末で推定したCRSもしくはCSI-RSチャネルインパルス行列に基づいて、例えば特異値分解により算出した任意のプリコーディング行列を対象としてもよい。
第14の実施の形態
図21は本発明の第14の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図21は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図21において、図4(第1の実施の形態)と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
図21に示すように、各移動通信端末は、DM−RS(復調用参照信号)系列認識部225と、DM−RS(復調用参照信号)ベクトル測定部226とを備える。DM−RS系列認識部225およびDM−RSベクトル測定部226は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。第1の実施の形態と異なり、この実施の形態に係る移動通信端末は、送信ウェイトベクトル推定部48および所望データ信号電力推定部50を有していない。
DM−RS系列認識部225(参照信号系列認識部)は、制御信号認識部24で認識された制御信号に示されたセルIDに基づいて、所望基地局から送信される復調用参照信号(DM−RS)の系列である復調用参照信号系列(DM−RS系列)
を認識する。具体的には、移動通信端末にとって既知のDM−RS系列の群から、セルIDに対応するDM−RS系列をDM−RS系列認識部225は選択する。
DM−RSベクトル測定部226(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるDM−RSのベクトルである復調用参照信号ベクトル(DM−RSベクトル)
を測定する。DM−RSベクトルは、N
RX次元のベクトルであり、N
RXは移動通信端末の受信アンテナ20の数である。
干渉抑圧合成処理部32は、DM−RSベクトル測定部226で測定された参照信号ベクトル(DM−RSベクトル)に基づいて、所望基地局から送信された電波の所望ビームに対する他のビームの影響を抑圧するように干渉抑圧合成受信ウェイト行列
を公知の手法で計算する。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、N
stream×N
RX次元の行列である。N
streamは、所望基地局から当該移動通信端末に送信される送信レイヤ数である。
データ信号分離部34は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列を用いて、無線受信部22から出力される信号のうち、当該移動通信端末宛てのデータ信号を他の移動通信端末宛てのデータ信号から分離する。データ信号復調部36は、データ信号分離部34で分離された当該移動通信端末宛てのデータ信号の復調および復号を行い、データ信号を得る。
全受信電力推定部38は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、DM−RSベクトル測定部226で測定されたDM−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、全受信電力
を推定する。ここで全受信電力とは、DM−RSベクトルから想定される所望信号電力と干渉電力と雑音電力の合計であり、送信ストリーム毎に推定される。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
具体的には、全受信電力推定部38は、下記の式(26)に従って、N
stream次元の推定信号ベクトル
を計算する。
次に、全受信電力推定部38は、その推定信号ベクトルから各送信ストリームについて推定信号s
nを抽出する。添字のnは送信ストリームの番号を示す。そして、全受信電力推定部38は、下記の式(27)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの全受信電力
を計算する。
チャネルインパルス行列推定部40は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるDM−RSのN
RX×N
stream次元のチャネルインパルス行列
を推定する。具体的には、チャネルインパルス行列推定部40は、DM−RSベクトル測定部226で測定されたDM−RSベクトル
からそのチャネルインパルス行列を公知の手法で計算する。
所望参照信号電力推定部42は、下記の式(28)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの所望参照信号電力
を計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(28)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトルである。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。
このように、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列推定部40で計算されたチャネルインパルス行列と、DM−RS系列認識部225で認識されたDM−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望参照信号電力を推定する。この実施の形態では、所望参照信号電力推定部42は、所望基地局からのDM−RSに基づいて所望参照信号電力を推定する。DM−RSにはデータ信号と同様のプリコーディングが施されているので、所望参照信号電力推定部42で推定された所望参照信号電力は所望データ信号電力であるとみなすことができる。
干渉雑音電力推定部46は、全受信電力から所望参照信号電力を減算することにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、DM−RSに関する干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部46は、下記の式(29)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
SINR計算部52は、所望参照信号電力推定部42で推定された所望参照信号電力(所望データ信号電力)と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(30)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52で計算された信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。チャネル状態情報としては、上述したように、チャネル品質インジケータ(CQI)、プリコーディング行列インジケータ(PMI)、ランクインジケータ(RI)のセットが知られている。チャネル状態情報判定部54は、公知の手法で、CQI、PMI、RIを判定し、CQI、PMI、RIを含むCSIを示す信号を送信信号生成部56に渡す。
送信信号生成部56は、無線送信部58および送信アンテナ60によって、CSIを示す信号を所望基地局に送信すなわちフィードバックする。つまり、送信信号生成部56は、チャネル状態情報送信部として機能する。
この実施の形態においては、干渉抑圧合成受信ウェイト行列とDM−RSベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される全受信電力が推定され、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルとチャネルインパルス行列とDM−RS系列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される所望参照信号電力が推定される。干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。干渉抑圧合成受信ウェイト行列とチャネルインパルス行列は推定されて得られるため誤差を含みうるが、DM−RS系列は移動通信端末が接続する所望基地局に応じた系列であり誤差を有しない。したがって、誤差が少ない干渉雑音電力が計算される。干渉雑音電力は頻繁に大きく変動するが、このように誤差が少ない干渉雑音電力が計算されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
この実施の形態では、DM−RSベクトル測定部226が、参照信号ベクトルとして、復調用参照信号のベクトルである復調用参照信号ベクトル(DM−RSベクトル)を測定し、全受信電力推定部38は、DM−RSベクトル測定部226で測定されたDM−RSベクトルに基づいて全受信電力を推定する。また、チャネルインパルス行列推定部40は、DM−RSベクトル測定部226で測定されたDM−RSベクトルに基づいてチャネルインパルス行列を推定し、所望参照信号電力推定部42は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、チャネルインパルス行列と、DM−RS系列認識部225で認識されたDM−RS系列から、所望参照信号電力を推定する。干渉雑音電力は、この全受信電力とこの所望参照信号電力の差分である。
図2のマッピングの例で示されるように、DM−RSはCSI−RSよりも高密度(短間隔)で送信されるので、干渉電力を含む全受信電力と所望参照信号電力の推定のために、DM−RSベクトルおよびDM−RS系列を使用することにより、正確な適時の干渉雑音電力の推定が可能である。
第1の実施の形態では、所望参照信号電力推定部42は、所望基地局からのCRSに基づいて所望参照信号電力を推定する。推定された所望参照信号電力は所望データ信号電力であるとみなすことができないので、第1の実施の形態では、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列の推定およびそれに基づいた所望データ信号電力の推定を行い、所望データ信号電力に基づいて、SINR計算部52は、信号対雑音干渉比を計算する。しかし、この実施の形態では、所望参照信号電力推定部42は、所望基地局からのDM−RSに基づいて所望参照信号電力を推定する。DM−RSにはデータ信号と同様のプリコーディングが施されているので、所望参照信号電力推定部42で推定された所望参照信号電力は所望データ信号電力であるとみなすことができる。SINR計算部52は、所望参照信号電力推定部42で推定された所望参照信号電力(所望データ信号電力)と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。したがって、この実施の形態では、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列の推定およびそれに基づいた所望データ信号電力の推定は不要である。第1の実施の形態の送信ウェイトベクトル推定部48および所望データ信号電力推定部50は排除されうる。
第15の実施の形態
図22は本発明の第15の実施の形態に係る移動通信端末の構成を示すブロック図である。図22は、信号の受信に係る部分と信号の送信に係る部分のみを示し、他の部分の図示は省略する。図22において、図18(第10の実施の形態)と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しないことがある。
図22に示すように、各移動通信端末は、DM−RS(復調用参照信号)系列認識部225と、DM−RS(復調用参照信号)ベクトル測定部226と、復調用参照信号(DM−RS)チャネルインパルス行列推定部250を備える。これらの構成要素は、移動通信端末の図示しないCPUがコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。第10の実施の形態と異なり、この実施の形態に係る移動通信端末は、送信ウェイト行列供給部158を有していない。
DM−RS系列認識部225(参照信号系列認識部)は、制御信号認識部24で認識された制御信号に示されたセルIDに基づいて、所望基地局から送信される復調用参照信号(DM−RS)の系列である復調用参照信号系列(DM−RS系列)
を認識する。具体的には、移動通信端末にとって既知のDM−RS系列の群から、セルIDに対応するDM−RS系列をDM−RS系列認識部225は選択する。
第14の実施の形態と同様に、DM−RSベクトル測定部226(参照信号ベクトル測定部)は、所望基地局から送信されるDM−RSのベクトルである復調用参照信号ベクトル(DM−RSベクトル)を測定する。干渉抑圧合成処理部32は、DM−RSベクトル測定部226で測定された参照信号ベクトル(DM−RSベクトル)に基づいて、干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。
DM−RSチャネルインパルス行列推定部250は、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来する信号から、所望基地局から受信されるDM−RSの異なるリソースエレメントに対応する2つのN
RX×N
stream次元のチャネルインパルス行列(DM−RSチャネルインパルス行列)
を推定する。
添字の「m」、「m’」について図23を参照して説明する。図23は、LTE Advancedでの下りリンク送信の1つのリソースブロックにおける各種信号のマッピングの例を示す。図23に示すように、DM−RSは、いくつかのサブキャリアの各々において、2つの連続したリソースエレメントで送信される(例えばリソースエレメントRE1,RE2)。但し、2つの連続したリソースエレメントにおいて、先頭のリソースエレメントは送信レイヤ1に対応し、末尾のリソースエレメントは送信レイヤ2に対応する。例えばリソースエレメントRE1,RE3は送信レイヤ1に対応し、リソースエレメントRE2,RE4は送信レイヤ2に対応する。添字「m」、「m’」は、1つの送信レイヤに対応する異なるリソースエレメントREの番号を示す。例えば、添字「m」は図23のリソースエレメントRE1の番号であり、添字「m’」は図23のリソースエレメントRE3の番号である。添字「m」は図23のリソースエレメントRE2の番号であってもよく、添字「m’」は図23のリソースエレメントRE4の番号であってもよい。使用されるリソースエレメントは、図示の例に限られないが、同じ周波数(同じサブキャリア)であり、なるべく時間方向に近い(近いOFDMシンボルである)リソースエレメントである。
干渉雑音電力推定部156は、干渉抑圧合成処理部32で得られた干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250で得られた複数のチャネルインパルス行列のそれぞれの一部である複数のチャネルインパルスベクトルから、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉雑音電力を推定する。すなわち、干渉雑音電力推定部156は、下記の式(31)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、番号mを持つリソースエレメントのDM−RSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、DM−RSベクトルに基づいて計算される。
は、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250で計算されたDM−RSチャネルインパルス行列
(N
RX×N
stream次元の行列)からアンテナポート番号「a」ごとに抽出される縦ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、DM−RSチャネルインパルス行列の一部であるチャネルインパルスベクトルである。DM−RSは、基地局(セル)の複数の送信アンテナポートから送信される。添字の「a」は、DM−RSが送信される基地局のアンテナポートの番号を示す。「a」は1か2である。
は、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250で計算されたDM−RSチャネルインパルス行列
(N
RX×N
stream次元の行列)からアンテナポート番号「a」ごとに抽出される縦ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この縦ベクトルは、DM−RSチャネルインパルス行列の一部であるチャネルインパルスベクトルである。
送信ストリーム間干渉電力推定部160は、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250で推定された1つのDM−RSチャネルインパルス行列から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望基地局から送信される送信ストリーム間干渉電力を推定する。すなわち、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、下記の式(32)に従って、各送信ストリームごとの送信ストリーム間干渉電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、任意の番号pを持つリソースエレメントのDM−RSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出されるN
RX次元の横ベクトル(干渉抑圧合成受信ウェイトベクトル)である。
は、任意の番号pを持つリソースエレメントのDM−RSベクトルに対応するDM−RSチャネルインパルス行列推定部250で計算されたDM−RSチャネルインパルス行列である。
所望データ信号電力推定部162は、干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルと、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250で推定された1つのDM−RSチャネルインパルス行列と、DM−RS系列認識部225で認識されたDM−RS系列)から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、所望データ信号電力を推定する。すなわち、所望データ信号電力推定部162は、下記の式(33)に従って、各送信ストリームごとの所望データ信号電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
SINR計算部52は、所望データ信号電力推定部162で推定された所望データ信号電力と、干渉雑音電力推定部156で推定された干渉雑音電力と、送信ストリーム間干渉電力推定部160で推定された送信ストリーム間干渉電力から、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。すなわち、SINR計算部52は、下記の式(34)に従って、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINR
nを計算すなわち推定する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(31)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(32)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(33)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(34)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。
ステップ4の終了後、チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。
以上の動作で得られる信号対雑音干渉比SINRnは特定のリソースエレメント(番号mを有する)と特定のリソースエレメント(番号pを有する)に対応する。移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnを計算して、その平均的な信号対雑音干渉比SINRnを使用してチャネル状態情報を判定してもよい。例えば、ステップ1において、複数のリソースエレメント(番号mのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、干渉雑音電力推定部156は、式(31)を適用して、複数の干渉雑音電力を計算して、それらの干渉雑音電力を平均してもよい。ステップ2において、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、複数のリソースエレメント(番号pのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、式(32)を適用して、複数の送信ストリーム間干渉電力を計算して、それらの送信ストリーム間干渉電力を平均してもよい。ステップ3において、所望データ信号電力推定部162は、複数のリソースエレメント(番号pのリソースエレメントに加えて他の番号のリソースエレメント)に対して、式(33)を適用して、複数の所望データ信号電力を計算して、それらの所望データ信号電力を平均してもよい。ステップ4では、SINR計算部52は、平均の所望データ信号電力と、平均の干渉雑音電力と、平均の送信ストリーム間干渉電力から、信号対雑音干渉比を計算してよい。
この実施の形態においては、DM−RSチャネルインパルス行列推定部250は、DM−RSの異なるリソースエレメントに対応する複数のチャネルインパルス行列を推定し、干渉雑音電力推定部156は、それらの複数のチャネルインパルス行列のそれぞれの一部である複数のチャネルインパルスベクトルに基づいて、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉雑音電力を推定する。異なるリソースエレメントが、同じ周波数(同じサブキャリア)であり、時間方向に近い(近いOFDMシンボルである)場合には、それらのリソースエレメントについてのチャネル特性はほぼ同じであり、それらのリソースエレメントに由来する複数のチャネルインパルス行列の間の相違は干渉雑音に起因すると考えることができる。したがって、それらのリソースエレメントに由来する複数のチャネルインパルスベクトルに基づいて、高い精度で干渉雑音電力を推定することができる。このように誤差が少ない干渉雑音電力が推定されることにより、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比(SINR)を高い精度で計算することができる。
計算されたSINRが高い精度を有するため、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル品質情報に応じて、基地局は適切な適応変調およびユーザスケジューリングを実行することができ、高い精度のSINRに基づいて決定されたチャネル状態情報に応じて、基地局は適切なプリコーディングを実行することができる。また、計算されたSINRが高い精度を有するため、そのSINRをハンドオーバの指標として使用すると、適切なハンドオーバが行われうる。
第10の実施の形態では、所望基地局からのCRSに基づいて各種の処理が行われる。CRSにはデータ信号と同様のプリコーディングが施されていないので、第10の実施の形態では、所望基地局でのプリコーディングに使用されるべき送信ウェイト行列の候補を用いて所望データ信号電力の推定を行い、所望データ信号電力に基づいて、SINR計算部52は信号対雑音干渉比を計算する。そして、複数の送信ウェイト行列の候補について、信号対雑音干渉比を計算する処理が繰り返され、最大の信号対雑音干渉比が選択される。しかし、この実施の形態では、所望基地局からのDM−RSに基づいて各種の処理が行われる。DM−RSにはデータ信号と同様のプリコーディングが施されているので、容易に所望データ信号電力が計算される。複数の送信ウェイト行列の候補について、信号対雑音干渉比を計算する処理の繰り返しは不要である。第10の実施の形態の送信ウェイト行列供給部158は排除されうる。
第16の実施の形態
本発明の第16の実施の形態に係る移動通信端末は、第15の実施の形態と同じ構成を有する。第15の実施の形態では、ステップ1において式(31)が使用されるが、この実施の形態では、ステップ1において下記の式(35)が使用される。つまり、干渉雑音電力推定部156は、下記の式(35)に従って、各送信ストリームごとの干渉雑音電力
を計算する。
添字のnは送信ストリームの番号を示す。
式(35)において、
は、干渉抑圧合成処理部32で計算された、番号m'を持つリソースエレメントのDM−RSベクトルに基づいた干渉抑圧合成受信ウェイト行列
(N
stream×N
RX次元の行列)から各送信ストリームについて抽出される横ベクトル(N
RX次元)である。つまり、この横ベクトルは、干渉抑圧合成受信ウェイト行列の一部である干渉抑圧合成受信ウェイトベクトルである。添字のnは送信ストリームの番号を示す。干渉抑圧合成受信ウェイト行列は、DM−RSベクトルに基づいて計算される。式(35)の他の変数は、式(31)に関連して上述した通りである。
他の特徴は第15の実施の形態と同じである。この実施の形態に係る移動通信端末の信号対雑音干渉比SINRnを計算するための動作を説明する。まず、干渉雑音電力推定部156は、上記の式(35)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号mに対応する干渉雑音電力を計算する(ステップ1)。次に、送信ストリーム間干渉電力推定部160は、上記の式(32)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する送信ストリーム間干渉電力を計算する(ステップ2)。次に、所望データ信号電力推定部162は、上記の式(33)に従って、各送信ストリームごとのリソースエレメント番号pに対応する所望データ信号電力を計算する(ステップ3)。さらに、SINR計算部52は、上記の式(34)に従って、各送信ストリームごとの信号対雑音干渉比SINRnを計算する(ステップ4)。
ステップ4の終了後、チャネル状態情報判定部54は、SINR計算部52から出力された最大値の信号対雑音干渉比SINRnから、チャネル状態情報(CSI)を判定する。
第15の実施の形態と同様に、移動通信端末は、複数のリソースエレメントについての平均的な信号対雑音干渉比SINRnの最大値を計算して、その平均的な最大値を使用してチャネル状態情報を判定してもよい。この実施の形態では、第15の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
上述した第7〜第9の実施の形態は、第14〜第16の実施の形態のいずれにも、組み合わせることが可能である。
第17の実施の形態
第17の実施の形態に係る移動通信端末は、上記の第1〜第6の実施の形態、第10〜第16の実施の形態のいずれかで得られた高い精度の信号対雑音干渉比を用いて、逐次干渉キャンセル(SIC)を実行する。
図24は、本発明の第17の実施の形態に係る移動通信端末の構成の一部を示すブロック図である。第17の実施の形態に係る移動通信端末は、上記の第1〜第6の実施の形態、第10〜第16の実施の形態のいずれかとほぼ同じ構成を有し、さらに、キャンセル順番決定部300、SIC部(逐次干渉キャンセル部)302、メモリ310、データ信号合成分離部334およびデータ信号復調部336を有する。図24には、上記の実施の形態の構成要素のうち、無線受信部22、SINR計算部52および干渉抑圧合成処理部32のみが示されている。上記の実施の形態の構成要素のうち、データ信号分離部34およびデータ信号復調部36は不要である。
SIC部302は、干渉基地局からの干渉データ信号を復調することにより干渉レプリカを生成し、複数の受信アンテナ20で受信される電波に由来し無線受信部22から出力される受信信号から干渉レプリカをキャンセルすることにより、所望基地局からの所望データ信号を抽出する。より具体的には、SIC部302は、所望データ信号か干渉データ信号かにかかわらず、高いSINRを有するデータ信号を先に復調することにより、データ信号レプリカを生成し、復調で生成されたデータ信号レプリカを受信信号(所望データ信号と干渉データ信号が混合されている)からキャンセルすることを繰り返す。そして、すべてのデータ信号が復調されてすべての干渉レプリカが得られると、SIC部302は、すべての干渉レプリカを受信信号からキャンセルすることにより、所望データ信号を抽出する。復調されたデータ信号レプリカが、所望データ信号のレプリカであるか、干渉データ信号のレプリカであるかは、基地局から送信される制御信号のセルIDにより判断することができる。
無線受信部22から出力される受信信号は、SIC部302でのSIC動作のためにメモリ310に記憶される。また、SIC部302で得られる干渉レプリカなどの計算結果もメモリ310に記憶される。
SIC部302でのデータ信号の復調とキャンセルの順序を決定するために、所望データ信号のSINRおよび干渉データ信号のSINRが使用される。この目的のため、SINR計算部52は、所望データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRだけでなく、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRを計算する。上記の他の実施の形態では、SINR計算部52は、所望データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRを計算するが、この実施の形態では、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRも計算する。
干渉データ信号に対する干渉抑圧合成とは、実際の干渉データ信号を所望データ信号であると仮定し、実際の所望データ信号を干渉データ信号であると仮定して実行される干渉抑圧合成である。このため、図24に示されていない構成要素も、実際の干渉基地局からの信号を所望基地局からの信号として取り扱う。この実施の形態が図21に示された第14の実施の形態を基礎とする場合には、DM−RS系列認識部225は、干渉基地局から送信されるDM−RSの系列を認識し、DM−RSベクトル測定部226は、干渉基地局から送信されるDM−RSベクトルを測定する。干渉抑圧合成処理部32は、干渉基地局のDM−RSベクトルに基づいて、干渉基地局から送信された電波の干渉ビームに対する他のビーム(実際の所望ビームを含む)の影響を抑圧するように干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。全受信電力推定部38は、干渉抑圧合成処理部32で計算された干渉抑圧合成受信ウェイト行列と、DM−RSベクトル測定部226で測定されたDM−RSベクトルから、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉基地局からの全受信電力を推定し、チャネルインパルス行列推定部40は、干渉基地局から受信されるDM−RSのチャネルインパルス行列を推定する。所望参照信号電力推定部42は、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、各送信ストリームごとの参照信号電力(干渉基地局からのDM−RSの電力)を計算すなわち推定する。干渉基地局からのDM−RSの電力は干渉データ信号電力であるとみなすことができる。干渉雑音電力推定部46は、干渉基地局からの全受信電力から干渉基地局からの参照信号電力を減算することにより、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、干渉基地局からのDM−RSに対する干渉雑音電力を推定する。SINR計算部52は、所望参照信号電力推定部42で推定された参照信号電力(干渉データ信号電力)と干渉雑音電力推定部46で推定された干渉雑音電力から、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定される、信号対雑音干渉比を計算する。
この実施の形態が、第14の実施の形態以外の他の実施の形態を基礎とする場合にも、同様にして、実際の干渉基地局からの信号を所望基地局からの信号として取り扱う。詳細については説明を省略するが、当業者であれば理解できる。
キャンセル順番決定部300は、SINR計算部52で計算された所望データ信号に関するSINRと、干渉データ信号に関するSINRに基づいて、SIC部302でのデータ信号の復調とキャンセルの順序を決定する。SIC部302は、キャンセル順番決定部300で決定された順序に従って、データ信号の復調とキャンセルを実行する。SIC部302でのSIC動作においては、干渉抑圧合成処理部32で生成される所望データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列および干渉データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列が使用される。
データ信号合成分離部334は、SIC部302から出力される所望データ信号の合成または分離処理を行う。具体的には、所望データ信号の送信ストリーム数が1であれば信号合成を行い、所望データ信号の送信ストリーム数が2であれば信号分離を行う。合成または分離処理においては、干渉抑圧合成処理部32で生成される、所望データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列が使用される。データ信号復調部336は、データ信号合成分離部334から出力された当該移動通信端末宛てのデータ信号の復調および復号を行い、データ信号を得る。
次に、この移動通信端末の動作を具体的に説明する。説明の便宜上、移動通信端末は2つの干渉基地局(以下、第1の干渉基地局および第2の干渉基地局と呼ぶ)から干渉信号を受信すると想定する。
まず、無線受信部22から出力される受信信号がメモリ310に記憶される。次に、移動通信端末は、各基地局に対してチャネル推定を実行し、チャネル推定結果から干渉抑圧合成処理部32は、各基地局に対する干渉抑圧合成受信ウェイト行列を計算する。
また、SINR計算部52は各基地局に関するSINRを計算する。キャンセル順番決定部300は、これらの基地局に関するSINRに基づいて、高いSINRを有するデータ信号が先に復調およびキャンセルされるように、SIC部302でのデータ信号の復調とキャンセルの順序を決定し、SIC部302は、キャンセル順番決定部300で決定された順序に従って、データ信号の復調とキャンセルを実行する。
例えば、所望データ信号のSINRが最高であり、第1の干渉基地局からの第1の干渉データ信号のSINRが次に高く、第2の干渉基地局からの第2の干渉データ信号のSINRが最低であると仮定する。この場合には、SINRが最高である所望データ信号が最初に復調およびキャンセルされる。SIC部302は、干渉抑圧合成処理部32で生成される所望データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列で受信信号を重み付けし、重み付けされた信号から所望データ信号を復調して、所望データ信号のレプリカを生成する。そして、SIC部302は、メモリ310に記憶された受信信号から所望データ信号のレプリカをキャンセルし、キャンセル結果をメモリ310に記憶する。
SINRが次に高い第1の干渉データ信号が次に復調およびキャンセルされる。SIC部302は、干渉抑圧合成処理部32で生成される第1の干渉データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列で、メモリ310に記憶されたキャンセル結果を重み付けし、重み付けされたキャンセル結果から第1の干渉データ信号を復調して、第1の干渉データ信号のレプリカを生成する。そして、SIC部302は、メモリ310に記憶されたキャンセル結果から第1の干渉データ信号のレプリカをキャンセルし、キャンセル結果(第2の干渉データ信号に対応する)と、第1の干渉データ信号のレプリカをメモリ310に記憶する。
SINRが最低である第2の干渉データ信号が次に復調およびキャンセルされる。SIC部302は、干渉抑圧合成処理部32で生成される第2の干渉データ信号のための干渉抑圧合成受信ウェイト行列で、メモリ310に記憶されたキャンセル結果(第2の干渉データ信号に対応する)を重み付けし、重み付けされたキャンセル結果から第2の干渉データ信号を復調して、第2の干渉データ信号のレプリカを生成する。そして、SIC部302は、第2の干渉データ信号のレプリカをメモリ310に記憶する。
このようにして第1の干渉データ信号のレプリカと第2の干渉データ信号のレプリカが得られる。SIC部302は、第1の干渉データ信号のレプリカと第2の干渉データ信号のレプリカを、メモリ310に記憶された受信信号からキャンセルし、これにより所望データ信号を抽出する。
データ信号合成分離部334は、所望データ信号の合成または分離処理を行い、データ信号復調部336は、データ信号の復調および復号を行い、データ信号を得る。
移動通信端末が所望セルの境界付近にあるため第1の干渉基地局からの第1の干渉データ信号のSINRが最高であり、所望データ信号のSINRが次に高い場合には、第1の干渉データ信号が最初に復調およびキャンセルされて、第1の干渉データ信号のレプリカが最初に生成される。次に、所望データ信号が最初に復調およびキャンセルされて、所望データ信号のレプリカが生成される。いずれにせよ、すべてのデータ信号が復調されてすべての干渉レプリカが得られると、SIC部302は、すべての干渉レプリカを受信信号からキャンセルすることにより、所望データ信号を抽出する。
この実施の形態では、各データ信号についてSINR計算部52で計算される高い精度の信号対雑音干渉比を用いるので、適切な順番でデータ信号の復調およびキャンセルが実行される。また、この実施の形態では、SIC部302が一旦所望データ信号を復調しても、すべての干渉データ信号のレプリカが得られるまで、干渉データ信号の復調が行われ、受信信号からすべての干渉データ信号のレプリカをキャンセルすることで所望データ信号を抽出する。したがって、抽出される所望データ信号の精度が高い。
第18の実施の形態
図25は、本発明の第18の実施の形態に係る移動通信端末の構成の一部を示すブロック図である。第18の実施の形態に係る移動通信端末は、上記の第17の実施の形態とほぼ同じ構成を有し、さらに、受信信号品質判定部70および補正部72を有する。図25において、図24と共通する構成要素を示すために同一の参照符号が使用され、これらの構成要素は詳しく説明しない。
受信信号品質判定部70および補正部72は、上記の第7の実施の形態〜第9の実施の形態の受信信号品質判定部70および補正部72と同じである。すなわち、補正部72は、受信信号品質判定部70で測定または計算された受信信号品質に基づいて、SINR計算部52で計算されたSINRを補正して、補正されたSINRをキャンセル順番決定部300に供給する。第17の実施の形態と同様に、SINR計算部52は、所望データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRだけでなく、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRを計算する。補正部72は、これらのSINRを補正して、補正されたSINRをキャンセル順番決定部300に供給する。
あるいは、補正部72は、受信信号品質判定部70で測定または計算された受信信号品質に基づいて、干渉雑音電力推定部46(例えば図15参照)で推定された干渉雑音電力を補正して、補正された干渉雑音電力をSINR計算部52に供給してもよい。この場合、干渉雑音電力推定部46は、所望データ信号にとっての干渉雑音電力だけでなく、干渉データ信号にとっての干渉雑音電力を計算する。補正部72は、これらの干渉雑音電力を補正して、補正された干渉雑音電力をSINR計算部52に供給する。SINR計算部52は、所望データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRだけでなく、干渉データ信号に対して干渉抑圧合成が実施される場合に想定されるSINRを計算する。
いずれの場合にせよ、この実施の形態では、上記の第7の実施の形態〜第9の実施の形態に関連して説明した理由と同じ理由により、さらに高い精度のSINRを計算することができる。この実施の形態では、第17の実施の形態と同様の効果を達成することができる。また、より高い精度のSINRを用いて、キャンセル順番決定部300がデータ信号の復調およびキャンセルの順序を決定するので、より適切な順番でデータ信号の復調およびキャンセルが実行される。
他の変形
移動通信端末において、CPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
第7の実施の形態〜第9の実施の形態の各々は、第1の実施の形態〜第6の実施の形態を基礎とする。また、上述した通り、第7〜第9の実施の形態は、第10〜第16の実施の形態のいずれにも、組み合わせることが可能である。さらにまた、第7の実施の形態〜第9の実施の形態の各々における、複数の基地局から受信する電波に関する受信信号品質に基づいて、信号対雑音干渉比または干渉雑音電力を補正する機能は、IRCを実行する干渉抑圧合成処理部と、IRCで得られる干渉抑圧合成受信ウェイト行列に基づいて、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される干渉雑音電力を推定する干渉雑音電力推定部と、その干渉雑音電力に基づいて、干渉抑圧合成が実施される場合に想定される信号対雑音干渉比を計算する信号対雑音干渉比計算部を備える他の移動通信端末にも使用可能である。
上記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。