以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
図1は、本実施形態に係る車両用空調装置に搭載する熱交換器の一例を示す概略斜視図である。熱交換器1は、図1に示すようにチューブ2とアウタフィン3とを交互に複数積層した積層体4を備える。熱交換器1は、例えば、エバポレータ、ホットガス式ヒーターコア又はヒートポンプサイクルのエバポレータ・ヒーターコア兼用の熱交換器である。
チューブ2の長手方向の一方の端部は、一方のタンク部5aを有し、チューブ2の長手方向の他方の端部は、他方のタンク部5bを有する。チューブ2は、内部に冷媒通路(不図示)を更に有する。冷媒通路は、一方のタンク部5a及び他方のタンク部5bに連通する。一方のタンク部5a及び他方のタンク部5bは、冷媒を各チューブ2内の冷媒通路に分配し、収集する。
チューブ2のうち2本以上は、内部に貯蔵部(不図示)を更に有する。貯蔵部は、蓄熱材を貯蔵できる。また、貯蔵部は、冷媒通路に連通しない。
アウタフィン3は、例えばアルミニウム合金又は銅合金よりなる、波状に曲折された薄板のコルゲートタイプである。本発明は、アウタフィン3の構造に制限されない。
積層体4は、チューブ2を、アウタフィン3を挟んで複数積層して形成される。積層体4では、チューブ2内の冷媒通路を通過する冷媒又は蓄熱材と、アウタフィン3を通過する送風空気との間で熱移動が生じる。本発明は、チューブ2及びアウタフィン3の数に制限されない。
積層体4は、貯蔵部を含む、互いに連通しない複数の充填空間(不図示)を有する。各充填空間は、蓄熱材が充填された第1分割空間か、又は蓄熱材が充填されていない第2分割空間かのいずれかとなる。
次に、チューブ2を形成する各プレートについて説明する。
図2は、第一例の閉塞プレートの一例を示す正面図である。第一例の閉塞プレート110は、アルミニウム合金又は銅合金などの金属製であり、例えば、略方形の外形を有する。第一例の閉塞プレート110は、図2に示すように、中間プレートを挟む側の面(図2に図示した面)111に、閉塞プレート110の周囲に設けられた周壁112と閉塞プレート110の長手方向に沿って並列に設けられた二対の仕切壁113(113a,113b)とを有する。仕切壁113(113a,113b)は、例えば、正面視で波線状である。図2では、仕切壁113(113a,113b)を二対設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば、仕切壁113(113a,113b)を一対設けるか、又は仕切壁113(113a,113b)を三対以上設けてもよい。
周壁112及び仕切壁113(113a,113b)は、1枚の金属板をプレス加工することによって形成することが好ましい。
第一例の閉塞プレート110は、対をなす仕切壁113(113a,113b)の間に形成された窪みである冷媒通路114と、中央2本の仕切壁113bの間に形成された窪みである中央貯蔵部115と、両脇の仕切壁113a及び周壁112の間に形成された窪みである端貯蔵部116とを有する。中央貯蔵部115及び端貯蔵部116は冷媒通路114の周囲に沿って配置されるため、冷媒通路114内の冷媒と中央貯蔵部115及び端貯蔵部116内の蓄熱材との間で効率的な熱移動が可能となる。
第一例の閉塞プレート110は、一方の端部及び他方の端部に、冷媒通路114と連通する貫通孔117を有する。
第一例の閉塞プレート110は、一方の端部及び他方の端部に、中央貯蔵部115と連通する貫通孔118を有する。
図3は、第二例の閉塞プレートの一例を示す部分拡大した正面図である。図4は、第三例の閉塞プレートの一例を示す部分拡大した正面図である。図5は、第四例の閉塞プレートの一例を示す部分拡大した正面図である。図6は、第五例の閉塞プレートの一例を示す部分拡大した正面図である。次に、第二例〜第五例の閉塞プレート120,130,140,150について、それぞれ図面を参照しながら説明する。第二例〜第五例の閉塞プレート120,130,140,150は、中央貯蔵部115の両端部の構造以外は、基本的な構造及び材質を図2に示す第一例の閉塞プレート110と同じくする。このため、第一例の閉塞プレート110と共通する部分については説明を省略し、相違する部分についてだけ説明する。図3〜図6では、閉塞プレートの長手方向の中央部分を省略している。また、図3〜図6では、第一例の閉塞プレート110と共通する部分には、図2と共通の符号を付した。
第二例の閉塞プレート120は、図3に示すように、一方の端部に、中央貯蔵部125と連通する貫通孔118を有し、他方の端部に、中央貯蔵部125と連通しない貫通孔128を有する。
第三例の閉塞プレート130は、図4に示すように、一方の端部及び他方の端部に、中央貯蔵部135と連通する凹部138を有する。なお、凹部138と貫通孔118,128とは、凹部138が孔をあけない点で相違する。
第四例の閉塞プレート140は、図5に示すように、一方の端部及び他方の端部に、中央貯蔵部145と連通しない貫通孔128を有する。
第五例の閉塞プレート150は、図6に示すように、一方の端部及び他方の端部に、中央貯蔵部155と連通しない凹部158を有する。なお、凹部158と貫通孔118,128とは、凹部138が孔をあけない点で相違する。
図7は、中間プレートの一例を示す正面図である。中間プレート200は、アルミニウム合金又は銅合金などの金属製であり、閉塞プレート110と同一の外形を有する。
中間プレート200は、図2に示す閉塞プレート110の貫通孔117に対応する位置に、貫通孔207を有する。また、中間プレート200は、図2に示す閉塞プレート110の貫通孔118に対応する位置に、貫通孔208を有する。
中間プレート200は、第1の孔201、第2の孔202、第3の孔203及び第4の孔204を有することが好ましい。本発明は、各孔の個数に制限されない。また、図3では、第1の孔201、第2の孔202及び第4の孔204は円形であり、第3の孔203は長方形であるが、本発明は、各孔201,202,203,204の形状に制限されない。
中間プレート200では、各孔を、1枚の金属板を打抜き加工によって形成することが好ましい。
次に、チューブの種類を説明する。
図8は、第1チューブの構造を説明するための図である。第1チューブは、図8に示す中間プレート200を第1閉塞プレート110Aと第2閉塞プレート110Bとの間に挟んだ構造を有する。第1チューブでは、第1閉塞プレート110A及び第2閉塞プレート110Bは、いずれも図2に示す第一例の閉塞プレート110である。第1チューブは、図8に示す第1閉塞プレート110Aの周壁112及び仕切壁113の頂部を中間プレート200の一方の面に当接し、かつ、第2閉塞プレート110Bの周壁112及び仕切壁113の頂部を中間プレート200の他方の面に当接して、各プレート同士をろう付け(接合)することによって形成する。
図9は、第1チューブの冷媒通路及びタンク部だけを図示した図である。冷媒通路114は、第1冷媒通路114A及び第2冷媒通路114Bを備える。第1冷媒通路114Aは、図8に示す第1閉塞プレート110Aと中間プレート200との間に形成される。また、第2冷媒通路114Bは、図8に示す第2閉塞プレート110Bと中間プレート200との間に形成される。第1冷媒通路114Aと第2冷媒通路114Bとは、互いに逆位相を有する。第1冷媒通路114Aと第2冷媒通路114Bとの重なり部分に、図7に示す中間プレート200の第1の孔201を配置することで、第1冷媒通路114Aと第2冷媒通路114Bとの間で冷媒の流通が可能となる。本実施形態では、熱交換器の冷媒の流れ方は特に限定されず、図9では、一例として冷媒が一方のタンク部5aから他方のタンク部5bへ流れる形態を示した。
タンク部5a,5bは、図2に示す閉塞プレート(第1閉塞プレート)110の貫通孔117と、図7に示す中間プレート200の貫通孔207と、図2に示す閉塞プレート(第2閉塞プレート)110の貫通孔117とを重ねて形成される。
図10は、第1チューブの貯蔵部及びその両端部だけを図示した図である。第1チューブは、貯蔵部として中央貯蔵部115と端貯蔵部116とを有する。
中央貯蔵部115は、第1中央貯蔵部115A及び第2中央貯蔵部115Bを備える。第1中央貯蔵部115Aは、第1閉塞プレートと中間プレートとの間に形成される。また、第2中央貯蔵部115Bは、第2閉塞プレートと中間プレートとの間に形成される。第1中央貯蔵部115Aと第2中央貯蔵部115Bとは、互いに逆位相を有する。第1中央貯蔵部115Aと第2中央貯蔵部115Bとの重なり部分に、図7に示す中間プレート200の第2の孔202を配置することで、第1中央貯蔵部115Aと第2中央貯蔵部115Bとの間で蓄熱材の流通が可能となる。
中央貯蔵部115の一方の端部及び他方の端部には、充填部6が設けられる。充填部6は、図2に示す第一例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)110の貫通孔118と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図2に示す第一例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)110の貫通孔118とを重ねて形成される。このため、充填部6は、中央貯蔵部115と連通するとともに両隣に積層するチューブとも連通する。
端貯蔵部116は、第1端貯蔵部116A及び第2端貯蔵部116Bを備える。第1端貯蔵部116Aは、第1閉塞プレートと中間プレートとの間に形成される。また、第2端貯蔵部116Bは、第2閉塞プレートと中間プレートとの間に形成される。第1端貯蔵部116Aは第2中央貯蔵部115B及び第2端貯蔵部116Bに端部を重ねた状態で配置される。また、第2端貯蔵部116Bは第1中央貯蔵部115A及び第1端貯蔵部116Aに端部を重ねた状態で配置される。第1端貯蔵部116Aと第2中央貯蔵部115Bとの重なり部分及び第2端貯蔵部116Bと第1中央貯蔵部115Aとの重なり部分に、図7に示す中間プレート200の第3の孔203を配置することで、第1端貯蔵部116Aと第2中央貯蔵部115Bとの間及び第2端貯蔵部116Bと第1中央貯蔵部115Aとの間で蓄熱材の流通が可能となる。第1端貯蔵部116Aと第2端貯蔵部116Bとの重なり部分に、図7に示す中間プレート200の第4の孔204を配置することで、第1端貯蔵部116Aと第2端貯蔵部116Bとの間で蓄熱材の流通が可能となる。
図11は、第1チューブの模式図である。図11は、次のルールに準じて、図10に示す中央貯蔵部115及びその両端部を単純化した図である。図11において、ダンベル形状は、図10の中央貯蔵部115及びその両端部を表す。上端及び下端の突状部分は、図10の中央貯蔵部115の一方の端部及び他方の端部を表し、第1チューブ11では、いずれも充填部6である。塗りつぶされていない丸Oは、隣に積層するチューブに連通することを意味する。また、ダンベル形状を縦断する点線は、中間プレート200を表す。点線よりも左側が図10の第1中央貯蔵部115Aを表し、点線よりも右側が図10の第2中央貯蔵部115Bを表す。
図12は、第2チューブの模式図である。図13は、第3チューブの模式図である。図14は、第4チューブの模式図である。図15は、第5チューブの模式図である。次に、第2チューブ〜第5チューブについて、模式図を用いて説明する。図12〜図15に示す模式図は、図11に示す模式図と共通のルールで作成している。このため、図11で説明したルールについては説明を省略し、新たに登場するルールについてだけ説明する。
第2チューブ12は、第1閉塞プレート及び第2閉塞プレートとしていずれも図3に示す第二例の閉塞プレート120を用いたチューブである。図12において、塗りつぶした四角Tは、中央貯蔵部125と連通していないことを意味する。
第2チューブ12は、一方の端部に充填部6を有し、他方の端部に連絡部7を有する。充填部6は、図3に示す第二例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)120の貫通孔118と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図3に示す第二例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)120の貫通孔118とを重ねて形成される。このため、充填部6は、中央貯蔵部125と連通するとともに両隣に積層するチューブとも連通する。また、連絡部7は、図3に示す第二例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)120の貫通孔128と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図3に示す第二例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)120の貫通孔128とを重ねて形成される。このため、連絡部7は、中央貯蔵部125と連通せずに両隣に積層するチューブと連通する。
第3チューブ13は、第1閉塞プレートとして図4に示す第三例の閉塞プレート130を用い、第2閉塞プレートとして図2に示す第一例の閉塞プレート110を用いたチューブである。図13において、塗りつぶした丸Fは、隣に積層するチューブに連通しないことを意味する。
第3チューブ13は、一方の端部及び他方の端部に、第1閉塞部8を有する。第1閉塞部8は、図4に示す第三例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)130の凹部138と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図2に示す第一例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)110の貫通孔118とを重ねて形成される。このため、第1閉塞部8は、貯蔵部115,135と連通するとともに両隣に積層するチューブのうち片方だけ(第三例の閉塞プレート側)に連通しない。
第4チューブ14は、第1閉塞プレート及び第2閉塞プレートとしていずれも図5に示す第四例の閉塞プレート140を用いたチューブである。
第4チューブ14は、一方の端部及び他方の端部に連絡部7を有する。連絡部7は、図5に示す第四例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)140の貫通孔128と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図5に示す第四例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)140の貫通孔128とを重ねて形成される。このため、連絡部7は、中央貯蔵部145と連通せずに両隣に積層するチューブと連通する。また、第4チューブ14は、図14に示すように中央貯蔵部145が空洞であるか、又は中央貯蔵部145を有さなくてもよい。中央貯蔵部145を有さない形態は、例えば、図5に示す仕切壁113bを中央貯蔵部145を設けた部分まで拡張する形態である。中央貯蔵部145を有さないとき、連絡部7は、単に「両隣に積層するチューブと連通する」部分である。
第5チューブ15は、第1閉塞プレートとして図6に示す第五例の閉塞プレート150を用い、第2閉塞プレートとして図5に示す第四例の閉塞プレート140を用いたチューブである。
第5チューブ15は、一方の端部及び他方の端部に、第2閉塞部9を有する。第2閉塞部9は、図6に示す第五例の閉塞プレート(第1閉塞プレート)150の凹部158と、図7に示す中間プレート200の貫通孔208と、図5に示す第四例の閉塞プレート(第2閉塞プレート)140の貫通孔128とを重ねて形成される。このため、第2閉塞部9は、貯蔵部145,155と連通せずに両隣に積層するチューブのうち片方だけ(第五例の閉塞プレート側)に連通しない。また、第5チューブ15は、図15に示すように中央貯蔵部145,155が空洞であるか、又は中央貯蔵部145,155を有さなくてもよい。中央貯蔵部145,155を有さない形態は、例えば、図5及び図6に示す仕切壁113bを中央貯蔵部145,155を設けた部分まで拡張する形態である。中央貯蔵部145,155を有さないとき、第2閉塞部9は、単に「両隣に積層するチューブのうち片方だけに連通しない」部分である。
次に、本実施形態に係る車両用空調装置に搭載する熱交換器を説明する。本実施形態に係る車両用空調装置に搭載する熱交換器では、積層体は、貯蔵部を含む、互いに連通しない複数の充填空間を有し、充填空間は、蓄熱材が充填された第1分割空間と蓄熱材が充填されていない第2分割空間とを有する。
チューブは、第1チューブ11、第2チューブ12及び第3チューブ13のうち少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。
図16は、第1チューブ及び第3チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図であり、(a)は蓄熱材の充填を開始前の状態、(b)は蓄熱材の充填をしている途中の状態、(c)は蓄熱材の充填を完了した状態を示す。以降、図11〜図15のチューブの模式図を用いて、チューブの積層状態を示す。チューブは、図16に示すように、第1チューブ及び第3チューブを含むことが好ましい。
まず、図16(a)に示すように、第1チューブ11を複数積層し、複数積層した第1チューブ11の間に、1本の第3チューブ13を配置する。そうすると、充填空間は、第3チューブ13の左側に積層した第1チューブ11からなる空間S1と第3チューブ13及び第3チューブの右側に積層した第1チューブ11からなる空間S2とに分割される。
次に、図16(b)に示すように、空間S1に、チューブの長手方向の一方の端部(図16(b)の左上側)L1から第1蓄熱材Aを充填する。
本発明は、蓄熱材の充填方法に制限されない。蓄熱材を充填する方法は、例えば、充填空間の圧力を下げて負圧にした充填空間に蓄熱材を充填する方法である。充填空間を排気する方法は、特に制限はないが、例えば、真空ポンプによる方法である。充填空間を負圧にすることで、蓄熱材をより効率的に充填することができる。ここで、負圧とは、圧力が大気圧よりも低いことをいう。
図16(c)に示すように、空間S1を蓄熱材Aが充填された第1分割空間とし、空間S2を蓄熱材が充填されていない第2分割空間とすることができる。図16(c)では、空間S2に蓄熱材を充填して第1分割空間とし、空間S1に蓄熱材を充填せず第2分割空間としてもよい。なお、蓄熱材を充填した後は、チューブの長手方向の一方の端部L1及びR1などを接着剤等で埋めて、蓄熱材が流れ出ることを防止することが好ましい。
図17は、第1チューブ及び第3チューブを用いた熱交換器の第二例を示す模式図である。まず、図17に示すように、第1チューブ11を複数積層し、複数積層した第1チューブ11の間に、2本の第3チューブ13をそれぞれ間隔をあけて配置する。そうすると、充填空間が、第3チューブ及び第3チューブ13の左側に積層した第1チューブ11からなる空間S1と、2本の第3チューブ13間に積層した第1チューブ11からなる空間S2と、第3チューブ13及び第3チューブの右側に積層した第1チューブ11からなる空間S3とに分割される。次に、空間S1に、チューブの長手方向の一方の端部(図17の左上側)L1から蓄熱材Aを充填し、空間S3に、チューブの長手方向の一方の端部(図17の右上側)R1から蓄熱材Aを充填する。そうすると、蓄熱材Aを充填した空間S1及び空間S3(第1分割空間)と蓄熱材を充填していない空間S2(第2分割空間)とを交互に配置することができる。
本発明は蓄熱材を充填する順番に制限されない。蓄熱材を充填する順番は、空間S1、空間S3の順に充填するか、空間S3、空間S1の順に充填するか、又は空間S1及び空間S3に同時に充填してもよい。また、図17では、空間S1及び空間S3に同じ種類の蓄熱材Aを充填した形態を示したが、空間S1又は空間S3のいずれか一方に、蓄熱材Aとは異なる種類の蓄熱材を充填してもよい。
図18は、第1チューブ、第2チューブ及び第3チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図18に示すように、第1チューブ11、第2チューブ12及び第3チューブ13を含むことが好ましい。まず、図18に示すように、第2チューブ12を、充填部6と連絡部7とを交互に配置して複数積層し、第1チューブ11を複数積層し、第2チューブ12及び第1チューブ11の間に第3チューブ13を配置する。そうすると、充填空間が、第2チューブ12からなる空間S1及び空間S2と第3チューブ13及び第1チューブ11からなる空間S3とに分割される。次に、空間S1に、チューブの長手方向の一方の端部(図18の左上側)L1から第1蓄熱材Aを充填し、空間S2に、チューブの長手方向の他方の端部(図18の左下側)L2から第2蓄熱材Bを充填する。そうすると、空間S1及び空間S2を蓄熱材A,Bが充填された第1分割空間とし、空間S3を蓄熱材が充填されていない第2分割空間とすることができる。
本発明は蓄熱材を充填する順番に制限されない。蓄熱材を充填する順番は、例えば、空間S1、空間S2の順に充填するか、空間S2、空間S1の順に充填するか、又は空間S1及び空間S2に同時に充填してもよい。図18の熱交換器の変形形態は、例えば、空間S1だけに蓄熱材を充填する形態、空間S2だけに蓄熱材を充填する形態、空間S1だけに蓄熱材を充填しない形態、空間S2だけに蓄熱材を充填しない形態である。また、空間S1、空間S2及び空間S3のうち2つの空間に蓄熱材を充填する形態では、当該2つの空間に充填する蓄熱材の種類を、相互に同じ種類とするか又は異なる種類としてもよい。
図18では、空間S1の貯蔵部と空間S2の貯蔵部とが交互に配置された形態を示したが、本発明はこれに限定されない。図18に示す熱交換器において、第2チューブ12のうち少なくとも1本を上下逆に配置する変形を行うと、貯蔵部の所属が空間S1から空間S2に又は空間S2から空間S1に変わる。そうすると、空間S1の貯蔵部を並べて配置したり、空間S2の貯蔵部を並べて配置したりすることができる。
図19は、第2チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図19に示すように、第2チューブ12を含むことが好ましい。まず、図19に示すように、第2チューブ12を、充填部6及び連絡部7を交互に配置して複数積層する。そうすると、充填空間が、空間S1及び空間S2に分割される。次に、空間S2に、チューブの長手方向の他方の端部(図19の左下側)L2から蓄熱材Bを充填する。そうすると、蓄熱材が充填された第1分割空間(空間S2)の貯蔵部の間に、蓄熱材が充填されていない第2分割空間(空間S1)の貯蔵部を配置することができる。図19では、空間S1に蓄熱材を充填して第1分割空間とし、空間S2に蓄熱材を充填せず第2分割空間としてもよい。
図20は、図19に示す熱交換器の変形形態例を示す模式図である。図20では、図19に示す熱交換器の左から2本目のチューブ12X及び最右のチューブ12Yを上下逆に配置した形態を示した。第2チューブ12のうち少なくとも1本の上下を逆に配置すると、貯蔵部の所属が空間S1から空間S2に又は空間S2から空間S1に変わる。そうすると、図20に示すように、蓄熱材が充填されていない第2分割空間(空間S1)の貯蔵部を、任意の位置に配置することができる。
チューブは、第4チューブ及び第5チューブのうちいずれか一種を更に含むことが好ましい。
図21は、第1チューブ、第2チューブ及び第5チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図21に示すように、第1チューブ11、第2チューブ12及び第5チューブ15を含むことが好ましい。図21に示すように、第2チューブ12を、充填部6及び連絡部7を交互に配置して複数積層し、第1チューブ11を複数積層し、第2チューブ12と第1チューブ11との間に、第5チューブ15を配置する。そうすると、図21に示すように、3種類の蓄熱材A,B,Cを配置することができる(第1分割空間)。また、第5チューブ15を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。また、蓄熱材A,B又はCの一つ又は二つを充填せず、第2分割空間を形成してもよい。
図22は、第2チューブ及び第4チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図22に示すように、第2チューブ12及び第4チューブ14を含むことが好ましい。図22に示すように、2種類の蓄熱材A,Bを配置することができる(第1分割空間)。また、第4チューブ14を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。また、蓄熱材A又はBのいずれか一方を充填せず、第2分割空間を形成してもよい。
図23は、第1チューブ及び第4チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図23に示すように、第1チューブ11及び第4チューブ14を含むことが好ましい。図23に示すように、第4チューブ14を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。
図24は、第1チューブ、第4チューブ及び第5チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図24に示すように、第1チューブ11、第4チューブ14及び第5チューブ15を含むことが好ましい。図24に示すように、2種類の蓄熱材A,Bを配置することができる(第1分割空間)。また、第4チューブ14又は第5チューブ15を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。また、蓄熱材A又はBのいずれか一方を充填せず、第2分割空間を形成してもよい。
図25は、第1チューブ、第3チューブ及び第4チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図25に示すように、第1チューブ11、第3チューブ13及び第4チューブ14を含むことが好ましい。図25に示すように、2種類の蓄熱材A,Bを配置することができる(第1分割空間)。また、第4チューブ14を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。また、蓄熱材A又はBのいずれか一方を充填せず、第2分割空間を形成してもよい。
図26は、第2チューブ、第4チューブ及び第5チューブを用いた熱交換器の第一例を示す模式図である。チューブは、図26に示すように、第2チューブ12、第4チューブ14及び第5チューブ15を含むことが好ましい。図26に示すように、4種類の蓄熱材A,B,C,Dを配置することができる(第1分割空間)。また、第4チューブ14又は第5チューブ15を任意の位置に配置して、蓄熱材を配置しない部分(第2分割空間)を形成することができる。また、蓄熱材A,B,C又はDの一つ、二つ又は三つを充填せず、第2分割空間を形成してもよい。
本発明は、図示した第1チューブ〜第5チューブの組み合わせ、比率及び配列に制限されず、本発明の効果を奏する限りにおいて種々の変形をしてもよい。
図27は、本実施形態に係る車両用空調装置の一例を示す概略図である。本実施形態に係る車両用空調装置20は、図27に示すように、内部に空気通路27を有するケース21に、空気流れ発生手段22と、冷凍サイクル30に接続された熱交換器34とを備える。
ケース21は、HVAC(heating, ventilation, and air conditioning)のケースであり、内部に空気通路27を有する。空気通路27には、冷凍サイクル30に接続された熱交換器34が配置される。
冷凍サイクル30に接続された熱交換器34は、図27では蒸発器(エバポレータ)である。熱交換器34は、図16〜図26に示した、本実施形態に係る車両用空調装置に搭載する熱交換器である。
空気通路27には、ヒーターコア23を配置してもよい。ヒーターコア23は、例えば、エンジン冷却水を利用した温水式ヒーターコア、電気発熱式ヒーターを利用した電気発熱式ヒーターコアである。ヒーターコア23の種類及び構造は、本実施形態では限定されない。
空気流れ発生手段22は、例えばブロワであり、空気通路27に空気流れを形成する。ブロワの方式は、本実施形態では特に限定されないが、例えば、シロッコファン、ターボファンなどの遠心式、軸流式、貫流式である。
車室内への送風空気は、例えば、次のように形成される。空気流れ発生手段22が形成した空気流れは、熱交換器(エバポレータ)34を通過し、ミックスドア24の切り換えによって、ヒーターコア23を通過しない空気流れと、ヒーターコア23を通過する空気流れとに分けられる。ヒーターコア23を通過しない空気流れは冷風であり、ヒーターコア23を通過する空気流れは温風である。ミックスドア24の開閉角度によって冷風と温風との空気量を調整して、車室内に送風する空気の温度を調整する。温度調整された空気は、例えばモードドア25,26の開閉によって、デフロスタ(DEF)に通じる通路、フェイス(FACE)に通じる通路又はフット(FOOT)に通じる通路に送られ、車室内へ送風される。
冷凍サイクル30は、例えば、コンプレッサ31と、コンデンサ32と、膨張弁33と、熱交換器(エバポレータ)34とを含む。冷媒は、コンプレッサ31で圧縮されて高温高圧の気体となり、コンデンサ32に流入する。そして、冷媒は、コンデンサ32を通過する外気又は走行風で冷却されて凝縮し高温高圧の液体となる。その後、冷媒は、膨張弁33で減圧・膨張して低温低圧の気液混合状態となり、熱交換器(エバポレータ)34に流入する。冷媒は、熱交換器(エバポレータ)34を通過する空気流れ(空気流れ発生手段22が形成した空気流れ)で暖められて蒸発気化し低温低圧の気体となり、再びコンプレッサ31に流入する。熱交換器(エバポレータ)34を通過した空気は、冷却除湿された空気となり、車室内の冷房又は除湿に利用される。
冷凍サイクル30は、図27に示す冷房専用の他、冷房・暖房兼用であってもよい。冷房・暖房兼用の冷凍サイクルは、例えば特許文献3の図1に示す冷凍サイクルである。この場合、熱交換器34は、エバポレータ・ヒーターコア兼用の熱交換器である。
図28は、コンプレッサが固定容量型である場合の、凍結しやすい領域の温度と時間経過との関係の一例を示すグラフであり、(a)は蓄熱材を充填する前のグラフ、(b)は蓄熱材を充填した後のグラフである。図28(a)、図28(b)は、一例として熱交換器の凍結しやすい領域にサーモスタットを配置し、当該サーモスタットの設定温度幅を1〜3℃とした場合を示す。凍結しやすい領域又はそれ以外の領域は、熱交換器に蓄熱材が充填されていない状態における熱交換器の温度分布を基に判断する。凍結しやすい領域の一例としては、チューブの積層方向において冷媒の流入口側、熱交換器を通過する空気のうち風速が相対的に遅い領域、熱交換器を通過する空気のうち温度が相対的に低い領域などである。
図28(a)において、線51は凍結しやすい領域の温度変化、線52は凍結しやすい領域以外の領域(以降、凍結しにくい領域という。)の温度変化を示す。熱交換器に蓄熱材を充填していない場合、図28(a)に示すように、凍結しやすい領域(線51)は、凍結しにくい領域(線52)よりも温度低下にかかる時間が短いため、冷凍サイクル稼動後初期に、大きな温度分布が生じる。冷凍サイクル稼動後、時間が経過しても、凍結しやすい領域(線51)の温度はサーモスタットの設定温度(例えば1〜3℃)であるのに対して、凍結しにくい領域(線52)の温度は例えば6〜8℃であり、熱交換器内の温度分布は解消されない。また、熱交換器に蓄熱材を充填していない場合、サーモスタットの設定温度幅を狭く(例えば1〜2℃)すると、コンプレッサ31(図27に図示。)の駆動のオンオフが多くなり、乗員のフィーリングが悪化するおそれがある。
図28(b)において、線53は凍結しやすい領域の温度変化、線54は凍結しにくい領域の温度変化を示す。熱交換器の凍結しやすい領域に、蓄熱材が充填された第1分割空間を相対的に密に配置した場合、図28(b)に示すように、凍結しやすい領域(線53)が温度低下にかかる時間を遅くすることができるため、冷凍サイクル稼動後初期に温度分布が拡大するのを抑制することができる。また、凍結しにくい領域(線54)の温度をサーモスタットの設定温度(例えば1〜3℃)まで下げることができ、熱交換器の温度分布を平均化し、効率的に冷やすことができる。このように熱交換器を、部分凍結が発生しにくいものとすることができるので、熱交換器全体の平均温度を低くして、乗員の早速の冷房要求に対応することができる。また、温度分布が拡大しにくいものとすることができるので、車室内への吹出す空気の温度を均一化でき、乗員のフィーリングを向上できる。
図29は、コンプレッサが固定容量型である場合の、凍結しやすい領域の温度と時間経過との関係の一例を示すグラフであり、蓄熱材を充填した後であって、サーモスタットの設定温度幅を小さくしたときのグラフである。図29において、線55は凍結しやすい領域の温度変化、線56は凍結しにくい領域の温度変化を示す。図28(b)に示すように、凍結しやすい領域(線53)では、蓄熱材の潜熱によって温度変化が大きくなるところ、サーモスタットの設定温度幅を狭くする(例えば1〜2℃)ことで、図29に示すように、凍結しやすい領域(線55)の温度変化を小さくして、熱交換器全体で温度変化を小さくすることができる。
図30は、昇温しやすい領域の温度と時間経過との関係の一例を示すグラフであり、(a)は蓄熱材を充填する前のグラフ、(b)は蓄熱材を充填した後のグラフである。昇温しやすい領域又はそれ以外の領域は、熱交換器に蓄熱材が充填されていない状態における熱交換器の温度分布を基に判断する。昇温しやすい領域の一例としては、熱交換器を通過する空気のうち風速が相対的に早い領域、熱交換器を通過する空気のうち温度が相対的に高い領域などである。
図30(a)において、線61は昇温しやすい領域の温度変化、線62は昇温しやすい領域以外の領域(以降、昇温しにくい領域という。)の温度変化を示す。熱交換器に蓄熱材を充填していない場合、時間t1でエンジンが停止すると、冷凍サイクルのコンプレッサ31が停止して、図30(a)に示すように、昇温しやすい領域(線61)は、昇温しにくい領域(線62)よりも急速に温度が上昇する。エバポレータ34(図27に図示。)では、凝縮水が付着した状態で過度に温度が上昇すると(例えば12℃を超えると)臭気が発生することが知られており、車室内の快適性が損なわれる一因となる。やがてサーモスタットがコンプレッサ31を再稼働すべき温度であることを感知すると、エンジンが再稼働され、コンプレッサ31が稼働して(時間t2)、エバポレータ34の昇温しやすい領域(線61)及び昇温しにくい領域(線62)の温度が低下する。
図30(b)において、線63は昇温しやすい領域の温度変化、線64は昇温しにくい領域の温度変化を示す。熱交換器の昇温しやすい領域に、蓄熱材が充填された第1分割空間を相対的に密に配置した場合、図30(b)に示すように、昇温しやすい領域(線63)の温度上昇を抑制することができる。その結果、冷凍サイクルの停止時に熱交換器の温度が過度に上昇することを抑制し、臭気の発生を抑制することができる。
蒸発器の温度が上昇しすぎて車室内への吹出空気温度が上昇して快適性が損なわれることを防止すべく、判定温度(例えば12℃)を超えたとき、エンジンを再稼動させる制御を行うことが考えられるが、昇温しやすい領域(線61)では、図30(a)に示すように、急速に判定温度に到達してしまい、蒸発器の温度上昇を防止するためだけにエンジンを再稼動させる頻度が高くなるところ、昇温しやすい領域に、蓄熱材が充填された第1分割空間を相対的に密に配置することで、図30(b)に示すように、昇温しやすい領域(線63)及び昇温しにくい領域(線64)の温度を判定温度以下とすることができ、空調のためだけにエンジンを再稼動させる頻度を低くすることができる。
図16〜図26に示すように、本実施形態に係る車両用空調装置に搭載する熱交換器は、蓄熱材が充填された第1分割空間、蓄熱材が充填されていない第2分割空間とを任意に配置することができる。このため、熱交換器の凍結しやすい領域若しくは昇温しやすい領域のいずれか一方又は両方に、蓄熱材が充填された第1分割空間を相対的に密に配置することで、温度分布の不均一を改善することができる。
図28及び図29では、コンプレッサ31が固定容量型である例を示したが、コンプレッサ31が可変容量型である場合の例を、図31に示す。図31(a)において、線51aは凍結しやすい領域の温度変化、線52aは凍結しにくい領域の温度変化を示す。熱交換器に蓄熱材を充填していない場合、図31(a)に示すように、凍結しにくい領域(線52a)は十分に温度が低下せず、冷凍サイクルの稼動期間を通じて、大きな温度分布が生じる。
図31(b)において、線53aは凍結しやすい領域の温度変化、線54aは凍結しにくい領域の温度変化を示す。熱交換器の凍結しやすい領域に、蓄熱材が充填された第1分割空間を相対的に密に配置した場合、図31(b)に示すように、凍結しやすい領域(線53a)の温度を十分に下がるように冷凍サイクルが稼働し、凍結しにくい領域の温度も下がり、冷凍サイクルの稼動期間を通じて、温度分布が拡大するのを抑制することができる。
蓄熱材は、接触する物質の温度を所定の温度に保持する物質をいう。蓄熱材は、保持温度が常温以下である場合に蓄冷材と呼ばれたり、包括的に蓄熱・蓄冷材と呼ばれたりすることもある。本発明でいう蓄熱材は、蓄冷材、蓄熱・蓄冷材を含む。蓄熱材は、例えば、比熱を利用した顕熱蓄熱材、融解・凝固などの相変化を利用した潜熱蓄熱材、化学反応による吸熱・発熱を利用した化学蓄熱材である。このうち、単位質量あたりの熱量が顕熱蓄熱材よりも大きい点及び化学的な安定性が化学蓄熱材よりも高い点で、潜熱蓄熱材であることが好ましい。潜熱蓄熱材は、例えば、パラフィンである。パラフィンは、一般式がCnH2n+2である鎖状の炭化水素化合物又は一般式がCnH2n(ただしn≧3)である環式の炭化水素化合物を含む物質である。本実施形態では、パラフィンは、化学的安定性がより高い点で、鎖状の炭化水素化合物を主成分とすることがより好ましい。パラフィンは、炭素数(一般式中nの数)の大小又は炭素鎖の構造が直鎖状、分枝状若しくは環状であるかによって融点(凝固点)が異なる。このため、目的とする保持温度に応じた相変化温度を有するパラフィンを任意に選択できる。複数の充填空間に、相変化温度が異なる蓄熱材を配置する形態としては、例えば、低融点パラフィン(例えば融点:3〜10℃)と、低融点パラフィンよりも融点が高い高融点パラフィン(例えば融点:77〜85℃)とを組み合わせて用いることで、冷房及び暖房の両方に対応した熱交換器とすることができる。
図32は、第1チューブの変形形態例のうち、中間プレートを有さない形態の一例を説明するための図である。第1チューブ〜第5チューブが、1枚の中間プレートを、第1閉塞プレートと第2閉塞プレートとで挟んだ構造を有する形態を示したが、本発明はこの構造に限定されない。第1〜第5チューブは、図32に示すように、中間プレートを備えず、第1閉塞プレートと第2閉塞プレートとを貼り合せた構造としてもよい。図32に示す第1閉塞プレート110A及び第2閉塞プレート110B´は、いずれも図2に示す第一例の閉塞プレート110である。なお、図32では、第2閉塞プレート110B´は、図2に示した閉塞プレート110の長手方向の向きを逆にして図示している。第1チューブは、図32に示すように第1閉塞プレート110A及び第2閉塞プレート110Bを、図2に示した長手方向の向きに対して相互に逆にして、内側となる面119同士を向かい合わせにし、各プレートの周壁112の頂部同士及び仕切壁113の頂部同士を相互に当接して、各プレート同士をろう付け(接合)することによって形成する。そうすると、第1閉塞プレート110Aと第2閉塞プレート110B´との間に、冷媒通路114及び貯蔵部115,116が形成される。図32では、図2に示した第2閉塞プレート110Bの長手方向の向きを逆さとしたが、第1閉塞プレート110Aの長手方向の向きを逆さとしてもよい。そして第2〜第5チューブについても、所定の第1閉塞プレート又は第2閉塞プレートの長手方向の向きを相互に逆にする以外は、第1チューブと同様にして形成することができる。チューブが中間プレートを備えないことで、チューブの材料を減らし、軽量化することができる。また、チューブの厚さ(チューブ高さ)を薄くして、熱交換器の通気抵抗を低減することができる。
図33は、第1チューブの変形形態例のうち、中間プレートを複数枚有する形態の第一例を説明するための図である。第1チューブ〜第5チューブは、図33に示すように、複数枚の中間プレートを、第1閉塞プレートと第2閉塞プレートとで挟む構造であってもよい。図33では、中間プレートとして第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bと、第1閉塞プレート160Aと、第2閉塞プレート160Bとを有する形態を示した。
図33に示す第1中間プレート210Aと第2中間プレート210Bとは構成を同じくするため、代表して第1中間プレート210Aについて説明する。第1中間プレート210Aは、一方の面211aに、プレートの周囲に設けられた周状接合面212とプレートの長手方向に沿って並列に設けられた5本の仕切面213とを有する。仕切面213は、図33では正面視で直線状(長方形状)としたが、波線状など不定形であってもよい。また、仕切面213は、図33では5本設けたが、本発明はこれに限定されず、本数を増減してもよい。第1中間プレート210Aは、周状接合面212と仕切面213との間又は仕切面213同士の間に形成された窪みである貯蔵部214を有する。第1中間プレート210Aは、一方の端部及び他方の端部に、タンク部を形成する貫通孔217と貯蔵部214に連通する貫通孔218とを有する。
図33に示す第1閉塞プレート160Aと第2閉塞プレート160Bとは構成を同じくするため、代表して第1閉塞プレート160Aについて説明する。第1閉塞プレート160Aは、中間プレートを挟む側の面161に、プレートの周囲に設けられた周壁162と、プレートの長手方向に沿って設けられた仕切壁163と、タンク部を形成する貫通孔167と、中間プレート210A,210Bの貫通孔218に対応する位置に形成された貫通孔168とを有する。第1閉塞プレート160Aは、周壁162と仕切壁163との間に形成された窪みである冷媒通路164を有する。冷媒通路164は、中間プレート210A,210Bを重ねたときに貯蔵部214全体が収まる面積を有し、かつ、貯蔵部214の底部の外面が冷媒通路164の底部の内面に接する深さを有する。さらに、第1閉塞プレート160Aは、中間プレート210A,210Bの仕切面213の長手方向の端部213aに対応する位置に形成された凹部169を更に有する。
図34は、図33のチューブを形成したときのA−A部分の破断面図である。図35は、図33のチューブを形成したときのB−B部分の破断面図である。第1チューブは、第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bを、一方の面211a同士を向かい合わせにして、各プレートの周状接合面212同士及び仕切面213同士を相互に当接し、更に、第1閉塞プレート160A及び第2閉塞プレート160Bの周壁162及び仕切壁163の頂部を第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bの他方の面211bにそれぞれ当接して、各プレート同士をろう付け(接合)することによって形成する。そうすると、図34に示すように、第1中間プレート210Aと第2中間プレート210Bとの間に貯蔵部214が形成され、第1閉塞プレート160Aと第1中間プレート210Aとの間及び第2閉塞プレート160Bと第2中間プレート210Bとの間に冷媒通路164が形成される。
図34に示すように、貯蔵部214の底部の外面が冷媒通路164の底部の内面に接することで、冷媒通路164と貯蔵部214とがチューブの側面に沿って交互に配置されるため、冷媒によるアウタフィンの冷却及び蓄熱材によるアウタフィンの冷却をいずれも効率的に行うことができる。さらに、図35に示すように、凹部169を有することで、貯蔵部214の底部の外面が冷媒通路164の底部の内面に接する構造であっても、貯蔵部214同士の間の冷媒通路164に冷媒を流通させることができる。
第2〜第5チューブについても、第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bを所定の構造を有するプレートに変更する以外は、第1チューブと同様にして形成することができる。第2チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図33に示す第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bの他方の端部の貫通孔218を、貯蔵部214に連通しない貫通孔に変更した中間プレート(不図示)を用いる。第3チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図33に示す第1中間プレート210Aと図33に示す第2中間プレート210Bとのうちどちらか1枚について、一方の端部及び他方の端部の貫通孔218を、貯蔵部214に連通する凹部に変更した中間プレート(不図示)とを用いる。第4チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図33に示す第1中間プレート210A及び第2中間プレート210Bの一方の端部及び他方の端部の貫通孔218を、貯蔵部214に連通しない貫通孔に変更した中間プレート(不図示)を用いる。第5チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図33に示す第1中間プレート210Aの一方の端部及び他方の端部の貫通孔218を、貯蔵部214に連通しない貫通孔に変更した中間プレート(不図示)と、図33に示す第2中間プレート210Bの一方の端部及び他方の端部の貫通孔218を、貯蔵部214に連通しない凹部に変更した中間プレート(不図示)とを用いる。
図36は、第1チューブの変形形態例のうち、中間プレートを複数枚有する形態の第二例を説明するための図である。図36では、中間プレートとして第1中間プレート220A及び第2中間プレート220Bと、第1閉塞プレート170Aと、第2閉塞プレート170Bとを有する形態を示した。
図36に示す第1中間プレート220Aと第2中間プレート220Bとは構成を同じくするため、代表して第1中間プレート220Aについて説明する。第1中間プレート220Aは、一方の面221aに、プレートの周囲に設けられた周状接合面222とプレートの長手方向に沿って並列に設けられた5本の仕切面223とを有する。仕切面223は、図36では正面視で直線状(長方形状)としたが、波線状など不定形であってもよい。また、仕切面223は、図36では5本設けたが、本発明はこれに限定されず、本数を増減してもよい。第1中間プレート220Aは、周状接合面222と仕切面223との間又は仕切面223同士の間に形成された窪みである冷媒通路224を有する。第1中間プレート220Aは、一方の端部及び他方の端部に、タンク部を形成する貫通孔227と貫通孔228とを有する。
図36に示す第1閉塞プレート170Aと第2閉塞プレート170Bとは構成を同じくするため、代表して第1閉塞プレート170Aについて説明する。第1閉塞プレート170Aは、中間プレートを挟む側の面171に、プレートの周囲に設けられた周壁172と、タンク部を形成する貫通孔177と、中間プレート220A,220Bの貫通孔228に対応する位置に形成された貫通孔178とを有する。第1閉塞プレート170Aは、周壁172に囲まれた窪みである貯蔵部174を有する。貯蔵部174は、中間プレート220A,220Bを重ねたときに冷媒通路224全体が収まる面積を有し、かつ、冷媒通路224の底部の外面が貯蔵部174の底部の内面に接する深さを有する。さらに、第1閉塞プレート170Aは、中間プレート220A,220Bの仕切面223の長手方向の端部223aに対応する位置に形成された凹部179を更に有する。また、第1閉塞プレート170Aは、貯蔵部174を長手方向に沿って区画する仕切壁(不図示)を更に有していてもよい。
図37は、図36のチューブを形成したときのC−C部分の破断面図である。図38は、図36のチューブを形成したときのD−D部分の破断面図である。第1チューブは、第1中間プレート220A及び第2中間プレート220Bを、一方の面221a同士を向かい合わせにして、各プレートの周状接合面222同士及び仕切面223同士を相互に当接し、更に、第1閉塞プレート170A及び第2閉塞プレート170Bの周壁172の頂部を第1中間プレート220A及び第2中間プレート220Bの他方の面221bにそれぞれ当接して、各プレート同士をろう付け(接合)することによって形成する。そうすると、図37に示すように、第1中間プレート220Aと第2中間プレート220Bとの間に冷媒通路224が形成され、第1閉塞プレート170Aと第1中間プレート220Aとの間及び第2閉塞プレート170Bと第2中間プレート220Bとの間に貯蔵部174が形成される。
図37に示すように、冷媒通路224の底部の外面が貯蔵部174の底部の内面に接することで、貯蔵部174と冷媒通路224とがチューブの側面に沿って交互に配置されるため、冷媒によるアウタフィンの冷却及び蓄熱材によるアウタフィンの冷却をいずれも効率的に行うことができる。さらに、図38に示すように、凹部179を有することで、冷媒通路224の底部の外面が貯蔵部174の底部の内面に接する構造であっても、蓄熱材を充填する充填工程のとき、冷媒通路224同士の間の貯蔵部174に蓄熱材を流通させることができる。
第2〜第5チューブについても、第1閉塞プレート170A及び第2閉塞プレート170Bを所定の構造を有するプレートに変更する以外は、第1チューブと同様にして形成することができる。第2チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図36に示す第1閉塞プレート170A及び第2閉塞プレート170Bの他方の端部の貫通孔178を、貯蔵部174に連通しない貫通孔に変更した閉塞プレート(不図示)を用いる。第3チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図36に示す第1閉塞プレート170Aと図36に示す第2閉塞プレート170Bとのうちどちらか1枚について、一方の端部及び他方の端部の貫通孔178を、貯蔵部174に連通する凹部に変更した閉塞プレート(不図示)とを用いる。第4チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図36に示す第1閉塞プレート170A及び第2閉塞プレート170Bの一方の端部及び他方の端部の貫通孔178を、貯蔵部174に連通しない貫通孔に変更した閉塞プレート(不図示)を用いる。第5チューブでは、所定の構造を有するプレートとして、図36に示す第1閉塞プレート170Aの一方の端部及び他方の端部の貫通孔178を、貯蔵部174に連通しない貫通孔に変更した閉塞プレート(不図示)と、図36に示す第2閉塞プレート170Bの一方の端部及び他方の端部の貫通孔178を、貯蔵部174に連通しない凹部に変更した閉塞プレート(不図示)とを用いる。
図33〜図38に示すように、複数枚の中間プレートを貼り合わせることで中間プレートの内部に蓄熱材の貯蔵部214又は冷媒通路224を形成できるので、例えば図8に示すように第1閉塞プレート110A及び第2閉塞プレート110Bに冷媒通路114と貯蔵部115,116とを仕切る仕切壁113を形成する必要がない。このため、貯蔵部214,174の位置や容積の変更を容易に行うことができる。