以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
1.第1発明:
図1Aは、本願の第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を示す正面図である。図1Bは、図1Aに示されている白抜き矢印VLの方向(側方)から観察した、核酸クロマトグラフィー検査具1aの側面図である。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aは、細長形状の多孔性シート10と、バッキング部材20とを備えている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、吸収パッド40を備えている。
まず、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aにおいて、多孔性シート10の表面には、標的核酸を検出した時に表示が現れる検出面13が設けられている。この検出面13内には表示部15が設けられている。表示部15は、多孔性シート10の長手方向Yと交わる角度に延びる、帯状の領域であり、この帯状の領域内に標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10がバッキング部材20の貼付面に貼り付けられている。
図2は、図1A中の枠α部分の拡大図である。このように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aにおいて、表示部15は、核酸プローブが複数の非真円形状のスポットに固定されている。表示部15は、このような非真円形状のスポット17の集合体により形成されるものである。なお、図2では、多孔性シート10の長手方向Yおよび短手方向Xのそれぞれにおいて、スポット17の重心が整列しているとともに、スポット同士が、少なくとも一部において重なっており、且つ、スポット17が楕円形状であり、その長軸方向が多孔性シートの長手方向に平行となっている場合を示す。
非真円形状としては、具体的には、楕円形状等が好ましい。ここで、楕円形状とは、幾何学的に正確な楕円を意味するだけでなく、楕円に近い形状をも含むものとする。例えば、ティアドロップ形状等の一方向に対して左右対称に広がった形状をも含む。
本実施形態においては、スポット17の形状が、楕円形状であるため、表示部15の輪郭部分が必然的に、微細な凹凸形状を示す。これにより、輪郭部分が直線状に形成される場合と比較して、表示部15が発色した場合の視認性が向上する。
また、上記スポットは、多孔性シートの長手方向および短手方向のそれぞれにおいて、各スポットの重心が整列しているとともに、スポット同士が、少なくとも一部において重なっていることが好ましい。特に、表示部15の全域がスポットによって埋め尽くされていること、即ち、スポットが形成されていない部分が存在しないことが好ましい。このようにスポットが配置されることにより、核酸プローブを表示部15の全域にわたって均等に固定させることが可能となる。ここで、「多孔性シートの長手方向および短手方向のそれぞれにおいて、各スポットの重心が整列している」とは、多孔性シートの長手方向または短手方向に平行な直線状に存在するスポットが、等間隔に並んでいる状態を意味する。
上記スポットが楕円形状である場合、楕円形状の長軸方向は、互いに平行であることが好ましい。そして、楕円形状の長軸方向が、多孔性シートの長手方向、または短手方向に平行であることが好ましい。或いは、多孔性シートが繊維状の材料からなる場合、楕円形状の長手方向が繊維の目の方向と平行であることが好ましい。このように楕円形状の長軸方向が全て平行であり、その長軸方向を、多孔性シートの長手方向、短手方向、または繊維の目の方向と平行にすることにより、表示部の輪郭に微細な凹凸(ギザギザ)を形成することが可能となる。
また、スポットが楕円形状である場合、楕円形状の短径に対する長径の比が、1.1〜3.5であることが好ましく、1.1〜3.0であることが更に好ましく、1.1〜2.5であることが特に好ましい。短径に対する長径の比が、1.1〜3.5であると、表示部の輪郭部分の凹凸が微細になり、表示部の視認性が向上する。具体的には、長径が0.14mm程度であり、短径が0.06mm程度であることが好ましい。
次に、本願の第1発明の核酸クロマトグラフィー検査具の製造方法の一実施形態について、以下説明する。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具の製造方法は、上述した核酸クロマトグラフィー検査具の製造方法である。そして、本製造方法は、核酸プローブを含有する複数の液滴を、多孔性シートの表面の垂線に対して傾斜させて、吐出することにより、液滴が多孔性シート上に着滴して形成される複数の非真円形状のスポットであり、隣り合うスポット同士が少なくとも一部において重なっているスポットの集合体を形成する吐出工程と、非真円形状のスポットを乾燥して、核酸プローブを多孔性シートの表面に固定させる乾燥工程と、を含むものである。
吐出工程においては、液滴を、多孔性シートの表面の垂線に対して傾斜させて吐出する。即ち、液滴を多孔性シートに対して斜め方向から吐出し、着滴させることにより、着滴した液滴により形成されるスポットが非真円形状となる。
このように、液滴を多孔性シートに対して傾斜させて吐出し、着滴させることにより、同じ体積の液滴であっても、垂直に吐出した場合と比較して、より広い面積を有するスポットを形成することができる。即ち、より少ない吐出回数で、より広い面積にスポットを形成することができるため、生産効率を向上させることが可能となる。
非真円形状としては、例えば、吐出液滴の、多孔性シートに平行な速度成分に長い形状を有していることが好ましい。具体的には、楕円形状が好ましい。ここで、楕円形状とは、幾何学的に正確な楕円を意味するだけでなく、楕円に近い形状をも含むものとする。例えば、ティアドロップ形状等の一方向に対して左右対称に広がった形状をも含む。
スポットは、隣り合うスポット同士が少なくとも一部において重なるように、液滴が吐出され、着滴したものである。更には、表示部15の全域が、スポットで埋め尽くされるように、液滴が吐出され、着滴したものであることが好ましい。
液滴の1滴当たりの体積としては、30〜350plが好ましく、50〜250plが更に好ましく、75〜150plが特に好ましい。液滴の1滴当たりの体積を上記数値範囲内にすることで、所望の大きさのスポットを形成することが可能となる。
液滴の吐出に際し、傾斜させる角度としては、所望する非真円形状に応じて、適宜変更することが可能である。傾斜角度としては、垂線に対して、45°〜75°が好ましい。例えば、60°とすることができる。例えば、1滴当たりの体積100plの液滴を、多孔性シートの垂線に対して60°傾斜させた方向から吐出することにより、長径が0.14mm、短径が0.06mmの楕円形状のスポットを形成することができる。
また、傾斜させる方向としては、特に制限されず、目的のスポット形状に応じて、適宜変更することができる。例えば、楕円形状の長軸方向が多孔性シートの長手方向に平行なスポットを形成する場合には、液滴の吐出方向を多孔性シートの長手方向に沿って傾ければ良い。また、楕円形状の長軸方向が多孔性シートの短手方向に平行なスポットを形成する場合には、液滴の吐出方向を多孔性シートの短手方向に沿って傾ければ良い。多孔性シートが繊維状の材料からなる場合には、着滴した液滴は、繊維の目に沿って多孔性シートに浸透するため、楕円形状のスポットが形成され易くなる。そのため、繊維状の多孔性シートの繊維の目の方向が予め分かっている場合には、その繊維の目の方向と平行にすることにより、容易に楕円形状のスポットを形成することができる。
上述のような液滴の吐出には、例えば、特開2003−75305号公報に記載の吐出ユニット(日本ガイシ株式会社製GENESHOT(登録商標)スポッター)を使用することができる。具体的に、上述のような液滴の吐出は、上記吐出ユニットを、多孔性シートの表面の垂線に対して傾斜させた状態で、液滴を吐出することにより実現することが可能である。
吐出ユニットは、核酸クロマトグラフィー検査具の短手方向に移動させながら、液滴を連続して吐出させることが好ましい。即ち、表示部15が延びる方向に沿って吐出ユニットを移動させることが好ましい。このように吐出ユニットを移動させながら、液滴を連続して吐出させることにより、1回の移動で多数の液滴を吐出させることが可能となる。結果、作業効率を向上させることができる。
吐出工程においては、1つのスポットが乾燥した後に、そのスポットに隣接するスポットを形成するための液滴を吐出することが好ましい。このように、隣接するスポットが乾燥してから、次のスポットを形成することにより、完成する表示部の滲みや色むらを抑制することが可能となる。これを実現する具体的な方法としては、スポット1つ分以上の間隔を隔てて、先ずは1列のスポットを形成した後、この列に形成された2つの隣接するスポットの間に、更に液滴を吐出してスポットを形成する方法を挙げることができる。
また、第1の列を形成した後、1列以上の間隔を隔てて第2の列を形成し、その後、第1の列と第2の列との間に、更に第3の列を形成することによって、完成する表示部の滲みや色むらを抑制することが可能となる。例えば、図2に示されているように、表示部が、幅方向にその一部において重なって、等間隔に並んだ6列のラインy1〜y6により形成されている場合、y1、y2、y3、y4、y5、y6の順にラインを形成した場合、y1とy2、y2とy3のように、隣接する2本のラインは、その一部が重なっているため、滲みや色むらが生じやすい。そこで、例えば、y1、y4、y2、y5、y3、y6や、y1、y3、y5、y2、y4、y6の順でラインを形成することにより、隣接するラインを連続して形成することがないため、滲み等に起因するライン幅の誤差を低減するとともに、色むらを抑制することが可能となる。
本実施形態において製造される核酸クロマトグラフィー検査具は、上述の吐出工程において、スポットの集合体を形成した後、スポットを乾燥して、核酸プローブを多孔性シートに固定させる乾燥工程を経ることにより、完成する。
乾燥させる際の条件は、特に限定されるものではなく、例えば、50℃で30分間等とすることができる。
本実施形態においては、幅が多孔性シートの長手方向の長さであり、多孔性シートの短手方向に長い長方形の多孔性の原シートに表示部を形成した後、当該多孔性の原シート多孔性シートの短手方向の長さ(幅)に切断しても良い。このような方法により、表示部を形成することにより、吐出ユニットの移動を最小限に抑えつつ、多数のスポットを一度の移動で形成することが可能となるため、作業効率が向上する。また、上記多孔性の原シートを、バッキング部材の原シートに貼り付けた複合シートとして、表示部を形成した後、切断することによっても、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具を作製することができる。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10は、ニトロセルロース、セルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロン、PVDFなどから作られた、無数の細孔を有するシートを用いることが可能である。中でも、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロンなど、繊維状の材料から作られた多孔性シートが好ましい。このような、繊維状の材料から作られたシートは、液滴が着滴した場合、スポットが繊維の目の方向に伸張し易く、楕円形状等の非真円形状のスポットが形成され易い。
図3A,3Bは、図1Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具1aの一使用態様を示す模式図である。なお、図3Aが図1Aと同じ方向から観た正面図、図3Bが図1Bと同じ方向から観た側面図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aについては、例えば、テストチューブ50内に入っている液体の試料55の中に、核酸クロマトグラフィー検査具1aの先端部45を浸して使用することができる。こうして先端部45を試料55の中に浸しておくと、試料55が毛細管現象によって多孔性シート10内を展開して、もう一方の先端部(吸収パッド40が設けられている先端部)まで送られていく。このとき、試料55内に標的核酸が含まれていると、この標的核酸が表示部15に固定されている核酸プローブによって捕獲され、その結果、標的核酸を標識する色素によって表示部15が発色するようになる(図3A,3B中の表示部15a,15bを参照)。
図3Aに示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、検出面13が2本の位置マーカー14a,14bによって長手方向Yに沿って3つの区画に仕切られており、これら3つの区画に表示部15a〜15cが1つずつ設けられている。そして、表示部15a〜15cには、それぞれ異なる種類の標的核酸(異なる塩基配列の標的核酸)を捕獲するための核酸プローブが固定されている。例えば、表示部15aにアレルギー疾患のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、表示部15bに腫瘍マーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、および表示部15cにウィルス感染のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブを固定しておくと、一度の検査で上述した3種の疾患を患っているのか否かを判定することが可能となる。これを図3A,3Bに示されている例に当てはめて考えると、図3A,3B中の試料55が採取された患者については、表示部15a、15bで発色が観察され、表示部15cで発色が観察されないので、アレルギー疾患および腫瘍を患っている一方で、ウィルス疾患を患っていないと判定されることになる。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、表示部15a〜15cは、長手方向Yと直交する幅方向Xに沿って直線状に延びている。なお、本実施形態では、表示部15は、多孔性シート10の幅方向Xに沿って直線状に延びている必要はなく、試料55が多孔性シート10内を展開していく過程で、試料55が表示部15を横断していくように設けられているものであればよい。表示部15については、例えば、長手方向Yに対して45度で交わる角度で延びる帯形状や、蛇行した帯形状などの任意の形状を適用することができる。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、多孔性シート10の一部と接触し、多孔性シート10を展開してきた試料55を吸収する吸収パッド40が設けられている。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aのように吸収パッド40が設けられている場合には、吸収パッド40が多孔性シート10を展開してきた試料55を吸収、保持することが可能となるので、多孔性シート10内に展開させる試料55の液量を増加させることが可能となり、ひいては、核酸クロマトグラフィー検査具1aにアプライされる標的核酸の量も増加させることが可能となる。その結果として、表示部15に捕獲される標的核酸の量も増加し、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになるのでよい。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、試料55が多孔性シート10内を展開している際に、標的核酸の全部または一部が一本鎖のポリヌクレオチド構造を有するように調製しておき、また、核酸プローブも標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造(標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド)を少なくとも一部に有するものを用いる。こうした標的核酸と核酸プローブを用いると、標的核酸が表示部15に到達したときに、標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と、核酸プローブの一本鎖ポリヌクレオチド構造とがハイブリダイズ(二本鎖形成)し、標的核酸が核酸プローブを介して表示部15に固定される。なお、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具1aでは、核酸プローブについては、標的核酸の有する一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造を有するものであれば、DNAプローブ、RNAプローブ、あるいはモルフォリノアンチセンスオリゴなど、特に制限はされない。
また、標的核酸についても、一本鎖DNA、端部が一本鎖構造とされた二本鎖DNA、RNAなどを適用することが可能である。標的核酸の標識についても通常用い得る方法を適用すればよい。PCR法を用いて標的核酸を調製する場合には、ポリメラーゼ反応の基質となるdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)のうちの少なくとも1種に予め標識したものを用いてPCR産物を直接的に標識する手法や、無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法を用いることができる。無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法としては、例えば、PCR産物の両端が特定の塩基配列の一本鎖ポリヌクレオチド構造となるように改変したPCRプライマーを用い、この改変型のPCRプライマーを用いて得られたPCR産物の一本鎖ポリヌクレオチド構造に対して、これと相補的な塩基配列を有する標識された一本鎖ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、標的核酸を標識する方法を挙げることができる。
2.第2発明:
図4Aは、本願の第2発明の核酸クロマトグラフィー検査具の一実施形態を示す正面図である。図4Bは、図4Aに示されている白抜き矢印VLの方向(側方)から観察した、核酸クロマトグラフィー検査具101aの側面図である。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aは、細長形状の多孔性シート110と、バッキング部材120とを備えている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、吸収パッド140を備えている。
まず、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aにおいて、多孔性シート110の表面には、標的核酸を検出した時に表示が現れる検出面113が設けられている。この検出面113内には表示部115が設けられている。表示部115は、多孔性シート110の長手方向Yと交わる角度に延びる、帯状の領域であり、この帯状の領域内に標的核酸を捕獲するための核酸プローブが固定されている。さらに、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110がバッキング部材120の貼付面に貼り付けられている。
図5は、図4A中の枠β部分の拡大図である。図5中、表示部115cの幅L1と、隣り合う2つの表示部115c,115eとの間の距離L2とは、L2/L1の値が0.2〜2の範囲であるという関係を有している。そして、多孔性シートの短手方向の長さ(以下、「多孔性シートの幅」ともいう)L3は、2〜5mmである。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具は、表示部115の幅L1と、隣り合う2つの表示部115,115の間の距離L2の比L2/L1が、0.2〜2の範囲にあるため、複数の標的核酸を同時に検出する際、隣り合う表示部115,115を明確に判別でき、且つ、どのプローブを固定させた表示部115が発色したか、明確に判定することが可能である。L2/L1が0.2未満であると、隣り合う表示部115,115の間の距離L2が、表示部の幅L1に対して小さくなる、即ち、表示部115の間隔が密になる。そのため、隣り合う表示部115,115が両方とも発色した場合、両表示部が1本のラインに見えてしまい、いずれか一方の表示部が発色しているのか、両法の表示部が発色しているのか、判別し難い場合がある。一方、L2/L1が2超であると、隣り合う表示部115,115の間の距離L2が、表示部の幅L1に対して大きくなる、即ち、表示部115の間隔がまばらになる。そのため、2つの発色した表示部の間に発色していない表示部が存在しているか否かが容易に判別できなくなる可能性がある。
また、多孔性シートの短手方向の長さL3が2〜5mmであるため、核酸クロマトグラフィー検査具の上面か側面かを一目で判別することが可能であり、且つ、試料が多孔性シート内を均等に展開して行くことが可能である。多孔性シートの短手方向の長さL3が2mm未満であると、核酸クロマトグラフィー検査具自体の厚さとの差が小さくなる。そのため、一見しただけでは、検査具の上面、両側面、下面の区別が付き難くなり、上面にのみ表示される検出ラインを確認することが困難な場合がある。一方、多孔性シートの短手方向の長さL3が5mm超であると、多孔性シート内を試料が均等に浸透して行かず、表示部115内で、発色の濃淡にバラツキが生じることがあったり、表示部115が不鮮明となってしまうことがある。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aにおいて、隣り合う2つの表示部の間の距離L2は、0.1〜1mmであることが好ましく、0.3〜0.9mmであることが更に好ましく、0.4〜0.8mmであることが特に好ましい。L2が0.1mm未満であると、隣り合う2つの表示部が両方とも着色した場合、表示部が1本のラインに見えるため、2つの表示部が着色していることを確認することが困難となる場合がある。L2が1mm超であると、隣り合う2つの表示部が両方とも着色した場合、隣り合う2つの表示部が着色しているのか、それとも、1つ以上の表示部を挟んだ2本の表示部が着色しているのかの判定が困難となる場合がある。また、多数の標的核酸について同時に検査する場合、検査する標的核酸の数に応じて、通常、核酸プローブの種類も増加する。そのため、各種類の核酸プローブを固着させた表示部もそれぞれ必要となるため、L2が長いと、多孔性シート上に形成することが可能な表示部の数が制限されてしまう可能性がある。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110は、ニトロセルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロンなどから作られた、無数の細孔を有するシートを用いることが可能である。
図6A,6Bは、図4Aに示されている核酸クロマトグラフィー検査具101aの一使用態様を示す模式図である。なお、図6Aが図4Aと同じ方向から観た正面図、図6Bが図4Bと同じ方向から観た側面図である。図示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aについては、例えば、テストチューブ150内に入っている液体の試料155の中に、核酸クロマトグラフィー検査具101aの先端部145を浸して使用することができる。こうして先端部145を試料155の中に浸しておくと、試料155が毛細管現象によって多孔性シート110内を展開して、もう一方の先端部(吸収パッド140が設けられている先端部)まで送られていく。このとき、試料155内に標的核酸が含まれていると、この標的核酸が表示部115に固定されている核酸プローブによって捕獲され、その結果、標的核酸を標識する色素によって表示部115が発色するようになる(図6A中の表示部115cを参照)。
図4Aに示されているように、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、検出面113が3本の位置マーカー114a〜114cによって長手方向Yに沿って位置マーカー114cを下端として3つの区画に仕切られており、これら3つの区画に表示部115が3本ずつ設けられている。そして、各表示部115には、それぞれ異なる種類の標的核酸(異なる塩基配列の標的核酸)を捕獲するための核酸プローブが固定されている。例えば、表示部115cにアレルギー疾患のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、表示部115dに腫瘍マーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブ、および表示部115eにウィルス感染のマーカーとなる標的核酸に対する核酸プローブを固定しておくと、一度の検査で上述した3種の疾患を患っているのか否かを判定することが可能となる。これを図6A,6Bに示されている例に当てはめて考えると、図6A,6B中の試料155が採取された患者については、表示部115cで発色が観察され、表示部115d,115eで発色が観察されないので、アレルギー疾患を患っている一方で、腫瘍およびウィルス疾患を患っていないと判定されることになる。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、各表示部115は、長手方向Yと直交する幅方向Xに沿って直線状に延びている。なお、本実施形態では、表示部115は、多孔性シート110の幅方向Xに沿って直線状に延びている必要はなく、試料155が多孔性シート110内を展開していく過程で、試料155が表示部115を横断していくように設けられているものであればよい。表示部115については、例えば、長手方向Yに対して45度で交わる角度で延びる帯形状や、蛇行した帯形状などの任意の形状を適用することができる。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、多孔性シート110の一部と接触し、多孔性シート110を展開してきた試料155を吸収する吸収パッド140が設けられている。本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aのように吸収パッド140が設けられている場合には、吸収パッド140が多孔性シート110を展開してきた試料155を吸収、保持することが可能となるので、多孔性シート110内に展開させる試料155の液量を増加させることが可能となり、ひいては、核酸クロマトグラフィー検査具101aにアプライされる標的核酸の量も増加させることが可能となる。その結果として、表示部115に捕獲される標的核酸の量も増加し、標的核酸の検出を示すシグナル(発色)が濃く現れるようになるのでよい。
本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、試料155が多孔性シート110内を展開している際に、標的核酸の全部または一部が一本鎖のポリヌクレオチド構造を有するように調製しておき、また、核酸プローブも標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造(標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド)を少なくとも一部に有するものを用いる。こうした標的核酸と核酸プローブを用いると、標的核酸が表示部115に到達したときに、標的核酸の一本鎖ポリヌクレオチド構造と、核酸プローブの一本鎖ポリヌクレオチド構造とがハイブリダイズ(二本鎖形成)し、標的核酸が核酸プローブを介して表示部115に固定される。なお、本実施形態の核酸クロマトグラフィー検査具101aでは、核酸プローブについては、標的核酸の有する一本鎖ポリヌクレオチド構造と特異的にハイブリダイズ可能な一本鎖ポリヌクレオチド構造を有するものであれば、DNAプローブ、RNAプローブ、あるいはモルフォリノアンチセンスオリゴなど、特に制限はされない。
また、標的核酸についても、一本鎖DNA、端部が一本鎖構造とされた二本鎖DNA、RNAなどを適用することが可能である。標的核酸の標識についても通常用い得る方法を適用すればよい。PCR法を用いて標的核酸を調製する場合には、ポリメラーゼ反応の基質となるdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)のうちの少なくとも1種に予め標識したものを用いてPCR産物を直接的に標識する手法や、無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法を用いることができる。無標識のPCR産物(二本鎖DNA)に事後的に標識を付加する手法としては、例えば、PCR産物の両端が特定の塩基配列の一本鎖ポリヌクレオチド構造となるように改変したPCRプライマーを用い、この改変型のPCRプライマーを用いて得られたPCR産物の一本鎖ポリヌクレオチド構造に対して、これと相補的な塩基配列を有する標識された一本鎖ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、標的核酸を標識する方法を挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(参考例1,2および比較例1)
まず、第1の発明に関する参考例1,2および比較例1について説明する。
[核酸クロマトグラフィー検査具の作製]
メルクミリポア製Hi−Flow Plus メンブレンシート(以下、「多孔性シート」と称する)(45mm×300mm)をメルクミリポア製ラミネート加工メンブレンカード(以下、「バッキング部材」と称する)(60mm×300mm)に貼り付けて、複合シートを作製した。続いて、下記の手順1〜7に従い、複合シートの多孔性シートの表面に、表1に示す塩基配列からなるキャプチャーDNAプローブ溶液を、日本ガイシ株式会社製GENESHOT(登録商標)スポッターを用いてスポットし、キャプチャーDNAプローブを多孔性シートの表面に固定化し、次いで、複合シートを細長形状に切断する加工を行うことにより、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップを得た。なお、GENESHOT(登録商標)スポッターは、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた装置である。
[手順1:キャプチャーDNAプローブ溶液の調製]
9種類のキャプチャーDNAプローブを表1の塩基配列に従って合成し、これらのキャプチャーDNAプローブをTris−EDTA bufferで溶解した水溶液を、SSC緩衝液およびブロモフェノールブルーと混合して、ブロモフェノールブルー0.05wt%、キャプチャーDNAプローブ濃度2〜60μMの溶液を調製した。
[手順2:スポット条件の検討]
複合シートの多孔性シートの表面にキャプチャーDNA溶液をスポットするのに先立ち、検査用のシート上に検査スポットを行うことにより、スポット条件の検討を行った。具体的には、GENESHOT(登録商標)スポッターの吐出ユニット内に配置した液体注入部に、キャプチャーDNAプローブ溶液を注入し、吐出ユニットから検査用シートに向けてキャプチャーDNAプローブ溶液を吐出して検査用のシート上に検査スポットを行った。品質の検査は、検査用シートに対して、(i)スポットが形成されないことはないか、(ii)スポットがいびつな形状ではないか、(iii)スポット径が設計値から10%以上ずれていないか、(iv)不要なスポット(一般に「サテライト」と称されているスポット)が発生していないか、(v)スポット位置がスポット径の3分の1以上ずれていないか、という5項目について実施した。キャプチャーDNAプローブ溶液はブロモフェノールブルーによって青色に着色されているので、上記(i)〜(v)の項目については検査用のシート上のスポットを目視で観察することにより検査可能であった。
上述の品質の検査の結果、検査スポットで不良が検出されたときは、吐出ユニット内に配置された圧電/電歪素子の駆動信号を調整して、検査スポットを再度行った。駆動信号の調整は電圧値、所定電圧までの上昇時間、所定電圧値のキープ時間、電圧立ち下げ時間の変更により行った。それでもなお不良が検出されるときは、真空吸引によって吐出ユニットからキャプチャーDNAプローブ溶液を抜き取り、液体注入部にキャプチャーDNAプローブ溶液を再度注入した後に、検査スポットを行った。以上の操作を、不良スポットが検出されなくなるまで繰り返した。
[手順3:キャプチャーDNAプローブ溶液のスポット]
上述の手順2の条件検討後、下記のスポット方法1〜3のいずれかの方法にてスポットを行うことにより、スポット形状が楕円形状であり、その長手方向が多孔性シートの長手方向に平行である表示部(参考例1)、スポット形状が楕円形状であり、その長手方向が多孔性シートの短手方向に平行である表示部(参考例2)、スポット形状が真円形状である表示部(比較例1)をそれぞれ有する核酸クロマトグラフィー検査具を作製した。
[スポット方法1(参考例1)]
不良スポットが検出されなくなったことを確認した後、以下の方法でキャプチャーDNAプローブを、複合シートの多孔性シートの表面にスポットした。本スポット方法1では、吐出ユニットを、多孔性シートの長手方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に対して、30°垂線側に傾けた角度(垂線に対する傾斜角度:60°)から多孔性シート上に液滴を吐出するように配置して、全てのスポットを行った。
まず、1種類のキャプチャーDNAプローブ溶液につき、スポットのピッチを横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.04mm、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に0.08mmで、多孔性シートの表面でスポットが横方向、縦方向に一直線上に並ぶように、吐出ユニットと多孔性シートが非接触の状態でスポットを行った。着弾した後のスポット形状は、短径(幅方向X)が0.06mm、長径(長手方向Y)が0.14mmの楕円形状であった。具体的には、多孔性シート上で、吐出ユニットを複合シートの横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に一直線上に移動させ、終点まで到達したら、複合シートを縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に1列分または複数列分だけ移動させ、再び複合シートの横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に一直線上に移動させるという手順にて、複合シートの多孔性シートの表面に横方向300mm、縦方向0.5mmのライン(完成品の「表示部」に対応)の形成を行った。
吐出ユニットから吐出されたキャプチャーDNAプローブのスポットが着弾し、当該スポットが乾燥する前に、隣接する次のスポットが着弾して、両者が接触すると、滲みや色むらが発生する恐れがある。そこで、まず、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.08mmのピッチで前半のスポットを行い、続いて、スポットとスポットとの隙間にキャプチャーDNAプローブのスポットを着弾させる態様で、0.08mmのピッチにて後半のスポットを行った。このように、前半、後半に分けてスポットをすることにより、0.04mmのピッチのスポット列を形成すると、滲みや色むらを防ぐことが可能となった。
上述の長さ300mm×幅0.5mmのラインは、図2に示されているように、ライン縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に並ぶ、y1〜y6のスポット列により形成されている。y1、y2、y3、y4、y5、y6の順にスポット列を形成することにより、長さ300mm×幅0.5mmのラインを形成することができるが、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまうと、この重なった部分で滲みや色むらが発生する恐れがある。そこで、y1、y6、y2、y5、y3、y4の順でスポットを行った。これにより、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまう状況を回避することができ、その結果、ライン幅が0.45mm〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)の範囲内に収まるように、滲みの発生を抑制可能であった。なお、y1、y4、y2、y5、y3、y6の順、もしくは、y1、y3、y5、y2、y4、y6の順のように隣接するスポット列を連続して形成しないようにすることにより、ライン幅が0.45mm〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)の範囲内に収まるのに加えて、ライン内の色むらを防ぐことが可能であった。
最終的に、複合シートの多孔性シートの表面に、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]のピッチが1.2mmにて、9本の、長さ300mm×幅0.5mmのライン(ライン幅の設計値からの誤差が0.1mm以下)を形成した。これらの9本のラインは、それぞれ1種類ずつ異なるキャプチャーDNAプローブ(表1中のプローブ番号1〜9)から形成した。すなわち、9種類のキャプチャーDNAプローブ(プローブ番号1〜9)のそれぞれを多孔性シートの表面の異なる場所に固定した。
[スポット方法2(参考例2)]
吐出ユニットを、多孔性シートの短手方向[完成品の「幅方向X」に対応]に対して30°垂線側に傾けた角度(垂線に対する傾斜角度:60°)から多孔性シート上に液滴を吐出するように配置して、全てのスポットを行ったこと以外は、上述のスポット方法1と同様の方法によりラインを形成した。なお、スポットのピッチは、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.08mm、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に0.04mmとし、着弾した後のスポット形状は、長径(幅方向X)が0.14mm、短径(長手方向Y)が0.06mmの楕円形状であった。また、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.08mmのピッチでスポットを形成するために、まず、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.16mmのピッチで前半のスポットを行い、続いて前半のスポットで形成されたスポットとスポットとの隙間にキャプチャーDNAプローブのスポットを着弾させる態様で、0.16mmのピッチにて後半のスポットを行った。
[スポット方法3(比較例1)]
吐出ユニットを、多孔性シートの垂線方向から液滴を多孔性シート上に吐出するように配置して、全てのスポットを行ったこと以外は、上述のスポット方法1と同様の方法によりラインを形成した。なお、スポットのピッチは、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]ともに0.05mmとし、着弾した後のスポット形状は、直径が0.07〜0.1mmの真円であった。また、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.05mmのピッチでスポットを形成するために、まず、横方向[完成品の「幅方向X」に対応]に0.1mmのピッチで前半のスポットを行い、続いて前半のスポットで形成されたスポットとスポットとの隙間にキャプチャーDNAプローブのスポットを着弾させる態様で、0.1mmのピッチにて後半のスポットを行った。
得られたラインは、図7に示されているように、ライン縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]に並ぶ、y1〜y10のスポット列により形成されている。y1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10の順にスポット列を形成することにより、長さ300mm×幅0.5mmのラインを形成することができるが、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまうと、この重なった部分で滲みや色むらが発生する恐れがある。そこで、y1、y10、y2、y9、y3、y8、y4、y7、y5、y6の順でスポットを行った。これにより、先のスポット列が乾燥する前に、後続のスポット列が重なってしまう状況を回避することができ、その結果、ライン幅が0.45mm〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)の範囲内に収まるように、滲みの発生を抑制可能であった。さらに、y1、y6、y2、y7、y3、y8、y4、y9、y5、y10の順、もしくは、y1、y3、y5、y7、y9、y2、y4、y6、y8、y10の順のように隣接するスポット列を連続して形成しないようにすることにより、ライン幅が0.45mm〜0.55mm(設計値0.50mm±誤差0.05mm)の範囲内に収まるのに加えて、ライン内の色むらを防ぐことが可能であった。
[手順4:位置マーカーラインのスポット]
上述のスポット方法1〜3において形成する表示部の位置の判定を容易にするために、顔料系マゼンタインクを含んだ液体をスポットすることにより、位置マーカーのラインを形成した。なお、位置マーカーのラインは、上述のスポット方法1〜3のキャプチャーDNAプローブ溶液のスポットと、それぞれ同様の方法でスポットを行うことにより形成した。その結果、図8(a)に示すように、9本のキャプチャーDNAプローブのライン[ブロモフェノールブルー(BPB)で着色]と、3本の位置マーカーのライン(顔料系マゼンタインクで着色)とがストライプ状に配置された複合シートを得た。
[手順5:キャプチャーDNAの固定化]
手順4を経てキャプチャーDNAプローブのライン、位置マーカーのラインの形成が完了したのち、複合シートを50℃で30分間加熱することにより、キャプチャーDNAプローブを多孔性シートの表面に固定し、位置マーカーの顔料系マゼンタインクを多孔性シートの表面に固着した。
[手順6:検査]
上述の手順2で行った検査と同様の項目[(i)〜(v)]に関して、複合シートの多孔性シートに対して検査を行った。
[手順7:加工]
メルクミリポア製吸収パッド(20mm×300mm)を、多孔性シートに5mm程度被るように装着した。吸収パッドを固定するために、粘着テープ(25mm×300mm)を吸収パッドの上面部に貼った。続いて、この複合シートについて裁断機もしくはギロチン式のカッターを用いて切断を行い、幅3.5mm、長さ60mmのストリップ(核酸クロマトグラフィー検査具)を85個得た。
[評価試験]
実施例1〜7、参考例1,2、比較例1,2の核酸クロマトグラフィー検査具のストリップについて、下記の手順8〜10に従った、クロマトグラフィー法により評価を行った。
[手順8:移動相の準備]
プローブ番号1の塩基配列に相補的な塩基配列を有するサンプルDNA(なお、アミノ基で修飾)を、カルボキシル化ラテックス粒子(色:青色、平均粒子径:400nm)に固定した。このサンプルDNAを固定したラテックス粒子を滅菌水で分散し、移動相とした。
[手順9:展開工程]
0.2mlマイクロチューブに、移動相50μlを分注し、核酸クロマトグラフィー検査具のストリップの先端を移動相に浸積した。浸漬直後から、移動相が毛細管現象により、多孔性シート内を上方(吸収パッドが設けられているもう一方の先端の方向)に向かって移動した[図8(a)〜(d)を参照]。ブロモフェノールブルー(BPB)は、多孔性シートに固定されていないため、移動相により洗い流された。こうして洗い流されることで、ブロモフェノールブルーによるラインは消失した[図8(a)〜(d)中、焼失したラインの位置を星印(*)で示す]。こうして移動相が上方に移動していくにつれて、ブロモフェノールブルーによる9本のラインが順次消失していくので、移動相が多孔性シート内のどこの位置まで到達しているのかを容易に確認することが可能であった。なお、位置マーカーの顔料系マゼンタインクは、メンブレンシート(多孔性シート)に固着しており、移動相に不溶であるため、移動相によって洗い流されなかった。
[手順10:検出工程]
移動相中のサンプルDNAは、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブと相補的な塩基配列を有しているため、ハイブリダイゼーション反応によって、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブに特異的に結合する。これにより、サンプルDNAを固定したラテックス粒子が、プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブに捕捉される。プローブ番号1のキャプチャーDNAプローブが固定されている表示部では、サンプルDNAとプローブ番号1のキャプチャーDNAプローブとのハイブリダイゼーション反応の進行に伴い、ラテックス粒子が蓄積、凝集し、発色した[図8(d)を参照]。移動相への浸漬から約20分で、移動相がすべて吸収パッドに移動して反応が終了した。以上の手順9、手順10で述べたように、ブルーのラインの色が移動相の展開(上昇)とともに一旦消失した後[図8(c)を参照]、プローブ番号1の表示部がラテックス粒子の蓄積、凝集により発色した[図8(d)を参照]。
以上の通り、参考例1、2、および比較例1の核酸クロマトグラフィー検査具は、いずれもプローブ番号1の表示部が発色した。即ち、吐出ユニットの角度を変更して、スポット形状を真円以外の形状、例えば、楕円形状とすることにより、スポットピッチを変更して吐出ユニットの移動回数を減らすことができ、生産効率を向上させることができた。
(実施例1〜7、比較例2〜5)
次に、第2の発明に関する実施例1〜7、および比較例2〜5について説明する。
下記のように、手順3のスポットにおいて、ライン幅およびライン間の間隔を変更したこと、および、手順7の加工において、ストリップ幅を変更したこと以外は、上述の比較例1の核酸クロマトグラフィー検査具と同様の方法により、実施例1〜7、および比較例2〜5の核酸クロマトグラフィー検査具を作製した。
具体的には、実施例1〜4、および比較例2、3用の核酸クロマトグラフィー検査具では、複合シートの多孔性シートの表面に、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]のピッチが1.2mmにて、9本の、長さ300mm×幅0.5mmのライン(ライン幅の設計値からの誤差が0.1mm以下)を形成した。即ち、ライン幅L1が0.5mmであり、ライン間の距離L2が0.7mmとなるように、9本のラインを形成した。これらの9本のラインは、それぞれ1種類ずつ異なるキャプチャーDNAプローブ(表1中のプローブ番号1〜9)から形成した。すなわち、9種類のキャプチャーDNAプローブ(プローブ番号1〜9)のそれぞれを多孔性シートの表面の異なる場所に固定した。
また、手順7の加工工程においては、表2に示すストリップ幅となるように切断を行った。これら実施例1〜4、および比較例2、3用の核酸クロマトグラフィー検査具について、上述の手順8〜10のように、クロマトグラフィー法により評価を行った。評価結果を表2に示す。
(視認性)
表2に示されているように、実施例1〜4、比較例3のように、ストリップ幅が2mm以上の場合には、検出ラインを容易に確認することができた[評価結果:良、表2中では丸印(○)で表示]。一方、比較例2のように、ストリップ幅が2mm未満の場合には、ストリップ幅と厚さの差が小さくなってしまうため、検出ラインを確認するのが困難となる場合があった[評価結果:不可、表2中ではクロス印(×)で表示]。
(移動相の展開性)
表2に示されているように、実施例1〜4、比較例2のように、ストリップ幅が5mm以下の場合には、移動相が均等に展開し、まだら模様となっていない明瞭な検出ラインが確認できた[評価結果:良、表2中では丸印(○)で表示]。一方、比較例3のように、ストリップ幅が5mm超の場合には、移動相が均等に展開せず、まだら模様の検出ラインとなった、即ち、検出ラインの内部で発色の濃淡が認められた[評価結果:不可、表2中ではクロス印(×)で表示]。
更に、実施例5〜7および比較例4、5用の核酸クロマトグラフィー検査具を、以下のようにして作製した。
上述の手順3において9種類のラインを形成するパターンを次のようにしたこと以外は、実施例1〜4、比較例3、4用の核酸クロマトグラフィー検査具の作製方法における手順1〜7の通りに、実施例5〜7および比較例4、5用の核酸クロマトグラフィー検査具を作製した。
複合シートの多孔性シートの表面に、縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]のライン幅L1が0.5mmであり、同縦方向[完成品の「長手方向Y」に対応]におけるライン間距離(隣り合う2つのラインの間の距離)L2が0mm(L2/L1が0:比較例4)、L1が0.5mmであり、L2が0.1mm(L2/L1が0.2:実施例5)、L1が0.5mmであり、L2が0.7mm(L2/L1が1.4:実施例6)、L1が0.5mmであり、L2が1mm(L2/L1が2:実施例7)、L1が0.5mmであり、L2が1.25mm(L2/L1が2.5:比較例5)となるように、表示部(ライン)を形成した。
上記のように作製した実施例5〜7、および比較例4、5用の核酸クロマトグラフィー検査具について、手順8の移動相の準備において、プローブ番号1の塩基配列に相補的な塩基配列を有するサンプルDNAに加えて、プローブ番号2の塩基配列に相補的な塩基配列を有するサンプルDNAを更に含む移動相としたこと以外は、実施例5〜7および比較例4、5用の核酸クロマトグラフィー検査具についての場合と同様に、手順8〜10の評価を行った。評価結果を表3に示す。
(同時検出時の視認性)
表3に示されているように、実施例5〜7のように、L2/L1が0.2〜2の範囲にある場合には、プローブ番号1のラインとプローブ番号2のラインが発色していることが容易に確認でき[評価結果:良、表3中では丸印(○)で表示]、同時検出時の視認性に優れたストリップであることが確認できた。比較例4のように、L2/L1が0.2未満である場合、プローブ番号1のラインとプローブ番号2のラインが1本のラインであるように見えるため、2本のラインが発色したことを確認することが困難であった。また、比較例5のように、L2/L1が2超である場合には、プローブ番号1のラインとプローブ番号2のラインとの間に発色していない1本のラインが存在するのか否か、即ち、2本のラインが連続して発色しているのか否かの判定が困難であった[評価結果:不可、表3中ではクロス印(×)で表示]。