(実施例) 図1ないし図19は、本発明に係る美容器具と、美容器具用の載置スタンドの実施例を示している。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2、図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2および図3において美容器具は、グリップを兼ねる縦長の本体ケース(本体部)1と、本体ケース1の前面上部に突設される温熱ヘッド2と、本体ケース1の後面上部に膨出される冷熱部3とを備えている。本体ケース1の前面の下部にはハート形のスイッチパネル4が設けられて、その表面に電源投入用の電源ボタン部5と、運転モードを切換えるモードボタン部6と、印加電圧の強度を切換える切換えボタン部7とが設けてある。また、スイッチパネル4の上側のケース面には、運転モードの違いに応じて点灯される4個のモード表示灯(LED)8と、電流刺激の強度の違いに応じて点灯される3個の強度表示灯(LED)9が設けてある。本体ケース1は、前後に分割形成された前ケース1aと後ケース1bとで構成してあり、図9に示すように、前後ケース1a・1bを3個のビス(第1締結具)10で締結して縦長の中空ケース状に構成してある。
本体ケース1の前面上部には、温熱ヘッド2を装着するための円形の装着座13が凹み形成してあり(図4参照)、本体ケース1の後面上部には、冷熱部3をケース外面へ露出させるための円形の装着窓14が開口してある。また、本体ケース1の下端には、給電ジャック15を接続するためのソケット16が設けてある。本体ケース1の後面下部には、放熱板104を兼ねる上下に長い卵形のグリップ電極11が露出させてある。前ケース1aの内面には制御基板17が配置してあり、制御基板17には、温熱ヘッド2、冷熱部3、後述するバイブレーター50などの作動状態を制御する制御回路が実装され、さらに、先の各ボタン部5・6・7に対応するスイッチ18、および各表示灯8・9などが実装してある。
(温熱ヘッドの構造)
図1、図5、図6に示すように、温熱ヘッド2は、本体ケース1に固定される筒状のヘッドケース20と、ヘッドケース20の外開口を塞ぐ伝熱体21と、ヘッドケース20の内部に設けた発熱構造などで構成する。プラスチック成形品からなるヘッドケース20は、ベルマウス状に形成される主筒壁部22と、主筒壁部22に連続して外向きに突出する丸筒状の外筒壁部23とを一体に備えており、主筒壁部22の内開口側の開口径dに比べて、外筒壁部23の外開口側の開口径Dが大きく設定してある。つまり、ヘッドケース20の筒断面積が、主筒壁部22において外開口の側から、本体ケース1に対する装着基部24の側へ向かって徐々に小さくなるように設定してある。主筒壁部22の内端の装着基部24を本体ケース1の装着座13に嵌込んで締結することにより、ヘッドケース20が本体ケース1と一体化してある。外筒壁部23の外面は伝熱体21用の取付部25になっており、取付部25の基端部分にフランジ(キャップ装着部)26が張り出してある。ベルマウス状の主筒壁部22に関して、ベルマウス状とはテーパー筒を含む概念である。
伝熱体21は、チタン板材を素材とするキャップ状のプレス成形品からなり、その伝熱面21aに円形の液保持部29の一群が凹み形成してある。この実施例では、18個の液保持部29をサークル状に配置して、化粧水などの美容用液を各液保持部29で保持できるようにした。伝熱体21は、その筒状の周囲壁が外筒壁部23の外面に外嵌装着されて、フランジ26に固定した保持リング30で分離不能に固定してある。美容用液がヘッドケース20の内部に浸入するのを防ぐために、外筒壁部23に嵌込み装着したOリング31で、伝熱体21の周囲壁と外筒壁部23との隙間をシールしている。
伝熱体21は肌電極(電極部)32を兼ねており、先のグリップ電極11と協同して、人体を介して肌面に微弱なパルス電流を作用させ、イオン導入用またはイオン導出用の電流刺激を与える。そのために、伝熱体21は、その内面に押圧されるばね電極65を介して電流調整回路と接続され、さらにグリップ電極11は、その内面に押圧されるばね電極66を介して電流調整回路と接続してある。
発熱構造は、本体ケース1に固定されるヒーターフレーム34と、ヒーターフレーム34の外面に締結されるヒーターホルダー35と、ヒーターホルダー35の外面に装着されるヒーターユニット36と、ヒーターユニット36の外面に固定される弾性シート37などで構成する。ヒーターフレーム34およびヒーターホルダー35はいずれもプラスチック成形品からなる。
ヒーターフレーム34は、円板状に形成される断熱用の面壁38と、面壁38の周囲2個所に設けた脚片39と、脚片39の突端に設けた締結座40とを一体に備えている。ヒーターホルダー35を支持する面壁38の外面側の3個所にはビス座41が外向きに膨出してある。図7に示すように脚片39は、板状であって、円板状の面壁38の周縁より内側に凹ませてあり、その断面は部分円弧状に形成してある。ねじ(締結具)用ボス27は、主筒壁部22の内面に膨出させて形成してあり、その内面の半周が内向きに突出した部分円弧状の断面となっている。組み付け状態において、内向きに突出したねじ用ボス27の部分円弧部の周囲を部分円弧状の脚片39が囲っている。これによりヘッドケース20の、本体ケース1の装着座13への組み付け時において、ヘッドケース20の装着基部24の内面に設けたねじ用ボス27を脚片39で案内させることができ、容易にヘッドケース20を本体ケース1の装着座13に仮り位置決めすることができる。脚片39は、その断面が部分円弧状であるため、軸方向に対して直交方向の曲がりに対する強度が向上し、ヒーターホルダー35およびヒーターユニット36を強固に固定支持することができる。
ヒーターホルダー35は、ヒーターユニット36を支持する中央部分が凹んだ円盤状の取付壁44と、取付壁44のヒーターフレーム34との対向面に設けられる装着部45と、先のビス座41に対応して装着部45の周囲に形成されるねじボス46を一体に備えている。取付壁44の外面には、ヒーターユニット36を収容するヒーター凹部47が凹み形成してある。装着部45はバイブレーター50を収容するために設けてあり、バイブレーター50の周囲を囲む防音壁48と、防音壁48の内面に設けた受リブ49とで構成してある。このように、バイブレーター50は、ヒーターホルダー35とヒーターフレーム34の断熱用の面壁38との間に配置してある。
バイブレーター50は、モーター51と、モーター51の出力軸に固定される偏心錘52とで構成する。モーター51に外嵌したモーターホルダー53を先の防音壁48の内部に装着することにより、バイブレーター50はヒーターホルダー35に固定される。ヒーターフレーム34およびヒーターホルダー35を本体ケースに組付けた状態におけるバイブレーター50は、モーター51の中心軸線が伝熱体21の伝熱面21aと平行になる状態で装着部45に固定されている。そのため、バイブレーター50で起振された振動の主な方向は、伝熱体21の伝熱面21aと直交する向きとなる。つまり、バイブレーター50で起振された振動で伝熱体21の伝熱面21aを、伝熱面21aと直交する向きに振動させて、温熱ヘッド2で美容処理を行なう際に、伝熱体21の伝熱面21aで肌面を叩くようにして振動させることができる。
ヒーターユニット36は円形の面状ヒーター56と、面状ヒーター56を内外から挟む一対の電極板57・58とで構成する。面状ヒーター56はPTCヒーターで構成してある。ヒーター凹部47に収容される電極板58には3個のばね腕59が設けてあり、これらのばね腕59で面状ヒーター56を電極板57に向かって押圧付勢している。外側の電極板57は、その周縁の係止爪60がヒーターホルダー35の取付壁44の周縁に係止されて面状ヒーター56を位置保持しており、係止爪60の爪長さの範囲内で厚み方向へ遊動できる。弾性シート37は熱伝導性に富むシリコーンゴムで形成してあり、外側の電極板57と伝熱体21との間に配置されて、ヒーターユニット36の熱を伝熱体21に伝導し、バイブレーター50で起振された振動を伝熱体21に伝動する。
温熱ヘッド2は次のようにして前ケース1aに組付ける。ヒーターユニット36、弾性シート37、およびバイブレーター50をヒーターホルダー35に組付け、ヒーターフレーム34とヒーターホルダー35とを、ねじボス46にねじ込んだビス(第2締結具)61で締結して、ユニット部品化された発熱構造を得る。この状態で、モーターホルダー53がヒーターホルダー35とヒーターフレーム34とで確りと挟持固定されている(図6参照)。ヘッドケース20の装着基部24を前ケース1aの外面から装着座13に嵌込み固定し、さらにユニット部品化された発熱構造を前ケース1aの内面側からヘッドケース20の内部に挿入し、ヒーターフレーム34の締結座40が装着座13の座壁13aの内面に接合する状態で仮組みする。
次に、締結座40と座壁13aに挿通したビス(第3締結具)63を、ヘッドケース20の内面に設けたねじボス27にねじ込むことにより、ヘッドケース20と座壁13aとヒーターフレーム34の締結座40とを共締め固定する。本体ケース1に固定されたヘッドケース20は、その主筒壁部22の大半の部分が本体ケース1の前方(外面)へ突出して、筒中心軸が斜め上向きに僅かに傾斜している。ヘッドケース20の主筒壁部22と、本体ケース1の装着座13との間は、主筒壁部22の外面に嵌込み装着したOリング62でシールしてある。
上記のように、ヘッドケース20と発熱構造を本体ケース1と一体化した締結状態では、ヒーターフレーム34の面壁38が、ヘッドケース20の主筒壁部22の装着基部24寄りの内面に位置して、ヘッドケース20の内部を内外に区分している。これにより、ヒーターユニット36で加熱された空気が、本体ケース1の側へ流動するのを極力防止できる。つまり、面壁38は加熱空気の移動を阻止する断熱用の区分壁として機能して、ヘッドケース20の内部における熱移動を防止している。
また、先の締結状態では、ヒーターユニット36と弾性シート37が、伝熱体21とヒーターホルダー35の取付壁44とで挟持固定されている。この状態のヒーターユニット36は、弾性シート37を介して伝熱体21の端壁で受け止められて、内側の電極板58のばね腕59が僅かに弾性変形する状態で、ヒーター凹部47の内底に押付けられている。そのため、外側の電極板57の係止爪60は、図6に示すように、ヒーターホルダー35の取付壁44の周縁の後面側から浮離れており、この浮離れた距離の分だけ電極板57は伝熱体21の側へ向かって移動できる余地がある。このように、電極板57を外向きに移動可能に支持するのは、伝熱体21がヒーターユニット36で加熱されて外向きに熱膨張するとき、ヒーターユニット36を伝熱体21の膨張変形に追随して移動させて、伝熱体21に対する熱伝導を的確に行うためである。
上記のように、温熱ヘッド2の内部にヒーターユニット36を設けると、面状ヒーター56の熱が流動して、伝熱体21とヘッドケース20を介して本体ケース1の側へ移動するおそれがある。しかし、主筒壁部22がくびれ部を備えたベルマウス状に形成してあると、ヘッドケース20の筒断面積を、外筒壁部23の外開口の側から装着基部24の側へ向かって徐々に小さくすることができるので、本体ケース1の側へ伝導する熱量を減少することができる。従って、伝熱体21を面状ヒーター56で効率よく加熱することができる。
(冷熱部の構造)
図1、図8において、冷熱部3は、正方形状のペルチェ素子(熱電変換素子)70と、ペルチェ素子70の外面(片面)に配置されて冷熱を出力する冷熱ヘッド71と、ペルチェ素子70の内面(他面)に配置されて温熱を放出する金属製のヒートシンク72などで構成する。ペルチェ素子70は素子用ホルダー73で支持されており、その冷熱面と温熱面のそれぞれに伝熱シート74が貼付けてある。素子用ホルダー73は、円板状の保持壁75と、保持壁75の周囲2個所に連出される締結腕76とを一体に備えたプラスチック成形品からなり、保持壁75の中央にペルチェ素子70を収容するための四角形の保持穴77が形成してある。また、保持壁75のヒートシンク側の板面には、ビス挿通用のボス78が形成してある。伝熱シート74は、先の弾性シート37と同様にシリコーンゴムで形成してある。
冷熱ヘッド71は、円盤ブロック状の蓄熱部81と、蓄熱部81のペルチェ素子70との対向面に突設される四角形状の受熱部82と、受熱部82の周囲2個所に突設されるねじボス83と、フランジ部84を一体に備えたアルミニウム製のダイキャスト成形品からなる。冷熱ヘッド71は、蓄熱部81を後ケース1bの装着窓14にケース内面側から嵌込むことにより後ケース1bに固定され、この状態の蓄熱部81の外端の伝熱面81aは装着窓14の外面に露出している(図1参照)。ヒートシンク72は長軸状に形成されていて、縦長に形成された本体ケース1の内部に、ケース軸に沿って配置してある。
ヒートシンク72は、板壁状のシンクベース88と、シンクベース88の前面に突設される前フィン(放熱突起)89の一群と、シンクベース88の後面に突設される後フィン(放熱突起)90の一群とを一体に備えた、アルミニウム製のダイキャスト成形品からなる。図8に示すようにシンクベース88は、ベース上部に設けた筒状の上部ベース91と、上部ベース91の下側の横壁に連続して垂直に連出される下部ベース92とからなり、上部ベース91の縦壁の後面側に四角形状の受熱部93が突設してある。上部ベース91の左右にはビス挿通穴96が形成してある(図1参照)。放熱突起89・90は、板壁状のフィン構造である必要はなく、丸棒状あるいは角棒状に形成してあってもよい。
図11に示すように、下部ベース92の後面には、四角枠状の環状壁94を設けて四角形状の放熱区画95が形成してある。前フィン89は、上部ベース91の上側の横壁の下面から、下部ベース92の下端寄りにわたって前向きに突設してあり、後フィン90は、上部ベース91の下側の横壁の下面から、下部ベース92の下端寄りにわたって後向きに突設してある。後フィン90の突端縁は、後ケース1bの湾曲形状に沿って湾曲してあり、環状壁94の突端と、同壁94に対向する後ケース1bの内面には、それぞれ四角枠状のシール溝113・114が凹み形成してある(図8、図11参照)。
上記のように、前フィン89および後フィン90は、それぞれ縦長に形成された本体ケース1の上下方向のケース軸に沿って、上下に長く形成してある。具体的には、図12に示すように、ヒートシンク72の上下長H2が、本体ケース1の上下長H1の半分以上の長さになるように設定して、ペルチェ素子70で生成された温熱を表面積の大きなヒートシンク72で確実に放熱できるようにしている。また、シンクベース88の体積を冷熱ヘッド71の体積より充分に大きく設定して、ヒートシンク72の単位時間当たりの熱伝導量(熱容量)を大きくしている。従って、冷熱部3を使用する場合に、ペルチェ素子70で生成された温熱を効果的にヒートシンク72の側へ伝導させて的確に放熱することができる。
冷熱部3は次のようにして後ケース1bに組付ける。まず、素子用ホルダー73の保持穴77にペルチェ素子70を組み、その前後面に伝熱シート74を貼付ける。この状態の素子用ホルダー73の前側にヒートシンク72を、後側に冷熱ヘッド71をそれぞれ組付け、ビス挿通穴96およびボス78に挿通した2個のビス(第4締結具)97をねじボス83にねじ込んで(図1参照)、ユニット部品化された冷熱構造を得る。このとき、ヒートシンク72と素子用ホルダー73と冷熱ヘッド71の3者は伝熱シート74を介して接合状態となっている。次に、後ケース1bの環状壁94との対向部分に四角形状のパッキン102を装着し、冷熱ヘッド71の蓄熱部81を装着窓14に嵌込みながら、冷熱構造の全体を後ケース1bの内面にあてがって位置決めする。
素子用ホルダー73の左右の締結腕76と、ヒートシンク72の下部中央に設けたビス挿通穴98に挿通したビス(第5締結具)99を、後ケース1bに設けたねじボス100(図4、図11参照)にねじ込んで冷熱構造を後ケース1bに固定する。蓄熱部81と装着窓14との間の隙間は、Oリング101でシールしてある。この状態の後ケース1bと、温熱ヘッド2および制御基板17などが組付けられた前ケース1aを蓋合わせ状に接合し、両ケース1a・1bをビス10で締結することにより、温熱ヘッド2と冷熱部3を備えた美容器具が得られる。環状壁94は、必ずしも四角枠状に形成する必要はなく、円形枠状、楕円形枠状などの形状で形成することができる。この場合、放熱区画95は、円形状、楕円形状となる。シール溝113・114も環状壁94に合わせて円形状、楕円形状の凹みで形成される。もちろんシール溝113・114に嵌るパッキン102も円形状、楕円形状となる。なお、環状壁94は、後述する凹部105により枠状に形成されるものであるが、環状壁94は、凹部105や放熱突起89・90を有しない、つまりデコボコのない平坦状のものを含む概念である。すなわち、表面が平坦状の環状壁94に単にシール溝113を設けて放熱区画を形成し、シール溝113・114にパッキン102を嵌め込んで、本体ケース1と正対させた構成であってもよい。例えば、パッキン102を省略して環状壁94を直接後ケース1bに当接させることもできる。
冷熱ヘッド71と、熱電変換素子70を支持する素子用ホルダー73と、ヒートシンク72を、ヒートシンク72の側から冷熱ヘッド71にねじ込んだ締結具97で共締め固定されてユニット部品化し、ヒートシンク72の上部の左右両側、および下部がビス(第5締結具)99で本体ケース1に締結固定してあると、組み付け性が向上する。また、ヒートシンク72の冷熱ヘッド71に近い側においては、ヒートシンク72がホルダー73を介して本体ケース1に締結具99で締結固定されており、ヒートシンク72の冷熱ヘッド71から遠ざかる側においては、ヒートシンク72が直接本体ケース1に締結具99で締結固定されていることにより、ヒートシンク72の熱を冷熱ヘッド71からできるだけ離れた位置で本体ケース1に伝導して放熱できる。これはヒートシンク72の、熱電変換素子70と冷熱ヘッド71のある端部側は、ホルダー73を介して本体ケース1に締結固定されているため、本体ケース1への熱伝導が少なく、冷熱ヘッド71への影響が少なく、一方、ヒートシンク72の、熱電変換素子70と冷熱ヘッド71から遠ざかった端部側は、締結具99で本体ケース1に直接締結固定されているので、冷熱ヘッド71から遠く離れた位置で熱を伝導して放熱できるからである。従って、冷熱ヘッド71に対する熱の影響を抑制しながら効果的に放熱できる。
上記のように、冷熱構造を本体ケース1に組付けた状態においては、ヒートシンク72の過半下部に設けた後フィン90が、後ケース1bの内面壁に対して隙間Eを介して対向している(図8参照)。また、環状壁94の突端がパッキン102に密着して、後ケース1bと下部ベース92との間に環状の放熱区画95を形成している。つまり、ヒートシンク72に形成されている環状壁94の突端がパッキン102を介して後ケース1bに当接している。放熱区画95に臨むシンクベース88に凹部105を形成すると、シンクベース88の表面積を増加してヒートシンク72の放熱作用を促進でき、放熱区画95による熱放出作用を向上することができる。また、放熱区画95に臨む後ケース1bのケース壁には、多数個の放熱口103が形成してあるので、放熱区画95における熱交換を促進して、ヒートシンク72の熱を本体ケース1の外へ効果的に放出することができる。また、放熱口103の下側に配置した金属製のグリップ電極11は放熱板104として機能するので、後ケース1bに移動したヒートシンク72の熱を、放熱板104を介して効果的に放出することができる。放熱板104が後ケース1bの外面に設けられていれば後ケース1bに移動した熱が放熱板104により速やかに拡散し、外気との熱交換を促進して効果的に熱を放出できる。放熱板104が後ケース1bの内面に設けられていれば、ヒートシンク72からの輻射熱やヒートシンク72により熱くなった流動する空気を放熱板104で吸収し、速やかに拡散して、後ケース1bに広く均一に移動させて効果的に熱を放出できる。これにより、放熱板104の周囲の本体ケース1の温度、あるいはケース内部の温度を的確に低下させることができる。
詳しくは、ヒートシンク72の下方部分と正対する後ケース1bの外面に放熱板104を設けるので、ヒートシンク72の熱を効果的に放熱できる。さらに、ヒートシンク72の下端より下方へ突出する位置まで放熱板104が配置してあるので、放熱面積を大きくして放熱効果をさらに向上できる。また、ヒートシンク72の下端を締結するビス99と正対する位置に放熱板104が配置してあるので、ヒートシンク72の熱をさらに効果的に放熱することができる。
上記構成の美容器具は以下の態様で実施することができる。
本体ケース1に冷熱部3が設けられており、
冷熱部3は、熱電変換素子70と、熱電変換素子70の片面に配置されて冷熱を出力する冷熱ヘッド71と、熱電変換素子70の他面に配置されて温熱を放出するヒートシンク72を備えており、
ヒートシンク72と本体ケース1との間に環状壁94で囲まれた放熱区画95が形成されており、
環状壁94と当接するヒートシンク72または本体ケース1との間がパッキン102でシールされており、
放熱区画95に臨む本体ケース1のケース壁に放熱口103が形成されていることを特徴とする冷却美容器具。
また、環状壁94がヒートシンク72と一体に形成されて、放熱区画95に臨む本体ケース1のケース壁に放熱口103が形成されており、
環状壁94と本体ケース1の間がパッキン102でシールしてある。
図9に示すように、放熱区画95に臨む下部ベース92には、後フィン(放熱フィン)90と凹部105とが交互に形成してある。後フィン90と後ケース1bとの間の隙間Eは、後ケース1bのケース厚みより小さく設定してある。このように、隙間Eを設け、さらに隙間Eを後ケース1bのケース厚みより小さく設定するのは、後フィン90が後ケース1bに密着してある場合には、後フィン90との接触部の温度が他より高くなる傾向があるからである。また、隙間Eの値が必要以上に大きい場合には、後フィン90から放射作用で放出された熱が、後ケース1bを介してケース外へ放出されることなくケース内部にこもってしまう傾向があるからである。つまり、本体ケース1が局部的に高い温度になるのを避けながら、ヒートシンク72の熱を効果的に本体ケース1側へ移動するために、隙間Eを後ケース1bのケース厚みより小さく設定している。なお、この実施例における後ケース1bの厚み寸法は2.0mmであり、隙間Eの値は1.0〜1.8mmである。
図12に示すように制御回路は、ヒーターユニット36、バイブレーター50、およびペルチェ素子70の作動状態を制御する機器制御回路106と、イオン導入用またはイオン導出用の微弱なパルス電流を調整し、グリップ電極11および肌電極32に対してパルス電流を出力する肌電流制御回路107とで構成してある。以下、美容器具の運転モード、および各運転モードにおける各機器の制御の詳細を説明する。モード表示灯8や強度表示灯9の点灯状態は機器制御回路106で制御している。
美容器具は、電源ボタン部5をオン操作したのち、モードボタン部6を押込み操作するごとに第1から第4の運転モードに切換えられて、各モードごとに各機器の作動状態を機器制御回路106で制御する(図12参照)。また、必要に応じて、肌電流制御回路107で調整された微弱なパルス電流をグリップ電極11および肌電極32に対して出力し、あるいはその極性を切換える。美容器具の使用時には、必要に応じて化粧水が含浸された綿マット(シート状吸液体)110を肌電極32の外面にあてがって、その周囲をヘッドケース20のフランジ(キャップ装着部)26に圧嵌装着されるキャップ111で固定した状態で使用する。図3に示すように、キャップ111は前後面が開口するリング状のプラスチック成形品からなり、基端側のリング壁の内面の4個所に、フランジ26に係脱する弾性変形可能な係合爪112が一体に設けてある。
(第1運転モード)
第1運転モードでは、化粧水が含浸された綿マット110を肌電極32に装着して、顔肌のしわ、ひだ、毛穴などに入込んでいる微細な汚れを落とすイオン導出処理を行う。詳しくは、図13に示すように、電源ボタン部5をオン操作すると、最上部の橙色のモード表示灯8が点灯し、同時に左端の強度表示灯9が点灯し、同時に図示していない発音体が「ピッ」と発音する。さらに、電源ボタン部5がオン操作されたのち所定時間t1が経過するのを待って、グリップ電極11および肌電極32に対して、オフ時間が長い肌検知用の微弱なパルス電流が供給される。本体ケース1およびグリップ電極11を片手で握り、肌電極32を顔肌に接触させた状態では、先のパルス電流が人体を通る。この状態が肌検知状態である。肌検知用のパルス電流が供給されるのに併行して、電源ボタン部5がオン操作され、さらに、運転モードが切換えられたのち、所定時間t2(5秒)が経過するのを待って、ヒーターユニット36に対する駆動電流の供給が開始される。なお、電源ボタン部5がオン操作され、さらに運転モードが切換えられるまでの時間t1は、美容器具の使用者によって個人差があるので任意の時間となる。
電源ボタン部5がオン操作されたのち、肌電極32が顔肌に接触して、肌電極32とグリップ電極11が導通した時点(肌検知状態)で、肌電極32にプラス極性のパルス電流を供給するのと同時に、バイブレーター50が起動される。所定時間t3は、肌検知状態が認識されるまでの任意の時間であり、使用者が肌電極32を顔肌に接触させるまでの時間となる。使用者は肌電極32(伝熱体21)に装着した綿マット110を顔肌に押付け、あるいは押付けた状態で肌面に沿って滑らせることにより、微細な汚れを綿マット110で捕捉することができる。その間に、肌面に対する電流刺激が小さい場合には、電流刺激の強度を切換える切換えボタン部7を操作して、好みの刺激強度に調整することができる。肌電極32にプラス極性のパルス電流が供給されてから、3分が経過するとパルス電流の供給が停止され、同時にヒーターユニット36、およびバイブレーター50への駆動電流の供給が停止され、モード表示灯8および強度表示灯9が消灯される。このとき発音体が「ピーピー」と発音して、第1運転モードが終了したことを告知する。因みに、電源ボタン部5がオン操作されたのち、3分が経過しても肌検知用の信号が得られなかった場合には、電源をオフして待機状態に戻る。
(第2運転モード)
第2運転モードでは、基本的に第1運転モードと同様にして化粧水が含浸された綿マット110を肌電極32(伝熱体21)の外面に装着してイオン導入処理を行い、化粧水を肌面に浸透させて保湿効果を高める。第2運転モードにおいても、第1運転モードと同様に肌検知状態になった時点で、肌電極32にプラス極性のパルス電流を供給するのと同時に、バイブレーター50が起動される。ただし、先の第1運転モードでは、肌電極32にプラス極性のパルス電流を供給したが、第2運転モードでは、肌電極32にマイナス極性のパルス電流を供給して、化粧水の浸透を促す点が第1運転モードと異なる。第2運転モードにおいては、上から2番目の橙色のモード表示灯8が点灯する。肌電極32にマイナス極性のパルス電流が供給されてから、3分が経過するとパルス電流の供給が停止され、同時にヒーターユニット36、およびバイブレーター50への駆動電流の供給が停止される。同時に、モード表示灯8および強度表示灯9を消灯し、発音体で第2運転モードが終了したことを告知する。
第2運転モードでは、化粧水が含浸された綿マット110を使用せずに、粘性の高いジェル状の化粧水や、乳液などの美容用液を温熱ヘッド2に塗布し、伝熱面21aの全体に塗伸ばした状態で使用することができる。この場合には、伝熱面21aに凹み形成した液保持部29で、美容用液を保持することができるので、綿マット110を使用していないにも拘らず、問題なく美容処理を行なうことができる。使用者は肌電極32を顔肌に押付け、あるいは押付けた状態で肌面に沿って滑らせることにより、顔肌の広い範囲に美容用液を浸透させることができる。また、液保持部29がサークル状に設けてあるので、肌電極32を利用して肌面の手入を行う際に、液保持部29の液溜め効果によって、予め肌面に塗布した美容用液を、全方位方向へ移動させて広く塗り伸ばすことができる。さらに、ヒーターユニット36の周囲を囲むようにして、液保持部29をサークル状に設けるので、液保持部29の凹みとヒーターユニット36とが内外に干渉するのを避けて、温熱ヘッド2の前後寸法を小さくすることができる。
(第3運転モード)
第3運転モードでは、上から3番目の橙色のモード表示灯8が点灯しており、顔肌にパルス電流を供給し、ヒーターユニット36を作動させ、第1運転モードと同様に、肌検知状態になった時点で、肌電極32にプラス極性のパルス電流を供給するのと同時に、バイブレーター50を起動した状態で美容処理を行って肌面を整える。ただし、第3運転モードでは、肌電極32(伝熱体21)に対してプラス極性のパルス電流とマイナス極性のパルス電流を交互に作用させた状態で美容処理を行う。また、第3運転モードでは、化粧水が含浸された綿マット110を使用せずに、顔肌をシートマスクで覆った状態、あるいは乳液を顔肌に塗布した状態で美容処理を行なう。第3運転モードは、肌電極32にパルス電流が供給されてから3分が経過すると、パルス電流の供給が停止され、同時にヒーターユニット36、およびバイブレーター50への駆動電流の供給が停止される。同時に、モード表示灯8および強度表示灯9を消灯し、発音体で第3運転モードが終了したことを告知する。
(第4運転モード)
第4運転モードでは、最下部の青色のモード表示灯8が点灯しており、冷熱ヘッド71をペルチェ素子70で冷却した状態で美容処理を行なう。電源ボタン部5をオン操作したのち、モードボタン部6を操作して、運転モードが第4運転モードに切換わると、ペルチェ素子70に駆動電流が供給されて冷熱ヘッド71の冷却が開始される。冷熱ヘッド71の冷却開始から1次冷却時間T1(40秒)が経過するまでは、ペルチェ素子70に2.7Vの印加電圧により電流を連続して供給して冷熱ヘッド71を急速に冷却する。
しかし、ペルチェ素子70を先の電圧のままで連続して駆動すると、冷熱ヘッド71が冷えすぎてしまい、ヒートシンク72の側の熱が冷熱ヘッド71の側へフィードバックされて、冷熱ヘッド71を所定の温度状態に冷却できなくなる。こうした、不具合を解消するために、冷熱ヘッド71の冷却開始から1次冷却時間T1(40秒)が経過するまでの電圧V1を2.7Vとし、冷却開始から1次冷却時間(40秒)が経過した時点で、印加電圧をパルス化しペルチェ素子70に供給される駆動電流をパルス化して、このパルス電流をペルチェ素子70に供給する。このときのパルス化した印加電圧V2は、1次冷却時の2.7Vから2Vに制限している。以後、2次冷却時間(80秒)が経過するまでの間、2.0Vのパルス電流でペルチェ素子70が駆動される。
使用者は、1次冷却時間T1(40秒)が経過する前に発音体が「ピピ」と発音することを合図に使用することができ、続いて設定された2次冷却時間T2(80秒)が経過するまでの間美容器具を使用することができる。1次冷却時間T1(40秒)が経過する前に使用者に対して合図したのは、冷熱ヘッド(71)の冷却開始から1次冷却時間T1(40秒)が経過する前に設計意図の設定温度(例えば15℃)に達するためである。1次冷却時間T1(40秒)は、温度試験の結果、環境温度が多少ばらついても確実に設定温度にて使用できるように余裕をみて設定されたものである。なお、使用者への使用開始の合図は、発音体ではなく、バイブレーター50を所定時間(例えば0.5秒)駆動して手の感触で認識する方法であってもよい。第4運転モードにおいては、化粧用パフを使用して顔肌をパッティングするのと同じ要領で、冷熱ヘッド71の伝熱面81aを顔肌にあて、あるいは顔肌から離す処理を、顔肌の中心から外周へと繰返す。第4運転モードは、ペルチェ素子70に電流が供給されてから2分が経過すると、駆動電流の供給が停止される。同時に、モード表示灯8および強度表示灯9を消灯し、発音体で第4運転モードが終了したことを告知する。
以上は、制御回路による各運転モードごとの制御例であるが、制御回路は各運転モードが終了するごとに前回使用した運転モードを記憶していて、次回に電源ボタン部5がオン操作された場合には、前回使用した運転モードの次の運転モードを、開始運転モードにして制御を行なう。また、繰返し第4運転モードが選択される場合に、冷熱ヘッド71を冷却する1次冷却時間T1を徐々に変更して、ヒートシンク72の側の熱のフィードバックの影響を抑制し、冷熱ヘッド71を所定の冷熱温度にまで確実に冷却可能としている。
詳しくは、例えば室温が25℃であった場合には、1回目の第4運転モードにおいては、ペルチェ素子70に2・7Vの駆動電流を、1次冷却時間T1(40秒)が経過するまで連続して供給して、25℃の冷熱ヘッド71を15℃にまで低下させる。引続き2次冷却時間T2が経過するまで、2Vのパルス電流でペルチェ素子70を駆動する。そのため、1回目の第4運転モードが終了した時点におけるヒートシンク72は、35℃前後にまで加熱された状態にあり、1回目の第4運転モードの終了後に、2回目の第4運転モードが選択された状態では、ペルチェ素子70に対してヒートシンク72の熱がフィードバックしてしまう。従って、2回目に1回目の第4運転モードと同じ条件(1次冷却時間T1=40秒)でペルチェ素子70を駆動しても、冷熱ヘッド71の温度を15℃にまで低下することができなくなる。
こうしたヒートシンク72による熱のフィードバック作用に対処するために、図14に示すように1次冷却時間T1を、1回目の40秒を基準にして、2回目は60秒、3回目は120秒と徐々に増加している。その場合でも、1次冷却時間T1と2次冷却時間T2の和は常に一定(120秒)であり、1次冷却時間T1が増えた分だけ2次冷却時間T2は減ることになる。
上記のように、第4運転モードは3回まで繰り返し使用することができるが、4回目は使用することができない。これは、冷熱ヘッド71を繰り返し3回使用するのに伴って、ヒートシンク72に蓄熱される熱量が限度を越え、たとえペルチェ素子70を駆動したとしても、ヒートシンク72の熱がフィードバックして、冷熱ヘッド71を所定の温度状態にまで冷却できないからである。第4運転モードが4回目に選択された場合には、全ての表示灯8・9が点滅され、さらに発音体が「ピー、ピー」と音を断続させて警告を行う。
なお、2回目および3回目の第4運転モードにおける1次冷却時間T1の変更、および4回目の第4運転モードの使用制限は、1回目の第4運転モードを開始したのちの経過時間が60分以内である場合に行われる。これは、先の経過時間が60分を越える場合には、ヒートシンク72の熱が放熱されて室温程度にまで低下すると考えられるからである。
以上に説明したペルチェ素子70の制御は以下の形態で実施することができる。
冷熱ヘッド71と、熱電変換素子70と、ヒートシンク72と、熱電変換素子70に供給される駆動電流を制御する制御回路とを備えている冷却式美容器具であって、
制御回路は、熱電変換素子70に供給する駆動電流を、駆動開始から1次冷却時間T1が経過する間と、2次冷却時間T2が経過する間とで異なるように制御しており、
熱電変換素子70の駆動開始から1次冷却時間T1が経過する間は、制御回路は所定の電圧V1にて駆動電流を熱電変換素子70に対して連続して供給しており、
2次冷却時間T2における制御回路は、電圧を前記所定の電圧V1より低い電圧V2に設定するとともに駆動電流をパルス電流にして熱電変換素子70に対して供給することを特徴とする冷却式美容器具。
これにより、冷熱ヘッド71を所定の温度状態まで急速に冷却できる。また、ペルチェ素子70を先の電圧のままで連続して駆動すると、冷熱ヘッド71が冷えすぎてしまい、これに伴いヒートシンク72が温度上昇しすぎて、次に使用する際、ヒートシンク72の側の熱が冷熱ヘッド71の側へフィードバックされて、冷熱ヘッド71を所定の温度状態に冷却できなくなるといった不具合を解消することができる。
1回目の熱電変換素子70の駆動が終了したのち、熱電変換素子70に再び駆動電流を供給して冷熱ヘッド71を冷却する際に、
次回に熱電変換素子70を駆動するときの1次冷却時間T1が、前回に熱電変換素子70を駆動した時の1次冷却時間T1より長く設定してある。
これにより、ヒートシンク72による熱のフィードバック作用によって冷熱ヘッド71が温度上昇していても確実に所定温度にまで冷却できる。
1回目の熱電変換素子70の駆動が終了したのち、熱電変換素子70に再び駆動電流を供給して冷熱ヘッド71を冷却する際に、
次回に熱電変換素子70を駆動するときの2次冷却時間T2が、前回に熱電変換素子70を駆動した時の2次冷却時間T2より短く設定してある。
これにより、ヒートシンク72による熱のフィードバック作用によって冷熱ヘッド71が温度上昇していても確実に所定温度にまで冷却できる。このとき、T1とT2のトータルの時間において、2回目或いは3回目を1回目と同じに設定できるので冷却美容器具の使い勝手が向上する。
先に説明したように、冷熱ヘッド71の冷却開始から1次冷却時間T1が経過するまでは、ペルチェ素子70に2.7Vにて電流を供給して冷熱ヘッド71を急速に冷却する。また、2次冷却時間T2においては、冷熱ヘッド71の冷えすぎに伴う、ヒートシンク72の熱のフィードバックを防ぐ必要上、ペルチェ素子70に供給される駆動電流をパルス化し、さらに印加電圧V2を2.0Vに制限するが、その根拠は以下のとおりである。
冷熱ヘッド71の冷えすぎを防ぐには、図15(a)に示すように、2次冷却時間T2においてペルチェ素子70に供給される駆動電流の電圧V1(2.7V)はそのままで、駆動電流をパルス電流化するとよい。あるいは、図15(b)に示すように、2次冷却時間T2においてペルチェ素子70に供給される駆動電流の電圧V2(2.0V)を低下させる場合にも、冷熱ヘッド71の冷えすぎをある程度は防ぐことができる。いずれの場合にもペルチェ素子70による電力消費を低下できる利点がある。
しかし、駆動電流を単にパルス電流化する場合には、パルス電流がオフされた状態において、ヒートシンク72の熱が冷熱ヘッド71へ伝導されるため、冷熱ヘッド71が冷えにくくなってしまう。パルス電流のパルス幅を小さくすると、オフ時間が短くなるので、冷熱ヘッド71が冷えにくくなるのを解消できる。しかし、その場合には、機器制御回路106に設けた制御用コンピュータチップのスペックオーバーとなるため、より高価な制御用コンピュータチップを使用する必要がある。
また、駆動電流の電圧V2を単に低下させる場合には、冷熱ヘッド71の冷えすぎをある程度は防ぐことができるものの充分ではなく、例えば、ペルチェ素子70が繰返し駆動されるような場合に、冷熱ヘッド71が必要以上に冷えすぎてしまう。駆動電流の電圧V2をさらに低下させると、冷熱ヘッド71の冷えすぎを解消できる。しかし、その場合には、電圧を低下するための抵抗の発熱作用でダイオードなどの回路部品が発熱するのを避けられない。以上の理由で、この実施例においては、2次冷却時間T2においてペルチェ素子70に供給される駆動電流の電圧V2を、1次冷却時間T1における駆動電流の電圧V1より低下させ、さらに、駆動電流をパルス電流化してペルチェ素子70を駆動している。
図16ないし図18は、美容器具を保管する際に載置し、あるいは使用途中の美容器具を載置するための載置スタンド120を示している。載置スタンド120は、左右に長い容器状のプラスチック成形品からなり、平面から見て米粒状に形成される周側壁121と、周側壁121の上縁に連続する上壁122と、上壁122に連続して凹み形成される載置座123を一体に備えている。また、載置座123の下面側には、キャップ111を着脱可能に支持するキャップ収納部124が一体に形成してある。周側壁121の下端面は面一状に形成されていて載置スタンド120の脚部を兼ねており、テーブルなどに載置した状態において、載置スタンド120を安定した状態で支持できる。上壁122は図15に向かって左端側が最も高い位置にあり、右端側へ近付くに従って高さが低下する、なだらかな湾曲面で形成してある。
載置座123は、左右横長の浅い樋状の凹みからなる本体支持座125と、本体支持座125に連続して凹み形成される収容凹部126とで構成してある。本体支持座125は、収容凹部126より高い位置に設けてあり、その下面側に収容凹部126の下面側の空間より充分に大きな空間が形成してあり、この空間を利用して先のキャップ収納部124が形成してある。本体支持座125は横臥姿勢にした本体部1を支持する。また、収容凹部126は、上向きに開口する筒状凹部で構成されて、その筒壁の直径が電極部32の直径より充分に大きく形成してある。
キャップ収納部124は、本体支持座125の下側の空間を利用して、下向きに開口する丸筒状に形成してあり、筒壁の内面には多数個の保持リブ127が形成してある。不使用時のキャップ111は、図18に示すように、係合爪112が本体支持座125の座壁と正対する姿勢でキャップ収納部124の内部に収容されている。この状態のキャップ111のリング壁および係合爪112は、保持リブ127でわずかに弾性変形されているので、キャップ111が自重で落下することはない。なお、収容凹部126には、キャップ111が装着された状態の電極部32を収容することができるので、2個目のスペアのキャップ111をキャップ収納部124に収納することができる。
以上のように構成した載置スタンド120は、美容器具を図16(a)に示す第1収納姿勢と、図16(b)に示す第2収納姿勢とのいずれかの横臥姿勢で載置することができる。第1収納姿勢においては、本体部1が本体支持座125で支持されて、電極部32が横臥姿勢にした本体部1の上面側に突出しており、冷熱部3の膨出部分が収容凹部126に収まっている。この第1収納姿勢は、美容処理が終了した美容器具を保管するのに適している。第2収納姿勢においては、本体部1が本体支持座125で支持され、電極部32が収容凹部126の内底と対向して、冷熱部3の膨出部分が本体部1の上面側に突出している。この第2収納姿勢は、使用途中の美容器具を仮り置きするのに適している。
上記のように、美容器具は第1収納姿勢と第2収納姿勢のいずれかで収納できるが、いずれの場合にも本体部1を掴みやすくするために、載置状態における本体部1のグリップ端128を、載置スタンド120の外郭線の外に突出させている。また、本体部1のグリップ端128を、載置スタンド120の載置面より上方に位置させて、グリップ端128と載置スタンド120の載置面の間に指掛隙間Gを確保している。さらに、載置スタンド120に仮り置きした本体部1を、保管時に比べて掴みやすくするために、第2収納姿勢におけるグリップ端128の突出寸法L2を、第1収納姿勢におけるグリップ端128の突出寸法L1より大きく設定している。第1収納姿勢においても、グリップ端128は載置スタンド120の外郭線の外に突出するが、その突出寸法L1は第2収納姿勢時の突出寸法L2より小さいので、保管時の収納スペースを小さくして、グリップ端128が邪魔になるのを極力避けることができる。
先に説明したように、第1収納姿勢においては、冷熱部3の膨出部分が収容凹部126に収められて、収容凹部126の開口面が本体部1で塞がれている。そのため、保管時に収容凹部126の内部に塵埃が入り込むのを防止できる。また、第2収納姿勢においては、収容凹部126の筒壁の直径が電極部32の直径より充分に大きく形成してあるため、電極部32および本体部1と収容凹部126の開口面との間に大きな通気隙間Fが形成される。そのため、美容器具を第2収納姿勢で仮り置きした状態において、肌電極32に装着した綿マット110から美容用液が収容凹部126内へ滴下することがあっても、収容凹部126内の美容液の乾燥を促進することができる。
図19は、キャップ収納部124を変更した載置スタンド120の変形実施例を示す。そこでは、キャップ収納部124を下向きに開口する丸筒状に形成し、筒壁の下端に張り出したフランジ131に、キャップ111の係合爪112を係合できるようにした。この実施例から理解できるように、キャップ111はキャップ収納部124の筒壁に外嵌する状態で収納することができる。
図20ないし図22は、載置スタンド120の変形実施例を示している。そこでは、図16〜図18で説明した載置スタンド120の本体支持座125を省略して、電極部32を受け入れる収容凹部126のみで載置スタンド120をキャップ状に構成した。詳しくは、前後一対の保護壁133と左右一対の掛止壁134と底壁135とで収容凹部126を四角容器状に構成し、収容凹部126の内奥の底壁135に、キャップ111を着脱可能に支持するキャップ収納部124を設けるようにした。さらに、先の底壁135に起立スタンド136を凹み形成し、同スタンド136の前後に一対の脚部137を突設した。
一対の保護壁133はトンネル断面状に形成してあり、両壁の対向面に電極部32、および冷熱ヘッド71を受止める弾性シート138が固定してある。キャップ収納部124には4個の係合爪139が突設してあり、これらの係合爪139にキャップ111の小径開口部を係合できるようにしている。起立スタンド136は、本体部1のグリップ端128と同じ形状に形成してあり、図22に示すように、グリップ端128を起立スタンド136にはめ込むことにより、美容器具を載置スタンド120で起立保持することができる。
以上のように構成した載置スタンド120は、図21に想像線で示すように、横臥姿勢にした本体部1を一対の掛止壁134で支持する横臥収納姿勢で収納できる。また、図21に実線で示すように、ヘッドケース20が片側の掛止壁134に掛止され、グリップ端128が載置面で支持される傾斜収納姿勢で収納できる。いずれの姿勢も使用途中の美容器具を仮り置きするのに適しており、収納状態において、本体部1の多くの部分が載置スタンド120の外に露出しているので、本体部1を的確に掴み保持することができる。
美容処理が終了した美容器具を保管する場合には、図20に示すように、本体部1の上部に収容凹部126を装着して、電極部32および冷熱ヘッド71を、弾性シート138を介して一対の保護壁133で覆った状態にする。また、図22に示すように、グリップ端12を起立スタンド136にはめ込んで、美容器具を載置スタンド120で起立保持した状態で保管することができる。店頭において美容器具を起立保持した状態で陳列する際にも、載置スタンド120を使用することができる。
上記の載置スタンド120を備えた美容器具は、以下の形態で実施することができる。
グリップを兼ねる縦長の本体部1と、本体部1の上部に設けられて肌面に微弱な電流を供給する電極部32を備えている美容器具と、美容器具が横臥姿勢で載置される載置スタンド120とを備えている美容器具であって、
載置スタンド120の載置座123に本体部1を横臥姿勢で載置した状態において、本体部1のグリップ端128が載置スタンド120の外郭線の外に突出していることを特徴とする美容器具。
本体部1を載置スタンド120に横臥姿勢で載置した状態におけるグリップ端128が、載置スタンド120の載置面より上方に位置して、グリップ端128と載置面との間に指掛隙間Gが確保してある。
本体部1は、電極部32が横臥姿勢にした本体部1の上面側に突出する第1収納姿勢と、電極部32が収容凹部126内に収容される第2収納姿勢とのいずれかの収納姿勢で載置スタンド120に載置でき、
第2収納姿勢において載置スタンド120の外郭線から突出するグリップ端128の突出寸法L2が、第1収納姿勢において載置スタンド120の外郭線から突出するグリップ端128の突出寸法L1より大きく設定してある。
収容凹部126が上向きに開口する筒状凹部で構成されており、
美容器具を載置スタンド120に第2収納姿勢で収容した状態において、電極部32および本体ケース1と収容凹部126との間に通気隙間Fが形成してある。
収容凹部126が上向きに開口する筒状凹部で構成されており、
美容器具を載置スタンド120に第1収納姿勢で収容した状態において、本体ケース1が収容凹部126の上開口を塞いでいる。
電極部32の外面を覆うシート状吸液体110が、電極部32のキャップ装着部26に装着したキャップ111で保持固定されており、
載置スタンド120の内面に、前記キャップ111を着脱可能に支持するキャップ収納部124が設けてある。
載置座123が、本体部1を収容する本体支持座125と、電極部32を収容する収容凹部126とを含み、
キャップ収納部124が、本体支持座125の下面側に形成してある。
キャップ収納部124は下向きに開口する筒壁で構成されて、その内部にキャップ111が着脱可能に収納してある。
載置スタンド120が、電極部32の外面を覆う保護キャップとして構成してある。
載置スタンド120に、電極部32を受け入れる収容凹部126が設けられており、
収容凹部126の内奥に、キャップ111を着脱可能に支持するキャップ収納部124が設けてある。
載置スタンド120の底壁に起立スタンド136が凹み形成されて、同スタンドの周囲に脚部137が設けられており、
本体部1の下部を起立スタンド136で支持して、美容器具を載置スタンド120で起立保持できる。
図23ないし図26は、温熱ヘッド2を備えていない冷却機能のみを備えた美容器具の実施例と、その変形例を示す。図23および図24の美容器具は、本体ケース1の上部前面に冷熱部3用の装着窓14を開口し、装着窓14に組付けた冷熱ヘッド71を前向きに露出させるようにした。本体ケース1の内部には2次電池142が配置してある。ヒートシンク72は、シンクベース88と、同ベース88の後面に突設される後フィン90とを備えており、シンクベース88の周縁に沿って後向きに突出する環状壁94を周回状に突設して、鍵穴形の放熱区画95を形成した。放熱区画95には凹部105が形成されている。シンクベース88は、先の実施例と同様に、筒状の上部ベース91と、垂直の下部ベース92とで構成してあり、放熱区画95の側に限って後フィン(放熱突起)90が形成してある。
後ケース1bの外面には、同ケース1bの上端寄りから下端よりにわたってグリップ電極11を兼ねる放熱板104が固定してあり、先の放熱区画95に臨む後ケース1bのケース壁と放熱板104に、一群の放熱口103が開口してある。冷熱ヘッド71は肌電極32を兼ねており、先のグリップ電極11と協同して、人体を介して肌面に微弱なパルス電流を供給し、イオン導入用またはイオン導出用の電流刺激を与える。そのために、冷熱ヘッド71とグリップ電極11は、図示していない電極を介して肌電流制御回路107の電流調整回路と接続してある。冷熱ヘッド71を利用して肌電極32とし、肌電極32と本体ケース1に設けたグリップ電極11との間に人体を介して肌面に電流を供給すると、冷熱刺激に併行してイオン導入やイオン導出などの美容処理を行なうことができる。従って、従来のこの種の美容器具に比べて、多様でより効果的な美容処理を行なうことができる美容器具を提供できる。また、冷熱ヘッド71が肌電極32を兼ねており、放熱板104がグリップ電極11を兼ねているので、部品点数を減少することができコスト低減を図ることができる。
上記のように、シンクベース88の周縁に沿って環状壁94を周回状に突設すると、放熱区画95がシンクベース88の後面の全体にわたって形成されるので、ヒートシンク72から放出される温熱を本体ケース1の外へ効果的に放出することができる。また、放熱板104を兼ねるグリップ電極11の面積が大きい分だけ、後ケース1bに移動した熱を効果的に放熱できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。以下の変形例においても同じとする。
図24の美容器具は、基本的に図23で説明した美容器具と同じ構造を採るが、後ケース1bの内面にパッキン102を兼ねるシール層143を形成して、シール層143で環状壁94と後ケース1bの接合面をシールするようにした。シール層143は後ケース1bに対して、2色成形法で一体に形成してある。この実施例における冷熱ヘッド71も肌電極32を兼ねており、グリップ電極11と協同して人体を介して肌面に微弱なパルス電流を作用させ、イオン導入用またはイオン導出用の電流刺激を与える。本実施例においても放熱板104がグリップ電極11を兼ねている。
図26の美容器具は、後向きに開口する上部ベース91と、前向きに開口する下部ベース92とでシンクベース88を構成し、上部ベース91の側に後フィン(放熱突起)90を設け、下部ベース92の側に前フィン(放熱突起)89を設けるようにした。また、下部ベース92に設けた環状壁94で放熱区画95を構成し、前ケース1aの内面に設けたシールリブ144を、環状壁94に設けたシール溝145にはめ込んで、環状壁94と前ケース1aの接合部分をシールしている。この実施例では、前ケース1aおよび放熱板104に設けた放熱口103から放熱区画95の熱を放出するので、電源ボタン部5やスイッチ18などは、後ケース1bの上部に配置するようにした。また、シンクベース88は、前ケース1aの内面に設けたねじボス100にビス99で締結するようにした。必要があれば、シールリブ144をシール溝145に熱溶着して、シール性を向上することができる。シールリブ144とシール溝145で放熱区画95をシールする場合には、パッキン102をシール要素とする場合の完全な防水効果は得られないが、ある程度の防塵、防水効果を発揮できるので、実用上は問題なく使用できる。上記構成の前ケース1aに形成したシールリブ144は、環状壁94として解釈することもできる。この場合、シール溝145は省略することができる。
図26の美容器具は、以下の態様で実施することができる。
本体ケース1に冷熱部3が設けられており、
冷熱部3は、熱電変換素子70と、熱電変換素子70の片面に配置されて冷熱を出力する冷熱ヘッド71と、熱電変換素子70の他面に配置されて温熱を放出するヒートシンク72を備えており、
ヒートシンク72または本体ケース1に環状壁94が設けられており、
ヒートシンク72と本体ケース1とを当接させたとき、ヒートシンク72と本体ケース1との間に環状壁94で囲まれた放熱区画95が形成されており、
放熱区画95に臨む本体ケース1のケース壁に放熱口103が形成されていることを特徴とする冷却美容器具。
上記構成により、肌面に冷熱刺激を与えることができる。また、ヒートシンク72による放熱によって熱電変換素子70による冷熱の供給を確実に行って、冷熱部3による美容処理を適切に行える。ヒートシンク72と本体ケース1との間に放熱区画95を形成し、同区画95に臨む本体ケース1のケース壁に放熱口103を形成すると、放熱口103を介して放熱区画95内に外気を取込んで、ヒートシンク72と外気との間の熱交換を効果的に行うことができる。従って、ヒートシンク72から放出された熱が、本体ケース1の内部にこもるのを解消できる。また、熱電変換素子70に接触している受熱部93と、放熱区画95内に臨むヒートシンク72との間の温度落差を大きくできるので、放熱すべき熱を放熱区画95へ向かって最短距離で伝導させて的確に放熱することができる。さらに、ヒートシンク72と本体ケース1とを当接させているので、外気とともに放熱区画95に入り込んだ塵埃、あるいは水、美容用液など放熱区画95の周囲のケース内空間に侵入するのを防止して、電気回路の短絡や作動不良などの塵埃あるいは水、美容用液などの付着に伴う故障を防止できる。
上記の実施例では、主筒壁部22をベルマウス状に形成したが、その必要はなく、主筒壁部22は断面が円形や多角形のテーパー筒状、あるいは多段筒状など拡開筒状に形成してあってもよい。また、上記の実施例では何れも、ペルチェ素子70の温熱をヒートシンク72の放熱作用のみで放出するようにしたが、これは、熱交換用の空気をヒートシンク72に向かって送給する送風ファンを配置した従来の美容器具に比べて、コストを低減できるからである。図26の実施例でも述べたが環状壁94は本体ケース1の側に形成することができる。実施例で説明した美容器具における締結具10・61・63・97・99は、いずれも金属製のビスからなり熱を伝えやすい。とくに、ヒートシンク72を後ケース1bに締結する締結具99は、ヒートシンク72の熱を後ケース1bに効果的に伝導して放熱効果を向上することに役立っている。
ヘッドケース20と伝熱体21は一体に形成することができ、その場合の形成素材は金属とプラスチックのいずれであってもよい。また、ヘッドケース20をプラスチック成形する際に金属製の伝熱体21をアウトサートして、一体に形成してもよい。同様に、ヒーターホルダー35とヒーターフレーム34は一体に形成することができ、その場合の形成素材は金属とプラスチックのいずれであってもよい。