JP6150349B2 - タンパク質の合成方法、およびタンパク質の合成キット - Google Patents

タンパク質の合成方法、およびタンパク質の合成キット Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質の合成方法、およびタンパク質の合成キットに関し、詳細には、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法、およびこのタンパク質の合成方法に利用できるタンパク質の合成キットに関する。
タンパク質合成に必要な因子を含む細胞抽出液に、基質となるアミノ酸、ATPなどのエネルギー源、および目的タンパク質の遺伝子を加え、試験管内でタンパク質を合成する、いわゆる無細胞タンパク質合成方法が従来知られている。無細胞タンパク質合成系には、大腸菌、昆虫細胞、小麦胚芽および動物細胞等から調製した抽出液を用いた系が知られており、キット化されたものが数社から市販されている。
細胞を用いた合成系である細胞発現系と比較すると、無細胞タンパク質合成系では、(i)反応条件を自由に設定できる、(ii)発現ベクターに目的遺伝子をクローニングした環状DNAに限らず、PCR産物等の直鎖状DNAも利用できる、および(iii)様々な標識タンパク質を容易に合成できる、といった強みがある。その反面、一部に高価な試薬類を用いるため、無細胞タンパク質合成系は、細胞発現系よりも高コストであることが弱みとされている。この点が、気軽に使用できるツールとしての広がりを妨げるひとつの要因となっている。
無細胞タンパク質合成系における反応液の構成成分のうち、高価な試薬類の一つとして、ヌクレオシド3リン酸(ATP、GTP、CTPおよびUTP。以下、この4つを総称してNTPと呼ぶ。)が挙げられる(非特許文献1)。反応液にDNAを鋳型として添加し、転写および翻訳をひとつの反応液中で同時に行う共役系の場合では、4種類のNTPを加えることが一般的である。また、ATPおよびGTPについては、mRNAの転写反応における基質として働くだけではなく、翻訳反応のエネルギー源としても必須である。そのため、予め調製したmRNAを鋳型として反応液に加えて翻訳のみを行う合成系であっても、4種類のNTPのうち、通常ATPおよびGTPを添加する必要がある。すなわち、転写および翻訳の両方が含まれる合成系ならびに翻訳のみを行う合成系いずれにおいても、市販の高価なNTPを用いることによるコスト高という共通の課題が存在する。
ところで細胞抽出液には、転写および翻訳に必要な因子以外にも様々な酵素が含まれている。これらの酵素を積極的に利用することによって、前駆体から有用な基質等を系内合成することが可能である。
例えば、非特許文献2には、無細胞タンパク質合成系において細胞抽出液中の酵素を用いてアミノ酸前駆体からアミノ酸を合成し、これを無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質合成に利用した技術が開示されている。NMR解析用のタンパク質試料の調製には、20種類の安定同位体標識アミノ酸を加えるか、もしくは藻類由来のアミノ酸混合物に対して、それには含まれないTrp、Asn、GlnおよびCysの4種類のアミノ酸を加えてタンパク質合成を行うことが一般的である。20種類の安定同位体標識アミノ酸を用いる方法よりも、藻類由来のアミノ酸混合物に4種類のアミノ酸を加える方法がより安価であるものの、Trp、Asn、GlnおよびCysは他の16種類のアミノ酸に比べて非常に高価であることが問題となっていた。この問題を解決するために、非特許文献2では、安定同位体標識された安価な数種類の原料から、Trp、Asn、GlnおよびCysを抽出液中の酵素によって系内合成して、無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質合成に供する技術を報告している。
また例えば、非特許文献3には、NTPの代わりにヌクレオシド一リン酸(AMP、GMP、CMPおよびUMP。以下、この4つを総称してNMPと呼ぶ。)を添加するとともに、エネルギー源としてホスホエノールピルビン酸の代わりにグルコースを反応液に加えて、代謝酵素を利用することによってNTPを系内合成して、これを無細胞タンパク質合成系に利用したタンパク質合成方法が報告されている。
また、酵素によってAMPからATPを、GMPからGTPを合成することが非特許文献4に記載されており、酵素によってCMPからCTPを合成することが非特許文献5に記載されている。また、非特許文献6には、無細胞タンパク質合成系において、ピルビン酸塩を用いてADPからATPを合成することが記載されている。非特許文献7には、高価なNADおよびCoAが含まれているS12 extractを用いて無細胞タンパク質合成を行うことが記載されている。
Noguchi T and ShibaT, Biosci. Biotechnol. Biochem., 1998, 62(8), 1594-1596. Yokoyama J, Matsuda T, Koshiba S, and Kigawa T, J Biomol NMR., 2010, 48(4), 193-201. Calhoun KA and Swartz JR, Biotechnol. Prog., 2005, 21, 1146-1153. Kameda A, ShibaT, Kawazoe Y, Satoh Y, Ihara Y, Munekata M, Ishige K and Noguchi T, J. Biosci. Bioeng., 2001, 91, 557-563. Ishige K, Hamamoto T, ShibaT and Noguchi T, Biosci. Biotechnol. Biochem., 2001, 65(8), 1736-1740. Kim D-M and Swartz J R, Biotechnol. Bioeng., 2001, 74, 309-316. Kim T-W, Kim H-C, Oh I-S and Kim D-M, Biotechnol. BioprocessEng., 2008, 13, 464-469.
NMPはNTPと比較して安価であるものの、構造解析など大量のタンパク質を合成する必要がある場合には、より多くの基質が必要であるため、合成系のさらなる低コスト化が望まれている。
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無細胞タンパク質合成系において、より安価にタンパク質合成を行うことができる方法を提供することにある。
本願発明者らが鋭意検討した結果、細胞抽出液を含む反応液により安価なリボヌクレオシドを添加した合成系であっても、さらには、1種類のリボヌクレオシドのみを添加した場合であっても、NTPを添加した合成系と同程度のタンパク質合成量を得ることができることを見出し、本願発明を完成させるにいたった。
本発明に係るタンパク質の合成方法は、上記課題を解決するために、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法であって、タンパク質をコードする鋳型DNAと、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドとを、タンパク質合成用の細胞抽出液を含む反応液に添加することを特徴とする。
本発明に係るタンパク質の合成キットは、上記課題を解決するために、上述のタンパク質の合成方法に使用されるタンパク質の合成キットであって、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドと、細胞抽出液とを含むことを特徴とする。
本発明に係るタンパク質の合成方法によれば、無細胞タンパク質合成系において、転写反応の基質としてのNTP、およびその前駆体のNMPを添加することなく、タンパク質を合成することができる。
バッチ法による無細胞タンパク質合成系における、反応時間とタンパク質合成量との関係を示す図である。 バッチ法による無細胞タンパク質合成系における、複数の異なるタンパク質の各収量を示す図である。 バッチ法による無細胞タンパク質合成系において得られたタンパク質の電気泳動の結果の写真を示す図である。 バッチ法による無細胞タンパク質合成系において、添加されたリボヌクレオシドの種類および濃度とタンパク質合成量との関係を示す図である。 透析用による無細胞タンパク質合成系における、タンパク質合成量を示す図である。 無細胞タンパク質合成系の反応液における各成分の価格を示す図である。 無細胞タンパク質合成系の反応液におけるリボヌクレオシドおよびNTPを検出するためのHPLCの結果を示す図である。 バッチ法による無細胞タンパク質合成系において、添加されたヌクレオシド基質の種類とタンパク質合成量との関係およびエネルギー再生基質の種類とタンパク質合成量との関係を示す図である。
本発明に係るタンパク質の合成方法の一実施形態について、以下説明する。
本発明に係るタンパク質の合成方法は、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法であって、タンパク質をコードする鋳型DNAと、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドとを、タンパク質合成用の細胞抽出液を含む反応液に添加するものであればよく、その他の具体的な工程、ならびに使用する器具および装置は特に限定されるものではない。
(無細胞タンパク質合成系)
本明細書において「無細胞タンパク質合成系」とは、細胞抽出液を用いて、試験管等の人工容器内で転写および翻訳の反応系を再構成してタンパク質を合成させる系である。細胞抽出液は、細胞内に含まれる、DNAを鋳型としたRNAの転写に必要な因子、およびタンパク質の翻訳に必要な因子を、細胞を破砕して抽出液として取り出したものである。すなわち、本明細書において「タンパク質合成用」とは、RNAにコードされた情報に基づくタンパク質の合成のみならず、DNAを鋳型とした、タンパク質の合成に用いられるRNAの合成をも含むことを意図している。
無細胞タンパク質合成系を構築する細胞抽出液としては、さまざまな生物種に由来する細胞抽出液を利用することができ、例えば、大腸菌および好熱性細菌等の細菌細胞の抽出液、ならびに小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、マウスL−細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞および出芽酵母等の真核細胞の抽出液を用いることができる。なかでも、細菌細胞の細胞抽出液を好適に用いることができ、大腸菌の細胞抽出液がより好ましい。
大腸菌の抽出液としては、Zubay(非特許文献:Zubay G., Ann Rev Genet, (1973) 7, 267-287)またはPrattら(非特許文献:Pratt, J.M. et al., Transcription and Translation-A Practical Approach, (1984), pp.179-209, Henes, B.D. et al. eds., IRL Press, Oxford)に記載された方法により調製されたS30抽出液を用いることができる。大腸菌S30抽出液は、転写および翻訳に必要な大腸菌の全ての酵素と因子を含んでいる。具体的な調製方法としては、まず最初に大腸菌を培養し、菌体を遠心分離等により回収する。回収された菌体は、洗浄後、緩衝液に再懸濁し、フレンチプレス、ガラスビーズ、およびワーリングブレンダー等を用いて破砕する。破砕された大腸菌の不溶物質を遠心分離で除去し、プレインキュベーション混合液と混合してインキュベーションする。この操作によって内在性のDNAおよびRNAが分解されるが、さらに、カルシウム塩およびマイクロコッカスのヌクレアーゼ等を添加して内在性の核酸を分解してもよい。続いて、透析により内在性のアミノ酸、核酸およびヌクレオシド等を除き、適量ずつ分注して液体窒素又は−80℃にて保存する。
真核細胞抽出液としては、ウサギ網状赤血球溶解物および小麦胚芽抽出液が好ましい。ウサギ網状赤血球溶解物は、PelhamおよびJachson(非特許文献:Pelham, H.R.B. and Jachson, R.J. Eur. J. Biochem., 67, 247-256, 1976)によって記載された方法を用いることができる。小麦胚芽抽出液の作製方法としては、例えばRobertsおよびPaterson(非特許文献:Roberts, B.E. and Paterson, B.M., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 70, 2330-2334, 1973)によって記載された方法を用いることができる。
反応液における細胞抽出液の量は、10〜50%であることが好ましく、20〜30%がより好ましい。
なお、いずれの細胞抽出液においても、市販の細胞抽出液を使用することも可能である。また、いずれの細胞抽出液も転写および翻訳に必要な全ての酵素と因子を含んでいるが、タンパク質合成の反応液として用いる際に、さらに補充的な成分および緩衝液を添加することができる。
(リボヌクレオシド)
本発明に係るタンパク質の合成方法では、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドが、タンパク質合成用の細胞抽出液を含む反応液に添加される。
細胞抽出液を含む反応液には、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドが添加されればよく、より好ましくは、少なくとも何れか2種のリボヌクレオシドが添加され、さらに好ましくは、少なくとも何れか3種のリボヌクレオシドが添加される。
下記反応式(1)〜(3)は、それぞれ大腸菌のATPの生合成経路、GTPの生合成経路ならびにCTPおよびUTPの生合成経路を示している。大腸菌は、下記式(1)〜(3)中に示されているような、リボヌクレオシドから、NMP、NDP(ヌクレオシド二リン酸)およびNTPを順次合成する酵素群を有している。これらの酵素群は菌を破砕した調製した細胞抽出液にも含まれている。そのため、NTPの代わりにアデノシン等のリボヌクレオシドを細胞抽出液に添加することによって、これらの酵素群を利用してNTPを生合成して、転写反応および翻訳反応に供することが可能になる。
(反応式1)
Figure 0006150349
(反応式2)
Figure 0006150349
(反応式3)
Figure 0006150349
なお、上記反応式(1)〜(3)は、大腸菌における生合成経路を示したものであるが、他の生物種においても同様の代謝経路が存在する。そのため、上述の通り、細胞抽出液は大腸菌由来の細胞抽出液に限らず、他の生物種由来の細胞抽出液も、本発明に係る無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法に用いることができる。
添加するリボヌクレオシドの種類としては、少なくともグアノシンが含まれていることが好ましく、グアノシンおよびシチジンが含まれていることがより好ましい。グアノシンのみを添加した場合であっても、一定の添加量以上であれば、NTPを添加した場合と同程度のタンパク質合成量を得ることができる。また、グアノシンおよびシチジンを添加した場合には、より少ない添加量で、4種類すべてのリボヌクレオシドを添加した場合と同程度の合成量であって、NTPを添加した場合よりも高い合成量を得ることができる。
添加するリボヌクレオシドの量は、それぞれ、0.1〜8mMであることが好ましく、0.2〜1.6mMであることがより好ましい。
なお、市販品のNTPは、酵素法によって生産された高純度品であるため非常に高価である。一方、NTPの前駆体であるリボヌクレオシドはNTPに比べて非常に安価である。例えば、それぞれ1gあたりの価格を比較すると、リボヌクレオシドは、対応するNTPのおよそ1/20〜1/340の価格である。さらに、一般的な無細胞タンパク質合成に添加されるNTPのモル量(0.8〜1.2mM)は、本発明において添加されるリボヌクレオシドの好適なモル量(0.4mM)よりも多い。その結果、1mLの無細胞タンパク質合成系反応液に要するNTPおよびリボヌクレオシドの価格を比較すると、リボヌクレオシドを用いる場合には、NTPを用いる場合と比較して、およそ1/470となる。
また、NTPの代わりに、NTPよりも安価であるNMPを用いる無細胞タンパク質合成系が従来知られているが(上記非特許文献3参照)、市販品のNMPも、前駆体であるリボヌクレオシドと比較すると高価である。また、NMPを用いる合成系において、無細胞タンパク質合成に添加されるNMPのモル量(0.8〜1.2mM)は、本発明において添加されるリボヌクレオシドの好適なモル量よりも多い。そのため、1mLの無細胞タンパク質合成系反応液に要するNMPおよびリボヌクレオシドの価格を比較すると、リボヌクレオシドを用いる場合には、安価な形態(ナトリウム塩、水和物、またはナトリウム塩の水和物)のNMPを用いる場合と比較しても、およそ1/12となる。
また、NMPを用いた場合には、タンパク質の合成量がNTPを用いた場合よりも低くなることが示されている(上記非特許文献3および7参照)。このことは後述する実施例(実施例6)においても示されている。これらの結果からすると、リボヌクレオシドを使用した場合には、さらに合成量が低くなることが予想される。しかしながら驚くべきことに、リボヌクレオシドを使用した場合には、NTPを添加した場合よりも高い合成量を得ることができる。
さらに、NMPをNTPにするには2分子のATPが必要であるのに対し、リボヌクレオシドをNTPにするには3分子のATPが必要である。すなわち、リボヌクレオシドを使用した場合には、1分子のATP分だけ余計にエネルギーを消費することになる。このことから、リボヌクレオシドを用いることは、タンパク質合成に不利に働くと想定される。また、リボヌクレオシドを使用した場合には、最終的にタンパク質が合成されるまでに関与する酵素数が増加するため、系の不安定化が想定される。これらのことからしても、リボヌクレオシドを使用した場合には、NTPを添加した場合よりも高い合成量を得ることができることは驚くべきことである。
(鋳型DNA)
鋳型DNAとしては、発現させたい所望のタンパク質をコードする遺伝子配列と、適当な発現制御領域とが含まれている二本鎖DNAであればよく、直鎖状および環状の何れの形態であってもよい。
発現制御領域としては、プロモーター配列、ターミネーター配列、エンハンサー配列、ポリA付加シグナルおよびリボソーム結合配列などを含み得る。
また、合成されたタンパク質を迅速に精製、または検出するために、アフィニティー標識(タグ)配列を組み込んだ融合タンパク質が合成できるように鋳型DNAを設計することもできる。
添加する鋳型DNAの量は、0.1〜50μg/mLであることが好ましく、1〜10μg/mLであることがより好ましい。
(エネルギー再生系)
本発明の方法において、細胞抽出液を含む反応液には、さらにエネルギー再生系の成分を添加することが好ましい。エネルギー再生系の成分に制限はなく、例えば、クレアチンキナーゼとクレアチンリン酸との組合せ、およびホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼとの組合せ等によるATP再生系が使用可能である。クレアチンキナーゼおよびピルビン酸キナーゼは何れもADPをATPに再生する酵素であり、それぞれクレアチンリン酸およびホスホエノールピルビン酸を基質として必要とする。ホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼとの組合せ等の系を効率的に動かすにはNADおよびCoAの2つの補酵素を加える必要がある。一方、クレアチンキナーゼとクレアチンリン酸との組合せの系では、これらの補酵素は不要である。そのため、クレアチンキナーゼとクレアチンリン酸との組合せを用いることが特に好ましい。
クレアチンキナーゼは0.02〜5mg/mLで使用されることが好ましく、クレアチンリン酸は10〜100mMで使用されることが好ましい。
また、Jewettら(非特許文献:Jewett MC and Swartz JR, Biotechnol. Bioeng., 2004, 86(1), 19-26.)に記載のPANOxSPと呼ばれる、ホスホエノールピルビン酸およびNAD等を用いたATP再生系、あるいは上記非特許文献3に記載のホスホエノールピルビン酸の代わりにグルコースを用いているPANOxSPの改良系では、大気中の酸素を必要とするため、反応液が空気に接触するように工夫した容器で反応を行う必要がある。一方、クレアチンキナーゼとクレアチンリン酸との組合せを用いたATP再生系では、タンパク質の生産性に関し、酸素供給の有無による影響はない。したがって、ATP再生系として、クレアチンキナーゼとクレアチンリン酸との組合せを用いた合成系の場合には、反応に際して特殊な容器を用いる必要はなく、そのため、大量調製のためのスケールアップが容易となる。
(補充的な成分および緩衝液)
反応液には、細胞抽出液、鋳型DNAおよびリボヌクレオシド、ならびにクレアチンキナーゼおよびホスホエノールピルビン酸等のエネルギー再生系のほかに、緩衝液、塩類、基質となるアミノ酸、核酸分解酵素阻害剤、抗菌剤、還元剤、ポリエチレングリコール、cAMP、葉酸類、RNAポリメラーゼおよびtRNA等を含むことができる。
緩衝液としては、例えば、HEPES−KOH、およびTris−OAc等の緩衝剤を使用できる。塩類としては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムおよび酢酸アンモニウム等の酢酸塩、ならびにグルタミン酸カリウム等のグルタミン酸塩等を使用できる。基質となるアミノ酸は、タンパク質を構成する天然の20種類のアミノ酸およびこれらの誘導体である。抗菌剤としては、例えば、アジ化ナトリウムおよびアンピシリン等を使用できる。RNAポリメラーゼとしては、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼおよびSP6RNAポリメラーゼ等の市販の酵素を使用でき、鋳型DNAのプロモーター配列に適合するように適宜選択すればよい。
(タンパク質の合成キット)
細胞抽出液およびリボヌクレオシド、ならびに必要に応じて、緩衝液および塩類等のその他の成分は、使用しやすいように一定量ごと分注して製品として配送することができる。これらの製品は凍結または乾燥状態で保存することができ、保存および輸送に適した容器に収容してキットとして販売することができる。キットには取扱説明書および陽性コントロールDNA等を添付することができる。すなわち、本発明に係るタンパク質の合成キットは、上述のタンパク質の合成方法に使用されるキットであって、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドと、細胞抽出液とを含むものである。
(タンパク質の合成)
本発明に係るタンパク質の合成方法としては、透析法およびバッチ法を適用することができる。
透析法は、反応液である内液と反応基質を含む外液とを透析膜(限外濾過膜)によって隔離して含む、振とうまたは攪拌可能な閉鎖系による合成法である。透析法では、透析膜を介して、合成に必要な基質が外液から反応液に供給されるとともに、反応液中の余計な副産物を外液中に拡散させることで、より長時間、反応を持続させることができる。そのため、より高いタンパク質合成量を得ることができ、大量(ミリグラム単位)のタンパク質を調製することができる。
透析法によってタンパク質を合成する場合には、4種類すべてのリボヌクレオシドを添加することが好ましい。
一方、バッチ法は、必要な成分すべてを反応溶液中に均一に混合して含ませて、反応を行う合成法である。透析法と比較するとタンパク質合成量は少ないものの、反応時間がより短く、結果がすぐに得られること、および一般的な96穴プレート中で合成反応を行えることから、バッチ法は、ハイスループットスクリーニングに適した合成系といえる。
バッチ法においては、NTPを用いた合成系よりも、より長時間、タンパク質合成反応が持続する。そのため、本発明に係るタンパク質の合成方法をバッチ法にて実現した場合には、NTPを用いた合成系と比較して、より安価にタンパク質合成を実現できるばかりでなく、より高いタンパク質合成量を得ることができる。なお、NMPを用いた合成系では、このような効果はみられない。
バッチ法によってタンパク質を合成する場合には、4種類すべてのリボヌクレオシドを添加する方法に限らず、グアノシン1種類のみを添加する方法、またはグアノシンおよびシチジンのみを添加する方法であってもよい。バッチ法によれば、グアノシンのみを添加した場合であっても、添加量によっては、NTPを用いた合成系と同程度のタンパク質合成量を実現することができる。また、グアノシンおよびシチジンのみを添加した場合には、添加量によっては、NTPを用いた合成系を超える量のタンパク質合成量を実現することができ、4種類すべてのリボヌクレオシドを添加した場合と同程度のタンパク質合成量を実現することができる。グアノシンのみを添加する場合には、グアノシンの量は0.1〜8mMが好ましく、1〜4mMがより好ましい。また、グアノシンおよびシチジンのみを添加する場合には、グアノシンおよびシチジンの量はそれぞれ、0.1〜8mMが好ましく、0.2〜1.6mMがより好ましい。
合成されたタンパク質の精製は、生細胞を用いる場合と異なり破砕する必要がないことに加えて、生細胞からの分離と比べて混在する物質の量および種類が格段に少ないため、比較的容易に行うことができる。精製法は、タンパク質の性質に応じて従来公知のものを単独にまたは適宜組み合わせて使用できる。例えば硫酸アンモニウムもしくはアセトン沈殿、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、HPLC、電気泳動、およびクロマトフォーカシングなどの慣用の技術を挙げることができる。
また、合成されたタンパク質の同定および定量は、活性測定、免疫学的測定、分光学的測定、およびアミノ酸分析などによって、必要に応じて標準サンプルと比較しながら行うことができる。
(まとめ)
以上のように、本発明に係るタンパク質の合成方法は、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法であって、タンパク質をコードする鋳型DNAと、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドとを、タンパク質合成用の細胞抽出液を含む反応液に添加することを特徴とする。
本発明に係るタンパク質の合成方法においては、少なくともグアノシンを添加することが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法においては、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか2種のリボヌクレオシドを添加することが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法においては、少なくともグアノシンおよびシチジンを添加することが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法において、上記細胞抽出液は細菌細胞から調製した抽出液であることが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法において、上記細胞抽出液は大腸菌から調製した抽出液であることが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法においては、ATP再生系の成分を上記反応液に添加することが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法においては、上記ATP再生系の成分として、クレアチンキナーゼおよびクレアチンリン酸を上記反応液に添加することが好ましい。
本発明に係るタンパク質の合成方法は、透析法による合成方法であり得る。
本発明に係るタンパク質の合成方法は、バッチ法による合成方法であり得る。
本発明に係るタンパク質の合成キットは、上述のタンパク質の合成方法に使用されるタンパク質の合成キットであって、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドと、細胞抽出液とを含むことを特徴とする。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
〔実施例1:バッチ法によるCATタンパク質の合成〕
(合成反応条件)
バッチ法による無細胞合成系の反応液組成は、次の通りである:60mM HEPES−KOH(pH7.5)、230mM D−グルタミン酸カリウム、2% PEG8000、3mM DTT、0.4mM アデノシン、0.4mM グアノシン、0.4mM シチジン、0.4mM ウリジン、36μg/mL フォリン酸、80mM クレアチンリン酸、150μg/mL E.coli tRNA、13mM 酢酸マグネシウム、各1.5mM タンパク質構成アミノ酸(ただしCys、Ser、Arg、Trp、Asn、およびGlnについては4.5mM)、50μg/mL クレアチンキナーゼ、100μg/mL T7RNAポリメラーゼ、4μg/mL 鋳型DNA、および24% 大腸菌S30抽出液。
鋳型DNAには、pK7−CATを用いた(非特許文献:Kim DM, Kigawa T, Choi CY, Yokoyama S (1996) EurJ Biochem 239:881-886)。このプラスミドはT7プロモーター、リボソーム結合配列、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子、およびT7ターミネーターから構成されている。
大腸菌S30抽出液は、Zubayの方法(非特許文献:Zubay G., Ann Rev Genet, (1973) 7, 267-287)、およびKigawaらの方法(非特許文献:Kigawa T, Yabuki T, Matsuda N, Matsuda T, Nakajima R, Tanaka A, Yokoyama S. (2004) J Struct Funct Genomics 5, 63-68)に従って、大腸菌BL21 codon−plus RIL株(Stratagene社)から調製した。
シチジン(Sigma社)、およびウリジン(Sigma社)はミリQ水に溶解して、100mMの溶液として調製した。アデノシン(ナカライテスク社)、およびグアノシン(和光純薬社)は水への溶解度が低い(約0.2mM)ため、ミリQ水を加えて、100mMの懸濁液を調製して実験に用いた。
なお、NTPを用いた対照としては、アデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジンの代わりに、1.3mM ATP、0.9mM GTP、0.9mM CTP、および0.9mM UTPが添加されている。
反応は、30℃で行った。
(CATタンパク質の定量)
CATタンパク質の合成量は、Kigawaらの方法(非特許文献:Kigawa T, YabukiT, Matsuda N, Matsuda T, Nakajima R, Tanaka A, Yokoyama S. (2004) J Struct Funct Genomics 5, 63-68)に従って、比活性の値から求めた。結果を図1に示す。
図1は、反応時間と合成量との関係を示す図である。図1に示されるように、NTPを添加した合成系の場合には、タンパク質合成反応は1時間程度で停止していた。一方、リボヌクレオシドを添加した合成系の場合には、タンパク質合成反応は2時間持続していた。その結果、リボヌクレオシドを添加した合成系では、NTPを添加した合成系と比較して、約1.4倍量のCATタンパク質が合成された。以上から、NTPの代わりにリボヌクレオシドを用いることによって、無細胞タンパク質合成系におけるタンパク質合成が可能であるばかりでなく、NTPを用いた場合よりも合成量を増加させることができることが示された。
〔実施例2:EGFPタンパク質、UBAタンパク質、Rasタンパク質、およびβガラクトシダーゼタンパク質の合成〕
実施例1と同様にして、N末端にHisタグを融合させたEGFPタンパク質(分子量34kDa)、UBAタンパク質(分子量10kDa)、Rasタンパク質(分子量24kDa)およびβガラクトシダーゼタンパク質(分子量119kDa)の合成について比較を行った。
(合成反応条件)
EGFPタンパク質、UBAタンパク質、Rasタンパク質およびβガラクトシダーゼタンパク質の鋳型DNAとして、それぞれpCR2.1 NHis−EGFP、pCR2.1 N11−UBA、pK7b2 NHis−RasおよびpUC19 N11−β−galactosidaseを用いた以外は、実施例1と同じである。これらのプラスミドは、構造遺伝子の上流に、T7プロモーターおよびリボソーム結合配列を有しており、下流に、T7ターミネーターを有している(非特許文献:Matsuda T, Kigawa T, KoshibaS, Inoue M, Aoki M, Yamasaki K, Seki M, Shinozaki K, Yokoyama S. (2006) J Struct Funct Genomics. 7(2), 93-100.参照)。
反応は、30℃で4時間行った。
(EGFPタンパク質、UBAタンパク質、Rasタンパク質、およびβガラクトシダーゼタンパク質のHisタグアフィニティ精製)
合成反応後の反応液を、12,000rpmで5分間、室温で遠心した。その上清80μLを、96穴フィルタープレート(ミリポア社)に加え、そこに60μLのAバッファー(20mM Tris−HCl pH7.5、300mM NaCl)、および予めAバッファーで平衡化した60μLの50% TALON(登録商標)樹脂(TAKARABIO社)を加えて、10分間振とうした。フィルタープレートを1500rpmで1分間遠心し、抽出液由来の夾雑タンパク質を除いた。ここで、目的のタンパク質はTALON樹脂に結合している。次に、150μLのAバッファーを加えて1500rpmで1分間遠心する洗浄工程を、3回行った。最後に、50μLのBバッファー(20mM Tris−HCl pH7.5、300mM NaCl、300mM イミダゾール)を加えて3分間振とう撹拌した後に1500rpmで1分間遠心して粗精製タンパク質を得る溶出工程を2回行った。
(EGFPタンパク質、UBAタンパク質、Rasタンパク質、およびβガラクトシダーゼタンパク質の定量)
EGFPタンパク質、UBAタンパク質、Rasタンパク質およびβガラクトシダーゼタンパク質の各粗精製タンパク質の定量は、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質として、Protein assay試薬(Bio−Rad社)を用いて、ブラッドフォード法で行った。また、粗精製タンパク質についてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、分子量の確認を行った。結果を図2および3に示す。
図2は、ブラッドフォード法により定量した各タンパク質の収量を示す図である。図3は、電気泳動の結果を示す図であり、レーンA〜Dは、鋳型DNAとしてそれぞれpCR2.1 NHis−EGFP、pCR2.1 N11−UBA、pK7b2 NHis−RasおよびpUC19 N11−β−galactosidaseを用いた合成系由来の粗精製物であり、レーンEは合成系に鋳型DNAを含まないコントロールの合成系由来の粗精製物である。図2に示されるように、リボヌクレオシドを添加した合成系の場合には、NTPを添加した合成系の場合と比較して、タンパク質の収量が約1.2倍〜1.4倍となり、より高い収量で得られた。また、図3に示されるように、リボヌクレオシドを添加した合成系において合成されたタンパク質は、NTPを添加した合成系の場合と同じく、目的のタンパク質の分子量を有するタンパク質であった。以上から、ごく小さなタンパク質から100kDaを超える高分子量タンパク質まで様々なタンパク質においても、NTPの代わりにリボヌクレオシドを用いることによって正しく合成が可能であるばかりでなく、NTPを用いた場合よりも収量を増加させることができることが示された。
〔実施例3:添加するリボヌクレオシドの種類による評価〕
添加するリボヌクレオシドの種類および量を変化させた場合のタンパク質の合成量について比較を行った。
(合成反応条件)
鋳型DNAとしてpCR2.1 NHis GFP−S1を用い、4種類のリボヌクレオシドのうち、いずれか1種類、2種類または3種類を、各0.1〜1.6mM添加した以外は、実施例1と同じである。プラスミドpCR2.1 NHis GFP−S1は、GFP−S1タンパク質をコードする配列を有しており、この配列の上流にT7プロモーターおよびリボソーム結合配列を有しており、下流に、T7ターミネーターを有している(非特許文献:Seki E, Matsuda N, Yokoyama S, Kigawa T.(2008)Anal Biochem. 377(2):156-161.参照)。
反応は、30℃で3時間行った。
(GFP−S1タンパク質の合成量の評価)
反応終了後、10μLの反応液に90μLのPBSを加えて、485nm(励起光)/535nm(発光)の蛍光強度を測定することにより、GFP−S1タンパク質の合成量を評価した。結果を図4に示す。
図4は各合成系におけるGFP−S1タンパク質由来の蛍光強度を示す図であり、(a)は、リボヌクレオシドとして少なくともアデノシンおよびグアノシンが添加されている合成系における結果を示しており、(b)は、リボヌクレオシドとして少なくともアデノシンが添加されている合成系における結果を示しており、(c)は、リボヌクレオシドとして少なくともグアノシンが添加されている合成系における結果を示しており、(d)は、リボヌクレオシドとしてアデノシンおよびグアノシンのいずれもが添加されていない合成系における結果を示している。
図4(a)に示されるように、4種類のリボヌクレオシドを添加した場合には、0.1〜1.6mMの範囲で安定した蛍光値が得られた。このことから、仮に、リボヌクレオシドの濃度が多少ずれたとしても、タンパク質合成は安定していることが示された。また、リボヌクレオシドは必ずしも4種類加える必要はなく、例えば、グアノシンおよびシチジンの2種類のみを添加した場合にも蛍光値の上昇が検出され、0.4mM以上のグアノシンおよびシチジンのみを添加した場合には、4種類すべてのリボヌクレオシドを添加した場合と同程度の蛍光値が得られた(図4(c)参照)。これは、グアノシンまたはシチジンから、ATPおよびUTPが合成されたものと推定される。
さらに、グアノシンのみを添加した場合にも蛍光値の上昇が検出され、1.2mM以上のグアノシンを添加した場合には、NTPを添加した場合と同程度の蛍光値が得られた(図4(c)参照)。このことから、リボヌクレオシドを添加して合成を行う系において、グアノシンを添加することにより、合成量をより向上させることができることが示された。
〔実施例4:透析法によるCATタンパク質の合成〕
上述の実施例1では、バッチ法によりCATタンパク質の合成を行ったが、透析法によってもCATタンパク質の合成を試みた。
(合成反応条件)
透析法による無細胞合成系の内液組成は、次の通りである:60mM HEPES−KOH(pH7.5)、230mM D−グルタミン酸カリウム、4% PEG8000、3mM DTT、0.05% NaN、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、36μg/mL フォリン酸、80mM クレアチンリン酸、175μg/mL E.coli tRNA、10mM 酢酸マグネシウム、各1.5mM タンパク質構成アミノ酸、100μg/mL クレアチンキナーゼ、60μg/mL T7RNAポリメラーゼ、1μg/mL 鋳型DNA、および30% 大腸菌S30抽出液。また、外液組成は、次の通りである:60mM HEPES−KOH(pH7.5)、230mM D−グルタミン酸カリウム、4% PEG8000、3mM DTT、0.05% NaN、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、36μg/mL フォリン酸、80mM クレアチンリン酸、10mM 酢酸マグネシウム、各1.5mM タンパク質構成アミノ酸、30% 大腸菌S30バッファー。
アデノシン、グアノシン、シチジンおよびウリジンの濃度は、内液および外液ともに、0.2mM、0.4mM、0.8mM、1.2mMまたは1.6mMである。なお、NTPを用いた対照としては、内液および外液ともに、アデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジンの代わりに、1.3mM ATP、0.9mM GTP、0.9mM CTP、および0.9mM UTPが添加されている。
鋳型DNAには、pK7−CATを用いた。大腸菌S30抽出液ならびにシチジン、ウリジン、アデノシンおよびグアノシンは実施例1と同様にして調製した。
反応は、30℃で14時間行った。
(CATタンパク質の定量)
CATタンパク質の定量方法は、実施例1と同様である。結果を図5に示す。
図5は、CATタンパク質の合成量を比較した図である。図5に示されるように、0.8〜1.6mMのリボヌクレオシドを添加した場合には、NTPを添加した場合の80〜103%のCATタンパク質が合成されていた。すなわち、ミリグラム単位の大量調製に用いられる透析法においても、リボヌクレオシドを用いて、従来と同程度のタンパク質を合成できることが示された。
透析法を行う場合、通常、内液および外液の両方にNTPを加える必要があり、外液には内液の10倍の量を用いることが一般的である。すなわち、透析法ではより多くのNTPが必要となるため、NTPを安価なリボヌクレオシドに入れ替えることによるコストの削減効果は、透析法において顕著である(図6参照)。
〔実施例5:NTP合成の確認〕
上記実施例1の反応において、鋳型DNAおよびT7 RNA polymeraseの何れをも添加していない反応液を調製し、反応開始前のサンプル、および反応開始から30分後のサンプルを各30μl回収し、5%TCAを等量加えて氷冷した。これを12,000rpmで5分間遠心を行い、得られた上清39μLに内部標準として2mM NADを1μL加えた。この溶液20μLに含まれる各ヌクレオシドおよび各NTPの検出を、C18カラムをつないだ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。結果を図7に示す。
図7(a)は、反応開始前のサンプルにおける結果を示しており、図7(b)は、反応開始から30分後のサンプルにおける結果を示している。図7に示されるように、反応開始直後に検出されていたアデノシン、グアノシン、シチジンおよびウリジンのピークは、反応開始から30分後には大幅に低減しており、一方で、ATP、GTP、CTPおよびUTPのピークが増大していた。このことから、合成系内において、アデノシン、グアノシン、シチジンおよびウリジンから、ATP、GTP、CTPおよびUTPが合成されていることが確認できた。
〔実施例6:EGFPタンパク質の合成〕
エネルギー再生系の成分として、(i)クレアチンリン酸(CP)およびクレアチンキナーゼ(CK)、(ii)30mM PEP、0.33mM NAD、0.26mM CoAおよび2.7mM シュウ酸ナトリウム、または(iii)30mM グルコース、0.33mM NAD、0.26mM CoAおよび10mM KHPOを用い、かつ、pK7−CATの代わりに、pCR2.1 NHis−EGFPを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてタンパク質の合成を行った。なお、ピルビン酸キナーゼは大腸菌S30抽出液中に含まれているため、ピルビン酸キナーゼのさらなる添加は行っていない。反応は、30℃で3時間行った。何れの場合にもさらなる対照として、リボヌクレオシドの代わりに、1.3mM AMP、0.9mM GMP、0.9mM CMP、および0.9mM UMPを添加して、あるいはリボヌクレオシドおよびその代替物を添加せずに、タンパク質の合成を行った。反応終了後、実施例3と同様にして、485nm(励起光)/535nm(発光)の蛍光強度を測定することにより、EGFPタンパク質の合成量を評価した。結果を図8に示す。
図8に示されるように、PEPを用いた場合であっても、リボヌクレオシドを添加することにより、添加しない場合と比較し、タンパク質の合成量が増加した。
また、CPおよびCKを含む系においてNMPを用いた場合、得られた蛍光値はCPおよびCKを含む系においてNTPを用いた場合の約9割程度であったのに対し、CPおよびCKを含む系においてリボヌクレオシドを用いた場合、得られた蛍光値はCPおよびCKを含む系においてNTPを用い場合の約1.2倍であった。
本発明は、タンパク質の合成、機能の解析、および構造の解析を必要とする、製薬分野および保健医学分野をはじめ、生命科学分野の産業に広く利用することができる。

Claims (11)

  1. 無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成方法であって、
    タンパク質をコードする鋳型DNAと、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドとを、タンパク質合成用の細胞抽出液を含む反応液に添加することを特徴とするタンパク質の合成方法。
  2. 少なくともグアノシンを添加することを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  3. アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか2種のリボヌクレオシドを添加することを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  4. 少なくともグアノシンおよびシチジンを添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質の合成方法。
  5. 上記細胞抽出液は細菌細胞から調製した抽出液であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のタンパク質の合成方法。
  6. 上記細胞抽出液は大腸菌から調製した抽出液であることを特徴とする請求項5に記載のタンパク質の合成方法。
  7. ATP再生系の成分を上記反応液に添加することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のタンパク質の合成方法。
  8. 上記ATP再生系の成分として、クレアチンキナーゼおよびクレアチンリン酸を上記反応液に添加することを特徴とする請求項7に記載のタンパク質の合成方法。
  9. 透析法による合成方法であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のタンパク質の合成方法。
  10. バッチ法による合成方法であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のタンパク質の合成方法。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載のタンパク質の合成方法に使用されるタンパク質の合成キットであって、アデノシン、グアノシン、ウリジンおよびシチジンのうちの少なくとも何れか1種のリボヌクレオシドと、細胞抽出液とを含むことを特徴とするタンパク質の合成キット。
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