JP6150016B2 - 固定具用磁着補助具および電動式ドライバー - Google Patents

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Description

本発明は、ドライバービットなどを挿脱して磁化することで、その先端に鉄、ステンレスの固定具を吸着させるための固定具用磁着補助具、その磁着補助具を用いた電動式ドライバーに関する。
従来の固定具用磁着補助具として、たとえば、下記特許文献1に記載されたものがある。
この補助具は、ネオジウム磁石を2個の半リング状に形成して、両磁石間にスペースを設けてリング状に配されており、中央の空間(中空貫通孔)にドライバービットを差し込んで、その軸部を磁化する構成となっており、ドライバービットの先端にビス等の回転式の固定具を吸着して保持するようにしたものである。
特開2004−141986号公報
しかしながら、上記文献のものは、鉄製のビスなどの固定具を取り付けに使用するもので、電動式ドライバービットの先端に、ステンレス製のビスなどの固定具を吸着して保持する程度の強い磁力を得ることはできない。
特に近時においては、鉄などの固定具は、錆びて腐食するため、屋外の建築物などには向かず、ステンレス製のビスなどが使用されることが多くなっており、ステンレス製のビスも、鉄製のビスと同じように、電動式ドライバービットの先端に吸着して保持できるような補助具の開発が望まれている。
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、ドライバービットの先端を強力に磁化して、ステンレス製の固定具でも磁着することのできる固定具用磁着補助具を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の固定具用磁着補助具は、複数の永久磁石を、中央に中空貫通孔が形成されるように、隣接する永久磁石の同一極性の端部同士を、隙間なく束状に接合させて、花弁状の筒状体を構成しており、複数の永久磁石は、中空貫通孔に挿嵌されるドライバービットの軸線に対して、磁力線が先端に向う傾斜角度をもって磁化方向を規定することで、ドライバービットの先端側の磁極分岐点がドライバービットの表面から遠ざかるように傾斜していることを特徴とする。
このような本発明では、複数の永久磁石のそれぞれの中空貫通孔と反対の端面に、クッション材を介在させたものとしてもよい。
また、複数の永久磁石は、それらの外周に、中空貫通孔の貫通方向に沿って補助永久磁石を付設することで更に磁力をアップさせる構成としてもよい。
さらに、花弁状の筒状体は、正n角形の形状をなしたものとしてもよい。
さらに、永久磁石は、磁石間の隣接する側面に面取接合面が形成されたものとしてもよい。
また、本発明の電動式ドライバーは、請求1〜7のいずれかの項に記載の固定具用磁着補助具を、ドライバービットに装着した構成となっている。
本発明の固定具用磁着補助具によれば、上述した構成となっているため、永久磁石を束ねた構造体の磁束の漏れは殆どなくなり、ドライバービットの挿入される中空貫通孔に磁束を集中させることができる。このため、中空貫通孔に挿入されたドライバービット先端にも大量の磁力線が集めることができ、そのため、ステンレス製のビスなどの固定具を磁着させることができる。
(a)は本発明の一実施形態に係る固定具用磁着補助具の外観を示す斜視図、(b)は同側面図である。 (a)は図1(b)のA−A線に対応した断面図、(b)は図2(a)のB−B線に対応した、図1(a)の固定具用磁着補助具の断面図である。 固定具用磁着補助具の使用要領、ドライバービットが挿嵌され、先端にビスを磁着させた状態を表した縦断面図である。 固定具用磁着補助具にドライバービットが挿嵌されたときの磁束分布を示す図である。 (a)、(b)は固定具用磁着補助具に用いられる永久磁石の模式説明図であり、(a)は永久磁石の磁化方向をドライバービットの軸線に対して90度の方向とした模式図、(b)は永久磁石の磁化方向の傾斜角度を90度より小さい角度とした模式図である。 は固定具用磁着補助具に用いられる補助永久磁石の模式説明図である。 (a)〜(e)は、固定具用磁着補助具の永久磁石の配置例を示す模式図である。
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
固定具用磁着補助具1(以下、磁着補助具1という)は、複数の永久磁石21を花弁状に配置させて筒状体に構成したものであり、永久磁石21の中央には中空貫通孔13が形成されるように、隣接する永久磁石21の同一極性の端部同士を、隙間なく束状に接合させた構造をなしている。
永久磁石21と中空貫通孔13との関係は、図2(a)に示したものの他に、図7のような形態が可能であり、中央の中空貫通孔13は、望ましくは、正n角形を構成しているが、そのような形状には限定されない。
ついで、図1および図2を参照して、磁着補助具1のさらに具体的な構造について説明する。
図1に示した磁着補助具1は、中央に中空貫通孔13を有した円柱形状とされる(図1(a)参照)。図例の中空貫通孔13は、正六角柱状とされ、円の中心位置に配されている。
この磁着補助具1は、本体ケース10、永久磁石21、ゴムなどの弾性材料で構成されたクッション材22およびヨーク15を有している。これらのうち、永久磁石21、クッション材22およびヨーク15は図2に見るように、中空貫通孔13の貫通方向に沿って配されている。
本体ケース10は、磁着補助具1の円柱形状を概ね形づくる非磁性体の樹脂で製されており、上部に開口を有し、下部に中空貫通孔13を形成するための六角開口を有した本体11と、上部の開口を塞ぐ蓋体12とで構成される。
永久磁石21は、6個の同一形状のものが花弁の形状を保持するように、本体ケース10の本体11内に樹脂材料16を充填している。個々の永久磁石21の横断面形状は、図2(a)に示すように、矩形と等脚台形とを組み合わせてなる六角形状になっている。また、極性の配置も永久磁石21間で同一であり、本図例のものは、中空貫通孔13側がN極となるように配列しているが、S極、N極を逆配置としてもよい。
6個の永久磁石21は、隣設された永久磁石21の間が隙間を形成しないようにして、図例では、等脚台形の脚辺どうしが接するように、つまり脚辺に相当する両面を面取接合面25として、これらを相互に密着させるようにして花弁状に配列されている。
また、複数の永久磁石21のそれぞれにおける中空貫通孔13と反対の端面には、クッション材22が配設されており、これによって、中空貫通孔13に挿入されるビット径に多少の大小があっても、その誤差を吸収して、隙間を生じないようになっている。
本体ケース10の本体11内では、6個の永久磁石21が同一磁極が向き合うように配列されているので、同一極性どうしの反発力を生じる。そのため、永久磁石21は、花弁の形状を崩さないように本体11内には樹脂材料16を充填して強固に拘束されている。
ついで、図3および図4を参照して、磁着補助具1の使用要領について説明する。
複数の永久磁石21は、それぞれの磁化の向きを矢印で示すように、中空貫通孔13に挿入されるドライバービット40の軸線43(図3参照)に対して先端41に向かうように、傾斜させて磁化させているが、このような構成は後述するように、本発明の必須の構成ではない。
一般的に、ステンレス製のビスなどの固定具は磁化できないために、磁着させることはできないが、ステンレスのうちでも、オーステナイト系(SUS304)のものは、通常時は非磁性材料であるが、大きい負荷を加えて変形させた場合には、マルテンサイトに変態して磁化させることができることが知られており、本発明者は、通常の建築物に使用されているSUS304のステンレス製のビスなどは、その頭部にドライバービット40の先端41を嵌め入れる挿入溝を形成する工程で、すでに、そのような変態を生じていることを知得して、本発明に到達している。
本磁着補助具1では、図3に示したように、その中空貫通孔13に、強磁性体よりなるドライバービット40が挿入されると、ドライバービット40は磁化されて、ステンレス製のビスなどのステンレス固定具45の頭部46に形成されたビット挿入溝48をドライバービット40の先端41に近づけると、ステンレス製のビス45を吸着させることができる。なお、図3の符号47はビス45の軸部である。
図4に示したように、磁着補助具1にドライバービット40が差し込まれた状態では、2点鎖線で図示したような磁力線32が放射される磁場が形成される。なお、図3、図4には、磁極間を結ぶ軸線に沿った磁力線31を磁力線32とは区別して図示した。
すなわち、中空貫通孔13にドライバービット40が挿嵌された状態では、6個の永久磁石21の磁束が中空貫通孔13に集中してドライバービット40に入り込み、さらにドライバービット40に入った磁束は、先端に向けて磁着補助具1のヨーク15の先端側に入り込む磁束ループと、基端側に入り込んで磁着補助具1のヨーク15の後端に入り込む磁束ループを構成するので、このときドライバービット40の先端41に多くの磁力線32を導くことができれば、その先端41には、鉄製だけでなく、ステンレス製のビスでも磁着させる強い磁力を作用させることができる。
本発明は、複数の永久磁石を上述したように、隙間なく束状に接合させて、中央に中空貫通孔を形成して、花弁状の筒状体を構成する基本構造によって、それぞれの永久磁石から放射される磁束を中空貫通孔に集中させて強い磁場を形成するので、ドライバービット40を磁化して、ドライバービット40の先端41に、ステンレス製のビスなどのステンレス固定具45を吸着させることができたが、本発明者がさらに検討を加えたところ、永久磁石21からドライバービット40に入り込む磁束を、ドライバービット40の基端42側よりも先端41側に向かう磁束が多くなるように偏らせれば(図3、図4の磁力線31の方向を参照)、ドライバービット40の先端41にはより強い磁束密度が得られることを知得した。
本発明者が提案する、磁束をドライバービット40の先端41側に偏らせる第一の形態は、花弁状の筒状体を構成する、永久磁石21のそれぞれの磁化の向きを、中空部貫通孔13に挿入されるドライバービット40の先端側に向けたもので、このような構造は、永久磁石21の磁化の向きを、ドライバービット40の軸線43に対して、角度を持たせることで容易に実施できる。
図5は、永久磁石21の磁化の方向を示したもので、図5(a)は、ドライバービット40の軸線43に対して、垂直、すなわち90度の方向にしたもの、これに対して、図5(b)は、永久磁石21の磁化の方向をドライバービット40の軸線43に対して、Wだけ傾斜して着磁させたものを模式的に示している。
図5(a)のものは、永久磁石21の磁化の方向が、ドライバービット40の軸線43に対して、垂直、つまり90度に設定されているので、この態様では、永久磁石21のS極とN極の磁極分岐点35が中空貫通孔13の方向に平行となり、永久磁石21から放射された磁束は、ドライバービット40の先端41側、基端42側に対して偏ることなく入り込んでいる。
図5(b)のものは、永久磁石21の磁化の方向が、ドライバービット40の軸線43に対して、傾斜した角度Wに設定したもので、この態様では、永久磁石21は、S極とN極との境界が中空貫通孔13の方向に平行となっておらず、ドライバービット40の先端41側の磁極分岐点35がドライバービット40の表面から遠ざかるように傾斜している。
永久磁石21から放射された磁束は、ドライバービット40の先端41側が基端42側より多くなっているので、その傾斜角度Wを変化させることで、先端41側により大きな磁束密度が得られる最適値を探ることができる。
また、本発明者の検討によれば、ドライバービット40の先端41での磁束の大きさは、S極とN極の境界線の、ドライバービット40の先端41側の境界点(磁極分岐点35)から、N極側の永久磁石21の端面までの距離Lの長さによって概ね定まることが知見によって得られている。
これによれば、磁極分岐点35がドライバービット40の表面から遠い位置にあるほど、ドライバービット40の先端41に大きな磁束を集中させることができるので、より厚めの永久磁石21を用いればドライバービット40の先端41で強い磁力が発生する。
また、図5(b)に示した磁化の方向を傾斜させた構成は、磁極分岐点35をドライバービット40の表面から遠い位置に設ける手段としても有益である。
また、磁束を偏らせる第二の形態は、図6に示すように、花弁状の筒状体を構成する、永久磁石21のそれぞれの磁化の向きを、ドライバービット40の軸線43に対して傾斜させる構成に加えて、それぞれの永久磁石21の外周に、中空貫通孔13の貫通孔の方向に沿って磁極を揃えた補助永久磁石23を付設することで可能となる。
図6の形態では、複数の補助永久磁石23は、図示したように、その磁極が中空貫通孔13の貫通方向の沿って配され、さらにN極をドライバービット40の先端41側に配するように補助永久磁石23を配設している。
このような永久磁石21と補助永久磁石23との組み合わせによれば、ドライバービット40の先端41側の磁極分岐点35をさらに遠い位置に形成することができ、そのため、ドライバービット40の先端41側ではさらに強い磁力が発生する。
図5(b)や図6に示した構成の磁着補助具1では、ドライバービット40の軸線43に対して、先端方向に向う傾斜角度Wを持った磁力線31を多く放射するので、厚みを厚くしなくても、ドライバービット40の先端41で磁力を強めることができる。
永久磁石21の磁化方向を、ドライバービット40の軸線43に対して、傾斜角度を60度〜90度変化させたものについて、ドライバービット40の先端41での磁力を計測する試験を行った。永久磁石21としては、残留磁束密度が高い希土類磁石のネオジウム磁石を用いたが、それぞれは、20000Gの磁束密度で磁化して、5000Gの残留磁気密度が得られたものを、6個束ねて、6面体の花弁状の筒状体として構成したものを使用した。
中空貫通孔13の出口(永久磁石21の端部)からドライバービット40の先端41までの突出長が1mm、6mm、11mm、16mm、21mmについて試験を行った。
永久磁石21からドライバービット40の先端41までの突出長は短いほど先端41での磁力が強くなり、当然に突出長が1mmの場合に高い磁力が発生することが確認できた。操作のしやすさを考慮すれば、上方からドライバービット40の先端41方向を見た場合、先端41が磁着補助具1によって隠れない程度に突出していることが望ましく、そのため突出長が16mm程度が必要となる。その場合にはドライバービット40の先端41で6000ガウス程度の磁力を計測でき、突出長が最も長い21mmの場合でも5000ガウス程度の磁力が発生することを確認できた。ステンレス固定具45を磁着するのには十分であった。
また、それぞれの磁場角度Wの永久磁石21にさらに補助永久磁石23を付けた場合(図6に相当)の試験を行ったが、上記の試験よりもさらに高い磁力が得られた。
以上のように、永久磁石21として6個のネオジウム磁石を用い、それらを隙間なく花弁状に束ねた磁着補助具1を用いることで、ドライバービット40の先端41を強力に磁化できることが確認できた。
ついで、花弁状の筒状体について、図7(a)〜(e)を参照しながら説明する。
これらは、中空貫通孔13として、断面が6角形以外の形状のものを有している。図7(a)(b)では中空貫通孔13が円形、図7(c)では正方形、図7(d)では5角形、図7(e)では長方形となっている。
永久磁石21としては、図7(a)では同一の弧状の3個の永久磁石21が用いられ、図7(b)では同一の弧状の4個の永久磁石21が用いられている。また、図7(c)(d)(e)では、図2(a)に示した永久磁石21と同様に、断面が矩形と等脚台形を組み合わせた6角形状のものが用いられている。図7(c)(d)では複数の永久磁石21が相互に同一形状となっているが、図7(e)では長方形の辺長に対応するように2種の形状の永久磁石21が用いられている。
図7に示した5種の形状のものも、図2に示したものと同様、隣設された永久磁石21は面どうしが密着しているため、磁束の漏れは発生しにくく、ドライバービット40の先端41(図4参照)に効率よく強い磁力を持たせることができる。
以上に説明した種々の磁着補助具1は、電動式ドライバーなどのドライバービット40(図3等参照)に取り付けて使用することができる。
1 固定具用磁着補助具(磁着補助具)
10 本体ケース
11 本体
12 蓋体
13 中空貫通孔
15 ヨーク
16 樹脂材料
21 永久磁石
22 クッション材
23 補助永久磁石
25 面取接合面
31 磁力線(磁極間を結ぶ軸線)
32 磁力線
35 磁極分岐点
40 ドライバービット
41 ドライバービットの先端
42 ドライバービットの基端
43 軸線
45 ステンレス固定具(ビス)
46 頭部
47 軸部
48 ビット挿入溝

Claims (7)

  1. 複数の永久磁石を、中央に中空貫通孔が形成されるように、隣接する永久磁石の同一極性の端部同士を、隙間なく束状に接合させて、花弁状の筒状体を構成しており、
    前記複数の永久磁石は、前記中空貫通孔に挿嵌されるドライバービットの軸線に対して、磁力線が先端に向う傾斜角度をもって磁化方向を規定することで、該ドライバービットの先端側の磁極分岐点が前記ドライバービットの表面から遠ざかるように傾斜している、固定具用磁着補助具。
  2. 請求1において、
    前記複数の永久磁石のそれぞれは、中空貫通孔と反対の端面に、クッション材を介在させている、固定具用磁着補助具。
  3. 請求1または2において、
    前記複数の永久磁石は、それらの外周に、前記中空貫通孔の貫通方向に沿って磁極を揃えた補助永久磁石を付設している、固定具用磁着補助具。
  4. 請求1〜3のいずれかにおいて、
    前記花弁状の筒状体は、正n角形の形状をしている、固定具用磁着補助具。
  5. 請求1〜4のいずれかにおいて、
    前記永久磁石は、隣接する側面に面取接合面を形成している、固定具用磁着補助具。
  6. 請求1〜5のいずれかにおいて、
    前記固定具は、ステンレス製のビスなどの固定具である、固定具用磁着補助具。
  7. 請求1〜6のいずれかの項に記載の固定具用磁着補助具を、ドライバービットに装着した電動式ドライバー
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