JP6148487B2 - チタン−タンパク質複合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン−タンパク質複合体の製造方法に関する。
1950年代〜1960年代にかけて、スウェーデンのブローネマルクによって、生体内において骨とチタンとが強固に結合する現象(オッセオインテグレーション)が発見された。骨とチタンとが強固に結合する生化学的メカニズムは完全には解明されていないが、オッセオインテグレーションの利用価値は非常に大きい。実際、現在使用されているすべての人工骨および人工歯根は、オッセオインテグレーションを利用しているといえる。
しかしながら、現在使用されている人工骨および人工歯根には、骨とチタンとの結合に時間がかかるという問題がある。たとえば、人工歯根では、埋入してから定着するまで3ヶ月かかることもある。また、骨量が少ない場合、人工骨または人工歯根が骨に定着しにくいという問題もある。
このような問題を解消するべく、骨とチタンとの結合を促進させるために、チタン表面に各種コーティングを施したり、チタン表面を粗面化したりすることが提案されている。たとえば、特許文献1には、チタン製の人工歯根の表面をハイドロキシアパタイトでコーティングした人工歯根が開示されている。また、特許文献2には、チタン製の人工歯根の表面にチタン繊維からなる不織布を固定した人工歯根が開示されている。
特開2006−131469号公報 特開2004−67543号公報
上記のように、これまでも、骨とチタンとの結合を促進させる技術が数多く提案されているが、現時点において医療技術者および患者の要望をすべて満たしているとはいえない。そこで、本発明者は、従来技術とは異なる視点から骨とチタンとの結合を促進させる技術を開発することを試みた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、短期間でかつ強固に骨と結合できるチタンまたはチタン合金からなる部材を提供することを目的とする。
本発明者は、リン酸化タンパク質でチタンまたはチタン合金からなる基材の表面を被覆することで上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のチタン−タンパク質複合体、生体インプラントおよび細胞培養基材に関する。
[1]チタンまたはチタン合金からなる基材と、リン酸化タンパク質またはその部分ペプチドを含み、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆するリン酸化タンパク質含有層と、を有する、チタン−タンパク質複合体。
[2]前記リン酸化タンパク質は、オステオポンチン、骨シアロタンパク質、象牙質マトリックスタンパク質−1、マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質、象牙質リンタンパク質または象牙質シアロタンパク質である、[1]に記載のチタン−タンパク質複合体。
[3]前記リン酸化タンパク質含有層は、前記リン酸化タンパク質のリン酸化セリンを含む部分ペプチドを含む、[1]または[2]に記載のチタン−タンパク質複合体。

[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載のチタン−タンパク質複合体を含む、生体インプラント。
[5][1]〜[3]のいずれか一項に記載のチタン−タンパク質複合体を含む、細胞培養基材。
[6]前記基材は、チタンまたはチタン合金からなるメッシュまたは平板である、[5]に記載の細胞培養基材。
本発明によれば、例えば、短期間でかつ強固に骨と結合できる生体インプラントや、骨芽細胞などの培養に好適な細胞培養基材を提供することができる。
ウシ大腿骨の抽出液についてのチタンクロマトグラフィーの溶出パターン(クロマトグラム)である。 Stains-all染色法で染色されたゲルの写真である。 埋植4週間後のインプラント周囲の組織像(HE染色切片)である。 埋植1週間後のインプラント周囲の組織像(HE染色切片)である。 リン酸化タンパク質(TiBP)の効果を示すグラフである。
本発明のチタン−タンパク質複合体は、チタンまたはチタン合金からなる基材と、前記基材の表面の少なくとも一部を被覆するリン酸化タンパク質含有層とを有する。本発明のチタン−タンパク質複合体は、例えば生体インプラントや細胞培養基材などに適用されうる。生体インプラントの例には、人工股関節用ステム、人工膝関節、人工椎体、人工椎間板、骨補填材、骨プレート、骨スクリュー、人工歯根などが含まれる。
基材は、チタンまたはチタン合金からなる部材である。基材の形状は、特に限定されず、本発明のチタン−タンパク質複合体の用途に応じて適宜選択すればよい。たとえば、本発明のチタン−タンパク質複合体を生体インプラントに適用する場合、基材の形状の例には、柱状(ロッド状)、板状、シート状、ブロック状、ワイヤ状、繊維状、粉末状などが含まれる。また、本発明のチタン−タンパク質複合体を細胞培養基材に適用する場合、基材の形状の例には、メッシュ状(不織布を含む)、平板状などが含まれる。
リン酸化タンパク質含有層は、リン酸化タンパク質またはその部分ペプチド(天然タンパク質由来のペプチドまたは合成ペプチド)を含み、基材表面の少なくとも一部を被覆する層である。リン酸化タンパク質は、リン酸を含有する複合タンパク質であり、チタンに吸着しやすい性質を有する。本発明者は、チタン粒子を充填したカラムを使用したカラムクロマトグラフィーによりチタンに吸着しやすいタンパク質を調べたところ、オステオポンチン(osteopontin:OPN)、骨シアロタンパク質(bone sialoprotein:BSP)、象牙質マトリックスタンパク質−1(dentin matrix protein 1:DMP1)、マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(matrix extracellular phosphoglycoprotein:MEPE)、象牙質リンタンパク質(dentin phosphoprotein:DPP;ホスホホリン)、象牙質シアロタンパク質(dentin sialoprotein:DSP)、α−カゼイン、ホスビチンなどのリン酸化タンパク質がチタンに吸着しやすいことを見出した。また、これらのリン酸化タンパク質は、骨に含まれる各種細胞とも容易に結合する。したがって、基材の表面にリン酸化タンパク質含有層を形成することで、基材と骨に含まれる各種細胞との親和性を顕著に向上させることができる。
リン酸化タンパク質含有層に含有されるリン酸化タンパク質(またはその部分ペプチド)の種類は、特に限定されないが、骨に含まれるオステオポンチン、骨シアロタンパク質、象牙質マトリックスタンパク質−1、マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質、象牙質リンタンパク質または象牙質シアロタンパク質が好ましい。これらのリン酸化タンパク質は、いずれも骨または象牙質に含まれる非コラーゲン性タンパク質であり、酸性糖タンパク質である。これらのリン酸化タンパク質またはその部分ペプチドは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オステオポンチン(OPN)は、骨に含まれる代表的なリン酸化タンパク質であり、細胞接着に関与するRGD配列およびシアル酸を含有する糖鎖を有する。RGD配列は、Arg−Gly−Aspの3残基よりなる配列であり、細胞のαβインテグリンにより認識される。オステオポンチンは、骨芽細胞や象牙芽細胞、破骨細胞などにおいて産生される。オステオポンチンの機能としては、破骨細胞の接着誘導などが注目されており、オステオポンチンは、様々な条件下における骨の代謝に関与していると考えられている。
骨シアロタンパク質(BSP)は、骨に含まれるもう一方のシアロタンパク質であり、RGD配列を有する。骨シアロタンパク質は、インビトロにおいて骨芽細胞や破骨細胞などを基質に接着させることが報告されている。骨シアロタンパク質は、骨芽細胞や象牙芽細胞などにおいて産生される。骨シアロタンパク質は、骨の形成や石灰化に関与していると考えられている。
象牙質マトリックスタンパク質−1(DMP1)は、象牙芽細胞のcDNAライブラリーから発見されたが、その後骨にも存在することが明らかになったリン酸化タンパク質である。象牙質マトリックスタンパク質−1もRGD配列を有している。象牙質マトリックスタンパク質−1は、インビトロにおいてアパタイト結晶の核形成を誘導できることが報告されている。象牙質マトリックスタンパク質−1は、骨芽細胞や象牙芽細胞、骨細胞などにおいて産生される。
マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(MEPE)は、骨芽細胞および骨細胞によって産生されるリン酸化タンパク質である。マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質の発現は、石灰化の進行とともに増加する。
象牙質リンタンパク質(DPP;ホスホホリン)は、象牙質に特有のタンパク質であり、ヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンに親和性を有している。象牙質リンタンパク質は、分化した象牙芽細胞において産生される。
象牙質シアロタンパク質(DSP)も、象牙質に特有のタンパク質であり、コラーゲンに結合してアパタイトの核形成を行うとともに、象牙芽細胞の分化を促進すると考えられている。象牙質シアロタンパク質も、分化した象牙芽細胞において産生される。
リン酸化タンパク質の部分ペプチドは、天然タンパク質由来のペプチドであってもよいし、合成ペプチドであってもよい。また、リン酸化タンパク質の部分ペプチドは、リン酸化タンパク質のリン酸化されたアミノ酸(すなわち、リン酸化セリン)を含む部分ペプチドであることが好ましい。
リン酸化タンパク質の準備方法は、特に限定されず、骨からリン酸化タンパク質を分離、精製してもよいし、遺伝子組み換え技術を利用して特定のリン酸化タンパク質またはその部分ペプチド(有効なリン酸を含む活性ペプチド)を調製してもよい。たとえば、以下の手順により、骨からリン酸化タンパク質を得ることができる。
(リン酸化タンパク質の分離方法)
まず、ウシまたはブタの大腿骨から、公知の方法により精製骨粉を調製する。骨粉を蒸留水に加えて、骨粉懸濁液を調製する。骨粉を脱灰するために、懸濁液に6Nの塩酸を少しずつ添加して、懸濁液のpHを2に維持する。脱灰を行っている間は、懸濁液の温度を4〜10℃に維持する。脱灰が完了した後、上清と脱灰骨粉とを分離する。
脱灰骨粉を2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)に加え、4℃で24時間抽出する。この抽出工程は、2回繰り返し行う。次いで、抽出後の残渣を4Mグアニジン/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)に加え、4℃で24時間抽出する。この抽出工程も、2回繰り返し行う。2M尿素抽出液は、この後のクロマトグラフィーにおいてそのままサンプルとして使用される。一方、4Mグアニジン抽出液は、2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)で繰り返し透析をされ、サンプルとして使用される。このようにして得られたサンプルには、骨の有機基質中に存在する非コラーゲン性タンパク質の大部分が含まれていると考えられる。
直径45μmのチタン粒子を詰めたカラムを準備する。カラムの大きさ(容量)は、特に限定されず、サンプルの量に応じて適宜設定される。たとえば、直径16〜50mm、高さ5〜10cmのカラムを使用すればよい。2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)で平衡化したカラムにサンプルを添加した後、2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)を流して非吸着成分を溶出させる。次いで、25mM水酸化ナトリウム水溶液を流して、吸着成分(リン酸化タンパク質)を溶出させる。得られたリン酸化タンパク質は、透析脱塩および凍結乾燥された後、−20℃で保存される。
以上の手順により得られるリン酸化タンパク質は、オステオポンチン(OPN)、骨シアロタンパク質(BSP)、象牙質マトリックスタンパク質−1(DMP−1)およびマトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(MEPE)を含む(例えば、電気泳動法およびリン酸化タンパク質染色法により確認できる)。本発明者は、これらのリン酸化タンパク質がチタンに吸着されること、およびチタンカラムを用いて精製されうることを初めて見出した。
リン酸化タンパク質含有層を基材の表面に形成する方法は、特に限定されない。たとえば、以下の手順により、リン酸化タンパク質含有層を基材の表面に形成することができる。
(リン酸化タンパク質含有層の形成方法)
以下の操作は、すべて無菌条件下のクリーンベンチ内で行われる。終濃度が0.1〜1.0%となるようにリン酸化タンパク質またはその部分ペプチドを生理的緩衝液(例えば、ダルベッコ生理的緩衝液)に溶解させた後、無菌ろ過して、タンパク質溶液を調製する。基材の表面にタンパク質溶液を塗布するか、基材をタンパク質溶液に浸漬して、基材の表面にリン酸化タンパク質またはその部分ペプチドを吸着させる。次いで、過剰量の液体を吸引除去した後、基材の表面を乾燥させる。リン酸化タンパク質が吸着した基材(本発明のチタン−タンパク質複合体)は、無菌容器内において、乾燥状態かつ10℃以下で保存される。
リン酸化タンパク質含有層は、リン酸化タンパク質などに加え、用途に応じてコラーゲンなどの他の成分を含んでいてもよい。この場合であっても、リン酸化タンパク質の効果を十分に発揮させるためには、リン酸化タンパク質含有層中のリン酸化タンパク質の量は、50質量%以上であることが好ましく、90質量%であることがより好ましい。
本発明のチタン−タンパク質複合体では、チタンまたはチタン合金からなる基材の表面がチタンおよび骨に含まれる各種細胞の両方に対して親和性が高いリン酸化タンパク質またはその部分ペプチドでコートされている。したがって、本発明のチタン−タンパク質複合体を生体インプラント(例えば、人工骨や人工歯根など)として使用した場合には、短期間でかつ強固に骨と結合させることができる。また、本発明のチタン−タンパク質複合体を細胞培養基材として使用した場合には、骨に含まれる各種細胞を好適に培養することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
1.リン酸化タンパク質の分離
まず、ウシの大腿骨または中足骨から、公知の方法により精製骨粉を調製した。骨粉を蒸留水に加えて、骨粉懸濁液を調製した。骨粉を脱灰するために、懸濁液に6Nの塩酸を少しずつ添加して、懸濁液のpHを2に維持した。脱灰を行っている間は、懸濁液の温度を10℃以下に維持した。脱灰が完了した後、上清と脱灰骨粉とを分離した。
脱灰骨粉を2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)に加え、4℃で24時間抽出した。この抽出工程は、2回繰り返し行った。次いで、抽出後の残渣を4Mグアニジン/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)に加え、4℃で24時間抽出した。この抽出工程も、2回繰り返し行った。2M尿素抽出液は、この後のクロマトグラフィーにおいてそのままサンプルとして使用した。一方、4Mグアニジン抽出液は、5倍量の2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)で5回透析をしたものをサンプルとして使用した。
直径45μmのチタン粒子(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ)を詰めたカラム(内径16mm×高さ5cmまたは内径26mm×高さ10cm)を準備した。2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)で平衡化したカラムにサンプルを添加した後、2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)を流して非吸着成分を溶出させた。次いで、25mM水酸化ナトリウム水溶液を流して、吸着成分(リン酸化タンパク質)を溶出させた。図1は、溶出パターンを示すクロマトグラムである。左側のピークは、2M尿素/0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)によって溶出した非吸着成分を示しており、右側のピークは、25mM水酸化ナトリウム水溶液によって溶出した吸着成分を示している。得られた吸着成分は、透析脱塩および凍結乾燥した後、−20℃で保存した。
上記手順により得られた吸着成分(約100μg)を定法に従って還元およびSDSで変性させた後、15%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った(SDS−PAGE)。泳動後のゲルを、リン酸化タンパク質を特異的に青く染めるStains-all染色法(Campbell, K. P., et al., J. Biol. Chem., Vol.258, pp.11267-11273.)で染色した。
図2は、染色後のゲルの写真である。図2Aは、カラー写真(赤色の成分、緑色の成分および青色の成分を含む)をグレースケールに変換した写真であり、図2Bは、カラー写真に含まれる青色の成分のみをグレースケールで表示した写真であり、図2Cは、カラー写真に含まれる赤色の成分のみをグレースケールで表示した写真である。これらの写真に示されるように、典型的なリン酸化タンパク質であるウシβカゼイン(分子量4万)は、青色に染色され、主としてアルブミン(分子量4.5万)からなるウシ血清は、赤色に染色された。同一条件で染色された吸着成分では、少なくとも4本の青色に染色されたバンドが確認された(下側4つの矢印参照)。このことから、吸着成分は、オステオポンチン(OPN)、骨シアロタンパク質(BSP)、象牙質マトリックスタンパク質−1(DMP−1)およびマトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(MEPE)を含むと考えられる。なお、一番上の矢印は、これらのリン酸化タンパク質を含むタンパク質の会合体を指している。これらの会合体は、分子量が非常に大きいため、ゲル内に入り込むことができず、導入箇所に留まっている。また、前述のカラムクロマトグラフィーで得られた非吸着成分(図1の左側のピーク)は、Stains-all染色法では染色されなかった。
なお、上記吸着成分のうち、オステオポンチンについては、ウエスタンブロットによりその存在を別途確認している。また、飛行時間型質量分析法(TOFMS)により吸着成分を分析した結果、質量数86,81,75,70,60,53,50,48,42,36kDaの顕著なピークが確認された。これらのピークは、それぞれ、マトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(MEPE、アミノ酸配列数554)、象牙質マトリックスタンパク質−1(DMP−1、アミノ酸配列数510)、骨シアロタンパク質(BSP、アミノ酸配列数310)およびオステオポンチン(OPN、アミノ酸配列数278)、あるいはこれらの断片であると推定される。
2.リン酸化タンパク質でコーティングされた生体インプラント
直径50μmのチタン細繊維からなるチタン製不織布を、直径2mm、高さ3mmの円柱状に成形した。また、リン酸化タンパク質(上記吸着成分)をPBSに溶解させて、0.1%タンパク質溶液を調製した。チタン製不織布の成形体をタンパク質溶液に一定時間浸漬した後、乾燥させて、各チタン細繊維の表面をリン酸化タンパク質でコーティングした(リン酸化タンパク質含有層を形成した)。以上の手順により、実施例の生体インプラントを準備した。なお、タンパク質溶液には少量の塩類を除いてはリン酸化タンパク質(上記吸着成分)のみを添加しているため、リン酸化タンパク質含有層中のリン酸化タンパク質の量は、90質量%以上であると考えられる。一方、比較例の生体インプラントとして、リン酸化タンパク質でコーティングしていないチタン製不織布の成形体も準備した。
生後8週齢のウイスター系ラットに8%抱水クロラールを腹腔内投与して麻酔した。歯科用ドリルを用いて脛骨に直径2.8mmの穴をあけ、実施例および比較例のインプラントを埋植した。埋植3週間後および6週間後に、インプラントおよびその周辺部を摘出した。得られたサンプルの切片を作製し、コールのヘマトキシリン・エオジン染色で染色し、インプラント周囲の骨の形成量を比較した。その結果、比較例のインプラントに比べ、実施例のインプラントの方が、チタン不織布内に新生骨が旺盛に形成されており、良好な結果であった。
3.リン酸化タンパク質でコーティングされた細胞培養基材
直径50μmのチタン細繊維からなるチタン製不織布を、直径13mm、厚さ1.5mmの円板状に成形した。また、リン酸化タンパク質(上記吸着成分)をPBSに溶解させて、0.1%タンパク質溶液を調製した。チタン製不織布の成形体をタンパク質溶液に一定時間浸漬した後、乾燥させて、各チタン細繊維の表面をリン酸化タンパク質でコーティングした(リン酸化タンパク質含有層を形成した)。なお、この場合も、リン酸化タンパク質含有層中のリン酸化タンパク質の量は、90質量%以上であると考えられる。以上の手順により、実施例の細胞培養基材を準備した。一方、比較例の細胞培養基材として、リン酸化タンパク質でコーティングしていないチタン製不織布の成形体も準備した。
24穴マルチウェルプレートの各ウェルに、実施例または比較例の細胞培養基材を入れた。次いで、各ウェルに骨芽細胞(MC3T3−E1)を5万個播種した。37℃、5%CO、湿度100%の環境下において、各細胞をイーグルMEM培地中で培養した。培養開始から3日後および7日後に、MTT法により各ウェルの細胞数を測定した。その結果、比較例の細胞培養基材に比べ、実施例の細胞培養基材では、細胞数は減少するものの、細胞の分化が進行しているのが観察された。
[実施例2]
1.リン酸化タンパク質の分離
実施例1と同様の手順で、ウシの中足骨からリン酸化タンパク質(チタン結合性骨タンパク質(titanium-binding bone proteins);以下「TiBP」ともいう)を分離した。TiBPは、オステオポンチン(OPN)、骨シアロタンパク質(BSP)、象牙質マトリックスタンパク質−1(DMP−1)およびマトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質(MEPE)を含むと考えられる。
2.TiBPでコーティングされた生体インプラント
(1)生体インプラントの作製
直径50〜80μmのチタン細繊維からなるチタン製不織布(Titanium web;以下「TW」ともいう)を、縦2mm、横3mm、高さ3mmの長方形状に成形した(1個約8mg)。また、TiBPをPBSに溶解させて、TiBP溶液(1mg/500mL)を調製した。TWの成形体をTiBP溶液に一定時間浸漬した後、乾燥させて、各チタン細繊維の表面をTiBPでコーティングした(リン酸化タンパク質含有層を形成した)。以上の手順により、実施例の生体インプラント(チタン−タンパク質複合体;TW/TiBP)を準備した。なお、この場合も上述した理由により、リン酸化タンパク質含有層中のリン酸化タンパク質の量は、90質量%以上であると考えられる。一方、比較例の生体インプラントとして、TiBPでコーティングしていないTWの成形体も準備した。
(2)生体インプラントの埋植
生後8週齢の雄のウイスター系ラット(200〜230g)に、体重100g当たり3.6mgのペントバルビタールナトリウム(ネンブタールR;大日本住友製薬株式会社)を腹腔内投与して麻酔した。歯科用ドリルを用いて頭蓋骨に形成された穴、および頭蓋骨と骨膜との間に、実施例のインプラント(TW/TiBP)および比較例のインプラント(TW)をそれぞれ埋植した。埋植1週間後および4週間後に、インプラントおよびその周辺部を摘出した。
(3)組織学的観察
得られたサンプルを10%中性ホルムアルデヒドで固定し、ポリエステル樹脂に包埋して、厚さ80μmの切片を作製した。得られた切片を、コールのヘマトキシリン・エオジン染色で染色した後、光学顕微鏡で観察した。
図3は、ラット頭蓋冠において硬膜と骨膜との間にTWまたはTW/TiBP複合体を埋植して4週間経過した後の、インプラント周囲の組織像である。図3A,Bは、比較例のインプラント(TW)周囲の組織像であり、図3C〜Fは、実施例のインプラント(TW/TiBP)周囲の組織像である。図3A〜B、および図3C〜Fは、それぞれ倍率が異なる。
図3A,Bに示されるように、比較例のインプラント(TW)の周囲では、コラーゲン繊維の凝集が観察されたが、骨の新生もわずかに観察された。一方、図3C〜Fに示されるように、実施例のインプラント(TW/TiBP)の周囲では、多数の血管が形成されているとともに(図3D,Eの矢印参照)、新生骨には活性状態の骨芽細胞が付着しており(図3Fの矢印参照)、活発な骨新生が誘導されていた。
図4は、ラット頭蓋冠において硬膜と骨膜との間にTWまたはTW/TiBP複合体を埋植して1週間経過した後の、インプラント周囲の組織像である。図4A〜Dは、比較例のインプラント(TW)周囲の組織像であり、図4E〜Hは、実施例のインプラント(TW/TiBP)周囲の組織像である。図4A〜D、および図4E〜Hは、それぞれ倍率が異なる。図4Fに示される矢印は、新生骨表面に位置する活性状態の骨芽細胞を示している。
比較例のインプラント(TW)の周囲では、低倍率では明確には見えなかったが(図4A参照)、高倍率ではTWと既存の骨との境界で骨のような構造が観察された(図4B〜D参照)。一方、実施例のインプラント(TW/TiBP)周囲では、明確な細胞集団がTWに囲まれた空間において観察された(図4E,F参照)。これは、豊富な細胞外マトリックス(図4Hにおいて矢印で示す)に付随する未成熟細胞の集団であると考えられる。興味深いことに、化学誘因作用によるものかのように、チタン細繊維に近いほど細胞密度が高くなっていた。この時点では明瞭な骨の新生は観察できなかったが、実施例のインプラント(TW/TiBP)と比較例のインプラント(TW)とで、組織の状態は大きく異なっていた。
(4)骨新生に対するTiBPの効果の評価
埋植して4週間経過した後の骨新生の進行度合を、実施例のインプラント(TW/TiBP)と比較例のインプラント(TW)とにより詳細に比較した。具体的には、それぞれ5つの切片の写真について、TWの断面およびTWに囲まれている空間の合計面積に対する新生骨およびその前駆組織の合計面積の割合を測定した。図4に示した写真において、TWの断面は、黒色で示された部分であり、TWに囲まれている空間は、白色で示された部分と、濃い赤色および薄い赤色で染色された部分との合計部分である。新生骨は、濃い赤色で染色され、骨の前駆組織は、薄い赤色で染色されている。ここで「新生骨」とは、マトリックスがぎっしり詰まっており、平坦な骨芽細胞により覆われている骨を意味し、「骨の前駆組織」とは、マトリックスおよび血管が多いが、緩んだ状態の組織を意味する。面積の測定は、画像結合ソフトウェア(NIS-Elements;株式会社ニコン インストルメンツカンパニー)を用いて実施した。
図5は、TWの断面およびTWに囲まれている空間の合計面積に対する新生骨およびその前駆組織の合計面積の割合を示すグラフである。図5に示されるように、実施例のインプラント(TW/TiBP)を埋植した場合の骨の前駆組織の形成量は、比較例のインプラント(TW)を埋植した場合よりも5.2倍多かった。また、実施例のインプラント(TW/TiBP)を埋植した場合の全骨(新生骨およびその前駆組織)の形成量は、比較例のインプラント(TW)を埋植した場合よりも7倍多かった。さらに、実施例のインプラント(TW/TiBP)を埋植した場合の新生骨の形成量は、比較例のインプラント(TW)を埋植した場合よりも320倍多かった。
以上の結果から、リン酸化タンパク質(TiBP)は、チタンの骨形成作用を有意に促進させて、チタン製の生体インプラントと骨との結合を速められることがわかる。
本発明によれば、例えば、短期間でかつ強固に骨と結合できる生体インプラントや、骨芽細胞などの培養に好適な細胞培養基材を提供することができる。

Claims (3)

  1. チタンへの吸着を利用して、骨のタンパク質抽出液から複数種類のチタン結合性骨タンパク質を分離する工程と、
    分離された複数種類の前記チタン結合性骨タンパク質を、チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に吸着させて、チタン結合性骨タンパク質含有層を形成する工程と、
    を含む、チタン−タンパク質複合体の製造方法
  2. 前記複数種類のチタン結合性骨タンパク質を分離する工程では、チタンカラムを用いたクロマトグラフィーにより、骨のタンパク質抽出液から複数種類のチタン結合性骨タンパク質を分離する、請求項1に記載のチタン−タンパク質複合体の製造方法。
  3. 前記チタン結合性骨タンパク質含有層は、オステオポンチン、骨シアロタンパク質、象牙質マトリックスタンパク質−1およびマトリックス細胞外リン酸化糖タンパク質を含む、請求項1または請求項2に記載のチタン−タンパク質複合体の製造方法
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