JP6146670B2 - 蛍光材料、蛍光体、及び蛍光体の製造方法 - Google Patents

蛍光材料、蛍光体、及び蛍光体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、蛍光材料、蛍光体、及び蛍光体の製造方法に関し、より詳しくは亜鉛酸化物及び希土類元素を含有した蛍光材料とこの蛍光材料を使用した蛍光体、及びこの蛍光体の製造方法に関する。
蛍光体は、紫外線や赤外線、放射線等の外部から入力されたエネルギーを光に変換する物質であり、様々な用途に使用されている。これら蛍光体のうち、発光中心と称される元素(以下、「発光中心元素」という。)をナノ粒子で形成された母体材料中に含有した蛍光体は、高効率に発光させることが可能であり、様々な蛍光デバイスへの応用が期待されている。
そして、発光中心元素のうち、Eu等の希土類元素は、4f軌道が内殻に存在することから、該4f軌道が配位子との結合に関与することはなく、電子がf軌道内で原子間を遷移するf−f遷移を生じ、斯かる電荷移動遷移によって発光する。
例えば、非特許文献1には、生体高分子に支援された水熱合成法によるEu添加ZnO粒子の白色発光ダイオード技術が報告されている。
この非特許文献1では、生体高分子の一種である水溶性ナトリウムアルギネートの存在下、ナノロッドからなるEuが添加されたZnOを水熱合成法で作製し、均一なミクロンサイズのZnO粒子を得ている。
Shuan GaO et.al., "Engineering white light-emitting Eu-doped ZnO urchins by biopolymer-assisted hydrothermal method", Applied Physics Letters, 2006, 89, 123125-1-123125-3(Fig.2)
しかしながら、非特許文献1では、発光中心元素としてEuを使用し、半導体材料としてZnOを使用し、EuがZnOに添加された蛍光体を得ようとしているが、水熱合成法で作製しているため、蛍光体の粒径がミクロンサイズと大きく、このため十分な発光特性を得るのは困難である。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、良好な発光特性を有する蛍光材料、この蛍光材料を使用した蛍光体、及びこの蛍光体を簡便かつ低コストで作製することができる蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
亜鉛酸化物は、安価かつ無毒性な材料であり、半導体特性、導電性、圧電性等、様々な特性を有することから、各種方面で広く使用されており、近年では、この亜鉛酸化物を使用したナノレベルの超微粒子材料や超微粒子薄膜の研究・開発も盛んに行われている。
本発明者は、斯かる亜鉛酸化物を母体材料に使用し、発光中心元素として希土類元素を使用し、蛍光材料について鋭意研究を行ったところ、亜鉛酸化物の結晶子径を7.4nm以下とすることにより、亜鉛酸化物の量子サイズ効果によって亜鉛酸化物のバンドギャップエネルギーが大きくなり、更には酸素原子周辺の電子が希土類元素イオンの周辺に移動して該希土類元素イオン周辺の電子密度が増加し、これにより亜鉛酸化物のバンドギャップ内で酸素原子から希土類元素への電荷移動遷移を効率良く行うことができ、発光強度を増強させることが可能であるという知見を得た。
さらに、本発明者が発光現象を詳細に解析したところ、電荷移動遷移帯は、蛍光励起(PLE)スペクトルにおいて山形状の裾の部分からピークを挟んだブロードな領域に存在するが、電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーが光吸収端エネルギーよりも小さくなるように構成することにより、電荷移動遷移帯は亜鉛酸化物のバンドギャップ内に存在することとなり、これにより酸素原子から希土類元素への電荷移動を促進させることができ、発光強度を効果的に増強させることができるという知見も得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る蛍光材料は、亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素とを含有し、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、前記希土類元素は発光中心元素であることを特徴としている。
また、本発明は、上記蛍光材料において、電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーは、光吸収端エネルギーよりも小さいのが好ましい。
さらに、本発明に係る蛍光材料は、亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素とを含有し、電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーが、光吸収端エネルギーよりも小さくなるように構成され、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、かつ、前記希土類元素は発光中心元素であることを特徴としている。
また、本発明の蛍光材料は、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が6.0nm以下であるのが好ましい。
これにより、量子サイズ効果により亜鉛酸化物のバンドギャップエネルギーがより大きくなることから、バンドギャップ内での酸素原子から希土類元素への電荷移動をより容易に促進させることができ、より一層増強された良好な発光強度を得ることが可能となる。
また、本発明の蛍光材料は、前記発光中心元素が、f−f遷移により発光すのが好ましい。
すなわち、f軌道が内殻に存在する希土類元素を発光中心元素に使用することにより、電子はf軌道内を酸素原子から希土類元素へと電荷移動し、発光強度の増強された蛍光体を容易に得ることができる。
さらに、本発明の蛍光材料は、前記希土類元素は、Euであるのが好ましい。
このようにEuを使用してf−f遷移を生じさせることにより、半値幅が狭く鋭敏な発光特性を有することとなり、発光強度の増強された赤色発光が可能となる。
また、本発明に係る蛍光体は、上記蛍光材料を含有していることを特徴としている。
これにより希土類元素を発光中心元素とした半値幅が狭く鋭敏な発光特性を有することから、発光強度の増強された各種蛍光体を得ることができる。
また、上記蛍光体は、簡便かつ低コスト化の観点からは、液相法で作製するのが好ましく、さらに液相法の中でもマイクロエマルジョン溶液中に原料を注入して加水分解反応を生じさせるマイクロエマルジョン法を使用して作製するのが好ましい。
すなわち、本発明に係る蛍光体の製造方法は、亜鉛酸化物及び発光中心元素となる希土類元素を含有した酸化物を含むナノ粒子が分散溶液中に分散したナノ粒子分散溶液を作製するナノ粒子分散溶液作製工程と、前記ナノ粒子分散溶液を使用して基材上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜を熱処理する熱処理工程とを含み、前記熱処理工程を100℃以上320℃以下の熱処理温度で行い、前記亜鉛酸化物の結晶子径が7.4nm以下の蛍光体を作製するうことを特徴としている。
このように液相法でナノ粒子分散溶液を作製した後、ナノ粒子の薄膜を320℃以下の低温で熱処理を行うことにより、熱処理時にナノ粒子が粒成長するのを抑制され、亜鉛酸化物の結晶子径が7.4nm以下とされた蛍光体を簡便かつ低コストで容易に作製することができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、前記ナノ粒子分散溶液作製工程は、疎水性溶媒、界面活性剤、及び水を混合し、水滴が油中に分散した油中水滴型のマイクロエマルジョン溶液を作製するマイクロエマルジョン溶液作製工程と、亜鉛アルコキシド、及び希土類元素を含有したアルコキシドを溶媒中で混合して混合アルコキシド溶液を作製する混合アルコキシド溶液作製工程と、前記混合アルコキシド溶液を前記マイクロエマルジョン溶液に注入し、加水分解反応を生じさせる加水分解工程とを含むのが好ましい。
このようにマイクロエマルジョン法により界面活性剤で包囲された水滴内で加水分解反応を生じさせ、ナノ粒子を生成することにより、熱処理後においても希土類元素、亜鉛及び酸素原子が極めて良好な分散状態となり、酸素原子から希土類元素への効率の良い電荷移動遷移の実現が可能となる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、前記熱処理工程を290℃以下の熱処理温度で行うのが好ましい。
このようにナノ粒子の薄膜を290℃以下の低温で熱処理を行うことにより、熱処理時にナノ粒子が粒成長するのをより一層効果的に抑制することができ、亜鉛酸化物の結晶子径を6.0nm以下の好ましい範囲とすることが可能となる。
さらに、本発明の蛍光体の製造方法は、前記希土類元素が、Euであるのが好ましい。
本発明の蛍光材料によれば、亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素とを含有し、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、前記希土類元素は発光中心元素であるので、亜鉛酸化物の量子サイズ効果によって亜鉛酸化物のバンドギャップエネルギーが大きくなり、更には酸素原子周辺の電子が希土類元素イオンの周辺に移動して該希土類元素イオン周辺の電子密度が増加し、これにより亜鉛酸化物のバンドギャップ内での酸素原子から発光中心元素である希土類元素への電荷移動遷移を効率良く行うことができ、発光強度を増強させることが可能となる。
また、本発明の蛍光材料によれば、亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素を含有し、電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーが、光吸収端エネルギーよりも小さくなるように構成され、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、かつ、前記希土類元素は発光中心元素であるので、電荷移動遷移帯は亜鉛酸化物のバンドギャップ内に存在することとなり、これにより酸素原子から希土類元素への電荷移動を促進させることができ、発光強度を効果的に増強することが可能となる。
また、本発明に係る蛍光体は、上記蛍光材料を含有しているので、希土類元素を発光中心元素とした半値幅が狭く鋭敏な発光特性を有することから、発光強度の増強された各種蛍光体を得ることができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法によれば、亜鉛酸化物及び発光中心元素となる希土類元素を含有した酸化物を含むナノ粒子が分散溶液中に分散したナノ粒子分散溶液を作製するナノ粒子分散溶液作製工程と、前記ナノ粒子分散溶液を使用して基材上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜を熱処理する熱処理工程とを含み、前記熱処理工程を100℃以上320℃以下の熱処理温度で行い、前記亜鉛酸化物の結晶子径が7.4nm以下の蛍光体を作製するので、液相法でナノ粒子分散溶液を作製した後、ナノ粒子の薄膜を320℃以下の低温で熱処理を行うことができ、これにより熱処理時にナノ粒子が粒成長するのを抑制され、亜鉛酸化物の結晶子径が7.4nm以下とされた蛍光体を簡便かつ低コストで容易に作製することができる。
本発明に係る蛍光材料を使用して形成された蛍光体の一実施の形態を模式的に示す断面図である。 蛍光材料の吸収スペクトルと発光励起(PLE)スペクトルの一例を模式的に示した図である。 亜鉛酸化物の結晶子径の算出方法を説明するためのX線回折スペクトルを模式的に示した図である。 本発明の製造方法で作製されたナノ粒子分散溶液の一実施の形態を模式的に示した正面図である。 図4の要部拡大図である。 上記ナノ粒子分散溶液の製造方法を説明するための模式図である。 実施例で作製されたナノ粒子のTEM画像である。 実施例で作製された各試料の発光状態を示すデジタル写真である。 試料7〜12のX線光電子分光スペクトルを示す図である。 試料番号7〜10の蛍光(PL)スペクトルを示す図である。 試料番号7の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示す図である。 試料番号8の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示す図である。 試料番号9の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示す図である。 試料番号10の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示す図である。 試料番号15をSTEM−XDSで解析した粒子画像と成分分布画像を示す図である。 比較例の発光状態を示す図である。 比較例の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示す図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は本発明に係る蛍光材料を使用して形成された蛍光体の一実施の形態を模式的に示す断面図であって、該蛍光体1は、石英ガラス等で形成された基板2上に形成されている。
蛍光体1を形成する蛍光材料は、亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素Reとを含有している。具体的には、亜鉛酸化物であるZnOを母体材料とし、発光中心元素として作用する希土類元素ReがZnO中に含有されている。
そして、ZnOの結晶子径は、7.4nm以下の超微粒とされており、これによりf軌道内での電子のO(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動遷移効率、すなわちf−f遷移効率が向上し、蛍光体1の発光強度を増大させることが可能となる。
このようにZnOの結晶子径は、7.4nm以下の超微粒とすることにより、発光強度が増大するのは以下の2つの理由が考えられる。
第1は、ZnOのバンドギャップエネルギーと電子移動遷移帯との関係が考えられる。
図2は、蛍光体1の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを模式的に示した図であり、横軸が光子エネルギー、縦軸は吸光度又はPLE強度を示し、実線が蛍光励起(PLE)スペクトル、破線が吸収スペクトルである。
O(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動に伴う電荷移動遷移過程は、紫外光から可視光に架けての広い範囲で存在することが知られているが、図2に示す蛍光励起(PLE)スペクトルでは、電荷移動遷移帯は、山形状の裾の部分からピークPを挟んだブロードな領域Aで表わされると考えられる。
そして、半導体ナノ結晶では、10nm以下の超微粒になると量子サイズ効果が生じ、結晶子径が小さくなればなるほど、半導体ナノ結晶のバンドギャップエネルギーは大きくなる。一方、蛍光励起(PLE)スペクトルは、半導体ナノ結晶のバンドギャップエネルギーが変動しても、ZnOの結晶子径によって規定される固有の特性を有し、変動することはない。
したがって、ZnOの結晶子径が超微粒になればなるほど、電荷移動遷移帯エネルギーは、ZnOのバンドギャップエネルギーよりも低エネルギー側に位置することとなり、これによりO(酸素原子)からEuへの効率良い電荷移動が生じやすくなり、発光強度が増大するものと思われる。
第2は、希土類元素Re周辺の電子密度が関係すると考えられる。
後述する実施例のX線光電子分光スペクトル(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)(図9参照)から明らかなように、ZnOの結晶子径が微粒になればなるほど、Eu3+(Re3+)のXPSにおけるピーク強度が低下し、Eu(Re)又はEu2+(Re2+)のXPSにおけるピーク強度は大きくなる。すなわち、ZnOの結晶子径が微粒になるとRe3+周辺の電子密度が増加すると考えられる。
一方、電荷移動遷移帯エネルギーνCTは数式(1)で表わされることが知られている。
νCT=3.72×{(χ(O)−χ(Re3+)}…(1)
ここで、χ(O)はO(酸素原子)の電気陰性度を示し、χ(Re3+)はRe3+の電気陰性度を示している。
すなわち、この数式(1)よりO(酸素原子)とRe3+の電気陰性度の差が小さくなって共有結合性が大きくなればなるほど、電荷移動遷移帯エネルギーνCTは低くなる。ZnOは、TiO等とは異なり、イオン結合性が弱いことから、ZnOの結晶子径が小さくなればなるほど、ZnOの共有結合性が増加してO(酸素原子)周辺の電子がRe3+周辺に分布し、その結果、Re3+周辺の電子密度が増加すると考えられる。
このようにZnOの結晶子径が小さくなればなるほど共有結合性が大きくなることから、それに伴って電荷移動遷移帯エネルギーνCTが低下し、ZnOのバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギー位置に存在することとなり、これによりO(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動が促進され、蛍光強度が増大すると考えられる。
そして、蛍光励起(PLE)スペクトルと吸収スぺクトルの観点から、O(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動を促進するためには、図2の蛍光励起(PLE)スペクトルにおいて、山形状の裾の部分、すなわち電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーE1が、光吸収端エネルギーE2よりも小さくなるように構成する必要がある。すなわち、光吸収端エネルギーE2は、吸光度が立ち上がるエネルギー値を示しており、その波長はZnOのバンドギャップに相当する波長を示す。
そして、前記突入時エネルギーE1が、光吸収端エネルギーE2(ZnOのバンドギャップエネルギー)よりも小さくなるように構成するためには、十分な量子サイズ効果を発現できるようにZnOの結晶子径を制御する必要があり、斯かる観点からZnOの結晶子径は、許容範囲を考慮し、上述したように7.4nm以下とする必要があり、好ましくは6.0nm以下である。
すなわち、ZnO自体が直接遷移型半導体であることから光吸収性を有し、かつ希土類元素Reへのエネルギー移動により発光に寄与することから、突入時エネルギーE1が光吸収端エネルギーE2と同等乃至その近傍域であっても、それに相当する結晶子径を許容範囲として含めている。
一方、ZnOの結晶子径が7.4nmを超えると、電荷移動遷移帯が高エネルギー側にシフトし、価電子帯の電子が伝導帯に移送されやすくなって、O(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動が生じ難くなり、好ましくない。
尚、ZnOの結晶子径は、周知の粉末X線回折法を使用し、半値幅ΔHから容易に測定することができる。
すなわち、図3は粉末X線回折法により得られたX線スペクトルの要部を模式的に示した図であり、横軸は回折角2θ、縦軸はX線強度である。
そして、結晶子径Dは、数式(2)で表される。
D=K・λ/(ΔH・cosθ) …(2)
Kは定数であり、λは特性X線の波長を示している。
したがって、ZnOの結晶子径は、X線強度のピークの半値幅ΔHを求めることにより、容易に得ることができる。
尚、結晶子径は、後述する製造方法からも明らかなように、熱処理温度を調整することにより、容易に制御することができる。
そして、このような希土類元素としては、特に限定されるものではないが、f軌道が内殻に存在してf−f遷移で発光するCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの群から選択された少なくとも1種以上の元素を好んで使用することができ、これらの中では特にEuを好んで使用することができる。
このように本蛍光材料は、ZnOからなる半導体材料と希土類元素Reとを含有し、電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーが、光吸収端エネルギーよりも小さくなるように、ZnOの結晶子径が7.4nm以下とされているので、ZnOの量子サイズ効果によってZnOのバンドギャップエネルギーが大きくなり、更にはO(酸素原子)周辺の電子がRe3+の周辺に移動して該Re3+周辺の電子密度が増加し、これによりZnOのバンドギャップ内でのO(酸素原子)から希土類元素Reへの電荷移動遷移を効率良く行うことができ、発光強度を増強させることが可能となる。
そして、この蛍光材料を使用して蛍光体1を作製することにより、良好な発光強度を有する各種技術分野に応用可能な蛍光体を得ることができる。
次に、この蛍光体1の製造方法を詳述する。
蛍光体1は、簡便かつ低コスト化の観点からは、液相法で作製するのが好ましく、さらに液相法の中でもマイクロエマルジョン溶液中に原料を注入して加水分解反応を生じさせるマイクロエマルジョン法を使用して作製するのが好ましい。
すなわち、マイクロエマルジョン法は、粒度分布が狭く、所望の量子サイズ効果の発現が可能な7.4nm以下の超微粒のナノ粒子を容易に得ることができ、かつ原料を選択するだけでナノ粒子の種類を簡便に変更でき、設計の自由度も大きい。
しかも、このマイクロエマルジョン法は、加水分解反応によりナノ粒子を得ることができるため、後工程で熱処理を行っても、各成分(希土類元素Re、Zn、O)を極めて良好に分散させることが可能となり、これによりO(酸素原子)から希土類元素Reへの効率の良い電荷移動遷移を実現できる蛍光体1を得ることができる。
以下、このマイクロエマルジョン法を使用したナノ粒子分散溶液の作製方法を解説する。
図4は、マイクロエマルジョン法で作製されたナノ粒子分散溶液を模式的に示した正面図である。
すなわち、このナノ粒子分散溶液3は、ナノ粒子4が、界面活性剤5に包囲された形態で疎水性溶媒6中に分散浮遊しており、斯かる分散溶液3が、容器7に収容されている。
具体的には、図5に示すように、界面活性剤5は、主界面活性剤8と副界面活性剤9とを有している。
そして、主界面活性剤8は、疎水性基8aと親水性基8bとを有し、疎水性基8aは疎水性溶媒6に吸着され、親水性基8bはナノ粒子4に吸着されている。
ここで、主界面活性剤8としては、ポリオキシエチレン基((CHCHO))の部分で親水性を得ることができるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE(n))が使用され、特に、化学式HC(CHO(CHCHO)Hで示されるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NPE(n))が好んで使用される。
そして、APE(n)の側鎖長nを変更することにより、得られるナノ粒子4の平均粒径D50を制御することが可能となる。すなわち、側鎖長nの長さが長くなると、側鎖長nの長さが短いときに比べ、ナノ粒子4の平均粒径D50は小さくなる傾向にある。これは、側鎖長nの長さが大きくなると親水性基も長くなることから、ナノ粒子4の生成に寄与する水滴への吸着力が強くなって水滴径がより小さくなり、その結果、生成されるナノ粒子4の平均粒径D50も小さくなるためと考えられる。
このようにAPE(n)の側鎖長nの差を利用してナノ粒子4の平均粒径D50を制御することが可能となる。したがって、側鎖長nの異なるAPE(n)を選択するのみでナノ粒子4の結晶子径を制御することが可能となる。
また、副界面活性剤9は、後述するマイクロエマルジョン作製時において、主界面活性剤8の親水性基8bの内部に入って水との界面エネルギーを低下させ、かつ、親水性基8bの側鎖長nによる立体障害を和らげる効果があり、これにより水滴の安定化に寄与する。そして、この副界面活性剤9は、ナノ粒子4が生成される際に、主界面活性剤8の親水性基8bと共に、ナノ粒子4を包囲する形態でナノ粒子4に吸着され、ナノ粒子4を疎水性溶媒6中に安定して分散させるのに寄与する。
このような副界面活性剤9としては、化学式C2m+1OH(ただし、mは4〜10)で表される中鎖アルコール、例えば、1−オクタノール(C17OH)を使用することができる。すなわち、炭素数mは、主界面活性剤8の親水性基8bの側鎖長nの長さにも依存するが、炭素数mが4未満では、親水性が大きくなり過ぎるため、マイクロエマルジョン作製時に、水滴内に溶解してしまい、このため副界面活性剤9が主界面活性剤8と水との界面のみに存在しなくなるおそれがある。一方、炭素数mが10を超えると疎水性が大きくなり過ぎたり、立体障害が大きくなったりするおそれがあり、好ましくない。
疎水性溶媒6としては、シクロへキサン、ヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、オクタンなどの無極性炭化水素、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類や、ケロシンなどの石油系炭化水素等を使用することができるが、これら疎水性溶媒6の中では、シクロヘキサン、ベンゼンを好んで使用することができる。
このナノ粒子分散溶液3は以下のような方法で製造される。
まず、疎水性溶媒6、界面活性剤5(主界面活性剤8及び副界面活性剤9)、及び純水を容器7に入れて混合・撹拌する。すると、図6(a)に示すように、主界面活性剤8の疎水性基8aは疎水性溶媒6に吸着される一方、主界面活性剤8の親水性基8bは純水に吸着され、さらに副界面活性剤9は主界面活性剤8の親水性基8bに入り込んで純水との界面エネルギーが低下する。そしてその結果、純水は超微小径の水滴10となって、界面活性剤5(主界面活性剤8及び副界面活性剤9)の内部に閉じ込められる。すなわち、水滴10は界面活性剤5に包囲されるような形態で、疎水性溶媒6中に分散し、これにより油中水滴型のマイクロエマルジョン溶液が作製される。
尚、界面活性剤5、及び純水は、最終生成物であるナノ粒子の平均粒径D50が5nm以下(好ましくは、3nm以下)となるように、例えば、水/界面活性剤=0.005〜0.05となるように配合されて容器7に投入される。
次に、ナノ粒子4の原料となる混合アルコキシド溶液を調製する。
すなわち、超微小で粒度分布の幅が狭い所望粒子径のナノ粒子4を得るためには、加水分解反応に消費される水滴10の水滴径増加を招くのを避ける必要があり、そのためにはアルコキシドのような無水和物を使用するのが望ましい。
そこで、Znアルコキシド、及び希土類元素Reを含有したReアルコキシドを用意し、これら各アルコキシドをエタノール等のアルコール溶液と2−アミノエタノール(HNCHCHOH)等のアミノアルコールとの混合溶媒に溶解させ、これにより混合アルコキシド溶液を作製する。
すなわち、Znアルコキシド自体はアルコール溶液には殆ど溶解しないことから、Znアルコキシドをアルコール溶液に溶解させることができ、かつ疎水性溶媒4には溶解しないアミノアルコール溶液をアルコール溶液と併用し、これらアルコール溶液とアミノアルコール溶液との混合溶媒にZnアルコキシド及びReアルコキシドに投入して溶解させ、これにより混合アルコキシド溶液を作製する。
また、混合アルコキシド溶液中のReとZnとの比率Re/Znは、特に限定されるものではなく、例えば、モル比で0.01〜0.20に設定される。
尚、混合アルコキシド溶液の調製は、空気中の水分が混合アルコキシド溶液に浸入するのを防ぐ観点から、Ar雰囲気等の不活性雰囲気で行うのが好ましい。すなわち、混合アルコキシド溶液の調製を不活性雰囲気で行うことにより、余分な成分がマイクロエマルジョン溶液に浸入することもなく、これによりナノ粒子4の粒子径が大きくなるのを抑制できる。
次に、このようにして作製された混合アルコキシド溶液をマイクロエマルジョン溶液に滴下し、Ar雰囲気等の不活性雰囲気下、所定時間、撹拌混合する。そしてこれにより混合アルコキシド溶液と水滴10との間で加水分解反応が生じる。
すなわち、界面活性剤5で包囲された水滴10を反応場として加水分解反応が進行し、図6(b)に示すように、水滴10が消費され、ZnO、希土類元素Reを含有したRe酸化物の混合物からなるナノ粒子4が生成され、これによりナノ粒子分散溶液3が作製される。
尚、混合アルコキシド溶液は、マイクロエマルジョン溶液中の水量が混合アルコキシドの加水分解に必要な水量の1〜1.2倍となるように、マイクロエマルジョン溶液に滴下される。これはマイクロエマルジョン溶液中の水量が混合アルコキシドの加水分解に必要な水量の1倍未満の場合は、所望の加水分解反応が進行せず、一方、1.2倍を超えると、水量が多くなって水滴10が大きくなり、このため、大きくなった水滴径に応じ、生成されるナノ粒子4の平均粒径D50も大きくなるおそれがあるからである。
また、アルコキシドの種類は、特に限定されるものではなく、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等を使用することができる。
次に、このナノ粒子分散溶液3を使用して蛍光体1を作製する。
すなわち、ナノ粒子分散溶液3をスピンコーティング法等により基板2上に一様に塗布して薄膜を形成する。
具体的には、ナノ粒子分散溶液3を基板2上に滴下した後、基板2を所定時間、所定回転数で回転させることにより、基板2上にはナノ粒子分散溶液3が一様に塗布して薄膜を形成する。そしてその後、熱処理を行い、これにより蛍光対1が作製される。
ここで、熱処理温度は、320℃以下とする必要がある。320℃を超える熱処理温度で熱処理を行うと、薄膜中のナノ粒子が粒成長してZnOの結晶子径が7.4nmを超えてしまい、上述した電荷移動遷移帯の突入時エネルギーE1と光吸収端エネルギーE2との関係から、O(酸素原子)から希土類元素Reへの所望の電荷移動遷移を行うのが困難となる。したがって、ナノ粒子の粒成長を抑制してZnOの結晶子径を7.4nm以下とするためには、熱処理温度を320℃以下にする必要があり、ZnOの結晶子径を6.0nm以下の好ましい範囲とするには熱処理温度を290℃以下とするのが好ましい。
尚、熱処理温度の下限は、特に限定されるものではないが、疎水性溶媒6を十分に揮発でき、界面活性剤6を燃焼させて分解できる温度、例えば100℃以上が好ましい。
このように本実施の形態では、ナノ粒子分散溶液3を基板2に塗布して薄膜を形成した後、320℃以下の低温で熱処理し、蛍光体1を作製しているので、粒成長が抑制され、ZnOの結晶子径が7.4nm以下の粒度分布の狭い超微粒のZnOを母体材料とし希土類元素Reを含有した蛍光体1を容易に得ることができる。
しかも、マイクロエマルジョン法により原料を加水分解反応させてナノ粒子を作製していることから、その後の熱処理で希土類元素Re、Zn、及びOが極めて良好に分散した蛍光体を得ることができ、O(酸素原子)から希土類元素Reへの効率の良い電荷移動遷移を実現することが可能となる。
また、室温撹拌のみで加水分解反応が進行するため、熱処理等のプロセスを必要とせず、極めて簡便かつ低コストで所望のナノ粒子4を得ることができる。
さらに、必要最小限の水量で加水分解反応させることが可能であり、ナノ粒子4内への水酸基の取り込みや欠陥の発生を抑制することが可能である。しかも、使用する主界面活性剤8の親水性基8bの側鎖長nを種々変更することにより、生成されるナノ粒子4の粒子径を制御することができ、したがって材料の設計の自由度も大きく、所望の超微小粒径を有する蛍光体1を得ることが可能となる。
また、このように蛍光体1を低温プロセスで作製できることから、樹脂等の低融点の基板上にも成膜が可能であり、フレキシブルデバイスへの応用も可能となる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、基板2上に薄膜状の蛍光体1を作製しているが、蛍光体1を基板2から剥離させ、粉砕等して粉末状の蛍光体1を得ることもできる。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔試料の作製〕
まず、ナノ粒子分散溶液を作製した。
すなわち、疎水性溶媒としてシクロヘキサン、主界面活性剤として親水性基の側鎖長nが10のNPE(10)、副界面活性剤として1−オクタノールを用意し、さらに純水を用意した。
そして、シクロヘキサン:NPE(10):1−オクタノール:水=30:1.4:1.7:0.03となるように、これらを混合・撹拌し、これにより油中水滴型のマイクロエマルジョン溶液を作製した。
次に、ZnアルコキシドとしてのZnエトキシド(Zn(OC)、及びReアルコキシドとしてのEuイソプロポキシド(Eu(OC)を用意した。
そして、EuとZnとのモル比Eu/Znが0.01〜0.20となるように、Znエトキシド、及びEuイソプロポキシドを秤量し、これらをエタノールと2−アミノアルコールとの混合溶媒に溶解させ、これにより混合アルコキシド溶液を作製した。
次に、この混合アルコキシド溶液を前記マイクロエマルジョン溶液に滴下し、さらに1週間以上撹拌し、加水分解反応を生じさせ、これによりナノ粒子分散溶液を作製した。
ここで、混合アルコキシド溶液の滴下量は、反応場となる水量が、モル比換算で、Znエトキシド及びEuイソプロポキシドの加水分解に必要な量の1.2倍となるように調整した。
図7は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)を使用して撮像したナノ粒子の一例を示している。
この図7は、モル比Eu/Znを0.05とした場合のTEM画像であり、平均粒径が3nm程度の超微粒のナノ粒子が得られていることが分かる。
次に、このようにして得られたナノ粒子分散溶液を石英ガラス基板上に塗布し、260〜700℃の熱処理温度で大気雰囲気中、20分間熱処理し、これにより試料番号1〜30の試料を作製した。
次に、試料番号1〜30の各試料について、特性X線としてCuKα線を使用し、粉末X線回折法を使用して結晶子の粒径を測定した。
〔試料の評価〕
(発光状態)
試料番号1〜30の各試料について、波長254nmの紫外線を照射して励起させ、デジタルカメラで撮像し、発光状態を観察した。
表1は、試料番号1〜30のモル比Eu/Zn、熱処理温度、ZnOの結晶子粒径、及び蛍光状態を示している。表1中、「◎」は優、「〇」は良、「△」は可、「×」は発光不十分、「××」は発光せず、を示している。
図8は、試料番号1〜30のデジタル写真である。図8(a)はモル比Eu/Znが0.01、図8(b)はモル比Eu/Znが0.05、図8(c)はモル比Eu/Znが0.10、図8(d)はモル比Eu/Znが0.15、図8(e)はモル比Eu/Znが0.20について、それぞれ260℃、290℃、320℃、360℃、450℃、及び700℃で撮像したデジタル写真を示している。尚、この図8については、参考資料として別途カラー図面を提出している。
この表1及び図8から明らかなように、熱処理温度が320℃以下でZnOの結晶子径が7.4nm以下となり、発光が確認された。特に、熱処理温度が290℃ではZnOの結晶子径が6.0nmとなり、良好な赤色発光が確認され、さらに熱処理温度が260℃ではZnOの結晶子径が5.0nmとなり、より鮮明な赤色発光が確認された。
(発光現象の解析)
次に、試料番号7〜12(図8(b))を使用して発光現象を解析した。
<XPSスペクトル>
試料番号7〜12の各試料について、X線光電子分光測定装置(フィジカルエレクトロニクス社製Quantum2000)を使用し、X線光電子分光スペクトル(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)を測定した。
図9はその測定結果を示している。横軸が結合エネルギー(eV)であり、縦軸は、XPS強度(a.u.)である。
Eu3+は結合エネルギーが1164eV及び1135eV付近でXPS強度のピークが生じ、一方、Eu又はEu2+は結合エネルギーが1154eV及び1125eVでXPS強度のピークが生じることが知られている。
この図9から明らかなように、熱処理温度が260℃と低い試料番号7では、Eu3+のピーク強度が低下し、Eu及びEu2+のピーク強度が増加している。
一方、熱処理温度が700℃と高い試料番号12では、Eu3+のピーク強度が増加し、Eu及びEu2+のピーク強度が低下している。
そして、試料番号7〜12の各XPSスペクトルから明らかなように、熱処理温度が低くなればなるほど、Eu3+のピーク強度が低下し、一方Eu及びEu2+のピーク強度が増加している。すなわち、熱処理温度の低下に伴ってEu3+周辺の電子密度が増加していることから、熱処理温度が低下してZnOの結晶子径が小さくなると、O(酸素原子)からEuへの電荷移動が促進され、その結果、Euの発光強度が増大したものと推測される。
<蛍光(PL)スペクトル>
試料番号7〜10について、キセノンランプを使用し、275nmの波長の励起光を試料に照射し、蛍光リン光分光光度計(堀場製作所社製FluoroMax-4P)を使用して蛍光スペクトルを測定した。
図10はその測定結果を示している。横軸が発光波長(nm)、縦軸が発光強度(a.u.)である。
この図10から明らかなように、いずれも615nm付近でEu3+に固有の発光ピークが観察されたものの、熱処理温度が上昇し、ZnOの結晶子径が大きくなるに伴い、発光強度が低下しているのが分かる。
すなわち、試料番号7は、熱処理温度が260℃と低く、ZnOの結晶子径も5.0nmと小さいので、615nm付近での発光ピークが生じている。
試料番号8は、熱処理温度が290℃と試料番号7よりも高く、ZnOの結晶子径も6.0nmと若干大きくなったため、半値幅も若干拡がり、発光ピークの急峻度は鈍化しているものの、615nm付近での発光ピークが生じている。
試料番号9は、熱処理温度が320℃と試料番号7、8に比べて高く、ZnOの結晶子径も7.4nmと大きくなったため、半値幅もさらに拡がり、発光強度も低下しているものの、発光ピークは認められた。
一方、試料番号10は、熱処理温度が360℃と高く、ZnOの結晶子径も16.9nmと大きいため、半値幅も過度に拡がり発光強度も低下することが確認された。
すなわち、この図10に示す発光強度と図8(b)のデジタル写真における発光状態とは対応していることが分かった。
<吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトル>
試料番号7〜10について、吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを測定した。
すなわち、分光光度計(島津製作所社製UV−2500PC)を使用し、試料番号7〜10の吸収スペクトルを測定した。
また、上述した蛍光リン光分光光度計(堀場製作所社製FluoroMax-4P)を使用し、蛍光波長が615nmでの蛍光励起(PLE)スペクトルを測定した。
図11は試料番号7の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示し、図12は試料番号8の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示している。また、図13は試料番号9の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示し、図14は試料番号10の吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを示している。図11〜図14中、横軸は光子エネルギー(eV)、左横軸は吸光度(−)、右縦軸はPLE強度(a.u.)である。
試料番号7は、ZnOの結晶子径が5.0nmと小さく、このため図11に示すように、電荷移動遷移帯への突入時エネルギーは光吸収端エネルギー(3.4eV付近)よりも小さくなり、これにより(酸素原子)からEuへの効率の良い電荷移動が促進され、図8(b)に示すような良好な発光状態が得られた。
試料番号8は、ZnOの結晶子径が6.0nmと大きくなったことから、図12に示すように、電荷移動遷移帯の突入時エネルギーは高エネルギー側に若干シフトしているものの、光吸収端エネルギーよりも低エネルギー側に位置しており、図8(b)に示すような良好な発光状態が得られた。
試料番号9は、ZnOの結晶子径が7.4nmと更に大きくなったため、図13に示すように、電荷移動遷移帯の突入時エネルギーは、さらに高エネルギー側にシフトしたが、許容範囲での発光が認められた。これは電荷移動遷移帯の突入時エネルギーと光吸収端エネルギーとがほぼ同等ではあるが、ZnOによる光吸収とEuへのエネルギー移動により、図8(b)に示すように発光したものと思われる。
これに対し試料番号10は、ZnOの結晶子径が16.9nmと大きくなったため、図14に示すように、電荷移動遷移帯が高エネルギー側に過度にシフトし、光吸収端エネルギーが電荷移動遷移帯の突入時エネルギーよりも小さくり、このため図8(b)に示すように発光しなかった。これは電荷移動遷移帯の突入時エネルギーが光吸収端であるZnOのバンドギャップエネルギーよりも高エネルギー側にシフトしたため、価電子帯の電子がZnOの伝導帯に移送されやすくなって酸素原子(O)からEuへの電荷移動が生じ難くなるためと思われる。
(成分分布及び粒子形状)
試料番号15について、走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光(Scanning-Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive Spectroscopy; STEM−EDS)法を使用し、粒子形状及び成分分布を調べた。
図15は、粒子形状及び成分分布の観察結果を示す観察画像である。図中、左上図が粒子形状、左下図がZn成分、右上図がO成分、右下図がEu成分である。尚、この図15については参考資料として別途カラー写真を提出した。
形状画像からZnOの粒径は10nm以下のナノ粒子であることが分かる。また、成分分布画像から、ナノ領域においてもZn、O、Euがそれぞれ極めて高い分散状態で存在していることが確認された。これはマイクロエマルジョン法によりナノレベルの微小水滴を反応場として加水分解し、ナノ粒子が作製されたためと考えられる。
比較例
ZnOに代えてTiOを使用し、比較例試料を作製した。
すなわち、まず、実施例と同様の方法・手順でマイクロエマルジョン溶液を作製した。
次に、Tiイソプロポキシド(Ti(OC)、及びEuイソプロポキシド(Eu(OC)を用意した。
そして、EuとTiとのモル比Eu/Tiが0.10となるように、Tiイソプロポキシド、及びEuイソプロポキシドを秤量し、これらを2−メトキシに溶解させ、これにより混合アルコキシド溶液を作製した。
その後は、この混合アルコキシド溶液を使用した以外は、実施例と同様の方法・手順でナノ粒子分散溶液を作製した。
このようにして得られたナノ粒子分散溶液を石英ガラス基板上に塗布し、200〜700℃の熱処理温度で大気雰囲気中、20分間熱処理し、界面活性剤や疎水性溶媒を燃焼・分解させ、これにより比較例試料を作製した。
この比較例試料について、実施例と同様の方法・手順で、紫外線を照射し、そのときの状態をデジタルカメラで撮像した。
図16はそのデジタル写真である。この図16は参考資料として別途カラー写真を提出した。
この図16から明らかなように、比較例試料ではEu発光はほとんど生じていないことが分かった。
また、熱処理温度を200℃で行った比較例試料について、粉末X線回折法でTiOの結晶子径を測定しようとしたが、TiOの結晶ピークが認められなかった。したがって、この比較例の結晶子径は、粉末X線回折法では検出できないほど、超微粒であると考えられる。
次に、この熱処理温度を200℃で行った比較例試料について、実施例と同様の方法・手順で、吸収スペクトル及び蛍光励起(PLE)スペクトルを測定した。
図17はその測定結果を示している。図17中、横軸は光子エネルギー(eV)、左横軸は吸光度(−)、右縦軸はPLE強度(a.u.)である。
この図17から明らかなように、結晶子径が検出できないほど超微粒であっても、電荷移動遷移帯の突入時エネルギーは光吸収端エネルギーよりも大きいことが確認された。
すなわち、ナノ粒子を形成するTiは化学結合力の強い元素であり、イオン結合によってTiとO(酸素原子)とは強固に結合することから、母体材料をZnOで形成した場合に比べ共有結合性に劣り、O(酸素原子)から供給されるEu周辺の電子密度が小さいと推測される。このため図17に示すように、電荷移動遷移帯のエネルギーが上昇し、価電子帯の電子が伝導帯に移送されてしまい、f軌道内での電荷移動遷移が生じないと考えられる。
ZnOナノ粒子を母体材料とした発光強度が増強された蛍光体を簡便かつ低コストで容易に得ることができ、発光素子等の各種デバイスに利用することができる。
1 蛍光体
2 基板(基材)
3 ナノ粒子分散溶液
4 ナノ粒子
5 界面活性剤
6 疎水性溶媒
10 水滴

Claims (11)

  1. 亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素とを含有し、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、前記希土類元素は発光中心元素であることを特徴とする蛍光材料。
  2. 電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーは、光吸収端エネルギーよりも小さいことを特徴とする請求項1記載の蛍光材料。
  3. 亜鉛酸化物からなる半導体材料と希土類元素を含有し、電子が原子間を移動する電荷移動遷移帯に突入する際の突入時エネルギーが、光吸収端エネルギーよりも小さくなるように構成され、前記亜鉛酸化物は、結晶子径が7.4nm以下であり、かつ、前記希土類元素は発光中心元素であることを特徴とする蛍光材料。
  4. 前記亜鉛酸化物は、結晶子径が6.0nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蛍光材料。
  5. 前記発光中心元素は、f−f遷移により発光することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の蛍光材料。
  6. 前記希土類元素は、Euであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の蛍光材料。
  7. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の蛍光材料を含有していることを特徴とする蛍光体。
  8. 亜鉛酸化物及び発光中心元素となる希土類元素を含有した酸化物を含むナノ粒子が分散溶液中に分散したナノ粒子分散溶液を作製するナノ粒子分散溶液作製工程と、
    前記ナノ粒子分散溶液を使用して基材上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    前記薄膜を熱処理する熱処理工程とを含み、
    前記熱処理工程を100℃以上320℃以下の熱処理温度で行い、前記亜鉛酸化物の結晶子径が7.4nm以下の蛍光体を作製することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  9. 前記ナノ粒子分散溶液作製工程は、疎水性溶媒、界面活性剤、及び水を混合し、水滴が油中に分散した油中水滴型のマイクロエマルジョン溶液を作製するマイクロエマルジョン溶液作製工程と、
    亜鉛アルコキシド、及び希土類元素を含有したアルコキシドを溶媒中で混合して混合アルコキシド溶液を作製する混合アルコキシド溶液作製工程と、
    前記混合アルコキシド溶液を前記マイクロエマルジョン溶液に注入し、加水分解反応を生じさせる加水分解工程とを含むことを特徴とする請求項記載の蛍光体の製造方法。
  10. 前記熱処理工程を290℃以下の熱処理温度で行うことを特徴とする請求項又は請求項9記載の蛍光体の製造方法。
  11. 前記希土類元素は、Euであることを特徴とする請求項9乃至請求項10のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
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