以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1
図2はこの発明の実施の形態1に係る三次元構造体(バスト構造体)としてのバストカップ体を適用した衣料としてのブラジャーを示すものである。
このブラジャー1は、図2に示すように、女性の胸部に位置する左右のバスト部分をそれぞれ覆う左右のバストカップ部2、3を備えており、これら左右のバストカップ部2、3は、人体の前面側に位置する胸部の中央で互いに縫着等の手段によって一体的に接合されるか、又は左右のバストカップ部2、3が一体的に形成される。この実施の形態では、左右のバストカップ部2、3が別々に形成された上で、左右のバストカップ部2、3が人体の前面側に位置する胸部の中央で互いに縫着等の手段によって接合されている。これらの左右のバストカップ部2、3は、例えば、体型や年齢等を問わず、女性の胸部に位置する左右のバスト部分を約3/4程度に覆う3/4カップとして構成されるが、他のフルカップや1/2カップなど他のカップ形状に構成しても良いことは勿論である。
上記左右のバストカップ部2、3は、図3に示すように、三次元構造体としての左右のバストカップ体4、5と、当該左右のバストカップ体4、5の表面又は表裏両面を覆うように縫着又は接着等の手段によって設けられる伸縮性及び保形性を有する生地からなる表面生地6、7或いは表面生地6、7及び裏面生地8、9とによって複合的に構成されている。また、上記左右のバストカップ部2、3は、裏面生地8、9を設けずに、左右のバストカップ体4、5と表面生地6、7とから構成しても、表面生地6、7及び裏面生地8、9を設けずに、左右のバストカップ体4、5のみから構成しても良い。なお、上記表面生地6、7及び裏面生地8、9の素材としては、伸縮性及び保形性を有する生地であれば任意であるが、伸縮性及び熱成型性を有する生地を用いるのが望ましい。この実施の形態では、三次元構造体としての左右のバストカップ体4、5がブラジャー1の左右のバストカップ部2、3の裏面側に表面生地6、7と別体で複合的に配置されている。また、三次元構造体としての左右のバストカップ体4、5は、例えば、図4に示すように、衣料としてのブラジャー1の一部を直接構成しても良い。なお、上記三次元構造体としての左右のバストカップ体4、5は、表面生地6、7に接着等の手段によって一体的に配置しても良い。
なお、上記左右のバストカップ体4、5は、左右対称に形成されており、当該バストカップ体4、5の表裏両面を覆う表面生地6、7及び裏面生地8、9も、左右対称に形成されている。また、上記左右のバストカップ体4、5は、図4に示すように、一体的に形成しても良い。
また、図示の実施の形態では、表面生地6、7及び裏面生地8、9が1枚の布地で形成されているが、これら表面生地6、7及び裏面生地8、9を上下又は左右等に複数に分割し、これら複数に分割された表面生地6、7や裏面生地8、9を互いに縫着したものを用いても勿論良い。さらに、表面生地6、7には、プレス加工を施すことによって左右のバストカップ体4、5の膨出部と身頃部との境界が目立たないように構成しても良い。
さらに、上記表面生地6、7及び裏面生地8、9を左右のバストカップ体4、5に縫着等の手段によって接合するに際しては、図2に示すように、その下端縁等が適宜伸縮性を有するスパンテープ10等を用いて縫着されるが、図3の上端に図示するように、スパンテープ10等を用いずに縫着部が表面側に現れないように、左右のバストカップ体4、5の裏面側において表面生地6、7や裏面生地8、9を縫着又は接着するように構成しても良い。このように構成することにより、左右のバストカップ体4、5の上端縁によってチェスト部が圧迫されるのを回避することができる。
また、上記左右のバストカップ部2、3の両体側部側には、図2に示すように、女性のバストの体側部から背面部にわたってそれぞれ配置される伸縮性を有する生地からなる後身頃体としての左右の側布12、13がそれぞれ縫着等の手段によって接合されている。上記左右の側布12、13には、必要に応じて、その上端縁及び下端縁の少なくとも一方に、伸縮性を補助するスパンテープ14が縫着されている。
この場合、衣料としてのブラジャー1は、大別して、左右のバストカップ部2、3と、左右の側布12、13との4つの構成部材から構成されるが、図4に示すように、左右のバストカップ部2、3を構成する後述する左右のバストカップ体4、5を一体化することによって、当該左右のバストカップ部2、3を一体化したり、左右のバストカップ部2、3と左右の側布12、13とを一体化したり、左右の側布12、13を一体化することにより、2つの構成部材から構成しても良い。
ここで、左右のバストカップ部2、3と左右の側布12、13とを一体化する場合には、例えば、図5(a)に示すように、左側のバストカップ部2のバストカップ体4と左側の側布12とを一体的に形成して身頃体100を構成するする態様が挙げられる。また、この身頃体100は、図5(b)に示すように、内側の身頃体101と外側の身頃体102とから二重に構成しても良い。その際、身頃体100は、図5(c)に示すように、バストカップ体4の内側のみ当布103を設けることによって、バストカップ体4のみを二重に構成しても良い。更に、上記身頃体100には、図5(d)(e)に示すように、後述する如く、一体化された左側のバストカップ体4と左側の側布12において、左側のバストカップ体4の内面の所定位置にパット部材104を接着等の手段によって設けたり、左側のバストカップ体4の内面の所定位置に大きさの異なる複数の裏当て部材105a、105b、105cを設けて補正機能を付加しても良い。また、上記身頃体100には、図5(f)に示すように、身頃体100をストレッチ性を有するダブルラッセル編地によって形成しても良い。
これら左右の側布12、13は、図2に示すように、ブラジャー1を着用する際に左右のバストカップ部2、3を人体の胸部に位置するバスト部分に保持するための保持力を発生させるものであり、当該左右の側布12、13の先端部には、図示しないアイやフック等からなる係止具が縫着等の手段によって取り付けられており、これらアイやフック等によって左右の側布12、13を連結する長さが調整可能となっている。また、上記左右のバストカップ部2、3の上端部と左右の側布12、13の背面部との間には、女性の肩にそれぞれ掛ける肩紐部材としてのショルダーコード17、18が、それぞれ長さが図示しない調節具によって調節可能なように装着されている。また、上記左右のバストカップ部2、3の上端部のうち、人体の中央部側に位置する上端部には、必要に応じて、レース生地等からなる図示しない装飾生地が縫着されているとともに、必要に応じて図示しない刺繍などの装飾が施されている。なお、上記ブラジャー1は、ショルダーコード17、18を有するものであっても、ショルダーコードを有しない所謂ストラップレスのものであっても良い。
また、上記左右のバストカップ部2、3の両体側部側と左右の側布12、13との縫着部の表面は、図示しないレース地等で覆うように縫着することによって、バストカップ部2、3の両体側部側と左右の側布12、13との段差が表着に現れ難くなり望ましい。
上記左右のバストカップ体4、5は、図1に示すように、モールド成型によってすべてが一体的にカップ形状に形成されるか又は一部が別体として形成されて互いに接合される。図1の例では、モールド成型によってすべてが一体的に形成されている。
図2は、モールド成型によって形成された左右別個のバストカップ体4、5を用いて左右のバストカップ部2、3を構成したブラジャー1を示している。
上記左右のバストカップ体4、5は、図1に示すように、左右のバストカップ体4、5を用いたブラジャー1を着用することによって理想的なバスト形状に近い形状を創出することが可能なカップ形状にモールド成型により一体的に形成されている。これらのバストカップ体4、5は、例えば、合成樹脂製の発泡体やダブルラッセル編による編地、あるいは不織布などを素材として形成されているが、その素材はモールド成型可能なものであれば任意であり、バストカップ体4、5は、基本的に、全体的に或いは特に身頃部の少なくとも一部が伸縮性を有するように構成されている。
なお、この実施の形態では、バストカップ体4、5の素材として発泡ポリウレタンを用いているが、ダブルラッセル編による編地や不織布など他の素材を用いても勿論良い。ダブルラッセル編による編地などの素材を用いる場合には、例えば、ダブルラッセル編による編地を構成する編糸の一部又は全部に伸縮性を有するものを用いるのが望ましい。
ところで、この実施の形態に係るバストカップ体は、人体の膨出部を含む部位に着用される衣料に用いられる三次元構造体において、人体の膨出部及び前記膨出部に隣接する隣接部位、並びに前記人体の膨出部と前記隣接部位との間に位置する連接部の形状を三次元的に解析し、前記三次元的に解析された前記人体の膨出部の形状に補正を加えた形状に形成された膨出体部と、前記三次元的に解析された前記人体の膨出部に隣接する隣接部位の形状に基づいて形成された身頃体部と、前記衣料の着用時に変形して前記身頃体部の前記膨出体部に隣接する部位の形状を前記膨出体部の形状に一致させるか又は前記膨出体部に対して補正力を作用させる連接体部とを備えるように構成したものである。
すなわち、上記バストカップ体4、5は、図1に示すように、JISのサイズ規格に基づいて、Aカップ、Bカップ、Cカップ・・・、例えば、アンダーバスト75,バスト90・・・など、種々のサイズのものが用意されており、その外周輪郭形状は、製品の目的やデザイン等の目的に基づく形状(図示例では、3/4カップ)を前提として構成されている。
更に説明すると、この実施の形態に係るバストカップ体4、5は、図6に示すように、ブラジャー1を着用する前のモデルとなるJIS(JIS L 4005)で定める標準体形に近い身長約158cmの20代女性の人体の体型を立体カメラによって撮影し、撮影結果をコンピュータによって数値解析したものを等高線によって表示したものに基づいて、人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82、並びに人体のバスト80と隣接部位82との間に位置する連接部83の形状を三次元的に解析し、図1に示すように、三次元的に解析された人体のバスト80の形状に補正を加えた形状に形成された膨出体部41、51と、三次元的に解析された人体の膨出部に隣接する隣接部位の形状に基づいて形成された身頃体部43、53等と、膨出体部41、51と身頃体部43、53等との間に位置し、ブラジャー1の着用時に変形して身頃体部43、53等の膨出体部41、51に隣接する部位の形状を膨出体部41、51の形状に一致させるか又は膨出体部41、51に対して補正力を作用させる連接体部46,56とを一体的に形成したものである。なお、人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82は、バスト80の下方にのみ存在するものではなく、バスト80の全周にわたって存在するものである。また、図6はカップサイズがBで、アンダーサイズが70cmの女性の体の胸部形状をモデルとしているが、他の体型の女性をモデルとしても良い。
人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82は、図6に示すように、文字通り三次元的形状を有している。したがって、三次元的形状を有する人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82に着用するブラジャー1のバストカップ体4、5も、本来、三次元的な形状に形成するのが望ましい。
ただし、人体のバスト80を覆う膨出体部41、51と、バスト80に隣接する隣接部位82を構成する身頃体部43、53等では、その機能及び形状がまったく異なるため、モデルとする女性の人体の体型を立体カメラによって撮影し、人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82の形状を三次元的に解析し、解析されたバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82の形状に基づいて同一形状にバストカップ体4、5を形成しても、目的とするバストカップ体4、5を得ることはできないことは勿論である。
この実施の形態において、三次元化とは、従来の「バスト基底部」を平板状とする二次元設計に対し、図6に示すように、人体骨格の湾曲性を設計の根幹に置くバスト基底の凹状化を設計の基本とすることにある。
そして、その上に、製品としてのブラジャー1に原則として要求される人体衛生学的な配慮(乳腺等の不本位な圧迫回避など)の上に、女性人体美学に基づく理想的プロポーション化を達成するため、三次元的に解析された人体のバスト80の形状に補正を加えた形状に形成された膨出体部41、51と、女性のバスト80のバスト基底84をバストカップ体4、5の基底部とする身頃体部43、53等と、膨出体部41、51及び身頃体部43、53等の少なくとも一方に連動して一体化する膨出体部41、51の基底や体側部を凹状化する機能などを果たす連接体部46、56とを備えるように構成したものである。
その際、上記バストカップ体4、5は、人体のバスト80及びバスト80に隣接する隣接部位82に装着されることによって、新たな三次元的な力線を作用させることにあり、当該力線を以って理想とするバスト形状に近いバスト形状の創出並びに着用感に優れ、人体を不本位に圧迫することがなく衛生的に優れたものである。
一般に、女性のバスト80は、図7に示すように、女性の胸部の第1肋骨から第5肋骨にわたって大胸筋の表面に隆起した形状を成しており、バスト80の内部には、乳腺葉などが乳房内脂肪(皮下脂肪)によって覆われ、当該バスト80の最も突出した先端部がバストトップ(乳頭)81となっている。また、女性のバスト80は、その形状に応じて、図8に示すように、(a)皿を伏せた形状に近い皿型、(b)略紡錘形状に突出した紡錘型、(c)球体を半分にした半球体に近い形状の半球型、(d)略円錐形状に近い円錐型、(e)下方に垂下した下垂型などに分類される。また、バスト形状が同じであっても、女性の体型(肩幅や肩の上端部からバストトップまでの距離など)や、乳房内脂肪(皮下脂肪)の量などによって、カップサイズが異なる。
また、女性のバスト80の形状は、図9に示すように、発育期、完成期、変化期など女性の年齢によっても変化する。この年齢によるバスト80の形状の変化は、主に、女性のバスト80を計測する際の種々のサイズのうち、年齢に伴ってサイズが大きくなる部分と、年齢に伴ってサイズが小さくなる部分とで表わすことができる。
上記のごとく女性のバスト80の形状は、個人差や年齢による差が大きく、個々人で異なる場合が多い。これに対して、女性がブラジャー1を着用する目的は、TPOに応じて異なる場合があるものの、左右のバスト80のバストトップ81を人体の内側に寄せるとともに上向きにアップさせる補整機能を向上させ、着用時のバスト80の形状を理想的な形状である、例えば図8(c)に示すような半球型に近づけることにあり、しかも良好な着用感が求められる点で略共通しているということができる。なお、理想とするバストの形状は、「個人的な好み」や「社会的な要求」など種々の要因によって変化するものであるが、近年の「個人の要求」から「社会的な要求」そして「個の主張」へと趣向が変化した現在にあっては、例えば、図8(c)に示すような半球型に近づけることが理想のバスト形状とされている。
そこで、この実施の形態に係るバストカップ体4、5及びこれを用いたブラジャー1は、個人差や年齢による差などに基づく、個々人の女性のバスト形状の相違を克服して、バスト形状が種々異なるユーザーに対しても、左右のバスト80のバストトップ81を人体の内側に寄せるとともに上向きにアップさせる補整機能を向上させ、着用時のバスト80の形状を理想的な形状である半球型に近づけるとともに、着用感に優れているバストカップ体及びこれを用いた女性用衣料を提供せんとするものである。
この実施の形態に係るバストカップ体4、5は、図1に示すように、当該バストカップ体4、5に求められる機能として、着用時のバスト形状を理想的な形状である半球型に近づけるとともに、着用感に優れている女性用衣料を実現することを目的とするものであるが、必ずしもこれらすべての機能を満たす必要はない。
これらのバストカップ体4、5は、図6に示すように、ブラジャー等の女性用衣料を着用する実際の女性のバスト形状80を参考として設計されているが、その際、実際の女性のバスト形状80に単に適合した形状にバストカップ体4、5の形状を形成するのではなく、バストカップ体4、5を用いたブラジャー1を実際に女性が着用した場合に、当該バストカップ体4、5を含むブラジャー1が女性のバスト80に及ぼす種々の力を考慮した上で、バストカップ体4、5の形状が設定されている。
特に、バストカップ体4、5の連接体部46、56は、図2に示すように、ブラジャー1の着用時に左右の側布12、13やショルダーコード17、18によって作用する上向きの引上力を身頃体部を介して受ける部分であるとともに、バスト80の重量を受け、且つバスト80の下方や側方などに位置する身頃体と接続される部分であり、非常に重要な役割を有している。また、上記連接体部46,56は、バスト体と身頃体との境界のみを意味する部分ではなく、バスト体と身頃体の双方に渡る部分を含んで意味している。
なお、ここでは、便宜上、基本となるフルカップタイプのブラジャー1を例にバストカップ体4、5及びこれを用いたブラジャー1の構成について説明するが、上述したように、図2に示すような3/4カップ、あるいは他の1/2カップ等のブラジャーとして適用されることは勿論である。
図10はこの発明の実施の形態に係るブラジャー1のバストカップ体4、5の基本的な構成を模式的に示したものである。
上記左右のバストカップ体4、5は、図10に示すように、基本的に、女性のバストに着用される膨出体部としての左右のカップ体部41、51と、これら左右のカップ体部41、51を互いに接合するために、人体の胸部中央側に一体的に延設される中央身頃体部42、52と、左右のカップ体部41、51の人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における下方に一体的に延設される下辺身頃体部43、53と、左右のカップ体部41、51の体側部側の側方に一体的に延設される側方身頃体部44、54と、左右のカップ体部41、51の人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における上方に一体的に延設される上辺身頃体部45、55と、カップ体部41、51とこれら身頃体部42〜45、52〜55との間に位置する連接体部46、56とを備えている。連接体部46、56は、カップ体部41、51と身頃体部42〜45、52〜55との間に位置する部位であり、図10に示す例では、カップ体部41、51の周囲を覆うように全周にわたって設けられているが、必ずしもカップ体部41、51の全周にわたって設ける必要がないことは勿論である。
また、上記左右のバストカップ体4、5は、これらの中央身頃体部42、52、下辺身頃体部43、53、側方身頃体部44、54、上辺身頃体部45、55のすべてを備えている必要はなく、これら身頃体部の一部のみを一体的に設けても良い。さらに、この実施の形態では、左右のバストカップ体4、5として側方身頃体部44、54が人体のバスト80の側面から体側部にわたって相対的に大きく設けるように構成されている。なお、図10(a)はバストカップ体4、5の正面図であり、同図(b)は人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における下方からバストカップ体4、5を見た状態を示した下面図である。
また、上記左右のバストカップ体4、5のうち、左右のカップ体部41、51を除く、中央身頃体部42、52と、下方身頃体部43、53と、側方身頃体部44、54と、上辺身頃体部45、55は、女性のバスト80を覆う左右のカップ体部41、51と異なって、女性の身体である胸部を覆うように一体的に設けられた部材であり、衣服の袖・襟・衽(おくみ)などを除いた、前面をおおう部分である前身頃体部として機能する部分である。そして、上記左右のバストカップ体4、5は、左右のカップ体部41、51と身頃体部42〜45、52〜55とを連接体部46、56を介して一体的に設けたものである。
さらに、上記左右のバストカップ体4、5の左右のカップ体部41、51は、図10に示すように、大別して、当該バストカップ体4、5の頂部であるバストトップ411、511を中心として、人体の中央側に位置する中央部側面412、512と、左右のバストカップ体4、5の人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における下方に位置する下方側面413、513と、左右のバストカップ体4、5の体側側に位置する体側部側面414、514と、左右のバストカップ体4、5の人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における上方に位置する上方側面415、515とに区分することができる。
このように、上記左右のバストカップ体4、5は、図10に示すように、大別して、左右のカップ体部41、51と、身頃体部42〜45、52〜55と、連接体部46、56とから構成されている。連接体部46、56は、カップ体部41、51と、身頃体部42〜45、52〜55とを接続する部位であるバスト基底部84(左右のカップ体部41、51の外輪)を、ショルダーコード17、18の引上力F4と身頃体部42〜45、52〜55の伸張力(前中心に引き寄せる力F5と、背部へ引き寄せる力F1)を以って第3の力線を作用させて拮抗化させる役割を有している。
その際、連接体部46、56は、左右のカップ体部41、51と身頃体部42〜45、52〜55とを一体化させてバストカップ体4、5を構成する作用を果たしているが、当該連接体部46、56には、上述したように、ショルダーコード17、18によって左右のカップ体部41、51を上方へと引き上げる引上力F4や、側方身頃体部44、54を介して体側部方向に引っ張る引張力F1などの力が拮抗した状態で作用する。
そして、この実施の形態に係る左右のバストカップ体4、5は、左右のカップ体部41、51と身頃体部42〜45、52〜55とが連動して、女性のバスト80を支持する支持部としての作用と、女性のバスト80を体側部側の下方から中央部の上方へと移動させる作用を発揮するものである。
上記身頃体部42〜45、52〜55と左右のカップ体部41、51と一体化する連接体部46、56は、身頃体部42〜45、52〜55の伸張に伴って、実質的に左右のカップ体部41、51に第三の力である乳房を支える力(押さえる力)を作用させる目的から、図1に示すように、左右のカップ体部41、51の体側部側から側方身頃体部44、54にわたって略平板状に形成されている。
さらに、上記連接体部46、56は、後述するように、カップ体部41、51のバストトップ81から体側部側へ向けて実質的にグラデーション的(段階的)にバスト80を押圧する力が体側部へ行く程強くなるように設定するのが望ましい。ただし、上記連接体部46、56は、女性のバスト80を構成する乳腺の活動を阻害するような、局部的圧力を生じるものであってはならない。
また、上記左右のカップ体部41、51は、女性のバスト80の形状を直接決定する部分であり、個人差や年齢の相違等にも対応可能に構成するのが望ましい。左右のカップ体部41、51の連接体部46、56は、バストの基底部84に即した三次元の曲線形状とし、且つカップ体部41、51も当該三次元の曲線形状のバスト基底83をベースとするものであり且つそのバスト基底83を以って相互が連接されているものである。
上記左右のカップ体部41、51の基底部を構成する連接体部46、56は、人体のバスト基底部84を前提にして設計構成されるバストカップ基底であり、バスト基底輪郭線を略U字形状に形成するのが望ましい。この左右のカップ体部41、51の基底部は、ショルダーコード17、18による当該バスト80を引き上げる引上力F4とも拮抗させバランスさせるのが望ましい。
上記人体の湾曲形状に適応する三次元的凹状部46、56は、人体中核を支点とする人体のバストトップ81は、図6に示すように、人体の中心に対して略45度の線上にあり且つ当該バスト基底部からなる凹状部46、56は、当該バストトップ81を中心とするバストの下部に位置するが、当該バスト80を包含するカップ体部41、51におけるバストトップ位置81は、上記人体中心を支点に60度の角度(人体中心側)にあり、且つ当該バストカップ基底84を人体基底と同一の位置に固定することから、上記凹状部46、56はカップ体部41、51の体側部寄りに位置することとなる。
上記カップ体部41、51のバスト基底輪郭線は、図8(c)に示すように、半球体的な形状を理想として、ブラジャー1の立体的な要求を高めるベースであるとともに、小さく引き締まったバスト80を表現するための輪郭線(ボデイとの接続点)としての役割を担うものである。
このカップ体部41、51のバスト基底輪郭線をより明確化することを目的として、後述するように、カップ体部41、51のバスト基底輪郭線に面状芯体を配置したり、合成樹脂を塗布硬化させることが望ましい。さらには、カップ体部41、51の内部に挿入されるバストパッド等の使用による造形化などによって達成しても良い。
上記バストカップ体4、5を用いて構成される左右のバストカップ部2、3は、女性の左右のバスト80を収容した状態で着用されるが、左右のバストカップ部2、3を備えたブラジャー1は、図2に示すように、女性の胸部に身頃体としての左右の側布12、13を伸張させた状態で着用し、これら左右の側布12、13の先端部に設けられた図示しないアイやフック等からなる係止具によって、左右の側布12、13の先端部を人体の背面側で互いに係止することによって装着される。
その際、上記ブラジャー1の左右の側布12、13は、図11に示すように、女性の体のアンダーバスト部分における人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における上下方向と交差する方向の断面形状において、体側部であるアームピット部からバック部に掛けて適宜伸張された状態となっており、これら左右の側布12、13が伸張し、並びにこれに伴って左右のバストカップ部2、3が伸張して、ブラジャー1は、女性の胸部の所定位置に保持された状態で着用される。また、左右のバストカップ部2、3には、図2に示すように、左右のショルダーコード17、18によって上方に引き上げる引上力F4が作用している。
このとき、本実施の形態に係る左右のバストカップ体4、5は、図11に示すように、ブラジャー1を着用することによって、着用前の女性のバスト形状80に対して、左右のバスト80のバストトップ81を人体の内側に寄せるとともに上向きにアップした位置81’に位置させる補整機能を向上させ、着用時のバスト80’の形状を理想的な形状である半球型に近づけるように形成されている。
ところで、第1に、上記ブラジャー1の左右のバストカップ部2、3には、図10に示すように、左右の側布12、13によって体側部方向に引っ張る第1の力としての伸張力F1が作用する。従来のブラジャー1では、特に対策を講じない限り、左右のバストカップ部2、3を体側部方向に引っ張る伸張力F1は、左右のバストカップ部2、3を体側部方向へと変形させ、当該左右のバストカップ部2、3の変形に伴って女性のバスト80を表面側から押圧する方向の力として作用してしまい、図11に示すような理想的なバスト80’の形状を形成することができない。
従来のブラジャー1では、左右のバストカップ部2、3を体側部方向に引っ張る伸張力F1を、例えば、左右のバストカップ部2、3のバスト基底部に設けられる図示しないワイヤーボーン(補整用芯体)によって受け、左右のバストカップ部2、3の変形を抑制し、当該左右のバストカップ部2、3によって女性のバスト80が押圧されるのを回避しているが、図11に示すような理想的なバスト80’形状を形成することができず、着用前のバスト80形状に対して人体の中央部寄りに若干移動させることができるものの、着用後のバスト形状は、横方向に細長い楕円形状となってしまっていた。
また、上記ブラジャー1の左右のバストカップ部2、3においてワイヤーボーン(補整用芯体)を用いた場合には、当該ワイヤーボーンが女性のバスト80に当たり着用感が低下せざるを得ないことが多い。ただし、本願発明では、合成樹脂製や金属製のワイヤーの使用を排除するものではない。
そこで、この実施の形態では、図12に示すように、基本的にワイヤーボーンを用いることなく、左右の側布12、13の引張力F1に対して、左右のバストカップ部2、3の変形を抑制するために、ブラジャー1を着用した場合に、左右のバストカップ部2、3に作用する体側部方向に引っ張る伸張力F1によって、左右のバストカップ体4、5及び下辺身頃部43、53、並びに連接体部46、56が伸張することを事前に考慮して、当該左右のバストカップ体4、5の下辺身頃部43、53及び連接体部46、56の形状等が決定されている。ここで、下辺身頃部43、53と連接体部46、56とは明確に区分できるものではなく、下辺身頃部43、53の全体が連接体部46、56そのものを構成しても良い。
すなわち、この実施の形態1に係る左右のバストカップ体4、5は、図12に示すように、ブラジャー1を着用した場合に、左右のバストカップ部2、3に作用する体側部方向に引っ張る伸張力F1によって、図12(b)に二点鎖線で示すように、左右のカップ部41、51のバストトップ411、511から中央部側面412、512にわたる人体中央側の端部までの領域が伸張した状態で、左右のバストカップ部2、3が理想とするバスト形状80’となるか又は理想とするバスト形状80’に近い形状となるように、左右のカップ部41、51のバストトップ411、511から中央部側面412、512にわたる人体中央側の端部までの長さL1が、図6に示すように、伸張後の長さL1’に対して短くなるように縮小した状態で(長さが短く)設定されている。
また、上記左右のカップ部41、51の周囲に位置する連接体部46、56は、図6に示すように、ブラジャー1を着用する以前のバスト基底部84の位置よりも人体の中央部寄りに予め設定されている。
更に説明すると、上記左右のバストカップ体4、5は、図6及び図12に示すように、左右のカップ部41、51のバストトップ411、511から中央部側面412、512にわたる人体中央側の端部までの領域が、理想とするバスト形状80’と等しい形状か又は理想とするバスト形状80’に近い形状に形成されている訳ではなく、理想とするバスト形状80’と等しい形状か又は理想とするバスト形状80’に近い形状よりも小さく縮小した状態で形成されており、左右のバストカップ部2、3に体側部方向に引っ張る伸張力F1が作用して伸張した状態で、図12(b)に破線で示すように、はじめて理想とするバスト形状80’と等しい形状か又は理想とするバスト形状80’に近い形状となるように形成されている。なお、図12はバストカップ体4、5の人体中央部寄りの特徴部分を抜き出して示すものであり、後述する構成と組み合わされるものである。
また、上記左右のバストカップ体4、5は、ブラジャー1を着用した場合に、左右のバストカップ部2、3に作用する体側部方向に引っ張る伸張力F1によって、図12(a)に二点鎖線で示すように、左右のバストカップ体4、5の中央身頃部42、52が伸張した状態で左右のバストカップ部2、3が理想とするバスト形状となるか又は理想とするバスト形状に近い形状となるように、カップ部41、51の中央部側の端部から中央身頃部42、52の中央部側の端部までの長さL2が、伸張後の長さL2’に対して短くなるように縮小した状態で設定されている。
さらに、本発明者の検討によれば、発育期、完成期、変化期へと年齢に応じて変化する女性のバスト80のうち、図9に示すように、完成期における女性のように若く乳房内脂肪(皮下脂肪)に張りのある女性のバスト80においては、バスト基底部84(バージスライン)が約2cm前後にわたり人体の中央部側に移動可能であることが確認されており、このことを前提として、左右のバストカップ体4、5の体側部におけるバスト基底部46、56を、当該バストカップ体4、5を着用することによって人体の中央部に向けて約2cm程度移動させるように、バストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54が形成されている。
すなわち、この実施の形態では、上記の構成に加えて、図13に示すように、バストカップ体4、5のカップ体部41、51とその周辺に位置する下辺身頃体部43、53及び体側部側身頃体部44、54との境界に位置するバストカップ体4、5の連接体部としてのバスト基底部46、56が、バストカップ体4、5を着用する前の女性のバスト基底部84の位置に対して、最も移動量=L3’−L3の多いところで約2cm程度にわたって人体の中央部寄りに移動した位置となるように設定配置されているとともに、下辺身頃体部43、53及び体側部側身頃体部44、54は、当該移動して設定されたバスト基底部84の位置を保持するように構成されている。なお、移動量は約2cmよりも大きくても小さくても良いことは勿論である。
また、この実施の形態に係るバストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54は、図6及び図13に示すように、人体に沿う着用前の断面形状が着用者の人体の胸部断面形状よりその曲率が大きくなるように形成されている。上記バストカップ体4、5の側方身頃体部44、54は、当該バストカップ体4、5を成形するモールド型の側方身頃体部44、54に対応した部分の曲率(1/R1)が、着用者の人体の胸部断面形状の曲率(1/R2)より大きくなるように設定することにより形成される。ここで、R1はバストカップ体4、5の側方身頃体部44、54の湾曲部分において近似した曲率半径を、R2は着用者の人体の胸部断面形状における近似した曲率半径をそれぞれ示している。
さらに、上記バストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54は、図13(b)に示すように、着用者の人体の胸部断面形状に沿った長さL4が、着用者の人体の胸部断面形状に沿った実際の長さL4’よりも短くなるように縮小して設定されている。これらの下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54は、左右のバストカップ部2、3に体側部方向に引っ張る伸張力F1によって、長さL4から長さL4’へと伸張することにより、人体の胸部断面形状にフィットするようになっている。
なお、上述した説明では、便宜上、左右のバストカップ部2、3に体側部方向に引っ張る伸張力F1が、左右のバストカップ部2、3の種々の部分に個別に作用するように説明したが、当該伸張力F1は、左右の側布12、13の引張力として作用する1つの力であり、左右のバストカップ部2、3の種々の部分に作用する抗力の合成した値となることは勿論である。
このように設定することにより、バストカップ体4、5を用いたブラジャー1を着用した際に、着用者の人体の胸部断面形状よりその曲率が大きくなるように形成されたバストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54が、左右の側布12、13によって作用する引張力F1によって、人体の胸部断面形状と略等しい曲率となるように拡張されるとともに、連接体部46、56及び側方身頃体部44、54が適正な長さL4’に伸張することにより、人体の体側部にフィットするようになっている。
また、上記バストカップ体4、5の側方身頃体部44、54は、熱収縮素材を用いて形成するか、熱収縮糸を編成した編組織を用いて形成することによって伸張率を更に高めるように構成しても良い。
さらに、上記バストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54は、図13(c)に示すように、当該側方身頃体部44、54を成形するモールド成型機200の雄型201及び雌型202のうち、雄型として、その人体の胸部断面形状に沿った表面に上下方向に沿った相対的に小さな凹凸203を人体の胸部断面形状に沿った方向に所定の間隔で配置することにより、下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54の曲率を大きくしたり、当該下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54の収縮率を高めるように構成しても良い。
本発明の実施の形態では、図27に示すように、バストカップ体4、5のカップ体部41、51の体側部側面414、514と、側方身頃体部44、54とを一体化することが基本となる。また、ショルダーコード17、18の引き上げ力F4が強すぎる場合には、図28に示すように、バストカップ部2、3の両サイドに皴を発生させる虞れがあるため、バスト80の重量を支え、且つバストカップ部2、3の両サイドに皴が発生しない程度に引き上げ力F4が調節される。なお、バスト80の体側部側の面は、一体化されたカップ体部41、51の体側部側面414、514と側方身頃体部44、54とによって人体の中央部側に押圧されて、理想的なバスト形状に近づける作用を果たす。
このように構成することによって、従来のバストカップ部2、3よりも大きな曲率で湾曲した下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54を形成することができ、左右の側布12、13によって引張力F1が作用した場合であっても、バストカップ体4、5のバスト基底部46、56を約2cm程度にわたって人体の中央部寄りに移動させたままの状態を保持することができ、バスト80を寄せる効果をより一層確実に発揮することが可能となる。
図1はこの実施の形態1に係る左右のバストカップ体4、5を示すものであり、この実施の形態1に係る左右のバストカップ体4、5は、上述した技術的思想に基づいて、図12に示す形状及び図13に示す形状の双方を同時に採用した形状に形成されている。
すなわち、上記ブラジャー1を構成する左右のバストカップ体4、5及び左右の側布12、13を構成する素材としては、例えば、発泡ポリウレタン等からなる素材を予め定められた厚さを有する平面矩形状のシートや、伸縮性を有する生地が用いられるが、これらの素材は、ファンデーションガーメントにおいて標準的に用いられる伸縮性を有するストレッチ素材を前提としている。左右のバストカップ体4、5を構成する素材100は、バストカップ体4、5をモールド成型した後において、着用前の寸法を100%とした場合に、少なくとも着用時に人体胸部の周方向において120%程度以上の伸張率を有するものを用いることが望ましい。ポリウレタン樹脂は、高い伸張率を有することが知られており、ポリウレタン樹脂の種類によっては、成型後においても120〜400%程度、あるいはそれ以上の伸張率を有するものがある。
また、上記左右の側布12、13を構成する素材としては、着用前の寸法を100%とした場合に、少なくとも着用時に人体胸部の周方向において120%程度以上の伸張率を有するものが用いられる。
上記バストカップ体4、5は、図14に示すように、上述した図12に示す形状及び図13に示す形状の双方を採用しているとともに、当該バストカップ体4、5のバストトップ411、511の位置が、女性のバスト80のバストトップ81位置よりも人体の中央部寄りで且つ上方に位置するように配置されている。
また、上記バストカップ体4、5のバスト80の下部に位置する連接体部46、56は、身頃体としての当該左右の側布12、13及びバストカップ体4、5の身頃体部が120%程度伸張した着用時を前提として、着用前の状態においては、図14(a)に二点鎖線で示すように縮小した形状に形成されている。
更に説明すれば、バスト80の下部に位置するバスト基底部46、56の長さを、図6に示すように、L5’とした場合、バストカップ体4、5の連接体部としてのバスト80の下部に位置するバスト基底部46、56の長さは、それよりも相対的に短いL5に設定されている。そして、ブラジャー1を着用したときに、バスト基底部46、56に作用する伸張力F1によって約L5’まで伸張する。
また、ブラジャー等の女性用衣料においてファンデーションとしての補正機能などを高めるためには、バストカップ部41、51の下方に位置する下辺身頃体部43、53の伸張力を高めることが望ましい。
このように、下辺身頃体部43、53の伸張力を高めるためには、上述した側方身頃体部44、54と同様に、熱収縮素材を用いて形成するか、熱収縮糸を編成した編組織を用いて形成することによって伸張率を更に高めるように構成される。
また、この実施の形態では、図14(a)に示すように、女性のバスト80に着用するバストカップ部41、51は、女性のチェスト斜め上部に位置する膨出体部47、57は、バスト80の移動拡張を妨げない拡張性を有している。この女性のチェスト斜め上部に位置する膨出体部47、57は、特に伸縮性の高い素材で形成されるか、又は厚さを薄く形成することによって伸張性を高めている。その結果、女性のバスト80の体側部下方から中央部上方への移動を容易としている。このように、女性のチェスト斜め上部に位置する膨出体部47、57は、バスト80の移動拡張を妨げない拡張性を有するように構成することで、ブラジャー1を着用したときのバスト80の体側部下方から中央部上方への移動を促すことがより一層確実に可能となる。
また、上記バストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53は、図13(c)に示すように、当該下辺身頃体部43、53を成形するモールド成型機200の雄型201として、その人体の胸部断面形状に沿った表面に上下方向に沿った相対的に小さな凹凸203を人体の胸部断面形状に沿った方向に所定の間隔で配置することにより、下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54の曲率を大きくしたり、当該下辺身頃体部43、53及び側方身頃体部44、54の収縮率を高めるように構成しても良い。
この実施の形態では、図13及び図14に示すように、左右のバストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54が平面状に形成されている訳ではなく、人体胸部断面形状における湾曲率よりも曲率の大きな(曲率半径の小さな)曲面を形成するように構成されている。すなわち、女性のバスト80は、図6及び図11に示すように、湾曲した曲面をなす人体の胸部断面形状において、人体の前面中央部近傍から体側部近傍にわたって隆起した形状をなしており、左右のバストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54も当該人体の胸部断面形状にフィットするのが望ましい。ただし、上記左右のバストカップ体の下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54には、左右の側布12、13によって下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54を広げる方向、人体の胸部断面形状から離間する方向の伸張力F1が作用する。
そこで、この実施の形態では、図15(a)及び図13(b)に示すように、左右のバストカップ体4、5の下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54に、左右の側布12、13によって下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54を広げる方向の力が作用することを考慮して、人体胸部断面形状における湾曲率(1/R2)よりも曲率の大きな(1/R1)曲面を形成するように構成されている。
なお、上記左右のバストカップ体4、5を構成する素材は、必然的に厚さを有しており、素材の厚さが厚くなればなる程、左右のバストカップ体4、5の湾曲部の外径と内径の差が大きくなって、このバストカップ体4、5の外径と内径の差は、着用時における圧迫と内面のシワの原因となる。これに対して、本発明においては、人体の膨出部に対応した三次元形状に形成された膨出体部と、人体の膨出部に隣接する部位に対応した三次元形状に形成された身頃体部と、膨出体部と隣接部位との間に位置する連接体部を一体的に形成することにより、バストカップ体4、5を構成する素材が厚い場合であっても、バストカップ体4、5の外径と内径の差を考慮した形状に形成することができる。
また、上記バストカップ体4、5は、図15に示すように、そのバストトップ81の位置がバスト基底84の移動量A1を約2cmとした場合、当該バスト基底84の移動量に1〜2cm程度をプラスした移動量A2とするのが望ましく、かつ上方に移動量Dとして1cm程度高く移動させるように設定される。ただし、これらの数値は、あくまで標準的な体型を前提としたものであり、バストトップ81やバスト基底82の移動量は、年齢や体型などに応じて異ならせるのが望ましい。
さらに、この実施の形態では、上記の構成を前提とした上で、図14に示すように、女性のバスト80の下部に位置するバスト基底部46、56を、女性のバスト80の対応する部位よりも縮小して短く形成するとともに、女性のバスト80の上部を形成する上辺身頃部45、55を薄肉に形成するなどして伸張自在に形成することにより、女性のバストを支持しつつ上部方向への移動を促すように構成されている。その際、上記女性のバストの下部に位置する下辺身頃部43、53は、女性のバストの対応する部位の長さよりも縮小して短く形成されるが、当該下辺身頃部43、53は、伸縮性を有しており、ブラジャー1の着用時に作用する伸張力F1によって図14(b)に示すように女性のバストの下部にフィットする長さに伸張するようになっている。なお、上記女性のバストの下部に位置するバスト基底部46、56は、女性のバストの対応する部位の長さよりも縮小して短く形成し、当該バスト基底部46、56は、ブラジャー1の着用時に作用する伸張力F1によっても伸張しないか又は僅かに伸張し、女性のバストの下部を押圧することによりバストアップを図るように構成しても良い。
なお、変形例として、バストカップ体4、5の連接体部としてのバスト80の下部に位置するバスト基底部46、56の長さは、バスト80の下部に位置するバスト基底部46、56の長さと等しいL5’に設定するとともに、当該バスト80の下部に位置するバスト基底部46、56を構成する素材として伸張し難い材料を用いることで、ブラジャー1を着用したときに伸張力F1が作用した場合であっても、当該バスト80の下部に位置するバスト基底部46、56は、殆ど伸張しないように構成しても良い。
さらに、変形例として、バストカップ体4、5の連接体部としてのバスト80の下部に位置するバスト基底部46、56は、バスト下辺部の中央側半分に伸張性を持たせ、アームピット側を殆ど伸張しないように構成しても良い。
これまでの標準的な設計である身頃部は、ブラジャー等の女性用衣料を構成する基布をそのまま平面体として用いることを前提としていたが、本実施の形態では、チェストエッジを開くとともに、アンダーエッジを絞る、バストの体側部の領域を人体の表面から内側に向けて凹状化させるなど、立体的な設計がなされている。
この実施の形態に係るバストカップ体4、5は、図1に示すように、着用時のバスト形状を理想的な形状に近づけることを可能とするものである。ここで、バストカップ体4、5を着用した時の理想的なバスト形状としては、図14に示すように、バスト基底84を人体中央部寄りであって且つ斜め上方へ移動させるとともに、それに伴ってバスト80のトップ81位置を人体中央部寄りであって且つ斜め上方へ移動させ、更に人体の体側部側に位置するバスト80の容積を人体中央部寄りに、望ましくは人体中央部寄りの斜め上方へ移動させることにより、着用者のバスト80の形状を図8(c)に示すように略半球体状に近づけるものである。
また、この実施の形態では、着用前の女性のバストトップよりも体側部側に位置するバストの領域が人体の中央部に向けて移動するのを促進する第1の移動促進部と、前記着用前の女性のバストトップよりも下方に位置するバストの領域が人体の上方に向けて移動するのを促進する第2の移動促進部と、前記着用前の女性のバストトップよりも人体の中央部側に配置され、前記第1の移動促進部と第2の移動促進部によって移動が促進されたバストの容量を受け入れる受容部とを有するように構成されている。
上記左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51は、図15に示すように、女性の左右のバスト80を収容した状態で着用することにより、女性のバスト80から種々の力を受けて変形する。
そこで、この実施の形態では、左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51に女性の左右のバスト80を収容した状態で着用した際に、当該カップ体部41、51が女性のバスト80から種々の力を受けて変形することを考慮して、当該カップ体部41、51の形状が決定されている。
この実施の形態に係る左右のバストカップ体4、5は、図15に示すように、着用時のバスト形状を理想的な形状に近づけることを目標とするものであるが、当該バストカップ体4、5のカップ体部41、51は、女性のバスト80のバスト基底部84を人体中央部寄りに、望ましくは人体中央部寄りの斜め上方へ移動させるにあたり、着用前の女性のバストトップ81よりも体側部側に位置するバスト80の領域が人体の中央部に向けて移動するのを促進する第1の移動促進部61を備えている。
このカップ体部41、51の第1の移動促進部61は、図15に示すように、左右のバストカップ体4、5を着用する前の状態において、カップ体部41、51の体側部側面414、514が理想とするバスト形状よりも人体の中央部側に位置し、しかも、当該体側部側面414、514の中間部分414a、514aが平板状あるいは人体側に向けて凹形状となるように凹んだ形状に形成されている。こうすることによって、図16(a)に示すように、着用前の図16(b)に対して、カップ体部41、51の体側部側面414、514の中間部分414a、514aによって、女性のバストを内側に寄せるとともに、下辺身頃部43、53の縮小化と相まって女性のバストを上部にアップさせることができる。
また、カップ体部41、51には、図17(a)に示すように、女性のバスト80を支え移動を促進するパッド体Pを一体的に設けたり、図17(b)(c)に示すように、裏面生地8、9にバスト容量を補う別体としてのパッド体Pを挿入する挿入口91を設けるように構成しても良い。パッド体Pには、図17(c)に示すように、パッド体Pの厚さが場所によって厚い部分P1と相対的に薄い部分P2、P3が設定される。さらに、カップ体部41、51には、図17(c)に示すように、その裏面側等の必要箇所に裏当て部材92を設けるように構成しても良い。なお、図17(c)において、93は裏当て部材92を4枚積層した領域を、94は裏当て部材62を3枚積層した領域を、95は裏当て部材62を2枚積層した領域を、それぞれ示している。
このように、上記カップ体部41、51の第1の移動促進部61を形成することにより、左右のバストカップ体4、5を着用した状態では、バストカップ体4、5による女性のバスト基底部82の人体中央部側への移動と相俟って、カップ体部41、51の体側部側面414、514により女性のバストトップ81よりも体側部側に位置するバストの領域が人体の中央部に向けて押圧されて人体の中央部寄りに移動するとともに、当該カップ体部41、51の第1の移動促進部61は、女性のバスト80から受ける反力F2によって体側部側に膨出した形状へと変形し、理想とするバスト形状の体側部側の側面形状が形成される。
また、上記カップ体部41、51は、図15(b)に示すように、着用前の女性のバストトップ81よりも下方に位置するバストの領域が人体の上方に向けて移動するのを促進する第2の移動促進部を備えている。
このカップ体部41、51の第2の移動促進部62は、図15(b)に示すように、左右のバストカップ体4、5を着用する前の状態において、カップ体部41、51の下辺部側面413、513が理想とするバスト形状よりも人体の上方に位置し、しかも、当該下辺部側面413、513の中間部分413a、513aが人体側に向けて上方に凹形状となるように凹んだ形状に形成されている。
このように、上記カップ体部41、51の第2の移動促進部62を形成することにより、左右のバストカップ体4、5を着用した状態では、カップ体部41、51の下辺部側面413、513により女性のバストトップ81よりも下方に位置するバストの領域が人体の上方に向けて押圧されて人体の上方に移動するとともに、当該カップ体部41、51の第2の移動促進部62は、女性のバスト80から受ける反力F3によって下方に膨出した形状へと変形し、理想とするバスト形状の下方の側面形状が形成される。
さらに、上記カップ体部41、51は、図15(a)に示すように、着用前の女性のバストトップ81よりも人体の中央部側に配置され、第1の移動促進部61と第2の移動促進部62によって移動が促進されたバスト80の容量を受け入れる受容部63を有するように構成されている。
このカップ体部41、51の受容部63は、当該カップ部41、51のバストトップ部411、511と、その両側に位置する中央部側側面412、512及び体側部側側面415、515の双方にわたって、当該カップ部41、51の女性のバスト形状の人体中央部より内側に膨出した領域に設けられている。なお、上記受容部63のうち、理想とするバスト形状の人体中央部より内側に膨出した領域63aは、上述したように、左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51が側布12、13によって引張力F1を受けることで伸張する空間部分であり、引張力F1を受けて伸張した状態では、カップ体部41、51の受容部63の一部を構成する部分である。
また、上記受容部63は、図15に示すように、左右のバストカップ体4、5を着用した状態で、第1の移動促進部61と第2の移動促進部62によって移動が促進されたバストの容量を受け入れるように、当該第1の移動促進部61と第2の移動促進部62によって移動が促進されるバスト容量を考慮した容量となるように設定されている。
なお、上記のように構成される左右のバストカップ体4、5は、例えば、三次元のモールド成型機を用いてモールド成型された後、所定の形状に成形された左右のバストカップ体4、5は、図1に示すように、プレス機等を用いて所定のバストカップ体4、5の形状に切断されて製造されるが、プレス機等に限らず手で裁断しても良いことは勿論である。
以上の構成において、この実施の形態に係るバストカップ体を用いた女性用衣料としてのブラジャーでは、次のようにして、人体へのフィット性を向上させるとともに、着用時のバスト形状を理想的な形状に近づけることが可能となっている。
すなわち、この実施の形態に係るバストカップ体4、5を用いたブラジャー1では、図18(a)(b)に示すように、女性の左右のバスト80を左右のバストカップ部2、3によって収容した状態で、ショルダーコード17、18を左右の肩に掛けるとともに、左右の側布12、13の先端部を女性の体の背面側において図示しないアイやフックで互いに連結することによって着用される。
その際、上記ブラジャー1の左右のバストカップ部2、3には、図18(b)に示すように、左右の側布12、13が伸張したときの伸張力によって体側部から背面側に向かって左右の伸張力F1がそれぞれ作用する。そのため、上記左右の側布12、13に連結された左右のバストカップ部2、3を構成する左右のバストカップ体4、5には、上述した左右の伸張力F1のうち、F1bが作用する。
ところで、この実施の形態に係る左右のバストカップ体4、5は、図1、図12〜図14に示すように、上述した伸張力F1を考慮して、当該バストカップ体4、5のカップ体部41、51の中央部側面412、512及び中央身頃部42、52の形状が圧縮して形成されているため、左右のバストカップ体4、5に伸張力F1a及びF1bが作用すると、カップ体部41、51の中央部側面412、512及び中央身頃部42、52が伸張されて、理想とするバスト形状か又は理想とするバスト形状に近い形状に変形する。
上記左右のバストカップ体4、5は、図1、図12〜図14に示すように、カップ体部41、51と下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54との境界に位置するバスト基底部46、56が、人体の中央部側であって、且つ上方に変位した位置に配置されているため、当該左右のバストカップ体4、5を着用した女性のバスト80のバスト基底部82は、人体の中央部側であって、且つ上方に移動する。
その際、上記左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51と下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54には、上述したように、左右の側布12、13による伸張力F1が作用する。
ところが、上記下辺身頃体部43、53及び体側部身頃体部44、54は、図1及び図14に示すように、その曲率が人体の胸部断面形状における曲率よりも大きく設定されているとともに、その長さが人体の胸部断面形状よりも縮小された長さに設定されているため、伸張力F1によって曲率及び長さが人体の胸部断面形状に沿った曲率及び長さに拡開及び伸張することでバランスし、左右のバストカップ体4、5のバスト基底部46、56は、体側部方向に移動しない。
その結果、上記左右のバストカップ体4、5を用いたバストカップ部2、3を着用することにより、女性のバスト80の形状は、図1等に示すように、理想とするバスト形状となるか、理想とするバスト形状に近い形状となる。
また、上記左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51には、図15に示すように、第1の移動促進部61、第2の移動促進部62、及び受容部63が設けられているので、女性のバスト80の容量の移動を促して、女性のバスト80形状を理想とするバスト形状とするか、理想とするバスト形状に近い形状とすることができるとともに、これら第1の移動促進部61、第2の移動促進部62、及び受容部63の容量及び配置を適宜設定することにより、図8及び図9に示すように個人差を有する女性のバスト80の形状に対しても、適宜、補整効果を発揮して理想とするバスト形状とするか、理想とするバスト形状に近い形状にすることが可能となる。
実施の形態2
図19はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態2では、伸縮性を複数段階に調整する樹脂コーティングするか、又は生地を積層するか少なくともいずれか1つを施すように構成されている。
すなわち、この実施の形態2に係る左右のバストカップ体4、5は、図19に示すように、その左右のカップ体部41、51の体側部側面414、514から下方側面413、513にわたって、体側部側面414、514の上端部近傍から下方側面413、513の中央部下方に斜めに傾斜した複数(図示例では、5つ)の領域71〜75に区分されており、一番上部に位置する第1の領域71は、カップ体部41、51を構成する素材そのものから構成されているのに対して、順次下方に位置する第2〜第5の領域72〜75には、カップ体部41、51の表面に例えばシリコン樹脂等からなる伸縮性を有する合成樹脂が塗布されているとともに、当該合成樹脂の塗布量が第2〜第5の領域72〜75と下方に行くにしたがって段階的に又は連続的に厚くなるように構成されている。
そのため、上記左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51は、その体側部側面414、514から下方側面413、513にわたって、上方から次第に伸び易い、やや伸び易い、普通、やや伸び難い、伸び難いといったように、伸張率が順次低くなるように設定されており、最も下方のカップ体部41、51の裾部に位置する第5の領域75は、伸び難く、殆ど伸びないように構成されている。なお、上記第5の領域75は、その一部が体側部側身頃部44、54に及ぶように設けられている。
また、上記カップ体部41、51の第1〜第5の領域71〜75には、伸縮性を複数段階に調整する樹脂をコーティングする代わりに、複数枚の生地を合成樹脂の塗布量に応じて順次積層するように構成しても良い。
さらに、上記左右のバストカップ体4、5のカップ体部41、51及び身頃体部42(52)、43(53)、44(54)、45(55)の少なくとも一方には、その表面生地6、7として装飾性を付与するためレース地等の編組織を用いても良い。
又、上記樹脂をコーティングしたり生地を積層する領域は、カップ体部41、51に限らず、身頃体部42(52)、43(53)、44(54)、45(55)であっても良い。
更に、上記樹脂コーティングや生地の積層、或いはレース地等の編組織を2つ以上組み合わせて用いても良い。
このように構成することにより、上記左右のバストカップ体4、5に補正機能を付与することができる。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態3
図20及び図21はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態3では、前記三次元構造体は、その外周縁部の少なくとも一部に、剛性を付与するか、又は変形自在とするか、又は人体に対して補正力を作用させるように構成されている。
すなわち、この実施の形態3に係る左右のバストカップ体4、5は、図20に示すように、バスト基底下部の周辺輪郭線よりも下方に位置する下辺身頃体部43、53の縁部61及び体側部側身頃体部44、54の縁部62が人体の内側に向けて絞り込まれるように湾曲した形状に形成されているのに対して、バスト基底上部の周辺輪郭線よりも上方に位置する上辺身頃体部45、56の縁部63が人体の表面から外側に向けて反り返った形状で開放するように湾曲した形状に形成されている。
更に説明すると、この実施の形態3に係る左右のバストカップ体4、5は、図20(b)に示すように、カップ体部41、51及び身頃体部42〜45、52〜55において、補整後のバストトップ81’の位置を中心にして、当該補整後のバストトップ81’を通り互いに対向する端縁a、a’、b、b’、c、c’f、f’、及び中心側身頃体部42、52と体側部側身頃体部44、54の上下に対向する端縁d、d’、e、e’が、バストトップ81’を横方向に通るf−f’線よりも下方に位置する端縁が、人体の表面から内側に向けて絞りこむ形状で閉じるように湾曲した形状に形成されているとともに、バストトップ81’を横方向に通るf−f’線よりも上方に位置する端縁が、人体の表面から外側に向けて反り返る形状で開くように湾曲した形状に形成されている。また、バストトップ81’を横方向に通るf−f’線のうち、人体の中央部側の端縁fは、人体の表面から外側に向けて反り返る形状で開くように湾曲した形状に形成されているとともに、人体の体側部側の端縁f’は、人体の表面から内側に向けて絞りこむ形状で閉じるように湾曲した形状に形成されている。なお、上記端縁a、a’、b、b’、c、c’f、f’は例示したものであって、他の隣接する端縁も同様に形成されている。
また、この実施の形態3では、カップ体部41、51及び身頃体部42〜45、52〜55の少なくとも一方の外周縁部にスパンテープ14等を縫着することにより、膨出体部又は前記身頃体部の形状を保持する剛性を付与するか、又は人体への補正力を作用させるように構成しても良い。
更に、この実施の形態3では、図21に示すように、カップ体部41、51の外周縁に位置する幅1cm程度の領域の圧縮率を他の領域に比較して高めることにより、カップ体部41、51の外周縁部の形状を保持する剛性を付与するように構成しても良い。なお、カップ体部41、51の外周縁は、テーパー上に厚さを変化させても良い。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態4
図22はこの発明の実施の形態4を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態4では、前記三次元構造体は、女性のバストに着用するバストカップ体からなり、前記バストカップ体は、前記女性のバスト形状を補正する補正力を、人体の頭部を上方とした場合における上下方向に作用させるように構成されている。
すなわち、この実施の形態4に係る左右のバストカップ体4、5は、図22に示すように、左右のカップ体部41、51において、人体立位姿勢において頭部を上方にした場合における上方に位置する上方側面415、515の形状を、人体の表面側から内側に向けて凹形状に形成することにより、バストトップ81よりも上方に位置するバスト80の部分を押圧することで、バスト80の形状を理想とする形状に近づけるように構成されている。
そのため、この実施の形態4によれば、女性のバストの上部分から首にかけて丸く、図7に示す肋骨自体が前に出ており、チェストが前に張り出ていて上胸からバストのボリュームが付いている所謂“ハト胸”等のような場合であっても、左右のバストカップ体4、5のカップ部の上辺が人体に食い込んだり、カップ部の上部に段が生じることなく、上方からの補正力によって所謂“ハト胸”のような女性のバストをカップ部に収容して美しいバストを創出することができる。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態5
図23はこの発明の実施の形態5を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態5では、前記三次元構造体の前記膨出部又は前記身頃部の少なくとも一方は、表面層部と裏面層部とを中間中空層部を構成する連繋糸で互いに接続した立体中空状の布地によって構成されている。
すなわち、この実施の形態5に係る左右のバストカップ体4、5は、図23に示すように、合成繊維からなる立体中空状の編地布100をモールド成型することによって、女性の体のバストの形状に合うように、カップ部と身頃部とが一体的に形成されている。また、上記立体中空状の編地布10は、立体二重編機を用いたダブルラッセル編等によって二層構造に形成されている。この立体中空状の編地布100は、左右のバストカップ体4、5の表面側に位置し、凸側の面を構成する部分である表面層部111と、左右のバストカップ体4、5の裏面側に位置し、凹側の面を構成する部分である裏面層部112と、表面層部111と裏面層部112とをX字形状の連結糸113で接続するとともに、左右のバストカップ体4、5の空間を構成する部分である中間中空層部114とから構成されている。なお、上記中間中空層部114を構成するX字形状の連結糸113は、直線状に設けても、曲線状に設けてもどちらでも良い。また、上記立体中空状の編地布100は、2層構造であっても、中間中空層部114を仕切り部によって仕切り、3層構造またはそれ以上の多層構造としてもよい。
上記左右のバストカップ体4、5は、その身頃体部の表面層部111として伸張力を有しない綿糸等の自然素材からなあるソフトな構成とし、裏面層部112は、当該表面層部111よりも伸張力を持ったスパンデックス等の伸張力を有する糸使いとするのが望ましい。
また、上記左右のバストカップ体4、5は、その連接体部46、56の剛性を高めるために、左右のバストカップ体4、5の連接体部46、56のみ剛性が高い糸を使用するように構成しても良い。
さらに、上記身頃体部は、図13(c)に示すように、例えば、その裏面層部側から微少な凹部を人体湾曲方向と交差するに沿って複数設けることにより、当該身頃体部の体側部における人体湾曲形状よりも曲率の大きな湾曲を有するように形成するのが望ましい。このように、身頃体部の体側部領域を形成することによって、背面側の身頃部によって背面側に引っ張る力を遮断することができ、バストの変形などを抑制することが可能となる。
また、上記立体中空状の編地布100には、その裏面側に裏地等の布地を部分的又は全体的に接着等の手段で設けるように構成して良い。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
実施の形態6
図24はこの発明の実施の形態6を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態6では、前記三次元構造体の前記連接体部は、前記膨出体部又は前記身頃体部に作用する力を受け止めて、前記膨出体部又は前記身頃体部が変形するのを抑制する面状の芯体を備えるように構成されている。
すなわち、この実施の形態6に係る左右のバストカップ体4、5は、図24に示すように、面状芯体60を備えている。この面状芯体60は、図24に示すように、左右のバストカップ部2、3を、女性の人体に装着した状態を想定し、当該バストカップ部2、3の裾野に位置するバスト基底部84を境として、当該バスト基底部84のバスト側に位置する部分61aと、当該バスト基底部84のバスト側に位置する部分を短い直線で近似したカップ線61bと、当該カップ線61bに対して所定の角度で連結され、かつカップ線61bよりも女性の人体側に位置する部分を短い直線で近似した身頃線61dとを、バストカップ部2、3の下方の端縁に沿って、複数(図示例では、5本)設定し、これら複数のカップ線61a、61b、61c・・・と身頃線62a、62b、62c・・・とを、図22に示すように、バストカップ部2、3の裾野に位置するバスト基底部84に沿って滑らかに連結するとともに、カップ線61a、61b、61c・・・側に位置する曲面63と、身頃線62a、62b、62c・・・側に位置する曲面64とを有する面状芯体60が、合成樹脂やコーティングした布地等によって形成されている。
また、上記面状芯体60は、図24に示すように、極力、コーティング方式がベースになるが、フィルム状又は布帛体等なるものであっても良い。さらに、上記面状芯体60の代わりに、ボーン状芯体として、射出成形方式等によるボーン構造を形成しても良い。また、複数のカップ線と身頃線に対応して、図中の断面形状を持たせることにより、より強度を高めるように構成しても良い。なお、基本的には、ワイヤー構造(線状)は飽くまでボーン状態の芯又は面状芯体のコーティング部に挿入又はサンドする方式にて採用(当然ハードなものではない)されるのが望ましい。なお、上記面状芯体60は、射出成形によって形成しても良い。
図25は図24に基づき図中央が図22の乳房輪郭部(膨出部の下端縁)を面状芯体とした一例であり、上図は乳房領域側にその芯体領域を拡大した事例で、下図が逆に身頃骨格側を芯体領域とした事例であり、これら上下を一体に形成しても良い。
また、上記面状芯体は、極力エッジを薄くすることが製品として望ましいが、乳房輪郭線に厚みを持たせることは、当該面状芯体の能力を高めるために望ましい。
さらに、上記面状芯体を構成する材料は、弾性材料が望ましく、熱硬化性を有することが必要であるが、極力人体への抵抗を生じないように、熱セット後の弾性と表面の柔軟性を有することが望ましい。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
図26は更に変形例を示すものであり、この変形例では、左右のバストカップ体4、5にショルダーコード17、18が一体的に形成されている。
なお、図5に示す実施の形態では、左右のバストカップ部2、3と左右の側布12、13とを一体化した場合について説明したが、図2に示すように、左右のバストカップ部2、3と左右の側布12、13とを別体として形成し、互いに縫着や接着等の手段によって連結しても良い。
また、左右のバストカップ部2、3と左右の側布12、13とを一体化した場合であっても、図30(a)に示すように、左側のバストカップ部2と右側のバストカップ部3とを互いに連結する連結部材106を別途設けるように構成しても良い。また、図30(b)(c)に示すように、左右のバストカップ部2、3の必要部位に合成樹脂からなるコーティング107a、107b、107cを部分的に厚さを変えて設けるように構成したり、左右のバストカップ部2、3の表面側に部分によって厚さの異なる当て布108a、108b、108cを設けるように構成しても良い。さらに、図30(d)は、パッド部材104を内部に設けた例や、図30(e)は、図22に示す面状芯体109を適用した例を、図30(f)は、図22と形状の異なる部分的に補強する面状芯体110を適用したものである。
なお、前記実施の形態では、三次元構造体を用いた衣料としてブラジャーについて説明したが、本発明は、ブラジャーに限定されるものではなく、ロングラインブラ、スリーインワン、ブラキャミソール、ボディスリップ、水着、ランジェリー、並びにスポーツ関連ウェアー、あるいはアウターウェアーなどを含み、少なくとも女性の胸部を形成する女性用衣料に広く適用可能なことは勿論である。