JP6144161B2 - 窒化ケイ素膜原料、およびこの原料から得られた窒化ケイ素膜 - Google Patents

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Description

本発明は、CVD法あるいはALD法によって窒化ケイ素膜を得るための窒化ケイ素膜原料に関するものである。
半導体デバイスの材料として、窒化ケイ素膜が多用されている。従来の窒化ケイ素膜の製造方法の一つとして、シランガス(SiH4)とアンモニアの混合ガスを用いてCVD法(化学気相成長法)で成膜する方法が古くから知られている。しかし、シランガスは発火性を有し、かつ毒性が強く、取り扱いにくい。さらに、高エネルギーを必要とする点もデメリットである。また、置換シラン、例えば、ジクロロシランとアンモニアからCVD法で窒化ケイ素膜を製造する方法も知られている(特許文献1)が、塩化アンモニウムが副生し、配管の閉塞を招くという問題がある。さらに、ジクロロシランそのものから窒化ケイ素膜を製造するため膜中に塩素原子が混入するおそれがあり、また、ジクロロシランは加水分解により塩酸を発生するおそれもあって、半導体材料としてはより清廉な原料が求められている。
特許文献2には、塩素原子を含まないシラン化合物としてビス(t−ブチルアミノ)シランを用い、これとアンモニアからCVD法で窒化ケイ素膜を製造する方法が開示されている。この技術では、塩化アンモニウムの生成は伴わないが、窒化ケイ素膜中に炭素が高い含有率で含まれ、膜の絶縁性を低下させる。
特開2009−272367号公報 特開平11−172439号公報
そこで、本願発明では、比較的低温でのCVD法あるいはALD法(Atomic Layer Deposition;原子層堆積法)に用いることができ、塩素原子や炭素原子などの不純な元素の混入が少ない窒化ケイ素膜を形成し得る原料を提供し、高性能な窒化ケイ素膜を得ることを課題として掲げた。
本発明のCVD法またはALD法用窒化ケイ素膜原料は、下式(1)で示される環状シラザン化合物を含むことを特徴とする。
(式(1)中、R1a〜R1dは、同一または異なって、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または−SiR3(Rは水素原子またはアルキル基)を表し、R2〜R5は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはアミノ基を表す。nは0〜3である。)
本発明には、上記本発明の窒化ケイ素膜原料を用いてCVD法またはALD法により得られる窒化ケイ素膜も包含される。
本発明によれば、不純物の少ない窒化ケイ素膜を比較的低温でのCVD法やALD法で得ることができるようになった。
本発明の窒化ケイ素膜原料であるスピロトリシラザンの耐加水分解性の実験結果を示したグラフである。 本発明の窒化ケイ素膜原料であるスピロトリシラザンの熱分析結果を示すチャートである。 プロピルアミノシランの熱分析結果を示すチャートである。
本発明者らは、種々のシラン化合物のうち、窒素を含むシラザンが窒化ケイ素膜原料として適していると考え、検討を進めた結果、比較的不安定な4員環の環状シラザン化合物であれば、Si−R(またはH)結合や、N−R結合が切れやすく、均一な窒化ケイ素膜を比較的低温でのCVD法あるいはALD法で形成することができること、ジクロロシランを用いた窒化ケイ素膜のような塩素原子の混入もないこと、本発明の窒化ケイ素膜原料が発火性を有さず、加水分解安定性や保存安定性にも優れていること等を見出し、本発明を完成させた。以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の窒化ケイ素膜原料は、CVD法またはALD法のための原料である。積層条件は後述する。
[環状シラザン化合物]
本発明の窒化ケイ素膜原料は、下記式(1)で示される環状シラザン化合物を含むものである。
(式(1)中、R1a〜R1dは、同一または異なって、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または−SiR3(Rは水素原子またはアルキル基)を表し、R2〜R5は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはアミノ基を表す。nは0〜3である。)
上記式(1)中のアルキル基とは、炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルが挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基における置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、アミノ基等が挙げられる。−SiR3(Rは水素原子またはアルキル基)中のアルキル基としては、上記の炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましい。
1a〜R1dは、電子求引性のフェニル基や−SiR3であるよりも、炭素数1〜4程度のアルキル基である方が環状シラザン化合物の沸点が低くなるため、CVD法による成膜の際、容易に気化できて好ましい。R1a〜R1dは同一であっても異なっていてもよいが、同一である方が合成が容易である。
また、R2〜R5がアルキル基である場合は、上記の炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基である場合も上記したとおりである。R2〜R5の全てが水素原子であると、得られる窒化ケイ素膜に含まれてしまう炭素原子を低減させる効果が最も発揮されるため最も好ましい態様であるが、R2〜R5の全てでなくても、これらのうち1個以上が水素原子であれば、炭素原子の低減効果が発揮されるため、好ましい。
上記式(1)において、nは0〜3のいずれかである。nが3を超えると沸点が高くなって、低温CVDが困難となる。nは0または1が好ましく、1であることがより好ましい。nが1であれば、1分子中にSiが3個含まれ、分子中のSiとNの含有比率がちょうど3:4となるため、純品の窒化ケイ素と同じSi34という組成を有する均一な窒化ケイ素膜を形成できるからである
上記環状シラザン化合物は歪んだ4員環構造を持つため、200℃程度で分解する。そのため、低温での窒化ケイ素膜形成が可能である。
本発明のさらなる効果として、上記環状シラザン化合物は室温においては大気中で安定であり、保管および取扱いが容易であることが挙げられる。モノシラン、ジシラン、トリシラン等の水素化シラン類は自然発火性を有し、保管および取扱いには、大気中に漏洩して発火してしまうのを防ぐために、相応の対策や設備が必要である。また、ジクロロシランやヘキサクロロジシラン等のクロロシラン類は、大気中の水分と反応し、塩化水素を発生するため、保管容器や成膜装置等の金属部分を腐食させる可能性がある。さらに、ビス(アルキルアミノ)シラン、トリス(アルキルアミノ)シラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン等の鎖状アルキルアミノシラン類は大気中で比較的安定であるが、長期保管時においては徐々に加水分解や不均化が進行し、白色沈殿や黄変が見られることがある。一方、本発明の環状シラザン化合物は、室温下では変質することなく長期保管可能であり、保管容器や成膜装置の金属部の腐食を起こすこともない。
すなわち、環状シラザン化合物は、200℃程度で容易に分解する性質を有するにもかかわらず、室温下においては極めて安定であり、低温成膜性と取扱い容易性とを併せ持っていることから、窒化ケイ素膜原料としては非常に有用な化合物である。
[環状シラザン化合物の製造方法]
上記環状シラザン化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、トリシラザンの代表的な方法として、以下の2つの方法がある。
[第1の方法]
第1の方法は、下記スキームで表され、テトラクロロシランにアミンを反応させてアミノシランを合成し、アミノ基の水素をリチウムへと転換した後、ジクロロシランを反応させて環化させる方法である。この方法は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry, 446(1993), C1-C2に記載されている。
下記スキームにおいて、R’は式(1)においてR1a〜R1dに相当する置換基であり、R”は式(1)においてR2〜R5に相当する置換基である。従って、R’が全て同じアミンや、R”が全て同じジクロロシランを用いれば、R’が全て同一、R”が全て同一の環状シラザン化合物が得られるし、R’やR”が異なるアミンやジクロロシランを併用することで、多種多様なR’やR”を有する環状シラザン化合物が得られる。
[第2の方法]
第2の方法は、下記スキームで表され、ジクロロシランの反応の順序を第1のスキームと逆にしただけである。この方法は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry, 446(1993), C1-C2に記載されている。
上記第2の方法のスキームにおいても、R’は式(1)においてR1a〜R1dに相当する置換基であり、R”は式(1)においてR2〜R5に相当する置換基である。従って、第1のスキームの場合と同様に、R’が全て同じアミンや、R”が全て同じジクロロシランを用いれば、R’が全て同一、R”が全て同一の環状シラザン化合物が得られるし、R’やR”が異なるアミンやジクロロシランを併用することで、多種多様なR’やR”を有する環状シラザン化合物が得られる。
また、テトラシラザンについては、例えば、下記スキームで得られることが知られている(Journal of the American Chemical Society, 98巻, 25号(1976), p8083-8087)。
上記合成反応は溶媒中で行うことが好ましく、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素やテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類等が用いられる。
反応温度は特に限定されないが、−100℃〜100℃の範囲が好ましい。反応時間、反応時の圧力も特に限定されない。合成後は、公知の精製法を用いて精製することが好ましい。例えば、蒸留、洗浄、酸化剤処理、吸着精製、再沈殿、分液抽出、再結晶、晶析、クロマトグラフィー等による精製等、適宜選択あるいは組み合わせて精製することができる。
[窒化ケイ素膜原料]
本発明の窒化ケイ素膜原料は、上記の環状シラザン化合物のみからなるものであってもよいし、他の成分、例えば窒素源をさらに含むものであってもよい。窒素源としては、窒素、アンモニア、ヒドラジン、アルキルヒドラジン化合物、アジ化水素等が挙げられる。本発明の窒化ケイ素膜原料は、得られる窒化ケイ素膜の性能が良好となることから、環状シラザン化合物以外のアミノシラン類や有機アミン類の含有量が少ない方が好ましい。窒化ケイ素膜原料100モル%中、上記アミノシラン類と有機アミン類との合計は0〜20モル%であることが好ましく、残部は環状シラザン化合物であることがより好ましい。なお、窒化ケイ素膜原料としての上記環状シラザン化合物が水を含む場合、環状シラザン化合物と水との合計100モル%中、水は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましい。ただし、最も好ましいのは、環状シラザン化合物が水を含まない態様である。窒化ケイ素膜を形成する基材については、特に限定されないが、シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。
[CVD法での成膜方法]
本発明の窒化ケイ素膜原料は、CVD法で窒化ケイ素膜を製造するために用いられる。CVD法の種類は特に限定されないが、熱CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。CVD法に用いる装置も特に限定されないが、半導体製造分野、液晶ディスプレイ製造分野、高分子フィルムの表面処理分野等の技術分野で一般的に用いられている装置がいずれも使用可能である。
CVD法での成膜条件としては、チャンバ内圧力を1Pa〜10kPa程度の減圧とすることが好ましく、1Pa〜1kPaがより好ましい。温度は100℃〜1000℃の範囲で選択でき、150℃〜800℃が好ましく、200℃〜600℃がより好ましい。窒化ケイ素膜原料が気体である場合、CVD法を行うためのチャンバにそのまま気体状で導入すればよく、液体である場合は、気化器を介して気化させてからチャンバに導入すればよい。さらなる窒素源として窒素ガス、アンモニア、ヒドラジン等を用いてもよい。環状シラザン化合物が常温で液状である場合は、窒素ガス等と、環状シラザン化合物を気化させたガスとを、混合後または別々にチャンバに導入することができる。成膜の際には、コンタミを起こさない限り、チャンバに不活性ガス等の他のガスを導入してもよい。
プラズマCVD法を採用する場合のプラズマ発生方法については特に限定されず、高周波プラズマCVD、高密度プラズマCVD、ECRプラズマCVD、誘導結合型CVD等を用いることができる。また、プラズマ発生源通しては、平行平板型、アンテナ型等の種々のものが使用できる。この際のプラズマCVD条件としては特に限定されないが、1.0W〜10000Wが好ましく、1.0W〜3000Wの範囲で行うことがより好ましい。
窒化ケイ素膜の堆積速度は、チャンバ内温度、原料ガスの流量、反応器の圧力等によって異なってくるが、特に限定されず、適宜選択すればよい。
[ALD法での成膜方法]
本発明の窒化ケイ素膜原料は、原子層堆積(ALD)法で窒化ケイ素膜を製造するために用いることができる。ALD法に用いる装置は特に限定されないが、半導体製造分野、液晶ディスプレイ製造分野、高分子フィルムの表面処理分野等の技術分野で一般的に用いられている装置がいずれも使用可能である。ALD法での成膜は、例えば、基材表面を、本発明の窒化ケイ素膜原料と1種以上の他の窒素含有源とに、交互に曝露、パージを繰り返すことによって、窒化ケイ素膜を堆積させて行われる。他の窒素含有源は、特に限定されないが、窒素ガス、アンモニア、ヒドラジン等を用いることのができる。成膜の際の基材温度は特に限定されないが、0℃〜500℃が好ましく、25℃〜300℃がより好ましい。成膜の際の処理チャンバ内の圧力は、10Pa〜100kPa、10Pa〜2kPa、または10Pa〜1kPaの範囲とすることができる。
[窒化ケイ素膜]
本発明の窒化ケイ素膜原料を用いてCVD法またはALD法により形成された窒化ケイ素膜は、基本的にはSi34であるが、水素原子や炭素原子が含まれることがある。炭素は全く含まれないことが好ましいが、不可避的に含まれてしまうことがある。
なお、本発明の窒化ケイ素膜は、絶縁膜としても有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[NMR測定]
1H−NMR、13C−NMRの測定は、Varian社製の「Unity Plus−400」を使用して行った(内部標準物質:TMS、溶媒:C66、積算回数:1H−NMR16回、13C−NMR256回)。29Si−NMRの測定は、Varian社製の「VNMRS−600」を使用して行った(内部標準物質:TMS、溶媒:C66、積算回数:4096回)。
<質量分析計>
製品名:「GCMS−QP2010」(島津製作所社製)を用いて、電子イオン化法(EI)により測定した。
実施例
窒素雰囲気下、撹拌装置を備えた500mLの四つ口フラスコに、130gのPrNH2と、300mLのテトラヒドロフランを仕込み、0℃に冷却した。内温を0℃に保ちつつ、滴下漏斗から30gのSiCl4を滴下した。滴下終了後、内温を室温に戻して、2時間撹拌した。塩を濾別した後、濾液を濃縮し、減圧蒸留することで目的物であるテトラキス(プロピルアミノ)シラン(Si(NHPr)4)を40.8g得た。収率は88質量%であった。
1H−NMR(C66)の結果:
δ 0.45(s,4H),0.82(t,12H),1.33(sex,8H),2.68(m,8H).
13C−NMR(C66)の結果:
δ 11.7,28.4,43.9.
29Si−NMR(C66)の結果:
δ −40.5
MS(EI)の結果:
m/z 260M+
続いて、窒素雰囲気下、撹拌装置を備えた200mLの四つ口フラスコに、2.0gのSi(NHPr)4と、10mLのテトラヒドロフランを仕込み、0℃に冷却した。内温を0℃に保ちつつ、滴下漏斗から1.6MのBuLiヘキサン溶液19.4mLを滴下した。滴下終了後、内温を室温に戻して、3時間撹拌した。再び0℃に冷却し、2.2gのSiMe2Cl2を滴下した後、室温に戻して8時間撹拌した。塩を濾別した後、濾液を濃縮し、減圧蒸留することで、目的物である2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザン1.6gを得た。収率は54質量%であった。なお、上記で得られた2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザンは、1H−NMRの測定結果からは、環状シラザン化合物以外のアミノシラン類や有機アミン類に起因するピークは認められなかった。
1H−NMR(C66)の結果:
δ 0.28(m,12H),0.94(t,12H),1.53(sex,8H),2.89(t,8H).
13C−NMR(C66)の結果:
δ 1.8,12.6,28.8,44.4.
29Si−NMR(C66)の結果:
δ −47.5,−3.24.
MS(EI)の結果:
m/z 372M+
上記で得られた2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザンは、大気中、室温下において、3カ月以上、分解、変色、沈殿の生成等がなく、安定に保管することができた。
撹拌装置を備えた50mLのナスフラスコに、窒素雰囲気下、上記で得られた2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザン93mgとヘキサン20mLを仕込み、内部標準としてヘキサデカン20mgを加えた。室温下、撹拌を行いながら、イオン交換水180mgを加えた。イオン交換水を加える直前と、加えた1時間後、3時間後に、それぞれ溶液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィ(「GC−2014」:島津製作所社製)で、2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザンの残存量を内部標準とのピーク面積比で算出し、加水分解の経時変化を追跡した。図1に示したとおり、上記スピロトリシラザンは、3時間後においても72質量%が残存しており、耐加水分解性が良好なことが確認できた。一方、ヘキサクロロジシラン100mgを用いて、同様に仕込み、加水分解の経時変化を追跡したところ、1時間後にはヘキサクロロジシランが全て加水分解していた。
上記で得られた2,2,6,6-テトラメチル-1,3,5,7-テトラプロピルスピロ[3.3]トリシラザンと、Si(NHPr)4の熱分析を、TG−DTA(TGA−50H;島津製作所社製)で行った。昇温速度は10℃/分で400℃まで測定した。結果を図2、図3に示す。図2から明らかなように、上記スピロトリシラザンでは、50%質量減少温度が208.3℃で、400℃での質量減少率が80.8質量%であった。また、DTA曲線のピークが上向きのピークとなっており(発熱反応)、蒸発(吸熱変化)ではなく、何らかの分解によって質量が減少していることがわかる。このことから、上記スピロトリシラザンに低温分解性があるといえ、低温CVD法が可能であることが明らかとなった。
以上のことから、上記式(1)で示される環状シラザン化合物は、大気中、常温下で安定に保管可能であり、水分等の混入に対しても比較的良好な安定性を有しており、さらに低温分解性を有していることから、CVD法あるいはALD法用窒化ケイ素膜原料として好ましく使用できることが明らかとなった。
また、上記窒化ケイ素膜原料は、塩素原子を含まず、良好な低温分解性を有することにより、塩素原子や炭素原子等の不純な元素の混入の少ない高性能な窒化ケイ素膜が得られることが明らかとなった。
一方、図3のSi(NHPr)4の場合は、50質量%減少温度が172.8℃で、400℃での質量減少率が96.9質量%であった。DTAピークが下向きであることから、分解ではなく単に蒸発しただけだと考えられる。
本発明の窒化ケイ素膜原料は、沸点が低く、塩素原子は有さず、保存安定性に優れている。本発明の窒化ケイ素膜は、低温でのCVD法で得ることができるため生産性に優れており、塩素原子や炭素原子の混入が少ないことから高性能な窒化ケイ素膜となる。従って、本発明の窒化ケイ素膜は、半導体装置等の絶縁部材として有用である。

Claims (2)

  1. 下式(1)で示される環状シラザン化合物を含むことを特徴とするCVD法またはALD法用窒化ケイ素膜原料。
    (式(1)中、R1a〜R1dは、同一または異なって、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または−SiR3(Rは水素原子またはアルキル基)を表し、R2〜R5は、同一または異なって、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはアミノ基を表す。nはである。)
  2. 請求項1に記載の窒化ケイ素膜原料を用いてCVD法またはALD法により形成されたことを特徴とする窒化ケイ素膜。
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