JP6141713B2 - 生体内部の構造情報を得る方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内部の構造情報を、診断具を生体表面に接触させて測定する方法に関し、さらに詳しくは生体内部の構造情報と共に、圧力測定手段により診断具の信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する方法に関する。本発明はまた、その方法の実施に有利に用いることができる診断具に関する。
生体内部の構造情報を測定する方法として、超音波を利用した超音波診断法が知られている。超音波診断法とは、超音波信号送受面を有する超音波プローブの超音波信号送受面を体の表面に接触させて、生体内部に超音波信号を送信し、生体内部に存在する物理的もしくは化学的に異なる部位にて反射した信号を受信することによって生体内部の構造情報を測定する方法である。最近では、超音波プローブに圧力測定手段を設けて、生体内部の構造情報と共に、超音波プローブの超音波信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化あるいは生体の心拍や呼吸によって発生する圧力の変化を測定することが検討されている。
特許文献1には、超音波プローブ(超音波探触子)の超音波送受信面を覆うように、圧計測用変形体手段を設けて、生体に超音波プローブを押し当てたときの圧計測用変形体手段の変形の状態を、超音波送受信面から送信されて圧計測用変形体手段に反射した超音波反射信号から求め、その圧計測用変形体手段の変形状態に基づいて生体に超音波プローブを押し当てたときの圧力を計測することが記載されている。
特許文献2には、生体の食道内に挿入され、食道壁を介して前方の心臓に超音波を送受信する振動子を有する計測部と、前記計測部の当接面を食道壁に当接させる位置決め機構と、前記心臓の拍動成分を検出するために、前記食道壁から前記当接面に与えられる押圧力を検出する圧力検出手段と、を含むことを特徴とする経食道プローブが記載されている。この文献には、圧力検出手段として、ピエゾ抵抗素子を搭載したセンサチップ、感圧ゴム材、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ストレインゲージ、ダイヤフラムを有する半導体センサーが挙げられている。
一方、特許文献3には、圧力容器内に設けられた圧電振動子のインピーダンス(交流抵抗値)からその容器内の気体の圧力を計測する気体圧力計が記載されている。この文献によると、圧力容器内に置かれ屈曲振動する圧電振動子のインピーダンスは圧力に応じて変化するため、圧電振動子のインピーダンスを測定することによって、圧力容器内の気体の圧力の変化を検知することができるとされている。但し、この文献には、固体である生体と圧電振動子との接触によって発生する圧力の測定方法についての記載はない。
特開2005−66041号公報 特開2008−183097号公報 特開昭60−201225号公報
特許文献1に記載されている超音波プローブでは、超音波信号送受面から生体内に送信される超音波信号の一部が、圧計測用変形体手段の変形状態を求めるために使用されてしまうため、超音波の伝搬効率が低くなる。また、特許文献2に記載されている一般的な圧力センサーでは、測定可能な圧力のダイナミックレンジが狭すぎて、超音波プローブの超音波信号送受面を生体に押し当てたときの圧力の変化と生体の呼吸や心拍による圧力の変化との両者の圧力の変化を正確に測定することが難しい、あるいは測定可能な圧力のダイナミックレンジが広すぎて、生体の通常の呼吸と深呼吸のような微細な圧力の変化を捉えるが難しいことがある。
従って、本発明の目的は、圧力の変化を速い応答速度で検出することができ、また圧力の対象物体に応じて、測定可能な圧力のダイナミックレンジを容易に調整できる圧力の測定方法を開発して、超音波プローブのような診断具を用いて生体内部の構造情報を測定する際に、診断具の信号送受面に付与される圧力の変化、即ち診断具の信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は測定対象の生体の表面にて発生する圧力の変化を迅速にかつ高い精度で測定できる方法と、その方法の実施に有利に使用できる診断具を提供することにある。
本発明者は、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面(以下、生体接触面とも云う)に圧力が付与されることによって、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を作成した。そして、この圧力振動体を人間の体表面に、圧力振動体の接触子の生体接触面が接触した状態で配置して、圧力振動体の圧電振動子に、圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とし、その振動状態にある圧電振動子から電流を取り出して、電流の電流値の変動と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変動を算出した。その結果、圧力振動体の生体接触面に付与された人間の呼吸による圧力の変動が、速い応答速度で、圧電振動子のインピーダンスの変動として現れることを見出した。そして、この圧力振動体を人間の表面に、圧力振動体の接触子の生体接触面が接触した状態で配置して、圧力振動体の圧電振動子に、圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とし、その振動状態にある圧電振動子から電流を取り出し、そして、電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出した。その結果、圧力振動体の生体接触面に付与される圧力の変化が、速い応答速度で、圧電振動子のインピーダンスの変化として現れることを見出した。また、本発明者は、上記圧力振動体の接触子の材料や形状などの構成によって、接触子に付与された圧力の変化に対する圧電振動子のインピーダンスの変化量が変わることを見出した。そして、本発明者は、上記の圧力振動体の接触子の膨出部を、診断具の信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて変形して、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成することによって、その圧力振動体を診断具の圧力測定手段に利用できると考えて、本発明に到達した。
従って、本発明は、信号送受面、該信号送受面を介して生体内部に信号を送信し、生体内部にて反射した信号を受信することによって生体内部の構造情報を測定する構造情報測定手段、そして該信号送受面を生体に接触させることにより発生した圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する圧力測定手段を備えた診断具を用意し、その診断具の信号送受面を生体の表面に接触させて、上記構造情報測定手段により生体内部の構造情報を得ると共に、圧力測定手段により該信号送受面の生体との接触により発生した圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する診断方法であって、
圧力測定手段が、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体であって、該圧力振動体の接触子の膨出部が、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が生体の表面に接触している場合に、該生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を含み、
該信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化の測定を下記の工程を含む操作により行なう方法にある。
圧力振動体を生体の表面に、上記診断具の信号送受面と共に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程;該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程。
上記本発明の診断方法の好ましい態様は次の通りである。
(1)生体内部に送信する信号が超音波信号であって、受信する信号が生体内部に存在する物理的もしくは化学的に異なる部位にて反射した超音波信号である。
(2)上記圧電体が円盤状である。
(3)上記接触子が一方の表面に膨出部が形成された円盤状である。
(4)上記接触子の直径と厚さの比が、1:1〜1:1/5の範囲にある。但し、接触子の厚さは膨出部の先端から膨出部が備えられた表面とは反対側の表面までの厚さを意味する。
(5)上記接触子の膨出部が半球状である。
(6)上記接触子の全体が有機高分子弾性材料から形成されている。
本発明はまた、生体の表面に接触させるための信号送受面、該信号送受面を介して生体内部に信号を送信し、生体内部の構造情報を検出する構造情報測定手段、そして該信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する圧力測定手段を備えた診断具であって、圧力測定手段が、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が生体の表面に接触状態に置かれた場合に、該生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、そして該圧力振動体の圧電振動子に電気的に接続している、圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加する手段、振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す手段、該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する手段及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する手段を含み、該圧力振動体は、信号送受面を生体の表面に接触させると、接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面も生体の表面に接触する位置に配置されている診断具にもある。
本発明の診断方法を利用することによって、超音波プローブのような診断具を用いて生体内部の構造情報と共に、診断具の信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は測定対象の生体の表面にて発生する圧力の変化を迅速にかつ高い精度で測定できる。また、本発明の診断具を利用することによって、上記本発明の診断方法を有利に実施することができる。
本発明に従う診断具(超音波プローブ)の一例の斜視図ある。 図1の診断具の信号送受面周囲の側面断面図である。 図2に示された圧力振動体の要部拡大断面図である。 図3の圧力振動体の接触子に圧力を付与したときの接触子の変形状態を示す断面図であり、(a)は接触子に圧力を付与する前の状態を、(b)は接触子に圧力を付与した後の状態を示している。 図2に示された圧力測定回路の一例のブロック図である。 本発明の診断方法に使用される圧力振動体を人間の腹部表面に接触させて測定した、圧電振動子のインピーダンスの経時変化を示すグラフである。 本発明の診断方法に使用される圧力振動体の接触子に付与した圧力と、圧電振動子のインピーダンスとの関係を示すグラフである。
本発明の診断方法及び診断具を、超音波プローブを用いた超音波診断方法を例にとって説明する。図1は、本発明に従う診断具(超音波プローブ)の一例の斜視図であり、図2は、その診断具の信号送受面周囲の側面断面図である。図3は、図2に示された圧力振動体の要部拡大断面図であり、図4は、図3の圧力振動体の接触子に圧力を付与したときの接触子の変形状態を示す断面図であり、(a)は接触子に圧力を付与する前の状態を、(b)は接触子に圧力を付与した後の状態を示す。図5は、図2に示された圧力測定回路の一例のブロック図である。
図1、2に示す診断具は超音波プローブ40であって、先端に信号送受面である音響レンズ42と、圧力測定手段を構成する圧力振動体1の生体接触面22とが備えられている。生体接触面22は音響レンズ42を生体の表面に接触させると、その生体の表面に接触する位置に配置されている.
超音波プローブ40の構造情報測定手段43は、音響整合層44、超音波振動子45及び吸音材49を含む。超音波振動子45は、盤状圧電体46と盤状圧電体46の両側表面のそれぞれに備えられた電極47、48とからなる。電極47、48は、それぞれリード線50a、50bに接続している。超音波プローブ40は、次のようにして超音波診断を行う。リード線50a、50bを介して電極47、48に電圧を印加すること、超音波振動子45が発振して、超音波信号が発生する。超音波振動子45にて発生した超音波信号は音響整合層44、音響レンズ42を伝搬して、測定対象の生体に送信される。生体内部に送信された超音波信号は、その一部もしくは全部が生体内部に存在する物理的もしくは化学的に異なる部位(例えば、生体の臓器、胎児)にて反射する。反射した超音波信号は、超音波振動子45にて受信される。超音波振動子45は、超音波信号を電気エネルギーに変換する。電気エネルギーは、リード線50a、50bを介して信号処理装置(図示せず)に送られて、生体内部の構造情報に変換される。生体内部の構造情報の例としては、内部構造の断面画像、生体の血流速度あるいは血流の分布状態を挙げることができる。
超音波プローブ40は圧力測定手段として、圧力振動体1と圧力測定回路30とを有する。圧力振動体1は、圧電振動子10と接触子20とを含む。
圧電振動子10は、盤状の圧電体11と圧電体11の両側表面のそれぞれに備えられた電極12、13とからなる。圧電振動子10の上側面は、接着剤(図示せず)を介して振動子ケース14に貼り付けられている。圧電振動子10の上側面の電極12は、折り返し電極12aによって圧電体11の下側面に引き延ばされている。折り返し電極12aと下側面の電極13にはそれぞれリード線15a、15bが接続されている。圧電振動子10は、円盤状であることが好ましい。圧電振動子のサイズは、一般には、直径が1〜50mmの範囲、好ましくは5〜20mmの範囲である。盤状圧電体11の材料の例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウムなどの強誘電体セラミックを挙げることができる。振動子ケース14は、圧電振動子と共に振動可能な材料で形成されていることが好ましい。振動子ケースの材料の例としては、金属及び後述の接触子20の膨出部21よりも硬い硬質性有機高分子弾性材料を挙げることができる。金属の材料の例としては、アルミニウム、ステンレススチールを挙げることができる。圧電振動子10が収容されている振動子ケース14は、圧力振動体保持板51にリング状に設けられた振動子ケース保持部52にて支持固定されている。
接触子20は、一方の表面に膨出部21を備えた盤状体からなる。接触子20の膨出部21が備えられた表面と反対側の表面は生体に接触する生体接触面22である。接触子20の膨出部21の周囲には、フランジ部23が形成されている。フランジ部23は、可撓性の連結部24と、連結部24と接続している下端面が膨出部21の先端と同じ高さとなるように形成されている支持部25とからなる。接触子20は、振動子ケース保持部52の頂部に配置されたリング状の接触子保持具53とケース41との間に、リング状のパッキング(図示せず)を介して挟まれた状態で支持固定されている。なお、図3では、接触子20のフランジ部23を省略している。接触子20は円盤状であることが好ましい。接触子20の直径と厚さの比は、1:1〜1:1/5の範囲にあることが好ましい。接触子20の厚さは膨出部の先端から膨出部が備えられた表面とは反対側の表面までの厚さを意味する。接触子の膨出部21は半球状であることが好ましい。半球状とは、球を平面で切り取った形状を意味するが、厳密な半球の形であることを要しない。圧電振動子10が円盤状である場合、接触子20の膨出部21と圧電振動子10とは、圧電振動子10の中央に膨出部21の先端が接触するように配置されていることが好ましい。なお、図3に示した圧力振動体1では、接触子20の膨出部21と圧電振動子10の電極12とは、振動子ケース14を介して接触しているが、膨出部21と圧電振動子10の電極12とは直接接触させてもよい。
接触子20の膨出部21は、生体接触面22が超音波診断対象の生体の表面に接触状態に置かれた場合に、生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて膨出部21と圧電振動子10との接触面積(圧電振動子10が振動子ケース14に収納されている場合は、膨出部21と振動子ケース14との接触面積)が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている。接触子20は、全体が同一の有機高分子弾性材料から形成されていてもよい。また、生体接触面22は、膨出部21の材料よりも硬度が高い有機高分子弾性材料あるいは金属から形成されていてもよい。金属の例としては、アルミニウム、鉄、ステンレススチールを挙げることができる。有機高分子弾性材料は、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーのいずれかであることが好ましく、ゴムであることが特に好ましい。ゴムの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリブタジエン系ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル・ブタジエンゴムを挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂を挙げることができる。
圧力振動体1の生体接触面22は、超音波診断対象の生体の表面に直接的に接触させてもよいし、介在物を介して間接的に接触させてもよい。介在物は、測定対象物の圧力の変化を減衰させるものあるいは増幅させるものを用いることができる。圧力振動体1は、衣服を介して、人間などの動物の体の表面に装着しても、高感度で測定が可能であるため、特に人間を対象とする測定に有利に利用できる。
圧力振動体1は、図4に示すように、生体接触面22に圧力が付与されると、膨出部21の先端が振動子ケース14の表面で押し潰されて、膨出部21と振動子ケース14との接触面積Sが広くなる。圧力振動体1の圧電振動子10に、共振周波数の電圧を印加して圧電振動子10を振動させた状態で、膨出部21と圧電振動子10との接触面積(接触子20の膨出部21と圧電振動子10の電極12とが振動子ケース14を介して接触している場合は、接触子20の膨出部21と振動子ケース14との接触面積)が変化すると、圧電振動子10のインピーダンスが変化する。圧電振動子10のインピーダンスが変化する理由は、圧電振動子10の振動エネルギー(圧電振動子10が振動子ケース14に収納されている場合は、振動子ケース14の振動エネルギー)が、膨出部21を通って接触子20に伝搬することによって、圧電振動子10の振動エネルギーが減少するためであると考えられる。通常は、圧電振動子10と膨出部21との接触面積が広くなると、圧電振動子10のインピーダンスは大きくなる。
本発明の診断方法では、圧力振動体1の圧電振動子10のインピーダンスの変化を算出し、このインピーダンスの変化を圧力の変化に換算する。この圧力変化は、圧力振動体1の接触子20の生体接触面22に付与された圧力の変化である。生体接触面22は、上記のとおり音響レンズ42を生体の表面に接触させると、その生体の表面に接触する位置に配置されている。このため、生体接触面22に付与された圧力の変化は、音響レンズ42を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は生体の表面にて発生する圧力の変化に相当する。生体接触面22に付与された圧力の変化は、圧力振動体1を生体の表面に、超音波プローブ40の音響レンズ42と共に、圧力振動体1の接触子20の生体接触面22にて接触した状態で配置する工程;圧力振動体1の圧電振動子10に、圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;生体接触面22に付与された圧力の変化、即ち音響レンズ42を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて発生する電流の電流値Iの変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値Vとから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及びインピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む方法により測定することができる。電流値Iは、圧電振動子10を流れた電気エネルギーの量に、電圧値Vは、圧電振動子10に印加された電圧の強さにそれぞれ相当する。
圧力測定回路30は、一定の周波数の交流電圧を発生させる電源31、リード線15aとリード線15bとの間に生じる電圧の電圧値を測定するための電圧計32、リード線15aの間に挿入された抵抗33(抵抗:R)、抵抗33の両端に生じる電圧の電圧値を測定する電圧計34、演算装置35、電源31に接続して電気エネルギーを供給するための配線36、そして演算装置35に接続して演算装置35にて得られた圧力変化の情報を外部に伝達するため配線37を含む。電源31は、配線36によって供給された電気エネルギーから、圧力振動体1に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を発生させ、リード線15a、15bを介して圧電振動子に交流電圧を印加する。圧電振動子が円盤状である場合は、共振周波数は拡がり振動モードの共振周波数とすることが好ましい。圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数とは、共振周波数±10%の範囲、好ましくは共振周波数±5%の範囲にある周波数を意味する。圧電振動子に印加する交流電圧の周波数は、一般に、20kHz〜10MHzの範囲、好ましくは20kHz〜5MHzの範囲、より好ましくは20kHz〜1MHzの範囲、さらに好ましくは20〜500kHzの範囲、特に好ましくは20〜100kHzの範囲にある。圧電振動子に印加する交流電圧の電圧は、一般に実効値で5V以下、好ましくは1〜3Vの範囲である。電圧計32は、リード線15aとリード線15bとの間に生じる電圧の電圧値、すなわち圧電振動子に印加された電圧の電圧値Vを測定する。電圧計34は、抵抗33の両端に生じる電圧の電圧値V2を測定する。演算装置35は、電流の電流値Iを式:I=V2/Rより算出する。そして、得られた電流値Iと上記の電圧値Vとから、圧電振動子のインピーダンスZを式:Z=V/Iより算出して、インピーダンスZの変化を測定対象の圧力の変化に換算する。測定対象の圧力変化の周期は、インピーダンスの変化の周期から換算することができる。圧力変化の周期は、例えば、例えば、インピーダンスの変化をグラフとして表した場合にグラフ上に周期的に現れるインピーダンスの複数のピークを検出し、隣接するピーク間の時間間隔とすることができる。測定対象の圧力変化の強さは、インピーダンスのピークの高さもしくは深さから換算することができる。例えば、圧力変化の強さは、例えば、インピーダンスの変化をグラフとして表した場合にグラフ上に周期的に現れるインピーダンスのピークを検出し、隣接するピーク間でのピークの高さもしくは深さの差異とすることができる。また、予め、圧力振動体に付与した圧力値とその圧力を付与したときの圧電振動子のインピーダンス値との関係を予め調べて検量線を作成しておき、圧電振動子のインピーダンスと検量線とから圧力振動体に付与した圧力を算出してもよい。得られた測定対象の圧力変化は、音響レンズ42を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は生体の表面にて発生する圧力の変化として、配線37を介して信号処理装置(図示せず)に送られて、上記構造情報測定手段43にて測定された生体内部の構造情報と共に利用される。圧力変化の測定は、連続的、間欠的、周期的に行ってもよい。
超音波プローブ40は、コンベックス型、セクター型、リニア型及びマイクロコンベックス(体腔内用)型のいずれであってもよい。図1、2に示した超音波プローブ40は、圧力振動体1は一つであるが、二つ以上の圧力振動体を配置してもよい。
次に、圧力振動体の効果について説明する。
図6は、本発明の診断方法に使用される圧力振動体を人間(被験者)の腹部表面に接触させて測定した、圧電振動子のインピーダンスの経時変化を示すグラフである。図6のグラフは、アルミニウム製の振動子ケース(直径:14mm、厚さ:3mm)の中央に、ニトリルゴム製の接触子(膨出部の球曲率半径:50mm、直径:14.5mm、厚さ:9.8mm)の膨出部の先端を接触した状態で配置した構成の圧力振動体を、被験者の腹部表面に接触させ、圧電振動子に周波数が320kHzの交流電圧を印加したときの圧電振動子のインピーダンスの経時変化である。被験者には、測定開始から70秒間までは通常の呼吸をしてもらい、その後、深呼吸をしてもらった。このグラフに示すように、測定開始から60秒までの間では、圧電振動子のインピーダンスのピークの周期は6秒であった。このピークの周期は、被験者の呼吸の周期と一致していた。また、被験者が深呼吸をしたときのインピーダンスのピークは、通常の呼吸時のピークよりも明らかに高さが高くなった。すなわち、この結果から、上記の圧力振動体を利用することによって、呼吸によって生じるような速い圧力の変化を測定することが可能であることが分かる。さらに、上記の圧力振動体を利用することによって、通常の呼吸により発生する圧力と深呼吸により発生する圧力のようなわずかな圧力の違いを検出できることが分かる。
図7は、本発明の診断方法に使用される圧力振動体の接触子に付与した圧力と、圧電振動子のインピーダンスとの関係を示すグラフである。図7のグラフは、アルミニウム製の振動子ケース(直径:14mm、厚さ:3mm)の中央に、接触子の膨出部の先端を接触した状態で配置した構成の圧力振動体の圧電振動子に、周波数が320kHzの交流電圧を印加しながら、接触子に所定の圧力を付与した時の圧電振動子のインピーダンスの変化を表している。図7中のA〜Dは、接触子にそれぞれ下記の表1に記載の構成の接触子A〜Dを用いた圧力振動体のデータである。このグラフに示すように、接触子に付与された圧力に対する圧電振動子のインピーダンスの変化量は、接触子の材料及び形状によって大きく変わる。すなわち、このグラフから、圧力振動体の圧電振動子のインピーダンスの変化として測定される圧力変化のダイナミックレンジは、圧力振動体の接触子の材料及び形状などの構成を変えることによって調整できることが分かる。以上のグラフから、圧力振動体の接触子の材料及び形状などの構成を、診断具の信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は測定対象の生体の表面にて発生する圧力の変化の範囲に応じて設計することにより、診断具の圧力測定手段として有利に使用できることが分かる。
表1
────────────────────────────────────────
形状
──────────────────────────
膨出部の 生体接触面
接触子 材料 球曲率半径 の球曲率半径 直径 厚さ
────────────────────────────────────────
A NBR(硬度40度) 50mm 50mm 14.5mm 9.8mm
B NBR(硬度40度) 20mm 50mm 14.5mm 9.8mm
C NBR(硬度70度) 20mm 50mm 14.5mm 9.8mm
D POM 50mm 50mm 14.5mm 9.8mm
────────────────────────────────────────
NBR:ニトリルゴムブタジエンゴム、即ちニトリルゴム
POM:ポリオキシメチレン、即ちポリアセタール樹脂
1 圧力振動体
10 圧電振動子
11 圧電体
12 電極
12a 折り返し電極
13 電極
14 振動子ケース
15a、15b リード線
20 接触子
21 膨出部
22 生体接触面
23 フランジ部
24 連結部
25 支持部
30 圧力測定回路
31 電源
32 電圧計
33 抵抗
34 電圧計
35 演算装置
36 配線
37 配線
40 超音波プローブ(診断具)
41 ケース
42 音響レンズ
43 構造情報測定手段
44 音響整合層
45 超音波振動子
46 圧電体
47 電極
48 電極
49 吸音材
50a、50b リード線
51 圧力振動体保持板
52 振動子ケース保持部
53 接触子保持具

Claims (8)

  1. 信号送受面、該信号送受面を介して生体内部に信号を送信し、生体内部にて反射した信号を受信することによって生体内部の構造情報を測定する構造情報測定手段、そして該信号送受面を生体に接触させることにより発生した圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する圧力測定手段を備えた診断具を用意し、その診断具の信号送受面を生体の表面に接触させて、上記構造情報測定手段により生体内部の構造情報を得ると共に、圧力測定手段により該信号送受面の生体との接触により発生した圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する方法であって、
    圧力測定手段が、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体であって、該圧力振動体の接触子の膨出部が、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が生体の表面に接触している場合に、該生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を含み、
    該信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化の測定を下記の工程を含む操作により行なう方法:
    圧力振動体を生体の表面に、上記診断具の信号送受面と共に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程;該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程。
  2. 生体内部に送信する信号が超音波信号であって、受信する信号が生体内部に存在する物理的もしくは化学的に異なる部位にて反射した超音波信号である請求項1に記載の方法
  3. 上記圧電体が円盤状である請求項1に記載の方法
  4. 上記接触子が一方の表面に膨出部が形成された円盤状である請求項1に記載の方法
  5. 上記接触子の直径と厚さの比が、1:1〜1:1/5の範囲にある、但し接触子の厚さは膨出部の先端から膨出部が備えられた表面とは反対側の表面までの厚さを意味する請求項1に記載の方法
  6. 上記接触子の膨出部が半球状である請求項1に記載の方法
  7. 上記接触子の全体が有機高分子弾性材料から形成されている請求項1に記載の方法
  8. 生体の表面に接触させるための信号送受面、該信号送受面を介して生体内部に信号を送信し、生体内部の構造情報を検出する構造情報測定手段、そして該信号送受面を生体に接触させることにより発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化を測定する圧力測定手段を備えた診断具であって、圧力測定手段が、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が生体の表面に接触状態に置かれた場合に、該生体との接触により発生する圧力の変化及び/又は該生体の表面にて発生する圧力の変化に応じて、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、そして該圧力振動体の圧電振動子に電気的に接続している、圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加する手段、振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す手段、該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する手段及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する手段を含み、該圧力振動体は、信号送受面を生体の表面に接触させると、接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面も生体の表面に接触する位置に配置されている診断具。



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