JP6140361B2 - 水溶性遊離アミンキトサンを含有する防緑藻組成物及び該組成物を用いて緑藻を除去する方法 - Google Patents

水溶性遊離アミンキトサンを含有する防緑藻組成物及び該組成物を用いて緑藻を除去する方法 Download PDF

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Description

1.本発明の分野
本発明は、アオコ(water-bloom)形成藻類に対する防藻(anti-algae)活性を有する水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻(anti-green algae)のための組成物、及び該組成物を用いて緑藻を除去するための方法に関する。
2.関連技術の説明
アオコは、水流が緩やかな富栄養化した湖又は川の水面に浮遊する藻類(植物プランクトン)の大量増殖及び蓄積の結果であり、これが水の色を顕著な緑に変色させる。5月から10月の間に観察されるこのような有害なアオコによって引き起こされる環境被害は数千億韓国ウォンにも達し、これは明らかな環境災害である。アオコは、池(puddle)や、水が非常に遅く流れる、例えば固化した(solidified)ダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池(pond)、淡水の養魚場、及び釣り場等において、最上層の水温が少なくとも連続して3日間、最低23℃である時に容易に発生する。韓国で見られる緑藻類のほとんどは藍藻類に属し、同定された藻類の種類は少なくとも167種である。
アオコが一旦発生すると、藻類は等差数列(arithmetical progression)的に増殖するため、水中の酸素のほとんどが藻類によって消費されて富栄養化(酸素欠乏)を生じ、悪化すると悪臭を伴う。水中の魚は酸素欠乏状態となり、またえらに藻類が付着するために呼吸困難になる。従って、魚は水面上に浮かぶようになり、水温の急速な変化に適応できずに死に至る。近年、洛東江(Nakdong River)及びテチョン貯水池(Daecheong Reservoir)で水の色の変化を伴う藍藻類の大量増殖が夏季にしばしば観察されている。
アオコが発生すると、その水系の飲料水として、又は工業的使用での用途は制限される。従って、莫大な費用が無駄になるのみならず、社会的、経済的、及び環境的な側面においても他の問題を引き起こす顕著な生態学的問題である。海外の韓国企業はアオコによる直接的又は間接的な損害を被っており、その事例は毎年増加している。アルゼンチンのアズーリ(Azzurri)がその一例である。正確には、アルゼンチンの水処理工場で総額5億5千万ドルに上るアオコによる損害を出したとして企業が告訴されている(中国の太湖(Taihu Lake)領域に進出した韓国企業2社は2007年7月以降、アオコのために廃業した)。
アオコ形成藻類の増殖によって引き起こされるもう一つの問題は、緑藻類が増殖している湖や池で泳いだ人や、その水を飲んだ人で疾患を発症させ得る、これら藻類が産生するミクロシスチンと呼ばれる有毒性の環状ペプチドである。藻類の破壊を目的とする従来の藻類制御方法は、結局はアオコが密に発生している場所でのミクロシスチンの分泌をむしろ加速させ得る。ミクロシスチンの大量放出は、水生生物の成長に有害であるのみならず、ヒトに対しても有害である。
アオコの発生は、淡水だけでなく、海辺においても顕著な環境問題である。海中でのアオコは、海岸線で異常に増殖したアオノリ属(Enteromorpha)の堆積によって発生する。海中のアオコは世界中で報告されており、例えば米国のチェサピーク湾(Chesapeake Bay)、フランスのブルターニュ(Bretagne)、及び中国のチェンタオ(Chentao)が良く知られている。日本では、1990年から東京湾、瀬戸内海、及び九州の多くの海岸領域で海のアオコが認められている。海中のアオコは海岸の景色の悪化、海藻類の腐敗による悪臭、及び魚類及びアサリ等の貝類の死滅をもたらす。従って、日本の地方自治体は、毎年数十万円を費やして緑藻類の除去及び廃棄を試みてきた。しかしながら、毎年増殖する海岸の緑藻類を除去する有効な制御方法はまだない。
緑藻類による損害を最小限にするための解決方法又は対策が検討されてきた。しかしながら、これまでに確立された伝統的な方法又は対策は第2又は第3の生態系で問題を生じる可能性があり、加えて効果が出るまでに長期間を要する。以下は、緑藻類を除去するための従来の方法の例である。
第1に、淡水中の緑藻類を除去する最も伝統的な方法の一つは、黄土(赤色粘土)の散布である。黄土は比重の高い鉱物であり、従って粒子の電気的二重層が顕著に凝縮され、容易に沈降することができる。それによって緑藻類を凝固させ、淡水又は海水中に沈殿させることができる。この方法は、緑藻類の抑止及び除去のために韓国で広く用いられている。しかしながら、この方法は二次的な環境汚染を引き起こし得るため、他の国では広く使用されていない。すなわち、水が固化していたり水流が遅い場所に黄土を散布すると、極小の黄土粒子が沈殿して他の水生生物を破壊する。更に、最近の報告によれば、沈殿した藻類であっても、休眠期間後に再び増殖することができ、これが第2の損害を引き起こす可能性がある。
次に、物理的な緑藻類制御方法は、堆積層を浚渫又は交換して緑藻類を防止するものである。陸地もしくは養魚場の堆積層に蓄積した廃棄物及び汚染物質の全てが分解する場合、これらは溶存酸素を消費し、様々な毒性物質を産生してアオコを生じさせる。従って、上記のように、この方法は堆積層を浚渫又は交換するものである。しかしながら、この方法は、緑藻類が実際にしばしば観察される大きな湖や巨大なダムではそれ程有効ではない。
緑藻類を制御するもう一つの方法は、人口島を建設するか、又は遮蔽ネットを設置することである。しかしながら、この方法も、広い領域ではそれ程有効ではない(非特許文献1)。酸素を供給できる深部給気システムが使用可能であるが、これは深度約5mの浅い水中でのみ有効である(非特許文献2)。更に、近年開発された、超音波を用いて有害な藻類の膜を破壊するための装置が現在市場に出ている(特許文献1)。しかしながら、この装置も、超音波の強度が他の水生生物に影響し得るという不都合な点を有している。このような物理的な方法は緑藻類を制御するために多くの費用がかかり、その有用性は非常に限られることが示唆される。
韓国特許第10-1235053
K-water, Algae research study report generation mechanism and abatement techniques in the river reservoir system, 2007 K-water, Multipurpose water aerator installation feasibility study report, 1990
従来の方法の有する上記の不都合を考慮し、本発明者等は、環境に配慮した、ヒトに対してだけでなく生態系に対しても毒性のない、アオコ形成藻類に対するキトサンの作用を検討した結果、処理したキトサンがアオコ形成藻類に対して防藻効果を示す一方で水生生物に対しては毒性を有さないことを確認し、本発明の完成に到った。
本発明の目的は、アオコ形成藻類に対する防藻活性を有する水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物をアオコを示す淡水中に散布することによって緑藻を除去する方法を提供することである。
更に、本発明の目的はまた、アオコ形成藻類に対する防藻活性を示す分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物の使用を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明は、アオコ形成藻類に対する防藻活性を有する水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物を提供する。
本発明はまた、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物をアオコを示す淡水中に散布することによって緑藻を除去する方法を提供する。
本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類を直接死滅させることができ、アオコを抑制する優れた防緑藻活性を有することが示唆され、かつ淡水生物の細胞に対して非毒性である。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場等の淡水の生態系に適用できる安全な防緑藻組成物として有効に使用することができる。
本発明の好ましい実施形態の適用は、添付した図面を参照して最も良く理解される。
図1は、光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察された、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンのミクロシスチス・アエルギノーザ(Microcystis aeruginosa)に対する防藻活性を示す写真である。 図2は、光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察された、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンのセネデスムス・オブリクウス(Scenedesmus obliquus)に対する防藻活性を示す写真である。 図3は、調製例1、調製例2、及び比較例1〜4で調製した水溶性遊離アミンキトサンの淡水生物(limnobios)の1種であるコイの溶血に対する効果を示すグラフである。 図4は、培養液中への水溶性遊離アミンキトサン処理の4及び36時間後に観察された、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンのミクロシスチス・アエルギノーザに対する防藻活性を示す写真である(調製例2-1は水溶性遊離アミンキトサン処理の4時間後の培養液を示し、調製例2-2は水溶性遊離アミンキトサン処理の36時間後の培養液を示す)。 図5は、培養液中への水溶性遊離アミンキトサン処理の36時間後に観察された、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンのセネデスムス・オブリクウスに対する防藻活性を示す写真である。 図6は、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン処理の1時間後に観察された池のアオコの変化を示す写真である。 図7は、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン処理の12時間後に観察された池のアオコの変化を示す写真である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、アオコ形成藻類に対して防藻活性を示す分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物を提供する。
本発明の防緑藻組成物は、ミクロシスチス・アエルギノーザ(Microcystis aeruginosa)、セネデスムス・オブリクウス(Scenedesmus obliquus)、及びクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)に例示されるアオコ形成藻類に対して防藻活性を示す。
本発明の防緑藻組成物に有効成分として含まれる水溶性遊離アミンキトサンは、以下のステップを含む方法によって調製することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない:
有機酸及び無機酸を用いて不溶性キトサンにおける塩の形成を誘導し、続いて酵素的分解を行ってキトサン多糖を調製し(ステップ1);
ステップ1で調製したキトサン多糖の有機酸又は無機酸塩溶液をトリアルキルアミンで処理し(ステップ2);
ステップ2の混合溶液に有機溶媒を添加してキトサン多糖に結合している有機酸又は無機酸を除去して、酸不含キトサン多糖を調製し(ステップ3);そして
ステップ3で調製した酸不含キトサン多糖溶液を無機酸で処理し、続いて活性炭/イオン交換樹脂カラムを用いた精製を行って純粋な水溶性遊離アミンキトサンを調製する(ステップ4)。
本発明の方法に従って調製した水溶性遊離アミンキトサンは高い水溶性及び生物学的活性を有し、かつ1kDa〜100kDaの分子量を有する。
本発明の防藻組成物は、好ましくは、アオコ形成藻類に対する防藻活性を有する20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを含有する。
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの分子量が20kDa未満である場合、キトサンはなおもアオコ形成藻類に対する防藻活性を示すが、アオコを抑制又は除去するためには活性が低すぎる。キトサンの分子量が100kDaを超える場合には、優れた防藻活性を示すが、他の水生生物に対して毒性を示す。
アオコ形成藻類に対する有効成分として本発明の防緑藻組成物に含まれる水溶性遊離アミンキトサンの防藻活性を評価した。その結果、本発明の水溶性遊離アミンキトサンが、0.024g/Lの濃度でミクロシスチス・アエルギノーザ、セネデスムス・オブリクウス、及びクロレラ・ブルガリスの増殖を50%まで阻害できることが確認され、アオコを生じさせる淡水藻類に対して低濃度で優れた防藻活性を示すことができることが示唆される(実験例1を参照されたい)。また、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは毒性を有さないことが確認された。正確には、コイが棲んでいる淡水に水溶性遊離アミンキトサン処理を行った場合に、コイで赤血球の溶血を引き起こすことがなく、細胞毒性を有さないことが示唆された(実験例3を参照されたい)。更に、アオコを生じさせる藻類の集団を増加させる実験では、水溶性遊離アミンキトサンは優れたアオコ抑制及び除去効果を示した。実際にアオコが増殖している池を本発明の水溶性遊離アミンキトサンで処理すると、そこで優れた抗アオコ活性が示された(実験例4及び5を参照されたい。)
従って、本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有し、同時に淡水生物で細胞毒性を引き起こさないことから、生態系に損害を与えないことが示唆されるため、上記の水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む淡水の生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用することができる。
本発明はまた、アオコ形成藻類に対して防藻活性を示す分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物を、アオコを示す淡水中に散布することによって緑藻を除去する方法を提供する。
更に、本発明は、アオコ形成藻類に対して防藻活性を示す分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物の使用を提供する。
本発明の実用的かつ現在好ましい実施形態を、以下の実施例に示すように説明する。
しかしながら、当業者が、本開示を考慮して、本発明の精神及び範囲内で改変及び改良を行い得ることは理解されるであろう。
調製例1:
水溶性遊離アミンキトサンの調製1
ステップ1:キトサン多糖の調製
溶媒として乳酸を用いて5%キトサン溶液を調製した。この5%キトサン溶液100mL(pH 5.0〜5.5)にバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)BN-262に由来するキトサナーゼ5単位を添加し、40℃で36時間、酵素反応を行った。反応完了後、1μmのプレフィルターを用いて混合液をろ過し、次いでホロー(hollow)フィルター(分子量:20kDa)を用いて再度ろ過した。得られたろ液をナノフィルターシステムを用いて濃縮し、次いで滅菌し、噴霧乾燥器で乾燥させた。その結果、キトサン多糖が得られた。
ステップ2:酸不含キトサン多糖の調製
得られたキトサン多糖を1LのPBS(pH 7.0)に溶解し、これに0.52Lのトリエチルアミンをゆっくり滴下した。この時点で、キトサンオリゴ糖のアミン基1当量がトリエチルアミン2当量と反応した。反応混合物を室温で2時間反応させ、これにアセトンを添加して撹拌した。次に遠心分離を行った。上記の手順を2〜3回繰り返し、風乾及び凍結乾燥して酸不含キトサン多糖を得た。この時点で、Supra 30Kを用いて4℃で15,000rpm、20分間の遠心分離を行った。
ステップ3:水溶性遊離アミンキトサンの調製
ステップ2で調製したキトサン多糖に30mL〜50mLの0.001N HClを添加し、2時間反応させた。反応混合液にアセトンを添加し、撹拌後、上記と同じ条件で遠心分離した。上記の手順を2〜3回繰り返し、風乾及び凍結乾燥した。乾燥させた生成物を蒸留水に溶解し、活性炭/イオン交換樹脂カラムで精製した。得られた水溶液を凍結乾燥した。次いで生成物を水に溶解し、セルロースアセテートメンブレン(透過分子量:20kDa)でろ過した。その結果、分子量20kDaの水溶性遊離アミンキトサンが得られた。
調製例2:
水溶性遊離アミンキトサンの調製2
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに100kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
比較例1:水溶性遊離アミンキトサンの調製3
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに1kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量1kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
比較例2:水溶性遊離アミンキトサンの調製4
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに3kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量3kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
比較例3:水溶性遊離アミンキトサンの調製5
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに5kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量5kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
比較例4:水溶性遊離アミンキトサンの調製6
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに10kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量10kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
比較例5:水溶性遊離アミンキトサンの調製7
調製例1のステップ1の酵素反応及びステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンを用いたろ過を実施しない以外は調製例1の記載と同様にして、分子量150kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
実験例1:水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性の評価1
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性を評価するために、以下の実験を実施した。
韓国海洋微細藻類培養センター(Korea Marine Microalgae Culture Center)から分与されたミクロシスチス・アエルギノーザ、セネデスムス・オブリクウス、及びクロレラ・ブルガリスを、防緑藻活性の評価のためのアオコ形成藻類として使用した。藻類を、NaNO3(15mg)、K2HPO4(40mg)、MgSO4・7H2O(75mg)、CaCl2・2H2O(36mg)、クエン酸(6mg)、クエン酸第二鉄アンモニウム(6mg)、EDTA(1mg)、NaCO3(20mg)、H3BO3(2.86mg)、MnCl2・4H2O(1.81mg)、ZnSO4・7H2O(0.222mg)、CuSO4・5H2O(0.079mg)、及びCo(NO3)2・6H2O(0.0494mg/1L)を添加したBG-11培地中で、22℃、3,000ルクス(14h/10hの明暗サイクル)で培養した。前培養した藻類細胞を2×105個/mL又は5×105個/mLの密度に希釈し、次いでこれを24ウェルマイクロタイタープレートに播種した。調製例1、調製例2、及び比較例1〜5で調製した水溶性遊離アミンキトサンを、それぞれ6.25(mg/mL)/ウェルの濃度から出発して1/2に順次希釈し、上記の株を播種したプレートに添加した。未処理の対照としては、水溶性遊離アミンキトサンを含有しないBG-11培地をウェルに添加した。上記の培養条件で2日間培養する間に、50%阻害濃度(以後IC50とする)を決定するために、6時間毎に血球計で藻類集団を計数した。結果を表1に示す。
Figure 0006140361
表1に示すように、本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を示した。より正確には、分子量20kDa〜100kDaの本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、ミクロシスチス・アエルギノーザ、セネデスムス・オブリクウス、及びクロレラ・ブルガリス等のアオコ形成藻類に対して、分子量依存的に優れた防藻活性を示した。すなわち、分子量100kDaの水溶性遊離アミンキトサンの防藻活性は、0.024g/L以下のIC50であることが示され、分子量20kDaの水溶性遊離アミンキトサンのアオコ形成藻類、特にクロレラ・ブルガリスに対する防藻活性は、0.049g/LのIC50を有する程優れていた。一方、比較例5の分子量が100kDaを超えるキトサンは優れた防藻活性を示したのに対して、比較例1〜4で調製した分子量が20kDaより小さい水溶性遊離アミンキトサンは、クロレラ・ブルガリスを除き、分子量20kDa〜100kDaを有するキトサンと比較して、藻類に対する濃度を少なくとも2倍にして処理した場合に防藻活性を示した。従って、本発明の分子量20kDa〜100kDaを有する水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用することができる。
実験例2:水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性の評価2
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性を評価するために、以下の実験を実施した。
実験例1で使用したアオコ形成藻類を、NaNO3(15mg)、K2HPO4(40mg)、MgSO4・7H2O(75mg)、CaCl2・2H2O(36mg)、クエン酸(6mg)、クエン酸第二鉄アンモニウム(6mg)、EDTA(1mg)、NaCO3(20mg)、H3BO3(2.86mg)、MnCl2・4H2O(1.81mg)、ZnSO4・7H2O(0.222mg)、CuSO4・5H2O(0.079mg)、及びCo(NO3)2・6H2O(0.0494mg/1L)を添加したBG-11培地中で培養した。培養した藻類を105個/mLの密度で24ウェルマイクロタイタープレートに播種し、これに調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンをウェル当たり12mg/mLの濃度で添加し、22℃で2時間培養した。未処理の対照としては、水溶性遊離アミンキトサンを含有しないBG-11培地をウェルに添加した。培養終了後、視覚化のために光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡下で培養液を観察した。結果を図1及び図2に示す。
図1及び図2に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対して防藻活性を示した。緑藻類は、生きている場合は自身が蛍光を発するが、死んでいる場合は蛍光を発することができない。この事実に基づき、蛍光顕微鏡下での観察を行った。未処理の対照群の観察から、生物の数が維持され、その形態が変化していないことが確認された。しかしながら、藻類を調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンで処理した場合、藻類の数は未処理の対照群と比較して有意に減少し、集団の増大は全く観察されなかった。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンがアオコ形成藻類の死滅を引き起こし得ることが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用することができる。
実験例3:淡水生物に対する細胞毒性の評価
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンの淡水生物に対する細胞毒性を評価するために、以下の実験を実施した。
まず、淡水に棲むコイから血液を採取した。凝固を防ぐためにヘパリンで血液を処理し、赤血球を分離した。分離した赤血球の密度を8%に調節し、調製例1及び2、比較例1〜5でそれぞれ調製した水溶性遊離アミンキトサンを10mg/mLの濃度から2倍ずつに希釈したもので処理した。2時間後、上清を分離し、遊離したヘモグロビンをマイクロプレートリーダーで測定して赤血球の溶血を計算した。結果を図3に示す。
図3に示すように、本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、淡水生物に対する細胞毒性を有さないことが確認された。より正確には、調製例1及び2で調製した水溶性遊離アミンキトサンは、その濃度に関わらず、5%未満の低い溶血率を示した。一方、比較例5で調製した100kDaを超える分子量を有する水溶性遊離アミンキトサンは、低濃度においても高い溶血率を示した。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、淡水生物に対する細胞毒性がなく、安全であることが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有するだけでなく、淡水生物に対する細胞毒性を引き起こすことなく、安全であることも確認され、生態系にいかなる二次的な問題を引き起こすこともないため、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物が固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できることが示された。
実験例4:水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果の評価1
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果を評価するために、以下の実験を実施した。
実験例1に記載したものと同じ培養条件で前培養したミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウスを、少なくとも106個の細胞密度でTフラスコに入れ、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン24mg/Lで処理した。ヘモサイトメーターを使用してアオコ形成藻類の数を6時間毎に計数し、24時間後に水の濁度を観察した。この時点で、未処理対照として水溶性遊離アミンキトサンを含有しない培地を使用した。結果を図4及び図5に示す。
図4及び図5に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、ミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウス等のアオコ形成藻類に対して防藻活性を有することが確認された。より正確には、水溶性遊離アミンキトサンで処理しなかった未処理群では懸濁液のような高い水の濁度を示し、ミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウス等のアオコを生じる藻類の数が増大した。一方、本発明の水溶性遊離アミンキトサンで処理した場合、水の濁度が低下して水がより透明になり、死んだ藻類はフラスコの底に沈殿した。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンが、アオコを生じるこれらの藻類に対して防藻活性を有することが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できる。
実験例5:水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果の評価2
アオコが実際に増殖した淡水中での本発明の水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果を評価するために、以下の実験を実施した。
まず、アオコが顕著な池から採取した700Lの水を水浴中に移す。次いで、その中に本発明の調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン60mg/mLを投入する。1〜12時間後、水浴中の水を観察し、写真撮影した。結果を図6及び図7に示す。
図6及び図7に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、実際に池での増殖過程にあったアオコを生じさせる藻類に対して優れた防藻活性を示した。より正確には、図6に示すように、池の水を調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンで処理すると、池でアオコを生じさせる藻類が処理1時間後に死滅し、沈殿した。図7に示すように、池の水を水溶性遊離アミンキトサンで処理した12時間後には、アオコを生じさせていた藻類が全て死滅して沈殿し、その結果、水がより透明になり、濁度がより低くなったことが確認された。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンが、アオコが増殖した淡水中の緑藻を除去するのに優れていることが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの低減及びアオコ形成藻類の増殖阻害において有効であり、またアオコが実際に発生している淡水中の緑藻の除去にも優れていることが示唆された。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できる。
当業者は、上記記載中に開示された概念及び特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するための他の実施形態を改変又は設計するための基礎として容易に利用できることを理解するであろう。当業者はまた、そのような等価な実施形態が、添付した請求の範囲に示される本発明の精神及び範囲から逸脱するものではないことを理解するであろう。

Claims (2)

  1. アオコ(water-bloom)形成藻類に対する防藻(anti-algae)活性を示す分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを単独の有効成分として含有する防-緑藻類(anti-green algae)組成物をアオコを示す淡水(fresh water)中に散布することによって緑藻を除去する方法。
  2. ミクロシスチス・アエルギノーザ(Microcystis aeruginosa)、セネデスムス・オブリクウス(Scenedesmus obliquus)、及びクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)からなる群から選択される1種以上のアオコ形成藻類に対して実施する、請求項記載の緑藻を除去する方法。
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