以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図である。図2は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図である。光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20を備える。光音響波測定器1は、測定対象2に接しており、測定対象2の上を例えば左から右に走査する。
図1(a)が、血液2aから遠くに位置する光音響波測定器1を示す。図1(a)に図示の光音響波測定器1を右に走査すると、図1(b)に示すように、血液2aからやや遠くに位置するようになる。図1(b)に図示の光音響波測定器1を右に走査すると、図1(c)に示すように、血液2aの真上に位置するようになる。
光ファイバ(光出力部)20は、光(例えば、パルス光Pであるが連続光とすることも考えられる)を出力する。なお、光ファイバ20は、光音響波測定器1の外部のパルス光源(図示省略)に接続されている。光ファイバ20は、光音響波測定器1を貫通する。また、光ファイバ20が出力するパルス光Pは、図示の便宜上、図1(c)の場合のみ図示している。
測定対象2は、例えば人間の指の腹である。測定対象2には血管内の血液2aがあり、血管内の血液2aがパルス光Pを受けると、光音響波Wa1、Wa2(図1(a)参照)、光音響波Wb1、Wb2(図1(b)参照)、光音響波Wc1、Wc2(図1(c)参照)を発生する。
光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2、Wb1、Wb2、Wc1、Wc2を受けて、電気信号(例えば、電圧)に変換する。光音響波検知部11、12は、複数あるものとする。例えば、図1および図2に図示したように、光音響波検知部11、12は、2個あるものとする。
光音響波検知部11、12は、それぞれが、図示省略した周知のバッキング材、圧電素子、電極およびスペーサを有する。スペーサは測定対象2に接し、電極はスペーサに載せられ、圧電素子は電極に載せられ、バッキング材は圧電素子に載せられている。光音響波Wa1、Wa2、Wb1、Wb2、Wc1、Wc2が、圧電素子により電気信号(例えば、電圧)に変換され、電極を介して、外部に取り出される。
なお、図2を参照して、光音響波検知部11、12は、光ファイバ20から、走査方向に、共に距離X0だけ離れている。
図3は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、大きさ判定部44、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光音響波検知部11、12から電気信号を受ける。
電気信号測定部41は、光音響波検知部11から電気信号を受け、その測定結果(例えば、時間と電圧との関係)を出力する(図4のWa1、Wb1、Wc1参照)。電気信号測定部42は、光音響波検知部12から電気信号を受け、その測定結果(例えば、時間と電圧との関係)を出力する(図4のWa2、Wb2、Wc2参照)。
大きさ判定部44は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の測定結果を、電気信号測定部41、42から受ける。そして、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさと、所定の大きさ閾値ΔVとの大小関係を判定する。
例えば、大きさ判定部44は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが、いずれも所定の大きさ閾値ΔVを超えているか否か(またはΔV以上か否か)を判定する。
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが、いずれも所定の大きさ閾値ΔVを超えていると判定された場合は、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさのいずれか一つ以上が、所定の大きさ閾値ΔV以下であると判定された場合(図4(a)参照)は、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。この場合、大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図1(a)参照)を出力するようにしてもよい。
時間ずれ判定部46は、大きさ判定部44を介して、電気信号測定部41、42から測定結果を受ける。そして、時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(例えば、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下)にあるかを判定する。
例えば、時間ずれ判定部46は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下か否か(または0以上かつΔt未満か否か)を判定する。
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcが、0以上かつ所定の時間閾値Δt以下であると判定された場合(図4(c)参照)は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に出力する。
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、所定の時間閾値Δtを超えると判定された場合(図4(b)参照)は、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図1(b)参照)を出力するようにしてもよい。
なお、時間ずれ判定部46が、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に与えるということは、大きさ判定部44により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが大きさ閾値ΔVを超えていると判定され、かつ、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(0以上かつ所定の時間閾値Δt以下)にあると判定されたということを意味する。
位置測定部48は、時間ずれ判定部46から光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を受けた場合に、測定対象2において光音響波Wc1、Wc2が発生した血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。
この場合、位置測定部48は、光ファイバ(光出力部)20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。例えば、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さdを測定することができる。電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とが共にTであったことが分かったとする。すると、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、(T×Vs)2=d2+X02となる。X0およびVsは既知であるため、血液2aの深さdを求めることができる。
次に、本発明の第一の実施形態の動作を説明する。
まず、動作説明の前に、図1(a)、図1(b)および図1(c)における光音響波測定器1の血液2aに対する位置関係と、電気信号を大きさ閾値ΔVおよび時間閾値Δtと比較した結果との関係を表1に示す。
光音響波測定器1を走査し始めたときは、図1(a)に示すように、光音響波測定器1は血液2aから遠くに位置する。
ここで、外部のパルス光源(図示省略)がパルス光Pを発し、パルス光Pが光ファイバ20から出力される。パルス光Pは、測定対象2に与えられる。
パルス光Pは測定対象2の血管内の血液2aに到達する。すると、血管内の血液2aがパルス光Pを吸収し、血管内の血液2aから疎密波(光音響波Wa1、Wa2)が出力される。
光音響波Wa1、Wa2は、測定対象2を透過し、光音響波検知部11、12に到達する。光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2による圧力を、電気信号(例えば、電圧)に変換する。この電圧が、光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42に与えられる。
図4は、第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図1(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(a))、図1(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(b))および図1(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図4(c))を示す図である。
(a)光音響波測定器1が血液2aから遠い場合
図1(a)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aから遠い。よって、光音響波Wa1、Wa2は微弱であり、光音響波Wa1、Wa2から得られた電気信号(電圧)の大きさも小さく、いずれも大きさ閾値ΔV以下である(図4(a)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図1(a)参照)を出力する。
(b)光音響波測定器1が血液2aからやや遠い場合
図1(a)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図1(b)に示すように、光音響波測定器1は血液2aからやや遠くに位置するようになる。
図1(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いものの、図1(a)に示す状態よりは血液2aに近くなる。よって、光音響波Wb1、Wb2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図4(b)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
図1(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いため、光音響波Wb1の進行する距離と、光音響波Wb2の進行する距離との差異は無視できない。よって、光音響波Wb1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wb2が光音響波検知部12に到達する時間との差異も無視できない。これにより、図4(b)を参照して、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbは無視できない(例えば、所定の時間閾値Δtを超える)。
この場合、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図1(b)参照)を出力する。
(c)光音響波測定器1が血液2aの真上にある場合
図1(b)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図1(c)に示すように、光音響波測定器1は血液2aの真上に位置するようになる。
図1(c)に示すように、光音響波測定器1は、図1(a)に示す状態よりも血液2aに近くなる。よって、光音響波Wc1、Wc2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図4(c)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
図1(c)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aの真上にある。しかも、図2を参照して、光音響波検知部11と光ファイバ20との距離と、光音響波検知部12と光ファイバ20との距離とは共にX0であり等しい。このため、光音響波Wc1の進行する距離と、光音響波Wc2の進行する距離とは等しい。よって、光音響波Wc1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wc2が光音響波検知部12に到達する時間とは等しい。これにより、図4(c)を参照して、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcは無視できるほど小さい(例えば、所定の時間閾値Δt以下である)。
この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図1(c)参照)を位置測定部48に出力する。位置測定部48は、光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する(例えば、血液2aの深さdを測定する)。
第一の実施形態によれば、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するか(図1(c)参照)、しないか(図1(a)、(b)参照)を判定することができる。
しかも、光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在するものとして、位置測定部48が血液2aの位置を測定する。ここで、光音響波測定装置40は、実際に光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在する場合(図1(c)参照)に、かかる測定を行う。よって、光音響測定器1による血液2aの位置の測定を正確に行うことができる。
なお、第一の実施形態において、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えるものとして説明してきた。しかし、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えない変形例も考えられる。
図14は、本発明の第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。
電気信号測定部41、42、位置測定部48は、第一の実施形態(図3参照)と同様であり説明を省略する。
時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から直接(大きさ判定部44を介さないで)、測定結果を受ける。時間ずれ判定部46による判定法は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
ただし、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、所定の時間閾値Δtを超えると判定された場合は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する(図1(a)参照)か、またはやや遠くに位置する(図1(b)参照)のどちらかである旨の判定結果を出力する。光音響波測定器1が血液2aから、やや遠くに位置する場合(図1(b)参照)であってもΔtbがΔtを超えるのであるから、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合(図1(a)参照)であれば、Δtbはさらに大きくなり、なおさらΔtbがΔtを超えることとなる。
なお、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合(図1(a)参照)、光音響波Wa1、Wa2は微弱である。しかし、電気信号測定部41、42によってS/N比の高い精度のよい測定が可能であれば、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する場合であっても、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれを測定することができ、時間ずれ判定部46による判定が行える。
第一の実施形態の変形例にかかる光音響波測定装置40によっても、第一の実施形態と同様な効果を奏する。なお、他の実施形態においても、光音響波測定装置40が大きさ判定部44を備えないような変形例による測定が可能である。
第二の実施形態
第二の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部が3個以上ある点が、第一の実施形態にかかる光音響波測定器1と異なる。
図5は、本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図(図5(a))、本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図(図5(b))である。
本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、13、14、光ファイバ(光出力部)20を備える。以下、第一の実施形態と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
図5(b)を参照して、第二の実施形態にかかる光音響波測定器1は、測定対象2に接しており、測定対象2の上を例えば左から右に(X方向に)走査し、または後から前へ(Y方向に)走査する。すなわち、直交する二方向に走査可能である。なお、直交する二方向に同時に走査(例えば、左斜め後ろから右斜め前へ)することも可能である。
光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
ただし、図5(b)を参照して、第二の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部を4個備える。
光音響波検知部13および光音響波検知部14の構成は、光音響波検知部11および光音響波検知部12の構成と同じである。ただし、光音響波検知部13、14は、光ファイバ20から、Y方向に、共に距離Y0だけ離れている。なお、Y0=X0であってもよく、この場合、光ファイバ20から等しい距離X0(=Y0)に光音響波検知部11、12、13、14が配置されていることとなる。
なお、光音響波検知部11、12は、走査の方向(X方向)と垂直な方向(Y方向)に延伸している。また、光音響波検知部13、14は、走査の方向(Y方向)と垂直な方向(X方向)に延伸している。よって、光音響波検知部11の延伸方向(Y方向)と光音響波検知部12の延伸方向(Y方向)とが平行であり、光音響波検知部13の延伸方向(X方向)および光音響波検知部14の延伸方向(X方向)が、光音響波検知部11の延伸方向(Y方向)と光音響波検知部12の延伸方向(Y方向)と交差している。
なお、本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成は、第一の実施形態と同様であり(図3参照)、図示および説明を省略する。ただし、電気信号測定部は、光音響波検知部の個数分(4個)だけ用意するものとする。
次に、本発明の第二の実施形態の動作を、第一の実施形態と対比しながら説明する。
図5(a)に示す本発明の第一の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、先に説明したとおり、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合、測定対象2の測定を行うことができる。しかし、血液2aの真上を通過するようにY方向への走査を行った場合、測定対象2の測定を行うことができない。光音響波測定器1の血液2aからの距離にかかわらず、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とが等しく、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが0になるからである。
しかし、図5(b)に示す本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、血液2aの真上を通過するようにY方向への走査を行った場合であっても、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部13が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部14が受ける光音響波の進行する距離とが異なり、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
もちろん、図5(b)に示す本発明の第二の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とが異なり(第一の実施形態を参照)、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
第二の実施形態にかかる光音響波測定装置40によれば、光音響波検知部11、12、13、14から得られた光音響波を、光音響波検知部の個数だけ用意された4個の電気信号測定部により電気信号に変換する。そして、電気信号(電圧)の各々の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超えるか否かを、大きさ判定部44により判定する。そして、時間ずれ判定部46により、各電気信号どうしの立ち上がり時点の時間のずれのいずれもが所定の時間閾値Δt以下か否かを判定する。これにより、測定対象2の測定を行うことができる。
第二の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、測定対象2の上を、直交する二方向に、例えば左から右に(X方向に)走査し、または後から前へ(Y方向に)走査することが可能である。なお、直交する二方向に同時に走査(例えば、左斜め後ろから右斜め前へ)することも可能である。
なお、第二の実施形態にかかる光音響波測定器1には、変形例が考えられる。
図6は、本発明の第二の実施形態の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図であり、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行な場合(図6(a))、光音響波検知部11および光音響波検知部12が交差する場合(図6(b))を示す図である。
図6に示す第二の実施形態の変形例において、光音響波測定器1は3個の光音響波検知部11、12、13を有する。
図6(a)は、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行な場合の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図である。図6(a)に示す変形例は、第二の実施形態にかかる光音響波測定器1(図5(b)参照)において、光音響波検知部14が無いような形状である。
光音響波検知部11、12、13のうちの少なくとも2個の光音響波検知部11、12の延伸方向L1、L2が、平行である。これら2個以外の少なくとも1個の光音響波検知部13の延伸方向L3が、2個の光音響波検知部11、12の延伸方向L1、L2と交差している。
図6(a)に示す変形例によれば、血液2aの真上を通過するようにY方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11、12が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部13が受ける光音響波の進行する距離とが異なり、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
もちろん、図6(a)に示す変形例によれば、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とが異なり(第一の実施形態を参照)、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
図6(b)は、光音響波検知部11および光音響波検知部12が交差する場合の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図である。
光音響波検知部11、12、13のうちの少なくとも2個の光音響波検知部11、12の延伸方向L1、L2が交差する。これら2個以外の少なくとも1個の光音響波検知部13の延伸方向L3が、2個の光音響波検知部11、12の延伸方向L1、L2と交差している。
なお、図6(b)に示す変形例においては、延伸方向L1、L2、L3に延伸する直線により構成される多角形(図6(b)においては正三角形)の内部を、光出力部20が通過している。また、光出力部20と、光音響波検知部11、12、13との距離は、いずれも等しくD1である。
図6(b)に示す変形例によれば、血液2aの真上を通過するようにY方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離にかかわらず、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とは等しい。しかし、光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11、12が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部13が受ける光音響波の進行する距離とが異なり、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動する。よって、図6(b)に示す変形例によれば、血液2aの真上を通過するようにY方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。
もちろん、図6(a)に示す変形例によれば、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とが異なり、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
なお、第二の実施形態の変形例において、光音響波検知部11および光音響波検知部12は、平行(図6(a)参照)または交差(図6(b)参照)するのであり、光音響波検知部11の延長線上に光音響波検知部12が配置されるようなことはない。
図6に示すように、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行であっても、交差していても、光音響波検知部11、12の延伸方向に交差するように延伸する光音響波検知部13が1個あれば、2個もなくても(図5(b)参照)、X方向への走査によっても、Y方向への走査によっても測定が可能である。
光音響波測定器1の血液2aからの距離にかかわらず、2個の光音響波検知部11、12から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間のずれに変動がない場合がある。かかる場合であっても、光音響波検知部が3個あれば、残りの1個の光音響波検知部13から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間と、2個の光音響波検知部11、12から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間とのずれは、光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて変動するので、血液2aの位置測定が可能となる。
これは、光音響波検知部が奇数個ある場合も同様である。すなわち、光音響波測定器1の血液2aからの距離にかかわらず、偶数個の光音響波検知部から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間のずれに変動がない場合がある。かかる場合であっても、光音響波検知部が奇数個あれば、残りの1個の光音響波検知部から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間と、偶数個の光音響波検知部から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間とのずれは、光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて変動するので、血液2aの位置測定が可能となる。
なお、第二の実施形態として、光音響波検知部11、12、13、14が4個ある例を、第二の実施形態の変形例として、光音響波検知部11、12、13が3個ある例を説明したが、光音響波検知部の個数は、5個以上あってもかまわない。
図7は、第二の実施形態の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図であり、光音響波検知部11、12、13、14、15、16が6個あるもの(図7(a))、光音響波検知部11、12、13、14、15が5個あるもの(図7(b))を示す図である。
図7(a)に示す変形例にかかる光音響波測定器1においては、光音響波検知部11、12、13、14、15、16のうちの少なくとも2個の光音響波検知部(例えば、光音響波検知部11、15)の延伸方向(例えば、L1、L5)が交差する。これら2個以外の少なくとも1個の光音響波検知部16の延伸方向L6が、2個の光音響波検知部11、15の延伸方向L1、L5と交差している。
なお、図7(a)に示す変形例においては、延伸方向L1、L2、L3、L4、L5、L6に延伸する直線により構成される多角形(図7(a)においては正六角形)の内部を、光出力部20が通過している。また、光出力部20と、光音響波検知部11、12、13、14、15、16との距離は、いずれも等しくD1である。
図7(b)に示す変形例にかかる光音響波測定器1においては、光音響波検知部11、12、13、14、15のうちの少なくとも2個の光音響波検知部(例えば、光音響波検知部12、14)の延伸方向(例えば、L2、L4)が交差する。これら2個以外の少なくとも1個の光音響波検知部13の延伸方向L3が、2個の光音響波検知部12、14の延伸方向L2、L4と交差している。
なお、図7(b)に示す変形例においては、延伸方向L1、L2、L3、L4、L5に延伸する直線により構成される多角形(図7(b)においては正五角形)の内部を、光出力部20が通過している。また、光出力部20と、光音響波検知部11、12、13、14、15との距離は、いずれも等しくD1である。
第三の実施形態
第三の実施形態は、光音響波検知部11、12と、光ファイバ20との距離が、それぞれ異なる点(図8(b)参照)が、第一の実施形態と異なる。
図8は、本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定器1の断面図(図8(a))、平面図(図8(b))である。光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20を備える。以下、第一の実施形態にかかる光音響波測定器1と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
光ファイバ(光出力部)20は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。光音響波検知部11、12も、第一の実施形態と同様である。ただし、光音響波検知部11、12の位置が、第一の実施形態と異なる。
すなわち、光音響波検知部11は、光ファイバ20から、走査方向に、距離X2だけ離れている。光音響波検知部12は、光ファイバ20から、走査方向に、距離X1だけ離れている。なお、X1とX2とは異なる。
図8(a)は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する状態を図示している。dは、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さである。
血液2aから光音響波検知部11までの距離は、d2+X22の平方根である。血液2aから光音響波検知部12までの距離は、d2+X12の平方根である。すると、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とのずれΔt0は、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、((d2+X22の平方根)−(d2+X12の平方根))/Vsとなる。ただし、上記の式によりΔt0を求める場合、血液2aの深さdは、ある程度のばらつきがあるため、おおよその代表的な値を用いることが考えられる。または、X1およびX2がdよりもかなり大きい場合は、dを無視し、(X2−X1)/VsをΔt0とすることも考えられる。
なお、血液2aから光音響波検知部11に光音響波Wc1が到達するのにかかった時間と、血液2aから光音響波検知部12に光音響波Wc2が到達するのにかかった時間とのずれは、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれとして現れる。
すなわち、Δt0は、光ファイバ20の延長線上に血液2a(光音響波発生部分)が存在したと仮定した場合の光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれである。
本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定装置40は、電気信号測定部41、42、大きさ判定部44、時間ずれ判定部46、位置測定部48を備える。本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成は、第一の実施形態と同様であり(図3参照)、図示を省略する。以下、第一の実施形態にかかる光音響波測定装置40と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
電気信号測定部41、42および大きさ判定部44は、第一の実施形態と同様であり説明を省略する。
時間ずれ判定部46は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果から、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内(例えば、所定の時間閾値をΔtとした場合、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下)にあるかを判定する。Δt0は、この所定範囲の内にある。すなわち、この所定範囲は、Δt0を含んでいる。なお、Δt0−Δt>0であってもよい。すなわち、この所定範囲が0を含まないようにしてもよい。
例えば、時間ずれ判定部46は、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下か否か(または(Δt0−Δt)を超えかつ(Δt0+Δt)未満か否か)を判定する。
ここで、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcが、(Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下であると判定された場合(図10(c)参照)は、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図9(c)参照)を位置測定部48に出力する。光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する場合、理想的には、Δtc=Δt0であるが、測定誤差および血液2aの深さdのばらつきなどを考慮して、Δt0−Δt≦Δtc≦Δt0+Δtであれば、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する状態であると判断するものとする。
一方、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbが、(Δt0−Δt)未満または(Δt0+Δt)を超えると判定された場合(図10(b)参照)は、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図9(b)参照)を出力するようにしてもよい。
なお、時間ずれ判定部46が、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図9(c)参照)を位置測定部48に与えるということは、大きさ判定部44により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の大きさが大きさ閾値ΔVを超えていると判定され、かつ、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11、12の各々が出力する電気信号の時間のずれが所定範囲内((Δt0−Δt)以上かつ(Δt0+Δt)以下)にあると判定されたということを意味する。
位置測定部48は、時間ずれ判定部46から光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図9(c)参照)を受けた場合に、測定対象2において光音響波Wc1、Wc2が発生した血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。
この場合、位置測定部48は、光ファイバ(光出力部)20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。例えば、測定対象2の表面を基準とした血液2aの深さdを測定することができる。電気信号測定部41(42)から受けた測定結果から、血液2aから光音響波検知部11(12)に光音響波Wc1(Wc2)が到達するのにかかった時間が、T1(T2)であったことが分かったとする。すると、測定対象2内における光音響波の速度をVsとした場合、(T1×Vs)2=d2+X22((T2×Vs)2=d2+X12)となる。X2(X1)およびVsは既知であるため、血液2aの深さdを求めることができる。
次に、本発明の第三の実施形態の動作を説明する。
図9は、本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定器1を測定対象2に沿って走査しているときの光音響波測定器1の断面図である。
光音響波測定器1を走査し始めたときは、図9(a)に示すように、光音響波測定器1は血液2aから遠くに位置する。
ここで、外部のパルス光源(図示省略)がパルス光Pを発し、パルス光Pが光ファイバ20から出力される。パルス光Pは、測定対象2に与えられる。
パルス光Pは測定対象2の血管内の血液2aに到達する。すると、血管内の血液2aがパルス光Pを吸収し、血管内の血液2aから疎密波(光音響波Wa1、Wa2)が出力される。
光音響波Wa1、Wa2は、測定対象2を透過し、光音響波検知部11、12に到達する。光音響波検知部11、12は、光音響波Wa1、Wa2による圧力を、電気信号(例えば、電圧)に変換する。この電圧が、光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42に与えられる。
図10は、第三の実施形態にかかる光音響波測定装置40の電気信号測定部41、42の測定結果である時間と電圧との関係を示す図であり、図9(a)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図10(a))、図9(b)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図10(b))および図9(c)における光音響波測定器1から得られた電気信号の測定結果(図10(c))を示す図である。
(a)光音響波測定器1が血液2aから遠い場合
図9(a)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aから遠い。よって、光音響波Wa1、Wa2は微弱であり、光音響波Wa1、Wa2から得られた電気信号(電圧)の大きさも小さく、いずれも大きさ閾値ΔV以下である(図10(a)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与えない。大きさ判定部44は、光音響波測定器1が血液2aから遠くに位置する旨の判定結果(図9(a)参照)を出力する。
(b)光音響波測定器1が血液2aからやや遠い場合
図9(a)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図9(b)に示すように、光音響波測定器1は血液2aからやや遠くに位置するようになる。
図9(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いものの、図9(a)に示す状態よりは血液2aに近くなる。よって、光音響波Wb1、Wb2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図10(b)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
図10(b)に示すように、光音響波測定器1は、血液2aからやや遠いため、光音響波Wb1の進行する距離と、光音響波Wb2の進行する距離との差異は無視できない。よって、光音響波Wb1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wb2が光音響波検知部12に到達する時間との差異も無視できない。これにより、図4(b)を参照して、光音響波Wb1、Wb2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtbは無視できない(例えば、(Δt0+Δt)を超える)。
この場合、時間ずれ判定部46は、位置測定部48に特に何も出力しない。時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1が血液2aからやや遠くに位置する旨の判定結果(図9(b)参照)を出力する。
(c)光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上にある場合
図9(b)に示す状態から、光音響波測定器1を走査すると、図9(c)に示すように、光音響波測定器1の光ファイバ20は血液2aの真上に位置するようになる。
図9(c)に示すように、光音響波測定器1は、図9(a)に示す状態よりも血液2aに近くなる。よって、光音響波Wc1、Wc2は、光音響波Wa1、Wa2よりも強くなり、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号(電圧)の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超える(図10(c)参照)。
この場合、大きさ判定部44は、電気信号測定部41、42から受けた測定結果を、時間ずれ判定部46に与える。
図9(c)に示すように、光音響波測定器1の光ファイバ20は、血液2aの真上にある。ここで、図8を参照して、光音響波検知部11と光ファイバ20との距離はX2であり、光音響波検知部12と光ファイバ20との距離はX1であり、X1とX2とは異なる。このため、光音響波Wc1の進行する距離と、光音響波Wc2の進行する距離とは異なる。よって、光音響波Wc1が光音響波検知部11に到達する時間と、光音響波Wc2が光音響波検知部12に到達する時間とは異なる。両者の時間のずれは、先に説明したとおり、Δt0である。
これにより、図10(c)を参照して、光音響波Wc1、Wc2から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcは、ほぼΔt0に等しい(例えば、Δt0−Δt≦Δtc≦Δt0+Δtである)。
この場合、時間ずれ判定部46は、光音響波測定器1の光ファイバ20が血液2aの真上に位置する旨の判定結果(図10(c)参照)を位置測定部48に出力する。位置測定部48は、光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するものとして、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する。位置測定部48は、電気信号測定部41、42から測定結果を受け、血液2a(光音響波発生部分)の位置を測定する(例えば、血液2aの深さdを測定する)。
第三の実施形態によれば、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上(例えば、真下)に血液2a(光音響波発生部分)が存在するか(図10(c)参照)、しないか(図10(a)、(b)参照)を判定することができる。
しかも、光音響波測定装置40は、光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在するものとして、位置測定部48が血液2aの位置を測定する。ここで、光音響波測定装置40は、実際に光音響波測定器1の光ファイバ20の延長線上に血液2aが存在する場合(図9(c)参照)に、かかる測定を行う。よって、光音響測定器1による血液2aの位置の測定を正確に行うことができる。
第四の実施形態
第四の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部が3個以上ある点が、第三の実施形態にかかる光音響波測定器1と異なる。
図11は、本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図(図11(a))、本発明の第四の実施形態にかかる光音響波測定器1の平面図(図11(b))である。
本発明の第四の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部11、12、13、14、光ファイバ(光出力部)20を備える。以下、第三の実施形態と同様な部分は、同一の番号を付して説明を省略する。
図11(b)を参照して、第四の実施形態にかかる光音響波測定器1は、測定対象2に接しており、測定対象2の上を例えば左から右に(X方向に)走査し、または後から前へ(Y方向に)走査する。すなわち、直交する二方向に走査可能である。なお、直交する二方向に同時に走査(例えば、左斜め後ろから右斜め前へ)することも可能である。
光音響波検知部11、12、光ファイバ(光出力部)20は、第三の実施形態と同様であり説明を省略する。
ただし、図11(b)を参照して、第四の実施形態にかかる光音響波測定器1は、光音響波検知部を4個備える。
光音響波検知部13および光音響波検知部14の構成は、光音響波検知部11および光音響波検知部12の構成と同じである。ただし、光音響波検知部13、14は、光ファイバ20から、Y方向に、それぞれ距離Y1、Y2だけ離れている。なお、Y1とY2とは異なる。X1、X2、Y1およびY2のいずれも異なる既知の値であってもよい。この場合、光ファイバ20から既知の異なった距離X2、X1、Y1およびY2に光音響波検知部11、12、13、14が配置されていることとなる。
なお、光音響波検知部11、12は、走査の方向(X方向)と垂直な方向(Y方向)に延伸している。また、光音響波検知部13、14は、走査の方向(Y方向)と垂直な方向(X方向)に延伸している。よって、光音響波検知部11の延伸方向(Y方向)と光音響波検知部12の延伸方向(Y方向)とが平行であり、光音響波検知部13の延伸方向(X方向)および光音響波検知部14の延伸方向(X方向)が、光音響波検知部11の延伸方向(Y方向)と光音響波検知部12の延伸方向(Y方向)と交差している。
なお、本発明の第四の実施形態にかかる光音響波測定装置40の構成は、第三の実施形態と同様であり、図示および説明を省略する。ただし、電気信号測定部は、光音響波検知部の個数分(4個)だけ用意するものとする。
次に、本発明の第四の実施形態の動作を、第三の実施形態と対比しながら説明する。
図11(a)に示す本発明の第三の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、先に説明したとおり、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合、測定対象2の測定を行うことができる。
しかし、Y方向への走査を行った場合、測定対象2の測定を行うことができない場合がある。光音響波測定器1の光ファイバ20が、光音響波測定器1の血液2aの真上に無くても、光音響波検知部11が受ける光音響波から得られる電気信号の立ち上がり時点と、光音響波検知部12が受ける光音響波から得られる電気信号の立ち上がり時点の時間のずれがΔt0になる場合がありうるからである。
しかし、図11(b)に示す本発明の第四の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、Y方向への走査を行った場合であっても、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波検知部13が受ける光音響波から得られる電気信号の立ち上がり時点と、光音響波検知部14が受ける光音響波から得られる電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtc’が所定の値Δt0’(=(d2+Y22の平方根)−(d2+Y12の平方根))/Vs)にほぼ等しいか否かを判定すればよいからである。例えば、Δt0’−Δt≦Δtc’≦Δt0’+Δtであるか否かを判定すればよい。
もちろん、図11(b)に示す本発明の第四の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、血液2aの真上を通過するようにX方向への走査を行った場合でも、測定対象2の測定を行うことができる。光音響波測定器1の血液2aからの距離に応じて、光音響波検知部11が受ける光音響波の進行する距離と、光音響波検知部12が受ける光音響波の進行する距離とが異なり(第三の実施形態を参照)、各光音響波から得られた電気信号の立ち上がり時点の時間のずれが変動するからである。
第四の実施形態にかかる光音響波測定装置40によれば、光音響波検知部11、12、13、14から得られた光音響波を、光音響波検知部の個数だけ用意された4個の電気信号測定部により電気信号に変換する。そして、電気信号(電圧)の各々の大きさが、いずれも大きさ閾値ΔVを超えるか否かを、大きさ判定部44により判定する。そして、時間ずれ判定部46により、光音響波検知部11および光音響波検知部12から得られた光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtcがΔt0にほぼ等しいか否か、および、光音響波検知部13および光音響波検知部14から得られた光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時点の時間のずれΔtc’がΔt0’にほぼ等しいか否かを判定する。これにより、測定対象2の測定を行うことができる。
第四の実施形態にかかる光音響波測定器1によれば、測定対象2の上を、直交する二方向に、例えば左から右に(X方向に)走査し、または後から前へ(Y方向に)走査することが可能である。なお、直交する二方向に同時に走査(例えば、左斜め後ろから右斜め前へ)することも可能である。
なお、第四の実施形態にかかる光音響波測定器1には、変形例が考えられる。
図12は、本発明の第四の実施形態の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図であり、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行な場合(図12(a))、光音響波検知部11および光音響波検知部12が交差する場合(図12(b))を示す図である。
図12に示す第四の実施形態の変形例において、光音響波測定器1は3個の光音響波検知部11、12、13を有する。
図12(a)は、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行な場合の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図である。図12(a)に示す変形例は、第四の実施形態にかかる光音響波測定器1(図11(b)参照)において、光音響波検知部14が無いような形状である。また、図12(a)に示す変形例は、図6(a)に示す第二の実施形態の変形例において、光出力部20と光音響波検知部11、12、13との距離を、いずれも異なる既知の値としたものに相当する。
図12(b)は、光音響波検知部11および光音響波検知部12が交差する場合の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図である。図12(b)に示す変形例は、図6(b)に示す第二の実施形態の変形例において、光出力部20と光音響波検知部11、12、13との距離を、いずれも異なる既知の値としたものに相当する。
図12においては、光音響波検知部11および光音響波検知部12から得られた光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時点の時間のずれと、光音響波検知部11(または12)および光音響波検知部13から得られた光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時点の時間のずれを用いて、測定対象2の測定を行うことができる。
なお、第四の実施形態の変形例において、光音響波検知部11および光音響波検知部12は、平行(図12(a)参照)または交差(図12(b)参照)するのであり、光音響波検知部11の延長線上に光音響波検知部12が配置されるようなことはない。
図12に示すように、光音響波検知部11および光音響波検知部12が平行であっても、交差していても、光音響波検知部11、12の延伸方向に交差するように延伸する光音響波検知部13が1個あれば、2個もなくても(図12(b)参照)、X方向への走査によっても、Y方向への走査によっても測定が可能である。
2個の光音響波検知部11、12から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間のずれだけでは血液2aの位置測定ができない場合がある。かかる場合であっても、光音響波検知部が3個あれば、残りの1個の光音響波検知部13から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間と、光音響波検知部11(または12)から得られる光音響波に基づく電気信号の立ち上がり時間とのずれをさらに利用して、血液2aの位置測定が可能となる。これは、光音響波検知部が奇数個ある場合も同様である。
なお、第四の実施形態として、光音響波検知部11、12、13、14が4個ある例を、第四の実施形態の変形例として、光音響波検知部11、12、13が3個ある例を説明したが、光音響波検知部の個数は、5個以上あってもかまわない。
図13は、第四の実施形態の変形例にかかる光音響波測定器1の平面図であり、光音響波検知部11、12、13、14、15、16が6個あるもの(図13(a))、光音響波検知部11、12、13、14、15が5個あるもの(図13(b))を示す図である。
図13(a)に示す変形例は、図7(a)に示す第二の実施形態の変形例において、光出力部20と光音響波検知部11、12、13、14、15、16との距離を、いずれも異なる既知の値としたものに相当する。
図13(b)に示す変形例は、図7(b)に示す第二の実施形態の変形例において、光出力部20と光音響波検知部11、12、13、14、15との距離を、いずれも異なる既知の値としたものに相当する。
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば、光音響波測定装置40を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。