JP6137259B2 - 水素用鋼構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物に関し、特に、高圧水素環境中で優れた耐水素透過特性を有する水素用鋼構造物に関するものである。
近年、クリーンなエネルギー源として、また、エネルギーの多様化の観点から、世界的に水素が大きく注目されている。特に、高圧水素ガスを燃料源とする燃料電池自動車に対する期待は大きく、燃料電池自動車の開発に関連した研究が世界的に広く進められており、一部では、すでに実用化試験まで行われている。
燃料電池車はガソリンの代わりに水素をタンクに積んで走行するため、燃料電池自動車の普及のためには、ガソリンスタンドに代わって燃料補給を行う水素ステーションが必要となる。水素ステーションでは水素を高圧で貯蔵する水素用容器である水素用蓄圧器から車載の水素燃料タンクへ水素を充填する。車載の水素タンクへの充填最高圧力は、現状では35MPaであるが、航続距離をガソリン車並とするために、充填最高圧力を70MPaとすることが期待されており、このような高圧水素環境下で、水素を安全に貯蔵、供給することが要求される。
一方、水素ステーションで使用される水素用蓄圧器の圧力は、現状では40MPaが要求されているが、車載の水素タンクの充填最高圧力を70MPaに上昇する場合、水素ステーションの水素用蓄圧器の圧力は82MPaが要求される見込みであり、この場合、水素ステーションの水素用蓄圧器は82MPaの超高圧水素環境に晒されることになる。
このような水素ガス環境用の材料として、低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などが候補として挙げられる。これらの中で、特に低合金鋼は、水素が材料中に侵入した場合に絞りが低下するなどの水素脆化が顕著に発現することが知られている。
このため、水素圧が40MPa程度までであれば、十分な肉厚を有する低合金鋼が用いられているケースがあるが、それ以上の圧力では使用中に水素脆性を生じる危険性が高まるため、低合金鋼よりも水素脆化し難いオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lおよびアルミニウム合金A6061−T6の活用が検討されている。
しかし、SUS316L、A6061−T6は材料のコストが高いことに加えて、強度が低いため、82MPaの水素圧に耐えうるように設計するためには、非常に肉厚が厚くなり、水素用蓄圧器そのものの価格も非常に高価となる。そのため、より低コストで82MPaの圧力に耐えうる水素ステーション用の水素用蓄圧器を開発することが要望されている。
上記問題点を解決し、低合金鋼を高圧水素蓄圧器に適用するための技術が種々検討されている。特許文献1では、鋼中水素のトラップサイトとして、MnSやCa系介在物、またはVCを活用して、鋼中水素を非拡散性水素とし、拡散性水素による脆化を抑制する高圧水素環境用鋼が提案されている。特許文献2、3では、Cr−Mo鋼の調質処理において比較的高い温度で焼戻し処理をすることで引張強度を900〜950MPaの極めて狭い範囲に制御した、耐高圧水素環境脆化特性に優れた低合金高強度鋼が提案されている。特許文献4では、V−Mo系炭化物を活用し、焼戻し温度を高めることで耐水素環境脆化特性を向上した、高圧水素環境用低合金鋼が提案されている。特許文献5では、MoとVを多量に添加し、鋼板製造時に焼準処理の後に長時間の応力除去焼鈍を施すことで、(Mo,V)Cを多量に析出させた耐水素性に優れた高圧水素ガス貯蔵容器用鋼が提案されている。特許文献6では、セメンタイトを微細化することで、水素侵入量を低減しさらに母材靭性を向上させて、水素脆化を抑制する技術が、特許文献7では、粗大セメンタイトおよび島状マルテンサイト(MA)の生成を抑制することにより、水素侵入と延性低下を抑制して、水素脆化を抑制する技術が提案されている。これらの特許文献1〜7は、材料の組成や組織、析出物、介在物等を制御することで、材料自体の耐水素脆化特性を向上させようとする技術である。
一方、特許文献8では、容器本体を適宜の鋼材で形成した後、その内面に水素侵入防止金属膜を形成することで、低コストで、耐水素脆化性に優れた高圧水素用高圧水素容器とする技術が提案されている。なお、通常の低合金鋼についての高圧水素ガス中の疲労き裂進展特性については、非特許文献1、2等に記載されている。
特開2005−2386号公報 特開2009−46737号公報 特開2009−275249号公報 特開2009−74122号公報 特開2010−37655号公報 特開2012−107332号公報 特開2012−107333号公報 特開2006−9982号公報
和田洋流著:「水素エネルギーシステム」,Vol.35,No.4(2010),p.38〜44 宮本泰介ら著:「日本機械学会論文集(A編)」,78巻,788号(2012),p.531〜546
高圧水素環境下で使用する水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物には、コストおよび強度の観点から、低合金鋼の活用が望まれており、上記のように、低合金鋼の耐水素脆化特性を向上させる検討が数多くなされてきた。
上記した従来技術は、主に材料の組成や組織、析出物、介在物等を制御することで、材料自体の耐水素脆化特性を向上させようとする技術である。一方、このような従来のアプローチとは異なり、材料に侵入する水素の量自体を少なくすることで、水素用鋼構造物の水素脆化を抑制することが考えられる。理想的には、材料中に侵入する水素量を、水素脆化が生じる量以下に抑えることができれば、耐用年数の増加、水素脆化の抑制が可能になると考えられるが、このような観点に立った検討は、特許文献8など、極めて限定されている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、材料中への水素の侵入そのものを抑制することで、優れた耐水素透過特性を有する水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物を提供することを目的とする。
本発明者らは、材料中への水素の侵入を抑制する手段として、鋼材の表面にめっき等により適切な膜を形成することを検討した。まず、本発明者らは、高圧水素ガス中における鋼材の水素透過性能に及ぼす種々のめっきの影響を慎重に調べた。その結果、鋼材の表面にニッケルめっき皮膜、亜鉛めっき皮膜、銅めっき皮膜等の膜を形成することによって、このような膜を形成していない場合よりも鋼材中への水素侵入量を著しく低下させることが可能になり、耐水素透過特性に優れた水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物を得ることができることを見出した。
本発明は、かかる新たな知見に基づき、更に検討を加えてなされたものであって、以下を要旨構成とする。
[1]水素ガスに接触する鋼材の表面に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる厚みが0.10μm以上である膜を有することを特徴とする水素用鋼構造物。
[2]前記膜の厚みが50.00μm以下であることを特徴とする[1]に記載の水素用鋼構造物。
[3]前記鋼材とニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる前記膜との間に鉄酸化膜を有し、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる前記膜上に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の水素用鋼構造物。
[4]前記水素用鋼構造物が、水素用蓄圧器あるいは水素用ラインパイプであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の水素用鋼構造物。
本発明によれば、従来よりも高圧水素ガス中の耐水素透過特性が極めて優れる水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物を得ることができ、産業上極めて有用である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の水素用鋼構造物は、水素ガスに接触する鋼材の表面に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなり、厚みが0.10μm以上である膜を有する。
また、本発明の水素用鋼構造物は、好ましくは、上記鋼材とニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる上記膜との間に鉄酸化膜を有し、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる上記膜上にニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜を有する。
ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜中では、水素の拡散係数が著しく小さいため、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜を鋼材の表面に形成している場合、形成していない場合に比べて、鋼材に水素が到達するまでの時間が著しく長時間となる。さらに、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜上における水素分子の水素原子への解離効率は、鋼材表面上における効率と比較して著しく低下するため、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜を通して鋼材中に侵入してくる水素量が著しく低下する。
また、鋼材と、鉄酸化膜と、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜と、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜とがこの順で積層した積層構造を有する場合には、鉄酸化膜とニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜との界面、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜とニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜との界面が水素のトラップサイトとなって、鋼材中への水素の侵入量を著しく低下させる。これに、上記ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の効果を加えた3つの効果により、水素ガス中の耐水素透過特性が著しく優れるという効果が発現する。なお、本発明において、耐水素透過特性とは、水素透過能が低く、鋼材中への水素の侵入が抑制されているという特性である。本発明の水素用鋼構造物は、耐水素透過特性に優れるものである。そして、高圧水素ガス中での鋼材中への水素の侵入が抑制されることにより、耐水素脆化特性に優れることが期待できるものである。
また、本発明で、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜とは、例えば、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなるめっき皮膜であり、ニッケルめっきを施して得られるニッケルめっき皮膜、亜鉛めっきを施して得られる亜鉛めっき皮膜、銅めっきを施して得られる銅めっき皮膜等である。なお、ニッケル、亜鉛、銅以外に、不可避的不純物を含んでいても、その効果に影響は無い。
上記したようなニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の効果を適切に発現させ、高圧水素ガス中で優れた耐水素透過性を得るためには、水素ガスに接触する鋼材の表面に形成されているニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みを0.10μm以上とする必要がある。優れた耐水素透過性を得るためには、鋼材表面のニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜は、隙間なく均一であることが重要である。この膜の厚みが0.10μm未満では、ニッケルめっきや亜鉛めっき、銅めっき等により、膜を形成する際、鋼材表面に均一に隙間無く膜を形成することが困難な場合があり、優れた耐水素透過特性の確保が充分ではなくなる。ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みは、好ましくは0.40μm以上であり、より好ましくは1.00μm以上である。一方、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みが50.00μmを超えると、耐水素透過特性に及ぼす効果が飽和し、耐水素透過特性に及ぼす効果にほとんど影響しなくなり、また、膜の形成に要する時間が長くなり、生産コストが大きくなる。このため、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みは50.00μm以下とすることが好ましい。コストの観点からは、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜は薄いほうが好ましいため、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みは30.00μm以下がより好ましく、さらに好ましくは25.00μm以下である。膜の厚みは、30.00μm以下、あるいは25.00μm以下でも、耐水素透過特性を向上する上で、充分な効果を得ることができる。すなわち、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の厚みは、0.10μm以上とする。好ましくは0.40〜50.00μm、より好ましくは1.00〜30.00μmであり、さらに好ましくは1.00〜25.00μmである。
なお、本発明では、少なくとも、水素ガスに接触する鋼材表面にニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜を有していればよく、水素ガスに接触しない面については、このような膜を有していてもよいし、有していなくてもよく、特に限定しない。また、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜は、鋼構造物の建造中の膜の剥離を避けるため、水素用鋼構造物の形状とした後の鋼材表面に形成することが好ましいが、特に限定するものではなく、実施の使用時に意図している膜の効果さえ得られれば、水素用鋼構造物の形状とする前の鋼材表面に形成してもよい。
ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の形成方法も、特に限定しない。例えば、電気めっきを施したり、溶融めっきを施したりすることにより、鋼材表面に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜として、ニッケルめっき皮膜や、亜鉛めっき皮膜や、銅めっき皮膜を形成することができる。また、ニッケル、亜鉛、銅のいずれか2種を含むめっき浴を用いて、ニッケル、亜鉛、銅のいずれか2種を含むめっき皮膜を形成したり、ニッケル、亜鉛および銅を含むめっき浴を用いて、ニッケル、亜鉛および銅からなるめっき皮膜を形成することができる。この場合、めっきとしては、電気めっきとすることが好ましい。また、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜は、物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)を施すことにより形成することもできる。
なお、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜を電気めっきにて行う場合は、めっき浴組成、めっき条件は下記のようにすることが好ましい。
ニッケルめっき皮膜を形成する場合、めっき浴は、例えば、ワットニッケル浴とし、めっき条件は、例えば、陰極電流密度を1.0〜2.0A/dmとすることが好ましい。
亜鉛めっき皮膜を形成する場合、めっき浴は、例えば、塩化亜鉛めっき浴とし、めっき条件は、例えば、陰極電流密度を0.5〜5.0A/dmとすることが好ましい。
銅めっき皮膜を形成する場合、めっき浴は、例えば、硫酸銅めっき浴とし、めっき条件は例えば、陰極電流密度を1.0〜4.0A/dmとすることが好ましい。
また、本発明において、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜とは、上記したように、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなるめっき皮膜でもよいし、PVDやCVDによる形成される膜であってもよい。
本発明においては、上記の通り、水素用鋼構造物は、好ましくは、鋼材と、鉄酸化膜と、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜と、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜とがこの順で積層した積層構造を有することが好ましい。
鉄酸化膜とは、鋼材の表面に形成された酸化膜であり、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜よりも下層(鋼材側)に存在する。
また、本発明において、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜とは、例えば、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる膜の表面に形成された金属酸化膜であり、ニッケルめっき皮膜上に形成されたニッケル酸化膜、亜鉛めっき皮膜上に形成された亜鉛酸化膜、銅めっき皮膜上に形成された銅酸化膜等である。なお、ニッケル、亜鉛、銅以外に、不可避的不純物を含んでいても、その効果に影響はない。
鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜は、隙間なく均一であることが重要である。
鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜の厚みは、それぞれ0.1〜20nmであることが好ましい。厚みが0.1nm未満であると、酸化膜の形成されていない領域の存在により、耐水素透過特性のより優れた性能が発現せず、20nm超であると、その酸化膜の生成に多大な時間を要するためである。さらに好ましくは、鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜の厚みが0.2〜15nmである。
鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜の形成方法は、特に限定しない。例えば、めっき処理前の鋼材に熱処理を行うことで鉄酸化膜を形成でき、ニッケルめっき処理後にニッケルめっき皮膜に熱処理を行うことでニッケル酸化膜を形成できる。熱処理を適用する場合、好ましい熱処理条件は、大気炉にて、保持温度:200〜600℃、保持時間:1〜24hである。保持温度が200℃未満であると酸化膜の生成量が少なく、保持温度が600℃超であると強度の低下など、材質への影響が大きくなるためである。更に、保持時間が1h未満であると酸化膜の生成量が少なく、保持時間が24h超であると強度の低下など、材質への影響が大きくなるためである。
また、本発明の水素用鋼構造物である水素用蓄圧器は、前記したように、水素ステーションなどで使用される蓄圧器であり、例えば、タイプ1の鋼材のみを用いるタイプまたは、タイプ2およびタイプ3の鋼材に炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)を巻くタイプである。なお、ここでタイプ1、タイプ2、タイプ3とは、圧縮天然ガス自動車燃料容器に関する各規格、ISO11439、ANSI(American National Standards Institute)/NGV(Natural Gas Vehicle)、高圧ガス保安法の容器保安規則例示基準別添9などに記載される容器の構造についての区分である。また、貯蔵される水素の圧力としては、40MPa程度または82MPa程度である。また、本発明の水素用鋼構造物である水素用ラインパイプは、シームレスタイプまたはUOEタイプの鋼管であり、水素の圧力としては、3MPa以上である。
本発明の水素用鋼構造物に用いる鋼材は、上記したように、低合金鋼とすることが好ましいが、上記したような、ニッケルめっき皮膜、亜鉛めっき皮膜、銅めっき皮膜などの所定の膜を表面に形成することができれば同様の効果が期待できるため、低合金鋼に特に限定されるものではない。さらに、本発明の水素用鋼構造物は、薄板、厚板、パイプ、形鋼および棒鋼など種々の鋼材をそのまま使用する水素用鋼構造物、あるいは所定形状に成形した水素用鋼構造物であってもよい。
なお、本発明の水素用鋼構造物に用いる低合金鋼としては、例えば、質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0005〜0.008%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼であり、あるいはさらに、前記組成に加えて、質量%で、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜10.0%、Cr:0.1〜2.5%、Mo:0.05〜2.0%、Nb:0.005〜0.5%、V:0.005〜1.0%、Ti:0.005〜0.5%、W:0.05〜2.0%、B:0.0005〜0.005%の一種または二種以上や、Nd:0.005〜1.0%、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を含有する鋼である。なお、本発明の水素用鋼構造物に用いる低合金鋼は、このような低合金鋼に限定されるものではない。
本発明の水素用鋼構造物の鋼組織は、特に特定するものではない。例えば、鋼組織は、ベイナイトやマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトとしてもよいし、フェライトおよびパーライトからなる組織としてもよい。一方、本発明者らの検討によれば、鋼材の鋼組織を所定の鋼組織とすることにより、鋼材中に水素が侵入しても、高圧水素環境中での疲労き裂進展速度を低下させることができるため、さらに優れた耐水素脆化特性を有する水素用鋼構造物とすることができる。このような好ましい鋼組織とすることは、特に超高圧の水素環境のような厳しい環境下で鋼材を使用する場合に、特にその効果を発揮することができる。
以下、このような観点から、好ましい鋼組織および鋼組成について説明する。
水素用鋼構造物の鋼組織を、1)ベイナイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる、あるいは、2)マルテンサイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる、あるいは、3)パーライトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を有する鋼組織とすることで、疲労き裂の進展速度が低下し、優れた耐水素脆化特性を有する水素用鋼構造物とすることができるため、好ましい。上記したような鋼組織では、軟質なフェライトと硬質な相が分散しており、それらの界面では、疲労き裂が停滞し、迂回および/または分岐する。このため、疲労き裂の進展速度が低下し、優れた耐水素脆化特性を有する水素用鋼構造物とすることができる。
なお、組織分率の測定は、例えばナイタールエッチングによって、ミクロ組織を現出させ、光学顕微鏡またはSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて組織を写真撮影し、それぞれの組織を識別して、面積率を求めればよい。
以下に、1)ベイナイトとフェライト、2)マルテンサイトとフェライト、3)パーライトとフェライト、といった水素用構造物の鋼組織別に、具体的に説明する。
1)ベイナイトと残部実質的にフェライトからなる鋼組織
水素用鋼構造物の好ましい鋼組織の一つは、ベイナイトの面積率が10〜95%であり、残部が実質的にフェライトからなる鋼組織である。この水素用鋼構造物の鋼組織は、軟質なフェライトと硬質なベイナイトが分散している鋼組織である。このような鋼組織を有する水素用鋼構造物では、分散して存在する軟質なフェライトと硬質なベイナイトの界面近傍で疲労き裂が停滞し、迂回、分岐する効果のため、疲労き裂の進展速度が低下し、優れた耐水素脆化特性を有する。なお、ここで言う軟質なフェライトとは、ポリゴナルフェライトを意味し、硬さが概ねHV10で70〜150の組織とする。また、硬質なベイナイトとは、上部ベイナイト(BI、BII、BIII型)または下部ベイナイトいずれでも良く、硬さが概ねHV10で150〜300の組織を意味する。また、HV10とは、JIS Z 2244:2009記載のビッカース硬さ試験の試験方法に従って、試験力98Nで求められるビッカース硬さのことである。
このような効果は、組織全体に対する面積率で、ベイナイト組織の面積率を10〜95%とし、残部を基本的にフェライトとすること、すなわち、鋼組織を主としてフェライトおよびベイナイトからなる二相組織とすることで、明らかな効果が認められる。このため、上記水素用鋼構造物の鋼組織を、ベイナイト組織の面積率を10〜95%とし、残部を実質的にフェライト組織とする。好ましくはベイナイトの面積率は20〜95%、より好ましくは25〜95%である。さらに好ましいベイナイトの面積率は、30〜70%であり、さらには、ベイナイトの面積率は40〜60%であることが好ましい。ここで、フェライト組織とベイナイト組織の面積率がほぼ同じ場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。すなわちフェライト組織とベイナイト組織の合計の面積率に対するベイナイト組織の面積率の割合である、ベイナイト面積率比[ベイナイト面積率比:(ベイナイト組織の面積率)/((フェライト組織の面積率)+(ベイナイト組織の面積率))]が、0.3〜0.7の場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。このため、ベイナイト面積率比は0.3〜0.7とすることが好ましい。より好ましくは、ベイナイト面積率比は0.4〜0.6である。なお、ベイナイト組織以外の残部は、実質的にはフェライトとするが、ベイナイトおよびフェライト以外の組織(例えば、パーライトやマルテンサイト等)を合計の面積率で2%以下であれば、疲労き裂の進展速度に対し実質的な影響はないため、含有しても良い。すなわち、ベイナイトとフェライトの合計の面積率が98%以上であれば、その他の組織を含有しても良い。なお、「残部が実質的にフェライト」とは、残部のうちフェライトの含有量が60%以上であることを意味する。
次に、上記したベイナイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を有する水素用鋼構造物の好ましい鋼組成について、説明する。本発明の水素用鋼構造物に用いる低合金鋼の好ましい成分組成については、上述しているが、上述の成分組成に含まれる成分のうち以下で説明する成分については、本鋼組織の場合には、以下の含有量とすることがより好ましい。なお、以下、成分組成を示す%は、特に断らない限り、質量%を意味する。
C:0.05〜0.20%
Cは、適度な焼入れ性を確保するために含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、C含有量は0.05%以上とする。好ましくは、C含有量は0.08%以上である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量は0.10%以上とすることが好ましい。一方、C含有量は、0.20%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。このため、C含有量は0.20%以下とする。好ましくは、C含有量は0.17%以下である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量は0.15%以下とすることが好ましい。従って、C含有量を0.05〜0.20%に限定する。
Si:0.05〜0.50%
Siは、製鋼段階の脱酸材および焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、Si含有量は0.05%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.08%以上である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量は0.10%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量は、0.50%を超えると粒界が脆化し、低温靭性を劣化させる。このため、Si含有量は0.50%以下とする。好ましくは、Si含有量は0.45%以下である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量は0.40%以下とすることが好ましい。従って、Si含有量を0.05〜0.50%に限定する。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分である。このため、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは、Mn含有量は0.8%以上である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.0%以上とすることが好ましい。一方、Mnは、2.0%を超えて含有すると、粒界強度が低下し、低温靭性が劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは、Mn含有量は1.8%以下である。なお、特に上記したベイナイトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.5%以下とすることが好ましい。したがって、Mn含有量を0.5〜2.0%に限定する。
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸材として添加されると同時に、Al系窒化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の粗大化を抑制する効果があるが、0.01%未満の場合にはその効果が十分でない。このため、Al含有量は0.01%以上とする。好ましくは、Al含有量は0.02%以上である。一方、Alは、0.10%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。このため、Al含有量は0.10%以下とする。好ましくは、Al含有量は0.08%以下である。従って、Al含有量を0.01〜0.10%に限定する。
N:0.0005〜0.008%
Nは、Nb、TiおよびAlなどと窒化物を形成することによって微細析出物を形成し、加熱時にオーステナイト粒をピンニングすることによって、粒の粗大化を抑制し、低温靭性を向上させる効果を有するために添加する。0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が充分にもたらされない。このため、N含有量は0.0005%以上とする。好ましくは、N含有量は0.002%以上である。一方、0.008%を超える含有は固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。このため、N含有量は0.008%以下とする。好ましくは、N含有量は0.006%以下である。従って、N含有量を0.0005〜0.008%に限定する。
P:0.05%以下
不純物元素であるPは、結晶粒界に偏析しやすく、0.05%を超えると隣接結晶粒の接合強度を低下させ、低温靭性を劣化させる。従って、P含有量を0.05%以下に限定する。好ましくは、P含有量は0.03%以下である。
S:0.01%以下
不純物元素であるSは、結晶粒界に偏析しやすく、また、非金属介在物であるMnSを生成しやすい。0.01%を超えると隣接結晶粒の接合強度が低下し、介在物の量が多くなり、低温靭性を劣化させる。従って、S含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、S含有量は0.005%以下である。
O:0.01%以下
Oは、Alなどと酸化物を形成することによって、材料の成形性に影響を及ぼす。0.01%を超える含有は介在物が増加し、成形性を損なう。従って、O含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、O含有量は0.006%以下である。
2)マルテンサイトと残部実質的にフェライトからなる鋼組織
水素用鋼構造物の好ましい鋼組織の一つは、マルテンサイトの面積率が10〜95%であり、残部が実質的にフェライトからなる鋼組織である。この水素用鋼構造物の鋼組織は、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトが分散している鋼組織である。このような鋼組織を有する水素用鋼構造物では、分散して存在する軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトの界面近傍で疲労き裂が停滞し、迂回、分岐する効果のため、疲労き裂の進展速度が低下し、優れた耐水素脆化特性を有する。なお、ここで言う軟質なフェライトとは、ポリゴナルフェライトを意味し、硬さが概ねHV10で70〜150の組織とする。また、硬質なマルテンサイトとは、セメンタイトを含んでいても含んでいなくても良く、硬さが概ねHV10で200〜600の組織を意味する。
このような効果は、組織全体に対する面積率で、マルテンサイト組織の面積率を10〜95%とし、残部を基本的にフェライトとすること、すなわち、鋼組織を主としてマルテンサイトおよびフェライトからなる二相組織とすることで、明らかな効果が認められる。このため、上記水素用鋼構造物の鋼組織を、マルテンサイト組織の面積率を10〜95%とし、残部を実質的にフェライト組織とする。好ましくはマルテンサイトの面積率は20〜95%、より好ましくは25〜95%である。さらに好ましいマルテンサイトの面積率は、30〜70%であり、さらには、マルテンサイトの面積率は40〜60%であることが好ましい。ここで、フェライト組織とマルテンサイト組織の面積率がほぼ同じ場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。すなわちフェライト組織とマルテンサイト組織の合計の面積率に対するマルテンサイト組織の面積率の割合である、マルテンサイト面積率比[マルテンサイト面積率比:(マルテンサイト組織の面積率)/((フェライト組織の面積率)+(マルテンサイト組織の面積率))]が、0.3〜0.7の場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。このため、マルテンサイト面積率比は0.3〜0.7とすることが好ましい。より好ましくは、マルテンサイト面積率比は0.4〜0.6である。なお、マルテンサイト組織以外の残部は、実質的にはフェライトとするが、マルテンサイトおよびフェライト以外の組織(例えば、パーライトやベイナイト等)を合計の面積率で2%以下であれば、疲労き裂の進展速度に対し影響はないため、含有しても良い。すなわち、マルテンサイトとフェライトの合計の面積率が98%以上であれば、その他の組織を含有しても良い。なお、「残部が実質的にフェライト」とは、残部のうちフェライトの含有量が60%以上であることを意味する。
次に、上記したマルテンサイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を有する水素用鋼構造物の好ましい鋼組成について、説明する。本発明の水素用鋼構造物に用いる低合金鋼の好ましい成分組成については、上述しているが、上述の成分組成に含まれる成分のうち以下で説明する成分については、本鋼組織の場合には、以下の含有量とすることがより好ましい。なお、上記したように、成分組成を示す%は、特に断らない限り、質量%を意味する。
C:0.05〜0.35%
Cは、適度な焼入れ性を確保するために含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、C含有量は0.05%以上とする。好ましくは、C含有量は0.08%以上である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量を0.10%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.35%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。このため、C含有量は0.35%以下とする。好ましくは、C含有量は0.27%以下である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量を0.25%以下とすることが好ましい。従って、C含有量を0.05〜0.35%に限定する。
Si:0.05〜0.50%
Siは、製鋼段階の脱酸材および焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、Si含有量は0.05%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.08%以上である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量を0.10%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が0.50%を超えると粒界が脆化し、低温靭性を劣化させる。このため、Si含有量は0.50%以下とする。好ましくは、Si含有量は0.45%以下である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量を0.40%以下とすることが好ましい。従って、Si含有量を0.05〜0.50%に限定する。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分である。このため、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは、Mn含有量は0.8%以上である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.0%以上とすることが好ましい。一方、Mnは、2.0%を超えて含有すると、粒界強度が低下し、低温靭性が劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは、Mn含有量は1.8%以下である。なお、特に上記したマルテンサイトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.5%以下とすることが好ましい。したがって、Mn含有量を0.5〜2.0%に限定する。
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸材として添加されると同時に、Al系窒化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の粗大化を抑制する効果があるが、0.01%未満の場合にはその効果が十分でない。このため、Al含量は0.01%以上とする。好ましくは、Al含有量は0.02%以上である。一方、Alは、0.10%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。このため、Al含有量は0.10%以下とする。好ましくは、Al含有量は0.08%以下である。従って、Al含有量を0.01〜0.10%に限定する。
N:0.0005〜0.008%
Nは、Nb、Ti、Alなどと窒化物を形成することによって微細析出物を形成し、加熱時にオーステナイト粒をピンニングすることによって、粒の粗大化を抑制し、低温靭性を向上させる効果を有するために添加する。0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が充分にもたらされない。このため、N含有量は0.0005%以上とする。好ましくは、N含有量は0.002%以上である。一方、0.008%を超える含有は固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。このため、N含有量は0.008%以下とする。好ましくは、N含有量は0.006%以下である。従って、N含有量を0.0005〜0.008%に限定する。
P:0.05%以下
不純物元素であるPは、結晶粒界に偏析しやすく、0.05%を超えると隣接結晶粒の接合強度を低下させ、低温靭性を劣化させる。従って、P含有量を0.05%以下に限定する。好ましくは、P含有量は0.03%以下である。
S:0.01%以下
不純物元素であるSは、結晶粒界に偏析しやすく、また、非金属介在物であるMnSを生成しやすい。0.01%を超えると隣接結晶粒の接合強度が低下し、介在物の量が多くなり、低温靭性を劣化させる。従って、S含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、S含有量は0.005%以下である。
O:0.01%以下
Oは、Alなどと酸化物を形成することによって、材料の成形性に影響を及ぼす。0.01%を超える含有は介在物が増加し、成形性を損なう。従って、O含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、O含有量は0.006%以下である。
3)パーライトと残部実質的にフェライトからなる鋼組織
水素用鋼構造物の好ましい鋼組織の一つは、パーライトの面積率が10〜95%であり、残部が実質的にフェライトからなる鋼組織である。この水素用鋼構造物の鋼組織は、軟質なフェライトと硬質なパーライトが分散している鋼組織である。このような鋼組織を有する水素用鋼構造物では、分散している軟質なフェライトと硬質なパーライトの界面近傍で疲労き裂が停滞し、迂回、分岐する効果のため、疲労き裂の進展速度が低下し、優れた耐水素脆化特性を有する。なお、ここで言う軟質なフェライトとは、ポリゴナルフェライトを意味し、硬さが概ねHV10で70〜150の組織とする。また、硬質なパーライトとは、フェライトとパーライトがラメラ状またはフェライト中にパーライトが塊状に分散する形態いずれでも良く、硬さが概ねHV10で150〜300の組織を意味する。
このような効果は、組織全体に対する面積率で、パーライト組織の面積率を10〜95%とし、残部を基本的にフェライトとすること、すなわち、鋼組織を主としてパーライトおよびフェライトからなる二相組織とすることで、明らかな効果が認められる。このため、上記水素用鋼構造物の鋼組織を、パーライト組織の面積率を10〜95%とし、残部を実質的にフェライト組織とする。好ましくはパーライトの面積率は20〜95%、より好ましくは25〜95%である。さらに好ましいパーライトの面積率は、30〜70%であり、さらには、パーライトの面積率は40〜60%であることが好ましい。ここで、フェライト組織とパーライト組織の面積率がほぼ同じ場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。すなわちフェライト組織とパーライト組織の合計の面積率に対するパーライト組織の面積率の割合である、パーライト面積率比[パーライト面積率比:(パーライト組織の面積率)/((フェライト組織の面積率)+(パーライト組織の面積率))]が、0.3〜0.7の場合に、最も疲労き裂進展速度が低下する。このため、パーライト面積率比は0.3〜0.7とすることが好ましい。より好ましくは、パーライト面積率比は0.4〜0.6である。なお、パーライト組織以外の残部は、実質的にはフェライトとするが、パーライトおよびフェライト以外の組織(例えば、ベイナイトやマルテンサイト等)を合計の面積率で2%以下であれば、疲労き裂の進展速度に対し影響はないため、含有しても良い。すなわち、パーライトとフェライトの合計の面積率が98%以上であれば、その他の組織を含有しても良い。なお、「残部が実質的にフェライト」とは、残部のうちフェライトの含有量が60%以上であることを意味する。
次に、上記したパーライトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を有する本発明の水素用鋼構造物の好ましい鋼組成について、説明する。本発明の水素用鋼構造物に用いる低合金鋼の好ましい成分組成については、上述しているが、上述の成分組成に含まれる成分のうち以下で説明する成分については、本鋼組織の場合には、以下の含有量とすることがより好ましい。なお、上記したように、成分組成を示す%は、特に断らない限り、質量%を意味する。
C:0.05〜0.10%
Cは、適度な焼入れ性を確保するために含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、C含有量は0.05%以上とする。好ましくは、C含有量は0.06%以上である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量は0.07%以上とすることが好ましい。一方、0.10%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。このため、C含有量は0.10%以下とする。好ましくは、C含有量は0.09%以下である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、C含有量は0.08%以下とすることが好ましい。従って、C含有量を0.05〜0.10%に限定する。
Si:0.05〜0.50%
Siは、製鋼段階の脱酸材および焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。このため、Si含有量は0.05%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.08%以上である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量は0.10%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が0.50%を超えると粒界が脆化し、低温靭性を劣化させる。このため、Si含有量は0.50%以下とする。好ましくは、Si含有量は0.45%以下である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、Si含有量は0.40%以下とすることが好ましい。従って、Si含有量を0.05〜0.50%に限定する。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分である。このため、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは、Mn含有量は0.8%以上である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.0%以上とすることが好ましい。一方、Mnは、2.0%を超えて含有すると、粒界強度が低下し、低温靭性が劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは、Mn含有量は1.8%以下である。なお、特に上記したパーライトの面積率を確保しやすくするためには、Mn含有量は1.5%以下とすることが好ましい。したがって、Mn含有量を0.5〜2.0%に限定する。
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸材として添加されると同時に、Al系窒化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の粗大化を抑制する効果があるが、0.01%未満の場合にはその効果が十分でない。このため、Al含有量は0.01%以上とする。好ましくは、Al含有量は0.02%以上である。一方、Alは、0.10%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。このため、Al含有量は0.10%以下とする。好ましくは、Al含有量は0.08%以下である。従って、Al含有量を0.01〜0.10%に限定する。
N:0.0005〜0.008%
Nは、Nb、Ti、Alなどと窒化物を形成することによって微細析出物を形成し、加熱時にオーステナイト粒をピンニングすることによって、粒の粗大化を抑制し、低温靭性を向上させる効果を有するために添加する。0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が充分にもたらされない。このため、N含有量は0.0005%以上とする。好ましくは、N含有量は0.002%以上である。一方、0.008%を超える含有は固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。このため、N含有量は0.008%以下とする。好ましくは、N含有量は0.006%以下である。従って、N含有量を0.0005〜0.008%に限定する。
P:0.05%以下
不純物元素であるPは、結晶粒界に偏析しやすく、0.05%を超えると隣接結晶粒の接合強度を低下させ、低温靭性を劣化させる。従って、P含有量を0.05%以下に限定する。好ましくは、P含有量は0.03%以下である。
S:0.01%以下
不純物元素であるSは、結晶粒界に偏析しやすく、また、非金属介在物であるMnSを生成しやすい。0.01%を超えると隣接結晶粒の接合強度が低下し、介在物の量が多くなり、低温靭性を劣化させる。従って、S含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、S含有量は0.005%以下である。
O:0.01%以下
Oは、Alなどと酸化物を形成することによって、材料の加工性に影響を及ぼす。0.01%を超える含有は介在物が増加し、加工性を損なう。従って、O含有量を0.01%以下に限定する。好ましくは、O含有量は0.006%以下である。
さらに、上記した1)ベイナイトとフェライト、2)マルテンサイトとフェライト、3)パーライトとフェライトのいずれの組織とする場合においても、上記成分組成の残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成とすることが好ましい。また、所望する特性に応じて、更に下記i)、ii)の成分を個別にあるいは同時に、適宜含有させることがより好ましい。
i)Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜10.0%、Cr:0.1〜2.5%、Mo:0.05〜2.0%、Nb:0.005〜0.5%、V:0.005〜1.0%、Ti:0.005〜0.5%、W:0.05〜2.0%、B:0.0005〜0.005%の一種または二種以上。
ii)Nd:0.005〜1.0%、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.005%の一種または二種以上。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、焼入れ性を向上する作用を有している。0.05%未満ではその効果が充分でなく、一方、1.0%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れを生じやすくする。従って、Cuを添加する場合には、その含有量を0.05%以上1.0%以下に限定する。
Ni:0.05〜10.0%
Niは、Cuと同様に焼入れ性を向上する作用を有しており、さらに靭性を向上する作用も有する。0.05%未満ではその効果が充分ではなく、一方、10.0%を超えると、経済性が劣る。従って、Niを添加する場合には、その含有量を0.05%以上10.0%以下に限定する。
Cr:0.1〜2.5%
Crは、焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.1%未満ではその効果が不十分であり、一方、2.5%を超えて含有すると溶接性が劣化する。従って、Crを添加する場合には、その含有量を0.1%以上2.5%以下に限定する。
Mo:0.05〜2.0%
Moは、焼入れ性を向上する作用を有するが、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、2.0%を超える含有は経済性が劣る。従って、Moを添加する場合には、その含有量を0.05%以上2.0%以下に限定する。
Nb:0.005〜0.5%
Nbは、焼入れ性を向上する作用を有するとともに、Nb系炭窒化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の粗大化を抑制する。含有量が0.005%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.5%を超える含有は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.005%以上0.5%以下に限定する。
V:0.005〜1.0%
Vは、焼入れ性を向上する作用を有すると共に、V系炭化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の粗大化を抑制する。含有量が0.005%未満ではその効果が不十分であり、一方、1.0%を超える含有は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.005%以上1.0%以下に限定する。
Ti:0.005〜0.5%
Tiは、焼入れ性を向上する作用を有するとともに、Ti系炭窒化物の微細析出物として加熱時にオーステナイト粒をピンニングし、粒の成長を抑制する効果がある。含有量が0.005%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.5%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Tiを添加する場合には、その含有量を0.005%以上0.5%以下に限定する。
W:0.05〜2.0%
Wは、焼入れ性を向上する作用を有するが、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、2.0%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Wを添加する場合は、その含有量を0.05%以上2.0%以下に限定する。
B:0.0005〜0.005%
Bは、焼入れ性を確保する元素として含有するが、0.0005%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.005%を超えると、靭性を劣化させる。従って、Bを添加する場合には、その含有量を0.0005%以上0.005%以下に限定する。
Nd:0.005〜1.0%
Ndは、Sを介在物として取り込み、Sの粒界偏析量を低減させ、低温靭性および耐水素脆性を向上させる作用を有している。含有量が0.005%未満ではその効果が不十分であり、一方、1.0%を超える含有は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Ndを添加する場合には、その含有量を0.005%以上1.0%以下に限定する。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは、CaSを形成し、圧延によって展伸しやすい介在物であるMnSの代わりに、圧延により展伸しにくい球状介在物であるCaSへと、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有する。含有量が0.0005%未満ではその効果は充分ではなく、一方、0.005%を超えて含有すると清浄度が低下するため、靭性などの材質が劣化する。したがって、Caを添加する場合には、その含有量を0.0005%以上0.005%以下に限定する。
Mg:0.0005〜0.005%
Mgは、溶銑脱硫材として使用する場合がある。含有量が0.0005%未満ではその効果は充分ではなく、一方、0.005%を超える含有は、清浄度の低下を招く。従って、Mgを添加する場合には、その含有量を0.0005%以上0.005%以下に限定する。
REM:0.0005〜0.005%
REMは、鋼中でREM(O、S)として硫化物を生成することによって結晶粒界の固溶S量を低減して耐SR割れ特性を改善する。含有量が0.0005%未満ではその効果が充分ではなく、一方、0.005%を超える含有は、沈殿晶帯にREM硫化物が著しく集積し、材質の劣化を招く。従って、REMを添加する場合には、その含有量を0.0005%以上0.005%以下に限定する。なお、REMとはRare Earth Metalの略、であり、希土類金属である。
上記好ましい鋼組織を有する水素用鋼構造物とするための製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、水素用鋼構造物として、水素用ラインパイプを製造する場合、上記した好ましい成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して加速冷却する、あるいは直接焼入れ焼戻することにより鋼組織を調整して、上記好ましい鋼組織を有するものとすることができる。また、水素用鋼構造物である水素用蓄圧器は、例えば所定の成分組成を有する鋼材を所定形状、すなわち所望する水素用蓄圧器の形状に成形後、再加熱し、焼入れ焼戻しして鋼組織を調整することにより、上記好ましい鋼組織を有するものとすることができる。また、このように鋼組織を調整した後、上記したように、ニッケルめっき皮膜、亜鉛めっき皮膜、銅めっき皮膜等の所定の膜を形成することで、本発明の水素用鋼構造物とすることができる。
以下に、本発明の水素用鋼構造物である水素用ラインパイプ、水素用蓄圧器を例示して、上記した好ましい鋼組織を有する水素用鋼構造物について、好ましい製造方法を説明する。
なお、下記の製造条件における温度規定は鋼材中心部のものとし、薄板、厚板、パイプ、形鋼は板厚中心、棒鋼では径方向の中心とする。但し、中心部近傍はほぼ同様の温度履歴となるので、中心そのものに限定するものではない。
上記した好ましい鋼組織を有する本発明の水素用鋼構造物である水素用ラインパイプは、上記したように、例えば鋼素材を熱間圧延して加速冷却する、あるいは直接焼入れ焼戻しすることにより製造することができる。
鋼素材
本発明の水素用ラインパイプの製造に用いる鋼素材は、上記好ましい鋼組織に応じた好ましい成分組成に調整された溶鋼から鋳造する。ここで、特に鋳造条件を限定する必要はなく、いかなる鋳造条件で製造された鋼素材としてもよい。溶鋼から鋳片を製造する方法や、鋳片を圧延して鋼片を製造する方法は特に規定しない。転炉法・電気炉法等で溶製された鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造された鋼スラブが利用できる。
加速冷却による製造
上記鋼素材を、Ac変態点以上に加熱し、熱間圧延によって所定の板厚とし、引続きAr変態点以上から、水冷などにより冷却速度を1〜200℃/sとして600℃以下の温度まで加速冷却する。加熱温度がAc変態点未満では、一部未変態オーステナイトが残存するため、熱間圧延および加速冷却後に所望の鋼組織を得ることができない。このため、熱間圧延前の加熱温度はAc変態点以上とする。好ましくは、該加熱温度は(Ac+50)℃以上である。なお、該加熱温度は、初期オーステナイト粒径の過度な粗大化抑制および生産効率向上の観点から、1250℃以下とすることが好ましい。また、熱間圧延後の冷却の開始温度がAr変態点未満であると、オーステナイトの一部の変態が冷却開始前に生じてしまうため、加速冷却後に所望の鋼組織を得ることができない。このため熱間圧延後、Ar変態点以上から冷却を開始する。好ましくは、(Ar+50)℃以上から冷却を開始する。なお、冷却を開始する温度は、熱間圧延との兼ね合いから、1000℃以下とすることが好ましい。Ar変態点以上からの冷却速度は、所望の組織を得るため、1℃/s以上200℃/s以下とする。なお、該冷却速度は、板厚中心での平均冷却速度である。また、ベイナイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は5℃/s以上20℃/s未満とすることが好ましい。また、マルテンサイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は20℃/s以上200℃/s以下とすることが好ましい。また、パーライトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は1℃/s以上5℃/s未満とすることが好ましい。冷却手段は特に限定する必要はなく、水冷等により行えばよい。また、該冷却を600℃超えの温度で停止すると、所望の変態が完了しないため、所望の鋼組織を得ることができない。このため、600℃以下の温度まで加速冷却する。好ましくは、550℃以下まで加速冷却する。なお、該冷却を停止する温度は、変態挙動との関係から、300℃以上とすることが好ましい。
直接焼入れ焼戻しによる製造
上記鋼素材を、Ac変態点以上に加熱し、熱間圧延後、引続きAr変態点以上から冷却速度1〜200℃/sで250℃以下の温度まで焼入れ、引続きAc変態点以下の温度で焼戻す。加熱温度がAc変態点未満では、一部未変態オーステナイトが残存するため、熱間圧延および焼入れ、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため、熱間圧延前の加熱温度はAc変態点以上とする。好ましくは、該加熱温度は(Ac+50)℃以上である。なお、該加熱温度は、初期オーステナイト粒径の過度な粗大化抑制および生産効率向上の観点から、1250℃以下とすることが好ましい。また、熱間圧延後の焼入れの開始温度がAr変態点未満であると、オーステナイトの一部の変態が焼入れ前に生じてしまうため、焼入れ、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため熱間圧延後、Ar変態点以上から冷却を開始し、焼入れを行う。好ましくは、(Ar+50)℃以上から冷却を開始する。なお、焼入れの開始温度は、熱間圧延との兼ね合いから、1000℃以下とすることが好ましい。Ar変態点以上から焼入れる際の冷却速度は、所望の組織を得るため、1℃/s以上200℃/s以下とする。なお、該冷却速度は、板厚中心での平均冷却速度である。また、ベイナイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は5℃/s以上20℃/s未満とすることが好ましい。また、マルテンサイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は20℃/s以上200℃/s以下とすることが好ましい。また、パーライトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は1℃/s以上5℃/s未満とすることが好ましい。冷却手段は特に限定する必要はなく、水冷等により行えばよい。また、該焼入れを250℃超えの温度で停止すると、所望の変態が完了しないため、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため、250℃以下の温度まで焼入れることとする。好ましくは、200℃以下の温度まで焼き入れる。なお、焼入れの停止温度は、生産効率向上の関連から、100℃以上とすることが好ましい。焼入れ後は、引き続きAc変態点以下の温度で焼戻す。焼戻し温度がAc変態点を超えると、一部オーステナイトに変態するため、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。好ましくは、(Ac−20)℃以下の温度で焼戻す。なお、焼戻し温度は、靭性等を回復させる等の目的を達成するために、300℃以上とすることが好ましい。
本発明の水素用鋼構造物である水素用蓄圧器は、上記したように、例えば所定の成分組成を有する鋼材を所定形状、すなわち所望する水素用蓄圧器の形状に成形後、再加熱し、焼入れ焼戻しすることにより製造することができる。
再加熱・焼入れ・焼戻しによる製造
上記の成分組成を有する鋼材を、所定形状に成形後、Ac変態点以上に加熱し、引続きAr変態点以上から冷却速度0.5〜100℃/sで250℃以下の温度まで焼入れ、引続きAc変態点以下の温度で焼戻す。ここで、Ac変態点以上に加熱する鋼材は、所望する水素用蓄圧器の鋼組織に対応した成分組成を有するものであれば良く、鋼材の鋼組織は特に規定する必要はない。所定形状に成形後の加熱温度がAc変態点未満では、一部未変態オーステナイトが残存するため、熱間圧延および焼入れ、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため、加熱温度はAc変態点以上とする。好ましくは、該加熱温度は(Ac+50)℃以上である。なお、初期オーステナイト粒径の過度な粗大化抑制および生産効率向上のため、該加熱温度は1250℃以下とすることが好ましい。また、加熱後の焼入れの開始温度がAr変態点未満であるとオーステナイトの一部の変態が冷却前に生じてしまうため、焼入れ、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため前記加熱後に、Ar変態点以上から冷却を開始し、焼入れを行う。好ましくは、(Ar+50)℃以上から冷却を開始する。なお、熱間圧延との兼ね合いから、焼入れの開始温度は1000℃以下とすることが好ましい。Ar変態点以上から焼入れる際の冷却速度は、所望の組織を得るとともに、焼割れを防止するため、0.5℃/s以上100℃/s以下とする。なお、該冷却速度は、板厚(蓄圧器の壁厚)中心での平均冷却速度である。また、ベイナイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は5℃/s以上20℃/s未満とすることが好ましい。また、マルテンサイトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は20℃/s以上100℃/s以下とすることが好ましい。また、パーライトの面積率が10〜95%であり残部が実質的にフェライトからなる鋼組織を安定して得るためには、該冷却速度は0.5℃/s以上5℃/s未満とすることが好ましい。冷却手段は特に限定する必要はなく、油冷や水冷等により行えばよい。また、該焼入れ、すなわち該冷却を250℃超えの温度で停止すると、所望の変態が完了しないため、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。このため、250℃以下の温度まで焼入れることとする。好ましくは、200℃以下の温度まで焼入れる。なお、生産効率向上のため、焼入れの停止温度は100℃以上とすることが好ましい。焼入れ後は、引き続きAc変態点以下の温度で焼戻す。焼戻し温度がAc変態点を超えると、一部オーステナイトに変態するため、焼戻し後に所望の鋼組織を得ることができない。好ましくは、焼戻し温度は(Ac−20)℃以下である。なお、靭性等を回復させる等の目的を達成するため、焼戻し温度は300℃以上とすることが好ましい。
なお、本発明では、Ac変態点(℃)、Ar変態点(℃)およびAc変態点(℃)の求め方については特に規定しないが、例えばAc=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr、Ar=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo、Ac=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Crとして求めることができる。なお、上記式中において各元素記号は各元素の鋼中含有量(質量%)であり、含有しない元素は0とする。
以上の条件によって、所望の量のベイナイトを有し残部を実質的にフェライトとする鋼組織を有する、あるいは所望の量のマルテンサイトを有し残部を実質的にフェライトとする鋼組織を有する、あるいは所望の量のパーライトを有し残部を実質的にフェライトとする鋼組織を有する水素用鋼構造物である水素用ラインパイプあるいは水素用蓄圧器が得られる。
以下、本発明の効果を検証した実施例について、説明する。
表1に検証実験に供した低合金鋼の化学成分、鋼組織および引張強さを示す。表1に示す鋼組織は、3vol.%ナイタールエッチングによって、ミクロ組織を現出させ、圧延方向に平行な断面の板厚1/4位置を、光学顕微鏡により200〜400倍間の適切な倍率で観察して組織の種類を目視で識別し、2相以上の組織を有する場合は、画像処理により各組織の面積率を求めたものである。また、引張強さは、JISZ 2201(1980)に準拠する圧延方向を長手方向(引張方向)とする全厚引張試験片を用い、JISZ 2241に準拠して引張試験を行い評価したものである。
これらの表1に示した低合金鋼の鋼板を用い、板厚方向の1/4位置から、板厚2mmまたは3mmの高圧水素透過実験用のディスク状サンプルを作製し、表2(表2−1、表2−2、表2−3)に示すように、めっき無しの試験片および数水準の厚さのめっきを施した試験片を用意した。
めっきを施した試験片としては、表2−1に示す数水準の厚さのニッケル(Ni)めっきを施してニッケルめっき皮膜を形成した試験片、表2−2に示す数水準の厚さの亜鉛(Zn)めっきを施し亜鉛めっき皮膜を形成した試験片、および表2−3に示す数水準の厚さの銅(Cu)めっきを施して銅めっき皮膜を形成した試験片を用意した。
ここで、各めっきは試験片の片面のみに施した。また、表2−1に示すニッケルめっきは、ワットニッケル浴を用いた電気めっきにより施し、ニッケルめっき条件は、陰極電流密度を1.5A/dmとした。表2−2に示す亜鉛めっきは、塩化亜鉛めっき浴を用いた電気めっきにより施し、亜鉛めっき条件は、陰極電流密度を2.8A/dmとした。表2−3に示す銅めっきは、硫酸銅めっき浴により施し、銅めっき条件は、陰極電流密度を2.5A/dmとした。このようにめっきを施すことで、各めっき皮膜を試験片である低合金鋼の表面に形成した。また、めっきの通電時間を調整することによって、めっき皮膜厚さを変更した。なお、各めっき皮膜の厚み(各膜の厚み)は、試験片の断面をSEMで観察して測定した。
試料No.(NI5〜NI8、ZN5〜ZN8、CU4〜CU5)については、めっき前に第1の熱処理(保持温度:300℃、保持時間:12〜24h)を施し鉄酸化膜を形成し、更に、試料No.(NI5〜NI8、ZN5〜ZN8、CU5〜CU6)については、めっき後に第2の熱処理(保持温度:300℃、保持時間:12〜24h)を施し、金属酸化膜を形成した。
鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜の厚みは、試験片の断面をTEMによって測定した。
これらの試験片の片面(めっきを施しているサンプルは、めっき面)を表2(表2−1、表2−2、表2−3)に示す水素ガス圧力・温度(表2における「水素ガス圧力」及び「水素透過測定温度」)の条件とし、水素導入開始直後から、水素導入の反対面から抜けてくる水素をQ−mass(Quadrupole Mass Spectrometer;四重極形質量分析計)で連続的に分析し、水素透過曲線を得た。得られたそれぞれの水素透過曲線から、水素測定開始から水素透過開始までの時間(h)と定常状態に達した時の水素透過量(H/s)を解析した。なお、水素透過量の単位は、(サンプルを1秒当たりに透過する水素分子の個数)である。また、水素透過曲線が時間と供に増加し、ある時間経過後、時間に対してほぼ変化しなくなった状態を定常状態と判断した。上記のようにして求めためっき皮膜の厚み(膜の厚み)、水素測定開始から水素透過開始までの時間である水素透過開始時間、定常状態における水素透過量を表2(表2−1、表2−2、表2−3)に示す。
また、水素透過開始時間に関しては、同様の鋼材、同様のディスク状サンプル厚さ、同様の水素導入条件において、めっきを施した場合(めっき有り)の場合の水素透過開始時間(h)と、めっきを施していない場合(めっき無し)の水素透過開始時間(h)の比(=(めっき有りの水素透過開始時間)/(めっき無しの水素透過開始時間))を水素透過開始時間比として求め、表2(表2−1、表2−2、表2−3)に示す。水素透過開始時間比は2.0以上になることを目標とした。また、水素透過量に関しては、同様の鋼材、同様のディスク状サンプル厚さ、同様の水素導入条件において、めっきを施した場合の水素透過量と、めっきを施していない場合の水素透過量の比を水素透過量比(=(めっき有りの水素透過量)/(めっき無しの水素透過量))として求め、表2(表2−1、表2−2、表2−3)に示す。水素透過量比は0.5以下になることを目標とした。これら水素透過開始時間比の目標と水素透過量比の目標を両方満足する場合、耐水素透過特性に優れるとした。
表2−1に示した試料No.NI6〜NI8は、ニッケルめっき皮膜の厚さが0.10μm以上であり、本発明の範囲を満足し、水素透過開始時間は、めっき無しの場合の2.0倍以上であり、かつ、水素透過量は、めっき無しの場合の0.5倍以下であり、耐水素透過特性に優れていることがわかる。
一方、表2−1に示した試料No.NI5は、ニッケルめっき皮膜の厚さが、本発明範囲の下限より小さく、水素透過開始時間比が目標値に達していない。
表2−2に示した試料No.ZN6〜ZN8は、亜鉛めっき皮膜の厚さが0.10μm以上であり、本発明の範囲を満足し、水素透過開始時間は、めっき無しの場合の2.0倍以上であり、かつ、水素透過量は、めっき無しの場合の0.5倍以下であり、耐水素透過特性に優れていることがわかる。
一方、表2−2に示した試料No.ZN5は、亜鉛めっき皮膜の厚さが、本発明範囲の下限より小さく、水素透過開始時間比および水素透過量比のいずれも目標値に達していない。
表2−3に示した試料No.CU4〜CU6は、銅めっき皮膜の厚さ0.10μm以上であり、本発明の範囲を満足し、水素透過開始時間は、めっき無しの場合の2.0倍以上であり、かつ、水素透過量は、めっき無しの場合の0.5倍以下であり、耐水素透過特性に優れていることがわかる。
更に、鉄酸化膜または銅酸化膜のいずれかが、0.1〜20nmの下限を下回る場合(試料No.CU4、CU6)には、水素透過開始時間比がやや小さく、水素透過抑制能はやや劣る。
上記結果から明らかなように、本発明例は、水素透過開始時間比が2.0以上、および、水素透過量比が0.5以下を満足しており、耐水素透過特性に優れるものであり、本発明により、耐水素透過特性に優れる水素用蓄圧器や水素用ラインパイプ等の水素用鋼構造物を得られることがわかる。
Figure 0006137259
Figure 0006137259
Figure 0006137259
Figure 0006137259
本実施例においては、水素用ラインパイプおよび水素用蓄圧器の高圧水素中の疲労き裂進展特性に及ぼすめっきの影響を評価した。
表1に示す低合金鋼の鋼板から、荷重負荷方向が圧延方向と平行になるようASTM E 647に準拠したCT試験片を採取し、クリップゲージを用いて、コンプライアンス法で疲労き裂の長さを測定して、90MPa高圧水素ガス中における疲労き裂進展速度を求めた。なおCT試験片は、板厚1/2位置から10mm厚さの試験片を採取した。また、試験片は、表裏ともに鏡面研磨を施し、めっきを施す場合には、表裏ともに鏡面研磨を施した後で、試験片全面にめっきを施した。表3に示す各めっき条件は、ニッケルめっきは、ワットニッケル浴を用いた電気めっきにより施し、陰極電流密度を1.5A/dmとし、亜鉛めっきは、塩化亜鉛めっき浴を用いた電気めっきにより施し、陰極電流密度を2.8A/dmとし、銅めっきは、硫酸銅めっき浴により施し、陰極電流密度を2.5A/dmとした。このようにめっきを施すことで、各めっき皮膜を試験片である低合金鋼の表面に形成した。また、めっきの通電時間を調整することによって、めっき皮膜厚さを変更した。なお、各めっき皮膜の厚み(各膜の厚み)は、試験片の断面をSEMで観察して測定した。
試料No.(PAa〜PAg、PAi〜PAk)については、めっき前に第1の熱処理(保持温度:300℃、保持時間:12〜24h)、更に、試料No.(PAa〜PAj)については、めっき後に第2の熱処理(保持温度:300℃、保持時間:12〜24h)を施した。
鉄酸化膜、および、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜の厚みは、試験片の断面をTEMによって測定した。
比較として、めっきを施していない試験片も疲労き裂進展試験に供した。この際、パリス則が成り立つ安定成長領域として、応力拡大係数範囲ΔK=25(MPa・m1/2)での疲労き裂進展速度(m/cycle)を疲労き裂進展速度とした。更に、めっき皮膜の有無による効果を明確にする為に、めっき無しの場合の疲労き裂進展速度に対するめっき有りの場合の疲労き裂進展速度の比、即ち、めっき有りの疲労き裂進展速度/めっき無しの疲労き裂進展速度も求めた。
鉄酸化膜または金属酸化膜のいずれかが、0.1〜20nmの下限を下回る場合(試料No.PAh、PAk)には、疲労き裂進展速度がやや大きく、疲労き裂進展の加速抑制効果はやや劣る。
Figure 0006137259
試料No.PAa〜PAkは、いずれも疲労き裂進展速度比が0.8以下を満足している。また、フェライト面積率35%−ベイナイト面積率65%(PAb)、フェライト面積率25%−マルテンサイト面積率75%(PAj)、フェライト面積率85%−パーライト面積率15%(PAg)、ベイナイト面積率35%−マルテンサイト面積率65%(PAf)は、めっき無しでも、応力拡大係数範囲ΔK=25(MPa・m1/2)での疲労き裂進展速度が、1.0×10-6(m/cycle)未満と非常に優れた特性をしている。
上記結果から明らかなように、本発明例は、耐水素透過特性に優れることにより、高圧水素ガス中での鋼材中への水素の侵入が抑制され、その結果、耐水素脆化特性が更に優れるものであることが分かった。

Claims (2)

  1. 水素ガスに接触する鋼材の表面に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる厚みが0.10μm以上である膜を有し、
    前記鋼材とニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる前記膜との間に0.04〜20nmの鉄酸化膜を有し、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる前記膜上に、ニッケル、亜鉛、銅の1種以上の金属酸化膜を有し、
    水素用蓄圧器あるいは水素用ラインパイプであることを特徴とする水素用鋼構造物。
  2. ニッケル、亜鉛、銅の1種以上からなる前記膜の厚みが50.00μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素用鋼構造物。
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