JP6133652B2 - 水系組成物 - Google Patents

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本発明は、種々の工業的用途における重合・硬化物の原料、硬化性材料等として用い得る水系組成物、それを重合・硬化する方法、その重合・硬化物に関する。
水系樹脂組成物、水系硬化性組成物等の水系組成物は、VOC(揮発性有機化合物)の放出が問題となる有機溶剤系の樹脂組成物や硬化性組成物等の有機溶剤系組成物と異なり、環境負荷の低い技術として有用である。
ところで、陰イオンは負電荷を持つ物質であり、電解質溶液中や、イオン性物質(いわゆる塩)中に存在し、無機、有機の様々な陰イオンが存在する。中でも、有機陰イオンである重合性不飽和カルボン酸陰イオンは、水溶液等の電解質溶液中で重合することができ、金属カチオンや有機カチオンとの塩の水溶液の形態で重合・硬化させることが多く、その重合・硬化物は、主に水系用途で応用されている。このような重合性不飽和カルボン酸陰イオンとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸の陰イオンが知られており、特に(メタ)アクリル酸の陰イオンは重合性の高い陰イオンとして産業的にも重要である。
こうした中、(メタ)アクリル酸の陰イオンと各種カチオンからなる塩を利用した水系組成物としては、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を多価金属イオンで中和した水系重合性単量体組成物であって、そのカルボキシル基の10〜90%が中和されている水系重合性単量体組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。
この水系組成物は、上記のように、中和されていない(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の多価金属塩、及び水を必須とする組成物であって、中和されていない(メタ)アクリル酸をある程度の量含むことを特徴としている。すなわち、(メタ)アクリル酸に反応性希釈剤としての役割を担わせることにより、それ単体では製膜性のない(メタ)アクリル酸の多価金属塩に製膜性を付与したり、塗膜の硬化性を向上させたりすることができることを特徴としている。この水系組成物を基材フィルム上に塗工して湿潤状態のまま硬化させる、又は基材フィルムと基材フィルムの間に挟んで硬化させることによりガスバリア性フィルムを製造できるが、環境負荷の低い水系組成物であり、かつ紫外線硬化を利用した高生産性プロセスを採用できる点で有用な技術である。
一方、重合性不飽和カルボン酸系化合物としては、(メタ)アクリル酸エステルと同様に、隣接するカルボニル基との共役により活性化された二重結合を有する重合性化合物として、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル等の、アクリル酸エステルのα位にアリルオキシメチル基を導入した化合物(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)が開示されている。この化合物は、ラジカル付加重合機構によって環化重合し、可溶性の重合体が生じることが開示されている。
国際公開第2006/059773号
ロバート・トンプソン(Robert D. Thompson)、外2名、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、1992年、第25巻、p.6455−6459 ミチオ・ウルシザキ(Michio Urushizaki)、外4名、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、1999年、第32巻、p.322−327
しかしながら、水系組成物は、有機溶剤系組成物よりも発揮できる機能の種類が限定されたり、性能レベルが劣ったりする傾向がある。
また、上記従来の重合性不飽和カルボン酸陰イオンからなる塩については、常温で粉末状、又は結晶性の固体で製膜性に乏しいものが多く、製膜性を付与するには上記水系重合性単量体組成物のように、何らかの反応性希釈剤を用いる必要があった。したがって、反応性希釈剤には、高濃度のカルボン酸金属塩を溶解し製膜性を付与できること、及び水に可溶であること、が求められることになるが、そのような要件を満たす反応性希釈剤はごく限られている。また、高重合性であることも必要だが、(メタ)アクリル酸以外の重合性不飽和カルボン酸は重合性が充分ではない。そのため、実質的に有用な反応性希釈剤は(メタ)アクリル酸ぐらいだが、(メタ)アクリル酸は沸点が十分高くないため、(メタ)アクリル酸を含む水系硬化性組成物を塗布、乾燥すると(メタ)アクリル酸が揮発し易い。その結果、カルボン酸金属塩が析出して塗膜が白化する場合があり、組成物中の(メタ)アクリル酸の含有量、塗工・乾燥条件の制御に細心の注意が必要である。また、少量ではあるが揮発した(メタ)アクリル酸が作業環境における設備、又は人員の健康に被害を及ぼす恐れもある。
一方、重合性不飽和カルボン酸系化合物に関し、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル等のアクリル酸エステルのα位にアリルオキシメチル基を導入した化合物については、上述した先行技術文献において、ラジカル又はアニオン機構に基づく付加重合性について開示されているが、α−アリルオキシメチルアクリル酸陰イオン及びその塩については何ら記載されていない。また、アクリル酸エステルのα位にアリルオキシメチル基を導入した化合物が重合性化合物としてどのような課題を有するのかについての言及もなされていない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、これまでに検討がなされていなかった新規物質であるジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩を含む、製膜性と重合性に優れ、環境負荷の低い水系組成物を提供することを目的とする。また、該水系組成物の重合・硬化方法を提供し、更に、該重合・硬化方法により得られる重合・硬化物を提供する、すなわち、耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止を始め、その重合・硬化物中にイオン結合、特に金属イオンを介したイオン結合を導入することで発現する優れた諸特性を有する重合・硬化物を提供することをも目的とする。
本発明者は、1,6−ジエン−2−カルボン酸系化合物に着目して種々検討したところ、1,6−ジエン−2−カルボン酸の陰イオンとその塩が新規物質であり、従来の重合性不飽和カルボン酸陰イオンとその塩や、アクリル酸エステルのα位にアリルオキシメチル基を導入した不飽和カルボン酸エステル系化合物とは異なる特性を持ち、しかもより更に有用な特性を発揮することができることを見出した。すなわち、該ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩が、極めて優れた重合性を有し、かつ製膜性にも優れることを見出し、また、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩を含む水系組成物が優れた製膜性と重合性を有することを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到したものである。
更に、その重合・硬化物は、耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止を始め、その重合・硬化物中にイオン結合、更には金属イオンを導入することで発現する優れた諸特性を有することから、コーティング材、アイオノマー樹脂、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、顔料分散、反応性乳化剤、反応性界面活性剤、金属/金属酸化物微粒子の分散、インク、レジスト、MOD材料、成型材料、ガスバリア材料、水蒸気バリア材料、酸素吸収材料、レンズ、歯科材料、抗菌剤、ゴム、タイヤ、照明、太陽電池、配線材料、電極材料、めっきアンダーコート、光ファイバー、光導波路、超伝導材料、半導体チップ、磁性材料、メモリ、コンデンサ、圧電体にいたるまで、情報技術(IT)分野や自動車、建築、医療、日用品等の種々の分野において幅広く応用できることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物である。
Figure 0006133652
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。X、Y、Zは、同一又は異なって、メチレン基、水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、又は、酸素原子を表す。ただし、X、Y及びZのうち、少なくとも1つは、酸素原子である。点線及び実線で表される酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合は、この結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合が等価であり、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっていることを表す。
また本発明においては、下記一般式(2)で表されるα−(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物であることが好ましい。
Figure 0006133652
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。点線及び実線で表される酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合は、この結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合が等価であり、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっていることを表す。
また本発明は、上記水系組成物を重合又は硬化させる方法であって、上記重合又は硬化方法は、加熱、活性エネルギー線の照射、及び、酸素を含む雰囲気下への暴露からなる群から選択される少なくとも1種の方法を施す工程を含む、上記水系組成物の重合又は硬化方法でもある。
更に本発明は、上記重合又は硬化方法により得られる、重合物又は硬化物でもある。
以下に本発明を詳述する。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。「(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸」とは、アリルオキシメチルアクリル酸又はメタリルオキシメチルアクリル酸を表す。
本発明の構成について、先ず、本発明の水系組成物の必須成分であるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩に関して、(1)ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の基本的化学構造、(2)ジエン系カルボン酸陰イオン部分に由来して発現する性能と、好ましいジエン系カルボン酸陰イオン構造、(3)対カチオン部分に由来して発現する性能と、好ましい対カチオン構造、(4)ジエン系カルボン酸塩の具体例、(5)ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法を説明する。次いで、本発明の水系組成物、その重合・硬化方法、その重合・硬化物に関して説明する。
<ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩>
(1)ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の基本的化学構造に関する事項を説明する。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、上記一般式(1)に示すように、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっている構造をとっており、通常のカルボン酸陰イオンと同様に、水等の高極性溶媒中の場合は、溶媒分子で溶媒和され電離した状態(いわゆる電解質溶液となっている状態)、低極性溶媒や貧溶媒中、又は実質的に無溶媒の場合は、対カチオンとイオン結合で結合したイオン性物質(いわゆる塩)の状態で存在する。なお、本明細書において、実質的に無溶媒とは、溶媒が含まれていない形態、及び、溶媒が含まれているが、溶媒効果が発揮されないほどに微量しか含まれていない形態を表している。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンが「陰イオン」の状態で存在することを確認するには、通常のカルボン酸陰イオンの同定に適用される方法と同様の方法で確認できる。以下に詳述する。
カルボン酸陰イオン(COO)は、下記一般式(3)に示すように、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合が等価で、その結合の強さはC=O二重結合とC−O単結合の中間であり、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっていることが一般に知られている(例えば、有機化合物のスペクトルによる同定法(第4版)/東京化学同人、p117)。
Figure 0006133652
これに対し、下記一般式(4)に示すように、カルボン酸やカルボン酸エステルでは、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合は等価ではない。
Figure 0006133652
式中、Rは、水素原子、又は炭化水素基を表す。
このような結合の等価性及び結合力の違いは赤外スペクトルにおいて顕著に現れ、カルボン酸やカルボン酸エステルは、1700〜1750cm−1付近にC=O伸縮振動に由来する強い吸収帯、及び1200cm−1付近にC−O伸縮振動に由来する吸収帯を生じるのに対し、カルボン酸陰イオンでは、C=O伸縮振動とC−O伸縮振動の間の領域に(COO)逆対称及び対称伸縮振動に由来する吸収帯が生じる。一般に、1600cm−1付近の逆対称伸縮吸収帯と、1400cm−1付近の対称伸縮吸収帯は、カルボン酸陰イオン構造となっている証拠とされる(例えば、有機化合物のスペクトルによる同定法(第4版)/東京化学同人、p118)。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、試料濃度や溶媒の種類、電解質溶液中又はイオン性物質中にて共存する対カチオンの種類によって、ある程度前後はするものの、通常のカルボン酸陰イオンと同様に、赤外スペクトルにおいて、1600cm−1付近の逆対称伸縮吸収帯と、1400cm−1付近の対称伸縮吸収帯を生じる。つまり、ジエン系カルボン酸陰イオンの逆対称伸縮吸収帯は、対応するジエン系カルボン酸又はジエン系カルボン酸エステルのC=O伸縮振動よりも低い振動数の領域に生じ、通常1500〜1650cm−1の間で観察される。また、ジエン系カルボン酸陰イオンの対称伸縮吸収帯は、対応するジエン系カルボン酸又はジエン系カルボン酸エステルのC−O伸縮振動よりも高い振動数の領域に生じ、通常1300〜1500cm−1の間で観察される。なお、ジエン系カルボン酸陰イオンを含む試料の赤外スペクトルにおいては、カルボン酸のC=O伸縮振動がほぼ完全に消失する場合もあるし、かなりの強度の吸収が観察される場合もある。これは、合成条件によっては過剰に加えた原料のカルボン酸が残存する場合もあるし、また残存している水やアルコール等のプロティックな中性低分子化合物とジエン系カルボン酸陰イオンとがプロトン交換を起こす場合もあり、分析条件によってはかなり強いカルボン酸のC=O伸縮振動に由来する吸収が観察される場合もあるからである。
カルボン酸陰イオン構造に帰属できる特有の現象は、13C−NMRスペクトルにおいても観察できる。例えば、一般に、カルボン酸陰イオンの中心炭素原子の吸収は、対応するカルボン酸やカルボン酸エステルのカルボニル炭素原子の吸収よりも低磁場側へシフトすることが多い。本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンにおいても、同様の現象が観察されることが多い。
また、ジエン系カルボン酸陰イオンには、下記一般式(5)に示すようにカルボン酸陰イオン構造の近傍に二重結合性の水素原子H及びHが存在するため、H−NMRスペクトルにおけるこれらH及びHの吸収が、カルボン酸陰イオン構造を取っていることを確認するための良い指標となる。具体的には、対応するジエン系カルボン酸又はカルボン酸エステルの二重結合性水素原子と比較すると、H及びHの化学シフト値が高磁場側へシフトする現象が観察される場合が多い。
Figure 0006133652
なお、上記NMRスペクトルにおける特性吸収の化学シフト値の絶対値、及びシフト幅は、試料濃度や溶媒の種類、電解質溶液中又はイオン性物質中にて共存する対カチオンの種類等によって変化する。また、対カチオンの種類によっては、ポリメリックな安定錯体の形成、常磁性の影響等により、ピークがブロード化し、細かい帰属が困難になる場合がある。例えば、常磁性物質である空気中の酸素と対カチオンが結びついて安定ラジカルを形成し易かったり、対カチオンそのものが常磁性物質であったりする場合にピークがブロード化すると考えられる。このようなピークのブロード化は、対カチオンが遷移金属を含む場合に見られることが多い。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、各種クロマトグラフィー技術によっても分析できる。例えば、ジエン系カルボン酸陰イオンを含む電解質溶液、又はジエン系カルボン酸陰イオンを含む塩を、強酸で前処理してジエン系カルボン酸とすれば、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーで分析できる。このような強酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、有機スルホン酸、リン酸等が挙げられ、試料や装置に応じて適宜選択すればよい。また、液体クロマトグラフィーにおいて、溶出溶媒に強酸を混ぜておいても同様の効果が得られる。イオンクロマトグラフィーやキャピラリー電気泳動を利用すれば、イオンとして直接分析することが可能である。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、当量の陰イオンと対カチオンがイオン結合し、全体として電気的に中性となっている(電気的に中和された)イオン性物質であって、上記陰イオンの少なくとも1つがジエン系カルボン酸陰イオンであるジエン系カルボン酸塩である。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、一般のカルボン酸塩と同様に、対カチオンの構造や種類、溶媒、試料濃度、温度等によって、化学式としては同一であっても(すなわちジエン系カルボン酸陰イオンと対カチオンの比率としては同じであっても)、配位構造としては複数の異なる構造を取る場合がある。また、これらの異なる配位構造は互いに容易に可逆的に変換可能であり、そのために複数の配位構造の混合物となっていることも珍しくなく、これら複数の配位構造を単離、又は同定・定量することは容易ではない。
このような現象は、対カチオンが複数の配位数を取り得る場合に生じることがあり、特に対カチオンが金属原子、又は金属原子からなる原子団である場合に生じ易い。化学式で(RCOO)Mと表される塩(RCOO:カルボン酸陰イオン、M:金属カチオン)を例に取ると、図1に示すように複数の配位構造を取り得る。なお、図1に示したものは一部の例であり、全ての配位構造例を示したものではない。
このように、対カチオンが複数の配位数を取ることができ、かつカルボン酸陰イオンも複数の配位のしかたを取ることができるため、同じ化学式の塩でも、異なる配位構造を取ることができる。
一般に、カルボン酸陰イオンは、単座(unidentate)配位子、二座(bidentate)配位子、架橋性(bridging)配位子等、配位子として複数の配位のしかたをすることはよく知られている(例えば、下記非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
非特許文献3:BASIC INORGANIC CHEMISTRY (SECOND EDITION)/John Wiley & Sons,p143
非特許文献4:Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry/UNIVERSITY SCIENCE BOOKS,p59
非特許文献5:ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY (FIFTH EDITION)/John Wiley & Sons,p483
上記のように、実態の配位構造と化学式とが一致していない例は、カルボン酸陰イオン以外の陰イオンでも数多くある。例えば、通常Ti(OR)として表される、アルコキシドイオン(RO)とチタンからなるチタンテトラアルコキシドは、図2に示すような4量体構造を含む重合体であることが知られている(例えば、BASIC INORGANIC CHEMISTRY (SECOND EDITION)/John Wiley & Sons,p142)。
したがって、本発明におけるジエン系カルボン酸塩とは、単一の配位構造を指す概念ではなく、同一の化学式で表される塩であれば(すなわちジエン系カルボン酸陰イオンと対カチオンの比率が同じであれば)、複数の異なる配位構造を含む概念である。すなわち、同一の化学式であれば、異なる配位構造のもの(単一の配位構造からなっていても、複数の配位構造の混合物であっても)を、同一のものとして扱う概念である。
また、本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、対カチオンの価数のうち少なくとも1価が本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンで占められていればよく、残りの価数はジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン(陰イオン性配位子)で占められてもよい。対カチオンに対して、ジエン系カルボン酸陰イオンやそれ以外の陰イオンに加え、電子対供与性の中性分子(中性分子型配位子)が配位している場合もある。このような陰イオン(陰イオン性配位子)としては、例えば、酸化物イオン(O2−)、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、ジエン系カルボン酸陰イオン以外のカルボン酸陰イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、リン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等を挙げることができる。中性分子型配位子としては、水、アルコール類、アンモニア、アミン類、ホスフィン類、β−ケトエステル類、シクロペンタジエン類等を挙げることができる。他にも、非常に多くの陰イオン(陰イオン性配位子)、及び中性分子型配位子が知られており、例えば、上記非特許文献3〜5として挙げた無機化学や有機金属化学の専門書のいたるところに記載されている。本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、このような陰イオン性配位子や中性分子型配位子を、対カチオンの価数や取り得る配位数に応じて、ただ1種類だけ含むこともできるし、異なる種類のものを複数種類、複数個持つこともできる。
以上のことから、本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、少なくともジエン系カルボン酸陰イオンを表す化学式と対カチオンを表す化学式からなる化学式で表されることになる。場合によってはジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン(陰イオン性配位子)や、中性分子型配位子を表す化学式をも含む化学式で表される。これらジエン系カルボン酸陰イオン、対カチオン、ジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン(陰イオン性配位子)、中性分子型配位子の比率は、最も小さい整数比で表されるものである。仮に、ジエン系カルボン酸陰イオンをRCOO、ジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン(陰イオン性配位子)をX、中性分子型配位子をL、対カチオンをM、とすれば、本発明におけるジエン系カルボン酸は、「(RCOO)(X)(L)(M)」(a,b,c,dは最小の整数比であり、a,dは1以上の整数、b,cは0以上の整数である)と表されることになる。ただ、中性分子型配位子Lについては、Lが付いた塩なのか、不純物としてのLと塩との混合物なのかを区別することは困難な場合がある。
(2)ジエン系カルボン酸陰イオン部分に由来して発現する性能と、好ましいジエン系カルボン酸陰イオン構造に関する事項を説明する。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、極めて優れた重合・硬化性を有し、水等の高極性溶媒中の状態のような溶媒分子で溶媒和され電離した状態(いわゆる電解質溶液となっている状態)でも、低極性溶媒や貧溶媒中、又は実質的に無溶媒の場合であるような、対カチオンとイオン結合で結合したイオン性物質の状態(いわゆる塩の状態)でも発揮される。
これは、ジエン系カルボン酸陰イオンが、図3に示すような機構で環化重合することが可能であるため、カルボニル基と共役している二重結合のα位が立体的に込み合っているにもかかわらず、高い重合・硬化性を示すものと考えられる。
これらの中でも、重合活性の点から、X,Zが同一又は異なってメチレン基又は水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、Y=酸素原子である場合が好ましく、更にX=Z=メチレン基、Y=酸素原子である場合、すなわち、該ジエン系カルボン酸陰イオンがα−(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸の陰イオンである場合がより好ましい。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、低極性のものから高極性のものまで、種々の汎用の有機溶媒や反応性希釈剤、樹脂への優れた溶解性・相溶性を発揮し、場合によっては常温で液状となる。これは、ジエン系カルボン酸陰イオンが多くの有機基を含み、かつエーテル構造を含むことによるものである。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンが、一般式(1)におけるZがメチレン基であるような場合、即ち(メタ)アリル基を構造中に含む場合は、活性酸素の存在下で、いわゆる酸素硬化(酸化重合とも言う)機構に基づく重合・硬化が可能である。酸素硬化機構に基づく重合・硬化する代表的な化合物としては、多官能性のアルキルアリルエーテル化合物が挙げられ、その硬化機構は図4に示される(なお、図4は簡略化した概念図であり、実際の酸素硬化機構はかなり複雑である)。一般式(1)におけるZがメチレン基である場合は、図4に示す機構と同様の機構で重合・硬化することが可能である。
このようなことから、Xがメチレン基又は水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、Zがメチレン基、Y=酸素原子である場合が好ましく、更にX=Z=メチレン基、Y=酸素原子である場合、すなわち、該ジエン系カルボン酸陰イオンがα−(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸の陰イオンである場合がより好ましい。
(3)対カチオン部分に由来して発現する性能と、好ましい対カチオン構造に関する事項を説明する。
対カチオンは、ジエン系カルボン酸塩の溶解性や製膜性、硬化性、硬化物の緒物性に影響する。目的や用途に応じて、適宜選択すればよい。
上記対カチオンとしては、金属元素(金属原子)又は金属原子を含む原子団であるカチオンと、非金属原子からなる原子団であるカチオンとに分類でき、前者としては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが、後者としては、例えば、15族元素の4級化イオン(アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等)に代表される典型非金属元素を陽イオン化したイオン(オニウムイオンともいう)が挙げられる。
なお、上記対カチオンが、金属原子を含む原子団であって、金属原子と非金属原子の両方を含む原子団である場合は、慣用的に金属原子と非金属原子を含む原子団全体を1つのカチオンとして捉える場合がある(例えば、[ZrO]2+,[(CO)Al]2+,[(n−CSn−O−Sn(n−C2+)等)。この場合、電気陰性度差の見地からは、金属原子又は金属原子のみからなる原子団がカチオンであって、それ以外の部分は陰イオンであるとする捉え方もある([ZrO]2+はZr4+とO2−、[(CO)Al]2+はAl3+とC、[(n−CSn−O−Sn(n−C2+はSn4+2個とO2−とn−C 2個)。本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンを必須の陰イオンとして含むものであって、塩全体として電気的に中性になっていれば、対カチオンを金属原子と非金属原子を含む原子団全体を1つのカチオンとして捉えてもよいし、厳密に金属原子又は金属原子のみからなる原子団がカチオンであって、それ以外の部分は陰イオンであるとして捉えてもよい。
特に、対カチオンが金属原子又は金属原子を含む原子団であるカチオンである場合、ジエン系カルボン酸塩を含む組成物の重合・硬化物に、イオン結合に由来する特性だけでなく、金属そのものに由来する特性をも付与することができるため、非常に利用価値が高い。すなわち、本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、その対カチオンが金属原子又は金属原子を含む原子団であるカチオンであるジエン系カルボン酸塩(以下、単にジエン系カルボン酸金属塩と表することもある。)であることがより好ましい。
上記金属原子(金属元素)とは、典型金属元素又は遷移金属元素である。典型金属とは、通常、アルカリ金属(周期表1族のうち水素を除く元素からなる金属)、アルカリ土類金属(周期表2族の元素からなる金属)、周期表12族の元素からなる金属、周期表13族のうちホウ素を除く元素からなる金属、周期表14族のうち炭素、ケイ素を除く元素からなる金属、周期表15族のうち窒素、リン、砒素を除く元素からなる金属、周期表16族のうち酸素、硫黄、セレン、テルルを除く元素からなる金属、を指すものであるが、本発明においては、ホウ素、ケイ素、砒素、セレン、テルルといった半金属に分類されることもある元素も、金属原子として含み得る。遷移金属とは、周期表3〜11族の元素からなる金属を指す。
以下に、対カチオンが金属原子又は金属原子を含む原子団であるカチオン(以下、単に金属イオンと表する場合もある。)である場合を中心に詳述するが、本発明におけるジエン系カルボン酸塩の対カチオンとして、以下の例に限定されるわけではなく、非金属原子からなる原子団であるカチオン(以下、有機カチオンと表する場合もある。)を排除するものではない。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に金属を導入すると、表面硬度や耐擦傷性等の、いわゆるハードコート性が向上する場合がある。また、同時にパッシブ型のバリア性(酸素バリア性・水蒸気バリア性等)も向上する場合もある。更に、ジエン系カルボン酸陰イオンの一般式(1)におけるZがメチレン基であるような場合、即ちジエン系カルボン酸陰イオンが(メタ)アリル基を構造中に含む場合は、酸素に対して、アクティブ機構(化学的に酸素を吸収する機構)によりバリア性を発揮することも可能である。そのため、ハードコート材料、封止剤、保護膜、成形材料、ガスバリア材料、水蒸気バリア材料等に好適に用いることができる。このような効果は、金属イオンの価数が高く、金属が媒介するイオン結合により高密度な架橋体構造を形成する場合に、発現することが多い。
したがって、対カチオンに含まれる金属としては、アルカリ土類金属、周期表12〜16族の典型金属、周期表3〜11族の遷移金属のような、2価以上の価数を取れる金属が好ましい。金属の入手性や、合成の容易さを考慮すれば、より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
クロム、マンガン、鉄、コバルト等、遷移金属元素は着色する場合が多いため、できるだけ着色させたくない場合は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等の典型金属、イットリウム、ランタン等の3族、チタン、ジルコニウム等の4族の遷移金属が、特に好ましく使用できる。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に金属を導入すると、重合・硬化物中に金属を導入することにより屈折率を高めることができる場合があり、レンズ、光学フィルムや光ファイバー等の光学材料に好ましく使用できる。また、光学材料として使用する場合、着色が薄い又は無色である方が有利であることが多く、この観点からは、対カチオンに含まれる金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等の典型金属、イットリウム、ランタン等の3族、チタン、ジルコニウム等の4族の遷移金属が、特に好ましく使用できる。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に金属を導入すると、その金属の種類に応じて、特定の波長範囲の電磁波を吸収できる場合がある。即ち、光線カット剤や着色をするための重合性着色剤として活用できるため、紫外線カットや赤外線カット、X線遮断、着色フィルター等に使用することができる。例えば、無色〜淡色の光線フィルターとする場合には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等の典型金属、イットリウム、ランタン等の3族、チタン、ジルコニウム等の4族の遷移金属が、特に好ましく使用できる。
一方、着色フィルター(着色剤)として用いる場合には、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の5〜11族の遷移金属を好ましく用いることができる。更に、特に着色剤として用いる場合、複数の金属種を組み合わせたり、アンモニウム塩やホスホニウム塩等の有機カチオンと組み合わせたりすることにより、単独の金属イオンでは出すことのできない光線吸収特性を発現させることも可能である。このようなカチオンの組み合わせとしては、あらゆるカチオンの組み合わせが可能だが、特に好ましくは、遷移金属を含む組み合わせである。例えば、銅とランタンを組み合わせることにより、銅だけでは得られない鮮やかな青色を呈する光線吸収特性を発現させることができる。また、光線吸収特性を変化させるには、対カチオン部分の調整だけでなく、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオンを組み合わせたり、アミンやホスフィン等の中性配位子を組み合わせたりすることも有効である。
対カチオンとして希土類金属元素を含む金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に希土類元素を導入すると、蛍光・発光能を付与できる場合があることから、照明、ディスプレイ装置、太陽電池、光ファイバー等に応用できる。例えば、ユーロピウムを導入すると赤色の蛍光発色が可能であり、エルビウムを導入すると光増幅性を利用した光ファイバーへの応用が可能である。また、着色剤として利用する場合と同様に、複数種のカチオンや本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン、又はアミンやホスフィン等の中性配位子を組み合わせることにより、蛍光・発光特性を調整することも可能である。なお、希土類元素とは、ランタンからルテチウムまでのランタノイドにスカンジウム、イットリウムを合わせた17元素を指す。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に金属を導入すると、導入した金属に応じて重合・硬化物が触媒能を発現する場合がある。すなわち、固体触媒として利用できる。本発明におけるジエン系カルボン酸金属塩は多くの有機溶媒、反応性希釈剤や樹脂に易溶であるため、様々な形態に加工し易く、例えば、フィルム状、薄膜状、粒子状等、目的や使用方法に合った好ましい形態の固体触媒とすることが可能である。金属は、目的とする反応に応じて選択すればよいが、対応できる反応の種類を考慮すると、周期表12〜16族の典型金属、周期表3〜11族の遷移金属が好ましい。具体的には、例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛やビスマスは、ウレタン化触媒やエステル交換触媒等の各種有機反応の触媒として、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、セリウム等は酸化触媒として好ましく用いることができる。また、対カチオンとしてアンモニウム塩やホスホニウム塩を含むカチオンからなる本発明におけるジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させたものも、触媒として用いることができる。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させ、重合・硬化物中に金属を導入すると、抗菌性、殺菌性、防カビ性、抗生物付着性を付与することができる場合があることから、抗菌コート、殺菌コート、防カビコート、船底塗料等に応用できる。このような金属としては、特に、亜鉛、銅、銀等が好ましく挙げられる。また、対カチオンとしてアンモニウム塩やホスホニウム塩等のオニウムイオンを含むカチオンからなる本発明におけるジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させたものも、同様の効果を発揮する場合がある。
ジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させたものは、帯電防止能を付与できる場合がある。このような対カチオンとしては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の水と親和性の高い金属イオンや、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン等の15族元素の4級化イオンのような有機カチオンが挙げられる。
ジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させたものは、無機系素材に対しても樹脂系素材に対しても良好な密着性を示すことから、接着剤、プライマーとして応用できる。対カチオンの種類は金属イオンでも有機カチオンでもよく、被着体の種類に応じて適宜選択すればよい。
被着体の形状は、塊状でも板状でもよく、目的や用途に応じて選択すればよい。
好適な板状の被着体として、無機系のものとしては、ガラス基材;セラミック基材;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、セメントスレート板等の無機質基材;アルミニウム板、銅板、ステンレス鋼板、めっき鋼板等の金属基材等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
好適な板状の被着体として、樹脂系のものとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリ(p−メチルスチレン)等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリエーテルスルホン;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂、塩素化ビニル樹脂等のハロゲン含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;シリコーン樹脂、等の樹脂系基材が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの樹脂の中では、汎用性、ジエン系カルボン酸塩を重合・硬化させたものとの密着性の点で、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、セルロース系樹脂及びフッ素樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂がより好ましい。
樹脂系基材の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜800μm程度であることが好ましい。
また、前記した基材以外にも、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード等の木質系基材を用いることもできる。
ジエン系カルボン酸塩は、樹脂を金属めっきする際のアンダーコート剤として利用可能である。通常、金属めっきが容易な樹脂の種類は限られており、また、めっき密着性を向上するため樹脂表面に凹凸をつける処理、めっき活性化剤やめっき触媒での処理等、煩雑な前処理が必要だが、ジエン系カルボン酸塩をアンダーコート剤として使えば、煩雑な前処理を一部又はほとんどを省略できる場合がある。このような対カチオンとしては金属イオンでも有機カチオンでもよく、樹脂やめっきの種類に応じて適宜選択すればよいが、遷移金属を含む対カチオンが好ましく、特に銀や金、白金等の貴金属類を含む場合、UV照射により硬化させると同時に金属ナノ粒子を生じさせ、生じた金属ナノ粒子を核として無電解めっきを施したり、場合によっては電解めっきを施すことが可能である。フォトリソグラフィやUVナノインプリント技術等の光硬化を利用した微細加工技術と組み合わせれば、微細な導電配線やブラックマトリクスを、高温の熱処理を経ずに樹脂フィルム上に形成することができる。
また、カルボン酸金属塩を原料として、加水分解、酸化処理、還元処理、エネルギー線照射等により、カルボン酸部位を表面に有する金属微粒子が得られることが一般的に知られているが、対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸金属塩も、同様にして微粒子化することができる。すなわち、金属微粒子の表面にジエン系カルボン酸部位を有する、重合性の金属微粒子を得ることもできる。
対カチオンとして金属イオンを含むジエン系カルボン酸塩は、金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ微粒子を含む複合体の原料として有用である。特にUV照射によりイオンから金属へ還元される性質を有する金属(例えば銀や金等)を含む場合、UV照射により硬化させると同時に金属ナノ粒子を生じさせることにより、金属ナノ粒子が非常に高濃度で均一に分散した複合体を容易に作製することができる。粒子径を数nm〜100nm程度になるよう制御すれば、金属ナノ粒子特有のプラズモン吸収を有する材料とすることができ、プラズモン吸収を利用した色材やセンサー等に応用できる。金属粒子の径や濃度によっては、導電材料としても利用可能である。また、フォトリソグラフィやUVナノインプリント技術等の光硬化を利用した微細加工技術と組み合わせれば、微細配線やメタマテリアルを作製するための原料としても有用である。
対カチオンとして金属イオンを含む本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、ラジカル硬化性のMOD(Metal Organic Decomposition)材料として使用できる。従来のMOD材料は、非重合性の、有機溶媒可溶性の長鎖カルボン酸金属塩又は有機溶媒可溶性の金属アルコキシドからなる塗膜形成性の組成物であって、基板上に塗布、乾燥することによって得られた塗膜を、高温で有機物を分解して金属又は金属酸化物の膜(以下、単に金属薄膜と表現する場合もある)とし、更に高温で焼成して緻密化・結晶化された金属薄膜を得るための材料である。しかし、従来のMOD材料を用いて微細加工された金属薄膜を得るには、金属薄膜形成後にポジ型レジスト等を用いて金属薄膜をエッチングするか、電子線のような高出力のエネルギー線を乾燥塗膜に照射して照射部分のみを焼成・結晶化させる等の煩雑な工程や高価な装置が必要である。本発明におけるジエン系カルボン酸金属塩は高いラジカル硬化性を有するため、フォトマスクとUV光による製版プロセス(フォトリソグラフィ)や、紫外線硬化型ナノインプリント、可視光レーザーや赤外レーザー等の安価なエネルギー線による直接描画、熱硬化型ナノインプリント等、より簡便な製版プロセスを採用することができる。
目的とする金属薄膜の組成に応じて好ましい金属は変わるが、半導体チップ、超伝導材料、磁性材料、メモリ、コンデンサ、圧電体に好ましい金属種が特に好ましく挙げられる。具体的には、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル等が挙げられる。また、ジエン系カルボン酸塩と従来の製膜性の非重合性金属塩とを混合して複合塩化する形態でも、ジエン系カルボン酸塩と従来の非製膜性の重合性金属塩とを混合して複合塩化する形態でも、高いラジカル硬化性と製膜性を両立することができ、MOD材料として好適に使用できる。
ジエン系カルボン酸金属塩において、金属としてアルカリ金属やアルカリ土類金属を用いた場合、有機溶媒や水に可溶、又は膨潤する重合体を得ることが可能であり、そのような重合体は分散剤や吸水性樹脂、リチウムイオン電池等のイオン2次電池用材料等に使用することができる。また、後述するように、ジエン系カルボン酸アルカリ金属塩、中でもナトリウム塩及びカリウム塩は、ナトリウム塩及びカリウム塩以外の金属塩を製造する際の中間原料としても有用である。
上記のように、本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、組み合わせる対カチオンの種類によって様々な異なる特性を発揮することになり、対カチオンとなる金属原子や非金属原子又はこれらからなる原子団として好ましいものは、ジエン系カルボン酸塩の用いられる用途によって異なることになる。また、本発明におけるジエン系カルボン酸以外の陰イオンを複合させることにより、本発明におけるジエン系カルボン酸の特性を残しながら、用途に応じて諸性能を調整することも可能である。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、このように様々な金属原子や非金属原子又はこれらからなる原子団と組み合わせることができ、様々な用途に好適に用いることができるジエン系カルボン酸塩を形成することができる陰イオンである点に、大きな技術的意義を有している。
(4)ジエン系カルボン酸塩の具体例を挙げて説明する。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、上述のように、単一の配位構造を指す概念ではなく、同一の化学式で表される塩であれば、複数の異なる配位構造を含む概念である。すなわち、同一の化学式であれば、異なる配位構造のもの(単一の配位構造からなっていても、複数の配位構造の混合物であっても)を、同一のものとして扱う概念である。
ジエン系カルボン酸塩の化学式を一般化すると、下記一般式(6)のように表される。
Figure 0006133652
式中、A,A,A・・・は、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンであって、互いに異なる種類のものを表し、a1,a2,a3・・・は1以上の整数を表す。X,X,X・・・は、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン(陰イオン性配位子)であって、互いに異なる種類のものを表し、b1,b2,b3・・・は0以上の整数を表す。L,L,L・・・は、電子供与性の中性分子型配位子であって、互いに異なる種類のものを表し、c1,c2,c3・・・は0以上の整数を表す。M,M,M・・・は、原子、又は原子団で構成される対カチオンであって、互いに異なる種類のものを表し、d1,d2,d3・・・は1以上の整数を表す。a1,a2,a3・・・、b1,b2,b3・・・、c1,c2,c3・・・、d1,d2,d3・・・は、最も小さい整数比で表される。
以下に、いくつかの具体例を挙げ、本発明におけるジエン系カルボン酸塩を化学式により説明するが、あくまでジエン系カルボン酸塩の概念の説明を目的としたものであり、好ましい例を全て挙げたものでもなく、これら具体例に限定されたりするものでもない。
まず、簡便のため、ジエン系カルボン酸陰イオンとしては、α−アリルオキシメチルアクリル酸陰イオン(AMAイオン)のみを含む場合のみを列挙するが、他のジエン系カルボン酸陰イオンを含む場合、又は、複数種のジエン系カルボン酸陰イオンを含む場合を否定するものではない。
最初に、最も単純な例として、AMAイオンと1種類の対カチオンのみとからなる例を次に示す。なお、AMAイオンは「AMA」と表す。(CHNはテトラメチルアンモニウムイオン、(Ph)Pはテトラフェニルホスホニウムイオンを表す。また、各イオンの正負及び価数は省略する。
Li(AMA),Na(AMA),K(AMA),(CHN(AMA),(Ph)P(AMA),Mg(AMA),Ca(AMA),Sr(AMA),Ba(AMA),Y(AMA),La(AMA),Ti(AMA),Zr(AMA),Cr(AMA),Mn(AMA),Fe(AMA),Co(AMA),Ni(AMA),Cu(AMA),Ag(AMA),Zn(AMA),Al(AMA),In(AMA),Bi(AMA)
陰イオンとして、AMAイオン以外に、酸化物陰イオンと複合している例を次に示す。
Zr(O)(AMA),V(O)(AMA)
これらは、AMAイオンと、金属元素及び非金属元素からなる原子団である対カチオンとの塩と表すこともできる。すなわち、Zr(O)(AMA)はAMAイオンとZrOイオンとの塩ZrO(AMA)、V(O)(AMA)はAMAイオンとVOイオンとの塩VO(AMA)と表すこともできる。
陰イオンとして、AMAイオン以外に、カルボン酸陰イオンと複合している例を次に示す。なお、Acは酢酸陰イオン、AAはアクリル酸陰イオン、MAAはメタクリル酸陰イオンを表す。
Ca(AMA)(Ac),Ba(AMA)(AA),Zr(AMA)(MAA),Zn(AMA)(AA),In(AMA)(MAA)
陰イオンとして、AMAイオン以外に、炭素陰イオンと複合している例を示す。なお、n−Cは、n−ブチル陰イオンを表す。
(n−CSn(AMA),(n−CPb(AMA)
これらは、AMAイオンと(n−CSnイオンとの塩、AMAイオンと(n−CPbイオンとの塩と解釈してもよい。
陰イオンとして、AMAイオン以外に、酸化物陰イオン、炭素陰イオンと複合している例を示す。
(CHSn(O)(AMA)
これらは、AMAイオンと(CHSn−O−Sn(CHイオンとの塩と解釈してもよい。
対カチオンとして、複数の種類が複合している例を次に示す。
(La)(Cu)(AMA),((CNH)(Ag)(AMA)
カルボン酸以外の陰イオン性配位子が含まれる例として、水酸化物イオン、又はアルコキシドイオン,ハロゲンイオンが含まれる例を示す。
(Ph)Sn(OH)(AMA),(n−CO)Ti(AMA),Y(Cl)(AMA)
中性分子型配位子が含まれる例として、水、メタノール、2,2′−ビピリジンが配位している例を示す。なお、2,2′−ビピリジンはbpyと表す。
(HO)Zn(AMA),(HO)(CHOH)Zn(AMA),(bpy)Sm(AMA)
なお、水、メタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のような溶媒として一般的に使用し得るものは、塩中に中性分子型配位子として含まれているのか、単に塩と残存溶媒との混合物であるのかを区別することは、困難な場合が多い。
このように、本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、ジエン系カルボン酸陰イオンを表す化学式と、それ以外の陰イオン及び中性分子型配位子を表す化学式、及び対カチオンを表す化学式から表される。
上記具体例のジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン、中性分子型配位子、及び対カチオンは、あくまで一部の例であって、これらに限定されるわけではなく、例えば、上記非特許文献3〜5に記載されているものを適用できる。
(5)ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法を説明する。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法としては、(i)ジエン系カルボン酸又はジエン系カルボン酸の無水物を、塩基性物質又は潜在的塩基性物質と反応させる方法、(ii)ジエン系カルボン酸エステル又はジエン系カルボン酸ニトリルを、塩基性物質又は潜在的塩基性物質で加水分解して、ジエン系カルボン酸塩とした後、必要に応じて更に別のカチオンに交換する方法、の大きく2つに分けられる。
方法(i)は、1種の中和反応であり、直接法とも言われる。方法(ii)は、場合によっては2段階となることを意味するが、特に2段階目のカチオンを別のカチオンに交換するプロセスのことを、複分解法と言うこともある。これらの方法を電解質液中で行えば、電離した状態のジエン系カルボン酸陰イオンを得ることができる。また、これらの方法を非電解質液中で行ったり、電解質液中で行った後に溶媒除去、溶媒交換、抽出等の操作を行うことにより、ジエン系カルボン酸塩の状態とすることもできる。
なお、上記塩基性物質又は潜在的塩基性物質は、水と反応させることで(加熱してもよい)水酸化物イオンを発生しうる物質であり、アンモニア、アミン類等の有機塩基や、種々の金属単体、金属酸化物、金属水酸化物や金属アルコキシド等が挙げられる(以下、単に塩基と表現することもある)。
したがって、ジエン系カルボン酸陰イオンを得るには、ジエン系カルボン酸、ジエン系カルボン酸の無水物、ジエン系カルボン酸エステル、ジエン系カルボン酸ニトリルのいずれかを原料とすることになる。
ところが、図5に示すジエン系アシル基構造は、アクリル酸エステル又はアクリロニトリルのα位を変換する方法以外の方法で得ることは、工業的に不利である。すなわち、図6に示すように、工業的には、まず、アクリル酸エステル又はアクリロニトリルを原料として、ジエン系カルボン酸エステル又はジエン系カルボン酸ニトリルに変換してから、塩基による加水分解によりジエン系カルボン塩、又は、酸による加水分解によりジエン系カルボン酸とする。更に別のカチオンの塩にする場合には、直接法又は複分解法を用いることになる。なお、ジエン系カルボン酸エステル又はジエン系カルボン酸ニトリルの加水分解は、副反応が起こりにくい点や反応装置の腐食が起こりにくい点で塩基による加水分解の方がより好ましい。微量のアルカリ金属の混入を嫌う場合は、耐腐食性の反応装置を用いて酸により加水分解する方が好ましい場合もある。
すなわち、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法であって、1,6−ジエン−2−カルボン酸エステル又はニトリルを、塩基性物質又は潜在的塩基性物質により加水分解、又は、酸により加水分解する工程を含むジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法は、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法の好ましい実施形態の1つである。
以下に、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の工業的に有利な製造方法を詳述するにあたり、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の代表例として、α−アリルオキシメチルアクリル酸陰イオン(AMAイオン)及びその塩(AMA塩)をとりあげる。そして、まず、α−アリルオキシメチルアクリル酸エステル(AMAエステル)又はα−アリルオキシメチルアクリル酸ニトリル(AMAニトリル)を、塩基による加水分解により、AMAイオン及びAMA塩を製造する方法を詳述する。次に、塩基による加水分解より得られたAMA塩を、別のカチオンの塩に変換する複分解法について詳述する。更に、塩基による加水分解より得られたAMA塩を、α−アリルオキシメチルアクリル酸(AMAカルボン酸)に変換し、引き続いて直接法により別のカチオンの塩を製造する方法を詳述するが、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法としては、これらに限定されるものではない。
まず、AMAエステル又はAMAニトリルを、塩基による加水分解により、AMAイオン及びAMA塩を製造する方法について記述する。
この方法は、塩基性物質又は潜在的塩基性物質を、好ましくは水の存在下で、AMAエステル又はAMAニトリルと攪拌することにより、反応を進行させる方法である。
生体に対する安全性の点で、原料としては、AMAエステルがより好ましい。
AMAエステルとしては、加水分解のし易さから低級エステルが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、グリシジル、テトラヒドロフルフリル等の炭素数が1〜5のエステルが好ましい。
塩基性物質又は潜在的塩基性物質としては、入手性と反応性の点で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。大抵のAMAエステルは、アルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物又はその水溶液と分離するため、反応初期は懸濁状態だが、反応が進行するとともに乳化していき、最終的には均一透明な液となる場合が多く、反応の進行を確認し易い。
アルカリ金属・アルカリ土類金属としては、入手性、反応の進行のし易さの点で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
これらアルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物を水溶液として使用する場合、その濃度は、AMAエステルの種類や反応温度等に応じて適宜選択すればよいが、0.1〜60質量%が好ましく、1〜50%が更に好ましく、最も好ましくは3〜40質量%である。
反応温度としては、水酸化アルカリの濃度やAMAエステルの種類に応じて適宜選択すればよいが、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
次に、複分解法により製造する方法を記述する。
この方法は、カチオンM からなるAMA塩(「AMAのM塩」と表現する)と、カチオンM からなる原料塩(単に「原料M塩」と表現する)とを、両者を溶解する溶媒中で、場合によっては触媒存在下で混合してカチオンを交換し、カチオンM からなるAMA塩(「AMAのM塩」と表現する)を製造する方法である。
溶媒としては、AMAのM塩と原料M塩との両方を一部でも溶解できるものであればよいが、水、アルコール類が好ましく、水が最も好ましい。
AMAのM塩としては、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、入手性、反応の進行のし易さの点で、特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
原料M塩としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属の塩、又はアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましいが、Mとしてナトリウム又はカリウムを用いる場合、Mとしてナトリウム又はカリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いることもできる。原料M塩としては、溶媒に可溶な各種酸との塩を用いることができ、特に水溶性塩が好ましい。そのような塩としては、目的の金属に応じて適宜選択すればよいが、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、酢酸塩等が挙げられ、入手性、水溶性、安定性、金属交換のし易さの等から、特に硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩(金属塩化物)が好ましい。
反応温度としては、各カチオン(M 、M )の種類に応じて適宜選択すればよいが、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
目的のAMAのM塩は、特に操作をしなくても分離する場合もあるし、適切な有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム等)で抽出、分離してもよい。
更に、塩基による加水分解より得られたAMA塩をα−アリルオキシメチルアクリル酸(AMAカルボン酸)に変換し、引き続いて直接法により別のカチオンの塩を製造する方法を記述する。
このプロセスは、AMAカルボン酸を得る工程(前段工程)と、それに引き続いて行う直接法により別のカチオンの塩とする工程(後段工程)に分けられる。
前段工程は、水の存在下、AMA塩を酸(好ましくは強酸)で処理する工程であり、AMA塩の水溶液と強酸を混合するのが簡便で、最も好ましい。酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、有機スルホン酸(p−トルエンスルホン酸等)、トリフルオロ酢酸、リン酸や、酸性イオン交換樹脂(特にスルホン酸型のものが好ましい)が、好ましく挙げられる。
反応温度としては、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
必要に応じて、後段工程の前にAMAカルボン酸を単離・精製してもよい。単離・精製方法としては、特に限定されないが、例えば、適切な有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム等)で抽出、分離する方法が挙げられる。
後段工程は、一種の中和反応であり、前段工程で得られたAMAカルボン酸と、目的のカチオンに応じた塩基とを混合すればよい。反応温度としては、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
直接法は、目的とするAMA塩が加水分解性で水溶液中での合成が困難であったり、AMA塩が水溶性で抽出が困難である場合や、原料となる塩基(例えば、金属水酸化物、アミン、ホスフィン等)が容易に入手できる場合に、特に有効である。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、ジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオンや中性分子型配位子を含むことができる。このような塩は、例えば、上記の塩基による加水分解や複分解法、直接法により容易に得ることができる。他のカルボン酸陰イオンを含む塩を得るには、例えば、塩基や酸による加水分解工程において、他のカルボン酸エステル又はカルボン酸ニトリルを共存させればよく、また複分解法において、AMAのM塩とともに他のカルボン酸のM塩を共存させればよい。また、直接法において、他のカルボン酸を共存させてもよい。他の陰イオンX(例えば硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲンイオン等)を含む塩を得る場合には、例えば、複分解法において、M塩として陰イオンXと多価のMイオンとの塩(例えば2価の塩M(X))を用い、使用するAMAのM塩の量(つまりAMAイオンの量)を、Mの価数の当量未満とすればよい。中性分子型配位子を配位させるには、目的の中性分子型配位子を反応液中に共存させればよく、例えば、上記加水分解法又は複分解法や直接法において、目的の中性分子型配位子を溶媒として用いたり、反応液中に添加したりすればよい。
また、ジエン系カルボン酸塩を得る方法として、2種以上の塩を混合する方法も好ましく、特に複合タイプの塩が簡便に得られる。例えば、アクリル酸のM塩とAMAのM塩を混合するだけで、混合比率に応じたアクリル酸−AMAカルボン酸の複合M塩を得ることができる。同様に、AMAのM塩とAMAのM塩を混ぜればAMAカルボン酸のM−M複合塩が得られる。
<本発明の水系組成物>
本発明は、上記一般式(1)で表されるジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物である。
上記ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩については、上述のとおりである。
水系組成物中のジエン系カルボン酸陰イオンの総量は、水系組成物の総量100質量%に対して、製膜性の点から、好ましくは0.001〜70質量%、より好ましくは0.01〜50質量%である。
上記水系組成物中の水としては、水である限り特に限定されない。上記ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩を合成する際に用いた原料に含まれる水であっても、得られたジエン系カルボン酸陰イオンの塩に添加した水であっても、当該組成物中に水を存在させる限り、特に限定されない。
水系組成物中の水の含有量は、水系組成物の総量100質量%に対して、塗布性の点から、好ましくは5〜99質量%、より好ましくは10〜95質量%である。
後述のように、水系組成物は各種添加剤を含んでいてもよいが、当該添加剤として有機溶剤を用いた場合、溶媒の総量(つまり水と有機溶剤の合計量)100質量%に対して、環境負荷の点から、水含有量は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
水系組成物中の固形分(不揮発分)としては、塗布性の点から、好ましくは1〜95質量%、より好ましくは5〜90質量%である。
また、本発明の水系組成物は、上記ジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を必須成分として含む以外に、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。
このような添加剤としては、特に限定されないが、硬化促進剤、安定剤、レベリング剤、反応性希釈剤、単官能又は多官能性の重合性単量体、有機溶剤、有機又は無機微粒子、バインダー樹脂、フィラー、色材、分散剤等が挙げられる。中でも、ラジカル開始剤、ドライヤー等の硬化促進剤は、本発明の水系組成物の性能をより引き出すことができるため、添加することが好ましい成分である。
本発明の水系組成物の好ましい形態としては、更に、ラジカル開始剤及び/又はドライヤーを含む形態が挙げられる。
以下に(A)ラジカル開始剤、(B)ドライヤー、(C)その他添加剤に分けて説明する。
(A)ラジカル開始剤
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩は、加熱及び/又は電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル重合を開始し、重合・硬化させることができるが、ラジカル開始剤を併用することにより、より効果的に硬化させることができる。
上記ラジカル開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル開始剤と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤とがあり、通常ラジカル開始剤として用いられるものを1種又は2種以上使用できる。
また、必要に応じて、通常用いられるラジカル重合促進剤、光増感剤等を1種又は2種以上添加することも好ましい。
上記熱ラジカル開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤が好適であり、具体的には、例えば、下記のもの等が挙げられる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤。
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤。
上記熱ラジカル開始剤とともに使用できるラジカル重合促進剤としては、上記熱ラジカル開始剤の分解(開始ラジカルの発生)を促進するものであればよく、通常用いられるものを使用でき、特に限定されるものではない。例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム、セリウム、サマリウム等の金属の有機塩、無機塩、酸化物、又は金属錯体;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。また、本発明におけるジエン系カルボン酸塩そのものが、このようなラジカル重合促進剤ともなり得る。
上記光ラジカル開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロメチル化トリアジン系化合物、ハロメチル化オキサジアゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、安息香酸エステル系化合物、アクリジン系化合物等が好適であり、具体的には、例えば、下記するもの等が挙げられる。
2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6”−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕−1,2−オクタンジオン、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)エタノン等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物。
上記光ラジカル開始剤とともに、光増感剤やラジカル重合促進剤を使用することにより、感度や硬化性を向上することができる。このような光増感剤やラジカル重合促進剤としては、通常用いられるものを使用することができ、特に限定されるものではない。色素系化合物、ジアルキルアミノベンゼン系化合物、メルカプタン系水素供与体等が好適であり、例えば、キサンテン色素、クマリン色素、3−ケトクマリン系化合物、ピロメテン色素等の色素系化合物;4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のジアルキルアミノベンゼン系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のメルカプタン系水素供与体等が挙げられる。
上記ラジカル開始剤を添加する場合、その添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重合・硬化性、分解物の悪影響、経済性のバランスの点から、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0.01〜30質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%である。
上記ラジカル重合促進剤、光増感剤を添加する場合、その添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重合・硬化性、経済性のバランス等から、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0.001〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
(B)ドライヤー
ドライヤーは、過酸化物の分解促進作用を有する化合物、すなわち、レドックス作用により過酸化物を分解して酸化物ラジカル、又は過酸化物ラジカルを発生させる化合物であり、通常ドライヤーとして用いられるものを1種又は2種以上使用できる。
このようなドライヤーとしては、特に限定されないが、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム、セリウム、サマリウム等の金属の有機塩、無機塩、酸化物、又は金属錯体;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸バナジウム、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。また、ジエン系カルボン酸塩そのものが、このようなドライヤーともなり得る。
上記ドライヤーを添加する場合、その添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性、経済性のバランス等から、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0.001〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
(C)その他添加剤
上記(A)ラジカル開始剤、(B)ドライヤー以外の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤、安定剤、レベリング剤、反応性希釈剤、単官能又は多官能性の重合性単量体、有機溶剤、有機又は無機微粒子、バインダー樹脂、フィラー、色材(顔料、染料)、分散剤、密着性向上剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、艶消し剤、消泡剤、帯電防止剤、スリップ剤、表面改質剤、酸発生剤等が挙げられる。以下に主だったものについて説明する。
<ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤>
ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤としては、多官能チオールが挙げられる。多官能チオールは、ラジカル硬化において多官能性連鎖移動剤として作用でき、また、本発明におけるジエン系カルボン酸塩がα−(メタ)アリルオキシメチルカルボン酸塩である場合、(メタ)アリルエーテル基とのエン−チオール反応機構に基づく架橋剤としても作用できるため、本発明におけるジエン系カルボン酸塩の硬化性を向上することができる。このような多官能チオールとしては、メルカプト基を同一分子内に2個以上有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤の添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0〜150質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0〜100質量%、更に好ましくは0〜80質量%である。
上記ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
<安定剤>
安定剤は、取扱い性や貯蔵安定性を向上するために、ラジカル重合や酸化重合を防止する機能を持つ化合物であり、通常用いられる重合禁止剤、酸化防止剤を1種又は2種以上使用でき、特に限定されるものではない。
このような化合物としては、例えば、フェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、ホスフィン類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体等を挙げることができる。これらの中では、着色や相溶性等の点でフェノール系化合物が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。また、これらフェノール系化合物と、ホスファイト類やチオエーテル類に代表されるいわゆる2次酸化防止剤に分類される安定剤とを併用すると、より重合防止性や着色防止性が高まり、更に好ましい。
上記安定剤を添加する場合、その添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性、経済性のバランス等から、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0.001〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。また、金属の種類、保存条件や、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の構造や使用条件によっては、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩は安定であり、上記安定剤の添加量を0質量%とすることもできる。
<レベリング剤>
水は表面張力が高い液媒体であるため、水を含む組成物を吸水性に乏しい素材に塗布するとはじきを生じやすい。水系組成物を紙や布等の吸水性の素材へ塗布する場合や、水系組成物を基材どうしで挟み込む場合は、水系組成物の表面張力が高くても使用可能だが、水系組成物を吸水性に乏しい素材の表面に塗布する場合は、素材表面を十分に濡らすことができる程度まで、水系組成物の表面張力を下げることが好ましい。そのため、水系組成物を吸水性に乏しい素材の表面に塗布する用途に使用する場合、レベリング剤、又は界面活性剤として分類される親油性部位と親水性部位とを有する化合物を更に含ませることが多い。
本発明の水系組成物は、組成物中に含む陰イオンやカチオンの種類、量によっては、レベリング剤を含まずとも十分に表面張力が低い場合もあるが、レベリング剤を添加して表面張力を低下させることが必要な場合もある。
このようなレベリング剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等、各種のイオン性又は非イオン性のものを挙げることができ、特にフッ素系、シリコーン誘導体が好ましい。
具体的には、例えば、MEGFAC F−110、同F−113、同F−114、同F−120、同F−812、同F−142D、同F−144D、同F−150、同F−171、同F−173、同F−177、同F−183、同F−195、同F−824、同F−833、同F−410、同F−493、同F−494、同F−443、同F−444、同F−445、同F−446、同F−470、同F−471、同F−474、同F−475、同F−477、同F−478、同F−479、同F−480SF、同F−482、同F−483、同F−484、同F−486、同F−487、同F−489、同F−172D、同F−178K、同F−178RM、同R−08、同R−30、同F−472SF、同BL−20,同R−61,同R−90、同ESM−1、同MCF−350SF(以上、DIC社製);フタージェント100、同100C、同110、同150、同150CH、同A、同100A−K、同501、同300、同310、同320、同400SW、同251、同215M、同212MH、同250、同222F、同212D、同245F、FTX−400P、同218、同209F、同213F、同233F、同208G、同240G、同206D、同220D、同230D、同240D、同207S、同211S、同220S、同230S、同750FM、同730FM、同730FL、同710FS、同710FM、同710FL、同750LL、同730LS、同730LM、同730LL、同710LL(以上、ネオス社製);BYK−300、同302、同306、同307、同310、同315、同320、同322、同323、同325、同330、同331、同333、同337、同340、同344、同370、同375、同377、同350、同352、同354、同355、同356、同358N、同361N、同357、同390、同392、同UV3500、同UV3510、同UV3570、同Silclean3700(以上、ビックケミー・ジャパン社製);TEGO Rad2100、同2200N、同2250、同2300、同2500、同2600、同2700(以上、テゴ社製)等が挙げられるが、かかる例示に限定されるものではない。
上記レベリング剤を添加する場合、その添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、レベリング性、密着性、経済性のバランス等から、本発明の水系組成物中に0.001〜5質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.005〜1質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。また、組成物中に含まれる陰イオンやカチオンの種類、量、又はその他の添加物によっては、レベリング剤を含まずとも十分に表面張力が低い場合もあり、上記レベリング剤の添加量を0質量%とすることもできる。
<反応性希釈剤、単官能又は多官能性の重合性単量体>
本発明の水系組成物は、目的や用途に応じて、単官能又は多官能性の重合性単量体(加熱又は活性エネルギー線の照射等により重合しうる重合性基を有する低分子化合物)を含んでいてもよい。このうち、特に特に常温で液状・低粘度のものは粘度調整機能も有するため反応性希釈剤に分類されることがある。重合性基としては、炭素−炭素不飽和結合のようなラジカル重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基のようなカチオン重合性基が挙げられ、これら重合性基を同一分子内に1つだけ(単官能性)、又は2つ以上(多官能性)を有していてもよい。2つ以上有する場合、同じ重合性基でも異なる2種以上でもよい。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、ラジカル重合性を有するため、同じ機構で硬化することができるラジカル重合性基を有する重合性単量体が、相乗効果を得られやすく好ましい。
単官能性のラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、下記するもの等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド等のN置換マレイミド類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類。
また、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンと同様の構造を有するカルボン酸又はエステルである場合、すなわち、下記一般式で表される化合物もまた反応性希釈剤として好適である。
Figure 0006133652
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。X、Y、Z、X及びYは、同一又は異なって、メチレン基、水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基を表す。ただし、X、Y及びZのうち、少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基であり、X及びYのうち、少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基である。R’は水素原子、又は1価の有機基を表す。
特に、R’が水素原子や、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニルオキシエチル、ベンジル、メトキシエチル、テトラヒドロフルフリル等の、炭素数が12以下の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素骨格を有する1価の有機基である場合、希釈性が非常に高く、好ましい。
多官能性のラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、下記するもの等を挙げることができる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類。
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類。
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類。
また、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンと同様の構造を有するエステルである場合、すなわち、下記一般式で表される化合物もまた反応性希釈剤として好適である。
Figure 0006133652
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。X、Y、Z、X及びYは、同一又は異なって、メチレン基、水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基を表す。ただし、X、Y及びZのうち、少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基であり、X及びYのうち、少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又は、イミノ基である。Zは2価以上の有機基、nは2以上の整数を表す。
上記重合性単量体の添加量総量としては、目的、用途に応じて、適宜設定すればよく、特に限定されないが、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0〜1500質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0〜1000質量%、更に好ましくは0〜800質量%である。
上記重合性単量体は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
<有機溶剤>
本発明の水系組成物は、水を液媒体として含むものであるが、目的や用途に応じて、有機溶剤を含んでいてもよい。当該有機溶剤としては、例えば、下記するもの等を挙げることができる。
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;トリエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ピリジン等のアミン類。
これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。
上記有機溶剤の添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、上記水系組成物における水の含有割合を満たす限り特に限定されないが、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0〜2000質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0〜1500質量%、更に好ましくは0〜1000質量%である。
上記有機溶剤は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合があり、0質量%であってもよい。
<有機又は無機微粒子>
本発明の水系組成物は、着色、UVカット、IRカット、高硬度化、ゴム弾性付与、耐擦傷性向上、高屈折率化、低屈折率化、抗菌性付与等、様々な機能を硬化物に付与する目的で、有機又は無機の微粒子を含むことができる。このような微粒子の粒子径としては、透明性を要する場合は100nm以下程度のサブミクロンオーダーが好ましく、隠ぺい性を要する場合は1〜100μm程度のミクロンオーダーが好ましく、適宜、目的、用途に応じて選択すればよい。当該粒子径の測定方法は、粒子の種類や粒子径に応じて適宜選択すればよい。例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて測定できる。
また、微粒子の種類は、付与、又は向上させたい機能に応じて適宜選択すればよく、例えば、着色したい場合は各種の有機顔料又は無機顔料、UVカットしたい場合は酸化亜鉛等のUV吸収性の無機微粒子、硬度や耐擦傷性を向上させたい場合はジルコニアやシリカ等の高硬度の無機微粒子、ゴム弾性を付与したい場合はポリマー微粒子、高屈折率化したい場合はチタニアやジルコニア等の高屈折率微粒子を用いることができる。
本発明の水系組成物においては微粒子が分散されている状態であることが好ましく、そのような状態を作る方法としては、例えば、ジエン系カルボン酸イオンと水と微粒子を含む状態で、好ましくは分散剤を加えて微粒子を破砕分散させる方法、別途用意しておいた微粒子分散液を微粒子を含まない本発明の水系組成物に混合する方法、ジエン系カルボン酸イオンと水と微粒子前駆体とを含む状態で、加水分解、還元等の方法により微粒子前駆体を微粒子化する方法等、微粒子分散液を調製する方法として知られている各種の方法を適用できる。
付与又は向上させたい機能が、例えば、透明性、硬度、及び耐擦傷性であって、微粒子を分散させる方法が別途用意しておいた微粒子分散液を微粒子を含まない本発明の水系組成物に混合する方法である場合、そのような別途用意しておく微粒子分散液としては、例えばコロイダルシリカが挙げられる。具体的には、例えば、ST−30、ST−O、ST−N、ST−C、ST−AK、ST−AK−A(以上、日産化学社製)等が挙げられる。
上記微粒子の添加量総量としては、目的、用途に応じて、上記機能性を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されないが、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0〜1000質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0〜500質量%、更に好ましくは0〜200質量%である。
上記微粒子は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、塗膜形成性付与/向上、型崩れ防止等の充填剤的な役割をするオリゴマー又はポリマーであり、目的や用途に応じて、更に、アルカリ現像性、色材分散性、耐熱性、密着性等、様々な機能を付与する。このようなバインダー樹脂としては、様々なオリゴマー又はポリマーを1種又は2種以上使用でき、特に限定されるものではない。
上記バインダー樹脂の主鎖骨格としては、(メタ)アクリル系樹脂骨格;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリ(p−メチルスチレン)等のスチレン系樹脂骨格;ポリカーボネート系骨格;ポリアリレート系骨格;ポリエーテルスルホン系骨格;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン等のポリオレフィン系樹脂骨格;ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂骨格;塩化ビニル樹脂、塩素化ビニル樹脂等のハロゲン含有樹脂骨格;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のポリエステル系樹脂骨格;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド系骨格;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂骨格;ポリアセタール系樹脂骨格;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂骨格;ポリフェニレンオキシド系骨格;ポリフェニレンスルフィド系骨格;ポリエーテルエーテルケトン系骨格;ポリエーテルニトリル系骨格;ポリサルホン系骨格;ポリエーテルサルホン系骨格;ポリオキシベンジレン系骨格;ポリアミドイミド系骨格;シリコーン系樹脂骨格;ポリウレタン系骨格等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、重合性基をその末端、及び/又は側鎖に有している形態も好ましいバインダー樹脂の形態の一つであり、このような重合性基としては上記の重合性基が挙げられるが、ラジカル重合性基がジエン系カルボン酸陰イオンとの相乗効果を得やすく好ましい。重合性基は、通常、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、アミド結合等を介して主鎖骨格と結合している。
上記バインダー樹脂の添加量総量としては、目的、用途に応じて、上記機能性を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されないが、ジエン系カルボン酸陰イオン又はその塩100質量%に対して0〜1000質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0〜800質量%、更に好ましくは0〜500質量%である。
上記バインダー樹脂は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
本発明の水系組成物は、上記のように、吸水性に乏しい素材の表面に塗布する場合にも適用し易くするために、素材表面を十分に濡らすことができる程度まで水系組成物の表面張力を下げることが、より好ましい。具体的には、本発明の水系組成物の表面張力が、55mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは50mN/m以下、更に好ましくは45mN/m以下である。また、表面張力の下限は特に限定されないが、0.1mN/m以上であることが好ましく、1mN/m以上であることがより好ましい。
すなわち、上記ジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物であって、その表面張力が55mN/m以下である水系組成物は、本発明の好ましい形態の1つである。
表面張力には、静的表面張力と動的表面張力とがある。静的表面張力の測定方法としては、プレート法、リング法、懸滴法が知られており、動的表面張力の測定方法としては最大泡圧法が知られている。測定対象の状態(温度、粘度、均一系か不均一系か、等)に応じて測定方法を選択すればよいが、プレート法、懸滴法、最大泡圧法が好ましい。測定する際の試料温度としては、室温である20℃を基準とするのが好ましい。すなわち、表面張力の値としては、プレート法、懸滴法、最大泡圧法のいずれかで測定された20℃での値であることが好ましく、より好ましくはプレート法又は最大泡圧法で測定された20℃での値である。測定の簡便性の点で、最大泡圧法が更に好ましい。
本明細書においては、表面張力は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
<本発明の水系組成物の重合・硬化方法>
本発明は、上記水系組成物を重合・硬化させる重合・硬化方法でもある。上述のように、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩は、ラジカル重合機構及び/又は酸化重合機構が可能であるため、加熱、活性エネルギー線の照射、酸素を含む雰囲気下への曝露、の3通りの方法で硬化させることができる。またこれらの方法のうち、1種類だけを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような硬化は、水をはじめ揮発成分(有機溶剤等)を含んだ状態で行ってもよく、本発明の水系組成物を塗布・乾燥して、水をはじめ揮発成分をほとんど含まない状態としてから行ってもよく、目的、用途に応じて使い分ければよい。
上記加熱による重合・硬化方法における加熱条件、すなわち重合・硬化温度は、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の種類、他の添加成分の組み合わせ等に応じて適宜選択すればよいが、硬化促進剤を併用しない場合には、30〜400℃が好ましく、より好ましくは70〜350℃、更に好ましくは100〜350℃である。このような温度とすることにより、硬化促進剤なしで容易に硬化させることができ、また過剰な加熱による熱分解を低減できる。
硬化促進剤を併用する場合には、併用しない場合よりも低い温度で硬化させることができ、0〜400℃が好ましく、より好ましくは10〜350℃、更に好ましくは20〜350℃である。
加熱による硬化は、1段階で行ってもよく、2段階以上に分けて行ってもよく、また活性エネルギー線の照射及び/又は酸素を含む雰囲気下への曝露による硬化の前に行っても、後に行ってもよい。例えば、低温での加熱や、短時間の活性エネルギー線照射等により、一旦ある程度架橋させてから現像等の処理を行った後に、好ましくは、150℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上の高温で硬化させる工程は、ポストベーク又はポストキュアとも呼ばれ、より架橋反応を進行させることができ、好ましい。
上記活性エネルギー線の照射による重合・硬化方法における活性エネルギー線としては、通常用いられるものを使用することができ、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線等の電磁波や、電子線、中性子線、陽子線等の粒子線等が挙げられる。これらの中では、エネルギーの強さ、エネルギー線の発生装置等の点から、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、電子線が好ましく、紫外線、可視光線、電子線がより好ましく、紫外線が最も好ましい。硬化促進剤を併用しない場合には、ガンマ線、X線、電子線等のエネルギーの強い活性エネルギー線を用いるのが好ましく、硬化促進剤を併用する場合には、紫外線、可視光線等の、エネルギーは比較的弱いが発生が容易で経済的な活性エネルギー線を好ましく用いることができる。
上記酸素を含む雰囲気下への曝露による硬化方法における、雰囲気中の酸素濃度としては、5容量%以上が好ましく、より好ましくは10容量%以上、最も好ましくは18容量%以上である。すなわち、空気中の酸素濃度と同等以上の濃度であることが最も好ましい。また、酸素を含む雰囲気下への曝露による硬化方法は、上記加熱による重合・硬化方法及び/又は活性エネルギー線の照射による重合・硬化方法と併用してもよい。特に、空気中で加熱、及び/又は活性エネルギー線の照射を行う重合・硬化方法は、簡易に併用できる重合・硬化方法として好ましい硬化方法である。
<本発明の水系組成物の重合・硬化物>
本発明は、上記水系組成物を、上記重合・硬化方法により重合・硬化させて得られる重合・硬化物でもある。本発明の重合・硬化物は、その重合・硬化物中に多くのイオン結合が導入され、特にジエン系カルボン酸塩が金属塩である場合、金属も導入されることになる。これらイオン結合及び/又は金属に応じた諸特性が発揮されることになるが、そのような諸特性としては、例えば、耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止等、様々な諸特性が挙げられ、このような諸特性を利用した様々な応用方法に適用できることになる。更に、MOD材料としても好適に用いることができる。
本発明によれば、製膜性と重合性に優れる水系組成物と、その重合・硬化方法が提供される。また、該重合・硬化方法により得られる重合・硬化物、すなわち、その重合・硬化物中にイオン結合、場合によっては金属も導入され、これらイオン結合及び/又は金属に応じた諸特性(例えば、耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止等)が発揮される重合・硬化物が提供される。
したがって、本発明の水系組成物、及び、その重合・硬化物は、コーティング材、アイオノマー樹脂、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、顔料分散、反応性乳化剤、反応性界面活性剤、金属/金属酸化物微粒子の分散、インク、レジスト、MOD材料、成型材料、ガスバリア材料、水蒸気バリア材料、酸素吸収材料、レンズ、歯科材料、抗菌剤、ゴム、タイヤ、照明、太陽電池、配線材料、電極材料、めっきアンダーコート、光ファイバー、光導波路、超伝導材料、半導体チップ、磁性材料、メモリ、コンデンサ、圧電体にいたるまで、情報技術(IT)分野や自動車、建築、医療、日用品等の種々の分野において幅広く応用できる。
(RCOO)Mと表される塩の複数の配位構造を示す図である。 アルコキシドイオン(RO)とチタンからなるチタンテトラアルコキシドを示す図である。 ジエン系カルボン酸陰イオンの重合機構を示す図である。 多官能性のアルキルアリルエーテル化合物の酸素硬化機構を示す図である。 ジエン系アシル基構造を示す図である。 ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法の1例を示す図である。 α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルのH−NMRスペクトルと帰属を示すグラフである。 α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルのIRスペクトルと帰属を示すグラフである。 Zn(AMA)H−NMRスペクトルと帰属を示すグラフである。 Zn(AMA)のIRスペクトルと帰属を示すグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<化合物の合成、及びその水溶液の調製>
以下に、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンを含む水溶液の合成、及び分析について説明する。なお、分析に用いた機器、及び条件は次の通りである。
[HPLC分析]
下記高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置、及び条件にて行った。
この装置及び条件により、α−アリルオキシメチルアクリル酸エステル、α−アリルオキシメチルアクリル酸の検出ができる。α−アリルオキシメチルアクリル酸イオンは、溶出溶媒に含まれるリン酸の作用によりα−アリルオキシメチルアクリル酸の形で検出される。
HPLC装置:DGU−20A5、LC−20AD、SIL−20A、SPD−20A、CTO−20A(いずれも島津製作所社製)の組み合わせ
希釈溶媒:アセトニトリル/メタノール=2/1(質量比)
溶出溶媒:0.1mol%リン酸水溶液/アセトニトリル/メタノール混合溶媒
分離カラム:CAPCELL PACK C18 TYPE:AQ (資生堂社製)
H−NMRスペクトル測定]
核磁気共鳴装置(400MHz/Varian社製)を用いた。
[IR透過スペクトル測定]
赤外分光装置(装置名:NEXUS−670/サーモニコレー社製)を用いた。
[ICP発光分析]
ICP発光分光分析装置(装置名:CIROS120/SPECTRO社製)を用いた。
[不揮発分]
約0.4gの試料をアルミカップに秤量し、室温で30分風乾した後、真空乾燥器で80℃、30分間乾燥した。乾燥後の質量を秤量し、試料の残存質量から不揮発分を計算した。
[表面張力]
最大泡圧法型の表面張力計SITA science line t60(SITA Messtechnik GmbH社製)を用い、20℃、0.5Hzにおける表面張力[mN/m]を測定した。
[合成・調製例1−1]
α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル:Me−AMAの合成
合成は、国際公開第2011/148903号の実施例28の通りに行った。
得られた無色透明の液体を重ジメチルスルホキシド(d−DMSO)に溶解し、H−NMRスペクトル測定を行った。得られたNMRスペクトルと帰属を図7−1に示す。また、臭化カリウム(KBr)板を用いた液膜法によりIR透過スペクトル測定を行ったところ、カルボン酸陰イオンに帰属される吸収帯は存在せず、カルボン酸又はカルボン酸エステルのC=O伸縮振動に帰属される吸収帯が存在し、該吸収帯の吸収が最大値となる波数(以下、ν(C=O)と表記する)は1720cm−1であった。得られたIRスペクトルと帰属を図7−2に示す。
[合成・調製例1−2]
アクリル酸イオン(AA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製
攪拌子を入れた反応器に、アクリル酸亜鉛(アルドリッチ社製、以下Zn(AA)と表する)30.0部及び蒸留水70.0部を加え、反応器を30〜35℃の温浴で温めながら30分攪拌した。その後、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、無色透明な液体として、Zn(AA)の水溶液、すなわちアクリル酸イオン(AA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を2:1(モル比)で含む水溶液95.0部を得た。不揮発分は30.6%であった。
[合成・調製例1−3]
アクリル酸イオン(AA)、亜鉛イオン(Zn2+)、アクリル酸を含む水溶液の調製
合成・調製例1−2で得たZn(AA)水溶液2.0部に、アクリル酸(AA)0.106部を添加しよく振り混ぜ、透明均一な溶液とした。
これは、AA、Zn2+、AAをモル比4:2:1で含む水溶液であり、AAの80%がZn2+で中和された水系組成物に等しい。
なお、添加したAAを不揮発成分と仮定して、この水溶液の不揮発分を34.1%と算出した。
[合成・調製例1−4]
α−アリルオキシメチルアクリル酸:H−AMAの合成
反応槽として、500ml容の4口セパラブルフラスコに温度計、撹拌装置、滴下漏斗を取り付けたものを準備した。反応槽に10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液150.0部とMe−AMA55.8部を仕込み、水浴で冷却しながら攪拌を開始した。1時間後、Me−AMAの消失をHPLC分析で確認してから、水浴を氷浴に変えた。30質量%硫酸64.2部を滴下漏斗に仕込み、攪拌を続けながら30分かけて滴下した。さらにn−ヘキサン100部を反応槽に入れ攪拌した後、析出した硫酸ナトリウムを300メッシュステンレス製金網により濾過して除去した。分液漏斗により分離した有機層に0.013部の6−t−ブチル−2,4−キシレノールを加え、イオン交換水で有機層を洗浄した。洗浄後、分離した有機層からエバポレーターを用いて大半のn−ヘキサンを留去した後、孔径0.2μmのPTFE製メンブランフィルターと吸引濾過器を使用して析出物を濾過した。真空ポンプを用いて濾液からn−ヘキサンを完全に除去し、α−アリルオキシメチルアクリル酸(H−AMA)40部を得た。
[実施例1−1]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)及びナトリウムイオン(Na)を含む水溶液の調製
攪拌子を入れた反応器に10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液40.0部とMe−AMA15.0部を仕込み、水浴で冷却しながらマグネチックスターラーで攪拌した。Me−AMAが消失するまで攪拌を続け、AMA及びNaを1:1(モル比)で含む水溶液、すなわちα−アリルオキシメチルアクリル酸のナトリウム塩(以下、Na(AMA)と表す)の水溶液を得た。なお、Me−AMAの消失はHPLC分析で確認した。
反応器からNa(AMA)水溶液を少量採取してKBr板を用いた液膜法によりIR測定を行い、水との差スペクトルを測定したところ、カルボン酸陰イオンの逆対称伸縮に帰属される吸収が確認でき、該吸収帯の吸収が最大値となる波数(以下、ν(COO)と表記する)は1554cm−1であった。
[実施例1−2]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製
実施例1−1のNa(AMA)水溶液の入った反応器に、ジイソプロピルエーテル(DIPE)50mlを加え、次いで硫酸亜鉛七水和物13.5部を加え、1時間攪拌した。
内容物を滴下漏斗に移し、DIPEによる抽出、分液を行った。DIPE層に、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、及びアデカスタブAO−412(アデカ社製)をそれぞれ0.005部、0.008部加えてからエバポレーターを用いてDIPEを留去して濃縮し、無色透明の液体として、モル比2:1のAMAとZn2+からなる塩(以下、Zn(AMA)と表す)のDIPE溶液46.0部を得た。
反応器からZn(AMA)のDIPE溶液を少量採取し、真空ポンプを用いて乾燥した。これにd−DMSOを加えて溶解したものについてH−NMR測定を行った。得られたスペクトルと帰属を図8−1に示す。また、同様に真空ポンプで乾燥した少量サンプルにジクロロメタンを加えて溶解したものをKBr板に塗布、室温で放置し乾燥したものをIR測定したところ、ν(COO)は1594cm−1であった。得られたスペクトルと帰属を図8−2に示す。また採取したZn(AMA)のDIPE溶液をキシレンで希釈しICP発光分析を行ったところ、亜鉛に帰属される強いピークを確認した。
Zn(AMA)のDIPE溶液が入った反応器に蒸留水70.0部を追加し、反応器を30〜35℃の温浴で温めながらDIPEを減圧留去して除去し、溶媒を水に交換した。0.45μm孔径のフィルターで濾過し、Zn(AMA)の水溶液、すなわちAMA及びZn2+を2:1(モル比)で含む水溶液77.0部を得た。不揮発分は20.9%であった。
[実施例1−3]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)、アクリル酸イオン(AA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(1)
実施例1−2で得たZn(AMA)水溶液5.4部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)水溶液2.2部を混合し、AMA、AA、Zn2+をそれぞれモル比1:1:1で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)とZn(AA)をモル比で1:1、質量比で63:37で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)水溶液の不揮発分とZn(AA)水溶液の不揮発分から23.7%と算出した。
[実施例1−4]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)、アクリル酸イオン(AA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(2)
実施例1−2で得たZn(AMA)水溶液4.4部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)水溶液3.6部を混合し、AMA、AA、Zn2+をそれぞれモル比2:4:3で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)とZn(AA)をモル比で1:2、質量比で46:54で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)水溶液の不揮発分とZn(AA)水溶液の不揮発分から25.3%と算出した。
[実施例1−5]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)、アクリル酸イオン(AA)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(3)
実施例1−2で得たZn(AMA)水溶液3.6部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)水溶液4.4部を混合し、AMA、AA、Zn2+をそれぞれモル比1:3:2で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)とZn(AA)をモル比で1:3、質量比で36:64で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)水溶液の不揮発分とZn(AA)水溶液の不揮発分から26.2%と算出した。
[実施例1−6]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)、カルシウムイオン(Ca2+)を含む水溶液の調製
合成・調製例1−4で得たH−AMA3.9部に、光ラジカル開始剤として0.13部のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一化した後、17.0部のイオン交換水、レベリング剤として0.01部のフタージェント215M(ネオス社製)、および1.0部の水酸化カルシウムを順次添加、攪拌した。2時間室温で攪拌してから、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、AMA、およびCa2+を含む透明な水溶液を得た。
[実施例1−7]
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA)、マグネシウムイオン(Mg2+)を含む水溶液の調製
合成・調製例1−4で得たH−AMA3.9部に、光ラジカル開始剤として0.13部のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一化した後、16.0部のイオン交換水、レベリング剤として0.01部のフタージェント215M(ネオス社製)、および0.8部の水酸化マグネシウムを順次添加、攪拌した。2時間室温で攪拌してから、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、AMA、およびMg2+を含む透明な水溶液を得た。
<製膜性の試験>
[実施例2−1]
実施例1−3で得た水溶液4.2部に、レベリング剤としてフタージェント215M(ネオス社製)を0.002部添加し、均一透明な液とした。
更に不揮発分が22.0%となるように蒸留水を0.46部加えてよく振り混ぜた後、乾燥膜厚が2μmとなるようにNo.7のバーコーターを用いて、この水溶液をガラス板に塗布した。
なお、乾燥膜厚は次式にしたがって計算した。
乾燥膜厚[μm]=1.3×バーコーターNo.×不揮発分(質量%)÷100
塗布した後、真空乾燥器にて100℃で乾燥した後、室温で10分間放冷した。乾燥時間は5分間と10分間の2通りの条件で行った。放冷後の乾燥塗膜の表面状態を目視で観察したところ、5分間乾燥した場合も、10分間乾燥した場合も、無色透明な均一塗膜であり、白化や粉末の析出が見られた面積の割合は0%であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、34.9mN/mであった。
[実施例2−2]
塗布液調製に用いた水溶液を実施例1−4で得たものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、実施例2−1の結果と同様であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、33.8mN/mであった。
[実施例2−3]
塗布液調製に用いた水溶液を実施例1−5で得たものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、実施例2−1の結果と同様であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、32.9mN/mであった。
[比較例2−1〜2−2]
塗布液調製に用いた水溶液を表1に示したものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、いずれも塗膜に白化している部分及び粉末が析出している部分が認められた。白化した部分と粉末が析出している部分の合計面積(目視)を表1に示す。
Figure 0006133652
上記表1の結果から、実施例2−1〜2−3のAMAイオンを含有する水系組成物を用いて得られた乾燥塗膜は、無色透明な均一塗膜となり、白化や粉末析出は見られず、比較例2−1〜2−2のAMAイオンを含有しない組成物を用いて得られた乾燥塗膜と比べて、顕著に優れた製膜性を示すことがわかる。
<UV硬化性の試験>
[実施例3−1]
実施例2−1の塗布液に、塗布液中の不揮発分に対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を光ラジカル開始剤として更に添加し、70〜80℃に加温しながら振り混ぜて均一な溶液とし、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
この塗布液を実施例2−1と同じ操作でガラス板上に塗布、真空乾燥器を用いて100℃で10分間乾燥した。
ベルトコンベア式UV照射機により、大気下でこの塗膜を形成したガラス板にUV照射を行い、塗膜表面を指で押しても痕が付かなくなるパス数でUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
なお、用いたベルトコンベア式UV照射機は、次の通りである。
UV照射装置:ライトハンマー6
ベルトコンベア装置:モデルLC−6B
以上、フュージョンUVシステムズ社製
UV照射条件は、次の通りである。
光源:Hバルブ
波長365nmにおける照度:200mW/cm
ベストスピード:6.0m/s
1パスあたりの照射時間:1秒
1パスあたりの積算光量:200mJ/cm
[実施例3−2〜3−3]
光ラジカル開始剤を添加する前の塗布液として実施例2−2〜2−3の塗布液を用いたこと以外は、実施例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例3−1]
硬化成分としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をプロピレングリコールモノメチルエーテルでTMPTA分が22.0質量%となるように希釈し、更に光ラジカル開始剤としてTMPTAに対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一透明となるまで振り混ぜた後、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
以後の操作は実施例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例3−2]
硬化成分としてネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)を用いたこと以外は、比較例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
<耐水性の試験>
[実施例4−1〜4−3、比較例4−1〜4−2]
UV照射回数を20パス(積算光量:4J/cm)に固定したこと以外は、実施例3−1〜3−3、比較例3−1〜3−2と同様にしてガラス板上に硬化塗膜を形成した。
これを室温(23℃)の水に24時間浸漬し、取り出した直後の状態を目視で観察、更にキッチンタオルで塗膜表面をラビングした(擦った)。結果を表2に示す。
Figure 0006133652
上記表2の結果から、実施例3−1〜3−3の本発明の水系組成物を用いて得られた硬化塗膜は、比較例3−1〜3−2の従来の硬化成分を用いて得られた硬化塗膜と比べて、顕著に優れたUV硬化性及び耐水性を示すことがわかる。
<酸素ガスバリア性の試験>
[実施例5−1]
基材として表面未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーL−50T60、東レ社製)を用いたこと以外は、実施例4−1と同様にして、実施例3−1で調製した塗布液を用い、PETフィルム上にUV硬化塗膜を形成した。このフィルムを、酸素透過率計(Model8001、Illinois Instruments社製)のセルにUV硬化塗膜が下側(窒素フロー側)になるようにセットして、次の条件で酸素透過速度(OTR)[cc/m・day]を測定した。
・酸素フロー=20[cc/min]
・窒素フロー=10[cc/min]
・試験温度:23℃
OTR値としては、測定値が安定になった試験開始後2.5時間の時点の値を試験結果とした。結果を表3に示す。
なお、マイナスのOTR値は、単にパッシブメカニズムにより酸素ガスをバリアしているだけでなく、アクティブメカニズムで化学的に酸素を吸収していることを示している。
[実施例5−2]
用いた塗布液を実施例3−2で調製したものに変えたこと以外は、実施例5−1と同様にしてOTR値を測定した。結果を表3に示す。
[比較例5−1]
基材のPETフィルムのみでOTR値を測定した。結果を表3に示す。
[比較例5−2〜5−3]
用いた塗布液を表3に示したものに変え、乾燥膜厚が4μmとなるように塗布したこと以外は実施例5−1と同様にしてOTR値を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0006133652
上記表3の結果から、実施例5−1、5−2の本発明の水系組成物を用いて得られた硬化塗膜は、酸素ガスをパッシブにバリアするだけでなく、化学的に酸素を吸収してアクティブにバリアし、比較例5−1の硬化塗膜を用いない場合や、比較例5−2、5−3の従来の硬化成分を用いて得られた硬化塗膜と比べて、顕著に高い酸素ガスバリア性を示すことがわかる。
<表面硬度の試験>
[実施例6−1]
実施例4−3と同様にしてガラス板上にUV硬化塗膜を形成した。このUV硬化塗膜について、JIS K 5600−4に準拠し、引っかき硬度(鉛筆法)を測定した。結果を表4に示す。
[実施例6−2]
実施例1−5で得た水溶液に対して、水溶液中の不揮発分に対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を光ラジカル開始剤として更に添加し、70〜80℃に加温しながら振り混ぜて均一な溶液とし、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
この光ラジカル開始剤を含む水溶液4.0部を攪拌子を入れた容器に取り、攪拌しながらコロイダルシリカ(シリカのナノ微粒子の水分散液)3.0部を滴下し、透明な水系組成物を得た。なお、用いたコロイダルシリカの詳細は次のとおりである。
・製品名:ST−AK−A(日産化学社製)
・粒子径:10〜15nm
・微粒子含量(不揮発分):15.0%
上記水系組成物は、不揮発分中にシリカのナノ微粒子を30質量%含むことになる。また、実施例1−5で得た水溶液の不揮発分とST−AK−Aの不揮発分から、得られた水系組成物の不揮発分を21.4%と算出した。
この塗布液を用い、実施例6−1と同様にしてガラス板上に形成したUV硬化塗膜の引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、38.0mN/mであった。
[実施例6−3]
実施例1−6で得た水溶液を、No.8のバーコーターを用いてガラス板に塗布した。塗布後、ベルトコンベア式UV照射機により、積算光量:4J/cmとなるようにUV照射を行い硬化させた。
なお、用いたベルトコンベア式UV照射機は、次の通りである。
UV照射装置:ライトハンマー6
ベルトコンベア装置:モデルLC−6B
以上、フュージョンUVシステムズ社製
UV照射条件は、次の通りである。
光源:Hバルブ
波長365nmにおける照度:200mW/cm
ベルトスピード:6.0m/s
1パスあたりの照射時間:1秒
1パスあたりの積算光量:200mJ/cm
硬化させた後、120℃の熱風乾燥器にて5分間乾燥した。室温まで冷却した後、実施例6−1と同様に引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
[実施例6−4]
塗布する水溶液を、実施例1−6で得た水溶液から実施例1−7で得た水溶液に変えたこと以外は、実施例6−3と同様にして引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0006133652
上記表4の結果から、本発明の水系組成物を用いて得られた硬化物は、高い硬度を示すことがわかる。
<密着性の試験>
[実施例7−1]
実施例6−2と同様にしてガラス板上にUV硬化塗膜を形成した。このUV硬化塗膜について、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)に準拠し、ガラス基板に対する密着性を評価した。ただし、マス目は10×10マス=100マスで行い、100マスの中で剥がれや破損が生じずに残存しているマス目の数として密着性を評価した。結果を表5に示す。
[実施例7−2〜7−6]
基材を表5に示すものに変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして各基材に対する密着性を評価した。結果を表5に示す。
Figure 0006133652
上記表5の結果から、本発明の水系組成物を用いて得られた硬化物は、樹脂基材から無機基材までの各種基材に対して優れた密着性を示すことがわかる。
上記表1〜5の結果から、本発明の水系組成物が優れた製膜性を有し、また、その硬化物が、優れたUV硬化性、耐水性、酸素ガスバリア性、表面硬度、密着性等を有することが明らかとなった。
このように、上記一般式(1)で表される特定のジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物とすることによって、当該水系組成物が優れた製膜性と重合性を有し、更に、その重合・硬化物が、イオン結合及び/又は金属に応じた諸特性(耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止等)を発揮する作用機序はすべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されるジエン系カルボン酸陰イオン、対カチオン(プロトンを除く)及び、水を含んでなることを特徴とする水系組成物。
    Figure 0006133652
    式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。 、Z は、メチレン基を表し、Y は、酸素原子を表す。点線及び実線で表される酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合は、この結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合が等価であり、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっていることを表す。
  2. 前記組成物は、更に、ラジカル開始剤及び/又はドライヤーを含むことを特徴とする請求項1に記載の水系組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の水系組成物を重合又は硬化させる方法であって、
    該重合又は硬化方法は、加熱、活性エネルギー線の照射、及び、酸素を含む雰囲気下への暴露からなる群から選択される少なくとも1種の方法を施す工程を含むことを特徴とする水系組成物の重合又は硬化方法。
  4. 請求項1又は2に記載の水系組成物の重合物又は硬化物。
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