JP6133652B2 - 水系組成物 - Google Patents
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Description
ところで、陰イオンは負電荷を持つ物質であり、電解質溶液中や、イオン性物質(いわゆる塩)中に存在し、無機、有機の様々な陰イオンが存在する。中でも、有機陰イオンである重合性不飽和カルボン酸陰イオンは、水溶液等の電解質溶液中で重合することができ、金属カチオンや有機カチオンとの塩の水溶液の形態で重合・硬化させることが多く、その重合・硬化物は、主に水系用途で応用されている。このような重合性不飽和カルボン酸陰イオンとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸の陰イオンが知られており、特に(メタ)アクリル酸の陰イオンは重合性の高い陰イオンとして産業的にも重要である。
この水系組成物は、上記のように、中和されていない(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の多価金属塩、及び水を必須とする組成物であって、中和されていない(メタ)アクリル酸をある程度の量含むことを特徴としている。すなわち、(メタ)アクリル酸に反応性希釈剤としての役割を担わせることにより、それ単体では製膜性のない(メタ)アクリル酸の多価金属塩に製膜性を付与したり、塗膜の硬化性を向上させたりすることができることを特徴としている。この水系組成物を基材フィルム上に塗工して湿潤状態のまま硬化させる、又は基材フィルムと基材フィルムの間に挟んで硬化させることによりガスバリア性フィルムを製造できるが、環境負荷の低い水系組成物であり、かつ紫外線硬化を利用した高生産性プロセスを採用できる点で有用な技術である。
また、上記従来の重合性不飽和カルボン酸陰イオンからなる塩については、常温で粉末状、又は結晶性の固体で製膜性に乏しいものが多く、製膜性を付与するには上記水系重合性単量体組成物のように、何らかの反応性希釈剤を用いる必要があった。したがって、反応性希釈剤には、高濃度のカルボン酸金属塩を溶解し製膜性を付与できること、及び水に可溶であること、が求められることになるが、そのような要件を満たす反応性希釈剤はごく限られている。また、高重合性であることも必要だが、(メタ)アクリル酸以外の重合性不飽和カルボン酸は重合性が充分ではない。そのため、実質的に有用な反応性希釈剤は(メタ)アクリル酸ぐらいだが、(メタ)アクリル酸は沸点が十分高くないため、(メタ)アクリル酸を含む水系硬化性組成物を塗布、乾燥すると(メタ)アクリル酸が揮発し易い。その結果、カルボン酸金属塩が析出して塗膜が白化する場合があり、組成物中の(メタ)アクリル酸の含有量、塗工・乾燥条件の制御に細心の注意が必要である。また、少量ではあるが揮発した(メタ)アクリル酸が作業環境における設備、又は人員の健康に被害を及ぼす恐れもある。
更に本発明は、上記重合又は硬化方法により得られる、重合物又は硬化物でもある。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。「(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸」とは、アリルオキシメチルアクリル酸又はメタリルオキシメチルアクリル酸を表す。
(1)ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の基本的化学構造に関する事項を説明する。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、上記一般式(1)に示すように、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっている構造をとっており、通常のカルボン酸陰イオンと同様に、水等の高極性溶媒中の場合は、溶媒分子で溶媒和され電離した状態(いわゆる電解質溶液となっている状態)、低極性溶媒や貧溶媒中、又は実質的に無溶媒の場合は、対カチオンとイオン結合で結合したイオン性物質(いわゆる塩)の状態で存在する。なお、本明細書において、実質的に無溶媒とは、溶媒が含まれていない形態、及び、溶媒が含まれているが、溶媒効果が発揮されないほどに微量しか含まれていない形態を表している。
カルボン酸陰イオン(COO)−は、下記一般式(3)に示すように、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合中に含まれる2つの炭素原子−酸素原子結合が等価で、その結合の強さはC=O二重結合とC−O単結合の中間であり、酸素原子−炭素原子−酸素原子の結合全体で1価の陰イオンとなっていることが一般に知られている(例えば、有機化合物のスペクトルによる同定法(第4版)/東京化学同人、p117)。
このような現象は、対カチオンが複数の配位数を取り得る場合に生じることがあり、特に対カチオンが金属原子、又は金属原子からなる原子団である場合に生じ易い。化学式で(RCOO)2Mと表される塩(RCOO:カルボン酸陰イオン、M:金属カチオン)を例に取ると、図1に示すように複数の配位構造を取り得る。なお、図1に示したものは一部の例であり、全ての配位構造例を示したものではない。
このように、対カチオンが複数の配位数を取ることができ、かつカルボン酸陰イオンも複数の配位のしかたを取ることができるため、同じ化学式の塩でも、異なる配位構造を取ることができる。
非特許文献3:BASIC INORGANIC CHEMISTRY (SECOND EDITION)/John Wiley & Sons,p143
非特許文献4:Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry/UNIVERSITY SCIENCE BOOKS,p59
非特許文献5:ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY (FIFTH EDITION)/John Wiley & Sons,p483
したがって、本発明におけるジエン系カルボン酸塩とは、単一の配位構造を指す概念ではなく、同一の化学式で表される塩であれば(すなわちジエン系カルボン酸陰イオンと対カチオンの比率が同じであれば)、複数の異なる配位構造を含む概念である。すなわち、同一の化学式であれば、異なる配位構造のもの(単一の配位構造からなっていても、複数の配位構造の混合物であっても)を、同一のものとして扱う概念である。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、極めて優れた重合・硬化性を有し、水等の高極性溶媒中の状態のような溶媒分子で溶媒和され電離した状態(いわゆる電解質溶液となっている状態)でも、低極性溶媒や貧溶媒中、又は実質的に無溶媒の場合であるような、対カチオンとイオン結合で結合したイオン性物質の状態(いわゆる塩の状態)でも発揮される。
これは、ジエン系カルボン酸陰イオンが、図3に示すような機構で環化重合することが可能であるため、カルボニル基と共役している二重結合のα位が立体的に込み合っているにもかかわらず、高い重合・硬化性を示すものと考えられる。
このようなことから、X1がメチレン基又は水素原子がメチル基で置換されたメチレン基、Z1がメチレン基、Y1=酸素原子である場合が好ましく、更にX1=Z1=メチレン基、Y1=酸素原子である場合、すなわち、該ジエン系カルボン酸陰イオンがα−(メタ)アリルオキシメチルアクリル酸の陰イオンである場合がより好ましい。
対カチオンは、ジエン系カルボン酸塩の溶解性や製膜性、硬化性、硬化物の緒物性に影響する。目的や用途に応じて、適宜選択すればよい。
クロム、マンガン、鉄、コバルト等、遷移金属元素は着色する場合が多いため、できるだけ着色させたくない場合は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等の典型金属、イットリウム、ランタン等の3族、チタン、ジルコニウム等の4族の遷移金属が、特に好ましく使用できる。
好適な板状の被着体として、無機系のものとしては、ガラス基材;セラミック基材;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、セメントスレート板等の無機質基材;アルミニウム板、銅板、ステンレス鋼板、めっき鋼板等の金属基材等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記した基材以外にも、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード等の木質系基材を用いることもできる。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、このように様々な金属原子や非金属原子又はこれらからなる原子団と組み合わせることができ、様々な用途に好適に用いることができるジエン系カルボン酸塩を形成することができる陰イオンである点に、大きな技術的意義を有している。
本発明におけるジエン系カルボン酸塩は、上述のように、単一の配位構造を指す概念ではなく、同一の化学式で表される塩であれば、複数の異なる配位構造を含む概念である。すなわち、同一の化学式であれば、異なる配位構造のもの(単一の配位構造からなっていても、複数の配位構造の混合物であっても)を、同一のものとして扱う概念である。
ジエン系カルボン酸塩の化学式を一般化すると、下記一般式(6)のように表される。
まず、簡便のため、ジエン系カルボン酸陰イオンとしては、α−アリルオキシメチルアクリル酸陰イオン(AMAイオン)のみを含む場合のみを列挙するが、他のジエン系カルボン酸陰イオンを含む場合、又は、複数種のジエン系カルボン酸陰イオンを含む場合を否定するものではない。
Li(AMA),Na(AMA),K(AMA),(CH3)4N(AMA),(Ph)4P(AMA),Mg(AMA)2,Ca(AMA)2,Sr(AMA)2,Ba(AMA)2,Y(AMA)3,La(AMA)3,Ti(AMA)4,Zr(AMA)4,Cr(AMA)3,Mn(AMA)2,Fe(AMA)3,Co(AMA)2,Ni(AMA)2,Cu(AMA)2,Ag(AMA),Zn(AMA)2,Al(AMA)3,In(AMA)3,Bi(AMA)3
Zr(O)(AMA)2,V(O)(AMA)2
これらは、AMAイオンと、金属元素及び非金属元素からなる原子団である対カチオンとの塩と表すこともできる。すなわち、Zr(O)(AMA)2はAMAイオンとZrOイオンとの塩ZrO(AMA)2、V(O)(AMA)2はAMAイオンとVOイオンとの塩VO(AMA)2と表すこともできる。
Ca(AMA)1(Ac)1,Ba(AMA)1(AA)1,Zr(AMA)2(MAA)2,Zn(AMA)1(AA)1,In(AMA)2(MAA)1
(n−C4H9)2Sn(AMA)2,(n−C4H9)2Pb(AMA)2
これらは、AMAイオンと(n−C4H9)2Snイオンとの塩、AMAイオンと(n−C4H9)2Pbイオンとの塩と解釈してもよい。
(CH3)4Sn2(O)(AMA)2
これらは、AMAイオンと(CH3)2Sn−O−Sn(CH3)2イオンとの塩と解釈してもよい。
(La)1(Cu)2(AMA)7,((C2H5)3NH)1(Ag)1(AMA)2
カルボン酸以外の陰イオン性配位子が含まれる例として、水酸化物イオン、又はアルコキシドイオン,ハロゲンイオンが含まれる例を示す。
(Ph)2Sn(OH)1(AMA)1,(n−C4H9O)2Ti(AMA)2,Y(Cl)(AMA)2
中性分子型配位子が含まれる例として、水、メタノール、2,2′−ビピリジンが配位している例を示す。なお、2,2′−ビピリジンはbpyと表す。
(H2O)2Zn(AMA)2,(H2O)1(CH3OH)1Zn(AMA)2,(bpy)2Sm(AMA)3
なお、水、メタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のような溶媒として一般的に使用し得るものは、塩中に中性分子型配位子として含まれているのか、単に塩と残存溶媒との混合物であるのかを区別することは、困難な場合が多い。
上記具体例のジエン系カルボン酸陰イオン以外の陰イオン、中性分子型配位子、及び対カチオンは、あくまで一部の例であって、これらに限定されるわけではなく、例えば、上記非特許文献3〜5に記載されているものを適用できる。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法としては、(i)ジエン系カルボン酸又はジエン系カルボン酸の無水物を、塩基性物質又は潜在的塩基性物質と反応させる方法、(ii)ジエン系カルボン酸エステル又はジエン系カルボン酸ニトリルを、塩基性物質又は潜在的塩基性物質で加水分解して、ジエン系カルボン酸塩とした後、必要に応じて更に別のカチオンに交換する方法、の大きく2つに分けられる。
なお、上記塩基性物質又は潜在的塩基性物質は、水と反応させることで(加熱してもよい)水酸化物イオンを発生しうる物質であり、アンモニア、アミン類等の有機塩基や、種々の金属単体、金属酸化物、金属水酸化物や金属アルコキシド等が挙げられる(以下、単に塩基と表現することもある)。
したがって、ジエン系カルボン酸陰イオンを得るには、ジエン系カルボン酸、ジエン系カルボン酸の無水物、ジエン系カルボン酸エステル、ジエン系カルボン酸ニトリルのいずれかを原料とすることになる。
すなわち、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法であって、1,6−ジエン−2−カルボン酸エステル又はニトリルを、塩基性物質又は潜在的塩基性物質により加水分解、又は、酸により加水分解する工程を含むジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法は、ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩の製造方法の好ましい実施形態の1つである。
この方法は、塩基性物質又は潜在的塩基性物質を、好ましくは水の存在下で、AMAエステル又はAMAニトリルと攪拌することにより、反応を進行させる方法である。
生体に対する安全性の点で、原料としては、AMAエステルがより好ましい。
AMAエステルとしては、加水分解のし易さから低級エステルが好ましく、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、グリシジル、テトラヒドロフルフリル等の炭素数が1〜5のエステルが好ましい。
アルカリ金属・アルカリ土類金属としては、入手性、反応の進行のし易さの点で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
これらアルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物を水溶液として使用する場合、その濃度は、AMAエステルの種類や反応温度等に応じて適宜選択すればよいが、0.1〜60質量%が好ましく、1〜50%が更に好ましく、最も好ましくは3〜40質量%である。
反応温度としては、水酸化アルカリの濃度やAMAエステルの種類に応じて適宜選択すればよいが、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
この方法は、カチオンMa +からなるAMA塩(「AMAのMa塩」と表現する)と、カチオンMb +からなる原料塩(単に「原料Mb塩」と表現する)とを、両者を溶解する溶媒中で、場合によっては触媒存在下で混合してカチオンを交換し、カチオンMb +からなるAMA塩(「AMAのMb塩」と表現する)を製造する方法である。
溶媒としては、AMAのMa塩と原料Mb塩との両方を一部でも溶解できるものであればよいが、水、アルコール類が好ましく、水が最も好ましい。
AMAのMa塩としては、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、入手性、反応の進行のし易さの点で、特にナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
反応温度としては、各カチオン(Ma +、Mb +)の種類に応じて適宜選択すればよいが、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
目的のAMAのMb塩は、特に操作をしなくても分離する場合もあるし、適切な有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム等)で抽出、分離してもよい。
このプロセスは、AMAカルボン酸を得る工程(前段工程)と、それに引き続いて行う直接法により別のカチオンの塩とする工程(後段工程)に分けられる。
前段工程は、水の存在下、AMA塩を酸(好ましくは強酸)で処理する工程であり、AMA塩の水溶液と強酸を混合するのが簡便で、最も好ましい。酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、有機スルホン酸(p−トルエンスルホン酸等)、トリフルオロ酢酸、リン酸や、酸性イオン交換樹脂(特にスルホン酸型のものが好ましい)が、好ましく挙げられる。
反応温度としては、−20〜120℃であることが好ましく、−10〜100℃が更に好ましく、0〜80℃が最も好ましい。
必要に応じて、後段工程の前にAMAカルボン酸を単離・精製してもよい。単離・精製方法としては、特に限定されないが、例えば、適切な有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム等)で抽出、分離する方法が挙げられる。
直接法は、目的とするAMA塩が加水分解性で水溶液中での合成が困難であったり、AMA塩が水溶性で抽出が困難である場合や、原料となる塩基(例えば、金属水酸化物、アミン、ホスフィン等)が容易に入手できる場合に、特に有効である。
また、ジエン系カルボン酸塩を得る方法として、2種以上の塩を混合する方法も好ましく、特に複合タイプの塩が簡便に得られる。例えば、アクリル酸のMa塩とAMAのMa塩を混合するだけで、混合比率に応じたアクリル酸−AMAカルボン酸の複合Ma塩を得ることができる。同様に、AMAのMa塩とAMAのMb塩を混ぜればAMAカルボン酸のMa−Mb複合塩が得られる。
本発明は、上記一般式(1)で表されるジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物である。
水系組成物中のジエン系カルボン酸陰イオンの総量は、水系組成物の総量100質量%に対して、製膜性の点から、好ましくは0.001〜70質量%、より好ましくは0.01〜50質量%である。
上記水系組成物中の水としては、水である限り特に限定されない。上記ジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩を合成する際に用いた原料に含まれる水であっても、得られたジエン系カルボン酸陰イオンの塩に添加した水であっても、当該組成物中に水を存在させる限り、特に限定されない。
水系組成物中の水の含有量は、水系組成物の総量100質量%に対して、塗布性の点から、好ましくは5〜99質量%、より好ましくは10〜95質量%である。
水系組成物中の固形分(不揮発分)としては、塗布性の点から、好ましくは1〜95質量%、より好ましくは5〜90質量%である。
このような添加剤としては、特に限定されないが、硬化促進剤、安定剤、レベリング剤、反応性希釈剤、単官能又は多官能性の重合性単量体、有機溶剤、有機又は無機微粒子、バインダー樹脂、フィラー、色材、分散剤等が挙げられる。中でも、ラジカル開始剤、ドライヤー等の硬化促進剤は、本発明の水系組成物の性能をより引き出すことができるため、添加することが好ましい成分である。
本発明の水系組成物の好ましい形態としては、更に、ラジカル開始剤及び/又はドライヤーを含む形態が挙げられる。
(A)ラジカル開始剤
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩は、加熱及び/又は電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル重合を開始し、重合・硬化させることができるが、ラジカル開始剤を併用することにより、より効果的に硬化させることができる。
上記ラジカル開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル開始剤と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤とがあり、通常ラジカル開始剤として用いられるものを1種又は2種以上使用できる。
また、必要に応じて、通常用いられるラジカル重合促進剤、光増感剤等を1種又は2種以上添加することも好ましい。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤。
ドライヤーは、過酸化物の分解促進作用を有する化合物、すなわち、レドックス作用により過酸化物を分解して酸化物ラジカル、又は過酸化物ラジカルを発生させる化合物であり、通常ドライヤーとして用いられるものを1種又は2種以上使用できる。
このようなドライヤーとしては、特に限定されないが、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム、セリウム、サマリウム等の金属の有機塩、無機塩、酸化物、又は金属錯体;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸バナジウム、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。また、ジエン系カルボン酸塩そのものが、このようなドライヤーともなり得る。
上記(A)ラジカル開始剤、(B)ドライヤー以外の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤、安定剤、レベリング剤、反応性希釈剤、単官能又は多官能性の重合性単量体、有機溶剤、有機又は無機微粒子、バインダー樹脂、フィラー、色材(顔料、染料)、分散剤、密着性向上剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、艶消し剤、消泡剤、帯電防止剤、スリップ剤、表面改質剤、酸発生剤等が挙げられる。以下に主だったものについて説明する。
ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤としては、多官能チオールが挙げられる。多官能チオールは、ラジカル硬化において多官能性連鎖移動剤として作用でき、また、本発明におけるジエン系カルボン酸塩がα−(メタ)アリルオキシメチルカルボン酸塩である場合、(メタ)アリルエーテル基とのエン−チオール反応機構に基づく架橋剤としても作用できるため、本発明におけるジエン系カルボン酸塩の硬化性を向上することができる。このような多官能チオールとしては、メルカプト基を同一分子内に2個以上有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記ラジカル開始剤及びドライヤー以外の硬化促進剤は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
安定剤は、取扱い性や貯蔵安定性を向上するために、ラジカル重合や酸化重合を防止する機能を持つ化合物であり、通常用いられる重合禁止剤、酸化防止剤を1種又は2種以上使用でき、特に限定されるものではない。
このような化合物としては、例えば、フェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、ホスフィン類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体等を挙げることができる。これらの中では、着色や相溶性等の点でフェノール系化合物が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。また、これらフェノール系化合物と、ホスファイト類やチオエーテル類に代表されるいわゆる2次酸化防止剤に分類される安定剤とを併用すると、より重合防止性や着色防止性が高まり、更に好ましい。
水は表面張力が高い液媒体であるため、水を含む組成物を吸水性に乏しい素材に塗布するとはじきを生じやすい。水系組成物を紙や布等の吸水性の素材へ塗布する場合や、水系組成物を基材どうしで挟み込む場合は、水系組成物の表面張力が高くても使用可能だが、水系組成物を吸水性に乏しい素材の表面に塗布する場合は、素材表面を十分に濡らすことができる程度まで、水系組成物の表面張力を下げることが好ましい。そのため、水系組成物を吸水性に乏しい素材の表面に塗布する用途に使用する場合、レベリング剤、又は界面活性剤として分類される親油性部位と親水性部位とを有する化合物を更に含ませることが多い。
本発明の水系組成物は、組成物中に含む陰イオンやカチオンの種類、量によっては、レベリング剤を含まずとも十分に表面張力が低い場合もあるが、レベリング剤を添加して表面張力を低下させることが必要な場合もある。
本発明の水系組成物は、目的や用途に応じて、単官能又は多官能性の重合性単量体(加熱又は活性エネルギー線の照射等により重合しうる重合性基を有する低分子化合物)を含んでいてもよい。このうち、特に特に常温で液状・低粘度のものは粘度調整機能も有するため反応性希釈剤に分類されることがある。重合性基としては、炭素−炭素不飽和結合のようなラジカル重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基のようなカチオン重合性基が挙げられ、これら重合性基を同一分子内に1つだけ(単官能性)、又は2つ以上(多官能性)を有していてもよい。2つ以上有する場合、同じ重合性基でも異なる2種以上でもよい。
本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンは、ラジカル重合性を有するため、同じ機構で硬化することができるラジカル重合性基を有する重合性単量体が、相乗効果を得られやすく好ましい。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
特に、R’が水素原子や、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニルオキシエチル、ベンジル、メトキシエチル、テトラヒドロフルフリル等の、炭素数が12以下の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素骨格を有する1価の有機基である場合、希釈性が非常に高く、好ましい。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類。
上記重合性単量体は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
本発明の水系組成物は、水を液媒体として含むものであるが、目的や用途に応じて、有機溶剤を含んでいてもよい。当該有機溶剤としては、例えば、下記するもの等を挙げることができる。
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;トリエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ピリジン等のアミン類。
これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。
上記有機溶剤は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合があり、0質量%であってもよい。
本発明の水系組成物は、着色、UVカット、IRカット、高硬度化、ゴム弾性付与、耐擦傷性向上、高屈折率化、低屈折率化、抗菌性付与等、様々な機能を硬化物に付与する目的で、有機又は無機の微粒子を含むことができる。このような微粒子の粒子径としては、透明性を要する場合は100nm以下程度のサブミクロンオーダーが好ましく、隠ぺい性を要する場合は1〜100μm程度のミクロンオーダーが好ましく、適宜、目的、用途に応じて選択すればよい。当該粒子径の測定方法は、粒子の種類や粒子径に応じて適宜選択すればよい。例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて測定できる。
また、微粒子の種類は、付与、又は向上させたい機能に応じて適宜選択すればよく、例えば、着色したい場合は各種の有機顔料又は無機顔料、UVカットしたい場合は酸化亜鉛等のUV吸収性の無機微粒子、硬度や耐擦傷性を向上させたい場合はジルコニアやシリカ等の高硬度の無機微粒子、ゴム弾性を付与したい場合はポリマー微粒子、高屈折率化したい場合はチタニアやジルコニア等の高屈折率微粒子を用いることができる。
上記微粒子は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
バインダー樹脂は、塗膜形成性付与/向上、型崩れ防止等の充填剤的な役割をするオリゴマー又はポリマーであり、目的や用途に応じて、更に、アルカリ現像性、色材分散性、耐熱性、密着性等、様々な機能を付与する。このようなバインダー樹脂としては、様々なオリゴマー又はポリマーを1種又は2種以上使用でき、特に限定されるものではない。
上記バインダー樹脂は、本発明の水系組成物の必須成分ではなく、用途や硬化条件等に応じて添加しない方がよい場合もあるため、0質量%であってもよい。
表面張力には、静的表面張力と動的表面張力とがある。静的表面張力の測定方法としては、プレート法、リング法、懸滴法が知られており、動的表面張力の測定方法としては最大泡圧法が知られている。測定対象の状態(温度、粘度、均一系か不均一系か、等)に応じて測定方法を選択すればよいが、プレート法、懸滴法、最大泡圧法が好ましい。測定する際の試料温度としては、室温である20℃を基準とするのが好ましい。すなわち、表面張力の値としては、プレート法、懸滴法、最大泡圧法のいずれかで測定された20℃での値であることが好ましく、より好ましくはプレート法又は最大泡圧法で測定された20℃での値である。測定の簡便性の点で、最大泡圧法が更に好ましい。
本明細書においては、表面張力は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
本発明は、上記水系組成物を重合・硬化させる重合・硬化方法でもある。上述のように、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオン及びその塩は、ラジカル重合機構及び/又は酸化重合機構が可能であるため、加熱、活性エネルギー線の照射、酸素を含む雰囲気下への曝露、の3通りの方法で硬化させることができる。またこれらの方法のうち、1種類だけを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような硬化は、水をはじめ揮発成分(有機溶剤等)を含んだ状態で行ってもよく、本発明の水系組成物を塗布・乾燥して、水をはじめ揮発成分をほとんど含まない状態としてから行ってもよく、目的、用途に応じて使い分ければよい。
硬化促進剤を併用する場合には、併用しない場合よりも低い温度で硬化させることができ、0〜400℃が好ましく、より好ましくは10〜350℃、更に好ましくは20〜350℃である。
本発明は、上記水系組成物を、上記重合・硬化方法により重合・硬化させて得られる重合・硬化物でもある。本発明の重合・硬化物は、その重合・硬化物中に多くのイオン結合が導入され、特にジエン系カルボン酸塩が金属塩である場合、金属も導入されることになる。これらイオン結合及び/又は金属に応じた諸特性が発揮されることになるが、そのような諸特性としては、例えば、耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止等、様々な諸特性が挙げられ、このような諸特性を利用した様々な応用方法に適用できることになる。更に、MOD材料としても好適に用いることができる。
したがって、本発明の水系組成物、及び、その重合・硬化物は、コーティング材、アイオノマー樹脂、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、顔料分散、反応性乳化剤、反応性界面活性剤、金属/金属酸化物微粒子の分散、インク、レジスト、MOD材料、成型材料、ガスバリア材料、水蒸気バリア材料、酸素吸収材料、レンズ、歯科材料、抗菌剤、ゴム、タイヤ、照明、太陽電池、配線材料、電極材料、めっきアンダーコート、光ファイバー、光導波路、超伝導材料、半導体チップ、磁性材料、メモリ、コンデンサ、圧電体にいたるまで、情報技術(IT)分野や自動車、建築、医療、日用品等の種々の分野において幅広く応用できる。
以下に、本発明におけるジエン系カルボン酸陰イオンを含む水溶液の合成、及び分析について説明する。なお、分析に用いた機器、及び条件は次の通りである。
[HPLC分析]
下記高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置、及び条件にて行った。
この装置及び条件により、α−アリルオキシメチルアクリル酸エステル、α−アリルオキシメチルアクリル酸の検出ができる。α−アリルオキシメチルアクリル酸イオンは、溶出溶媒に含まれるリン酸の作用によりα−アリルオキシメチルアクリル酸の形で検出される。
HPLC装置:DGU−20A5、LC−20AD、SIL−20A、SPD−20A、CTO−20A(いずれも島津製作所社製)の組み合わせ
希釈溶媒:アセトニトリル/メタノール=2/1(質量比)
溶出溶媒:0.1mol%リン酸水溶液/アセトニトリル/メタノール混合溶媒
分離カラム:CAPCELL PACK C18 TYPE:AQ (資生堂社製)
核磁気共鳴装置(400MHz/Varian社製)を用いた。
[IR透過スペクトル測定]
赤外分光装置(装置名:NEXUS−670/サーモニコレー社製)を用いた。
[ICP発光分析]
ICP発光分光分析装置(装置名:CIROS120/SPECTRO社製)を用いた。
[不揮発分]
約0.4gの試料をアルミカップに秤量し、室温で30分風乾した後、真空乾燥器で80℃、30分間乾燥した。乾燥後の質量を秤量し、試料の残存質量から不揮発分を計算した。
[表面張力]
最大泡圧法型の表面張力計SITA science line t60(SITA Messtechnik GmbH社製)を用い、20℃、0.5Hzにおける表面張力[mN/m]を測定した。
α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル:Me−AMAの合成
合成は、国際公開第2011/148903号の実施例28の通りに行った。
得られた無色透明の液体を重ジメチルスルホキシド(d−DMSO)に溶解し、1H−NMRスペクトル測定を行った。得られたNMRスペクトルと帰属を図7−1に示す。また、臭化カリウム(KBr)板を用いた液膜法によりIR透過スペクトル測定を行ったところ、カルボン酸陰イオンに帰属される吸収帯は存在せず、カルボン酸又はカルボン酸エステルのC=O伸縮振動に帰属される吸収帯が存在し、該吸収帯の吸収が最大値となる波数(以下、ν(C=O)と表記する)は1720cm−1であった。得られたIRスペクトルと帰属を図7−2に示す。
アクリル酸イオン(AA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製
攪拌子を入れた反応器に、アクリル酸亜鉛(アルドリッチ社製、以下Zn(AA)2と表する)30.0部及び蒸留水70.0部を加え、反応器を30〜35℃の温浴で温めながら30分攪拌した。その後、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、無色透明な液体として、Zn(AA)2の水溶液、すなわちアクリル酸イオン(AA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を2:1(モル比)で含む水溶液95.0部を得た。不揮発分は30.6%であった。
アクリル酸イオン(AA−)、亜鉛イオン(Zn2+)、アクリル酸を含む水溶液の調製
合成・調製例1−2で得たZn(AA)2水溶液2.0部に、アクリル酸(AA)0.106部を添加しよく振り混ぜ、透明均一な溶液とした。
これは、AA−、Zn2+、AAをモル比4:2:1で含む水溶液であり、AAの80%がZn2+で中和された水系組成物に等しい。
なお、添加したAAを不揮発成分と仮定して、この水溶液の不揮発分を34.1%と算出した。
α−アリルオキシメチルアクリル酸:H−AMAの合成
反応槽として、500ml容の4口セパラブルフラスコに温度計、撹拌装置、滴下漏斗を取り付けたものを準備した。反応槽に10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液150.0部とMe−AMA55.8部を仕込み、水浴で冷却しながら攪拌を開始した。1時間後、Me−AMAの消失をHPLC分析で確認してから、水浴を氷浴に変えた。30質量%硫酸64.2部を滴下漏斗に仕込み、攪拌を続けながら30分かけて滴下した。さらにn−ヘキサン100部を反応槽に入れ攪拌した後、析出した硫酸ナトリウムを300メッシュステンレス製金網により濾過して除去した。分液漏斗により分離した有機層に0.013部の6−t−ブチル−2,4−キシレノールを加え、イオン交換水で有機層を洗浄した。洗浄後、分離した有機層からエバポレーターを用いて大半のn−ヘキサンを留去した後、孔径0.2μmのPTFE製メンブランフィルターと吸引濾過器を使用して析出物を濾過した。真空ポンプを用いて濾液からn−ヘキサンを完全に除去し、α−アリルオキシメチルアクリル酸(H−AMA)40部を得た。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)及びナトリウムイオン(Na+)を含む水溶液の調製
攪拌子を入れた反応器に10%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液40.0部とMe−AMA15.0部を仕込み、水浴で冷却しながらマグネチックスターラーで攪拌した。Me−AMAが消失するまで攪拌を続け、AMA−及びNa+を1:1(モル比)で含む水溶液、すなわちα−アリルオキシメチルアクリル酸のナトリウム塩(以下、Na(AMA)と表す)の水溶液を得た。なお、Me−AMAの消失はHPLC分析で確認した。
反応器からNa(AMA)水溶液を少量採取してKBr板を用いた液膜法によりIR測定を行い、水との差スペクトルを測定したところ、カルボン酸陰イオンの逆対称伸縮に帰属される吸収が確認でき、該吸収帯の吸収が最大値となる波数(以下、ν(COO−)と表記する)は1554cm−1であった。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製
実施例1−1のNa(AMA)水溶液の入った反応器に、ジイソプロピルエーテル(DIPE)50mlを加え、次いで硫酸亜鉛七水和物13.5部を加え、1時間攪拌した。
内容物を滴下漏斗に移し、DIPEによる抽出、分液を行った。DIPE層に、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、及びアデカスタブAO−412(アデカ社製)をそれぞれ0.005部、0.008部加えてからエバポレーターを用いてDIPEを留去して濃縮し、無色透明の液体として、モル比2:1のAMA−とZn2+からなる塩(以下、Zn(AMA)2と表す)のDIPE溶液46.0部を得た。
反応器からZn(AMA)2のDIPE溶液を少量採取し、真空ポンプを用いて乾燥した。これにd−DMSOを加えて溶解したものについて1H−NMR測定を行った。得られたスペクトルと帰属を図8−1に示す。また、同様に真空ポンプで乾燥した少量サンプルにジクロロメタンを加えて溶解したものをKBr板に塗布、室温で放置し乾燥したものをIR測定したところ、ν(COO−)は1594cm−1であった。得られたスペクトルと帰属を図8−2に示す。また採取したZn(AMA)2のDIPE溶液をキシレンで希釈しICP発光分析を行ったところ、亜鉛に帰属される強いピークを確認した。
Zn(AMA)2のDIPE溶液が入った反応器に蒸留水70.0部を追加し、反応器を30〜35℃の温浴で温めながらDIPEを減圧留去して除去し、溶媒を水に交換した。0.45μm孔径のフィルターで濾過し、Zn(AMA)2の水溶液、すなわちAMA−及びZn2+を2:1(モル比)で含む水溶液77.0部を得た。不揮発分は20.9%であった。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)、アクリル酸イオン(AA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(1)
実施例1−2で得たZn(AMA)2水溶液5.4部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)2水溶液2.2部を混合し、AMA−、AA−、Zn2+をそれぞれモル比1:1:1で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)2とZn(AA)2をモル比で1:1、質量比で63:37で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)2水溶液の不揮発分とZn(AA)2水溶液の不揮発分から23.7%と算出した。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)、アクリル酸イオン(AA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(2)
実施例1−2で得たZn(AMA)2水溶液4.4部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)2水溶液3.6部を混合し、AMA−、AA−、Zn2+をそれぞれモル比2:4:3で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)2とZn(AA)2をモル比で1:2、質量比で46:54で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)2水溶液の不揮発分とZn(AA)2水溶液の不揮発分から25.3%と算出した。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)、アクリル酸イオン(AA−)及び亜鉛イオン(Zn2+)を含む水溶液の調製(3)
実施例1−2で得たZn(AMA)2水溶液3.6部、及び合成・調製例1−2で得たZn(AA)2水溶液4.4部を混合し、AMA−、AA−、Zn2+をそれぞれモル比1:3:2で含む水溶液を得た。これは、Zn(AMA)2とZn(AA)2をモル比で1:3、質量比で36:64で含む水溶液に相当する。なお、この水溶液の不揮発分は、Zn(AMA)2水溶液の不揮発分とZn(AA)2水溶液の不揮発分から26.2%と算出した。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)、カルシウムイオン(Ca2+)を含む水溶液の調製
合成・調製例1−4で得たH−AMA3.9部に、光ラジカル開始剤として0.13部のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一化した後、17.0部のイオン交換水、レベリング剤として0.01部のフタージェント215M(ネオス社製)、および1.0部の水酸化カルシウムを順次添加、攪拌した。2時間室温で攪拌してから、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、AMA−、およびCa2+を含む透明な水溶液を得た。
α−アリルオキシメチルアクリル酸イオン(AMA−)、マグネシウムイオン(Mg2+)を含む水溶液の調製
合成・調製例1−4で得たH−AMA3.9部に、光ラジカル開始剤として0.13部のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一化した後、16.0部のイオン交換水、レベリング剤として0.01部のフタージェント215M(ネオス社製)、および0.8部の水酸化マグネシウムを順次添加、攪拌した。2時間室温で攪拌してから、0.45μm孔径のフィルターで濾過し、AMA−、およびMg2+を含む透明な水溶液を得た。
[実施例2−1]
実施例1−3で得た水溶液4.2部に、レベリング剤としてフタージェント215M(ネオス社製)を0.002部添加し、均一透明な液とした。
更に不揮発分が22.0%となるように蒸留水を0.46部加えてよく振り混ぜた後、乾燥膜厚が2μmとなるようにNo.7のバーコーターを用いて、この水溶液をガラス板に塗布した。
なお、乾燥膜厚は次式にしたがって計算した。
乾燥膜厚[μm]=1.3×バーコーターNo.×不揮発分(質量%)÷100
塗布した後、真空乾燥器にて100℃で乾燥した後、室温で10分間放冷した。乾燥時間は5分間と10分間の2通りの条件で行った。放冷後の乾燥塗膜の表面状態を目視で観察したところ、5分間乾燥した場合も、10分間乾燥した場合も、無色透明な均一塗膜であり、白化や粉末の析出が見られた面積の割合は0%であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、34.9mN/mであった。
塗布液調製に用いた水溶液を実施例1−4で得たものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、実施例2−1の結果と同様であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、33.8mN/mであった。
塗布液調製に用いた水溶液を実施例1−5で得たものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、実施例2−1の結果と同様であった。結果を表1に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、32.9mN/mであった。
塗布液調製に用いた水溶液を表1に示したものに変え、不揮発分が22.0%となるように蒸留水の添加量を変えたこと以外は、実施例2−1と同様にして製膜性を試験したところ、いずれも塗膜に白化している部分及び粉末が析出している部分が認められた。白化した部分と粉末が析出している部分の合計面積(目視)を表1に示す。
[実施例3−1]
実施例2−1の塗布液に、塗布液中の不揮発分に対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を光ラジカル開始剤として更に添加し、70〜80℃に加温しながら振り混ぜて均一な溶液とし、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
この塗布液を実施例2−1と同じ操作でガラス板上に塗布、真空乾燥器を用いて100℃で10分間乾燥した。
ベルトコンベア式UV照射機により、大気下でこの塗膜を形成したガラス板にUV照射を行い、塗膜表面を指で押しても痕が付かなくなるパス数でUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
UV照射装置:ライトハンマー6
ベルトコンベア装置:モデルLC−6B
以上、フュージョンUVシステムズ社製
UV照射条件は、次の通りである。
光源:Hバルブ
波長365nmにおける照度:200mW/cm2
ベストスピード:6.0m/s
1パスあたりの照射時間:1秒
1パスあたりの積算光量:200mJ/cm2
光ラジカル開始剤を添加する前の塗布液として実施例2−2〜2−3の塗布液を用いたこと以外は、実施例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
硬化成分としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をプロピレングリコールモノメチルエーテルでTMPTA分が22.0質量%となるように希釈し、更に光ラジカル開始剤としてTMPTAに対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を添加、均一透明となるまで振り混ぜた後、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
以後の操作は実施例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
硬化成分としてネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)を用いたこと以外は、比較例3−1と同様にしてUV硬化性を評価した。結果を表2に示す。
[実施例4−1〜4−3、比較例4−1〜4−2]
UV照射回数を20パス(積算光量:4J/cm2)に固定したこと以外は、実施例3−1〜3−3、比較例3−1〜3−2と同様にしてガラス板上に硬化塗膜を形成した。
これを室温(23℃)の水に24時間浸漬し、取り出した直後の状態を目視で観察、更にキッチンタオルで塗膜表面をラビングした(擦った)。結果を表2に示す。
[実施例5−1]
基材として表面未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーL−50T60、東レ社製)を用いたこと以外は、実施例4−1と同様にして、実施例3−1で調製した塗布液を用い、PETフィルム上にUV硬化塗膜を形成した。このフィルムを、酸素透過率計(Model8001、Illinois Instruments社製)のセルにUV硬化塗膜が下側(窒素フロー側)になるようにセットして、次の条件で酸素透過速度(OTR)[cc/m2・day]を測定した。
・酸素フロー=20[cc/min]
・窒素フロー=10[cc/min]
・試験温度:23℃
OTR値としては、測定値が安定になった試験開始後2.5時間の時点の値を試験結果とした。結果を表3に示す。
なお、マイナスのOTR値は、単にパッシブメカニズムにより酸素ガスをバリアしているだけでなく、アクティブメカニズムで化学的に酸素を吸収していることを示している。
用いた塗布液を実施例3−2で調製したものに変えたこと以外は、実施例5−1と同様にしてOTR値を測定した。結果を表3に示す。
基材のPETフィルムのみでOTR値を測定した。結果を表3に示す。
用いた塗布液を表3に示したものに変え、乾燥膜厚が4μmとなるように塗布したこと以外は実施例5−1と同様にしてOTR値を測定した。結果を表3に示す。
[実施例6−1]
実施例4−3と同様にしてガラス板上にUV硬化塗膜を形成した。このUV硬化塗膜について、JIS K 5600−4に準拠し、引っかき硬度(鉛筆法)を測定した。結果を表4に示す。
実施例1−5で得た水溶液に対して、水溶液中の不揮発分に対して3質量%の量のイルガキュア2959(BASF社製)を光ラジカル開始剤として更に添加し、70〜80℃に加温しながら振り混ぜて均一な溶液とし、0.45μm孔径のフィルターで濾過した。
この光ラジカル開始剤を含む水溶液4.0部を攪拌子を入れた容器に取り、攪拌しながらコロイダルシリカ(シリカのナノ微粒子の水分散液)3.0部を滴下し、透明な水系組成物を得た。なお、用いたコロイダルシリカの詳細は次のとおりである。
・製品名:ST−AK−A(日産化学社製)
・粒子径:10〜15nm
・微粒子含量(不揮発分):15.0%
上記水系組成物は、不揮発分中にシリカのナノ微粒子を30質量%含むことになる。また、実施例1−5で得た水溶液の不揮発分とST−AK−Aの不揮発分から、得られた水系組成物の不揮発分を21.4%と算出した。
この塗布液を用い、実施例6−1と同様にしてガラス板上に形成したUV硬化塗膜の引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
また、調製した塗布液の表面張力を測定したところ、38.0mN/mであった。
実施例1−6で得た水溶液を、No.8のバーコーターを用いてガラス板に塗布した。塗布後、ベルトコンベア式UV照射機により、積算光量:4J/cm2となるようにUV照射を行い硬化させた。
なお、用いたベルトコンベア式UV照射機は、次の通りである。
UV照射装置:ライトハンマー6
ベルトコンベア装置:モデルLC−6B
以上、フュージョンUVシステムズ社製
UV照射条件は、次の通りである。
光源:Hバルブ
波長365nmにおける照度:200mW/cm2
ベルトスピード:6.0m/s
1パスあたりの照射時間:1秒
1パスあたりの積算光量:200mJ/cm2
硬化させた後、120℃の熱風乾燥器にて5分間乾燥した。室温まで冷却した後、実施例6−1と同様に引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
塗布する水溶液を、実施例1−6で得た水溶液から実施例1−7で得た水溶液に変えたこと以外は、実施例6−3と同様にして引っかき硬度を測定した。結果を表4に示す。
[実施例7−1]
実施例6−2と同様にしてガラス板上にUV硬化塗膜を形成した。このUV硬化塗膜について、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)に準拠し、ガラス基板に対する密着性を評価した。ただし、マス目は10×10マス=100マスで行い、100マスの中で剥がれや破損が生じずに残存しているマス目の数として密着性を評価した。結果を表5に示す。
基材を表5に示すものに変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして各基材に対する密着性を評価した。結果を表5に示す。
このように、上記一般式(1)で表される特定のジエン系カルボン酸陰イオン、及び、水を含んでなる水系組成物とすることによって、当該水系組成物が優れた製膜性と重合性を有し、更に、その重合・硬化物が、イオン結合及び/又は金属に応じた諸特性(耐水性、硬化性、硬度、耐擦傷性、耐指紋付着性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収性、紫外線カット、赤外線カット、発色・着色、高屈折率、密着性、各種触媒能、蛍光・発光能、光増幅、分散性、帯電防止等)を発揮する作用機序はすべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (4)
- 前記組成物は、更に、ラジカル開始剤及び/又はドライヤーを含むことを特徴とする請求項1に記載の水系組成物。
- 請求項1又は2に記載の水系組成物を重合又は硬化させる方法であって、
該重合又は硬化方法は、加熱、活性エネルギー線の照射、及び、酸素を含む雰囲気下への暴露からなる群から選択される少なくとも1種の方法を施す工程を含むことを特徴とする水系組成物の重合又は硬化方法。 - 請求項1又は2に記載の水系組成物の重合物又は硬化物。
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