(概要)
図1に示すように、以下に説明する寸法計測装置10は、取得部11と面抽出部12と領域抽出部13と寸法生成部14とを備える。取得部11は、対象物20の3次元計測を行う計測装置30から対象物20に関する3次元の座標値を取得する。面抽出部12は、対象物20を構成している着目面21(図3参照)を前記座標値に基づいて定め、かつ当該着目面21の境界線の位置を抽出する。領域抽出部13は、着目面21に付設されている特定の物体22(図2参照)に相当する候補領域23(図3参照)について、候補領域23を囲むエッジの位置を抽出する。寸法生成部14は、前記境界線の位置と前記エッジの位置とから対象物20に関する寸法図の作成に必要な寸法データを生成する。
また、寸法計測装置10は入力部15をさらに備えることが望ましい。入力部15は、物体22の種類を指定する入力を入力装置40から受け付ける機能を有する。この場合、寸法生成部14は、物体22の種類に関する情報を用いて前記エッジの位置に対する物体22の位置および寸法データを補正する。
また、入力部15は、候補領域23が存在する範囲を指定する入力を受け付ける機能を有することが望ましい。この場合、領域抽出部13は、入力部15に指定された範囲から候補領域23を抽出する。
図8に示すように、寸法計測装置10は、前記座標値の着目面21に対する距離が基準値を超えており、かつ着目面21に付設されている領域を、ランド24として抽出するランド抽出部16を備えていてもよい。
この場合、入力部15は、ランド24のうち物体22に相当するランド24を対話的に指定する入力を受け付ける機能を有することが望ましい。さらに、領域抽出部13は、入力部15に指定されたランド24を候補領域23とすることが望ましい。
あるいはまた、ランド抽出部16は、あらかじめ定められた複数種類の基準形状とランド24との類似度を評価することが望ましい。この場合、領域抽出部13は、ランド24のうち前記基準形状のいずれかがフィッティングするランド24を候補領域23とし、かつランド24にフィッティングした基準形状の輪郭線をエッジとすることが望ましい。
取得部11は、計測装置30が前記座標値ごとに色情報を出力する機能を有する場合に前記座標値に加えて前記色情報を取得する機能を有することが望ましい。この場合、領域抽出部13は、あらかじめ定められた範囲の色情報が付随する前記座標値を候補領域23の座標値とみなす機能を有する。
以下に説明する寸法計測システムは、上述したいずれかの寸法計測装置10と、計測装置30とを備える。また、寸法計測システムは、入力装置40を備えることが望ましい。
寸法計測装置10は、プログラムに従って動作するコンピュータを主なハードウェア要素として構成される。すなわち、プログラムは、コンピュータを上述した寸法計測装置10として機能させる。このようなプログラムは、専用のコンピュータにROM(Read Only Memory)として搭載するほか、汎用のコンピュータに対して、インターネットのような電気通信回線を通して提供されるか、コンピュータで読取可能な記録媒体を用いて提供される。
(実施形態1)
図1に示すように、以下に説明する寸法計測システム1は、対象物20(図2参照)の3次元計測を行う計測装置30と、対象物20の3次元計測の結果から対象物20の寸法計測を行う寸法計測装置10とを備える。本実施形態では、3次元計測の対象物20は、図2に示すように、建物の内部に設けられた部屋を想定しているが、対象物20は建物の内外のどちらであってもよく、また建物以外の対象物20であっても、以下に説明する技術は適用可能である。
3次元計測を行う計測装置30は、いわゆる3Dレーザスキャナである。3Dレーザスキャナは、ビーム状のパルスレーザを立体的に走査し、投光から受光までの時間差(飛行時間)によって、パルスレーザを照射した部位の3次元座標を出力するように構成されている。計測装置30が出力する3次元座標は直交座標系の座標値である。計測装置30の座標系は、対象物20の配置に依存することなく設定される。たとえば、z軸が鉛直方向に定められ、基準点が海抜0mに定められる。あるいは、計測装置30を設置した平面がxy平面に定められる構成でもよい。
計測装置30は、対象物20において、パルスレーザが照射された位置ごとに3次元座標を出力する。以下では、3次元座標のデータが得られる位置を測定点と呼ぶ。また、計測装置30から出力される3次元座標のデータを第1のデータと呼ぶ。この種の構成の計測装置30は、3次元座標を、たとえば1mm程度の精度で計測することが可能である。
計測装置30は、飛行時間を計測するのではなく、三角測量法の原理を用いる構成などを採用してもよい。また、計測装置30は、ビーム状のパルスレーザを照射する構成に限定されず、線状、縞状、格子状などのパターンを投影する構成を採用してもよく、ステレオ画像法などを採用した構成でもよい。さらに、計測装置30は、時間経過に伴って強度が所定の規則で変化する強度変調光を投光し、強度変調光を投光した空間からの反射光を受光することにより、投光時と受光時との強度変調光の位相差を検出し、この位相差から飛行時間を求める構成でもよい。この種の構成としては、エリアイメージセンサで受光することにより、画素値を距離値とする距離画像センサが知られている。
さらに、計測装置30は、3次元計測を行うだけではなく、対象物20を撮像する機能を備えていることが望ましい。そのため、計測装置30は、CCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサのような固体撮像素子と、パルスレーザを走査する範囲と同等の視野が得られるように固体撮像素子の前方に配置された広角の光学系とを備える。この種の計測装置30には、Kinect(登録商標)などが知られている。撮像された画像は、モノクロの濃淡画像であってもよいが、以下では、カラー画像であって、RGBのような色刺激値に加えて輝度のデータを出力する場合を想定している。計測装置30から出力される画像のデータを第2のデータと呼ぶ。
第1のデータは、第2のデータの各画素に対応付けられる。すなわち、第2のデータの各画素と第1のデータを取得する測定点とは一対一に対応付けられ、計測装置30から出力される。したがって、計測装置30は、第1のデータとして測定点の3次元座標(x,y,z)を出力し、第2のデータとして測定点に関する3種類の色刺激値(CS1,CS2,CS3)および測定点に関する輝度(LM)を出力する。以下では、色刺激値(CS1,CS2,CS3)および輝度(LM)をまとめて色情報と呼ぶ。
上述のように、計測装置30は、対象物20の3次元形状に関する第1のデータと、対象物20の色情報に関する第2のデータとを出力する。第2のデータは、測定点の3次元座標と対応付けられることにより、カラー画像のデータとして用いられる。すなわち、カラー画像の特定の画素を選択すると、測定点を選択したことと等価であり、当該画素に対応した第1のデータが抽出される。なお、計測装置30は、第1のデータのみを出力する構成であってもよい。
本実施形態において、対象物20は部屋であるから、対象物20は、図2に示すように、床面31と天井面32と壁面33とを備える。したがって、計測装置30は、対象物20の内側空間に関する第1のデータおよび第2のデータを出力する。以下、床面31と天井面32と壁面33とを区別しない場合には、単に面3と記載する。天井面32は、床面31と平行ではない場合もあるが、ここでは、天井面32が床面31と平行である場合を想定する。
計測装置30の視野(計測範囲)は比較的広いが、計測を1回行うだけでは、対象物20について内側空間の全体を計測することはできない。もちろん、計測の目的によっては、対象物20の内側空間のうちの着目する一部のみを計測すればよいことがあり、この場合は、計測を1回行うだけでも目的を達成できる場合がある。
計測装置30は、配置および向きを変えて計測を複数回行うことも可能である。計測装置30の機能については詳述しないが、計測装置30は、複数回の計測により得られた第1のデータおよび第2のデータを、測定点の属性に基づいて重複なくつなぎ合わせる機能を有している。したがって、複数回の計測において、計測装置30を適正に配置すれば、計測装置30から出力される第1のデータおよび第2のデータは、対象物20の全面に関する情報を含むことになる。
寸法計測装置10は、計測装置30から取得したデータを用いて対象物20を構成している面3を抽出する。寸法計測装置10は、抽出した面を用いて、対象物20に関する各種情報を抽出する機能を備えていてもよい。
寸法計測装置10は、プログラムに従って動作するコンピュータを用いて構成される。すなわち、コンピュータを、寸法計測装置10として機能させるプログラムを用いることにより、寸法計測装置10が実現される。
コンピュータは、入力装置40としてキーボード、ポインティングデバイスを備え、出力装置41としてディスプレイ装置を備えることが望ましい。また、コンピュータは、入力装置40としてのタッチパネルが、出力装置41であるディスプレイ装置と一体化されたタブレット端末あるいはスマートフォンなどでもよい。寸法計測装置10は、入力装置40から入力された情報を取得するインターフェイス部である入力部15を備えており、また、出力装置41に情報を出力するためのインターフェイス部である出力部17を備える。インターフェイス部は、データを受け渡す回路を意味している。
また、コンピュータは、汎用ではなく、専用に設計されていてもよい。さらに、コンピュータは、コンピュータサーバ、あるいはクラウドコンピューティングシステムであってもよく、利用者は、コンピュータサーバあるいはクラウドコンピューティングシステムとの通信が可能な端末装置を用いて、以下に説明する機能を享受するようにしてもよい。
寸法計測装置10は、図1のように、計測装置30から第1のデータおよび第2のデータを取得する取得部11を備える。取得部11は、第2のデータを取得することが望ましいが、第1のデータのみを取得するように構成されていてもよい。
寸法計測装置10は、取得部11が取得した対象物20に関する第1のデータを用いて対象物20を構成している面3を抽出する面抽出部12を備える。本実施形態では、対象物20として部屋を想定しているから、面3の一部は、計測装置30から見て家具、設備などの背後に隠れている場合があり、隠れている部位については3次元計測を行うことができない。そのため、面抽出部12は、面3の一部から得られた情報と、面3に関する知識とを用いて、面3の全体形状を推定し、面3の全体形状から対象物20の全体形状を推定する機能を有する。
面3の一部の情報を用いるために、面抽出部12は、第2のデータを用いてカラー画像を出力装置41であるディスプレイ装置に表示する機能と、カラー画像において入力装置40で指定された領域を面3が存在する領域として認識する機能とを有している。利用者は、出力装置41に表示されたカラー画像を見て、面3の色情報を面3の種類を識別する判断材料に用いることにより、面3の種類を比較的容易に見分けることが可能になる。
出力装置41の画面に対象物20の全体を示すカラー画像が表示されている状態において、面抽出部12は、カラー画像における所望の領域を入力装置40で指定することを許可する。利用者が面3を指定する際、適宜形状の選択枠を出力装置41の画面に表示し、指定しようとする面3の範囲内に選択枠が含まれるように選択枠を移動させることが望ましい。選択枠は、種々の形状が考えられるが、四角形、三角形、楕円形などの単純な形状を用いることが望ましい。
上述のように、利用者が入力装置40を用いて面3の範囲内に選択枠を設定することにより、出力装置41に表示された画像に対して、面3に属する測定点の抽出範囲が選択枠によって対話的に入力される。つまり、利用者は、出力装置41の画面に表示されている画像を見て、入力装置40を操作することにより、部屋を囲む複数の面3(床面31、天井面32、個々の壁面33)に対して選択枠を設定する。
面抽出部12は、選択枠の範囲内で選択枠の輪郭との相対位置があらかじめ定められている3個の測定点について第1のデータを抽出する。第1のデータは、3次元座標であるから、同一平面に含まれる3個の座標値が得られることによって、選択枠で設定された3個の測定点を通る平面の式が一意に決定される。要するに、3個の測定点を含む平面を表す数式が求められる。平面の式は、一般に、第1のデータである座標値(x,y,z)を用いて、ax+by+cz=dという形式で表される。なお、a,b,c,dは定数である。
面3に関する知識は、たとえば、面3の形状に関する知識と、異なる面3の配置に関する知識とを含む。面3の形状に関しては、たとえば、「建物の部屋は平面の集合で囲まれている」という知識を用いる。面3が平面ではない場合、面は比較的簡単な曲面(断面U字状、半球状など)を用いることが可能であるが、本実施形態では、面3が平面である場合を想定する。異なる面3の配置に関しては、「隣接する面3の境界線は、隣接する面3の交線に含まれる」という知識を用いる。さらに、面3が平面である場合、「境界線の一端である頂点は、3枚の面3に共有される」という知識が用いられる。
面抽出部12は、計測装置30から出力された第1のデータあるいは第2のデータに対して、上述のような知識を適用して対象物20の面3を自動的に抽出する。そのため、面抽出部12は、面3を特定し、かつ特定した面3に属する複数個(3個以上)の測定点における第1のデータを用いて、特定した面3を表す数式を生成する。
面抽出部12は、生成した数式を用いて3枚の面3が共有する頂点を抽出し、抽出した頂点を結ぶ直線を隣接する2枚の面3の境界線として抽出する。したがって、面抽出部12は、対象物20の概略の形状を頂点と境界線との集合で表すデータを生成し、各頂点の座標値、および各頂点を端点とするリンクとを対応付けて記憶する。
面抽出部12が記憶するデータを、出力装置41の画面に描画を行うプログラムに引き渡すと、出力装置41であるディスプレイ装置の画面に、対象物20に含まれる面3を境界線で区切った線画(ワイヤフレームモデル)が描画される。
上述した動作例において、面抽出部12は、利用者が抽出しようとする面3を対話的に指定しているが、他に制約条件を加えることによって、少なくとも一部の面3を自動的に特定することも可能である。たとえば、床面31と天井面32とが平行であることが既知であるとき、床面31および天井面32が単純な平面であれば、床面31と天井面32とを自動的に認識することが可能である。また、面3のうち隠れている部位が露出している部位よりも面積が小さいことが既知であれば、度数分布によって面3の位置を推定することが可能である。ただし、面3を自動的に抽出する技術は、要旨ではないから、説明を省略する。
いずれにしても、面3を表す数式が求められると、面3と他の物品との識別が可能である。たとえば、計測装置30からの距離を補助的な情報として用いることにより、壁面33と家具などとを分離することが可能である。
ところで、図3のように、部屋を囲んでいる床面31、天井面32、壁面33には、アウトレット(コンセント)、壁スイッチ、窓、空調装置(エアコン)、照明器具、レンジフード、床下収納庫などから選択される種々の物体22が付設されることが多い。クロスの張り替えを行う場合などには、これらの物体22を避けるようにクロスの寸法が割り出される。また、リフォームの際に床材などを割り付けるためにも、これらの物体22の位置を正確に知る必要がある。
以下では、面抽出部12が抽出した複数の面3のうちの1面を着目面21として、着目面21に付設されている物体22の位置を求める技術について説明する。着目面21は、面抽出部12が抽出したすべての面から選択可能であり、面抽出部12が各面を順番に自動的に着目面21として選択する構成と、利用者が入力装置40を用いて特定する構成とのいずれかを採用する。
以下の説明では、入力装置40を用いて指定された1つの面3を着目面21とする。また、着目面21は、隣接する面3との境界線が全周に亘って抽出されていることを条件とする。限定する趣旨ではないが、多くの場合、着目面21の外周の形状は矩形状になるから、以下では、着目面21が矩形状である場合について説明する。着目面21が、五角形状、台形状のような他の形状になる場合であっても、以下に説明する技術は採用可能である。
面抽出部12が着目面21を定めると、寸法計測装置10に設けられた領域抽出部13は、着目面21に付設された物体22に相当する候補領域23を抽出する。本実施形態の領域抽出部13は、図4(a)に示すように、候補領域23が存在する範囲を指定する指定枠25を入力装置40から受け取るように構成されている。すなわち、領域抽出部13は、利用者による入力装置40の操作を通して候補領域23の大まかな範囲が指定枠25により指定されると、指定枠25の中で候補領域23を囲むエッジの位置を抽出する。
候補領域23を囲むエッジの位置を抽出するには、着目面21と候補領域23との属性の相違を利用し、着目面21と候補領域23とを区別する。着目面21と候補領域23とを区別するために利用する属性は、色情報と座標値との少なくとも一方である。
色情報を用いて着目面21と候補領域23とを区別する場合、着目面21の色情報について範囲が定められ、この範囲を逸脱する色情報を持つ測定点の座標値が候補領域23の座標値とみなされる。色情報の範囲は、色情報から求められる色度の距離(差)あるいは色度図上の領域などによって定められる。
一方、座標値を用いて着目面21と候補領域23とを区別する場合、着目面21に対する幾何学的な距離が用いられる。つまり、着目面21に対する測定点の幾何学的な距離が基準値を超えており、かつ着目面21との距離が基準値を超える複数個の測定点が、着目面21に沿う面内において連結領域を形成している場合に、この連結領域が候補領域23とみなされる。
上述のようにして着目面21と候補領域23とが区別されると、図4(b)のように、指定枠25の中で候補領域23とみなされた領域が出力装置41の画面上の表示から除外される(たとえば、白抜きになる)。すなわち、候補領域23となる座標値を持つ画素が出力装置41の画面からは除外される。
次に、領域抽出部13は、着目面21を表す平面上で指定枠25に囲まれた範囲であって、確実に候補領域23の範囲内である位置を始点として、着目面21の境界線に沿う2方向に走査を行うことにより、候補領域23のエッジの位置を求める。指定枠25は、多くの場合、候補領域23と中心の位置が大きくずれないように設定されるから、指定枠25の中心あるいは重心を始点の位置とすれば、始点の位置は候補領域23に含まれると考えられる。あるいはまた、指定枠25の中で、着目面21から除外された画素の範囲で中心あるいは重心を始点の位置とすればよい。
たとえば、図4(c)に示す例において、指定枠25の中心の位置を始点26に用いている。この例では、着目面21は図の上下方向の境界線と、左右方向の境界線とに囲まれているから、領域抽出部13は、図に矢印付きの直線で示しているように、始点26から上下両方向および左右両方向にそれぞれ走査を行って候補領域23のエッジを求める。候補領域23のエッジが着目面21の境界線と平行である場合、始点26から上下方向と左右方向とに走査して求めたエッジの座標を、図4(d)のように、候補領域23のエッジの位置に定めることが可能である。
いま、説明を簡単にするために、着目面21がxz平面であると仮定する。また、候補領域23のエッジは、矩形状であって、各辺がx方向またはz方向に平行であると仮定する。この場合、候補領域23のエッジは、z=x1,z=x2,x=z1,x=z2の4本の直線になる(x1,x2,z1,z2は候補領域23により定まる)。したがって、候補領域23の範囲内で定めた始点26からx方向とz方向とに走査することによって求められるエッジとの交点の座標に基づいて、候補領域23のエッジが定められる。
候補領域23のエッジが着目面21の境界線と平行である保証がない場合、領域抽出部13は、始点26からの走査によって求めたエッジ上の1つの点からエッジとなる座標を追跡することにより、候補領域23のエッジの位置を定めてもよい。候補領域23のエッジとして抽出される座標は、直線上に存在していない可能性があるから、着目面21と同様に、直線の式を当て嵌めることによって、候補領域23を囲むエッジを定めるようにしてもよい。
図4に示す例のように、候補領域23の一部が着目面21に囲まれていない場合(たとえば、物体22が複数の面3で形成される角に存在する場合)、1つの着目面21の中では候補領域23のエッジを全周に亘って決定することができない。このような場合、走査によって定めることができないエッジは、着目面21の境界線を候補領域23のエッジに代用すればよい。
候補領域23は、上述のような矩形状だけではなく、円形状、楕円形状、三角形状などの簡単な幾何学形状になる場合もある。物体22の形状は利用者にとっては既知であるから、物体22の形状を含めた種類に関する情報を領域抽出部13に与えることによって、エッジを当て嵌める形状を選択することが可能になる。エッジを当て嵌める形状が既知である場合、領域抽出部13は、エッジの座標を追跡し、追跡した座標との誤差を最小にするように、当て嵌める形状の大きさを調節すればよい。
上述のようにして候補領域23を囲むエッジが定まると、領域抽出部13は、エッジを規定する情報を記憶する。エッジが矩形状である場合、4個の頂点の座標値を記憶すればよく、エッジが円形状である場合、円の直径(または半径)と中心の座標値を記憶すればよい。なお、エッジが円形状の場合に、領域抽出部13は、着目面21の境界線に平行な辺を持ち、円に外接する矩形を設定し、この矩形の4つの頂点(あるいは対角線上の2つの頂点)の位置を記憶するようにしてもよい。楕円形状、三角形状の場合も同様であり、領域抽出部13は、エッジの形状を一意に特定できる情報を記憶すればよい。
領域抽出部13は、着目面21から候補領域23を切り出す際の属性、および候補領域23の種類あるいは候補領域23の形状を指定させるために、図5に示すような内容のウインドウ42を出力装置41の画面に表示する。このウインドウ42が表示されている状態で、領域抽出部13は、入力装置40から入力された情報を受け付ける。
図示例では、候補領域23に対応する物体22の種類として、「開口部」「配線器具」「その他」の指定が可能であり、「その他」については、「矩形」と「円」とがラジオボタンによって択一的に指定可能になっている。また、基準値(「切出し幅」)はmmを単位として、設定可能であり、図示例では「5mm」に設定している。したがって、着目面21からの距離が5mm離れた測定点は、候補領域23の測定点と判断される。
ところで、計測装置30は、距離を計測するから、3次元の座標値から対象物20の実寸が得られる。したがって、上述のように候補領域23を囲むエッジの位置が定められると、寸法生成部14は、計測装置30で計測した座標値を用いて、着目面21の境界線から候補領域23のエッジまでの寸法、候補領域23の寸法などを求める。すなわち、寸法生成部14は、寸法図の作成に必要な寸法データを生成する。
ただし、候補領域23に対応する物体22が、窓である場合と配線器具である場合とでは、実測した寸法と、寸法図に書き入れる寸法との扱い方に相違がある。そこで、寸法生成部14は、物体22の種類に関する情報を用いて、エッジの位置に対する物体22の位置および寸法を補正する。図6は、寸法生成部14が生成した寸法データを用いて作図した寸法図の例であって、開口部としての窓221に対しては、境界線からエッジまでの距離のほか、窓の寸法が記述され、配線器具222に対しては、境界線からエッジまでの距離のみが記述されている。
本実施形態において候補領域23のエッジの位置を決定するまでの手順を図7にまとめて示す。図7は、計測装置30から3次元の座標値を取得した後の手順を示している。本実施形態では、面抽出部12が、入力装置40から着目面21を選択する入力を受け付けた後(S11)、領域抽出部13が、入力装置40から指定枠25を用いて候補領域23の範囲をおおまかに指定する入力を受け付ける(S12)。さらに、領域抽出部13は、入力装置40から物体22の種類を指定する入力を受け付ける(S13)。ステップS12とステップS13とは入れ替え可能である。これらの情報が入力されると、領域抽出部13は、候補領域23のエッジの位置を抽出し(S14)、寸法生成部14は、寸法図を記述するための寸法データを生成する(S15)。
本実施形態では、寸法データを出力した後の処理については、記載していないが、出力装置41としてのディスプレイ装置の画面に寸法図を表示するほか、出力装置41としてのプロッタ、プリンタなどを用いて寸法図の印刷を行うことも可能である。
(実施形態2)
実施形態1では、領域抽出部13は、入力装置40から候補領域23のおおまかな範囲を指定する指定枠25を入力させているが、本実施形態は、図9(b)のように、候補領域23の可能性がある領域をランド24として自動的に抽出する構成を採用している。つまり、寸法計測装置10は、図8のように、ランド24を自動的に抽出するランド抽出部16を備えている。
ランド抽出部16は、着目面21に対する距離が基準値を超える測定点28により形成される連結領域をランド24に定める。すなわち、実施形態1において指定枠25の中で着目面21と候補領域23とを分離するために用いた技術と同様であるが、本実施形態では、図9(a)のように得られる着目面21の範囲内の測定点28について、着目面21と測定点28との距離を用いてランド24を抽出している。具体的には、着目面21に付設された物体22の表面は、図10のように、着目面21に対して室内側あるいは室外側にずれていると考えられる。したがって、ランド抽出部16は、着目面21までの距離が基準値27を超える測定点28による連結領域が形成されていれば、候補領域23の可能性があるランド24として抽出する。
領域抽出部13での処理を簡単にするために、図9(c)のように、ランド抽出部16は抽出したランド24にラベルを付与しておくことが望ましい(図示例では、(1)(2)のラベルが付与されている)。ランド24にラベルが付与されていれば、不要なランド24を除去する際に、ラベルを指定するだけで、ランド24に属する測定点を候補領域23から一括して除外することが可能になる。たとえば、ラベル(1)が付与されたランド24に属する測定点を候補領域23から除外する場合、ラベル(1)を指定すれば、ランド24に属する測定点を一括して候補領域23から除外できる。ラベル(1)のみを指定した場合は、ラベル(2)が付与されたランド24は候補領域23として残される。この場合、ラベル(1)が付与されたランド24の測定点28は元に戻される。
たとえば、壁掛け時計とドアとがランド24として抽出された場合、壁掛け時計は、取り外すことができるから、候補領域23に含める必要がない。このような場合に、領域抽出部13は、入力装置40から候補領域23として残すランド24の指定を受け付けることによって、ドアに対応するランド24を候補領域23として残すことが可能になる。あるいは、領域抽出部13は、入力装置40から所望のランド24を除外する入力を受け付けることによって、壁掛け時計に対応するランド24を候補領域23から除外することが可能になる。
領域抽出部13は、出力装置41の着目面21およびランド24を表示し、候補領域23に含めるランド24あるいは候補領域23から除外するランド24を、入力装置40を用いて対話的に指定できるように構成される。したがって、入力部15が、候補領域23として採用するランド24を指定する入力を入力装置40から受け付けることにより、候補領域23として扱うランド24が定められる。なお、入力装置40が候補領域23から除外するランド24を指定するように構成され、かつ領域抽出部13が除外されていないランド24を採用するように構成されていても実質的に等価である。
他の構成および動作は実施形態1と同様である。本実施形態の動作をまとめると、図11のようになる。すなわち、面抽出部12が、入力装置40から着目面21を選択する入力を受け付けた後(S21)、ランド抽出部16が、着目面21に対して基準値を超える距離の測定点を抽出して除外する(S22)。さらに、ランド抽出部16は、除外された測定点の集合であるランド24に、それぞれラベルを付与する(S23)。
ランド24にラベルが付与されると、領域抽出部13は、ランド24を出力装置41の画面に表示し(S24)、入力装置40からの指示を受け付ける(S25)。領域抽出部13は、入力装置40からの指示によって、候補領域23として採用するランド24がある場合には(S26:Y)、ランド24ごとに入力装置40から物体22の種類を指定する入力を受け付ける(S27)。つまり、候補領域23になるランド24が複数個ある場合には、複数個のランド24について、それぞれ物体22の種類が指定される。ステップS27はステップS25より先に処理することが可能である。ステップS27の後、領域抽出部13は、候補領域23のエッジの位置を抽出し(S28)、寸法生成部14は、物体22の種類を加味して、寸法図を記述するための寸法データを生成する(S29)。
領域抽出部13は、候補領域23として採用するランド24が入力装置40から指示されなければ(S26:N)、処理を終了する。つまり、ランド抽出部16が抽出したランド24に、物体22に対応したランド24が存在しなければ、処理を終了する。なお、図11の動作例は、候補領域23になるランド24が複数存在する場合には、複数の候補領域23を一括して指定することを想定している。
(実施形態3)
実施形態2では、着目面21に対する距離が基準値を超える測定点の連結領域であることだけを条件にランド24が抽出されている。そのため、ランド24には、物体22ではない領域が含まれており、入力装置40を用いて利用者が物体22に対応するランド24を選択する作業が必要になっている。物体22ではないランド24が多数個になると、手作業で不要なランド24を選択する作業は利用者にとって負担になる。
本実施形態は、ランド24が物体22に対応するか否かを自動的に判断することによって、入力装置40を用いて物体22に対応するランド24を選択する作業を省力化している。すなわち、本実施形態の技術を採用することにより、不要なランド24の個数が低減され、物体22に対応しないランド24を選択する作業が軽減される。本実施形態の構成は、図8に示した実施形態2と同様であってランド抽出部16を備える。
ランド24が物体22に対応するか否かを判断するために、ランド抽出部16は、物体22に相当する複数種類の基準形状をあらかじめ定めている。基準形状は、テンプレートに相当するが、幾何学的な形状(矩形、円、楕円、三角など)が定められているだけであって、寸法(ディメンション)はランド24に合うように調節可能になっている。
ランド抽出部16は、抽出したランド24ごとに基準形状の寸法を変化させて類似度を評価し、ランド24との類似度がもっとも高い基準形状を抽出する。つまり、複数の基準形状についてランド24との類似度が高くなるように寸法を調整し、寸法が調節された基準形状のうちランド24との類似度が最大になる基準形状を抽出する。抽出された基準形状についてランド24との類似度が所定の評価値の範囲内であれば、この基準形状はランド24にフィッティングすると判断される。領域抽出部13は、基準形状がフィッティングするランド24を候補領域23に用いる。また、基準形状がランド24にフィッティングした場合に、候補領域23のエッジは基準形状の輪郭線で代用可能であるから、候補領域23のエッジを抽出する処理は不要になる。
ところで、基準形状にフィッティングするランド24は、おおむね物体22に対応しているから、候補領域23に用いることが可能であるが、対象物20の形状によっては、物体22に対応していないランド24が残っている場合がある。そのため、本実施形態においても実施形態2と同様に、物体22に対応しないランド24を入力装置40を用いた手作業で除去することを可能にしている。
他の構成および処理は実施形態1、実施形態2と同様である。本実施形態の動作をまとめると、図12のようになる。すなわち、面抽出部12が、入力装置40から着目面21を選択する入力を受け付けた後(S31)、ランド抽出部16が、着目面21に対して基準値を超える距離の測定点を抽出して除外する(S32)。さらに、ランド抽出部16は、複数種類の基準形状とランド24との類似度を評価し、ランド24のうち基準形状のいずれかがフィッティングするランド24を抽出する(S34)。その後、ランド抽出部16は、基準形状にフィッティングしたランド24にラベルを付与する(S34)。
以後は、実施形態2と同様の処理である。すなわち、ランド24にラベルが付与されると、領域抽出部13は、ランド24を出力装置41の画面に表示し(S35)、入力装置40からの指示を受け付ける(S36)。領域抽出部13は、入力装置40からの指示によって、候補領域23として採用するランド24が存在する場合には(S37:Y)、ランド24ごとに入力装置40から物体22の種類を指定する入力を受け付ける(S38)。ここで、ステップS33において基準形状をランド24にフィティングしているから、基準形状の輪郭線を候補領域23のエッジに用いる。その後、寸法生成部14は、物体22の種類を加味して、寸法図を記述するための寸法データを生成する(S39)。
また、領域抽出部13は、候補領域23として採用するランド24が存在しなければ(S26:N)、処理を終了する。つまり、ランド抽出部16が抽出したランド24に、物体22に対応したランド24が存在しなければ、処理を終了する。
なお、上述した各実施形態において、寸法計測装置10は、第2のデータを用いる場合を例としたが、第2のデータは、必ずしも必要ではなく、上述した技術から明らかなように、第1のデータのみでワイヤフレームモデルを生成することが可能である。