[実施の形態]
図1は四輪駆動車の概略を示す。図1に示すように、四輪駆動車200は、駆動力伝達系201,エンジン(主駆動源)202,トランスミッション203,主駆動輪としての前輪204L,204R及び補助駆動輪としての後輪205L,205Rを備えている。
駆動力伝達系201は、四輪駆動車200におけるトランスミッション203側から後輪205L,205R側に至る駆動力伝達経路にフロントディファレンシャル206及びリヤディファレンシャル(駆動力伝達対象部)207と共に配置され、かつ四輪駆動車200の車体(図示せず)に搭載されている。
そして、駆動力伝達系201は、主駆動輪側の駆動力伝達系201A,補助駆動輪側の駆動力伝達系201B及び駆動力伝達軸(プロペラシャフト)2を有し、四輪駆動車200の四輪駆動状態を二輪駆動状態に、また二輪駆動状態を四輪駆動状態にそれぞれ切り替え可能に構成されている。
主駆動輪側の駆動力伝達系201Aは、主駆動輪側の駆動力断続部(駆動力断続装置3)を含み、プロペラシャフト2の前輪204L,204R側に配置されている。補助駆動輪側の駆動力伝達系201Bは、補助駆動輪側の駆動力断続部(駆動力伝達装置1)を含み、プロペラシャフト2の後輪205L,205R側に配置されている。駆動力伝達装置1の詳細については後述する。
フロントディファレンシャル206は、サイドギヤ209L・209R,一対のピニオンギヤ210,ギヤ支持部材211及びフロントデフケース212を有し、トランスミッション203に連結されている。サイドギヤ209Lは前輪側のアクスルシャフト208Lに、またサイドギヤ209Rは前輪側のアクスルシャフト208Rにそれぞれ接続されている。一対のピニオンギヤ210は、サイドギヤ209L,209Rにギヤ軸を直交させて噛合する。ギヤ支持部材211は、一対のピニオンギヤ210を回転可能に支持する。フロントデフケース212は、ギヤ支持部材211,一対のピニオンギヤ210及びサイドギヤ209L,209Rを収容する。
リヤディファレンシャル207は、サイドギヤ214L・214R,一対のピニオンギヤ215,ギヤ支持部材216及びリヤデフケース217を有し、プロペラシャフト2に連結され、かつデフキャリア(図示せず)内に収容されている。そして、リヤディファレンシャル207は、エンジン202の駆動力を歯車機構7から、また電動モータ50(図2に示す)のモータ回転力をハウジング12(図2に示す)から受けて作動する。サイドギヤ214Lは後輪側のアクスルシャフト213Lに、またサイドギヤ214Rは駆動力伝達装置1(後輪側のアクスルシャフト213R)にそれぞれ接続されている。一対のピニオンギヤ215は、サイドギヤ214L,214Rにギヤ軸を直交させて噛合する。ギヤ支持部材216は、一対のピニオンギヤ215を回転可能に支持する。リヤデフケース217は、デフキャリア内に円すいころ軸受(図示せず)を介して回転可能に支持され、ギヤ支持部材216,一対のピニオンギヤ215及びサイドギヤ214L,214Rを収容する。
エンジン202は、トランスミッション203及びフロントディファレンシャル206を介して前輪側のアクスルシャフト208L,208Rに駆動力を出力することにより前輪204L,204Rを駆動する。
また、エンジン202は、トランスミッション203,駆動力断続装置3,プロペラシャフト2及びリヤディファレンシャル207を介して一方の後輪側のアクスルシャフト213Lに駆動力を出力することにより一方の後輪205Lを駆動する。エンジン202は、トランスミッション203,駆動力断続装置3,プロペラシャフト2,リヤディファレンシャル207及び駆動力伝達装置1を介して他方の後輪側のアクスルシャフト213Rに駆動力を出力することにより他方の後輪205Rを駆動する。
プロペラシャフト2は、駆動力断続装置3とリヤディファレンシャル207(駆動力伝達装置1)との間に配置されている。そして、プロペラシャフト2は、エンジン202の駆動力(駆動トルク)をフロントデフケース212から受けて前輪204L,204R側から後輪205L,205R側に伝達する。
プロペラシャフト2の前輪側端部には、互いに噛合するドライブピニオン60及びリングギヤ61からなる前輪側の歯車機構6が配置されている。プロペラシャフト2の後輪側端部には、互いに噛合するドライブピニオン70及びリングギヤ71からなる後輪側の歯車機構7が配置されている。
駆動力断続装置3は、第1のスプライン歯部30,第2のスプライン歯部31及びスリーブ32を有するドグクラッチからなり、四輪駆動車200の前輪204L,204R側に配置され、かつアクチュエータ(図示せず)を介して車両用のECU(Electronic Control Unit)218に接続されている。そして、駆動力断続装置3は、プロペラシャフト2とフロントデフケース212とを断続可能に連結する。第1のスプライン歯部30はフロントデフケース212に、また第2のスプライン歯部31はリングギヤ61にそれぞれ回転不能に接続されている。スリーブ32は、第1のスプライン歯部30及び第2のスプライン歯部31にスプライン嵌合可能に連結されている。ECU218の詳細については後述する。
(駆動力伝達装置1の全体構成)
図2は駆動力伝達システムを示す。図3(a)及び(b)は第1のユニットの第2のユニットに対する接触状態を示す。図4は駆動力伝達装置を示す。図2〜図4に示すように、駆動力伝達システムAにおける駆動力伝達装置1は、多板クラッチ8,ハウジング(第1の回転部材)12,インナシャフト(第2の回転部材)13及びカム機構16を有し、四輪駆動車200(図1に示す)の後輪205R(図1に示す)側に配置され、かつ装置ケース4内に収容されている。また、駆動力伝達装置1は、減速機構9(後述)と共にディスコネクトユニットを構成し、電動モータ51(後述)及びリヤディファレンシャル207(図1に示す)に連結されている。そして、ディスコネクトユニットは、四輪駆動車200の四輪駆動に伴い副駆動源5(電動モータ50)のモータ回転力(正方向のモータ回転力)を受けて作動し、プロペラシャフト2(図1に示す)と後輪側のアクスルシャフト213R(図1に示す)とを断続可能に連結する。
後輪側のアクスルシャフト213Rとプロペラシャフト2とは駆動力伝達装置1を介在させて連結されている。後輪側のアクスルシャフト213L(図1に示す)とプロペラシャフト2とは駆動力伝達装置1を介在させることなく連結されている。これにより、駆動力伝達装置1による連結時には、一方の後輪側のアクスルシャフト213Lとプロペラシャフト2とが、また他方の後輪側のアクスルシャフト213Rとプロペラシャフト2とがそれぞれ歯車機構7及びリヤディファレンシャル207(共に図1に示す)を介してそれぞれトルク伝達可能に連結される。一方、駆動力伝達装置1による連結の解除時には、一方の後輪側のアクスルシャフト213Lとプロペラシャフト2とが歯車機構7及びリヤディファレンシャル207を介して連結されたままであるが、他方の後輪側のアクスルシャフト213Rとプロペラシャフト2との連結が遮断される。
装置ケース4は、回転軸線O片側(図2の右側)に開口するケース本体40、及びケース本体40の開口部を閉塞するケース蓋体41からなり、四輪駆動車200の車体に取り付けられている。そして、装置ケース4は、駆動源用ハウジング52(後述)の熱容量よりも大きい熱容量をもち、駆動力伝達側の収容部として駆動力伝達装置1と共に第2のユニットを構成する。装置ケース4の材料としては、良好な熱伝導性をもつ例えばアルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。これにより、装置ケース4において良好な熱伝導が行われる。装置ケース4内には、潤滑油Lqを貯溜して駆動力伝達装置1(カム機構16及び多板クラッチ8等)を収容する主収容空間42が設けられている。
ケース本体40には、ハウジング12における第1のハウジングエレメント120を挿通させるエレメント挿通孔40a、及びエレメント挿通孔40aの外側開口周縁からその軸線方向に突出する円筒部40bが設けられている。
また、ケース本体40には、その外側面に突出し、かつエンジン202(図1に示す)と異なるカム作動用の副駆動源5を取り付けるための取付部40cが一体に設けられている。取付部40cは、減速機構用ハウジング94の一部を形成する。取付部40cには、回転軸線Oと平行な軸線両方向に開口する貫通孔400cが設けられている。ケース本体40とケース蓋体41とには回転軸90(回転軸線O)と平行な軸線をもつ丸ピンからなる複数(本実施の形態では3個)のガイド(固定ガイド)43が取り付けられている。複数のガイド43は、回転軸線O回りに等間隔をもって配置されている。
ケース本体40の外周面には、駆動源用ハウジング52を受けるハウジング受部40Aが設けられている。ハウジング受部40Aには、曲率半径Rをもち、かつ駆動源用ハウジング52側に開口する凹面400Aが設けられている。凹面400Aは、駆動源用ハウジング52の凸面52aに面接触する曲面で形成されている。ケース本体40と取付部40cとには、歯車伝達機構10における第2の歯車101(二点鎖線で示す)を回転可能に支持し、ガイド43と平行な支持軸(図示せず)が取り付けられている。
ケース蓋体41は、ケース本体40にボルト(図示せず)によって取り付けられ、全体がインナシャフト13(後述)を挿通させるキャップ部材によって形成されている。ケース蓋体41のケース本体40への取り付けは、位置決めピン411を用いて行われる。
ケース蓋体41には、ケース本体40の取付部40cに減速機構9等を介して対向する蓋部41a、及び蓋部41aの外端面に突出する補助筒部付きの外側円筒部41bが設けられている。蓋部41aと取付部40cとの間には、主収容空間42に連通する副収容空間44が設けられている。また、ケース蓋体41には、インナシャフト13を挿通させるシャフト挿通孔41c、及びシャフト挿通孔41cの内側開口周縁からその軸線方向に突出する内側円筒部41dが設けられている。
外側円筒部41bには、装置ケース4の内外に開口する貫通孔(ねじ孔)410b,411bが設けられている。貫通孔410bの外側開口周縁には、一部を空間部41eに臨ませた油圧センサ46がワッシャ47を介して配置されている。油圧センサ46は、カム機構16の作動時に発生するカム推力P1,P2の反力を反力受部材30Aの移動による油圧変化を検出する。貫通孔411b内には、空間部41eを閉塞する栓体43Bが取り付けられている。反力受部材30Aは、装置ケース4(ケース蓋体41)の空間部41eに進退可能に取り付けられている。内側円筒部41dの外周囲には、その外周面と外側円筒部41bの内周面との間に介在し、かつ装置ケース4の副収容空間44に連通する円環状の空間部41eが設けられている。蓋部41aには、副収容空間44に連通し、かつ軸線O1方向に沿って開口する凹孔410aが設けられている。
副駆動源5は、電動モータ50及びモータハウジング51を有し、モータ側の収容部としての駆動源用ハウジング52内に収容され、かつ減速機構用ハウジング94及び自転力付与部材92を挿通するボルト53によって取付部40cに取り付けられている。そして、副駆動源5は、モータ回転力を発生させて駆動源用ハウジング52と共に第1のユニットを構成する。また、副駆動源5は、電動モータ50がその出力方向を駆動力伝達装置1の入力方向の反対の方向とする位置に配置され、電動モータ50のモータ軸500が減速機構9及び歯車伝達機構10を介してカム機構16(カム部材17)に連結されている。
そして、副駆動源5は、電動モータ50が制御ユニットとしてのECU218に接続され、四輪駆動車200(図1に示す)の二輪駆動と四輪駆動とで各回転方向を互いに反対の方向とするモータ回転力(正方向のモータ回転力と逆方向のモータ回転力)を発生させる。これにより、四輪駆動車200(図1に示す)の四輪駆動時に電動モータ50において正方向のモータ回転力(駆動力)を発生させると、この正方向のモータ回転力(駆動力)が減速機構9で減速され、減速機構9から歯車伝達機構10を介してカム部材17(ギヤ部170a)に確実に伝達される。一方、四輪駆動車200の二輪駆動時に電動モータ50において逆方向のモータ回転力を発生させると、この逆方向のモータ回転力が減速機構9に伝達されることはない。
駆動源用ハウジング52は、ケース本体40におけるハウジング受部40Aの凹面400Aに適合する凸面52aを有し、凸面52aがケース本体40の凹面400Aに面接触する位置に配置されている。これにより、副駆動源5の駆動時に電動モータ50において発生した熱は、モータハウジング51及び駆動源用ハウジング52を介して装置ケース4に伝達され易くなる。この後、電動モータ50の発生熱は装置ケース4から潤滑油Lqに放散される。この場合、低温時に電動モータ50を駆動すると、電動モータ50の発生熱で装置ケース4内の潤滑油Lqを加熱してその粘度を低くすることができる。低温時には、電動モータ50が所定の時間にわたり連続して電力の供給を受け、四輪駆動車200の四輪駆動に伴い発生させるモータ回転力と反対方向のモータ回転力を発生させる。
本実施の形態では、ケース本体40(ハウジング受部40A)の凹面400Aに対する駆動源用ハウジング52における凸面52aの接触が図3(a)に示すように曲面によって行われるが、本発明はこれに限定されず、曲面による接触に代えて図3(b)に示すように平面同士で接触させてもよい。駆動源用ハウジング52は、内側面52bをモータハウジング51の外側面51aに密接させた状態で副駆動源5を内部に収容する。これにより、電動モータ50で発生した熱の装置ケース4に対する熱伝達は一層効果的に行われる。駆動源用ハウジング52の材料としては、装置ケース4の材料と同様に、良好な熱伝導性をもつ例えばアルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。これにより、駆動源用ハウジング52において良好な熱伝導が行われる。
なお、図2は部分断面図であり、電動モータ50のモータハウジング51は側方からの外観を示す。モータハウジング51は、電動モータ50と共にモータ部(副駆動源5)を構成し、駆動源用ハウジング52に取り付けられている。電動モータ50の回転部は、モータハウジング51に対して回転可能に配置され、かつモータ軸500に取り付けられている。電動モータ50は、モータハウジング51に対してモータ軸500が回転する。
図5は減速機構を示す。本実施の形態において、減速機構は、偏心揺動減速機構であり、偏心揺動減速機構のうちでも少歯数差インボリュート減速機構である。偏心揺動減速機構を用いることにより大きな減速比を得ることができる。図2及び図5に示すように、減速機構9は、回転軸90,入力部材91,自転力付与部材92及び複数(本実施の形態では6個)の出力部材93を有し、駆動源用ハウジング52とケース本体40の取付部40cとの間に介在して配置され、かつ減速機構用ハウジング94内に収容されている。そして、減速機構9は、電動モータ50のモータ回転力を減速して駆動力を歯車伝達機構10に伝達する。
回転軸90は、電動モータ50のモータ軸500の軸線O1(回転軸90の中心軸線と等しい)から偏心量δをもって平行に偏心する軸線O2を中心軸線とする偏心部90aを有し、モータ軸500に連結され、かつ減速機構用ハウジング94のハウジングエレメント940及び歯車伝達機構10の第1の歯車100にそれぞれ玉軸受95,96を介して回転可能に支持されている。
入力部材91は、軸線O3(本実施の形態では軸線O2とする)を中心軸線とする中心孔91aを有する外歯歯車からなり、減速機構用ハウジング94内に収容され、かつ中心孔91aの内周面と偏心部90aの外周面との間に針状ころ軸受97を介在させて回転軸90に回転可能に支持されている。針状ころ軸受97に代えて、ラジアル荷重が受けられる他の種類の転がり軸受であってもよい。そして、入力部材91は、電動モータ50からモータ回転力を受けて偏心量δをもつ矢印m1,m2方向の円運動(軸線O2が軸線O1回りの公転運動)を行う。
入力部材91には、軸線O2回りに等間隔をもって並列する複数(本実施の形態では6個)の貫通孔としてのピン挿通孔91bが設けられている。ピン挿通孔91bの孔径は、針状ころ軸受98の外径に偏心量δを加えた寸法よりも大きい寸法に設定されている。入力部材91の外周面には、軸線O2を中心軸線とするピッチ円のインボリュート歯形をもつ外歯91cが設けられている。
自転力付与部材92は、軸線O4(本実施の形態では軸線O1とする)を中心軸線とする内歯歯車からなり、減速機構用ハウジング94のハウジングエレメント940と装置ケース4の取付部40cとの間に介在して配置され、全体が軸線O1の両方向に開口して減速機構用ハウジング94の一部を構成する円環部材によって形成されている。そして、自転力付与部材92は、入力部材91に噛合し、電動モータ50のモータ回転力を受けて公転する入力部材91に矢印n1,n2方向(軸線O2回り)に自転力を付与する。自転力付与部材92の内周面には、入力部材91の外歯91cに噛合するインボリュート歯形の内歯92aが設けられている。内歯92aの歯数をZ3とするとともに、入力部材91の外歯91cの歯数をZ2とすると、減速機構9の減速比αがα=Z2/(Z3−Z2)から算出される。
複数の出力部材93は、略均一な外径をもつピンからなり、入力部材91のピン挿通孔91bを挿通して歯車伝達機構10における第1の歯車100のピン取付孔100aに取り付けられている。そして、複数の出力部材93は、自転力付与部材92によって付与された自転力を入力部材91から受けて第1の歯車100に出力する。
複数の出力部材93の外周面には、入力部材91におけるピン挿通孔91bの内周面との間の接触抵抗を低減するための針状ころ軸受98が取り付けられている。
歯車伝達機構10は、第1の歯車100及び第2の歯車101を有し、減速機構9とカム機構16との間に介在して配置され、かつ装置ケース4内に収容されている。歯車伝達機構10では、減速機構9で減速された副駆動源5からの駆動力を受けてカム機構16に伝達する。
第1の歯車100は、回転軸90の軸線O1上に配置され、かつ装置ケース4内に玉軸受102,103を介して回転可能に支持され、全体が軸線両方向に開口する段状の円筒部材によって形成されている。第1の歯車100の外周囲には、その外周面と取付部40cの内周面との間に介在するシール機構104が配置されている。
第2の歯車101は、第1の歯車100に噛合する位置に配置され、かつ支持軸(図示せず)に玉軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。
(多板クラッチ8の構成)
多板クラッチ8は、図4に示すように、回転軸線O方向に並列する複数のインナクラッチプレート80及び複数のアウタクラッチプレート81を有する摩擦式のクラッチからなり、ハウジング12とインナシャフト13との間に配置されている。
そして、多板クラッチ8は、インナクラッチプレート80及びアウタクラッチプレート81のうち互いに隣り合う内外のクラッチプレート同士を摩擦係合させ、またその摩擦係合を解除してハウジング12とインナシャフト13とを断続可能に連結する。
インナクラッチプレート80及びアウタクラッチプレート81は、回転軸線Oに沿って交互に配置され、全体が環状の摩擦板によって形成されている。インナクラッチプレート80及びアウタクラッチプレート81のうち互いに隣り合う2つのクラッチプレート間の初期状態におけるクリアランスCは、四輪駆動車200(図1に示す)の二輪駆動時に潤滑油の粘性に基づく引き摺りトルクによって内外のクラッチプレート同士が摩擦係合しない寸法に設定されている。
複数のインナクラッチプレート80は、その内周部にストレートスプライン嵌合部80aを有し、ストレートスプライン嵌合部80aを円筒部13a(インナシャフト13)のストレートスプライン嵌合部130aに嵌合させてインナシャフト13に相対回転不能かつ相対移動可能に連結されている。
複数のインナクラッチプレート80には、その円周方向に沿って並列し、かつ回転軸線O方向に開口する複数の油孔80bが設けられている。
複数のアウタクラッチプレート81は、その外周部にストレートスプライン嵌合部81aを有し、ストレートスプライン嵌合部81aを第2のハウジングエレメント121のストレートスプライン嵌合部121b(後述)に嵌合させてハウジング12に相対回転不能かつ相対移動可能に連結されている。
(ハウジング12の構成)
ハウジング12は、第1のハウジングエレメント120及び第2のハウジングエレメント121からなり、後輪側のアクスルシャフト213R(図1に示す)の軸線(回転軸線O)上に配置され、かつ装置ケース4内に針状ころ軸受122,123を介して回転可能に支持されている。
第1のハウジングエレメント120は、回転軸線Oを軸線とする軸状部材からなり、ハウジング12の一方側(図4では左側)端部に配置され、かつサイドギヤ214R(図1に示す)にスプライン嵌合によって連結されている。第1のハウジングエレメント120の外周面とエレメント挿通孔40a及び円筒部40bの両内周面との間に針状ころ軸受122が介在して配置されている。第1のハウジングエレメント120の外周面と円筒部40bの内周面との間には、エレメント挿通孔40aの軸線方向に並列するシール機構124,125が介在して配置されている。第1のハウジングエレメント120には、カム機構16側に開口する丸孔からなる凹部120aが設けられている。
第2のハウジングエレメント121は、ハウジング12の他方側(図4では右側)端部に配置され、全体が有底円筒部材によって形成されている。第2のハウジングエレメント121には、カム機構16側に開口する収容空間121aが設けられている。収容空間121aは、第1のハウジングエレメント120の凹部120aと装置ケース4の主収容空間42とに連通している。また、第2のハウジングエレメント121には、その内周面に露出するストレートスプライン嵌合部121bが設けられている。第2のハウジングエレメント121の底部とケース本体40の挿通孔40aの内側開口周縁との間には針状ころ軸受123が介在して配置されている。
(インナシャフト13の構成)
インナシャフト13は、ハウジング12の回転軸線O上に配置され、かつハウジング12に針状ころ軸受130,131を介して、またケース蓋体41に玉軸受132を介して回転可能に支持されている。インナシャフト13は、各外径が互いに異なる円筒部13a〜13c,軸部13dを有し、軸線方向片側(図1に示す後輪205R側)に開口する有底円筒部材によって形成されている。インナシャフト13は、その開口部内に後輪側のアクスルシャフト213R(図1に示す)の先端部を挿入させて収容する。後輪側のアクスルシャフト213Rは、インナシャフト13にスプライン嵌合によって相対回転不能かつ相対移動可能に連結されている。
円筒部13aは、円筒部13cと軸部13dとの間に介在して配置されている。円筒部13aの外径は、円筒部13b,13c及び軸部13dの各外径よりも大きい寸法に設定されている。円筒部13aの外周面には、第2のハウジングエレメント121の主収容空間121aに露出し、かつ多板クラッチ8におけるインナクラッチプレート80のストレートスプライン嵌合部80aに嵌合するストレートスプライン嵌合部130aが設けられている。円筒部13aの底部とハウジング12における第2のハウジングエレメント121の底部との間には針状ころ軸受131が介在して配置されている。
円筒部13bは、インナシャフト13の一方側(図4では右側)端部に配置されている。円筒部13bの外径は、円筒部13cの外径よりも小さい寸法に設定されている。円筒部13bの外周面とケース蓋体41における内側円筒部41dの内周面との間には玉軸受132及びシール機構133が介在して配置されている。
円筒部13cは、円筒部13aと円筒部13bとの間に介在して配置されている。円筒部13cの外径は、円筒部13aの外径と円筒部13bの外径との間の寸法に設定されている。
軸部13dは、インナシャフト13の他方側(図4では左側)端部に配置され、かつハウジング12における第1のハウジングエレメント120の凹部120a内に収容されている。軸部13dの外径は、円筒部13a〜13cの各外径よりも小さい寸法に設定されている。軸部13dの外周面と第1のハウジングエレメント120における凹部120aの内周面との間に針状ころ軸受130が介在して配置されている。
(ECU218の構成)
ECU218は、四輪駆動車200(図1に示す)の車体に搭載され、かつ副駆動源5の電動モータ50に接続されている。ECU218には、外気温度を検出する温度センサ219が接続されている。
そして、ECU218は、温度センサ219からの出力信号S1を入力し、四輪駆動車200の四輪駆動に伴い発生させるモータ回転力(正方向のモータ回転力)と反対方向のモータ回転力(逆方向のモータ回転力)を発生させるための制御信号S2を電動モータ50に出力する。この場合、温度センサ219によって外気温度が検出され、この検出温度が「閾値以下である」とECU218で確認されると、電動モータ50に制御信号S2が出力され、電動モータ50がモータ回転力を発生させる。本実施の形態では、例えば外気温度が−40℃以下である場合に電動モータ50が逆方向のモータ回転力を発生させる。
これにより、電動モータ50の発生熱がモータハウジング51,駆動源用ハウジング52及びケース本体40を介して潤滑油Lqに伝達される。
(カム機構16の構成)
図6はカム機構を示す。図4及び図6に示すように、カム機構16は、カム部材(入力部材)170,リテーナ(出力部材)18及び転動部材19を有し、インナシャフト13における円筒部13cの外周囲に配置され、かつ装置ケース4の主収容空間42に収容されている。そして、カム機構16は、多板クラッチ8にクラッチ動作力となる押付力を付与するためのカム推力に副駆動源5(電動モータ50)からのモータ回転力(減速機構9からの駆動力)を変換する。カム推力には、多板クラッチ8のインナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81との間にクリアランスCを例えばC=0とするための第1のカム推力P1、及び多板クラッチ8のインナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81とを互いに摩擦係合させるための第2のカム推力P2が含まれる。
図7はカム部材を示す。図4及び図7に示すように、カム部材17は、インナシャフト13を挿通させるシャフト挿通孔17aを有し、カム機構16の一方側(図4では右側)端部に配置され、回転軸線O回りに回転する円環部材によって形成されている。
カム部材17の外周縁には、その放射方向に突出する凸片170が設けられている。凸片170には、歯車伝達機構10における第2の歯車101に噛合するギヤ部170aが設けられている。
カム部材17の軸線方向一方側端面には、シャフト挿通孔17aの開口周縁から後輪205R(図1に示す)側に向かって突出する円筒部17bが設けられている。円筒部17bの内周面とインナシャフト13における円筒部13cの外周面との間には針状ころ軸受171が介在して配置されている。カム部材17の軸線方向一方側端面と反力受部材30Aのクラッチ側端面との間には針状ころ軸受172が介在して配置されている。カム部材17の軸線方向他方側(図4では左側)端面は、多板クラッチ8に対向するカム面としての凹凸面173で形成されている。
凹凸面173は、カム部材17の軸線回りに交互に並列する凹部174及び凸部175を有し、転動部材19を転動させて回転軸線Oに沿う方向の第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2を転動部材19に付与する。本実施の形態では、カム部材17の円周方向に互いに隣接する凹部174及び凸部175を一組の凹凸部とすると、三組の凹凸部から凹凸面173が構成される。
凹部174は、切り欠き幅が略均一な一対の切り欠き側面174a,174b、及び一対の切り欠き側面174a,174b間に介在する切り欠き底面174cを有する断面略矩形状の切り欠きによって形成されている。
一方の切り欠き側面174aは、回転軸線O回りの一方側で凹部174から凸部175へ転動部材19を誘導するための曲面をもつ誘導面として機能する。他方の切り欠き側面174bは、回転軸線O回りの他方側で切り欠き底面174cに略直交するストッパ面として機能する。
凸部175は、3つ凹部174のうち互いに隣り合う2つの凹部間に介在して配置されている。凸部175において、転動部材19側の端面は、カム部材17の円周方向に互いに隣接する面175a,175bから構成されている。
一方の面175aは、始端部175a1及び終端部175a2を有し、凹部174側から他方の面175bに向かって(カム部材17の円周方向に沿って)カム部材17の軸線方向厚さ(凸部175の突出高さ)を漸次大きくする傾斜面からなる軌道面で形成されている。
他方の面175bは、カム部材17の軸線方向厚さを略均一な寸法とする平面で形成されている。
図8は出力部材(リテーナ)を示す。図4及び図8に示すように、リテーナ18は、インナシャフト13を挿通させるシャフト挿通孔18aを有し、カム機構16の他方側(図4では左側)端部に配置され、回転軸線Oの方向に移動可能な円環部材によって形成されている。そして、リテーナ18は、その回転の規制を複数のガイド(固定ガイド)43で受けて第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2を多板クラッチ8側に出力し、かつ転動部材19を転動可能に保持するリテーナによって構成されている。シャフト挿通孔18aは、転動部材19を収容する収容空間として機能する。
リテーナ18のクラッチ側端面には、シャフト挿通孔18aの開口周縁から多板クラッチ8側に向かって突出する円筒部18bが設けられている。円筒部18bの外周囲には、リテーナ18から第1のカム推力P1及び第2のカム推力P2を受けて多板クラッチ8(アウタクラッチプレート81)を押し付ける円環状の押付部材20が配置されている。押付部材20の片側(多板クラッチ側端面と反対側)端面とリテーナ18のクラッチ側端面との間には針状ころ軸受21が介在して配置されている。
リテーナ18の外周縁には、その放射方向に突出する複数(本実施の形態では3個)の凸片22が設けられている。複数の凸片22は、リテーナ18の円周方向に等間隔をもって配置されている。複数の凸片22には、ガイド43を挿通させるガイド挿通孔22aが設けられている。ガイド挿通孔22aの内周面とガイド43の外周面との間には軸受ブッシュ23が介在して配置されている。これにより、リテーナ18がガイド43に沿って移動する際の抵抗が低減される。ガイド挿通孔22aの開口周縁とケース本体40のスプリング受面40dとの間に復帰用スプリング24が介在して配置されている。
リテーナ18には、その内外周面に開口し、かつ支持ピン25を挿通させる複数(本実施の形態では3個)のピン挿通孔18cが設けられている。複数のピン挿通孔18cは、カム部材17及びリテーナ18の軸線(回転軸線O)と直交する方向の軸線Lをもち、それぞれが対応する凸片22の近傍に配置されている。複数のピン挿通孔18cの内側開口周縁には円環状のころ受部材26を着座させる座面180cが、また外側開口周縁にはナット27を着座させる座面181cがそれぞれ設けられている。
支持ピン25は、外径を互いに異にする大小2つの胴部25a,25b(大径の胴部25a,小径の胴部25b)を有し、胴部25a及びナット27によって軸線方向に移動の規制を受けた状態でリテーナ18に取り付けられている。支持ピン25内には、その軸線に軸線を一致させて芯材28が埋め込まれている。
大径の胴部25aは、シャフト挿通孔18a内に露出した状態で支持ピン25の軸線方向一方側(回転軸線O側)端部に配置されている。大径の胴部25aの外周面は針状ころ29の内側軌道面として機能する。大径の胴部25aには、回転軸線O側の端部で外周面に突出し、かつ複数の針状ころ29を介してころ受部材26に対向する鍔部250aが設けられている。
小径の胴部25bは、ピン挿通孔18cを挿通した状態で支持ピン25の軸線方向他方側(ガイド43側)端部に配置されている。小径の胴部25bには、ナット27を螺合(結合)するねじ部250bが設けられている。
転動部材19は、リテーナ18のシャフト挿通孔18a内でピン挿通孔18cの軸線L上に配置され、かつ大径の胴部25aの外周面に針状ころ29を介して回転可能に支持され、全体が無底円筒部材によって形成されている。そして、転動部材19は、その外周面が凹凸面173上を転動する。
転動部材19には、軸線方向中央部で針状ころ29側に突出する円筒状の凸部19aが設けられている。凸部19aの軸線方向一方側端面は鍔部250aの端面に、また軸線方向他方側端面はころ受部材26の端面にそれぞれ対向する。凸部19aの内周面は針状ころ29の外側軌道面として機能する。支持ピン25と複数の針状ころ29と転動部材19とは、それぞれ内輪(又は内軸)と転動体と外輪とに相当し、外輪の外周面が凹凸面173を転動する一種のローラである。
(駆動力伝達装置1の動作)
次に、本実施の形態に示す駆動力伝達装置の動作につき、図1,図2及び図7を用いて説明する。
図1において、四輪駆動車200の二輪駆動時には、エンジン202の回転駆動力がトランスミッション203を介してフロントディファレンシャル206に伝達される。そして、フロントディファレンシャル206から前輪側のアクスルシャフト208L,208Rを介して前輪204L,204Rにエンジン202の回転駆動力が伝達され、前輪204L,204Rが回転駆動される。
この場合、駆動力断続装置3では、第1のスプライン歯部30と第2のスプライン歯部31との間でトルク伝達が不能となっている。また、図2(下半分)において、副駆動源5の電動モータ50が非通電状態であるため、電動モータ50のモータ回転力が減速機構9及び歯車伝達機構10を介してカム機構16に伝達されず、カム機構16が作動することがない。また、転動部材19は凹部174の切り欠き底面174c(図7に示す)に当接する位置に配置されているため、インナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81とは摩擦係合していない。
一方、二輪駆動状態にある四輪駆動車200を四輪駆動状態に切り替えるには、駆動力伝達装置1によってプロペラシャフト2と後輪側のアクスルシャフト213Rとをトルク伝達可能に連結する。引き続き、駆動力断続装置3によってフロントデフケース212とプロペラシャフト2とをトルク伝達可能に連結する。プロペラシャフト2と後輪側のアクスルシャフト213Lとは、リヤディファレンシャル207等を介してトルク伝達可能に常時連結されている。
このため、エンジン202の回転駆動力がプロペラシャフト2からリヤディファレンシャル207及び後輪側のアクスルシャフト213L等を介して後輪205Lに伝達され、後輪205Lが回転駆動される。
ここで、駆動力伝達装置1によってプロペラシャフト2と後輪側のアクスルシャフト213Rとを連結するには、図2(上半分)に示すように、電動モータ50のモータ回転力をカム機構16に付与し、カム機構16を作動させる。この場合、カム機構16が作動すると、カム部材17が回転軸線O回り一方向(リテーナ18を矢印X方向に移動させる方向)に回転する。
これに伴い、転動部材19は、図7に示すカム部材17における凹凸面173の凹部174に配置された状態(初期状態)から転動し、カム部材17の凸部175の一方の面175aに乗り上げて始端部175a1に配置される。この際、カム機構16において、多板クラッチ8のインナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81との間のクリアランスC(図示せず)をC=0とするための第1のカム推力P1に電動モータ50のモータ回転力が変換される。
このため、転動部材19は、回転軸線Oに沿って多板クラッチ8側(矢印X方向)に移動し、この移動方向に針状ころ29及び支持ピン25を介してリテーナ18を押し付ける。
これに伴い、リテーナ18は、復帰用スプリング24のばね力に抗して矢印X方向に移動し、インナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81とを互いに接近させる方向に押付部材20を押し付ける。
これにより、押付部材20がインナクラッチプレート80及びアウタクラッチプレート81を矢印X方向に押し付け、互いに隣り合う2つのクラッチプレート間のクリアランスC(図示せず)が例えばC=0となる。
次に、カム部材17が電動モータ50のモータ回転力を受けて回転軸線O回り一方向にさらに回転すると、転動部材19が図7に示す凸部175の一方の面175aを他方の面175bに向かって転動する。この後、転動部材19が一方の面175aの終端部175a2に到達して凸部175の他方の面175bに乗り上げる。この際、例えば始端部175a1と終端部175a2との間で転動部材19が一方の面175aを転動する範囲であって、終端部175a2に近い側に到達したとき、カム機構16ではインナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81とを摩擦係合させるための第2のカム推力P2に電動モータ50のモータ回転力が変換される。
このため、転動部材19は、回転軸線Oに沿って多板クラッチ8側(矢印X方向)に移動し、この移動方向に針状ころ29及び支持ピン25を介してリテーナ18を押し付ける。
これに伴い、リテーナ18は、復帰用スプリング24のばね力に抗して矢印X方向に移動し、インナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81とを互いに摩擦係合させる方向に押付部材20を押し付ける。
このため、押付部材20がインナクラッチプレート80及びアウタクラッチプレート81を矢印X方向に押し付け、互いに隣り合う2つのクラッチプレート同士が摩擦係合する。
これにより、エンジン202の回転駆動力は、ハウジング12からインナシャフト13に、さらにインナシャフト13から後輪側のアクスルシャフト213Rを介して後輪205Rに伝達され、後輪205Rが回転駆動される。
上記実施の形態において、二輪駆動状態での走行時に外気温度が例えば−20℃となり、この外気温度を温度センサ219が検出すると、温度センサ219では出力信号S1をECU218に出力する。ECU218では、温度センサ219から出力信号S1を入力すると、逆方向のモータ回転力を発生させるための制御信号S2を電動モータ50に出力する。電動モータ50では、制御信号S2を入力し、逆方向のモータ回転力を発生させる。
電動モータ50において発生した熱(発生熱)は、モータハウジング51を介して駆動源用ハウジング52に伝達される。駆動源用ハウジング52では、モータハウジング51の外側面51aからの発生熱を内側面52bで受けた後、凸面52aから装置ケース4(ハウジング受部40A)に伝達する。装置ケース4では、駆動源用ハウジング52からの発生熱をハウジング受部40Aの凹面400Aで受けて装置ケース4内の潤滑油Lqに放散する。
すなわち、電動モータ50での発生熱は、モータハウジング51及び駆動源用ハウジング52を介して装置ケース4に伝達され、装置ケース4からその内部の潤滑油Lqに放散される。この場合、駆動力伝達装置1を作動する第1のユニット(副駆動源5及び駆動源用ハウジング52)を構成する駆動源用ハウジング52の凸面52aが装置ケース4の凹面400Aに面接触しているため、駆動源用ハウジング52の装置ケース4に対する熱伝達が効果的に行われる。
また、上記実施の形態においては、駆動源用ハウジング52の内側面52bがモータハウジング51の外側面51aに密接するため、駆動源用ハウジング52からモータハウジング51への熱伝達が一層効果的に行われる。
従って、本実施の形態では、電動モータ50の発生熱が装置ケース4からその内部の潤滑油Lqに放散されると、装置ケース4内の潤滑油Lqを加熱してその粘度を低くすることができる。
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
本実施の形態においては、駆動源用ハウジング52の凸面52aが装置ケース4の凹面400Aに面接触する構造であるため、駆動源用ハウジング52の装置ケース4(潤滑油Lq)に対する熱伝達が効果的に行われる。これにより、潤滑油Lqの温度上昇を促進してその粘度を低くすることができ、多板クラッチ8におけるインナクラッチプレート80とアウタクラッチプレート81との間に潤滑油Lqの粘性に基づいて発生する引き摺りトルクを低減することができる。
以上、本発明の駆動力伝達システムを上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)上記実施の形態では、減速機構9が偏心揺動減速機構である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、減速歯車を有する歯車伝達機構からなる減速機構であってもよい。
(2)上記実施の形態では、駆動源用ハウジング52の外側面を凸面52aとするとともに、ケース本体40(ハウジング受部40A)の外側面を凹面400Aとし、凹面400Aに凸面52aを面接触させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、駆動源用ハウジングの外側面を凹面とするとともに、ケース本体の外側面を凸面とし、凸面を凹面に面接触させても勿論よい。
(3)上記実施の形態では、ハウジング12が入力軸側に、またインナシャフト13が出力軸側にそれぞれ連結されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ハウジングを出力軸側に、またインナシャフトを入力軸側にそれぞれ連結しても本実施の形態と同様の効果を奏する。