JP6131433B2 - 細胞rna発現のための方法 - Google Patents

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Description

発明の技術分野
本発明は、RNAをトランスフェクトした細胞などの細胞におけるRNA発現を、RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減することによって強化することに関する。したがって本発明は、細胞中でRNAを発現させるための方法であって、その細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するステップを含む方法を提供する。細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性の低減は、その細胞におけるRNAの安定性を増加させ、かつ/またはRNAの発現を増加させる。
発明の背景
可逆的な遺伝子治療の一種としてRNAを使用することの利点には、一過性発現と非形質転換性とが含まれる。RNAは、核に進入しなくても発現することができ、そのうえ宿主ゲノムに組み込むこともできないので、腫瘍形成のリスクが排除される。RNAで達成できるトランスフェクション率は比較的高く、多くの細胞タイプで>90%にもなるため、トランスフェクト細胞を選択する必要がない。さらにまた、達成されるタンパク質の量も、生理的発現におけるそれに相当する。
RNAは、胚または胎児を生じることなく体細胞を幹様細胞に脱分化させるのに有用であると記述されている。幹細胞の特徴、特に多能性を有する細胞への体細胞の脱分化は、体細胞の脱分化を誘導する因子をコードするRNAを体細胞に導入し、その体細胞を培養して脱分化させることによって達成することができる。脱分化させた後に、同じまたは異なる体細胞タイプ、例えば神経細胞、造血細胞、筋細胞、上皮細胞、および他の細胞タイプへと再分化するように、細胞を誘導することができる。したがってそのような幹様細胞は、「細胞治療」による変性疾患の処置に医学的応用を有し、心臓障害、神経障害、内分泌障害、血管障害、網膜障害、皮膚障害、筋骨格障害、および他の疾患の処置における新規な治療戦略に利用しうる。
さらにまた、RNAの使用は、DNAベースのワクチンが持つ潜在的リスクを回避するための魅力的な代替策になる。DNAの場合と同様に、細胞へのRNAの移入も、インビボで細胞性および体液性の免疫応答を誘導することもできる。
特に、インビトロ転写RNA(IVT−RNA)による免疫療法のために、2つの異なる戦略が追究されており、これらはどちらも、さまざまな動物モデルにおける試験において成功を収めている。RNAは異なる免疫処置経路によって患者に直接注射されるか、または従来のトランスフェクション法を使ってインビトロでIVT−RNAを細胞にトランスフェクトしてから、そのトランスフェクト細胞が患者に投与される。RNAは例えば翻訳され、発現したタンパク質が細胞表面のMHC分子上に提示されて、免疫応答を惹起する。
移入されたIVT−RNAをより高く長時間にわたって発現させるために、さまざまな修飾によってIVT−RNAを安定化する試みがなされてきた。しかし、細胞中でペプチドおよびタンパク質を発現させるためのRNAトランスフェクションに基づく戦略の成功にもかかわらず、RNAの安定性、コードされているペプチドまたはタンパク質の持続的発現、およびRNAの細胞毒性に関する問題は依然として残っている。例えば、外因性一本鎖RNAは哺乳動物細胞における防御機序を活性化することが知られている。
本発明は、細胞中でRNAを発現させるための方法であって、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するステップを含む方法に関する。
一実施形態では、RNAが、例えばエレクトロポレーションによって、細胞に導入されるか、または導入されている。
一実施形態では、RNAが、インビトロ転写RNAである。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらし、ここで、細胞におけるRNAの発現の強化は、好ましくは、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞を少なくとも1つのPKR阻害剤で処理することを含む。一実施形態では、少なくとも1つのPKR阻害剤による細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる。一実施形態では、PKR阻害剤がRNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である。一実施形態では、PKR阻害剤がイミダゾロ−オキシインドール化合物である。一実施形態では、PKR阻害剤が、6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンまたは2−アミノプリンである。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのウイルス由来阻害剤であり、ここで、PKRのウイルス由来阻害剤は、好ましくは、ワクシニアウイルスE3および/もしくはK3、またはそれらのRNAからなる群より選択される。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、PKR遺伝子の発現をサイレンシングすることを含む。
一実施形態では、細胞が、バリア機能を有する細胞である。一実施形態では、細胞が、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、または内皮細胞であり、ここで、内皮細胞は、好ましくは、心臓の内皮細胞、肺の内皮細胞、または臍帯静脈内皮細胞である。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
本発明は、RNAを発現させようとする細胞を処理するための、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するのに適した手段、例えば本明細書に記載する手段、特に少なくとも1つのPKR阻害剤、例えば本明細書に記載するPKR阻害剤の少なくとも1つの使用にも関する。
一実施形態では、RNAが、例えばエレクトロポレーションによって、細胞に導入されるか、または導入されている。
一実施形態では、RNAがインビトロ転写RNAである。
一実施形態では、細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらし、ここで、細胞におけるRNAの発現の強化は、好ましくは、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む。
一実施形態では、少なくとも1つのPKR阻害剤による細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる。一実施形態では、PKR阻害剤がRNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である。一実施形態では、PKR阻害剤がイミダゾロ−オキシインドール化合物である。一実施形態では、PKR阻害剤が6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンまたは2−アミノプリンである。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのウイルス由来阻害剤であり、ここで、PKRのウイルス由来阻害剤は、好ましくは、ワクシニアウイルスE3および/もしくはK3、またはそれらのRNAからなる群より選択される。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するための手段が、PKR遺伝子の発現をサイレンシングするための手段を含む。
一実施形態では、細胞が、バリア機能を有する細胞である。一実施形態では、細胞が、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、または内皮細胞であり、ここで、内皮細胞は、好ましくは、心臓の内皮細胞、肺の内皮細胞、または臍帯静脈内皮細胞である。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
本発明は、幹細胞特徴を有する細胞を提供するための方法であって、(i)体細胞を含む細胞集団を用意するステップ、(ii)体細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するステップ、(iii)幹細胞特徴を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする1つ以上の因子を発現する能力を有するRNAを、体細胞の少なくとも一部に導入するステップ、および(iv)幹細胞特徴を有する細胞の発生を可能にするステップを含む方法にも関する。
一実施形態では、RNAが、エレクトロポレーションによって、体細胞の少なくとも一部に導入される。
一実施形態では、RNAがインビトロ転写RNAである。
一実施形態では、前記1つ以上の因子が、OCT4およびSOX2を含む。前記1つ以上の因子は、KLF4および/またはc−MYCおよび/またはNANOGおよび/またはLIN28を、さらに含みうる。一実施形態では、前記1つ以上の因子は、OCT4、SOX2、KLF4およびc−MYCを含み、さらにLIN28を含みうる。一実施形態では、前記1つ以上の因子が、OCT4、SOX2、NANOGおよびLIN28を含む。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらし、ここで、細胞におけるRNAの発現の強化は、好ましくは、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、少なくとも1つのPKR阻害剤で細胞を処理することを含む。一実施形態では、少なくとも1つのPKR阻害剤による細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる。一実施形態では、PKR阻害剤がRNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である。一実施形態では、PKR阻害剤がイミダゾロ−オキシインドール化合物である。一実施形態では、PKR阻害剤が、6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンまたは2−アミノ−プリンである。一実施形態では、PKR阻害剤がPKRのウイルス由来阻害剤であり、ここで、PKRのウイルス由来阻害剤は、好ましくは、ワクシニアウイルスE3および/もしくはK3、またはそれらのRNAからなる群より選択される。
一実施形態では、細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、PKR遺伝子の発現をサイレンシングすることを含む。
一実施形態において、本方法は、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で体細胞を培養するステップをさらに含み、ここで、前記少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、好ましくは、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、トリコスタチンAおよび/またはスクリプタイドを含む。
一実施形態では、ステップ(iv)が、胚性幹細胞培養条件下で体細胞を培養することを含む。
一実施形態では、幹細胞特徴が胚性幹細胞形態を含む。
一実施形態では、幹細胞特徴を有する細胞が、正常核型を有し、テロメラーゼ活性を発現し、胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーを発現し、かつ/または胚性幹細胞に特有の遺伝子を発現する。
一実施形態では、幹細胞特徴を有する細胞が多能性状態を示す。
一実施形態では、幹細胞特徴を有する細胞が、3つ全ての一次胚葉の高度な派生物へと分化する発生能を有する。
一実施形態では、体細胞が、肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞または真皮線維芽細胞などの線維芽細胞である。好ましくは、体細胞はヒト細胞である。
本発明は、分化細胞タイプを提供するための方法であって、(i)本発明による幹細胞特徴を有する細胞を提供するための方法を使って、幹細胞特徴を有する細胞を用意するステップ、および(ii)分化細胞タイプへの部分的なまたは完全な分化を誘導または指示する条件下で、幹細胞特徴を有する細胞を培養するステップを含む方法にも関する。
本明細書において述べるように、細胞におけるPKRの阻害は、インターフェロンの生産を誘導する。したがって本発明は、細胞によるインターフェロン生産を増加させる方法であって、細胞におけるPKRの活性を低減するステップを含む方法にも関する。本発明によれば、細胞によるインターフェロン生産は、インビトロで、またはインビボで、増加させることができる。細胞によるインターフェロン生産をインビトロで増加させた場合は、続いて、その細胞を対象に投与することができる。
インターフェロンは、その抗増殖およびアポトーシス効果、その抗血管新生効果、および免疫応答を調整するその能力で知られている。したがって本発明は、対象、好ましくは、がん患者などの患者を処置する方法であって、該対象の細胞におけるPKRの活性を、例えばPKRの発現および/または活性の阻害剤を投与することによって、低減するステップを含む方法にも関する。該対象の処置は、該対象の免疫系を調整すること、好ましくは活性化することを目標としうる。該対象の処置は、特に、該患者における抗がん効果、特に抗がん免疫応答を達成または強化することを目標としうる。そのような処置は、インビトロで細胞によるインターフェロン生産を増加させ、次にその細胞を対象に投与することによっても達成されうる。一実施形態では、細胞が自己細胞である。
本発明の上記の態様における細胞は、本明細書に記載する細胞でありうる。インターフェロンは、好ましくは、インターフェロン−αおよび/またはインターフェロン−βであり、より好ましくはインターフェロン−αである。本明細書に記載するように、細胞におけるPKRの活性は低減することができる。さらにまた、本発明の上記態様において、PKRの活性を低減する場合、RNAは、例えば本明細書に記載するような細胞に、導入されてもよいし、RNAは細胞に導入されなくてもよい。RNAを細胞に導入する場合、RNAは、本明細書に記載するRNAでありうる。
IVT RNAによるインターフェロンの誘導 初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079SK)に、ホタルルシフェラーゼをコードする1μgのIVT RNAと、不安定化GFPをコードする5μgのIVT RNAを、エレクトロポレーションした(luc+GFP)。細胞を無処理にしておくか、2μM C13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。RNAエレクトロポレーションによって誘導されるヒト線維芽細胞におけるインターフェロン−アルファおよびインターフェロン−ベータ転写産物のアップレギュレーションが観察された(図1Aおよび1C)。C13OSを使ったPKRの阻害は、インターフェロン転写産物の圧倒的な増加をもたらした(図1Bおよび1D)。 PKRを阻害することによるルシフェラーゼ発現の用量依存的増加 (A〜C)異なるドナーおよび供給業者からの初代ヒト包皮線維芽細胞(パネルA:BJ線維芽細胞;パネルB:CCD1079Sk;パネルC:HFF)および(D)マウス胚性線維芽細胞(MEF)に、ホタルルシフェラーゼをコードする0.5μgのIVT RNAと、強化GFP(enhanced GFP;eGFP)をコードする1.25μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。細胞を、デュプリケートで、96ウェルプレートに30000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、0.5μMから2μMまでの範囲にわたる一連の量のC13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。レポーター遺伝子ルシフェラーゼの用量依存的増加が観察された。 PKRを阻害することによるGFP発現の用量依存的増加 (AB)異なるドナーおよび供給業者からの初代ヒト包皮線維芽細胞(パネルA:BJ線維芽細胞;パネルB:CCD1079Sk)および(C)MEFに、ホタルルシフェラーゼをコードする0.5μgのIVT RNAと、強化GFP(eGFP)をコードする1.25μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。細胞を、96ウェルプレートに250000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、0.5μMから2μMまでの範囲にわたる一連の量のC13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。表示した時点で、GFP発現を、フローサイトメトリーによって測定した。トランスフェクトされたGFP陽性細胞画分の平均蛍光強度(MFI)を示す。レポーター遺伝子GFPの用量依存的増加が観察された。 初代ヒト臍帯静脈内皮細胞におけるIVT RNAベースのレポーター遺伝子発現に対するPKR阻害の効果 初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に、ホタルルシフェラーゼをコードする1μgのIVT RNAと、不安定化GFPをコードする5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。細胞を、デュプリケートで、96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、0.5μMから2μMまでの範囲にわたる一連の量のC13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。ルシフェラーゼ発現はHUVECにおいて用量依存的に強化された。 トランスフェクトされた初代CD4+およびCD8+T細胞ならびに未熟樹状細胞におけるIVT RNAベースのレポーター遺伝子発現に対するPKR阻害の効果 ヒト初代CD4およびCD8陽性T細胞ならびに未熟樹状細胞(iDC)を単離し、これらに、不安定化GFPをコードする5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。iDCには、ホタルルシフェラーゼをコードする1μgのIVT RNAを同時エレクトロポレーションした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、0.5μMから2μMまでの範囲にわたる一連の量のC13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。(A)T細胞および(B)iDCを、表示した時点で回収し、フローサイトメトリーによってGFP発現を評価した。トランスフェクトされたGFP陽性細胞画分の平均蛍光強度(MFI)を示す。(C)ルシフェラーゼアッセイのために、iDCを、デュプリケートで、96ウェルプレートに、10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。T細胞でも、iDCでも、PKR阻害はGFP発現の増加にはつながらなかった(図5A、B)。iDCでは、PKRの阻害が、ルシフェラーゼ発現の喪失をもたらした(図5C)。 エレクトロポレーション後のPKRの一過性阻害 BJ線維芽細胞およびCCD1079SK線維芽細胞に、ホタルルシフェラーゼをコードする0.5μgのIVT RNAと、eGFPをコードする2.5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。10000細胞/ウェルを、デュプリケートで、96ウェルプレートにプレーティングした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、(A)2μM C13OSまたは(B)2μM 2−アミノプリン(2−AP)と共に、8時間、24時間、48時間または永続的にインキュベートした。エレクトロポレーションの72時間後に、ルシフェラーゼ活性をまとめて測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。これらのデータは、PKR阻害が可逆的であることを示している。持続的阻害は、5日間にわたって高いルシフェラーゼ発現レベルをもたらす。 線維芽細胞およびHUVECに同時トランスフェクトされたワクシニアウイルスタンパク質E3およびK3を用いるPKRの阻害 CCD1079SK線維芽細胞およびHUVECに、ホタルルシフェラーゼ(1μg)、不安定化GFP(5μg)、およびE3もしくはK3またはその両方(3μg)をコードするIVT RNAを、表示のとおりにエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って行った。10000細胞/ウェルを、デュプリケートで、96ウェルプレートにプレーティングした。CCD1079Skを(A)無処理にしておくか(黒い記号)または(B)2μM C13OSと共にインキュベートした(白い記号)。(C)HUVECは無処理にしておくか、または表示のとおり、一連の濃度のC13OSと共にインキュベートした。エレクトロポレーション後の表示した時点で、ルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。どちらのウイルスタンパク質も、エレクトロポレーションの24時間後に、ルシフェラーゼ発現の2倍の増加につながった(図7A)。C13OSの追加適用は、ルシフェラーゼ発現のさらなる増加および安定化をもたらした(図7B)。HUVEC細胞を使った類似の実験では、E3とK3の組合せがルシフェラーゼ発現を増加させ、それがC13OSによって用量依存的にさらに強化されることが明らかになった(図7C)。 ヒトT細胞およびiDCに同時トランスフェクトされたワクシニアウイルスタンパク質E3およびK3を用いるPKRの阻害 (A)ヒト初代CD4および(B)CD8陽性T細胞を単離し、不安定化GFP(10μg)およびE3とK3の両方(5μg)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、4mmギャップキュベットと、細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って行った。細胞を無処理にしておくか、一連の濃度のC13OSと共にインキュベートした。表示した時点で細胞を回収し、GFP発現をフローサイトメトリーによって評価した。トランスフェクトされたGFP陽性細胞画分の平均蛍光強度(MFI)を示す。(C)ヒトiDCを単離し、これに、不安定化GFP(10μg)、ルシフェラーゼ(1μg)およびE3とK3の両方(5μg)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、4mmギャップキュベットと細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って行った。細胞をデュプリケートで10000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレーティングし、無処理にしておくか(左側のパネル)または一連の濃度のC13OSと共にインキュベートした(右側のパネル)。表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を掲載する。図8Aおよび8Bに示すように、PKRを阻害するウイルスタンパク質は、C13OSの存在下でも非存在下でも、T細胞におけるレポーター遺伝子発現を増加させなかった。iDCでは、ウイルスタンパク質が(先に阻害剤で観察されたように)ルシフェラーゼ発現を減少させた。また、E3とK3が、ルシフェラーゼ発現に対するC13OSの負の効果を打ち消すこともなかった(図8C)。 修飾ヌクレオチドで構成されているRNAをトランスフェクトされた線維芽細胞におけるレポーター遺伝子発現に対するPKR阻害の効果 (A)表示のとおり、無修飾(unmod)であるか、または5−メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジン(PU)で修飾された、ルシフェラーゼをコードする1μgのIVT−RNAおよび不安定化GFPをコードする5μgのIVT RNAを、CCD1079Sk線維芽細胞に同時エレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、細胞を、デュプリケートで、96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を無処理にしておくか、または2μM PKR阻害剤の存在下で培養した。7時間、24時間、48時間、および72時間後に、ルシフェラーゼ活性を評価した。転写産物への5mCとPUの取り込みは、無修飾対照と比較して、ルシフェラーゼ発現を約2倍増加させる。2μM C13OSの使用は、修飾IVT RNAによってコードされているルシフェラーゼの発現を、さらに増加し、安定化する。 PKR阻害によるリプログラミング転写因子発現の増加および安定化 (AB)異なるドナーおよび供給業者からの初代ヒト包皮線維芽細胞(パネルA:BJ線維芽細胞;パネルB:CCD1079Sk)および(C)MEFに、ホタルルシフェラーゼをコードする0.5μgのIVT RNAおよびeGFPをコードする1.25μgのIVT RNA、ならびに個々のリプログラミング因子OCT4、SOX2、KLF4およびc−MYCのそれぞれをコードする2.5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。細胞を6ウェルプレートに250000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。凡例に示すように、細胞を無処理にしておくか、0.5μMから2μMまでの範囲にわたる一連の量のC13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。表示した時点で、OCT4発現を、蛍光標識抗体を使った細胞内染色によって検出し、フローサイトメトリーによって測定した。トランスフェクトされたOCT4陽性細胞画分の平均蛍光強度(MFI)を示す。(D)CCD1079Sk線維芽細胞に、Bと同じようにIVT RNAをエレクトロポレーションし、2μM C13OSで24時間または48時間処理した。エレクトロポレーションの72時間後に、細胞を回収し、表示した転写因子に対する反応性を有する蛍光標識抗体による細胞内染色を行った。転写因子陽性細胞画分のMFIを示す。処理細胞では、転写因子OCT4、NanogおよびSOX2の発現が、用量依存的かつ時間依存的に、強く増加し、安定化された。 13OSによる処理時の多能性マーカー遺伝子の強化された誘導 CCD1079SK線維芽細胞に、モックエレクトロポレーションを行うか、またはホタルルシフェラーゼ(1μg)、eGFP(1.25μg)、SV40ラージT(1.25μg)、HPV16−E6(1.25μg)、OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOGおよびLIN28(OCT4が2.5μgで、その他については等モル量)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、CCDに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。細胞を、250000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートにプレーティングし、表示のとおり、無処理にしておくか、または2μM C13OSと共にインキュベートした。エレクトロポレーションの72時間後に、細胞を回収して、全RNAを抽出し多能性マーカー(A)GDF3および(B)hTERTに関するqRT−PCR解析を行った。エレクトロポレーションの72時間後に、GDF3およびhTERT誘導は、処理によって増加していた。 PKRの阻害下におけるIVT−RNAコンストラクトの安定化 (A)CCD1079SK線維芽細胞に、モックエレクトロポレーションを行うか、またはホタルルシフェラーゼ(1μg)、eGFP(1.25μg)、SV40ラージT(1.25μg)、HPV16−E6(1.25μg)、OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOGおよびLIN28(OCT4が2.5μgで、その他については等モル量)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、CCDに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。エレクトロポレーション後は、細胞を無処理にしておくか、2μM C13OSと共に24時間または48時間インキュベートした。72時間後に、細胞を回収して、全RNAを抽出しコドン最適化IVT−RNAコンストラクトOCT4およびSOX2に関するqRT−PCR解析を行った。(B)C13OSがIVT−RNAのインビボ半減期に影響を及ぼすかどうかを決定するために、CCD1079SK線維芽細胞に、モックエレクトロポレーションを行うか、またはホタルルシフェラーゼ(1μg)、SV40ラージT(1.25μg)、強化GFP(1.25μg)、E3(3μg)およびK3(3μg)をコードするIVT RNAを、OCT4、SOX2、KLF4、cMYC(それぞれ2.5μg)または対照としてのeGFP(10μg)をコードするIVT−RNAを加えて、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、CCDに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。250000細胞/ウェルを6ウェルプレートにプレーティングし、無処理にしておくか、または2μM C13OSと共に80時間インキュベートした。8時間、32時間、56時間、80時間後に、細胞を回収して、全RNAを抽出しコドン最適化IVT−RNAコンストラクトOCT4、SOX2、KLF4およびcMYCに関するqRT−PCR解析を行った。転写産物の崩壊を時間に対してプロットし、C13OSの存在下または非存在下におけるコンストラクトの半減期(t1/2)の差を産出した(Δt1/2=t1/2(+C13OS)−t1/2(−C13OS))。2μM C13OSによる細胞の一過性処理は、IVT RNAの存在量を72時間にわたって増加させた(A)。IVT RNAコンストラクトの半減期は、PKR阻害下で1〜2.5時間長くなる(B)。それゆえに、PKR阻害下でのレポーター発現の安定化は、ある程度は、IVT−RNAコンストラクトの安定化に基づいている。 IVT−RNAのエレクトロポレーション後、C13OSの影響下での、インターフェロンの分泌 初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)に、表示のとおり、無修飾の、または5−メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジン(PU)で修飾した(mod.)、eGFPをコードするIVT RNA(10μg)をエレクトロポレーションするか、無修飾eGFP(10μg)ならびに修飾(5mCおよびPU)E3およびK3(3μg)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。 IVT−RNAは、エレクトロポレーション後に、IFNベータの分泌を誘導する。細胞をC13OSと共にインキュベートすると、分泌は著しく強化される。IVT−RNAを5mCおよびPUで修飾すると、IFNβの誘導は低減される。 PKRノックダウンは、PKR阻害に似た転写産物発現の安定化につながる (A)初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、PKRをターゲットとするsiRNA混合物(Santa Cruz;sc−36263)を、20nMから80nMまでの範囲にわたる一連の量でエレクトロポレーションした。PKRの発現レベルをqRT−PCRによって評価した。野生型細胞と比較した相対発現レベルが図示されている。エレクトロポレーションの24時間後に、どの濃度のsiRNA混合物でも、PKRは5〜10%にノックダウンされる。PKRを48時間にわたってノックダウンするのに充分なのは、80nMだけである。 (B)初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、無修飾eGFPをコードするIVT RNA(1.5μg)を、単独で、または20nMから80nMまでの範囲にわたる一連の濃度の、PKRをターゲットとするsiRNA混合物と共に、エレクトロポレーションした。IFN応答遺伝子OAS1およびOAS2の発現レベルを、qRT−PCRによって評価した。野生型細胞と比較した相対発現レベルが図示されている。OAS1およびOAS2の発現レベルは、siRNA混合物の添加によって有意に変化せず、これは、siRNAがエレクトロポレーション後にIFNを誘導していないことを示している。 (C)初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、80μMの、PKRをターゲットとするsiRNA混合物をエレクトロポレーションするか、siRNA混合物なしでエレクトロポレーションを行い、48時間後に、ホタルルシフェラーゼをコードするIVT RNA(1μg)およびeGFPをコードするIVT RNA(2.5μg)をエレクトロポレーションした。細胞を無処理にしておくか、2μMのC13OSと共にインキュベートした。表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。PKRをターゲットとするsiRNAと共にプレインキュベートされ、それゆえにPKRを欠く状態にある細胞のエレクトロポレーションは、2μMのPKR阻害剤C13OSと共にインキュベートした場合と比較して、安定化効果はわずかに低いものの、極めてよく似たレポーター遺伝子発現の動態および増加につながる。PKRをターゲットとするsiRNA混合物とのプレインキュベーションと、阻害剤の使用とを組み合わせると、レポーター転写産物の発現レベルがさらに高くなる。 リポフェクションを使ったIVT RNAの翻訳に対するC13OSの効果 1.2μgの5’−トリリン酸化非修飾IVT RNA(ルシフェラーゼをコードするもの0.8μg、GFPをコードするもの0.4μg)を、6μlのRNAiMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)でパッケージしてヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクトし、培地には一連の濃度のC13OSを添加した。表示した時点で、細胞を溶解し、溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。C13OSは、ルシフェラーゼの翻訳に対して安定化効果を有していた。この効果は用量依存的だった。 ルシフェラーゼ発現に対する2−アミノプリンの効果 ヒト包皮線維芽細胞に、ホタルルシフェラーゼをコードする2μgのIVT RNAとGFPをコードする5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションし、凡例に示した濃度の2−APと共にインキュベートした。10mM〜20mMの2−APは、2μM C13OSと同様の翻訳の増加につながる。
発明の詳細な説明
以下に本発明を詳述するが、本発明は、本明細書に記載する特定の方法論、プロトコールおよび試薬類に限定されないと理解すべきである、というのも、これらはさまざまでありうるからである。本明細書において使用する術語が、特定の実施形態を説明するための術語に過ぎず、本願請求項によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことも理解すべきである。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、当業者に通常理解されている意味と同じ意味を有する。
以下に、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的実施形態と共に列挙するが、それらを任意の方法でいくつでも組み合わせて、さらなる実施形態を作り出すことができると理解すべきである。さまざまに記載する実施例および好ましい実施形態が、明示的に記載された実施形態だけに本発明を限定するものであるとみなしてはならない。この説明は、明示的に記載された実施形態といくつもの開示されたかつ/または好ましい要素とを併せもつ実施形態を裏付け、包含するものであると理解すべきである。さらにまた、本願に記載した全ての要素の任意の順列および組合せは、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、本願の説明によって開示されているとみなされるべきである。例えば、好ましい一実施形態において、RNAが120ヌクレオチドからなるポリ(A)テールを含み、もう一つの好ましい実施形態において、RNA分子が5’キャップアナログを含むとすると、好ましい一実施形態では、RNAが、120ヌクレオチドからなるポリ(A)テールと5’キャップアナログとを含む。
好ましくは、本明細書において使用する用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」H.G.W.Leuenberger、B.NagelおよびH.Koelbl編、Helvetica Chimica Acta、スイスCH−4010バーゼル(1995)に記載されているように定義される。
本発明の実施には、別段の表示がある場合を除き、化学、生化学、および組換えDNA技術の従来の方法が使用され、それらは、当該分野の文献に説明されている(例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版、J.Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、1989)を参照されたい)。
本明細書とそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、用語「を含む」(comprise)とその異形(例えば「comprises」および「comprising」)は、明示された部材、整数もしくはステップ、または部材、整数もしくはステップの群の包含を含意するが、他の任意の部材、整数もしくはステップまたは部材、整数もしくはステップの群の排除を含意するわけではない(ただし、いくつかの実施形態においては、そのような他の部材、整数もしくはステップ、または部材、整数もしくはステップの群が除外される場合もある)と理解されるであろう。すなわち主旨は、明示された部材、整数もしくはステップ、または部材、整数もしくはステップの群の包含にある。本発明の説明に関して(とりわけ請求項に関して)使用する用語「ある/一つの」(a/an)および「その」(the)ならびにそれに類似する指示は、本明細書において別段の表示がある場合を除き、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数と複数の両方を包含すると解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲に含まれる個々の値について個別に言及することを簡略化した方法として機能することを意図しているに過ぎない。本明細書に別段の表示がある場合を除き、個々の値は、あたかもそれが本明細書において個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書において述べる方法はすべて、本明細書において別段の表示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に掲載するありとあらゆる実施例または例示的表現(例えば「など」)の使用は、本発明をより良く例示しようとするものに過ぎず、別途特許請求の範囲に記載する本発明の範囲に限定を課すものではない。特許請求の範囲には記載のない何らかの要素であって、しかも本発明の実施に欠かすことができないものを示していると解釈すべき文言は、本明細書にはない。
本明細書の本文ではいくつかの文書に言及する。本明細書において言及する文書のそれぞれは(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造者の仕様書、説明書などを含めて)、上述のものであれ後述のものであれ、引用によりそのまま本明細書に組み込まれる。先行発明を理由として本発明がそれらの開示に先行する資格がないことの自白であると解釈すべきものは、本明細書にはない。
「低減する」または「阻害する」などの用語は、レベルの全体的低下、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的低下を引き起こす能力を意味する。「阻害する」という用語またはそれに類する表現には、完全な阻害または本質的に完全な阻害、すなわちゼロへの低減または本質的にゼロへの低減が含まれる。
「増加する」、「強化する」、または「延長する」などの用語は、好ましくは、少なくとも10%前後、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、特に少なくとも300%前後の増加、強化、または延長に関する。これらの用語は、ゼロまたは非測定可能レベルもしくは非検出可能レベルから0より大きいレベルまたは測定可能もしくは検出可能なレベルへの増加、強化、または延長にも関する。
本発明との関連において「組換え」という用語は、「遺伝子工学によって作られた」ことを意味する。好ましくは、本発明との関連において、組換えタンパク質などの「組換え物」は、自然には存在せず、好ましくは、自然界では組み合わされることのないアミノ酸配列または核酸配列などの実体の組合せの結果である。例えば、本発明との関連において組換えタンパク質は、異なるタンパク質に由来する数個のアミノ酸配列が、一つに(例えばペプチド結合によって)融合されたものを含有しうる。
本明細書において使用する「天然の(naturally occurring)」という用語は、ある物体が自然界に見いだされうるという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在して、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に改変されていないタンパク質または核酸は、天然である。
核酸は、本発明によれば、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、より好ましくはRNA、最も好ましくはインビトロ転写されたRNA(IVT RNA)である。核酸には、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子が含まれる。本発明によれば、核酸は、一本鎖または二本鎖であって、線状の、または共有結合によって環状に閉じている分子として存在しうる。核酸は、本発明によれば、単離することができる。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、その核酸が、(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによって増幅されたこと、(ii)クローニングによって組換え生産されたこと、(iii)例えば切断とゲル電気泳動による分離などによって精製されたこと、または(iv)例えば化学合成などによって合成されたことを意味する。核酸は、細胞への導入に、すなわち細胞のトランスフェクションに、特に、DNAテンプレートからインビトロ転写によって調製することができるRNAの形態で、使用することができる。RNAはさらに、応用前に、安定化配列、キャッピング、およびポリアデニル化によって修飾することもできる。
2つ以上のペプチドまたはタンパク質を発現させるための核酸、特にRNAとしては、異なるペプチドまたはタンパク質が異なる核酸分子中に存在する核酸タイプ、またはペプチドまたはタンパク質が同じ核酸分子中に存在する核酸タイプを、どちらでも使用することができる。
本発明との関連において、「RNA」という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含み、好ましくは、もっぱらまたは実質的にリボヌクレオチド残基で構成されている分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。用語「RNA」には、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的または完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え的に生成したRNA、例えば天然のRNAとは、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって異なっている修飾RNAが含まれる。そのような改変には、例えばRNAの末端への、または内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含めることができる。RNA分子中のヌクレオチドには、非標準的ヌクレオチド、例えば非天然ヌクレオチドもしくは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドも含めることができる。これらの改変RNAは、アナログまたは天然RNAのアナログと呼ぶことができる。
本発明によれば、「RNA」という用語は、「mRNA」を包含し、好ましくは「mRNA」に関する。「mRNA」という用語は「メッセンジャーRNA」を意味し、「転写産物」(これはDNAテンプレートを使用することによって生成し、ペプチドまたはタンパク質をコードする)に関する。典型的には、mRNAは5’−UTR、タンパク質コード領域、および3’−UTRを含む。mRNAは、細胞内およびインビトロで、限られた半減期しか持たない。本発明との関連において、mRNAは、DNAテンプレートからのインビトロ転写によって作製することができる。インビトロ転写法は当業者には知られている。例えばさまざまなインビトロ転写キットが市販されている。
本発明によれば、RNAの安定性および翻訳効率を、必要に応じて改変することができる。例えば、安定化効果を有しかつ/またはRNAの翻訳効率を増加させる1つ以上の修飾によって、RNAを安定化し、その翻訳を増加させることができる。そのような修飾は、例えば引用により本明細書に組み込まれるPCT/EP2006/009448に記載されている。本発明に従って使用されるRNAの発現を増加させるには、mRNAの安定性を増加させるためにGC含量が増加するように、またコドン最適化を行うことで細胞における翻訳が強化されるように、コード領域内、すなわち発現するペプチドまたはタンパク質をコードしている配列内を、好ましくは発現するペプチドまたはタンパク質の配列を改変することなく、修飾することができる。
本発明において使用されるRNAとの関連において「修飾」という用語には、該RNA中に自然には存在しない、RNAの任意の修飾が含まれる。
本発明の一実施形態において、本発明に従って使用されるRNAは、キャップのない5’−トリリン酸基を有さない。そのようなキャップのない5’−トリリン酸基の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成することができる。
本発明のRNAは、その安定性を増加させ、かつ/または細胞毒性を減少させるために、修飾リボヌクレオチドを有しうる。例えば一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、シチジンが、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に、5−メチルシチジンに置換される。これに代えて、またはこれに加えて、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、ウリジンが、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に、シュードウリジンに置換される。
一実施形態において、「修飾」という用語は、RNAに5’−キャップまたは5’−キャップアナログを与えることに関する。「5’−キャップ」という用語は、mRNA分子の5’端に見いだされるキャップ構造を指し、一般的には、珍しい5’−5’トリリン酸結合を介してmRNAにつながっているグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンが、7位でメチル化されている。「従来の5’キャップ」という用語は、天然のRNA 5’−キャップ、好ましくは7−メチルグアノシンキャップ(mG)を指す。本発明との関連において、「5’−キャップ」という用語には、RNAキャップ構造に似ていて、RNAに取り付けた場合に、好ましくはインビボでかつ/または細胞内で、そのRNAを安定化する能力および/またはそのRNAの翻訳を強化する能力を有するように修飾されている5’−キャップアナログが包含される。
好ましくは、RNAの5’端は、次の一般式を有するキャップ構造を含む:
Figure 0006131433
[式中、RおよびRは、独立して、ヒドロキシまたはメトキシであり、W、XおよびYは独立して酸素、硫黄、セレン、またはBHである]。好ましい実施形態では、RおよびRがヒドロキシであり、W、XおよびYが酸素である。さらにもう一つの好ましい実施形態では、RおよびRの一方、好ましくはRがヒドロキシ、かつ他方がメトキシであり、W、XおよびYが酸素である。さらにもう一つの好ましい実施形態では、RおよびRがヒドロキシであり、W、XおよびYの1つ、好ましくはXが硫黄、セレン、またはBH、好ましくは硫黄であると同時に、その他は酸素である。さらにもう一つの好ましい実施形態では、RおよびRの一方、好ましくはRがヒドロキシ、かつ他方がメトキシであり、W、XおよびYの1つ、好ましくはXが、硫黄、セレン、またはBH、好ましくは硫黄であると同時に、その他は酸素である。
上式において、右側のヌクレオチドはその3’基を介してRNA鎖につながっている。
、XおよびYの少なくとも1つが硫黄であるキャップ構造、すなわちホスホロチオエート部分を有するキャップ構造は、異なるジアステレオ異性体型で存在し、それらは全てここに包含される。さらにまた、本発明は、上式の全ての互変異性体および立体異性体を包含する。
例えば、Rがメトキシであり、Rがヒドロキシであり、Xが硫黄であり、WおよびYが酸素である上記の構造を有するキャップ構造は、2つのジアステレオ異性体型(RpおよびSp)で存在する。これらは逆相HPLCで分離することができ、逆相HPLCカラムからのその溶出順序に従ってD1およびD2と名付けられる。本発明によれば、m 7,2’−OGpppGのD1異性体は、特に好ましい。
RNAへの5’−キャップまたは5’−キャップアナログの供与は、該5’−キャップまたは5’−キャップアナログの存在下でのDNAテンプレートのインビトロ転写によって達成するか(この場合、該5’−キャップは生成したRNA鎖に転写時に組み込まれる)、または例えばインビトロ転写によってRNAを生成し、そのRNAに、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使って、5’−キャップを転写後に取り付けることができる。
RNAはさらなる修飾を含みうる。例えば、本明細書において使用されるRNAのさらなる修飾は、天然のポリ(A)テールの伸長もしくは切断、または5’−もしくは3’非翻訳領域(UTR)の改変、例えば該RNAのコード領域とは無関係なUTRの導入、例えば既存の3’−UTRの、1コピー以上の、好ましくは2コピーの、α2−グロビン、α1−グロビン、β−グロビン、好ましくはβ−グロビン、より好ましくはヒトβ−グロビンなどのグロビン遺伝子に由来する3’−UTRとの交換、またはそれらの挿入でありうる。
例えば、マスキングされていないポリA配列を有するRNAは、マスキングされたポリA配列を有するRNAよりも効率よく翻訳される。「ポリ(A)テール」または「ポリA配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3’末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「マスキングされていないポリA配列」とは、RNAの3’端にあるポリA配列が、ポリA配列のAで終わっていて、ポリA配列の3’端側(すなわち下流)に位置するA以外のヌクレオチドが後続していないことを意味する。さらにまた、約120塩基対の長いポリA配列は、最適な転写産物安定性とRNAの翻訳効率をもたらす。
それゆえに、本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現を増加させるために、ポリA配列(好ましくは10〜500、より好ましくは30〜300、さらに好ましくは65〜200、とりわけ100〜150個のアデノシン残基を有するもの)を伴って存在するように、RNAを修飾することができる。とりわけ好ましい一実施形態では、ポリA配列が約120のアデノシン残基の長さを有する。本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現をさらに増加させるために、ポリA配列を脱マスキングすることができる。
加えて、RNA分子の3’非翻訳領域への3’非翻訳領域(UTR)の組込みも、翻訳効率の強化をもたらしうる。そのような3’非翻訳領域を2つ以上組み込むことによって相乗効果を得ることができる。3’非翻訳領域は、それらが導入されるRNAに対して自己であっても異種であってもよい。特定の一実施形態では、3’非翻訳領域がヒトβ−グロビン遺伝子に由来する。
上述の修飾、すなわちポリA配列の組込み、ポリA配列の脱マスキングおよび1つ以上の3’非翻訳領域の組込みの組合せは、RNAの安定性に対して相乗的な影響を有し、翻訳効率を増加させる。
RNAの「安定性」という用語はRNAの「半減期」に関する。「半減期」は、活性、量、または分子数の半分を排除するのに必要な時間に関する。本発明との関連において、RNAの半減期は、該RNAの安定性を示す。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続時間」に影響を及ぼしうる。長い半減期を有するRNAは、長期間にわたって発現すると予想することができる。
もちろん、本発明に従ってRNAの安定性および/または翻訳効率を低下させることが望まれる場合には、RNAの安定性および/または翻訳効率を増加させる上述のような要素の機能が妨害されるように、RNAを修飾することが可能である。
「発現」という用語は、本発明によれば、その最も広い意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチドもしくはタンパク質の生産を含む。RNAに関して「発現」または「翻訳」という用語は、特に、ペプチドまたはタンパク質の生産に関する。これは核酸の部分的発現も含む。さらにまた、発現は一過性の発現であっても、安定的発現であってもよい。
本発明によれば、「RNA発現」、「RNAを発現する」、または「RNAの発現」などの用語は、RNAによってコードされるペプチドまたはタンパク質の生産に関する。好ましくは、上記の用語は、RNAによってコードされているペプチドまたはタンパク質が発現する、すなわち生産されるような、RNAの翻訳に関する。
本発明との関連において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。引き続きそのRNAはタンパク質に翻訳されうる。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、この場合、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、無細胞系において、好ましくは適当な細胞抽出物を使って、インビトロで合成される過程に関する。好ましくは、転写産物の生成には、クローニングベクターが応用される。これらのクローニングベクターは、一般に、転写ベクターとして設計され、本発明によれば、「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明において使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT−RNA)であり、適当なDNAテンプレートのインビトロ転写によって得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモーターであることができる。RNAポリメラーゼの具体例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。本発明におけるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写用のDNAテンプレートは、核酸、特にcDNAをクローニングし、それを、インビトロ転写用の適当なベクターに導入することによって得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写によって得ることができる。
cDNA含有ベクターテンプレートは、転写後に異なるRNA分子(場合によっては異なるペプチドまたはタンパク質を発現する能力を有するもの)の集団をもたらす異なるcDNAインサートを保有するベクターを含むか、または転写後に、1つのペプチドまたはタンパク質のみを発現する能力を有する1つのRNA種の集団だけをもたらす1種類のcDNAインサートだけを保有するベクターを含みうる。したがって、単一のペプチドまたはタンパク質だけを発現する能力を有するRNAを生産するか、異なるRNAの組成物、例えば、2つ以上のペプチドまたはタンパク質、例えばペプチドまたはタンパク質の組成物を発現する能力を有する、RNAライブラリーおよび全細胞RNAを生産することができる。本発明は、全てのかかるRNAの細胞内への導入を想定する。
「翻訳」という用語は、本発明によれば、メッセンジャーRNAの鎖がアミノ酸の配列のアセンブリを指示してタンパク質またはペプチドを作る、細胞のリボソームにおける過程に関する。
発現制御配列または調節配列は、本発明によれば核酸と機能的に連結されていてもよく、その核酸に関して相同であっても異種であってもよい。コード配列と調節配列は、そのコード配列の転写または翻訳が調節配列の制御または影響を受けるように共有結合的に一つに結合されているのであれば、互いに「機能的に」連結されている。コード配列が機能的タンパク質に翻訳されるべきものである場合は、調節配列がコード配列と機能的に連結されていることにより、調節配列の誘導が、コード配列のリーディングフレームシフトを引き起こすことなく、またはコード核酸が所望のタンパク質もしくはペプチドに翻訳されなくなることもなく、コード配列の転写につながる。
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、核酸の転写または誘導されたRNAの翻訳を制御するプロモーター、リボソーム結合配列その他の制御要素を含む。本発明の一定の実施形態では、調節配列を制御することができる。調節配列の正確な構造は、種に依存して、または細胞タイプに依存して、異なりうるが、一般的には、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などといった、転写または翻訳の開始に関与する5’非転写配列ならびに5’および3’非翻訳配列を含む。特に、5’非転写調節配列は、機能的に結合している遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列が含まれているプロモーター領域を含む。調節配列は、エンハンサー配列または上流活性化配列も含むことができる。
「発現の強化」、「強化された発現」または「増加した発現」などの用語は、本発明との関連においては、RNA分子の発現が、RNAの強化された発現または増加した発現をもたらす条件(例えば、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性の低減と、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性の非低減との対比)を除けば同じ条件下で行われた場合に、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の量より多いことを意味する。この文脈において「同じ条件」とは、同じペプチドまたはタンパク質をコードする同じRNA配列が、同じ手段によって同じ細胞に導入され、その細胞が同じ条件下(強化された発現または増加した発現をもたらす条件を除く)で培養され、ペプチドまたはタンパク質の量が同じ手段によって測定されるという状況を指す。ペプチドまたはタンパク質の量は、モル数で与えるか、重量で、例えばグラム数で与えるか、またはかさ(mass)もしくはポリペプチドの活性で与えることができる、例えば、ペプチドまたはタンパク質が酵素である場合、それは触媒活性として与えることができ、ペプチドまたはタンパク質が抗体または抗原または受容体である場合、それは結合アフィニティとして与えることができる。一実施形態において、「発現の強化」、「強化された発現」または「増加した発現」などの用語は、本発明との関連においては、所与の数のRNA分子によって所与の期間内に発現されるペプチドまたはタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって同じ期間内に発現されるペプチドまたはタンパク質の量より多いことを意味する。例えば、所与の数のRNA分子によって、ある特定時点において発現されるペプチドまたはタンパク質の最大値は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の最大値より多いかもしれない。別の実施形態では、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の最大値が、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の最大値より多い必要はないが、前記所与の数のRNA分子によって所与の期間内に発現されるペプチドまたはタンパク質の平均量が、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の平均量より多いかもしれない。これらの例を、本明細書では、「より高い発現レベル」または「増加した発現レベル」といい、これらの例は、より高い最大発現値および/またはより高い平均発現値に関する。これに代えてまたはこれに加えて、「発現の強化」、「強化された発現」または「増加した発現」などの用語は、本発明との関連においては、ペプチドまたはタンパク質がRNA分子によって発現される時間が、そのペプチドまたはタンパク質が同じRNA分子によって発現される時間よりも長いかもしれないことも意味する。したがって一実施形態では、そのような「発現の強化」、「強化された発現」または「増加した発現」が、本発明との関連においては、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチドまたはタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって発現させるペプチドまたはタンパク質の量と比較して、そのRNAが安定に存在し発現される期間が同じ数のRNA分子が安定に存在し発現される期間よりも長いせいで、多いことも意味する。これらの場合を、本明細書では、「増加した発現持続時間」ともいう。好ましくは、そのような、より長い期間とは、細胞へのRNAの導入後、またはRNAの最初の導入後(トランスフェクションを繰り返す場合)、少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間、より好ましくは少なくとも96時間、特に少なくとも120時間またはそれよりさらに長い発現を指す。
RNAの発現のレベルおよび/または発現の持続時間は、RNAによってコードされているペプチドまたはタンパク質の量、例えば総発現量および/または所与の期間中に発現した量、および/または発現の時間を、例えばELISA法、免疫組織化学法、定量的画像解析法、ウェスタンブロット、質量分析、定量的免疫組織化学法、または酵素アッセイを使うなどして、測定することによって決定することができる。
特定の実施形態では、本発明のRNAが、異なるRNA分子の集団、例えば異なるRNA分子(場合によっては異なるペプチドおよび/またはタンパク質をコードするもの)の混合物、全細胞RNA、RNAライブラリー、またはその一部、例えば特定の細胞タイプ、例えば未分化細胞、特に胚性幹細胞などの幹細胞において発現するRNA分子のライブラリー、またはRNA分子のライブラリーの画分、例えば未分化細胞、特に胚性幹細胞などの幹細胞における発現が分化細胞と比較して強化されているRNAを含む。したがって本発明によれば、「RNA」という用語は、細胞からのRNAの単離を含むプロセスおよび/または組換え手段、特にインビトロ転写によって得ることができる、RNA分子の混合物、全細胞RNAまたはその画分を包含しうる。
好ましくは、本発明によれば、細胞中で発現させるべきRNAは、インビトロまたはインビボのどちらか一方で、好ましくはインビトロで、該細胞に導入される。RNAは、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減する前、その後、および/またはそれと同時に、細胞に導入することができる。好ましくは、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性は、細胞におけるRNAの発現が望まれる限り、低減される。本発明の方法の一実施形態では、細胞に導入されるべきRNAが、適当なDNAテンプレートのインビトロ転写によって得られる。
本発明に従って使用されるRNAは既知の組成を有してもよいし(この実施形態では、どのペプチドまたはタンパク質がRNAによって発現されているかわかることが好ましい)、RNAの組成は部分的にまたは全く未知であってもよい。あるいは、本発明に従って使用されるRNAは既知の機能を有してもよいし、RNAの機能が部分的にまたは全く未知であってもよい。
本発明によれば、「を発現する能力を有するRNA」および「をコードするRNA」という用語は、本明細書においては互換的に使用され、特定のペプチドまたはタンパク質に関して、そのRNAが、適当な環境下に、好ましくは細胞内に存在するのであれば、発現して該ペプチドまたはタンパク質を生産しうることを意味する。好ましくは、本発明のRNAは、細胞の翻訳機構と相互作用して、それが発現することのできるペプチドまたはタンパク質を与えることができる。
本発明によれば、RNAは、インビトロまたはインビボのどちらか一方で、好ましくはインビトロで、細胞に導入することができる。RNAがインビトロで導入された細胞は、好ましくは、本発明の方法によってそのRNAをインビトロで発現させてから、患者に投与することができる。
「移入する」、「導入する」または「トランスフェクトする」などの用語は、本明細書においては互換的に使用され、核酸、特に外因性核酸または異種核酸、特にRNAの、細胞への導入に関する。本発明によれば、細胞は単離された細胞であることができ、または器官、組織および/もしくは生物の一部を形成することができる。本発明によれば、細胞にRNAを導入するのに適した任意の技法を使用することができる。好ましくは、標準的技法によってRNAが細胞に導入される。そのような技法は、核酸リン酸カルシウム沈殿物のトランスフェクション、DEAEと会合した核酸のトランスフェクション、目的の核酸を保因するウイルスによるトランスフェクションまたは感染、エレクトロポレーション、リポフェクション、およびマイクロインジェクションが含まれる。本発明によれば、核酸の投与は、裸の核酸として達成されるか、または投与試薬との組合せで達成される。好ましくは、核酸の投与は、裸の核酸の形態でなされる。好ましくは、RNAは、RNase阻害剤などの安定化物質と組み合わせて投与される。本発明では、長期間にわたる持続的発現が可能になるように、細胞への核酸の反復導入も考えられる。
細胞は、例えばLipofectamine(商標)(Invitrogen)などのリポソームに基づく市販のトランスフェクションキットを使って、トランスフェクトすることができ、またRNAと(例えばRNAとの複合体を形成するか、RNAが封入またはカプセル化された小胞を形成することによって)会合することで、裸のRNAと比較してRNAの安定性を増加させることのできる任意の担体を使って、トランスフェクトすることができる。本発明において有用な担体には、例えば脂質含有担体、例えばカチオン性脂質、リポソーム、特にカチオン性リポソーム、およびミセルが含まれる。カチオン性脂質は負に帯電した核酸との複合体を形成しうる。任意のカチオン性脂質を本発明に従って使用することができる。
好ましくは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAの細胞への導入は、その細胞における該ペプチドまたはタンパク質の発現をもたらす。特定の実施形態では、特定の細胞への核酸のターゲティングが好ましい。そのような実施形態では、細胞への核酸の投与に応用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)がターゲティング分子を示す。例えば、ターゲット細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体またはターゲット細胞上の受容体のリガンドなどといった分子を、核酸担体中に組み込むか、またはそれらに結合させることができる。核酸をリポソームによって投与する場合は、ターゲティングおよび/または取り込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、リポソーム製剤中に組み込むことができる。そのようなタンパク質には、特定の細胞タイプに特異的なキャプシドタンパク質またはそのフラグメント、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内位置をターゲットとするタンパク質などが包含される。
エレクトロポレーションまたは電気透過処理(electropermeabilization)は、外部から印加された電場によって引き起こされる細胞形質膜の電気伝導率および透過性の有意な増加に関する。これは通常、分子生物学では、細胞中に何らかの物質を導入する方法として用いられる。エレクトロポレーションは通常、細胞溶液中に電磁場を作り出す器具であるエレクトロポレーターを使って行なわれる。ガラス製またはプラスチック製のキュベット(その側面に2つのアルミニウム電極を有するもの)に、細胞懸濁液をピペットで入れる。エレクトロポレーションには、通例、50マイクロリットル程度の細胞懸濁液が使用される。エレクトロポレーションに先だって、それを、トランスフェクトしようとする核酸と混合する。その混合物をピペットでキュベットに入れ、電圧およびキャパシタンスを設定し、キュベットをエレクトロポレーターに挿入する。好ましくは、エレクトロポレーションの直後に(キュベット中またはエッペンドルフチューブ中で)液体培地を加え、細胞の回復と場合によっては抗生物質耐性の発現とが可能になるように、そのチューブを、その細胞の至適温度で、1時間以上インキュベートする。
本発明によれば、ひとたび細胞(この細胞はインビトロに存在してもよいし、対象内に存在してもよい)に取り込まれるか導入されるかした核酸、例えばペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、該ペプチドまたはタンパク質の発現をもたらす。細胞は、コードされているペプチドまたはタンパク質を細胞内で発現するか、コードされているペプチドまたはタンパク質を分泌するか、またはそれを、その表面に発現することができる。
本発明に従って体細胞のリプログラミングのために一定の因子を発現する能力を有するRNAが体細胞に導入される場合、RNAのこの導入は、ある期間にわたって該因子の発現をもたらすことでリプログラミング過程を完了させ、幹細胞特徴を有する細胞の発生をもたらすことが好ましい。好ましくは、本明細書に開示する一定の因子を発現する能力を有するRNAの、体細胞への導入は、長期間にわたる、好ましくは少なくとも10日間、好ましくは少なくとも11日間、より好ましくは少なくとも12日間にわたる、該因子の発現をもたらす。そのような長期発現を達成するには、RNAを、好ましくは定期的に2回以上、好ましくはエレクトロポレーションを使って、細胞に導入する。好ましくは、長期間にわたる1つ以上の因子の発現を保証するために、RNAを細胞に、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、より好ましくは少なくとも4回、さらに好ましくは少なくとも5回から、好ましくは6回まで、より好ましくは7回まで、さらには8、9または10回まで、好ましくは少なくとも10日、好ましくは少なくとも11日、より好ましくは12日の期間にわたって導入する。好ましくは、RNAの反復導入の間に経過する時間は、24時間〜120時間、好ましくは48時間〜96時間である。一実施形態では、RNAの反復導入の間に経過する時間が、72時間以下、好ましくは48時間以下または36時間以下である。一実施形態では、次のエレクトロポレーションの前に、細胞を先のエレクトロポレーションから回復させる。この実施形態では、RNAの反復導入の間に経過する時間が、少なくとも72時間、好ましくは少なくとも96時間、より好ましくは少なくとも120時間である。いずれの場合も、因子が、リプログラミング過程を支えるような量で、そのような期間にわたって、細胞内で発現するように、条件を選択すべきである。
好ましくは、各ペプチド、タンパク質または因子について、少なくとも1μg、好ましくは少なくとも1.25μg、より好ましくは少なくとも1.5μgから、好ましくは20μgまで、より好ましくは15μgまで、より好ましくは10μgまで、より好ましくは5μgまで、好ましくは1〜10μg、さらに好ましくは1〜5μg、または1〜2.5μg のRNAを、エレクトロポレーションごとに使用する。
反復エレクトロポレーションによって細胞の生存度の喪失が起こる場合、好ましくは、エレクトロポレーションを受けたことがない細胞をキャリア細胞として加える。エレクトロポレーションを受けたことがない細胞は、好ましくは、4回目とそれ以降のエレクトロポレーション、好ましくは5回目とそれ以降のエレクトロポレーションの1つ以上の前、途中または後、例えば4回目と6回目のエレクトロポレーションの前、途中または後に加える。好ましくは、エレクトロポレーションを受けたことがない細胞は、4回目または5回目とその後の各エレクトロポレーションの前、途中または後に加える。好ましくは、エレクトロポレーションを受けたことがない細胞は、RNAが導入される細胞と同じ細胞である。
RNA結合タンパク質であるRNA依存性プロテインキナーゼ(RNA活性化プロテインキナーゼ;PKR)は、長さ依存的にRNAに結合する。PKRは、ウイルスRNA配列によって形成される大規模な二次構造へのその結合と、その二次構造による活性化ゆえに、ウイルス応答において初めて同定された、インターフェロン誘導性セリン/スレオニンプロテインキナーゼである。ヒトPKRは、約20kDaのN末端dsRNA結合ドメインとC末端プロテインキナーゼドメインとを伴う68kDaである。インビトロでは、PKRは、大規模な二重鎖二次構造を有するRNA分子への結合によって活性化される。インビボでは、この酵素は、ウイルス二本鎖RNA(dsRNA)またはdsRNAを含むウイルス複製中間体によって活性化されると考えられる。PKRへの二本鎖RNAの結合は、酵素のコンフォメーション変化を引き起こし、それが、キナーゼドメイン中のATP結合部位を改変して、PKR配列全体にわたる複数のセリン残基およびスレオニン残基の自己リン酸化につながる。RNAによって刺激された自己リン酸化は、その既知の基質である真核生物翻訳開始因子2(eIF2a)のリン酸化を含むいくつかの推定経路を介して、アポトーシス刺激および炎症誘発刺激に対する細胞の感受性を増加させる。
「PKR」という用語は、好ましくはヒトPKRに関し、特に、配列表の配列番号13に示すアミノ酸配列または該アミノ酸配列の変異体を含むタンパク質に関する。一実施形態において、「PKR」という用語は、配列番号32に示す核酸配列によってコードされているアミノ酸配列を含むタンパク質に関する。「PKR」という用語は、任意の変異体、特にミュータント、スプライス変異体、コンフォメーション、アイソフォーム、アレル変異体、種変異体および種ホモログ、特に自然に存在するものが含まれる。アレル変異体は、遺伝子の正常配列の改変に関し、その意義は不明であることが多い。完全な遺伝子配列決定を行うと、所与の遺伝子について、しばしば、数多くのアレル変異体が同定される。種ホモログは、所与の核酸またはアミノ酸配列の起源とは異なる種を起源とする核酸またはアミノ酸配列である。上述したPKRのcDNA配列がPKR mRNAと等価であるだろうこと、およびそれをPKRに対する阻害核酸の作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
プロテインキナーゼ自己リン酸化を含むプロテインキナーゼ活性は、当業者に知られているさまざまな技法で測定することができる。一つの方法では、例えばトリクロロ酢酸によってリンタンパク質をセルロースストリップ上に沈殿させてから洗浄するか、ホスホセルロースストリップへのリンタンパク質の吸着などによって、未反応のATPを、リン酸化されたキナーゼ基質から分離する。例えばデホスホPKRは、ポリ[I:C]とのインキュベーションによって活性化することができ、[γ−32P]ATPの存在下で自己リン酸化を進行させることができる。このRNA誘導性PKR自己リン酸化をブロックする化合物の能力を試験することができる。もう一つの方法では、ホスホPKRまたは完全長PKRに特異的な抗体を使ったウェスタンブロッティングにより、同じ細胞溶解物中のPKRの総量との関連において、ホスホPKRの検出および定量が行われる。もう一つの方法では、PKRのリン酸化基質、例えばホスホeIF2αの検出および定量が、ホスホeIF2αまたは完全長eIF2に特異的な抗体を使ったウェスタンブロッティングにより、同じ細胞溶解物中のeIF2αの総量との関連において行われる。
PKRに対するウイルスの防御機序は、例えばデコイdsRNA(アデノウイルスVAI RNA;エプスタイン・バー・ウイルスEBER;HIV TAR)、PKR分解(ポリオウイルス2Apro)、ウイルスdsRNAの隠蔽(ワクシニアウイルスE3L;レオウイルスσ3; インフルエンザウイルスNS1)、二量体化のブロッキング(インフルエンザウイルスp58IPK;C型肝炎ウイルスNS5A)、偽基質(ワクシニアウイルスK3L;HIV Tat)または基質の脱リン酸化(単純ヘルペスウイルスICP34.5)などによって機能する。
デコイRNAは、酵素を真の基質ではなく偽基質に結合させることによって酵素の活性をブロックするために酵素のRNA基質に似た構造を有する、偽基質RNAである。
本発明によれば、「RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減する」という用語は、PKRの活性が人為的に低減されない/低減されていない通常の状況、特に細胞における通常の状況と比較して、PKRのホモ二量体化の度合の低下、PKRの自己リン酸化の度合の低下、および/またはPKRのキナーゼ基質であるターゲット(例えばeIF2a)のリン酸化の度合の低下をもたらす措置に関する。好ましくは、該用語は、PKRの自己リン酸化の度合の低下および/またはPKRのキナーゼ基質であるターゲットのリン酸化の度合の低下をもたらすあらゆる措置を包含する。
本発明によれば、細胞におけるPKRの活性を、インビトロで、またはインビボで、好ましくはインビトロで、低減することが考えられる。したがって本発明によれば、細胞は、単離された細胞であることができ、または器官、組織および/もしくは生物の一部を形成することができる。
本発明によれば、PKRの活性の低減をもたらす措置および手段は全て、PKRの活性の低減に適している。細胞におけるPKRの活性の低減は、好ましくは、PKRの活性が人為的に低減されない/低減されていない通常の状況、特に細胞における通常の状況と比較して、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらす。細胞におけるRNAの発現の強化は、好ましくは、PKRの活性が人為的に低減されない/低減されていない通常の状況、特に細胞における通常の状況と比較して、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む。
一実施形態では、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減することが、PKRの発現および/または活性の阻害剤で細胞を処理することを含む。本発明によれば、「発現および/または活性を阻害する」という表現は、発現および/または活性の完全なまたは本質的に完全な阻害、ならびに発現および/または活性の低減を包含する。好ましくは、PKR阻害剤による細胞の処理は、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる。
好ましくは、PKRの発現の該阻害は、PKRをコードする転写産物、すなわちmRNAの生産を阻害するか、そのレベルを低減することによって、例えば、転写を阻害するか、転写産物の分解を誘導することによって、かつ/またはPKRの生産を阻害することによって、例えばPKRをコードする転写産物の翻訳を阻害することによって起こりうる。一実施形態では、該PKR阻害剤がPKRをコードする核酸に特異的である。特定の一実施形態では、PKRの発現の阻害剤が、PKRに選択的にハイブリダイズしPKRに特異的であることによってその転写および/または翻訳を阻害(例えば低減)する阻害核酸(例えばアンチセンス分子、リボザイム、iRNA、siRNAまたはそれらをコードするDNA)である。
本発明の阻害核酸には、ターゲット核酸に対してアンチセンス方向の配列を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。適切な阻害オリゴヌクレオチドは、典型的には、5ヌクレオチドから数百ヌクレオチドまで、長さがさまざまであり、より典型的には、約20〜70ヌクレオチド長またはそれ未満、さらに典型的には約10〜30ヌクレオチド長である。これらの阻害オリゴヌクレオチドは、インビトロまたはインビボで、遊離(裸)の核酸として適用するか、保護された形態で、例えばリポソームにカプセル化して適用することができる。リポソームまたは他の保護された形態の使用は、それがインビボ安定性を強化することでターゲット部位への送達を容易にしうることから、有利であるだろう。
また、ターゲット核酸は、細胞において対応するmRNAの切断をターゲットとするリボザイムを設計するために使用しうる。同様に、これらのリボザイムは、遊離(裸)の形態で、または安定性および/もしくはターゲティングを強化する送達システム、例えばリポソームを利用して投与することができる。
また、ターゲット核酸は、核酸の発現を阻害(例えば低減)することができるsiRNAを設計するために使用しうる。siRNAは、遊離(裸)の形態で、または安定性および/もしくはターゲティングを強化する送達システム、例えばリポソームを利用して投与することができる。これらは、その前駆体の形態で、またはそれをコードするDNAの形態で投与することもできる。
siRNAは、好ましくは、センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖とを含み、ここで、センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖はRNA二重鎖を形成し、センスRNA鎖は、ターゲット核酸(好ましくはPKRをコードするmRNA)中の約19個〜約25個の連続ヌクレオチドのターゲット配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を含む。
一実施形態では、該PKR阻害剤がPKRタンパク質を指向し、好ましくはPKRに特異的である。PKRは、例えばPKR自己リン酸化および/または二量体化を阻害すること、PKR偽活性化因子を与えること、またはPKR偽基質を与えることなど、さまざまな方法で阻害することができる。PKR阻害剤は、上述のウイルスの防御機序に関与する薬剤であってもよい。例えばワクシニアウイルスE3Lは、ウイルス感染細胞においてPKRをおそらくはdsRNA活性化因子を隔離することによって阻害するdsRNA結合タンパク質をコードする。やはりワクシニアウイルスによってコードされているK3は、PKRに結合することによって偽基質阻害剤として機能する。したがって、ワクシニアウイルスE3Lを与えることは、PKRの阻害をもたらしうる。アデノウイルスVAI RNA、HIV Tatまたはエプスタイン・バー・ウイルスEBER1 RNAを与えることは、PKR偽活性化をもたらす。したがって例えば、本明細書に記載するようなPKR活性をブロックする全てのウイルス因子、すなわちウイルス由来の阻害剤は、PKRの活性を低減するために使用しうる。そのような因子は、適宜、RNAなどの核酸またはペプチド/タンパク質の形態で、細胞に与えることができる。
一実施形態では、PKR阻害剤が化学的阻害剤である。好ましくは、PKR阻害剤は、RNA誘導性PKR自己リン酸化の阻害剤である。好ましくは、PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である。
一実施形態では、PKR阻害剤が6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンである。一実施形態では、PKR阻害剤は次式を有する。
Figure 0006131433
一実施形態では、PKR阻害剤が2−アミノプリンである。一実施形態では、PKR阻害剤が次式を有する。
Figure 0006131433
好ましくは、上述の阻害剤を、少なくとも0.5μMもしくはそれ以上、少なくとも1μMもしくはそれ以上、または少なくとも2μMもしくはそれ以上の濃度で、また好ましくは5μMまで、4μMまで、3μMまで、または2μMまでの濃度で使用する。
さらなる一実施形態では、PKRの活性の阻害剤が、PKRに特異的に結合する抗体である。PKRへの抗体の結合は、結合活性または触媒活性を阻害することによって、PKRの機能を妨害することができる。
一実施形態では、ワクシニアウイルスE3および/またはK3などといった1つ以上のウイルス由来の阻害剤で細胞を処理すること、ならびに6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンおよび/または2−アミノプリンなどといった1つ以上の化学的PKR阻害剤で細胞を処理することによって、PKRの活性を低減することが考えられる。
一実施形態では、RNAの導入またはRNAの最初の導入(例えば反復トランスフェクションの場合)の前に、または前記導入と同時に、かつ/または前記導入後に、細胞を処理してPKRの活性を低減する。一実施形態では、RNAの導入またはRNAの最初の導入(例えば反復トランスフェクションの場合)の後、好ましくは直後に、細胞を処理してPKRの活性を低減する。
一実施形態では、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間またはそれ以上にわたってPKRの活性を低減するために、細胞を処理する。最も好ましくは、RNAの発現が望まれる全期間にわたって、例えば永続的にPKRの活性を低減するために、場合によってはRNAの反復トランスフェクションによって、細胞を処理する。
「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、核酸の発現を調節、特に低減するために使用することができる。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」という用語は、本発明によれば、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであって、生理的条件下で、特定の遺伝子を含むDNA、または該遺伝子のmRNAにハイブリダイズし、それによって該遺伝子の転写および/または該mRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドを指す。本発明によれば「アンチセンス分子」は、核酸またはその一部をその天然のプロモーターに対して逆向きに含有するコンストラクトも含む。核酸のアンチセンス転写産物またはその一部は、天然のmRNAと二重鎖を形成することで、そのmRNAの蓄積または翻訳を防止しうる。もう一つの可能性は、核酸を不活化するためのリボザイムの使用である。
好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、N末端部位または5’上流部位、例えば翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位とハイブリダイズする。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、3’非翻訳領域またはmRNAスプライス部位とハイブリダイズする。
本明細書にいう「低分子干渉RNA」または「siRNA」は、分解されるべきターゲット遺伝子またはmRNAを同定するために用いられる好ましくは10ヌクレオチド長より大きい、より好ましくは15ヌクレオチド長より大きい、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長のRNA分子を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲がsiRNAにとって最も好ましいサイズである。
本発明のsiRNAの一方または両方の鎖は3’−オーバーハングを含んでもよい。本明細書にいう「3’−オーバーハング」は、RNA鎖の3’末端から突き出した少なくとも一つの非対合ヌクレオチドを指す。したがって、一実施形態では、siRNAは、約1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドを含む)長、好ましくは1〜約5ヌクレオチド長、より好ましくは1〜約4ヌクレオチド長、特に好ましくは約2〜約4ヌクレオチド長の3’−オーバーハングを少なくとも一つは含む。siRNA分子の両鎖が3’−オーバーハングを含む実施形態では、オーバーハングの長さは各鎖で同じであっても鎖ごとに異なってもよい。最も好ましい実施形態では、3’−オーバーハングがsiRNAの両鎖に存在し、2ヌクレオチド長である。例えば本発明のsiRNAの各鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)またはジウリジル酸(「uu」)の3’−オーバーハングを含むことができる。
siRNAの安定性を強化するために、3’−オーバーハングを分解に対して安定化することもできる。一実施形態では、アデノシンヌクレオチドまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含めることによって、オーバーハングを安定化する。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば3’−オーバーハング中のウリジンヌクレオチドの2’−デオキシチミジンによる置換は許容され、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2’−デオキシチミジンにおける2’−ヒドロキシルの欠如は、組織培養培地における3’−オーバーハングのヌクレアーゼ耐性を著しく強化する。
siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は二つの相補的一本鎖RNA分子を含むか、または二つの相補部分が塩基対を形成して、それらが一本鎖「ヘアピン」区域によって共有結合的に連結されている単一分子を含むことができる。すなわち、センス領域とアンチセンス領域とを、リンカー分子を介して、共有結合でつなぐことができる。リンカー分子はポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであることができる。どの理論にも束縛されることは望まないが、後者のタイプのsiRNA分子のヘアピン区域は、細胞内で「ダイサー」タンパク質(またはその等価物)によって切断されて、二つの個別のRNA分子が塩基対を形成しているsiRNAを形成すると考えられる。
本明細書にいう「ターゲットmRNA」は、ダウンレギュレーションのターゲットである RNA分子を指す。
pol IIIプロモーターからのRNAの発現は、転写される最初のヌクレオチドがプリンである場合に効率がよいと考えられているだけなので、ターゲティング部位は変化させずに、siRNAをpol III発現ベクターから発現させることができる。
本発明のsiRNAは、任意のターゲットmRNA配列中の任意の約19〜25連続ヌクレオチドのストレッチ(「ターゲット配列」)にターゲティングすることができる。siRNA用のターゲット配列を選択するための技法は、例えば、Tuschl T.ら「The siRNA User Guide」(2002年10月11日改訂)に記載されており、その開示内容はすべて引用により本明細書に組み込まれる。「The siRNA User Guide」は、ワールドワイドウェブ上、Thomas Tuschl博士(米国ニューヨーク州のロックフェラー大学RNA分子生物学研究室)によって維持されているウェブサイトで入手することができ、ロックフェラー大学のウェブサイトにアクセスして「siRNA」というキーワードで検索することにより、見つけることができる。したがって、本siRNAのセンス鎖は、ターゲットmRNA中の約19〜約25ヌクレオチドの任意の連続ストレッチと実質的に同一なヌクレオチド配列を含む。
一般に、ターゲットmRNA上のターゲット配列は、ターゲットmRNAに対応する所与のcDNA配列から選択することができ、好ましくは開始コドンの50〜100nt下流(すなわち3’方向)から始まる。しかしターゲット配列は5’−もしくは3’−非翻訳領域、または開始コドン近くの領域に位置することもできる。
siRNAは当業者に知られているいくつかの技法を使って得ることができる。例えばsiRNAは、化学合成するか、当技術分野において知られている方法、例えばTuschlらの米国特許出願公開第2002/0086356号(その開示内容はすべて引用により本明細書に組み込まれる)に記載のショウジョウバエ(Drosophila)インビトロ系などを使って、組換え生産することができる。
好ましくは、siRNAは、適当に保護されたリボヌクレオシドホスホロアミダイトおよび通常のDNA/RNA合成装置を使って、化学合成される。siRNAは二つの別個の相補的RNA分子として合成するか、二つの相補的領域を有する単一のRNA分子として合成することができる。
あるいは、任意の適切なプロモーターを使って、組換え環状または線状DNAプラスミドから、siRNAを発現させることもできる。本発明のsiRNAをプラスミドから発現させるための適切なプロモーターとしては、例えばU6またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。
他の適切なプロモーターの選択は、当技術分野の技能の範囲内にある。本発明の組換えプラスミドは、特定の組織または特定の細胞内環境においてsiRNAを発現させるための誘導性プロモーターまたは調節可能プロモーターを含むこともできる。
組換えプラスミドから発現したsiRNAは、標準的技法によって培養細胞発現系から単離するか、細胞内で発現させることができる。siRNAをインビボの細胞に送達するための組換えプラスミドの使用は、当技術分野の技能の範囲内にある。siRNAは、二つの別々の相補的RNA分子として、または二つの相補的領域を有する単一のRNA分子として、組換えプラスミドから発現させることができる。
siRNAを発現させるのに適したプラスミド、siRNAを発現させるための核酸配列をプラスミドに挿入するための方法、および組換えプラスミドを目的の細胞に送達する方法の選択は、当技術分野の技能の範囲内にある。
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは、無傷の細胞、すなわち、酵素、細胞小器官、または遺伝物質などといったその正常な細胞内構成要素が放出されていない、無傷の膜を有する細胞である。無傷の細胞は、好ましくは、生細胞、すなわちその正常な代謝機能を果たす能力を有する、生きている細胞である。好ましくは、該用語は、本発明によれば、外因性の核酸による形質転換またはトランスフェクションを受けることができる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌(E. coli))または真核細胞を包含する。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、および霊長類由来の細胞などといった哺乳動物細胞は、特に好ましい。細胞は、好ましくは、PKRの活性の低減が細胞における安定性の強化および/またはRNAの発現の強化をもたらす細胞である。一実施形態では、細胞が、本明細書に記載する体細胞である。一実施形態では、細胞が、バリア機能を有する細胞である。好ましくは、細胞は、線維芽細胞、例えば本明細書に記載する線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、または内皮細胞、例えば心臓の内皮細胞、肺の内皮細胞または臍帯静脈内皮細胞である。好ましくは細胞はヒト細胞である。
線維芽細胞は、細胞外マトリックスおよびコラーゲンを合成し、創傷治癒において決定的な役割を果たす、細胞の一タイプである。線維芽細胞の主な機能は、細胞外マトリックスの前駆体を分泌し続けることによって結合組織の構造的完全性を維持することである。線維芽細胞は、動物では、最も一般的な結合組織の細胞である。線維芽細胞は形態学的に不均質で、その場所および活性に依存して多様な外観を呈する。
ケラチノサイトは、ヒトの皮膚の最外層である表皮において優勢な細胞タイプである。ケラチノサイトの第一の機能は、皮膚と下層の組織を、熱、UV光および水分喪失などといった環境ダメージから保護するケラチン層の形成である。
上皮は、体中の空洞および構造物の表面を裏打ちする細胞で構成された組織である。多くの腺も上皮組織から形成されている。これは結合組織の上に拡がり、これら2つの層は基底膜によって分離されている。ヒトでは、上皮は主要体組織に分類されており、その他は結合組織、筋組織および神経組織である。上皮細胞の機能には、分泌、選択的吸収、保護、経細胞輸送および感覚の検出が含まれる。
内皮は、血管の内表面を裏打ちして管腔内の循環血と血管壁の残りの部分との間に境界面を形成している細胞の薄層である。これらの細胞は内皮細胞と呼ばれる。内皮細胞は、心臓から最も小さい毛細管まで、循環系全体を裏打ちしている。内皮組織は、特殊化したタイプの上皮組織である。
本発明によれば、RNAは、本明細書では「因子」ともいう細胞における発現が望まれるリプログラミング因子などのペプチドまたはタンパク質をコードする/を発現する能力を有する。
本発明によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合により共有結合で接合された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、そして好ましくは8、10、20、30、40または50個、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは、アミノ酸残基数が100個を超えるペプチドを指すが、一般的には、用語「ペプチド」と「タンパク質」は同義であり、本明細書においては互換的に使用される。
本発明は、本明細書に記載するペプチド、タンパク質、またはアミノ酸配列の「変異体」も包含する。
本発明に関して、アミノ酸の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1つまたは2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列中の特定の部位に挿入されるが、ランダム挿入とその結果生じる産物の適当なスクリーニングも考えられる。
アミノ酸付加変異体は、1つ以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質のどの位置にあってもよい。
アミノ酸置換変異体は、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その代わりに別の残基が挿入されていることを特徴とする。相同タンパク質または相同ペプチド間で保存されていないアミノ酸配列中の位置での修飾、および/またはアミノ酸を、類似する性質を有する別のアミノ酸で置き換えることは、好ましい。好ましくは、タンパク質変異体中のアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同じように荷電しているアミノ酸または同じように非荷電であるアミノ酸による置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖が同類であるアミノ酸のファミリーの一つによる置換を伴う。天然のアミノ酸は、一般に、4つのファミリーに分割することができる:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、無極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、一まとめにして芳香族アミノ酸と分類される場合もある。
好ましくは、所与のアミノ酸配列と、該所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性(好ましくは同一性)の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であるだろう。類似性または同一性の程度は、好ましくは、基準アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に関して与えられる。例えば、基準アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続したアミノ酸に関して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度が、基準アミノ酸配列の全長に関して与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野において知られているツールを使って、好ましくは最良配列アラインメントを使って、例えばAlignを使って、標準的な設定で、好ましくはEMBOSS:needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使って行うことができる。
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換に相当するアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、それらの配列の間で同一であるアミノ酸またはヌクレオチドのパーセンテージを示す。
「同一性パーセンテージ」という用語は、最良アラインメント後に得られる、比較しようとする2つの配列間で同一であるアミノ酸残基のパーセンテージを表するものとし、このパーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の相違はそれらの全長にわたってランダムに分布する。2つのアミノ酸配列の間の配列比較は、従来どおり、それらを最適にアラインメントした後にこれらの配列を比較することによって行われ、該比較は、配列類似性を有する局所領域を同定し、比較するために、セグメントごとに、または「比較ウインドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最良アラインメントは、手作業で行われる他、SmithおよびWaterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482の局所相同性アルゴリズムによって、NeddlemanおよびWunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443の局所相同性アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを用いるコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group(ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575)のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成することもできる。
同一性パーセンテージは、比較される2つの配列間で同一な位置の数を決定し、その数を比較した位置の数で除し、これら2つの配列間の同一性パーセンテージが得られるように、得られた結果に100を乗じることによって算出される。
相同なアミノ酸配列は、本発明によれば、アミノ酸残基が、少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98または少なくとも99%の同一性を示す。
本明細書に記載するアミノ酸配列変異体は、当業者であれば、例えば組換えDNA操作などによって容易に調製することができる。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrookら(1989)に詳述されている。さらにまた、本明細書に記載するペプチドおよびアミノ酸変異体は、既知のペプチド合成技法を利用して、例えば固相合成法や類似の方法によって、容易に調製することができる。
本発明は、本明細書に記載するペプチドまたはタンパク質の誘導体を包含し、それらは「ペプチド」および「タンパク質」という用語に含まれる。本発明によれば、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、修飾型のタンパク質およびペプチドである。そのような修飾には任意の化学修飾が含まれ、タンパク質またはペプチドと関連する任意の分子、例えば糖質、脂質および/もしくはタンパク質またはペプチドの、単一のまたは複数の置換、欠失および/または付加を含む。一実施形態において、タンパク質またはペプチドの「誘導体」には、糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/ブロッキング基の導入、タンパク質分解的切断または抗体へのまたは別の細胞性リガンドへの結合によってもたらされる修飾アナログが含まれる。「誘導体」という用語は、該タンパク質およびペプチドの全ての機能的な化学的等価物にも及ぶ。好ましくは、修飾ペプチドは、増加した安定性および/または増加した免疫原性を有する。
本発明によれば、ペプチドまたはタンパク質の変異体は、好ましくは、その元となったペプチドまたはタンパク質の機能的性質を有する。そのような機能的性質を、本明細書では、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4およびc−MYCについて、それぞれ説明する。好ましくは、ペプチドまたはタンパク質の変異体は、動物の分化細胞のリプログラミングにおいて、それが由来したペプチドまたはタンパク質と同じ性質を有する。好ましくは、変異体は、動物の分化細胞のリプログラミングを誘導または強化する。
一実施形態では、RNAによってコードされているペプチドまたはタンパク質が、幹細胞特徴を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする因子である。一実施形態では、ペプチドまたはタンパク質が、1つ以上の抗原および/または1つ以上の抗原ペプチドを含む。好ましくは、該RNAは、特に細胞に導入された場合に、該ペプチドまたはタンパク質を発現する能力を有する。
「幹細胞」は、自己複製する能力、未分化状態に留まる能力、および分化した状態になる能力を有する細胞である。幹細胞は、少なくとも、それが天然に与えられている動物の生存期間中は、際限なく分裂することができる。幹細胞は最終分化しておらず、分化経路の最終段階にはない。幹細胞が分裂する場合、各娘細胞は幹細胞のままであるか、または最終分化につながる進路に乗り出すことができる。
全能性幹細胞は、全能分化性を有し、完全な生物に発生する能力を有する細胞である。この性質は、精子による卵母細胞の受精後、8細胞期までの細胞が有している。これらの細胞を単離して子宮内に移植すると、それらは完全な生物に発生することができる。
多能性幹細胞は、外胚葉層、中胚葉層および内胚葉層に由来するさまざまな細胞および組織に発生する能力を有する細胞である。受精の4〜5日後に生成する、胚盤胞の内部に位置する内部細胞塊に由来する多能性幹細胞は、「胚性幹細胞」と呼ばれ、他のさまざまな組織細胞に分化することができるが、新しい生きた生物を形成することはできない。
複能性幹細胞は、通常はそれぞれの起源である組織および器官に特異的な細胞タイプだけに分化する幹細胞である。複能性幹細胞は、胎児期、新生児期および成体期におけるさまざまな組織および器官の成長および発生に関与するだけでなく、成体組織ホメオスタシスの維持および組織損傷時に再生を誘導する機能にも関与する。組織特異的複能性細胞は「成体幹細胞」と総称される。
「胚性幹細胞」は、胚に存在するまたは胚から単離される幹細胞である。これは、多能性(その生物中に存在するありとあらゆる細胞に分化する能力を有するもの)であるか、複能性(2つ以上の細胞タイプに分化することができるもの)であることができる。
本明細書にいう「胚」は、その発生の初期段階にある動物を指す。これらの段階は、着床および原腸形成(ここで、3つの胚葉が規定され、確立される)と、胚葉の個々の器官および器官系への分化を特徴とする。3つの胚葉とは、内胚葉、外胚葉および中胚葉である。
「胚盤胞」は、受精卵子が卵割を起こして、液体で満たされた空洞を取り囲む球状の細胞層が形成されつつあるか、形成され終えた、発生の初期段階にある胚である。この球状の細胞層が栄養外胚葉である。栄養外胚葉の内側には、内部細胞塊(ICM)と呼ばれる細胞のクラスターがある。栄養外胚葉は胎盤の前駆体であり、ICMは胚の前駆体である。
成体幹細胞は、体性幹細胞とも呼ばれ、成体に見いだされる幹細胞である。成体幹細胞は分化した組織に見いだされ、自己複製することができ、制限はあるが分化して、その起源組織の特殊化した細胞タイプを与えることができる。例として、間葉系幹細胞、造血幹細胞、および神経幹細胞が挙げられる。
「分化細胞」は、より特殊化した形態または機能へと漸進的な発生変化を起こした成熟細胞である。細胞分化は、細胞が、明白に特殊化した細胞タイプへと成熟する時に経るプロセスである。分化細胞は独特な特徴を有し、特殊な機能を果たし、分裂する可能性は、分化度の低い類似の細胞より低い。
「未分化」細胞、例えば未成熟細胞、胚細胞、または原始細胞は、典型的には、非特異的な外観を持ち、複数の非特異的活動を行いうるが、分化細胞が典型的に果たす機能は、全く果たさないことはないとしても、わずかにしか果たさないだろう。
「体細胞」は、ありとあらゆる分化細胞を指し、幹細胞、生殖細胞、または配偶子を含まない。好ましくは、本明細書にいう「体細胞」は、最終分化細胞を指す。
本明細書において「コミットした(committed)」とは、特殊な機能に永続的にコミットしたとみなされる細胞を指す。コミットした細胞を「最終分化細胞」ともいう。
本明細書にいう「分化」は、特定の形態または機能への細胞の適応を指す。細胞では、分化が、より強くコミットした細胞(more committed cell)をもたらす。
本明細書にいう「脱分化」は、形態または機能の特殊化の喪失を指す。細胞では、脱分化が、より弱くコミットした細胞(less committed cell)をもたらす。
本明細書にいう「リプログラミング」は、細胞の遺伝的プログラムのリセットを指す。リプログラムされた細胞は、好ましくは、多能性を示す。
「脱分化した」および「リプログラムされた」という用語または類似する用語は、本明細書では、幹細胞特徴を有する体細胞由来細胞を表すために互換的に使用される。しかし、これらの用語は、機構的または機能的考慮によって本明細書に開示する内容を限定しようとするものではない。
「幹細胞特徴の発生を誘導するRNA」または「幹細胞特徴を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする1つ以上の因子を発現する能力を有するRNA」という用語は、体細胞中に導入された時に、細胞の脱分化を誘導するRNAを指す。
本明細書にいう「生殖細胞(germ cell)」は、精母細胞または卵母細胞などの性細胞(reproductive cell)、または性細胞へと発生するであろう細胞を指す。
本明細書にいう「多能性」は、胎盤の細胞または子宮の他の支持細胞を除く任意の細胞タイプを生じることができる細胞を指す。
「幹細胞特徴を有する細胞」、「幹細胞性を有する細胞」または「幹様細胞」などの用語は、本明細書においては、分化した体性非幹細胞に由来する細胞ではあるが、幹細胞、特に胚性幹細胞に典型的な特質を1つ以上示す細胞を指示するために使用される。そのような特質には、コンパクトなコロニー、高い核/細胞質比および明瞭な核小体などといった胚性幹細胞形態、正常核型、テロメラーゼ活性の発現、胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーの発現、および/または胚性幹細胞に特有の遺伝子の発現が含まれる。胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーは、例えば、ステージ特異的胚抗原3(SSEA−3)、SSEA−4、腫瘍関連抗原1−60(TRA−1−60)、TRA−1−81、およびTRA−2−49/6Eからなる群より選択される。胚性幹細胞に特有の遺伝子は、例えば、内在性OCT4、内在性NANOG、増殖分化因子3(GDF3)、REX1(reduced expression 1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異的遺伝子1(ESG1)、DPPA2(developmental pluripotency−associated 2)、DPPA4、およびテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)からなる群より選択される。一実施形態では、幹細胞に典型的な1つ以上の特質に、多能性が含まれる。
本発明の方法の一実施形態では、幹細胞特徴が胚性幹細胞形態を含み、該胚性幹細胞形態は、好ましくは、コンパクトなコロニー、高い核/細胞質比および明瞭な核小体からなる群より選択される形態学的基準を含む。一定の実施形態では、幹細胞特徴を有する細胞が、正常核型を有し、テロメラーゼ活性を発現し、胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーを発現し、かつ/または胚性幹細胞に特有の遺伝子を発現する。胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーは、ステージ特異的胚抗原3(SSEA−3)、SSEA−4、腫瘍関連抗原1−60(TRA−1−60)、TRA−1−81、およびTRA−2−49/6Eからなる群より選択することができ、胚性幹細胞に特有の遺伝子は、内在性OCT4、内在性NANOG、増殖分化因子3(GDF3)、REX1(reduced expression 1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異的遺伝子1(ESG1)、DPPA2(developmental pluripotency−associated 2)、DPPA4、およびテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)からなる群より選択することができる。
好ましくは、幹細胞特徴を有する細胞は、脱分化されかつ/またはリプログラムされた体細胞である。好ましくは、幹細胞特徴を有する細胞は、多能性状態などといった、胚性幹細胞の本質的特徴を示す。好ましくは、幹細胞特徴を有する細胞は、3つ全ての一次胚葉の高度な派生物へと分化する発生能を有する。一実施形態では、一次胚葉が内胚葉であり、高度な派生物が腸様上皮組織である。さらにもう一つの実施形態では、一次胚葉が中胚葉であり、高度な派生物が横紋筋および/または軟骨である。さらにもう一つの実施形態では、一次胚葉が外胚葉であり、高度な派生物が神経組織および/または表皮組織である。好ましい一実施形態では、幹細胞特徴を有する細胞が、ニューロン細胞および/または心臓細胞へと分化する発生能を有する。
一実施形態では、体細胞が、間葉表現型を伴う胚性幹細胞由来の体細胞である。好ましい一実施形態では、体細胞が線維芽細胞、例えば胎児線維芽細胞もしくは生後線維芽細胞(postnatal fibroblast)、またはケラチノサイト、好ましくは毛包由来ケラチノサイトである。さらなる実施形態では、線維芽細胞が肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞または真皮線維芽細胞である。特定の実施形態では、線維芽細胞が、American Type Culture Collection(ATCC)にカタログ番号CCL−186として寄託されている線維芽細胞、American Type Culture Collection(ATCC)にカタログ番号CRL−2097として寄託されている線維芽細胞、またはAmerican Type Culture Collection(ATCC)にカタログ番号CRL−2522として寄託されている線維芽細胞、またはSystem Biosciencesがカタログ番号PC501A−HFFとして分譲している線維芽細胞である。一実施形態では、線維芽細胞が成人真皮線維芽細胞である。好ましくは、体細胞はヒト細胞である。本発明によれば、体細胞は遺伝子改変されていてもよい。
本発明における「因子」という用語は、RNAによるその発現に関連して使用される場合、タンパク質およびペプチドならびにその誘導体および変異体を包含する。例えば「因子」という用語は、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4およびc−MYCを含む。
因子は任意の動物種、例えば哺乳動物および齧歯動物の因子であることができる。哺乳動物の例には、ヒトおよび非ヒト霊長類が含まれるが、これらに限るわけではない。霊長類には、ヒト、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、および他の任意の新世界ザルまたは旧世界ザルが含まれるが、これらに限るわけではない。齧歯動物には、マウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびスナネズミが含まれるが、これらに限るわけではない。
本発明によれば、幹細胞特徴を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする能力を有する1つ以上の因子は、(i)OCT4およびSOX2、(ii)OCT4、SOX2、ならびにNANOGおよびLIN28の一方または両方、(iii)OCT4、SOX2、ならびにKLF4およびc−MYCの一方または両方からなる群より選択される因子の集まりを含む。一実施形態では、RNAによって発現されうる前記1つ以上の因子が、OCT4、SOX2、NANOGおよびLIN28を含むか、OCT4、SOX2、KLF4およびc−MYCを含む。好ましくは、RNAは、該動物分化体細胞に、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションによって導入される。好ましくは、本発明の方法はさらに、例えば体細胞を胚性幹細胞培養条件下、好ましくは多能性幹細胞を未分化状態に維持するのに適した条件下で培養することによって、幹細胞特徴を有する細胞の発生を可能にすることを含む。
OCT4は、真核POU転写因子類の転写因子であり、胚性幹細胞の多能性の指標である。これは、母性発現するオクトマー(Octomer)結合タンパク質である。これは卵母細胞、未分化胚芽細胞の内部細胞塊、および始原生殖細胞中に存在することが観察されている。遺伝子POU5F1はOCT4タンパク質をコードしている。この遺伝子名の別名には、OCT3、OCT4、OTF3およびMGC22487が含まれる。胚性幹細胞が未分化状態に留まるには、特異的濃度のOCT4の存在が必要である。
好ましくは、「OCT4タンパク質」または単に「OCT4」は、ヒトOCT4に関し、好ましくは配列番号1の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を含む。上述したOCT4のcDNA配列がOCT4 mRNAと等価であり、OCT4を発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
Sox2は、単一のHMG DNA結合ドメインを有する転写因子をコードするSox(SRY関連HMGボックス)遺伝子ファミリーのメンバーである。SOX2は、神経前駆細胞をその分化能力の阻害によって制御することが見いだされている。この因子の抑制は脳室帯からの剥離をもたらし、続いて、細胞周期からの離脱が起こる。これらの細胞は、前駆細胞マーカーおよび初期ニューロン分化マーカーの喪失により、その前駆細胞特色も失いはじめる。
好ましくは、「SOX2タンパク質」または単に「SOX2」は、ヒトSOX2に関し、好ましくは配列番号3の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を含む。上述したSOX2のcDNA配列がSOX2 mRNAと等価であり、SOX2を発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
NANOGはNK−2型ホメオドメイン遺伝子であり、幹細胞多能性の維持において、おそらくは胚性幹細胞の複製および分化にとって不可欠な遺伝子の発現を調節することによって、重要な役割を果たすとされている。NANOGは、転写活性化因子として挙動し、そのC末端には二つの並外れて強い活性化ドメインが埋込まれている。NANOG発現の低減は、胚性幹細胞の分化を誘導する。
好ましくは、「NANOGタンパク質」または単に「NANOG」は、ヒトNANOGに関し、好ましくは配列番号5の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を含む。上述したNANOGのcDNA配列がNANOG mRNAと等価であり、NANOGを発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
LIN28は、RNA結合モチーフの珍しい組合せ、すなわち寒冷ショックドメインと1対のレトロウイルス型CCHCジンクフィンガーとを有する保存された細胞質タンパク質である。哺乳動物では、これが、多様なタイプの未分化細胞中に豊富に存在する。多能性哺乳動物細胞では、LIN28が、ポリ(A)結合タンパク質とのRNase感受性複合体中、およびスクロース勾配のポリソーム画分中に観察されることから、これはmRNAの翻訳に関連することが示唆される。
好ましくは、「LIN28タンパク質」または単に「LIN28」は、ヒトLIN28に関し、好ましくは配列番号7の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列を含む。上述したLIN28のcDNA配列がLIN28 mRNAと等価であり、LIN28を発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
クルッペル様因子(KLF4)は、さまざまな組織、例えば結腸、胃および皮膚の有糸分裂後の上皮細胞において強く発現しているジンクフィンガー転写因子である。KLF4はこれらの細胞の最終分化にとって不可欠であり、細胞周期調節に関与する。
好ましくは、「KLF4タンパク質」または単に「KLF4」は、ヒトKLF4に関し、好ましくは配列番号9の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を含む。上述したKLF4のcDNA配列がKLF4 mRNAと等価であり、KLF4を発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
MYC(cMYC)は、多種多様なヒトがんにおいて過剰発現するがん原遺伝子である。特異的に変異するか過剰発現した場合、これは、細胞増殖を増加させ、がん遺伝子として機能する。MYC遺伝子は、エンハンサーボックス配列(Eボックス)への結合およびヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)の動員によって全遺伝子の15%の発現を調節する転写因子をコードしている。MYCは転写因子のMYCファミリーに属し、このファミリーには、N−MYCおよびL−MYC遺伝子も含まれる。MYCファミリー転写因子はbHLH/LZ(塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックスロイシンジッパー)ドメインを含有する。
好ましくは、「cMYCタンパク質」または単に「cMYC」は、ヒトcMYCに関し、好ましくは配列番号11の核酸によってコードされるアミノ酸配列、好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を含む。上述したcMYCのcDNA配列がcMYC mRNAと等価であり、cMYCを発現する能力を有するRNAの作製に使用できることは、当業者には理解されるであろう。
本明細書における具体的因子、例えばOCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4またはc−MYCへの言及、またはその具体的配列への言及は、本明細書に記載するそれら具体的因子またはその具体的配列の変異体も、全て包含すると理解すべきである。特に、それらの具体的因子/配列のスプライス変異体、翻訳後修飾変異体、コンフォメーション、アイソフォームおよび種ホモログであって細胞が自然に発現するものも、全て包含すると理解すべきである。
好ましくは、本明細書に記載する幹細胞特徴を有する細胞を提供するための方法で使用される幹細胞特徴を有する細胞の発生を可能にするステップは、胚性幹細胞培養条件下、好ましくは多能性幹細胞を未分化状態に維持するのに適した条件下で体細胞を培養することを含む。
好ましくは、幹細胞特徴を有する細胞の発生が可能になるように、細胞を、1つ以上のDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤および/または1つ以上のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養する。好ましい化合物は、5’−アザシチジン(5’−azaC)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、デキサメタゾン、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム(NaBu)、スクリプタイドおよびバルプロ酸(VPA)からなる群より選択される。好ましくは、バルプロ酸(VPA)が、好ましくは0.5〜10mM、より好ましくは1〜5mM、最も好ましくは約2mMの濃度で存在する状態で、細胞を培養する。
本発明の方法を使って、任意のタイプの体細胞の脱分化を達成することができる。使用しうる細胞には、本発明の方法によって脱分化させ、またはリプログラムすることができる細胞、特に完全にまたは部分的に分化した細胞、より好ましくは最終分化した細胞が含まれる。好ましくは、体細胞は、前期胚、胚、胎児、および出生後の多細胞生物に由来する二倍体細胞である。使用しうる細胞の例には、線維芽細胞、例えば胎児および新生児線維芽細胞または成体線維芽細胞、ケラチノサイト、特に初代ケラチノサイト、より好ましくは毛髪に由来するケラチノサイト、脂肪細胞、上皮細胞、表皮細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経細胞、膠細胞、アストロサイト、心臓細胞、食道細胞、筋細胞、メラノサイト、造血細胞、骨細胞、マクロファージ、単球および単核球が含まれるが、これらに限るわけではない。
本発明の方法を使用することができる細胞は、任意の動物種、例えば哺乳動物および齧歯動物のものであることができる。本発明によって脱分化および再分化させることができる哺乳動物細胞の例には、ヒト細胞および非ヒト霊長類細胞が含まれるが、これらに限るわけではない。本発明を実施しうる霊長類細胞には、ヒト、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、および他の任意の新世界ザルまたは旧世界ザルの細胞が含まれるが、これらに限るわけではない。本発明を実施しうる齧歯動物細胞には、マウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびスナネズミ細胞が含まれるが、これらに限るわけではない。
本発明に従って調製される脱分化細胞は、多能性幹細胞の要求性と同じ要求性の多くを示すと予想され、胚性幹細胞に使用される条件、例えばES細胞培地、または胚細胞の成長をサポートする任意の培地で、拡大し、維持することができる。胚性幹細胞は、培養された不活化胎児線維芽細胞上で、例えば照射マウス胚性線維芽細胞またはヒト線維芽細胞(例えばヒト包皮線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト子宮内膜線維芽細胞、ヒト卵管線維芽細胞)上で維持した場合に、インビトロで、その多能性を保持する。一実施形態では、ヒトフィーダー細胞が、直接分化によって同じリプログラム細胞培養物から派生した自己フィーダー細胞でありうる。
さらにまた、ヒト胚性幹細胞は、マウス胎児線維芽細胞によって調整された培地中のマトリゲル上でも、うまく増殖させることができる。ヒト幹細胞は、長期間にわたって培養中で成長させることができ、特殊な培養条件下では未分化状態に留まることができる。
一定の実施形態では、細胞培養条件が、細胞を、細胞の分化を阻害するか、さもなければ細胞の脱分化を増強することができる因子、例えば非ES細胞、栄養外胚葉または他の細胞タイプへの細胞の分化を防止することができる因子と接触させることを含みうる。
本発明に従って調製される脱分化細胞は、細胞の表現型の変化を監視し、それらの遺伝子発現およびタンパク質発現を特徴づけることを含む方法によって評価することができる。遺伝子発現はRT−PCRによって決定することができ、翻訳産物は、免疫細胞化学およびウェスタンブロッティングによって決定することができる。特に、トランスクリプトミクスを含む当技術分野において周知の技法を使って脱分化細胞を特徴づけることで、遺伝子発現のパターンを決定し、リプログラム細胞が胚性幹細胞などの未分化多能性対照細胞に予想される発現パターンと類似する遺伝子発現のパターンを示すかどうかを決定することができる。
これに関連して、次に挙げる脱分化細胞の遺伝子の発現を評価することができる:OCT4、NANOG、増殖分化因子3(GDF3)、REX1(reduced expression 1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異的遺伝子1(ESG1)、DPPA2(developmental pluripotency−associated 2)、DPPA4、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、胚抗原3(SSEA−3)、SSEA−4、腫瘍関連抗原1−60(TRA−1−60)、TRA−1−81、およびTRA−2−49/6E。
リプログラム細胞の比較対象にすることができる未分化細胞または胚性幹細胞は、分化体細胞と同じ種から得ることができる。あるいは、リプログラム細胞の比較対象にすることができる未分化細胞または胚性幹細胞は、分化体細胞とは異なる種から得ることもできる。
いくつかの実施形態において、未分化細胞において特異的に発現する一定の遺伝子がリプログラム細胞でも発現するのであれば、そのリプログラム細胞と未分化細胞、例えば胚性幹細胞との間に、遺伝子発現パターンの類似性が存在する。例えば、分化体細胞では典型的には検出することができない一定の遺伝子、例えばテロメラーゼを使って、リプログラミングの程度を監視することができる。同様に、一定の遺伝子については、発現の欠如を使って、リプログラミングの程度を評価することもできる。
テロメラーゼ活性の誘導によって特徴づけられる自己複製能は、脱分化細胞において監視することができる幹細胞のもう一つの特徴である。
核型解析は、有糸分裂細胞から得られる染色体展開標本、スペクトル核型決定、テロメア長のアッセイ、全ゲノムハイブリダイゼーション、または当技術分野において周知の他の技法を使って行なうことができる。
本発明を使って、適当な因子をコードするRNAを、例えばエレクトロポレーションにより、1つ以上の体細胞中に取り込ませる。取り込み後に、細胞を、好ましくは、脱分化細胞の維持をサポートする条件(すなわち幹細胞培養条件)を使って培養する。次に、脱分化細胞を拡大し、細胞療法に必要とされる、異なるタイプの体細胞に再分化するように、誘導することができる。本発明に従って得られる脱分化細胞は、インビトロまたはインビボで、1つ以上の所望の体細胞タイプに分化するように誘導することができる。
好ましくは、本発明に従って得られる脱分化細胞は、3つの胚性胚葉、すなわち内胚葉、中胚葉、および外胚葉のどれに由来する細胞でも生じることができる。例えば脱分化細胞は、骨格筋、骨格、皮膚の真皮、結合組織、泌尿生殖器系、心臓、血液(リンパ細胞)、および脾臓(中胚葉);胃、結腸、肝臓、膵臓、膀胱;尿道の内壁、気管の上皮部分、肺、咽頭、甲状腺、副甲状腺、腸(内胚葉);または中枢神経系、網膜および水晶体、脳神経節および感覚神経節ならびに脳神経および感覚神経、色素細胞、頭部結合組織(head connective tissue)、表皮、毛髪、乳腺(外胚葉)に分化しうる。本発明に従って得られる脱分化細胞は、当技術分野において知られている技法を使って、インビトロまたはインビボで再分化させることができる。
本発明の一実施形態では、本発明の方法がもたらすリプログラム細胞を使って、分化した子孫を作出する。したがって一態様において、本発明は、(i)本発明の方法を使ってリプログラム細胞を得ること;および(ii)そのリプログラム細胞の分化を誘導して、分化細胞を作出することを含む、分化細胞を作出するための方法を提供する。ステップ(ii)はインビボまたはインビトロで行なうことができる。さらにまた、分化は、適当な分化因子(これは、添加されたものであるか、例えばリプログラム細胞が導入された身体、器官もしくは組織中に元々存在するものであることができる)の存在によって誘導されうる。分化細胞を使って、細胞、組織、および/または臓器移植の分野において有利に使用される細胞、組織および/または器官を派生させることができる。所望であれば、リプログラミングに先だって、遺伝子改変を例えば体細胞中に導入することができる。本発明の分化細胞は、好ましくは、胚性幹細胞または胚性生殖細胞の多能性を有さず、本質的に、組織特異的な部分的にまたは完全に分化した細胞である。
本発明の方法の利点の一つは、本発明によって得られるリプログラム細胞を、事前に選択もしくは精製または細胞株の樹立を行なわずに分化させることができる点である。したがって一定の実施形態では、リプログラム細胞を含む不均一な細胞集団を、所望の細胞タイプに分化させる。一実施形態では、本発明の方法から得られる細胞の混合物を、1つ以上の分化因子に曝露し、インビトロで培養する。
本明細書に開示する方法によって得られるリプログラム細胞を分化させる方法は、リプログラム細胞を透過処理するステップを含みうる。例えば、本明細書に記載するリプログラミング技法によって生成する細胞、あるいはリプログラム細胞を含む不均一な細胞の混合物を、1つ以上の分化因子または分化因子を含む細胞抽出物もしくは他の調製物に曝露する前に、透過処理することができる。
例えば、少なくとも1つの分化因子の存在下で未分化リプログラム細胞を培養し、その培養物から分化細胞を選択することによって、分化細胞を得ることができる。分化細胞の選択は、分化細胞上に存在する一定の細胞マーカーの発現などといった表現型に基づくか、または機能アッセイ(例えば特定分化細胞タイプの1つ以上の機能を果たす能力)によることができる。
もう一つの実施形態では、本発明に従ってリプログラムされた細胞が、そのDNA配列の付加、欠失、または修飾によって遺伝子改変される。
本発明に従って調製されたリプログラム細胞もしくは脱分化細胞またはリプログラム細胞もしくは脱分化細胞に由来する細胞は、研究および治療に役立つ。リプログラムされた多能性細胞は、限定するわけではないが皮膚、軟骨、骨、骨格筋、心筋、腎、肝、血液および造血、血管前駆体および血管内皮、膵β、ニューロン、グリア、網膜、神経、腸、肺、および肝臓細胞を含む、体内のどの細胞にも分化させることができる。
リプログラム細胞は、再生/修復治療に有用であり、その必要がある患者に移植することができる。一実施形態では、細胞が患者にとって自己細胞である。
本発明に従って提供されるリプログラム細胞は、例えば心臓障害、神経障害、内分泌障害、血管障害、網膜障害、皮膚障害、筋骨格障害、および他の疾患の処置における治療戦略に使用することができる。
例えば、限定するつもりはないが、本発明のリプログラム細胞は、年齢ゆえにまたはがん放射線療法および化学療法などのアブレーション療法ゆえに自然細胞が枯渇している動物において、細胞を補充するために使用することができる。もう一つの非限定的な例では、本発明のリプログラム細胞が、器官再生および組織修復に役立つ。本発明の一実施形態では、損傷した筋組織、例えばジストロフィー筋および心筋梗塞などの虚血イベントによって損傷した筋を甦らせるために、リプログラム細胞を使用することができる。本発明のもう一つの実施形態では、外傷または手術後の、ヒトを含む動物における瘢痕を改善するために、本明細書に開示するリプログラム細胞を使用することができる。この実施形態では、本発明のリプログラム細胞が全身投与(例えば静脈内投与)され、損傷した細胞が分泌する循環サイトカインによって動員されることで、新たに外傷を起こした組織の部位に移動する。本発明のもう一つの実施形態では、修復または再生を必要とする処置部位にリプログラム細胞を局所的に投与することができる。
さらなる実施形態では、本明細書において使用されるRNAが、治療的価値を有するペプチドまたはタンパク質をコードする。そのRNAを含有する細胞は、例えばそれがそのRNAを(したがってそのペプチドまたはタンパク質を)発現するように、本発明の方法を使ってインビトロで操作することができる。次に、そのペプチドまたはタンパク質を発現する細胞を、患者に導入することができる。
特に好ましい一実施形態では、本明細書において使用されるRNAが、免疫原、抗原または抗原ペプチドを含むペプチドまたはタンパク質をコードする。一実施形態では、ペプチドまたはタンパク質が、発現後にプロセシングされて、該免疫原、抗原または抗原ペプチドを与える。もう一つの実施形態では、ペプチドまたはタンパク質そのものが、免疫原、抗原または抗原ペプチドである。免疫原、抗原または抗原ペプチドを含むそのようなペプチドまたはタンパク質を発現する細胞は、例えばその免疫原、抗原または抗原ペプチドに対する免疫応答を患者において惹起するための免疫療法に使用することができる。
本明細書によれば「抗原」は、免疫応答を惹起するであろう任意の物質を包含する。特に「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質に関する。本発明によれば、「抗原」という用語は、少なくとも1つのエピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、本発明との関連において抗原とは、場合によってはプロセシング後に、免疫反応(好ましくはその抗原に特異的であるもの)を誘導する分子である。本発明によれば、免疫反応の候補である任意の適切な抗原を使用することができ、ここで、免疫反応は体液性免疫反応と細胞性免疫反応の両方であることができる。本発明の実施形態との関連において、抗原は、好ましくは、細胞によって、好ましくは抗原提示細胞によって、MHC分子との関連において提示され、それが、その抗原に対する免疫反応をもたらす。抗原は、好ましくは、天然の抗原に対応するまたは天然の抗原に由来する産物である。そのような天然抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫および他の感染性因子ならびに病原体を含むか、それらに由来することができ、あるいは抗原は腫瘍抗原であってもよい。本発明によれば、抗原は、天然の産物、例えばウイルスタンパク質またはその一部に対応しうる。
好ましい一実施形態では、抗原が腫瘍抗原、すなわち、細胞質、細胞表面または細胞核に由来しうる腫瘍細胞の一部、特に、主として腫瘍細胞の細胞内に存在するか腫瘍細胞の表面抗原として存在するものである。例えば、腫瘍抗原には、癌胎児抗原、α1−フェトプロテイン、イソフェリチン、および胎児スルホ糖タンパク質、α2−H−鉄タンパク質およびγ−フェトプロテイン、ならびにさまざまなウイルス腫瘍抗原が含まれる。本発明によれば、腫瘍抗原は、好ましくは、タイプおよび/または発現レベルに関して腫瘍またはがんおよび腫瘍細胞またはがん細胞に特有な任意の抗原を含む。もう一つの実施形態では、抗原が、ウイルスリボ核タンパク質またはコートタンパク質などのウイルス抗原である。特に、抗原はMHC分子によって提示されるべきであり、それが、免疫系の細胞(好ましくはCD4およびCD8リンパ球)の調整、特に活性化、特にT細胞受容体の活性の調整によるものをもたらす。
好ましい実施形態では、抗原が腫瘍抗原であり、本発明は、前記腫瘍抗原を発現し好ましくは前記腫瘍抗原をクラスI MHCと共に提示する腫瘍細胞に対する抗腫瘍CTL応答の刺激を伴う。
「免疫原性」という用語は、免疫反応を誘導する抗原の相対的有効性に関する。
「病原体」という用語は、病原性微生物に関し、ウイルス、細菌、真菌、単細胞生物、および寄生虫を含む。病原性ウイルスの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス(HSV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、HBV、HCV、パピローマウイルス、およびヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)である。単細胞生物は、プラスモジウム、トリパノソーマ、アメーバなどを含む。
本発明において使用しうる抗原の例は、p53、ART−4、BAGE、ss−カテニン/m、Bcr−abL CAMEL、CAP−1、CASP−8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディン−12、c−MYC、CT、Cyp−B、DAM、ELF2M、ETV6−AML1、G250、GAGE、GnT−V、Gap100、HAGE、HER−2/neu、HPV−E7、HPV−E6、HAST−2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE−A、好ましくはMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、またはMAGE−A12、MAGE−B、MAGE−C、MART−1/Melan−A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM−1、−2、−3、NA88−A、NF1、NY−ESO−1、NY−BR−1、p190マイナーBCR−abL、Plac−1、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART−1またはSART−3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP−1、TRP−2、TRP−2/INT2、TPTE およびWT、好ましくはWT−1である。
本明細書にいう「抗原の一部またはフラグメント」または「抗原ペプチド」は、好ましくは、不完全な形の抗原であり、その抗原に対する免疫応答を惹起する能力を有する。
これに関連して、本発明は、抗原に由来するアミノ酸配列を含むペプチドも利用し、これを本明細書では「抗原ペプチド」とも呼ぶ。「抗原ペプチド」または「抗原に由来する抗原ペプチド」とは、抗原のフラグメントまたはペプチドのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含むオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。抗原ペプチドは任意の長さであることができる。
好ましくは、抗原ペプチドは、免疫応答を、好ましくは抗原に対する細胞応答、またはその抗原の発現、好ましくはその抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞応答を、刺激する能力を有する。好ましくは、抗原ペプチドは、クラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞応答を刺激する能力を有し、好ましくは抗原応答性CTLを刺激する能力を有する。好ましくは、本発明の抗原ペプチドは、MHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドであるか、プロセシングされてMHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドを生成することができる。好ましくは、抗原ペプチドは、抗原のフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗原の該フラグメントは、MHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドである。好ましくは、本発明の抗原ペプチドは、前記フラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含み、プロセシングされて、前記フラグメント(すなわち、抗原に由来するMHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチド)を生成する。
抗原ペプチドを直接的に、すなわちプロセシングなしで、特に切断なしで、提示させる場合、それは、MHC分子、特にクラスI MHC分子への結合に適した長さを有し、好ましくは、7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、直接提示させる抗原ペプチドの配列は、抗原のアミノ酸配列に由来する。すなわちその配列は抗原のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に一致する。
抗原ペプチドをプロセシング後に、特に切断後に提示させる場合、プロセシングによって生成するペプチドは、MHC分子、特にクラスI MHC分子への結合に適した長さを有し、好ましくは、7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、プロセシング後に提示させる抗原ペプチドの配列は、抗原のアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は抗原のフラグメントと実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。したがって、本発明の抗原ペプチドは、一態様では、抗原のフラグメントと実質的に対応し、好ましくは完全に同一であり、抗原ペプチドのプロセシング後に、提示されるペプチドを構成する、7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長の配列を含む。しかし抗原ペプチドは、上述の配列よりも長い、抗原のフラグメントと実質的に対応し、好ましくは完全に同一である配列を含むこともできる。一実施形態では、抗原ペプチドが抗原の全配列を含みうる。
クラスI MHCによって提示されるペプチドの配列と実質的に対応するアミノ酸配列を有するペプチドは、クラスI MHCによって提示されるペプチドのTCR認識にとって、またはMHCのペプチド結合にとって、本質的でない1つ以上の残基が、異なっていてもよい。そのような実質的に対応するペプチドも、抗原応答性CTLを刺激する能力を有する。提示されるペプチドと比べて、TCR認識には影響しないがMHCへの結合の安定性を改善する残基が異なっているアミノ酸配列を有するペプチドは、抗原ペプチドの免疫原性を改善する場合があり、これを本明細書では「最適化ペプチド」という場合がある。これらの残基のどれがMHCまたはTCRへの結合に影響を及ぼす可能性がより高いと考えられるかに関する既存の知識を使うことで、実質的に対応するペプチドの設計への合理的アプローチをとることができる。結果として得られる機能的なペプチドは、抗原ペプチドと考えられる。
「抗原プロセシング」は、特異的T細胞への「抗原提示細胞」による提示のための、抗原の、フラグメントへの分解(例えばタンパク質の、ペプチドへの分解)およびそれらフラグメントの1つ以上とMHC分子との(例えば結合による)会合を指す。
「抗原提示細胞」(APC)は、その細胞表面上でMHC分子と会合したタンパク質抗原のペプチドフラグメントを提示する細胞である。一部のAPCは抗原特異的T細胞を活性化しうる。
「免疫療法」という用語は、特異的免疫反応の活性化を伴う処置に関する。
「インビボで」という用語は、対象内での状況に関する。
「対象」および「個体」という用語は互換的に使用され、哺乳動物に関する。例えば、本発明との関連において、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマなどの家畜、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどの実験動物、ならびに動物園の動物などといった飼育下の動物である。本明細書において使用する「動物」という用語にはヒトも含まれる。「対象」という用語は、患者、すなわち疾患を有する動物(好ましくはヒト)も含みうる。
本発明によれば、対象への投与を望む場合、投与用の組成物は、一般的には、医薬的に適合する量で、医薬的に調製物に入れて投与される。「医薬的に適合する」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用を妨害しない無毒性材料を指す。この種の調製物は、通常、塩類、緩衝物質、保存剤、賦形剤および担体を含有することができ、当業者に知られている方法で投与される。
以下に図面と実施例によって、本発明を詳細に説明するが、これらは例示を目的とするに過ぎず、限定を意図するものではない。これらの説明と実施例から、当業者は、本発明に同様に包含されるさらなる実施形態にも到達することができる。
実施例
細胞培養
初代ヒト新生児包皮線維芽細胞(CCD−1079Sk、CCD)、BJヒト新生児包皮線維芽細胞をATCC(米国バージニア州マナッサス)から入手し、10%熱非働化ウシ胎児血清Gold(PAA Labratories、オーストリア・パッシング)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen)、1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、2mMグルタミン(Invitrogen)、50U/mlペニシリン(Invitrogen)および50μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したMEM(Invitrogen,ドイツ・カールスルーエ)で培養した。もう一つのヒト新生児包皮線維芽細胞(HFF)をSBI(米国カリフォルニア州マウンテンビュー)から入手し、CCDおよびBJと同様に培養した。マウス胚性線維芽細胞(MEF)は、14日齢のC57BL/6マウス胚から単離し、15%熱非働化ウシ胎児血清、1×非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、2mMグルタミン、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM(Invitrogen)で培養した。ヒト表皮ケラチノサイトをPromoCell(ドイツ・ハイデルベルク)から入手し、同梱の添加剤を含むケラチノサイト基礎培地2(PromoCell,ドイツ・ハイデルベルク)で培養した。Lonza(米国メリーランド州ウォーカーズビル)からのヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、Clonetics(登録商標)Endothelial Cell System(Lonza)を使って培養した。
末梢血単核球(PBMC)は、Ficoll Hypaque (Amersham Biosciences, スイス・グラットブルグ)密度勾配遠心分離により、健常血液バンクドナーから得たバフィーコートから単離した。製造者の説明に従って抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,ドイツ・ベルギッシュグラートバッハ)で、単球をPBMCから濃縮した。未熟樹状細胞(iDC)を得るために、1000U/ml GM−CSF(Essex、スイス・ルチェルン)および1000U/ml IL−4(Strathmann Biotech,ドイツ・ハンブルク)を添加した、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、10%熱非働化ヒトAB血清を含むRPMI 1640培地(Invitrogen)中で単球を5日間分化させた。
インビトロ転写RNAの作製
ルシフェラーゼ、eGFP、不安定化eGFP(d2eGFP)、OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、LIN28、NANOG、SV40ラージT抗原、E6、p53−DD、E3およびK3をコードするRNAのインビトロ転写用のテンプレートとして使用するためのプラスミドコンストラクトは、pST1−2hBgUTR−A120(Holtkamp 2006)に基づいた。遺伝子のヌクレオチド配列をコドン最適化して、GC含量を増加し、ターゲット細胞における翻訳を強化した。インビトロ転写RNAの作製のために、クラスII制限エンドヌクレアーゼを使って、ポリ(A)テールの下流で、プラスミドを線状化した。線状化したプラスミドをフェノール−クロロホルム抽出によって精製し、分光光度法で定量し、MEGAscript T7キット(Ambion、米国テキサス州オースティン)を使って、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写に付した。キャップアナログβS−ARCA(D1)の組込みのために、6mMのアナログを反応に加える一方で、GTP濃度を1.5mMに低下させた。反応を37℃で3〜6時間インキュベートし、DNase(Ambion)処理し、MEGAclear Kit(Ambion)を製造者に従って使用することにより、精製した。
細胞へのIVT−RNAの移入
IVT−RNAの細胞への移入はエレクトロポレーション(EP)によって行った。この目的を達成するために、EP1回あたり1〜10×10細胞を回収し、2mM EDTAを添加したPBSおよびX−VIVO 15培地(Lonza)で逐次、洗浄し、125μlのX−VIVO 15培地に再懸濁し、2mmギャップ滅菌エレクトロポレーションキュベット(Bio−RAD,米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)に移した。適当量のインビトロ転写RNAを加え、BTX ECM(登録商標)830エレクトロポレーションシステム(BTX、米国マサチューセッツ州ホリストン)と、予め最適化しておいたCCD用(110V、3×12msパルス、400msインターバル)、BJ用(110V、3×12msパルス、400msインターバル)、MEF用(125V、5×6msパルス、400msインターバル)、HFF用(125V、1×24msパルス)、ケラチノサイト用(125V、4×6msパルス、200msインターバル)およびHUVEC用(125V、1×20msパルス)のエレクトロポレーションパラメータとを使って、細胞をエレクトロポレーションに付した。ヒトPBMCおよびiDCは、4mmギャップ滅菌エレクトロポレーションキュベット(Bio−Rad)中、Gene−Pulser−II装置(Bio−Rad、ドイツ・ミュンヘン)を使って、450V/250μF(PBMC)、300V/150μF(iDC)の電圧およびキャパシタンス設定で、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、直ちに、細胞を培養培地で希釈した。
レポーター遺伝子アッセイ
ルシフェラーゼアッセイのために、ルシフェラーゼをコードするインビトロ転写RNAをエレクトロポレーションした細胞を、96ウェル白色平底マイクロプレート(Nunc、ドイツ・ランゲンゼルボルト)にプレーティングし、37℃でインキュベートした。細胞の溶解は、「Bright−Glo Luciferase Assay System」(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を使って行った。バイオルミネセンスフラックスを、Infinite M200マイクロプレートルミネセンスリーダー(Tecan、ドイツ・クライルスハイム)を使って1秒の積分時間で測定した。本明細書に提示するルシフェラーゼ活性のデータは単位がカウント毎秒である。
d2eGFPおよびeGFPタンパク質の定量のために、細胞をPBS中で洗浄し、2%ホルムアルデヒドを添加したPBSを使って固定し、FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences、ドイツ・ハイデルベルク)でのフローサイトメトリーによって分析した。ゲーティングを生細胞で行い、GFP発現細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を、FlowJoソフトウェア(Tree Star、米国オレゴン州アシュランド)を使って定量した。エレクトロポレーションされたPBMCのヒトT細胞亜集団を、フローサイトメトリーの前に、CD4またはCD8反応性蛍光抗体で染色した。ゲーティングを生CD4+およびCD8+ T細胞ならびにGFP発現で行い、両T細胞亜集団のMFIをフローサイトメトリーで決定した。
リアルタイム逆転写酵素PCRによる転写産物レベルの定量
RNeasy Mini KitまたはRNeasy Micro Kit(Qiagen、ドイツ・ヒルデン)を使って、全細胞RNAを細胞から抽出し、Superscript II(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)を使ってオリゴdT18で逆転写し、QuantiTect SYBR Green PCR Kit(Qiagen)を使って、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System機器およびソフトウェア(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)でのリアルタイム定量分析に付した。反応は、トリプリケートで、コドン最適化OCT4(OCT4−s:5’−ACCTGGAAAACCTGTTCCTGC−3’(配列番号14);OCT4−as:5’−AGCTCGGATCCTCATCAGTTG−3’(配列番号15))、
SOX2(SOX2−s:5’−AACCAGCGGATGGACAGCTAC−3’(配列番号16);SOX2−as:5’−GCTTTTCACCACGCTGCCCAT−3’(配列番号17))、
KLF4(KLF4−s:5’−AAGACCTACACCAAGAGCAGC−3’(配列番号18);KLF4−as:5’−AGGTGGTCAGATCTGCTGAAG−3’(配列番号19))およびcMYC(cMYC−s:5’−CCCCTGAACGACAGCTCTAGC−3’(配列番号20);cMYC−as:5’−TTCTCCACGGACACCACGTCG−3’(配列番号21))、または
IFNα(IFNα−s:5’−AAATACAGCCCTTGTGCCTGG−3’(配列番号22);IFNα−as:5’−GGTGAGCTGGCATACGAATCA−3’(配列番号23))、
IFNβ(IFNβ−s:5’−AAGGCCAAGGAGTACAGTC−3’(配列番号24);IFNβ−as:5’−ATCTTCAGTTTCGGAGGTAA−3’(配列番号25))、
GDF3(GDF3−s:5’−TCCCAGACCAAGGTTTCTTTC−3’(配列番号26);GDF3−as:5’−TTACCTGGCTTAGGGGTGGTC−3’(配列番号27))および
TERT(TERT−s:5’−CCTGCTCAAGCTGACTCGACACCGTG−3’(配列番号28);TERT−as:5’−GGAAAAGCTGGCCCTGGGGTGGAGC−3’(配列番号29))の内在性転写産物の特異的領域を増幅するプライマー(各333nM)を使用し、95℃で15分間の初回変性/活性化、ならびに95℃で30秒、プライマー特異的なアニーリング温度(OCT4、cMYC、IFNα、IFNβ、GDF3、TERT:60℃;SOX2:64℃;KLF4:58℃)で30秒、および72℃で30秒の40サイクルで行った。内部標準としてのHPRTコードRNA(HPRT−s、5’−TGACACTGGCAAAACAATGCA−3’(配列番号30);HPRT−as:5’−GGTCCTTTTCACCAGCAAGCT−3’(配列番号31);上記のPCR条件で、アニーリング温度を62℃とする)と比較してΔΔCt計算を使って、転写産物の発現を定量し、RNAの量とインプット相補DNAの量の変動について標準化した。
OCT4、SOX2およびNANOGに関する細胞内FACS染色
OCT4、SOX2およびNANOGの細胞内FACS染色は、ヒト多能性幹細胞転写因子分析キットを製造者の説明(BD Bioscences)に従って使用することによって行った。簡単に述べると、3〜5×10個の細胞を回収し、PBSで2回洗浄し、250μlのBD Cytofixバッファー(BD Bioscieces)中、室温で20分間固定した。インキュベーション後に、細胞をPBSで洗浄し、1×Perm/Washバッファー(BD Biosciences)で2回洗浄することによって透過処理した後、50μlの1×Perm/Wash中、室温で10分間インキュベートした。アイソタイプ対照および特異的抗体による染色を、暗所、室温で30分間行った後、1×Perm/Washで2回洗浄した。細胞を、2%ホルムアルデヒドを添加したPBSに再懸濁し、上述のようにフローサイトメトリーで分析した。
初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079SK)に、ホタルルシフェラーゼをコードする1μgのIVT RNAおよび不安定化GFPをコードする5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした(luc+GFP)。エレクトロポレーションは、最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。細胞を6ウェルプレートに300000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、無処理にしておくか、または2μM C13OS(PKR阻害剤)と共にインキュベートした。24時間後に全RNA抽出と逆転写のために細胞を回収した。タイプIインターフェロンの誘導を、図1に示すとおり、PKR阻害剤の存在下または非存在下で、IFNαまたはIFNβ用の特異的プライマーを用いるqRT−PCRによって評価した。パネルAおよびCはBおよびDと同じサンプルを示し、y軸の値が換算されている。
RNAエレクトロポレーションにより誘導されるヒト線維芽細胞におけるインターフェロン転写産物のアップレギュレーションを観察した(図1Aおよび1C)。驚いたことに、C13OSを使ったPKRの阻害は、インターフェロン転写産物の圧倒的な増加をもたらした(図1Bおよび1D):IFN−αは、RNAの非存在下でさえ誘導され、IFN−βは、RNAの存在下でのみ、C13OSによって誘導された。これらのデータは、小分子阻害剤を使ったPKRの阻害がインターフェロン応答経路を抑止しないことを示している。
ヒトおよびマウス初代線維芽細胞に、レポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼおよびGFPをコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。エレクトロポレーションの直後に、一連の濃度のC13OS PKR阻害剤の存在下または非存在下で、細胞をプレーティングした。
図2および図3に示すように、ヒトおよびマウス線維芽細胞におけるレポーター遺伝子ルシフェラーゼおよびGFPの用量依存的増加が観察された。使用した最高濃度(2μM)の存在下では、ルシフェラーゼおよびGFP発現の高レベルな安定化が観察された。
初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にIVT RNAをエレクトロポレーションし、レポーター遺伝子発現に対するPKR阻害の効果を、上述したものと同様の実験設定で分析した。エレクトロポレーションは、HUVECに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。HUVECにおいて、ルシフェラーゼ発現は、用量依存的に強化された。ただしその発現は線維芽細胞において観察されたほど長くは持続しない(図4)。
次に、ヒトCD4およびCD8陽性T細胞ならびに未熟樹状細胞(iDC)で、同様の実験を行った。エレクトロポレーションは、細胞タイプごとに最適化されたパラメータを使って行った。線維芽細胞および内皮細胞における本発明者らの先の観察結果とは対照的に、T細胞でもiDCでも、PKR阻害はGFP発現の増加につながらなかった(図5A、B)。iDCでは、PKRの阻害が、ルシフェラーゼ発現の喪失をもたらした(図5C)。
観察されたレポーター遺伝子発現の安定化が、高濃度のC13OSによるPKRの不可逆的阻害によるものであるかどうかを調べるために、本発明者らは、エレクトロポレーションされた細胞の一過性処理を行うことにした。さらにまた、この実験には、もう一つのPKR阻害剤、2−アミノプリン(2−AP)を含めた。どちらの阻害剤も2μMの最終濃度で使用した。図6に示すように、IVT RNAからのタンパク質翻訳の増加は、どちらの阻害剤でも、インキュベーション時間に依存する。どちらか一方のPKR阻害剤との7時間のインキュベーション期間は、ルシフェラーゼ発現の有意な増加をもたらさず、24時間処理は、阻害剤の除去後に、急速に後戻りした。48時間処理でさえ、永続的処置よりは効率が低かった。これらのデータはPKR阻害が可逆的であることを示している。永続的阻害は5日間にわたる高い発現レベルをもたらす。
PKRを阻害することが知られているウイルスタンパク質、すなわちワクシニアウイルスタンパク質E3およびK3を調べた。両タンパク質をIVT RNAによってコードし、レポーター遺伝子をコードするIVT RNAと一緒に線維芽細胞へのエレクトロポレーションによって同時移入した。また、本発明者らは、相加効果を調べるために、一部の細胞を2μM C13OSと共にインキュベートした。どちらのウイルスタンパク質も、エレクトロポレーションの24時間後に、ルシフェラーゼ発現の2倍増につながった。2つのタンパク質の相加効果はなかった。また、発現は、低分子阻害剤で観察されたように安定化されることはなく、ウイルスタンパク質なしの対象と同じレベルに急速に低下した(図7A)。C13OSの追加適用は、先にPKRの小分子阻害で見られたように、無処理の対照と比較して、ルシフェラーゼ発現の増加と安定化をもたらした(図7B)。HUVEC細胞を使った同様の実験では、E3とK3の組合せがルシフェラーゼ発現を増加させ、それがC13OSによって用量依存的にさらに強化されることが明らかになった(図7C)。
同様の実験セットにおいて、本発明者らは、ウイルスタンパク質が、T細胞では存在しないC13OSの効果をレスキューしうるかどうか、または樹状細胞における阻害効果を打ち消すかどうかを調べた。図8Aおよび8Bに示すように、PKRを阻害するウイルスタンパク質は、C13OSの存在下でも非存在下でも、T細胞におけるレポーター遺伝子発現を増加させなかった。iDCでは、ウイルスタンパク質が、先に阻害剤で観察されたように、ルシフェラーゼ発現を減少させた。また、E3とK3は、ルシフェラーゼ発現に対するC13OSの負の効果を打ち消さなかった(図8C)。
先と同様に無修飾ヌクレオチドで構成されているIVT RNAと、シチジンおよびウリジンの代わりに5mCおよびPUで構成されているIVT RNAとを使って、上記と同様の実験を行った。図9に示すように、無修飾IVT−RNAをエレクトロポレーションした細胞中のルシフェラーゼ発現は、2μM C13OSによって著しく強化され、安定化して、本発明者らの先の知見を再現している。転写産物への5mCおよびPUの取り込みは、無修飾対照と比較して、ルシフェラーゼ発現を約2倍増加させた。2μM C13OSの使用は、修飾IVT RNAによってコードされるルシフェラーゼの発現を、さらに増加させ、安定化する。
本発明者らは、IVT RNA移入時のリプログラミング転写因子発現の安定性を調べた。上記と同様の実験において、本発明者らは、エレクトロポレーションした細胞を、一連の濃度のC13OSで永続的に処理するか、2μM C13OSで一過性に処理した。図10に示すように、転写因子OCT4、NanogおよびSOX2の発現は、処理細胞では用量および時間依存的に、著しく増大し、安定化した。
リプログラミング転写因子発現の直接的帰結は、転写レベルでの多能性マーカー遺伝子の誘導である。PKR阻害によって安定化し増加した転写因子発現が、マーカー誘導を促進するかどうかを調べるために、本発明者らは、CCD1079Sk線維芽細胞に、ラージT、HPV16−E6、p53DD、OCT4、SOX2、KLF4、CMYC、NanogおよびLIN28(TEP−OSKMLN)をコードするIVT RNAをエレクトロポレーションした。図11に示すように、GDF3およびhTERT誘導は、エレクトロポレーションの72時間後に、処理によって増加した。
観察されたタンパク質発現の安定化が、トランスフェクトされたIVT RNAの半減期の増加と関係するかどうかを調べるために、本発明者らは、細胞内IVT RNA分解のペースを評価した。この目的のために、本発明者らは、一過性に処理した細胞および無処理細胞におけるエレクトロポレーションの72時間後の移入IVT RNAの細胞内レベルを調べた。図12Aに示すように、2μM C13OSによる細胞の一過性処理は、72時間にわたってIVT RNAの存在量を増加させた。このデータによれば、IVT RNAコンストラクトOCT4、SOX2、KLF4およびcMYCの半減期は、図12Bからわかるように、PKR阻害下では、1〜2.5時間延長される。それゆえにPKR阻害下でのレポーター発現の安定化は、ある程度は、IVT−RNAコンストラクトの安定化に基づいている。
初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)に、図13に示すように、無修飾のeGFP、もしくは5−メチルシチジン(5mC)およびシュードウリジン(PU)で修飾された(mod.)eGFPをコードするIVT RNA(10μg)を、または無修飾eGFP(10μg)をコードするIVT RNAを3μgの修飾(5mCおよびPU)E3およびK3と共に、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、HFFに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。300000細胞/ウェルを6ウェルプレートにプレーティングし、細胞を無処理にしておくか、または2μM C13OSと共にインキュベートした。24時間後に、上清を回収し、IFN分泌について、PBL Interferon SourceのヒトIFNαおよびβキットを使って測定した。
IVT−RNAはエレクトロポレーション後にIFNβの分泌を誘導する。この分泌は、細胞をC13OSと共にインキュベートすると、著しく強化される。これらの結果はqRT−PCRからの結果と一致する。IVT−RNAを5mCおよびPUで修飾すると、予想どおり、IFNβの誘導は低減される。E3およびK3 IVT−RNAの添加は、効果がない。IFNαの分泌はこれらの実験では観察されなかった(データは示さず)。
初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、PKRをターゲットとするsiRNA混合物(Santa Cruz;sc−36263)を、20nMから80nMまでの範囲にわたる一連の量でエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、2mmギャップキュベットで、CDDに最適化されたパラメータを使って行った。細胞を6ウェルにプレーティングし、全RNA抽出と逆転写のために、24時間後または48時間後に回収した。PKRの発現レベルを、特異的プライマーを用いるqRT−PCRによって評価した。野生型細胞と比較した相対発現レベルを図示する。エレクトロポレーションの24時間後に、全ての濃度のsiRNA混合物で、PKRは5〜10%にノックダウンされることがわかった。PKRを48時間以上ノックダウンするのに充分であるのは、80nMだけである;図14(A)参照。
初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、無修飾eGFPをコードするIVT RNA(1.5μg)を、単独で、または20nMから80nMまでの範囲にわたる一連の濃度の、PKRをターゲットとするsiRNA混合物と共に、エレクトロポレーションした。エレクトロポレーションは、CCDに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。細胞を6ウェルにプレーティングし、24時間後に、全RNA抽出と逆転写のために回収した。IFN応答遺伝子OAS1およびOAS2の発現レベルを、特異的プライマーを用いるqRT−PCRによって評価した。野生型細胞と比較した相対発現レベルを図14(B)に示す。OAS1およびOAS2の発現レベルは、siRNA混合物の添加によって有意に変化しないことがわかった、これは、siRNAがエレクトロポレーション後にIFNを誘導していないことを示している。(それどころか、高用量のPKR siRNA混合物の適用によってIFN応答は低減する傾向を示すようである。)
初代ヒト包皮線維芽細胞(CCD1079Sk)に、PKRをターゲットとするsiRNA混合物(80μg)をエレクトロポレーションするか、siRNA混合物なしでエレクトロポレーションを行った。48時間後に、ホタルルシフェラーゼをコードするIVT RNA(1μg)およびeGFPをコードするIVT RNA(2.5μg)による2回目のエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションは全て、CCDに最適化されたパラメータを使って、2mmギャップキュベットで行った。細胞をデュプリケートで96ウェルプレートに10000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、無処理にしておくか、2μMのC13OSと共にインキュベートした。表14(C)に表示した時点でルシフェラーゼ活性を測定した。デュプリケートの平均値を記載する。PKRをターゲットとするsiRNA混合物と共にプレインキュベートされ、それゆえにPKRを欠く状態にある細胞のエレクトロポレーションは、2μMのPKR阻害剤C13OSと共にインキュベートした場合と比較して、安定化効果はわずかに低いものの、極めてよく似たレポーター遺伝子発現の動態および増加につながることがわかった。PKRをターゲットとするsiRNA混合物とのプレインキュベーションと、阻害剤の使用とを組み合わせると、レポーター転写産物の発現レベルがさらに高くなるが、阻害剤単独の存在下ほどには安定化されない。
13OSがリポソームIVT RNA移入時の翻訳も強化しうるかどうかを調べるために、1.2μgの5’−トリリン酸化非修飾IVT RNA(ルシフェラーゼをコードするもの0.8μg、GFPをコードするもの0.4μg)を、6μlのRNAiMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)でパッケージし、ヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション混合物と共に3時間インキュベートした後、培地を新しくし、一連の濃度のC13OSを添加した。図15に表示した時点で、ルシフェラーゼ安定化受動的溶解バッファー(Promega)を製造者の説明に従って使用することにより、細胞を溶解した。この時間経過の終わりまでに、全ての溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。C13OSは、ルシフェラーゼの翻訳に対して安定化効果を有していた。この効果は用量依存的だった。3つの独立して行った実験の一つを示す。このように、IVT RNAの翻訳に対するC13OSの効果は、エレクトロポレーションによる送達に限定されない。C13OSは、IVT RNAをリポソームによって細胞内に入れた場合にも、ルシフェラーゼの翻訳を強化している。それゆえに、C13OSの効果は、送達経路には依存しない。
ヒト包皮線維芽細胞に、ホタルルシフェラーゼをコードする2μgのIVT RNAとGFPをコードする5μgのIVT RNAをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後に、図16の凡例に示すように、細胞を一連の濃度の2−APの存在下でプレーティングした。2μM C13OSを陽性対照とした。ルシフェラーゼ発現を72時間追跡した。GFP発現により、エレクトロポレーションは全て成功していることが判明した(データは示さず)。10mM〜20mMの2−APは、C13OSと同様の翻訳の増加につながる。

Claims (49)

  1. インビトロで、細胞中でRNAを発現させるための方法であって、(i)RNAのトランスフェクションによって、細胞にRNAを導入するステップおよび(ii)細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するステップを含み、
    細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞を少なくとも1つのPKR阻害剤で処理することを含み、かつ
    RNAがリプログラミング因子をコードする、
    方法。
  2. RNAがエレクトロポレーションによって細胞中に導入されている、請求項1に記載の方法。
  3. RNAがインビトロ転写RNAである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 細胞におけるRNAの発現の強化が、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 少なくとも1つのPKR阻害剤による細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. PKR阻害剤がRNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  9. PKR阻害剤がイミダゾロ−オキシインドール化合物である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  10. PKR阻害剤が6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンである、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. PKR阻害剤が2−アミノプリンである、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  12. PKR阻害剤がPKRのウイルス由来阻害剤である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  13. PKRのウイルス由来阻害剤が、ワクシニアウイルスE3および/もしくはK3、またはそれらのRNAからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、PKR遺伝子の発現をサイレンシングすることを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 細胞がバリア機能を有する細胞である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 細胞が、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、または内皮細胞である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 内皮細胞が、心臓の内皮細胞、肺の内皮細胞または臍帯静脈内皮細胞である、請求項16に記載の方法。
  18. 細胞がヒト細胞である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 幹細胞特徴を有する細胞を提供するための方法であって、(i)体細胞を含む細胞集団を用意するステップ、(ii)体細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低減するステップ、(iii)幹細胞特徴を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする1つ以上の因子を発現する能力を有するRNAを、RNAのトランスフェクションによって、体細胞の少なくとも一部に導入するステップ、および(iv)幹細胞特徴を有する細胞の発生を可能にするステップを含み、
    細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、少なくとも1つのPKR阻害剤で細胞を処理することを含む、
    方法。
  20. RNAがエレクトロポレーションによって体細胞の少なくとも一部に導入される、請求項19に記載の方法。
  21. RNAがインビトロ転写RNAである、請求項19または20に記載の方法。
  22. 1つ以上の因子がOCT4およびSOX2を含む、請求項1921のいずれか一項に記載の方法。
  23. 1つ以上の因子が、さらにKLF4および/またはc−MYCを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 1つ以上の因子がさらに、NANOGおよび/またはLIN28を含む、請求項22または23に記載の方法。
  25. 1つ以上の因子が、OCT4、SOX2、KLF4およびc−MYCを含む、請求項1921のいずれか一項に記載の方法。
  26. 1つ以上の因子がさらにLIN28を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 1つ以上の因子が、OCT4、SOX2、NANOGおよびLIN28を含む、請求項1921のいずれか一項に記載の方法。
  28. 細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらす、請求項1927のいずれか一項に記載の方法。
  29. 細胞におけるRNAの発現の強化が、細胞におけるRNAの発現のレベルの増加および/または発現の持続時間の増加を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 少なくとも1つのPKR阻害剤による細胞の処理が、細胞におけるRNAの安定性の強化および/または発現の強化をもたらすのに充分な時間にわたる、請求項19〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. PKR阻害剤がRNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する、請求項19〜30のいずれか一項に記載の方法。
  32. PKR阻害剤がPKRのATP結合部位指向性阻害剤である、請求項1931のいずれか一項に記載の方法。
  33. PKR阻害剤がイミダゾロ−オキシインドール化合物である、請求項1932のいずれか一項に記載の方法。
  34. PKR阻害剤が6,8−ジヒドロ−8−(1H−イミダゾール−5−イルメチレン)−7H−ピロロ[2,3−g]ベンゾチアゾール−7−オンである、請求項1933のいずれか一項に記載の方法。
  35. PKR阻害剤が2−アミノプリンである、請求項1932のいずれか一項に記載の方法。
  36. PKR阻害剤がPKRのウイルス由来阻害剤である、請求項1932のいずれか一項に記載の方法。
  37. PKRのウイルス由来阻害剤が、ワクシニアウイルスE3および/もしくはK3、またはそれらのRNAからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
  38. 細胞におけるPKRの活性を低減するステップが、PKR遺伝子の発現をサイレンシングすることを含む、請求項1937のいずれか一項に記載の方法。
  39. 少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で体細胞を培養するステップをさらに含む、請求項1938のいずれか一項に記載の方法。
  40. 少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼ阻害剤がバルプロ酸を含む、請求項39に記載の方法。
  41. ステップ(iv)が、胚性幹細胞培養条件下で体細胞を培養することを含む、請求項1940のいずれか一項に記載の方法。
  42. 幹細胞特徴が胚性幹細胞形態を含む、請求項1941のいずれか一項に記載の方法。
  43. 幹細胞特徴を有する細胞が正常核型を有し、テロメラーゼ活性を発現し、胚性幹細胞に特有の細胞表面マーカーを発現し、かつ/または胚性幹細胞に特有の遺伝子を発現する、請求項1942のいずれか一項に記載の方法。
  44. 幹細胞特徴を有する細胞が多能性状態を示す、請求項1943のいずれか一項に記載の方法。
  45. 幹細胞特徴を有する細胞が、3つ全ての一次胚葉の高度な派生物へと分化する発生能を有する、請求項1944のいずれか一項に記載の方法。
  46. 体細胞が線維芽細胞である、請求項1945のいずれか一項に記載の方法。
  47. 線維芽細胞が肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞または真皮線維芽細胞である、請求項46に記載の方法。
  48. 体細胞がヒト細胞である、請求項1947のいずれか一項に記載の方法。
  49. 分化細胞タイプを提供するための方法であって、(i)請求項1948のいずれか一項に記載の方法を使って、幹細胞特徴を有する細胞を用意するステップ、および(ii)分化細胞タイプへの部分的なまたは完全な分化を誘導または指示する条件下で、幹細胞特徴を有する細胞を培養するステップを含む方法。
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