JP6131139B2 - スピンドル装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回転工具を高速で回転させるスピンドル装置に関する。
自動車等のエアコンディショナに用いられる所謂スクロールコンプレッサの部品は、エンドミルなどの回転工具を用いて金属素材から削り出し加工される。部品(以下、ワークという。)の加工精度及び加工速度を向上するために、1つの工作機械において、エンドミルの低速回転による荒切削加工と、エンドミルの高速回転による仕上げ加工とを両立させることが求められる。
エンドミルはスピンドル装置の回転軸に装着され、この回転軸は軸受で回転自在に支持される。一般の軸受には内部すきまが存在する。軸受の内部すきまが大きいと、回転軸を高速で回転させたときに、回転軸が振動することがある。対策の一つとして、軸受の内部すきまを小さくする予圧法がある。予圧により内部すきまを変更することができる。更には、内部すきまを適量に維持することが求められる。そのために、予圧の大きさを調整する装置が提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
特許文献1の図1に示されるように、スピンドル装置は、主軸(2)(括弧付き数字は特許文献1に記載されている符号を示す。以下同じ。)を支持する軸受(5)、(6)を軸受箱(7)に収納し、この軸受箱(7)を主軸(2)の軸方向に移動自在に外筒(1)で支持する。軸受箱(7)と外筒(1)との間に設けられた圧力室(12)、(13)に、外部の空気供給装置(17)から空気を供給することで、予圧を付与する。
しかし、外筒(1)内部の主軸(2)近傍に圧力室(12)、(13)を設けているので、供給する空気にゴミが混入した場合、このゴミがスピンドル装置の内部に侵入する。ゴミを除去するには、スピンドル装置全体を分解する必要があり、分解・再組立が面倒である。また、圧力室(12)、(13)等から構成される空気圧機構部が専用部品であるため、スピンドル装置が高価になる。さらには、予圧の付与は空気のみで行うため、大きな切削力が主軸(2)に伝わる場合、予圧力が不足する。この対策として、大きな予圧力を得るスピンドル装置が知られている(例えば、特許文献2(図1)参照。)。
特許文献2の図1に示されるように、スピンドル装置は、主軸(4)(括弧付き数字は特許文献2に記載されている符号を示す。以下同じ。)を支持する軸受(8)、(9)を軸受箱(10)に収納し、この軸受箱(10)を主軸(4)の軸方向に移動自在に外筒(1)で支持する。軸受箱(10)へ一体的に設けられた押圧部材(12)を弾性部材により付勢することで、大きな初期予圧を付与する。そして、外筒(1)に設けた通路(16)から高圧油を供給することで予圧を調整する。
しかし、通路(16)、円周溝(20)等から構成される油且つ機構部が専用部品であるため、スピンドル装置が高価になる。油圧により予圧を調整する機構では、作動油の劣化等により、金属水酸化物を主体とした汚濁物質、いわゆるスラッジが発生するため、スピンドル装置の内部の点検清掃が必要となる。スピンドル装置を、分解しなければならず保守点検が面倒になる上、作動油を定期的に補充する必要があり、維持費が嵩む。
実開平6−15907号公報 実開平6−33605号公報
本発明は、装置の費用の低減を図るとともに、保守点検を容易に行うことができるスピンドル装置を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明では、軸方向前側に回転工具を装着可能な回転軸と、玉軸受を介して前記回転軸を回転自在に支持するハウジングと、前記玉軸受に予圧を付与する予圧手段とからなり、前記玉軸受が軸受ケースに収納され、この軸受ケースが前記ハウジングに前記回転軸の軸方向へ移動可能に設けられ、前記軸受ケースが前記予圧手段で移動されるスピンドル装置であって、前記予圧手段は、定圧予圧手段と可変予圧手段とからなり、
前記定圧予圧手段は、前記ハウジングの軸方向後側の端面に形成された凹部と、この凹部に対向するように前記軸受ケースに形成されたフランジ部と、前記凹部に設けられ前記フランジ部を付勢して玉軸受に所定の予圧を付与する弾性部材とからなり、
前記可変予圧手段は、前記スピンドル装置の外部から供給されるエアーを所要圧力に調整する給排気手段と、前記給排気手段に接続される圧力室を有し、前記回転軸の軸方向後側へ臨むフランジ部の外面側に脱着自在に設けられるピンシリンダと、このピンシリンダに進退自在に設けられ前記圧力室のエアー圧力に応じて前記ハウジングへ当接して前記フランジ部を付勢するロッドとからなることを第1の特徴とする。
請求項2に係る発明では、第1の特徴の構成に加えて、前記可変予圧手段は、スピンドル装置の作動状態に基づいて給排気手段の所要圧力を変化させる制御手段をさらに備えていることを第2の特徴とする。
請求項3に係る発明では、第2の特徴の構成に加えて、前記スピンドル装置の作動状態は、回転軸の回転速度、回転軸の回転速度変動量、回転軸の温度、玉軸受の温度、ワーク切削条件の少なくとも1つから選択されてなることを第3の特徴とする。
請求項4に係る発明では、さらに本発明は、第3の特徴のスピンドル装置を用いたコンピュータ数値制御の工作機械であって、工作機械は、ベッドと、スピンドル装置と、ワーク保持装置と、制御手段とよりなっており、前記スピンドル装置とワーク保持装置は信号線を介して前記制御手段と接続されてなることを第4の特徴とする。
請求項1に係る発明では、可変予圧手段のピンシリンダは回転軸の軸方向後側へ臨むフランジ部の外面側に脱着自在に設けられてスピンドル装置の外面に配置され、これにより、スピンドル装置の外部から供給されるエアーを介してピンシリンダの内部にゴミが侵入しても軸受ケースや玉軸受等を分解せずにピンシリンダのみをフランジ部から取り外すことができ、スピンドル装置の保守点検の容易化を図ることができる。しかも、予圧を調整する機構部に専用部品を用いて外筒(1)へと収納していた従来スピンドル装置と比して、フランジ部の外面側にピンシリンダを設けたのでピンシリンダには比較的安価な汎用品を用いることができ、装置の費用の低減を図ることができる。
請求項2に係る発明では、可変予圧手段は、スピンドル装置の作動状態に基づいて、給排気手段の所要圧力を変化させる制御手段をさらに備えている。制御手段で予圧が好適に制御され、軸受の内部すきまが良好に保たれる。軸受の寿命が長くなり、軸受の交換頻度が少なくなる。
請求項3に係る発明では、制御手段は、回転軸の回転速度、回転軸の回転速度変動量、回転軸の温度、玉軸受の温度、ワーク切削条件の少なくとも1つから選択されたスピンドル装置の作動状態に基づいて給排気手段の所要圧力を制御する。遠心力による軸受のはめあいの変化、回転軸の熱による伸び、玉軸受の熱膨張、ワークの種類による回転軸への負荷に基づいて予圧を補正できるので、回転軸が安定し、軸受の寿命が長くなり、軸受の交換頻度が少ないスピンドル装置が提供される。
請求項4に係る発明では、スピンドル装置は、コンピュータ数値制御の工作機械に用いられる。本発明によれば、ワーク切削加工時のスピンドル装置の作動状態に応じて軸受の予圧が制御され、工具の低速回転による荒切削加工と、工具の高速回転による仕上げ加工とが両立され、ワークの加工精度および加工速度を向上させることができる。回転軸が安定するので、軸受の寿命が長くなり、軸受の交換頻度が少ないCNC工作機械(Computerised Numerically Controlled Machine Tool)が提供される。
本発明に係るスピンドル装置を採用した工作機械の側面図である。 図1の要部拡大図である。 図1の3矢視図である。 図2のピンシリンダの断面図である。
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
先ず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンピュータ数値制御の工作機械10(以下、CNC工作機械という。)は、ベッド11と、このベッド11に第1レール12を介して移動自在に設けられワーク13を保持するワーク保持装置20と、このワーク保持装置20に対向するようにベッド11に設けられ回転工具としてのエンドミル43を回転させるスピンドル装置30とからなる。
ワーク保持装置20は、ベッド11に第1レール12を介して移動自在に設けられた第1基部21と、この第1基部21に第1レール12と直交する方向に設けられた第2レール22と、この第2レール22に移動自在に設けられた第2基部23と、この第2基部23に昇降自在に設けられた昇降機構24と、この昇降機構24に設けられたワーク保持本体部25と、このワーク保持本体部25にワーク保持装置20と対向するように設けられたワーク用チャック26とからなる。
ワーク用チャック26に、ワーク13が保持される。なお、実施例ではワーク13はスクロール形コンプレッサの空気を圧縮するスクロール部品としたが、これに限定されず、コンプレッサのハウジング等、他の一般の機械部品であっても差し支えない。
また、ワーク用チャック26はワーク保持装置20から脱着可能とされ、ワーク13の形状や所要加工精度に適合する所要の把握力を発揮させるべく都度交換される。
第1基部21、第2基部23、昇降機構24にはそれぞれ図示しない電動サーボモータが取り付けられ、それぞれ信号線126により後述する制御部121に接続される。
図1、図2に示されるように、スピンドル装置30は、ベッド11に台座31を介して設けられるモータ部32と、このモータ部32によって駆動され回転する回転軸41と、この回転軸41の軸方向前側の端部に設けられ、回転工具としてのエンドミル43を脱着自在に保持する工具用チャック42と、モータ部32の工具用チャック42側に隣接して設けられ玉軸受47、48を介して回転軸41の軸方向前側を回転自在に支持する前側ハウジング39と、回転軸41の軸方向後側に面するモータ部32の端部33に隣接して設けられるハウジング61と、このハウジング61の内周面62にボールスライド63を介して設けられる軸受ケース64と、この軸受ケース64の内周面65に設けられ回転軸41を回転自在に支持する玉軸受50、51と、軸受ケース64において回転軸41の軸方向後側に面する後端部66にボルト67で締結されたフランジ部68と、フランジ部68に取り付けられ玉軸受50、51に予圧を付与する予圧手段80とを有する。
回転軸41の軸方向後側で並列する玉軸受50、51において、玉軸受50の外輪53と玉軸受51の外輪57との間に外輪用カラー76が配置される。玉軸受50の内輪56と玉軸受51の内輪59との間に内輪用カラー77が配置される。
回転軸41の軸方向前側において並列する玉軸受47、48も同様に、外輪、転動体、及び内輪から構成され、外輪の間に外輪用カラー49a、内輪の間に内輪用カラー49bが配置される。
回転軸41を支持する玉軸受47、48、50、51にはアンギュラ玉軸受が用いられ、回転軸41の軸方向前側と後側とで対を成す背面組合せの状態とされる。
回転軸41は、モータ部32に囲繞される大径軸部45と、この大径軸部45の軸方向後側に隣接される小径軸部46と、大径軸部45の軸方向前側に隣接される大径フランジ45bと、大径フランジ45bの軸方向前側に隣接される段付部46cと、段付部46cからさらに軸方向前側に延出され、その端部に工具用チャック42が設けられる工具側小径軸部46bとを有する。
モータ部32は、モータハウジング35と、モータハウジング35に設けられ通電作用下に励磁されるステータ36と、モータ内軸受を介してモータハウジング35に支持されて、回転軸41の大径軸部45へ軸方向摺動自在に嵌め合わされるロータ34とを有する、いわゆるインナーロータ型ブラシレスモータとされる。回転軸41はモータ部32に対して工具用チャック42側から嵌挿され、ステータ36への通電作用下にロータ34は回転軸41と一体に回転される。なお、回転軸41とロータ34との摺動範囲は大径フランジ45bとロータ34との当接により所定の範囲に規制され、したがって回転軸41がモータ部32を通過してその軸方向後側に抜け出ることはない。
軸受ケース64は、断面L字状に形成され、回転軸41に沿って円筒状に延びて玉軸受50、51の外周面52、52を支持する外周面支持部74と、この外周面支持部74のモータ部32側端部から回転軸41へ向かって円筒の底面状に延びて玉軸受50の外輪53の端面54に当接する外輪端面当接部75とからなる。
スピンドル装置の組立に際して、ボールスライド63はハウジング61の内周面62に形成された内周側凹部71に収納される。玉軸受50、外輪用カラー76、内輪用カラー77および玉軸受51は一挙に軸受ケース64の内周部へと収容され、さらに回転軸41の後側の端部に位置する小径軸部46のねじ山部に挿通され小組み状態とされる。次いで、この小組みされた玉軸受51の内輪59の回転軸41の後端部側に端部側内輪用カラー78を外嵌しつつ回転軸41の後側の端部にナット44を締め付けることで玉軸受50、51の内輪56、59は回転軸41の小径軸部46に圧入固定され、同時に、軸受ケース64はボールスライド63の内周面に受容される。
ハウジング61の回転軸41の軸方向後側の端面72には規制部材73が図示しないねじで固定され、ボールスライド63の回転軸41の軸方向後方への抜け出しが規制される。こうして、軸受ケース64はハウジング61にボールスライド63を介して回転軸41の軸方向へ移動可能に支持される。
前側ハウジング39の内周側凹部において、玉軸受48の外輪とモータハウジング35との間に回転軸41の段付き部46cと実質的に同一幅を有するモータ側外輪用カラー78bが配置される。玉軸受48はその内輪部が段付き部46cの工具用チャック42側段差面に接するまで回転軸41の小径軸部46bに圧入され、同時に、玉軸受48の外輪部はモータ側外輪用カラー78bと当接するまで前側ハウジング39の内周側凹部に圧入される。
玉軸受48の外輪の工具用チャック42側に外輪用カラー49aが配置される。同様に、玉軸受47の内輪と玉軸受48の内輪との間に内輪用カラー49bが配置される。
玉軸受47は、その外輪部が外輪用カラー49aに当接されつつ前側ハウジング39の内周側凹部に圧入され、同時に、内輪部は内輪用カラー49bへと当接されつつ工具側小径軸部46bに圧入固定される。
さらに、玉軸受47の外輪の工具用チャック42側には、前側ハウジング39の蓋体39bが配置される。
蓋体39bは、前側ハウジング39の工具用チャック42側端部と接する円盤状のフランジ部39b1と、この円盤状のフランジ部からモータ部32側へ凸状に突きだして前側ハウジング39の内周側凹部に嵌め合わされ、玉軸受47の外輪部と当接する前側円状当接部39b2とからなり、円盤状のフランジ部39b1と前側ハウジング39の工具用チャック42側端部とは図示しないボルトで締結される。こうして、玉軸受47、外輪用カラー49a、内輪用カラー49bおよび玉軸受48は前側ハウジング39の内周側凹部に取り付けられる。
図2に示されるように、予圧手段80は、玉軸受50、51に所定の予圧を付与する定圧予圧手段81と、スピンドル装置30の状態に応じて玉軸受50、51に付与する予圧の大きさを変更する可変予圧手段91とからなる。
定圧予圧手段81は、回転軸41の軸方向後側に面するハウジング61の軸方向後側の端面72に形成された第1の凹部82と、規制部材73に第1の凹部82に対応する位置に設けられた貫通孔83と、軸受ケース64に第1の凹部82に対向するように設けられたフランジ部68と、第1の凹部82に受け入れられフランジ部68を付勢する弾性部材84とからなる。
フランジ部68は段面L字状で、後述するピンシリンダ100を受け入れる取付ねじ孔94と、軸受ケース64の内周面に沿ってモータ部32側に向かって延び、玉軸受51の外輪57と当接する円状当接部68bとを有する。
定圧予圧手段81の組立に際しては、まず第1の凹部82へと弾性部材84が収容され、次いで、ボルト67によってフランジ部68が回転軸41の軸方向後側から軸受ケース64へ脱着自在に固定される。
こうして、定圧予圧手段81は、フランジ部68を所定の力で回転軸41の軸方向後側へ向けて付勢する。フランジ部68と一体に軸受ケース64も軸方向後側へ付勢される。軸受ケース64の外輪端面当接部75で、玉軸受50の外輪54が押圧される。外輪54で外輪用カラー76を介して玉軸受け51の外輪57が押圧される。結果、玉軸受50、51に所定の予圧が付与される。
なお、第1の凹部82は、ハウジング61の軸方向後側の端面72に形成されているので、玉軸受50、51を回転軸41へ圧入固定した状態で第1の凹部82へと弾性部材84を挿入することができ、さらに、フランジ部68は回転軸41の軸方向後側から脱着自在に取り付けられ、弾性部材84は回転軸41に固定されている玉軸受50、51、ナット44らを分解する必要なしに挿脱可能となる。結果、定圧予圧手段81の保守点検は容易なものとなる。
弾性部材84は、端末が平坦に形成されたいわゆるクローズドエンドのコイルスプリングが好ましい。なお、このようなコイルスプリングは、比較的安価に入手でき、部品コストを低減することができる。
図2、図3に示されるように、回転軸41を中心とした円周を6等分するようにして、6個の弾性部材84・・・が配置される。結果、6個の弾性部材84・・・により、バランス良くフランジ部68を付勢することができる。なお、実施例では、弾性部材84を6個配置したが、これに限定されず、フランジ部68にバランス良く付勢することができれば、弾性部材84の数は、3個等であっても差し支えない。
一方、可変予圧手段91は、ハウジング61の端面72に形成された第2の凹部92と、第2の凹部92に対応する位置に設けられた規制部材73の貫通孔93と、軸受ケース64に第2の凹部92に対向するように設けられたフランジ部68と、このフランジ部68の取付ねじ孔94に外面95側から取り付けられたピンシリンダ100と、スピンドル装置30の外部のエアー供給源111から供給される所定圧の圧縮エアーを所要圧力に調整する給排気手段96と、制御手段120とを有する。
エアー供給源111は、一般に機械工場等に配管設置されている0.6〜0.8MPaの圧縮エアー源であり、このエアー供給源111の圧縮エアーは、図示しないエアドレンフィルタを介してエアーに混入しうる水・油分・ゴミ等の不純物ををあらかじめ除去され、給排気手段96へ供給される。
給排気手段96は、エアー配管97を介してピンシリンダ100・・・に接続され、エアー供給源111から供給される所定圧の圧縮エアーの一部を装置外へ排出可能なエアリリーフ弁96aと、このエアリリーフ弁96aによる排気後のエアー配管97内のエア圧力を検出する圧力センサ96bとを備える。この圧力センサ96bによって検出される圧力指示値が予め実験によって求められた所要の予圧に対応する目標設定圧力へと適合するようにエアリリーフ弁からの排気量が調節され、結果、ピンシリンダ100に供給される圧縮エアーは所要圧力に制御される。
図2、図4に示されるように、ピンシリンダ100は、カバー102と、このカバー102内のシリンダ部103に移動自在に設けられるピストン104と、このピストン104から延び出して規制部材73の貫通孔93に通され、ハウジング61の第2の凹部92に当接されるロッド101と、シリンダ部103の開口を塞ぐカラー105と、このカラー105とピストン104間に設けられるリターンスプリング106と、ピストン104の外周に設けられるピストンパッキン107と、エアー配管97が接続される連通路108と、シリンダ部103に形成され連通路108に繋がる圧力室109とからなる。
カバー102は外周にナット部112及びねじ部113を有し、ねじ部113がフランジ部68の取付ねじ孔94に締結される。
ピンシリンダ100の圧力室109に給排気手段96からの所要圧力のエアーが導入されると、ピストン104がリターンスプリング106の付勢力に抗して図4左方向へと移動するとともにロッド101がハウジング61の第2の凹部92を押圧し、その反作用によりカバー102がフランジ部68とともにハウジング61から離間する方向に移動する。結果、定圧予圧手段81の予圧力に加えて、可変予圧手段91の発揮する予圧力が軸受ケース64を介して玉軸受50、51に付与される。
図2、図3に示されるように、回転軸41を中心とした円周を3等分するようにして、フランジ部68の取付ねじ孔94・・・に3個のピンシリンダ100・・・が締結される。結果、3個のピンシリンダ100・・・により、バランス良くフランジ部68に力を加えることができる。
また、3個のピンシリンダ100・・・は全てフランジ部68のハウジング61の軸方向後側から締結されるので、ピンシリンダ100の脱着に際しては回転軸41に圧入されている玉軸受50、51、軸受ケース64、ナット44、フランジ部68および弾性部材84らを分解する必要はなく、結果、可変予圧手段91の保守点検は非常に容易なものとなる。
次に、制御手段120について説明する。
図1、図2に示されるように、制御手段120は、ワーク切削条件を入力又は記録する切削条件記録部125と、回転軸41の温度を検出する回転軸用温度センサ123と、玉軸受51の温度を検出する軸受用温度センサ124と、回転軸用温度センサ123、軸受用温度センサ124の温度信号を読み取ると共に切削条件記録部125のワーク切削条件に基づいて、モータ部32と給排気手段96とワーク保持装置20とを制御する制御部121と、モータ部32または回転軸41の回転信号を読み取って回転速度を演算する回転速度演算部122と、この演算した回転速度に基づいて単位時間毎の回転速度変動量を演算する回転速度変動量演算部122bとを有する。
回転軸用温度センサ123は、測定対象物の放射赤外線を検出する方式の非接触式温度センサであり、図示しないステー部材によって前側ハウジング39の蓋体39bに固定される。
また、軸受用温度センサ124は、玉軸受51に隣接してその外輪57と当接するフランジ部68の円状当接部68bに設けられる。結果、この回転軸用温度センサ123、軸受用温度センサ124はそれぞれその脱着に際して回転軸41に固定されている玉軸受47、48、50、51、およびナット44らを分解する必要はないものとされる。
制御部121と、回転速度変動量演算部122と、回転速度変動量演算部122bと、切削条件記録部125とはパソコン等の演算処理装置により提供されてなるもので、モータ部32、給排気手段96、ワーク保持装置20、回転軸用温度センサ123、軸受用温度センサ124は、それぞれ信号線126により制御部121に接続される。
なお、信号線126には、図示しない中間カプラが適宜配置されて容易に接続・切り離しが出来るようにされる。
モータ部32は、切削条件記録部125に入力又は記録された切削条件に基づいて制御部121から発せられるモータ駆動信号によりステータ36の通電を制御され、ロータ34および回転軸41は一体に回転駆動される。
回転速度演算部122においては、制御部121から発せられるモータ駆動信号を読み取ってロータ34および回転軸41の回転速度が演算される。
制御部121により、回転速度演算部122により演算された回転速度と、温度センサ123、124の温度信号とに基づき、予め実験により求められて切削条件記録部125に記憶されているルックアップテーブルなどを参照する演算手段を介して、給排気手段96のエアリリーフ弁96aの開度を制御する、いわゆるパルス幅変調(PWM)などの弁開度制御信号が出力される。
制御部121からモータ駆動信号が出力されてモータ部32が回転駆動されると、モータ部32、玉軸受47、48、50、51等における発熱を受けた回転軸41はその熱膨張によって軸方向の伸びを生ぜられ、この軸方向の伸びにより、回転軸41に圧入された軸方向前側の玉軸受47、48の内輪と、軸方向後側の玉軸受50、51の内輪との軸方向距離は離間方向へと拡大されることとなる。このとき、玉軸受47、48は前側ハウジング39に固定されているので、回転軸41は玉軸受47、48の外輪を基点として軸方向後側へと偏奇することとなる。すなわち、玉軸受50、51に付与される予圧は回転軸41の回転増加による熱膨張により増大しようとするが、制御部121によるエアリリーフ弁96aの開度制御により熱膨張による予圧の増大分は相殺される。このように、玉軸受50、51に付与される予圧は回転速度または温度信号に基づいて好適に制御されることとなる。なお、上記切削条件記録部125に記憶されるルックアップテーブルはワークに対応するCNC工作機械の数値制御データに関連付けて適宜変更可能とされても良く、この場合、玉軸受50、51に付与される予圧の制御特性はワーク13の形状や所要加工精度、材質、切削に使用する回転工具の種別等に応じて都度変更されることとなる。
ところで、ワークの切削加工時に玉軸受47、48、50、51に付与される予圧が切削負荷と比して相対的に不足すると、回転軸の保持剛性が不足することとなってビビリ振動すなわち回転軸の回転変動が生じることがあるが、制御部121は、回転速度変動量演算部122bにより演算された回転速度変動量に基づき、予め実験により求められて切削条件記録部125に記憶されているルックアップテーブルなどを参照する演算手段を介してエアリリーフ弁96aへ出力する弁開度制御信号が補正され、回転軸41の振動は減少される。
結果、玉軸受50、51の寿命が長くなり、玉軸受50、51の交換頻度が少なくなる。しかも、遠心力による玉軸受47、48、50、51のはめあいの変化、回転軸41の熱による伸び、玉軸受50、51の熱膨張、ワーク13の形状や所要加工精度、材質、切削に使用する回転工具の種別等による回転軸41への負荷、定圧予圧手段用の弾性部材84の製造のばらつきに基づいて、予圧を補正できるので、ワーク13の加工精度を向上させることができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
実施の形態では、スピンドル装置30をCNC工作機械10に採用し、このCNC工作機械10は、ワーク保持装置20が3軸方向に移動するものとしたが、これに限定されず、回転軸41と同心状にワーク用チャック26を回動させるC軸および回転軸41に対してワークの傾斜角を与えるA軸を加えた5軸方向に移動するものとしても差し支えない。また、実施例では、回転工具43をエンドミルとしたが、これに限定されず、ドリル、リーマ、砥石など、回転軸41に保持して用いる他の工具であっても差し支えない。
また、スピンドル装置30は、自動工具交換機能が付与されたマシニングセンタに採用されても差し支えない。この場合、マシニングセンタにおける工具交換時にスピンドル装置30の予圧は自動的に補正されることができる。
本発明は、回転工具を高速で回転させるスピンドル装置に好適である。
10…コンピュータ数値制御の工作機械(CNC工作機械)、11…ベッド、13…ワーク、26…ワーク用チャック、30…スピンドル装置、39…前側ハウジング(工具チャック側のハウジング)、41…回転軸、43…工具(エンドミル)、47、48、50、51…玉軸受、61…ハウジング、64…軸受ケース、68…フランジ部、72…ハウジングの軸方向後側の端面、80…予圧手段、81…定圧予圧手段、82…凹部(第1の凹部)、84…弾性部材(コイルスプリング)、91…可変予圧手段、95…フランジ部の外面、96…給排気手段(レギュレータ)、100…ピンシリンダ、101…ロッド、109…圧力室、111…エアー供給源、120…制御手段、122…回転速度演算部、122b…回転速度変動量演算部、123…回転軸用温度センサ、124…軸受用温度センサ、126…信号線。

Claims (4)

  1. 軸方向前側に回転工具を装着可能な回転軸と、玉軸受を介して前記回転軸を回転自在に支持するハウジングと、前記玉軸受に予圧を付与する予圧手段とからなり、
    前記玉軸受が軸受ケースに収納され、この軸受ケースが前記ハウジングに前記回転軸の軸方向へ移動可能に設けられ、前記軸受ケースが前記予圧手段で移動されるスピンドル装置であって、
    前記予圧手段は、定圧予圧手段と可変予圧手段とからなり、
    前記定圧予圧手段は、前記ハウジングの軸方向後側の端面に形成された凹部と、この凹部に対向するように前記軸受ケースに形成されたフランジ部と、前記凹部に設けられ前記フランジ部を付勢して玉軸受に所定の予圧を付与する弾性部材とからなり、
    前記可変予圧手段は、前記スピンドル装置の外部から供給されるエアーを所要圧力に調整する給排気手段と、前記給排気手段に接続される圧力室を有し、前記回転軸の軸方向後側へ臨むフランジ部の外面側に脱着自在に設けられるピンシリンダと、このピンシリンダに進退自在に設けられ前記圧力室のエアー圧力に応じて前記ハウジングへ当接して前記フランジ部を付勢するロッドとからなることを特徴とするスピンドル装置。
  2. 前記可変予圧手段は、スピンドル装置の作動状態に基づいて前記給排気手段の所要圧力を変化させる制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のスピンドル装置。
  3. 前記スピンドル装置の作動状態は、
    前記回転軸の回転速度、前記回転軸の回転速度変動量、前記回転軸の温度、前記玉軸受の温度、ワーク切削条件の少なくとも1つから選択されてなることを特徴とする請求項2記載のスピンドル装置。
  4. 請求項3記載のスピンドル装置を用いたコンピュータ数値制御の工作機械であって、工作機械は、ベッドと、スピンドル装置と、ワーク保持装置と、制御手段とからなっており、前記スピンドル装置とワーク保持装置は信号線を介して前記制御手段と接続されてなることを特徴とする、コンピュータ数値制御の工作機械。
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