JP6128631B2 - 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途 - Google Patents

糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP6128631B2
JP6128631B2 JP2012171406A JP2012171406A JP6128631B2 JP 6128631 B2 JP6128631 B2 JP 6128631B2 JP 2012171406 A JP2012171406 A JP 2012171406A JP 2012171406 A JP2012171406 A JP 2012171406A JP 6128631 B2 JP6128631 B2 JP 6128631B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
diabetic nephropathy
sdma
creatinine
butyrobetaine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012171406A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014032046A (ja
Inventor
彰一 丸山
彰一 丸山
由紀夫 湯澤
由紀夫 湯澤
清一 松尾
清一 松尾
和一 佐藤
和一 佐藤
武徳 尾崎
武徳 尾崎
秋山 真一
真一 秋山
朋義 曽我
朋義 曽我
明由 平山
明由 平山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagoya University NUC
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Original Assignee
Nagoya University NUC
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagoya University NUC, Tokai National Higher Education and Research System NUC filed Critical Nagoya University NUC
Priority to JP2012171406A priority Critical patent/JP6128631B2/ja
Publication of JP2014032046A publication Critical patent/JP2014032046A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6128631B2 publication Critical patent/JP6128631B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は疾患マーカー及びその用途に関する。詳しくは、糖尿病性腎症の鑑別を可能にするバイオマーカー及び糖尿病性腎症の鑑別法に関する。
透析導入原疾患の第一位である糖尿病性腎症は、慢性腎臓病の中で最も対策(新規発症患者の抑制および既存患者の進行抑制)を講じなければならない腎疾患であるが、病態と病期を正確に鑑別診断できれば有効な治療効果が期待できることから、診断技術は糖尿病性腎症対策医療において極めて重要な要素技術である。
糖尿病性腎症の重症化予防および治療においては、病態の鑑別と病期の推定が極めて需要である。従来技術では、糖尿病の既往に加え、尿所見の変化(タンパク尿・微量アルブミン尿の出現)やeGFR(糸球体濾過量:腎機能を表す指標で血清クレアチニン濃度と年齢・性別を基に算出される)の低下、眼底検査所見(眼底血管病変の観察)に基づいて、糖尿病性腎症の鑑別および病期推定を行っていた(非特許文献1)。しかし、これらの従来技術では、糖尿病性腎症を他の腎疾患と簡便・確実に区別できない問題や病期を正確に推定できない問題があった。一方、最近では尿中および血中の新規バイオマーカーの探索研究も散見されるが、未だ従来技術に代わる新規バイオマーカーの実用化には至っておらず、現在でも尿中タンパク質やアルブミン、血清クレアチニン濃度に基づいた診断がディファクトスタンダードとなっている。尿中バイオマーカーの探索研究の例を挙げると、Dihaziらは、SELDI/TOFMSによって、2型糖尿病患者の中から糖尿病性腎症患者を識別するために有用な3種類の尿中タンパク質を報告している(非特許文献2)。また、Mischakらはキャピラリー電気泳動と質量分析計を併用した手法(CE-MS)で尿中ポリペプチドをプロファイリングし、健常者と2型糖尿病患者を識別し得るパターンを見出している(非特許文献3)。
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009、p87〜p104、8章 糖尿病性腎症 Dihazi H, Muller GA, Lindner S, et al. (2007) Characterization of diabetic nephropathy by urinary proteomic analysis: identification of a processed ubiquitin form as a differentially excreted protein in diabetic nephropathy patients. Clin Chem 53: 1636-1645 Mischak H, Kaiser T, Walden M, et al. (2004) Proteomic analysis for the assessment of diabetic renal damage in humans. Clin Sci (Lond) 107: 485-495 Xia JF, Liang QL, Hu P, Wang YM, Li P, Luo GA (2009) Correlations of six related purine metabolites and diabetic nephropathy in Chinese type 2 diabetic patients. Clin Biochem 42: 215-220 Jiang Z, Liang Q, Luo G, Hu P, Li P, Wang Y (2009) HPLC-electrospray tandem mass spectrometry for simultaneous quantitation of eight plasma aminothiols: application to studies of diabetic nephropathy. Talanta 77: 1279-1284 Zhang J, Yan L, Chen W, et al. (2009) Metabonomics research of diabetic nephropathy and type 2 diabetes mellitus based on UPLC-oaTOF-MS system. Anal Chim Acta 650: 16-22
従来技術が内包する「病態形成が十分に進行した状態にならないと糖尿病性腎症を検出できない問題」や「病期を正確に見積もることができない問題」が生じる理由は、従来技術の方法論に問題があるためである。すなわち、従来技術では腎組織の構造的異常が生じた結果として現れる現象を検出して腎機能障害を診断しているため、十分に病態形成が進行して十分に腎臓組織の構造的異常が発達しないと糖尿病性腎症の発症を検出することができなかった。さらに、従来技術は腎機能障害を全般的に検出するもので、糖尿病性腎症を鑑別することは不可能であった。一方、上記の通り、糖尿病性腎症のバイオマーカーを尿中で同定する試みがあるが、尿中の物質はその存在量(濃度)の変動が大きく、精度の高い鑑別には不向きである。
そこで本発明は、糖尿病性腎症の早期鑑別を可能にする新たな指標及びその用途を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み本発明者らは血中代謝物に着目し、糖尿病性腎症の早期鑑別を可能にする新たな指標の抽出・特定を試みた。その結果、キャピラリー電気泳動装置と質量分析計を併用した生体内の代謝物を網羅的に解析できる技術(いわゆるメタボローム解析技術、メタボロミクス)により、糖尿病性腎症患者の血中代謝物から糖尿病性腎症の病期ステージ(無発症、ミクロアルブミン尿期、マクロアルブミン尿期)を鑑別するために有用な指標代謝物群(バイオマーカー)の抽出に成功した。すなわち、病期毎の糖尿病性腎症患者の血液に含まれる代謝物を網羅的に定性・定量解析して血中代謝物プロファイルを相互比較することによって、糖尿病性腎症患者血液に含まれる289種の代謝物質の中から、糖尿病性腎症の病態と病期を反映するバイオマーカーとして19物質を抽出することに成功した。更に検討を進め、これらのバイオマーカーを用いて多重ロジスティック回帰分析を行った結果、無症状の患者とアルブミン尿を呈する患者を高精度(the area under the receiver operating characteristic curves, AUC: 0.844-0.927)に分類することが可能であった。つまり、これらのバイオマーカーが糖尿病性腎症の鑑別に極めて有効であることが確認された。
ところで、糖尿病性腎症のバイオマーカーを探索する目的の下でメタボローム解析が行われた例はいくつかあるが、それらの多くは特定のターゲットに絞ったものであり(例えば非特許文献4、5を参照)、網羅的な解析の結果を報告するものは殆どない。Zhangらは、LC-MSを利用した網羅的解析の結果を報告するものの、糖尿病性腎症のバイオマーカー候補として同定されたものはロイシン、ジヒドロスフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンであり(非特許文献6)、本発明者らが抽出・特定に成功した化合物とは異なる。
以下に示す発明は、主として、本発明者らの鋭意検討によって得られた上記成果に基づく。
[1]クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、シンメトリックジメチルアルギニン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸からなる群より選択される、一の化合物又は二以上の化合物の組合せからなる、糖尿病性腎症鑑別用マーカー。
[2][1]に記載のマーカーの量を指標とした糖尿病性腎症鑑別法。
[3]以下のステップ(1)及び(2)を含む、[2]に記載の鑑別法:
(1)血液サンプル中の前記マーカーを測定するステップ;
(2)測定結果に基づき、糖尿病性腎症の発症の有無及び/又は糖尿病性腎症の病期を判定するステップ。
[4]ステップ(1)の測定にキャピラリー電気泳動−質量分析装置を用いる、[3]に記載の鑑別法。
[5]以下の(a)〜(c)のいずれかの鑑別に用いる、[2]に記載の鑑別法:
(a)糖尿病性腎症無発症と、糖尿病性腎症との鑑別;
(b)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別;
(c)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症と、マクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別。
糖尿病患者の背景。糖尿病性腎症無発症患者(無症状)、ミクロアルブミン尿期患者、マクロアルブミン尿期患者との間で比較して示す。表中のデータは平均±標準偏差。*は糖尿病性腎症無発症患者との間に有意差があることを示す。†はミクロアルブミン尿期患者との間に有意差があることを示す。括弧内の数字は臨床検査値が不明の患者数である。 糖尿病性腎症病期間で有意差を認めた代謝物の一覧。p値の算出にはKruskal-Wallis検定を用いた。 各代謝物の濃度と、eGFR(推算糸球体濾過量)との相関。 各代謝物の濃度と、UACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)との相関。 各代謝物の糖尿病性腎症発症有無の鑑別能。 5種類の代謝物を用いた(未同定代謝物を2種類含む)糖尿病性腎症鑑別のためのROC(receiver operating characteristic curve; 受信者動作特性)曲線とAUC(area under curve; 曲線下面積)値。 多重ロジスティック回帰モデル変数(図6に対応)。 4種類の同定代謝物を用いた糖尿病性腎症鑑別のためのROC曲線とAUC値。 多重ロジスティック回帰モデル変数(図8に対応)。 同定した代謝物の種々の組み合わせと鑑別能。1:クレアチニン、2:アスパラギン酸、3:γ−ブチロベタイン、4:シトルリン、5:シンメトリックジメチルアルギニン(SDMA)、6:キヌレニン、7:アゼライン酸、8:ガラクタル酸 代謝物間の相関係数とp値。上段;相関係数、下段;p値、*;p<0.05、**;p<0.01、***;p<0.001
1.糖尿病性腎症鑑別用マーカー
本発明の第1の局面は糖尿病性腎症鑑別用マーカー(以下、「鑑別用マーカー」と略称することがある)に関する。「糖尿病性腎症鑑別用マーカー」とは、糖尿病性腎症を発症している者又は発症し得る者の、病態/病期を反映した識別・特定の指標となる生体分子である。糖尿病性腎症鑑別用マーカーは、糖尿病患者における腎症の発症の有無や病期の判定などに有用である。
本発明の鑑別用マーカーは血中代謝物からなる。具体的には、本発明の鑑別用マーカーはクレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、シンメトリックジメチルアルギニン(SDMA)、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸からなる群より選択される、一の化合物又は二以上の化合物の組合せからなる。本明細書において「血中」とは、血液中に存在していることを意味する。従って、血中代謝物である本発明の各マーカー分子は血液サンプル(血清、血漿など)中で検出され得る。
後述の実施例に示す通り、上記8化合物に加え、以下に示す11化合物についても、糖尿病性腎症病期との相関を認めた。そこで、本発明の一態様では、上記8化合物と同様に、これらの11化合物を鑑別用マーカーとして用いる。具体的には、血中に存在するこれらの化合物をそれぞれ単独で、或いは、これらの化合物と上記8化合物の合計19化合物から選択される二以上の化合物を鑑別マーカーとして用いる。尚、m/z(質量と電荷の比)は質量分析の結果として得られるマススペクトルの横軸が表示する物理量である。
m/zが129.067(組成式C5H8N2O2)である血中代謝物(便宜上、「ID17」と呼ぶ)
m/zが156.139(組成式C9H17NO)である血中代謝物(便宜上、「ID51」と呼ぶ)
m/zが158.154(組成式C9H19NO)である血中代謝物(便宜上、「ID52」と呼ぶ)
m/zが243.184である血中代謝物(便宜上、「ID96」と呼ぶ)
m/zが244.106である血中代謝物(便宜上、「ID97」と呼ぶ)
m/zが276.128である血中代謝物(便宜上、「ID114」と呼ぶ)
m/zが302.197である血中代謝物(便宜上、「ID127」と呼ぶ)
m/zが316.213である血中代謝物(便宜上、「ID134」と呼ぶ)
m/zが96.960(組成式H2SO4)である血中代謝物(便宜上、「ID152」と呼ぶ)
m/zが103.014(組成式C2H4N2O3)である血中代謝物(便宜上、「ID158」と呼ぶ)
m/zが149.049(組成式C6H6N4O)である血中代謝物(便宜上、「ID202」と呼ぶ)
後述の実施例に示す通り、同定された8化合物及び未同定の11化合物はいずれも高い鑑別能を示した。この事実は、これらの化合物が単独でも鑑別に有用であることを意味する。一方、二以上の化合物を併用することにより鑑別精度(感度、特異度)の向上を認めた。この事実を考慮すれば、鑑別用マーカーとして二以上の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。様々な組合せを採用可能である。組合せの具体例及びその鑑別能を図10に示す。尚、二以上の化合物を併用する場合には、各化合物間の相関係数を考慮して、使用する化合物を選択するとよい。一般に、相関係数の小さいマーカー同士を組み合わせると精度ないし確度が向上する。各化合物間の相関を図11に示す。
図10に例示した組合せの中で好ましいものとして以下の組合せを挙げることができる。こられの組合せの中でも(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(10)、(11)、(12)、(16)は特に好ましい。
(1)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
(2)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(3)アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(4)クレアチニン、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(5)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(6)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(7)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(8)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、アゼライン酸、ガラクタル酸
(9)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、ガラクタル酸
(10)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸
(11)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸、ガラクタル酸
(12)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(13)クレアチニン、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸
(14)γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(15)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸
(16)アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸、ガラクタル酸
(17)クレアチニン、シトルリン、SDMA、アゼライン酸、ガラクタル酸
(18)γ−ブチロベタイン、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(19)クレアチニン、シトルリン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(20)クレアチニン、アスパラギン酸、SDMA、ガラクタル酸
(21)アスパラギン酸、SDMA、アゼライン酸、ガラクタル酸
(22)クレアチニン、アゼライン酸、ガラクタル酸
(23)SDMA、ガラクタル酸
2.糖尿病性腎症の鑑別法
本発明の第2の局面は、本発明の鑑別用マーカーの典型的な用途として、糖尿病性腎症の鑑別法を提供する。本発明の鑑別法は、糖尿病性腎症を発症していない者と発症している者の識別(発症していない者又は発症している者の特定・抽出)、糖尿病性腎症の病態/病期毎の識別(例えば、特定の病態/病期にある者の特定・抽出)等に利用できる。本発明の鑑別法は、例えば、以下の(a)〜(c)のいずれかの鑑別に用いられる。
(a)糖尿病性腎症無発症と、糖尿病性腎症との鑑別
(b)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別
(c)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症と、マクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別
ここで、糖尿病性腎症は臨床的特徴(尿蛋白、クレアチニンクリアランス)等に基づき、第1期(腎症前期)、第2期(早期腎症)、第3期A(顕性腎症前期)、第3期B(顕性腎症後期)、第4期(腎不全期)、第5期(透析療法期)に分類される。第1期又は第1期に至る前の状態が「糖尿病性腎症無発症」に対応する。同様に、第2期が「ミクロ(微量)アルブミン尿を認める糖尿病性腎症」に該当し、第3期A以降が「マクロアルブミン尿(顕性蛋白尿)を認める糖尿病性腎症」に対応する。尚、日本糖尿病学会・日本腎臓学会合同委員会の分類(日腎会誌.2002;44(1):i)によれば、UACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)が30〜299mg/gであればミクロアルブミン尿と診断され、300mg/g以上であればマクロアルブミン尿と診断される。
本発明の鑑別法では、例えば、以下のステップ(1)及び(2)を実施する。
(1)血液サンプル中の鑑別用マーカーを測定するステップ
(2)測定結果に基づき、糖尿病性腎症の発症の有無及び/又は糖尿病性腎症の病期を判定するステップ
ステップ(1)
ステップ(1)では被検者由来の血液サンプルを用意し、その中に存在する鑑別用マーカーを測定する。本明細書において「鑑別用マーカーを測定する」とはサンプル中の鑑別用マーカーの含有量(濃度)を明らかにすることと同義である。被検者は典型的には糖尿病患者又は潜在的糖尿病患者(糖尿病を罹患している可能性のある者)である。但し、それ以外の者を被検者にすることも可能である。
鑑別用マーカーにはクレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸からなる群より選択される一又は二以上の化合物が用いられる。別の態様では、クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸、ID17、ID51、ID52、ID96、ID97、ID114、ID127、ID134、ID152、ID158及びID202からなる群より選択される一又は二以上の化合物が用いられる。
鑑別用マーカーとして二以上の化合物を併用する場合には様々な組合せ(例えば図10に示されるもの)を採用できる。
本発明では血中の鑑別用マーカー量が測定される。血液サンプルとして全血、血清、血漿などを用いることが可能であるが、好ましくは血清又は血漿を用いる。測定に先立って血液サンプルを前処理しておくことが好ましい。後述の実施例で採用した測定法であるCE-TOFMSの場合、例えば、以下の手順で血清又は血漿を処理する。尚、全血からの血清の調製は常法(典型的には常温での静置による凝固及びその後の遠心処理)で行えばよい。血漿の調製についても同様である(典型的には凝固剤の添加及びその後の遠心処理)。
まず、血液サンプル(血清又は血漿)をメタノールやエタノール等のアルコール溶媒と混合し、血液サンプル中の酵素を失活させる。アルコール溶媒は特に限定されないが、好ましくはメタノールを使用する。また、純度の高いアルコール溶媒が好ましく、例えばLC/MS用のアルコール溶媒を使用する。次に、アルコール溶媒を混合した検体に有機溶媒と水を添加して混合した後、層分離によって脂溶性物質(リン脂質など)を含む有機層を除去する。ここで用いる有機溶媒は、層分離に適したものであれば特に限定されない。好ましくはクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等を用いる。また、特級又は分析用の有機溶媒を用いるとよい。水についても、不純物の含量が少ないものが好ましく、例えば蒸留水、脱イオン水、MilliQ(登録商標)水などを用いる。中でもMilliQ水が特に好ましい。層分離の方法は遠心分離、静置などを採用できる。
層分離によって得られた水相からタンパク質を除去しておくことが好ましい。除蛋白は例えば限外ろ過によって行うことができる。
鑑別用マーカーの測定方法は特に限定されない。測定方法の例を挙げると、キャピラリー電気泳動−質量分析(CE-MS)法、高速液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、チップLC、チップCE、それらに質量分析計(MS)を組み合わせたGC-MS法、LC-MS法若しくはCE-MS法、各種のMS単独の測定法、NMR法、代謝物質を蛍光物質やUV吸収物質に誘導体化してから測定する方法、抗体を作成してELISA法などで測定する方法(免疫学的測定法)である。これらの中でもCE-MSは特に好ましい測定方法である。CE-MSによれば、複数の化合物をまとめて検出することができる。また、ID17、ID51、ID52、ID96、ID97、ID114、ID127、ID134、ID152、ID158及びID202(未同定代謝物)についても測定可能である。
CE-MSや高速液体クロマトグラフィーなどの測定方法では、血液サンプル中の化合物を分離した後(サンプルの分離)、所定の画分に含有される目的化合物(即ち鑑別用マーカー)の含有量を決定する(含有量の測定)。CE-MSの場合、キャピラリー電気泳動装置を用いて血液サンプルを分離するステップと、電気泳動によって得られる特定の画分(鑑別用マーカー含有画分)における鑑別用マーカーの含有量を測定するステップが行われることになる。そして、鑑別用マーカーの含有量の測定には質量分析計が用いられる。鑑別用マーカーとして複数の化合物を採用した場合には、複数の画分についてそれぞれ、該当する化合物の含有量が測定される。尚、厳密な定量は必須ではなく、半定量的に鑑別用マーカー量を測定することにしてもよい。
血液サンプル中の鑑別用マーカーを測定するための測定機器の操作方法・測定条件等は、本明細書の記載に加え、必要に応じて測定装置の取り扱い説明書や過去の報告等を参考にして決定すればよい。測定条件の具体例として、CE-TOFMSの場合について以下に説明する。
まず、上記のごとき前処理を施した血液サンプルを用意する。好ましくは、前処理の段階で内部標準を添加しておく。内部標準は鑑別用マーカーの電気泳動時間や含有量を決定するための基準となる。鑑別用マーカーの電気泳動及び質量分析に影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。例えば、メチオニンスルホンや10−カンファースルホン酸(10-camphorsulfonic acid、CSA)を内部標準として採用することができる。キャピラリーはフューズドシリカキャピラリーが好ましい。また、高い分離能を得るため、キャピラリーの内径は100μm以下、キャピラリーの全長は50cm〜150cm程度であることが好ましい。キャピラリー電気泳動により得られた各画分中における目的の画分(鑑別用マーカー含有画分)を特定する方法は特に限定されない。例えば、内部標準の電気泳動時間との相対時間を利用する方法、鑑別用マーカーである化合物の標品を用いて予め当該化合物の電気泳動時間を測定しておく方法等を採用することができる。目的の画分を特定できたら当該画分中の鑑別用マーカー(該当するm/zを有する化合物)の含有量をピーク面積として測定する。その際、内部標準のピーク面積で補正するとよい。一方、標品を用いて作成した検量線を利用すれば、測定されたピーク面積から濃度、即ち、血液サンプル中の鑑別用マーカーの含有量を求めることもできる。
ステップ(2)
ステップ(2)では、測定結果に基づき、糖尿病性腎症の発症の有無及び/又は糖尿病性腎症の病期を判定する。判定に用いる基準値やカットオフ値は、使用するサンプルの種類や状態、鑑別の対象、要求される精度(信頼度)などを考慮して決定すればよい。例えば、糖尿病性腎症の発症の有無を判定する場合には、糖尿病性腎症を発症していない者(無症状患者)の血中の鑑別用マーカー量(基準値)を予め測定し、決定しておく。そして、被検者の血中の鑑別用マーカー量が当該基準値と有意な差を示したとき、糖尿病性腎症を発症していると判定できる。糖尿病性腎症の病期(ステージ)についても同様に判定することができる。尚、基準値は特定の量又は特定の量の範囲として設定される。
本発明のマーカーを構成する化合物の中でクレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、ID17、ID97、ID152、ID158及びID202の血中濃度は糖尿病性腎症の発症・進行と比例的な関係にあり、アゼライン酸、ガラクタル酸、ID51、ID52、ID96、ID114、ID127及びID134の血中濃度は糖尿病性腎症の発症・進行と反比例的な関係にある。従って、前者の化合物群では血中での量が、無症状患者に比較して糖尿病性腎症患者で有意に多く且つ病期の進行に伴い増加する。対照的に後者の化合物群の場合は血中での量が、無症状患者に比較して糖尿病性腎症患者で有意に少なく且つ病期の進行に伴い減少する。換言すれば、前者の化合物群では血中での量の増加が糖尿病性腎症の発症及び病期の進行の指標となり、後者の化合物群では血中での量の減少が糖尿病性腎症の発症及び病期の進行の指標となる。
判定は定性的なものに限られない。即ち、半定量的又は定量的な判定を下すことにしてもよい。定量的判定の場合、例えば、以下に示すように測定値の範囲毎に「糖尿病性腎症を発症している可能性(%)」を予め設定しておき、測定値から「糖尿病性腎症を発症している可能性(%)」を判定する。
測定値<a:糖尿病性腎症を発症している可能性は80%より大きい
a≦測定値<b:糖尿病性腎症を発症している可能性は20%〜80%
b<測定値:糖尿病性腎症を発症している可能性は20%未満
この例では3段階に区分したが、区分数は任意に設定できる。区分数の例は2〜10、好ましくは2〜5である。
判定の具体例(CE-TOFMSによる測定の場合の例)を以下に示す。
(1)γ−ブチロベタイン、SDMA、ID114、ID127及びアゼライン酸の組合せを鑑別マーカーとした場合の罹患確率の算出
5個の血中代謝物(γ−ブチロベタイン、SDMA、ID114、ID127及びアゼライン酸)についての多重ロジスティック回帰分析の結果を図7に示した。糖尿病性腎症を発症していない(DM)確率をpとすると、糖尿病性腎症(DN)である確率は1-pとなり、ROC計算式は以下の通りである。
log(p/(1-p))=0.309-92.3×γ−ブチロベタイン-6.12×102×SDMA+8.79×102×ID114+44.0×ID 127-2.4×102×アゼライン酸
式中に代入する各代謝物の値はRelエリア値(対象化合物の面積値を内部標準の面積値で正規化したもの)になる。例えば、γ−ブチロベタイン、SDMA、ID114、ID127、アゼライン酸のRelエリアがそれぞれ、0.0291、0.00631、0.00466、0.0969、0.0155であれば、DMである確率は16.8%となり、すなわちDNである確率は83.2%となる。
(2)アスパラギン酸、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸の組合せを鑑別マーカーとした場合の罹患確率の算出
4個の血中代謝物(アスパラギン酸、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸)についての多重ロジスティック回帰分析の結果を図9に示した。これらの代謝物を鑑別用マーカーとした場合、糖尿病性腎症を発症していない(DM)確率pと糖尿病性腎症(DN)である確率1-pは、(1)の場合と同様に以下のROC計算式によって算出できる。
log(p/(1-p))=1.58-22.4×アスパラギン酸-3.07×102×SDMA+39.7×アゼライン酸+74.9×ガラクタル酸
ところで、鑑別用マーカーとして複数の化合物の組合せを採用する場合には、通常、組み合わせる化合物の種類及び数によって感度及び特異度が異なる。そこで、目的に合わせて最適な化合物の組合せを選択するとよい。例えば、感度の高い組合せはスクリーニング的な検査に適する。これとは対照的に、特異度の高い組み合わせは、より信頼性の高い判定が必要な検査(例えば2次検査や3次検査)に適する。感度及び特異度のバランスが異なる判定法を組み合わせることによって、効率化や確度ないし信頼性の向上を図ることも可能である。
尚、ステップ(2)の判定は、その判定基準から明らかな通り、医師や検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。
糖尿病性腎症の鑑別に有効な指標(バイオマーカー)を見出すべく、以下の検討を行った。
1.方法
(1)サンプルの採取
中部ろうさい病院(愛知県)に通院もしくは入院している患者の内、同意の得られた糖尿病性腎症の病期(ステージ)の異なるサンプル(無発症患者20名、ミクロアルブミン尿期32名、およびマクロアルブミン尿期26名)、計78名の血清を採取した。患者の背景を図1に示す。
(2)血液からの代謝物質の抽出
血漿サンプル50μLに内部標準入りのメタノールを450μL加え攪拌後、さらにクロロホルム500μL、純水200μLを加えよく攪拌した。攪拌後、4℃、5,000 rpmで5分間遠心分離し、分離した水相600μLを分画分子量5 kDaの限外ろ過フィルターを用いて除タンパクした。ろ液を遠心乾固した後、純水50μLで再溶解し、CE-MS分析に供した。
(3)キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)による血漿中の代謝物測定
CE-TOFMSを用いて、糖尿病性腎症無発症患者、ミクロアルブミン尿期の患者、およびマクロアルブミン尿期の患者の血清サンプル中の代謝物質を網羅的に測定した。
(3−1)陽イオン性代謝物質測定条件(Soga, T., et al., J. Proteome Res. 2. 488-494, 2003; Soga, T. et al., J. Biol. Chem. 281, 16768-16776, 2006を参照)
(a)キャピラリー電気泳動(CE)の分析条件
キャピラリーにはフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、外径350μm、全長100 cm)を用いた。緩衝液には1 Mギ酸(pH約1.8)を用いた。印加電圧は+30 kV、キャピラリー温度は20℃で測定した。試料は、加圧法を用いて50 mbarで3秒間注入した。
(b)飛行時間型質量分析計(TOFMS)の分析条件
正イオンモードを用い、イオン化電圧は4 kV、フラグメンター電圧は75 V、スキマー電圧は50 V、OctRFV電圧は125 Vに設定した。乾燥ガスには窒素を使用し、温度300℃、圧力10 psigに設定した。シース液は50%メタノール溶液を用い、質量較正用にヘキサキス(2,2-ジフルオロトキシ)フォスファゼンを0.1μMとなるよう混入し10μL/minで送液した。ヘキサキス(2,2-ジフルオロトキシ)フォスファゼン(m/z 622.0290)とメタノールの二量体のアイソトープ(m/z 66.0632)の質量数を用いて、得られた全てのデータを自動較正した。
(3−2)陰イオン性代謝物質測定条件
(a)キャピラリー電気泳動(CE)の分析条件
キャピラリーにはCOSMO(+)キャピラリー(内径50μm、外径350μm、全長100cm)を用いた。緩衝液には50 mM酢酸アンモニウム(pH 8.5)を用いた。印加電圧は-30kV、キャピラリー温度は20℃で測定した。試料は、加圧法を用いて50mbarで30秒間注入した。
(b)飛行時間型質量分析計(TOFMS)の分析条件
負イオンモードを用い、イオン化電圧は3.5 kV、フラグメンター電圧は100 V、スキマー電圧は50 V、OctRFV電圧は200 Vに設定した。乾燥ガスには窒素を使用し、温度300℃、圧力10 psigに設定した。シース液は5 mM酢酸アンモニウムを含む50%メタノール溶液を用い、質量較正用にヘキサキス(2,2-ジフルオロトキシ)フォスファゼンを0.1μMとなるよう混入し10 μL/minで送液した。レゼルピンの酢酸付加イオン(m/z 680.0355)と酢酸の二量体のアイソトープ(m/z 120.0384)の質量数を用いて、得られた全てのデータを自動較正した。
(4)統計解析
バイアスを除くために、内部標準に対する相対ピークエリア(Relエリア)を統計処理に用いた。データ解析にはGraphPad Prism 5.0 (GraphPad Software, Inc., San Diego, CA, USA)を使用した。Kruskal-Wallis検定及びダン検定(Dunn's post test)によって、糖尿病性腎症無発症患者、ミクロアルブミン尿期の患者、およびマクロアルブミン尿期の患者の間の統計的有意差を評価した。また、スピアマンの順位相関検定(Spearman’s rank correlation test)を用いてUACR、eGFR及び各代謝物の相対ピークエリア(Relエリア)の相関を調べた。多重ロジスティック回帰モデル(MLRモデル)を作成するために二種類の方法を用いた。まず、正規化データを、SIMCA-Pソフトウエア(Version 12.0, Umetrics, Umea, Sweden)を用いたOPLS-DA(orthogonal partial least-squares discriminant analysis)に供してモデルを構築し、糖尿病性腎症無発症患者とマクロアルブミン尿期の患者との鑑別に有効な代謝物を同定することにした。一方、閾値をp<0.25に設定してステップワイズ変数選択法(順方向及び逆方向)を実行した。構築されたMLRモデルの汎化能力はクロスバリデーション法で評価した。ブートストラップ法で楽観的バイアスを排除した。
2.結果
CE-TOFMSを用いたメタボローム解析によって、糖尿病性腎症患者の血清中から289種の代謝物由来と思われるピークを得た。これらのピークを用いて統計解析を行った結果、糖尿病性腎症の病期の異なるグループ(無症状、ミクロアルブミン尿期、マクロアルブミン尿期)間で有意な差が見られた化合物を19種特定することができた(図2)。これらの内8物質については、標準試薬との比較によって同定することができた。同定された物質はクレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸、ガラクタル酸であった。
同定された各代謝物の濃度と、従来用いられている腎機能を推定する指標との相関を調べた。結果を図3(eGFR(推算糸球体濾過量)との相関)及び図4(UACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)との相関)に示す。全ての代謝物はeGFR及びUACRの両者と有意な相関関係を示し、腎機能低下の推定に適したバイオマーカー候補になると考えられた。アゼライン酸及びガラクタル酸に関しては、他の代謝物と逆相関が見られており、これらの物質は特に特異性の高いバイオマーカーとして有望である。
次に、今回得られたマーカー候補19物質について、各代謝物を単独で用いた際の糖尿病性腎症無発症患者とアルブミン尿期患者(ミクロアルブミン、マクロアルブミン尿期の両方を含む)の診断能について評価した(図5)。代謝物を単独で用いた場合であってもAUC値は0.765(ID 202)〜0.643(シトルリン)であり、糖尿病性腎症の有無を判別することが可能であった。
さらに鑑別能を上げるため、多変量解析手法の一つである多重ロジスティック回帰分析を行い、これらのマーカー候補を複数個組み合わせたモデルを作成した。5種のバイオマーカー候補を用いて多重ロジスティック回帰分析を行った結果を図6に、その際のモデルの変数を図7にそれぞれ示す。同様に、同定できた代謝物4種を用いて行った結果を図8に、その際のモデルの変数を図9にそれぞれ示す。このように、複数個のマーカー候補を組み合わせた結果、鑑別能が向上した。
以上の通り、糖尿病性腎症の鑑別に有効な19種の血中代謝物を特定することに成功した。これらは単独でも糖尿病性腎症の病期の鑑別(判定)に有用である。特に、糖尿病性腎症を発症している患者の抽出(即ち糖尿病性腎症の発症のスクリーニング)に有用である。一方、図6〜図9に示したように、鑑別能の向上のためには二以上を併用するとよい。尚、組合せの具体例とその鑑別能を図10に示す。
本発明の鑑別用マーカーによれば糖尿病性腎症の早期診断が可能になる。本発明の鑑別用マーカーは、特に、糖尿病性腎症無発症の患者と糖尿病性腎症の患者の識別に有用である。本発明の鑑別用マーカーによれば、発症後の早い段階で、糖尿病性腎症を発症している患者を特定・抽出することができる。また、本発明の鑑別用マーカーを利用すれば血液検査のみで(即ち、尿検査や医師による所見がなくとも)一定の結果を得ることができるため、簡便であり、患者の負担も少ない。本発明の鑑別用マーカーを用いた鑑別法が提供する情報は、糖尿病性腎症の病期・病態の把握、より適切な治療方針の決定等に有用である。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (6)

  1. 以下の(1)の組合せ、(3)の組合せ、(4)の組合せ、(5)の組合せ、(6)の組合せ、(7)の組合せ、(8)の組合せ、(9)の組合せ、(10)の組合せ、(11)の組合せ、(12)の組合せ、(13)の組合せ、(14)の組合せ、(15)の組合せ、(16)の組合せ、(17)の組合せ、(18)の組合せ、(19)の組合せ、(20)の組合せ、(21)の組合せ、(22)の組合せ、又は(23)の組合せからなる、糖尿病性腎症鑑別用マーカー、
    (1)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (3)アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (4)クレアチニン、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (5)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (6)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (7)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (8)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (9)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン及びガラクタル酸
    (10)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン及びアゼライン酸
    (11)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (12)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (13)クレアチニン、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン及びアゼライン酸
    (14)γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (15)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA及びアゼライン酸
    (16)アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (17)クレアチニン、シトルリン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (18)γ−ブチロベタイン、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (19)クレアチニン、シトルリン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (20)クレアチニン、アスパラギン酸、SDMA及びガラクタル酸
    (21)アスパラギン酸、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (22)クレアチニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (23)SDMA及びガラクタル酸。
  2. 以下の(1)の組合せ、(4)の組合せ、(5)の組合せ、(6)の組合せ、(7)の組合せ、(10)の組合せ、(11)の組合せ、(12)の組合せ、又は(16)の組合せからなる、糖尿病性腎症鑑別用マーカー、
    (1)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (4)クレアチニン、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (5)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (6)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (7)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (10)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン及びアゼライン酸
    (11)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (12)クレアチニン、アスパラギン酸、シトルリン、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸
    (16)アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、SDMA、アゼライン酸及びガラクタル酸。
  3. 以下の(1)の組合せからなる、糖尿病性腎症鑑別用マーカー、
    (1)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA、キヌレニン、アゼライン酸及びガラクタル酸。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のマーカーの量を指標とした糖尿病性腎症鑑別を補助する方法であって、以下のステップ(1)及び(2)を含む、方法
    (1)血液サンプル中の前記マーカーを測定するステップ;
    (2)クレアチニン、アスパラギン酸、γ−ブチロベタイン、シトルリン、SDMA及びキヌレニンでは血中での量の増加が糖尿病性腎症の発症及び病期の進行の指標となり、アゼライン酸及びガラクタル酸では血中での量の減少が糖尿病性腎症の発症及び病期の進行の指標となるステップ。
  5. ステップ(1)の測定にキャピラリー電気泳動−質量分析装置を用いる、請求項4に記載の方法
  6. 以下の(a)〜(c)のいずれかの鑑別の補助に用いる、請求項4又は5に記載の方法
    (a)糖尿病性腎症無発症と、糖尿病性腎症との鑑別;
    (b)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別;
    (c)糖尿病性腎症無発症と、ミクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症と、マクロアルブミン尿を認める糖尿病性腎症との鑑別。
JP2012171406A 2012-08-01 2012-08-01 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途 Active JP6128631B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012171406A JP6128631B2 (ja) 2012-08-01 2012-08-01 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012171406A JP6128631B2 (ja) 2012-08-01 2012-08-01 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014032046A JP2014032046A (ja) 2014-02-20
JP6128631B2 true JP6128631B2 (ja) 2017-05-17

Family

ID=50281990

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012171406A Active JP6128631B2 (ja) 2012-08-01 2012-08-01 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6128631B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020138260A1 (ja) 2018-12-26 2020-07-02 学校法人慶應義塾 全身性エリテマトーデスの検出方法
JP7306624B2 (ja) 2019-06-19 2023-07-11 日本製鉄株式会社 鋼板

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3358347B1 (en) 2015-09-30 2020-11-18 Tohoku University Marker for determining diabetic nephropathy
CN111630386A (zh) * 2017-11-17 2020-09-04 学校法人东海大学 糖尿病并发症用标志物

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20060286602A1 (en) * 2004-05-10 2006-12-21 Harald Mischak Method and markers for the diagnosis of renal diseases
US20090325302A1 (en) * 2005-05-05 2009-12-31 Fibrogen, Inc. Diagnostic marker for diabetic vascular complications
ES2532333T3 (es) * 2009-04-27 2015-03-26 Niigata University Uso de megalina en orina como marcador para la detección de nefropatía por IgA
US20120129265A1 (en) * 2009-06-02 2012-05-24 Biocrates Life Sciences Ag New biomarkers for assessing kidney diseases
WO2011027573A1 (ja) * 2009-09-04 2011-03-10 国立大学法人東北大学 ヒトにおける新たな腎疾患マーカー物質

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020138260A1 (ja) 2018-12-26 2020-07-02 学校法人慶應義塾 全身性エリテマトーデスの検出方法
JP7306624B2 (ja) 2019-06-19 2023-07-11 日本製鉄株式会社 鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014032046A (ja) 2014-02-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6851096B2 (ja) 乳癌検出用唾液バイオマーカー、及び、これを用いた乳癌患者を健常者から識別するための方法
Molin et al. A comparison between MALDI-MS and CE-MS data for biomarker assessment in chronic kidney diseases
JP6595984B2 (ja) 腎機能に関連付けられるバイオマーカーおよびそれを使用する方法
US20050101023A1 (en) Methods for diagnosing urinary tract and prostatic disorders
CN111289736A (zh) 基于代谢组学的慢阻肺早期诊断标志物及其应用
WO2011139914A1 (en) Metabolic biomarkers of autism
US8927221B2 (en) Diagnostic marker for kidney diseases and use thereof
US8653006B2 (en) Metabolite biomarkers for the detection of esophageal cancer using NMR
WO2005027733A2 (en) Biological markers for diagnosing multiple sclerosis
CN111562338B (zh) 透明肾细胞癌代谢标志物在肾细胞癌早期筛查和诊断产品中的应用
WO2015179952A1 (en) A metabolite panel for improved screening and diagnostic testing of cystic fibrosis
Liang et al. Metabolomics of alcoholic liver disease: a clinical discovery study
CN110057954B (zh) 血浆代谢标志物在诊断或监测hbv的应用
JP6128631B2 (ja) 糖尿病性腎症鑑別用マーカー及びその用途
Liang et al. Serum metabolomics uncovering specific metabolite signatures of intra-and extrahepatic cholangiocarcinoma
Kentsis Challenges and opportunities for discovery of disease biomarkers using urine proteomics
Stalmach et al. Methods in capillary electrophoresis coupled to mass spectrometry for the identification of clinical proteomic/peptidomic biomarkers in biofluids
JP5867834B2 (ja) 肺癌マーカー補体C3dg分子及び肺癌マーカーの分析方法
WO2020138260A1 (ja) 全身性エリテマトーデスの検出方法
JP5832429B2 (ja) 慢性腎臓病の病期を判定する方法又は装置若しくはその作動方法
EP2904404A1 (en) Method for aiding diagnosis of alzheimer&#39;s disease
WO2023210683A1 (ja) 腎機能低下リスクの評価方法
CN116183924B (zh) 用于肝癌风险预测的血清代谢标志物及其筛选方法和应用
EP3373007A1 (en) Biomarkers for diagnosis and progression of primary progressive multiple sclerosis (ppms)
CN116165385B (zh) 用于肝癌诊断的血清代谢标志物及其筛选方法和应用

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150622

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160411

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160413

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160928

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170131

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170403

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170407

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6128631

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250