まず、構成を説明する。
実施例1の副変速機付き無段変速機(車両用変速機の一例)の制御装置を、「全体システム構成」、「変速マップによる変速制御構成」、「ロックアップクラッチへの油圧回路構成」、「コーストストップ制御構成」、「コーストストップ対応変速機制御構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用された副変速機付き無段変速機が搭載された車両の概略構成を示し、図2は、変速機コントローラの内部構成を示す。以下、図1及び図2に基づき、全体システム構成を説明する。
なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最ロー変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最ハイ変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
前記副変速機付き無段変速機が搭載された車両は、動力源として、エンジン始動用のスタータモータ15を有するエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ9を有するトルクコンバータ2、リダクションギア対3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、ファイナルギア対5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。ファイナルギア対5には、駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
また、車両には、エンジン1の動力により駆動されるメカオイルポンプ10と、メカオイルポンプ10からの吐出圧を調圧して変速機4の各部位及びロックアップクラッチ9に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12と、統合コントローラ13と、エンジンコントローラ14と、が設けられている。以下、各構成について説明する。
前記変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30とを備える。ここで、「直列に設けられる」とは、動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギア列)を介して接続されていてもよい。
前記バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21,22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21,22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され、固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させるプライマリ油圧シリンダ23aとセカンダリ油圧シリンダ23bを備える。プライマリ油圧シリンダ23aとセカンダリ油圧シリンダ23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
前記副変速機構30は、前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニヨ型遊星歯車機構31と、ラビニヨ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33、リバースブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。例えば、ローブレーキ32を締結し、ハイクラッチ33とリバースブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。ハイクラッチ33を締結し、ローブレーキ32とリバースブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、リバースブレーキ34を締結し、ローブレーキ32とハイクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。なお、以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
前記ロックアップクラッチ4は、運転状態や車両状態に応じてロックアップ状態(締結)と、アンロックアップ状態(解放)と、スリップロックアップ状態(スリップ締結)と、の切り替え制御を行う。この切り替え制御と、ロックアップ状態やスリップロックアップ状態でのロックアップクラッチ係合力制御(ロックアップクラッチ容量制御)は、変速機4側とエンジン1側のロックアップクラッチ前後室におけるトルクコンバータ供給圧Paと、トルクコンバータ解放圧Prと、の差圧制御により行う。
前記変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
前記入力インターフェース123には、アクセルペダルの踏み込み開度(以下、「アクセル開度APO」という。)を検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度または変速機4の回転要素の回転速度、以下、「プライマリ回転数Npri」という。)を検出する回転数センサ42(変速機回転速度センサ)の出力信号、車両の走行速度(以下、「車速VSP」という。)を検出する車速センサ43の出力信号、変速機4のライン圧(以下、「ライン圧PL」という。)を検出するライン圧センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、などが入力される。
前記記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図3)が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を、出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
前記油圧制御回路11は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換える。つまり、メカオイルポンプ10で発生した吐出圧からライン圧PLを調圧し、さらに、ライン圧PLを元圧として調圧されたプーリ圧やクラッチ圧を変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
また、ライン圧PLを調圧するときの排出油に基づき調圧されたトルクコンバータ圧PT/Cをロックアップクラッチ9に供給する。これにより、ロックアップクラッチ9の締結・スリップ締結・解放が制御される。
前記統合コントローラ13は、変速機コントローラ12による変速機制御やエンジンコントローラ14によるエンジン制御などが適切に担保されるように、複数の車載コントローラの統合管理を行う。この統合コントローラ13は、変速機コントローラ12やエンジンコントローラ14などの車載コントローラとCAN通信線25を介して情報交換が可能に接続されている。
前記エンジンコントローラ14は、コースト減速時からエンジン1を停止するコーストストップ制御、停車時にエンジン1を停止するアイドルストップ制御、スタータモータ15を用いたエンジン始動制御、などを行う。このエンジンコントローラ14には、エンジン1の回転数(以下、「エンジン回転数Ne」という。)を検出するエンジン回転数センサ46の出力信号、などが入力される。
[変速マップによる変速制御構成]
図3は、変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示す。以下、図3に基づき、変速マップによる変速制御構成を説明する。
前記変速機4の動作点は、図3に示す変速マップ上で車速VSPとプライマリ回転速度Npriに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに、副変速機構30の変速比subRatioを掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比Ratio」という。)を表している。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、図3には簡単のため、全負荷線F/L(アクセル開度APO=8/8のときの変速線)、パーシャル線P/L(アクセル開度APO=4/8のときの変速線)、コースト線C/L(アクセル開度APO=0のときの変速線)のみが示されている。
前記変速機4が低速モードのときには、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最ロー線LL/Lと、バリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最ハイ線LH/Lと、の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードのときには、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最ロー線HL/Lと、バリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最ハイ線HH/Lと、の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
前記副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最ハイ線LH/Lに対応する変速比(低速モード最ハイ変速比)が高速モード最ロー線HL/Lに対応する変速比(高速モード最ロー変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとり得る変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲LREと、高速モードでとり得る変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲HREと、が部分的に重複する。変速機4の動作点が高速モード最ロー線HL/Lと低速モード最ハイ線LH/Lで挟まれるB領域(重複領域)にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
前記変速機コントローラ12は、この変速マップを参照して、車速VSP及びアクセル開度APO(車両の運転状態)に対応するスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioとして設定する。この到達スルー変速比DRatioは、当該運転状態でスルー変速比Ratioが最終的に到達すべき目標値である。そして、変速機コントローラ12は、スルー変速比Ratioを所望の応答特性で到達スルー変速比DRatioに追従させるための過渡的な目標値である目標スルー変速比tRatioを設定し、スルー変速比Ratioが目標スルー変速比tRatioに一致するようにバリエータ20及び副変速機構30を制御する。
前記変速マップ上には、副変速機構30のアップ変速を行うモード切換アップ変速線MU/L(副変速機構30の1→2アップ変速線)が、低速モード最ハイ線LH/L上に略重なるように設定されている。モード切換アップ変速線MU/Lに対応するスルー変速比Ratioは、低速モード最ハイ変速比LH/Lに略等しい。また、変速マップ上には、副変速機構30のダウン変速を行うモード切換ダウン変速線MD/L(副変速機構30の2→1ダウン変速線)が、高速モード最ロー線HL/L上に略重なるように設定されている。モード切換ダウン変速線MD/Lに対応するスルー変速比Ratioは、高速モード最ロー変速比HL/Lに略等しい。
そして、変速機4の動作点がモード切換アップ変速線MU/L又はモード切換ダウン変速線MD/Lを横切った場合、すなわち、変速機4の目標スルー変速比tRatioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合やモード切換変速比mRatioと一致した場合には、変速機コントローラ12はモード切換変速制御を行う。このモード切換変速制御では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比subRatioが変化する方向と逆の方向に変化させるというように2つの変速を協調させる「協調制御」を行う。
前記「協調制御」では、変速機4の目標スルー変速比tRatioがモード切換アップ変速線MU/LをB領域側からC領域側に向かって横切ったときや、B領域側からモード切換アップ変速線MU/Lと一致した場合に、変速機コントローラ12は、1→2アップ変速判定を出し、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更するするとともに、バリエータ20の変速比vRatioを最ハイ変速比からロー変速比に変化させる。逆に、変速機4の目標スルー変速比tRatioがモード切換ダウン変速線MD/LをB領域側からA領域側に向かって横切ったときや、B領域側からモード切換ダウン変速線MD/Lと一致した場合、変速機コントローラ12は、2→1ダウン変速判定を出し、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを最ロー変速比からハイ変速比側に変化させる。
前記モード切換アップ変速時又はモード切換ダウン変速時において、バリエータ20の変速比vRatioを変化させる「協調制御」を行う理由は、変速機4のスルー変速比Ratioの段差により生じる入力回転数の変化に伴う運転者の違和感を抑えることができるとともに、副変速機構30の変速ショックを緩和することができるからである。
[ロックアップクラッチへの油圧回路構成]
次に、ロックアップクラッチ9への油圧回路構成を、図4に基づき説明する。
前記ロックアップクラッチ4は、トルクコンバータ2に設けられ、ロックアップクラッチ前後室へのトルクコンバータ供給圧Paとトルクコンバータ解放圧Prは、エンジン1により駆動されるメカオイルポンプ10からの吐出圧に基づき油圧制御回路11により作り出される。この油圧制御回路11には、ライン圧制御回路111と、ロックアップ油圧制御回路112と、を有する。
前記ライン圧制御回路111は、プレッシャレギュレータバルブ111aと、ライン圧ソレノイド111bと、ライン圧油路111c(油路)と、を有する。
前記ロックアップ油圧制御回路112は、トルクコンバータレギュレータバルブ112aと、ロックアップコントロールバルブ112bと、ロックアップソレノイド112cと、トルクコンバータ油路112dと、潤滑油路112eと、供給圧油路112fと、解放圧油路112gと、を有する。このロックアップ油圧制御回路112は、図4に示すように、ライン圧制御回路111の下流位置に設けられている。
前記プレッシャレギュレータバルブ111aは、ポンプ吐出圧からライン圧PLを調圧するバルブである。プレッシャレギュレータバルブ111aの一端側にライン圧ソレノイド111bにて作り出される作動信号圧等が作用し、他端側にフィードバック圧が作用する。そして、プレッシャレギュレータバルブ111aは、メカオイルポンプ10からのライン圧油路111c(油路)に設けられている。また、プレッシャレギュレータバルブ111aは、ライン圧PLを調圧するときの排出油を、トルクコンバータ油路112dに排出する。
前記ライン圧ソレノイド111bは、パイロット圧Ppを元圧とし、変速機コントローラ12からの指示値によるソレノイド力を作動信号圧とし、プレッシャレギュレータバルブ111aへの作動信号圧を作り出すソレノイドである。
なお、ライン圧油路111cは、直接的または図外のコントロールバルブやソレノイドバルブやピストン等を介して間接的に、プライマリ油圧室23a、セカンダリ油圧室23b、ローブレーキ32、ハイクラッチ33及びリバースブレーキ34と接続されている。
前記トルクコンバータレギュレータバルブ112aは、トルクコンバータ油路112dを介して得られるライン圧PLを調圧するときの排出油から、トルクコンバータ圧PT/Cを調圧するバルブである。トルクコンバータレギュレータバルブ112aの一端側にバネ(図示略)等が作用し、他端側にフィードバック圧が作用する。また、トルクコンバータレギュレータバルブ112aは、トルクコンバータ圧PT/Cを調圧するときの排出油を、潤滑油路112eに排出する。その排出油は、潤滑油路112eを介してパワートレーン等の潤滑LUBに用いられる。また、トルクコンバータレギュレータバルブ112aに接続されている潤滑油路112eは、ロックアップコントロールバルブ112bに接続されている。
前記ロックアップコントロールバルブ112bは、トルクコンバータ油路112dを介して供給されるトルクコンバータ圧PT/Cを元圧とし、ロックアップソレノイド112cにて作り出されるソレノイド力を作動信号圧とし、トルクコンバータ供給圧Paとトルクコンバータ解放圧Prの差圧ΔPを作り出すバルブである。また、ロックアップコントロールバルブ112bは、トルクコンバータレギュレータバルブ112aから延びる潤滑油路112eとは別の潤滑油路112eにも接続されている。
前記ロックアップソレノイド112cは、トルクコンバータ油路112dを介して供給されるトルクコンバータ圧PT/Cを元圧とし、変速機コントローラ12からのロックアップ指示値PL/U*によるソレノイド力を作動信号圧とし、ロックアップコントロールバルブ112bへの作動信号圧を作り出すソレノイドである。例えば、ロックアップソレノイド112cがオンのときはロックアップ状態となり、オフのときはアンロックアップ状態となる。
ロックアップ状態では、トルクコンバータ圧PT/Cが供給圧油路112fへ供給されることによりトルクコンバータ供給圧Paが徐々に高くなり、トルクコンバータ解放圧Prが解放圧油路112gとロックアップコントロールバルブ112bを介して潤滑油路112eへ排出される。これにより、トルクコンバータ供給圧Paと、トルクコンバータ解放圧Prと、の差圧が大きくなり、ロックアップクラッチ9が締結される。つまり、エンジン1と変速機4が直結する。
アンロックアップ状態では、トルクコンバータ圧PT/Cが解放圧油路112gへ供給されることによりトルクコンバータ解放圧Prが徐々に高くなり、ロックアップクラッチ9が解放される。また、供給されたトルクコンバータ圧PT/Cは供給圧油路112fとロックアップコントロールバルブ112bを介して潤滑油路112eへ排出される。これにより、トルクコンバータ供給圧Paと、トルクコンバータ解放圧Prと、の差圧が小さくなり、ロックアップクラッチ9が解放される。つまり、エンジン1と変速機4が流体継手によって接続される。
[コーストストップ制御構成]
実施例1のエンジンコントローラ14は、燃料消費量をできる限り抑制するために、車両停止中にエンジン1を停止する「アイドルストップ制御」に加えて、車両のコースト走行中(惰性走行中)からエンジン1を停止する「コーストストップ制御」を行う。
前記「コーストストップ制御」は、低車速域で車両がコースト走行している間、エンジン1を自動的に停止させて燃料消費量を抑制する制御である。なお、「コーストストップ制御」とアクセルオフ(アクセル足離し)時に実行される「燃料カット制御」は、エンジン1への燃料供給を停止する点で共通する。しかしながら、通常の「燃料カット制御」は、比較的高速走行時において実行され、かつ、エンジンブレーキを確保するためにトルクコンバータ2のロックアップクラッチ9が係合されている。これに対し、「コーストストップ制御」は、車両停止直前の比較的低速でのコースト走行時に実行され、ロックアップクラッチ9を解放状態としてエンジン1の回転を停止させる点において相違する。
前記「コーストストップ制御」を実行するにあたって、エンジンコントローラ14は、例えば、以下に示す条件(a)〜(e)を判断する。
(a):アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
(b):ブレーキペダルが踏み込まれている(図示しないブレーキセンサがON)
(c):車速VSPが所定の低車速(例えば、15km/h)以下
(d):ロックアップクラッチ9が解放(例えば、車速13km/h)されている
(e):ハイクラッチ33の締結による高速モード(2速)が選択されている
なお、これらの条件(a)〜(e)は、言い換えると運転者に停車意図があることを判断する条件である。
前記エンジンコントローラ14は、コーストストップ制御の開始条件(a)〜(e)の全てが成立すると、エンジン1への燃料の供給を停止して、エンジン1の回転を停止させるコーストストップ制御の実行を開始する。これと同時に、コーストストップ制御の実行をあらわすコーストストップ制御中フラグCS/FLGを立て(CS/FLG=1)、統合コントローラ13と変速機コントローラ12へ出力する。なお、コーストストップ制御中、アクセル踏み込操作やブレーキ解除操作があり、(a)又は(b)の条件が不成立になると、これを終了条件として、コーストストップ制御を終了し、コーストストップ制御中フラグCS/FLGを降ろす(CS/FLG=0)。
このコーストストップ制御が開始されると、エンジン1の駆動力によって油圧を発生させるメカオイルポンプ10もエンジン回転数の低下に伴って漸次停止し、メカオイルポンプ10からの吐出圧が油圧制御回路11に供給されなくなる。一方、エンジン1の停止中であっても、本来、バリエータ20の各プーリによるベルトの挟持力及び副変速機構30の摩擦締結要素の締結に油圧が必要である。このために、例えば、特開2013-204722号公報に記載されているように、オイルポンプとして、エンジン駆動のメカオイルポンプ以外に、エンジン停止中の油圧を補填する電動オイルポンプを搭載している。これに対し、実施例1では、主にシステムコスト低減を理由として電動オイルポンプを廃止し、メカオイルポンプ10のみを搭載したシステムとしているため、油圧が確保されないエンジン低回転〜停止領域において、コーストストップ対応変速機制御を行う必要が生じる。そこで、コーストストップ制御中フラグやエンジン回転数Neなどの入力情報に基づき、変速機コントローラ12側にてコーストストップ対応変速機制御を行うようにしている。
前記コーストストップ制御の開始条件には、上記のように、高速モード選択条件(e)が含まれるため、コーストストップ制御を開始するとき、締結されているハイクラッチ33が解放される。一方、車両停止状態にてコーストストップ制御を終了すると、低速モードでの最ロー変速比により発進するため、ローブレーキ32が発進クラッチとして締結される。なお、コーストストップ制御の開始条件には、高速モード選択条件(e)が含まれるため、走行中にローブレーキ32が締結されていると、コーストストップ制御は開始されない。このような状態で停車すると、アイドルストップ制御が実施される。アイドルストップ制御の場合、車両停止を条件として制御が開始されるため、停車後に、低速モードの選択により締結されているローブレーキ32が解放される。そして、アイドルストップ制御を終了すると、コーストストップ制御を終了するときと同様に、低速モードでの最ロー変速比により発進するため、ローブレーキ32が発進クラッチとして締結される。
[コーストストップ対応変速機制御構成]
図5〜図7は、実施例1の変速機コントローラ12にて実行されるコーストストップ対応変速機制御処理流れを示す(変速機制御手段)。以下、コーストストップ対応変速機制御処理構成をあらわす図5〜図7の各ステップについて説明する。なお、コーストストップ制御の略称を「CS」といい、アイドルストップ制御の略称を「IS」という。
ステップS1では、コーストストップ制御への入りが許可であるか否かを判断する。YES(CS入り許可)の場合はステップS2へ進み、NO(CS入り不許可)の場合はエンドへ進む。
ここで、CS入り許可の判断は、コーストストップ制御中フラグが、フラグ=0(CS非制御)からフラグ=1(CS制御中)に切り替わったことで行う。なお、エンジン制御側では、コーストストップ制御開始条件が成立すると、燃料噴射をカットし、エンジン1の回転数を低下させた後、エンジン停止状態とするコーストストップ制御の実行が開始される。
ステップS2では、ステップS1でのCS入り許可であるとの判断、或いは、ステップS3でのエンジン回転数>所定値であるとの判断に続き、コーストストップ制御からの抜け判定が有りか否かを判定する。YES(CS抜け判定有り)の場合はステップS9へ進み、NO(CS抜け判定無し)の場合はステップS3へ進む。
ここで、CS抜け判定有りの判断は、コーストストップ制御中フラグが、フラグ=1(CS制御中)からフラグ=0(CS非制御)に切り替わったことで行う。なお、エンジン制御側では、コーストストップ制御終了条件が成立した場合、エンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1000rpm)以上であれば、スタータモータ15を用いることなく、燃料噴射と点火によりエンジン1を再始動(リカバ復帰)させる。エンジン回転数Neが所定回転数(例えば、1000rpm)より低くリカバ復帰できない場合、エンジン回転数Neが十分に低下してから、スタータモータ15を用いてエンジンクランキングを行い、燃料噴射を再開してエンジン1を始動させるスタータ始動が行われる。
ステップS3では、ステップS2でのCS抜け判定無しであるとの判断に続き、エンジン回転数Neが、所定値(例えば、800rpm)以下であるか否かを判断する。YES(Ne≦所定値)の場合はステップS4へ進み、NO(Ne>所定値)の場合はステップS2へ戻る。
ここで、エンジン回転数Neの所定値(所定回転数)は、ハイクラッチ33を解放したときにショック(解放ショック)の発生を抑えつつ、アクセル踏み込み操作介入による再始動に備えることができる回転数に設定される。また、このエンジン回転数Neの所定値(例えば、800rpm)は、エンジン1がリカバ復帰を開始するギリギリの回転数(例えば、1000rpm)でリカバ復帰して、リカバ復帰後に、エンジン回転数Neがアンダーシュートして、この回転数(1000rpm)を下回っても、エンジン1がリカバ復帰したにもかかわらず、ハイクラッチ33を解放しないようにする回転数(800rpm)でもある。
ステップS4では、ステップS3でのNe≦所定値であるとの判断に続き、締結されている(締結した状態での)ハイクラッチ33の解放を開始し、ステップS5へ進む。
ステップS5では、ステップS4でのハイクラッチ解放、或いは、ステップS6でのハイクラッチ完全解放未完了であるとの判断に続き、ステップS2と同様に、コーストストップ制御からの抜け判定が有りか否かを判定する。YES(CS抜け判定有り)の場合はステップS9へ進み、NO(CS抜け判定無し)の場合はステップS6へ進む。
ステップS6では、ステップS5でのCS抜け判定無しであるとの判断に続き、ハイクラッチ33の完全解放が完了したか否かを判断する。YES(ハイクラッチ完全解放完了)の場合はステップS7へ進み、NO(ハイクラッチ完全解放未完了)の場合はステップS5へ戻る。
ステップS7では、ステップS6でのハイクラッチ完全解放完了であるとの判断に続き、CS/IS時変速制御を実行し、ステップS8へ進む。
ここで、CS/IS時変速制御では、
(a) 目標バリエータレシオ固定
(b) 目標スルーレシオ変化量制限無効化
(c) 副変速ギア位置2速→1速
(d) プライマリ電流指示値=CS/IS中指示電流値
による制御が行われる。
ステップS8では、ステップS7でのCS/IS時変速制御、或いは、ステップS8でのCS抜け判定無しであるとの判断に続き、ステップS2やステップS5と同様に、コーストストップ制御からの抜け判定が有りか否かを判定する。YES(CS抜け判定有り)の場合はステップS9へ進み、NO(CS抜け判定無し)の場合はステップS8の判断を繰り返す。
ステップS9では、ステップS2又はステップS5又はステップS8でのCS抜け判定有りであるとの判断に続き、スタータエンジン始動であるか否かを判断する。YES(スタータエンジン始動)の場合はステップS11へ進み、NO(リカバ復帰)の場合はステップS10へ進む。
ここで、スタータエンジン始動であるかリカバ復帰であるかは、CS抜け判定有りの判断タイミングでのエンジン回転数で決まる。例えば、CS抜け判定があった時に、所定回転数(1000rpm)以上のエンジン回転数Neが保たれている場合は、燃料噴射と点火によりリカバ復帰できるが、エンジン回転数Neが所定回転数(1000rpm)未満まで低下すると、スタータモータ15を用いたスタータ始動となる。
ステップS10では、ステップS9でのリカバ復帰であるとの判断に続き、ハイクラッチ33の締結中以外か否かが判断される。YES(クラッチ締結中以外)の場合はステップS11へ進み、NO(クラッチ締結中)の場合はステップS26へ進む。
ここで、クラッチ締結中以外とは、ハイクラッチ33の状態が完全締結状態(ハイクラッチ33が滑っていない状態)をいう。
ステップS11では、ステップS9でのスタータエンジン始動であるとの判断、或いは、ステップS10でのクラッチ締結中以外であるとの判断に続き、解放されるハイクラッチ33へのクラッチ油圧指示値が、クラッチ油圧指示値=0MPaであるか否かを判断する。YES(クラッチ油圧指示値=0MPa)の場合はステップS13へ進み、NO(クラッチ油圧指示値≠0MPa)の場合はステップS12へ進む。
ステップS12では、ステップS11でのクラッチ油圧指示値≠0MPaであるとの判断に続き、解放されるハイクラッチ33へのクラッチ油圧指示値PH/C*を、クラッチ油圧指示値=0MPaに切り替え、ステップS13へ進む。
ステップS13では、ステップS11でのクラッチ油圧指示値=0MPaであるとの判断、或いは、ステップS12でのクラッチ油圧指示値=0MPaへの切り替えに続き、プライマリ電流指示値PriSOL/I*を、1A(1アンペア)にするとともに、クラッチ油圧指示値PL/B*を、0MPaからストローク開始圧程度指示値に変更し、ステップS14へ進む。
ここで、1Aというプライマリ電流指示値PriSOL/I*は、プライマリソレノイドへ供給される基圧がない状態において、プライマリソレノイドのバネ付勢力に抗してプライマリ油圧シリンダ23aへの油圧回路を閉じることができる電流指示値である。
ステップS14では、ステップS13でのプライマリ電流指示値PriSOL/I*の設定とクラッチ油圧指示値PL/B*の変更に続き、エンジン回転数Neが所定値(所定エンジン回転数、例えば、500rpm)以上であるか否かを判断する。YES(Ne≧500rpm)の場合はステップS15へ進み、NO(Ne<500rpm)の場合はステップS14の判断を繰り返す。
ここで、エンジン回転数Neの所定値は、エンジン駆動のメカオイルポンプ10が、ローブレーキ32を締結する油圧制御が可能なライン圧PLを発生することができる回転数に設定される。
ステップS15では、ステップS14でのNe≧500rpmであるとの判断、或いは、ステップS16でのタイマ値<所定値であるとの判断に続き、ライン圧センサ44により検出される実ライン圧PLが所定値(所定ライン圧、例えば、0.5MPa)以上であるか否かを判断する。YES(PL≧所定値)の場合はステップS17へ進み、NO(PL<所定値)の場合はステップS16へ進む。
ステップS16(タイマカウント手段)では、ステップS15でのPL<所定値であるとの判断に続き、Ne≧500rpmと判断された時点から起動され、時間の経過とともに加算されるタイマ値が、所定値(所定タイマ値)以上であるか否かを判断する。YES(タイマ値≧所定値)の場合はステップS161へ進み、NO(タイマ値<所定値)の場合はステップS15へ戻る。
ステップS161(ライン圧系故障診断手段)では、ステップS16でのタイマ値≧所定値であるとの判断に続き、解放されているロックアップクラッチ9のロックアップクラッチ9締結指令をロックアップ油圧制御回路112(ロックアップソレノイド112c)へ出力し、ステップS162へ進む。
ここで、「ライン圧系」とは、ライン圧センサ44と、ライン圧制御回路111に、メカオイルポンプ10を含めたものである。
ステップS162(ライン圧系故障診断手段)では、ステップS161でのロックアップクラッチ9締結指令をロックアップ油圧制御回路112へ出力することに続き、駆動系の回転速度であるプライマリ回転数Npriの変化に基づき、ロックアップクラッチ9が作動したか否かを判定する。すなわち、プライマリ回転数Npriが上昇したか否かを判定する。YES(ロックアップクラッチ9作動状態、プライマリ回転数Npriが上昇した)の場合はステップS163へ進み、NO(ロックアップクラッチ9非作動状態、プライマリ回転数Npriが上昇しない)の場合はエンドへ進む。ステップS163(ライン圧系故障診断手段)では、ステップS162でのロックアップクラッチ9が作動したとの判定に続き、ロックアップクラッチ9の解放指令をロックアップ油圧制御回路112へ出力しステップS17へ進む。
ここで、「ロックアップクラッチ9作動状態」とは、ライン圧制御回路111等は故障していなく、ライン圧センサ44故障と診断された場合である。すなわち、副変速機付き無段変速機の油圧制御が可能である。反対に、「ロックアップクラッチ9非作動状態」とは、ライン圧制御回路111故障と診断された場合である。すなわち、副変速機付き無段変速機の油圧制御が困難である。
ステップS17では、ステップS15でのPL≧所定値であるとの判断、或いは、ステップS161でのロックアップクラッチ9作動状態であるとの判断に続き、プライマリ電流指示値PriSOL/I*として出力していた1A(1アンペア)を解除するとともに、クラッチ油圧指示値PL/B*を、ストローク開始圧程度指示値から油圧充填指示値に変更し、ステップS18へ進む。このプライマリ電流指示値PriSOL/I*の1A(1アンペア)の解除により、プライマリプーリ21のプライマリ油圧シリンダ23aには、目標油圧に基づいた油圧が供給されるようになる。
ステップS18では、ステップS17でのプライマリ電流指示値PriSOL/I*の解除とクラッチ油圧指示値PL/B*の変更に続き、再発進時に締結されるローブレーキ32への油圧充填が完了したか否かを判断する。YES(油圧充填完了)の場合はステップS19へ進み、NO(油圧充填未完了)の場合はステップS18の判断を繰り返す。
ステップS19では、ステップS18での油圧充填完了であるとの判断に続き、ステップS7にて固定された目標バリエータレシオのレシオ固定をクリアし、ステップS20へ進む。
ステップS20では、ステップS19での目標バリエータレシオ固定クリアに続き、ライン圧センサ44により検出される実ライン圧PLに基づき、ローブレーキ32へのクラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxを演算し、ステップS21へ進む。
ここで、クラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxは、バリエータ20のベルト容量Tを、実ライン圧PLに基づき算出し、このベルト容量算出値T(PL)から所定のマージン分αを差し引いた、
PL/B*max=T(PL)−α
の式により演算される。
ステップS21では、ステップS20でのクラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxの演算に続き、発進クラッチであるローブレーキ32の後述するクラッチ締結指示油圧による締結を開始し、ステップS22へ進む。
ステップS22では、ステップS21でのクラッチ締結開始、或いは、ステップS25でのクラッチ締結未完了であるとの判断に続き、発進クラッチであるローブレーキ32へのクラッチ油圧指示値PL/B*が、クラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*max未満であるか否かを判断する。YES(クラッチ油圧指示値<クラッチ油圧指示値上限規制値)の場合はステップS23へ進み、NO(クラッチ油圧指示値≧クラッチ油圧指示値上限規制値)の場合はステップS24へ進む。
ステップS23では、ステップS22でのクラッチ油圧指示値<クラッチ油圧指示値上限規制値であるとの判断に続き、クラッチ油圧指示値PL/B*を、クラッチ締結指示油圧とし、ステップS25へ進む。
ここで、クラッチ締結指示油圧は、
クラッチ締結指示油圧=τNe2×t×ギア比+(回転低下に必要なトルク)
の式にて求められる。
なお、“τ”はトルク容量係数であり、“t”はトルク比であり、“τNe2×t”はタービントルクをあらわす。“ギア比”はリダクションギア比であり、“回転低下に必要なトルク”は、バリエータ20のイナーシャトルクに相当する。
ステップS24では、ステップS22でのクラッチ油圧指示値≧クラッチ油圧指示値上限規制値であるとの判断に続き、クラッチ油圧指示値PL/B*を、クラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxとし、ステップS25へ進む。
ステップS25では、ステップS23又はステップS24でのクラッチ油圧指示値PL/B*の設定に続き、発進クラッチであるローブレーキ32の締結が完了したか否かを判断する。YES(クラッチ締結完了)の場合はステップS26へ進み、NO(クラッチ締結未完了)の場合はステップS22へ戻る。
ステップS26では、ステップS25でのクラッチ締結完了であるとの判断、或いは、ステップS10でのクラッチ締結中であるとの判断に続き、クラッチ油圧指示値PL/B*を、クラッチ締結維持指示油圧とし、エンドへ進む。
次に、作用を説明する。
実施例1の副変速機付き無段変速機の制御装置における作用を、「コーストストップ対応変速機制御の全体作用」、「ライン圧系故障診断作用」に分けて説明する。
[コーストストップ対応変速機制御の全体作用]
図8は、コーストストップ対応変速機制御によるタイムチャートを示す。以下、図5〜図8に基づき、コーストストップ対応変速機制御の全体作用を説明する。
コーストストップ制御条件の成立後、アクセル操作などの介入により車両停止前にCS抜けをすることなく、コーストストップ制御からアイドルストップへ移行し、その後、車両が発進する場合には、図5〜図7に示すフローチャートにおいて、下記のように進む。
コーストストップ制御への入り許可であり、かつ、コーストストップ制御からの抜け判定が無しのとき、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3にてエンジン回転数Neが所定値を超えている間、ステップS2→ステップS3へと進む流れが繰り返される。そして、ステップS3にてエンジン回転数Neが所定値以下になったと判断されると、ステップS3からステップS4へと進み、ステップS4では、締結されているハイクラッチ33の解放が開始される。ハイクラッチ33の解放中、コーストストップ制御からの抜け判定が無いと、ステップS4からステップS5→ステップS6へと進み、ハイクラッチ33が完全解放を完了するまでの間、テップS5→ステップS6へと進む流れが繰り返される。
ステップS6にてハイクラッチ33の完全解放が完了したと判断されると、ステップS7へ進み、ステップS7では、
(a) 目標バリエータレシオ固定
(b) 目標スルーレシオ変化量制限無効化
(c) 副変速ギア位置2速→1速
(d) プライマリ電流指示値=CS/IS中指示電流値
によるCS/IS時変速制御が実行される。このCS/IS時変速制御は、ステップS8にてCS抜け判定有りと判断されるまで継続して実行される。
エンジン停止で停車している状況、つまり、リカバ復帰ではなくスタータ始動が行われる状況においてステップS8にてCS抜け判定有りと判断されると、ステップS9→ステップS11→ステップS13へと進む。ステップS13では、プライマリ電流指示値PriSOL/I*が、1A(1アンペア)にされるとともに、クラッチ油圧指示値PL/B*が、0MPaからストローク開始圧程度指示値に変更される。次のステップS14では、エンジン回転数Neが所定値以上であるか否かが判断される。そして、スタータ始動によりエンジン回転数Neが所定値以上になると、ステップS14からステップS15→ステップS17、或いは、ステップS14からステップS15→ステップS16→ステップS161→ステップS162→ステップS17へと進む。ステップS17では、プライマリ電流指示値PriSOL/I*として出力していた1A(1アンペア)が解除されるとともに、クラッチ油圧指示値PL/B*が、ストローク開始圧程度指示値から油圧充填指示値に変更される。次のステップS18では、再発進時に締結されるローブレーキ32への油圧充填が完了したか否かが判断され、ローブレーキ32への油圧充填が完了すると、ステップS19へ進み、ステップS19では、ステップS7にて目標バリエータレシオの固定がクリアされる。
ローブレーキ32への油圧充填が完了し、目標バリエータレシオの固定がクリアされると、ステップS20へ進み、ステップS20では、ライン圧センサ44により検出される実ライン圧PLに基づき、ローブレーキ32へのクラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxが演算される。そして、次のステップS21では、発進クラッチであるローブレーキ32の締結が開始される。ローブレーキ32の締結開始後、クラッチ油圧指示値<クラッチ油圧指示値上限規制値である間は、ステップS22→ステップS23→ステップS25へと進む流れが繰り返され、ステップS23では、クラッチ油圧指示値PL/B*が、クラッチ締結指示油圧とされる。一方、ローブレーキ32の締結開始後、クラッチ油圧指示値≧クラッチ油圧指示値上限規制値になると、ステップS22→ステップS24→ステップS25へと進む流れが繰り返され、ステップS24では、クラッチ油圧指示値PL/B*が、クラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxとされる。そして、ステップS25にて、発進クラッチであるローブレーキ32の締結が完了したと判断されると、ステップS25からステップS26へ進み、ステップS26では、クラッチ油圧指示値PL/B*が、クラッチ締結維持指示油圧とされ、エンドへ進んでコーストストップ対応変速機制御を終了する。
図8に示すタイムチャートにおいて、時刻t0はCS入り許可判定時刻、時刻t1はハイクラッチ解放開始時刻、時刻t2はクラッチ完全解放完了時刻、時刻t3は車両停止時刻、時刻t4はCS抜け判定時刻、時刻t5はストローク開始圧指示終了時刻、時刻t6は充填油圧指示終了時刻である。そして、時間T1はクラッチ解放時間、時間T2はクラッチ解放維持時間、時間T3はクラッチ元圧立ち上がり待ち時間、時間T4はクラッチ油圧充填時間、時刻T5はクラッチ締結時間である。
すなわち、時刻t0にてCS入り許可判定がなされると、エンジン回転数Neの低下を監視し、ハイクラッチ油圧PH/Cの特性に示すように、エンジン回転数Neが所定値以下となる時刻t1(矢印D点)からハイクラッチ33の解放を開始する。そして、時刻t2になるとハイクラッチ33の完全解放を完了する。このように、時刻t1から時刻t2までの時間がクラッチ解放時間T1となる。
クラッチ完全解放完了時刻t2になると、車両停止時刻t3を経過し、CS抜け判定時刻t4になるまでをクラッチ解放維持時間T2とし、CS/IS時変速制御が実行される。CS/IS時変速制御が実行されると、副変速ギア位置2速→1速に切り替えられ、クラッチ解放維持時間T2の間、プライマリ電流指示値PriSOL/I*が、IS/CS中油圧指示値(=0A)とされる。また、目標バリエータレシオが固定され、目標スルーレシオ変化量制限が無効化されることで最ロー変速比が維持される。この最ロー変速比維持時間T6は、クラッチ解放維持時間T2に、クラッチ元圧立ち上がり待ち時間T3とクラッチ油圧充填時間T4を加えた時間とされる。
CS抜け判定時刻t4になると、エンジン1のスタータ始動が開始されることで、時刻t4より少し遅れた時刻t4’にてエンジン回転数Neが上昇を開始し、さらに、エンジン1により駆動されるメカオイルポンプ10からの吐出圧に基づきライン圧PLが立ち上がる。そして、CS抜け判定時刻t4からストローク開始圧指示終了時刻t5までをクラッチ元圧立ち上がり待ち時間T3とし、クラッチ油圧指示値PL/B*が、ストローク開始圧程度指示値とされ、プライマリ電流指示値PriSOL/I*が、電流飛ばし指示値(1A)とされる。
ストローク開始圧指示終了時刻t5になると、エンジン回転数Neがさらに上昇し、ライン圧PLも目標圧まで立ち上がる。そして、ストローク開始圧指示終了時刻t5から充填油圧指示終了時刻t6までをクラッチ油圧充填時間T4とし、クラッチ油圧指示値PL/B*が、油圧充填指示値とされ、プライマリ電流指示値PriSOL/I*が、電流飛ばし指示値(1A)から目標プライマリ圧を得る指示値へと斜め下げされる。
充填油圧指示終了時刻t6になると、ローブレーキ32が実際に締結し始め、実ライン圧PLからクラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxが演算され、クラッチ油圧指示値上限規制値PL/B*maxを超えることがないクラッチ油圧指示値PL/B*を出力する。これにより、充填油圧指示終了時刻t6以降、ローブレーキ32の締結が進行し、ローブレーキ32の伝達トルク容量TL/Bが大きくなり、これに伴って車速VSPも立ち上がる。つまりほぼ充填油圧指示終了時刻t6になるタイミングから車両の再発進が開始される。
[ライン圧系故障診断作用]
車両が走行中ではないとき、ライン圧センサ44によりライン圧PLを検出することができないと、ライン圧センサ44の故障が疑われる。
例えば、各摩擦係合要素に、ライン圧源とドレインに繋がれたソレノイドバルブと、各摩擦係合要素への実油圧を検出する油圧センサと、を備え、ソレノイドバルブにより各摩擦係合要素に対する供給油圧を目標油圧に制御し、油圧センサの故障を目標油圧と実油圧との差に基づいて診断する油圧検出装置の故障診断装置を比較例とする。この比較例の油圧検出装置の故障診断装置によれば、油圧センサの故障診断は、キースイッチON後、最初の各ソレノイドバルブによる各摩擦係合要素の締結・解放動作の終了が検出され、この最初の締結・解放動作の終了後に、許可される。または、油圧センサの故障診断は、キースイッチON後、停止レンジから走行レンジへのセレクトを検出した時に、ソレノイドバルブを作動させて故障診断用のプリチャージを行わせ、このプリチャージ後に、許可される。
しかし、上記のように油圧センサの故障診断が許可され、油圧センサの故障を、目標油圧と実油圧との差に基づいて診断すると、ソレノイドバルブが故障して油圧が供給されない場合でも、油圧センサの故障と誤った診断が行われる。
このように、油圧センサの故障と診断された場合、ソレノイドバルブが故障しているのか、油圧センサが故障しているのか不明である、という課題があった。
これに対し、実施例1では、エンジン回転数Neが所定エンジン回転数(例えば、500rpm)以上であるとき、ライン圧センサ44により検出されたライン圧PLが所定ライン圧(例えば、0.5MPa)未満であると、ロックアップクラッチ9の締結指令がロックアップ油圧制御回路112へ出力され、ロックアップクラッチ9が作動したか否かが判定される構成とした。
この構成により、ライン圧制御回路111によりライン圧PLが所定ライン圧以上に調圧されている場合には、ライン圧センサ44により検出されたライン圧PLが所定ライン圧未満であっても、ロックアップ油圧制御回路112によりロックアップクラッチ9への油圧を制御することができる。このとき、ロックアップクラッチ9の締結指令がロックアップ油圧制御回路112へ出力され、ロックアップクラッチ9が作動したと判定された場合は、ライン圧制御回路111は故障していなく、ライン圧センサ44故障と診断される。
また、ライン圧センサ44の正常時であって、ライン圧制御回路111によりライン圧PLが所定ライン圧以上に調圧されていない場合、ロックアップ油圧制御回路112によりロックアップクラッチ9への油圧を制御することができない。このとき、ロックアップクラッチ9の締結指令がロックアップ油圧制御回路112へ出力されても、ロックアップクラッチ9が非作動であると判定される。このように判定された場合は、ライン圧制御回路111故障と診断される。
したがって、副変速機付き無段変速機の油圧制御が可能なとき、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態の判定により、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる。
なお、ロックアップクラッチ9が作動したと判定された場合とは、ロックアップクラッチ9が解放から締結側へ作動していること、すなわち、ロックアップクラッチ9によりトルクが伝達されていると判定することができれば良い。このため、エンジン1と副変速機付き無段変速機が直結されるロックアップクラッチ9のロックアップ状態(締結)に限らず、ロックアップクラッチ9のスリップロックアップ状態(スリップ締結)も含まれる。
実施例1では、エンジン始動後のエンジン回転数Neの上昇が監視され、エンジン回転数Neが所定エンジン回転数(例えば、500rpm)以上であるとき、ライン圧センサ44により検出されたライン圧PLが所定ライン圧(例えば、0.5MPa)未満であり、かつ、タイマ値が所定タイマ値以上になると、ロックアップクラッチ9の締結指令がロックアップ油圧制御回路112へ出力される構成とした。
この構成により、エンジン始動時、ライン圧PLの調圧遅れやライン圧センサ44の応答遅れ等を加味した所定タイマ値が経過後に、ライン圧系の故障が診断される。このため、何ら故障していないライン圧系が故障していると診断されることを防止することができる。
したがって、エンジン始動時、精度良く、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる。
実施例1では、エンジン停止制御(コーストストップ制御/アイドルストップ制御)が行われたとき、エンジン再始動後のエンジン回転数Neの上昇が監視される構成とした。
この構成により、エンジン停止制御が搭載された車両のエンジン再始動時、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる(図6、ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS161→ステップS162→ステップS163→ステップS17またはステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS161→ステップS162→エンド)。
実施例1では、回転数センサ42により検出されたプライマリ回転数Npriの変化に基づき、ロックアップクラッチ9が作動したか否かが判定される構成とした。
この構成により、ロックアップクラッチ9の締結指令がロックアップ油圧制御回路112へ出力された後、検出されたプライマリ回転数Npriの変化すなわちプライマリ回転数Npriが上昇したか否かにより、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態を判定することができる。つまり、プライマリ回転数Npriが上昇すると、ロックアップクラッチ9が作動したと判定され、プライマリ回転数Npriが上昇しない(変化しない)と、ロックアップクラッチ9が非作動であると判定される。
したがって、副変速機付き無段変速機が有する既存の構成である回転数センサ42を用いて、副変速機付き無段変速機の油圧制御が可能なとき、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態を確実に判定することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の副変速機付き無段変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) エンジン1と、
前記エンジン1と駆動輪7との間に介装された変速機(副変速機付き無段変速機)と、
前記エンジン1と前記変速機(副変速機付き無段変速機)との間に介装されたロックアップクラッチ9を有するトルクコンバータ2と、
前記エンジン1により駆動されるメカオイルポンプ10と、
前記メカオイルポンプ10からの油路(ライン圧油路111c)に設けられ、ライン圧PLを調圧するライン圧制御回路111と、
前記ライン圧制御回路111の下流位置に設けられ、前記ロックアップクラッチ9への油圧を制御するロックアップ油圧制御回路112と、
前記ライン圧PLを検出するライン圧センサ44と、
前記エンジン1のエンジン回転数Neが、前記変速機(副変速機付き無段変速機)の油圧制御が可能な所定エンジン回転数以上であるとき、前記ライン圧センサ44により検出されたライン圧PLが所定ライン圧未満であると、前記ロックアップクラッチ9の締結指令を前記ロックアップ油圧制御回路112へ出力し、前記ロックアップクラッチ9が作動したか否かを判定するライン圧系故障診断手段(変速機コントローラ12)と、
を備える。
このため、副変速機付き無段変速機の油圧制御が可能なとき、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態の判定により、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる。
(2) エンジン始動後の前記エンジン回転数Neの上昇を監視し、前記エンジン回転数Neが前記所定エンジン回転数以上の時点から起動し、タイマ値を時間の経過と共に加算するタイマカウント手段(変速機コントローラ12)を有し、
前記ライン圧系故障診断手段(変速機コントローラ12)は、前記エンジン始動後の前記エンジン回転数Neの上昇を監視し、前記エンジン回転数Neが前記所定エンジン回転数以上であるとき、前記ライン圧センサ44により検出されたライン圧PLが前記所定ライン圧未満であり、かつ、前記タイマ値が所定タイマ値以上になると、前記ロックアップクラッチ9の締結指令を前記ロックアップ油圧制御回路112へ出力する。
このため、(1)の効果に加え、エンジン始動時、精度良く、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる。
(3) 所定の開始条件が成立すると前記エンジンを停止し、所定の終了条件が成立するとエンジン停止制御(コーストストップ制御/アイドルストップ制御)を終了し、前記エンジンを再始動するエンジン停止制御手段(エンジンコントローラ14)を有し、
前記ライン圧系故障診断手段(変速機コントローラ12)は、前記エンジン停止制御(コーストストップ制御/アイドルストップ制御)が行われたとき、エンジン再始動後の前記エンジン回転数Neの上昇を監視する。
このため、 (2)の効果に加え、エンジン停止制御(コーストストップ制御/アイドルストップ制御)が搭載された車両のエンジン再始動時、ライン圧センサ44故障とライン圧制御回路111故障を切り分けて診断することができる(図6、ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS161→ステップS162→ステップS163→ステップS17またはステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS161→ステップS162→エンド)。
(4) 前記変速機(副変速機付き無段変速機)の回転要素の回転速度(プライマリ回転数Npri)を検出する変速機回転速度センサ(回転数センサ42)を有し、
前記ライン圧系故障診断手段(変速機コントローラ12)は、前記変速機回転速度センサ(回転数センサ42)により検出された前記変速機(副変速機付き無段変速機)の回転要素の回転速度(プライマリ回転数Npri)の変化に基づき、前記ロックアップクラッチ9が作動したか否かを判定する。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、副変速機付き無段変速機が有する既存の構成である回転数センサ42を用いて、副変速機付き無段変速機の油圧制御が可能なとき、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態を確実に判定することができる。
以上、本発明の無段変速機の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、駆動系の回転速度として、プライマリ回転数Npri(副変速機付き無段変速機の回転要素の回転速度)とする例を示した。しかし、駆動系の回転速度としては、トルクコンバータの入出力回転とする例であっても良いし、エンジン回転数とする例であっても良い。要するに、ロックアップクラッチ9により副変速機付き無段変速機側へトルクが伝達されていると判定することができれば良い。
また、駆動系の回転速度として、直接、ロックアップクラッチ9の作動または非作動状態を判定することできるものでも良い。例えば、トルクコンバータ2内の油圧を検出する油圧センサや、ロックアップクラッチ9のストロークを検出するストロークセンサ等を設けて、少なくとも一方のセンサからの情報の変化に基づき、ロックアップクラッチが作動したか否かを判定してもよい。ただし、アイドルストップ制御等により、トルクコンバータ2にオイルが供給されない時間が続くと、トルクコンバータ2内のオイルが抜け落ちて(排出されて)しまい、新たにトルクコンバータ2内に供給されたオイルのみではトルクの伝達が行えないことがある。このような場合、ライン圧制御回路111によりライン圧PLが所定ライン圧以上に調圧されていても、ロックアップ油圧制御回路112によりロックアップクラッチ9への油圧を制御することができないことがある。このため、ロックアップクラッチ9が作動したか否かの判定に、トルクコンバータ2内の油圧を検出する油圧センサを用いる場合には、上記の場合を考慮する必要がある。
また、トルクコンバータ2内にオイルが残っていると、ロックアップクラッチ9が非締結状態のままでも、トルクコンバータ2が流体継手として機能し、トルクの伝達を行う場合がある。このような場合であっても、変速機(副変速機付き無段変速機)の回転要素の回転速度(プライマリ回転数Npri)の変化(例えば、変化量や変化速度)に基づき、ロックアップクラッチ9が非締結状態から締結状態へ移行したことを判断するため、ロックアップクラッチ9が作動したか否かを判定することができる。
実施例1では、クラッチとして、副変速機構30に有するハイクラッチ33を用いる例を示した。しかし、クラッチとしては、副変速機付き無段変速機外に設けられたクラッチを用いる例であっても良い。要するに、変速機が介装された駆動系に設けられたクラッチであれば良い。
実施例1では、バリエータ20として、ベルト式無段変速機構を備えたものを示した。しかし、バリエータ20としては、Vベルト23の代わりにチェーンがプーリ21、22の間に掛け回される無段変速機構であってもよい。あるいは、バリエータ20としては、入力ディスクと出力ディスクの間に傾転可能なパワーローラを配置するトロイダル式無段変速機構であってもよい。
実施例1では、副変速機構30として、前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構を示した。しかし、副変速機構30としては、前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としても構わない。
実施例1では、副変速機構30として、ラビニヨ型遊星歯車機構を用いて構成を示した。しかし、副変速機構30としては、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギア比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
実施例1では、バリエータ20のプーリ21、22の可動円錐板を軸方向に変位させるアクチュエータとして、油圧シリンダ23a、23bを備えたものを示した。しかし、バリエータのアクチュエータとしては、油圧で駆動されるものに限らず電気的に駆動されるものあってもよい。
実施例1では、変速機として、副変速機付き無段変速機を用いる例を示した。しかし、変速機としては、副変速機無しの無段変速機を用いる例であっても良いし、無段変速機を用いずに複数の変速段を有する有段自動変速機を用いる例であっても良い。
実施例1では、本発明の制御装置を、副変速機付き無段変速機を搭載したエンジン車に適用する例を示した。しかし、本発明の車両用変速機の制御装置は、ハイブリッド車両に対しても適用することができる。駆動トルクを制御するにあたり、最低回転数(アイドル回転数)が必要な駆動源(例えば、エンジン)を有する車両であれば適用できる。