以下、図面を参照しながら本実施形態に係る音響信号処理装置及びそれを装備したヘルメットを説明する。本実施形態は、自動二輪車の乗員が頭部を守るために頭部に装着するヘルメット、建設工事現場の作業員が頭部を守るために頭部に装着するヘルメット、その他様々な環境で頭部を守るために頭部に装着するヘルメットのいずれにも適用される。ここでは自動二輪車の乗員が装着するヘルメットとして説明する。自動二輪車の乗員は比較的高い周波数帯域内のエンジン音、排気音及びロードノイズ、さらに比較的低い周波数帯域内の風切り音等様々な種類の騒音環境下に晒されている。その一方で自動二輪車の乗員は交差点や駐輪場で停車した際に近くの自動二輪車の乗員との間でヘルメット越しに会話をする状況も生じる。これらは音響減衰の観点からは相反する状況であるといえる。
本実施形態は、このような様々な帯域の騒音(外部音)を、それと逆相の制御音、この場合はキャンセル音をスピーカから発して打ち消す音響減衰機能(雑音低減機能(noise reduction))と、停車等の際に行なわれる自動二輪車の乗員同士のヘルメット越しの会話を当該乗員(装着車)間の音声会話を支援するために音声と同相の制御音、この場合は増強音をスピーカから発して相手の音声を聞こえやすくする音響増強機能(ブースト機能)とを好適に併存させている。
なお、マイクロフォンで騒音や音声を変換した電気信号を特に「音響信号」と称するものとする。外部音とは、ここではマイクロフォン108(109)で検出される外部の騒音や音声などをいう。また、制御音とは、スピーカから発する音をいい、騒音を打ち消す逆相の音(キャンセル音)と、音声を増強する同相の音(ブースト音)とが含まれる。
図1に示すように、本実施形態に係るヘルメット100は、装着者の頭部を覆うヘルメット本体部102と開閉可能なシールド103とからなる。ヘルメット本体部102は硬質のシェル(帽体)、シェルの内側に装着される発泡材等からなる衝撃吸収ライナー、さらにその内側に装備されるクッションからなる。
ヘルメット本体部102には、音響信号処理装置が収納されている。音響信号処理装置は、音響信号処理を実行する装置本体101と、ヘルメット本体部102の内部であって装着者の耳近傍に取り付けられる右耳用/左耳用スピーカ106,107と、ヘルメット本体部102に設けられる右耳用/左耳用マイクロフォン108,109とからなる。なお、図示しないバッテリは装置本体101に内蔵され、またはヘルメット本体部102の内部の他の位置に収納される。マイクロフォン108,109はそれぞれ対応するスピーカ106,107の下方であって、ヘルメット本体部102の下部縁110又はその近傍の位置、さらに好ましくはヘルメット本体部102のシェルの外側に配置される。一般的には、マイクロフォン108,109はスピーカ106,107の近傍であって同じ音場空間内に設置されるものであるが、本実施形態では、マイクロフォン108,109はスピーカ106,107の遠方、つまりスピーカ106,107の音場空間の外側に配置される。このマイクロフォン108,109とスピーカ106,107との配置は、マイクロフォン108,109でエンジン音、排気音、ロードノイズ、風切り音等の騒音や音声等の外部音を拾ってから、その外部音がヘルメット本体部102のシェル、衝撃吸収ライナー及びクッションを伝播して装着者の耳に到達するまでに数ミリ秒乃至数十マイクロ秒程度の時間遅れを生ぜしめて、それにより装置本体101で騒音減衰のための音響信号発生処理に要する時間による位相ずれを縮小させることができる。さらに本実施形態の音響信号処理装置は、停車等の際に自動二輪車の乗員間でヘルメット越しに交わされる会話を支援するためにその相手方の音声を増強してスピーカ106,107から出力する機能を備えており、マイクロフォン108,109をシェルの外側に配置することにより、その相手方の音声をマイクロフォン108,109で良好に拾うことができる。
装置本体101はスマートフォン等の携帯型情報処理端末300に対してBluetooth(登録商標)に代表されるような近距離無線通信規格により双方向接続される。携帯型情報処理端末300には本実施形態に係る音響信号処理装置のユーザ設定操作を実行するためのアプリケーションプログラムをインストールされる事が可能である。図2にはその操作画面例を示している。携帯型情報処理端末300の操作画面には複数のスライダボタンが設けられている。例えばスライダを操作して、スピーカ106,107から発せられる制御音の音量に関わるアナログゲイン(gain(comp.))、高周波成分に対するディジタルゲイン(gain(H))、低周波成分に対するディジタルゲイン(gain(L))、ハイパスフィルタのカットオフ周波数(fc(HPF))、ローパスフィルタのカットオフ周波数(fc(LPF))、音響減衰/音響増強の切替制御に関連する制御指数の更新のためにマイクロフォン108,109で検出された音響信号の所定帯域の周波成分に関する音響パワーに比較されるしきい値THをユーザ(乗員、ヘルメット装着者)は任意に調整することができる。
図3には本実施形態に係る音響信号処理装置の構成を示している。右耳用/左耳用マイクロフォン108,109は周囲の外部音(空気振動)を電気信号(音響信号という)a0(R)、a0(L)に変換する。右耳用/左耳用マイクロフォン108,109にはそれぞれアナログディジタル変換器150,160が接続される。アナログディジタル変換器150,160は音響信号a0(R)、a0(L)をそれぞれ例えば44.1kHzのサンプリング周波数でそれぞれディジタル音響信号d1(R)、d1(L)に変換する。ディジタル化された右耳用の音響信号d1(R)、左耳用の音響信号d1(L)それぞれは2つのディジタル音響信号処理系統で並列処理に供される。一方のディジタル音響信号処理系統は音響信号の高周波成分を対象とする信号処理であり、他方のディジタル音響信号処理系統は音響信号の低周波成分を対象とする信号処理である。右耳用の信号処理系統と左耳用の信号処理系統とは構成上等価であるので、ここでは右耳用の信号処理系統の構成について説明し、左耳用の信号処理系統の構成の説明は省略する。ただし左耳用の信号処理系統の構成要素についてはその符号を括弧で記載するものとする。
アナログディジタル変換器150(160)の出力d1(R)(d1(L))は2系統に分化され、ローパスフィルタ151(161)とハイパスフィルタ152(162)とに供給される。図4にはローパスフィルタ151(161)、ハイパスフィルタ152(162)の各フィルタ特性を示す。図5にはアナログディジタル変換器150(160)の出力のスペクトルS{d1}、ローパスフィルタ151(161)の出力のスペクトルS{d2(low)}、ハイパスフィルタ152(162)の出力のスペクトルS{d2(high)}を示している。
ローパスフィルタ151(161)のカットオフ周波数fc(low)は所定値、好ましくは1.3kHzより低く、ハイパスフィルタ152(162)のカットオフ周波数fc(high)は1.3kHzより高く設定される。人間の発する音声は0.2〜4kHzの周波数範囲にあるが、1.3kHz以上の帯域で会話が十分成立する。発明者らの採取データによると、風切り音の周波数範囲は比較的低く、1.3kHz以下を示す。一方、エンジン音、排気音及びロードノイズの周波数範囲は比較的高く、1.3kHzを超え、その中心帯域は例えば3k〜4kHzを示す。このように比較的低い周波数帯域には主に風切り音が存在し、一方、比較的低い周波数帯域には、音声が含まれ、さらに騒音としてのエンジン音、排気音及びロードノイズ等も含まれる。
なお、風切り音、エンジン音、排気音及びロードノイズなどの騒音の周波数帯域は車種、エンジン形式、ヘルメットのグレードや種類等に応じて変化するものであり、従って本実施形態ではローパスフィルタ151(161)のカットオフ周波数fc(low)、ハイパスフィルタ152(162)のカットオフ周波数fc(high)それぞれはユーザが任意に調整することを可能にしている。車種、エンジン形式、ヘルメットのグレードや種類等に応じて複数種類のデフォルト値を用意しておき、任意のデフォルト値を選択することが好ましい。さらにローパスフィルタ151(161)のカットオフ周波数fc(low)、ハイパスフィルタ152(162)のカットオフ周波数fc(high)それぞれは後述する音響パワーの変動に従って動的に変化させることも可能である。
ローパスフィルタ151(161)は、マイクロフィン108,109で検出され、アナログディジタル変換器150(160)で変換されたディジタルの音響信号から主として1.3kHz以下の低周波成分を抽出する。ハイパスフィルタ152(162)は、マイクロフィン108,109で検出され、アナログディジタル変換器150(160)で変換されたディジタルの音響信号から主として1.3kHz以上の高周波成分を抽出する。
ローパスフィルタ151(161)の出力とハイパスフィルタ152(162)の出力とには位相制御器153(163),154(164)がそれぞれ接続される。位相制御器153(163)は、制御部140の位相制御信号p(Rl)に従ってローパスフィルタ151(161)で抽出された低周波成分d2(Rl)の時間波形の位相を反転し、又は反転しない。位相反転は符号反転処理及び遅延処理により実現するものであるが、それに限定されることはない。他方の位相制御器154(164)は、制御部140の位相制御信号p(Rh)に従ってローパスフィルタ152(162)で抽出された高周波成分d2(Rh)の時間波形の位相を反転し、又は反転しない。このように位相制御処理を低周波成分と高周波成分とで分離させている。さらに位相制御器153(163),154(164)の出力にはディジタルアンプ155(165),156(166)がそれぞれ接続される。ディジタルアンプ155(165)は制御部140からの増幅率制御信号Da(Rl)で指示された増幅率で、位相制御を受けた低周波成分の音響信号d3(Rl)を増幅する。同様にディジタルアンプ156(166)は制御部140からの増幅率制御信号Da(Rh)で指示された増幅率で、位相制御を受けた高周波成分の音響信号d3(Rh)を増幅する。位相制御と同様に、低周波成分に対する増幅率調整と高周波成分号に対する増幅率調整とを分離させている。
ディジタルアンプ155(165)の出力とディジタルアンプ156(166)の出力とには合成器157を介してディジタルアナログ変換機158が接続される。合成器157はディジタルアンプ155(165)で増幅された低周波成分の音響信号d4(Rl)とディジタルアンプ156(166)で増幅された高周波成分の音響信号d4(Rh)とを合成し、合成音響信号d5(R)を発生する。ディジタルアナログ変換機158は、合成音響信号d5(R)をアナログ音響信号a1(R)に変換する。アナログアンプ159(169)は音響信号a1(R)を増幅して制御音をスピーカ106(107)から発生させる。
マイクロフォン108(109)で検出した騒音や音声などの外部音の音響信号a0(R)はアナログディジタル変換器111(112)にも供給される。アナログディジタル変換器111(112)は、所定のサンプリング周波数で音響信号a0(R)をディジタル音響信号に変換する。発明者らが様々な種類の自動二輪、様々な種類のヘルメットにより採取した音響データの分析結果は、外部音の大部分が5kHz以下であることを示した。従って5kHz以下の帯域の外部音を網羅するためにアナログディジタル変換器111(112)のサンプリング周波数は好ましくは10kHzに設定されている。
FFT処理部113は、右耳側のアナログディジタル変換器111でディジタル化された音響信号と、左耳側のアナログディジタル変換器111でディジタル化された音響信号とを別々に、高速フーリエ変換(FFT)により周波数空間上に展開する。なお周波数変換処理はFFTに限定されることは無く、離散コサイン変換(DCT)などの他の処理を適用しても良い。音響パワー計算部114はFFT処理部113で計算されたスペクトルの所定帯域、典型的にはエンジン音、排気音及びロードノイズの周波数範囲の中心帯域である3k〜4kHzに制限してその帯域に含まれる周波成分の強度を積算して、音響パワー(Sound Power)を左耳/右耳別に計算する。当該帯域は、ヘルメットの種類等に応じて変化するものであり、音響パワー計算部114に予め複数の帯域を用意しておき、ユーザが、装置本体101の制御部140に通信部130を介して接続される携帯型情報処理端末300を操作して任意に選択できることが好ましい。
ここで、上述したマイクロフォン108,109の設置位置は風切り音、エンジン音、排気音及びロードノイズ等の騒音、さらに他者の音声を検出することを実現している。比較的高い周波数帯域には、音声、さらにエンジン音、排気音及びロードノイズ等の騒音が含まれており、当該高周波帯域に対して音響減衰機能を常時適用すると、これら騒音とともに音声も減衰されてしまい、音声会話が困難になる。一方、音声会話を可能ならしめるために、当該高周波帯域に対して音響減衰機能を適用せず、音声等の外部音と同相で音響波を発する音響増強機能を発揮させるものとすると、エンジン音、排気音及びロードノイズ等の騒音環境に乗員は晒されてしまう。
本実施形態はこのトレードオフの問題を解決する。音声会話が発生する状況と、エンジン音、排気音及びロードノイズ等の騒音が強く発生する状況とを判別し、音響減衰機能と音響増強機能とを低周波帯域/高周波帯域ごとに動的に切り替える。さらに音響増強機能を低周波帯域よりも高周波帯域を強く発揮させる。この切り替え制御、音響増強レベル制御により、騒音を適当に減衰させながら、怒鳴りあうことのない乗員同士の自然な音声会話をも実現する。上述したように、マイクロフォン108,109はヘルメット本体部102のシェルの外側に配置することにより、音声会話を可能にしているが、その一方で走行中には風切り音を検出してしまうが、走行中では音響減衰機能を適用するものとすることにより、風切り音の不快な騒音に晒されることもない。
このように本実施形態では、音響減衰機能に加えて音響増強機能を備えている。音響減衰機能と音響増強機能とを切り替える制御、さらに減衰程度/増強程度を調整する制御を実行するための指標として本実施形態では「高周波成分に関する制御指数CI(high)、低周波成分に関する制御指数CI(low)」を導入している。
制御指数決定部115は、音響パワー計算部114で計算した典型的には3k〜4kHz帯域の音響パワーに基づいて、高周波成分に関する制御指数CI(high)、低周波成分に関する制御指数CI(low)を決定する。制御部140は、右耳側に関して、制御指数CI(low)に従って低周波成分を主とする音響信号の位相の反転/非反転が切り替わるように位相制御部153を制御する。制御部140は、低周波成分を主とする音響信号の位相の反転/非反転の切り替え制御とは分離して、制御指数CI(high)に従って高周波成分を主とする音響信号の位相の反転/非反転が切り替わるように位相制御部154を制御する。制御部140は、左耳側の位相制御も同様に、低周波成分/高低周波成分に対しては各制御指数に応じて個別に位相反転と位相非反転とを切り替えるように位相制御部163,164を制御する。
制御部140は、右耳側に関して、制御指数CI(low)に従って低周波成分を主とする音響信号に対する増幅率(ディジタルゲイン)が0から所定値までの範囲内で変化するようにディジタルアンプ155を制御する。制御部140は、低周波成分を主とする音響信号に対する増幅率制御とは分離して、制御指数CI(high)に従って高周波成分を主とする音響信号に対する増幅率(ディジタルゲイン)が0から所定値までの範囲内で変化するようにディジタルアンプ156を制御する。同様に制御部140は、左耳側の音響パワーに応じてディジタルアンプ165,166に対して個別に増幅率を0から所定値までの範囲内で制御する。例えば音響減衰時にはディジタルゲインが0〜+20dBの範囲で調整され、音響増強時にはディジタルゲインが0〜+5dBの範囲で調整される。
ここで、音響信号が位相反転され(逆相)、且つ増幅率が上限値に設定されたとき、その音響波により外部音が打ち消されて最大の音響減衰効果が発揮される。音響信号の位相が反転されず(同相)、且つ増幅率が上限値に設定されたとき、その音響波に外部音が合成されて最大の音響増強(ブースト)効果が発揮される。本実施形態では、音響減衰機能と音響増強機能との切り替えを高周波成分と低周波成分とで分離制御する。上述したとおり、音響パワーはエンジン音、排気音及びロードノイズ等の騒音の中心帯域である3k乃至4kHzの周波成分を対象としているため、加速時や高速走行中は高い値を示し、停車中や低速走行中は低い値を示す傾向にある。従って音響パワーが比較的高い値を示すときには、音響減衰機能を実行し、音響パワーが比較的低い値を示すときには音響増強(ブースト)機能を発揮させるように制御指数CI(low),CI(high)に従って音響減衰機能/音響増強機能の切替が制御される。
図6には制御指数CI(low),CI(high)に対する位相反転/非反転及びディジタルゲインの関係を示している。高周波成分に関する制御指数CI(high)、低周波成分に関する制御指数CI(low)はともに、典型的には“−1”から“+1”までの範囲で変化する。これら制御指数CIが所定値未満を示すとき、ここでは所定値をゼロ値としてゼロ値未満(負)を示すときには、制御部140は位相反転をせず(同相)、音響増強(ブースト)効果を発揮させ、制御指数CIが所定値又は所定値以上を示すときは、ここではゼロ値又はそれより高い値(正)を示すときには、制御部140は位相を反転させ、音響減衰効果を発揮させる。また制御部140は制御指数CIと所定値との差の絶対値、ここでは所定値をゼロとして制御指数CIの絶対値に応じてディジタルアンプ155,156,165,166の増幅率を調整する。制御指数CIがゼロ値であるとき増幅率を0dB(等倍)に設定し、制御指数CIの絶対値が大きくなるに従って増幅率を増大させる。例えば、制御指数CIが“+1(最大減衰)”に接近するに従って増幅率を増大させ、その最大を例えば+20dBに設定し、制御指数CIが“−1(最大増強)”に接近するに従って増幅率を増大させ、その上限値を減衰時のそれよりも小さく例えば+5dBに設定する。制御指数CIが“−1”を示すときは位相非反転及び最大の増幅率(+5dB)により最大の音響増強(ブースト)効果が発揮され、制御指数CIが“+1”を示すときは位相反転及び最大の増幅率(+20dB)により最大の音響減衰効果が発揮される。
図7には制御指数決定部115による低周波成分に対する音響信号処理のための制御指数CI(low)と高周波成分に対する音響信号処理のための制御指数CI(high)との更新処理手順を示している。図8には図7の手順による音響パワー(SP)の時間変動に対する制御指数CI(low),CI(high)の時間変化を示している。なお、この処理は右耳側、左耳側で等価であるので、ここでは右耳側の処理手順を説明し、左耳側の処理手順は省略する。
制御指数CI(low),CI(high)は、エンジン音、排気音及びロードノイズを含む高周波帯域(3k〜4kHz)の音響パワーに応じて制御部140により、“−1”から“+1”までの範囲で変化される。上述したように制御指数CI(low),CI(high)が所定値以下、ここではゼロ値又は負極のとき位相は反転されず、そのときのディジタルゲインに応じた強さで音響増強機能が発揮される。制御指数CI(low),CI(high)が所定値未満、ここでは正極のとき位相は反転され、そのときのディジタルゲインに応じた強さで音響減衰機能が発揮される。
まず電源オンとともに制御部140により制御指数CI(low)と制御指数CI(high)とがそれぞれ初期値に設定される(工程S11)。典型的には制御指数CI(low)は微弱な音響増強効果が発揮される“−0.1”に初期化され、制御指数CI(high)は最大の音響増強効果が発揮される“−1.0”に初期化される。制御指数CI(low)と制御指数CI(high)それぞれの初期値は変更可能である。
マイクロフォン108の音響信号a0(R)はアナログディジタル変換器111により所定のサンプリング周波数(10kHz)でディジタル音響信号に変換される(工程S12)。騒音の大部分は5kHz以下であるため、騒音成分をほぼ脱落することなく検出する事ができる。アナログディジタル変換器111でディジタル化された音響信号はFFT処理部113で周波数空間に展開される(工程S13)。この全域、又は一部帯域、好ましくはエンジン音、排気音及びロードノイズの中心帯域である3k〜4kHzに含まれる周波成分の強度が音響パワー計算部114で積算され、音響パワーSPが計算される(工程S14)。音響パワーSPは制御指数決定部115において所定のしきい値THと比較される(工程S15)。音響パワーSPがしきい値THを超過し(工程S15でYES)、且つ高周波成分に関する制御指数CI(high)が最大値“+1”に達していないとき(工程S16でNO)、制御指数決定部115は制御指数CI(high)に所定の増加分△Ihighとして例えば0.1を加える(工程S17)。音響パワーSPがしきい値THを超過し(工程S15でYES)、且つ高周波成分に関する制御指数CI(high)が最大値“+1”に達しているとき(工程S16でYES)、制御指数決定部115は制御指数CI(high)をその最大値“+1”に維持する。
音響パワーSPがしきい値TH以下を示し(工程S15でNO)、且つ高周波成分に関する制御指数CI(high)が最小値“−1”に達していないとき(工程S18でNO)、制御指数決定部115は制御指数CI(high)から、増加分△Ihighより高く設定されている所定の減少分△Dhighとして例えば0.25を減算する(工程S19)。音響パワーSPがしきい値TH以下を示し(工程S15でYES)、且つ高周波成分に関する制御指数CI(high)が最小値“−1”に達しているとき(工程S18でYES)、制御指数決定部115は制御指数CI(high)を最小値“−1”に維持する。
上述のように増加分△Ihighを設定して、制御指数CI(high)を徐々に増加させていくことにより、音響パワーSPがしきい値THを超過して直ちに最大の音響減衰効果を発揮させるのではなく、騒音が増大して音響パワーSPがしきい値THを最初に超過した時点から、制御指数CI(low),CI(high)が上限値に到達して最大の音響減衰効果を発揮させる時点までにある程度の遅れ時間d1を与えて、音響増強機能を徐々に弱めながらある時点で音響増強機能から音響減衰機能に切り替え、そして徐々に音響減衰効果を高めていくような緩やかで自然な音響信号処理の遷移を実現する。
また減少分△Dhighを、騒音の増加過程での増加分△Ihighより高値に設定することにより騒音が減少して音響パワーSPがしきい値THに最初に到達した時点から、制御指数CI(high)が初期値(下限値)に到達して最大の音響増強効果を発揮させる時点までの遅れ時間d2を、騒音の増加過程で制御指数CI(high)が上限値(+1)に達するまでの遅れ時間d1よりも短時間にすることができる。それにより外部音が減衰される状況から、外部音が増強され可聴な状態に短時間のうちに転換する事ができる。自動二輪車を減速して停止するときには周囲の状況を視覚と聴覚とから把握するものであるが、音響減衰状態から音響増強状態に短時間で転換させることにより、早い段階で視覚と聴覚とによる状況把握を可能にして安全性の向上を実現している。
なお、遅れ時間d1は、制御指数CI(high)の初期値と増加分△Ihighにより決定され、同様に、遅れ時間d2は、制御指数CI(high)それぞれの初期値と減少分△Dhighにより決定され、任意調整項目である。
次の工程S20で制御指数決定部115により制御指数CI(high)が所定値、ここではゼロ値を超過しているか否か判断される。制御指数CI(high)がゼロ値を超過しているとき(YES)、制御指数決定部115は低周波成分に関する制御指数CI(low)の値を制御指数CI(high)と同値に設定する(工程S21)。つまり高周波成分に対して音響減衰機能がある減衰レベルで発揮されているとき、低周波成分に対しても同様に音響減衰機能を同じ減衰レベルで発揮させる。
制御指数CI(high)がゼロ値以下のとき(NO)、制御指数決定部115は低周波成分に関する制御指数CI(low)の値を初期値“−0.1”に設定する(工程S22)。つまり高周波成分に対して音響増強機能が発揮されているとき、増強レベル(ディジタルゲイン)は低いものの、低周波成分に対しても音響増強機能を発揮させる。
上記工程S12−S22までのループは音響信号処理装置が電源オフされるまで(工程S23)、一定の制御周期で繰り返される。
図9に示すように、制御部140は制御指数に従って高周波成分/低周波成分に対して各別に音響信号処理を実行する。この処理は音響信号処理装置が電源オンの期間、一定の制御周期で繰り返される。マイクロフォン108,109で検出された外部音の音響信号a0(R),a0(L)はアナログディジタル変換器150,160でそれぞれディジタル音響信号d1(R)、d1(L)に変換される(工程S31)。ディジタル化された右耳用の音響信号d1(R)はローパスフィルタ151とハイパスフィルタ152とに供給され、低周波成分d2(Rl)と高周波成分d2(Rh)とが抽出される(工程S32)。同様にディジタル化された左耳用の音響信号d1(L)はローパスフィルタ161とハイパスフィルタ162とに供給され、低周波成分d2(Li)と高周波成分d2(Lh)とが抽出される(工程S36)。
低周波成分に関する制御指数CI(low)が所定値、ここではゼロ値以上(ゼロ又は正)であるとき(工程S33、YES)、制御部140から位相制御部153に対して位相反転を指示する制御信号p(Rl)が供給される。それにより位相制御部153では低周波成分の音響信号d2(Rl)の位相を反転する(工程S34)。例えば極性反転される。一方、制御指数CI(low)がゼロ値未満(負)であるとき(工程S33、NO)、制御部140から位相制御部153に対して位相を反転しないことを指示する制御信号p(Rl)が供給され、位相制御部153では低周波成分の音響信号d2(Rl)は同相に維持される。
次に、制御部140では、制御指数CI(low)と所定値との差の絶対値、ここでは所定値をゼロとして制御指数CI(low)の絶対値に応じて増幅率を決定する。増幅率は制御指数CI(low)が“−1”に接近するに従って増大され、制御指数CI(low)が“−1”のとき“+5dB”に設定される。制御指数CI(low)が“+1”に接近するに従って増大され、制御指数CI(low)が“+1”のとき“+20dB”に設定される。決定した増幅率で、位相制御を受けた低周波成分d3(Rl)がディジタルアンプ155により増幅される(工程S35)。
高周波成分についても同様に、高周波成分に関する制御指数CI(high)が所定値以上、ここではゼロ値又は正であるとき(工程S37、YES)、制御部140から位相制御部154に対して位相反転を指示する制御信号p(Rh)が供給される。それにより位相制御部154では高周波成分の音響信号d2(Rh)の位相が反転される(工程S38)。一方、制御指数CI(high)がゼロ値未満(負)であるとき(工程S37、NO)、制御部140から位相制御部154に対して位相を反転しないことを指示する制御信号p(Rh)が供給され、位相制御部154では高周波成分の音響信号d2(Rh)は同相に維持される。
また制御部140では、制御指数CI(high)の絶対値に応じて増幅率を決定する。増幅率は制御指数CI(high)が“−1(最大増強)”に接近するに従って“+5dB”を上限値として増大され、制御指数CI(high)が“+1(最大減衰)”に接近するに従って“+20dB”を上限値として増大される。決定した増幅率で、位相制御を受けた高周波成分d3(Rh)がディジタルアンプ156により増幅される(工程S39)。
ディジタルアンプ155で増幅された低周波成分d4(Rl)とディジタルアンプ156で増幅された高周波成分d4(Rh)とは合成器157で合成される(工程S40)。この合成音響信号d5(R)はディジタルアナログ変換機158でアナログ音響信号a1(R)に変換される(工程S41)。アナログアンプ159は音響信号a1(R)を増幅し、スピーカ106を駆動する(工程S42)。それによりスピーカ106の振動板が振動し、制御音がスピーカ106から発生される(工程S43)。制御音が外部音と同相であるとき、外部音は増強され、制御音が外部音と逆相であるとき、外部音は減衰される。
なお、左耳側の信号処理系統160−169も同様に左耳用の制御指数CI(low),CI(high)に従って音響信号音響信号a1(L)が発生される。
次に以上のような音響信号処理による音響減衰/増強の状態遷移を実際的な自動二輪車の走行状態の遷移に即して説明する。図8に示したように、自動二輪車の状態は、停止、加速、高速走行(定速走行)、減速、停止の各状態で遷移すると仮定する。停止期間では当然にしてロードノイズは無く、エンジン回転数は低く、排気音も小さいので、音響パワーSPはしきい値TH以下を示す。低速走行時も同様であり、音響パワーSPはしきい値TH以下を示す。
自動二輪車が停止又は低速走行をしている期間では低周波成分に関する制御指数CI(low)は初期値“−0.1”を示す。図10(a)に例示するように、ローパスフィルタ151,161で減衰されたエンジン音等及び音声を主とする音響信号(破線)は、同相のまま微弱に増幅されて制御音(増強音、ブースト音)としてスピーカ106,107から発せられる。エンジン音等及び音声の外部音(実線)は、スピーカ106,107から発せられる制御音(増強音)により微弱に増強される。
この期間では高周波成分に関する制御指数CI(high)は初期値“−1.0”を示す。ハイパスフィルタ152,162を通過したエンジン音等及び音声を主とする音響信号は、図10(b)に例示するように、同相のまま最大の増幅率で増幅される。エンジン音等及び音声の外部音(実線)は、スピーカ106,107から発せられる制御音により最大に増強される。停止期間ではエンジン音や排気音は当然にして小さく、たとえ増強されたとしても、音声可聴をほとんど阻害しないので、ヘルメット越しで怒鳴りあうような会話ではなく、ヘルメットを装着しない状況で自然に会話するときと同様な環境で会話が実現され得る。また近傍の他車のエンジン音等も増強されて聞き取る事ができ、その他周辺の音場状況を把握する事が可能になっている。
そしてエンジン回転数を徐々に上げながら、クラッチをつなぎ、走行開始される。この段階で音響パワーSPは上昇する。しかし、音響パワーSPがしきい値THに達するまで、制御指数CI(low),CI(high)はともに初期値に維持され、初期の音響増強動作状態が維持される。従って走行開始して低速走行中は、音響減衰されることはなく、音響増強環境下で周辺の音場状況を把握可能な状態を継続することができる。
加速開始後、エンジン回転数は上昇し、ギアのシフトアップに伴って回転数が一時的に下がり音響パワーSPも一時的に低下するものの、一般的に音響パワーSPはしきい値TH以下になることなく上昇傾向を示す。音響パワーSPがしきい値THに達した時点T1で、制御指数CI(high)は増加分△Ihighを加えられる。音響パワーSPがしきい値THを超過している期間、制御指数CI(high)には増加分△Ihighを繰り返しインクリメントされて徐々に上昇する。それによりディジタルゲインは減少され、音響増強効果は徐々に低下される。一方、高周波成分に関する制御指数CI(high)が負極である間、低周波成分に関する制御指数CI(low)は初期値を維持され、微弱な増強効果が継続的に発揮される(図7、工程S22)。
高周波成分に関する制御指数CI(high)がゼロ値以上に転換したとき、音響増強状態から音響減衰状態に遷移される。それに同期して、低周波成分に関しても音響増強状態から音響減衰状態に遷移される。ディジタルアンプ155,156,165,166の増幅率は制御指数CI(low),CI(high)の絶対値の上昇に応じて増加され、それに伴って音響減衰効果が高められ、加速に伴う風切り音、エンジン音、排気音、ロードノイズは実際の強度上昇に反して徐々に減衰されていく。
音響パワーSPがしきい値THに達した時点T1から遅れ時間d1を経た時点T2において制御指数CI(low),CI(high)が上限値(+1)に達し、図11(a)、図11(b)に例示するように、ローパスフィルタ151,161を通過した風切り音を主とする音響信号(破線)、ハイパスフィルタ152,162を通過したロードノイズ、エンジン音及び排気音を主とする騒音に関する音響信号(破線)はともに位相反転され、且つ最大の増幅率(ディジタルゲイン)で増幅され、スピーカ106,107から最大のキャンセル音として発せられる。ロードノイズ、エンジン音及び排気音を主とする騒音に関する外部音(実線)は、スピーカ106,107から発せられる逆相の音響により最大に減衰される(図12(a),(b)参照)。
制御指数CI(low),CI(high)は一旦、上限値(+1)に達したとき、音響パワーSPが多少変動してもしきい値THを超過している限りにおいて、換言すると音響パワーSPがしきい値THに低下するまでそのまま上限値(+1)に維持される。つまり、加速して高速域での定速走行状態にあり、また走行中に多少の速度変動があったとしても、最大の音響減衰効果が継続的に発揮される。
自動二輪車が減速を開始すると、音響パワーSPは徐々に低下する。音響パワーSPがしきい値TH以下であると判定された時点T3(図8)、制御指数CI(high)は所定の減少分△Dhighを減算され、音響パワーSPがしきい値TH以下である間、減算処理が繰り返される。それによりディジタルアンプ155,156,165,166の増幅率は制御指数CI(low),CI(high)の絶対値の減少に応じて低下され、それに伴って音響減衰効果が低減されていく。
高周波成分に関する制御指数CI(high)がゼロ値未満に転換したとき、位相制御部153,154,163,164により音響信号に対する位相反転処理から位相非反転処理に切り替えられ、それにより音響増強機能が開始される。そのとき低周波成分に関する制御指数CI(low)は初期値“−0.1”に設定され(図7、工程S22)、位相反転処理から位相非反転処理に切り替えられ、音響減衰機能から音響増強機能に切り替えられる。
減少分△Dhighの絶対値は、騒音の増加過程での増加分△Ihighの絶対値より高値に設定されているので、音響パワーSPがしきい値THまで低下した時点T3から、制御指数CI(high)が初期値(下限値)に復帰する時点T4までの遅れ時間d2は、騒音の増加過程で制御指数CI(high)が上限値(+1)に達するまでの遅れ時間d1よりも短くなる。それにより音響減衰動作状態から音響増強動作状態への転換速度は、騒音の増加過程における音響増強動作状態から音響減衰動作状態への転換速度よりも速くなり、早期に周囲の騒音を含めて良好に聞き取ることのできる環境に復帰させることができ、乗員は音響状況から周囲の安全性を認識する事が可能となる。
このように本実施形態によると、音響減衰機能と音響増強機能とを、エンジン音等の騒音帯域の音響パワーに応じて切り替えることにより、騒音減衰と音声会話支援とをともに実現する事ができる。さらに音響増強程度を低周波成分と高周波成分との2系統で別々に調整することができ、それにより低周波帯域の騒音の増強を低く抑えながら、それと同時に高周波帯域の音声を強く増強させることができ、安全上、低周波の騒音は聞こえる状況のもとで、自然な音量で会話を実現させることができる。
図13には本実施形態の変形例に係る音響信号処理装置の構成を示している。この変形例に係る音響信号処理装置には加速度センサ201と速度センサ203とが装備される。加速度センサ201と速度センサ203は、装置本体101に内蔵される。上述の説明では制御部140は、音響パワーに基づいて制御指数CI(low),CI(high)を決定するものであったが、本変形例では音響パワーに加えて加速度センサ201で検出する加速度と速度センサ203で検出する速度とに基づいて制御指数CI(low),CI(high)を決定するようにしてもよい。停止(速度ゼロ)、低速走行(例えば10km/h以下)、加速、高速走行(例えば60km/h以上)、減速の各走行状態は、加速度と速度とから識別する事が可能である。もちろん加速度単独でもこれら走行状態を識別することは可能であるが、加速度と速度とを併用することにより当該識別精度が向上するので、ここでは加速度と速度とを併用して走行状態を識別するものとしている。制御部140では、速度に基づいて停止、低速走行、高速走行を判定し、加速度に基づいて加速、減速を判定する。
上述では制御指数CI(high)は、音響パワーがしきい値THを超過したとき増加分△Ihighをインクリメントされ、音響パワーがしきい値TH以下になったとき減少分△Dhighをデクリメントされる。本変形例では、音響パワーとしきい値THとの比較結果と、走行状態の判定結果とを併用して、制御指数CI(low),CI(high)を決定する。例えば、80km/h等の所定速度以上の高速走行であると判定されたとき、制御指数CI(low),CI(high)を即時に上限値(+1)に設定することにより、停止状態又は低速走行状態から急激な加速により高速走行状態に短時間で移行したときであっても最大の音響減衰効果を即時に発揮させることができる。逆に、急激な加速により短時間で高速走行状態から停止状態又は20km/h等の所定速度未満の低速走行であると判定されたとき、音声会話の帯域、つまり高周波成分に対する制御指数CI(high)を即時に初期値(−0.1,−1)に設定することにより、高速走行状態から急激な減速によりに短時間で停止状態又は低速走行状態に移行したときであっても最大の音響増強効果を即時に発揮させることができる。加速時、減速時に加速度の絶対値が所定値を超過しているときには、増加分△Ihigh、減少分△Dhighそれ自体を高値に置き換えるようにしてもよく、この場合、制御指数CI(high)を短時間で上限値(+1)又は下限値(−1)に変位させることができる。
なお、音響パワーに代えて、加速度センサ201で検出する加速度と速度センサ203で検出する速度とに基づいて判定した走行状態により制御指数CI(low),CI(high)を更新するようにしてもよい。検出速度が20km/h等の所定速度以下であるとき停止又は低速走行状態にあることを判定し、制御指数CI(low),CI(high)を初期値に更新する。検出速度が80km/h等の所定速度以上であるとき高速走行状態にあることを判定し、制御指数CI(low),CI(high)を上限値(+1)に更新する。また加速度が所定値を超過しているときには制御指数CI(high)を増加分△Ihigh、減少分△Dhighによりインクリメントし、又はデクリメントする。
また音響パワー、加速度、速度をそれぞれ規格化し、それらを任意の係数で加重加算した値に基づいて制御指数CI(low),CI(high)を更新するようにしてもよい。
上述では、音響信号処理を高周波帯域と低周波帯域との2系統で分離制御するように説明したが、音響信号処理を高周波帯域と低周波帯域に中周波帯域を加えて3系統、さらに4系統以上で分離制御するようにしてもよい。この場合、パイパスフィルタ、ローパスフィルタに加えてバンドパスフィルタが装備され、それぞれに対して位相制御部、ディジタルアンプが装備される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。