JP6123144B1 - インクジェット用水性マゼンタインキ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、印刷物の耐候性、高濃度感、色再現性、およびインキの保存安定性の面で総合的に優れた水性インクジェットマゼンタインキを提供する事にある。また、インキセットを構成する各インキ間の耐候性及び、色再現領域のバランスに優れたインキセットおよび記録物の製造方法を提供することにある。【解決手段】少なくとも2種類以上の顔料、及び、水を含有する水性インクジェットマゼンタインキであって、記録媒体上での色相角∠H°が330°〜360°の範囲であり、前記2種類以上の顔料のうち第1の顔料は、前記色相角∠H°が290°〜360°の範囲を示す顔料であり、第2の顔料は、前記色相角∠H°が25°〜50°の範囲を示す顔料であることを特徴とする、水性インクジェットマゼンタインキである。【選択図】 なし

Description

本発明は、高濃度感、色再現性等に優れた水性インクジェットマゼンタインキ、それを備えたインキセット、及び印刷物の製造方法に関する
インクジェット印刷方式とは、被印刷基材に対してインクジェットヘッドからインキの微小液滴を飛翔、および着弾させて、前記基材上に画像や文字を形成する方式であり、版を必要としない事を特徴とする。他に版を必要としない印刷方法として、電子写真方式が広く認知されている。しかしインクジェット方式は、電子写真方式に比べ装置自体の価格や、印刷時のランニングコスト、装置サイズ、高速印刷特性等の面で優れており、デジタル印刷の普及や用途拡大により、今後成長が見込まれている。
インクジェット印刷方式に使用されるインキとしては、油系、溶剤系、活性エネルギー線硬化系、水系など多岐に渡るインキが使用されている。なかでも近年では、紙基材だけで無くプラスチックやガラス等の非吸収性基材にも適用できる点や、印刷物耐性に優れる点、高速印刷を実現できる点などから、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷方式の普及が進んでいる。しかし、近年、環境や人に対する有害性への配慮・対応といった点から、溶剤やモノマーに対する使用規制が進められており、水系インキへの置き換えが要望され、需要が高まっている。
また近年、インクジェットヘッド性能の著しい向上に伴い、オフセット印刷等の既存印刷市場へのインクジェット印刷方式の展開が期待されている。既存印刷市場では、記録物(印刷物)の生産性と色再現領域が非常に重要となる。特に色再現領域については、既存印刷市場の印刷物が多くの特色を用いて印刷され、色再現領域が非常に優れていることから、前記市場におけるインクジェット印刷方式の実用化を達成するには、優れた色再現領域を実現する事が重要となる。更に、得られる記録物には、保存中に変色・退色しないことも求められている。
従来インクジェット印刷においては、着色剤として水性染料を使用した水性インキが主に用いられてきた。しかし、染料インキは耐候性、耐水性に劣る欠点があった。そこで水性染料に変わり、顔料を使用する顔料インキの検討が行われるようになり、近年広告看板市場での大判プリンターをはじめとして、顔料インキを使用するインクジェットプリンターの実用化が進んでいる。
しかしながら、使用するインクジェットインキのイエロー、シアン、マゼンタの3色がどの程度の色再現ポテンシャルを持つかによって、形成される色再現領域が大きく変化する為、顔料選定が非常に重要な因子となる(特許文献1〜4参照)。特許文献1には、目的とする色再現領域を達成するためには5色での印刷が必要であることが記載されている。ところが、多くの大判インクジェットプリンターでは、機体コストを抑え、装置を小型化するため、イエロー、シアン、マゼンタのカラー3色のみで印刷が行われており、特許文献1のようなカラー5色の採用は好ましいものではない。
一方、広告看板市場などで耐候性に優れた顔料を選定する必要がある場合、マゼンタインキについてはC.I.PigmentRed122やC.I.PigmentViolet19等のキナクリドン顔料が選択されることが多い。しかしながら、キナクリドン顔料を使用したマゼンタインキは、染料や他のマゼンタ顔料を使用したものと比較して着色力が弱く、満足な色再現領域を実現する事ができないという問題点が存在する。特許文献2、3には、前記問題を解決すべく、無置換キナクリドンと2,9−ジクロルキナクリドン、あるいは無置換キナクリドンとジメチルキナクリドンが同一結晶内に溶け合った、キナクリドン固溶体顔料を使用し、色再現領域を向上させようとした検討について記載されている。一般に固溶体顔料とすることで、顔料の着色力や発色性をある程度改善することが可能であるが、キナクリドン顔料の場合、元来の着色力の低さゆえに、固溶体顔料としても発色性を改善しきれず、その場合、目的の色再現領域を実現するためインキ中の顔料濃度を上げる等の所作が必要となる。更に、固溶体顔料を使用した顔料分散体は保存安定性に乏しいという問題点も存在し、これらの観点から、キナクリドン固溶体顔料の使用は好ましくないといえる。
また近年では、上記の問題点を解決しうるマゼンタ顔料としてアゾ系顔料が着目されている。従来、アゾ系顔料は、分散性、耐候性、経時安定性が悪い事や、顔料合成時に使用されている原料がインクジェットヘッドノズル近傍にて再結晶する事によるノズル詰まりが発生するといった問題点が有り、好ましく用いられるものではなかった。一方で特許文献4には、前記問題を解決したとして、アゾ顔料であるC.I.PigmentRed150を使用したインキの開示がある。しかし、C.I.PigmentRed150単独では印刷色基準となるジャパンカラーのマゼンタ色を示すことができないという問題点があり、印刷時に、シアンやイエローなど他色と混色印刷することでジャパンカラーのマゼンタ色を表す事は可能であるが、印刷条件のブレにより色ずれが起こる事は容易に推測でき、前記インキの採用も好ましいとはいえない。
特開2009−024072号公報 国際公開第2008/043692号 特許第4473392号 特開2010−195909号公報
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、印刷物の耐候性、高濃度感、色再現性、およびインキの保存安定性の面で総合的に優れた水性インクジェットマゼンタインキを提供する事にある。また、インキセットを構成する各インキ間の耐候性や、色再現領域のバランスに優れたインキセット、該インキセットを用いたインクジェット記録方法及び該インクジェット記録方法により記録された記録物の製造方法を提供することにある。
本発明者は今般、カラーインクジェット記録方法において、特定の顔料を含んだ水性インクジェットマゼンタインキが良好な画像を実現できるとの知見を得た。更に、本発明の水性インクジェットマゼンタインキと特定のカラーインキを組み合わせて用いる事で、カラーバランスが良好な画像が得られるとの知見を得た。
すなわち本発明は、少なくとも2種類以上の顔料、及び、水を含有し、記録媒体上での、CIELAB色空間において定義される色相角∠H°が330°〜360°の範囲である水性インクジェットマゼンタインキであって、前記2種類以上の顔料は、それぞれが異なる結晶構造を有するとともに、互いに固溶体を形成しておらず、前記2種類以上の顔料のうち第1の顔料は、前記色相角∠H°が290°〜360°の範囲を示す顔料であり、第2の顔料は、前記色相角∠H°が25°〜50°の範囲を示す顔料であり、前記第1の顔料が、C.I.PigmentRed31、122、147、269、および、C.I.PigmentViolet32から選択される何れかの顔料を含むことを特徴とする、水性インクジェットマゼンタインキ(ただし、顔料が無機顔料粒子を2種類以上の有機顔料で被覆した色材粒子を含む場合を除く)に関する。
また本発明は、記録媒体上での分光反射率が、480〜580nmの波長領域において10%以下であることを特徴とする、水性インクジェットマゼンタインキに関する。
また本発明は、前記第1の顔料の含有率が、前記水性インクジェットマゼンタインキに含まれる顔料全量に対し、20〜90重量%であることを特徴とする、水性インクジェットマゼンタインキに関する。
また本発明は、前記第2の顔料が、C.I.PigmentRed166、177、179、254、255、264から選択される何れかの顔料を含むことを特徴とする、水性インクジェットマゼンタインキに関する。
また本発明は、少なくとも水性インクジェットイエローインキ、水性インクジェットマゼンタインキ、水性インクジェットシアンインキを含むインクジェットインキセットであって、前記水性インクジェットマゼンタインキが、上記水性インクジェット記録用マゼンタインキである、水性インクジェット記録用インキセットに関する。
また本発明は、上記水性インクジェット記録用インキセットを用いて得られる記録物の製造方法に関する。
本発明の水性インクジェットマゼンタインキによって、印刷物の耐候性、高濃度感、色再現性、およびインキの保存安定性を総合的に向上させる事に成功した。また、該水性インクジェットマゼンタインキを備えたインクジェット用インキセット、及び記録物は、水性インクジェットマゼンタインキ以外のカラーインキとの退色バランスや色再現領域バランスに優れている。
以下に、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また本発明は、以下の実施形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。なお、特にことわりの無い限り、「部」「%」は、「重量部」「重量%」を表す。
<水性インクジェットマゼンタインキ>
本発明のマゼンタインキは、少なくとも2種類以上の顔料を含有し、CIELAB色空間において定義される色相角∠H°が330°〜360°の範囲である。オフセット印刷等の既存印刷市場へのインクジェット印刷方式の応用を実現するには、オフセット印刷標準化(PSO)のため規定されているオフセット印刷国際規格(ISO12647−2)に準拠した印刷色規格、例えばJapanColor(日本オフセット枚葉印刷色規格)、Fogra(ドイツ印刷関連規格)、SWOP(米国オフ輪印刷規格)等を満たすことが求められる。マゼンタ色については、前記色相角を満たすことで、上記の各印刷色規格を満たした、すなわち色再現性に優れた印刷物を得る事が可能となる。
なお本発明において、マゼンタインキの色相角∠H°は、記録媒体上にウェット膜厚6μmとなるように塗工し、乾燥することで作製した塗工物を用いて算出される。具体的には、松尾産業株式会社製KコントロールコーターK202、ワイヤーバーNo.1を用いて前記マゼンタインキを塗工したのち、80℃オーブンにて1分間以上乾燥し塗工物を作成する。次いで、X−rite社製i1Pro2を用い光源D50、視野角2°、CIE表色系の条件で測定を行い、得られたa*、b*値を用いて、∠H°=tan-1(b*/a*)+180(a*<0の場合)、または∠H°=tan-1(b*/a*)+360(a*>0の場合)により求められる。白色基材としては特に限定されないが、UPM Finess Gloss紙を用いる事が特に好ましい。
また本発明のマゼンタインキは、上記方法で作成されたウェット膜厚6μmの塗工物の分光反射率が、480〜580nmの波長領域にて10%以下である事が好ましい。印刷物の反射濃度値はISO5−3で規定された方法で算出されるものであり、マゼンタ色の測色にはStatusTのGreenフィルターが用いられる。480〜580nmの波長領域における分光反射率を10%以下に抑え込む事により、顔料濃度が小さくても濃度感に優れたマゼンタインキを得ることが可能となる。
なお、塗工物の480〜580nmの波長領域における分光反射率については、上記の色相角∠H°と同様に、X−rite社製i1Pro2を用いて測定することができる。
さらに本発明のマゼンタインキに含まれる2種類以上の顔料は、それぞれが異なる結晶構造を有するとともに、互いに固溶体を形成していない事を特徴とする。
従来技術でも説明した様に、単独のマゼンタ顔料でインキを作製した際、本発明の課題である、印刷物の耐候性、高濃度感、色再現性、およびインキの保存安定性の一部を満足するような顔料は存在するが、その全てを満たすようなものは存在しない現状である。例えば、キナクリドン系顔料は一般的にマゼンタ色における耐候性顔料として知られており、また色相角∠H°が330°〜360°の範囲であるキナクリドン系顔料(例えば、C.I.PigmentRed122)を選択する事で、色再現性の良いマゼンタインキを得る事ができる。しかしながら顔料特性上、キナクリドン系顔料では波長領域480〜580nmでの分光反射率を10%以下に抑え込む事ができず、濃度感に優れた印刷物を得る事ができない。またジケトピロロピロール系顔料やアントラキノン系顔料を使用した場合は、上記の色相角を満たすことができず、結果としてオフセット印刷物の国際色規格を満たすことができない、色再現性に劣るマゼンタインキとなってしまう。
そこで本発明では、特定の色相角を有する顔料を、好ましくは好適な配合比で併用することで、色相角と分光反射率を両立しつつ耐候性に優れる、すなわち、印刷物の耐候性、高濃度感、色再現性を両立することが可能となった。さらに、本発明の顔料の組合せであれば、固溶体を形成させずとも、良好な着色力、濃度感や色再現性を確保することができ、また固溶体顔料を使用しないことで、課題であったマゼンタインキの保存安定性についても良好なものにできる。
なお、本発明のマゼンタインキにそれぞれが異なる結晶構造を有する2種類以上の顔料を含める方法として、初めから2種類以上の顔料を混在させて分散しても、別々に分散した2種類以上の顔料分散体を後から混合しても良い。
<マゼンタインキに使用される顔料>
本発明で使用することができるマゼンタ顔料としては、例えば、C.I.PigmentRed5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122、146、147、150、166、177、178、179、185、202、238、242、254、255、264、266、269、282、C.I.PigmentViolet1、3、19、23、29、30、37、40、43、50、C.I.PigmentOrange13、16、34、36、38、43、64、67、71、72、73等が挙げられ、これらのうち2種以上が好適に用いられる。
本発明のマゼンタインキは、マゼンタ領域の色再現領域を確保し、印刷色規格を満たすべく、前記色相角∠H°が290°〜360°の範囲を示す第1の顔料と、前記色相角∠H°が25°〜50°の範囲を示す第2の顔料を少なくとも含むことを特徴とする。
上記で例示した顔料のうち、第1の顔料としては、耐候性や印刷物色再現領域の観点から、C.I.PigmentRed31、122、147、269、C.I.PigmentViolet32が好ましく選択される。なかでも、印刷物の経時保管による変退色軽減の観点から、前記第1の顔料としてC.I.PigmentRed122を含むことがより好ましい。
また第2の顔料としては、記録媒体上での分光反射率を測定した際に、480〜560nmの波長領域において10%以下であることが好ましい。上記で例示した顔料のうち、第2の顔料としてはC.I.Pigment Red166、177、179、254、255、264が好ましく選択され、中でもC.I.Pigment Red177、254を選択することが特に好ましい。
なお第2の顔料の分光反射率は、上記で示したマゼンタインキの分光反射率と同様に測定することが可能である。その際、塗工物の作成に使用するインキとして、前記マゼンタインキ中の顔料を全て第2の顔料に置き換え、かつ、第2の顔料の含有量がマゼンタインキ全量に対し5重量%となるようにインキ中の水の配合量を調整したインキが用いられる。
マゼンタインキに含まれる顔料の総量としては、インキ中0.1〜10%重量部含む事が好ましく、1〜9.5重量部である事がより好ましい。また、保存安定性と色再現性を更に良化させることができる点から、第1の顔料の含有率は、マゼンタインキに含まれる顔料全量に対し20〜90重量%であることが好ましく、40〜80重量%であることがより好ましい。
<インキセット>
本発明のマゼンタインキと、イエローインキ、シアンインキとを組み合わせたインキセットは、紫〜橙色領域の色再現性や濃度感に優れ、色再現領域のバランスが良好である。なお更に、バイオレットインキ及び/またはオレンジインキを組み合わせることで、より色域の広いインキセットとすることができる。
<シアンインキ>
本発明で使用することができるシアンインキに含まれるシアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、22、C.I.Vat Blue4、6等が挙げられる。なかでも、C.I.Pigment Blue15:3及び15:4から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
色再現性や濃度感の観点から、前記シアンインキに含まれるシアン顔料は、インキ中0.1〜10%重量部含む事が好ましく、1〜9.5重量部である事がより好ましい。
<イエローインキ>
また、本発明で使用することができるイエローインキに含まれるイエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow1、2、3、10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213等が挙げられる。なかでも、C.I.Pigment Yellow12、13、14、74、83、120、150、151、154、155、180、185からなる群から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
色再現性や濃度感の観点から、前記イエローインキに含まれるイエロー顔料は、インキ中0.1〜10%重量部含む事が好ましく、1〜9.5重量部である事がより好ましい。
<オレンジインキ>
本発明において更にオレンジインキを使用する場合、オレンジインキに含まれる顔料としては、例えば、C.I.PigmentOrange5,13,43,62及び64並びにC.I.PigmentRed17,49:2,112,149,177,178,188,255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。中でも、オレンジインキの保存安定性やインクジェット吐出安定性の点から、C.I.PigmentOrange64を含むことが好ましい。
色再現性や濃度感の観点から、前記オレンジインキに含まれる顔料は、インキ中0.1〜10重量部含むことが好ましく、2重量部〜9.5重量部であることがより好ましい。
またオレンジインキを使用する場合、上記の顔料に加えて、更に上記とは別にマゼンタ顔料を含むことが好ましい。オレンジインキに、マゼンタ顔料を含むことにより、レッド領域の色再現性がいっそう高くなるためである。
オレンジインキに好適に含まれる他のマゼンタ顔料としては、具体的にはC.I.PigmentRed122,146,150,202,209、269及びC.I.PigmentViolet19等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、C.I.PigmentRed122,146,150、C.I.PigmentViolet19が好ましい。
オレンジインキがマゼンタ顔料を含む場合は、オレンジインキに含まれる全顔料100重量部に対して、マゼンタ顔料を0.5〜60重量部含むことが好ましく、1〜55重量部であることがより好ましく、1.5〜50重量部であることが更に好ましい。
<バイオレットインキ>
本発明において更にバイオレットインキを使用する場合、バイオレットインキに含まれる顔料としては、例えば、C.I.PigmentViolet1、3、23、27、32、37からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。中でも、バイオレットインキ安定性やインクジェット吐出安定性の点から、C.I.PigmentViolet23を含むことが好ましい。
<その他カラーインキ>
本発明では、インキセットとしての色再現性を高めるため、更にグリーンインキやブラウンインキなどを組み合わせることができる。本発明において更にグリーンインキを使用する場合、グリーンインキに含まれる顔料としては、例えば、C.I.PigmentGreen7、36、58からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。
また、用途や画質に応じて、インキ中の顔料濃度が低いライトイエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレーなどの淡色インキ等も併用する事が可能である。なおライトマゼンタインキを併用する場合、本発明のマゼンタインキで使用している複数のマゼンタ顔料を使用することが好ましい。
<ブラックインキ>
本発明のインキセットには、更にブラックインキを含める事も可能である。ブラックインキを併用する事で、文字の表現やコントラスト表現が優れ、より高精細な画像を得る事が可能となる。
本発明で使用することができるブラックの顔料としては、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンブラック等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料が挙げられる。また、上記のイエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などのカラー顔料を複数用いてブラックの顔料として使用することもできる。
本発明で使用することができるカーボンブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。中でも、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10重量%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては、例えば、No.25、30、33、40、44、45、52、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、2300、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(三菱化学株式会社製)、RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000P、1060UP、1080UP、1255(コロンビアンカーボン社製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(キャボット社製)、Nipex160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;Nerox305、500、505、600、605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)などがあり、何れも好ましく使用することができる。
ブラックインキに含まれる顔料は、インキ中0.1〜10%重量部含む事が好ましく、1〜9.5重量部である事がより好ましい。
<ホワイトインキ>
また本発明のインキセットには、ホワイトインキを含む事ができる。ホワイトインキを併用する事によって、透明な記録媒体や、明度が低い記録媒体に対して良好な視認性を有し、特にマゼンタインキを含むカラーセットと併用する事によって、白色媒体に記録する時と同様な鮮明で高精細なフルカラー印刷物を提供する事が可能となる。
ホワイトインキに含まれる顔料としては、無機または有機の顔料を用いる事ができる。無機の白色顔料としては、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。隠蔽性や着色力の観点から、酸化チタンが最も好ましい。
ホワイト顔料の平均粒子径は50〜500nmである事が好ましい。平均粒子径を前記範囲内に収めることで、隠蔽性、インキ保存安定性、インクジェット印刷適性を両立することができる。なお、より好ましくは100〜400nmである。
ホワイトインキに含まれる顔料は、ホワイトインキ中3〜50重量部含む事が好ましく、5〜30重量部含む事がより好ましい。
<顔料分散樹脂>
本発明で用いられる複数のマゼンタ顔料を、インクジェットインキ中で安定的に分散保持する方法として、顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し分散剤や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法、自己分散性がある樹脂で顔料を被覆しマイクロカプセル化する方法などを挙げることができる。
上記の分散方法のなかでも、特に顔料分散樹脂にて分散される方法を用いる事が好ましい。これは分散樹脂のモノマー組成や分子量を選定・検討する事により、顔料に対する樹脂吸着能を上げる事が容易に可能であり、微細な顔料に対しても分散安定性を付与する事が可能となることにより、発色性に優れ、色再現領域の拡大を実現した水性インキを提供する事が可能となるからである。
顔料分散樹脂の種類としては特に制限は無いが、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。インキ組成物の保存安定性の面では、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂が好ましく、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂が特に好ましい。またその構造についても特に制限は無いが、ランダム構造、ブロック構造、櫛形構造、星型構造等が挙げられる。
本発明のマゼンタインキでは、顔料分散樹脂に芳香族基を導入することが、顔料分散性を高め、分散安定性を向上させることが可能となるため好ましい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基等が挙げられるが、中でもフェニル基、ナフチル基、トリル基が分散安定性の面から好ましい。理由としては、本発明で使用されるマゼンタ顔料の骨格内に含まれる芳香族基と、顔料分散樹脂中に含まれる芳香族基が相互作用する事により、顔料に対する顔料分散樹脂の吸着能力が著しく向上し、顔料の微細分散を実施したとしても、長期での保存安定性を確保する事が可能となるためである。
顔料分散樹脂中の芳香族基含有比率としては、樹脂合成時に使用されるモノマー全量に対し、10重量%以上70重量%以下である事が好ましく、15重量%以上50重量%以下である事が特に好ましい。10重量%以上とすることで、マゼンタ顔料への吸着能力を良好なものとすることができ、結果として優れた保存安定性を確保する事ができる。また70重量%以下とすることで、顔料分散体やマゼンタインキの粘度を、インクジェット用途に適した範囲に収めることができる。
また更に、樹脂骨格内に炭素数10〜36のアルキル基を有する顔料分散樹脂を用いる事が、インキ保存安定性の観点からより好ましい。炭素数10〜36のアルキル基を有していれば樹脂の種類は特に限定されない。
なお、アルキル基を有する樹脂を合成する方法として、基本となる樹脂骨格がもつカルボン酸などの官能基へアルキル基を有するアルコールやアミンを縮合させる方法や、樹脂合成時にアルキル基を有するモノマーを使用することでアルキル基を有する樹脂を合成する方法が挙げられる。
分散樹脂骨格内に有するアルキル基は炭素数10〜36の範囲が特に好ましく、直鎖であっても分岐していても何れも使用することができるが、直鎖状のものがより好ましい。なお直鎖のアルキル基としてはラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタノイル基(C32)、テトラトリアコンタノイル基(C34)、ヘキサトリアコンタノイル基(C36)等が挙げられる。顔料分散樹脂の有するアルキル基の炭素数を10〜36とすることで、顔料分散体やマゼンタインキの保存安定性や低粘度化を実現する事が可能となる。またアルキル基の炭素数として、好ましくは炭素数12〜30であり、更に好ましくは炭素数18〜24である。
また顔料分散樹脂の酸価については、50〜400mgKOH/gであることが好ましい。酸価が50mgKOH/gよりも小さいと樹脂が水に対し溶解しにくくなるため、分散体の粘度が高くなる。また、400mgKOH/gよりも大きい場合であっても樹脂間での相互作用が強まり、粘度が高くなる。顔料分散樹脂の酸価は、好ましくは100〜350mgKOH/gであり、更に好ましくは150〜300mgKOH/gである。
前記分散樹脂の分子量に関しては、重量平均分子量が1,000以上100,000以下の範囲内である事が好ましく、5,000以上50,000以下の範囲である事がより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、また水性インキ組成物に適用した際の粘度調整等が行い易い。重量平均分子量が1,000以下であると、インキ組成物中に添加されている溶剤に対し分散樹脂が溶解し易いために、顔料に吸着した樹脂が脱離するため、分散安定性が著しく悪化してしまう。重量平均分子量が100,000以上であると、分散時粘度が高くなると共に、インクジェットヘッドからの吐出安定性が著しく悪化するため、印刷安定性が低下してしまう。
また顔料分散樹脂は水への溶解度を上げるために、樹脂中の酸基を塩基で中和してあることが好ましい。塩基としてはアンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基や水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができる。
前記顔料と顔料分散樹脂との重量比率は2/1〜100/1であることが好ましい。顔料分散樹脂の比率を上記範囲に収めることで、顔料分散体やマゼンタインキの粘度を低く保つことができるとともに、分散性や、粘度、分散等の安定性が向上する。顔料と顔料分散樹脂の比率としてより好ましくは20/9〜50/1、更に好ましくは5/2〜25/1であり、最も好ましくは20/7〜20/1である。
<顔料誘導体>
本発明では、マゼンタ顔料に対する顔料分散樹脂の吸着性を向上させ、顔料の分散安定性を向上させる目的で、顔料誘導体を使用することができる。顔料誘導体としては、有機顔料を基本骨格とし、分子内に置換基を導入した化合物が好適であり、例えば下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
[一般式(1)]
Figure 0006123144
一般式(1)中、Pはn1価の有機色素残基であり、n1は1以上の整数、Z1はスルホン酸基、またはカルボキシル基を表す。n1は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。また、Z1はスルホン酸基であることが好ましい。
[一般式(2)]
Figure 0006123144
一般式(2)中、Pはn2価の有機色素残基であり、n2は1以上の整数、Z2はSO3 -またはCOO-を、Z3は、アルカリ金属カチオン、NH4 +、第1級アンモニウムカチオン、第2級アンモニウムカチオン、第3級アンモニウムカチオン、または第4級アンモニウムカチオンを表す。n2は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。
[一般式(3)]
Figure 0006123144
一般式(3)中、Pはn3価の有機色素残基であり、n3は1以上の整数、R1は下記一般式(4)で表される有機基を表す。n3は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2、最も好ましくは1である。
[一般式(4)]
Figure 0006123144
一般式(4)中、R2は(m+1)価の有機残基を示し、mは1以上の整数、R3は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキレン基を表す。R2は炭素数1〜10の2価のアルキレン基が好ましく、より好ましくは1〜5のアルキレン基である。またR3は全て水素原子であることが好ましい。
前記有機色素残基(P)としてはアゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、フラバンスロン系、ピランスロン系、またはアンスラピリミジン系が挙げられる。有機色素残基(P)の構造は必ずしもインキに使用する顔料の構造と一致する必要はないが、インキの色相と近い色相のものを選択することが好ましい。更には有機色素残基(P)をインキに使用する顔料と近い構造のものにすることが好ましい。これにより、顔料との吸着が高まり、安定性向上の効果が発現しやすくなる。
本発明では、顔料誘導体はインキ中の顔料全量に対して0.1重量%以上10重量%以下の割合で配合することが好ましく、0.1重量%以上5重量%以下の割合で配合することが特に好ましい。0.1重量%以上とすることで、顔料に対する添加比率が十分な量となり、分散安定性が向上する。また10重量%以下とすることで、顔料微細化が必要以上に進むことなく、長期での保存安定性に優れた顔料分散体が得られるため、好ましい。
本発明で使用されるマゼンタ顔料に対しては、一般式(3)で表される顔料誘導体と、少なくとも芳香族基を有する顔料分散樹脂の両者を使用する事により、前記マゼンタ顔料を微細化する事が可能となり、且つ粒度分布を狭くする事が実現できることから、特に好ましい。前記結果により、マゼンタインキ内に含有される粗大粒子量が著しく少なくなる事から、インクジェットヘッドからの吐出安定性向上による印刷安定性の改善や、インクジェットインキとしての長期保存安定性の改善を実現する事が可能となる。また分散状態を固溶体顔料未使用にも関わらず、着色性、色再現性等に優れたマゼンタインキを得ることが可能となる。
さらに、印刷物のインキ塗膜表面に存在する粗大粒子の量が著しく低下し、塗膜面の平滑性が増す事により、印刷物に入射した光の乱反射を抑える事が可能となる。そのため、本発明の特徴である、波長領域480〜580nmでの分光反射率を更に抑えることができ、印刷物の更なる高濃度化を実現する事が可能となる。
<顔料分散体の製造方法>
顔料分散体の製造方法としては例えば下記の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。まず顔料分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料、及び必要に応じて顔料誘導体を添加し、混合攪拌した後、分散機を用いて分散処理を行う。この後、必要に応じて遠心分離や濾過を行い、顔料分散体を得ることができる。用いる分散機としては湿式分散機であれば何れであっても使用することができるが、中でもビーズミルを用いることが好ましい。
<溶剤>
本発明で使用することができる溶剤について説明する。溶剤としては、目的を妨げない限り自由に選択する事ができる。なかでも、25℃での表面張力が20mN/m以上35mN/m以下で、水に可溶なものが好ましい。溶媒の表面張力は『改訂第5版 化学便覧 基礎編 日本化学会編』に各種有機化合物についての表面張力が記載されており、参照できる。また、協和界面科学社製 表面張力計CBVP‐Zを用いて測定する事が可能である。
溶剤の25℃での表面張力については、上記記載のように20mN/m以上35mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上32mN/m以下が最も好ましい。水に可溶な溶剤で、且つ有機溶剤の表面張力が35mN/m以下の溶剤を選択する理由は、マゼンタインキの静的表面張力を低下させることが可能となり、印刷基材に対する濡れ性や浸透性が良化するため、画像品質や印刷乾燥性の改善を実現する事が可能となるためである。
また、使用する溶剤の25℃での粘度としては、1mPa・s以上20mPa・s以下であることが特徴である。粘度は市販の粘度計である東機産業製TVE−25L(コーンプレートタイプE型粘度計)により測定することができる。
水に可溶で、且つ上記特性を有する溶剤種としては、アルキルポリオール類が好ましい。なかでも、1気圧下での沸点が180℃以上250℃以下の範囲内である事が好ましく、沸点が180℃以上230℃以下の範囲内である事がより好ましい。これは、上記の沸点範囲を満たすアルキルポリオールを用いる事により、被記録媒体種の影響を受けずに、水性インキ組成物の基材に対する濡れ性や浸透性、又はマゼンタインキ自体の乾燥性を容易に制御する事が可能となるためである。またこれにより、インクジェットヘッドノズル上での保湿性を維持しつつ、様々な被印刷媒体に対して乾燥装置を大型化せずとも、定着性に優れた画像を直接描画にて作成する事が可能となる。
なお、本明細書における1気圧下での沸点は、熱分析装置を用い測定する事が可能である。
上記沸点が180℃以上250℃以下のアルキルポリオールとしては、以下に限定されないが、例えば1,2−プロパンジオール(沸点188℃)、1,2−ブタンジオール(沸点194℃)、エチレングリコール(沸点196℃)、1,2−エタンジオール(沸点197℃)、2−メチルペンタン−2,4−ジオール(沸点197℃)、ジブチレングリコール(沸点202℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点203℃)、1,3−ブチレングリコール(沸点207℃)、1,3−ブタンジオール(沸点208℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点210℃)、1,3−プロパンジオール(沸点210℃)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(沸点210℃)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(沸点214℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(沸点226℃)、1,2−ヘプタンジオール(沸点227℃)、1,4−ブタンジオール(沸点230℃)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール(沸点230℃)、ジプロピレングリコール(沸点230℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点242℃)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(沸点244℃)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(沸点249℃)、及び1,6−ヘキサンジオール(沸点250℃)が挙げられる。
好ましくは上記のアルキルポリオールが2種以上含まれ、且つアルキルポリオールの合計含有量としてはマゼンタインキ全量に対し10重量%超過30重量%以下の範囲である。必須成分としてアルキルポリオールを2種以上、上記の含有量範囲内で使用することで、基材に対する濡れ性、浸透性や乾燥性を容易に制御する事が可能となり、結果として、吸収層を有する基材及び難吸収性基材のどちらに対しても、品質に優れた画像を得ることができる。
特に前記2種以上含有されているアルキルポリオール溶剤のうち、少なくとも1種がアルカンジオールである事が好ましく、アルキルポリオール溶剤全てがアルカンジオールのみである事がより好ましい。理由としては、産業用途印刷物基材として一般的に挙げられるコート紙やアート紙、またはポリ塩化ビニルシートなど疎水性の高い難浸透性基材上での水性インキ組成物の濡れ性を高め、基材上でのドットセット性能を良化させ、画像品質を向上させることができるためである。
上記で例示したアルキルポリオールのなかでも、1,2−プロパンジオール(沸点188℃)、1,2−ブタンジオール(沸点194℃)、1,3−ブタンジオール(沸点208℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点210℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点242℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)、1,6−ヘキサンジオール(沸点250℃)、1,2−ヘプタンジオール(沸点227℃)が保湿性、乾燥性の観点から好ましく使用される。また理由は定かではないが、これらの溶剤は、本発明のマゼンタ顔料の分散状態に悪影響を及ぼしにくく、結果としてマゼンタインキの保存安定性を良好なものとすることができる点からも、好ましく選択される。
また、その他の有機溶剤もインキ組成物の保湿性や基材への浸透性を調整するために併用することができる。その他の有機溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等の複素環化合物が挙げられ、これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
<バインダー樹脂>
本発明のマゼンタインキにはバインダー樹脂を加える事が好ましい。一般に、水性インクジェットインキのバインダー樹脂としては、水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られている。樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であること、また樹脂微粒子はインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をマゼンタインキ中に配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。樹脂微粒子として使用される樹脂の種類としては、アクリル系、スチレンアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系等が挙げられる。中でも、マゼンタインキの安定性、印刷物の耐性の面を考慮するとアクリル系、スチレンアクリル系の樹脂微粒子が好ましく使用される。
一方で、マゼンタインキ中のバインダー樹脂が樹脂微粒子である場合、水が揮発した際に分散状態であった樹脂微粒子が凝集し、成膜し始めることにより、インクジェットヘッドノズルでの目詰まりが発生し、印刷安定性が低下することがある。樹脂微粒子のモノマー組成をコントロールし、ガラス転移点(Tg)を80℃以上にする事で、水が揮発した際の凝集はある程度軽減はされるものの、マゼンタインキ中に添加されている溶剤が樹脂微粒子の最低造膜温度(MFT)を低下させるため、完全解決には至らない。
これらの背景から、インクジェットプリンターのメンテナンス性能を考慮すると、本発明ではバインダー樹脂が水溶性樹脂であることがより好ましい。水溶性樹脂としては、重量平均分子量が5,000以上50,000以下の範囲内である事が好ましく、10,000以上40,000以下の範囲内である事がより好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることで、印刷物の塗膜耐性を良好なものとすることができ、重量平均分子量を50,000以下とすることで、インクジェットヘッドからの吐出安定性をが良好なものとし、印刷安定性に優れたマゼンタインキを得ることが可能となるためである。
また、バインダー樹脂に水溶性樹脂を選択する際には酸価も重要であり、酸価が10〜80mgKOH/gである事が好ましく、酸価が20〜50mgKOH/gである事がより好ましい。酸価が10mgKOH/g以下では、インキが固化してしまうと再度溶解する事が難しいため、樹脂微粒子同様インクジェットヘッドノズル上での目詰まりが発生し、印刷安定性が著しく低下するため、好ましくない。また酸価が80mgKOH/g以上であると、水性インキ組成物が固化しても再度溶解する事が可能であるものの、印刷物塗膜の耐水性が著しく悪化するため好ましくない。
前記のようなバインダー樹脂のインキ組成物中における含有量は、固形分でマゼンタインキの全質量の2重量%以上、10重量%以下の範囲であり、より好ましくは3重量%以上、8重量%以下の範囲であり、特に好ましくは3重量%以上、6重量%以下の範囲である。
<界面活性剤>
本発明のマゼンタインキには、表面張力を調整し印刷基材上でのインキの濡れ性を確保する目的で、界面活性剤を添加する事がより好ましい。本発明では、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の何れの界面活性剤も用いる事が可能である。
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪酸アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、
第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコールなどが挙げられる。
界面活性剤のなかでも、印刷基材への濡れ性を向上させるためにも、表面張力調整剤を用いる事が好ましく、具体的には、アセチレンジオール系、シリコン系、アクリル系、フッ素系が好ましい。特にマゼンタインキの表面張力を制御して下げるという観点からは、アセチレンジオール系、またはシリコン系界面活性剤を使用する事が好ましい。上記の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
そのうちシリコン系界面活性剤に関しては、機能付与のため様々な構造の活性剤が各社から上市されている。本発明のマゼンタインキに対し、印刷基材への濡れ性や浸透性を付与させるには、一般式(5)〜(7)で表される化合物を使用する事が好ましく、より好ましくは一般式(6)または一般式(7)で表される化合物であり、更に好ましくは一般式(6)で表される化合物である。界面活性剤添加量の例としては、インク全体量に対して、0.1重量%以上5.0重量%以下が好ましく、0.5重量%以上3.0重量%以下が更に好ましい。
[一般式(5)]
Figure 0006123144
(一般式(5)中、aは1〜500の整数、bは0〜10の整数、R4はアルキル基、またはアリール基を示す。
5は下記(A)、(B)、(C)、(D)の内の何れかの置換基で示され、R5の内、少なくとも一つは(A)を含む。)
(A)
Figure 0006123144

(ただし、cは1〜20の整数であり、dは0〜50の整数であり、eは0〜50の整数である。
6は水素原子またはアルキル基を示し、
7は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(B)
Figure 0006123144

(ただし、fは2〜20の整数である。
8は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示す。)
(C)
Figure 0006123144

(ただし、gは2〜6の整数であり、hは0〜20の整数であり、iは1〜50の整数であり、jは0〜10の整数であり、kは0〜10の整数である。
9は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(D)

アルキル基、またはアリール基である。
[一般式(6)]
Figure 0006123144
(一般式(6)中、lは10〜80の整数を示す。
10は下記(E)の置換基で示される。)
(E)
Figure 0006123144

(ただし、mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R11は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
[一般式(7)]
Figure 0006123144
(一般式(7)中、pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。
12は下記(F)の置換基で示され、
13は炭素数1〜6のアルキル基で示される。)
(F)
Figure 0006123144

(ただし、rは1〜6の整数、sは0〜50の整数、tは0〜50の整数であり、s+tは1以上の整数で示される。
14は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
アセチレンジオール系界面活性剤に関しても、シリコン系界面活性剤同様に、機能付与のため様々な構造の活性剤が各社から上市されている。例えば、アセチレン系界面活性剤としては、サーフィノール61、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、465、485、SE、SE−F、DF110−D、ダイノール604、607(エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(日信化学工業社製)などを挙げることができる。上記のアセチレンジオール系界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アセチレンジオール系界面活性剤のなかでも、HLB値が低いものを用いるほど、水性インクジェットインキの動的表面張力を著しく低下する事が可能となり、浸透系印刷基材だけで無く、樹脂コーティングされているような印刷基材に対してもインキの濡れ性を改善することができるため、幅広い印刷基材に対し印刷物画像品質を著しく向上する事が可能となる。HLB値としては、8以下であることが好ましく、4以下であることが特に好ましい。なかでも、サーフィノール104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、SE、SE−F、DF110−D、ダイノール604、607を用いる事が好ましい。
また、前記アセチレンジオール系界面活性剤の添加量としては、0.1重量%以上5.0重量%以下が好ましく、0.5重量%以上4.0重量%以下である事がより好ましい。0.1重量%以上とすることで、マゼンタインキの動的表面張力を十分に低下する効果が得られ、印刷物画像を改善することが可能となる。また5.0重量%以下とすることで、マゼンタインキの動的表面張力を好適な範囲内に収めることが可能となり、インクジェットヘッドノズル周辺へのマゼンタインキのぬれや、メニスカスの制御が可能となり、インクジェットヘッドからの安定吐出が可能となり、印刷安定性が向上するため好ましい。
特に、前記一般式(6)で表されるシリコン系界面活性剤と、HLB値が8以下のアセチレンジオール系界面活性剤をマゼンタインキに併用する事で、幅広い印刷基材に対して画像品質良好なインクジェット印刷物を作成する事が可能となる。原理としては推測の域を超えないが、マゼンタインキの動的表面張力をアセチレンジオール系界面活性剤により著しく低下させる事で、幅広い印刷基材に対するインキの濡れ性が付与されると共に、一般式(6)で表されるシリコン系界面活性剤により、インキ液滴の混色を制御する事が可能となるため、画像品質が良化されると考えている。
印刷基材上にてマゼンタインキが蒸発する過程において、印刷基材上での濡れ性を制御し、印刷物品質を向上させるためには、界面活性剤の分子量も重要である。分子量としては重量平均分子量で1,000以上7,000以下である事が好ましく、1,500以上5,000以下の範囲内である事がより好ましい。分子量を上記範囲内に収めることで、印刷基材に対する濡れの制御と、マゼンタインキの保存安定性の両立が可能となる。
<インキ中の水含有量>
水の含有量としては、マゼンタインキの全重量の45〜95重量%、更に好ましくは50〜75重量%の範囲であることが好ましい。
本発明のマゼンタインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
<その他の成分>
また本発明のマゼンタインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、増粘剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全重量に対して、0.01重量%以上10重量%以下が好適である。
なお、本発明のマゼンタインキは重合性モノマーを実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは意図的に添加しないことを表すものであり、インクジェットインキを製造・保管する際の微量の混入または発生を除外するものではない。
<インクジェット印刷方式>
本発明に用いるインクジェット印刷方式として、記録媒体に対しインクジェットインキを1回だけ吐出して記録するシングルパス方式、及び、記録媒体の最大記録幅の間を、記録媒体の搬送方向と直行する方向に短尺のシャトルヘッドを往復走査させながら記録を行うシリアル型方式の何れを採用しても良い。またインクジェット記録装置としては、インクジェットインキを吐出するインクジェットヘッド(インク吐出手段)と、インクジェットヘッドから吐出されたインクを乾燥させる乾燥工程を備える必要がある。インクジェットヘッドからインキが吐出されると、吐出されたインキは印刷基材上に着弾し画像が記録され、画像は印刷基材が搬送されるに従い、乾燥装置内に搬送され、乾燥処理が行われる。
インクジェット法には特に制限は無く、公知の方法、例えば静電誘引力を利用してインキを吐出させる電荷制御方法、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインキに照射して放射圧を利用しインキを吐出させる音響インクジェット方式、及びインキを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等の何れであっても良い。
またインクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニアス方式でも構わない。さらに吐出法式としては、電気‐機械変換方式(例:シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアモード型、シェアードウォール型等)、電気‐熱変換方式(例:サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例:電解制御型、スリットジェット型等)、及び放電方式(例:スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げる事ができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。なお、インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができる。
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、乾燥負荷軽減効果が大きく、画像品質の向上という点でも、0.2〜20ピコリットル(pL)が好ましく、1〜15ピコリットル(pL)がより好ましい。
<記録媒体>
本発明のマゼンタインキ、及び前記マゼンタインキを含むインキセットを印刷する基材は特に限定されないが、上質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、合成紙の様な紙基材、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発泡スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PETの様なプラスチック基材、ステンレスなどの金属基材、ガラス、木材等が使用できる。本発明のマゼンタインキ、及び前記マゼンタインキを含むインキセットは、吸収層を有する専用用紙やコピー用紙のような紙基材だけでは無く、産業用印刷物に一般的に使用されている、コート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの難吸収性基材にも好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」「%」及び「比率」とあるものは特に断らない限り重量基準である。
本発明で使用した顔料は以下に示す通りである。
・シアン顔料:LIONOGEN BLUE FG−7358G
(C.I.PigmentBlue15:3、トーヨーカラー社製)
・イエロー顔料:Patliotol Yellow D 1155
(C.I.PigmentYellow185、BASF社製)
・マゼンタ顔料:FASTOGEN Super Magenta RTS
(C.I.PigmentRed122、DIC社製)
Naphthol Red FB
(C.I.PigmentRed31、TRUSTCHEM社製)
Irgazin Red D3656 HD
(C.I.PigmentRed254、BASF社製)
Pariogen Red L 4039
(C.I.PigmentRed177、BASF社製)
Cromophtal Scarlet D 3540
(C.I.PigmentRed166、BASF社製)
Paliogen Red L 3875
(C.I.PigmentRed179、BASF社製)
Irgazin Scarlet L3550 HD
(C.I.PigmentRed255、BASF社製)
Irgazin Rubin L 4025
(C.I.PigmentRed264、BASF社製)
Inkjet Magenta E5B02
(C.I.PigmentViolet19、クラリアント社製)
Cinquasia Red L4130
(キナクリドン固溶体顔料、BASF社製)
<分散樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、モノマーとして、ラウリルメタクリレート35部、アクリル酸30部、スチレン30部およびV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1(酸価234mgKOH/g)の溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和し、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、不揮発分が50%になるように調整した。これより、分散樹脂1の不揮発分50%の水性化溶液を得た。
<分散樹脂2の製造例>
モノマーを、ステアリルメタクリレート30部、アクリル酸70部に変えた以外は、分散樹脂1と同様の方法で、分散樹脂2の不揮発分50%の水性化溶液を得た。
<シアン水性顔料分散体1の製造例>
顔料としてLIONOGEN BLUE FG−7358Gを20部、分散樹脂1の水性化溶液を12部、水68部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、シアン水性顔料分散体1を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分) = 10/3となっていた。
<イエロー水性顔料分散体2の製造例>
顔料をPatliotol Yellow D 1155に変えた以外は、シアン水性顔料分散体と同様の方法で、イエロー水性顔料分散体2(PY185分散体)を得た。
<マゼンタ水性顔料分散体3〜14の製造例>
シアン水性顔料分散体1の製造例において、顔料種及びその配合量、及び分散樹脂をそれぞれ表1に示したものに変えた以外は、同様の方法で、マゼンタ顔料分散体3〜14を製造した。
表1
Figure 0006123144
<水溶性樹脂ワニスの製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、JONCRYL819(重量平均分子量14,500/酸価75mgKOH/g)を20部、ジメチルアミノエタノール2.38部と水77.62部添加することで、アクリル酸を100%中和し、水溶化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥し、不揮発分を測定。作成した水溶性樹脂ワニスの不揮発分が20%になるように水を加え、調整を実施した。これにより、不揮発分20%の水溶性樹脂ワニスを得た。
<水性マゼンタインキ1〜9の製造>
表2に記載した組成となるように、上記で作製したマゼンタ顔料分散体に、溶剤、バインダー樹脂、界面活性剤(表面調整剤)、及び水をハイスピードミキサーで攪拌しながら添加し、1時間混合した。次いで、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を実施し、粗大粒子を除去することで、水性マゼンタインキ1〜9を得た。
Figure 0006123144
<水性マゼンタインキ塗工物の作製>
上記で作製した水性マゼンタインキ1〜9を用い、UPM Finess Gloss紙基材上へウェット膜厚が6μmとなるよう松尾産業株式会社製KコントロールコーターK202、ワイヤーバーNo.1(ウェット膜厚6μm)を用いて塗工したのち、80℃オーブンにて1分間以上乾燥し塗工物を作成した。得られた水性マゼンタインキ塗工物について、下記の耐候性、色相角、濃度(OD値)、分光反射率の評価を行った。
<水性マゼンタインキ塗工物の耐候性試験>
上記で作製した水性マゼンタインキ塗工物を用い、スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターSX75を用いて、放射照度160W、bp53℃、50%RH、照射+降雨サイクルモード(1サイクル120分、内18分降雨)の条件にて200時間暴露による耐候性試験を行った。200時間暴露後のOD値を測定し、暴露前のOD値に対する暴露後のOD値の減少率を求め、下記評価基準に基づき印刷サンプルの耐光性を評価した。結果は表2の耐候性欄に示すとおりであり、Aが実使用可能なレベルである。
A:OD値減少率が30%未満
B:OD値減少率が30%以上
<水性マゼンタインキ塗工物の色相角、濃度測定>
上記で作製した水性マゼンタインキ塗工物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で測定し、測定したL*a*b*値、濃度(OD値)、および、前記a*、b*より算出した色相角∠H°を、上記表2の色相角、及び濃度欄に示した。また濃度の評価結果は、下記評価基準に基づいたものであり、評価A及びBを良好と判断した。
A:OD値1.55以上
B:OD値1.45以上1.55未満
C:OD値1.45未満
<水性マゼンタインキ塗工物の色再現性評価>
上記で作製した水性マゼンタインキ塗工物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で色相を測定した。得られたa*値、b*値から、鮮やかさの度合いである彩度Cを、C=√(a*2+b*2)により計算し、JapanColor2007、Fogra39におけるマゼンタ標準色の彩度(以下、CSTDとする)と比較することで、色再現性を評価した。評価結果は、表2の色再現性欄に示す通りである。なお色相角∠H°は、∠H°=tan-1(b*/a*)+180(a*<0の場合)、または∠H°=tan-1(b*/a*)+360(a*>0の場合)により求めた。また色再現性の評価結果は、下記評価基準に基づいたものであり、B以上を良好と判断した。
A:JapanColor2007及びFogra39の双方で、インクジェット 印刷物の彩度Cが、CSTD以上であった
B:JapanColor2007またはFogra39のどちらかで、インクジ ェット印刷物の彩度Cが、CSTD以上であった
C:JapanColor2007及びFogra39の双方で、インクジェット 印刷物の彩度Cが、CSTDよりも低かった
<水性マゼンタインキ塗工物の分光反射率測定>
上記で作成した水性マゼンタインキ塗工物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で測定し、480〜580nmの波長領域において、10nmごとに分光反射率を測定した。評価結果は、表3の分光反射率測定欄に示す通りである。なおこれまでに説明してきたように、上記波長領域の全てで、分光反射率が10%以下であることが好ましい。
<水性マゼンタインキ1〜9の評価結果>
耐候性評価結果より、高耐候性顔料を用いたマゼンタインキである水性マゼンタインキ1、3〜9では、良好な結果が得られたが、アゾ顔料を用いた水性マゼンタインキ2では塗工物の退色が見られており、長期での印刷物保存が難しい結果となっていた。
また高耐候性顔料であるPR122を単独使用した水性マゼンタインキ1では、所望の色相角を実現していたものの、OD値がCレベルと低く、波長領域480〜500nmでの分光反射率値が10%以上と高い結果となっていた。一方、水性マゼンタインキ3〜8では、OD値はBレベル以上とマゼンタ色の高濃度化が可能であり、また分光反射率も理想的であった。しかし、色再現性評価の結果がCレベルと、問題のある結果になっていた。PR122と異なるキナクリドン系顔料であるPV19を用いた水性マゼンタインキ8でも、色再現性,分光反射率値共に理想域に達していない結果となっていた。
上記の結果は、印刷物の長期保管による変退色を防ぐため、高耐光性を有する顔料を単独でマゼンタインキに用いようとしても、高濃度感、及び色再現性を両立し、波長領域480〜580nmでの分光反射率が理想的となるマゼンタ色を実現する事が難しいことを示すものである。
なお、上記における色相角の評価結果より、水性マゼンタインキ1,2に使用したPR122及びPR31が第1の顔料、また水性マゼンタインキ3〜8に使用したPR254、PR177、PR166、PR179、PR255、及びPR264が第2の顔料となる。
<水性マゼンタインキ10〜38の作成>
表3に記載した組成となるように、上記で作製したマゼンタ顔料分散体に、溶剤、バインダー樹脂、界面活性剤(表面調整剤)、及び水をハイスピードミキサーで攪拌しながら添加し、1時間混合した。次いで、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を実施し、粗大粒子を除去することで、水性マゼンタインキ10〜38を得た。
表3
Figure 0006123144
Figure 0006123144
なお表3において使用した材料は以下の通りである。
サーフィノール104E:日信化学工業社製アセチレンジオール系界面活性剤、HLB値=4
サーフィノール465:日信化学工業社製アセチレンジオール系界面活性剤、HLB値=13
TegoGlide440:エボニック社製シリコン界面活性剤(一般式(6)の構造を有する)
<水性シアン、イエローインキの作成>
シアンインキ、イエローインキ共に、顔料濃度が4%であるインキを以下の方法で作製した。顔料分散体として前記シアン水性分散体1またはイエロー水性分散体2を20部、溶剤として1,2−ブタンジオール10部、ジエチレングリコールモノエチルエーテル10部と、バインダー樹脂として前記水溶性樹脂ワニスを25部、界面活性剤(表面調整剤)としてサーフィノール104Eを1部、及び水34部をハイスピードミキサー等で攪拌しながら添加、混合した。次いで、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を実施し、粗大粒子を除去して、水性シアンインキ、及び水性イエローインキを得た。
<実施例1〜22、比較例1〜7>
上記で作製した水性マゼンタインキ10〜38について、下記の保存安定性を実施した。また、下記に示す方法で作製したインクジェット印刷物を用い、耐候性試験、色相角、及び濃度評価を行った。
<水性マゼンタインキの保存安定性評価>
水性マゼンタインキ10〜38を密閉できる貯蔵瓶に空隙が無いように充填し、50℃で2週間放置した。放置前後の粘度変化率を下記評価基準に基づき、保存安定性を評価し、表3の保存安定性欄に示した。評価A及びBを良好と判断した。
A:変化率が初期に対して10%未満
B:変化率が初期に対して10%以上20%未満
C:変化率が初期に対して20%以上
<インクジェット印刷物の作製>
表3に記載の水性マゼンタインキ10〜38と、上記で作製した水性シアンインキ、及び水性イエローインキを用い、インキセットの印刷を実施した。具体的には、京セラヘッド(解像度600dpi×600dpi)を搭載したインクジェット吐出装置(トライテック社製OnePassJET)により、インキ液適量11pL印刷条件で、UPM Finess Gloss紙基材上へ各色100%ベタ画像を描画した。なお各色のウェットインキ膜厚は約6μmであった。描画後、80℃オーブンにて1分間以上乾燥し、水性マゼンタインキ、水性シアンインキ、及び水性イエローインキのインクジェット印刷物を作成した。
<水性マゼンタインキのインクジェット印刷物の耐候性試験>
上記で作成した水性マゼンタインキ、水性シアンインキ、及び水性イエローインキのインクジェット印刷物を用い、スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターSX75を用いて放射照度160W、bp53℃、50%RH、照射+降雨サイクルモード(1サイクル120分、内18分降雨)の条件にて200時間暴露による耐候性試験を行った。試験後の水性マゼンタインキのインクジェット印刷物のOD値を測定し、暴露前のOD値に対する減少率を求めるとともに、試験後の水性マゼンタインキ、水性シアンインキ、及び水性イエローインキのインクジェット印刷物を目視で比較し、退色度合いの色差を確認することで、耐候性の評価を行った。評価結果は、表3の耐候性欄に示す通りである。また評価基準は下記に示すとおりであり、評価結果A及びBのものを良好と判断した。
A:OD値減少率が20%未満であったとともに、水性シアンインキや水性イエロ ーインキのインクジェット印刷物と比較して、水性マゼンタインキにおいて顕 著な退色は見られなかった
B:OD値減少率が20%以上30%未満であったとともに、水性シアンインキや 水性イエローインキのインクジェット印刷物と比較して、水性マゼンタインキ において顕著な退色は見られなかった
C:OD値減少率が30%以上であったか、水性シアンインキや水性イエローイン キのインクジェット印刷物と比較して、水性マゼンタインキにおいて顕著な退 色が見られた
<水性マゼンタインキのインクジェット印刷物の色相角、濃度測定>
上記で作成した水性マゼンタインキのインクジェット印刷物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で測定し、L*a*b*色空間における色相角、濃度(OD値)を評価した。評価結果は、表3の印刷物色相角、及び濃度欄に示す通りである。また濃度の評価結果は、下記評価基準に基づいたものであり、評価A及びBを良好と判断した。
A:OD値1.55以上
B:OD値1.45以上1.55未満
C:OD値1.45未満
<水性マゼンタインキのインクジェット印刷物の色再現性評価>
上記で作成した水性マゼンタインキのインクジェット印刷物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で色相を測定した。得られたa*値、b*値から、鮮やかさの度合いである彩度Cを、C=√(a*2+b*2)により計算し、JapanColor2007、Fogra39におけるマゼンタ標準色の彩度(以下、CSTDとする)と比較することで、色再現性を評価した。評価結果は、表3の色再現性欄に示す通りである。また色再現性の評価結果は、下記評価基準に基づいたものであり、B以上を良好と判断した。
A:JapanColor2007及びFogra39の双方で、インクジェット 印刷物の彩度Cが、CSTD以上であった
B:JapanColor2007またはFogra39のどちらかで、インクジ ェット印刷物の彩度Cが、CSTD以上であった
C:JapanColor2007及びFogra39の双方で、インクジェット 印刷物の彩度Cが、CSTDよりも低かった
<水性マゼンタインキのインクジェット印刷物の分光反射率測定>
上記で作成した水性マゼンタインキのインクジェット印刷物を用い、X−rite社製 i1Pro2を用い光源D50,視野角2°,CIE表色系の条件で測定し、480〜580nmの波長領域において、10nmごとに分光反射率を測定した。評価結果は、表3の分光反射率測定欄に示す通りである。また分光反射率測定結果は、下記評価基準に基づいたものであり、評価Aを良好と判断した。
A:480〜580nmの波長領域で、分光反射率が全て10%以下
B:480〜580nmの波長領域で、分光反射率が10%以上を示した領域が存 在した
<実施例1〜22の評価結果>
実施例1〜22は、顔料濃度5%インキでウェット膜厚6μmの印刷基材塗工物を測色した際の色相角∠H°が290°〜360°を示す第1の顔料と、前記方法で作成した塗工物の色相角∠H°が25°〜50°を示す第2の顔料を併用した系であり、表3に示した通り、インキの保存安定性、耐候性、色相、濃度、色再現性いずれも良好な結果となった。ジメチルキナクリドン(PR122)を主軸顔料として使用した実施例2,4では、特に耐候性が良好な結果となった。
実施例4〜9では、インキ中顔料濃度を5.5%とし、ジメチルキナクリドンを主軸顔料とするとともに、第2の顔料としてPR254、またはPR177を併用し、顔料以外の使用材料の違いによる効果を確認した。実施例4〜5は、モノマー組成が異なる分散樹脂を使用した分散体を用いインキを作成した系であり、スチレンモノマーが含有されている分散樹脂1を用いた方が、インキの保存安定性が良好な結果となった。また実施例4〜7は、インキに使用する溶剤組成を変更し評価を実施した系であり、実施例7のようにポリオール溶剤を2種併用し使用する事で、難吸収性印刷基材上でのインキの濡れ性が改善し、ドットセット性能が向上し、ベタ印刷部のムラが無くなり、色再現性を改善することができた。加えて実施例7〜9では、使用する表面調整剤の変更による効果を確認した系であり、特定の表面調整剤を2種併用した実施例9にて、更なる印刷基材上での濡れ性の改善が見られ、ベタ部の埋まりが改善する事により、印刷物塗膜平滑性が良化し、濃度や色再現性が向上した。
実施例10〜13は、第1の顔料と第2の顔料の含有比率を変えることにより、安定性、色相、濃度で傾向把握を実施した系である。なかでも実施例12では第2の顔料の含有比率が多く、分光反射率を低く抑えられ、濃度改善が可能となった。逆に第1の顔料の含有比率の多い実施例13では、保存安定性や色再現性が良好である結果となった。実施例14〜22は、顔料を3種以上併用した系であり、全ての評価項目で良好な結果となった。実施例21に示す通り、インキ中の顔料総量に対し第1の顔料の含有比率が5割まで低下しても、その他顔料を数種併用する事により、全ての評価項目にて良好な結果を維持する事が可能となる事を確認した。
<比較例1〜7の評価結果>
比較例1〜2では、第1の顔料であるジメチルキナクリドン(PR122)単独使用にて、インキ中顔料濃度を上げ、高濃度化の実現検証を実施した系であるが、顔料濃度上昇により保存安定性が悪化する結果となった。比較例3ではキナクリドン顔料固溶体を用いたが、比較例1と同様、保存安定性と濃度を両立する事はできなかった。比較例4〜6は、顔料濃度5%インキでのウェット膜厚6μm印刷基材塗工物を測色した際の色相角∠H°が290°〜360°を示す第一の顔料と、顔料濃度5%インキでのウェット膜厚6μmにおける印刷基材塗工物の波長領域480〜560nmでの分光反射率が10%以下に抑えられているPV19にて調色を実施し、インキ中顔料濃度を変更したものであるが、保存安定性と濃度を両立する事はできなかった。比較例7は、顔料濃度5%インキでのウェット膜厚6μmにおける印刷基材塗工物の波長領域480〜560nmでの分光反射率が10%以下に抑えられているPV19と、顔料濃度5%インキでのウェット膜厚6μm印刷基材塗工物を測色した際の色相角∠H°が25°〜50°を示す第2の顔料を併用した系であるが、所望の色相角を実現する事ができず、保存安定性や濃度が悪化する結果となった。

Claims (6)

  1. 少なくとも2種類以上の顔料、及び、水を含有する水性インクジェットマゼンタインキであって、記録媒体上での、CIELAB色空間において定義される色相角∠H°が330°〜360°の範囲であり、
    前記2種類以上の顔料は、それぞれが異なる結晶構造を有するとともに、互いに固溶体を形成しておらず、
    前記2種類以上の顔料のうち第1の顔料は、前記色相角∠H°が290°〜360°の範囲を示す顔料であり、
    第2の顔料は、前記色相角∠H°が25°〜50°の範囲を示す顔料であり、
    前記第1の顔料が、C.I.PigmentRed31、122、147、269、および、C.I.PigmentViolet32から選択される何れかの顔料を含むことを特徴とする、
    水性インクジェットマゼンタインキ(ただし、顔料が無機顔料粒子を2種類以上の有機顔料で被覆した色材粒子を含む場合を除く)
  2. 記録媒体上での分光反射率が、480〜580nmの波長領域において10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の水性インクジェットマゼンタインキ。
  3. 前記第1の顔料の含有率が、前記水性インクジェットマゼンタインキに含まれる顔料全量に対し、20〜90重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性インクジェットマゼンタインキ。
  4. 前記第2の顔料が、C.I.PigmentRed166、177、179、254、255、および、264から選択される何れかの顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の水性インクジェットマゼンタインキ。
  5. 少なくとも水性インクジェットイエローインキ、水性インクジェットマゼンタインキ、および、水性インクジェットシアンインキを含むインクジェットインキセットであって、前記水性インクジェットマゼンタインキが、請求項1〜4いずれかに記載の水性インクジェットマゼンタインキであることを特徴とするインキセット。
  6. 請求項1〜4いずれか記載の水性インクジェットマゼンタインキを用いて得られる印刷物の製造方法。
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