JP6119012B1 - 耐雷トランス - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐雷トランスの省電力化を実現させると共に、高周波成分を含む雷サージ移行電圧を抑制できる耐雷トランスを実現する。【解決手段】 磁心12に一次側巻線13および二次側巻線14を巻回することにより構成されるトランスにおいて、その磁心をアモルファス鉄心で構成すると共に、二次側へ移行する雷サージに含有される高周波成分の電圧を抑制するために、耐雷トランス11において、二次側巻線14と出力端子16との間に高周波抑制回路17を付加する。【選択図】 図4

Description

本発明は、配電線から流入する雷サージに対して、その配電線系の受電線に接続された各種電気機器を雷サージから保護する耐雷トランスに関する。
落雷発生時には種々の電線を経由して雷サージが侵入してくるが、配電線経由の雷サージの影響が大きいことから、配電線につながる受電線に対する雷サージの防護が非常に重要である。例えば、無線基地局などの無線中継設備に対する電源線系への耐雷対策としては、無線中継設備の各種電気機器を雷サージから保護するために耐雷トランスを無線基地局の電源設備として設置している。この耐雷トランスは、電力をトランスの一次側から二次側へ変成する時に、配電線系の電力線から侵入する雷サージの移行電圧を抑制するものである(例えば、特許文献1参照)。
雷サージを抑制させるために耐雷トランスを電源線系に設置すれば、雷サージは大幅に抑制できる。しかし、電源線系に耐雷トランスを介在させれば、電力損失が発生するので、省電力を図るためにはトランス特有の無負荷損失を抑えることも必要になっている。
電力トランスの磁心としては一般的にはケイ素鋼板が用いられ、この種の耐雷トランスでも、磁心としてケイ素鋼板を用いたものが一般的であった。ケイ素鋼板の使用では無負荷損失を削減できない。
特開2008−130986号公報 特開2004−319669号公報
電源線にトランスを介在させれば、トランスの磁心で起こる鉄損と言われる無負荷損失が発生する。節電できるトランスにするためには、磁心で必然的に起こる鉄損を抑制することが必要であるが、ケイ素鋼板等の磁心では鉄材内にある磁区の存在により交番磁界による磁束密度の履歴現象で鉄損が起こっている。鉄損を抑制するためには、磁心に磁区の生じない材質を使用する必要がある。これに対して、大容量トランスでは、鉄心内の磁区形成がない非晶質金属であるアモルファス鉄心で構成された磁心を備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、無線基地局などの無線中継設備の耐雷対策として使用される耐雷トランスのような中型乾式トランスでは、前述したように、ケイ素鋼板で構成された磁心が一般的であり、アモルファス鉄心で構成された磁心を備えたものが皆無であるというのが現状であった。
そこで、本発明は、前述の課題に鑑みて提案するもので、その目的とするところは、鉄損による無負荷損失を抑制して省電力化を容易に実現させると共に、高周波成分を含む雷サージ移行電圧を抑制し得る耐雷トランスを提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、磁心に一次側巻線および二次側巻線を巻回することにより構成され、その磁心をアモルファス鉄心で構成して、磁束密度の履歴現象を抑制させて鉄損を抑えるとともに、雷サージに含有する高周波成分電圧をトランス出力端までで阻止させるために、二次側巻線と出力端子との間に高周波抑制回路を付加したことを特徴とする。
鉄損はトランスに電圧が加えられる課電状態になるだけで損失が発生し、使用電力には関係しないので、磁心をアモルファス鉄心で構成した耐雷トランスとしての使用状況においては、定格容量に対する平均負荷率が少ない状態では省電力化効果を容易に上げることができる。
また、耐雷トランスとしての最大の機能が一次側巻線から二次側巻線への雷サージの移行量を抑制させることであるが、そのためには磁心(アースと同電位)と二次側巻線間との静電容量を大きくさせ、静電容量分布による静電移行電圧を抑制することが必要である。また、通常の珪素鋼板を使用したトランスでは磁心と二次側巻線との間に放熱のための空隙を設けている。
本発明では、磁心と二次側巻線との間に空隙を設けず、磁心に直接二次側巻線を巻きつける構造にして、磁心と二次側巻線との間の静電容量を大きくさせると共に、巻線全体が小型になる構造である、その結果、二次巻線側への雷サージ移行電圧を低減させることができ、さらには巻線全体の小型化もできる。
さらに、耐雷トランスの二次側巻線と出力端子との間に高周波抑制回路を付加したことにより、雷サージに含まれる高周波成分を抑制することができる。
本発明によれば、磁心をアモルファス鉄心で構成すると共に、二次側巻線と出力端子との間に高周波抑制回路を付加したことにより、耐雷トランスの省電力化を実現させると共に、高周波成分を含む雷サージ移行電圧を抑制することができる。
定格容量に対する平均負荷率が少ない状態で使用する場合の耐雷トランスにおいては、省電力効果を容易に顕在化させることができる。
本発明の実施形態で、単相耐雷トランスを示す回路構成図である。 本発明の他の実施形態で、三相耐雷トランスを示す回路構成図である。 (A)は磁心の一例で、単相二脚コアを示す正面図、(B)は磁心の他例で、三相三脚コアを示す正面図である。 耐雷トランスの負荷率に対する損失の関係を示す特性図である。 耐雷トランスの磁心および巻線の配置関係を示す断面図である。 図5のP−P線に沿う模擬的な断面構成図である。 高周波抑制回路なしの場合のトランス出力を示す波形図である。 高周波抑制回路の具体的構成例を示す回路図である。 高周波抑制回路の周波数に対する減衰量の関係を示す特性図である。 高周波抑制回路ありの場合のトランス出力を示す波形図である。
本発明に係る耐雷トランスの実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、50kVA程度の中型乾式トランスで、一次側から二次側への雷サージ移行の減衰量が60dB以上である耐雷トランスを例示するが、他の仕様を持つ中型乾式トランスにも適用可能である。
図1は、単相耐雷トランスの回路構成を例示する。また、図2は、三相耐雷トランスの回路構成を例示する。
この実施形態における耐雷トランス11は、同図に示すように、磁心12と、その磁心12に巻回された一次側巻線13および二次側巻線14と、二次側巻線14と出力端子16との間に接続された高周波抑制回路17とで構成されている。なお、図中の符号15は、入力端子である。
この耐雷トランス11の磁心12は、図3(A)に示すような単相二脚コア、あるいは図3(B)に示すような三相三脚コアの形態を有する。この磁心12は、アモルファス鉄心で構成されている。
アモルファス鉄心は、例えば20μm程度の薄膜積層構造をなし、従来使用されていたケイ素鋼板の鉄心と比較して、交番磁界における磁束密度の磁化履歴現象によるエネルギー損失(ヒステリシス損失)が少ない非晶質金属であり、無負荷損(鉄損)が少ない特性を有しており、薄膜積層構造であるため渦電流損失もない。
アモルファス鉄心が従来のケイ素鋼板の鉄心よりも無負荷損(鉄損)が少ないことから、この耐雷トランス11を無線基地局などの無線中継設備の耐雷対策として使用すれば、省電力化を顕在させることができる。この傾向を示す特性が図4で、実線がアモルファス鉄心耐雷トランスであり、破線がケイ素鋼板鉄心のトランスで、負荷率に対する全損失を示している。無線中継設備での電力使用量はトランスの定格容量に対する平均負荷率が高くないので(例えば30%程度)、アモルファス鉄心トランス(図中実線参照)では、ケイ素鋼板鉄心トランス(図中破線参照)と比較して、全損失{無負荷損+負荷損(銅損)}が少なく、省電力効果が顕在している。
このように、耐雷トランス11の磁心12を、無負荷損が少ないアモルファス鉄心で構成したことにより、磁化履歴現象によるエネルギー損失を大幅に抑制できる。これにより、無線基地局などの無線中継設備の耐雷対策として使用する場合、定格容量に対する平均負荷率が少ないので耐雷トランス11の省電力化を容易に発揮させることができる。
前述したように、磁心12は、単相二脚コアあるいは三相三脚コアの構造をなすが、その単相二脚コアあるいは三相三脚コアの脚部水平断面を図5に示す。
同図に示すように、耐雷トランス11は、アモルファス鉄心からなる薄膜積層構造の磁心12と、その磁心12の外周に絶縁紙18を介して巻回された二次側巻線14と、その二次側巻線14の外周に静電シールド19を介して巻回された一次側巻線13からなる構造を有する。
本発明による耐雷トランス11では磁心12の外周に絶縁紙18を介して二次側巻線14を密着させて巻回している。磁心12と二次側巻線14との間の隙間Dが狭いので、磁心12と二次側巻線14との間の静電容量を大きくさせることができ、一次側巻線13から二次側巻線14への雷サージの移行を抑制できる。
ここで、図5に示す構造の等価回路を図6に示す。なお、図6において、磁心12と二次側巻線14の間隔、および二次側巻線14と一次側巻線13の間隔は、図5よりも大きく誇張して示している。
図6に示すC0は一次側巻線13と二次側巻線14との間に形成される静電容量、C1は一次側巻線13の対地静電容量、C2aは二次側巻線14と磁心12との間に形成される静電容量、C2bは二次側巻線14と静電シールド19との間に形成される静電容量である。なお、C2a+C2bは二次側巻線14の対地静電容量となる。
二次側巻線14と磁心12との間の静電容量C2aは、二次側巻線14と磁心12との間の隙間Dに逆比例する。このことから、二次側巻線14と磁心12との間の隙間Dを小さくすることにより、二次側巻線14と磁心12との間の静電容量C2aを大きくすることができる。
一方、この耐雷トランス11における雷サージ移行電圧E2は、雷サージ侵入電圧をE1、二次側巻線14の対地静電容量をC2(=C2a+C2b)とすると、E2=E1×{C0/(C0+C2)}となる。前述したように、二次側巻線14と磁心12との間の静電容量C2a、つまり、二次側巻線14の対地静電容量C2が大きくなることから、雷サージ移行電圧E2を低減させることができる。
このように、雷サージ移行電圧E2を抑制することにより、耐雷トランス11としてサージ移行量を効果的に抑圧できることになる。
ここで、一般的な雷サージの標準波形としては、1.2/50μs波形が規定されている。1.2/50μs波形は、雷サージの立ち上がり時間が1.2μsで、電圧がピーク時から1/2に低下するまでの時間が50μsであることを意味する。この雷サージの立ち上がり時間が1.2μsであることは、高周波成分が210kHzであることを意味する。つまり、雷サージ移行電圧は、図7のX矢印で示すように、200〜300kHzの高周波成分が含まれたピーク性の出力波形となっている。
そこで、この実施形態の耐雷トランス11において、雷サージ移行電圧に含まれる高周波成分に起因する高周波雑音が各種電気機器に悪影響を及ぼさないように、二次側巻線14と出力端子16との間に、200〜300kHzの高周波成分を低減する高周波抑制回路17を付加している(図1および図2参照)。
この高周波抑制回路17は、具体的に、図8に示すように、抵抗20、コイル21およびコンデンサ22からなる直列共振回路で、例えば、抵抗値R=10.3Ω、リアクタンスL=32μH、静電容量C=0.023μFの諸元の回路素子である。
以上の構成からなる高周波抑制回路17は、図9に示すような減衰特性を有する。つまり、150kHz以上の周波数帯域、特に200kHz付近の周波数で減衰量が大きな特性を持つ。このことから、この高周波抑制回路17では、210kHzの高周波成分を含む200〜300kHzの高周波成分を低減させることができる。
その結果、高周波抑制回路17がない場合の耐雷トランス11の出力特性(図7参照)と比較して、高周波抑制回路17を付加したことにより、図10に示す耐雷トランス11の出力特性において、ピークを制限してなだらかな出力波形となり、高周波成分を含む雷サージ移行電圧をより一層低減させることができる。
このように、高周波成分を含む雷サージ移行電圧を抑制することにより、各種電気機器や通信機器を雷サージから保護することができ、特に無線中継設備に対しても高周波雑音を抑制できるので、耐雷トランス11としての雷サージ抑制の特性をより一層向上させることができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
11 耐雷トランス
12 磁心
13 一次側巻線
14 二次側巻線
16 出力端子
17 高周波抑制回路

Claims (2)

  1. 磁心に一次側巻線および二次側巻線を巻回することにより構成され、一次側から侵入して二次側へ移行する雷サージの移行電圧を抑制するための中型乾式の耐雷トランスにおいて、
    前記磁心をアモルファス鉄心で構成すると共に、磁心と二次側巻線との間に空隙を設けず、磁心に直接二次側巻線を巻きつける構造にしたことを特徴とする耐雷トランス。
  2. 請求項1記載の耐雷トランスにおいて、
    前記二次側巻線と出力端子との間に200kHz以上の高周波抑制回路を付加したことを特徴とする耐雷トランス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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