以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の制御装置1は、車両Vの自動変速機10に適用されたものである。この車両Vは、原動機としての内燃機関(以下「エンジン」という)3を備えており、車両Vの走行中、このエンジン3の動力は、自動変速機10を介して変速されながら、駆動輪63,63(1つのみ図示)に伝達される。
この車両Vは、エンジン3を車両Vの中央寄りに搭載し、後輪である駆動輪63を駆動するタイプのもの、すなわちミッドシップエンジン・リヤドライブタイプのものである。
また、エンジン3のクランクシャフト3aは、フライホイール3b及び回転軸3cを介して、自動変速機10に連結されており、これらのクランクシャフト3a、フライホイール3b及び回転軸3cは互いに同心に配置されている。
この自動変速機10は、デュアルクラッチ式の自動MTタイプのものであり、第1及び第2クラッチ5,6と、互いに平行に配置された第1入力軸11、第2入力軸12、副第2入力軸20、出力軸30、リバース軸40及び副出力軸50などを備えている。これらの軸11,12,20,30,40,50はいずれも、図示しない軸受を介して、図示しないミッションケースに回転自在に支持されている。
この第1クラッチ5は、湿式多板クラッチタイプのものであり、回転軸3cに同心かつ一体に取り付けられたフライホイールタイプのアウタクラッチ板5aと、第1入力軸11の一端部に同心かつ一体に取り付けられたインナクラッチ板5bと、これをアウタクラッチ板5a側に駆動するための第1クラッチ・アクチュエータ71(図2参照)と、インナクラッチ板5bをアウタクラッチ板5aから離間させるように付勢するリターンスプリング(図示せず)などを備えている。
第1クラッチ・アクチュエータ71は、ECU2に電気的に接続された電動機と、この電動機よって駆動される油圧シリンダなどを含む油圧回路とを組み合わせたものであり(いずれも図示せず)、ECU2からの駆動信号が供給されたときに、リターンスプリングの付勢力に抗しながら、第1クラッチ5のインナクラッチ板5bをアウタクラッチ板5a側に駆動する。ECU2は、この第1クラッチ・アクチュエータ71を制御することにより、第1クラッチ5を接続/遮断する。この場合、第1クラッチ5が接続されているときには、エンジン3の動力が、第1クラッチ5を介して第1入力軸11に伝達される。
さらに、第2クラッチ6は、第1クラッチ5と同様の湿式多板クラッチタイプのものであり、第1クラッチ5のアウタクラッチ板5aに同心かつ一体に固定されたアウタクラッチ板6aと、第2入力軸12の一端部に一体に取り付けられたインナクラッチ板6bと、これをアウタクラッチ板6a側に駆動する第2クラッチ・アクチュエータ72(図2参照)と、インナクラッチ板6bをアウタクラッチ板6aから離間させるように付勢するリターンスプリング(図示せず)などを備えている。
この第2クラッチ・アクチュエータ72は、前述した第1クラッチ・アクチュエータ71と同様に構成されており、ECU2からの駆動信号が供給されたときに、リターンスプリングの付勢力に抗しながら、第2クラッチ6のインナクラッチ板6bをアウタクラッチ板6a側に駆動する。ECU2は、第2クラッチ・アクチュエータ72を制御することにより、第2クラッチ6を接続/遮断する。この場合、第2クラッチ6が接続されているときには、エンジン3の動力が、第2クラッチ6を介して第2入力軸12に伝達される。
一方、前述した第1入力軸11には、エンジン3側の一端部に前述した第1クラッチ5のインナクラッチ板5bが固定されている。この第1入力軸11上には、エンジン3側からその反対側に向かって順に、第2入力軸12、3速駆動ギヤ14、3−5速シンクロ機構18、5速駆動ギヤ15、7速駆動ギヤ16、7−9速シンクロ機構19及び1速駆動ギヤ13が設けられている。これらの要素12〜19は、第1入力軸11と同心に配置されている。
第2入力軸12は、中空のものであり、その内孔で第1入力軸11に回転自在に嵌合している。また、第2入力軸12のエンジン3側の一端部には、前述した第2クラッチ6のインナクラッチ板6bが同心に取り付けられており、他端部には、ギヤ12aが同心に取り付けられている。このギヤ12aは、後述するリバース・入力ギヤ41に常に噛み合っている。
一方、3速駆動ギヤ14は、第1入力軸11上に回転自在に設けられ、出力軸30の後述する3速従動ギヤ32に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ14,32によって、前進3速段が構成されている。さらに、3速駆動ギヤ14は、後述するリバースギヤ42に常に噛み合っている。
また、5速駆動ギヤ15は、第1入力軸11上に回転自在に設けられており、出力軸30の後述する4−5速従動ギヤ33に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ15,33によって、前進5速段が構成されている。
さらに、前述した3−5速シンクロ機構18は、その詳細な説明はここでは省略するが、本出願人が例えば特許第4242189号で提案したシンクロ機構と同様に構成されており、図示しない3−5速シフトフォークを介して、ギヤ・アクチュエータ73(図2参照)に連結されている。
このギヤ・アクチュエータ73は、ECU2に電気的に接続された電動機とギヤ機構などを組み合わせたものであり、変速動作の際には、ECU2の制御により、3−5速シフトフォークを介して、3−5速シンクロ機構18を駆動する。それにより、3速駆動ギヤ14又は5速駆動ギヤ15が第1入力軸11に連結されたり、その連結が解除されたりすることによって、前進3速段又は前進5速段がインギヤ状態とニュートラル状態との間で切り換えられる。
また、7速駆動ギヤ16は、第1入力軸11上に回転自在に設けられており、出力軸30の後述する6−7速従動ギヤ34に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ16,34によって、前進7速段が構成されている。さらに、9速駆動ギヤ17は、第1入力軸11上に回転自在に設けられており、出力軸30の後述する8−9速従動ギヤ35に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ17,35によって、前進9速段が構成されている。
さらに、7−9速シンクロ機構19は、前述した3−5速シンクロ機構18と同様に構成されており、図示しない7−9速シフトフォークを介して、ギヤ・アクチュエータ73に連結されている。変速動作の際には、ギヤ・アクチュエータ73によって、7−9速シンクロ機構19が駆動されることにより、前進7速段又は前進9速段がインギヤ状態とニュートラル状態との間で切り換えられる。
一方、1速駆動ギヤ13は、第1入力軸11に固定されており、出力軸30の後述する1速従動ギヤ36に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ13,36によって、前進1速段が構成されている。なお、本実施形態では、駆動ギヤ13〜17及び従動ギヤ32〜36が第1変速ギヤ群に相当し、2つのシンクロ機構18,19及びギヤ・アクチュエータ73が第1切換機構に相当する。
また、前述した副第2入力軸20(第2入力軸)上には、エンジン3側からその反対側に向かって順に、入力ギヤ27、2速駆動ギヤ21、2−4速シンクロ機構25、4速駆動ギヤ22、6速駆動ギヤ23、6−8速シンクロ機構26及び8速駆動ギヤ24が設けられている。これらの要素21〜27は、副第2入力軸20と同心に配置されている。
入力ギヤ27は、リバース・入力ギヤ41と常に噛み合っており、このリバース・入力ギヤ41は、前述したように、第2入力軸12のギヤ12aに常に噛み合っている。それにより、副第2入力軸20は、これらのギヤ27,41,12aを介して、第2入力軸12に連結されている。
また、2速駆動ギヤ21は、副第2入力軸20上に回転自在に設けられており、出力軸30の2速従動ギヤ31に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ21,31によって、前進2速段が構成されている。
さらに、4速駆動ギヤ22は、副第2入力軸20上に回転自在に設けられており、出力軸30の4−5速従動ギヤ33に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ22,33によって、前進4速段が構成されている。
一方、2−4速シンクロ機構25は、図示しない2−4速シフトフォークを介して、前述したギヤ・アクチュエータ73に連結されている。変速動作の際には、ギヤ・アクチュエータ73によって、2−4速シンクロ機構25が駆動されることにより、前進2速段又は前進4速段がインギヤ状態とニュートラル状態との間で切り換えられる。
また、6速駆動ギヤ23は、副第2入力軸20上に回転自在に設けられており、出力軸30の6−7速従動ギヤ34に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ23,34によって、前進6速段が構成されている。
さらに、8速駆動ギヤ24は、副第2入力軸20上に回転自在に設けられており、前述した8−9速従動ギヤ35に常に噛み合っているとともに、これらのギヤ24,35によって、前進8速段が構成されている。
一方、6−8速シンクロ機構26は、図示しない6−8速シフトフォークを介して、前述したギヤ・アクチュエータ73に連結されている。変速動作時、ギヤ・アクチュエータ73によって、6−8速シンクロ機構26が駆動されることにより、前進6速段又は前進8速段がインギヤ状態とニュートラル状態との間で切り換えられる。なお、本実施形態では、駆動ギヤ21〜24及び従動ギヤ31,33〜35が第2変速ギヤ群に相当し、シンクロ機構25,26及びギヤ・アクチュエータ73が第2切換機構に相当する。
また、出力軸30には、エンジン3側からその反対側に向かって順に、2速従動ギヤ31、3速従動ギヤ32、4−5速従動ギヤ33、6−7速従動ギヤ34、8−9速従動ギヤ35及び1速従動ギヤ36が配置されている。これらの4つのギヤ31〜35はいずれも、出力軸30に同心に固定されている。
さらに、1速従動ギヤ36は、ワンウェイクラッチ37を介して、出力軸30に同心に連結されている。それにより、車両Vの前進走行中における出力軸30の回転を正回転とした場合、1速従動ギヤ36の正回転速度が、出力軸30の正回転速度よりも大きいときには、第1入力軸11の動力が、1速駆動ギヤ13、1速従動ギヤ36及びワンウェイクラッチ37を介して出力軸30に伝達される。一方、1速従動ギヤ36の正回転速度が、出力軸30の正回転の回転速度を下回ったときには、ワンウェイクラッチ37の機能により、第1入力軸11と出力軸30との間での動力伝達が遮断される。
一方、前述したように、2速従動ギヤ31は2速駆動ギヤ21に、4−5速従動ギヤ33は4速駆動ギヤ22及び5速駆動ギヤ15に、6−7速従動ギヤ34は6速駆動ギヤ23及び7速駆動ギヤ16に、8−9速従動ギヤ35は8速駆動ギヤ24及び9速駆動ギヤ17にそれぞれ噛み合っている。さらに、3速従動ギヤ32は、前述した3速駆動ギヤ14に加えて、副出力軸50のギヤ51に常に噛み合っている。
この副出力軸50には、ギヤ51とベベルギヤ52が同心に固定されており、このベベルギヤ52は、エンジン3側の端部に配置され、終減速装置60のベベルギヤ61に常に噛み合っている。以上の構成により、出力軸30の動力は、副出力軸50、終減速装置60及び駆動軸62,62を介して、左右の駆動輪63,63に伝達される。
また、出力軸30には、出力回転速度センサ80が設けられており、この出力回転速度センサ80は、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。この出力回転速度センサ80は、出力軸30の回転速度を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この出力回転速度センサ80の検出信号に基づき、車両Vの速度である車速VPなどを算出する。なお、本実施形態では、出力回転速度センサ80が車速パラメータ検出手段に相当し、車速VPが車速パラメータに相当する。
一方、リバース軸40上には、エンジン3側からその反対側に向かって順に、リバース・入力ギヤ41、リバース・シンクロ機構43及びリバースギヤ42が設けられている。リバース・入力ギヤ41は、リバース軸40に同心に固定されており、前述した入力ギヤ27と常に噛み合っている。また、リバースギヤ42は、リバース軸40上に回転自在に設けられており、第1入力軸11上の前述した3速駆動ギヤ14と常に噛み合っている。
さらに、リバース・シンクロ機構43は、前述した3−5速シンクロ機構18と同様に構成されており、図示しないリバース・シフトフォークを介して、ギヤ・アクチュエータ73に連結されている。後進走行する際の変速動作時には、ギヤ・アクチュエータ73によってリバース・シンクロ機構43が駆動されることにより、リバースギヤ42がリバース軸40に連結される。また、後進段をニュートラル状態にするときには、リバース・シンクロ機構43によって、リバースギヤ42とリバース軸40の連結が解除される。
また、ギヤ・アクチュエータ73の近傍には、変速段センサ81(図2参照)が設けられている。この変速段センサ81は、ギヤ・アクチュエータ73の動作状態を検出して、検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
一方、車両Vには、シフトレバー装置及びアクセルペダル(いずれも図示せず)が設けられている。このシフトレバー装置は、フロアシフトレバータイプのものであり、シフト位置として、パーキング位置、リバース位置、ニュートラル位置、ドライブ位置及びスポーツ位置の5つの位置を備えており、運転者によるシフト操作に伴い、そのシフト位置が5つの位置の間で切り換え選択可能に構成されている。
このシフトレバー装置には、シフト位置センサ82(図2参照)が設けられており、このシフト位置センサ82は、シフトレバー装置において5つのシフト位置のうちのどの位置が選択されているかを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
また、ECU2には、図2に示すように、クランク角センサ83及びアクセル開度センサ84が電気的に接続されている。このクランク角センサ83は、クランクシャフト3aの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)ごとに1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転速度(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
さらに、アクセル開度センサ84は、アクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。なお、本実施形態では、アクセル開度センサ84が駆動力パラメータ検出手段に相当し、アクセル開度APが駆動力パラメータに相当する。
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ80〜84の検出信号信号などに応じて、以下に述べように、変速制御処理などの各種の制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2が、目標変速段決定手段、制御手段及び変更手段に相当する。
以下、図3を参照しながら、変速制御処理について説明する。この変速制御処理は、前述した3つのアクチュエータ71〜73を駆動することによって、第1及び第2クラッチ5,6の接続/遮断状態と、前進1〜7速段及び後進段のインギヤ/ニュートラル状態とを制御するものであり、ECU2によって所定の制御周期ΔT(例えば10msec)で実行される。
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、シフト位置センサ82の検出信号に基づき、シフトポジション値POSIを以下に述べるように設定する。
具体的には、シフトポジション値POSIは、シフト位置がパーキング位置のときには値−2に、リバース位置のときには値−1に、ニュートラル位置のときには値0に、ドライブ位置のときには値1に、スポーツ位置のときには値2にそれぞれ設定されるとともに、ノーポジション状態(シフトレバーがシフト位置間にあって、シフト位置を特定できない状態)のときには値−3に設定される。
次いで、ステップ2に進み、シフトポジション値POSI≦−2が成立しているか否かを判別する。この判別結果がYESで、シフト位置がパーキング位置又はノーポジション状態にあるときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ2の判別結果がNOのときには、ステップ3に進み、シフトポジション値POSI=0が成立しているか否かを判別する。この判別結果がYESで、シフト位置がニュートラル位置にあるときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ3の判別結果がNOのときには、ステップ4に進み、シフトポジション値POSI≧1が成立しているか否かを判別する。この判別結果がYESで、シフト位置がドライブ位置又はスポーツ位置にあるときには、ステップ5に進み、前進変速制御処理を実行した後、本処理を終了する。この前進変速制御処理の詳細については後述する。
一方、ステップ4の判別結果がNOで、シフト位置がリバース位置にあるときには、ステップ6に進み、後進変速制御処理を実行する。この後進変速制御処理では、その内容は図示しないが、後進走行するために、リバース・シンクロ機構43及び第2クラッチ6の動作が制御される。例えば、後進段がインギヤ状態にないときには、リバース・シンクロ機構43を介して、リバースギヤ42がインギヤ状態に制御される。また、後進段がインギヤ状態にあって、第2クラッチ6が遮断状態にあるときには、第2クラッチ6が接続状態に制御される。ステップ6で、後進変速制御処理を以上のように実行した後、本処理を終了する。
次に、図4を参照しながら、上述した前進変速制御処理について説明する。同図に示すように、まず、ステップ10で、変速実行中フラグF_CHANGEが「1」であるか否かを判別する。この変速実行中フラグF_CHANGEは、変速動作を実行中であるか否かを表すものであり、その値は後述するステップ20のクラッチ&シンクロ制御処理において設定される。
このステップ10の判別結果がYESで、変速動作を実行中であるときには、ステップ20に進む。一方、ステップ10の判別結果がNOで、変速動作を実行中でないときには、ステップ11に進み、変速用値の算出処理を実行する。この算出処理は、以下に述べる各種の変速用の値を算出するものであり、具体的には、図5に示すように実行される。
同図に示すように、まず、ステップ30で、変速段センサ81の検出信号に基づき、現在変速段値SFT_tmpを算出する。具体的には、現在変速段値SFT_tmpは、現在インギヤ状態にある変速段が後進段のときには値−1として算出され、現時点で全ての変速段がインギヤされておらず、ニュートラル状態のときには値0として算出されるとともに、現在インギヤ状態にある変速段が前進1〜7速段のときにはそれぞれ値1〜7として算出される。
次いで、ステップ31に進み、シフトポジション値POSIが値1であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、シフト位置がドライブ位置にあるときには、ステップ32に進み、車速VP及びアクセル開度APに応じて、図6に示すマップを検索することにより、通常走行用の変速段値SFT_driveを算出する。なお、同図において、APwotは、アクセルペダルが全開状態にあるときの、アクセル開度APの全開値である。
次に、ステップ33で、変速段マップ値SFT_mapを通常走行用の変速段値SFT_driveに設定する。ステップ33に続くステップ34で、車速VPに応じて、上述した図6のマップを検索することにより、最下段値SFT_botを算出する。この場合、最下段値SFT_botは、通常走行中、その時点の車速VPに対して変速可能な最下段の通常走行用の変速段値SFT_driveとして算出される。
次いで、ステップ35に進み、車速VPに応じて、上述した図6のマップを検索することにより、最上段値SFT_topを算出する。この場合、最上段値SFT_topは、通常走行中、その時点の車速VPに対して変速可能な最上段の通常走行用の変速段値SFT_driveとして算出される。
一方、前述したステップ31の判別結果がNOで、シフト位置がスポーツ位置にあるときには、ステップ36に進み、車速VP及びアクセル開度APに応じて、図7に示すマップを検索することにより、スポーツ走行用の変速段値SFT_sportを算出する。
次に、ステップ37で、変速段マップ値SFT_mapをスポーツ走行用の変速段値SFT_sportに設定する。ステップ37に続くステップ38で、車速VPに応じて、上述した図7のマップを検索することにより、最下段値SFT_botを算出する。この場合、最下段値SFT_botは、スポーツ走行中、その時点の車速VPに対して変速可能な最下段のスポーツ走行用の変速段値SFT_sportとして算出される。
次いで、ステップ39に進み、車速VPに応じて、上述した図7のマップを検索することにより、最上段値SFT_topを算出する。この場合、最上段値SFT_topは、スポーツ走行中、その時点の車速VPに対して変速可能な最上段のスポーツ走行用の変速段値SFT_sportとして算出される。
以上のステップ35又は39に続くステップ40で、第1偏差DSFT1を、変速段マップ値SFT_mapと現在変速段値SFT_tmpとの偏差SFT_map−SFT_tmpに設定する。
次いで、ステップ41に進み、第2偏差DSFT2を、最上段値SFT_topと変速段マップ値SFT_mapとの偏差SFT_top−SFT_mapに設定する。
次に、ステップ42で、第3偏差DSFT3を、最上段値SFT_topと最下段値SFT_botとの偏差SFT_top−SFT_botに設定した後、本処理を終了する。
図4に戻り、ステップ11で、変速用値の算出処理を以上のように実行した後、ステップ12に進み、第1偏差DSFT1=0であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、SFT_map=SFT_tmpであるときには、変速動作を実行する必要がないと判定して、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ12の判別結果がNOで、SFT_map≠SFT_tmpであるときには、変速動作を実行すべきであると判定して、ステップ13に進み、現在変速段値SFT_tmp>0であるか否かを判別する。
この判別結果がYESで、前進1〜7速段のいずれかがインギヤ状態にあるときには、ステップ14に進み、クルーズ走行フラグF_CRUISEが「0」である否かを判別する。このクルーズ走行フラグF_CRUISEの値は、後述するクルーズ判定処理において設定される。
ステップ14の判別結果がYESで、車両Vがクルーズ走行状態にないときには、ステップ15に進み、第1偏差DSFT1>0であるか否かを判別する。この判別結果がYESのとき、すなわちSFT_map>SFT_tmpが成立し、シフトアップ変速を実行すべきであるときには、ステップ16に進み、第2偏差DSFT2が値0であるか否かを判別する。
この判別結果がYESのとき、すなわちSFT_map=SFT_topが成立し、最上段へのシフトアップ変速を実行すべきであるときには、ステップ17に進み、第3偏差DSFT3が偶数であるか否かを判別する。
この判別結果がYESのとき、すなわち第3偏差DSFT3が偶数であって、最上段の駆動ギヤと最下段の駆動ギヤが同じ軸(第1入力軸11又は副第2入力軸20)上に位置しているときには、ステップ18に進み、目標変速段値SFT_cmdを変速段マップ値SFT_mapから値1を減算した値SFT_map−1に設定する。
一方、以上のステップ13〜17のいずれかにおける判別結果がNOのとき、すなわち現在の変速段が後進段にあるか又は全変速段がニュートラル状態にあるときや、車両Vがクルーズ走行状態にあるとき、ダウンシフト変速を実行すべきであるとき、最上段以外の変速段へのシフトアップ変速を実行すべきであるとき、最上段の駆動ギヤと最下段の駆動ギヤが同軸上に位置していないときには、ステップ19に進み、目標変速段値SFT_cmdを変速段マップ値SFT_mapに設定する。
以上のステップ10,18,19のいずれかに続くステップ20で、クラッチ&シンクロ制御処理を実行する。この制御処理では、図示しないが、目標変速段値SFT_cmdに相当する目標変速段(すなわち前進1〜7速段のいずれか)をインギヤし、この目標変速段での前進走行が可能になるように、2つのクラッチ5,6及び5つのシンクロ機構18,19,25,26,43の動作が制御される。
この制御処理において、現時点でインギヤ状態にある変速段(以下「現在変速段」という)から1段上の目標変速段にシフトアップ変速を実行する場合、エンジン3の動力を現在変速段を介して駆動輪63に伝達した状態で、目標変速段のプリシフト制御処理を実行する。そして、目標変速段がインギヤ状態になったときに、2つのクラッチ5,6のうちの、エンジン3から目標変速段に動力を伝達可能な一方のクラッチを接続状態に切り換えながら、他方のクラッチが遮断状態に切り換えられる。
これと同様に、シフトダウン変速を実行するときにも、目標変速段へのプリシフト制御処理を実行し、目標変速段がインギヤ状態になったときに、2つのクラッチ5,6のうちの、エンジン3から目標変速段に動力を伝達可能な一方のクラッチを接続状態に切り換えながら、他方のクラッチが遮断状態に切り換えられる。
特に、アクセルペダルが急激に踏み込まれ、最下段へのキックダウン変速を実行する場合において、現在変速段が最上段であるときには、上述したステップ17〜19の処理により、最上段の駆動ギヤと最下段の駆動ギヤが同軸上になることがないので、エンジン3の動力を最上段を介して、駆動輪63に伝達した状態で、最下段のプリシフト制御処理を実行し、最下段がインギヤ状態になったときに、2つのクラッチ5,6のうちの、エンジン3から最下段に動力を伝達可能な一方のクラッチを接続状態に切り換えながら、他方のクラッチが遮断状態に切り換えられる。
また、このステップ20においては、変速動作の実行中(すなわちシフトアップ変速の実行中又はシフトダウン変速の実行中)であるときに、変速実行中フラグF_CHANGEが「1」に設定される一方、変速動作が終了したときに、変速実行中フラグF_CHANGEが「0」に設定される。以上のように、ステップ20で、クラッチ&シンクロ制御処理を実行した後、本処理を終了する。
次に、図8を参照しながら、クルーズ判定処理について説明する。このクルーズ判定処理は、車両Vがクルーズ走行状態にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて前述したクルーズ走行フラグF_CRUISEの値を設定するものであり、ECU2によって前述した所定の制御周期ΔTで実行される。
同図に示すように、まず、ステップ60で、開度偏差DAPを、アクセル開度の今回値APと前回値APzとの偏差の絶対値|AP−APz|に設定する。
次いで、ステップ61に進み、開度偏差DAPが所定値Dref以下であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、アクセル開度APの変化度合いが小さいときには、ステップ62に進み、クルーズ走行フラグF_CRUISEが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、車両Vがクルーズ走行状態にあると判定済みであるときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ62の判別結果がNOのときには、ステップ63に進み、クルーズ走行カウンタの計数値CT1を、その前回値CT1zと値1の和CT1z+1に設定する。次いで、ステップ64に進み、クルーズ走行カウンタの計数値CT1が所定値Cref1以上であるか否かを判別する。
この判別結果がNOのときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ64の判別結果がYESのとき、すなわちアクセル開度APの変化度合いが小さい状態の継続時間が値ΔT・Cref1に達したときには、車両Vがクルーズ走行状態にあると判定して、それを表すために、ステップ65に進み、クルーズ走行フラグF_CRUISEを「1」に設定する。
次いで、ステップ66に進み、クルーズ走行カウンタの計数値CT1と、後述する非クルーズ走行カウンタの計数値CT2をいずれも「0」に設定した後、本処理を終了する。
一方、前述したステップ61の判別結果がNOで、アクセル開度APの変化度合いが比較的、大きいときには、ステップ67に進み、クルーズ走行フラグF_CRUISEが「0」であるか否かを判別する。この判別結果がYESで、車両Vがクルーズ走行状態にないと判定済みであるときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ67の判別結果がNOのときには、ステップ68に進み、非クルーズ走行カウンタの計数値CT2を、その前回値CT2zと値1の和CT2z+1に設定する。次いで、ステップ69に進み、非クルーズ走行カウンタの計数値CT2が所定値Cref2以上であるか否かを判別する。
この判別結果がNOのときには、そのまま本処理を終了する。一方、このステップ69の判別結果がYESで、アクセル開度APの変化度合いが比較的、大きい状態の継続時間が値ΔT・Cref2に達したときには、車両Vがクルーズ走行状態にないと判定して、それを表すために、ステップ70に進み、クルーズ走行フラグF_CRUISEを「0」に設定する。次いで、前述したように、ステップ66を実行した後、本処理を終了する。
次に、図9及び図10を参照しながら、以上のように変速制御処理を実行したときの変速動作例について説明する。なお、両図において、VP1,VP2は、VP1<VP2が成立するような車速VPの所定値であり、AP1,AP2は、AP1<AP2が成立するようなアクセル開度APの所定値である。
まず、シフト位置がドライブ位置にあって、車両Vが通常走行中である場合、前述した図6のマップを用いて、通常走行用の変速段値SFT_driveが算出される。その場合、図9に示すように、車速VPが所定値VP1にあるときには、前述した最上段値SFT_topが値6として算出され、最下段値SFT_botが値4として算出されることになる。そのように車速VP=VP1にある場合において、アクセル開度APが全開値APwotに近い所定値AP2にあるときには、通常走行用の変速段値SFT_driveが値4として算出され、目標変速段値SFT_cmdが値4に設定されることにより、前進4速段がインギヤ状態に制御されることになる。
その状態からアクセルペダルが開放されると、時間の経過に伴って、同図に破線の矢印で示すように、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1に向かって変化し、通常走行用の変速段値SFT_driveが値4→値5→値6の順に変化することで、変速段マップ値SFT_mapも値4→値5→値6の順に変化する。その際、クルーズ走行状態にない場合、すなわちアクセルペダルの操作量が大きい状態の場合には、SFT_map=6となったタイミングにおいて、ステップ15,16の判別結果がいずれもYESとなることで、目標変速段値SFT_cmdが変速段マップ値SFT_mapから値1を減算した値5に設定される。
その結果、車速VP=VP1にある場合において、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1まで減少したときには、実際の変速段は、前進4速段から前進5速段にシフトアップ変速されることになる。したがって、その状態から、キックダウン動作が実行され、アクセル開度APが急増した場合、前進5速段から前進4速段へのシフトダウン変速を実行すればよいので、エンジン3の動力を前進5速段を介して駆動輪63に伝達している状態で、前進4速段をプリシフト制御し、これがインギヤ状態になったときに、第1クラッチ5を遮断しながら、第2クラッチ6が接続されることになる。その結果、空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮できる。
これに対して、本実施形態とは異なり、例えば、目標変速段値SFT_cmdを変速段マップ値SFT_mapに設定した場合、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1まで減少したときに、実際の変速段が、前進4速段→前進5段→前進6速段の順にシフトアップ変速されるので、その状態から、キックダウン動作が実行された場合、前進6速段→前進5速段→前進4段の順にシフトダウン変速を実行するか、第2クラッチ6を遮断し、前進6速段をニュートラル状態にし、前進4速段をインギヤ状態にした後、第2クラッチ6を接続する必要がある。
この場合、前進6速→前進5速段→前進4段の順にシフトダウン変速を実行した手法では、シフトダウン変速の実行時間が長くなってしてしまう。一方、第2クラッチ6を遮断し、前進6速段をニュートラル状態にし、前進4速段をインギヤ状態にした後、第2クラッチ6を接続する手法では、空走感やトルク抜けが発生してしまうことになる。すなわち、本実施形態の変速制御処理を実行することによって、アクセルペダルの操作量が大きい状態のときには、空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮できることになる、
また、図9に示すように、車両Vの通常走行中、車速VPが所定値VP1よりも高い所定値VP2にあるときには、前述した最上段値SFT_topが値9として算出され、最下段値SFT_botが値5として算出されることになる。そのように車速VP=VP2にある場合において、アクセル開度AP=AP2にあるときには、前進5速段がインギヤ状態に制御される。その状態からアクセルペダルが開放されると、時間の経過に伴って、同図に破線の矢印で示すように、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1に向かって変化し、通常走行用の変速段値SFT_driveが値5→値6→値7→値8→値9の順に変化することで、変速段マップ値SFT_mapも値5→値6→値7→値8→値9の順に変化する。
その際、クルーズ走行状態にない場合には、SFT_map=9となったタイミングにおいて、ステップ15,16の判別結果がいずれもYESとなることで、目標変速段値SFT_cmdが変速段マップ値SFT_mapから値1を減算した値8に設定される。その結果、車速VP=VP1にある場合において、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1まで減少したときには、実際の変速段は、前進5速段から前進8速段にシフトアップ変速されることになる。したがって、その状態から、キックダウン動作が実行され、アクセル開度APが急増した場合、前進8速段から前進5速段へのシフトダウン変速を実行すればよいので、エンジン3の動力を前進8速段を介して駆動輪63に伝達している状態で、前進5速段をプリシフト制御し、これがインギヤ状態になったときに、第2クラッチ6を遮断しながら、第1クラッチ5が接続されることになる。その結果、空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮できる。
一方、シフト位置がスポーツ位置にあって、車両Vがスポーツ走行中である場合、前述した図7のマップを用いて、スポーツ走行用の変速段値SFT_sportが算出される。その場合、図10に示すように、VP=VP1にあるときには、前述した最上段値SFT_topが値5として算出され、最下段値SFT_botが値4として算出されることになる。そのため、アクセル開度APが所定値AP2からAP1に変化したときでも、スポーツ走行用の変速段値SFT_sportが値4→値5の順に変化するので、クルーズ走行状態にあるか否かにかかわらず、前進4速段から前進5速段へのシフトアップ変速が実行される。また、AP=AP1の状態からキックダウン動作が実行されたときでも、前進5速段から前進4速段へのシフトダウン変速が実行される。
さらに、車両Vのスポーツ走行中、車速VP=VP2にあるときには、前述した最上段値SFT_topが値7として算出され、最下段値SFT_botが値5として算出されることになる。そのため、アクセル開度APが所定値AP2からAP1に変化したときには、スポーツ走行用の変速段値SFT_sportが値5→値6→値7の順に変化する。その際、クルーズ走行状態にない場合には、SFT_map=7となったタイミングにおいて、ステップ15,16の判別結果がいずれもYESとなることで、目標変速段値SFT_cmdが変速段マップ値SFT_mapから値1を減算した値6に設定される。
その結果、車速VP=VP2にある場合において、アクセル開度APが所定値AP2から所定値AP1まで減少したときには、実際の変速段は、前進5速段から前進6速段にシフトアップ変速されることになる。したがって、その状態からキックダウン動作が実行された場合、前進6速段から前進5速段へのシフトダウン変速を実行すればよいので、エンジン3の動力を前進6速段を介して駆動輪63に伝達している状態で、前進5速段をプリシフト制御し、これがインギヤ状態になったときに、第2クラッチ6を遮断しながら、第1クラッチ5が接続されることになる。その結果、空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮できる。
また、図9と図10を比較すると明らかなように、同一の車速VPにおいて、アクセル開度APが値0と全開値APwotとの間で変化した場合、図9のマップにおける通常走行用の変速段値SFT_driveの方が、図10のマップにおけるスポーツ走行用の変速段値SFT_sportと比べて変化する回数が多いことが判る。したがって、通常走行中の方が、スポーツ走行中と比べて、上述した本実施形態の作用効果、すなわち空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮できるという作用効果をより高頻度で得ることができる。
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、現在の変速段から最下段の変速段へのシフトダウン変速を実行する場合において、空走感やトルク抜けの発生を抑制しながら、変速時間を短縮することができ、商品性を向上させることができる。
なお、実施形態は、原動機として、内燃機関3を用いた例であるが、本発明の原動機はこれに限らず、動力を発生するものであればよい。例えば、原動機として、電動機や、内燃機関と電動機を組み合わせて用いてもよい。
また、実施形態は、自動変速機として、1つの出力軸30を備えたものを用いた例であるが、本発明の自動変速機はこれに限らず、2つ以上の出力軸を備えたものを用いてもよい。例えば、実施形態の自動変速機10において、出力軸30に加えて、別の出力軸を設けるとともに、これらの2つの出力軸の一方に偶数段用の従動ギヤを設け、他方に奇数段用の従動ギヤを設けるように構成してもよい。
さらに、実施形態は、車速パラメータとして、車速VPを用いた例であるが、本発明の車速パラメータはこれに限らず、車速を表すものであればよい。例えば、車速パラメータとして、出力軸30の回転速度を用いてもよい。
一方、実施形態は、駆動力パラメータとして、アクセル開度APを用いた例であるが、本発明の駆動力パラメータはこれに限らず、車両に要求されている駆動力を表すものであればよい。例えば、駆動力パラメータとして、エンジン回転数NEとアクセル開度APを組み合わせて用いてもよい。
また、実施形態は、複数の変速段モデルとして、図6及び図7のマップを用いた例であるが、本発明の変速段モデルの数はこれに限らず、3つ以上であってもよい。また、変速段モデルは、マップに限らず、変速段と車速パラメータと駆動力パラメータとの相関関係を表すものであればよい。例えば、変速段と車速VPとアクセル開度APの関係を定義した数式を用いてもよい。