以下、図面を参照して、本発明に係る資産管理システムの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に係る資産管理システムの機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る資産管理システムは、n箇所(n:自然数)の棚卸現場に配置された棚卸対象物の管理を行うものである。なお、図1に示すように、1番目の棚卸現場には、棚卸対象物T11、T12〜T1m1(m1:自然数)が配置され、n番目の棚卸現場には、棚卸対象物Tn1、Tn2〜Tnmn(mn:自然数)が配置されている。図1に示すように、本実施形態に係る資産管理システムは、マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnと、ウェアラブルデバイス1(携帯型装置)と、n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APnと、LANハブ2と、また棚卸データ装置3(据置型装置)とを具備している。なお、LANは「Local Area Network」である。
これら各構成要素のうち、マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmn、ウェアラブルデバイス1、n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APnは、棚卸現場(棚卸現場1〜nのいずれか)に設けられ、一方、LANハブ2及び棚卸データ装置3は、棚卸現場1〜nとは異なる管理事務所に設けられている。棚卸現場1〜nは、特に限定されないが、オフィスの各フロアであったり、工場敷地の異なる棟内であったりする。一方、管理事務所は、棚卸作業の管理担当者が依拠する部屋である。
マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnは、棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnを視覚的に特定するための目印であり、これらの棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの各々に設けられている。例えば、棚卸対象物T11にはマーカM11が設けられ、棚卸対象物T12にはマーカM12が設けられ、棚卸対象物T1m1にはマーカM1m1が設けられ、棚卸対象物Tn1にはマーカMn1が設けられ、棚卸対象物Tn2にはマーカMn2が設けられ、棚卸対象物TnmnにはマーカMnmnが設けられている。これらのマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnは、各々が異なる形状を有している。
このようなマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnは、外部から視認可能に各々張設されている。このようなマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnの形態については特に限定されないが、例えば一次元バーコードやQRコード(登録商標)、ARコード等の各種二次元バーコードを採用することができる。
ウェアラブルデバイス1は、人体の特定部位に装着可能な携帯型装置であり、また携帯型撮像装置と携帯型表示装置と携帯型指示入力装置とが一体化されたタイプの携帯型装置である。このようなウェアラブルデバイス1は、人体と係合する係合部(図示略)を機構的な構成要素として備えている。より具体的には、このウェアラブルデバイス1は、メガネをかける要領で人体の頭部に装着して使用するスマートグラスあるいはヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)であり、メガネレンズに相当する部位、つまりウェアラブルデバイス1の被装着者の目に対向するレンズ部が画像表示面としても機能する。このようなウェアラブルデバイス1は、棚卸作業を行う作業者Wが装着する。なお、作業者は1人である必要はなく、多数であっても良い。この場合、ウェアラブルデバイス1も作業者の数分だけ用いられることになる。
このようなスマートグラスあるいはヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)は、作業者Wの手及び腕の自由な動きを可能としつつ、周囲状況(周囲映像)と支援情報としての所定の付加画像との同時視認を可能とする携帯型装置である。なお、人体に装着可能な携帯型装置については、ウェアラブルデバイスに代えて、ウェアラブル端末あるいはウェアラブルコンピュータと言われることがある。
また、このようなウェアラブルデバイス1は、図2(a)に示すように、電気的な機能構成要素として通信部1a、記憶部1b、撮像部1c(携帯型撮像装置)、タッチパッド1d(指示入力装置)、集音部1e、表示部1f(携帯型表示部)及び演算部1gを具備している。通信部1aは、演算部1gによる制御の下で、n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APnのいずれかとの間で無線LANに準拠した無線通信を行う。
記憶部1bは、不揮発性の記憶領域及び揮発性記憶領域を備えるものであり、演算部1gが実行する棚卸プログラム及び当該棚卸プログラムの実行に必要な各種データを記憶する。また、この記憶部1bは、マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnの画像をマーカ画像1hとして記憶する。
撮像部1cは、ウェアラブルデバイス1の周囲映像を撮像するカメラであり、上記周囲映像の信号(映像信号)を演算部1gに出力する。この撮像部1cは、マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnを撮像してマーカ画像として出力する。このような撮像部1cは、携帯型撮像装置に相当する機能構成要素である。タッチパッド1dは、作業者Wの指の接触を検出する平面型のセンサであり、作業者Wの動作を示す信号(動作信号)を演算部1gに出力する。このタッチパッド1dは、携帯型指示入力装置に相当する機能構成要素である。集音部1eは、ウェアラブルデバイス1の周囲音を捉えるマイクロフォンであり、上記周囲音の信号(音声信号)を演算部1gに出力する。表示部1fは、演算部1gによる制御の下で、上述したメガネ部に上記付加画像を表示する。この表示部1fは、携帯型表示装置に相当する機能構成要素である。
演算部1gは、上記制御プログラムを実行することにより、通信部1a、記憶部1b、撮像部1c、集音部1e及び表示部1fを統括的に制御する制御機能部であり、CPU(Central Processing Unit)、内部メモリ並びに通信部1a、記憶部1b、撮像部1c、タッチパッド1d、集音部1e及び表示部1fと信号の授受を行う各種インターフェース回路を備えている。
ここで、上記棚卸プログラムは、ウェアラブルデバイス1の動作を統括的に制御するための部分機能として、撮像部1cから入力される映像信号に所定の画像処理(画像認識処理)を施すことにより上記マーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnを認識する画像認識機能、またタッチパッド1dから入力される指示信号に所定の信号処理を施すことにより、作業者Wの動作指示を認識する動作認識機能、また集音部1eから入力される音声信号に所定の音声処理(音声認識処理)を施すことにより、作業者Wの音声指示を認識する音声認識機能を含むものである。
すなわち、演算部1gは、撮像部1cから入力される映像信号、タッチパッド1dから入力される動作信号及び集音部1eから入力される音声信号に加えて、通信部1aが無線LANアクセスポイントAP1〜APnの何れか及びLANハブ2を介して棚卸データ装置3から受信する各種データを棚卸プログラムに基づいて処理することにより、ウェアラブルデバイス1の動作を統括的に制御する。なお、このようなウェアラブルデバイス1の動作の詳細については、本実施形態に係る資産管理システムの動作として後述する。
なお、ウェアラブルデバイス1の動作モードには、「通常モード」と「マイクモード」とがある。通常モードは、音声認識処理を利用しない動作モード、つまり作業者Wの音声指示を受け付けない動作モードである。一方、マイクモードは、音声認識処理を利用する動作モード、つまり作業者Wの音声指示を受け付ける動作モードである。演算部1gは、集音部1eから特定の音声(開始コマンド)が入力されると、動作モードを「通常モード」から「マイクモード」に切り替え、他の特定の音声(終了コマンド)が入力されると、動作モードを「マイクモード」から「通常モード」に切り替える。
このようなウェアラブルデバイス1によれば、作業者Wは、ウェアラブルデバイス1のレンズ部にて、周囲状況(周囲映像)と所定の付加画像(支援情報)とを同時に視認することが可能である。なお、周囲状況は、例えば半透明状もしくは透明のレンズ部を透過して視認される実風景であっても良いし、撮像部1cによって撮像された映像信号に基づいて表示部1fが表示するものであっても良い。
n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APnは、ウェアラブルデバイス1と棚卸データ装置3との通信をLANハブ2と共に中継する無線中継装置であり、棚卸現場1〜nの各々に設けられている。なお、棚卸現場1〜nが広い場合には、1つの棚卸現場に対して複数の無線LANアクセスポイントを設けても良い。無線LANアクセスポイントAP1〜APnは、各々がウェアラブルデバイス1との間で無線LANに準拠した無線通信を行う一方、LANハブ2との間で有線LANに準拠した有線通信を行う。すなわち、各無線LANアクセスポイントAP1〜APnは、離散的に配置されることによって、棚卸現場1〜nの全てをウェアラブルデバイス1と棚卸データ装置3との通信可能エリアとする。
LANハブ2は、n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APn及び棚卸データ装置3とLANケーブルで接続されており、ウェアラブルデバイス1と棚卸データ装置3との通信を無線LANアクセスポイントAP1〜APnと共に中継するスイッチングハブ(Switching Hub)である。すなわち、上述した棚卸現場1〜nと管理事務所とは、LANケーブルによって通信可能に接続されている。
棚卸データ装置3は、無線LANアクセスポイントAP1〜APn及びLANハブ2を介してウェアラブルデバイス1と通信を行うことにより、棚卸データを管理するこの棚卸データ装置3は、例えば所定の棚卸プログラムに基づいて棚卸を管理する管理用コンピュータであり、図2(b)に示すように通信部3a、記憶部3b(記憶装置)、操作部3c、表示部3d及び演算部3eを具備している。
通信部3aは、演算部3eによる制御の下で、LANハブ2と有線LANに準拠した有線通信を行う。記憶部3bは、不揮発性の記憶領域及び揮発性記憶領域を備えるものであり、演算部3eが実行する棚卸プログラム及び当該棚卸プログラムの実行に必要な各種データを記憶する。
また、記憶部3bが記憶する上記各種データには、棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnに関する情報を示す登録情報3fが含まれている。この登録情報3fには、棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの所在や棚卸作業の状況等が含まれる。棚卸現場1〜nにおける棚卸作業の状況は時々刻々と変化するものであるが、記憶部3bには上記登録情報3fが順次更新されて記憶される。したがって、ある時点において記憶部3bに記憶されている登録情報3fは、最新の棚卸状況を示すものである。このような記憶部3bに記憶された登録情報3fは、棚卸対象物棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの各々の登録情報が集合されてなるデータ群である。なお、以下の説明では、特定の棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnに関する登録情報を棚卸データと称する。すなわち、登録情報3fは、棚卸データが集合されたデータ群であるものとする。
操作部3cは、キーボードやマウス等のポインティングデバイスであり、管理担当者の動作指示を受け付けて演算部3eに出力する。表示部3dは、棚卸現場1〜nにおける棚卸作業の状況を示す棚卸監視画面を表示する。演算部3eは、上記棚卸プログラムを実行することにより、通信部3a、記憶部3b、操作部3c及び表示部3dを統括的に制御する制御機能部であり、CPU(CentralProcessing Unit)、内部メモリ並びに通信部3a、記憶部3b、操作部3c及び表示部3dと信号の授受を行う各種インターフェース回路を備えている。
ここで、上記棚卸プログラムは、上記付加画像の生成に必要な上記棚卸データ(すなわち登録情報3fの一部)をウェアラブルデバイス1に提供する機能(棚卸情報提供機能)を含むものである。なお、このように構成された棚卸データ装置3の動作の詳細については、本実施形態に係る資産管理システムの動作として後述する。
また、このように構成された資産管理システムにおいて、ウェアラブルデバイス1の通信部1a、記憶部1b及び演算部1g、無線LANアクセスポイントAP1〜APn、LANハブ2並びに棚卸データ装置3の通信部3a、記憶部3b及び演算部3eは、互いに連携することにより、マーカ画像1hに基づいて棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnを特定し、特定された棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmn(以下、特定棚卸対象物と称する)の棚卸データ(登録情報3f)を記憶部3b(記憶装置)から読み出して付加画像(支援情報)として提供する支援情報提供装置を構成している。
次に、このように構成された資産管理システムの動作について、図3〜図6をも参照して詳しく説明する。
本実施形態の資産管理システムでは、棚卸データ装置3が棚卸プログラムに基づいて無線LANアクセスポイントAP1〜APn及びLANハブ2を介して、作業者Wが装着したウェアラブルデバイス1と通信を行うことにより棚卸作業が行われる。そして、ウェアラブルデバイス1から入力される信号に基づいて、棚卸データ装置3の記憶部3bには最新の棚卸状況が登録情報3fとして保存される。
図3は、上述のような棚卸作業におけるウェアラブルデバイス1及び棚卸データ装置3の動作を説明するフローチャートである。以下、図3を参照してウェアラブルデバイス1及び棚卸データ装置3のより具体的な動作について説明する。なお、ここでは、作業者Wが、図1に示す棚卸現場1において棚卸対象物T11についての棚卸作業を行う場合について説明する。
作業者Wが、ウェアラブルデバイス1を自らの頭部に装着し、当該ウェアラブルデバイス1を介して、棚卸対象物T11を視認する。この結果、ウェアラブルデバイス1は、作業者Wが視認した棚卸対象物T11に貼付されたマーカM11にフォーカスを設定する(ステップS1)。すなわち、ウェアラブルデバイス1の演算部1gは、撮像部1cが捉えた棚卸対象物T11の映像信号を画像認識処理することにより、棚卸対象物T11の映像のうちマーカM11の部位を抽出する。そして、演算部1gは、棚卸対象物T11から抽出した部位の画像が記憶部1bに予め記憶されたマーカ画像1hと一致するか否かを判断する(ステップS2)。
演算部1gは、このステップS2の判断結果が「Yes」の場合、つまり棚卸対象物T11のマーカM11を検知すると、ウェアラブルデバイス1の通信部1aと棚卸データ装置3の通信部3aとの通信接続(通信リンク)が設定されているか否かを判断する(ステップS3)。演算部1gは、このようにしてマーカM11を検知することによって、作業者Wが棚卸作業を行おうとしている棚卸対象物T11を特定する。これによって、棚卸対象物T11が特定棚卸対象物であると認識される。なお、ステップS2の判断結果が「No」の場合、つまり棚卸対象物T11にマーカM11が検知されない場合には、上記ステップS1及びステップS2を繰り返すことにより、マーカM11の再検知を行う。
そして、演算部1gは、上記ステップS3の判断が「No」の場合、つまり上記通信接続(通信リンク)が設定されておらず、棚卸データ装置3との通信が可能でない場合、表示部1fに「ネットワーク未接続」という付加画像を表示させ(ステップS4)、その上でステップS1及びステップS2の処理を繰り返す。一方、演算部1gは、上記ステップS3の判断が「Yes」の場合、つまり上記通信接続(通信リンク)が設定されていて棚卸データ装置3との通信が可能な状態にある場合には、棚卸対象物T11に関する棚卸データが存在するか否かの判断を行う(ステップS5)。
ここで、上記ステップS2の判断結果が「Yes」になる前の段階では、ウェアラブルデバイス1には、付加画像が表示されていない。そして、ウェアラブルデバイス1には、上記ステップS3の判断が「No」になった時点で、図4(a)に示すように、マーカM11に対応するマーカ画像1hに「ネットワーク未接続」という文字が重畳された付加画像G1が表示される。すなわち、この付加画像G1は、ウェアラブルデバイス1(携帯型装置)と棚卸データ装置3(据置型装置)との通信接続状態を示す情報を含むものである。また、付加画像G1は、棚卸対象物T11に設けられたマーカM11を含んでいる。
そして、演算部1gは、上記ステップS5の判断が「Yes」の場合、つまり棚卸対象物T11の棚卸データが存在する場合、表示部1fに棚卸データを付加画像として表示させる。一方、演算部1gは、上記ステップS5の判断が「No」の場合には、表示部1fに棚卸データが未登録である旨の付加画像を表示させる(ステップS7)。
すなわち、演算部1gは、通信部1a等を介して棚卸データ装置3から棚卸対象物T11の棚卸データを取得し、棚卸データを含む付加画像を生成する。ただし、演算部1gは、棚卸対象物T11の棚卸データが取得できない場合には、棚卸データが未登録である旨の付加画像を生成する。すなわち、演算部1gは、棚卸対象物T11の棚卸データが取得できない場合には、未登録であることを示す情報を付加画像として提供する。なお、棚卸データ装置3の演算部3eは、通信部3a等を介してウェアラブルデバイス1から棚卸データの提供要求が入力されると、記憶部3bに記憶された登録情報3fから棚卸データを読み出し、当該棚卸データを通信部1aにウェアラブルデバイス1に向けて送信させる。ただし、演算部3eは、棚卸対象物T11の棚卸データが記憶部3bに記憶されていない場合には、その旨を通信部1aにウェアラブルデバイス1に向けて送信させる。
ここで、上記ステップS5の判断が「Yes」になった段階では、例えば、図4(b)に示すように、マーカM11に対応するマーカ画像1hに、具体的な棚卸データ内容(棚卸状況、資産名、管理者、設置場所、数量)が重畳された画像が付加画像G2として表示される。なお、ここでの棚卸状況は、棚卸対象物T11の棚卸作業が完了しているか否かを示す情報であり、棚卸作業が完了していない<未完了>あるいは棚卸作業が完了している<棚卸完了>のいずれかで表示される。このように、付加画像G2は、棚卸対象物T11(特定棚卸対象物)に対する棚卸作業が完了しているか否かを示す情報が含まれている。一方、上記ステップS5の判断が「No」になった段階では、図4(c)に示すように、マーカM11に対応するマーカ画像1hに、具体的な棚卸データ内容(棚卸状況、資産名、管理者、設置場所、数量)が不明である旨が重畳された画像が付加画像G3として表示される。
なお、上述の具体的な棚卸データ内容(棚卸状況、資産名、管理者、設置場所、数量)を示す文字は、他の表示とは異なる態様、例えば異なる色で表示される。例えば、具体的な棚卸データ内容(棚卸状況、資産名、管理者、設置場所、数量)を示す文字は赤色で表示され、他の文字は緑色で表示される。このように具体的な棚卸データ内容(棚卸状況、資産名、管理者、設置場所、数量)を示す文字を他とは異なる態様で表示することにより、作業者Wに棚卸対象物T11の棚卸データを明確に認識させることが可能である。
そして、演算部1gは、上記ステップS6の処理が完了すると、タッチパッド1dにおいて1タップ入力がされたか否かを判断する(ステップS8)。なお、本実施形態においては、作業者Wがタッチパッド1dを1タップする動作は、提供された付加画像G2に示された棚卸データを承認でき(すなわち実際に棚卸対象物T11が棚卸データの示す内容の通りに存在しており)、棚卸作業を完了して良い旨を示す動作を意味している。
ここで、演算部1gは、上記ステップS8の判断が「Yes」の場合、つまり1タップ入力がされた場合、棚卸データを確定する(ステップS9)。すなわち、演算部1gは、通信部1a等を介してタッチパッド1dに入力された1タップ動作を示す動作信号を出力する。棚卸データ装置3の演算部3eは、この動作信号が入力されると、記憶部3bに記憶された登録情報3fを更新する。これによって、棚卸対象物T11の登録情報3fが棚卸の完了した旨を含む情報に更新される。
ここで、上記ステップS8の判断が「Yes」になった段階では、例えば、図4(d)に示すように、図4(b)に示す付加画像G2の<未完了>との表示が棚卸作業の完了した旨を示す<棚卸完了>とされた付加画像G4が表示される。
一方、演算部1gは、上記ステップS7の処理が完了した後、上記ステップS8の判断が「No」の場合、又は、上記ステップS8の処理が完了した後は、タッチパッド1dにおいて2タップ入力がされたか否かを判断する(ステップS10)。なお、本実施形態においては、作業者Wがタッチパッド1dを2タップする動作は、棚卸対象物T11の棚卸データを編集する旨を示す動作を意味している。
ここで、演算部1gは、上記ステップS10の判断が「Yes」の場合、つまり2タップ入力がされた場合、棚卸データの編集モードに移行する(ステップS11)。このとき、例えば、図4(e)に示すように、具体的な棚卸データの入力画面が付加画像G5として表示される。
演算部1gは、編集モードに移行すると、ウェアラブルデバイス1の動作モードが「マイクモード」になっているか否かを判断する。そして、「マイクモード」になっている場合、演算部1gは、集音部1eから入力される音声信号に対応した指令を通信部3aに棚卸データ装置3に送信させる。また、集音部1eから入力される音声信号に対応した表示を表示部1fに表示させる。棚卸データ装置3の演算部3eは、通信部3aを介して上記指令が入力されると、当該指令に基づいて登録情報3fを編集及び登録する(ステップS12)。なお、演算部1gは、ウェアラブルデバイス1の動作モードが「マイクモード」になっていない場合には、「通常モード」から「マイクモード」に切り替える音声指示が入力されるまで待機する。また、演算部1gは、例えば「マイクモード」から「通常モード」に切り替える音声指示が入力された場合に、「マイクモード」から「通常モード」に切り替えると共に、ステップS12の処理を完了してステップS1に戻る。
なお、本実施形態においては、ステップS12において、棚卸データを編集するために、集音部1eを用いているが、タッチパッド1dを併用することも可能である。例えば、タッチパッド1dへの操作によって入力文字の確定等を行っても良い。また、タッチパッド1dに文字入力機能を付加し、当該文字入力機能によって棚卸データの編集を行うようにしても良い。このような場合には、例えば、集音部1eをウェアラブルデバイス1から削除する構成を採用することも可能となる。
図5は、付加画像が表示されていない初期画像G0(例えば、周囲映像のみからなる画像)及び各種の付加画像G1,G2,G4の基本遷移を示す模式図である。すなわち、初期画像G0は、ウェアラブルデバイス1がマーカM11を認識し、かつ、棚卸データ装置3との通信接続(通信リンク)が未設定の場合に付加画像G1に遷移する。一方、初期画像G0は、ウェアラブルデバイス1がマーカM11を認識し、かつ、通信接続(通信リンク)が設定済みの場合に付加画像G2に遷移する。また、付加画像G1は、タッチパッド1dにおいて1タップ入力がなされた場合に付加画像G4に遷移する。なお、マーカM11を認識し、かつ、棚卸対象物T11の棚卸作業が完了している場合には初期画像G0は、付加画像G1ではなく付加画像G4に遷移する。また、上記付加画像G1,G2,G4は、ウェアラブルデバイス1がマーカM11を認識しなくなると、初期画像G0に遷移する。
また、図6は、付加画像G5への遷移を示す模式図である。すなわち、付加画像G2,G3,G4は、タッチパッド1dにおいて2タップ入力がなされた場合に付加画像G5に遷移する。また、付加画像G5は、集音部1e等によって入力情報が確定される(例えば「OK」を示す動作が行われる)と、付加画像G2に遷移する。また、付加画像G2からは、タッチパッド1dに1タップ入力がされたときに付加画像G4に遷移し、タッチパッド1dに2タップ入力がされたときに付加画像G5に遷移する。つまり、タッチパッド1dに入力される入力指示に基づいて付加画像(支援情報)の態様が変更される。
そして、上述のような動作を全ての棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnに対して行うことによって、棚卸作業が完了する。以上のような本実施形態の資産管理システムによれば、撮像部1cによって棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnに設けられたマーカが捉えられると、このマーカの画像(マーカ画像)から棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnが特定され、当該棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの棚卸データ(すなわち登録情報)が付加画像として表示部1fで表示される。このため、撮像部1cの撮像範囲にマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnが存在すれば、当該棚卸対象物11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの棚卸データを作業者Wに提供することができる。
このため、棚卸データ等が記憶されたICタグが棚卸対象物に設けられ、このICタブをリーダで読み取る場合比較して、作業者Wが棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnに近づかなくても当該棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnの棚卸データ(すなわち登録情報)を作業者Wに提供することができる。したがって、本実施形態の資産管理システムによれば、棚卸作業の作業時間及び作業負担を減らすことができ、棚卸作業のさらなる効率化を図ることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、n個のマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmn、ウェアラブルデバイス1、n個の無線LANアクセスポイントAP1〜APn、LANハブ2及び棚卸データ装置3を備えるものとして資産管理システムを構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウェアラブルデバイス1にマーカ画像1hと登録情報3fとを記憶させることによって棚卸データ装置3との連携を必要としない資産管理システムを構成してもよい。すなわち、n個のマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnとウェアラブルデバイス1とで資産管理システムを構成してもよい。
(2)上記実施形態では、携帯型装置としてウェアラブルデバイス1を採用したが、本発明は、これに限定されない。ウェアラブルデバイス1は作業者Wの動きを比較的阻害しないので、作業者Wの作業性を低下させないが、例えば作業者Wが手で把持するタイプの携帯型装置を採用してもよい。
(3)上記実施形態では、マーカ画像1hをウェアラブルデバイス1に記憶させ、かつ、登録情報3fを棚卸データ装置3に記憶させたが、本発明はこれに限定されない。マーカ画像1hと登録情報3fとをウェアラブルデバイス1に記憶させてもよく、あるいはマーカ画像1hと登録情報3fとを棚卸データ装置3に記憶させてもよい。
(4)上記実施形態では、指示入力装置をウェアラブルデバイス1に設けられるタッチパッド1dとし、演算部1gがタッチパッド1dから入力される動作指示を認識するように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウェアラブルデバイス1と別体にタッチパネル等の操作部を設け、当該操作部から動作指示を手入力してもよい。また、このウェアラブルデバイスと別体とされた操作部を、例えば作業者Wの腕等に装着する他のウェアラブルデバイスとしても良い。
(5)上記実施形態では、図4〜図6に初期画像G0及び各種の付加画像G1〜G5の一例を示したが、本発明における付加画像は付加画像G2〜G5に限定されない。
(6)また、撮像部1cの撮像範囲に複数のマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnが捉えられた場合には、捉えられた全てのマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnに対する棚卸データを表示しても良いが、この場合には、作業者Wにとって視認がし難くなるおそれがある。特に棚卸作業が必要な棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnは多数であり、互いに近接して配置されている場合も多いことから、このような事態が生じやすい。このため、いずれかの棚卸データを優先的に表示するようにすることが望ましい。例えば、作業者Wからの距離が近いマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnの棚卸データを優先したり、棚卸作業が完了していないマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnの棚卸データを優先したりすることが考えられる。また、棚卸データの未登録がある場合には、登録を優先するべく付加画像G5を優先的に表示するようにしても良い。また、いずれかの棚卸データを優先して表示する場合に、優先順位の低い棚卸データについては、表示を省略しても良いが、存在を作業者Wに気付かせるために簡易的にマーカM11、M12〜M1m1、Mn1、Mn2〜Mnmnの位置のみ等を表示することが望ましい。このとき、既に棚卸作業が完了しているものについては、表示を省略しても良い。これらを組み合わせることによって、作業者Wが棚卸作業の完了していない棚卸対象物T11、T12〜T1m1、Tn1、Tn2〜Tnmnを効率的に認識することができ、より作業効率が向上する。