以下、本実施形態について説明するが、本実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下、画像処理システムとして、被写界深度拡張光学系を有する監視カメラと、この監視カメラにより記録された画像に対し、画像表示のため画像復元処理を施す画像復元機能を備えた監視者端末とを含む、監視システムを一例として説明する。
図1は、本実施形態による監視システム100の概略的な構成を示す図である。図1に示す監視システム100は、監視カメラ110と、記録された画像を保管する画像保管サーバ130と、監視者が使用する監視者端末140とを含み構成される。監視システム100を構成する各要素は、3つの拠点104,106,108に設置されている。
監視カメラ110は、カメラ設置ルーム104に設置され、カメラ設置ルーム104内に存在する被監視対象である被写体126の状態を撮影している。画像保管サーバ130は、サーバ・ルーム106に設置され、監視カメラ110が撮影した保管対象となるすべての画像データを、少なくとも所定期間保管する。
監視者端末140は、監視員や警備員などの監視者が常駐する監視ルーム108に設置されている。監視者端末140には、監視カメラ110で撮像している画像、画像保管サーバ130に保管された画像を取得し、画像をディスプレイに映し出すための監視アプリケーションがインストールされている。監視者は、この監視者端末140の監視アプリケーション画面上で、カメラ設置ルーム104の状態のリアルタイムな様子または過去の様子を確認することができる。
監視カメラ110と、画像保管サーバ130と、監視者端末140とは、ハブ、スイッチなどを介してネットワーク102で相互に接続されており、これら3つの装置間で自由なデータアクセスが可能とされている。ネットワーク102は、特に限定されるものではないが、イーサネット(登録商標)などのLAN(Local Area Network)、イントラネット、あるいは、VPN(Virtual Private Network)などを介したWAN(Wide Area Network)などとして構成される。
以下、図2〜図5を参照しながら、監視システム100を構成する各要素110,130,140の機能について説明する。図2は、本実施形態による、被写界深度拡張光学系を有した監視カメラ110の構成を示すブロック図である。図2に示す監視カメラ110は、被監視対象である被写体126を撮影するものである。なお、説明する実施形態では、一例として、監視カメラ110は、無人状態にあるオフィス内を監視するものとして説明するが、特に限定されるものではなく、被写体としては、人物、他の被監視物が含まれてもよく、さらに、バーコードや2次元コードの図柄、文字列などが含まれてもよい。
図2に示す監視カメラ110は、レンズユニット112と、固体撮像素子118と、データ圧縮部120と、フィルタ係数決定部122と、イーサネット(登録商標)ポート124とを含む。レンズユニット112は、1枚以上のレンズを含み構成される光学系である。
本実施形態による監視カメラ110では、レンズユニット112において、絞り114の近傍に、位相板116が挿入されている。上記位相板116は、被写界深度を拡大させるために収差を発生させる光波面変調素子である。光波面変調素子は、固体撮像素子118の像面における点像分布関数(Point Spread Function:PSF)が2画素以上にまたがるように拡散させる。通常、光学系は、充分に収差が補正されるように設計されているので、光波面変調素子を含むレンズユニット112は、被写体126の像を収差が乗った状態で固体撮像素子118の像面上に結像させる。したがって、光波面変調素子は、光学系の結像性能を劣化させ、ぼけた画像を与える。このとき、劣化の仕方が所定の焦点はずれ量の範囲内で変化しないような光波面変調素子を選ぶことによって、後段の画像復元処理により、ぼけた画像から被写界深度が拡張された、MTF(Modulation Transfer Function)の高い画像を好適に復元することができるようになる。
なお、本実施形態においては、位相板116を用いた場合について説明するが、他の実施形態による光波面変調素子としては、光の波面を変形させるものであればどのようなものでもよい。例えば、厚みが変化する光学素子、屈折率が変化する光学素子、厚みおよび屈折率が変化する光学素子、光の位相分布を変調可能な液晶素子など、種々の光波面変調素子であってよい。また、説明する実施形態では、被写界深度拡張光学系として、収差が充分に補正された光学系に光波面変調素子である位相板116を挿入したものを一例として説明する。しかしながら、光学系のレンズ等で光波面変調素子と同様に規則的に分散した画像を形成できるものを選択し、別個に光波面変調素子を用いずに光学系のみで実現してもよい。その場合は、光学系のレンズ自体が、光波面変調素子を構成しているといえる。
なお、説明する実施形態では、位相板116は、着脱可能に構成されている。位相板116が挿入されていない場合は、レンズユニット112は、通常の光学系として使用可能となる。
固体撮像素子118としては、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなど、受光素子が二次元状に配置された典型的な固体撮像素子を使用することができる。固体撮像素子118は、光波面変調素子を含むレンズユニット112を通して、その像面上に結像された被写体126の像を撮像し、補間演算、色空間変換処理などの種々の画像信号処理を施し、画像データを出力する。説明する実施形態においては、動画が撮影され、画像データは、複数の画像フレームを含み構成される。以下、固体撮像素子118から出力され、未だ復元処理が施されていない画像フレーム各々を1次画像と参照する。
データ圧縮部120は、固体撮像素子118から入力される1以上の画像フレームを、1次画像のまま、圧縮する圧縮処理を行う。圧縮方式としては、特に限定されるものではないが、MPEG(Moving Picture Experts Group)−1,MPEG−2、MPEG−4や、Motion JPEG(Joint Photographic Picture Experts Group)など、不可逆圧縮方式または可逆圧縮方式の種々の動画(連続静止画を含む)圧縮形式とすることができる。本実施形態によるデータ圧縮部120は、さらに、画像フレームと、該画像フレームに対する復元処理を行うためのフィルタ係数とを関連付けて保存ないし出力を行う。
上述した光波面変調素子による分散は、光学系におけるレンズのフォーカス位置などの撮像条件に基づいて変化する可能性がある。フィルタ係数決定部122は、レンズのフォーカス位置などの撮像条件に対応付けて、そのような撮像条件の下で撮影された1次画像から復元するためのフィルタ係数を複数保持する。フィルタ係数決定部122は、撮影時に与えられた撮像条件に基づいて、対応するフィルタ係数を決定し、データ圧縮部120に出力する。
図3は、本実施形態によるフィルタ係数決定部122が保持するフィルタ係数決定テーブルのデータ構造を例示する図である。図3に示すテーブルでは、フォーカス位置を撮像条件として、各フォーカス位置1,2,・・・,N毎にフィルタ係数が対応付けられている。図3に示す例示では、注目点を含めて5×5の合計25点を用いてデコンボリューション処理するためのフィルタ係数が準備されている。フィルタ係数は、所定の撮像条件の下、上述した光波面変調素子により与えられる、点被写体が少なくとも2つの画素にまたがって拡散されるような点像分布関数に基づくものであり、監視者端末140での画像フレームの復元処理に使用される。
上述した画像データおよびフィルタ係数の関連付けた保存は、例えば、通常の動画フォーマットにおいて、各フレームに適用するフィルタ係数をメタデータとして保存ないし出力することによって行うことができる。一方で、フィルタ係数は、上述したようにフォーカス位置などの撮像条件に依存するものの、撮像条件が変化しない限り変化はなく、特定の用途では、頻繁に変更されるものではない場合もある。そこで、好適な実施形態では、各フレームに関連付けて、前のフレームと同一か否かを表す情報を付して、変更があった場合にのみ、次フレーム以降に適用するフィルタ係数を付すようにしてもよい。
図4は、本実施形態によるデータ圧縮部120が生成する圧縮データのデータ構造を例示する図である。図4(A)に示す圧縮データ300は、複数のフレーム312−1〜312−tを時系列に従って保持する画像部310と、各フレームに対応するフィルタ係数を時系列に従って保持するフィルタ係数部320とを含み構成されている。
図4(A)に示す圧縮データ300のフィルタ係数部320には、フレームの前後で適用するフィルタ係数が異なるか否かを示す変更タグが含まれる。変更タグが変更を示す場合(変更タグ=1)は、その変更タグにフィルタ係数が後続する。一方、変更タグが変更されないことを示す場合(変更タグ=0)は、次のフレームに対する変更フラグが後続する。このようなデータ構造により、フレーム毎にフィルタ係数セットを保持させる場合に比較して、冗長なデータ伝送およびデータ保存を避けることが可能となる。また、フレーム毎にフィルタ係数を変更可能に構成することにより、フォーカス位置が経時的に変化する用途などに好適に用いることができる。
図4(B)に示す圧縮データ350は、複数のフレーム352−1〜tが、対応するフィルタ係数セットを与える情報と共に、時系列に従って保持される形式を採用する。図4(B)に示す圧縮データ350では、複数のフレーム352−1〜352−tが時系列に沿って並べられているが、前フレームから適用するフィルタ係数が変更されるフレーム352−1,352−4に対しては、さらに、フィルタ係数354−1,354−4が付されている。図4(B)に示すようなデータ構造によっても、フレーム毎にフィルタ係数セットを保持させる場合に比較して、冗長なデータ伝送およびデータ保存を避けることが可能となる。
また、図4に示す圧縮データ300、350は、補正データとしてフィルタ係数自体を含んでいる。しかしながら、特に限定されるものではなく、他の実施形態では、監視カメラ110および監視者端末140の両者間において同一のフィルタ係数を特定することができるような事前合意があれば、フィルタ係数を識別する識別子など、フィルタ係数を与える情報を補正データとして圧縮データに含めるようにしてもよい。この場合、データ量やトラフィックの観点から有利である。
さらに、画像フレームと補正データとの関連付けは、図4に示すように、画像フレームの本体データとメタデータというように一体のデータとして提供することは必ずしも要さない。他の実施形態では、画像フレームとそれに対する適切なフィルタ係数とが関連付けられる限り、複数の画像フレームを保持する画像データと、複数の画像フレームに対するフィルタ係数を与える補正データとは、分離して提供されてもよい。
さらに、焦点深度を拡大するカメラの用途としては、フィルタ係数が固定で利用する場合も多い。フィルタ係数が固定の場合には、監視カメラ110および監視者端末140間で、カメラの位相板116に応じて用いるべきフィルタ係数セットの合意を取っておけばよい。すなわち、本実施形態において、画像フレームと、補正データとを関連付けるとは、画像フレームに対して適用すべきフィルタ係数を特定できる形で、画像フレームと、適用すべきフィルタ係数を与える補正データとを提供することをいう。
なお、以下では、複数フレーム312の画像部310と、対応するフィルタ係数部320とが結合ざれた、図4(A)に示す形式の圧縮データ300を一例として用いながら説明を行う。したがって、説明する実施形態において、データ圧縮部120は、固体撮像素子118の後段側に設けられる、1次画像を圧縮する圧縮手段、および出力された1次画像と補正データとを結合する結合手段として機能する。
イーサネット(登録商標)ポート124は、データ圧縮部120で画像データおよびフィルタ係数データが圧縮されて生成された圧縮データを、パケットにして、ネットワーク102を介して、画像保管サーバ130または監視者端末140に出力する。説明する実施形態において、イーサネット(登録商標)ポート124は、1次画像と補正データとを関連付けて出力する出力手段を構成する。
図5は、本実施形態による、監視カメラ110と通信する画像保管サーバ130および監視者端末140の構成を示すブロック図である。図5に示す画像保管サーバ130は、通信部132と、制御部134と、画像格納部136とを含み構成される。
通信部132は、監視カメラ110や監視者端末とのネットワーク102を介した通信を行うためのネットワーク・アダプタ、プロトコル・スタックなどを含む。制御部134は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含み構成され、画像保管サーバ130の全体制御を行う。
画像格納部136は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などのストレージ・デバイスを含み構成される。画像格納部136は、ネットワーク102を介して監視カメラ110から受信した圧縮データを、ストレージ・デバイスに保存する。圧縮データ300は、上述したように、画像フレームの画像部310と、画像フレームに応じたフィルタ係数データのフィルタ係数部320とが結合されたデータ構造を有している。説明する実施形態において、画像格納部136は、1次画像と、該1次画像に応じた補正データとを関連付けて記憶する記憶手段を構成する。
制御部134は、通信部132が監視カメラ110から受信した圧縮データを画像格納部136に格納させる制御を行う。制御部134は、さらに、通信部132が監視者端末140から受信した画像取得要求に応答して、要求された圧縮データを画像格納部136から読み出し、要求元の監視者端末に対し、通信部132により送信する制御を行う。
図5には、さらに、監視カメラ110により記録された画像に対し、画像表示のため画像復元処理を施す監視者端末140が示されている。図5に示す監視者端末140は、制御部144と、通信部142と、データ分離部146と、画像解凍部148と、復元フィルタ処理部150と、画像表示部152と、操作部154とを含み構成される。本実施形態において、監視者端末140上では、ROMやHDDからオペレーティング・システムやその上で動作する監視アプリケーションのプログラムが読み出され、メモリ上に展開され、これによりこれらの機能部142〜154が実現される。
監視者端末140の制御部144は、CPUなどのプロセッサを含み構成され、監視者端末140の全体制御を行う。制御部144は、操作部154を介して行われた監視アプリケーションの画面に対するユーザ操作を獲得し、ユーザ操作に基づいて、各処理部および監視カメラ110、画像保管サーバ130に対し指令を行う。通信部142は、監視カメラ110や画像保管サーバ130とのネットワーク102を介した通信を行うためのネットワーク・アダプタ、プロトコル・スタックなどを含む。通信部142は、制御部144の制御の下、監視カメラ110または画像保管サーバ130から圧縮データを受信するものであり、画像データとフィルタ係数データとを関連付けて取得する取得手段を構成する。
データ分離部146は、監視カメラ110または画像保管サーバ130から受信した圧縮データから、まず画像データとフィルタ係数データとに分離する。画像データとフィルタ係数データとの分離は、上述したデータ圧縮部120で行われた処理の逆手順で行うことができる。例えば、画像データを読み取り、そのメタデータからフィルタ係数領域を抽出することにより、フィルタ係数データを得ることができる。そして分離したデータのうち、圧縮データ300の画像部310のデータを画像解凍部148へ、フィルタ係数部320のフィルタ係数を復元フィルタ処理部150へ出力する。本実施形態において、データ分離部146は、復元フィルタ処理部150の前段側に設けられ、結合された1次画像と補正データとを分離する分離手段として機能する。
画像解凍部148は、画像部310のデータを解凍して、フレーム毎の1次画像を抽出し、画像フレーム各々を復元フィルタ処理部150に出力する。本実施形態において、画像解凍部148は、復元フィルタ処理部150の前段側に設けられ、1次画像を解凍する解凍手段として機能する。
復元フィルタ処理部150は、画像解凍部148から入力される画像フレームをカウントしながら、処理対象の画像フレームに対応するフィルタ係数を用いて復元フィルタ処理を施す。1次画像から復元された2次画像の画像フレームは、画像表示部152に出力される。本実施形態において、復元フィルタ処理部150は、監視カメラ110から分離され、監視カメラ110と非同期で動作する、画像を復元する補正処理を施す画像処理手段として機能する。
以下、被写界深度拡張光学系に基づく復元フィルタ処理について説明する。カメラで撮影された画像g(x,y)は、下記式(1)に示すように、被写体の原画像f(x,y)と、劣化関数h(x,y)とのコンボリューションによって表される。つまり、カメラで撮影された画像g(x,y)は、被写体の原画像f(x,y)が、所定の劣化関数h(x,y)により劣化した劣化画像といえる。そして、復元フィルタ処理は、劣化画像g(x,y)から原画像f(x,y)を推定する逆問題といえる。下記式(1)をフーリエ変換し、整理すると、下記式(2)が得られる。
g(x,y)=f(x,y)*h(x,y) …(1)
F(u,v)=G(u,v)・H−1(u,v) …(2)
上記式(1)における「*」は、コンボリューション演算を表し、上記式(2)における「・」は、積を表す。また、上記式(2)中、F(u,v)、G(u,v)およびH(u,v)は、それぞれ、f(x,y)、g(x,y)、h(x,y)のフーリエ変換であり、uおよびvは、画像座標系におけるx方向およびy方向の空間周波数を表す。上記式(2)において、H−1(u,v)は、劣化関数のフーリエ変換の逆数であり、周波数領域における逆フィルタと呼ばれる。
上記式(2)によれば、原画像f(x,y)は、劣化画像のフーリ変換G(u,v)と、逆フィルタH−1との積を逆フーリエ変換することで復元することができる。あるいは、逆フィルタH−1をフーリエ逆変換して、劣化画像g(x,y)に重畳積分することによっても復元することができる。
上記劣化関数h(x,y)は、点光源の場合の劣化画像(インパルス応答)として観測され、点像分布関数または点広がり関数と呼ばれる。点像分布関数h(x,y)が既知であれば、そのフーリエ変換の逆数を取ることにより、逆フィルタH−1(u,v)を計算することができる。
被写界深度拡張光学系では、所定の焦点ずらし量の範囲において、劣化の仕方が一定となるような、つまり略一定の点像分布関数を与えるような光波面変調素子が選ばれる。このため、1種のデコンボリューション・フィルタを用意すれば、焦点はずれ量によらず、好適に鮮明な画像を復元することができる。
上述したように、光波面変調素子による分散は、光学系におけるレンズのフォーカス位置などの撮像条件に基づいて変化する。このため、特定の光学系において、種々の撮像条件iに対応して点像分布関数hi(x,y)を観測し、各フィルタ係数を、撮像条件に応じて決定するためにフィルタ係数決定部122に保持させる。そして、復元フィルタ処理部150は、画像フレームに対応付けられたフィルタ係数を用いて、デコンボリューション・フィルタ処理を行う。なお、復元フィルタ処理は、上記式(1)および(2)による逆フィルタとして説明した。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、ノイズの影響を考慮した画像劣化モデルに基づき、原画像と復元画像との誤差を最小化するようなウィーナフィルタ(Weiner Filter)など他のフィルタを適用してもよい。
画像表示部152は、復元フィルタ処理部150により1次画像から復元された2次画像の画像フレームに基づき画像表示する。説明する実施形態において、画像表示部152は、画像出力する画像出力手段を構成する。なお、画像出力としては、ディスプレイに対する画像表示の他、プロジェクタでの投影表示、動画像の画像フレーム、または静止画像の印刷出力、ファクシミリ送信などを挙げることができる。
操作部154は、監視者端末140を操作する監視者からの監視アプリケーション画面を介した各種指示を受け付ける入力デバイスを含む。操作部154が受け付ける指示としては、監視カメラ110からのリアルタイム画像表示指示、画像保管サーバ130からの保管された録画像表示指示、対象とする画像フレーム群(例えば時間で指定される。)の選択などを挙げることができる。説明する実施形態において、操作部154は、例えば開始時間を指定して、復元させる対象となる画像フレーム群の選択を受け付ける選択受付手段を構成する。
なお、復元フィルタ処理部150は、すべての画像フレームに対し、復元フィルタ処理を施すことを要さない。制御部144は、操作部154への指示に基づいて、復元させる対象として選択された画像フレーム群に対する復元フィルタ処理を有効化する信号を復元フィルタ処理部150に対し出力する。復元フィルタ処理部150は、制御部144から復元フィルタ処理の有効化または無効の切り替え通知を受信し、有効化された期間中は、画像解凍部148から送信される画像フレームに対し復元フィルタ処理を施す。一方、無効化の通知を受信し、無効化された期間中は、復元をせずそのまま、画像表示部152に出力する。画像表示部152は、復元フィルタ処理部150による復元フィルタ処理が無効化されている場合は、復元がなされていない1次画像の画像フレームを画像出力することになる。
なお、説明する実施形態では、リアルタイム画像表示の指示が行われた場合は、復元フィルタ処理が無効化され、ぼけた画像のまま画像表示される。一方、録画像表示の指示が行われた場合は、復元フィルタ処理が有効化され、1次画像から復元された2次画像の画像フレームが画像表示される。しかしながら、他の実施形態では、録画像表示の指示が行われた場合でも、通常は、復元フィルタ処理を無効化したまま、ぼけた画像のまま画像表示を行うように構成してもよい。そして、明示的な復元フィルタ処理の有効化の指示を受けた場合にだけ、復元された2次画像の画像フレームを画像表示してもよい。
図6は、本実施形態において、監視者端末140で監視アプリケーションが起動されたときにディスプレイに表示されるアプリケーション画面を例示する。図6に示すアプリケーション画面200は、画像が表示される画像表示領域202と、画像表示領域202に映し出す画像を指定するためのGUI(Graphical User Interface)部品204〜208を含む。GUI部品としては、リアルタイム画像表示を指示するリアルタイム表示ボタン204と、画像保管サーバ130に保管された録画像表示を指示する録画表示ボタン206と、録画像表示における再生開始時間を指定するための再生開始時間設定ボックス208とが示されている。
監視者は、カメラ設置ルーム104の様子を見たいときには、リアルタイム表示ボタン204を押下すればよい。また、画像保管サーバ130が保管する録画像を見たいときには、監視者は、再生開始時間設定ボックス208に所望の再生開始時刻を設定し、録画表示ボタン206を押下すればよい。
以下、図7および図8を参照しながら、リアルタイム画像表示および録画像表示の場合の監視アプリケーションが実行する処理について説明する。図7は、本実施形態による監視者端末140が実行する、リアルタイム画像表示処理を示すフローチャートである。図8は、本実施形態による監視者端末140が実行する、録画像表示処理を示すフローチャートである。
まず、リアルタイム画像表示処理について説明する。図7に示すリアルタイム画像表示処理は、例えば、監視者が監視アプリケーション画面上のリアルタイム表示ボタン204を押下したことに応答して、ステップS100から開始される。ステップS101では、制御部144は、通信部142により、監視カメラ110へ画像取得要求を送信させる。ステップS102では、制御部144は、復元フィルタ処理部150に出力するフィルタ処理の要否を示す信号を切り替えて復元フィルタ処理を無効化する。ステップS103では、制御部144は、監視カメラ110からの画像受信が開始されるまでの間(NOの間)待ち受ける。監視カメラ110は、画像取得要求に応答して、監視者端末140への圧縮データの送信をまもなく開始させる。ステップS103で、監視カメラ110からの画像受信が開始された場合(YES)は、ステップS104へ処理が進められる。
ステップS104では、制御部144は、通信部142により、画像データを受信させて、ステップS105では、データ分離部146により、圧縮データから画像部を分離させる。ステップS106では、制御部144は、画像解凍部148により、画像フレームの解凍処理を行わせる。ステップS107では、制御部144は、画像表示部152により、アプリケーション画面200の画像表示領域202に、その解凍されたままの1次画像のフレームの画像表示を行わせる。なお圧縮データには、画像フレームにフィルタ係数部が関連づけられているが、復元フィルタ処理部150には復元フィルタ処理の無効信号が入力されているので、復元フィルタ処理は実行されない。したがって、画像表示領域202に表示される画像フレームは、フィルタ処理が行われていないため、ぼけた画像となっている。これは、復元フィルタ処理をソフトウェア上で実行すると演算時間がかかるため、不必要なリアルタイムの復元フィルタ処理を避けるためである。また、監視する視野に人物が入った場合における各個人のプライバシー保護を兼ねている。
ステップS108では、監視者からのアプリケーションに対するリアルタイム表示の終了指示を受け付けたか否かを判定する。ステップS108で、リアルタイム表示の終了指示を未だ受け付けていないと判定された場合(NO)は、ステップS104へループさせて、次のフレームに対する処理を進める。一方、ステップS108で、リアルタイム表示の終了指示を受け付けたと判定された場合(YES)は、ステップS109へ処理が進められる。ステップS109では、制御部144は、監視カメラ110に対し画像取得の終了を通知し、ステップS110で本処理を終了させる。
引き続き、録画像表示処理について説明する。図8に示す録画像表示処理は、例えば、監視者が監視アプリケーション画面上の録画表示ボタン206を押下したことに応答して、ステップS200から開始される。ステップS201では、制御部144は、通信部142により、画像保管サーバ130へ画像取得要求を送信させる。画像取得要求には、再生開始時間設定ボックス208に入力された再生開始時間が指定される。ステップS202では、制御部144は、復元フィルタ処理部150に出力するフィルタ処理の要否を示す信号を切り替えて復元フィルタ処理を有効化する。ステップS203では、制御部144は、画像保管サーバ130からの画像受信が開始されるまでの間(NOの間)待ち受ける。画像保管サーバ130は、画像取得要求に応答して、監視者端末140への指定の圧縮データの送信をまもなく開始させる。ステップS203で、画像保管サーバ130からの画像受信が開始された場合(YES)は、ステップS204へ処理が進められる。
ステップS204では、制御部144は、通信部142により、画像データを受信させて、ステップS205では、データ分離部146により、圧縮データから画像部とフィルタ係数部とを分離させる。ステップS206では、制御部144は、画像解凍部148により、画像部とフィルタ係数部とをそれぞれ分離された形で解凍させる。ステップS207では、制御部144は、復元フィルタ処理部150により、1次画像の画像フレームに対して復元フィルタ処理を施させる。ステップS208では、通信部142により、画像表示部152により、アプリケーション画面200の画像表示領域202に、復元された2次画像のフレームの画像表示を行わせる。
録画像表示では、ステップS202で復元フィルタ処理部150には復元フィルタ処理の有効の信号が入力されているので、画像表示領域202に表示される画像フレームは、被写界深度が拡張された鮮明な画像となる。これは、特に監視カメラなど分野への撮像装置の応用において、録画像の確認を要するような場合は、被写界の隅々までピントが合ってほしいという要望があり、係る要望に応えるためである。
ステップS209では、監視者からのアプリケーションに対する録画像表示の終了指示を受け付けたか否かを判定する。ステップS209で、録画像表示の終了指示を未だ受け付けていないと判定された場合(NO)は、ステップS204へループさせて、次のフレームに対する処理を進める。一方、ステップS209で、終了指示を受け付けたと判定された場合(YES)は、ステップS210へ処理が進められる。ステップS210では、制御部144は、画像保管サーバ130に対し画像取得の終了を通知し、ステップS211で本処理を終了させる。
なお、上述した説明では、画像部とフィルタ係数部とが分離しやすい形で保存されていることを前提として、データ分離部146、画像解凍部148および復元フィルタ処理部150を、3つの処理部で分離して実装する構成とした。しかしながら、他の実施形態では、圧縮データ300においてフィルタ係数と画像フレームとが強固に関連付けられている場合など、データ分離部146、画像解凍部148および復元フィルタ処理部150が実行する処理を同じ処理手段で行ってもよい。これにより、処理速度の向上が図られる。
以下、図9を参照しながら、本実施形態による画像保管サーバ130および監視者端末140のハードウェア構成について説明する。なお、図9は、本実施形態による監視者端末140のハードウェア構成を示す図であるが、画像保管サーバ130についても同様のハードウェア構成とすることができる。
本実施形態による監視者端末140は、デスクトップ型のパーソナル・コンピュータ、ワークステーションなどの汎用コンピュータなどとして構成されている。図9に示す監視者端末140は、シングルコアまたはマルチコアのCPU(Central Processing Unit)12と、CPU12とメモリとの接続を担うノースブリッジ14と、該ノースブリッジ14と専用バスまたはPCIバスを介して接続され、PCIバスやUSBなどのI/Oとの接続を担うサウスブリッジ16とを含む。
ノースブリッジ14には、CPU12の作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)18と、映像信号を出力するグラフィックボード20とが接続される。グラフィックボード20には、アナログRGB、HDMI(High-Definition Multimedia Interface;登録商標)、DVI(Digital Visual Interface)、DisplayPort(登録商標)などの映像出力インタフェースを介してディスプレイ50に接続される。
サウスブリッジ16には、PCI(Peripheral Component Interconnect)22、LANポート24、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)1394、USB(Universal Serial Bus)ポート28、HDDやSSDなどの補助記憶装置30、オーディオ入出力32、シリアルポート34が接続される。補助記憶装置30は、コンピュータ装置を制御するためのOS、上述した機能部を実現するための制御プログラムや各種システム情報や各種設定情報を格納する。LANポート24は、監視者端末140をネットワーク102に接続させるインタフェース機器である。
USBポート28には、キーボード52およびマウス54などの入力デバイスが接続されてもよく、当該監視者端末140の操作者からの各種指示の入力を受け付けるためのユーザ・インタフェースを提供することができる。本実施形態による監視者端末140は、補助記憶装置30から制御プログラムを読み出し、RAM18が提供する作業空間に展開することにより、CPU12の制御の下、上述した各機能部および各処理を実現する。
なお、上述した実施形態では、各機能部を汎用コンピュータ上で実行される監視アプリケーションのコンポーネントとして説明したが、これに限定されず、監視者端末140を専用端末などとして構成してもよい。また、画像保管サーバ130は、復元フィルタ処理を実行する監視者端末とは異なる装置として説明した。しかしながら、他の実施形態では、監視者端末140に画像保管サーバ機能が実装されていてもよい。さらに、リアルタイムで画像を表示するときは復元フィルタ処理を無効とし、オフラインで表示するときはフィルタ処理を有効とする旨説明したが、特にこれに限定されるものではない。
以上説明した実施形態によれば、光波面変調素子を含む光学系を通して撮像された画像を復元するための演算負荷が、監視カメラ110側から分離された監視者端末140にオフロードされる。
被写界深度拡張光学系によるぼけた画像は、低周波数成分に偏りが生じるので、JPEGなどの離散コサイン変換に基づく圧縮方式で圧縮した場合、その画像から復元された鮮明な画像を圧縮する場合と比較して、圧縮率が高くなる。そのため、復元後に監視カメラ110から送信する場合に比較して、監視カメラ110側から画像保管サーバ130や監視者端末140へのデータ伝送量を削減することができ、ネットワーク・トラフィックを軽減することができる。また、防犯カメラなどの用途では、限られたストレージ容量の中で長期間の保存が求められるが、データサイズの削減は、このような用途に有利である。
さらに、上述した監視システム100では、全フレームに対して復元フィルタ処理を行うのではなく、鮮明な画像を要するシーンのみに復元フィルタ処理を行うことができる。例えば、防犯カメラなどの用途では、通常の場合は閲覧せずに保存し、必要な画像のみ閲覧するということが一般的である。これはリアルタイム処理が必ずしも要さないことを意味する。リアルタイム処理が必要でなければ、従来リアルタイム性を維持するためにハードウェア・ロジックで行なっていた画像復元処理を、ソフトウェアにより実施することができる。その結果、監視カメラ側の回路規模を削減し、ひいては、コストの削減、消費電力の低減、発熱量の低減、装置サイズの小型化に資する。本実施形態による画像処理システムは、上述したようなリアルタイムの閲覧を必ずしも要さない用途に有用である。
また、従来全フレームに対して行なっていた復元補正処理を、必要な一部のフレームに対してのみ行うことになるので、システム全体としての処理量が削減され、省電力も図られる。さらに、画像圧縮の際にフィルタ係数を合わせて保存することによって、監視者端末140側の監視者は、必要なフィルタ係数を把握していなくても、正規の画像を入手することができるようになる。
以上説明したように、上述した実施形態によれば、光波面変調素子を含む光学系を通して撮像された画像を復元するための演算負荷を撮像手段側から軽減することができる、画像処理システム、撮像装置およびプログラムを提供することができる。
なお、上記機能部は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)などのレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述されたコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD−ROM、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、ブルーレイディスク、SDカード、MOなど装置可読な記録媒体に格納して、あるいは電気通信回線を通じて頒布することができる。
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。