JP6111707B2 - 有機elデバイス - Google Patents
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Description
ところで、有機ELを用いた照明の実用化において、発光パネルにおける発光領域内の輝度分布が大きな問題であった。通常の有機ELデバイスの発光パネルにおける発光領域においては、透明な基板上に第一電極として透明電極である陽極、有機層、第二電極としての陰極が順に積層され、有機層で生じた光が該透明電極および該基板を透過して面発光パネルの外部に放射される。該透明電極への電力供給は、発光パネル端部の電力供給端子を介してなされるが、該透明電極を構成する酸化インジウムスズ(ITO:Indium
Tin Oxide)等の材料は、電気抵抗が比較的高いために、発光領域内において、電力供給端子から距離が離れた位置では電圧降下が起こり、その結果として輝度分布が生じてしまっていた。この問題は、第一電極の膜厚や体積抵抗率にも依存するが、典型的には発光領域を平面視した場合の第一電極の一辺の長さが1cmを超える大きさのパネルにおいて顕著となる。
ストライプ状の補助電極の場合は以下の式で表すことができる。
発光パネル内に補助電極が存在しない場合は、開口率は100%であるが、電圧降下抑制のために補助電極を形成していくと非発光領域が増加して開口率が低下する。照明用機器として十分な光度を得るには、開口率が85%以上であることが好ましいが、上記非特許文献1では、輝度分布率を78%に維持した状態においては開口率が80%に留まっている。このように、従来の技術では、電圧降下の抑制による良好な輝度分布と、高い開口率によるより高い光度もしくはより大きな光束を両立させることが困難であった。
すなわち、本発明の要旨は、基板上に少なくとも第一電極、有機層、第二電極がこの順に設けられた発光領域を有し、更に、前記第一電極上の前記有機層側に形成された複数のストライプ状の補助電極、及び前記補助電極を覆う絶縁膜からなる非発光領域を有するか、前記基板上の有機層側に直接形成されかつ前記第一電極に接する複数のストライプ状の補助電極、及び前記補助電極を覆う絶縁膜からなる非発光領域を有する有機ELデバイスであって、前記補助電極の平均線幅をw、前記補助電極の平均膜厚をt、前記補助電極のストライプ周期をP、前記補助電極の長さをLB、前記補助電極の体積抵抗率をρ、前記第一電極のシート抵抗をR、前記絶縁膜の平均線幅をwDとした時に、下記式(6)及び(7)を満たすことを特徴とする有機ELデバイス、に存する。
ここで、前記補助電極が湿式成膜で形成されていることが好ましい。
ここで、前記補助電極の平均膜厚が0.001mm以上であり、かつ、前記前記絶縁膜の平均膜厚が補助電極の平均膜厚の2.0倍以上であることが好ましい。
また、前記補助電極がスクリーン印刷で形成されていることが好ましい。
更には、前記絶縁膜がスクリーン印刷で形成されていることが好ましい。
図1は、本発明の有機ELデバイスを第二電極側から見た上面図である。ストライプ状の補助電極を2本のみ形成して有機ELデバイスを単純化した形としている。
上述の構成を前提に、コンピューターシミュレーションにより、本発明の有機ELデバイスの最適形状を検討した。
図3及び図4は、シミュレーションモデルを説明するための図である。
図3は、有機ELデバイスから、1つのストライプ状の発光領域と、その両側に配置された補助電極を抜き出した斜視図である。補助電極の長手方向の長さを補助電極の長さLBとし、補助電極の、長手方向と直交する方向の幅を補助電極の平均線幅wとし、補助電極の線幅方向の中心間の距離を補助電極のストライプ周期Pとし、補助電極の平均膜厚をtとし、第一電極のシート抵抗をRとし、補助電極の体積低効率をρと規定する。
図4(a)は、図3を上面から見た場合の寸法をx−y平面上で規定した図である。補助電極の幅方向をx軸方向、長さ方向をy軸方向とし、有機ELデバイスの下辺をx軸、左側の補助電極の長手方向の中心線をy軸と規定し、x−y平面上に有機ELデバイスの
寸法を示した。図4(b)は図4(a)の断面図を表したものである。図3では省略したが、実際は図2に示すように補助電極を覆うように絶縁膜が形成されており、この絶縁膜の、長手方向と直交する方向の幅を絶縁膜の平均線幅wDとし、図4(a)に記載した。有機ELデバイスの任意の位置座標を(x、y)と表す。位置(x、y)における局所的な発光領域の第一電極及び第二電極間の電位差Vと、電流密度J及び発光輝度Lの関係がJ=J(V)、L=L(V)で与えられるとする。第一電極上の電位分布V(x、y)は以下の方程式(1)により表される。
極と同等以下の抵抗率を有する金属膜を蒸着で形成する、または、その蒸着のときに島状の開口部を有する金属マスクを用いて島状の補助電極を形成し、全面に該金属膜を形成した場合よりも膜の内部応力による剥離を抑制する、などの方法が適宜取られる。
上記の方程式(1)〜(4)を有限要素法モデルで数値解析するために、PDE Solutions,inc社の汎用偏微分方程式ソルバ「Flex PDE(バージョン5.0.22)」を用いた。「Flex PDE」では、解くべき方程式と境界条件を正しく記述して与えれば、基本的には有限要素法メッシュが自動生成されて、ニュートンラプソン法による数値解の解析が実行される。(1)〜(4)の偏微分方程式境界値問題を「Flex PDE」のマニュアルにしたがって正確に記述し数値計算を実行することにより、十分な数値精度の解を得ることができる。
J=J(V)、L=L(V)を図5に示す。これは2mm角の有機ELデバイスを試作して得られた測定結果である。試作した有機ELデバイスの詳細については、参考例3として後述する。
補助電極ならびに第一電極に関する前記パラメータ値を以下の表1のように設定した場合のすべての組合せについてシミュレーションを実施した。
発光領域内の輝度分布率が85%以上であれば、実用上輝度が十分に均一とみなせるため、下記式(5)を満たすことが望まれる。
は、有機ELデバイスへの印加電圧Vinを微小変化させたときに、平均電流密度<J>
が変化する変化率(<J>をVinで微分した微分係数)のVin=V0における値であ
る。平均電流密度<J>は、有機ELデバイス全体に流れる電流を発光領域の全面積で割
ったものとして定義される。
図10に、上記のシミュレーションで得られた全てのデータについて、(6)式の左辺のパラメータを横軸としてLmin/Lmaxを縦軸にプロットした。これにより、図6〜図9のグラフではバラバラであったデータが、一つのマスターカーブ上にプロットされ、(6)式を満たしたときに、パネル内の輝度が十分に均一とみなせることがわかった。
本発明においては、上記式(6)及び(7)を満たすように有機ELデバイスの各パラメータを設定することで、高い開口率と均一な輝度分布を両立させることが可能である。
なお、有機ELデバイスの端部では、2つの補助電極に挟まれない発光領域も存在する。この領域においては、補助電極のストライプ周期Pは、有機ELデバイスの端部から補助電極までの距離の2倍として計算するものとする。
以下、本発明の各構成について詳述する。
基板としては、石英やガラスの板、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
たせておき、補助電極あるいは絶縁層と下地の接触面積を増大させることで密着性を向上させるのは好ましい方法である。ガラス基板を用いる場合は、フロート法で製造された、未研磨のガラス基板が、うねりが大きく好ましい。このような基板は製造コストが低い点からも好ましい。
第一電極は、有機層への正孔注入の役割を果たす陽極、もしくは、有機層への電子注入の役割を果たす陰極のいずれでもよいが、陽極として用いるのが有機ELデバイス製造上好ましい。陽極として用いる場合は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物(例えばITO、IZO)、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等、さらには、単体もしくはそれらと組み合わされた金属ナノワイヤ等により構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布したりして陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
層を設けてから第1電極を形成し、アルカリの有機電界発光素子への溶出を抑制することも行われている(特開平11−195487)
陽極の膜厚は、必要とする透明性および導電性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。また導電性は、シート抵抗として、通常500(Ω/□)以下、好ましくは50(Ω/□)以下とすることが好ましい。この場合、陽極の膜厚は通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の膜厚は任意であり、陽極は基板と一体化されたものであってもよい。また、異なる導電材料が積層されたものであってもよい。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
図11に本発明の有機ELデバイスの発光領域の断面図の一例を示す。有機層は、有機発光層単層であっても、有機発光層と電荷輸送層の多層構造であってもよく、具体的には、下記の(1)〜(9)に示すような構成を挙げることができる。
(1) 有機発光層
(2) 正孔輸送層/有機発光層
(3) 有機発光層/電子輸送層
(4) 正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(5) 正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(6) 正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(7) 正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/正孔防止層/電子輸送層
(8) 正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/正孔防止層/電子輸送層/電子注入層 (9) 正孔注入層/正孔輸送層/電子防止層/有機発光層/正孔防止層/電子輸送層/電子注入層
本発明はこれらにより限定されるものではない。また、有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔防止層、電子防止層、電子輸送層、および、電子注入層の各層は、単層構造でも多層構造でもよい。
有機発光層は、以下に例示する有機発光材料のみから構成されていてもよく、発光性のドーパント材料とホスト材料の組み合わせから構成されていてもよく、任意に正孔輸送材料、電子輸送材料、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含んでいてもよく、また、これらの材料が高分子材料(結着用樹脂)又は無機材料中に分散あるいは混合された構成であってもよい。発光効率・寿命の観点からは、ホスト材料中に発光性のドーパント材料が分散あるいは混合されたものが好ましい。
,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2‘]ピコリネート イリジウム(III)(FIrpic)、トリス(2−フェニルピリジル)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(piq)3
)等の燐光発光有機金属錯体等が挙げられる。
本発明の有機ELデバイスを、白色照明器具として用いる場合は、公知の青色発光材料、赤色発光材料及び緑色発光材料を混合して有機発光層を形成してもよいし、各色の材料一種からなる有機発光層を複数積層することにより白色光を実現してもよい。また、3色の発光材料の内2種類を混合した有機発光層ともう1種の発光材料からなる有機発光層を積層してもよいし、緑色発光材料の代わりに黄色発光材料を用いるなどして白色光を実現することも可能である。
電荷注入輸送材料としては、有機EL用、有機光導電体用の公知の電荷輸送材料を用いることができる。このような電荷注入輸送材料は、正孔注入輸送材料および電子注入輸送材料に分類され、これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。
また、より正孔の注入・輸送性を向上させるため、上記正孔注入・輸送材料にアクセプターをドープすることが好ましい。アクセプターとしては、有機EL用の公知のアクセプター材料を用いることができる。これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。
NQ(7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン)、TCNQF4 (テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)、TCNE(テトラシアノエチレン)、HCNB(ヘキサシアノブタジエン)、DDQ(ジシクロジシアノベンゾキノン)等のシアノ基を有する化合物、TNF(トリニトロフルオレノン)、DNF(ジニトロフルオレノン)等のニトロ基を有する化合物、フルオラニル、クロラニル、ブロマニル等の有機材料が挙げられる。この内、TCNQ、TCNQF4、TCNE、HCNB、DDQ等のシアノ基を有する化合物がよりキャリア濃度を効果的に増加させることが可能であるためより好ましい。
また、より電子の注入・輸送性を向上させるため、上記電子注入・輸送材料にドナーをドープすることが好ましい。ドナーとしては、有機EL用の公知のドナー材料を用いることができる。これらの具体的な化合物を以下に例示するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。
これら正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、正孔防止層、電子輸送層、および、電子注入層から構成される有機層は、上記の材料を抵抗加熱蒸着法、電子線(EB)蒸着法、分子線エピタキシー(MBE)法、スパッタリング法、有機気相蒸着(OVPD)法等の公知のドライプロセスを用いて形成される。一般的に有機層の形成には蒸着法が用いられる事が多い。また、上記の材料を溶剤に溶解、分散させた有機層形成用塗布液を用いて、スピンコーティング法、ディッピング法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法等の塗布法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等の印刷法等による公知のウエットプロセスを用いて形成されても良い。ウエットプロセスにより有機層30を形成する場合には、形成用塗布液に、レ
ベリング剤、粘度調整剤等の塗布液の物性を調整するための添加剤を含んでいてもよい。また、有機層はレーザー転写法、熱転写法等の転写法により形成することもできる。転写に用いる転写用部材は、基材上に順次形成された、光熱変換層、および中間層と、そして光熱変換層の作用により加熱されて溶融し、受像要素にパターン状に転写される転写層とを備えている。転写層には有機層を構成する材料が含まれている。
第二電極は、第一電極が陽極の場合は陰極、第一電極が陰極の場合は陽極としての役割を果たすことになるが、陰極として用いるのが有機ELデバイス製造上好ましい。
陰極の材料としては、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。これらのうち、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金などが用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数の合金電極などが挙げられる。またアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の酸化物あるいはフッ化物などを併用してもよい。
陰極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、導電性高分子微粉末等を用いて陰極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陰極を形成することもできる。
補助電極は、図2(a)に示すように、基板上に設けられた第一電極上の有機層側に、複数のストライプ状に形成されるか、図2(b)に示すように、基板上の有機層側に直接形成される。
補助電極に用いる材料は導電性であって、かつ湿式成膜が可能なものが好ましい。補助
電極の体積抵抗率としては常温において1x10−6(Ω・m)以下であることが好ましい。発光領域全体に十分な電圧を印加するためである。補助電極材料の代表的なものとして、金属粒子、あるいは有機導電性物質をバインダー樹脂と混合してペースト状ないしインク状にしたものがある。金属粒子としてはAu、Ag、Cu、Al等の高導電性金属あるいはそれらを主体とする合金の粒子が好ましく用いられる。金属粒子の直径は1nm〜10μm程度である。バインダー樹脂としてはエポキシ系やアクリル系の樹脂が好ましく用いられる。有機導電性物質としては、例えばポリアセチレン、ポリチオフェン、芳香環を有するポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン等の有機高分子半導体物質およびそれらの混合物、共重合物、縮重合物、架橋物、および、これらの物質にヨウ素や五フッ化ヒ素などの電子受容体(アクセプター)やアルカリ金属などの電子供与体(ドナー)等の適当な化学種を高分子に添加する、いわゆる化学ドーピングを施した材料、等を挙げることができる。該有機導電性物質の樹脂層中における形態は、微粒子であってもよいし、微粒子の形状を留めずに樹脂層中に均一に混合あるいは分散した状態であってもよい。 これらの中でも、比較的低体積抵抗率であり、安価で形成しやすいこ
とから、銀ペーストが特に好ましい。
絶縁膜は、上述したように複数のストライプ状に形成された補助電極を被覆する形で形成される。補助電極被覆のための絶縁膜の成膜は、絶縁の確度を高めるため等の必要に応じて複数回行なってもよい。絶縁膜に用いる材料は導電性を有さないものであって、且つ湿式成膜が可能なものが好ましい。絶縁膜材料としては、ペースト状ないしインク状の樹脂材料が好ましい。樹脂材料は必要に応じて、フィラー、添加剤、溶剤を混合してもよい。樹脂材料は、硬化性を有するか、硬化せずとも他の溶剤に容易に溶解しないことが好ましく、ポリアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などを挙げることができる。フィラーは、塗膜の物理的強度を上げるために必要に応じて配合するもので、公知の無機又は有機フィラーが使用できる。硫酸バリウム、球状シリカおよびタルクなどを挙げることができる。これらフィラーの配合量は、樹脂100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましい。フィラーの配合量が、300質量部を超えた場合、樹脂組成物の粘度が高くなったり、印刷性が低下したり、硬化物が脆くなる。より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。添加剤には、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどのチキソ化剤、熱重合禁止剤や、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、更にはビスフェノール系、トリアジンチオール系などの銅害防止剤などが挙げられる。配合比としては、通常添加剤として添加する程度でよく、樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.05質量部〜10質量部、特に好ましくは0.1質量部〜5質量部である。溶剤は基材に塗布する際の粘度調整のために、必要に応じて添加するもので、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。
本発明においては、上記式(6)及び(7)を満たすように各パラメータを設定するこ
とで、高い開口率と均一な輝度分布を両立させることが可能であるが、以下、実際に式(6)及び(7)を満たすための、各パラメータの好ましい態様について詳述する。
第一電極には、光透過率と電気伝導度の両立のため、前述の通りITOを代表とする透明導電性金属酸化物を用いることが好ましい。例として、ITOの場合のシート抵抗Rは、膜厚にも依存するが、およそ2〜1000(Ω/□)程度であるため、第一電極にITOを用いた場合は、本発明のRはこの範囲となる。
補助電極の長さLBは、有機ELデバイスの発光領域のサイズにより決定されるが、通常、10mm〜500mm程度である。
補助電極のストライプ周期Pは、形成精度の観点から1mm以上、有機ELデバイスのサイズから100mm以下とすることが一般的である。
また、駆動電圧Vinは、経験的に2V〜10V程度であり、その際のXの値は、経験的に0.01〜1,000(m−2・Ω―1)程度の値となる。
る簡便さに由来する安価・短納期の点、印刷装置価格の点、また印刷用インク物性の適合範囲の広範さの点で好ましい。
一方で、補助電極が第二電極と直接にあるいは有機層を介して短絡するのを防ぐため、補助電極の周囲は絶縁膜で覆う必要がある。ところが、上述の通り補助電極を湿式成膜で形成する場合、寸法精度が問題となる。一般に、湿式成膜、特にスクリーン印刷では、形成される膜の膜厚分布が大きく、上記のように補助電極が湿式成膜により厚く形成されている場合は補助電極表面の凹凸が著しく大きくなる。このため、補助電極上に絶縁膜を形成しても第二電極と短絡してしまう場合がある。このような事態を避けるためには、絶縁膜の平均膜厚も大きくする必要がある。絶縁膜の形成方法にかかわらず、ストライプ状に設けられた補助電極の周囲を完全に覆うためには、絶縁膜の平均膜厚は、補助電極の平均膜厚の2.0倍以上が好ましく、更に好ましくは3.0倍以上、特に好ましくは4.0倍以上である。
印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。また、実験室規模では、刷毛、またはスワブと呼ばれるプラスチック製の軸の先にスポンジを取り付けたものによる手塗り印刷法も利用可能であるが、規模の大小によらず、より好ましい形成方法としてはダイコート法、スクリーン印刷法が挙げられる。 中でもスクリーン印刷法が補助電極の場
合と同様の理由から好ましい。
補助電極材料の体積抵抗率ρは、輝度分布率を高める上では小さい方が好ましい。5x10−7Ω・m以下が好ましく、更に好ましくは1x10−7Ω・m以下、特に好ましくは8x10−8Ω・m以下である。
補助電極の平均線幅wは、輝度分布率を高める上では大きい方が好ましいが、開口率を高める上では小さい方が好ましい。ストライプ周期Pにも依存するが、通常、5.0mm以下が好ましく、更に好ましくは2.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。また、0.02mm以上が好ましく、更に好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上である。
、補助電極の平均膜厚tと考えられる。他のパラメータは、他の要求性能によって、取りうる値の範囲がある程度制限されるからである。以下、補助電極の平均膜厚t以外のパラメータが現実に取りうる値を想定した場合について詳述する。なお、以下の数値はあくまで一例である。
補助電極材料の体積抵抗率ρは、補助電極材料に好ましく用いられる銀ペーストの物性により左右されるため、経験上5.6x10−8Ω・m程度と設定する。
補助電極のストライプ周期Pは、開口率に最も大きな影響を与えるパラメータであり、上述の通り、少なくとも3.0mm以上と設定する。輝度分布率については他のパラメータで制御可能だからである。
また、Xの値については、経験上80Ω−1・m−2程度と設定する。
上記数字を基に、式(7)の左辺の開口率を計算すると、0.85となり十分な開口率を有している。また、上記数字を基に、式(6)を満たす補助電極の平均膜厚tの範囲を計算すると、t≧0.00092mmとなり、tの値は0.001mm以上とすることが好ましいことになる。
本発明の有機ELデバイスにおいては、第二電極側表面に、封止を行う目的で、無機膜、樹脂膜を介してガラス、樹脂、金属等の封止基板、もしくは封止膜を設けることが好ましい。
封止基板および封止膜としては、公知の封止材料および封止方法により形成することができる。具体的には、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスをガラス、金属等で封止する方法が挙げられる。更に、封入した不活性ガス中に酸化バリウム等の吸湿剤等を混入する方がより水分による有機EL素子の劣化を効果的に低減できるため好ましい。更に、第二電極21上に樹脂をスピンコート法、ODF、ラミネート法を用いて塗布、または、貼り合わせることによって封止膜とすることもできる。更に、第二電極21上に、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、スパッタ法等により、SiO、SiON、SiN等の無機膜を形成した後、更に、樹脂をスピンコート法、ODF、ラミネート法を用いて塗布、または、貼り合わせることによって封止膜とすることもできる。この封止膜により、外部からの素子内への酸素や水分の混入を防止することができ、有機EL素子の寿命が向上する。また、本発明は、これらの部材や形成方法に限定されるものではない。また、有機層30からの光を第二電極側から取り出す場合は、封止膜、封止基板共に光透過性の材料を使用する必要がある。
なお、封止基板は必ずしも必要ではなく、無機膜と樹脂膜のみで封止を行ってもよい。
(補助電極の形成)
100mm角、0.7mm厚の無アルカリガラスをガラス基板として用い、このガラス基板上に、補助電極として銀ペーストをスクリーン印刷した。印刷後、銀ペーストを乾燥・硬化させるために200℃・30分の焼成をクリーンオーブンにて行った。これにより、図12に示すような、平均膜厚t=15μm、平均線幅w=450μm、長さLB=72mm、ストライプ周期P=18mmのストライプパターンそれぞれが両端で接続されたパターンを形成した。また、同時に絶縁膜のアライメント印刷に使用するアライメントマークも形成した。
次に、絶縁チェックを行うための引き出し線を形成した。引き出し線の材料には銀ペーストを使用した。スパチュラで銀ペーストを図12の様に盛り付けて引き出し線を形成した。幅2mm程度、長さ1cm程度、厚さは目視で印刷銀ペースト程度になるようにした。盛りつけた後、銀ペーストを乾燥・硬化させるために、ホットプレートにて80℃・10分の加熱を行った。引き出し線の形成後、引き出し線と、補助電極のストライプパターン間が導通することをテスターにて確認した。
絶縁膜のスクリーン印刷パターンが補助電極のスクリーン印刷パターンに丁度重なるよう、先に得たアライメントマークを使って補助電極上に絶縁膜をアライメント印刷した。絶縁膜の材料としては市販のポリイミド系高耐熱ペーストを使用した。印刷後、絶縁膜を重ね印刷する際の版への付着を防ぐ様、絶縁膜を乾燥させるためにホットプレートにて100℃・5分の加熱処理を行った。この後、上記と同様のアライメント印刷、加熱処理を更に2回繰り返した。即ち、補助電極に対して、絶縁膜のアライメント印刷を3回行ったことになる。最後に絶縁膜を硬化させるために、230℃・30分の焼成をクリーンオーブンで行った。これにより、補助電極パターン上に、ストライプ部分は補助電極の平均線幅w+150μm、各ストライプパターン接続部分は補助電極の平均線幅+200μmの絶縁膜パターンが丁度重なり、被覆された状態となった。これにより絶縁膜の平均線幅wDについては600μmとなった。
上記の印刷にてどれだけの膜厚の絶縁膜が得られたかを測定するために、100mm角、0.7mm厚の無アルカリガラスをガラス基板として用い、このガラス基板上に、補助電極を形成しないこと及びアライメントを取らないこと以外は同じ条件で絶縁膜を印刷した。その後、ホットプレートにて100℃・5分の加熱処理後、クリーンオーブンにて230℃・30分の焼成を行った。この結果、上記条件において1回の印刷で平均膜厚12μmの絶縁膜が得られることがわかった。
補助電極と陰極の絶縁を確認するために、アルミニウムの陰極を蒸着法にて成膜した。陰極は図13の様にストライプパターン部分全域を覆う形に成膜した。陰極の膜厚は80nm程度とした。
(絶縁の確認)
引き出し線と陰極との間の抵抗値をテスターにて測定したところ、測定限界を超える抵抗値を示したことから、絶縁膜による被覆により、補助電極と陰極の絶縁が取れていることが確認できた。
スクリーン版の材質やメッシュ数、線径等を適宜選択し、印刷条件についてはスキージの材質、スキージ角度、スキージ速度、コート速度等を適宜設定して行った。
本参考例1において、明確になっていない本願発明の各パラメータについては、前述の現実に取りうる値を想定した場合の数値を用い、式(6)及び式(7)の左辺を計算すると、式(6)の左辺の値は0.43、式(7)の左辺の値は0.97となり、本願発明の範囲内となっており、本願発明の有機ELデバイスの作製は十分可能である。
参考例1に対して、陰極の成膜までの工程を、絶縁膜のアライメント印刷の回数が2回であることを除いて全て同じ方法で操作を行った。この基板において、引き出し線と陰極間の抵抗をテスターにて測定したところ、測定限界を超える抵抗値を示したことから、絶縁膜による被覆により、銀ペーストと陰極の絶縁が取れていることが確認できた。
前述のシミュレーションに用いた電流、電圧、輝度特性を示す有機ELデバイスは以下のように作製した。
<陽極>
ガラス基板10上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を厚さ150nmに成膜したもの(スパッタ成膜品、シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術により2mm幅のストライプにパターニングして陽極20を形成した。陽極を形成した基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄等の処理を行った。
次いで、正孔注入層31を以下のように湿式成膜法によって形成した。
正孔注入層形成用組成物として、下記式(P1)の繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物2重量%と、酸化剤として4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%とを、安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製し、この組成物を前記ITO基板上にスピンコートで成膜した。
<正孔輸送層>
次いで、形成された正孔注入層上に、以下の通り、正孔輸送層32を形成した。
)の濃度は1.0重量%であった。
以上の操作により、膜厚10nmの均一な正孔輸送層32の薄膜が形成された。
発光層33は、以下の塗布発光層と蒸着発光層を積層した2層構造とした。
<塗布発光層>
次いで、形成された正孔輸送層上に、以下の通り、塗布発光層を形成した。
以下に示す化合物(GH−1)、(GH−2)、(GD−1)および(RD−1)を、25:75:10:0.7の重量比で混合し、この混合物1.7重量%をシクロヘキシルベンゼンに溶解させた組成物を調製し、この組成物を窒素雰囲気下、前記正孔輸送層上にスピンコートで成膜した。
の塗布発光層を形成した。
なお、上記化合物(GD−1)は515nmに極大発光波長を有する緑色燐光発光材料であり、(RD−1)は616nmに極大発光波長を有する赤色燐光発光材料である。
次いで、形成された塗布発光層上に、真空蒸着法により蒸着発光層を形成した。
以下に示す化合物(BH−1)と(BD−1)を100:5の重量比で真空蒸着法により蒸着して成膜することで、膜厚30nmの蒸着発光層を形成した。
<電子輸送層>
次いで、形成された蒸着発光層上に、真空蒸着法により電子輸送層35としてトリス(
8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を膜厚20nmとなるように形成した。
ここで、電子輸送層までの蒸着を行った素子を、一度、前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして、陽極であるITOストライプと直交する形状の2mm幅のストライプ状シャドーマスクを素子に密着させ、別の真空蒸着装置内に設置して、電子輸送層と同様の真空蒸着法により、電子注入層36としてフッ化リチウム(LiF)を膜厚0.5nm、次いで陰極としてアルミニウムを膜厚80.0nmとなるようにそれぞれ積層した。
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂を塗布し、中央部に水分ゲッターシートを設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。これにより、2mm×2mmサイズの発光面積部分を有する有機ELデバイスが得られた。
11 発光部
20 第一電極
21 第二電極
30 有機層
31 正孔注入層
32 正孔輸送層
33 有機発光層
34 正孔防止層
35 電子輸送層
36 電子注入層
Claims (6)
- 基板上に少なくとも第一電極、有機層、第二電極がこの順に設けられた発光領域を有し、更に、前記第一電極上の前記有機層側に形成された複数のストライプ状の補助電極、及び前記補助電極を覆う絶縁膜からなる非発光領域を有するか、前記基板上の有機層側に直接形成されかつ前記第一電極に接する複数のストライプ状の補助電極、及び前記補助電極を覆う絶縁膜からなる非発光領域を有する有機ELデバイスであって、前記補助電極の平均線幅をw、前記補助電極の平均膜厚をt、前記補助電極のストライプ周期をP、前記補助電極の長さをLB、前記補助電極の体積抵抗率をρ、前記第一電極のシート抵抗をR、前記絶縁膜の平均線幅をwDとした時に、下記式(6)及び(7)を満たすことを特徴とする有機ELデバイス。
- 前記補助電極が湿式成膜で形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の有機ELデバイス。
- 前記絶縁膜が湿式成膜で形成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機ELデバイス。
- 前記補助電極の平均膜厚が0.001mm以上であり、かつ、前記絶縁膜の平均膜厚が補助電極の平均膜厚の2.0倍以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の有機ELデバイス。
- 前記補助電極がスクリーン印刷で形成されたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機ELデバイス。
- 前記絶縁膜がスクリーン印刷で形成されたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機ELデバイス。
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