JP6111125B2 - カソード電極およびそれを用いた電解装置 - Google Patents

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Description

本発明は、二酸化炭素を還元するためのカソード電極とそれを用いた電解装置に関する。
石油や石炭などの化石燃料資源は存在量が有限である。一方で、人間による化石燃料消費量が加速度的に増加し続けているため、化石燃料の枯渇が懸念されている。化石燃料代替エネルギー資源の開発の必要性が年々増大している。
このような背景から、太陽光、太陽熱、風力、地熱などの再生可能エネルギーが注目を集めており、近年、太陽光発電、風力発電の本格普及が始まっている。
地球温暖化の原因といわれている二酸化炭素を太陽光のエネルギーにより還元し、低コストで長期備蓄が可能な、メタン(反応式(1))などの燃料化合物を製造する人工光合成技術の実用化が望まれているが、反応効率の大幅な向上が課題となっている。
CO2 + 2H2O → CH4 + 2O2 ・・・ (1)
本技術分野の背景技術として、非特許文献1には銅電極を用いた二酸化炭素含有水溶液の電解による二酸化炭素からのメタン生成が記載されている。また、非特許文献2には銅単結晶電極による二酸化炭素の還元が記載されている。
Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of Carbon Dioxide (B.P. Sullivan 著、Elsevier、1993、p.180 Journal of Electroanalytical Chemistry 533 (2002) 135
一般に銅板として製造販売されている銅を電極として用いた場合には、反応効率が不十分であり、長時間二酸化炭素の電解を行うと電極が劣化し、反応効率が低下傾向を示すという課題があった。特に、酸素や異種金属などの不純物濃度が大きい場合には、反応効率低下や劣化加速が起こる。
銅単結晶電極を用いた場合には、結晶面の選択により、反応効率が向上する場合があるが、単結晶作製に手間がかかるため、非常に高価であるという課題があった。また、単結晶電極は、作製可能な大きさ、形状に制約があるという課題があった。二酸化炭素の電解における電極反応は、電極表面のみで起こるため、電極そのものは薄くした方が使用する銅の量を減らすことができるが、単結晶の場合は薄く加工することが困難である。
本発明は、反応効率に優れ、経時的な電極性能の劣化が少ない二酸化炭素還元用のカソード電極を提供することを目的とする。
本発明のカソード電極は、二酸化炭素を電気化学的に還元して炭化水素を生成するためのカソード電極であって、少なくとも電極表面が圧延銅箔からなり、前記圧延銅箔は2種類以上の異なる配向の結晶面を有する多結晶であり、平均結晶粒径が5〜100μmであることを特徴とする。
本発明によれば、反応効率に優れ、経時的な電極性能の劣化が少ない二酸化炭素還元用のカソード電極を提供することができる。
本発明の圧延銅箔カソード電極を用いて二酸化炭素の還元を行うための反応槽の構造を示す図である 本発明の圧延銅箔カソード電極を用いて二酸化炭素の還元を行うための反応槽の構造を示す図である
以下、本発明の実施の形態にかかる二酸化炭素還元用のカソード電極およびそれを用いた電解装置について説明する。
本発明では、二酸化炭素を電気化学的に還元して炭化水素を生成する二酸化炭素還元用のカソード電極として、少なくとも電極表面を圧延銅箔で構成したことを特徴とする。ここで、圧延銅箔とは、高純度の銅インゴット(銅塊)を熱間圧延、面削後、粗圧延、焼鈍、の工程を経て、中間圧延と焼鈍を数回以上繰り返し、仕上げ圧延によって得られる銅箔である。一般的に圧延銅箔は2種類以上の異なる配向の結晶面を有する多結晶であり、単結晶と比較して反応効率の低下が予想されるが、以下の圧延銅箔特有の特徴によって反応効率の向上とともに寿命を向上できることが分かった。
圧延銅箔を用いたカソード電極が優れる1つの理由として、圧延処理を施していない銅板、あるいは電解銅箔などと比較した場合に結晶サイズを大きくできることが挙げられる。圧延処理を施していない銅板、あるいは電解銅箔などの多結晶体の平均結晶粒径は4μm以下である。これに対して、圧延銅箔は、一般的な圧延処理を施していない銅板、あるいは電解銅箔の結晶構造には影響を与えないような、150℃程度で1時間以上の熱処理で再結晶化が起こるという特徴を有する。これによって、圧延銅箔では平均結晶粒径を5〜100μmとすることができる。このような再結晶化は、結晶粒の成長を促進しうるので、反応効率向上や電極の寿命向上をもたらす。これは、平均結晶粒径が5〜100μmと他の多結晶体よりも大きく成長することで、銅の原子配列が密になることにより、二酸化炭素還元の反応効率が向上するためである。また、電極寿命に関しては、カソード電極触媒として長期間連続使用した場合に結晶粒界で劣化が起こりやすい。そのため、結晶粒径を大きくして結晶粒界を少なくすることは電極の寿命向上に寄与しうる。
また、圧延銅箔を用いたカソード電極が優れる他の理由として、高い結晶配向性と特異的な結晶欠陥構造の寄与が考えられる。さらにミクロな観点では、金属触媒表面の原子レベルの点欠陥や転移構造が触媒反応の活性サイトとなり、反応効率の向上に寄与していると考えられる。このような、原子レベルの点欠陥や転移構造は、圧延加工により、銅箔表面に生じるものである。組成により異なるが、圧延銅箔の中には、150度ほどの比較的低温で再結晶化が可能であり、この程度の温度の再結晶化処理では、転移・点欠陥は消滅しないと考えられる。また、圧延銅箔では、一般的な圧延処理を施していない銅板、あるいは電解銅箔などと比較した場合に、特定の結晶面が多く露出する。圧延銅箔では、例えば(100)面の割合が他の結晶面よりも多い多結晶体とすることができる。二酸化炭素還元用のカソード電極では、結晶面の選択により、反応効率が向上することが知られており、このように特定の結晶面が多く露出することによって、反応効率が向上していると考えられる。
また、圧延銅箔は二酸化炭素の電解還元のカソード電極として用いた場合に、一般の銅板や電解銅箔と比較した場合に、劣化がより少なくなるという利点がある。電極の劣化は、電極表面の不安定な欠陥や粒界の影響により促進されることがあり、圧延銅箔は、圧延処理や焼鈍処理を繰り返すことで、表面の結晶がより安定な状態になっていることから、電極としての化学的安定性の向上をもたらしている。二酸化炭素還元反応中の電極の劣化は、カソード・アノード間に流れる電流値の経時的な減少や増加に現れる。増加よりも電流値の経時的な減少の方が深刻な場合が多い。
カソード電極に使用する圧延銅箔の純度は99重量%以上であり、純度がより高いことが望ましく、99.9重量%以上であることがさらに望ましい。これは、二酸化炭素を還元して炭化水素を精製する金属電極触媒としては、各種金属の中で銅が最も優れているため、銅以外の金属が多量に含まれていると二酸化炭素とカソード電極の反応性が低下し、一酸化炭素や蟻酸などの望まない生成物が多く生成するからである。
圧延銅箔に1重量%以下、望ましくは0.2重量%以下の、微量な異種金属添加がさらに効果的な場合がある。特に、単独で二酸化炭素還元活性がある、銀、ジルコニア、ニッケル、金、プラチナ、亜鉛、及び、錫から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を添加した圧延銅箔をカソード電極に用いた場合に、二酸化炭素還元の効率が向上する。これは、異種金属が結晶に取り込まれた場合に、局所的な原子レベルの欠陥構造ができ、二酸化炭素が圧延銅箔表面に吸着しやすくなることや、還元反応における電子の授受を促進しうるからである。
なお、圧延銅箔の成分としては、還元反応効率の低下の要因となりうる酸素の含有量が少ないことが望ましく、0.1重量%以下であることが望ましい。これは、酸化銅成分が含まれていると、二酸化炭素電解還元のカソードに使用する際に、酸化銅の還元が副反応として起こるためである。
圧延銅箔をカソード電極に用いる際には、銅箔を適当な大きさに機械的に切断加工して使用される。一般的に圧延銅箔の厚みは70μm以下の厚さであるため、薄膜化による銅の使用量削減が可能である。また、単結晶の銅と比較して製造コストを大幅に低減することができる。また、単結晶の銅では作製が困難な大面積の電極も作製できる。
カソード電極の形状は、反応化合物の移動が速やかに行えるように、圧延銅箔に、ある間隔で(間隔は一定でなくてもよい)スルーホールを設けたり、メッシュ形状に加工してもよい。また、圧延銅箔を支持する支持部材に貼り付けて使用しても良い。
次に、本発明の二酸化炭素還元用のカソード電極を用いた電解装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の電解装置は、電解質水溶液102を貯留する電解槽101と、電解質水溶液102と接するように配置されるカソード電極103およびアノード電極105と、カソード電極103およびアノード電極105と電気的に接続され、両電極間に電圧を印加する電源107と、を少なくとも備えており、カソード電極103に本発明の圧延銅箔を用いた電極が適用される。
アノード電極105としては、化学的に非常に安定で電気伝導性に優れたプラチナを用いることが多いが、アノード電極の素材に関してはプラチナのみに限定されず、公知の電極材料を用いることができる。さらに、アノード電極には、光起電力を有する半導体電極を用いることが可能である。半導体電極としては、酸化チタン、シリコン、炭化珪素、ガリウムリン、窒化ガリウム、CuGaS、CuGaInS、などを使用することができる。アノード電極の形状としては、カソード電極と同様に、板状の金属電極を用いてもよいし、電極表面を粗化して表面積を大きくしたものを用いてもよいし、メッシュ状の金属を用いてもよい。あるいは、棒状、細線、リボン状の形状のアノード電極を用いてもよい。
カソード電極103およびアノード電極105は電源107と配線108によって電気的に接続される。配線は劣化やショートを防ぐために絶縁材によって被覆されている。被覆方法としては、例えば、圧延銅箔を切断した後に、電源との配線を接着接続し、配線部分を絶縁被覆する方法、銅箔を電極と配線をカバーできるような寸法に切断加工し、配線部分を劣化やショートを防ぐために絶縁被覆する方法、圧延銅箔を絶縁基板に接着固定し、配線を接続する方法、などの方法を適用可能である。アノード電極側も同様である。
本実施形態の電解装置では、二酸化炭素の電気化学的還元は電解質水溶液中で行う。電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、などの塩を使用する。電解質水溶液102の濃度は、0.01Mから5Mの間、望ましくは、0.1Mから1Mの間で行う。電解質水溶液102に、pH調節と、二酸化炭素還元の原料となりうる炭酸イオンと重炭酸イオンの濃度を上げるために、二酸化炭素還元反応前に二酸化炭素を吹き込むことが有効である。炭酸イオンと重炭酸イオンが二酸化炭素還元に寄与することは、以下の大気中の二酸化炭素と溶存二酸化炭素の電離平衡式(化学式(2))、溶存二酸化炭素から炭酸水素イオンの生成平衡式(化学式(3))および炭酸水素イオンの電離平衡式(化学式(4))により説明可能である。ここで、CO2(g)は大気中の二酸化炭素、CO2(aq)は溶液中の水和二酸化炭素をそれぞれ示す。
CO2(g) → CO2(aq) ・・・(2)
CO2(aq) + H2O → HCO3 - + H+ ・・・(3)
HCO3 - → HCO3 2- + H+ ・・・(4)
二酸化炭素の電気化学的還元では、カソード電極、アノード電極間を物理的に何ら区切らずに行うことが可能であるが、両電極間をイオン交換膜などの隔壁で仕切って行うことも可能である。
反応の温度は、電解質水溶液102が液体で存在できる温度範囲内で行うことが可能である。より低温の方が、二酸化炭素が電極表面に吸着しやすく、二酸化炭素の反応効率(ファラデー効率)が向上する。また、低温の方が化学的な電極の劣化を抑制しやすい。電解装置のコストを考慮すれば、過度の冷却・加熱はコスト向上につながるため、温度調節が比較的必要のない、室温近辺の温度で反応を行うことが望ましい。
反応の進行に伴い、二酸化炭素および二酸化炭素の水和により生成する電解質水溶液102中の炭酸イオンおよび重炭酸イオンの総濃度が低下する。そのため、反応中に電解質水溶液102に対して連続的に二酸化炭素を吹き込むことが有効である。二酸化炭素の吹き込みにより、電解質水溶液102中の炭酸イオンおよび重炭酸イオンの濃度低下を抑制し、反応速度低下を防止できる。
電解質水溶液中における二酸化炭素の還元は、両電極間に直流電源より所望の電圧を印加することにより進行する。例えば、二酸化炭素の還元によってメタンを生成する場合には、反応進行に必要な電圧はカソード電極におけるメタン生成の反応電位0.24V (vs SHE)と、アノード電極における水分解電位1.23V(vsSHE)の和以上の電圧である。実際には、各電極の過電圧分を加えた値の電圧が必要であり、1.5Vから5V程度の電圧で反応を行う。これは、二酸化炭素の還元と競合して、水分解による水素生成が常に起こり、印加電圧が高くなると、水分解反応が促進され、二酸化炭素還元が抑制されるためである。
本実施形態の電解装置を用いた二酸化炭素の還元反応で生成される炭化水素としては、一酸化炭素、蟻酸、メタノール、メタン、エタン、エチレンなどである。
圧延銅箔を用いたカソード電極の元素組成や結晶構造は、XPS、SEM、EBSP (Electron Back Scatter Pattern)、X線回折などの測定により確認することができる。例えば、SEM観察により、圧延銅箔に特有の圧延方向に結晶が配向していることを確認可能である。圧延銅箔を用いたカソード電極による二酸化炭素還元反応の生成物の組成分析や定量は、FT−IR、ガスクロマトグラフィ、GC−MS,高速液体クロマトグラフィ、LC−MS、などを用いて行うことができる。
以下、実施例を用いて本発明の実施形態を説明する。
〔実施例1〕
図1に示すように、内容積1Lの電解槽101の中央をイオン交換膜115で仕切り、その両側にカソード電極103とアノード電極105を配置した。カソード電極103には、厚さ10μm、銅純度99.9重量%であり、200℃にて1時間の再結晶化処理を行った圧延銅箔(タフピッチ銅)を使用した。アノード電極105には、純度99.8重量%、線径0.08mm、80メッシュのプラチナ金網を使用した。カソード電極103の表面積は30cm2、アノード電極105の表面積は20cm2であった。
各電極には、絶縁被覆銅線(線径0.1mm)からなる配線108を接続し、直流電源107から電圧を印加できるようにした。電極間の距離は3cmとした。カソード電極103側には、カソード電極103から1cm離れた位置に、参照電極104(銀・塩化銀参照電極(Ag/AgCl))を配置した。
電解槽101には、電解質水溶液102として、二酸化炭素を吹き込んでpH7.2に調整した0.5M炭酸水素ナトリウム水溶液0.8Lを充填した。反応槽101は気体が逃げないように密閉した状態とし、電解槽101のカソード電極103側とアノード電極105側にガス採集口106を設けて、反応前後の気体成分を定量できるようにした。
電解質水溶液温度が15℃の条件下において、両電極間に、−2.3V(vs Ag/AgCl)の電圧を10分間連続印加し、二酸化炭素の還元反応を行った。カソード電極103側、アノード電極105側、それぞれの反応前後の気体成分をガスクロマトグラフにより定量した。電解質水溶液102中の反応性生物は、高速液体クロマトグラフィで定量した。
気体成分、液体成分を定量した結果、カソード側における主生成物はメタンであり、その他、水素、微量のエチレンの存在を確認した。アノード側の主生成物は酸素であった。
反応中の電流値を観察したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と9分後から10分後の平均値は等しく、電流値の変化は全く見られず、電極の変質、劣化の兆候は全く見られなかった。表1に結果を示す。
本実施例の反応前後のカソード電極103の結晶構造をEBSPによって解析した結果、平均結晶粒径が15μmの圧延方向に結晶が配向した多結晶であり、結晶面は(100)面が他の結晶面よりも多い割合で存在していた。また、反応前後での結晶構造の変化は確認されなかった。
〔実施例2〕
図2に示すように、内容積は1Lで同じであるが、カソード電極103側に、電解反応中に二酸化炭素を連続的に吹き込むための二酸化炭素供給手段111を設けた電解槽101を用いて、反応中に、0.1L/分で二酸化炭素を吹き込みながら、その他の条件は実施例1と同様に、二酸化炭素の還元を行った。
30分間反応を行い、気体成分については3分ごとにサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィで定量を行った。電解質水溶液中の生成物については、反応終了後にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィで定量を行った。
その結果、カソード電極103側の主生成物はメタンであり、その他、水素、微量のエチレンの存在を確認した。アノード電極105側の主生成物は酸素であった。
反応中の電流値を観察したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と29分後から30分後の平均値は等しく、電流値の変化はまったく見られず、電極の変質、劣化の兆候は全く見られなかった。表1に結果を示す。
〔実施例3〕
印加電圧を−1.5V(vs Ag/AgCl)、−1.8V(vs Ag/AgCl)、−2.0V(vs Ag/AgCl)、−2.5V(vs Ag/AgCl)、−3.0V(vs Ag/AgCl)の5つの異なる条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様の条件で、二酸化炭素の還元を行った。
カソード電極103側、アノード電極105側、それぞれの反応前後の気体成分をガスクロマトグラフにより定量した。電解質水溶液中の反応生成物は、高速液体クロマトグラフィで定量した。
気体成分、液体成分の定量の結果、カソード電極103側について、印加電圧−1.5V(vs Ag/AgCl)の場合は、メタンが主生成物で水素が微量生成、−1.8Vの場合は、1.5Vの場合と同様で水素の割合がわずかに増え、−2.0Vで(vs Ag/AgCl)はメタンの割合がわずかに減り水素の割合が増え、−2.5V(vs Ag/AgCl)、−3.0V(vs Ag/AgCl)と電圧が増加するにつれ、エチレン生成は認められなくなり、メタンの割合が減り、水素の割合が急増した。アノード電極105側については、いずれの電圧条件においても、酸素が主成分であった。また、電圧の増加に伴い、電流値が増加し、反応性生物の総量は増えた。
それぞれの条件で、反応中の電流値を観察したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と9分後から10分後の平均値は等しく、電流値の変化は全く見られず、電極の変質、劣化の兆候は全く見られなかった。表1に結果を示す。
〔比較例1〕
カソード電極103に、圧延処理を一切施していない厚さ0.1mmの銅板を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、二酸化炭素の還元を行った。
カソード電極103側、アノード電極105側、それぞれの反応前後の気体成分をガスクロマトグラフにより定量した。電解質水溶液中の反応生成物は、高速液体クロマトグラフィで定量した。
気体成分、液体成分の定量の結果、カソード電極103側にメタンの生成を確認したが、圧延銅箔を用いた場合よりもメタンの生成効率、生成量は、共に低かった。
また、反応中の電流値を観測したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と比較して、9分後から10分後の平均値は15%低下しており、電極の劣化が起きていた。
反応前後の電極表面をSEMにより観察したところ、反応後は、反応前に認められなかった、炭素と考えられる堆積物の付着が認められた。これが電流値の低下の原因であると考えられる。表1に結果を示す。
本比較例の反応前後のカソード電極103の結晶構造をEBSPによって解析した結果、平均結晶粒径が1μmの多結晶であり、結晶面は(100)、(111)など多くの結晶面が存在し、特定の面が多くなっているということは無かった。また、反応前後での結晶構造の変化は無かったが、一部の表面の酸化が認められた。
〔比較例2〕
カソード電極103に、圧延処理を一切施していない厚さ0.1mmの銅板を用いること以外は、実施例1と同様の条件で、二酸化炭素の還元を行った。本比較例では、カソード電極103の銅板には予め窒素雰囲気下200℃で1時間の熱処理を行ったものを使用した。
カソード電極103側、アノード電極105側、それぞれの反応前後の気体成分をガスクロマトグラフにより定量した。電解質水溶液中の反応生成物は、高速液体クロマトグラフィで定量した。
気体成分、液体成分の定量の結果、カソード側にメタンの生成を確認したが、圧延銅箔を用いた場合よりもメタンの生成効率、生成量は、共に低かった。
また、反応中の電流値を観測したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と比較して、9分後から10分後の平均値は17%低下しており、電極の劣化が起きていた。表1に結果を示す。
本比較例の反応前後のカソード電極103の結晶構造をEBSPによって解析した結果、平均結晶粒径が1μmの多結晶であり、結晶面は(100)、(111)など多くの結晶面が存在し、特定の面が多くなっているということは無かった。また、反応前後での結晶構造の変化は無かったが、一部の表面の酸化が認められた。
この結果により、圧延銅箔を用いたカソード電極の安定性は、反応前の熱処理のみによって実現しているものではないことが示された。
〔実施例4〕
カソード電極103に、添加元素をドープした圧延銅箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、二酸化炭素の還元を行った。添加元素としては、銀、ジルコニア、ニッケル、金、プラチナ、亜鉛、錫のそれぞれ1種を用いて、添加元素が0.02重量%ドープされた銅純度99.98重量%の圧延銅箔をカソード電極103とした。
カソード電極103側、アノード電極105側、それぞれの反応前後の気体成分をガスクロマトグラフにより定量した。電解質水溶液中の反応生成物は、高速液体クロマトグラフィで定量した。
気体成分、液体成分の定量の結果、全てのカソードについて、カソード電極103側の主生成物はメタンであり、ついで水素生成が確認された。
反応中の電流値を観察したところ、反応開始1分後から2分後の平均値と9分後から10分後の平均値は等しく、電流値の変化は全く見られず、電極の変質、劣化の兆候は全く見られなかった。表2に結果を示す。
本実施例の反応前後のカソード電極103の結晶構造をEBSPによって解析した結果、平均結晶粒径が100μmの圧延方向に結晶が配向した多結晶であり、結晶面は(100)面が他の結晶面よりも多い割合で存在していた。また、反応前後での結晶構造の変化は確認されなかった。
101 電解槽
102 電解質水溶液
103 カソード電極
104 参照電極
105 アノード電極
106 ガス採集口
107 電源
108 配線
111 二酸化炭素供給手段
112 ガス取り出し管

Claims (4)

  1. 二酸化炭素を電気化学的に還元して炭化水素を生成するためのカソード電極であって、
    少なくとも電極表面が圧延銅箔からなり、前記圧延銅箔は2種類以上の異なる配向の結晶面を有する多結晶であり、平均結晶粒径が5〜100μmであり、前記圧延銅箔は(100)面に配向した結晶の割合が他の結晶面よりも多いことを特徴とするカソード電極。
  2. 請求項1に記載のカソード電極において、前記炭化水素がメタンであることを特徴とするカソード電極。
  3. 二酸化炭素を電気化学的に還元して炭化水素を生成するための電解装置であって、
    電解質水溶液を貯留する電解槽と、
    前記電解質水溶液と接するように配置されるカソード電極およびアノード電極と、
    前記カソード電極およびアノード電極と電気的に接続され、両電極間に電圧を印加する電源と、を少なくとも備え、
    前記カソード電極は、少なくとも電極表面が圧延銅箔からなり、前記圧延銅箔は2種類以上の異なる配向の結晶面を有する多結晶であり、平均結晶粒径が5〜100μmであり、前記圧延銅箔は(100)面に配向した結晶の割合が他の結晶面よりも多いことを特徴とする電解装置。
  4. 請求項3に記載の電解装置において、前記炭化水素がメタンであることを特徴とする電解装置。
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