JP6110703B2 - レンズ加工制御装置、レンズ加工制御プログラム、レンズ形状判定方法および眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
なお、加工ツール干渉は、例えば平レンズに加工を行う場合のように、ヤゲン先端の周方向における軌跡(以下「ヤゲン先端軌跡」という。)がZ軸方向(レンズ光軸方向)に変化しなければ、加工ツールの位置もZ軸方向に変化する必要がないため、発生することがない。ところが、一般的な眼鏡レンズは、処方内容に応じたカーブを有しており、ヤゲン先端軌跡がZ軸方向に変化を持つ場合が殆どであるため、加工ツール干渉の発生を回避することが困難である。
ところが、その場合には、レンズ加工機のキャリブレーションのために、本来は加工対象とはならないテストレンズについて、ヤゲン加工や形状測定等を行う必要が生じてしまう。つまり、テストレンズを処理する必要が生じてしまう分、効率的な処理の実現が困難になってしまう。
このことから、本願発明者は、加工ツール干渉量を考慮したヤゲン断面の仕上がり予測形状を求め、その仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求め、その接触態様を反映させた場合にレンズ形状測定器で得られるであろう形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論上の形状(以下、単に「理論形状」という。)とし、その理論形状を基準にその後の処理を行えば、ヤゲン加工結果に対する良否判定にあたり、加工ツール干渉の発生による影響を無視できる程度に軽減し得るのではないかとの着想を得た。つまり、ヤゲン形状の細りや歪み等の発生を容認した上で、その発生要因となる加工ツール干渉量を考慮した眼鏡レンズの理論形状という従来にはない新しい概念を取り入れることで、ヤゲン加工結果に対する良否判定にあたり、加工ツール干渉の発生による影響を無視できる程度に軽減して、レンズ周縁部が所望形状通りに加工されない他の要因であるレンズ加工機の不具合による影響の顕在化が図れると考えた。
本発明は、上述した本願発明者による新たな着想に基づいてなされたものである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる補正指示手段を備えることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の発明において、前記補正指示手段は、前記実測形状と前記理論形状との相違量が予め設定された許容範囲を超えた場合にのみ、前記レンズ加工機に加工量補正を行わせることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1態様に記載の発明において、前記予測形状特定手段は、眼鏡レンズの周方向の複数箇所に設定された測定点毎に、前記仕上がり予測形状を求め、前記接触態様特定手段は、前記測定点毎に、前記仕上がり予測形状のヤゲンに対する前記測定子の接触態様を求めることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、コンピュータを、未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉量を考慮したヤゲン断面の仕上がり予測形状を求める予測形状特定手段と、前記仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求める接触態様特定手段と、前記接触態様を反映させた場合に前記レンズ形状測定器で得られるであろう形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状とする理論形状特定手段と、ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について前記レンズ形状測定器で実際に得られる実測形状と前記理論形状とを比較し、その比較結果に基づいて当該実測形状に対する良否判定を行う形状比較手段として機能させることを特徴とするレンズ加工制御プログラムである。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、前記コンピュータを、前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる補正指示手段として機能させることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉量を考慮したヤゲン断面の仕上がり予測形状を求める予測形状特定ステップと、前記仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求める接触態様特定ステップと、前記接触態様を反映させた場合に前記レンズ形状測定器で得られるであろう形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状とする理論形状特定ステップと、ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について前記レンズ形状測定器で実際に得られる実測形状と前記理論形状とを比較し、その比較結果を当該実測形状に対する良否判定に用いる形状比較ステップと、を備えることを特徴とするレンズ形状判定方法である。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載のレンズ形状判定方法を用いた前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる加工量補正工程を備えることを特徴とする眼鏡レンズの製造方法である。
本実施形態では、以下の順序で項分けをして説明を行う。
1.システム構成
2.機能構成
3.レンズ形状判定手順
4.眼鏡レンズ製造方法の手順
5.本実施形態の効果
6.変形例等
先ず、本実施形態におけるシステム全体の構成について説明する。なお、以下に説明する事項以外については、公知技術(例えば、特許第3075870号公報参照)を利用して実現すればよいものとする。
図1は、本発明に係るレンズ加工制御装置を含む眼鏡レンズ供給システムの全体構成例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態で例に挙げる眼鏡レンズの供給システムは、眼鏡レンズの発注側である眼鏡店100と、レンズ加工側であるレンズメーカの工場200とに、分散配置されて構成されている。なお、図例では、眼鏡店100を1つしか示していないが、実際には1つの工場200に対して複数の眼鏡店100が存在していてもよい。
眼鏡店100には、オンライン用の端末コンピュータ101と、眼鏡フレームの枠形状を測定して枠形状データを出力する眼鏡フレーム測定機102と、が設置されている。
端末コンピュータ101は、キーボードやマウス等の入力装置や液晶パネル等の表示装置を備えるとともに、公衆通信回線網300を介して工場200側に接続されて、当該工場200側との間でデータ授受を行うように構成されている。
眼鏡フレーム測定機102は、眼鏡フレームの左右枠の枠溝に測定子を接触させ、その測定子を所定点中心に回転させて枠溝の形状の円筒座標値を3次元的に検出することで、当該眼鏡フレームの枠形状を測定する。そして、その測定結果を当該眼鏡フレームの枠形状データとして、端末コンピュータ101に出力するように構成されている。
一方、工場200側には、眼鏡店100側の端末コンピュータ101と公衆通信回線網300を介して接続するメインフレーム201が設置されている。メインフレーム201は、眼鏡レンズ加工設計プログラム、ヤゲン加工設計プログラム等を実行するコンピュータ装置としての機能を備えており、眼鏡店100側の端末コンピュータ101からの入力データに基づき、ヤゲン形状を含めたレンズ形状を演算するように構成されている。また、メインフレーム201は、公衆通信回線網300の他に、工場200側に設置された複数の端末コンピュータ210,220,230,240,250とLAN202を介して接続しており、レンズ形状の演算結果を各端末コンピュータ210,220,230,240,250へ送るようになっている。
また、上述した構成の眼鏡レンズの供給システムでは、詳細を後述するように、主としてメインフレーム201および端末コンピュータ250において本発明に係る「レンズ形状判定方法」が実施される。
また、上述した構成の眼鏡レンズの供給システムでは、詳細を後述するように、主としてメインフレーム201、端末コンピュータ240、レンズ加工機241、端末コンピュータ250および形状測定器251によって、本発明に係る「眼鏡レンズの製造方法」が実施される。
次に、上述した構成の眼鏡レンズの供給システムにおいて、本発明に係るレンズ加工制御装置としての機能するための機能構成、並びに、本発明に係るレンズ形状判定方法および眼鏡レンズの製造方法を実施するための機能構成について説明する。
ここで、先ず、眼鏡レンズの縁摺り加工およびヤゲン加工を行うレンズ加工機241について説明する。
続いて、ヤゲン加工済のレンズの周長および形状を測定する形状測定器251について説明する。
続いて、メインフレーム201および端末コンピュータ240,250における機能構成について詳しく説明する。
図4は、メインフレーム201および端末コンピュータ240,250の機能構成例を示すブロック図である。
また、端末コンピュータ250は、理論形状取得手段250a、実測形状取得手段250b、形状比較手段250cおよび判定結果出力手段250dとしての機能を備えている。
また、端末コンピュータ240は、判定結果取得手段240aおよび補正指示手段240bとしての機能を備えている。
以下、これらの各手段201a〜201e,250a〜250d,240a〜240bについて順に説明する。
以上に説明した各手段201a〜201e,250a〜250d,240a〜240bは、コンピュータ装置としての機能を有するメインフレーム201または端末コンピュータ240,250が、レンズ加工制御プログラムを実行することによって実現される。レンズ加工制御プログラムは、必要に応じてメインフレーム201または端末コンピュータ240,250(以下、単に「メインフレーム201等」という。)で起動されるものであれば、所定プログラム(例えばヤゲン加工設計プログラム)の一部を構成するものであってもよいし、あるいは当該所定プログラムとは別のものであってもよい。いずれの場合であっても、レンズ加工制御プログラムは、メインフレーム201等がアクセス可能な記憶装置にインストールされて用いられるが、そのインストールに先立ち、メインフレーム201と接続する公衆通信回線網300を通じて提供されるものであってもよいし、あるいはメインフレーム201等で読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
次に、上述した構成の眼鏡レンズの供給システムにおいて実施されるレンズ形状判定方法の手順について、具体例を挙げて説明する。
図5は、本発明に係るレンズ形状判定方法の手順の概要を示すフローチャートである。また、図6〜図7は、本発明に係るレンズ形状判定方法による仕上がり予測形状特定の具体例を示す説明図である。図8は、本発明に係るレンズ形状判定方法による理論形状特定の具体例を示す説明図である。また、図9は、本発明に係るレンズ形状判定方法による形状比較の平面視の具体例を示す説明図である。
図5に示すように、レンズ形状判定は、予測形状特定ステップ(ステップ1、以下ステップを「S」と略す。)と、接触態様特定ステップ(S2)と、理論形状特定ステップ(S3)と、形状比較ステップ(S4)と、良否判定ステップ(S5)とを経て行われる。
以下、これらの各ステップ(S1〜S5)について順に説明する。
予測形状特定ステップ(S1)は、予測形状特定手段201bが行うステップで、未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉量を考慮したヤゲン断面の仕上がり予測形状を求めるステップである。仕上がり予測形状を求めるために、予測形状特定手段201bは、先ず、眼鏡レンズの周方向の複数箇所に測定点を設定する。例えば、測定点は、眼鏡レンズの周方向を1°ずつ分割して360箇所に設定する。そして、予測形状特定手段201bは、各測定点のそれぞれにおいて、眼鏡レンズの周縁の被加工点を含むZ軸に平行な断面を想定して、この断面上でのヤゲンの形状変化を考える。
接触態様特定ステップ(S2)は、接触態様特定手段201cが行うステップで、予測形状特定ステップ(S1)で求めた仕上がり予測形状のヤゲンに対するスタイラス251aの接触態様を求めるステップである。スタイラス251aの接触態様を求めるために、接触態様特定手段201cは、先ず、スタイラス251aの形状データに基づき、当該スタイラス251aの回転軸を通る断面形状を認識する。そして、スタイラス251aの断面形状を認識したら、予測形状特定手段201bが求めた仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対して、スタイラス251aがどのように接触するかを、当該仕上がり予測形状を求めた測定点毎に個別に求める。測定点毎に個別に求めるのは、各測定点でヤゲンの仕上がり予測形状が異なり、スタイラス251aの接触態様についても各測定点で異なるからである。
理論形状特定ステップ(S3)は、理論形状特定手段201dが行うステップで、接触態様特定ステップ(S2)で求めた接触態様を反映させた場合に形状測定器251で得られるであろう形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状として求めるステップである。理論形状の特定は、スタイラス251aをヤゲンの仕上がり予測形状に接触させたまま、スタイラス251aを眼鏡レンズの周方向に移動させた場合の当該スタイラス251aの軌跡に基づいて行うことが考えられる。具体的には、接触態様特定手段201cが求めた各測定点におけるスタイラス251aの接触態様を把握した上で、その接触態様での各測定点におけるスタイラス251aの基準位置(例えば回転中心軸の位置)を結ぶことで、当該スタイラス251aの軌跡を特定する。そして、スタイラス251aの軌跡を特定したら、形状測定器251がヤゲン周長の算出を行うのと同様の手法(アルゴリズム)を用いることで、仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズにおけるレンズ周縁の3次元形状、すなわち当該眼鏡レンズの理論形状を求めることができる。つまり、理論形状特定手段201dは、予測形状特定手段201bおよび接触態様特定手段201cによる処理内容を基にしつつ、スタイラス251aの軌跡から理論形状を求めるのである。
形状比較ステップ(S4)は、形状比較手段250cが行うステップで、ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について形状測定器251で実際に得られる実測形状と理論形状特定ステップ(S3)で求めた理論形状とを比較するステップである。この形状比較ステップ(S4)による比較結果は、後述する良否判定ステップ(S5)での良否判定に用いられる。
その後は、以下に示すような相違量の各態様の少なくとも一つを可変パラメータとして、重ね合わせた各形状を一致させるように最適化することで、後述する加工量補正工程(S9)で用いる加工補正量を求めることができる。
(イ)両形状の間に、円筒座標のZ方向への位置的な相違(ズレ)が生じている態様。
(ロ)両形状の間に、円筒座標の回転方向(θ方向)への位置的な装置(ズレ)が生じている態様。
(ハ)両形状の間に、円筒座標のR方向への位置的な相違(ズレ)が生じている態様。この場合には、以下の2つの要因が考えられる。
(ハ−1)レンズ回転中心軸と加工ツール軸間距離の制御信号とのズレ。
(ハ−2)登録加工ツール径と実ツール径とのズレ。
例えば、図9(b)に示すように、実測形状(図中実線参照)を設計形状(図中二点鎖線参照)と比較する場合を考える。この場合、設計形状は、加工ツール干渉によるヤゲン細り等を考慮せずに演算されたものであるから、ヤゲン細り等の発生が不可避である実測形状とは異なったものとなる。そのために、実測形状と設計形状との比較では、両形状の重ね合わせが困難となり(例えば図中B部参照)、その結果として両形状間にどのようなズレが発生しているかの認識が困難となるおそれがある。特に、上述した(ロ)の態様については、両形状の比較による回転方向の判別が難しく、その回転量の把握が不正確となるおそれがある。
これに対して、例えば、図9(a)に示すように、実測形状(図中実線参照)を理論形状(図中破線参照)と比較する場合であれば、理論形状が加工ツール干渉によるヤゲンの形状変化を考慮しつつそのヤゲン断面に対するスタイラス251aの接触態様を反映させて求めたものであるから、両形状が略同形状となる。そのために、実測形状を理論形状と比較すれば、略同形状を重ね合わせることになるので(例えば図中A部参照)、両形状の重ね合わせが容易となり、その結果として両形状間にどのようなズレが発生しているかの認識を正確に行うことが可能となる。特に、上述した(ロ)の態様については、両形状の比較による回転方向の判別が容易で、その回転量についても正確に把握することが可能になる。
良否判定ステップ(S5)は、形状比較手段250cが行うステップで、形状比較ステップ(S4)での実測形状と理論形状の比較結果を用いつつ、当該実測形状に対する良否判定、すなわち当該実測形状が所望形状通りであるか否かの判定を行うステップである。
実測形状に対する良否判定は、実測形状と理論形状との比較を通じて認識した両形状の間における相違量(ズレ量)が、予め設定された許容範囲に収まっているか否かを判断することによって行う。具体的には、実測形状と理論形状とのズレ量が許容範囲に収まっていれば合格品と判定する、といったように行うことが考えられる。
一方、許容範囲については、上述した(イ)〜(ハ)の3態様に対して個別に設定することが考えられる。具体的には、(イ)の態様についてはズレ量が例えば0.1mm以下であれば合格品と判定し、(ロ)の態様についてはズレ量が例えば1°以下であれば合格品と判定し、(ハ)の態様についてはズレ量が例えば0.02mm以下であれば合格品と判定する、といったことが考えられる。なお、許容範囲を規定する値については、特に限定されるものではなく、適宜設定して構わない。
次に、上述したレンズ形状判定の結果を利用して行う眼鏡レンズの製造手順(レンズ良否判定を含む)について説明する。
図10は、本発明に係る眼鏡レンズ製造方法の手順の概要を示すフローチャートである。
本実施形態で説明する眼鏡レンズ製造方法は、上述したレンズ形状判定方法の手順を構成する各ステップ(S1〜S5)に加えて、レンズ加工工程(S6)と、加工後形状測定工程(S7)と、補正要否判定工程(S8)と、加工量補正工程(S9)とを経て、眼鏡レンズの製造を行う。
これらのうち、レンズ加工工程(S6)および加工後形状測定工程(S7)は、形状比較ステップ(S4)に先立って行うものとする。形状比較ステップ(S4)に先立っていれば、予測形状特定ステップ(S1)、接触態様特定ステップ(S2)および理論形状特定ステップ(S3)と並行処理を行ってもよい。
また、補正要否判定工程(S8)および加工量補正工程(S9)については、形状比較ステップ(S4)の後に行うものとする。形状比較ステップ(S4)の後であれば、良否判定ステップ(S5)と並行処理を行ってもよい。
レンズ加工工程(S6)では、レンズ加工機241が眼鏡レンズの縁摺り加工およびヤゲン加工を行う。
加工後形状測定工程(S7)では、レンズ加工工程(S6)でヤゲン加工が行われた後のヤゲン加工済み眼鏡レンズについて、形状測定器251がレンズ周縁部の形状を測定する。これにより、形状測定器251からは、ヤゲン加工済み眼鏡レンズについての実測形状が得られることになる。つまり、形状測定器251での測定結果は、ヤゲン加工済み眼鏡レンズの実測形状として、当該形状測定器251から端末コンピュータ250へ送られる。そして、端末コンピュータ250では、形状比較ステップ(S4)において、実測形状と理論形状との比較が行われることになる。
補正要否判定工程(S8)では、形状比較ステップ(S4)での実測形状と理論形状との比較結果に基づき、端末コンピュータ240において、レンズ加工工程(S6)で用いたレンズ加工機241に対する加工量補正が必要であるか否かを判定する。この判定は、良否判定ステップ(S5)での良否判定と同様に、実測形状と理論形状とのズレ量が予め設定された許容範囲に収まっているか否かを基準にして行うことが考えられる。具体的には、実測形状と理論形状とのズレ量が許容範囲に収まっていればレンズ加工機241に対する加工量補正は不要であるが、許容範囲を超えるズレ量が生じている場合にはレンズ加工機241に対する加工量補正を行うべきと判定する、といったことが考えられる。
加工量補正工程(S9)では、補正要否判定工程(S8)で加工量補正が必要と判定された場合に、端末コンピュータ240が、実測形状と理論形状との比較結果に基づき、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機241に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる。つまり、レンズ加工機241での加工結果であるヤゲン加工済み眼鏡レンズの実測形状について、理論形状とのズレ量を認識した上で、そのズレ量を解消させるような、いわゆるフィードバック補正を、当該レンズ加工機241に行わせるのである。したがって、加工量補正工程(S9)の後において、新たにレンズ加工機241で眼鏡レンズのヤゲン加工を行う場合に、ヤゲン加工済み眼鏡レンズは、実測形状と理論形状との相違(ズレ)が無いに等しいものとなる。
機械的に行う加工量補正としては、以下のようなものがある。例えば、加工量補正が必要と判定された場合には、端末コンピュータ240またはレンズ加工機241の少なくとも一方が、例えばディスプレイを利用した情報表示を通じて、加工量補正が必要である旨および補正すべき加工量を、レンズ加工機241のオペレータに対して報知する。この報知を受けて、レンズ加工機241のオペレータは、当該レンズ加工機241のヤゲン加工のための機構部に対して、例えば加工ツールの軸位置を調整し、または未加工レンズの保持軸の機械的な回転方向(θ方向)の原点を調整する等といった調整作業を行う。このような調整作業を経ることで、その作業後のレンズ加工機241は、新たにヤゲン加工を行う際の加工量が機械的(物理的)に補正されることになる。
また、ソフトウエア的に行う加工量補正としては、以下のようなものがある。例えば、加工量補正が必要と判定された場合には、メインフレーム201または端末コンピュータ240の少なくとも一方が、加工量補正が必要である旨および補正すべき加工量を認識して、その旨および補正すべき加工量を記憶保持しておく。そして、新たにレンズ加工機241でヤゲン加工を行う際に、そのヤゲン加工に必要となる3次元加工軌跡データの算出を、記憶保持している加工量を補正値として反映させて行う。具体的には、例えばツール径の設定値を補正値の分だけ加算または減算して3次元加工軌跡データを算出する。このような加工量補正を加味した3次元加工軌跡データの生成を経ることで、その3次元加工軌跡データに基づいてヤゲン加工を行うレンズ加工機241は、そのヤゲン加工を行う際の加工量がソフトウエア的に補正されることになる。
(ニ)レンズ加工機241における加工ツールのZ軸位置または未加工レンズのZ軸位置を、機械的またはソフトウエア的に移動させる補正態様。このような補正態様によれば、例えばレンズ加工機241において未加工レンズ回転軸または加工ツール回転軸の少なくとも一方が調整不良や経時的な理由等で本来の位置からずれた位置にあるような不具合が生じ、これにより上述した(イ)の態様によるズレが発生した場合であっても、加工量補正後に新たにヤゲン加工を行う眼鏡レンズについては、ズレ発生の要因となるレンズ加工機241の当該不具合を解消して、ヤゲン加工後にレンズ周縁部が所望形状通りに加工されるようにすることが実現可能となる。
(ホ)レンズ加工機241における未加工レンズの保持軸を、回転方向(θ方向)へ、機械的またはソフトウエア的に移動させる補正態様。このような補正態様によれば、例えば未加工レンズに対してブロッカーによってブロッキングされた保持治具の回転方向(θ方向)の原点とレンズ加工機241の保持軸の機械的な回転方向(θ方向)の原点とが機械調整ミス等で本来の位置からずれた位置にあるような不具合が生じ、これにより上述した(ロ)の態様によるズレが生じ得る場合であっても、加工量補正後に新たにヤゲン加工を行う眼鏡レンズについては、ズレ発生の要因となる当該不具合を解消して、ヤゲン加工後にレンズ周縁部が所望形状通りに加工されるようにすることが実現可能となる。
(へ)レンズ加工機241における加工ツールの軸位置を機械的に移動させ、または当該加工ツールのツール径設定値をソフトウエア的に変更(修正)する補正態様。このような補正態様によれば、例えばレンズ加工機241で使用する加工ツールについてのツール径の値についての設定ミスがあり、上述した(ハ−1)または(ハ−2)の要因による不具合が生じ、これにより上述した(ハ)の態様によるズレが生じ得る場合であっても、加工量補正後に新たにヤゲン加工を行う眼鏡レンズについては、ズレ発生の要因となるレンズ加工機241の当該不具合を解消して、ヤゲン加工後にレンズ周縁部が所望形状通りに加工されるようにすることが実現可能となる。
本実施形態で説明したレンズ加工制御装置、レンズ加工制御プログラム、レンズ形状判定方法および眼鏡レンズの製造方法によれば、以下のような効果が得られる。
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。すなわち、本発明の技術的範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。
Claims (8)
- 3次元加工軌跡データに従って未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉により、前記3次元加工軌跡データの基になった設計上のヤゲン形状に対して形状変化が発生した後のヤゲン形状を、ヤゲン断面の仕上がり予測形状として求める予測形状特定手段と、
前記仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求める接触態様特定手段と、
前記接触態様を反映させた場合に前記レンズ形状測定器で得られるであろう前記仕上がり予測形状についての形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状とする理論形状特定手段と、
ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について前記レンズ形状測定器で実際に得られる実測形状と前記理論形状とを比較し、その比較結果に基づいて当該実測形状に対する良否判定を行う形状比較手段と、
を備えることを特徴とするレンズ加工制御装置。 - 前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる補正指示手段
を備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ加工制御装置。 - 前記補正指示手段は、前記実測形状と前記理論形状との相違量が予め設定された許容範囲を超えた場合にのみ、前記レンズ加工機に加工量補正を行わせる
ことを特徴とする請求項2記載のレンズ加工制御装置。 - 前記予測形状特定手段は、眼鏡レンズの周方向の複数箇所に設定された測定点毎に、前記仕上がり予測形状を求め、
前記接触態様特定手段は、前記測定点毎に、前記仕上がり予測形状のヤゲンに対する前記測定子の接触態様を求める
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレンズ加工制御装置。 - コンピュータを、
3次元加工軌跡データに従って未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉により、前記3次元加工軌跡データの基になった設計上のヤゲン形状に対して形状変化が発生した後のヤゲン形状を、ヤゲン断面の仕上がり予測形状として求める予測形状特定手段と、
前記仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求める接触態様特定手段と、
前記接触態様を反映させた場合に前記レンズ形状測定器で得られるであろう前記仕上がり予測形状についての形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状とする理論形状特定手段と、
ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について前記レンズ形状測定器で実際に得られる実測形状と前記理論形状とを比較し、その比較結果に基づいて当該実測形状に対する良否判定を行う形状比較手段
として機能させることを特徴とするレンズ加工制御プログラム。 - 前記コンピュータを、
前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる補正指示手段
として機能させることを特徴とする請求項5記載のレンズ加工制御プログラム。 - 3次元加工軌跡データに従って未加工の眼鏡レンズにヤゲン加工を行う際の加工ツール干渉により、前記3次元加工軌跡データの基になった設計上のヤゲン形状に対して形状変化が発生した後のヤゲン形状を、ヤゲン断面の仕上がり予測形状として求める予測形状特定ステップと、
前記仕上がり予測形状を有する眼鏡レンズのヤゲンに対するレンズ形状測定器の測定子の接触態様を求める接触態様特定ステップと、
前記接触態様を反映させた場合に前記レンズ形状測定器で得られるであろう前記仕上がり予測形状についての形状測定結果をヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁の理論形状とする理論形状特定ステップと、
ヤゲン加工後の眼鏡レンズ周縁について前記レンズ形状測定器で実際に得られる実測形状と前記理論形状とを比較し、その比較結果を当該実測形状に対する良否判定に用いる形状比較ステップと、
を備えることを特徴とするレンズ形状判定方法。 - 請求項7記載のレンズ形状判定方法を用いた前記実測形状と前記理論形状との比較結果に基づいて、当該実測形状を得た眼鏡レンズのヤゲン加工を行ったレンズ加工機に、当該実測形状と当該理論形状との相違量に対応する量の加工量補正を行わせる加工量補正工程
を備えることを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
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