<実施の形態1>
図1は、この発明の実施の形態1である無線通信システム(列車無線システム)の全体構成の概略を示す説明図である。実施の形態1の無線通信システムは、CH切替用基地局を用いた無線周波数CH切替方式を採用している。同図に示すように、実施の形態1の無線通信システムは、線路3上を走行する列車1、基地局11A及び11B(通常の第1及び第2の基地局)、CH切替予告用基地局31(予告信号用基地局)及びCH切替確定用基地局32(確定信号用基地局)を主要構成として有している。なお、基地局11A及び11Bはそれぞれ通信用のアンテナ19を有しており、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32はそれぞれ通信用のアンテナ39を有している。
線路3は2つの線区4A及び4Bに分けられ、線区4Aは基地局11Aによる通信エリア5A内に位置し、線区4Bは基地局11Bによる通信エリア5B内に位置するため、通信エリア5A及び5Bにおける無線周波数CHは互いに異なる内容に設定される。すなわち、列車1は、通信エリア5A内の線区4Aでは無線周波数fAで基地局11Aとのデータ送受信を行い、通信エリア5B内の線区4Bでは無線周波数fAと異なる無線周波数fBで基地局11Bとのデータ送受信を行う。
移動体である列車1には列無車上装置2(移動局)が搭載されており、列無車上装置2によって、基地局11A及び11B、並びにCH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32それぞれとの間で無線通信を行うことができる。具体的には、列無車上装置2は、通信エリア5A内において基地局11Aとの通常の無線通信が可能であり、通信エリア5B内において基地局11Bとの通常の無線通信が可能である。
さらに、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32は、線路3上の線区4Aと線区4Bの境界付近、すなわち、通信エリア5Aと通信エリア5Bとの混合通信エリア5C付近に配置される。CH切替予告用基地局31は無線周波数fAで「CH切替報知信号(予告)」(以下、単に「予告信号」と略記する場合あり)を送信し、CH切替確定用基地局32は無線周波数fAで「CH切替報知信号(確定)」(以下、単に「確定信号」と略記する場合あり)を送信する。したがって、図1に示すように、通信エリア5A内の通信エリア5Bと重複する混合通信エリア5C内に、CH切替予告用基地局31による予告信号の通信エリア51と、CH切替確定用基地局32による確定信号の通信エリア52が設定される。
また、図1に示すように、線区4A及び線区4Bの遠方に存在し、無線周波数fAにてCH切替予告用基地局31の送信する「CH切替報知信号(予告)」(予告信号)とは異なる内容の擬似予告信号を送信するCH切替予告用基地局41を実施の形態1の動作説明用に存在させている。なお、CH切替予告用基地局41は通信用のアンテナ49を有している。以下の説明では、単に、「CH切替予告用基地局」と称する場合、擬似のCH切替予告用基地局41ではなく、本来のCH切替予告用基地局31を指すものとする。
図2は図1で示した列無車上装置2の機能構成例を示すブロック図である。同図に示すように、列無車上装置2は、アンテナ21、送受信部22、制御部23、及び記憶部24からなる機能ブロックにより構成されている。
制御部23は、受信したデータを処理するデータ処理部231、受信した信号の妥当性を判定する受信判定部232、CH切替(周波数切替処理)を実施するか否かを判定するCH切替判定部233により構成されている。また、記憶部24には、受信判定を行うための閾値D1や、CH切替判定を行うためのカギデータD2が記憶されている。また、記憶部24は、予告信号,確定信号のデータ受信状況を無線データD3として、受信した予告信号のデータ内容を予告信号データD4として、受信した確定信号のデータ内容を確定信号データD5として保持している。
上述した構成において、アンテナ21を介して受信される受信信号は送受信部22で受信処理された後、制御部23によるデータ処理が施され、この際、必要に応じて無線データD3、予告信号データD4及び確定信号データD5が記憶部24に記憶される。一方、制御部23によるデータ処理がなされた送信用データは、送受信部22で送信処理が施された後、アンテナ21から送信信号として送信される。
図3は、実施の形態1における無線通信システムが採用した列無車上装置2によるCH切替方式の処理の流れを示すフローチャートである。以下、同図を参照して、実施の形態1におけるCH切替方式の処理手順を説明する。
まず、列無車上装置2は、待ち受け状態(ステップS1)で待機し、CH切替予告用基地局31から予告信号を受信すると(ステップS2)、ステップS3において後に詳述する予告信号受信判定処理を実行する。
その後、ステップS4において、ステップS3で実行された予告信号受信判定処理の判定結果が良好(OK)の場合(YES)はステップS5に移行し、上記予告信号受信判定処理の判定結果が不良(NG)の場合(NO)は、ステップS12においてCH切替(周波数切替処理)を実施することなく終了する。
列無車上装置2は、ステップS4でYESの場合に実行されるステップS5において、確定信号の受信を待機する周波数切替確定待機状態で待機し、CH切替確定用基地局32から確定信号を受信すると(ステップS6)、ステップS7において後述する確定信号受信判定処理を実行する。
その後、ステップS8において、ステップS7で実行された確定信号受信判定処理の判定結果が良好(OK)の場合(YES)はステップS9に移行し、上記確定信号受信判定処理の判定結果が不良(NG)の場合(NO)は、ステップS12においてCH切替を実施することなく終了する。
列無車上装置2は、ステップS8でYESの場合に実行されるステップS9においてCH切替判定処理を実行する。その後、ステップS10において、ステップS9で実行されたCH切替判定処理の判定結果が良好(OK)の場合(YES)はステップS11においてCH切替を実行して処理を終了し、上記CH切替判定処理の判定結果が不良(NG)の場合(NO)は、ステップS12においてCH切替を実施することなく終了する。
ステップS3及びS7で実行される予告信号受信判定処理及び確定信号受信判定処理である受信判定処理は、予告信号及び確定信号の受信状況から受信した「CH切替報知信号」(予告信号,確定信号)が本来受信すべきものであるかどうかを判断する処理を意味する。受信判定処理の条件として、受信した「CH切替報知信号」の受信性能に関する条件等が考えられる。
ステップS9で実行されるCH切替判定処理とは、列無車上装置2、予告信号及び確定信号との間の相互関係に設けた条件などにより、CH切替が妥当かどうかを判断する処理である。CH切替判定処理の条件として、移動局である列無車上装置2が持つ固有の装置検証データ(移動局検証データ)と予告信号及び確定信号に含まれる予告用検証データ及び確定用検証データとの相互関係及び、予告信号,確定信号間における受信内容や受信時刻の差異などの条件が該当する。
図4は列無車上装置2における予告信号受信判定処理の処理例を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、予告信号受信判定処理の処理手順を説明する。
図3で説明したように、待ち受け状態(S1)からCH切替予告用基地局31からの予告信号の受信後(S2)に、ステップS3において予告信号受信判定処理が実行される。
まず、ステップS31において、列無車上装置2は送受信部22及び制御部23による受信処理(ステップS31)を実行する。上記受信処理において、RSSI(Received Signal Strength Indication),BER(Bit Error Ratio),及びD/U(Desired to Undesired signal ratio)等の受信性能を表す指標が測定される。そして、制御部23のデータ処理部231は測定したRSSI等の受信性能指標値を無線データD3として記憶部24に格納する。
その後、受信判定部232の制御下で、ステップS32〜S34において、ステップS31の受信処理で測定されたRSSI、BER及びD/Uが第1〜第3の閾値を満足するか否かを判定する第1〜第3の受信性能判定処理が実行される。なお、上述した第1〜第3の閾値は記憶部24の閾値D1として予め格納されている。
上述したステップS32〜S34のRSSI,BER及びD/Uによる第1〜第3の受信性能判定処理の良否(OK,NG)のうち、第1〜第3の受信性能判定処理が全て良好(OK)であった場合にステップS35に移行し、第1〜第3の受信性能判定処理のいずれか一つが不良(NG)であった場合はステップS39において予告信号受信不良(無効)判定がなされる。
列無車上装置2のデータ処理部231は、ステップS32〜S34で全てOKの場合に実行されるステップS35において、受信した予告信号に関するデータ処理を実行する。データ処理には、予告信号の復調確率や受信回数を演算する処理が含まれる。
その後、受信判定部232の制御下で、ステップS36及びS37において、ステップS35のデータ処理にて演算された復調確率が所定の閾値以上であるか否かをチェックする第1のデータ判定処理、及び、受信回数が所定の閾値(回数)以上であるか否かをチェックする第2のデータ判定処理が実行される。
上述したステップS36及びS37の第1及び第2のデータ判定処理のうち、第1及び第2のデータ判定処理が全て良好(OK)であった場合にステップS38において予告信号受信良好(有効)判定がなされ、第1及び第2のデータ判定処理のうちいずれか一つが不良であった場合はステップS39において予告信号受信不良判定がなされる。
次に、CH切替判定処理の流れを説明する。図5は、列無車上装置2におけるCH切替判定処理の処理例を示すフローチャートである。同図を参照して、CH切替判定処理の処理手順を説明する。
CH切替前待ち受け状態(S90)から、ステップS38Aで予告信号受信・良好判定(図3のステップS4でYES)、ステップS38Bで確定信号受信・良好判定(図3のステップS8でYES)がなされると、ステップS9のCH切替判定処理に移行する。
ステップS91において、データ処理部231は良好に受信した予告信号及び確定信号に対するデータ処理を実行する。ここでのデータ処理には、予告信号,確定信号の受信内容(使用する無線周波数CH、通信対象の基地局等)の認識、予告信号の受信から確定信号を受信するまでの経過時間、及び、列無車上装置2の記憶部24内のカギデータD2(移動局検証データ)の読出処理、予告信号に含まれるカギデータ(予告用検証データ)の取得・読出処理、及び確定信号に含まれる確定用カギデータ(確定用検証データ)の取得・読出処理が含まれる。
ステップS91のデータ処理後に、CH切替判定部233の制御下で、ステップS92〜S94からなるCH切替判定処理が実行される。
まず、ステップS92において、予告信号及び確定信号の受信内容が正規の受信内容条件を満足するか否かが判定される。例えば、予告信号,確定信号それぞれの受信内容(切替後の利用基地局、切替後の無線周波数CH等)が一致する場合は正規の受信内容条件を満足し良好(OK)と判定し、一致しない場合は不良(NG)と判定する。そして、判定結果が良好であれば、ステップS93に移行し、判定結果が不良であれば、ステップS96に移行する。
次に、ステップS93において、予告信号の受信から確定信号を受信するまでの経過時間が正規の受信時間間隔条件を満足するか否かが判定される。例えば、正規の受信時間間隔が1時間である場合、上記経過時間が1時間以内であれば、正規の受信時間間隔条件を満足し良好(OK)と判定し、上記経過時間が1時間を越える場合であれば不良(NG)と判定する。そして、判定結果が良好であれば、ステップS94に移行し、判定結果が不良であれば、ステップS96に移行する。
そして、ステップS94において、カギデータD2と予告用及び確定用カギデータそれぞれとが一致するカギデータ一致条件(検証データ一致条件)を満足するか否かが判定される。そして、ステップS94の判定結果が良好(OK)であれば、ステップS95に移行し、判定結果が不良であれば、ステップS96に移行する。
したがって、ステップS92〜S94において、受信内容条件、受信時間間隔条件、及びカギデータ一致条件それぞれの判定処理の良否(OK,NG)で分岐され、ステップS92〜S94が全て良好であった場合にステップS95においてCH切替良好(OK)判定がなされ、ステップS92〜S94のいずれか一つが不良であった場合はステップS96においてCH切替不良(NG)判定がなされる。
次に、図1を参照して、列車1が線路3上の線区4Aから線区4Bの方向に走行している場合における列無車上装置2の動作について説明する。列無車上装置2は線区4Aにおいて無線周波数fAにて、基地局11Aと音声を含むデータの通常の無線通信を行っている。列車1が進行し線区4Aと線区4Bの境界のCH切替予告用基地局31の電波受信エリアとなる通信エリア51に進んだとする。列無車上装置2は、線区4Aと線区4Bとの境界において、無線周波数fAでCH切替予告用基地局31から送信される「CH切替報知信号(予告)」(予告信号)を受信する。
列無車上装置2は、アンテナ21を介して送受信部22において予告信号を受信した後、受信した予告信号が本来受信すべきものであるかどうかを判定する予告信号受信判定処理(図4で示した処理)を行う。
予告信号受信判定処理における受信判定条件としては、例えば、無線性能(RSSI,BER,D/U等)に閾値を設定し、予告信号の受信性能指標(RSSI等)が閾値を超えているかどうかを判定する処理(ステップS32〜S34の第1〜第3の受信性能判定処理)が考えられる。
ここでは、無線性能として受信電界強度(RSSI)を例にとって説明する。受信判定の閾値として5.0 [dBμV]以上を設定し、記憶部24の閾値D1として記憶しておく。送受信部22において、CH切替予告用基地局31からの予告信号を受信した場合、受信処理時に記憶部24の無線データD3として、予告信号の受信電界強度の値を保持する。仮に、予告信号の受信電界強度が20.0[dBμV]であったとする。制御部23の受信判定部232は、記憶している閾値D1と無線データD3で保持された受信電界強度(値)との比較処理を行う。上記例の場合、受信電界強度(値)が閾値D1を上回るため、予告信号を良好(有効)と判定する。
しかし、遠方にあるCH切替予告用基地局41からの本来受信するべきでない擬似予告信号が受信できてしまう場合もある。この場合、CH切替予告用基地局41からの擬似予告信号の受信電界強度が、仮に−5.0[dBμV]であったとすると、擬似予告信号の受信電界強度は閾値D1以下であるため、受信判定部232は受信不良(NG)と判定し、擬似予告信号を不良(無効)と判定することができる。
図6は実施の形態1における列車位置と受信電界強度との関係の一例を示すグラフである。同図において、横軸は線路上の列車位置を表しており、縦軸は列車位置における各信号の受信電界強度を表している。また、図6において、通信ポイントP51は通信エリア51の中心位置、通信ポイントP52は通信エリア52の中心位置、通信ポイントP40は通信エリア51,52間の中心位置に相当する。
図6で示す例の場合、横軸正の方向に列車1が走行するとCH切替予告用基地局31からの予告信号を受信する。このとき予告信号の受信電界強度L13が受信電界強度による(受信判定用)閾値TH1を超えた時点で受信判定良好(OK)となる。なお、閾値TH1は閾値D1により規定される。
さらに、列車1が正の向きに進行すると、遠方にあるCH切替予告用基地局41からの本来受信するべきでない擬似予告信号を受信する。このとき、擬似予告信号の受信電界強度L14は、受信電界強度による閾値TH1よりも小さいので受信判定不良(NG)となる。
さらに、列車1が正の向きに進行すると、後に詳述するように、CH切替確定用基地局32からの確定信号を受信する。このとき確定信号の受信電界強度L15が、受信電界強度による閾値TH1を超えた時点で受信判定良好となる。
また、別のケースとしては、受信回数及び復調確率に閾値を設けることで判定してもよい(図4のステップS37,S38の処理に相当)。例えば、3回以上のシンクワード(同期ワード)を検出して、連続して3回ともデータ復調可能であるという閾値を設定する。すなわち、受信回数の閾値を3回とし、復調確率の閾値を100%とする。
この場合、CH切替予告用基地局31からの予告信号を受信した場合には、3回受信し3回連続データ復調可能であったとすると、受信回数の閾値、及び復調確率の閾値による条件を共に満足するため、判定良好となる。しかし、遠方にあるCH切替予告用基地局41からの本来受信するべきでない擬似予告信号のシンクワードを受信してしまう場合もある。この場合、3回シンクワードを検出するが、そのうち2回はデータ復調不可能であったとすると、受信回数の閾値は満足するが、復調確率の閾値は満足しないため、受信判定部232は擬似予告信号を受信不良(無効)と判定する。
このように、列無車上装置2は、予告信号受信判定処理を行い、予告信号を受信良好(OK)と判定した場合、一定時間、CH切替確定用基地局32からの確定信号を待機するCH切替確定待機状態(図3のステップS5の処理に相当)に移行し、確定信号の受信待ち状態となる。
次に、図1において、列車1が線区4Aから線区4Bの方向にさらに進行し、線区4Aと線区4Bの境界のCH切替確定用基地局32の電波受信エリアである通信エリア52に進んだとする。列無車上装置2は、線区4Aと線区4Bと境界の混合通信エリア5C内における通信エリア52において、無線周波数fAでCH切替確定用基地局32から送信される確定信号を受信する。
列無車上装置2は、確定信号を受信すると、受信した確定信号が本来受信すべきものであるかどうかを判定する確定信号受信判定処理を行う。確定信号受信判定処理における判定条件は、対象が予告信号から確定信号に代わる点を除き同条件であり、確定信号受信判定処理は上述した予告信号受信判定処理と同様に実行される。
次に、列無車上装置2は確定信号の受信良好と判定すると、CH切替が妥当かどうかを判断する無線周波数のCH切替判定処理を実行する(図3のステップS9の処理,図5で詳細を示した処理に相当)。
CH切替判定処理の判定条件として、ここでは例えば、列無車上装置2、予告信号及び確定信号それぞれにカギデータを持たせ、それぞれのカギデータが一致するという、カギデータ一致条件を設定し、このカギデータ一致条件を満足した場合にのみ、CH切替を実行することとする(図5のステップS94の処理に相当)。
図7は実施の形態1におけるCH切替判定処理の結果例(その1)を示す説明図である。なお、実施の形態1における図1と同様の構成の部分については、同一符号を付与して説明を適宜省略する。また、図7〜図9では、CH切替判定処理の判定条件としてカギデータ一致条件のみ課していると仮定する。
列無車上装置2は記憶部24内に検証データとしてカギデータXを所有しており、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32はそれぞれ検証データとしてカギデータXを記憶部37及び38にそれぞれ所有している。列無車上装置2のカギデータXは、図2における記憶部24のカギデータD2として記憶されている。以下、説明の都合上、列無車上装置2が所有するカギデータXをカギデータX2、CH切替予告用基地局31が所有するカギデータをカギデータX31、CH切替確定用基地局32が所有するカギデータをカギデータX32とする。
図7において、カギデータX2を記憶部24内に有する列無車上装置2が、CH切替予告用基地局31から送信された、カギデータX31を含む予告信号を受信する場合を説明する。予告信号受信判定処理の判定結果が良好の場合、列無車上装置2は受信した予告信号を制御部23内のデータ処理部231にてデータ処理し、データ処理した予告信号のデータ内容(カギデータX31を含む)を記憶部24に予告信号データD4として保持する。
次に、CH切替確定用基地局32から送信された、カギデータX32を含む確定信号を受信する。確定信号受信判定処理の判定結果が良好の場合、列無車上装置2は受信した確定信号を制御部23内のデータ処理部231にてデータ処理し、予告信号と同様、データ処理した確定信号のデータ内容(カギデータX32を含む)を記憶部24に確定信号データD5として保持する。
その後、制御部23のCH切替判定部233は、カギデータD2として記憶しているカギデータX2と、予告信号データD4及び確定信号データD5におけるカギデータX32及びX33それぞれの比較処理を行う。図7で示す例の場合、「カギデータX2=X32=X33」の関係にあり、カギデータ一致条件を満足するため、CH切替判定処理は良好と判定し、列無車上装置2は、無線周波数CHをfAからfBに切り替える周波数切替処理を実行する。
図8は実施の形態1におけるCH切替判定処理の結果例(その2)を示す説明図である。なお、実施の形態1における図7と同様の構成の部分については、同一符号を付与して説明を適宜省略する。
列無車上装置2はカギデータXとは異なるカギデータYを所有している。以下、説明の都合上、列無車上装置2が所有するカギデータYをカギデータY2とする。
図8では、カギデータXとは異なるカギデータY2を有する列無車上装置2が、線路3上の線区4Aから線区4Bへ移動しており、CH切替予告用基地局31から送信され、カギデータX31を含む予告信号を受信し、CH切替確定用基地局32から送信され、カギデータX32を含む確定信号を受信した後、CH切替判定処理が実行される。図8で示す例の場合、「カギデータY2」と「カギデータX32(=X33)」とは不一致となり、カギデータ一致条件を満足することができないため、CH切替判定処理は不良と判定し、列無車上装置2は、無線周波数CHをfAから切り替えることなく、CH切替確定待機状態をキャンセルする。
図9は実施の形態1におけるCH切替判定処理の結果例(その3)を示す説明図である。なお、実施の形態1における図7と同様の構成の部分については、同一符号を付与して説明を適宜省略する。CH切替確定用基地局32はカギデータXと異なるカギデータYを記憶部38内に有している。以下、説明の都合上、CH切替確定用基地局32が所有するカギデータYをカギデータY32とする。
図9では、カギデータX2を有する列無車上装置2が線区4Aから線区4Bへ移動しており、CH切替予告用基地局31から送信され、カギデータX31を含む予告信号を受信し、CH切替確定用基地局32から送信され、カギデータY32を含む確定信号を受信した後、CH切替判定処理が実行される。図9で示す例の場合、「カギデータX2」と「カギデータY32」とは不一致となり、カギデータ一致条件を満足することができないため、CH切替判定処理は不良と判断し、列無車上装置2は、無線周波数CHをfAから切り替えることなく、CH切替確定待機状態をキャンセルする。
なお、図7〜図9で示した例では、CH切替判定処理が実行される場合の結果例を示したが、CH切替判定処理を実行することなく、CH切替確定待機状態からの時間制約を課しても良い。
例えば、列無車上装置2は、CH切替確定待機状態(図3のステップS5)となってから、一定時間以内にCH切替判定処理による判定結果が得られなかった場合、確定信号の受信及びその後のCH切替判定処理を実行することなく、CH切替確定待機状態をキャンセルするようにしても良い。
列無車上装置2は、無線周波数CHを無線周波数fAから無線周波数fBに切り替えた後は、基地局11Aとの無線通信は行わず、無線周波数fBにより基地局11Bとの無線通信を開始する。
なお、周波数切替処理の完了まで、列無車上装置2は無線周波数fAによる基地局11Aとの無線通信を継続する。
通常基地局である基地局11A及び11BとCH切替用基地局であるCH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32は、フレームの使用領域を分割し、互いの未使用領域を使用することにより、電波干渉が発生しないようにされている。
図10は通常基地局及びCH切替用基地局におけるフレーム使用例を示す説明図である。
同図に示すように、通常基地局である基地局11A,11Bでは識別可能なフレームFM0〜FMX(複数フレーム)のうち、フレームFM1を使用せず、それ以外のフレームFM0,フレームFM2〜FMXを使用フレームとして通常のデータ通信を行っている。一方、CH切替基地局であるCH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32は、フレームFM1のみを使用フレームとし、予告信号及び確定信号によるデータ通信を行っている。このため、通常基地局11A,11BとCH切替用基地局31,32では、同時に電波を輻射することはなく、干渉の影響を考慮する必要はない。
上記のように,実施の形態1の無線通信システムでは、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32との無線通信を行うことにより、運転士の手による無線周波数CH切替動作を不要としており、運転士の負荷を低減している。
また、無線周波数CHの切替動作を自動化することにより、無線周波数CH切替漏れや無線周波数CHの切替間違いなどの人為的ミスを防ぐことができる。
また、CH切替予告用基地局31による予告信号とCH切替確定用基地局32による確定信号とを使用し、列無車上装置2により予告信号及び確定信号それぞれ単独の受信判定処理を実行させることにより、CH切替報知信号(予告信号,確定信号)の誤受信による誤ったCH切替が実行される可能性を小さくすることが可能となる。
また、データ内容の一致等のCH切替報知信号(予告信号,確定信号)の相互関係に設けた条件に基づくCH切替判定処理を行うことにより、CH切替報知信号の誤受信による誤ったCH切替の可能性をより一層小さくすることが可能である。
また、列無車上装置2とCH切替報知信号(予告信号,確定信号)の相互関係に設けた、カギデータ一致条件に基づくCH切替判定処理を行うことにより、CH切替報知信号の誤受信による誤ったCH切替の可能性を大幅に小さくすることが可能である。
また、列無車上装置2に固有のカギデータD2を持たせて、列無車上装置2とCH切替報知信号の相互関係に設けたCH切替判定処理を行うことができるため、同じ線路3を走行する複数の列車に対し異なるカギデータD2を設定することにより、同じ線路3を走行する複数の列車間で別々の周波数CH設定を行うことが可能である。
また、CH切替用基地局31,32の無線周波数を通常基地局11A.11Bと同一とすることで、周波数の有効利用を図ることができる。
また、CH切替用基地局31,32と通常基地局11A,11Bとが、無線通信フレームを互いの未使用領域を使用することにより、通常の基地局と通信を継続したまま、互いの干渉を受けることなく、無線周波数CH切替を実施可能である。
このように、実施の形態1の無線通信システムにおいて、列車1の列無車上装置2(移動局)は、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32からの予告信号及び確定信号を正規の予告確定受信条件を満足する態様で受信した場合、はじめて無線通信の周波数を切り替える周波数切替処理を実行している。
そして、正規の予告確定受信条件として、記憶部24内のカギデータ(移動局検証データ)とCH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32内のカギデータ(予告検証データ及び確定検証データ)それぞれとが一致するカギデータ一致条件を含んでいる。
したがって、実施の形態1の無線通信システムは、上記カギデータ一致条件の満足の有無によって、予告信号及び確定信号が本来受信すべき信号であるか否かの良否を正確に認識することができる。このため、列無車上装置2が本来受信すべきでない予告信号及び確定信号に相当する擬似信号を本来受信すべき信号と判定してしまう誤受信を確実に回避することにより、常に正確な周波数切り替え処理(無線周波数CHの切り替え処理)を自動的に行うことができる。
さらに、正規の予告確定受信条件として、予告信号単独の受信条件及び確定信号単独の受信条件(例えば、図4のステップS32〜S34,S36及びS37で示す処理内容)をさらに含めることにより、より精度の高い周波数切り替え処理を行うことができる。
加えて、正規の予告確定受信条件として、受信内容条件(例えば、図5のステップS92の処理)及び受信時間間隔条件(図5のステップS93の処理)をさらに含めることにより、より精度の高い周波数切り替え処理を行うことができる。
また、基地局11A,列無車上装置2間で行う通常の送受信信号と、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32からの予告信号及び確定信号とは、フレームFM1〜FMX(複数フレーム)内で互いに重複することなく使用フレーム割り当てられるため、予告信号及び確定信号によって列無車上装置2と基地局11Aとの無線通信に影響を与えることなく、周波数切替処理を自動的に行うことができる。
(変形例)
図5のステップS94におけるカギデータ一致条件において、予告信号におけるカギデータを重視した以下の対応も変形例として考えられる。
列無車上装置2は上述したように記憶部24にカギデータD2を保持している。予告信号を受信時に予告信号用のカギデータを認識する。カギデータD2と予告信号用のカギデータとが不一致の場合、予告信号用のカギデータの内容にカギデータD2が書き換えられる。そして、カギデータD2(予告信号用のカギデータ)と確定信号用のカギデータとが一致することをカギデータ一致条件とする。
その後、確定信号の受信時に確定信号用のカギデータを認識し、カギデータD2と確定信号用のカギデータとの一致/不一致によって、CH切替判定処理の良否を判定する。
このように、ステップS94における処理を、予告信号におけるカギデータを重視した対応として実行することもできる。
<実施の形態2>
実施の形態1では、線路3上の線区4Aから線区4Bとの境界付近に、CH切替予告用基地局31とCH切替確定用基地局32とを配置し、無線周波数CHの切替を自動的に行う方法を示した。実施の形態2では、線区4Bの始点付近にCH切替強制用基地局33をさらに設置することで、(無線)周波数CH切替漏れを回避する、無線通信システムを実現している。
CH切替予告用基地局31あるいはCH切替確定用基地局32の故障などが原因で予告信号あるいは確定信号を受信することができなかった場合や、予告信号あるいは確定信号を受信しても移動体である列車1が混合通信エリア5C内で長時間停止して制限時間を経過してタイムアウトするなど、一定の条件を満たさなかった場合に周波数CH切替漏れが発生する。実施の形態2では、上述した周波数CH切替漏れが発生した場合においても、「CH切替報知信号(強制)」(以下、「強制信号」と略記する場合あり)による周波数CH切替を自動的に行うようにしている。
図11は、この発明の実施の形態2である無線通信システム(列車無線システム)の全体構成を示す説明図である。実施の形態2では、実施の形態1の構成に加え、強制信号を用いた無線周波数CH切替方式をさらに採用している。
なお、実施の形態2における無線通信システムの構成のうち、図1で示した実施の形態1の無線通信システムと同一の構成の部分については、同一符号を付与し適宜説明を省略する。
同図に示すように、実施の形態2の無線通信システムは、実施の形態1の無線通信システムの構成に加え、線路3上の線区4B始点付近において無線周波数fAで強制信号を送信するCH切替強制用基地局33(強制信号用基地局)をさらに有して構成される。
列無車上装置2は、CH切替強制用基地局33からの強制信号を受信し強制信号受信判定処理を行う。そして、強制信号の内容に基づく強制信号用のCH切替判定処理を行い、良好(OK)の場合、無線周波数CHを切り替える周波数切替処理を実行する。
強制信号受信判定処理とは、実施の形態1で説明した予告信号受信判定処理(確定信号受信判定処理)と同様、強制信号が本来受信すべきものであるかどうかを判定する処理である。
強制信号用のCH切替判定処理とは、列無車上装置2と強制信号と予告信号と確定信号との間の相互関係に設けた条件から、CH切替の妥当性を判断する処理である。
次に、図11を参照して、列車1が線路3上の線区4Aから線区4Bの方向に走行している場合の動作について説明する。実施の形態2では、本来、CH切替報知信号(予告信号,確定信号)により、周波数CH切替が行われるはずだったが、前述の通り、周波数CH切替漏れが発生していることを前提として説明する。
周波数CH切替漏れが発生した状態で列車1が進行し、線区4Aで定められている無線周波数fAの設定のまま、線区Aと線区4Bの境界である混合通信エリア5Cを通過し、線区4BのCH切替強制用基地局33の電波受信エリアである通信エリア5B内に進んだとする。このとき、列車1の列無車上装置2は、線区4Bの通信エリア53において、無線周波数fAでCH切替強制用基地局33から送信される強制信号を受信する。
強制信号を受信した列無車上装置2は、受信した強制信号が本来受信すべきものであるかどうかを判定する強制信号受信判定処理を行う。強制信号受信判定処理における判定条件は、予告信号(確定信号)と同様、CH切替強制用基地局33からの通信状況などの条件(例えば、図4のステップS32〜S34,S36及びS37で示す条件)である。
列無車上装置2は強制信号受信判定処理により強制信号が受信良好と判定すると、CH切替が妥当かどうかを判断する強制信号用のCH切替判定処理を実行する。
CH切替判定処理の判定条件としては、例えば、実施の形態1と同様に、列無車上装置2及び、強制信号にカギデータを持たせ、両者のカギデータが一致するという、カギデータ一致条件を設定する等が考えられる。この場合、両者のカギデータが一致した場合、強制信号の指示内容に基づき列無車上装置2は無線周波数CHを切り替える無は周波数切替処理を実行する。
また、CH切替判定処理用の他の判定条件として、強制信号と予告信号及び確定信号との間の相互関係に設けた条件により、CH切替が妥当かどうかを判断してもよい。相互関係に設けた条件として、予告信号と確定信号の受信履歴、受信順序、あるいは受信時間の差異等の予め定めた条件等が該当する。例えば、予告信号受信判定処理は良好で予告信号は受信できていたが、確定信号受信判定処理は不良で確定信号を受信できなかった状態である予告・確定受信状況条件を判定条件とすることが考えられる。このような予告・確定受信状況条件を満足するとき、強制信号を有効とし、強制信号に基づく無線周波数CHの切替処理が自動的に実行することにより、CH切替漏れを解消し、正しい無線周波数CHに切り替えることができる。
このように、実施の形態2では、強制信号受信判定処理における判定条件及びCH切替判定処理における判定条件を強制信号に対する正規の強制受信条件として課している。
上記のように、実施の形態2の無線通信システムは、列無車上装置2がCH切替強制用基地局33と強制信号の無線通信を行うことにより、無線周波数CH切替漏れを防止することが可能となる。
また、無線周波数CH切替動作を自動化することで、運転士の負荷を低減し、人為的に発生するミスを防ぐことが可能である。
このように、実施の形態2の無線通信システムは、CH切替強制用基地局33を備え、列無車上装置2にCH切替強制用基地局33からの強制信号に対応する処理(正規の強制受信条件を課して実行される強制信号受信判定処理及びCH切替判定処理)を実行させることにより、何らかの原因で、本来行うべき周波数切替処理が実行されなかった場合でも、強制信号によって列無車上装置2(移動局)に周波数切り替え処理を確実に行わせることができる。
なお、強制信号に対応する処理として、強制信号受信判定処理のみを採用し、CH切替判定処理を省略しても、上記効果を達成することができる。
さらに、実施の形態2の無線通信システムは、強制信号用のCH切替判定処理の判定条件(正規の強制受信条件)として、予告信号が正常に受信され、かつ、確定信号が正常に受信されなかった予告・確定受信状況条件を設定することができる。
実施の形態2は上記予告・確定受信状況条件を設定することにより、予告信号が受信され、かつ、確定信号が受信されなかった場合には、強制信号によって列無車上装置2に無線周波数CHの切り替え処理を自動的に行わせることができる。
<実施の形態3>
実施の形態1では、線路3上の線区4Aから線区4Bとの境界となる混合通信エリア5Cでの通信を実現すべく、CH切替予告用基地局31とCH切替確定用基地局32とを配置し、無線周波数CH切替を自動的に行う無線通信システムを示した。また、実施の形態2では、混合通信エリア5Cを通過した線区4Bの通信エリア53での通信を実現すべく、CH切替強制用基地局33をさらに配置し、無線周波数CH切替漏れを防ぐ無線通信システムを示した。
実施の形態3では、実施の形態2の構成に加え、無線周波数CH切替を不要としたい路線上にCH誤切替防止用基地局34を配置し、予告信号及び確定信号の誤受信、無線周波数CHの誤切替を防ぐ無線通信システムを実現している。
CH切替予告用基地局31あるいはCH切替確定用基地局32の故障や周囲の環境などに因っては、本来受信する必要のない擬似予告信号あるいは擬似確定信号を受信してしまう可能性がある。そこで、実施の形態3では、CH誤切替防止用基地局34(誤切替防止用基地局)を設置し、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32と同一周波数、同一タイミングにて「CH切替報知信号(誤切替防止:確定)」(以下、単に「誤切替防止信号」と略記する場合あり)を送信することにより、擬似予告信号及び擬似確定信号の誤受信、無線周波数CHの誤切替を回避している。
図12はこの発明の実施の形態3の無線通信システム(列車無線システム)の全体構成(第1の態様)を示す説明図である。実施の形態3では、前述したように、誤切替防止信号を用いた無線周波数CH切替方式を採用している。なお、実施の形態3の無線通信システムの構成のうち、図11で示した実施の形態2の無線通信システムと同一の構成の部分については、同一符号を付与して適宜説明を省略する。
図12に示すように、線路3は中途で2つの線路3X及び線路3Bに分岐している。分岐するまでの線路3の線区が線区4A1となり、線路3X上の線区が線区4A2、線路3B上の線区が線区4Bに分類される。そして、線区4A1及び線区4A2用に基地局11Cが配置され、基地局11Cによる通信エリア5A1及び5A2が線区4A1及び4A2をカバーしている。
実施の形態3の無線通信システムは、通信エリア5A2内、及びその近傍が通信エリア54となるように、無線周波数fAで誤切替防止信号を送信するCH誤切替防止用基地局34をさらに配置している。
CH誤切替防止用基地局34は、CH切替予告用基地局31及びCH切替確定用基地局32それぞれと同一周波数、同一タイミングにて誤切替防止信号を送信する。このように、予告信号及び確定信号と誤切替防止信号とは、同一周波数、同一タイミングで送信されているため、干渉し互いに妨害波となる。なお、図10に示すように、複数フレームを用いて通信を行う場合、誤切替防止信号、予告信号及び確定信号は同一のフレーム(例えば、フレームFM1)を使用することになる。
ここで、誤切替防止信号の受信判定の条件として、受信性能であるD/U(希望信号と不要信号の比)に閾値を設定する。一方、受信するべきでない擬似予告信号及び擬似確定信号は、誤切替防止信号と比較して無視できるように受信判定の条件を設定することで、不要な擬似信号による誤切替を防ぐことが可能である。
また、線路3X上を走行する列車1の列無車上装置2が、擬似予告信号を誤受信したとしても、さらに、擬似確定信号を受信し、確定信号受信判定処理及びCH切替判定処理を満足して無線周波数CH切替が実施される前に、誤切替防止信号を受信すれば、CH切替確定待機状態をキャンセルし、誤切替を防止することができる。
以下、図12を参照して、列車1が線路3(線区4A1)から線路3X(延伸線区である線区4A2)の方向に向けて走行している場合の動作を説明する。線区4A1から線区4A2への渡りにおいては、無線周波数CHの切替は不要である。ここで、線路3B上の線区4Bの周波数予告データを含んだ予告信号の通信エリア51及び線区4Bの周波数確定データを含んだ確定信号の通信エリア52の少なくとも一部が、線路3上の線区4A2に及んでいる場合を前提とする。この場合、線路3X上の線区4A2に在線している列車1にとってCH切替確定用基地局32からの確定信号は、本来受信すべきでない擬似確定信号となる。
線区4A2の通信エリア51にて、予告信号を受信し予告信号受信判定処理が良好と判定した場合、一定時間、CH切替確定用基地局32からの確定信号を待機する周波数切替確定待機状態(図3のステップS5)になる。
次に、図12において列車1がさらに線区4A2を進行方向に進み、無線周波数fAで確定信号を送信するCH切替確定用基地局32の通信エリア52に入ってしまったとする。しかし、このとき、同時に、CH誤切替防止用基地局34より無線周波数fAで誤切替防止信号が送信され、誤切替防止信号の通信エリア54を、通信エリア52に重なるように、CH誤切替防止用基地局34を置局設計していたとする。
この場合、CH切替確定用基地局32からの確定信号は本来受信すべきでない擬似確定信号であり、誤切替防止信号は受信すべき信号となる。ここで、同一周波数fA、同一タイミングで送信される確定信号と誤切替防止信号との干渉が起こり、互いに妨害波となる。ここで、擬似確定信号は誤切替防止信号と比べて十分無視できるように、確定信号受信判定処理における受信判定条件を設定することにより、CH切替確定用基地局32からの確定信号の誤受信を防ぐことができる。
例えば、確定信号受信判定処理の受信判定条件として、受信信号D/Uが5.0[dB]以上であることを条件とする。図12において、仮に、CH切替確定用基地局32からの確定信号の受信電界強度を5.0[dBμV]とし、CH誤切替防止用基地局34からの誤切替防止信号の受信電界強度を20[dBμV]とすると、確定信号にとってのD/Uは−15.0[dB]となり、確定信号受信判定処理において受信判定不良となり、確定信号の受信は無効となる。
図13は実施の形態3における列車1の列車位置と受信信号のD/Uの関係の一例を示すグラフである。同図において、横軸は線路上の列車位置を表しており、縦軸は列車位置における各受信信号のD/Uを表している。図13において、通信ポイントP51は通信エリア51の中心位置、通信ポイントP52は通信エリア52の中心位置に相当する。
図13に示すように、横軸正の方向に列車1が走行するとCH切替予告用基地局31からの予告信号を受信する。このとき、予告信号のD/U値L17が受信信号D/Uによる受信判定用の閾値TH2を超えた時点で予告信号受信判定処理が良好となる。なお、閾値TH2は閾値D1として記憶部24に格納されている。
さらに、列車1が正の向きに進行すると、CH切替確定用基地局32からの本来受信するべきでない確定信号を受信する。図13の確定信号のD/U値L19の点線部分は、確定信号の他に受信信号がない状態で得られる確定信号の理想D/Uであるとする。
さらに、列車1が進行するとCH誤切替防止用基地局34からの誤切替防止信号を受信し始める。誤切替防止信号」のD/U値L18は本来受信するべきでない確定信号のD/U値L19と比較して大きくなるように、CH誤切替防止用基地局34の置局設計を行っていたとする。
この場合、誤切替防止信号は確定信号にとって妨害波となり、確定信号のD/U値L19は点線のときよりも低下していく。すなわち、実線で示す実際の確定信号のD/U値L19は、受信信号D/Uによる受信判定用の閾値TH2よりも小さくなるため、確定信号受信判定処理は受信不良と判定することになる。
図14はこの発明の実施の形態3の無線通信システム(列車無線システム)の全体構成(第2の態様)を示す説明図である。同図に示すように、第2の態様では、列車1が線区4A2を進行方向に進み、無線周波数fAで確定信号を送信するCH切替確定用基地局32の通信エリア52に入ってしまう前に、CH誤切替防止用基地局34から送信される誤切替防止信号を通信エリア54にて受信するようにしている。列無車上装置2は、誤切替防止信号を受信した場合、確定信号を待機する周波数切替確定待機状態を自動的にキャンセルする。
このように、第2の態様では、図12で示した第1の態様と比較して、CH誤切替防止用基地局34の通信エリア54が、CH切替確定用基地局32の通信エリア52より線区4A2の前方向に設けられている点が異なっている。
第2の態様の場合、列車1の列無車上装置2は、CH切替確定用基地局32からの確定信号を受信する前段階において、線区4A2上の通信エリア54にてCH誤切替防止用基地局34からの誤切替防止信号を受信するようにしている。
したがって、その後、列車1がさらに線区4A2を進行方向に進むと、無線周波数fAでCH切替確定用基地局32から送信される確定信号を受信する。しかし、すでに誤切替防止信号を受信しており、周波数切替確定待機状態を自動的にキャンセルし、予告信号をキャンセルすることができるため、新たに受信した確定信号も破棄することができる。
上述したように、実施の形態3の無線通信システム(第1及び第2の態様)は、誤切替防止信号を送信するCH誤切替防止用基地局34をさらに設置することにより、本来受信不要であるCH切替予告用基地局31からの予告信号、あるいはCH切替確定用基地局32からの確定信号の誤受信を効果的に回避することができる。
また、実施の形態3の第2の態様では、仮に予告信号を受信しても、列車1の進行方向において通信エリア54を通信エリア52の前方に設定することにより、確定信号の受信に先がけて、誤切替防止信号を受信できるようにしている。したがって、第2の態様では、誤切替防振信号を受信することができれば、CH切替確定待機状態をキャンセルして、確定信号の受信前に確定信号を無効にできるため、無線周波数CHの誤切替防止を確実に行うことができる。
上記のように、実施の形態3の無線通信システムの第1及び第2の態様における誤切替防止信号、予告信号及び確定信号は同一周波数に設定され、誤切替防止信号は予告信号及び確定信号と同一タイミングで送信される。
したがって、実施の形態3の無線通信システムでは、CH誤切替防止用基地局34から送信される誤切替防止信号によって、本来受信すべきでない予告信号及び確定信号が誤って列車1の列無車上装置2に受信される現象を効果的に回避することができる効果を奏する。
<その他>
列無車上装置2の送受信部22並びに制御部23のデータ処理部231,受信判定部232、及びCH切替判定部233は、例えば、ソフトウェアに基づくCPUを用いたプログラム処理によって実行される。記憶部24は、例えば、HDD、DVD、メモリなどによって構成される。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。