以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態は、冷蔵庫の冷凍庫に設置され、製氷皿を反転させて氷を落下させる製氷装置1に関する。図1は、本発明の一実施形態にかかる製氷装置の外観図、図2は、製氷装置駆動ユニットを図1視正面から見た分解斜視図、図3は、製氷装置駆動ユニットを図1視背面から見た分解斜視図、図4は、軸受の切欠部及び板ばね取付部の部分拡大図、図5は、差動歯車機構に用いられるギアの噛合構造を示した分解斜視図、図6は、差動歯車機構に用いられるカムの係合構造を示した斜視図、図7は、各ケース半体の正面図、図8は、製氷装置動作時の各部材の連携状態を示した断面図、図9は、製氷装置の動作及び制御判断を経時的に示したフローチャートである。
(製氷装置の構成)
まず、図1乃至図3に基づいて、本実施形態にかかる製氷装置の概略構成について説明する。本実施形態の製氷装置は、駆動源であるステッピングモータ10と、製氷皿20と、貯氷容器30と、ステッピングモータ10の駆動力を分配出力し、各部材の動作を制御する差動歯車機構50と、貯氷容器30内に下降し、氷量を検知する検氷レバー43と、検氷レバー43を昇降させる軸部である検氷軸41と、これら部材を収納し所定位置へ固定するケース半体71、72とを備える。
差動歯車機構50は、内歯車が第一の内歯車と第二の内歯車からなり、それぞれの内歯車と噛合する遊星歯車を備えた不思議遊星歯車装置であり、一方の内歯車は、製氷皿20と連結される製氷皿駆動部材17と一体的に成形され、他方の内歯車は、出力規制部材15と一体的に成形される。遊星歯車ユニット16は、ステッピングモータ10の駆動力を所定の減速比で製氷皿駆動部材17又は出力規制部材15の少なくともいずれか一方へ出力する。
製氷皿駆動部材17の製氷皿連結部172(本発明における連結軸に相当する。)は、ケース半体71に形成された軸受74を通じて製氷皿20側に突出し、軸状部177は軸受74に嵌合する。軸受74は、その周方向の一部に、切り欠かれた空間である切欠部75を有し、該切欠部75には板ばね73(本発明における付勢部材に相当する。)が取り付けられ、この板ばね73の一部は当該軸受74と僅かに重なっている。製氷皿駆動部材17の軸状部177は、軸受74内で板ばね73に接触している(図6に示すように軸状部177に押されて板ばね73が僅かに弾性変形した状態にある)。したがって、製氷皿駆動部材17が回転しようとするときには、この軸状部177と板ばね73の接触による摩擦抵抗が製氷皿駆動部材17に作用する。
製氷皿駆動部材17の回転に対して板ばね73の摩擦抵抗が加わることにより、ステッピングモータ10の駆動力が出力規制部材15へ優先的に伝達されるようになる。その結果、駆動力の分配制御が単純化され、後述する氷量の検知や各機構の操作を高精度で行うことが可能となっている。また、板ばね73が軸受74の長さの一部として構成されているため、別途軸方向に付勢機構を配設する必要がなく、製氷装置1の軸方向のサイズが抑えられている。さらに、板ばね73により軸状部177が軸受74の内周壁に押圧されることから、軸状部177のがたつきが低減されている。
次に図4に基づいて、軸受74の切欠部75及び板ばね73の取付部751について詳細に説明する。切欠部75は、その軸方向の長さが軸受74の軸方向の全長の一部であり、その周方向の角度は50〜60度となっている(図4(a)参照)。このような形状とすることにより、切欠部75の範囲においても、軸受74の少なくとも一部で軸状部177を支持することができ、軸受74のラジアル荷重に対する強度が維持されている。
取付部751はケース半体71の外側に開口しており(図4(a)参照)、製氷皿駆動部材17をケース半体71へ組み込んだ後に板ばね73を取り付けることが可能である。そのため、製氷皿駆動部材17組込み時に板ばね73に接触することによる擦傷が低減されるとともに、ユニットを分解することなく板ばね73の交換や取付状態の目視確認をすることができる。また、軸受74のケース半体71内側端部には切欠がないことから、製氷皿駆動部材本体部170(本発明における本体部に相当する。)の軸受74方向へのスラスト荷重を、軸受74が安定して支持することができる。
ケース半体71の取付部751には板ばね73の抜け止め76が形成されている(図4(b)(c)参照)。抜け止め76がケース半体71に形成されていることにより、例えば軸状部177の軸受74との対向面に周方向の凹部を形成し、その凹部内に板ばね73を嵌合することにより抜け止めとするような場合に比して、軸状部177と軸受74との対向面積を広く確保できるため、軸状部177と軸受74との軸方向のサイズが抑えられている。尚、本実施形態においては、取付部751上側に板ばね73との係合部が形成されているが、取付部751下側に形成されるよう抜け止め76を形成しても良い。また、製氷皿駆動部材17は軸方向に二分割される金型で成型される樹脂成型品であり、製氷皿駆動部材17及び軸受74の対向面はどちらも段差や凹部のない筒状となっている。
板ばね73はケース半体71から突出しない。そのため、板ばね73が製氷皿20と接触することによる動作不良や削片の氷への混入が防止され、また、製氷皿20が軸受74に近接可能となり、製氷皿20を含めた装置の小型化が図られている。
尚、取付部はケース半体71の内側に開口してもよい。その場合、製氷皿駆動部材本体部170が、軸受74のケース半体71内側端部に当接し、製氷皿駆動部材本体部170の直径がその開口に及ぶ長さであることにより、板ばね73が取付部から外れることを防止することができる。また、板ばね73が金属製である場合、スイッチ切片61、62(図2参照)と板ばね73を製氷皿駆動部材17の周方向において相互に逆位置に配設することにより、スイッチ切片61、62と板ばね73とを軸方向に近接させつつ、短絡を防止することができる。
また、板ばね73は、板状のステンレスやリン青銅等の銅合金をプレス加工することにより成型されており、バレル処理によってバリやエッジが除去されている。板ばね73には、板ばねの他に、コイルバネ、ケースと一体の樹脂バネ、ゴムを用いても良い。
次に、図5に基づいてステッピングモータ10の駆動力の伝達構造について詳細に説明する。ステッピングモータ10のロータマグネット111と一体的に回転するモータ歯車11は、第一の歯車12の大径歯車部121と噛合する。この第一の歯車12の小径歯車部122は、第二の歯車13の大径歯車部131と噛合する。第二の歯車13の小径歯車部132は、三つの遊星歯車14の大径歯車部142と噛合する。また、この遊星歯車14の大径歯車部142は出力規制部材15の内歯151とも噛合する。遊星歯車14の小径歯車部141は製氷皿駆動部材17の内歯171(図3参照)と噛合する。遊星歯車14は、遊星キャリア161に設けられた遊星歯車支持軸163に回転自在に支持される。遊星キャリア161には周方向等間隔に切り欠きが形成されており、この切り欠きに遊星キャリア162に形成された爪部164が係合されることにより、両者は一体的に回転する。
上記構成により、出力規制部材15及び製氷皿駆動部材17は、同一方向の駆動力に基づいて相互に逆方向へと回転することが可能となる。つまり、ステッピングモータ10がCW方向に回転すると、出力規制部材15と製氷皿駆動部材17の一方はCW方向に回転し、他方はCCW方向に回転する。また、遊星歯車14の、小径歯車部141が製氷皿駆動部材17の内歯171と噛合し、大径歯車部142が出力規制部材15の内歯151と噛合することにより、製氷皿駆動部材17の減速比が出力規制部材15の減速比よりも大きくなる。この構成により、製氷皿駆動部材17は、後述する、製氷皿20の捻り動作や検氷レバー43の凍結解消動作を行う際に大きなトルクを発揮することができ、また、下降した検氷レバー43を原位置へ引き上げる際に、検氷レバー43に氷が乗っていても、強引に引き上げることが可能となる。一方で、出力規制部材15のトルクを小さくすることにより、出力規制部材15が検氷軸41を介して検氷レバー43を強引に押し下げることによる氷量の誤検知が防止され、また、離氷後の出力規制部材15の原位置への回帰を迅速に行うことが可能となる。
上記歯車機構において、小径歯車部132(太陽歯車)を有する第二の歯車13、それに噛み合う三つの遊星歯車14、これらに噛合する出力規制部材15の内歯151、製氷皿駆動部材17の内歯171、及び三つの遊星歯車14を支持する遊星キャリア161、162は、差動歯車機構50を構築する。後述するように、第二の歯車13まで伝達(入力)されたステッピングモータ10の駆動力は、出力規制部材15及び製氷皿駆動部材17の回転に対して外部から加えられる抵抗力の高さに応じて、出力規制部材15又は製氷皿駆動部材17の少なくともいずれか一方に配分されることとなる。
また、製氷皿20と、製氷皿駆動部材17と、遊星歯車ユニット16と、小径歯車部132(太陽歯車)と、出力規制部材15との回転中心は同一であり、遊星歯車ユニット16は、小径歯車部132(太陽歯車)の周りに三つの遊星歯車14が周方向に等間隔で配置されている。そのため、製氷皿20が大きなトルクで捻られる反作用により遊星歯車ユニット16が歪み、遊星歯車14の一つが小径歯車部132(太陽歯車)や製氷皿駆動部材17、出力規制部材15から離れる方向へ移動しようとしても、他の少なくとも一つの遊星歯車14はこれらに近づく方向へ移動しようとするため、これら歯車の噛合が外れることが防止されている。
次に図6に基づいて、製氷皿駆動部材17の構造について詳細に説明する。製氷皿駆動部材17は差動歯車機構50を構成する内歯車の一つであり、内面に形成された内歯171により遊星歯車14の小径歯車部141と噛合する。製氷皿駆動部材17は、製氷皿20が製氷位置から離氷位置へ反転する方向にステッピングモータ10が回転(以下、「正転動作」という。)するときは、矢示A方向へ回転し、その逆方向にステッピングモータ10が回転(以下、「逆転動作」という。)するときは、矢示B方向へ回転する。
製氷皿駆動部材17は、製氷皿連結部172、側面に形成された三つの台形柱のスイッチカム(174、175、176)、外周に形成された検氷軸駆動カム178、検氷軸駆動カム178と一体的に形成された検氷軸持上カム1781、原位置において検氷軸41の第三の突起部413及び第四の突起部414の軸部と当接し、検氷軸41が矢示A方向へ回転できないようロックする検氷軸係止カム179を備える。スイッチカム174と175は略隣接し、スイッチカム176は製氷皿駆動部材17の回転中心を挟みスイッチカム174と175との略反対側に位置する。また、検氷軸駆動カム178と検氷軸係止カム179は軸方向において同じ高さである。
原位置においては、図2に示すように、このスイッチカム174と175の間には、弾性を有する接点部材であるスイッチ切片62の一方の先端が遊嵌された状態にある。スイッチ切片62の外側には、接点部材の他方であるスイッチ切片61が設けられている。スイッチ切片62の略「V」字状に形成された部分の先端がスイッチカム174、175、又は176に接触しているときにはスイッチ切片62はスイッチ切片61側へ弾性変形し、スイッチ切片62とスイッチ切片61とが接触することにより通電状態となる。一方、スイッチ切片62の略「V」字状に形成された部分の先端がスイッチカム以外の箇所を摺動しているときは、スイッチ切片62の弾性変形量が小さくなり(または弾性変形せず)、スイッチ切片62とスイッチ切片61は非接触となり通電していない状態となる。これら接点部材は図示されない制御手段(製氷装置1または製氷装置1が搭載される冷蔵庫の制御手段)に接続されている。この制御手段は、スイッチ切片62とスイッチ切片61が接触している状態(以下単にON(状態)ということもある)にあるか非接触の状態(以下単にOFF(状態)ということもある)にあるかが判別可能である。
同じく図6に基づいて、出力規制部材15の構造について詳細に説明する。出力規制部材15は差動歯車機構50を構成する内歯車の一つであり、内面に形成された内歯151により遊星歯車14の大径歯車部142と噛合する。出力規制部材15は、正転動作においては、矢示B方向へ回転し、逆転動作においては、矢示A方向へ回転する。
出力規制部材15の外周には、出力規制部材15の回転角度を規制する第一の回転規制部152及び第二の回転規制部153が形成されている。第一の回転規制部152は、正転動作において、検氷軸41の第一の突起部411と、矢示B方向において当接する。貯氷容器30が満氷であるときは、検氷レバー43が下降できないため、検氷軸41は回転しない。その結果、検氷軸41の第一の突起部411が妨げとなり、出力規制部材15の矢示B方向への回転が阻止される。貯氷容器30が満氷でないときは、検氷レバー43が下降することにより、検氷軸41が回転し、第一の回転規制部152とは当接しない位置まで移動する。その結果、出力規制部材15は、第一の回転規制部152が検氷軸41の突起部411の原位置を通過し、後述する第二の回転規制部153により停止させられるまで回転する。
第二の回転規制部153は、図7に示すように、ケース半体72に形成された突起部721又は722と当接することにより出力規制部材15の回転角度を規制する。正転動作において、貯氷容器30が満氷でないときは、出力規制部材15は、検氷軸41の突起部411に停止させられることなく回転し、第二の回転規制部153がケース半体72の突起部722と当接することにより停止する。また、逆転動作においては、出力規制部材15は、第二の回転規制部153がケース半体72の突起部721に当接するまで矢示A方向へ回転する。つまり、出力規制部材15の回転可能角度はケース半体72の突起部721から突起部722までの角度である。
図1に示す検氷部材40は、貯氷容器30の氷量を検知し、差動歯車機構50へ伝達するための機構である。この検氷部材40は、貯氷容器30の内部へ所定角度下降する略L字型の部材である検氷レバー43と、この検氷レバー43の端部に連結され、回転により検氷レバー43の昇降を制御する筒状の部材である検氷軸41からなる。検氷軸41は、ケース半体72に形成された検氷軸支持孔723に貫通される。係る構成により、ケースの開口を小さくすることができるため、水分がケース内に入り込み、ノーマルオープンであるスイッチ切片61、62に霜が付着することを防止できる。図6に示すように、検氷軸41が矢示A方向へ回転することにより、検氷レバー43が貯氷容器内へ下降し、矢示B方向へ回転することにより、検氷レバー43が原位置へと上昇する。
同じく図6基づいて、検氷軸41の構造について詳細に説明する。検氷軸41の外周には複数の突起部が形成されており、これら突起部が他の部材の突起部やカム部と当接することにより検氷軸41の動作が制御されている。検氷軸41の第一の突起部411は、上述のように、正転動作において、出力規制部材15の第一の回転規制部152と当接し、出力規制部材15の回転を規制する。
第二の突起部412には、正転動作開始時において、製氷皿駆動部材17のスイッチカム176が、検氷レバー43を下降させる方向に検氷軸41を回転させる位置で当接する。これは、検氷部材40が凍結により回転(下降)不能に陥っている場合に、製氷皿駆動部材17の大きなトルクを用いて強制的にその凍結状態を解消させるためである。
第三の突起部413は、正転動作において、製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178に当接し、検氷軸41を矢示B方向へ回転させる。つまり、検氷レバー43を原位置へ引き上げる。より詳しくは、正転動作が開始され、検氷により貯氷容器30が満氷でないことが検知された後で、第三の突起部413が検氷軸駆動カム178に当接し、その後製氷皿20への捻りが加えられる前に、検氷レバー43の引き上げが完了するように、両者の位置は調節されている。
検氷軸駆動カム178を製氷皿駆動部材17に形成することにより、検氷レバー43が氷に埋もれる問題を解消しつつ、部品点数を抑えることができ、装置の小型化が可能となる。また、検氷レバー43の引き上げと製氷皿20の捻りが同時に発生しないことにより、ステッピングモータ10の駆動力を効率的に用いることができる。
第四の突起部414は、製氷皿駆動部材17の検氷軸持上カム1781の上面を摺動する位置にあり、正転動作において、その検氷軸持上カム1781の上に乗り上げることにより、検氷軸41を矢示C方向へ移動させる。上述のように、正転動作において貯氷容器30が満氷でないときは、出力規制部材15の第一の回転規制部152は、検氷軸41の第一の突起部411の原位置を通過した位置まで回転し、停止している。一方で、上述のように、正転動作において、検氷軸41の第三の突起部413が製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178に当接し、検氷軸41が矢示B方向(反時計回り)へ押し戻されることにより、検氷レバー43及び検氷軸41は、逆転動作が開始される前にすでに原位置に戻っている。つまり、この時点では、出力規制部材15の第一の回転規制部152と検氷軸41の第一の突起部411との位置関係は初期状態と逆になっている。この状況において逆転動作を開始すると、出力規制部材15の第一の回転規制部152は、検氷レバー43を上昇させる方向に検氷軸41を回転させる位置で検氷軸41の第一の突起部411と当接し、回転が阻止されてしまう。しかし、第四の突起部414が検氷軸持上カム1781に乗り上げ、検氷軸41が矢示C方向へ移動していることにより、出力規制部材15は、第一の回転規制部152が検氷軸41の第一の突起部411に妨げられることなく原位置まで回転することが可能となる。尚、上述のように、正転動作及び逆転動作において、駆動力は製氷皿駆動部材17よりも出力規制部材15に優先的に伝達されるため、出力規制部材15が原位置に戻るまで、製氷皿駆動部材17は離氷完了時の位置(検氷軸41が矢示C方向へ移動された状態)にある。また、検氷軸41は、コイルバネ416により、矢示C方向とは逆方向に付勢されている。
第五の突起部415は、図7に示すケース半体71に形成された突起部711又は712と当接することにより検氷軸41の回転角度を規制する。検氷軸41つまり検氷レバー43は、これら突起部711から突起部712までの角度を超えて回転することはない。
(製氷装置の動作)
上記構成を備える製氷装置の動作について主に図6、図8及び図9を参照しつつ説明する。
図示されないセンサ等により、製氷皿20内の水が凍ったことを確認した製氷装置1の制御手段は、貯氷容器30内に蓄えられている氷量を確認する。製氷時には、製氷皿20は製氷位置(空間21の開口が上に向いた状態)にあり、検氷レバー43は貯氷容器30から退避した位置にある。本実施形態における「退避した位置」とは、検氷レバー43が最も上昇した位置であり、製氷皿20の側方で同じ高さとなる位置をいう。製氷皿20が製氷位置にあるとき、スイッチ切片62の略「V」字状の先端部は、スイッチカム174、175の間に遊嵌されている。つまり、制御手段は、スイッチ切片62とスイッチ切片61がOFF状態にあることを確認する。
製氷が完了していること、及びスイッチ切片62とスイッチ切片61がOFF状態にあることが確認されたとき、ステッピングモータ10を正転(製氷皿20を製氷位置から離氷位置へ反転する方向に回転)させる(S1)。その動力は第一の歯車12を介して第二の歯車13まで伝達される。つまり、ステッピングモータ10の駆動力が差動歯車機構50に入力される。原位置にある製氷皿駆動部材17には板ばね73による抵抗力が作用しているため、差動歯車機構50に入力されたステッピングモータ10の駆動力は、出力規制部材15へ優先出力される。つまり、第二の歯車13が回転することによって、これに噛合する各遊星歯車14が自転及び公転し、これにより内歯151を有する出力規制部材15が矢示B方向へ回転する。
出力規制部材15が回転すると、出力規制部材15の第一の回転規制部152は検氷軸41の第一の突起部411に当接するが、検氷軸41は検氷軸係止カム179によりロックされているため回転できず、出力規制部材15の回転は直ちに阻止される。
出力規制部材15の回転が阻止されることにより、出力規制部材15の回転に対する抵抗力が製氷皿駆動部材17よりも高くなるため、差動歯車機構50の出力が切り替わり、ステッピングモータ10の駆動力が製氷皿駆動部材17に伝達される。これにより、製氷皿駆動部材17は、検氷軸係止カム179と検氷軸41との接触が解消される程度に矢示A(時計回り)方向へ回転する。検氷軸係止カム179と検氷軸41との接触が解消されると、検氷軸41及び出力規制部材15が回転可能となる一方、製氷皿駆動部材17には板ばね73による抵抗力が作用しているため、再度、差動歯車機構50の出力が切り替わり、ステッピングモータ10の駆動力が出力規制部材15に伝達される。そして検氷軸41は矢示A(時計回り)方向へ回転し、再度、検氷軸係止カム179に接触する。よって、再度、出力規制部材15の回転が阻止され、差動歯車機構50の出力が切り替わり、ステッピングモータ10の駆動力が製氷皿駆動部材17に伝達される。この出力の切り替わりを繰り返しながら検氷軸41は徐々に矢示A方向へ回転し、検氷レバー43は貯氷容器内へ下降していく(図8(A)(B)参照)。
上記機構により製氷皿駆動部材17が矢示A(時計回り)方向への回転を開始すると、製氷皿駆動部材17のスイッチカム176が、検氷レバー43を下降させる方向に検氷軸41を回転させる位置で検氷軸41の第二の突起部412と当接する。これは、検氷部材40が凍結により回転(下降)不能に陥っている場合に、製氷皿駆動部材17の大きなトルクを用いて強制的にその凍結状態を解消させるためである。
このように検氷軸41が回転していくということは検氷部材駆動部も矢示A方向へ回転しているということであるから、原位置においてスイッチカム174、175の間に遊嵌されていたスイッチ切片62は、スイッチカム174に乗り上げてスイッチ切片61側へ弾性変形し、スイッチ切片61に接触する。つまり、スイッチ切片62とスイッチ切片61がON状態になる。本実施形態では、ステッピングモータ10の駆動開始からのステップ数(送りパルス数)がN1を超えたことを確認したことをもって(S2)、検氷軸41が所定量回転し、スイッチ切片62とスイッチ切片61がON状態となったとみなす。
その後、さらに検氷軸41が矢示A方向へ回転し、制御手段はステッピングモータ10のステップ数をカウントしつつ、スイッチの状態を監視する(S3)。本実施形態では、(接点がOFF状態となるまでに)このステップ数がN2を超えるかどうかが、貯氷容器30内の氷が十分であるか不足しているかの閾値として設定されている。
なお、当該閾値は変更することができる。例えば、季節の変化に伴う氷の需要の変化等に応じて、不足とされる量と十分とされる量の閾を適宜設定することができるようにすればよい。
製氷皿駆動部材17の検氷軸係止カム179により徐々に回転していく検氷軸41の第一の突起部411は、所定量以上回転すると第一の回転規制部152との接触が解消される。そうすると、出力規制部材15の回転を阻止する要因が消滅するため、差動歯車機構50の出力は出力規制部材15に出力され続ける。つまり、第一の回転規制部152と検氷軸41の第一の突起411の接触が解消された後、出力規制部材15のみが回転する。すなわち、ステッピングモータ10の動力は出力規制部材15の空転によって消費される(図8(B)参照)。
出力規制部材15が矢示B方向へ所定量回転すると、ケース半体72の突起部722に出力規制部材15の第二の回転規制部153が接触し、回転が停止する。出力規制部材15の回転が停止し、製氷皿駆動部材17よりも出力規制部材15の回転に対する抵抗力が高くなると、差動歯車機構50の出力が切り替わり、停止していた製氷皿駆動部材17が矢示A方向への回転を再開する。このように製氷皿駆動部材17が回転すると、スイッチ切片62がスイッチカム174を乗り越えて、接点がOFF状態となる(S4)。さらに製氷皿駆動部材17が回転すると、スイッチ切片62がスイッチカム176に乗り上げ、接点がON状態となる(S5)。スイッチ切片62がスイッチカム176に乗り上げた状態となるまで製氷皿駆動部材17が回転したとき、製氷皿20は離氷位置に到達する。つまり、ステップ数がN2を超え、接点がOFF状態となった後、再びON状態となったことを検出したことをもって、製氷皿20が離氷位置に到達し、離氷が行われたとみなす。
上記S4からS5の間に、検氷軸41の第三の突起部413は、製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178に当接し、検氷軸41を矢示B(反時計回り)方向へ回転させる。つまり、検氷レバー43を原位置へ引き上げる。より詳しくは、正転動作が開始され、検氷により貯氷容器30が満氷でないことが検知された後で、第三の突起部413が検氷軸駆動カム178に当接し、その後製氷皿20への捻りが加えられる前に、検氷レバー43の引き上げが完了するように、両者の位置は調節されている(図8(C)(D)参照)。
また、検氷軸41の第四の突起部414は、製氷皿駆動部材17の検氷軸持上カム1781の上面を摺動する位置にあり、正転動作において、その検氷軸持上カム1781の上に乗り上げることにより、検氷軸41を矢示C方向へ移動させる。上述のように、正転動作において貯氷容器30が満氷でないときは、出力規制部材15の第一の回転規制部152は、検氷軸41の第一の突起部411の原位置を通過した位置まで回転し、停止している。一方で、上述のように、正転動作において、検氷軸41の第三の突起部413が製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178に当接し、検氷軸41が矢示B(反時計回り)方向へ押し戻されることにより、検氷レバー43及び検氷軸41は、S5を通過する段階で、すでに原位置に戻っている。つまり、この時点では、出力規制部材15の第一の回転規制部152と検氷軸41の第一の突起部411との位置関係は初期状態と逆になっている。この状況において逆転(S6)を開始すると、出力規制部材15の第一の回転規制部152は、矢示A方向で検氷軸41の第一の突起部411と当接し、回転が阻止されてしまう。しかし、第四の突起部414が検氷軸持上カム1781に乗り上げ、検氷軸41が矢示C方向へ移動していることにより、出力規制部材15は、第一の回転規制部152が検氷軸41の第一の突起部411に妨げられることなく原位置まで回転することが可能となる(図8(E)参照)。
また、本実施形態においては検氷軸持上カム1781を周方向に長く形成していることにより、その傾斜角を緩やかにしており、小さなトルクで検氷軸41を移動させることができる。
ここで、本実施形態にかかる製氷装置は、いわゆる捻り式の製氷装置である。製氷皿20が正転方向へ略180度回転し、空間21の開口が下側に向けられた離氷位置まで移動すると、製氷皿20の、製氷皿駆動部材17に連結される側の端部の軸方向反対側端部に設けられた突起22(本発明における係止部に相当する。)が、製氷皿20の突起22側の端部を支持する図示されない枠体の一部(本発明における回転規制部材に相当する。)に接触する。このようにして突起22が枠体の一部に接触した状態でさらに製氷皿駆動部材17が正回転することにより、製氷皿20が捻られて変形する。これにより、製氷皿20内の氷が貯氷容器30内に落下する。尚、本実施形態においては、製氷皿20が捻られることにより、軸受74には下方向(板ばね73方向)へのラジアル荷重がかかるが、切欠部75が段落番号0023の形状を有することにより、軸受74は軸状部177を安定して支持することができる。
尚、上述のように、本実施形態においては、上記捻り動作が開始される前に検氷レバー43の引き上げが完了する。よって、落下した氷に検氷部材が埋もれ、検氷部材を原位置に戻す際の妨げとなる問題が解消され、また、検氷レバー43の引き上げと製氷皿20の捻りが同時に発生しないことにより、ステッピングモータ10の駆動力を効率的に用いることができる。
離氷完了後(接点がON状態となった後)、ステッピングモータ10を逆転(反転)させる(S6)。なお、ステッピングモータ10を正転から逆転に切り替える際は負荷を低減するため、所定時間停止させてから逆転させるとよい。逆転開始後、上記捻り動作によるねじれ力の反作用が生じる間は製氷皿駆動部材17が優先的に矢示B方向へ回転するが、その後は製氷皿駆動部材17には板ばね73による抵抗力が働くため、ステッピングモータ10の動力は差動歯車機構50を介して出力規制部材15に出力される。ここで、検氷軸41は製氷皿駆動部材17の検氷軸持上カム1781により軸方向に移動しており、出力規制部材15の第一の回転規制部152は検氷軸41の第一の突起部411と接触しない。出力規制部材15の第二の回転規制部153がケース半体72の突起部721に当接するまで逆転し、出力規制部材15の回転が停止すると、製氷皿駆動部材17が逆転を再開し、スイッチ切片62がスイッチカム174に乗り上げ、接点がON状態となる(S7)。
上述のように、氷が不足状態にあるときに貯氷容器30内に進入した検氷レバー43は、製氷皿駆動部材17の矢示A方向への回転により検氷軸41の第三の突起部413が検氷軸駆動カム178に当接し、検氷軸41は原位置方向へ回転する。検氷レバー43(検氷軸41)が原位置から検氷位置に向かう際(矢示A(時計回り)方向)には出力規制部材15に当接しながら検氷レバー43の自重によって移動させられるが、検氷位置から原位置に向かう際(矢示B(反時計回り)方向)にはトルクが大きい製氷皿駆動部材17によって移動させられる。そのため、何らかの理由により検氷位置まで移動した検氷レバー43に氷が乗った場合でも、当該氷の重み等により検氷レバー43が原位置に戻らなくなってしまうおそれを低減することができる。
ここで、検氷軸41の第一の突起部411は、出力規制部材15が空転を開始し、当該出力規制部材15の空転の停止によって差動歯車機構50の出力が切り替わり製氷皿駆動部材17が回転を開始した後は、出力規制部材15の第一の回転規制部152及び製氷皿駆動部材17の検氷軸係止カム179のいずれにも接触しない状態となる。したがって、検氷部材40に作用する部材が存在しなくなり、検氷軸41が重力によって(特に検氷レバー43の重みにより)回転してしまう可能性がある。このように検氷軸41が所定量以上回転(移動)すると、製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178が検氷軸41の第三の突起部413に接触することができない状態となってしまう可能性がある。そのため、本実施形態では、ケース半体71に突起部712を設け、検氷部材40に作用する部材が存在しなくなったときであっても検氷軸41が所定量以上回転してしまうことを防止している。つまり、検氷軸41が重力によって回転してしまっても検氷軸41の第五の突起部415がケース半体71の突起部712に接触する位置で当該回転が止まる。当該回転が止まったときの検氷軸41の位置は、製氷皿駆動部材17が回転したときに製氷皿駆動部材17の検氷軸駆動カム178が検氷軸41の第三の突起部413に接触することができる位置である。
接点がON状態となった後、ステッピングモータ10のステップ数のカウントが開始される(S8)。カウント開始後、ステップ数がN3を超えたこと(S9「Yes」)をもって製氷皿20が原位置に戻ったと判断し、ステッピングモータ10を停止する(S10)。
一方、貯氷容器30内の氷が十分である場合、貯氷容器30内には所定高さ以上の氷が存在する。そのため、駆動を開始してからのステッピングモータ10のステップ数がN2を超える前に、貯氷容器30内に向かって移動する検氷レバー43が貯氷容器30内の氷に接触して停止する。上述したように検氷軸41の第一の突起部411が出力規制部材15の第一の回転規制部152に接触しているため、検氷軸41の動作が停止すると、出力規制部材15は直ちに回転を停止する(図8(F)参照)。出力規制部材15の回転が停止すると、差動歯車機構50の出力が即座に切り替わり、ステッピングモータ10の動力が製氷皿駆動部材17に出力される。製氷皿駆動部材17が回転すると、スイッチ切片62がスイッチカム174を乗り越えて接点がOFF状態となる(S11)。貯氷容器30内の氷が十分である場合には、ステッピングモータ10のステップ数がN2を超える前に接点がOFF状態となる。
接点がOFF状態となった後、ステッピングモータを逆転させる(S12)。そうすると、出力規制部材15は逆転し、出力規制部材15が停止すると、差動歯車機構50の出力が切り替わり、ステッピングモータ10の駆動力は製氷皿駆動部材17に出力される。すなわち、製氷皿駆動部材17が逆転し始める。製氷皿駆動部材17が逆転すると、スイッチ切片62がスイッチカム174に乗り上げ、接点がON状態となる(S13)。
接点がON状態となった後、ステッピングモータ10のステップ数のカウントが開始される(S14)。カウント開始後、ステップ数がN3を超えたこと(S15「Yes」)をもって製氷皿20が原位置に戻ったと判断し、ステッピングモータを停止する(S16)。
このように、本実施形態にかかる製氷装置1では、動作開始後、ステッピングモータ10のステップ数がN2を超えるか否かで貯氷容器30内の氷の過不足を判断している。具体的には、ステップ数がN2を超えた後に接点がOFF状態となれば氷は不足していると判断し、ステップ数がN2を超える前に接点がOFF状態となれば氷は充足していると判断する。
氷が不足状態にあるときにおいては、動作開始後から接点がOFF状態となるまでの時間は、以下の1−1)〜1−3)の時間を足したものである。
1−1)検氷軸41の第一の突起部411が、検氷レバー43の自重と製氷皿駆動部材17の検氷軸係止カム179により回転(移動)している時間
1−2)出力規制部材15の第一の回転規制部152と検氷軸41の第一の突起部411の係合が解消され、第一の回転規制部152を有する出力規制部材15がケース半体72の突起部722に規制されるまで空転する時間
1−3)出力規制部材15の空転が停止した後、製氷皿駆動部材17が回転することによりスイッチ切片62がスイッチカム174を乗り越えるまでの時間
一方、氷が充足状態にあるときにおいては、動作開始後から接点がOFF状態となるまでの時間は、以下の2−1)〜2−2)の時間を足したものである。
2−1)検氷軸41の第一の突起部411が、検氷レバー43の自重と製氷皿駆動部材17の検氷軸係止カム179により回転(移動)している時間
2−2)氷によって検氷軸41の回転が阻止されることで出力が切り替わり、製氷皿駆動部材17が回転することによりスイッチ切片62がスイッチカム174を乗り越えるまでの時間
このように、不足時と充足時を比較すると、少なくとも不足時における上記1−2)の「出力規制部材15の空転」時間分、動作開始後から接点がOFF状態になるまでの時間が遅れることになる。すなわち、不足時と充足時とを判断する基準となる動作開始後から接点がOFF状態となるまでの時間の差が、不足時と充足時において上記「出力規制部材15の空転」時間分大きくすることができるため、氷が不足している場合と充足している場合とを誤って判断してしまうおそれが低下することになる。例えば、本実施形態のようにステッピングモータ10であれば、駆動開始時に脱調し、信号検知(本実施形態であればOFF状態の検知)までの時間が遅れてしまうことがある。しかし、本実施形態にかかる製氷装置1では、このような遅れが発生したとしても誤って判断してしまうことはほとんどない。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら
限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
上記実施形態では、動作開始後、接点がOFF状態となるまでに、ステッピングモータ10のステップ数がN2を超えるか否か、すなわちステッピングモータ10の駆動量により貯氷容器30内の氷の過不足を判断していることを説明したが、動作開始後、接点がOFF状態となるまでの時間によって貯氷容器30内の氷の過不足を判断するようにしてもよい。この場合であっても、「出力規制部材15の空転」時間分、動作開始後から接点がOFF状態になるまでの時間が遅れることになるから、氷が不足している場合と充足している場合とを誤って判断してしまうおそれが低下することになる。