JP6102535B2 - 焼結鉱の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼製造プロセスで使用する主要な鉄鉱石原料である焼結鉱の製造方法、特に、生産性の高い焼結鉱の製造方法に関するものである。
焼結鉱の一般的な生産方法である、ドワイトロイド式焼結機による焼結鉱の製造方法において、生産性を高めるためには、焼成速度や歩留を向上させることが必要である。焼成速度を向上させるためには、焼成反応を進めるための燃焼による発熱速度を増加させることが必要である。そのためには、焼結ベッドに供給する酸素の量を増加することが重要で、焼結ベッドの通気性を良くして、焼結速度を上げる方法が提案されている。
例えば、8〜15mmの小塊鉱石,スラグ等を適当量配合する方法(特許文献1、参照)、原料鉱石類に糖蜜を添加して造粒を十分に進める方法(特許文献2、参照)等が提案されている。
歩留を向上させるためには、焼結鉱の品質の均一性を向上させることが必要である。通常、ドワイトロイド式焼結機においては、焼結ベッドの深さ方向で、焼結鉱の品質がばらつくので、その“ばらつき”を低減して、焼結強度を高め、歩留の向上を図る方法が提案されている。
例えば、パレット表層に溶融性の高い鉱石を装入し、下層に溶融性の低い鉱石を装入する方法(特許文献3、参照)、焼結層の通過風量を風速計で測定し、幅方向の風量を均一にする方法(特許文献4、参照)等が提案されている。
また、焼結ベッドの表層は熱量不足になり、歩留が悪いので、それを改善するために、焼結原料層の最表層深さ部分に存在するコークスや無煙炭等の固体可燃物の粒径を小さくし、かつ、平均配合量を調整して、表層の加熱量を増加する方法が提案されている。
例えば、焼結原料層の最表層から30〜50mmまでの深さ部分に存在する固体可燃物の50%以上を、粒径1〜3mmの固体可燃物が占めるように粒度分布を調整するとともに、上記深さ部分に存在する固体可燃物の配合量を、それより深い部分に存在する固体可燃物の平均配合量の1.08〜1.42倍(=表層の固体可燃物濃度÷残りの層の固体可燃物濃度、「偏析指数」と定義する)とするように調整する方法(特許文献5、参照)が提案されている。
さらに、歩留の向上方法としては、点火炉において、パレットの幅方向の着熱性の均一化を図ることにより、表層部の歩留を向上させて、焼結鉱の歩留りを向上させる方法が提案されている。
例えば、焼結原料の上層を向くメインバーナを炉内の幅方向に所定間隔をあけて複数配置したメイン点火炉と、前記上層の幅方向両端部を向く補助バーナを炉内に配置した補助点火炉を適切に配置し、表層への着熱を均一化する方法が提案されている(特許文献6、参照)。
特開平01−205038号公報 特開昭58−107428号公報 特開昭62−130229号公報 特開昭61−250120号公報 特開平05−098358号公報 特開平20−96042号公報
焼結鉱の製造における生産性は、歩留と焼成速度の積で決定される。従来から、歩留を向上させる試みがなされているが、一般に、焼結層の最表層から50〜100mmにおいては歩留が低い。これは、焼結機において、原料層が点火炉を出た後、上方から常温の空気が吸引されて、原料層の表層が冷却されるので、該表層は、鉱石類が溶融して焼結反応するのに必要な最高到達温度が低いことと、これに加え、高温に保持される時間が短いことが理由である。
この課題に対して、特許文献5には、表層のコークスを微細にし、固体可燃物濃度を増加して発熱量を増大して歩留を向上させる方法が提案されている。特許文献5に提案の方法は、焼結原料層の最表層から30〜50mmまでの深さ部分に存在する固体可燃物の50%以上を、粒径1〜3mmの固体可燃物が占めるように粒度分布を調整し、固体可燃物濃度の偏析指数を1.08〜1.42とするものである。
偏析指数1.08以上で、歩留が向上し生産性が向上するが、偏析指数が1.42を超えると、焼成速度が低下して、生産性向上効果が低下するので、特許文献5に提案の方法では、偏析指数を1.08〜1.42と規定している。固体可燃物濃度は、表層のコークス量を4.05〜5.11質量%の範囲で変化させ、それよりも下層では、コークス量を3.60〜4.05質量%の範囲で変化させている。
固体可燃物濃度を偏析させて歩留を向上させ、生産性を高めようとする従来技術では、表層のコークス量を増加しても、偏析指数が1.42を超えると、通気性が悪化して焼成速度が低下し、生産性は向上しないと考えられていた。そこで、本発明では、従来技術よりも生産性を向上させることを課題とし、該課題を解決する焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
一般に、焼結の焼成速度は、焼結層内の通気量に大きな影響を受けるので、焼成速度を増加させるためには、通気量を増加することが重要である。ここで、通気量は、焼結層の通気抵抗によって決まる。
図1に、焼結層の焼結機進行方向における断面を模式的に示す。図1に示す焼結層の断面において、点火炉6で原料層1に点火して、焼結反応を開始する。焼結反応は、焼結層の下方に配置した排気ブロア8で空気7を吸引し、移動パレット(図示なし)が、パレットの進行方向9に移動とともに、下方に進行する。
焼結層は、焼結反応の進行の視点から大別して、原料層1、赤熱帯2、及び、焼結完了帯3の3層からなる。また、焼結層は、位置及び固体可燃物の配合割合の視点から大別して、表層4と下層5からなる。通常、表層4の固体可燃物の配合割合(濃度)は、下層5の固体可燃物の配合割合(濃度)より高い。
ただし、表層の固体可燃物の濃度を高くする場合、該濃度に限度があることが解ってきた。これは、表層の固体可燃物が濃化すると、全ての固体可燃物が燃焼するのに十分な酸素が供給される前に焼結層が冷却されてしまい、燃焼しない固体可燃物が残存して、発熱量が増加せず、歩留が増加しないためである。
焼結層の通気抵抗は、焼結反応の進行の視点から定められる上記3層の通気抵抗の総和によって決まる。それぞれの層の厚さは、点火炉を出た後の焼結反応の進行とともに変化し、そのうちの赤熱帯は、焼結の進行とともに厚さが増加する。
その理由は、焼結反応に利用される熱が、表層から下層に通気で伝わるのに加えて、下層に存在するコークスが発熱する量が加わるので、下層においては、表層に比べ、熱がより蓄積されるためである。そして、赤熱帯は高温であり融液が多いため、通気抵抗が圧倒的に大きい。
そこで、本発明者等は、焼結層内において赤熱帯の厚みが通気量に強い影響を与えると考え、焼結層内において、通気抵抗が高い領域においては、赤熱帯が必要以上に厚くならないようにすることが重要であるとの着想に至った。即ち、表層及び下層のうち、通気抵抗が高い下層の固体可燃物濃度を低減することで、下層の赤熱帯の厚みを低減し、通気量の増加を図ることができると考えた。
そこで、上記技術思想に基づき、本発明者らは、コークス量を徐々に減少させる試験を行った。その結果、コークス量が、これまで実施していた3.6質量%より少なくなると、下層における通気量が大きく増加し、焼成速度が大幅に増加することが判明した。
この場合、下層の固体可燃物濃度の低下により歩留は低下するが、焼成速度の増加が歩留低下分を補って、従来技術よりも生産性を向上させることができるという知見を、本発明者らは新たに見いだした。
従来技術において、点火は、焼結原料中のコークスに着火して反応を進行させることが目的であった。そのため、点火時のガス熱量を可能な限り低減する取り組みがなされてきており、従来技術において、一般的な焼結機は、点火強度4.5Mcal/m2以下の熱量で操業していた。本発明者らは、点火強度を増加させて加熱量を上げると、歩留を向上させることができることも新たに見いだした。
さらに、また、点火強度の増加に加えて、表層の固体可燃物濃度を増加することにより、下層の固体可燃物濃度をさらに低減することができることを見いだした。
このとき、点火強度や表層の固体可燃物濃度を増加することで、表層の加熱量が増加し、高温の通気抵抗が高い赤熱帯の厚みが増加するが、これに対しては、下層のコークス濃度の低減を組み合わせることで、生産性を向上できると考えた。
こうして、下層の固体可燃物濃度を、今まで以上に低減し、併せて、点火強度を増加することで、また、さらに、表層の固体可燃物濃度を増加することで、歩留を向上しつつ、焼成速度を増加させ、より生産性を高めることができることを新たに見いだして、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)点火炉を有するドワイトロイド式焼結機のパレット上に、下層と表層を有する原料層を形成し、原料層の下層の固体可燃物の濃度を、原料層の表層の固体可燃物の濃度未満として原料層を焼結する焼結鉱の製造方法であって、
(x)上記点火炉における点火強度が、4.5Mcal/m2超であり、
(y)上記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
(z)上記表層の固体可燃物の濃度が、6.6〜9.0質量%であり、上記下層の固体可燃物の濃度が、2.5〜3.5質量%である
ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2)前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下50mmまでの層を含むことを特徴とする前記(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)前記点火強度が、6.5Mcal/m2以上で、前記下層の固体可燃物の濃度が、2.7〜3.3質量%であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
(4)前記点火強度が、11.3Mcal/m2以上であることを特徴とする前記(3)に記載の焼結鉱の製造方法。
)前記下層は、少なくとも原料層の表面下150mmを起点としてそれよりも下方の層を含み、前記表層と前記下層の間に中間層を有し、前記中間層における固体可燃物の濃度を、前記表層の固体可燃物の濃度よりも低くし、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度よりも高くすることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
本発明によれば、点火強度を従来技術よりも高めて表層の歩留まりを向上させ、かつ、下層の固体可燃物濃度を従来技術よりも低下させて下層の燃焼速度を向上させることができるので、生産性が従来技術よりも向上する。
焼結層の焼結機進行方向における断面を模式的に示す図である。 ドワイトロイド式焼結機の概略を示す図である。(a)は、ドワイトロイド式焼結機全体の概略を示し、(b)は、(a)中、点線で囲んだ部分を拡大して示す。 点火強度を変化させた場合におけるコークス(固体可燃物)濃度(%)と生産性(t/m2・day)の関係を示す図である。 点火強度を変化させた場合におけるにコークス(固体可燃物)濃度(%)と歩留(%)の関係を示す図である。 点火強度を変化させた場合におけるコークス(固体可燃物)濃度(%)と焼成速度(mm/min)の関係を示す図である。 点火強度を変化させた場合における表層のコークス(固体可燃物)濃度(%)と生産性(t/m2・day)の関係を示す図である。 表層のコークス(固体可燃物)濃度を変化させた場合におけるコークス(固体可燃物)濃度(%)と生産性(t/m2・day)の関係を示す図である。 中間層を設け、段階的にコークス(固体可燃物)濃度に差をつけた場合における原料層の深さ(mm)とコークス(固体可燃物)濃度(%)の関係を示す図である。
本発明の焼結鉱の製造方法(以下「本発明方法」ということがある。)は、点火炉を有するドワイトロイド式焼結機のパレット上に、下層と表層を有する原料層を形成し、原料層の下層の固体可燃物の濃度を、原料層の表層の固体可燃物の濃度未満として原料層を焼結する焼結鉱の製造方法であって、
(x)上記点火炉における点火強度が、4.5Mcal/m2超であり、
(y)上記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
(z)上記下層の固体可燃物の濃度が、2.5〜3.5質量%である
ことを特徴とする。
図2に、本発明方法で使用するドワイトロイド式焼結機の概要を示す。図2(a)に、ドワイトロイド式焼結機全体の概略を示し、図2(b)に、図2(a)中、点線で囲んだ部分を拡大して示す。
本発明方法においては、ドワイトロイド式焼結機を使用し、以下のようにして焼結鉱を製造する。
鉄鉱石原料にコークスや石灰石等を混合し、さらに水分を混合して造粒した焼結鉱原料を移動パレット10上に装入し、300 〜1000mmの厚さに層状に敷き詰め原料層を形成する。そして、移動パレット10を進行方向15に移動させつつ、焼結機の下方に配置した排気ブロア8で空気を吸引し、焼結反応を原料層の表面から下方に進行させる。
まず、原料装入位置の直後に設置した点火炉11で、原料層の上部に存在する固体可燃物(通常、コークスや無煙炭等)に着火する。原料層中には、排気ブロア8による空気の吸引により、上方から下方へ空気が流れており、これによって、燃焼が上部の固体可燃物から下方の固体可燃物へ徐々に移っていく。
固体可燃物の燃焼発熱によって、原料層中の原料粒子の一部が溶融し、次いで、冷却されることによって原料粒子が相互に焼結して焼結鉱が生成し、廃鉱部14で焼結機から排出される。その後、クラッシャー(図示なし)によって約50mm以下の粒に破砕され、篩い分けされて、次工程で使用し易い粒度に調整される。
本発明方法は、生産性への影響因子である歩留と焼成速度のうち、両方、特に、焼成速度を従来よりも向上させて、生産性を、従来の生産性より高めることができる焼結鉱の製造方法である。
本発明方法において使用する原料は、造粒後、移動パレットに装入される。通常の原料で造粒される粒子は、一般に、平均粒径が約3mm以下であり、この範囲であれば、本発明の適用に問題はない。この理由は、上記の粒径範囲では、焼結原料粒子が小さいため、粒子は周囲雰囲気とほとんど同じ温度であり、また、粒子内温度分布がほとんどないためである。そのため、原料種の違いによる影響はない。
ここで、本発明方法において固体可燃物の質量として表示する数値は、焼結プロセスで、一般に、燃料の炭材として使用する固体可燃物であるコークス、無煙炭、灰分、廃プラスチック等の固体可燃物の発熱量を、全てコークスの発熱量に換算して算出したコークス相当質量として定義する数値である。なお、以下、固体可燃物を「コークス」ということがある。
そして、また、固体可燃物濃度の定義は、コークス、無煙炭、石灰石、生石灰、鉱石等(返鉱を含む)を混練して造粒した装入原料の全体の質量に対する、固体可燃物の質量の割合と定義する。
上記固体可燃物の質量は、原料中の全ての固体可燃物の発熱量を、コークスが燃えたときの発熱量として換算し、コークスの質量として表わす数値である。原料層の表層と下層における固体可燃物濃度に差を設ける場合は、ISF装入装置や多段装入装置の装入条件を変更すればよい。
なお、ドワイトロイド式焼結機の装入原料には、返鉱(歩留落ちの焼結鉱)を10〜20%程度含んでいるが、返鉱が20%程度より多い場合でも、本発明方法は対応可能である。ただし、本発明方法の実施により、歩留が増加するので、返鉱の量は少なくなる。
点火炉の点火強度は、原料層の単位面積に供給する熱量として定義する。これは、原料層が点火炉に滞在する時間において、点火炉内に供給する熱量で算出する。即ち、単位時間に点火炉内に供給するガスの発熱量[Mcal/s]を、原料層の通過面積[m2/s](=パレット幅×パレット進行速度(図1、参照))で除したものである。
点火炉の点火強度を変化させる場合は、供給ガスの流量を変化させるか、又は、供給するガス種を変化させて、発熱量が異なる燃料を使用する。
図2に示すドワイトロイド式焼結機を用い、点火強度やコークス(固体可燃物)濃度を変化させて、歩留と焼成速度を測定し、さらに、生産性を測定した。その結果を、以下に示す。なお、原料層全体の厚みは600mmとした。
図3、図4、及び、図5に、表層と下層のコークス濃度を同じとし、点火強度を、ガス流量を変えて2.7〜13.5Mcal/m2の範囲で6条件を設定し、それぞれの条件において、下層のコークス(固体可燃物)濃度を2.4〜4.0%の範囲で変更して試験した際の「生産性」(1日当たり、かつ、パレット1m2当たりの生産量[t/m2・day]:図3)、「歩留」(1日当たりの焼結鉱全体の歩留[質量%]:図4)、及び、「焼成速度」(平均焼成速度[mm/min]:図5)を示す。
従来技術では、固体可燃物の価格に比べ、ガス燃料の価格が高いため、できるだけ最小限の熱量で点火させるべく、点火強度を下げていったので、点火強度は4.0Mcal/m2以下となった。
ここで、焼結鉱の生産性とは、単位時間(1日)当たりの焼結鉱の生産量[t]を焼結機の有効面積(=焼結機幅×機長)[m2]で除したものをいう。歩留とは、焼結機で生産された焼結鉱をクラッシャーで破砕したものに対して篩分けを行い、回収した焼結鉱の割合、即ち、全焼結鉱の質量に対し、回収した粒径5mm以上の焼結鉱の質量の割合である。
焼成速度とは、焼結層内の燃焼反応面が、下方に進行していく速度であり、層厚を、BPT到達までの時間で除したものである。BTPとは、Burn Through Pointの略であり、焼結機の排ガス温度が最高温度になる位置のことである。
図4に示すように、下層のコークス(固体可燃物)濃度が低下するにつれて、歩留が低下する。この理由は、下層におけるコークス量が少なくなり、焼成するのに必要な熱量が足りなくなったためである。
一方、図5に示すように、下層のコークス(固体可燃物)濃度を4.0%から3.6%まで低減しても、焼成速度は僅かしか増加しない。そのため、特許文献5に記載の従来技術のように、コークス(固体可燃物)濃度が4.0〜3.6%の範囲では、図3に示すように、生産性は殆ど変らない。
これに対して、本発明方法では、固体可燃物濃度を3.6%未満とすることで、図5に示すように、焼成速度を大幅に上昇させることができ、歩留の低下分を補って、図3に示すように、従来技術よりも生産性を向上させることができる。焼成速度が大幅に向上する理由は、下層の固体可燃物濃度が3.6%未満と少なくなると、下層の赤熱帯が必要以上に厚くならず、下層における通気抵抗が小さくなって、通気量が増加するためと考えられる。
また、図4に示すように、コークス(固体可燃物)濃度が同じ場合、点火強度が増加すると、歩留が増加する。コークス(固体可燃物)濃度が3.6%以上では、点火強度を6.8Mcal/m2から13.5Mcal/m2に増加しても、歩留は殆ど変わらないが、(a)下層のコークス(固体可燃物)濃度を3.6%から低減していくと、歩留の低下の程度が緩和され、また、(b)点火強度を11.0Mcal/m2以上とすると、さらに、歩留の低下の程度が緩和されるとともに、歩留が向上する。
この理由は、点火強度を増加すると、表層の歩留が向上し(図示せず)、その結果、全体の歩留が増加したためである。また、表層の固体可燃物濃度を増加すると、表層の熱量が下層に伝わり、下層の固体可燃物濃度を減少したことによる熱量不足による歩留低下の影響が少なくなると考えられる。
図4に示す歩留と、図5に示す焼成速度の結果に基づく生産性を示したのが図3である。生産性は、歩留と焼成速度の積で決まる。図3から解るように、本発明方法においては、従来よりも生産性を向上させるために、点火強度を4.5Mcal/m2超とし、かつ、下層の固体可燃物濃度を2.5〜3.5質量%とすることで、原料層の表層における歩留を増加させると同時に、焼成速度を増加させる。
さらに、点火強度を6.5Mcal/m2以上とし、かつ、上記下層における固体可燃物の濃度を2.7〜3.3質量%とすると好ましい。点火強度を11.3Mcal/m2以上とすると、より好ましい。
この理由は、上述したように、表層の熱量増加による表層歩留の向上効果と、表層の熱量増加による下層への伝達熱量の増加効果が相乗するためであると考えられる。
このように、本発明方法においては、固体可燃物濃度を従来技術よりも低減することで、焼成速度を増加させて、生産性を、従来技術に比べ増加させることができる。また、さらに、点火強度を増加することで、焼成速度を大幅に増加させ、生産性を、従来技術に比べ圧倒的に増加することができる。
図3、図4、及び、図5に示す結果を得た試験においては、表層のコークス濃度と下層のコークス濃度は同じであるが、原料層を下層と表層に分けて形成し、下層のコークス(固体可燃物)の濃度を、原料層の表面から少なくとも表面下50mmまでの層を含んだ表層のコークス(固体可燃物)の濃度に比べて低くしても、同様に、生産性向上効果を得ることができる。
また、点火強度を2.7〜13.5Mcal/m2の範囲でガス流量を変えて点火強度を増加するのみでなく、表層のコークス(固体可燃物)濃度を濃化することでも、同様の生産性向上効を得ることができる。
原料装入装置を複数利用し、表層50〜100mmに装入する原料の固体可燃物濃度を6.6%まで増加し、下層のコークス濃度を、表層で増加した分を低減し、点火強度を変化させたときの生産性を、図6に示す。
表層の固体可燃物濃度を濃化することと併せて、点火強度を増加したときも、下層の固体可燃物濃度を、従来技術よりも低減することで、生産性を増加することができることが解る。
さらに、また、表層50〜100mmに装入する原料の固体可燃物濃度を6.6〜10.0%まで変化させたときの生産性を図7に示す。このときの点火強度は11.3Mcal/m2とした。点火強度が高いため、表層のコークス濃度を6.6%から9.0以上に高くしても、生産性は増加した。
これは、点火時の着熱量が多いため、表層50mmにおいて、さらに、最表層10mmにおいて、コークスの燃焼量が増加するからである。表層のコークス濃度を10.0%にしても、それ以上、生産性は増加しなかった。これは、表層の鉱石が完全に溶融し、これ以上熱量を増加しても、歩留が増加しないためである。
さらに、本発明方法において、固体可燃物の濃度に差を付けることは、表層と下層の2段のみ(2段偏析)に限定されない。図8に示すように、表層と下層の中間に中間層を設けて多段偏析としてもよく、また、表層と下層の一方又は双方において、表層の濃度範囲、及び/又は、下層の濃度の範囲内で、濃度勾配や濃度変動を付けてもよい。
段階偏析は、表層と下層の間に中間層を設け、中間層における固体可燃物の濃度を、表層の固体可燃物の濃度よりも低くし、かつ、下層の固体可燃物の濃度よりも高くすることである。このことにより、2段偏析においては、表層よりすぐ下の下層において固体可燃物の濃度が低くなることで温度差が大きくなり、歩留が悪くなる影響を少なくすることができる。
段階偏析にする方法としては、図2に示すドワイトロイド式焼結機における下層装入装置12と表層装入装置13の中間に、表層装入装置13と同様の中間層装入装置を配置し、それぞれの層で必要な固体可燃物濃度に調整した原料を装入する。
このように、本発明方法においては、下層の固体可燃物濃度を従来技術よりも低減することで、焼成速度を増加させて、生産性を従来技術に比べ増加させることができる。また、さらに、表層の固体可燃物濃度を増加させることで、焼成速度を大幅に増加させ、生産性を従来技術に比べ圧倒的に増加することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
次の手順にて焼結試験を行った。
(1)原料ホッパーから切り出した焼結原料に水分を7%添加し、固体可燃物濃度を3.8%にして造粒し、図2に示すように、下層装入装置12のドラムフィーダー12aから移動パレット10に装入し、層厚600mmの下層を形成した。そのとき、造粒機において、原料に添加する固体可燃物の量を変化させ、下層の固体可燃物濃度を2.5〜3.5質量%の範囲で変化させた。
また、別の造粒系統において、固体可燃物の濃度を3.6〜6.6質量%の範囲で変化させて焼結原料を造粒し、表層装入装置13により、下層の上に、厚さ50mmの表層を形成した。表層の固体可燃物濃度と下層の固体可燃物濃度を表1に示す。
Figure 0006102535
図2に示すように、下層と表層の2段に装入した原料層の表層に点火炉11で着火するとともに、焼結機の下部の排気ブロア8で空気を吸引した。そのとき、点火炉11のガス流量を変化させ、点火強度を4.5〜11.0Mcal/m2の範囲で変化させた。排気ブロア8の吸引圧は1000mmAqになるように、吸引空気量を調整し、焼結が終了するまで、この圧力を維持した。
その後、焼結機の排鉱部14において、焼結鉱を排出した。焼結終了後、焼結鉱を抜き出し、強度試験を行った。強度試験は、焼結鉱を2mの高さから4回落下して破砕し、5.0mm以上のものの質量割合を測定した。結果を表1に併せて示す。
試験番号1が前提条件となる比較例(特許文献5の条件に準ずる)である。それに対し、試験番号2に示すように、点火強度を6.8Mcal/m2とし、下層の固体可燃物濃度を3.4質量%にすると、生産性が向上する。
(2)点火強度をさらに増加し、9.0Mcal/m2と11.0Mcal/m2にしたときの結果を試験番号3と4に示す。点火強度を増加することで、下層の固体可燃物濃度をさらに低減することができ、生産性がさらに向上する。下層の固体可燃物濃度を試験番号3に比べより低減した試験番号4は、生産性が、試験番号3より向上している。
(3)さらに、表層50mmのコークス濃度を6.6質量%にし、かつ、点火強度を9.0Mcal/m2まで増加したときの結果を試験番号5で示す。点火強度を上げることで歩留が増加し生産性が増加したことが解る。
(4)さらに、表層50mmのコークス濃度を9.0質量%まで増加し、点火強度を11.0Mcal/m2まで増加させたときの結果を試験番号6で示す。表層のコークス濃度と点火強度を上げることで、さらに歩留が増加し、生産性が向上したことが解る。
前述したように、本発明によれば、点火強度を従来技術よりも高めて表層の歩留まりを向上させ、かつ、下層の固体可燃物濃度を従来技術よりも低下させて下層の燃焼速度を向上させることができるので、生産性が従来技術よりも向上する。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
1 原料層
2 赤熱帯
3 焼結完了帯
4 表層
5 下層
6 点火炉
7 空気
8 排気ブロア
9 パレットの進行方向
10 移動パレット
11 点火炉
12 下層装入装置
12a ドラムフィーダー
13 表層装入装置
14 廃鉱部
15 進行方向
18 表層
19 下層

Claims (5)

  1. 点火炉を有するドワイトロイド式焼結機のパレット上に、下層と表層を有する原料層を形成し、原料層の下層の固体可燃物の濃度を、原料層の表層の固体可燃物の濃度未満として原料層を焼結する焼結鉱の製造方法であって、
    (x)上記点火炉における点火強度が、4.5Mcal/m2超であり、
    (y)上記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下25mmまでの層を含み、
    (z)上記表層の固体可燃物の濃度が、6.6〜9.0質量%であり、上記下層の固体可燃物の濃度が、2.5〜3.5質量%である
    ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  2. 前記表層が、少なくとも、原料層の表面から表面下50mmまでの層を含むことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
  3. 前記点火強度が、6.5Mcal/m2以上で、前記下層の固体可燃物の濃度が、2.7〜3.3質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
  4. 前記点火強度が、11.3Mcal/m2以上であることを特徴とする請求項3に記載の焼結鉱の製造方法。
  5. 前記下層は、少なくとも原料層の表面下150mmを起点として、それよりも下方の層を含み、前記表層と前記下層の間に中間層を有し、前記中間層における固体可燃物の濃度を、前記表層の固体可燃物の濃度よりも低くし、かつ、前記下層の固体可燃物の濃度よりも高くすることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
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