JP6102201B2 - 変性脂肪族ポリエステル共重合体およびその製造方法 - Google Patents

変性脂肪族ポリエステル共重合体およびその製造方法 Download PDF

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本発明は生分解性の脂肪族ポリエステル共重合体をビニルモノマーでグラフト変性することにより、接着性、成形性を改善した変性脂肪族ポリエステル共重合体と、その製造方法に関する。
本発明はまたこの変性脂肪族ポリエステル共重合体を含む樹脂組成物と、この変性脂肪族ポリエステル共重合体を用いた多層成形品に関する。
適度な生分解性を有し、実用上十分な高分子量を有し、熱安定性および引張強度、耐衝撃性等に優れた脂肪族ポリエステル共重合体として、特許文献1には、下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、もしくは下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体が提案されている。
(I)−O−R−CO−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
また、特許文献2には、このような脂肪族ポリエステル共重合体の製造方法についての提案がなされている。
特許文献1および2に記載される脂肪族ポリエステル共重合体は、生分解性、熱安定性、引張強度、耐衝撃性等の機械的特性に優れるものであるが、他の樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリアミド(PA)等の樹脂との接着性が低いために、これらの樹脂層と積層一体化して多層成形品を成形する用途に用いることができないという課題があった。即ち、ガスバリア性が要求される生分解性のフィルムやボトルを成形するためには、通常ガスバリア性に優れたEVOH層を有する積層フィルムが用いられるため、EVOHとの接着性が要求される。また、優れたバリア性と高強度・高耐熱性が要求される、例えばレトルト製品のような加圧加熱殺菌用包装材料には、通常、PAが用いられるため、PAとの接着性が要求される。
一方、生分解性ポリマーに不飽和カルボン酸等をグラフトさせて変性することは、例えば、特許文献3〜6に記載されているが、従来において、特許文献1および2に記載される脂肪族ポリエステル共重合体のグラフト変性についての提案はなされておらず、また、特許文献3〜6の変性生分解性ポリマーでは、やはりEVOHやPA等の樹脂への接着性が十分ではなかった。
なお、特許文献4の変性生分解性ポリマーは、耐衝撃性が低く、高剛性であるため、柔軟性付与のために澱粉もしくは木粉等を混合して用いる必要がある。しかし、使用に際して化学構造が複雑な雑多な成分を併用すると、成形性、熱安定性、引張強度等の特性が一定とならず、目的の樹脂成分を安定的に供給することができないため、好ましいことではない。また、特許文献6で用いられている生分解性ポリマーは耐衝撃性に優れるものの、剛性が低く、生分解が遅い傾向にある。
また、従来において、生分解性ポリマーのグラフト変性の際に、有機過酸化物等のラジカル発生剤を用いることは知られているが、得られる変性生分解性ポリマーのMFRと有機過酸化物量についての検討はなされていない。
特開平8−239461号公報 特開2004−124087号公報 特表2010−527393号公報 特開平11−124485号公報 特表平11−511804号公報 特開2003−221423号公報
本発明は、生分解性を有し、実用上十分な高分子量を有し、熱安定性および引張強度、耐衝撃性等に優れた脂肪族ポリエステル共重合体を変性することにより、EVOHやPA等の樹脂への接着性を改善した変性脂肪族ポリエステル共重合体およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明はまた、この変性脂肪族ポリエステル共重合体を含む樹脂組成物とこの変性脂肪族ポリエステル共重合体を用いた多層成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特許文献1および2で提案されている脂肪族ポリエステル共重合体にビニルモノマーをグラフトさせて変性すると、変性前の脂肪族ポリエステル共重合体の優れた特性を維持した上で、EVOHやPA等の樹脂への接着性が高められ、上記課題を解決することができる上に、MFR値を増減して所望の値に制御することができ、成形性も良好となることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物であるビニルモノマー(B)をグラフトさせてなり、JIS K−7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1〜50g/minである変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)
II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
] 不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの無水物よりなる群から選ばれる[]に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
[3] 脂肪族ポリエステル共重合体(A)100重量部に対し、ビニルモノマー(B)を0.1〜10重量部グラフトさせてなる[1]又は2]に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
] 変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値cと脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFR値aとが、10>c/a>1/50の関係にある[1]ないし[]のいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
] 変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力値c’と脂肪族ポリエステル共重合体(A)の溶融張力値a’とが、20>c’/a’>1の関係にある[1]ないし[]のいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
] [1]ないし[]のいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を含む樹脂組成物。
] [1]ないし[]のいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)または[]に記載の樹脂組成物よりなる層を含む多層成形品。
3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体(A)と、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物であるビニルモノマー(B)とを、有機過酸化物(D)の存在下に溶融混練することにより、JIS K−7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1〜50g/minである変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を製造することを特徴とする変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の製造方法
II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
] 有機過酸化物(D)を、ビニルモノマー(B)に対して0.01〜1.0の重量割合で用いることを特徴とする[]に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体の製造方法。
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、生分解性であり、変性前の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱安定性や引張強度、耐衝撃性等の優れた特性を有する上に、低硬度で、EVOHやPA等の樹脂に対する接着性に優れ、更には成形性も良好であり、特に、積層フィルム、積層ボトルなどの多層成形品において、PLA(ポリ乳酸)層やEVOH層、PA層と積層一体化される用途、その他、ディスポーザブル成形加工品(容器・パイプ・トレイ・パネル・発泡体等)、家具、建材、内装材、外装材、農業用資材、酪農業用資材、水産業用資材、スポーツ用資材、リクリエーション用資材、紙パック、紙印刷物、人口木材等に好適に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)〕
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体は、下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位(以下「脂肪族オキシカルボン酸単位(I)」と称す場合がある。)0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位(以下「脂肪族または脂環式ジオール単位(II)」と称す場合がある。)35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位(以下「脂肪族ジカルボン酸単位(III)」と称す場合がある。)35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、ビニルモノマー(B)をグラフトさせてなる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)である。
(I)−O−R−CO−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
[作用効果]
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、上記の特定の脂肪族ポリエステル共重合体(A)にビニルモノマー(B)をグラフトさせることにより他の樹脂への接着性を向上させたものであるが、ビニルモノマー(B)のグラフト反応と脂肪族ポリエステル共重合体(A)分解反応、脂肪族ポリエステル共重合体(A)同士の微架橋反応のバランスをコントロールすることにより、MFR値の増減をコントロールすることができるという特異的な挙動を示す。
即ち、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRは、グラフト変性前の脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFRに依存せず、種々の成形法に対して、適切なMFRの値を取ることができるため、成形性が良好となる。
本発明において、ビニルモノマー(B)のグラフト反応で、脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFRに対して、得られる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRが増減する理由の詳細は明らかではないが、MFRの増加はビニルモノマー(B)による脂肪族ポリエステル共重合体(A)の分解が進行することによるものと考えられ、またMFRの減少はグラフト変性により脂肪族ポリエステル共重合体(A)内での微架橋が進行していることによるものと考えられる。ここで、架橋的に分子量が増加することで、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、変性前の脂肪族ポリエステル共重合体(A)よりも溶融張力が上昇し、この結果、成形時のネックインといった問題が改善される。
このようなグラフト変性によるMFR値の挙動は、グラフト変性に供する樹脂の種類によって異なり、例えば、ある同一グラフト変性条件下で、特許文献4でグラフト変性に供するポリ乳酸では、グラフト変性によりMFR値は増加する。また、特許文献6でグラフト変性に供する脂肪族芳香族ポリエステルではグラフト変性の前後でのMFR値の差異は殆どない。
一般に、樹脂のMFRと成形性には相関があり、成形法に応じて適切なMFRの樹脂を選択することが重要となる。本発明で用いる本脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、例えば、グラフト変性時のビニルモノマー(B)と有機過酸化物(D)との使用量比をコントロールすることで、微架橋反応とグラフト反応、分解反応のバランスをコントロールすることができ、MFRの増減が可能である。特に、MFRを減少させることで、変性前の脂肪族ポリエステル共重合体(A)に対して成形性を向上させることができる。
従って、本発明による接着性向上のための脂肪族ポリエステル共重合体(A)のグラフト変性で、脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFRの増減を利用してその成形性が良好となることの効果は極めて大きい。
[脂肪族ポリエステル共重合体(A)]
まず、ビニルモノマー(B)をグラフトさせる、グラフト変性に供する脂肪族ポリエステル共重合体(A)について説明する。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、脂肪族オキシカルボン酸単位(I)、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)、および脂肪族ジカルボン酸単位(III)を特定の比率で含有し、特に、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸等に由来する脂肪族オキシカルボン酸単位(I)を導入することにより、数平均分子量1万以上の高分子量化を達成し、実用上十分な強度と融点を有するものである。
また、脂肪族オキシカルボン酸単位(I)、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)、および脂肪族ジカルボン酸単位(III)に相当する原料化合物は、石油由来に限定されるもではなく、特表2010−517581号公報、特表2007−535926号公報または特開2012−34702号公報に開示されるような、トウモロコシ、サトウキビ等の植物由来原料、遺伝子組み換え酵母・微生物による発酵生成物等を用いてもよい。
<脂肪族オキシカルボン酸単位(I)>
脂肪族オキシカルボン酸単位(I)に相当する2官能以上の脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば下記(I’)式で表されるものである。
(I')HO−R−COOH(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基)
脂肪族オキシカルボン酸単位(I)に相当する脂肪族オキシカルボン酸(以下「脂肪族オキシカルボン酸成分(I)」と称す場合がある。)は、2官能であっても3官能以上であってもよく、2官能の脂肪族オキシカルボン酸成分(II)の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。その形態は、30〜95重量%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。また、3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸成分(I)としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好ましい。これら3官能以上の多官能脂肪族オキシカルボン酸成分(I)を用いる場合、その使用量は、原料として用いるジカルボン酸成分全体100モル%に対して、通常0.1〜5モル%が好ましい。
これら脂肪族オキシカルボン酸成分(I)は単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
<脂肪族または脂環式ジオール単位(II)>
脂肪族または脂環式ジオール単位(II)は、脂肪族ジオール単位と脂環式ジオール単位の両方を含むものであってもよい。
脂肪族または脂環式ジオール単位(II)に相当するジオールとしては、特に限定されないが、下記(II’)式で表されるジオールである。
(II’)HO−R−OH(式中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
好ましい2価の脂肪族炭化水素基としては、Rが−(CH−(nは2〜10の整数)で表される脂肪族炭化水素基が挙げられる。中でも特に好ましいのは、nが2〜6の脂肪族炭化水素基である。また、好ましい2価の脂環式炭化水素基としては、上記式のRが炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、中でも特に好ましいのは4〜6の2価の脂環式炭化水素基である。
脂肪族または脂環式ジオール単位(II)に相当する脂肪族または脂環式ジオール(以下「脂肪族ジオール成分(II)」と称す場合がある。)としては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。脂肪族ジオール成分(II)の具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適に挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
<脂肪族ジカルボン酸単位(III)>
脂肪族ジカルボン酸単位(III)に相当する脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、下記(III’)式で表されるもの、或いは下記(III’)式で表される脂肪族ジカルボン酸の炭素数1〜4の低級アルコールエステル、例えばジメチルエステル等、或いは下記(III’)式で表される脂肪族ジカルボン酸の無水物が挙げられる。
(III’)HOOC−R−COOH(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは、−(CH−(ただしmは0〜10の整数、好ましくは0〜6の整数)である。)
脂肪族ジカルボン酸単位(III)に相当する脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(以下「脂肪族ジカルボン酸成分(III)」と称す場合がある。)としては、特に限定されないが炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等の無水物が挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、およびこれらの低級アルコールエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
<他の構成単位>
脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない限り、上記の脂肪族オキシカルボン酸単位(I)、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)、脂肪族ジカルボン酸単位(III)以外の他の構成単位を含むものであってもよい。他の構成単位に相当する共重合成分としては、ヒドロキシ安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸類、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、またはトリメチロールプロパン、グリセリンなどの多価アルコール、多価カルボン酸またはその無水物等が挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に使用できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
<組成比>
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の各構成単位の組成比は、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)と脂肪族ジカルボン酸単位(III)のモル比が、実質的に等しいことが必要である。脂肪族または脂環式ジオール単位(II)と脂肪族ジカルボン酸単位(III)とは、各々35〜49.99モル%の範囲、好ましくは40〜49.75モル%、より好ましくは45〜49.5モル%の範囲で設定される。また、脂肪族オキシカルボン酸単位(I)は0.02〜30モル%の範囲で設定される。脂肪族オキシカルボン酸単位(I)が30モル%を超えると結晶性が失われ、成形上好ましくなく、また0.02モル%未満では添加効果が現れない。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、脂肪族オキシカルボン酸単位(I)、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)、脂肪族ジカルボン酸単位(III)以外の他の構成単位を含む場合、その割合は、脂肪族オキシカルボン酸単位(I)、脂肪族または脂環式ジオール単位(II)、脂肪族ジカルボン酸単位(III)を導入することによる本発明の効果を有効に得る上で、40モル%以下、特に10モル%以下とすることが好ましい。
<数平均分子量>
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の数平均分子量は1万〜20万、好ましくは2万〜18万である。脂肪族ポリエステル共重合体(A)の数平均分子量が上記下限よりも小さいと高分子量化の目的を達成し得ず、上記上限を超えると過度の高分子化を及ぼしてしまい、変性と高分子化のコントロールが容易でなくなる。
<その他の成分>
グラフト変性に供する脂肪族ポリエステル共重合体(A)には、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤等の各種添加剤や、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等の合成樹脂や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物を「他の成分」として含まれていてもよい。
<製造方法>
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造は、公知技術で行うことができ、製造の際の重合反応についても、好ましくは重合触媒の存在下に、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。
また、原料の使用量としては、得られる脂肪族ポリエステル共重合体(A)が所望の構成単位を所望の比率で有することができるように設定すればよい。具体的には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の目的、原料の種類等により好ましい範囲が異なるため一概には言えないが、脂肪族ジカルボン酸成分(III)1モルに対する脂肪族ジオール成分(II)の量が、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル以上であり、また、その上限が、通常3.0モル以下、好ましくは2.7モル以下、特に好ましくは2.5モル以下であることが望ましい。
一方、本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を製造する際、上記の脂肪族ジカルボン酸成分(III)を留去しながら重縮合反応を行う場合、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の目的、原料の種類等により好ましい範囲が異なるため一概には言えないが、脂肪族ジカルボン酸成分(III)1モルに対する脂肪族ジオール成分(II)の量が、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル以上、更に好ましくは0.95以上であり、また、その上限が、通常1.15モル以下、好ましくは1.1モル以下、特に好ましくは1.08モル以下であることが望ましい。
脂肪族オキシカルボン酸成分(I)の添加時期および添加方法は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1)予め重合触媒を脂肪族オキシカルボン酸成分(I)の溶液に溶解させた状態で添加する方法、(2)原料仕込み時重合触媒を添加すると同時に添加する方法、などが挙げられる。
(添加剤)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を製造するに際して、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、各種添加剤を任意の比率および組み合わせで使用することが出来る。
各種添加剤としては、例えば、有機リン化合物等が挙げられる。
有機リン化合物を製造時に混合することにより、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱安定性が向上し、より高温での脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造が可能となる。
この場合、有機リン化合物の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意であるが、有機リン化合物の使用量は、製造される脂肪族ポリエステル共重合体(A)中のリン元素の含有量として、下限が、通常0.01ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。一方、その上限は、通常5000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。リン化合物の使用量が少なすぎると脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱安定化が発現しない場合があり、リン化合物の使用量が多すぎると製造される脂肪族ポリエステル共重合体(A)の耐加水分解性が著しく低下する場合がある。
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)中にリン元素を含有させるためには、以下に示す有機リン化合物を脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造時の任意の工程で混合する方法がとられる。即ち、本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を製造する際の有機リン化合物の混合順序には限定はなく、例えば、原料の単量体と一括に反応装置に入れて反応することもできるし、脂肪族ジオール成分(II)と脂肪族ジカルボン酸成分(III)とをエステル化反応またはエステル交換反応させた後に反応装置に供給しても良い。操作の容易さの理由から反応仕込み時に含有させる方法が好ましい。
有機リン化合物としては、有機ホスフェイト金属塩、ホスファイトならびにホスホナイトの群から選ばれる有機リン化合物ならびにそれらの混合物が好ましい。この中でも、特に製造時の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱安定化効果が高く且つ製造後の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の耐加水分解性等の耐久性に優れる理由から、ホスファイトならびにホスホナイトがより好ましく、ホスファイトが特に好ましい。
更に本発明において、ジカルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸成分(III)に加えて芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルを混合して使用する場合、その混合順序には限定はなく、例えば、第1として、原料の単量体を一括に反応装置に入れて反応することもできるし、第2として、脂肪族ジオール成分(II)と脂肪族ジカルボン酸成分(III)とをエステル化反応またはエステル交換反応させた後、脂肪族ジオール成分(II)と芳香族ジカルボン酸成分をエステル化反応またはエステル交換反応させ、更に重縮合反応させる方法等種々の方法を採用することができる。
(反応条件)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を溶融重縮合により製造する工程は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、エステル化反応および/またはエステル交換反応を行い、その後、減圧して重縮合反応を行う。
〈エステル化反応および/またはエステル交換反応における反応温度、反応雰囲気、反応圧力、反応時間〉
エステル化反応および/またはエステル交換反応における反応温度、反応雰囲気、反応圧力、反応時間などの条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、脂肪族ジカルボン酸成分(III)と脂肪族ジオール成分(II)とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上、また、その上限は、通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。さらに、反応圧力は、通常10kPa以上、通常常圧以下であるが、中でも常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上、また、その上限は通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
〈重縮合反応における反応温度、反応雰囲気、反応圧力、反応時間〉
重縮合反応の反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常280℃以下、好ましくは260℃以下である。反応温度が低すぎる場合、重縮合反応の速度が極めて遅くなり、高重合度の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機が必要となるため、経済的に不利となる可能性がある。一方、反応温度が高すぎる場合、重合速度は向上するものの、重縮合反応時に生成した脂肪族ポリエステル共重合体(A)が同時に熱分解されてしまい、高重合度の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造が難しくなる可能性がある。従って、本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)の製造方法においては、重縮合反応の反応温度の制御が極めて重要である。
また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気が好ましい。
反応圧力は、通常0.1hPa以上、好ましくは0.4hPa以上であり、上限が通常14.0hPa以下、好ましくは4.0hPa以下の真空度下であることが望ましい。重縮合反応時の圧力が高すぎると、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の重縮合時間が長くなり、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱分解による分子量低下、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の着色等が引き起こされ、実用上十分な特性を示す樹脂を製造することが難しくなる可能性がある。一方、重合速度を向上させる観点からは、超高真空重合設備を用いた重縮合反応が好ましいが、圧力が低すぎると、極めて高額な設備投資が必要となる可能性がある。
重縮合反応時間は、通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不十分となり、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の重合度が低くなる可能性がある。また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の引張り破断伸び率が低く、また、その末端カルボキシル基量が多いことから、引張り破断伸び率の劣化が著しくなる可能性もある。一方、反応時間が長すぎると、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の熱分解による分子量低下が引き起こされ、引張り破断伸び率が低下するばかりでなく、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の耐久性に影響を与える末端カルボキシル基が熱分解により増加する可能性がある。また、得られる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のゲル化が引き起こされる可能性もある。
〈重縮合反応における減圧平均速度〉
重縮合反応を進行させる際、通常、反応系の圧力を上記の反応圧力まで減圧するが、この際、減圧平均速度を制御しながら減圧することが好ましい。具体的な減圧平均速度として、常圧から2hPaまでの減圧平均速度が、通常2hPa/分以上、好ましくは3hPa/分以上、より好ましくは4hPa/分以上、更に好ましくは5hPa/分以上、特に好ましくは6hPa/分以上、また、その上限は、通常15hPa/分未満、好ましくは12hPa/分以下、より好ましくは10hPa/分以下、更に好ましくは9hPa/分以下、特に好ましくは8hPa/分以下であることが望ましい。減圧平均速度が遅すぎる場合、重縮合時間が長時間化する可能性がある。また、速すぎる場合、反応装置内の揮発成分の蒸発量が多くなり、重合体から奪われる蒸発熱の量が大きくなり、重合体温度が低下しすぎる可能性がある。
[ビニルモノマー(B)]
次に脂肪族ポリエステル共重合体(A)にグラフトさせるビニルモノマー(B)について説明する。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)にグラフトさせるビニルモノマー(B)としては、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にグラフトさせることにより接着性の向上を図ることができるものであればよく、特に制限はないが、不飽和カルボン酸またはその官能性誘導体の中から選択することができる。
不飽和カルボン酸の例としては炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。不飽和カルボン酸の官能性誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および金属塩、例えばアルカリ金属塩などが挙げられる。特に好ましいビニルモノマー(B)は炭素数4〜10の不飽和ジカルボン酸およびその官能性誘導体、特に不飽和ジカルボン酸の無水物であり、以下のようなものが挙げられる。
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.l]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリル琥珀酸、無水4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ビシクロ[2.2.l]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、無水x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸。
他の好ましいビニルモノマー(B)の例は不飽和カルボン酸の炭素数1〜8のアルキルエステルまたはグリシジルエステル誘導体、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、モノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノメチルイタコネート、ジエチルイタコネート;不飽和カルボン酸のアミド誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、マレアミド、N−エチルマレアミド、N,N−ジエチルマレアミド、N−ブチルマレアミド、N,N−ジブチルマレアミド、フマルアミド、フマルジアミド、N−エチルフマルアミド、N,N−ジエチルフマルアミド、N−ブチルフマルアミド、N,N−ジブチルフマルアミド;不飽和カルボン酸のイミド誘導体、例えばマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド;不飽和カルボン酸の金属塩、例えばナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、カリウムアクリレート、カリウムメタクリレートなどが挙げられる。
ビニルモノマー(B)としてオキサゾリンおよびビニルシランを用いることもできる。
これらのビニルモノマー(B)は、単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
これらのビニルモノマー(B)のうち、特にグラフト反応の進行のし易さの点で不飽和結合を持つ不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、特に異樹脂との接着性を向上させる点でマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの無水物から選ばれるものを用いることが好ましく、とりわけ無水マレイン酸を用いることが好ましい。
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)100重量部に対してビニルモノマー(B)を0.1〜10重量部、特に0.3〜5重量部、とりわけ0.5〜3重量部グラフトさせたものであることが好ましい。即ち、グラフト率0.1〜10重量%、特に0.2〜5重量%、とりわけ0.3〜3重量%であることが好ましい。
グラフト率が上記下限より低いと、後述の本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の好適な接着に関与する官能基の導入を満たすことができず、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にビニルモノマー(B)をグラフトさせることによる本発明の接着性の向上効果を十分に得ることができない。グラフト率が上記上限より高いと、得られる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値のコントロールが容易でなくなり、必要な溶融張力、引裂き強度が得られず、十分な成形加工性が得られない。
[製造方法]
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の製造方法には特に制限はないが、脂肪族ポリエステル共重合体(A)とビニルモノマー(B)とを、有機過酸化物(D)の存在下に溶融混練する方法が好ましい。
有機過酸化物(D)としては、脂肪族ポリエステル共重合体(A)とビニルモノマー(B)との反応を促進することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどが挙げられる。
有機過酸化物(D)は特に10時間半減期温度が30〜180℃の範囲にあるものが溶融混練法で適切な温度条件、時間条件で加工する点で好ましく、このような有機過酸化物(D)としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらの有機過酸化物の市販品としては、商品名では例えばパーヘキサ25B(日本油脂社)、パーブチルI(日本油脂社)、パーへキシルI(日本油脂社)、パーブチルE(日本油脂社)、パーブチルP(日本油脂社)、パーブチルO(日本油脂社)等が挙げられる。
これらの有機過酸化物(D)は、単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の製造において、有機過酸化物(D)の使用量を制御することは極めて重要であり、有機過酸化物(D)の使用量が少な過ぎると、微架橋反応とグラフト反応が円滑に進行せず、得られる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値が高くなりすぎ、成形性の向上効果も接着性も得られない。逆に有機過酸化物(D)の使用量が多過ぎると過度の微架橋反応が進行し、得られる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値が低くなり過ぎ、成形性に悪影響をもたらす。
このため、有機過酸化物(D)は、グラフト反応に用いるビニルモノマー(B)に対する重量比で0.01〜1.0、特に0.02〜0.5の範囲で用いることが好ましい。
なお、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にグラフトしているビニルモノマー(B)の量は赤外線吸収スペクトルにより定量することができる。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)をビニルモノマー(B)および有機過酸化物(D)と共に溶融混練して変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を製造する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機や、複数のロールを備えたロールミル、ニーダー、2軸押出機等の各種押出機(エクストルーダー)を用い、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(通常、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点は75〜175℃程度である。)以上の温度、好ましくは160〜250℃、より好ましくは190〜230℃の温度にて、5〜50分間、好ましくは10〜30分間溶融混練する方法が挙げられる。スクリュー式2軸押出機を用いる場合、スクリュー回転数は100〜500rpmの範囲で設定することが好ましい。ここで、溶融混練に用いる装置や溶融混練条件により、同一の原材料配合であっても得られる変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRや溶融張力、グラフト率等の物性が異なるものとなる。これは反応時間、混練時の材料分散効率等によるものである。このため、目的の物性の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を得るために、適用する装置に応じて溶融混練条件を適宜調整する必要がある。
なお、溶融混練に供する脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、必要に応じて一部または全量を粉砕機、バンバリーミキサー等により粉砕し、粉末状として用いてもよく、このように粉末状のものを用いることにより、溶融混練を効率的に行うことができる。
[物性]
<MFR>
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRは、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にビニルモノマー(B)をグラフトすることにより、脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFRよりも低下する。
そのMFRの低下の程度としては、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値を「c」、脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFR値を「a」とした場合、10>c/a>1/50の関係にあることが好ましく、特に5>c/a>1/30、とりわけ2>c/a>1/10の関係にあることが好ましい。c/aが上記範囲よりも大きい、または小さいと、グラフト変性による接着性、成形性の向上効果を十分に得ることができず、
また、MFR値としては、脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFR0.1〜100g/10min、特には2〜30g/10minで、変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRが0.01〜150g/10min、特に1〜50g/10minであることが好ましい。脂肪族ポリエステル共重合体(A)および変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRが上記範囲であることにより、良好な成形性、加工性を得ることができる。
なお、本発明において、脂肪族ポリエステル共重合体(A)および変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFRは、後述の実施例の項に記載される方法で測定された値をさす。
本発明においては、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にビニルモノマー(B)をグラフトさせてMFR値を低下させ、接着性の向上を図ると共に、成形加工性も良好なものとするが、MFRを過度に低下させることなく、好適なMFR値を満たすために、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の製造に当って、ビニルモノマー(B)と有機過酸化物(D)の使用量比を前述の好適範囲に維持した上で、脂肪族ポリエステル共重合体(A)に対するビニルモノマー(B)および有機過酸化物(D)の使用量を増やすことが好ましい。
<溶融張力>
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)にビニルモノマー(B)をグラフトすることにより、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の溶融張力よりも増加する。
その溶融張力の増加の程度としては、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力値を「c’」、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の溶融張力値を「a’」とした場合、20>c’/a’>1の関係にあることが好ましく、特に15>c’/a’>1、とりわけ10>c’/a’>1の関係にあることが好ましい。c’/a’が上記範囲よりも小さいと十分な成形加工性が得られず、上記範囲よりも大きいと逆に、フィルムの外観等を悪くしてしまう恐れがある。
また、溶融張力値としては、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の溶融張力が3〜20mN、特には5〜16mNで、変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力が30〜100mN、特に30〜60mNであることが好ましい。脂肪族ポリエステル共重合体(A)および変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力が上記範囲であることにより、良好な成形性、加工性を得ることができる。
なお、本発明において、脂肪族ポリエステル共重合体(A)および変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力は、後述の実施例の項に記載される方法で測定された値をさす。
<曲げ弾性率>
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、比較的曲げ弾性率が高く、柔軟性付与のための成分を用いることなく、フィルム等に成形することができる。
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の硬度は、以下の硬度測定方法で測定した値として、通常200〜2500MPa、好ましくは250〜2000MPaである。この曲げ弾性率が上記範囲であることにより柔軟性、成形加工性に優れ、好ましい。
(曲げ弾性率測定方法)
曲げ弾性率は、JIS規格K7171に従って、射出成形により得られる成形体に2mm/minの速度で垂直の変位を加え、0.1〜0.5mm変位したときの応力から算出される。
なお、特許文献3に記載されるグラフト変性生分解性ポリマーの上記曲げ弾性率は、通常2500〜4700MPa程度であり、澱粉、木粉等の柔軟性付与のための成分が必要となる。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を含むものである。
即ち、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、その単独で各種の用途に用いてもよく、必要に応じて、結晶核剤、滑剤、離型剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、各種フィラー等の各種の添加剤を添加して用いてもよく、また、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)以外の樹脂成分と混合して用いてもよい。
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)に他の樹脂成分を混合して樹脂組成物とする場合、他の樹脂成分としては特に制限はないがPBS(ポリブチレンサクシネート)、PLA(ポリ乳酸)、PBSA(ポリブチレンサクシネートアジペート)等の1種または2種以上が挙げられる。これらの他の樹脂成分を混合して用いる場合、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の生分解性、熱安定性、引張強度、接着性、成形性等を十分に得る上で、他の樹脂成分の割合は、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)に対して80重量%以下とすることが好ましい。
〔用途〕
本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)およびこの変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を含む本発明の樹脂組成物は、射出成形法、中空成形法、押出成形法などの汎用プラスチック成形法などにより、フィルム、ラミネートフィルム、シート、板、延伸シート、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体などの成形品に利用可能である。
特に、本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)は、グラフト変性前の脂肪族ポリエステル共重合体(A)と同様に生分解性を有しており、土中のバクテリアによって、1週間〜12ケ月で完全に分解する特性があり、環境衛生上極めて有用なポリマーである。従って、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材などの用途への使用が期待されるが、とりわけ、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリアミド(PA)等の他の樹脂への接着性が高いことから、これらの樹脂層と積層一体化される層として有用であり、積層フィルムや積層ボルトといった多層成形品に好適に用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[使用原材料]
以下の実施例、比較例および参考例において用いた原材料の詳細は以下の通りである。
<脂肪族ポリエステル共重合体(A)>
脂肪族ポリエステル共重合体(A)としては、以下の製造例に記載の方法で製造したものを用いた。
〈製造例1:脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂1)の製造〉
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計および減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100.3重量部、1,4−ブタンジオール99.5重量部、リンゴ酸0.37重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。系内を撹拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、上記の触媒溶液を添加した。添加量は、得られる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の重量に対して、チタン原子が50ppmとなる量とした。280分かけて250℃まで昇温し、同時に0.7hPaまで減圧し、減圧開始から5.0時間反応させて脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂1)を得た。
この時、常圧から2hPaまでの減圧平均速度は、12.8hPa/分とした。また、反応系内を100hPaと10hPaとの間で圧力を変化させる際の共重合体温度の低下量は、7.3℃であった。圧力降下時の共重合体温度の低下が小さく、高い反応性を維持したまま、脂肪族ポリエステル共重合体(A)を製造することが可能であった。
〈製造例2:脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂2)の製造〉
反応系内を100hPaと10hPaとの間で圧力を変化させる際の共重合体温度の低下量が1℃未満であり、減圧開始からの反応時間を5.4時間としたこと以外は、製造例1と同一の条件で反応を行い、脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂2)を得た。
〈製造例3:脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂3)の製造〉
常圧から2hPaまでの減圧平均速度を7.9hPa/分とし、反応系内を100hPaと10hPaとの間で圧力を変化させる際の重合体温度の低下量が2.3℃であり、減圧開始からの反応時間を5.8時間としたこと以外は製造例1と同一の条件で反応を行い、脂肪族ポリエステル共重合体(A)(樹脂3)を得た。
樹脂1〜3の各構成単位の割合と数平均分子量を表1に示す。
Figure 0006102201
<ビニルモノマー(B)>
粉末状無水マレイン酸(和光1級Maleic Anhydride;和光純薬株式会社製)
<有機過酸化物(D)>
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B;日本油脂株式会社製)
<その他の生分解性ポリマー>
PLA:ポリ乳酸(4032D;ネイチャーワークス社製)
ECOFLEX:脂肪族芳香族ポリエステル(ECF4;BASF社製)
[物性評価]
各種物性の評価方法は以下の通りである。
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kg荷重(21.18N)、オリフィス直径2mmの条件にて、メルトフローレート(溶融流出量、MFR:単位g/10min)を測定した。
(2)溶融張力
東洋精機(株)製キャピログラフ1Cを用いて、160℃、押し出し速度5mm/min、引き取り速度3.9m/min、ノズルL/D=8.1mm/2.095mmにおいて測定した。
(3)接着性
評価用の樹脂フィルム(厚さ50μm)に、以下の被着フィルムを重ね、それぞれ被着フィルム毎に下記表2に示すヒートシール条件で加熱圧着し、得られた2層積層フィルムについて、剥離強度試験機(AG1000;島津製作所製)により剥離強度を測定した。
〈被着フィルム〉
PLAフィルム:ネイチャーワークス社製ポリ乳酸樹脂フィルム「4032D」
EVOHフィルム:クラレ社製エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム「AT4403B」
PET−Gフィルム:イーストマンケミカルジャパン社製ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム「GN001」
PAフィルム:三菱エンジニアリングプラスチック社製ナイロンフィルム「1022CK7」
Figure 0006102201
[実施例1]
脂肪族ポリエステル共重合体(A)として樹脂1を100重量部用い、これを有機過酸化物(D)0.070重量部をビニルモノマー(B)1.0重量部に加えたものを混ぜ合わせた。これをスクリュー式2軸押出機(KZW15;テクノベル社製)の主原料供給部から投入し、最高温度が230℃以下になるように溶融混練を実施し、混練物をダイスからストランド状に押し出し、水槽にて冷却後カッティングして樹脂ペレットを得た。混練時の設定温度は40〜230℃、スクリュー回転数は200rpmとし、ベント吸引は行わなかった。得られた樹脂ペレットは、80℃、窒素雰囲気下で8時間乾燥を行なった。このようにして得た酸変性脂肪族ポリエステル樹脂(C−1)のMFRの測定結果を表3に示す。
[実施例2〜3、比較例10
有機過酸化物(D)の使用量を表3に示す通り変更したこと以外は実施例1と同様に行って、それぞれ酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−2)〜(C−4)のペレットを得た。得られた酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−2)〜(C−4)のMFRの測定結果を表3に示す。
[比較例1]
有機過酸化物(D)とビニルモノマー(B)を用いなかったこと以外は実施例1と同様に行って、脂肪族ポリエステル樹脂(X−1)のペレットを得た。得られた脂肪族ポリエステル樹脂(X−1)のMFRの測定結果を表3に示す。
[比較例2]
有機過酸化物(D)を用いなかったこと以外は実施例1と同様に行って、脂肪族ポリエステル樹脂(X−2)のペレットを得た。得られた脂肪族ポリエステル樹脂(X−2)のMFRの測定結果を表3に示す。
[実施例5、比較例11,12
脂肪族ポリエステル共重合体(A)として樹脂3を100重量部用いたこと以外は実施例1〜3とそれぞれ同様に行って、酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−5)〜(C−7)のペレットを得た。得られた酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−5)〜(C−7)のMFRの測定結果を表4に示す。
[比較例3]
有機過酸化物(D)とビニルモノマー(B)を用いなかったこと以外は実施例5と同様に行って、脂肪族ポリエステル樹脂(X−3)のペレットを得た。得られた脂肪族ポリエステル樹脂(X−3)のMFRの測定結果を表4に示す。
[比較例4]
有機過酸化物(D)を用いなかったこと以外は実施例5と同様に行って、脂肪族ポリエステル樹脂(X−4)のペレットを得た。得られた脂肪族ポリエステル樹脂(X−4)のMFRの測定結果を表4に示す。
Figure 0006102201
Figure 0006102201
[実施例8]
脂肪族ポリエステル共重合体(A)として樹脂2を100重量部用い、これに有機過酸化物(D)0.070重量部をビニルモノマー(B)2.0重量部に加えたものを混ぜ合わせた。これをスクリュー式2軸押出機(TEX30;日本製鋼所社製 22シリンダー、L/D=77)の主原料供給部に供給し、ベント吸引を行わずに、最高温度が230℃以下になるように溶融混練した。その後、混練物をダイスからストランド状に押し出し、水槽にて冷却後カッティングし、黄色の樹脂ペレットを得た。混練時の設定温度は40〜230℃、スクリュー回転数は300rpmとした。得られた樹脂ペレットを、80℃、窒素雰囲気下で8時間乾燥を行なった。このようにして得られた酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−8)のMFRと溶融張力の測定結果を表5に示す。
[実施例9〜10]
脂肪族ポリエステル共重合体(A)のグレード、組み合わせを表5に記載通りに変更したこと以外は実施例8と同様に行って、それぞれ酸変性脂肪族ポリエステル共重合体(C−9)〜(C−10)のペレットを得た。得られた酸変性脂肪族ポリエステル樹脂(C−9)〜(C−10)のMFRと溶融張力の測定結果を表5に示す。
尚、変性前の樹脂2の溶融張力は8.1mN、樹脂1の溶融張力は15.6mNであった。
Figure 0006102201
[実施例11、比較例5〜9、参考例1]
表6に示す原材料を表6に示す配合で混合したものを用い、実施例1と同様にして酸変性生分解性樹脂ペレット(C−11)、(Y−1)、(Y−2)と非変性生分解性樹脂ペレット(X−5)〜(X−7)を得た。各樹脂ペレットのMFRの測定結果を表4に示した。
Figure 0006102201
次に、各樹脂ペレットをスクリュー式2軸押出機(KZW15;テクノベル社製)の主原料供給部から投入し、最高温度が230℃以下になるように溶融混練を実施し、混練物をダイスからフィルム状に押し出して、それぞれ評価用の樹脂フィルムを得た。
この樹脂フィルムについて各種の被着フィルムに対する接着性を調べ、結果を表7に示した。
なお、参考例1として、市販のポリオレフィン系接着性樹脂である三菱化学(株)製「MODIC(登録商標)」についても同様に接着性を調べ、結果を表7に示した。「MODIC」はPAやEVOHに対する接着性に優れた樹脂であり、EVOH、PAに対する接着性の良否の基準となるものである。
なお、接着性は剥離強度の値(単位:g/15mm)が500以上を接着性良(○)、50以下を接着性不良(×)とし、その中間を可(△)、材料が破壊したものを(◎)と判定した。表7には、その判定結果を示した。
Figure 0006102201
表7より明らかなように、脂肪族ポリエステル共重合体(A)をグラフト変性して得られた本発明の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を用いた実施例11は、未変性の比較例7がEVOH、PAに対して接着性を示さないのに対して、これらの樹脂に対する接着性が改善され、参考例1よりも高い接着性が得られた。比較例5,8の結果から、ECOFLEXでもグラフト変性を行うことにより、EVOH、PAへの接着性の改善効果が得られるが、実施例11に比べるとその程度は低い。
比較例9,6から明らかなように、PLAではグラフト変性を行っても接着性の改善効果は得られない。

Claims (9)

  1. 3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体(A)に、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物であるビニルモノマー(B)をグラフトさせてなり、JIS K−7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1〜50g/minである変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)
    II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
    (III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
  2. 不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの無水物よりなる群から選ばれる請求項に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
  3. 脂肪族ポリエステル共重合体(A)100重量部に対し、ビニルモノマー(B)を0.1〜10重量部グラフトさせてなる請求項1又は2に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
  4. 変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)のMFR値cと脂肪族ポリエステル共重合体(A)のMFR値aとが、10>c/a>1/50の関係にある請求項1ないしのいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
  5. 変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の溶融張力値c’と脂肪族ポリエステル共重合体(A)の溶融張力値a’とが、20>c’/a’>1の関係にある請求項1ないしのいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体。
  6. 請求項1ないしのいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を含む樹脂組成物。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)または請求項に記載の樹脂組成物よりなる層を含む多層成形品。
  8. 3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%を含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体(A)と、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸無水物であるビニルモノマー(B)とを、有機過酸化物(D)の存在下に溶融混練することにより、JIS K−7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1〜50g/minである変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)を製造することを特徴とする変性脂肪族ポリエステル共重合体(C)の製造方法
    II)−O−R−O−(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
    (III)−OC−R−CO−(式中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
  9. 有機過酸化物(D)を、ビニルモノマー(B)に対して0.01〜1.0の重量割合で用いることを特徴とする請求項に記載の変性脂肪族ポリエステル共重合体の製造方法。
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