以下の実施形態においては、外部の供給事業者から供給される電力、ガス、水道、熱などの資源の需要家を対象として、各需要家での資源の消費量を計測した計測データを遠隔地にあるサーバで取得するための検針システムを、通信システムの例として説明する。以下では、需要家が集合住宅の各住戸である場合について例示するが、この例に限らず、需要家はたとえば戸建て住宅、事務所、工場などであってもよい。また、以下では、資源が電力である場合を例として説明するが、電力に限らず、電力以外の資源の消費量についてもサーバの取得対象とすることは可能である。
(実施形態1)
本実施形態の通信システム1は、図1に示すように、複数の子機211,212,…21n、221,222,…22n、…251,252,…25nと、親機としてのコンセントレータ3とを、PAN(Personal Area Network)11〜15ごとに備えている。また、本実施形態の通信システム1は、複数台のコンセントレータ3を統括する上位装置4をさらに備えている。コンセントレータ(親機)3は通信装置である。
以下、子機211,212,…21n、221,222,…22n、…251,252,…25nの各々を区別しないときには「子機2」といい、PAN11〜15の各々を区別しないときには「PAN10」という。ここでいうPAN10は、1台のコンセントレータ3の管理範囲としてコンセントレータ3ごとに設定されるネットワークであって、本実施形態では同一敷地内に複数棟存在する大規模集合住宅において棟単位で設定されている場合を想定する。
以下、各PAN10のコンセントレータ3を区別するときには、第1のPAN11のコンセントレータ3を第1のコンセントレータ301、第2のPAN12のコンセントレータ3を第2のコンセントレータ302とする。同様に、第3のPAN13のコンセントレータ3を第3のコンセントレータ303、第4のPAN14のコンセントレータ3を第4のコンセントレータ304、第5のPAN15のコンセントレータ3を第5のコンセントレータ305とする。
子機2は集合住宅の各需要家に設けられている。各子機2は、それぞれ各需要家での資源の消費量を計測する計測器5に付設されている。計測器5は、電力の供給事業者からの電力(資源)が供給される配電線61〜65(以下、各々を区別しないときには「配電線6」という)に接続されており、各需要家での使用電力量(資源の消費量)を計測する電力メータである。配電線61〜65の各々は、大規模集合住宅の棟ごとに設けられた低圧幹線であって、大規模集合住宅の敷地内に引き込まれた高圧配電線60にそれぞれ変圧器71〜75(以下、各々を区別しないときには「変圧器7」という)を介して繋がっている。つまり、配電線61は変圧器71を、配電線62は変圧器72を、配電線63は変圧器73を、配電線64は変圧器74を、配電線65は変圧器75を介して同一の高圧配電線60に繋がっている。
計測器5は、子機2と共にスマートメータ8を構成し、同一の配電線6に接続されているコンセントレータ3と子機2とが通信を行うことにより遠隔検針等を可能にする。スマートメータ8は、子機2と計測器5とが筐体(図示せず)を共用することが好ましいが、子機2と計測器5とが別に筐体を有していてもよい。
コンセントレータ3は、大規模集合住宅の棟ごとに設けられており、同じ棟の需要家(住戸)に設けられた複数の子機2を管理下として、これら管理下の複数の子機2と通信可能に構成されている。そのために、コンセントレータ3は、各配電線6に1台ずつ接続されており、同一の配電線6に接続されている子機2と共に1つのPAN10に属する端末を構成する。
つまり、配電線61に接続された子機211,212,…21nおよびコンセントレータ301はPAN11に属する端末を構成し、配電線62に接続された子機221,222,…22nおよびコンセントレータ302はPAN12に属する端末を構成する。同様に、配電線63に接続された子機231,232,…23nおよびコンセントレータ303はPAN13に属する端末を構成し、配電線64に接続された子機241,242,…24nおよびコンセントレータ304はPAN14に属する端末を構成する。配電線65に接続された子機251,252,…25nおよびコンセントレータ305はPAN15に属する端末を構成する。
検針システムとしての通信システム1は、実際には多数台のコンセントレータ3を備え、これら多数台のコンセントレータ3の各々の管理下にある子機2からの計測データを、上位装置4で取得できるように構成されている。本実施形態では、第1〜5のPAN11〜15が存在する1つの集合住宅のみに着目して、コンセントレータ3が5台の場合をモデルとして通信システム1の構成および機能を説明するが、コンセントレータ3を5台に限定する趣旨ではない。
上位装置4は、複数の需要家から計測データを収集するサーバコンピュータからなり、供給事業者である電力会社や、電力会社に代わって使用電力量の管理や節電の支援などを行うサービス提供事業者によって運営されている。ここで、上位装置4は、自らの管理下にある需要家の計測データを定期的に収集する遠隔検針の機能を持つ。つまり、上位装置4は、専用回線NT1を通して各コンセントレータ3と通信を行うことにより、各コンセントレータ3の管理下の子機2から計測器5の計測結果を含む計測データを取得する機能を有している。これにより、上位装置4は、複数台のコンセントレータ3の管理下の全ての子機2から、各コンセントレータ3を介して計測データを収集することができる。
また、上位装置4は、供給事業者等によって運営される上位サーバの下位装置であり地域ごとに設けられるヘッドエンド装置であってもよい。この場合、上位装置4は、地域ごとにコンセントレータ3から計測データを収集し、上位サーバへ送信するように構成される。これにより、供給事業者等によって運営される上位サーバは、複数の上位装置4から計測データを収集することにより、複数地域の需要家の計測データを効率的に収集することができる。また、上位装置4はこのようなヘッドエンド装置と上位サーバとの両方を含んでいてもよい。
以下に、子機2およびコンセントレータ3の具体的な構成について図2を参照して説明する。
子機2とコンセントレータ3との間の通信は、配電線6を伝送媒体に用いた通信路を用いて通信信号を伝送する電力線搬送通信(PLC:Power Line Communications)技術を用いて実現される。つまり、第1のPAN11の子機2と第1のコンセントレータ301との間には配電線61を伝送媒体に用いた通信路が形成され、第2のPAN12の子機2と第2のコンセントレータ302との間には配電線62を伝送媒体に用いた通信路が形成されている。第3のPAN13の子機2−コンセントレータ303間では配電線63が、第4のPAN14の子機2−コンセントレータ304間では配電線64が、第5のPAN15の子機2−コンセントレータ305間では配電線65がそれぞれ伝送媒体となる。
子機2は、このような通信路(配電線6)を通して同一PAN10のコンセントレータ3との間で電力線搬送通信を行うことにより、計測データを同一PAN10のコンセントレータ3に送信する。ここでいう計測データは、少なくとも計測器5で所定期間内に測定された使用電力量を含んでいる。
そのため、子機2は、コンセントレータ3との通信を行う(第3)通信インターフェイス(以下、インターフェイスを「I/F」と表記する)21と、計測器5から測定結果を取得する検針部22と、各部の動作を制御する(第1)制御部23とを有している。なお、図2では、第1のPAN11の子機211のみ図示しているが、他の子機2も同様の構成である。
通信I/F21は、上述したように計測器5の上流側の配電線6を伝送媒体に用いて、コンセントレータ3との間で双方向に電力線搬送通信を行うように構成されている。
検針部22は、たとえば計測器5の拡張端子(図示せず)に有線接続される構成により、計測器5との間でデータの授受を可能とする。なお、検針部22は、計測器5と有線接続される構成に限らず、たとえば計測器5と無線通信や光通信を行う構成でもよい。
制御部23は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたマイコン(マイクロコンピュータ)のようなデバイスを主構成とし、所定のプログラムを実行することにより種々の機能を実現する。ここでは、制御部23は、少なくとも検針部22が取得した計測器5の計測結果に基づいて計測データを生成し、この計測データを通信I/F21からコンセントレータ3に送信する機能を有している。
さらに、子機2は、メモリ(図示せず)を有し、一定時間(たとえば1分、5分、10分等)ごとの計測データを一定期間(たとえば1日)分、メモリに記憶するように構成されている。
コンセントレータ3は、集合住宅の管理人室あるいは電気室などに配置されている。コンセントレータ3は、自らの管理下となる複数の需要家(住戸)の子機2から計測データを取得し、取得した計測データを上位装置4に転送する。
そのため、コンセントレータ3は、子機2との通信を行う第1通信I/F31と、上位装置4との通信を行う第2通信I/F32と、各部の動作を制御する(第2)制御部33とを有している。なお、図2では、第1のPAN11のコンセントレータ301のみ図示しているが、他のコンセントレータ302〜305も同様の構成である。
第1通信I/F31は、上述したように計測器5の上流側の配電線6を伝送媒体に用いて、子機2との間で双方向に電力線搬送通信を行うように構成されている。
第2通信I/F32は、光ファイバ等を用いた専用回線NT1に接続されており、この専用回線NT1を介して上位装置4との間で双方向に通信を行うように構成されている。なお、コンセントレータ3は、専用回線NT1を介して上位装置4との間の通信を行う構成に限らず、インターネットのような公衆網を介して、あるいは無線通信もしくは電力線搬送通信により上位装置4と通信する構成であってもよい。
制御部33は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたマイコンのようなデバイスを主構成とし、所定のプログラムを実行することにより種々の機能を実現する。ここでは、制御部33は、少なくとも集合住宅における複数の需要家の子機2から第1通信I/F31で計測データを取得し、取得した計測データを第2通信I/F32から上位装置4に送信する機能を有している。
また、本実施形態の通信システム1では、複数の子機2は各々が他の子機2を中継器としてデータを伝送するマルチホップ通信を行うように構成されている。そのため、コンセントレータ3と直接通信できない子機2は、通信可能な距離にある他の子機2がパケットを中継することにより、コンセントレータ3との間で通信可能となる。たとえば、配電線61に対して、コンセントレータ301および子機211,212,…21nが上流側(変圧器71側)からコンセントレータ301、子機211、子機212、…子機21nの順に接続されていると仮定する。この場合、コンセントレータ301は、子機211,212とは直接通信し、子機213とは直接通信するのではなく子機211を中継器として通信することが考えられる。
したがって、コンセントレータ3は子機2と通信を行う際、伝送距離やノイズ等の影響により、同一のPAN10に属する全ての子機2と直接通信できる環境になくても、同一のPAN10に属する全ての子機2との間で通信可能になる。具体的には、コンセントレータ3は同一のPAN10に属する子機2との間で、マルチホッププロトコルに従い通信経路(ルート)を構築するための伝送状況の情報のやりとりを行い、その情報を元に通信ルートを決定している。
次に、上述した通信システム1において、コンセントレータ3が管理下となる自PAN10の子機2から計測データを取得するための構成について説明する。
コンセントレータ3は、制御部33により、定期的に管理下の子機2に要求信号としての検針要求を送信するように構成されている。ここで、コンセントレータ3は、予め定められている定例検針時刻(たとえば0:00,0:30,1:00,…)になると、管理下にある複数の子機2の各々に対して検針要求を順次送信する。このとき、コンセントレータ3は、検針要求を送信するタイミングが子機2ごとに異なるように、たとえばスマートメータ8に固有の識別子(メータ番号)に基づいて、あるいはランダムに、検針要求を送信するタイミングを決定する。
子機2は、検針要求を受信すると、制御部23により、この検針要求への応答として計測データを含む応答信号である検針応答をコンセントレータ3へ送信するように構成されている。したがって、コンセントレータ3は、自身の管理下にある複数の子機2からの計測データを定期的に収集することができる。コンセントレータ3は、制御部33により、このように複数の子機2から収集した計測データを集約し、検針情報を生成する。コンセントレータ3が複数の子機2から定期的に計測データを取得する処理を、以下では「定例検針」という。
さらに、コンセントレータ3は、制御部33により、少なくとも管理下にある全ての子機2に対し一通り検針要求を送信すると、上位装置4に対して検針情報を送信する。これにより、上位装置4においては、コンセントレータ3の管理下にある複数の子機2からの計測データを定期的に取得することができる。
なお、定例検針時にコンセントレータ3が子機2から計測データを取得する周期は、本実施形態では30分と仮定するが、この例に限らず、たとえば10分、15分、45分など適宜設定可能である。また、定例検針時にコンセントレータ3が収集した計測データ(検針情報)を上位装置4に送信する周期についても、本実施形態では30分と仮定するが、この例に限らず、たとえば12時間、1日など適宜設定可能である。
また、本実施形態の通信システム1は、通信状況などにより定例検針において上位装置4が取得した計測データに脱漏が生じた場合でも、脱漏している計測データを補完するための検針(以下、「バックアップ検針」という)が行われるように構成されている。
すなわち、上位装置4は、制御部により、定例検針時に取得した計測データについて、自身の管理下の全ての子機2から計測データを取得できているか否かを判断し、脱漏している計測データがあればその計測データを個別に取得するように構成されている。具体的には、上位装置4は、計測データが脱漏している子機2に対して、その上位のコンセントレータ3を介して個別に検針要求を送信し、この子機2から検針要求への応答として送信される計測データを、コンセントレータ3を介して取得する。
このように上位装置4は、定例検針において計測データの脱漏があっても、計測データが脱漏している子機2からバックアップ検針により個別に計測データを取得するので、脱漏していた分の計測データを補完することができる。
なお、上位装置4は、バックアップ検針に限らず、定例検針において、コンセントレータ3を介して子機2に個別に検針要求を送信し、この子機2から検針要求への応答として送信される計測データをコンセントレータ3経由で取得する構成であってもよい。この場合、コンセントレータ3は、定例検針時、自発的に子機2からの計測データの収集、集約は行わず、上位装置4から子機2への検針要求の中継、子機2から上位装置4への計測データの中継を行うことになる。
さらにまた、近年、電力消費に関して、需要家側の電力消費を供給側がある程度制御することにより電力需給の協調を実現するデマンドサイドマネジメント(DSM:demand side management)が注目されている。DSMは、供給事業者等によって運営されている上位装置4から各需要家の子機2に電力の消費を抑制するための要請であるDR(デマンドレスポンス)情報を送信することで実現される。具体的には、本実施形態の通信システム1においては、上位装置4は、各需要家の子機2に対して、その上位のコンセントレータ3を介して個別にDR情報を送信する機能を有している。
この場合に、子機2は、たとえば各需要家の設備機器(図示せず)との通信機能を有することで、DR情報を設備機器に表示させたり、DR情報に基づいて電力消費のピークを抑制(ピークカット)するように設備機器を制御したりすることが可能になる。
ところで、上述した構成の通信システム1は、コンセントレータ3−子機2間の通信に電力線搬送通信を用い、且つコンセントレータ3ごとに個別の配電線61〜65を用いていることにより、コンセントレータ3ごとに個別のPAN11〜15を構築している。ただし、配電線61〜65は電気的に完全に分離されているわけではなく、それぞれ変圧器71〜75を介して同一の高圧配電線60に接続されている。そのため、各配電線6上を伝送される通信信号は、変圧器7が減衰要素となって変圧器7である程度は減衰されるものの、他の配電線6に漏洩し、異なるPAN10間で通信の干渉を生じることがある。とくに、複数の配電線6が同一敷地内に敷設されている本実施形態のように、複数の配電線6が比較的近い距離にある場合には、異なるPAN10間で通信信号の漏洩が生じやすくなる。
そこで、本実施形態の通信システム1は、異なるPAN10間での通信の干渉が生じ得る状態にあることを検知し、通信の干渉を回避する機能を、コンセントレータ3に有している。
すなわち、本実施形態では、コンセントレータ3は、図2に示すように、通信の干渉が生じ得る他のPAN10を干渉候補として検知する検知部331、および通信の干渉を回避する回避部332の機能を制御部33に有している。
さらに、コンセントレータ3は、干渉の有無を検知するための検知信号を第1通信I/F31から定期的に送信する機能を制御部33に有している。ここでは、制御部33は、定期的にブロードキャスト送信される同期信号であるビーコンを検知信号として利用する。この検知信号は、基本的には発生元のコンセントレータ3と同一のPAN10の子機2にて受信されるが、変圧器7および高圧配電線60を通して他のPAN10の端末(コンセントレータ3および子機2)へも漏洩する場合がある。以下、他のPAN10へ漏洩した検知信号を「漏洩信号」といい、漏洩信号を送信した端末が属するPAN10を「漏洩信号の発生元」、漏洩信号を受信した端末が属するPAN10を「漏洩信号の漏洩先」という。なお、制御部33は、ビーコンを検知信号とする構成に限らず、その他の通信信号、たとえば定例検針時の検針要求を検知信号として用いてもよい。
検知部331は、他のPAN10の端末からの漏洩信号の受信状況に基づいて干渉候補を検知する機能を有している。検知部331は、自PAN10のいずれかの端末が他のPAN10の端末からの漏洩信号(通信信号)を規定値以上の受信強度で受信したときに、当該他のPAN(漏洩信号の発生元)10を干渉候補として検知する。
つまり、検知部331は、他のPAN10のコンセントレータ3から受信した漏洩信号の受信強度(RSSI)を計測し、この受信強度と規定値とを大小比較することにより、当該他のPAN10との間で干渉が生じ得るか否かを判断する。ここで、規定値は、コンセントレータ3が受信した信号(パケット)が他のコンセントレータ3からの漏洩信号(パケット)であることを認識できる範囲で最低限の受信強度に設定されている。
さらに、本実施形態では、検知部331は、自PAN10の子機2が他のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信したときに当該子機2から送信される干渉通知を受信することにより、当該他のPAN10を干渉候補として検知する。つまり、子機2は、他のPAN10のコンセントレータ3からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信すると、自PAN10のコンセントレータ3に対して干渉通知を送信するように構成されている。検知部331は、自PAN10の子機2からの干渉通知を受信することにより、当該他のPAN(漏洩信号の発生元)10を干渉候補として検知する。これにより、検知部331は、コンセントレータ3に限らず、自PAN10の子機2が他のPAN10からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合にも、当該他のPAN10を干渉候補として検知できる。
ここで、子機2は、コンセントレータ3への干渉通知を、定期的に送信しているハローパケットに含めてもよい。これにより、子機2はハローパケットを定期的に送信するだけでコンセントレータ3へ干渉通知を送信することができるので、子機2−コンセントレータ3間の通信トラフィックを下げることができる。
さらに、検知部331は、自PAN10のいずれかの端末が他のPAN10の子機2からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信したときに、当該他のPAN10を干渉候補として検知する。つまり、検知部331は、他のPAN10に属する子機2から送信された通信信号、たとえば検針応答を漏洩信号として干渉候補を検知する。これにより、検知部331は、他のPAN10のコンセントレータ3からの漏洩信号に限らず、他のPAN10の子機2からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合にも、当該他のPAN10を干渉候補として検知できる。
また、子機2は、他のPAN10の子機2からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合にも、自PAN10のコンセントレータ3に対して干渉通知を送信するように構成されている。干渉通知には、漏洩信号の発生元の端末を特定する情報が含まれている。つまり、干渉通知は、漏洩信号の発生元がコンセントレータ3である場合にはこのコンセントレータ3に固有の識別子を含み、漏洩信号の発生元が子機2である場合にはこの子機2に固有の識別子(メータ番号等)が含まれる。
よって、検知部331は、自PAN10のいずれかの端末(コンセントレータ3または子機2)が他のPAN10の端末(コンセントレータ3または子機2)からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信したときに、当該他のPAN10を干渉候補として検知する。
さらにまた、本実施形態では、検知部331は、干渉候補を検知すると、漏洩信号の発生元の端末を特定した二次通知を、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3へ送信するように構成されている。二次通知には、漏洩信号の発生元の端末を特定する情報が含まれている。つまり、検知部331は、漏洩信号の発生元がコンセントレータ3である場合にはこのコンセントレータ3に固有の識別子を含む二次通知を送信し、漏洩信号の発生元が子機2である場合にはこの子機2に固有の識別子(メータ番号等)を含む二次通知を送信する。さらに、この二次通知には送信元(つまり漏洩信号の漏洩先)のPAN10に固有の識別子が含まれている。
コンセントレータ3は、他のPAN10のコンセントレータ3から二次通知を受けると、この二次通知に含まれるPAN10の識別子に基づいて、漏洩信号の漏洩先のPAN10を特定する。これにより、漏洩信号の漏洩先のPAN10および発生元のPAN10の双方のコンセントレータ3において、通信の干渉が生じ得る状態にあることが認識可能となる。なお、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3は、漏洩信号の漏洩先のPAN10のコンセントレータ3との間では、変圧器7で通信信号が減衰するものの通信可能な状態にあるので、二次通知を規定値以上の受信強度で授受可能である。
ただし、一般的には通信の干渉は双方向に生じるので、一対のPAN10の一方から他方へ漏洩信号が漏洩すれば、他方のPAN10から一方のPAN10へも漏洩信号が漏洩する。そのため、検知部331が二次通知を送信しなくても、双方のコンセントレータ3は、各々が検知部331にて互いを干渉候補として検知し、通信の干渉が生じ得る状態にあることをそれぞれ認識する。したがって、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3において漏洩信号の発生元の端末および漏洩信号の漏洩先のPAN10を特定する必要がなければ、検知部331が二次通知を送信する機能は必須ではない。
回避部332は、検知部331にて干渉候補として検知されたPAN10との間で通信の干渉を回避する回避処理を実行するように構成されている。本実施形態では、回避部332は、回避処理として、一定期間を複数の期間に分割し分割後の各期間を、自PAN10の端末の通信と、干渉候補のPAN10の端末の通信とに割り当てるように構成されている。言い換えれば、回避部332は、検知部331にて干渉候補として検知されたPAN10と自PAN10とで通信が行われる期間を時間軸方向にずらす時分割処理を、回避処理として実行する。
ここでは、回避部332は、定例検針の1周期に相当する一定期間を、自PAN10および干渉候補のPAN10に順番に割り振ることにより、いずれのPAN10においても定例検針が決まった周期で行われるようにする。具体的には、コンセントレータ3は、定例検針の開始時には開始通知(ビーコン)を、定例検針の終了時には終了通知(ビーコン)を、他のPAN10のコンセントレータ3へ送信する。回避部332は、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3からの開始通知を受信すると、同コンセントレータ3から終了通知を受信するまでの期間、つまり干渉候補のPAN10での定例検針中の期間を避けて、定例検針を行う。なお、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3は、漏洩信号の漏洩先のPAN10のコンセントレータ3との間では、変圧器7で通信信号が減衰するものの通信可能な状態にあるので、開始通知や終了通知を規定値以上の受信強度で授受可能である。
回避部332は、定例検針の1周期に相当する全期間を自PAN10および干渉候補のPAN10に割り振ってもよいが、いずれのPAN10にも割り振らない共通期間を設定することが望ましい。つまり、回避部332は、定例検針の1周期に相当する一定期間のうち、共通期間を除いた期間を分割して、分割後の各期間を自PAN10および干渉候補のPAN10に割り当てる。共通期間は、自PAN10と干渉候補のPAN10とのいずれの通信にも用いられる期間である。
また、回避部332は、分割後の各期間の割り当てを各PAN10に固有の識別子に基づいて決定する。ここで、各PAN10に固有の識別子は、PAN10ごとに予め割り当てられたPAN_IDなどである。回避部332は、たとえばこの識別子の小さい順に分割後の各期間を割り当てることにより、2つ以上のPAN10が干渉候補として検知されている場合にも、重複することなく各期間を割り当てることができる。
次に、本実施形態の通信システム1において、異なるPAN10間での通信の干渉を回避するための動作について図3を参照して説明する。図3では、第1のPAN11と第2のPAN12と第3のPAN13との間で通信の干渉が生じ、分割後の各期間が第1のPAN11、第2のPAN12、第3のPAN13の順で割り当てられる場合を例とする。
すなわち、第2のPAN12のコンセントレータ302および第3のPAN13のコンセントレータ303は、第1のPAN11のコンセントレータ301からの漏洩信号を規定値以上の強度で受信する(S1)。そのため、コンセントレータ302は第1のPAN11を干渉候補として検知し、コンセントレータ303も第1のPAN11を干渉候補として検知する。コンセントレータ301は、コンセントレータ302およびコンセントレータ303からの二次通知を受信する(S2,S3)。
また、第3のPAN13のコンセントレータ303は、第2のPAN12のコンセントレータ302からの漏洩信号を規定値以上の強度で受信する(S4)。そのため、コンセントレータ303は第2のPAN12についても干渉候補として検知し、コンセントレータ302はコンセントレータ303からの二次通知を受信する(S5)。
その後、コンセントレータ301は、定例検針の時刻になると、まずコンセントレータ302およびコンセントレータ303へ開始通知を送信し(S6)、自PAN11に属する子機211へ検針要求を送信する(S7)。第1のPAN11の子機211は、検針要求への応答として、計測データを含む検針応答をコンセントレータ301へ送信する(S8)。コンセントレータ302およびコンセントレータ303は、コンセントレータ301からの開始通知を受信すると、定例検針を見合わせて待機する。
コンセントレータ301は、第1のPAN11の全ての子機2から計測データを取得すると、コンセントレータ302およびコンセントレータ303へ終了通知を送信し(S9)、定例検針を終了する。コンセントレータ302は、コンセントレータ301からの終了通知を受信すると、コンセントレータ301およびコンセントレータ303へ開始通知を送信し(S10)、定例検針を開始する。コンセントレータ301およびコンセントレータ303は、コンセントレータ302からの開始通知を受信すると、定例検針を見合わせて待機する。
コンセントレータ302は、第2のPAN12の全ての子機2から計測データを取得すると、コンセントレータ301およびコンセントレータ303へ終了通知を送信し(S11)、定例検針を終了する。コンセントレータ303は、コンセントレータ302からの終了通知を受信すると、コンセントレータ301およびコンセントレータ302へ開始通知を送信し(S12)、定例検針を開始する。コンセントレータ301およびコンセントレータ302は、コンセントレータ303からの開始通知を受信すると、定例検針を見合わせて待機する。
このようにして、コンセントレータ301,302,303は、互いに干渉することなく順番に定例検針を行うことができる。
以上説明した本実施形態の通信システム1によれば、コンセントレータ3は、他のPAN10を干渉候補として検知する検知部331、および通信の干渉を回避する回避部332との機能を制御部33に有している。検知部331は、自PAN10のいずれかの端末が他のPAN10の端末からの通信信号を規定値以上の受信強度で受信したときに当該他のPAN10を干渉候補として検知する。そのため、この通信システム1は、各配電線6上を伝送される通信信号が他の配電線6に漏洩したとしても、異なるPAN10間で通信の干渉を生じることを回避できる。且つ、回避部332は、検知部331が干渉候補として検知したPAN10との通信の干渉を回避するので、異なるネットワーク間で通信の干渉が生じ得ない場合にまで干渉を抑制するための制御が為されることはない。
しかも、本実施形態では、回避部332は、一定期間を複数の期間に分割し分割後の各期間を、自PAN10の端末の通信と、干渉候補のPAN10の端末の通信とに割り当てる時分割処理により、干渉を回避する。したがって、端末は、通信信号の受信感度や送信強度を低下させることなく、他のPAN10の端末との通信の干渉を回避でき、同一のPAN10内での通信環境は維持しつつ、異なるPAN10間での通信の干渉を回避可能となる。
ところで、本実施形態の変形例として、回避部332は、上述のようにPAN10内の全ての端末を対象として時分割処理を行うのではなく、干渉を生じ得る端末のみを対象として時分割処理を行うように構成されていてもよい。
第1の変形例として、回避部332は、回避処理として、一定期間を複数の期間に分割し分割後の各期間を、自PAN10の子機2のうち干渉通知の発生元である子機2との間で行う通信と、干渉候補のPAN10の端末の通信とに割り当てるように構成される。つまり、漏洩信号の漏洩先のPAN10に属する子機2のうち干渉を生じ得るのは、漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した子機2(干渉通知の発生元の子機2)のみであるから、回避部332は、この子機2のみを時分割処理の対象とする。
また、第2の変形例として、回避部332は、一定期間を複数の期間に分割し分割後の各期間を、自PAN10の端末の通信と、干渉候補のPAN10の子機2のうち二次通知で特定される子機2−コンセントレータ3間で行う通信とに割り当てるように構成される。つまり、漏洩信号の発生元がコンセントレータ3でなく子機2である場合、回避部332は、漏洩信号の発生元の子機2のみを対象として、分割後の各期間の割り当てを行う。
具体的には、干渉候補(漏洩信号の発生元)のPAN10のコンセントレータ3は、漏洩信号の漏洩先のPAN10のコンセントレータ3から二次通知を受信するので、この二次通知に含まれる子機2の識別子にて漏洩信号の発生元の子機2を特定する。これにより、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3は、漏洩信号の発生元の子機2との通信のみ回避部332により割り当てられる期間に行うことができる。
さらに、第1および第2の変形例において、コンセントレータ3は、自PAN10の子機2のうち回避処理の対象の子機2以外の(つまり、干渉通知の発生元でなく、且つ漏洩信号の発生元でもない)子機2に対する要求信号(検針要求)を一括して送信してもよい。この場合、コンセントレータ3は、一括送信する要求信号に、応答信号(検針応答)を送信する順番を表すデータを含めて送信することが望ましい。一括送信された要求信号を受信した子機2は、この要求信号に含まれるデータが表す順番に従ってコンセントレータ3へ応答信号を順次送信する。
これにより、回避処理の対象外の子機2は、コンセントレータ3から要求信号を個別に受信する場合に比べて、要求信号の授受に要する時間を短縮することができる。しかも、これらの子機2は、コンセントレータ3に対して応答信号を順番に送信するので、応答信号の干渉が生じることもない。
次に、上記第1の変形例の通信システム1において、異なるPAN10間での通信の干渉を回避するための動作について図4を参照して説明する。図4では、第1のPAN11と第2のPAN12との間で通信の干渉が生じ、分割後の各期間が第1のPAN11、第2のPAN12の順で割り当てられる場合を例とする。
すなわち、第2のPAN12のコンセントレータ302および子機221は、第1のPAN11のコンセントレータ301からの漏洩信号を規定値以上の強度で受信する(S21)。このとき、第2のPAN12の子機222および子機223は漏洩信号を規定値以上の強度で受信しない。第2のPAN12の子機221は、コンセントレータ302に干渉通知を送信し(S22)、干渉通知を受けたコンセントレータ302は、子機221のみを回避処理の対象とする。
一方、第1のPAN11のコンセントレータ301および子機211は、第2のPAN12のコンセントレータ302からの漏洩信号を規定値以上の強度で受信する(S23)。このとき、第1のPAN11の子機212および子機213は漏洩信号を規定値以上の強度で受信しない。第1のPAN11の子機211は、コンセントレータ301に干渉通知を送信し(S24)、干渉通知を受けたコンセントレータ301は、子機211のみを回避処理の対象とする。
その後、コンセントレータ301は、定例検針の時刻になると、まずコンセントレータ302へ開始通知を送信し(S25)、第1のPAN11の子機2のうち回避処理の対象である子機211へ検針要求を送信する(S26)。子機211は、検針要求への応答として、計測データを含む検針応答をコンセントレータ301へ送信する(S27)。コンセントレータ302は、コンセントレータ301からの開始通知を受信すると、定例検針を見合わせて待機する。
コンセントレータ301は、第1のPAN11の子機2のうち回避処理の対象である子機211から計測データを取得すると、残りの子機2の定例検針を行うことなく、コンセントレータ302へ終了通知を送信し(S28)、定例検針を終了する。コンセントレータ302は、コンセントレータ301からの終了通知を受信すると、コンセントレータ301へ開始通知を送信し(S29)、第2のPAN12の子機2のうち回避処理の対象である子機221へ検針要求を送信する(S30)。子機221は、検針要求への応答として、計測データを含む検針応答をコンセントレータ302へ送信する(S31)。コンセントレータ301は、コンセントレータ302からの開始通知を受信すると、定例検針を見合わせて待機する。
コンセントレータ302は、第2のPAN12の子機2のうち回避処理の対象である子機221から計測データを取得すると、残りの子機2の定例検針を行うことなく、コンセントレータ301へ終了通知を送信し(S32)、定例検針を終了する。
その後、コンセントレータ301およびコンセントレータ302は、共通期間において残りの子機2に対する定例検針を開始する。つまり、コンセントレータ301は、子機212および子機213へ一括して検針要求を送信し(S33)、検針要求への応答として子機212および子機213の各々から計測データを含む検針応答を順次受信する(S34,S35)。これと同時に、コンセントレータ302は、子機222および子機223へ検針要求を一括して送信し(S36)、検針要求への応答として子機222および子機223の各々から計測データを含む検針応答を順次受信する(S37,S38)。
このようにして、コンセントレータ301,302は、干渉を生じ得る範囲の子機2に対しては互いに干渉しないように順番に定例検針を行い、その他の子機2に対しては、同時に定例検針を行う。
以上説明した変形例によれば、回避部332は干渉を生じ得る端末に限定して時分割処理を行うので、その他の端末については、異なるPAN10間であっても同時に通信を行うことができ、通信に要する時間を短縮できるという利点がある。要するに、この通信システム1では、通信の干渉を生じ得ない端末同士であれば同時に通信を行っても何ら問題はなく、これらの端末の通信には共通期間が割り当てられるので、1つのPAN10の通信にのみ使用される期間を短くできる。
また、本実施形態の第3の変形例として、回避部332は、検知部331にて干渉候補が検知されたときに、干渉情報を上位装置4に送信し、分割後の各期間のPAN10への割り当てを上位装置4にて決定させるように構成されていてもよい。ここでいう干渉情報は、干渉候補のPAN10を特定する情報であって、漏洩信号の発生元のPAN10に固有の識別子を含んでいる。
第3の変形例においては、上位装置4は、コンセントレータ3から取得した干渉情報に基づいて、いずれのPAN10間で通信の干渉が生じ得るかを一元的に管理する。さらに、上位装置4は、干渉が生じ得るPAN10の各コンセントレータ3に対して、分割後の各期間を順番に割り当てることにより、異なるPAN10間での通信の干渉を回避できる。具体的には、上位装置4は、干渉が生じ得るPAN10の各コンセントレータ3に対して、定例検針の開始を指示する開始コマンドを順次送信する。コンセントレータ3は、自身宛ての開始コマンドを受信するまでは定例検針を見合わせて待機し、自身宛ての開始コマンドを受信すると定例検針を開始する。
第3の変形例では、回避部332は、上位装置4に干渉情報を送信することによって、上位装置4を通して自PAN10と干渉候補のPAN10とに対し分割後の各期間を割り当てることができる。したがって、3つ以上のPAN10間で干渉が生じ得る状態にあっても、回避部332は、分割後の各期間を重複せずに各PAN10に割り振ることができ通信の干渉を確実に回避できる。
また、本実施形態では、各PAN11〜15の配電線61〜65は、通信信号を減衰させる減衰要素となる変圧器7を介して互いに接続されているが、配電線61〜65間には変圧器7以外の減衰要素が設けられていてもよい。とくに、通信信号を遮蔽するブロッキングフィルタが減衰要素として用いられる場合、異なるPAN10間での通信信号の漏洩は大幅に抑制されることになる。この場合、ブロッキングフィルタは、各PAN10と、各PAN10のコンセントレータ3の検知部331において干渉候補として検知されたPAN10との間にのみ設けられてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の通信システム1は、コンセントレータ3の回避部332が通信信号の受信強度を低下させる点で、実施形態1の通信システム1と相違する。また、本実施形態では、検知部331は二次通知を送信する機能を有しない。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、回避部332は、回避処理として、自PAN10のコンセントレータ3における通信信号の受信感度を低下させる処理を実行する。具体的には、コンセントレータ3は、第1通信I/F31に含まれる受信用の自動利得制御(AGC:Automatic gain control)回路の利得の上限値を低下させることにより、受信感度を低下させる。
さらに、コンセントレータ3が子機2からの干渉通知を受けた場合には、回避部332は、自PAN10の子機2のうち干渉通知の発生元の子機2における通信信号の受信感度を低下させる処理を、回避処理として実行する。この場合、回避部332は、受信感度の低下を要求する感度低下要求を干渉通知の発生元の子機2に送信する。子機2は、感度低下要求を受信した場合に、自身の通信信号の受信感度を低下させるように構成されている。具体的には、子機2は、通信I/F21に含まれる受信用の自動利得制御回路の利得の上限値を低下させることにより、受信感度を低下させる。
このように回避部332は、干渉候補のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した端末を対象として、通信信号の受信感度を低下させることで、干渉を回避することができる。すなわち、端末は、受信感度が低下すれば、他のPAN10の端末からの通信信号(漏洩信号)の漏洩があっても、この漏洩信号を通信信号として認識しなくなり、通信の干渉を生じない。要するに、端末は、他のPAN10の端末からの通信信号をパケットとして認識しない程度まで受信感度が低下していれば、他のPAN10の端末からの漏洩信号を受信しても同期処理を開始することはなく、通信の干渉を回避できる。
ただし、回避部332は、最低限、自PAN10の子機2のうち干渉通知の発生元の子機2における通信信号の受信感度を低下させればよく、コンセントレータ3の受信感度を低下させることは必須の構成ではない。
ここにおいて、回避部332は、受信感度の下げ幅を予め定められている固定値としてもよいが、自PAN10の端末が干渉方向のPAN10の端末からの漏洩信号を受信した際の受信強度の大きさに基づく可変値としてもよい。受信感度の下げ幅を可変値とする場合、回避部332は、干渉候補のPAN10の端末から受信した漏洩信号の受信強度と規定値とを大小比較し、漏洩信号の受信強度が規定値以下で収まるように、受信感度の下げ幅を調整する。このとき、回避部332は、漏洩信号の受信強度が規定値と略同じ値となるように受信感度の下げ幅を調整することで、受信感度を極力高くすることが望ましい。
このように受信感度の下げ幅を可変値とすることで、回避部332は、受信感度を下げ過ぎることで同一のPAN10内での通信環境が劣化したり、反対に受信感度の下げ幅が足りずに干渉を十分に回避できなかったりすることを防止できる。つまり、回避部332は、最適な下げ幅で受信感度を低下させることによって、同一のPAN10内での通信環境は維持しつつ、異なるPAN10間での通信の干渉を回避可能となる。
また、回避部332は、自PAN10の全ての端末(子機2およびコンセントレータ3)を対象として、通信信号の受信感度を低下させるように構成されていてもよい。この場合、回避部332は、検知部331にて干渉候補が検知されたときに、コンセントレータ3における通信信号の受信感度を低下させ、且つ自PAN10に属する全ての子機2に対して感度低下要求をマルチキャスト送信する。
次に、本実施形態の通信システム1において、異なるPAN10間での通信の干渉を回避するための動作について図5を参照して説明する。図5では、第1のPAN11のコンセントレータ301が、定例検針時に送信する検針要求を検知信号として利用し、この検針要求が第2のPAN12のコンセントレータ302および子機221に漏洩する場合を例とする。
すなわち、コンセントレータ301は、定例検針の時刻になると、自PAN11の子機211へ検針要求を送信する(S51)。第1のPAN11の子機211は、検針要求への応答として、計測データを含む検針応答をコンセントレータ301へ送信する(S52)。ここで、第2のPAN12のコンセントレータ302および子機221は、コンセントレータ301からの検針要求を規定値以上の受信強度で受信する(S51)。第2のPAN12の子機221は、コンセントレータ302に干渉通知を送信する(S53)。
その後、コンセントレータ302は、干渉通知の発生元である子機221へ感度低下要求を送信し(S54)、且つ自身の通信信号の受信感度を低下させる(S55)。子機221は、感度低下要求を受けて、自身の通信信号の受信感度を低下させる(S56)。
したがって、その後の定例検針においては、コンセントレータ301が検針要求を送信し(S57)、子機211が検針応答を送信しても(S58)、これらの検針要求や検針応答が第2のPAN12の端末で受信されることはなく、通信の干渉を回避できる。
以上説明した本実施形態の通信システム1によれば、回避部332は、自PAN10の端末における通信信号の受信感度を低下させることにより干渉を回避する。したがって、端末は、他のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合に、自PAN10の端末の受信感度を低下させることにより、当該他のPAN10の端末との間で情報をやり取りすることなく干渉を回避できる。すなわち、コンセントレータ3は、異なるPAN10間での情報のやり取りを最小限に抑えることができる。
しかも、これら複数のPAN10の各々における通信を同時に行うことができるので、これら複数のPAN10の通信全てを終了するまでに要する時間を比較的短くできる。
さらに、回避部332は、自PAN10の子機2のうち干渉通知の発生元の子機2における通信信号の受信感度を低下させる構成であれば、受信感度を低下させる端末を必要最小限に抑えることができる。つまり、回避部332は、干渉を生じ得ない端末の受信感度まで低下させることにより、自PAN10内での通信環境が劣化することを防止できる。
なお、本実施形態の変形例として、子機2が、他のPAN10に属する端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合に、自身の通信信号の受信感度を低下させる機能を有していてもよい。この変形例では、子機2はコンセントレータ3に干渉通知を送信する必要がなく、コンセントレータ3は子機2に感度低下要求を送信する必要がないので、子機2−コンセントレータ3間の通信トラフィックを下げることができる。
(実施形態3)
本実施形態の通信システム1は、コンセントレータ3の回避部332が通信信号の受信強度を低下させるのではなく通信信号の送信強度を低下させる点で、実施形態2の通信システム1と相違する。また、本実施形態では、検知部331は二次通知を送信する機能を有している。以下、実施形態2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、回避部332は、回避処理として、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3における通信信号の送信強度を低下させる処理を実行する。具体的には、回避部332は、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3に対し、送信強度の低下を要求する強度低下要求を送信する。強度低下要求を受信したコンセントレータ3は、自身の通信信号の送信強度を低下させる。
さらに、端末(コンセントレータ3または子機2)が他のPAN10のコンセントレータ3でなく子機2からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合、回避部332は、漏洩信号の発生元の子機2における通信信号の送信強度を低下させる。つまり、回避部332は、干渉候補のPAN10の子機2のうち二次通知で特定される(漏洩信号の発生元の)子機2における通信信号の送信強度を低下させる処理を、回避処理として実行する。具体的には、回避部332は、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3に対して送信する二次通知に、漏洩信号の発生元の子機2を特定する識別子と強度低下要求とを含めて送信する。これにより、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3は、二次通知に識別子が含まれている子機2に対して強度低下要求を転送する。強度低下要求を受信した子機2は、自身の通信信号の送信強度を低下させる。
このように回避部332は、干渉候補のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した場合に、漏洩信号の発生元の端末を対象として、通信信号の送信強度を低下させることで、干渉を回避することができる。すなわち、端末は、送信強度が低下すれば、他のPAN10の端末への通信信号(漏洩信号)の漏洩があっても、この漏洩信号が通信信号として認識されなくなり、通信の干渉を生じない。
ただし、回避部332は、最低限、干渉候補のPAN10の子機2のうち二次通知で特定される子機2における通信信号の送信強度を低下させればよく、コンセントレータ3の送信強度を低下させることは必須の構成ではない。
また、一般的には通信の干渉は双方向に生じるので、一対のPAN10の一方から他方へ漏洩信号が漏洩すれば、他方のPAN10から一方のPAN10へも漏洩信号が漏洩する。そのため、一対のPAN10の一方から他方へ漏洩信号の漏洩があれば、他方のPAN10から一方のPAN10へ強度低下要求を送信するだけでなく、後々、一方のPAN10から他方のPAN10へも強度低下要求を送信する必要が生じると考えられる。この場合に、先に干渉候補として検知された一方のPAN10のコンセントレータ3は、通信信号の送信強度を低下させた後で他方のPAN10を干渉候補として検知しても、他方のPAN10のコンセントレータ3へ強度低下要求を十分な強度で送信できない。
そこで、コンセントレータ3は、他のPAN10のコンセントレータ3から強度低下要求を受信後、すぐに自身の通信信号の送信強度を低下させるのではなく、まず送信低下要求の発生元のコンセントレータ3へ強度低下要求を返信する構成であることが望ましい。要するに、一対のPAN10のうち先に干渉候補として検知された一方のPAN10のコンセントレータ3は、他方のPAN10のコンセントレータ3から強度低下要求を受信すると、そのコンセントレータ3へ強度低下要求を返信後、自身の送信強度を低下させる。強度低下要求の返信を受けた他方のPAN10のコンセントレータ3は、この強度低下要求の発生元である上記一方のPAN10を既に干渉候補として検知しているので、強度低下要求を再度送信することなく、すぐに自身の通信信号の送信強度を低下させる。これにより、通信の干渉を生じ得る双方のPAN10のコンセントレータ3は、互いに通信信号の送信強度を低下させることができる。
また、上述の例において、通信の干渉を生じ得る双方のPAN10のコンセントレータ3は、互いに通信信号の送信強度を低下させた後、さらに別のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信する場合もある。この場合、漏洩信号の漏洩先のPAN10のコンセントレータ3は、上記別の(漏洩信号の発生元)のPAN10を干渉候補として検知するものの、既に送信強度が低下した後であるので、強度低下要求を十分な強度で送信できない可能性がある。そこで、コンセントレータ3は、強度低下要求を受信して送信強度を低下させた後であっても、回避部332から送信される強度低下要求に関しては、低下前の送信強度で送信するように構成されていることが望ましい。これにより、コンセントレータ3は、既に送信強度が低下した後であっても、干渉候補として検知したPAN10に対し回避部332にて強度低下要求を十分な強度で送信でき、漏洩信号の発生元の端末の送信強度を低下させることができる。
ここにおいて、回避部332は、送信強度の下げ幅を予め定められている固定値としてもよいが、自PAN10の端末が干渉方向のPAN10の端末からの漏洩信号を受信した際の受信強度の大きさに基づく可変値としてもよい。送信強度の下げ幅を可変値とする場合、回避部332は、干渉候補のPAN10の端末から受信した漏洩信号の受信強度と規定値とを大小比較し、漏洩信号の受信強度が規定値以下で収まるように、送信強度の下げ幅を調整する。このとき、回避部332は、漏洩信号の受信強度が規定値と略同じ値となるように送信強度の下げ幅を調整することで、送信強度を極力高くすることが望ましい。
このように送信強度の下げ幅を可変値とすることで、回避部332は、送信強度を下げ過ぎることで同一のPAN10内での通信環境が劣化したり、反対に送信強度の下げ幅が足りずに干渉を十分に回避できなかったりすることを防止できる。つまり、回避部332は、最適な下げ幅で送信強度を低下させることによって、同一のPAN10内での通信環境は維持しつつ、異なるPAN10間での通信の干渉を回避可能となる。
また、回避部332は、干渉候補のPAN10の全ての端末(子機2およびコンセントレータ3)を対象として、通信信号の送信強度を低下させるように構成されていてもよい。この場合、回避部332は、検知部331にて干渉候補が検知されたときに、干渉候補のPAN10のコンセントレータ3に、全端末を対象とする強度低下要求を含む二次通知を送信する。この二次通知を受けた干渉候補のPAN10のコンセントレータ3は、自身の通信信号の送信強度を低下させ、且つ自PAN10に属する全ての子機2に対して強度低下要求をマルチキャスト送信(フラッディング)する。
以上説明した本実施形態の通信システム1によれば、回避部332は、干渉候補のPAN10の端末における通信信号の送信強度を低下させることにより干渉を回避する。したがって、この通信システム1は、1つのPAN10から複数のPAN10へ通信信号の漏洩が生じたとしても、漏洩信号の発生元のPAN10の端末の通信信号の送信強度を低下させることで、全てのPAN10との干渉を回避できる。しかも、これら複数のPAN10の各々における通信を同時に行うことができるので、これら複数のPAN10の通信全てを終了するまでに要する時間を比較的短くできる。
さらに、回避部332は、干渉候補のPAN10の子機2のうち二次通知で特定される(漏洩信号の発生元の)子機2における通信信号の送信強度を低下させる構成であれば、送信強度を低下させる端末を必要最小限に抑えることができる。つまり、回避部332は、干渉を生じ得ない端末の送信強度まで低下させることにより、干渉候補のPAN10内での通信環境が劣化することを防止できる。
その他の構成および機能は実施形態2と同様である。
ところで、実施形態2および実施形態3の通信システム1において、回避部332によりいずれかの端末における通信信号の受信感度あるいは送信強度が低下させられた場合、この端末を含むマルチホップ通信のルートの信頼性は低下する。そこで、実施形態2および実施形態3の通信システム1は、ルート構築に関して以下の構成を適用することが望ましい。
すなわち、実施形態2および実施形態3の通信システム1は、通信信号の受信感度あるいは送信強度が低下した端末を含むルートについては、他のルートよりもルート再構築のタイミングを早めるように構成される。具体的には、受信感度あるいは送信強度が低下した端末は、通常よりも短い周期でハローパケットを送信し、ルートの再構築の周期を短縮する。
また、コンセントレータ3は、ある子機2との通信のルートに受信感度あるいは送信強度が低下した子機2を含み、且つこのルートがまだ再構築されていない場合、受信感度あるいは送信強度が低下した子機2を経由しないルートを優先的に使用するよう構成される。具体的には、コンセントレータ3は、受信感度あるいは送信強度が低下した子機2の識別子を一時的に記憶し、この子機2を含むルートの再構築前にあっては、この子機2を経由しない別ルートを優先的に使用する。
この構成によれば、通信システム1は、回避部332によりいずれかの端末における通信信号の受信感度あるいは送信強度が低下させられたとしても、ルートの信頼性が低下することを防止できる。
また、他の構成例として、通信システム1は、通信信号の受信感度あるいは送信強度が低下したか否かに関わらず、干渉候補のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した端末については、積極的にルートに含めない構成であってもよい。すなわち、マルチホップ通信の場合、コンセントレータ3−子機2間のルートは、基本的には通信経路のルートコストが低くなるようにルートコストに基づいて構築される。ここでいうルートコストは、コンセントレータ3−子機2間の通信経路の通信品質の評価値であって、各ノード間のリンクコスト、ホップ数などに基づいて決められる。ここで、干渉候補のPAN10の端末からの漏洩信号を規定値以上の受信強度で受信した端末は、ルートコストが他よりも高く設定されることにより、ルートに含まれにくくなる。