JP6099274B2 - マイクロリアクターを有する装置 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロリアクターに関するものである。さらに詳しくは、粒子形成キネティクスを操作することによって、粒子等の反応流体における形状、結晶状態、粒子径等の特性を制御することができるマイクロリアクターに関するものである。
近年、化学合成反応では、微小反応場になるほど温度制御性および濃度制御性が高まり、また、拡散律速反応であれば反応時間が短くて済むことが知られている。このため、反応容積がナノオーダー(10−9)〜マイクロオーダー(10−6)領域での化学反応が注目されている。このような微小反応を効率的に行うために、いわゆるマイクロリアクターが開発されている。
マイクロリアクターの一般的な構造は、ガラス、セラミックス等の基板に、幅1μm〜10,000μmのマイクロチャネル(微細流路)を形成した小型化学反応器、ガラスや石英などのセラミックス、銅やステンレスなどの金属、またはテフロン(登録商標。以下同様。)やポリイミドなどのプラスチックのキャピラリー(内径1μm〜10,000μm)を用いて形成した小型化学反応器等である。その反応器に反応流体を流して、該反応流体に化学反応等を生じさせる。例えば、2つの反応流体を流し、マイクロミキサー内で初めて接触させれば、短時間に均一な混合がなされて化学反応を生じさせることができる。反応流体は目的に応じて連続流体であることもあるし、2種以上の流体が互いにセグメント化した流体であることもある。
上記の一般的なマイクロリアクターによれば、流路は数100μm程度のマイクロチャネルになり、理想的には、この流路に流れる反応流体は層流になると考えられる。この場合の分子拡散は、乱流拡散を伴わないため、層流方向の力学的ベクトルを除けば秩序性のある静準的状態(一見静止しているように見えるが、分子は動いている状態)の拡散となる。このときの拡散時間は短く、熱移動も速くなるため、反応制御が容易になり、高度な制御を必要とする反応が可能になる。このため、これまでに様々な反応を生じさせるマイクロリアクターが開発されており、ナノ粒子の合成にも用いられている(例えば、特許文献1〜3および非特許文献1を参照)。
一方、マイクロリアクターを用いずとも、一般的にナノ粒子の合成を行う場合は、論文で多く取り扱われているような、界面活性剤を含めた原料系や、原料および添加剤の濃度、反応温度選択等の平衡論の適切な制御に加え、合成プロセス、特に核生成と成長キネティクスとの精密な制御が極めて重要であり、反応時間や添加のタイミング、加熱速度、混合速度などの速度論的な因子を制御する必要もある(例えば、非特許文献2を参照)。一般的に、粒子形成初期過程のキネティクスが、粒子径および形態に影響するということは以前から言われており(例えば、非特許文献3、非特許文献4を参照)、それに加えて最近は、結晶構造、ドーピングなどへの影響も報告されている(例えば、非特許文献4、非特許文献5を参照)。
特開2005−65632号公報(2005年3月17日公開) 特開2005−66382号公報(2005年3月17日公開) 特開2003−225900号公報 (2003年8月12日公開)
中村浩之,上原雅人,前田英明,「マイクロリアクターを用いたナノ粒子合成」,化学とマイクロ・ナノシステム 7巻 2号 2008年,p.8〜13 O. Masala, R. Seshadri, Annu. Rev. Mater. Res., 2004, 34, 41-81. J. Park, J. Joo, S.Kwon, Y. Jang, and T. Hyeon, Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 4630-4660. S.-M. Lee, S. Cho, J. Cheon, Adv. Mater., 2003, 15, 441-444. Y.Song, T.Zhang, W. Yang, S. Albin, L.Henry, Cryst. Growth &Design., 2008, 8, 3766-3772.
しかしながら、一般的な反応器を使ってナノ粒子形成初期過程のキネティクスを制御しようとしても、加熱(冷却)および混合に時間がかかるし、また、全体を均一に加熱および混合することは困難なため、加熱時間および混合時間よりも十分に長い時間スケールのキネティクスしか正確に制御できない。(特に、混合の場合は、一般に高濃度の溶液をほかの溶液で希釈するために、混合のごく初期に生じる高濃度領域が反応速度を増大させることも多い)。この加熱(冷却)および混合時間の影響は、特に反応器のスケールが大きいときに顕著になる。そのため、特にナノ粒子形成初期過程(核生成および初期成長)などといった短い時間スケール(例えば、加熱の場合は数ミリ秒以下〜数分間)のキネティクスを正確かつ均一にコントロールすることは難しい。
しかし一方で、このナノ粒子形成初期過程で結晶相や、さらには形態、固溶状態、複合構造、結晶欠陥生成頻度などが大きく影響を受けることも多い。このため、上記のようなキネティクスのコントロールができれば、例えば、同一の原料溶液を用いても、その原料溶液を原料として生成されるナノ粒子の形態、粒子径、結晶相、ドーピング量、複合構造などが制御できることになる。
ここで、上記非特許文献1に示されているマイクロリアクターは、マイクロチャネル内の温度を一定温度(例えば300℃)に保持したものであり、上記特許文献1〜3に示されているマイクロリアクターは、マイクロチャネル内の温度は周囲の熱媒により制御されており、しかもその中を流れる反応溶液の受ける熱履歴も常に一定となっており、キネティクスの「再現性」(変更が自由に行える(制御できる)という意味ではない)が高いため、特性の制御されたナノ粒子を高い再現性で与えることができる。しかし、該マイクロチャネル内での反応流体の昇温速度もしくは温度降下速度、または、濃度の上昇速度もしくは下降速度を制御して、生成物の特性を制御することはなされていない。すなわち、上記非特許文献1および上記特許文献1〜3に示されているマイクロリアクターは、マイクロチャネル内で、特に粒子形成初期課程での反応のキネティクスを制御して、物性を制御することができない。
また、一般的な流通系反応器を使ってナノ粒子形成初期過程のキネティクスを制御しようとしても、短時間の反応条件制御が難しく、特に、短時間のナノ粒子形成初期過程のキネティクスを正確かつ均一にコントロールすることは難しい。一方、ナノ粒子形成初期過程のキネティクスのコントロールができれば、例えば、同一の原料溶液を用いても、その原料溶液を原料として生成されるナノ粒子の形態、粒子径、結晶相、固溶量、複合構造、結晶欠陥生成頻度などが制御できることになる。
しかし、上記非特許文献1および上記特許文献1〜3に示されているマイクロリアクターでは、特に、短時間のナノ粒子形成初期過程のキネティクスを制御することにより生成するナノ粒子の形状、結晶状態、粒子径等の特性を制御することができない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、短い時間スケールでのナノ粒子初期析出過程や粒子成長過程などのキネティクスを制御することにより、最終的に生成される粒子の形態、粒子径、ドーピング量、複合構造、結晶欠陥生成頻度などの特性を制御することができるマイクロリアクターを提供することにある。
本発明のマイクロリアクターは、上記の課題を解決するために、少なくとも1つの反応流体を流通させるためのマイクロチャネルを有するマイクロリアクターであって、上記マイクロチャネルが、上記反応流体の供給部および該反応流体の排出部を有しており、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度および/または上記反応流体の濃度が連続的に変化している部分を少なくとも一部に有し、該部分における勾配を制御することが可能であることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度および濃度が変化しているので、上記反応流体の速度や、温度および濃度の変化の勾配等を制御することにより、該マイクロチャネル内での該反応流体の昇温速度もしくは温度降下速度、または、濃度上昇もしくは濃度降下速度を変えることができる。なお、上記反応流体の速度を制御して変化の勾配を制御すると、下流部での滞留時間制御が行いにくくなるため、いずれの方法も利用できる場合には、変化の勾配を制御する方が望ましい。すなわち、上記の構成によれば、上記マイクロチャネル内におけるナノ粒子形成過程におけるキネティクスを制御することができる。
その結果、本発明のマイクロリアクターは、化学反応により粒子等、特にナノ粒子を形成させる際の反応流体における形状、結晶相(フェイズ)、粒子径等の特性を制御することができる。さらに、本発明のマイクロリアクターは、粒子等の反応流体における固溶量、ドーピング量、さらに複合構造(コーティング性(コーティングのしやすさ)など)、結晶欠陥生成頻度等を制御することも可能である。
例えば、上記マイクロチャネル内での上記反応流体を早く昇温させて、ナノ粒子形成過程の析出速度を高くすると、該反応流体における形状がより等方的になったり、結晶相(フェイズ)がより微粒子で安定な結晶相となったり、粒子径が小さくなったり、固溶度が低くなったり、複合構造が等方的となったり、コーティング性(コーティングのしやすさ)が低くなったり、結晶欠陥生成頻度が高くなったりする。一方、上記マイクロチャネル内での上記反応流体の昇温速度を降下させると、該反応流体は、該反応流体を高い速度で昇温させた場合の状態と逆の状態をとりやすい。
このような、ナノ粒子形成反応における、キネティクスが生成物の形態および構造にあたえる効果は、反応系の自由エネルギー変化の速度に対応する。自由エネルギー変化の速度は、反応系の変化(反応種濃度変化、温度変化等)により決定され、これらを厳密かつフレキシブルに制御することで、キネティクスの制御が可能になる。キネティクスは、核生成・成長速度に影響される粒子径・粒度分布はもとより、結晶相、固溶、ドーピング、分相構造、複合構造、形状、結晶欠陥生成頻度などのナノ粒子物性に直接関係する特性に影響する。反応制御性の高いマイクロリアクターを用いることで、これまでにない高度に特性制御されたナノ粒子を得ることができる。特に合成条件を急激に変化させることによって、高い再現性で高度に制御されたキネティクスを導入することが可能となり、これまで制御しにくかった組成・結晶相・構造のナノ粒子の形成も可能になる。また、同一の反応溶液および反応温度の条件を用いても、キネティクスを制御することにより、異なる形態・構造・特性のナノ粒子を得ることが可能になる。
また、上記マイクロチャネル内の温度制御は特に限定されないが、マイクロリアクターは短時間(数ミリ秒〜数100ミリ秒)で周りの温度と同一の温度になるため、例えば、適切な温度勾配を持たせた熱板の上での加熱もしくはマイクロ波などの外部からの加熱、または冷却によって、加温もしくは冷却を受け、適切な温度勾配を持たせてある熱媒体中にマイクロリアクターを設置することも可能である。加熱は、マイクロリアクターの一部でもかまわない。例えば、必要に応じて均温部を設け、マイクロリアクター内部の溶液の温度を保つ仕組みとしてもかまわない。さらに、マイクロリアクターによる加熱制御を一部のみとして、例えば、昇温速度制御により反応温度まで加熱された反応溶液をバッチ式リアクターなどの通常のリアクター中で保温し、粒子成長反応、熟成反応などをさせることもできる。この方法は特に、長時間の成長時間、熟成時間などが必要な場合に有効である。また、必要に応じて、これらの装置を組み合わせて多段階の加熱・冷却・保温を行うことも可能である。
本発明のマイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が上昇していることが好ましい。これは、ナノ粒子の合成の際には加熱によって反応が促進されて反応速度が上昇する場合が多いため、温度を上昇させることによって徐々に反応速度を上昇させることが可能になるからである。これにより、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内での上記反応流体の昇温速度を変えやすくなる。すなわち、上記マイクロチャネル内におけるキネティクスを制御しやすくなる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記反応流体が受ける温度プロファイルの制御が、上記マイクロチャネル内のすべての場所において可能であることが好ましい。
これにより、1つのマイクロリアクターを使って、反応の開始から終了まで、多様な温度プロファイルの制御が可能になる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が100℃から350℃、好ましくは120℃から300℃、より好ましくは120℃から180℃に変化していることが好ましい。
このような温度プロファイルを持ったマイクロリアクターなどで加熱を行う場合、このマイクロリアクターによる反応溶液の加熱(冷却)速度は、目的反応の反応速度により異なるが、粒子形成のための代表的な時間(たとえば、核生成のための時間や、相転移を行うために必要な時間)と同等の時間スケールを持つものが望ましい。例えば、反応溶液が目的温度まで到達する時間は10分以下、望ましくは3分以下、より望ましくは1分以下、さらに望ましくは10秒以下がよい。一方、加熱時間が極端に短い場合、粒子形成の時間スケールよりも極端に短くなるために、加熱時間の制御が反応の制御に対して意味を持たなくなる。このため、加熱時間は1ミリ秒以上が望ましい。
これにより、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内での上記反応流体の昇温速度を特定の範囲内に制御することができる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内の流路上に、1秒以下で完全混合を行うことが可能なマイクロミキサーを4個以上有し、上記マイクロミキサーが、直列に配置されており、上記反応流体の濃度を上記供給部から上記排出部に向けて変化させることが好ましい。また、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロミキサーが、ボルテックス型マイクロミキサーまたはスプリットアンドリコンバイン型マイクロミキサーであり、上記マイクロミキサー1個による完全混合時間が、1秒以下であることが好ましい。
例えば、図1(b)に示すように、1つの流路上に直列に高速マイクロミキサー40(高速ミキサー、高速混合器、1秒以下で完全混合を行うことが可能なマイクロミキサー)を複数段組み合わせて濃度を徐々に変更する方法をとることが可能である。なお、図1(a)に示すのは、高速マイクロミキサー40を備えていない本発明のマイクロリアクターである(図1(a)の陰の濃淡は温度の変化を示す)。
この際、ミキサーによる混合は完全混合が望ましく、流れ方向に垂直な方向での濃度分布がない方が望ましい。さらに、混合に要する時間は、反応速度と比較して十分に短い時間、例えば、1秒以下、より望ましくは0.1秒以下、さらに望ましくは0.01秒以下である必要がある。ミキサーは上記の時間で混合が可能なものであれば特に制限はないが、例えば、Sprit and recombine型ミキサー、Vortex型ミキサーなどの静的ミキサーや、マグネチックスターラーなどの動的ミキサーを使うことができる。混合が完全に行われない場合および混合速度が反応速度と比較して十分に短くない場合は、反応が不均一になり、濃度勾配による反応制御が不均一になるために、反応生成物が不均一な特性になる。
さらに、この一連の高速マイクロミキサー40の数は、多い方がよりスムーズな濃度勾配を設けることが可能となるために望ましい。高速マイクロミキサー40の数は、4個以上、望ましくは6個以上、より望ましくは10個以上、さらに望ましくは20個以上である。
スムーズな濃度勾配を得るためには、高速マイクロミキサー40間の距離は、短い方が望ましい。高速マイクロミキサー40間の距離は10cm以下、望ましくは2cm以下、より望ましくは5mm以下、さらに望ましくは1mm以下である。
ミキサー間の流路内の流れが押し出し流れである限り、高速マイクロミキサー40は、必ずしも1つのチップ上にすべて設置してある必要はなく、異なるチップ上に設置されていても、キャピラリーなどで接続していても構わない。
濃度勾配をかけるための時間は、ナノ粒子の析出反応と同一の時間スケールであることが望ましい。基本的には、望ましい時間は反応に依存するが、特にナノ粒子の場合は、析出速度が高いものが多いため、例えば、10分以下、望ましくは3分以下、より望ましくは1分以下、さらに望ましくは10秒以下がよい。
なお、温度の制御および濃度の制御は、反応のすべてをマイクロリアクターで制御しても構わないし、ナノ粒子析出反応の初期過程のみをマイクロリアクターにより制御して、後半部ではバッチ式反応器やフロー式反応器などの、マイクロリアクター以外の化学反応器を利用して成長、熟成などをさせる形式でもかまわない。
これにより、本発明のマイクロリアクターは、反応温度、もしくは反応溶液の濃度の制御を均一に行いながら、反応温度、濃度などの反応条件を時間とともに適切な速度で変化させることができる。マイクロリアクターのデザインが決定されれば、内部を流れる反応溶液の受ける反応条件の履歴は常に一定になる。このことにより、反応溶液の中での反応を所望のキネティクスにおいて行うことができ、しかも、その反応溶液が受ける反応条件の変化の制御を均一かつ定常的に操作が可能になるために、高い制御性および再現性でキネティクスを制御することが可能になる。特にこのような制御は、キネティクスが生成物の構造や形態(粒子径、粒度分布、複合構造、形状、結晶相、結晶欠陥生成頻度など)に影響を与えるナノ粒子の合成において、その効果のばらつきを最小限に抑えるために有効である。さらにいうと、ナノ粒子の合成では、核生成速度が短いものが多いために、ナノ粒子の初期析出過程のキネティクスを制御することにより、生成物の形態、構造などを制御することも可能になる。このようなキネティクス制御のための時間は、10分以下、0.001秒以上であることが望ましい。
このようなキネティクス制御は、例えば、加熱装置の位置や、濃度変化のポイント数および位置を制御して、パターンを制御することができる。さらに、複数のヒーターを加熱板に仕込み、複数点で加熱板の温度制御を行って加熱板の温度プロファイルを調整したり、混合する溶液の濃度を調整したりして、各混合地点での濃度の変化の大きさを適宜調整することによりパターンを変化させることが可能であるし、また、反応溶液の流通速度によっても変化速度を適宜調整することが可能である。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内における上記反応流体の速度を5μm/min以上、500μm/min以下の範囲内に制御する速度制御手段をさらに有していることが好ましい。
また、本発明のマイクロリアクターは、該マイクロチャネル内における上記反応流体の速度を5μL/min以上、50mL/min以下、好ましくは50μL/min以上、10mL/min以下の範囲内に制御する速度制御手段をさらに有していることが好ましい。速度制御を行う方法は特に限定されないが、シリンジポンプのような脈動の少ないポンプ、プランジャーポンプのような高圧送液が可能なポンプなどが望ましい。
これにより、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内での該反応流体の昇温速度または温度降下速度を、さらに濃度の変化速度をより確実に変えることができる。すなわち、上記の構成によれば、上記マイクロチャネル内におけるキネティクスをより確実に制御することができる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネルにおける上記反応流体が流通する方向に対して垂直方向の最短の長さが10μm以上、1,000μm以下の範囲内であることが好ましい。
また、本発明のマイクロリアクターにおけるミキサー以外の部位では、流路を流れる流体の流れが基本的に押し出し流れになる条件(たとえば、円管だとレイノルズ数2000以下)の層流条件で流通できるものがよい。上記マイクロチャネルにおける上記反応流体が流通する方向に対して垂直方向の最短の長さが10μm以上、1,000μm以下の範囲内であることが好ましく、短い方がより高速かつ均一な温度制御を行うことが可能である。一方、流れに対して垂直方向の最短の長さが短い場合は、圧力損失が大きくなり、送液が困難になるために望ましくない。
これにより、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内での上記反応流体の昇温速度または温度降下速度をより一層変えやすくなる。すなわち、上記マイクロチャネル内におけるキネティクスをより一層制御しやすくなる。
また、本発明のコンビナトリアル合成装置は、上記マイクロリアクターを有し、キネティクス制御を行うことが可能であることが好ましい。また、本発明のコンビナトリアル合成装置は、キネティクスの制御によるナノ粒子特性への効果の確認をさらに行うことが可能であることが好ましい。
これにより、各種反応条件に加えて、キネティクスの制御によるナノ粒子特性への効果についても系統的に調査することが可能であるし、さらに、反応条件の時間変化をバッチ反応装置の代表的なものとすることにより、条件制御性の高いマイクロリアクター反応装置を用いて、装置の大きさにより温度条件などの反応条件の時間変化の大きさが異なるバッチ反応装置の中の代表的な反応を擬似的に再現することが可能になる。これにより、コンビナトリアル合成が行いやすいマイクロリアクターの結果を、バッチ反応装置の反応により適切に適応しやすくなる。
また、本発明のマイクロリアクター装置は、上記マイクロリアクターを用いて、上記反応流体が受ける10分以下での、時間と濃度との勾配、または時間と温度との勾配を制御することが可能であることが好ましい。
これにより、マイクロリアクターが冗長になること、流量が小さいために生成物の生成量が低下すること等を防ぐことができる。
また、本発明のナノ粒子合成装置は、上記マイクロリアクターによって粒子の初期形成過程を制御する部分を一部に有していることが好ましい。
これにより、最もキネティクスの影響を受けやすい粒子の初期形成過程のみを、反応制御性の高いマイクロリアクターを用いて短時間で行い、その後の長時間かかる粒子成長過程や熟成過程を、容量の大きいバッチリアクターで行うことが可能になる。これにより、マイクロリアクターのみからなる反応装置で合成を行う場合と比較して、単独のマイクロリアクターあたりでより高い生産量のナノ粒子の生産を行うことが可能になる。
また、本発明のナノ粒子形状・構造制御方法は、上記マイクロリアクターを用いて、キネティクス制御を行い、上記キネティクス制御によってナノ粒子の形状を制御することが好ましい。また、本発明のナノ粒子形状・構造制御方法は、ナノ粒子へ固溶量をさらに制御することが好ましい。また、本発明のナノ粒子形状・構造制御方法は、ナノ粒子の複合構造をさらに制御することが好ましい。また、本発明のナノ粒子形状・構造制御方法は、ナノ粒子の分相構造をさらに制御することが好ましい。また、本発明のナノ粒子形状・構造制御方法は、ナノ粒子の結晶欠陥生成頻度をさらに制御することが好ましい。
これにより、キネティクス制御を行わない場合と比較して、ナノ粒子の形態・構造をより広い範囲で高精度に制御することが可能になる。
本発明のマイクロリアクターは、以上のように、少なくとも1つの反応流体を流通させるためのマイクロチャネルを有するマイクロリアクターであって、上記マイクロチャネルが、上記反応流体の供給部および該反応流体の排出部を有しており、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度および/または上記反応流体の濃度が連続的に変化している部分を少なくとも一部に有し、該部分における勾配を制御することが可能であるものである。このような変化は組み合わせてもかまわない。
それゆえ、本発明のマイクロリアクターは、粒子等の反応流体における形状、結晶状態、粒子径等の特性を制御することができるという効果を奏する。
(a)・(b)は、本発明の一実施形態におけるマイクロリアクターの概略構成を示す説明図である。 一般的なマイクロリアクターの概略構成を示す説明図である。 一般的なコンビナトリアル合成装置の概略構成を示す説明図である。 本発明の一実施例におけるマイクロリアクターの概略構成を示す説明図である。 (a)〜(d)は、本発明の一実施例におけるマイクロリアクターにより制御されたセレン化亜鉛のナノ粒子の外観を示す図である。 本発明の一実施例におけるマイクロリアクターにより制御されたセレン化亜鉛のナノ粒子のXRD(X-ray diffraction)分析の結果を示すグラフである。 本発明の他の実施例におけるマイクロリアクターの概略構成を示す説明図である。 本発明の他の実施例におけるマイクロリアクターにより制御されたアルミニウムの固溶量の結果を示すグラフである。 本発明のさらに他の実施例におけるマイクロリアクターにより制御されたアルミニウムの固溶量の結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態におけるマイクロリアクターの応用例を示す説明図である。 (a)〜(d)は、本発明のさらなる他の実施例における、加熱速度が最終生成物の粒子数および吸収端ピーク片半値幅に与える影響を示すグラフである。 (a)〜(d)は、本発明のさらなる他の実施例における、加熱速度が最終生成物の粒子数および吸収端ピーク片半値幅に与える影響を示すグラフである。
本発明の一実施形態について、以下に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。具体的には、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明のマイクロリアクターは、少なくとも1つの反応流体を流通させるためのマイクロチャネルを有するマイクロリアクターであって、上記マイクロチャネルが、上記反応流体の供給部および該反応流体の排出部を有しており、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度もしくは濃度が変化しているものである。
本発明のマイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が変化しているので、上記反応流体の速度、上記マイクロチャネル内の温度の数値(グラデーション、勾配)等を変えることにより、該マイクロチャネル内での該反応流体の昇温速度または温度降下速度を変えることができる。すなわち、本発明のマイクロリアクターは、上記マイクロチャネル内におけるキネティクスを制御することができる。
<本発明に用いられる反応流体>
本発明に用いられる少なくとも1つの反応流体は特に限定されないが、半導体ナノ粒子、金属ナノ粒子、有機ナノ結晶などの粒子を合成するための反応溶液があげられる。この反応溶液の溶媒としては、水、緩衝液、有機溶媒、フッ素化溶媒、イオン性流体などが挙げられる。半導体ナノ粒子としては、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛等の半導体ナノ粒子;リン化インジウム等の半導体ナノ粒子;などが挙げられ、さらに、硫化亜鉛とセレン化カドミウムとの複合粒子、セレン化カドミウム亜鉛などの固溶粒子などもあげられる。金属ナノ粒子としては、金、銀、銅、白金、ニッケル、鉄、コバルトなど、さらに、白金−鉄、銅−白金、金−銀、などの固溶粒子、複合粒子も含む。有機ナノ結晶としては、鉄、銅、コバルト、チタニル、バナジルなどのフタロシアニン系化合物、キナクリドンなどの粒子が挙げられる。
なお、反応流体の濃度、pH、温度といった反応条件は適宜設定可能であり、何ら限定されるものではない。また、マイクロチャネル内に流通する反応流体が少なくとも1つあればよく、その他に、分散安定化や形態制御のための界面活性剤などを追加する場合や、副生成物・不要な溶媒・界面活性剤などを洗浄および/または除去するための洗浄剤等を適宜追加する場合も本発明に含まれる。
<本発明のマイクロリアクターの概略
図1(a)・(b)は、キネティクスを制御するための装置の例である。図1(a)は、昇温速度を制御するための装置の例であり、温度勾配を持たせたマイクロリアクターの上を反応溶液が流通する仕組みである。温度勾配のプロファイルの制御、または、流通速度の制御により昇温速度が制御できる。
図1(b)は、濃度変化速度を制御するための装置の例である。複数の高速ミキサーを通して、反応溶液に複数箇所で沈殿剤、添加剤などの化学種を含む溶液を混合することによって、上流(供給部)側から流入してくる溶液の濃度変化を制御することが可能になる。反応溶液の濃度および流量、並びに注入場所・注入液の濃度および流量によって、反応時間に対する濃度勾配のプロファイルを制御できる。
マイクロリアクターは、高速での温度制御および濃度制御が可能な、極めて高速および高精度の化学プロセス制御装置である。マイクロリアクターを用いると、特性が制御されたナノ粒子の合成を行うことができる。また、マイクロリアクターを用いると、合成条件の迅速かつ精密な制御が可能となるので、ナノ粒子形成時のキネティクスの制御はもとより、オンデマンドでのナノ粒子径のチューニング(蛍光波長チューニング)、ハイブリッドナノ粒子における被覆厚の精密制御による特性の制御等も可能となる。さらに、オンラインモニタリングと組み合わせば、プロセス中の生成物の特性評価、ナノ粒子の成長キネティクスの解析等が可能である。以下に、ナノ粒子のマイクロ空間での合成に関して説明する。
<本発明のマイクロリアクターにより制御されるキネティクス>
キネティクス(kinetics)とは、一般的に、速度論と訳され、時間による変化に関する研究分野のことをいう。例えば、化学分野では、化学反応を時間変化に重点を置いて研究する分野のことをいい、「(化学)反応速度論」(chemical kinetics)と呼ばれる。
本明細書において、キネティクスとは、時間により変化する状態を示す概念である。特に本発明では、反応温度、反応溶液中の化学種の濃度などにより決定される化学ポテンシャルの時間的変化を意味する。また、昇温速度やキネティクスの速度とは、反応流体の昇温速度、反応流体の昇温速度または濃度変化速度を意味し、キネティクス制御とは、キネティクスの速度の大きさを制御することを示す。なお、広義では断続的な反応のタイミングおよび順序も意味する場合もあるが、本発明ではあくまでも連続もしくは擬連続の変化を意味する。
<本発明のマイクロリアクターの特徴点>
本実施形態に係るマイクロリアクターの特徴点について説明する。
《本発明のマイクロリアクターの構成》
本発明のマイクロリアクターは、少なくとも1つの反応流体を流通させるためのマイクロチャネルを有しているものである。本発明のマイクロリアクターにおける該マイクロチャネル以外の部分は、シリコン、ガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、石英、セラミックス、PEEK、ポリイミド、アクリル、ポリジメチルシロキサン等の材質からなる壁材もしくは基板となる。特に温度勾配を制御する場合に関しては、温度の変化の安定を図るため、熱容量の大きい基板が望ましい。
本発明でいうマイクロチャネルとは、反応流体を流通させるための微小な筒状や矩形の経路のことである。このマイクロチャネルの形状は、筒状であれば特に限定されず、その断面は、円状、四角形状、三角形状、楕円状等が挙げられる。また、本発明でいうマイクロチャネルは、直線状、曲線形状、折れ曲がり(ジグザグ)形状等の形状を有している。
本発明でいうマイクロチャネルの幅(反応流体が流通する方向に対して垂直方向の、短い方の長さ(たとえば、円状ならば直径、四角形および三角形ならば最も短い一辺の長さ))は、好ましくは10μm以上、1,000μm以下、より好ましくは50μm以上、1,000μm以下、特に好ましくは100μm以上、500μm以下の範囲内である。また、本発明でいうマイクロチャネルの長さ(反応流体が流通する方向の長さ)は、好ましくは1mm以上、20m以下、より好ましくは10mm以上、10m以下、特に好ましくは20mm以上、1m以下の範囲内である。
基板と市販のガラスキャピラリなどのマイクロ流路を持つ構造体とを組み合わせることも可能である。例えば、熱伝導性が高く温度勾配を制御しやすい金属基板の上に、壁の厚さの薄いガラスキャピラリを貼り付けることにより、ガラスキャピラリ内を流通するマイクロ流体の温度勾配を、よりフレキシブルかつ正確に制御することが可能になる。
本発明のマイクロリアクターは、シリコン、ガラス、石英、セラミックス等の基板に、上記マイクロチャネルを形成することにより製造される。このマイクロチャネルは、マイクロドリル、レーザ等を用いる加工;エッチング処理;などにより形成することができる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記反応流体の供給部および該反応流体の排出部を有しており、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が変化しているものである。上記マイクロチャネル内の温度を変化させる方法は特に限定されず、例えばヒーターにより加熱する方法、マイクロ波により加熱する方法、熱媒体油により加熱する方法、暖気流により加熱する方法等が挙げられる。
また、本発明のマイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が上昇しているものであることが好ましい。さらに、上記マイクロチャネル内の温度が120℃から300℃の間で変化していることが好ましい。
ここで、上記反応流体の供給部は、反応流体をマイクロチャネル内に供給する部分である。また、上記反応流体の排出部は、マイクロチャネル内を流通した反応流体をマイクロチャネルから回収するだけでなく、該反応流体をほぼ完全に分離させて回収する部分である。上記マイクロチャネルには、上記反応流体の供給部および排出部が少なくとも1つ形成されていればよい。
また、本発明のマイクロリアクターは、該マイクロチャネル内における上記反応流体の濃度を変化させる濃度変更手段をさらに有していることが好ましい。上記濃度変更手段は特に限定されないが、高速ミキサーにより攪拌する手段の方が、迅速に濃度の不均一性を防ぎながら濃度を制御することが可能になるために望ましい。混合後の濃度は、高速ミキサーに流れ込む2以上の溶液の流量および濃度により規定される。
なお、上記濃度変更手段が、本発明のマイクロリアクターの内部に設けられている構成について説明したが、上記濃度変更手段が、本発明のマイクロリアクターの外部に設けられている構成、すなわち、本発明のマイクロリアクターと上記濃度変更手段とを備えた制御システムもまた、本発明の範囲内に含まれる。
また、本発明のマイクロリアクターは、該マイクロチャネル内における上記反応流体の速度を5mm/min以上、500m/min以下の範囲内に制御する速度制御手段をさらに有していることが好ましい。また、上記マイクロチャネル内における上記反応流体の速度を10mm/min以上、200m/min以下の範囲内に制御することがより好ましく、10cm/min以上、100m/min以下の範囲内に制御することが特に好ましい。
上記速度制御手段は特に限定されず、例えば、送液速度を制御する方法、リアクターチャネルの断面積を制御する方法などが挙げられる。
なお、上記速度制御手段が、本発明のマイクロリアクターの内部に設けられている構成について説明したが、上記速度制御手段が、本発明のマイクロリアクターの外部に設けられている構成、すなわち、本発明のマイクロリアクターと上記速度制御手段とを備えた制御システムもまた、本発明の範囲内に含まれる。その場合の上記速度制御手段は特に限定されず、例えば、ポンプの送り速度(反応流体のマイクロチャネルへの進入速度)を制御する手段、さらに、溶液だめにガスなどの圧力をかけて溶液を送る場合は、送り側圧力と出口側の圧力との差、さらに、リアクター内部の圧力損失を調整して送り速度を制御することができる。
なお、上記マイクロチャネル内における上記反応流体の速度が高い場合よりも低い場合の方が、該反応流体自体の温度の上昇速度および濃度の上昇速度は低くなることになる。
<本発明に用いるマイクロリアクター>
本発明に用いるマイクロリアクターは、適宜、温度または濃度の上昇および下降速度などにより粒子形成キネティクスを制御できれば、どのようなものを用いてもかまわない。
マイクロリアクターには、テフロン、ガラス、石英、ポリイミド、PEEK樹脂、銅、ステンレスなどのキャピラリーを使うことも可能であるし、ガラス、ステンレス、テフロン、ポリイミド、銅、シリコン、PDMS、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの基板に流路を作成してカバーした形のチップ式リアクターを使うことも可能である。
温度制御は、例えば、電熱線により加熱されたヒーターで、電熱線設置密度やヒーター容量を制御して温度勾配を制御することも可能である。また、均温部に関しては、温度勾配をかけないように熱伝導率の高い材料を用いることも可能である。さらに、このようなヒーターを複数個設置することで、温度勾配のパターンを作成することが可能である。さらにまた、これら個々のヒーターの制御温度を個別に制御することで温度勾配の制御を行うことも可能である。
これら温度制御部は、チップ式リアクターなどに直接設置することも可能であるし、さらに、銅やステンレスなどの金属;ガラス、アルミナなどのセラミックス;アクリル、テフロンなどのプラスチック;等の基板を温度制御する形として、その上もしくは内部に、キャピラリー式、もしくは、チップ式マイクロリアクターを設置することも可能である。
さらに、制御性やコスト、利便性などを考えて、これらのチップ式マイクロリアクターとキャピラリー式マイクロリアクターとを組み合わせて使うことも可能である。
また、本発明のマイクロリアクターによる濃度制御は、高速ミキサーにより攪拌する手段の方が、濃度の不均一性を抑止しつつ、かつ、濃度を均一に制御することが可能になるために望ましい。混合後の濃度は、高速ミキサーに流れ込む2以上の溶液の流量および濃度により規定される。高速ミキサーを複数段組み合わせて濃度を徐々に変更する方法をとることも可能である。この際、均一性の観点から、ミキサーによる混合はできるだけ短時間で、かつ完全混合であることが望ましく、流れ方向に垂直な方向での濃度分布がない方が望ましい。ミキサーを複数個連結させる際、各ミキサー内での混合時間およびミキサーとミキサーとを連結する連結部での滞留時間(連結部の体積および連結部を流れる流体の流速)を制御することで、濃度上昇のパターンを制御することが可能である。上述のように、ミキサーの種類には、特には制限はないが、Sprit and recombine型ミキサーやVortex型ミキサーなどのスタティックミキサー、マグネチックスターラーなどのダイナミックミキサー等を使うことができる。混合が完全に行われない場合や、混合速度が反応速度と比較して十分に短くない場合は、反応が不均一になり、濃度勾配による反応制御が不均一になるために、反応生成物の特性が不均一になる。さらに必要があれば、一度出口から排出された生成物を入り口から再度導入する構造にし、一部に出口を設けることで、さらに濃度を上げることも可能である。
なお、温度の制御および濃度の制御は、ナノ粒子析出反応の初期過程のみを制御する形でもかまわない。
これにより、本発明のマイクロリアクターは、反応温度、もしくは、反応溶液の濃度の制御を均一に行いながら、反応温度や濃度などの反応条件を時間とともに適切な速度で変化させることができる。マイクロリアクターのデザインが決定されれば、内部を流れる反応溶液の受ける反応条件の履歴は常に一定になる。そのため、端的にいうと、反応溶液中の1つの分子が受ける濃度や温度などの反応条件は、その分子の移動に伴う時間経過に伴って、時間とともに変化するものの、同じ経路を流通する溶液中の他の分子が受ける反応条件の変化の履歴は常に同一となる。このことにより、反応溶液の中での反応を所望のキネティクスを受けさせることができ、しかも、均一かつ定常的に操作が可能になるために、高い制御性および再現性でキネティクスを制御することが可能になる。特にこのような制御は、キネティクスが生成物の構造や形態(粒子径、粒度分布、複合構造、形状、結晶相、結晶欠陥生成頻度など)に影響を与えるナノ粒子の合成において有効である。さらにいうと、ナノ粒子の合成では、核生成速度が短いものが多いために、ナノ粒子の初期析出過程のキネティクスを制御することにより、生成物の形態や構造を制御することも可能になる。このようなキネティクス制御のための時間は、10分以下0.01秒以上であることが望ましい。
このようなキネティクス制御は、例えば、加熱装置の位置や、濃度の変化のポイント数および位置を制御してパターンを制御することができる。さらに、複数のヒーターを加熱板に仕込み、複数点で加熱板の温度制御を行って加熱板の温度プロファイルを調整したり、混合する溶液の濃度を調整したりして、各混合地点での濃度の変化の大きさを適宜調整することによりパターンを変化させることが可能であるし、また、反応溶液の流通速度によっても変化速度を適宜調整することが可能である。
<マイクロリアクターを用いたナノ粒子合成>
マイクロリアクターを用いたナノ粒子合成について、以下に具体的に説明する。なお、本発明のマイクロリアクターを、後述する「マイクロリアクターを用いたナノ粒子合成」で用いた(一般的な)マイクロリアクターと置き換えることにより、ナノ粒子を合成することが可能である。
《マイクロリアクターによるナノ粒子の合成および制御》
核の生成速度および成長速度が高い場合には、原料添加のタイミング、添加速度、添加時の撹拌の強さ等の微妙な変化により粒子形成のキネティクスの再現性が低下し、スケールアップ、再現性の高さ等に問題が生じる。この問題に対する方策として、適切な試薬、温度条件等を選定して反応速度を制御し、核の生成および成長の速度を抑えてキネティクス制御を行いやすくする方策がある。一方で、プロセス的な制御性を高め、キネティクスを揃える方策が考えられる。
これまでのマイクロリアクターは、後者の方策に必要である高いプロセス制御性を達成できる装置である。例えば、CdSeナノ粒子の場合、反応時間、温度、原料溶液組成等の適切な選択を行うことが可能であり、短時間で行うことができる。
上記のような高いプロセス操作性が達成される理由は、キネティクスの再現性が高いためである。(なお、ここでいう制御性は、いつも同じキネティクスが得られ、キネティクスの再現性が高いという意味であり、適宜必要なキネティクスを得ることができるという、本発明におけるキネティクス制御性とは異なる)制御のフレキシビリティーや反応制御性が高いマイクロリアクターを利用して、後者の方策によりCdSeナノ粒子などの半導体ナノ粒子の合成を行うことが望ましい。
図2には、例えば、300℃に加熱した内径200μmのマイクロリアクター内を速度100ml/sで通過する溶媒の温度のシミュレーション結果を示している。なお、このときの室温を20℃と示している。図2に示すように、マイクロリアクター中の流れが層流であり、かつ外部からの熱の供給が定常的であれば、マイクロリアクターの内部を通過する反応溶液の温度履歴は、定常的になる。このため、温度を反応因子として起こる粒子形成反応も、常に同じキネティクスを保ちながら行われると考えられる。この定常的な熱履歴(環境変化の履歴)により、核の生成および成長のキネティクスが均一かつ高度に制御される。そのため、特性の再現性が極めて高く、形状および構造が高度に制御された生成物の連続的な製造が可能になると考えられる。
さらに、この短時間オーダーでの再現性の高いキネティクス制御により、粒子の成長時間を制御することを可能とし、生成物の粒子径をオングストロームオーダーで自由にチューニングしながら連続的に製造することを可能にする。また、オンラインで吸収および蛍光スペクトルをモニタリングすることも可能であり、合成しながらの臨機応変な特性チューニング、成長キネティクスの測定等も可能となる。
このような合成の安定性、柔軟性および再現性の高さは、多数のマイクロリアクターの並行操作によるスケールアップを行いやすくしていることを意味している。
《マイクロリアクターによるハイブリッドナノ粒子の合成と制御》
近年、異種材料をナノレベルでハイブリッド化し、それらの材料における特性の組み合わせ、相乗作用等による材料特性の向上、新機能の付与等がなされた粒子が開発されるようになってきている。これらの特性は、そのハイブリッドナノ粒子の構造に大きく影響を受ける。この構造の制御には、成長の制御が大きな要因となり、マイクロリアクターによる、キネティクスを制御しながらの製造は、ハイブリッド構造を制御および調整する意味でも有効な手段となる。例えば、ある物質からなるコア粒子を別の物質により被覆する場合を例にとると、一般的に析出速度が高い場合はコア粒子の被覆以外の孤立粒子(コア粒子の被覆に関与しないで、被覆物質のみからなる孤立粒子)を形成しやすくなり、析出速度が低い場合は、被覆による界面エネルギーの低下が大きい部分のみに被覆物質が析出することがより起こりやすくなる。このために、より均一な被覆を行おうとすれば、適切な析出速度が必要になる。
《コンビナトリアル合成》
ナノ粒子の機能制御には、物質および材料自体の選択とともに、目的に応じた形状および構造の制御が必要となる。さらに付加的に、コスト、環境負荷、残留化学種の制限等の様々な要因による原料、プロセス等の制約(以下では便宜的に「付加的機能」ともいう)が生じる。具体的には、細かいニーズに応じた多品種少量生産の需要が増大している中、迅速に個々の機能および付加的機能に応じた特性を有するナノ粒子を開発する必要が生じることも多くなる。
ここで、上述したように、粒子形成条件下においても、高い再現性および制御性が得られた、マイクロ空間化学プロセスでは、粒子形成のための平衡論および速度論は充分に安定かつ定常的に制御されていると考えられる。また、マイクロリアクターの迅速なレスポンスは、例えば、温度、濃度、反応時間等が独立に制御可能であり、ナノ粒子の形状および構造の制御に影響を与えるキネティクスを再現性高く保ちつつ、自由エネルギーを操作することができる。さらに、近年のμ−TAS、Lab on a Chipの発達は、微量のサンプルを用いた多様なオンライン分析を可能とし、反応器自体の微小化も含めて、コンパクトな実験装置を実現させている。
このような観点から、図3に示すようなナノ粒子合成用のコンビナトリアル合成装置を作成し、実験を行うことが望ましい。これにより、(1)高い特性を有するナノ粒子の探求(チャンピオンデータ発見)、(2)合成条件が特性に与える影響の理解(メカニズム解明)、(3)実用ニーズに応じた合成条件の決定(最適条件探索)、等の効果が期待できる。
図3に示すコンビナトリアル合成装置は、主としてマイクロリアクター10、シリンジポンプ11、マイクロミキサー12、オイルバス13、光ファイバー14、分光メーター15を備えている。そのコンビナトリアル合成装置により、ナノ粒子(反応流体)30を合成する。なお、図3において、3つのシリンジポンプ11の送り速度を制御して、溶液の濃度、加熱時間等を調整する。
合成手法自体は、上述したナノ粒子の合成法と大きく変わらず、設定温度に調節したマイクロリアクターに原料液を一定速度で送液し、一定時間反応させるものである。また、反応種の濃度の制御は、各溶液の流量を調整しながらのオンライン混合により行うことができる。オンライン混合を行うことにより、混合後、加熱装置までの時間も制御できる。さらに、わずかな加熱(冷却)速度の差が反応に影響する場合には、流量をすべて同一として加熱反応部の長さを調整することにより、速度論的条件も揃えることが可能であり、再現性の高い実験を行うことができる。また、加熱して得られた生成物は、オンライン分光装置を使って、蛍光および吸光スペクトルを測定することが可能である。半導体ナノ粒子の場合には、吸収スペクトルに粒子径依存性があるので、吸光分析から粒子径、粒度分布、生成物濃度(ベールの法則による)等の推測が可能ある。さらに、ナノ粒子の基本特性である量子収率は、蛍光と吸光度の比から求めることができる。
このことに加えて、本発明により、このような条件探索を行う際に制御し、探索できる条件の一つとして、粒子形成キネティクスを採用することが可能になる。
<本発明のマイクロリアクターの応用>
マイクロリアクターを使って反応を行った場合、非常に高い昇温速度や混合速度により反応をコントロールすることができる。一方、マイクロリアクターを使ったコンビナトリアル合成システムのような反応条件最適化のシステムも最近報告され始めている(Toyotaet. al., J.Phys.Chem.C., 2010, 113, 7527等を参照)。しかし、それらの結果は、あくまでもマイクロリアクターを使った結果である。これらの結果を実際の生産に利用するという観点から考えると、マイクロリアクターを使った最適反応条件は、マイクロリアクターを使って実用化することが最も行いやすいと考えられる。このため、マイクロリアクターを平衡操作して処理する、いわゆる「ナンバリングアップ」の概念がよく使われる。一方、処理量の飛躍的向上には、マイクロリアクターの体積を大きくすることが非常に有効である。マイクロリアクターの体積を大きくしても、マイクロリアクター内での反応を再現することができれば、高速の熱伝導、混合速度等といったマイクロリアクターの利点が小さくても、マイクロリアクター内の反応の再現が可能になる。さらに、精密な反応器を製造するコストや圧力損失を抑えて、エネルギーコストや生産コストをより一層抑えることが可能になる。
ここで、マイクロリアクターの体積の増大により変化する化学工学的要素を考えると、伝熱速度および混合速度が非常に大きな役割を果たしている。そこで、本実施形態のような反応速度制御装置(マイクロリアクター)を利用して、温度変化の速度や濃度変化の速度に対する、生成物の特質の変化を検出する装置を製造することができる。
以下に、本発明のマイクロリアクターについて、実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明のマイクロリアクターは、以下の実施例にのみ限定されるものではない。
〔実施例1〕
<実験方法>
オレイルアミンおよびODE(オクタデセン)中に酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)およびセレノウレアを溶解させることにより、原料セレン化亜鉛(ZnSe)溶液を得た
この溶液を、図4に示すような、120℃〜180℃に温度を変化させるヒーターを使用して加熱したマイクロリアクターに注入した。その結果、セレン化亜鉛のナノ粒子を得た。加熱速度は、0.2℃/sec,0.5℃/sec,1.0℃/sec,2.0℃/sec,60℃/secという昇温速度により制御した。なお、流速が5μm/minの場合には昇温速度が0.2℃/secとなり、流速が500μm/minの場合には昇温速度が60℃/secとなる。
<実験結果>
セレン化亜鉛のナノ粒子は、図5(a)〜(d)に示すように、異なった加熱速度での様々な外観に制御された。ここで、図5(a)は、加熱速度が0.2℃/secの場合の電解放射型走査透過電子顕微鏡(STEM:日立ハイテクノロジーズ社製)による外観であり、図5(b)は、加熱速度が0.5℃/secの場合のSTEMによる外観であり、図5(c)は、加熱速度が2.0℃/secの場合のSTEMによる外観であり、図5(d)は、加熱速度が60℃/secの場合のSTEMによる外観である。
すなわち、キネティクスの制御により、様々な外観のセレン化亜鉛のナノ粒子を得ることができた。そして、図6に示すXRD(X-ray diffraction)データによれば、棒状のセレン化亜鉛ナノ粒子はウルツ鉱(WZ)型の構造であり、球状のセレン化亜鉛ナノ粒子はセン亜鉛鉱(ZB)型の構造をとる。中間は、それらが混合した構造となっており、キネティクスの制御により、結晶相の制御も可能であることがわかった。
なお、ウルツ鉱(WZ)は、JCPDSカードのデータ(01−080−0008)よりX線回折パターンが102,103であり、亜鉛混合物は、JCPDSカードのデータ(01−071−3896)よりX線回折パターンが111である。
それゆえ、結晶状態(フェイズ)および形状の制御は、マイクロリアクターを使用して加熱速度を制御したキネティクスにより実現されたといえる。そして、マイクロリアクターを使用して加熱速度を制御したキネティクスは、コロイド状のナノ粒子の成長を引き起こす、結晶状態(フェイズ)および形状の制御への簡単なアプローチとなった。
〔実施例2〕(酸化亜鉛に対するAl固溶について)
<実験方法>
ODE(オクタデセン)とドデカノールとを混合した溶媒にオレイン酸亜鉛を溶解した溶液(I)と、オクタデセンにオレイン酸アルミニウムを溶解した溶液(II)と、を混合して、アルミニウム固溶酸化亜鉛の原料溶液を得た。
この溶液を、図7(a)〜(c)に示すような、190℃〜250℃に温度を変化させるヒーターを使用して加熱したマイクロリアクターに注入して加熱した後、250℃に加熱した容器中に回収してそのまま10分間熟成した。その結果、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛のナノ粒子が合成された。加熱速度は、図7(a)では(A)約600℃/sec、図7(b)では(B)15.9℃/sec、図7(c)では(C)5.3℃/secという昇温速度に制御した。加熱速度の制御は、図7(a)〜(c)に示すように、温度勾配を制御した複数のプレートヒータ(20cm)を組み合わせ、その上にマイクロチャネル20(D=200μm)を設置し、マイクロチャネル内部に反応溶液を流通させることによって行った。なお、ここでは、すべて同一の平均流速(100μL/min、53mm/s)となるように、反応溶液を流通させている。
200μmのマイクロチャネルを流通する反応溶液を250℃に昇温する際、周りの温度を室温付近から急激に250℃に上昇させる(図7(a))と、計算上約600℃/secの昇温速度になる。さらに、図7(b)に示すように、250℃のプレートの一つ前のプレートヒータの入り口側の端の温度を190℃、出口側の温度を250℃(プレート長さ20cm)とすると、昇温速度は15.9℃/secになり、さらに、図7(c)に示すように、250℃のプレートの前の3つのプレートの温度勾配を、190℃→210℃、210℃→230℃、230℃→250℃として、(A)および(B)と同じ流速で反応溶液を通過させることで、5.3℃/sの流速とすることが可能になる。昇温速度をコントロールしている部位となる最初の3組のプレートヒータの部分を反応溶液が通過する時間は約11秒であり、250℃でのバッチでの熟成時間(10分)と比較すると、十分に短い。
生成したナノ粒子は、回収後、ZnO濃度が0.1%になるようにヘキサンに希釈した後、その溶液0.4mLを電子スピン共鳴装置(ESR:日本電子社製)により測定を行い、ZnOへのAl固溶により生じる自由電子の量に対応する信号を測定して、Alの固溶量を測定した。
<実験結果>
図8に示すように、加熱速度を低くするほどESRの信号強度が高くなり、ZnOに対するアルミニウムの固溶量が増大することがわかる。
〔実施例3〕
<実験方法>
実施例2における(C)(図7(c))と同じセットアップおよび流速で、同一の反応溶液を流し、同一の分析を行った。実施例2における(C)と異なる点は、プレートヒータの温度を調節して、加熱開始温度を(D)250℃、(E)220℃として、温度勾配を変化させた点である。
<実験結果>
図9に示すように、開始温度によってドーピング量は異なり、220℃としたものが、最も高いアルミニウム固溶量を持つことがわかる。
〔実施例4〕
<実験方法>
本発明の反応速度制御装置(マイクロリアクター)を利用した、温度変化の速度や濃度変化の速度に対する、生成物の特質の変化を検出する装置の模式図を図10に示す。
ここで、オクタデセンを溶媒とし、酢酸カドミウム、セレン、トリオクチルフォスフィンを一定量ずつ添加し、さらに、最終的な濃度が2wt%〜20wt%になるようにドデシルアミンを添加して、反応溶液を作製した。この反応溶液における、酢酸カドミウム、セレン、トリオクチルフォスフィンの濃度は、それぞれ12mM、60mM、25wt%である。
この反応溶液(原料溶液)を、図10に示すような温度勾配(温度C〜温度D)をつけたマイクロリアクター50(反応流路51)上に流通させた。流通後の溶液はそのまま冷却され、冷却後、流通式分光セル56を通過して分光測定が行われた後、溶液だめ70に回収された。溶液の吸収スペクトルは、光ファイバー54にて連結されている分光器(QE65000; Ocean Optics Inc., USA)55により分光した。さらに、回収された溶液は、希釈後、吸収スペクトルを日本分光社製、UV−570によって測定し、蛍光スペクトルを日本分光社製、FP−6600によって測定した。この吸収スペクトルにより、CdSeナノ粒子の収率、粒子径、粒子数および粒度分布(吸収端ピークの片半値幅(HWHM)として表現される)がわかり、この蛍光スペクトルにより、蛍光半値幅(FWHM:この場合はCdSeナノ粒子の粒度分布に対応する)および蛍光強度が測定できた。
<実験結果>
図10に示す装置により、4種の反応溶液に対して、昇温速度変化の影響(約800℃/sec〜0.83℃/sec)を調べた結果を、図11(a)〜(d)に示す(ここで、「MR-QH」とは、マイクロリアクターを使って急速昇温したことを示し、具体的には約800℃/secの昇温速度であることを示し、「0.83℃/s」とは、約0.83℃/secの昇温速度であることを示し、「5℃/s」とは、約5℃/secの昇温速度であることを示し、「15℃/s」とは、約15℃/secの昇温速度であることを示し、「2.5℃/s」とは、約2.5℃/secの昇温速度であることを示している)。ここで、図11は、各アミン濃度の原料における、加熱速度が最終生成物の粒子数と吸収端ピーク片半値幅(HWHM)とに与える影響を示し、図11(a)はドデシルアミン濃度が2%の場合であり、図11(b)はドデシルアミン濃度が5%の場合であり、図11(c)はドデシルアミン濃度が10%の場合であり、図11(d)はドデシルアミン濃度が20%の場合である。
図11(a)に示すように、ドデシルアミン濃度が2%の場合は、昇温速度の影響が若干見られる。また、図11(b)に示すように、ドデシルアミン濃度が5%の場合は、1000倍程度昇温速度が変化しても、ほとんど影響は見られない。また、図11(c)・(d)に示すように、ドデシルアミン濃度が10%・20%の場合は、生成物の粒子数および分布(HWHM)に対して大きな昇温速度依存性が見られる。以上の結果から、昇温速度が粒子数や粒度分布などに与える影響は、ドデシルアミン濃度20%>10%>2%>5%の順で大きくなることが分かる。
これらの各ドデシルアミン濃度の溶液を、マイクロリアクターを用いて加熱した場合と、フラスコで100ml加熱(平均昇温速度0.83℃/s)した場合との結果を、図12(a)〜(d)に示す(ここで、「MR-QH」または「MR」とは、マイクロリアクターを使って急速昇温したことを示し、具体的には約800℃/secの昇温速度であることを示し、「100mlBatch」または「100ml」とは、0.83℃/secの昇温速度にてフラスコで100ml加熱したことを示している)。ここで、図12は、加熱速度が最終生成物の粒子数と吸収端ピーク片半値幅(HWHM)とに与える影響を示し、図12(a)はドデシルアミン濃度が2%の場合であり、図12(b)はドデシルアミン濃度が5%の場合であり、図12(c)はドデシルアミン濃度が10%の場合であり、図12(d)はドデシルアミン濃度が20%の場合である。
図12(a)〜(d)に示すように、粒子数や粒度分布に与えるスケールアップの影響は、図11(a)〜(d)から得られた序列と一致し、ドデシルアミン濃度5%の場合はほぼ影響がなかったが、20%>10%>2%>5%の順で影響が大きくなることが分かり、スケールアップ評価装置としての利用の一例が示された。
本発明のマイクロリアクターは、ナノ粒子合成プロセス、並びに当該ナノ粒子合成プロセスおよびナノ粒子合成系の探索に利用することができる。また、ナノ粒子は、バイオ、電気・電子、光学、情報等の分野で、生体分子用蛍光タグまたは蛍光色素、機能性色素、さらにそれらをビルディングブロックとして用いて、波長可変発光ダイオード、単一粒子トランジスター、超高密度磁性を有する記憶媒体等の様々な用途に利用することができる。
10 マイクロリアクター
11 シリンジポンプ
12 マイクロミキサー
13 オイルバス
14 光ファイバー
15 分光メーター
20 マイクロチャネル
30 ナノ粒子(反応流体)
40 高速マイクロミキサー
50 マイクロリアクター
51 反応流路
54 光ファイバー
55 分光器
56 分光セル
70 溶液だめ

Claims (13)

  1. マイクロリアクターと分光器とを有する装置であって、
    上記マイクロリアクターは、少なくとも1つの反応流体を流通させるためのマイクロチャネルを有し、
    上記マイクロチャネルが、上記反応流体の供給部および該反応流体の排出部を有しており、
    上記反応流体が、ナノ粒子を合成するための反応溶液であり、
    上記マイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度および/または上記反応流体の濃度が連続的に変化している部分を少なくとも一部に有し、該部分における上記反応流体が受ける時間と濃度との勾配、および/または時間と温度との勾配を制御することが可能であり、
    上記勾配の制御は、上記マイクロリアクターと分光器とを有する装置に備えられた温度制御手段および/または濃度制御手段により行われるものであり、
    上記時間と温度との勾配は、0.2℃/sec〜800℃/secであり、
    上記マイクロリアクターは、上記反応流体のナノ粒子の核生成および初期成長過程におけるキネティクスを制御するものであり、
    上記分光器により測定される上記反応流体の吸収スペクトルおよび/または蛍光スペクトルの測定結果に基づいて、上記マイクロリアクターを流通する上記反応流体に与えられる温度変化の速度または濃度変化の速度に対応して決定される、生成物の特質を評価することを特徴とする装置。
  2. 上記マイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が上昇していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 上記マイクロリアクターは、上記反応流体が受ける温度プロファイルの制御が、上記マイクロチャネル内のすべての場所において可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
  4. 上記マイクロリアクターは、上記供給部から上記排出部に向けて、上記マイクロチャネル内の温度が120℃から180℃に変化していることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
  5. 上記マイクロリアクターは、上記マイクロチャネルの幅が10μm以上、1,000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
  6. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の形を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
  7. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の固溶量を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
  8. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の収率を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
  9. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の粒子数を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
  10. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の粒度分布を含み、上記ナノ粒子が半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
  11. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の粒子径を含み、上記ナノ粒子が半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
  12. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の蛍光半値幅を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
  13. 上記生成物の特質は、ナノ粒子の蛍光強度を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
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