JP6098394B2 - マイクロカプセル - Google Patents

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Description

本発明は、農薬活性成分の光分解が抑制されたマイクロカプセルに関する。
これまでに、光に対して不安定な農薬活性成分の光分解を抑制することを目的として種々の検討がなされており、農薬活性成分並びに二酸化チタン及び酸化亜鉛等の紫外線防護剤が有機溶媒に含有されてなるマイクロカプセルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特表平11−504030号公報
本発明は、農薬活性成分の光分解が抑制された新しいマイクロカプセルを提供することを課題とする。
本発明者等は、農薬活性成分の光分解が抑制されたマイクロカプセルを見出すべく検討した結果、(a)カットオフ290nmのキセノン光を340nmにおける強度0.68W/m2で8時間照射した後の残存率が50%以上、且つ56時間照射した後の残存率が40%以上60%以下である農薬活性成分(以下、成分aと記すことがある。)、及び(b)疎水性有機溶媒(以下、成分bと記すことがある。)を含有するマイクロカプセルにおいて、成分aと成分bとの重量比が特定の範囲の場合に、成分aの光分解を抑制することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] (a)カットオフ290nmのキセノン光を340nmにおける強度0.68W/m2で8時間照射した後の残存率が50%以上、且つ56時間照射した後の残存率が40%以上60%以下である農薬活性成分、
及び
(b)疎水性有機溶媒
を含有し、該農薬活性成分と該疎水性有機溶媒との重量比が5:95〜70:30であるマイクロカプセル。
[2] 平均粒径が5〜60μmである[1]に記載のマイクロカプセル。
[3] 農薬活性成分が、常温で固体の農薬活性成分である[1]または[2]に記載のマイクロカプセル。
[4] 疎水性有機溶媒が、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類及びパラフィン類からなる群より選ばれる1種以上の疎水性有機溶媒である[1]〜[3]のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のマイクロカプセルが水連続相に懸濁されてなる水性懸濁状農薬組成物。
本発明により、農薬活性成分の光分解を抑制することができる。
本発明のマイクロカプセル(以下、本発明マイクロカプセルと記す。)は、成分aのように光に対して不安定な農薬活性成分を含有するマイクロカプセルであり、該農薬活性成分の光分解を効果的に抑制し得る農薬含有マイクロカプセルである。
ここでキセノン光とは、管内に満たされているガスがキセノンである光源を意味し、通常、キセノン光といえば一意的に同じスペクトルを示す。カットオフ290nmのキセノン光とは、波長範囲が290nm以上のキセノン光を意味し、ホウケイ酸塩フィルターを通過したキセノン光がこれに相当する。
上記で規定する農薬活性成分の残存率の算出方法は、より具体的には、まず、農薬活性成分250mgを、アセトン等の該農薬活性成分を充分に溶解させることができ、且つ揮発性の高い溶媒50mLに溶解させ、該溶液1mLをホールピペットで直径6cmのガラス製シャーレに添加して全体に広げた後、室温で風乾させる。該シャーレを石英ガラス製のフタで覆い、ホウケイ酸塩フィルター(商品名:Daylight - BB Opticalフィルター、Q-Lab社製)が取り付けられた耐侯性試験機(商品名:Q−SUNキセノン促進耐侯性試験機 モデルXe−3、Q-Lab社製)内に設置し、340nmにおける強度0.68W/m2、温度35℃(断熱ブラックパネル温度計で35℃)の条件にて、キセノン光を所定時間照射した後、該シャーレに残存する該農薬活性成分を、例えば、高速液体クロマトグラフィー法等の公知の定量方法により定量し、上記で用いた農薬活性成分5mgに対する重量百分率として算出することにより、残存率を求めることができる。
本発明マイクロカプセルに用いられる前記農薬活性成分は、殺虫活性成分、殺菌活性成分、除草活性成分のいずれであってもよく、特に限定されないが、常温(25℃)で固体の農薬活性成分の使用が好ましい。かかる農薬活性成分としては、例えば、上記の算出方法により求められるカットオフ290nmのキセノン光を340nmにおける強度0.68W/m2で8時間照射した後の残存率が93.1%、且つ56時間照射した後の残存率が50.3%である2−[(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]−α−メトキシ−N−メチル−ベンゼンアセトアミド(CAS登録番号173662−97−0)が挙げられる。
本発明マイクロカプセルは成分aを合計量で、本発明マイクロカプセル全量に対して、通常1〜80重量%、好ましくは10〜70重量%含有する。
本発明マイクロカプセルにおいて、成分bは、常温(25℃)において液状であり、水に不混和性の有機溶媒を意味する。具体的には、25℃における水溶解度が20重量%以下の有機溶媒が用いられる。かかる疎水性有機溶媒としては、植物油類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類及びパラフィン類等の疎水性有機溶媒が挙げられ、例えば下記の疎水性有機溶媒が挙げられる。
植物油類:菜種油、大豆油、アマニ油、コーン油及びオリーブ油
エステル類:アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジアルキル(フタル酸ジデシル等)、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オクチルドデシル及びミリスチン酸イソプロピル
ケトン類:メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、シクロヘキサノン及びアセトフェノン
芳香族炭化水素類:トルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、1−フェニル−1−エチルフェニルエタン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリイソプロピルビフェニル及びジメチルイソプロピルナフタレン
本発明には芳香族炭化水素類として、市販されている芳香族炭化水素溶媒を用いることができる。かかる市販されている芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ハイゾールSAS−296(1−フェニル−1−キシリルエタンと1−フェニル−1−エチルフェニルエタンとの混合物、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、ハイゾールSAS−LH(JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントHP−MN(メチルナフタレン 80%、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントHP−DMN(ジメチルナフタレン 80%、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントP−180(メチルナフタレンとジメチルナフタレンとの混合物、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントP−200(メチルナフタレンとジメチルナフタレンとの混合物、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントP−220(メチルナフタレンとジメチルナフタレンとの混合物、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、カクタスソルベントPAD−1(ジメチルモノイソプロピルナフタレン、JX日鉱日石エネルギー株式会社商品名)、ソルベッソ100(芳香族炭化水素、エクソンモービル化学株式会社商品名)、ソルベッソ150(芳香族炭化水素、エクソンモービル化学株式会社商品名)、ソルベッソ200(芳香族炭化水素、エクソンモービル化学株式会社商品名)、ソルベッソ150ND(芳香族炭化水素、エクソンモービル化学株式会社商品名)、ソルベッソ200ND(芳香族炭化水素、エクソンモービル化学株式会社商品名)、Ruetasolv BP 4302 (RKS GmbH 製)、ニカノール(フドー株式会社商品名)、スワゾール100(トルエン、丸善石油株式会社商品名)及びスワゾール200(キシレン、丸善石油株式会社商品名)が挙げられる。
パラフィン類:ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン及び流動パラフィン
本発明にはパラフィン類として、市販されているパラフィン溶媒を用いることができる。かかる市販されているパラフィン溶媒としては、例えば、ノルパー13(ノルマルパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、ノルパー15(ノルマルパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、アイソパーE(イソパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、アイソパーG(イソパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、アイソパーL(イソパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、アイソパーH(イソパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、アイソパーM(イソパラフィン、エクソンモービル化学株式会社商品名)、モレスコホワイトP−40(流動パラフィン、株式会社MORESCO商品名)、モレスコホワイトP−70(流動パラフィン、株式会社MORESCO商品名)、モレスコホワイトP−200(流動パラフィン、株式会社MORESCO商品名)、エクソールD110(パラフィンとシクロパラフィンとの混合物、エクソンモービル化学株式会社商品名)、エクソールD130(パラフィンとシクロパラフィンとの混合物、エクソンモービル化学株式会社商品名)、エクソールD160(パラフィンとシクロパラフィンとの混合物、エクソンモービル化学株式会社商品名)が挙げられる。
本発明マイクロカプセルに用いられる成分bは、特に限定されないが、なかでもエステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、及びパラフィン類からなる群より選ばれる1種以上の疎水性有機溶媒の使用が好ましい。
本発明マイクロカプセルにおいて、成分aと成分bとの重量比は5:95〜70:30、好ましくは30:70〜70:30である。また、本発明マイクロカプセルは成分bを合計量で、本発明マイクロカプセル全量に対して、通常20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%含有する。
本発明マイクロカプセルはさらに、紫外線防護剤1種以上を含有することが好ましい。かかる紫外線防護剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチル−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンズトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤、2−(2ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1、3、5―トリアジン等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、非スルホン化リグニン(例えば、商品名INDULIN AT、ミードウエストベーコ社製)、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等の光安定剤、酸化チタン等の無機系紫外線遮蔽剤が挙げられる。
本発明マイクロカプセルに用いられる紫外線防護剤は、特に限定されないが、なかでも成分bに混和性の紫外線防護剤の使用が好ましい。
本発明マイクロカプセルが紫外線防護剤(以下、成分cと記すことがある。)を含有する場合、その合計含有量は、本発明マイクロカプセル全量に対して、通常1〜50重量%、好ましくは3〜35重量%である。
本発明マイクロカプセルは、成分a、成分b及び、さらに好ましくは成分cを含有する液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセルである。成分aは成分bに懸濁または溶解されており、成分cを含有する場合、成分cは成分bに懸濁または溶解されている。
本発明マイクロカプセルにおける被膜は、樹脂から形成される。かかる樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、フェノールホルマリン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
なかでもポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂の使用が好ましい。
本発明マイクロカプセルの被膜を形成する樹脂として好ましく用いられるポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂は、通常、ポリイソシアネートと、ポリオールまたはポリアミンとを、反応させることにより得られる樹脂である。
かかるポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート3分子のビウレット縮合物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアネートの一方のイソシアネート部が2分子のトリレンジイソシアネートと共にイソシアヌレート体を構成し他方のイソシアネート部が2分子の他のヘキサメチレンジイソシアネートと共にイソシアヌレート体を構成するイソシアネートプレポリマー、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
本発明に用いられるポリイソシアネートの量は、通常、得られるマイクロカプセルの被膜の量に応じて決定される。得られるマイクロカプセルの被膜の量は、得られるマイクロカプセル全量に対して、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.2〜30重量%である。本発明に用いられるポリイソシアネートの量は、このマイクロカプセルの被膜の量に対して、通常25〜95重量%、好ましくは50〜90重量%である。
かかるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びシクロプロピレングリコールが挙げられる。
かかるポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンが挙げられる。
本発明に用いられるポリオールまたはポリアミンの量は、通常、得られるマイクロカプセルの被膜の量に応じて決定される。本発明に用いられるポリオールの量は、マイクロカプセルの被膜の量に対して、通常1〜80重量%、好ましくは3〜60重量%である。本発明に用いられるポリアミンの量は、マイクロカプセルの被膜の量に対して、通常1〜40重量%、好ましくは3〜20重量%である。
本発明マイクロカプセルの製造方法(以下、本製造方法と記す。)について説明するが、本製造方法は以下の方法のみに限定されない。
本製造方法は以下の第1工程〜第3工程を含む。
本製造方法の第1工程は成分bに成分aを懸濁または溶解させ、成分aの懸濁液または溶液を調製する工程である。
成分aは成分bに懸濁されているか、または、溶解されている。
成分aが常温(25℃)で固体の成分a(以下、固体成分aと記す。)である場合は、固体成分aの成分bへの溶解度及び固体成分aと成分bとの重量比により、懸濁液(以下、本懸濁液aと記す。)の形態をとり得る。本懸濁液aは、例えば、ビーズミル等の湿式粉砕機を使用し、固体成分aを成分b中で微粉砕することにより調製することができる。また、例えば、ジェットミル等の乾式粉砕機を使用し、固体成分aを、そのまま若しくはその他の成分を添加して微粉砕した後で、成分bに加えることにより調製することもできる。
成分aが成分bに溶解されてなる溶液は、成分aを成分bに溶解させることにより調製することができる。
固体成分aが成分b中に微粒子の形で分散されている、即ち懸濁されている場合、該微粒子の平均粒径は、通常15μm以下、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜5μmである。
本発明マイクロカプセルが成分cを含有する場合、第1工程として、成分bに成分a及び成分cをそれぞれ懸濁または溶解させ、成分a及び成分cの懸濁液または溶液を調製する工程を含む。
前記成分a及び成分cの懸濁液または溶液において、成分a及び成分cは下記(1)〜(4)のいずれかの状態をとる。
(1)成分a及び成分cはいずれも成分bに懸濁されている。
(2)成分cは成分bに溶解されており、成分aは成分cが溶解された成分bに懸濁されている。
(3)成分aは成分bに溶解されており、成分cは成分aが溶解された成分bに懸濁されている。
(4)成分a及び成分cはいずれも成分bに溶解されている。
固体成分aの場合、固体成分aの成分bへの溶解度及び固体成分aと成分bとの重量比等により、上記(1)または(2)の状態をとることができる。成分cが常温(25℃)で固体の成分c(以下、固体成分cと記す。)である場合、固体成分cの成分bへの溶解度及び固体成分cと成分bとの重量比等により、上記(1)または(3)の状態をとることができる。
上記(1)〜(3)の懸濁液は、本懸濁液aの調製方法と同様の操作により調製することができる。上記(1)の懸濁液を調製する場合、前記本懸濁液aの調製方法において、固体成分a及び固体成分cを同時に湿式粉砕機または乾式粉砕機により微粉砕してもよいし、本懸濁液aと、固体成分cが成分bに懸濁された懸濁液とを別々に調製した後で混合してもよい。上記(2)の懸濁液を調製する場合、通常は、成分cを成分bに溶解させてから、該溶液に固体成分aを加える。上記(3)の懸濁液を調製する場合、通常は、成分aを成分bに溶解させてから、該溶液に固体成分cを加える。
また、上記(4)の溶液は、成分a及び成分cを成分bに溶解させることにより調製することができる。
被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂である場合、通常は、第1工程にて得られた懸濁液または溶液にポリイソシアネートを予め加えておく。
第1工程で得られた成分aと必要に応じて加えられた成分cとが成分bに懸濁されてなる懸濁液または溶解されてなる溶液は、速やかに次工程にて用いられることが好ましい。
本製造方法の第2工程は第1工程で得られた懸濁液または溶液と水とを混合し、液滴を調製する工程である。
第2工程に用いられる水の重量は、通常、第1工程で得られた懸濁液または溶液の重量に対して0.8〜2倍の範囲内である。第2工程で用いられる水には、脱イオン水を用いるのが好ましく、必要に応じて、増粘剤が添加されていてもよい。
かかる増粘剤としては、例えばアラビアガム、ザンサンガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ウェランガム、アルギン酸、アルギン酸塩、トラガントガム等の天然多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム等のビニル系高分子、ポリオキシアルキレン等の合成高分子;カルボキシメチルセルロース等の半合成高分子;アルミニウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクライト、合成含水珪酸、乾式シリカ等の鉱物質粉末;およびアルミナゾルを挙げることができる。これらの増粘剤として市販品をそのまま使用することができる。かかる市販品としては、例えば、ザンサンガムであるケルザンS(CPケルコ社商品名)、アルミニウムシリケートであるビーガムグラニュール(バンダービルト社商品名)、及び乾式シリカであるアエロジル200(エボニックデグサ社商品名)が挙げられる。
第2工程において、水中に液滴を調製する方法としては、例えば第1工程で得られた懸濁液または溶液を水に加え、その後、撹拌機で撹拌する方法が挙げられる。この際に用いられる撹拌機としては、例えばプロペラ撹拌機、タービン撹拌機、及び高速せん断撹拌機が挙げられる。撹拌機の具体例としては、PRIMIX株式会社製のT.K.ホモミキサー、T.K.ホモミックラインフロー、T.K.パイプラインホモミクサー及びT.K.フィルミックス;エム・テクニック株式会社製のクレアミックス;KINEMATICA AG製のポリトロンホモジナイザー及びメガトロンホモジナイザー;及び月島機械株式会社製のスープラトンが挙げられる。
第2工程において、通常は、水中に液滴を調製した後で、ポリオールまたはポリアミンを加える。ポリオールを加えた場合には、ポリウレタン樹脂からなる被膜のマイクロカプセルが得られる。ポリアミンを加えた場合には、ポリウレア樹脂からなる被膜のマイクロカプセルが得られる。ポリオールまたはポリアミンは、水中に液滴を調製する前に加えてもよいが、液滴調製中のポリイソシアネートと、ポリオールまたはポリアミンとの反応を防止するうえで、調製後に加えることが好ましい。
第3工程は第2工程で得られた液滴の周囲に樹脂の被膜を形成させる工程である。第2工程で得られる水中に存在する液滴において、ポリイソシアネートは成分bに溶解されている。このため液滴に含有されるポリイソシアネートと、水中に存在するポリオールまたはポリアミンとが、該液滴の界面で重合する。その結果、該液滴の周囲にポリウレタンまたはポリウレアの被膜が形成され、マイクロカプセルが水性懸濁物として得られる。
被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂の場合、例えば第2工程で得られた液滴の水分散液を撹拌下、40〜80℃に加熱し、0.5〜48時間程度保持することにより、液滴の周囲にポリウレタン樹脂の被膜が形成される。被膜を形成する樹脂がポリウレア樹脂の場合、例えば液滴の水分散液の液性を中性〜弱アルカリ性に調整して、0〜60℃で0.5〜48時間程度保持することにより、液滴の周囲にポリウレア樹脂の被膜が形成される。
本発明マイクロカプセルの平均粒径は、第2工程で調製される液滴の平均粒径とほぼ同じである。第2工程で調製される液滴の平均粒径及び本発明マイクロカプセルの平均粒径は、通常5〜60μm、好ましくは10〜45μmである。
本発明において、平均粒径とは体積中位径を意味する。体積中位径は、体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒径を指し、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定により求めることができる。より具体的には、水中に液滴またはマイクロカプセルを分散させて当該装置を用いて測定する。かかるレーザ回折式粒度分布測定装置としては、例えば、マスターサイザー2000(マルバーン社製)が挙げられる。
本製造方法によって、本発明マイクロカプセルが水性懸濁状組成物として得られる。
本製造方法により得られた本発明マイクロカプセルは、水性懸濁状組成物から遠心分離、濾過、スプレードライ等によりマイクロカプセルの粉末状製剤として使用することができる。
また、本製造方法によって得られた本発明マイクロカプセルの水性懸濁状組成物に、さらに通常の水性懸濁状農薬組成物において用いられる農薬補助剤を添加して、本発明マイクロカプセルが水連続相に懸濁されてなる水性懸濁状農薬組成物(以下、本発明組成物と記す。)として使用することができる。この場合、本製造方法によって得られた本発明マイクロカプセルは、例えば、成分aを本発明組成物全量中に0.5〜25重量%含有する水性懸濁状農薬組成物として使用される。
本発明組成物が含有していてもよい前記農薬補助剤としては、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、pH調整剤等が挙げられる。
かかる界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキロールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及びポリオキシエチレンアルカンジオールが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩酸塩;ドデシルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩等のアルキル四級アンモニウム塩;塩化ベンゼトニウム、及びポリアルキルビニルピリジニウム塩が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム;ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のエーテルカルボン酸ナトリウム;ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等の高級脂肪酸のアミノ酸縮合物;高級アルキルスルホン酸塩、ラウリン酸エステルスルホン酸塩等の高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;ジオクチルスルホサクシネート等のジアルキルスルホコハク酸塩;オレイン酸アミドスルホン酸等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩;アルキルアリールスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ペンタデカン−2−サルフェート等の高級アルコール硫酸エステル塩;ジポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル;スチレン−マレイン酸共重合体;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、N−ラウリルアラニン、N,N,N−トリメチルアミノプロピオン酸、N,N,N−トリヒドロキシエチルアミノプロピオン酸、N−ヘキシル−N,N−ジメチルアミノ酢酸、1−(2−カルボキシエチル)ピリミジニウムベタイン、及びレシチンが挙げられる。
本発明組成物が界面活性剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
かかる増粘剤としては、先に例示したものが挙げられる。
本発明組成物が増粘剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
かかる消泡剤としては、例えばアンチフォームCエマルション(東レ・ダウコーニング株式会社商品名)、アンチフォームCE(東レ・ダウコーニング株式会社商品名)、TSA730(モメンティブ・パフォーマンスマテリアルズ・ジャパン合同会社商品名)、TSA731(モメンティブ・パフォーマンスマテリアルズ・ジャパン合同会社商品名)、TSA732(モメンティブ・パフォーマンスマテリアルズ・ジャパン合同会社商品名)、YMA6509(モメンティブ・パフォーマンスマテリアルズ・ジャパン合同会社商品名)等のシリコーン系消泡剤;及びフルオウェットPL80(クラリアント社商品名)等のフッ素系消泡剤が挙げられる。
本発明組成物が消泡剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。
かかる防腐剤としては、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エステル、サリチル酸誘導体、プロキセル(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン)及びイソチアゾリン−3−オン誘導体(例えば、バイオホープL(ケイ・アイ化成社商品名))が挙げられる。
本発明組成物が防腐剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。
かかる凍結防止剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性グリコール類が挙げられる。
本発明組成物が凍結防止剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。
かかるpH調整剤としては、例えばクエン酸一水和物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
本発明組成物がpH調整剤を含有する場合、その合計含有量は本発明組成物全量に対して、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
本発明組成物に用いられる水は特に制限されることがなく、水道水、井水及び脱イオン水等の通常の水性懸濁状農薬組成物に用いられる水を用いることができる。
本発明組成物は水を本発明組成物全量に対して、通常40〜95重量%、好ましくは45〜90重量%含有する。
本発明組成物は、通常の水性懸濁状農薬組成物と同様の方法で、水田、畑地、果樹園、芝地、非農耕地等の場所に施用することができる。本発明組成物は所望により本発明組成物を水で希釈し、得られた水希釈液を上記場所に生育する植物や上記場所の土壌に散布する等の方法により施用することができる。該水希釈液の散布方法としては公知の散布機等を用いて該水希釈液の土壌表面散布、茎葉散布等が挙げられる。
また、該水希釈液は、種子処理、育苗箱処理等に使用することもできる。
本発明組成物は水で希釈することなくそのまま施用することもでき、例えば本発明組成物を湛水下水田等の畦畔から畦畔に沿って散布する方法が挙げられる。散布する前には通常本発明組成物が入った容器を軽く振り、本発明組成物を混ぜる。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
まず、製造例および比較製造例を示す。
製造例1
2−[(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]−α−メトキシ−N−メチル−ベンゼンアセトアミド(以下、化合物Aと記す。)を縦型ジェットミル(JOM−0101型ジェット粉砕装置、株式会社セイシン企業製)により乾式粉砕し、平均粒径10μm以下の化合物A微粉末を調製した。得られた化合物A微粉末10重量部、ポリイソシアネート(商品名:スミジュールL−75、住化バイエルウレタン株式会社製)0.2重量部及び芳香族炭化水素(商品名:ソルベッソ200ND、エクソンモービル化学株式会社製)19.8重量部を混合し、化合物A懸濁液を得た。該懸濁液30重量部を5重量%ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGH−17、日本合成化学工業株式会社製)水溶液33重量部に加えた。この混合物をロータステータ型ホモジナイザー(商品名:ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)により攪拌することで、化合物A懸濁液をポリビニルアルコール水溶液中に乳濁させ、化合物A乳濁液を得た。得られた乳濁液に1.2重量%ジエチレントリアミン(和光純薬工業株式会社製)水溶液を2重量部添加し60℃で3〜4時間攪拌し、化合物Aを含有するマイクロカプセルの水性懸濁組成物を得た。
脱イオン水14.2重量部にマグネシウムアルミニウムシリケート(商品名:ビーガムグラニュール、バンダービルト社製)0.4重量部を加え、室温で15分間攪拌した。ここにザンサンガム(商品名:ケルザンS、CPケルコ社製)0.2重量部とプロピレングリコール5重量部を加えた。この混合物を60℃で60分間攪拌した。得られた分散液を室温まで冷却してから、該分散液に防腐剤(商品名:プロキセルGXL、アーチケミカルズ社製)0.2重量部を加えて粘度調整液とした。該粘度調整液20重量部、水15重量部及び上記水性懸濁組成物65重量部を混合して化合物Aを10重量%含む本発明組成物(1)を得た。化合物Aを含有するマイクロカプセルの平均粒径は31.8μmであった。
製造例2
製造例1で調製した化合物A微粉末10重量部を2.5重量部とし、芳香族炭化水素(前述に同じ)19.8重量部を27.3重量部とした以外は製造例1と同様の操作を行い、化合物Aを2.5重量%含む本発明組成物(2)を得た。化合物Aを含有するマイクロカプセルの平均粒径は39.9μmであった。
製造例3
ロータステータ型ホモジナイザー(前述に同じ)による撹拌力の調節により、化合物Aを含有するマイクロカプセルの平均粒径31.8μmを9.9μmとした以外は製造例1と同様の操作を行い、化合物Aを10重量%含む本発明組成物(3)を得た。
製造例4
ロータステータ型ホモジナイザー(前述に同じ)による撹拌力の調節により、化合物Aを含有するマイクロカプセルの平均粒径31.8μmを3.7μmとした以外は製造例1と同様の操作を行い、化合物Aを10重量%含む本発明組成物(4)を得た。
次に試験例を示す。
試験例1
本発明組成物(1)〜(4)を、それぞれ有効成分濃度が1120ppmになるように水で希釈した。該希釈液それぞれ100μLを直径6cmのガラス製シャーレに添加して均一に広げた後、室温で風乾した。該シャーレを石英ガラス製のフタで覆い、ホウケイ酸塩フィルター(商品名:Daylight - BB Opticalフィルター、Q-Lab社製)が取り付けられた耐侯性試験機(商品名:Q−SUNキセノン促進耐侯性試験機 モデルXe−3、Q-Lab社製)内に設置し、340nmにおける強度0.68W/m2、温度34℃(断熱ブラックパネル温度計で34℃)の条件にて、キセノン光を168時間照射した。照射後アセトンで該シャーレに残存する化合物Aを抽出して高速液体クロマトグラフィーにて分析定量し、照射前の化合物A量に対する重量百分率として算出することにより、残存率を求めた。
結果を表1に示す。
Figure 0006098394

Claims (3)

  1. (a)2−[(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]−α−メトキシ−N−メチル−ベンゼンアセトアミド
    及び
    (b)疎水性有機溶媒
    を含有し、2−[(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]−α−メトキシ−N−メチル−ベンゼンアセトアミドと該疎水性有機溶媒との重量比が30:70〜70:30であって、平均粒径が5〜60μmであるマイクロカプセル。
  2. 疎水性有機溶媒が、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類及びパラフィン類からなる群より選ばれる1種以上の疎水性有機溶媒である請求項1に記載のマイクロカプセル。
  3. 請求項1または2に記載のマイクロカプセルが水連続相に懸濁されてなる水性懸濁状農薬組成物。
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