以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
(電力変換器の回路構成)
図1は、本発明の実施の形態1に従う電力変換器を含む電源システムの構成を示す回路図である。
図1を参照して、電源システム5は、複数の直流電源10aおよび10bと、負荷30と、電力変換器50とを備える。
本実施の形態において、直流電源10aおよび10bの各々は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池のような二次電池、あるいは、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の出力特性に優れた直流電圧源要素により構成される。直流電源10aおよび直流電源10bは、「第1の直流電源」および「第2の直流電源」にそれぞれ対応する。
電力変換器50は、直流電源10aおよび10bと、電力線20との間に接続される。電力変換器50は、負荷30と接続された電力線20上の直流電圧(以下、出力電圧VHとも称する)を電圧指令値VH*に従って制御する。すなわち、電力線20は、直流電源10aおよび10bに対して共通に設けられる。
負荷30は、電力変換器50の出力電圧VHを受けて動作する。電圧指令値VH*は、負荷30の動作に適した電圧に設定される。電圧指令値VH*は、負荷30の動作状態に応じて可変に設定されてもよい。さらに、負荷30は、回生発電等によって、直流電源10a,10bの充電電力を発生可能に構成されてもよい。
電力変換器50は、スイッチング素子S1〜S4と、リアクトルL1,L2とを含む。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子S1〜S4に対しては、逆並列ダイオードD1〜D4が配置されている。また、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。すなわち、スイッチング素子S1〜S4は、制御信号SG1〜SG4がハイレベル(以下、Hレベル)のときにオンする一方で、ローレベル(以下、Lレベル)のときにオフする。
スイッチング素子S1は、電力線20およびノードN1の間に電気的に接続される。リアクトルL2は、ノードN1と直流電源10bの正極端子との間に接続される。スイッチング素子S2はノードN1およびN2の間に電気的に接続される。リアクトルL1はノードN2と直流電源10aの正極端子との間に接続される。
スイッチング素子S3は、ノードN2およびN3の間に電気的に接続される。ノードN3は、直流電源10bの負極端子と電気的に接続される。スイッチング素子S4は、ノードN3および接地配線21の間に電気的に接続される。接地配線21は、負荷30および、直流電源10aの負極端子と電気的に接続される。
図1から理解されるように、電力変換器50は、直流電源10aおよび直流電源10bの各々に対応して昇圧チョッパ回路を備えた構成となっている。すなわち、直流電源10aに対しては、スイッチング素子S1,S2を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S3,S4を下アーム素子とする電流双方向の第1の昇圧チョッパ回路が構成される。同様に、直流電源10bに対しては、スイッチング素子S1,S4を上アーム素子とする一方で、スイッチング素子S2,S3を下アーム素子とする電流双方向の第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
そして、第1の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10aおよび電力線20の間に形成される電力変換経路と、第2の昇圧チョッパ回路によって、直流電源10bおよび電力線20の間に形成される電力変換経路との両方に、スイッチング素子S1〜S4が含まれる。
制御装置40は、負荷30への出力電圧VHを制御するために、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを制御する制御信号SG1〜SG4を生成する。なお、図1では図示を省略しているが、直流電源10aの電圧(以下、Vaと表記する)および電流(以下、Iaと表記する)、直流電源10bの電圧(以下、Vbと表記する)および電流(以下、Ibと表記する)、ならびに、出力電圧VHの検出器(電圧センサ,電流センサ)が設けられている。さらに、直流電源10aおよび10bの温度(以下、TaおよびTbと表記する)の検出器(温度センサ)についても配置することが好ましい。これらの検出器の出力は、制御装置40へ与えられる。制御装置40は、ECU(Electronic Control Unit)によって構成することができる。
図1の構成において、スイッチング素子S1〜S4は、「第1のスイッチング素子」〜「第4のスイッチング素子」にそれぞれ対応し、リアクトルL1およびL2は、「第1のリアクトル」および「第2のリアクトル」にそれぞれ対応する。
図2は、負荷30の構成例を示す概略図である。
図2を参照して、負荷30は、たとえば電動車両の走行用電動機を含むように構成される。負荷30は、平滑コンデンサCHと、インバータ32と、モータジェネレータ35と、動力伝達ギヤ36と、駆動輪37とを含む。
モータジェネレータ35は、車両駆動力を発生するための走行用電動機であり、たとえば、複数相の永久磁石型同期電動機で構成される。モータジェネレータ35の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ36を経由して、駆動輪37へ伝達される。駆動輪37に伝達されたトルクにより電動車両が走行する。また、モータジェネレータ35は、電動車両の回生制動時には、駆動輪37の回転力によって発電する。この発電電力は、インバータ32によってAC/DC変換される。この直流電力は、電源システム5に含まれる直流電源10a,10bの充電電力として用いることができる。
モータジェネレータの他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ35を協調的に動作させることによって、電動車両に必要な車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて直流電源10a,10bを充電することも可能である。
このように、電動車両は、走行用電動機を搭載する車両を包括的に示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車と、エンジンを搭載
しない電気自動車および燃料電池車との両方を含むものである。
(電力変換器の動作モード)
電力変換器50は、直流電源10a,10bと電力線20との間での直流電力変換の態様が異なる複数の動作モードを有する。
図3には、電力変換器50が有する複数の動作モードが示される。
図3を参照して、動作モードは、スイッチング素子S1〜S4の周期的なオンオフ制御に伴って直流電源10aおよび/または10bの出力電圧を昇圧する「昇圧モード(B)」と、スイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定して直流電源10aおよび/または10bを電力線20と電気的に接続する「直結モード(D)」とに大別される。
昇圧モードには、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なう「パラレル昇圧モード(以下、PBモード)」と、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間でDC/DC変換を行なう「シリーズ昇圧モード(以下、SBモード)」とが含まれる。PBモードは、特許文献3での「パラレル接続モード」に対応し、SBモードは、特許文献3での「シリーズ接続モード」に対応する。
さらに、昇圧モードには、直流電源10aのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10aによる単独モード(以下、aBモード)」と、直流電源10bのみを用いて電力線20との間でDC/DC変換を行なう「直流電源10bによる単独モード(以下、bBモード)」とが含まれる。aBモードでは、直流電源10bは、出力電圧VHが直流電源10bの電圧Vbよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。同様に、bBモードでは、直流電源10aは、出力電圧VHが直流電源10aの電圧Vaよりも高く制御されている限りにおいて、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。
昇圧モードに含まれる、PBモード、SBモード、aBモードおよびbBモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、電圧指令値VH*に従って制御される。これらの各モードにおけるスイッチング素子S1〜S4の制御については後述する。
直結モードには、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続した状態を維持する「並列直結モード(以下、PDモード)」と、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続した状態を維持する「シリーズ直結モード(以下、SDモード)」とが含まれる。
PDモードでは、スイッチング素子S1,S2,S4をオンに固定する一方で、スイッチング素子S3がオフに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10bの電圧Va,Vb(厳密にはVa,Vbのうちの高い方の電圧)と同等となる。Va,Vb間の電圧差は直流電源10a,10bに短絡電流を生じさせるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
SDモードでは、スイッチング素子S2,S4がオフに固定される一方で、スイッチング素子S1,S3がオンに固定される。これにより、出力電圧VHは、直流電源10a,10の電圧Va,Vbの和と同等となる(VH=Va+Vb)。
さらに、直結モードには、直流電源10aのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10aの直結モード(以下、aDモード)」と、直流電源10bのみを電力線20と電気的に接続する「直流電源10bの直結モード(以下、bDモード)」とが含まれる。
aDモードでは、スイッチング素子S1,S2がオンに固定される一方で、スイッチング素子S3,S4がオフに固定される。これにより、直流電源10bは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10aの電圧Vaと同等となる(VH=Va)。aDモードでは、直流電源10bは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Vb>Vaの状態でaDモードを適用すると、スイッチング素子S2を介して直流電源10bから10aに短絡電流が生じる。このため、aDモードの適用には、Va>Vbが必要条件となる。
同様に、bDモードでは、スイッチング素子S1,S4がオンに固定される一方で、スイッチング素子S2,S3がオフに固定される。これにより、直流電源10aは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10bの電圧Vbと同等となる(VH=Vb)。bDモードでは、直流電源10aは、電力線20と電気的に切り離された状態を維持されて不使用とされる。なお、Va>Vbの状態でbDモードを適用すると、ダイオードD2を介して直流電源10aから10bに短絡電流が生じる。このため、bDモードの適用には、Vb>Vaが必要条件となる。
直結モードに含まれる、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードの各々では、電力線20の出力電圧VHは、直流電源10a,10bの電圧Va,Vbに依存して決まるため、直接制御することができなくなる。このため、直結モードに含まれる各モードでは、出力電圧VHが負荷30の動作に適した電圧に設定できなくなることにより、負荷30での電力損失が増加する可能性がある。
一方で、直結モードでは、スイッチング素子S1〜S4がオンオフされないため、電力変換器50の電力損失が大幅に抑制される。したがって、負荷30の動作状態によっては、直結モードの適用によって、負荷30の電力損失増加量よりも電力変換器50での電力損失減少量が多くなることにより、電源システム5全体での電力損失が抑制できる可能性がある。
図3において、PBモードは「第1のモード」に対応し、SBモードは「第2のモード」に対応し、SDモードは「第3のモード」に対応する。また、aBモードおよびbBモードは「第4のモード」に対応し、aDモードおよびbDモードは「第5のモード」に対応し、PDモードは「第6のモード」に対応する。
図4は、直流電源10a,10bを異なる種類の電源で構成した場合における両直流電源の特性の一例を示す概念図である。図4には、横軸にエネルギ、縦軸に電力をプロットした、いわゆるラゴンプロットが示される。一般的に、直流電源の出力パワーおよび蓄積エネルギはトレードオフの関係にあるため、高容量型のバッテリでは高出力を得ることが難しく、高出力型のバッテリでは蓄積エネルギを高めることが難しい。
したがって、直流電源10a,10bは、一方が、蓄積エネルギが高い、いわゆる高容量型の電源で構成されるのに対して、他方が、出力パワーが高い、いわゆる高出力型の電源で構成されることが好ましい。このようにすると、高容量型の電源に蓄積されたエネルギを平準的に長期間使用する一方で、高出力型の電源をバッファとして使用して、高容量型の電源による不足分を出力することができる。
図4の例では、直流電源10aが高容量型の電源で構成される一方で、直流電源10bは高出力型の電源で構成される。したがって、直流電源10aの動作領域110は、直流電源10bの動作領域120と比較して、出力可能な電力範囲が狭い。一方で、動作領域120は、動作領域110と比較して、蓄積可能なエネルギ範囲が狭い。
負荷30の動作点101では、高パワーが短時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点101は、ユーザのアクセル操作による急加速時に対応する。これに対して、
負荷30の動作点102では、比較的低パワーが長時間要求される。たとえば、電動車両では、動作点102は、継続的な高速定常走行に対応する。
動作点101に対しては、主に、高出力型の直流電源10bからの出力によって対応することができる。一方で、動作点102に対しては、主に、高容量型の直流電源10aからの出力によって対応することができる。これにより、電動車両では、高容量型のバッテリに蓄積されたエネルギを長時間に亘って使用することによって、電気エネルギによる走行距離を延ばすことができるとともに、ユーザのアクセル操作に対応した加速性能を速やかに確保することができる。
このように、種類および容量の異なる直流電源を組み合わせることにより、各直流電源の特性を活かして、システム全体で有効に蓄積エネルギを使用することができる。以下、本実施の形態では、直流電源10aが二次電池で構成され、直流電源10bがキャパシタによって構成される例を説明する。ただし、直流電源10a,10bの組み合わせはこの例に限定されるものではなく、同種および/または同容量の直流電源(蓄電装置)によって構成することも可能である。
直流電源がバッテリによって構成される場合には、低温時に出力特性が低下する可能性や、高温時に劣化進行を抑制するために充放電が制限される可能性がある。特に、電動車両では、搭載位置の差異によって、直流電源10a,10bの間に温度差が発生するケースも生じる。したがって、電源システム5では、直流電源10a,10bの動作状態(特に温度)に応じて、あるいは、上述したような負荷30の要求に応じて、いずれか一方の直流電源のみを使用した方が、効率的であるケースが存在する。上述したような、直流電源10a,10bの一方のみを使用するモード(aBモード,bBモード,aDモード,bDモード)を設けることによって、これらのケースに対応することができる。
すなわち、本実施の形態1に従う電力変換器50では、直流電源10a,10bおよび/または負荷30の動作状態に応じて、図3に示した、複数の動作モードのうちのいずれかの動作モードが選択される。
(各動作モードでの回路動作)
次に、各動作モードにおける電力変換器50の回路動作を説明する。まず、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なうPBモードでの回路動作について、図5〜図8を用いて説明する。
(PBモードにおける回路動作)
図5および図6に示されるように、スイッチング素子S4またはS2をオンすることによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して並列に接続することができる。ここで、並列接続モードでは、直流電源10aの電圧Vaと直流電源10bの電圧Vbとの高低に応じて等価回路が異なってくる。
図5(a)に示されるように、Vb>Vaのときは、スイッチング素子S4をオンすることにより、スイッチング素子S2,S3を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が図5(b)に示される。
図5(b)を参照して、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S2,S3を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
一方、図6(a)に示されるように、Va>Vbのときには、スイッチング素子S2をオンすることにより、スイッチング素子S3,S4を介して、直流電源10aおよび10bが並列に接続される。このときの等価回路が図6(b)に示される。
図6(b)を参照して、直流電源10bおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3のオンオフ制御によって、下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。同様に、直流電源10aおよび電力線20の間では、スイッチング素子S3,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。
次に、図7および図8を用いて、電力変換器50のPBモードにおける昇圧動作について詳細に説明する。
図7には、PBモードにおける直流電源10aに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図7(a)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオンし、スイッチング素子S1,S2のペアをオフすることによって、リアクトルL1にエネルギを蓄積するため
の電流経路150が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図7(b)を参照して、スイッチング素子S3,S4のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S2のペアをオンすることによって、リアクトルL1の蓄積エネルギを直流電源10aのエネルギとともに出力するための電流経路151が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S2の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S2のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S3,S4の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図7(a)の電流経路150および図7(b)の電流経路151が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S2のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S3,S4のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10aに対して構成される。図7に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10bへの電流流通経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源10aの電圧Vaと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(1)式に示す関係が成立する。(1)式では、スイッチング素子S3,S4のペアがオンされる期間のデューティ比をDaとする。
VH=1/(1−Da)・Va …(1)
図8には、PBモードにおける直流電源10bに対するDC/DC変換(昇圧動作)が示される。
図8(a)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオンし、スイッチング素子S1,S4のペアをオフすることによって、リアクトルL2にエネルギを蓄積するための電流経路160が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図8(b)を参照して、スイッチング素子S2,S3のペアをオフするとともに、スイッチング素子S1,S4のペアをオンすることによって、リアクトルL2の蓄積エネルギを直流電源10bのエネルギとともに出力するための電流経路161が形成される。これにより、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S1,S4の少なくとも一方がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1,S4のペアがオンされる一方で、スイッチング素子S2,S3の少なくとも一方がオフされている第2の期間とを交互に繰返すことにより、図8(a)の電流経路160および図8(b)の電流経路161が交互に形成される。
この結果、スイッチング素子S1,S4のペアを等価的に上アーム素子とし、スイッチング素子S2,S3のペアを等価的に下アーム素子とする昇圧チョッパ回路が、直流電源10bに対して構成される。図8に示されるDC/DC変換動作では、直流電源10aを含む電流経路がないため、直流電源10aおよび10bは互いに非干渉である。すなわち、直流電源10aおよび10bに対する電力の入出力を独立に制御することが可能である。
このようなDC/DC変換において、直流電源10bの電圧Vbと、電力線20の出力電圧VHとの間には、下記(2)式に示す関係が成立する。(2)式では、スイッチング素子S2,S3のペアがオンされる期間のデューティ比をDbとする。
VH=1/(1−Db)・Vb …(2)
また、図7および図8から理解されるように、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4に、直流電源10aと電力線20との間のDC/DC変換による電流と、直流電源10bおよび電力線20の間でのDC/DC変換による電流との両方が流れる。
したがって、両者の電力変換によって流れる電流が、各スイッチング素子において逆方向である場合、たとえば、図7(a)における電流経路150と、図8(b)における電流経路160とが同時に形成されている場合には、両電流経路の電流が打ち消し合うため、スイッチング素子S4の通過電流は小さくなる。このような現象により、PBモードでは、スイッチング素子S1〜S4における損失は、単独の直流電源を用いてDC/DC変換を実行するaBモードまたはbBモードと比較して小さくできる場合がある。
また、直流電源10aおよび10b全体での入出力電力が同じであっても、直流電源間での電力比が変わると、上述した両電力変換経路での電流の大きさが変わるため電流が打ち消し合う効果も変化する。このため、電力変換器50の電力損失は、直流電源10a,10b間での電力分配比に依存して変化することが理解される。なお、PBモードにおけるスイッチング素子S1〜S4の損失を最小とするための技術については、後ほど変形例として詳細に説明する。
図9には、PBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。図9には、直流電源10aのPWM制御に用いられるキャリア波CWaと、直流電源10bのPWM制御に用いられるキャリア波CWbとは、同一周波数かつ同一位相であるときの例が示される。
図9を参照して、たとえば、PBモードでは、特許文献3に記載されるように、直流電源10aおよび10bの一方の出力を、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するようにフィードバック制御(電圧制御)するとともに、直流電源10aおよび10bの他方の出力を、電流IaまたはIbの電流指令値に対する電流偏差を補償するようにフィードバック制御(電流制御)することができる。この際に、電流制御の指令値(Ia*またはIb*)は、当該直流電源の電力を制御するように設定することができる。
一例として、直流電源10bの出力を電圧制御する一方で、直流電源10aの出力を電流制御するようにすると、デューティ比Daは電流偏差ΔIa(ΔIa=Ia*−Ia)に基づいて演算される一方で、デューティ比Dbは、電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)に基づいて演算される。
直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daと、キャリア波CWaとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDaが生成される。同様に、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbと、キャリア波CWbとの比較に基づいて制御パルス信号SDbが生成される。制御パルス信号/SDa,/SDbは、制御パルス信号SDa,SDbの反転信号である。
図10に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)の論理演算に基づいて設定される。
スイッチング素子S1は、図7および図8の昇圧チョッパ回路の各々で上アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S1のオンオフを制御する制御信号SG1は、制御パルス信号/SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。この結果、スイッチング素子S1は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路では上アーム素子を形成し、図8の昇圧チョッパ回路では下アーム素子を形成する。したがって、スイッチング素子S2のオンオフを制御する制御信号SG2は、制御パルス信号/SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S2は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の上アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
同様にして、スイッチング素子S3の制御信号SG3は、制御パルス信号SDaおよびSDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S3は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の下アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
また、スイッチング素子S4の制御信号SG4は、制御パルス信号SDaおよび/SDbの論理和によって生成される。これにより、スイッチング素子S4は、図7の昇圧チョッパ回路(直流電源10a)の下アーム素子および、図8の昇圧チョッパ回路(直流電源10b)の上アーム素子の両方の機能を実現するように、オンオフ制御される。
PBモードでは、制御信号SG2およびSG4が相補のレベルに設定されているので、スイッチング素子S2およびS4は相補的にオンオフされる。これにより、図5に示したVb>Vaのときの動作と、図6に示したVa>Vbの動作とが、自然に切替えられる。さらに、スイッチング素子S1,S3が相補にオンオフされることにより、直流電源10a,10bについて、デューティ比Da,Dbに従った直流電力変換が実行できる。
再び図9を参照して、制御信号SG1〜SG4は、図10に示された論理演算式に従って、制御パルス信号SDa(/SDa)およびSDb(/SDb)に基づいて生成される。制御信号SG1〜SG4に従ってスイッチング素子S1〜S4をオンオフすることにより、リアクトルL1を流れる電流I(L1)およびリアクトルL2を流れる電流I(L2)が制御される。電流I(L1)は直流電源10aの電流Iaに相当し、電流I(L2)は直流電源10bの電流Ibに相当する。
このように、PBモードでは、直流電源10a,10bと電力線20との間で並列に直流電力を入出力するDC/DC変換を実行した上で、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。さらに、電流制御の対象となる直流電源の電流指令値に応じて、当該直流電源の入出力電力を制御することができる。
PBモードでは、負荷30の入出力電力(以下、負荷電力PLとも称する)に対する、電流制御される直流電源からの入出力電力による不足分が、電圧制御される直流電源から入出力されることになる。このため、電流制御での電流指令値の設定によって、直流電源間での電力分配比率を間接的に制御することが可能となる。また、電流指令値の設定によって、一方の直流電源からの出力電力によって、他方の直流電源を充電する動作も可能である。なお、以下では、電力Pa,Pb、直流電源10a,10b全体が電力線20に対して入出力する総電力PH(PH=Pa+Pb)、および負荷電力PLは、各直流電源10a,10bの放電時および負荷30の力行動作時の電力値を正値で表し、各直流電源10a,10bの充電時および負荷30の回生動作時の電力値を負値で表すこととする。
(aBモードおよびbBモードにおける回路動作)
直流電源10a,10bの一方のみを用いる昇圧モード(aBモード,bBモード)における回路動作は、図7および図8における回路動作と共通する。
aBモードにおいては、図7(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10bを不使用とする一方で、直流電源10aおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、aBモードでは、直流電源10aの出力を制御するためのデューティ比Daに基づく制御パルス信号SDaに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
具体的には、図7(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S3およびS4は、制御パルス信号SDaに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS2は、制御パルス信号/SDaに従って共通にオンオフ制御される。
同様に、bBモードにおいては、図8(a),(b)に示すスイッチング動作によって、直流電源10aを不使用とする一方で、直流電源10bおよび電力線20(負荷30)の間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、bBモードでは、直流電源10bの出力を制御するためのデューティ比Dbに基づく制御パルス信号SDbに従って、スイッチング素子S1〜S4が制御される。
具体的には、図8(a),(b)に示した昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2およびS3は、制御パルス信号SDbに従って共通にオンオフ制御される。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1およびS4は、制御パルス信号/SDbに従って共通にオンオフ制御される。
(直結モードにおける回路動作)
直結モードでは、図3に従ってスイッチング素子S1〜S4のオンオフを固定することによって、PDモード、SDモード、aDモードおよびbDモードのいずれかが実現されることが理解される。
(SBモードにおける回路動作)
次に、SBモードでの回路動作を、図11および図12を用いて説明する。
図11(a)に示されるように、スイッチング素子S3をオン固定することによって、直流電源10aおよび10bを電力線20に対して直列に接続することができる。このときの等価回路が図11(b)に示される。
図11(b)を参照して、SBモードでは、直列接続された直流電源10aおよび10bと電力線20との間では、スイッチング素子S2,S4を共通にオンオフ制御することによって、昇圧チョッパ回路の下アーム素子のオン期間およびオフ期間を交互に形成できる。なお、スイッチング素子S1は、スイッチング素子S2,S4のオフ期間にオンされることによって、負荷30からの回生を制御するスイッチとして動作する。また、オン固定されたスイッチング素子S3により、リアクトルL1をスイッチング素子S4と接続する配線15が等価的に形成される。
次に、図12を用いて、SBモードにおけるDC/DC変換(昇圧動作)を説明する。
図12(a)を参照して、直流電源10aおよび10bを直列接続するためにスイッチング素子S3がオン固定される一方で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンし、スイッチング素子S1がオフされる。これにより、リアクトルL1,L2にエネルギを蓄積するための電流経路170,171が形成される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子をオンした状態が形成される。
これに対して、図12(b)を参照して、スイッチング素子S3をオン固定したままで、図12(a)とは反対に、スイッチング素子S2,S4のペアがオフし、スイッチング素子S1がオンされる。これにより、電流経路172が形成される。電流経路172により、直列接続された直流電源10a,10bからのエネルギと、リアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギとの和が電力線20へ出力される。この結果、直列接続された直流電源10a,10bに対して、昇圧チョッパ回路の上アーム素子をオンした状態が形成される。
スイッチング素子S3がオン固定された下で、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる一方でスイッチング素子S1がオフされている第1の期間と、スイッチング素子S1がオンされる一方でスイッチング素子S2,S4がオフされている第2の期間とを交
互に繰返すことにより、図12(a)の電流経路170,171および図12(b)の電流経路172が交互に形成される。
SBモードのDC/DC変換では、直流電源10aの電圧Va、直流電源10bの電圧Vb、および、電力線20の出力電圧VHの間には、下記(3)式に示す関係が成立する。(3)式では、スイッチング素子S2,S4のペアがオンされる第1の期間のデューティ比をDcとする。
VH=1/(1−Dc)・(Va+Vb) …(3)
ただし、VaおよびVbが異なるときや、リアクトルL1,L2のインダクタンスが異なるときには、図12(a)の動作終了時におけるリアクトルL1,L2の電流値がそれぞれ異なる。したがって、図12(b)の動作への移行直後には、リアクトルL1の電流の方が大きいときには電流経路173を介して差分の電流が流れる。一方、リアクトルL2の電流の方が大きいときには電流経路174を介して、差分の電流が流れる。
図13には、SBモードにおけるスイッチング素子の制御動作例を説明するための波形図が示される。
SBモードでは、特許文献3に記載されるように、出力電圧VHの電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を補償するように、(3)式のデューティ比Dcが演算される。そして、キャリア波CWとデューティ比Dcとの電圧比較に基づいて、制御パルス信号SDcが生成される。制御パルス信号/SDcは、制御パルス信号SDcの反転信号である。SBモードでは、直流電圧(Va+Vb)と、出力電圧VHとの間のDC/DC変換が、図10に示された昇圧チョッパ回路によって実行される。
図14に示されるように、制御信号SG1〜SG4は、制御パルス信号SDc(/SDc)の論理演算に基づいて設定することができる。
制御パルス信号SDcは、昇圧チョッパ回路の下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアの制御信号SG2,SG4とされる。同様に、昇圧チョッパ回路の上アーム素子を構成するスイッチング素子S1の制御信号SG1は、制御パルス信号/SDcによって得られる。この結果、下アーム素子を構成するスイッチング素子S2,S4のペアがオンされる期間と、上アーム素子を構成するスイッチング素子S1がオンされる期間とが相補的に設けられる。
SBモードでは、直流電源10aおよび10bが直列接続された状態で、電力線20(負荷30)との間で双方向のDC/DC変換が実行される。したがって、直流電源10aの電力Paおよび直流電源10bの電力Pbを直接制御することができない。すなわち、直流電源10a,10bの電力Pa,Pbの比は、電圧Va,Vbの比によって、下記(4)式に従って自動的に決まる。なお、直流電源10a,10bの入出力電力の和(Pa+Pb)によって、負荷30へ電力供給されることは、PBモードと同様である。
Pa:Pb=Va:Vb …(4)
このように、動作モード間で、直流電源10a,10b全体が電力線20に対して入出力する総電力PH(PH=Pa+Pb)に対する直流電源10aおよび10bの電力分配は異なってくる。
再び図3を参照して、直流電源10a,10b間の電力分配比率kは、総電力PH(PH=Pa+Pb)に対する直流電源10aの電力Paの比で定義される(k=Pa/PH)。図3の最右欄に示されるように、電力分配比率kは、動作モード間で異なる。
PBモードでは、上述のように、総電力PH(PH=Pa+Pb)に対する直流電源10aおよび10bの電力分配を制御することができる。すなわち、PBモードでは、スイッチング素子の制御により、0〜1.0の範囲内で任意の値に、電力分配比率kを設定することができる。
一方で、PBモード以外の動作モードでは、電力分配比率kを制御することはできなくなる。たとえば、直流電源10aのみを使用することを目的とする、aBモードおよびaDモードでは、k=1.0に固定される。なお、aBモードにおいて、出力電圧VHが直流電源10bの電圧Vbよりも低くなると、直流電源10bから電力線20に対する電流経路が生じるため、k<1.0となるが、この場合にも、電力分配比率を制御することはできない。同様に、bBモードおよびbDモードでは、k=0に固定される。また、bBモードにおいて、出力電圧VHが直流電源10aの電圧Vaよりも低くなるとk>0となるが、この場合にも、スイッチング素子の制御によって電力分配比率kを制御することはできない。
SBモードおよびSDモードでは、直流電源10aおよび10bが直列接続されるため、電力Pa,Pbは上記(4)式に従って、電圧Va,Vbに応じて一意に決まる。したがって、スイッチング素子の制御によって電力分配比率kを制御することはできない。
PDモードでは、直流電源10aおよび10bが並列に電力線20に対して接続される。このため、電力分配比率kは、直流電源10aおよび10bの内部抵抗に依存して一意に決まるので、各直流電源10a,10bの電力Pa,Pbを独立に制御することはできない。具体的には、直流電源10aの内部抵抗Raおよび直流電源10bの内部抵抗Rbを用いると、k=Rb/(Ra+Rb)となる。すなわち、PDモードでも、スイッチング素子の制御によって電力分配比率kを制御することはできない。
(直流電源間の電力配分制御)
本発明の実施の形態は、主に、直流電源10aおよび10bと電力線20との間で並列なDC/DC変換を行なうPBモードでの直流電源間の電力配分制御に向けられている。したがって、実施の形態1では、PBモードにおける電力変換器50の制御について、さらに詳細に説明する。
図15は、実施の形態1に従う電力変換器における直流電源間の電力配分制御を説明するための機能ブロック図である。
図15を参照して、電力変換器50の電力バランスを制御するためのパワー管理部500は、動作指令生成部505と、電力上限値設定部510と、電力下限値設定部510♯と、電力配分制御部550と、効率優先マップ560と、電力配分修正部580と、電力指令値設定部590とを有する。図15の構成において、電力配分修正部580は「第1の電力配分制御部」に対応し、効率優先マップは「記憶部」に対応する。
なお、図15を始めとする各ブロック図に示された各機能ブロックの機能については、図1に示した制御装置40のソフトウェアおよび/またはハードウェア処理で実現可能である。あるいは、少なくとも一部の機能ブロックの機能について、制御装置40とは別個に配置された上位ECUによるソフトウェアおよび/またはハードウェア処理によって実現することも可能である。
電力上限値設定部510は、直流電源10a,10bの状態に基づいて、電力上限値Pamax,Pbmaxを設定する。電力下限値設定部510♯は、直流電源10a,10bの状態に基づいて、電力下限値Pamin,Pbminを設定する。電力上限値Pamax,Pbmaxは「放電電力上限値」に対応し、電力下限値Pamin,Pbminは「充電電力上限値」に対応する。各電力上限値は、放電電力の上限値を示しており、0または正に設定される。電力上限値=0に設定されたときは、直流電源からの放電が禁止されることを意味する。同様に、各電力下限値は、充電電力の上限値を示しており、0または負に設定される。電力下限値=0に設定されたときは、直流電源の充電が禁止されることを意味する。
動作指令生成部505は、負荷30の状態(負荷状態)および負荷30への操作入力に応じて、負荷30の動作指令値を生成する。さらに、動作指令生成部505には、電力上限値設定部510および電力下限値設定部510♯によって設定された、電力上限値Pamax,Pbmaxおよび電力下限値Pamin,Pbminが入力される。
たとえば、図2の構成例では、負荷状態は、モータジェネレータ35の回転速度および出力トルクを含む。また、負荷操作入力には、モータジェネレータ35を搭載した電動車両でのドライバのアクセルペダルおよびブレーキペダルの操作が含まれる。さらに、負荷動作指令値は、モータジェネレータ35のトルク指令値Tqcomを含む。図2に示したインバータ32が、電力線の直流電圧(出力電圧VH)とモータジェネレータMGの各相に印加される交流電力との間のDC/AC変換を制御することにより、モータジェネレータ35出力トルクはトルク指令値Tqcomに制御される。
動作指令生成部505は、電力上限値Pamax,Pbmaxおよび電力下限値Pamin,Pbminに従って直流電源10a,10b全体での電力上限値PHmaxおよび電力下限値PHminを下記(5),(6)式に従って設定する。
PHmax=Pamax+Pbmax …(5)
PHmin=Pamin+Pbmin …(6)
動作指令生成部505は、負荷電力PLがPHmin〜PHmaxの範囲内に収まるように制限して、負荷30の動作指令値(Tqcom)を生成する。たとえば、負荷電力PLは、トルク指令値Tqcomとモータジェネレータ35の回転速度Nmとの積に比例するので、この積に従って求められた負荷電力PL*(PL*=Tqcom・Nm)がPHmax≦PL*≦PHminの範囲内となるように制限して、トルク指令値Tqcomが設定される。
図16および図17は、電力上限値設定部510の構成を説明するための機能ブロック図である。電力上限値設定部510は、直流電源10aに対応する電力上限値設定部510a(図16)と、直流電源10bに対応する電力上限値設定部510b(図17)とを含む。
図16には、電力上限値設定部510aの構成を説明するための機能ブロック図が示される。電力上限値設定部510aは、直流電源10aの電力上限値Pamaxを設定する。
図16を参照して、電力上限値設定部510aは、ベース上限値設定部512aと、偏差演算部514a,516a,518aと、最小値抽出部520a,522aと、最大値抽出部521aと、制御演算部524a,526a,528aと、演算部530a,535aとを有する。
ベース上限値設定部512aは、直流電源10aのSOC(SOCa)および温度Taに基づいて、ベース上限値Pamaxbs(Pamaxbs≧0)を設定する。たとえば、予め求められた直流電源10aの静的な特性に基づいて、SOCa,Taを変数としてベース上限値Pamaxbsを設定するための関数式ないしマップを設定することができる。
偏差演算部514aは、ベース上限値Pamaxbsから現在の電力Paを減算した電力偏差を出力する。電力Paは、現在の電圧Vaおよび電流Iaの積によって演算することができる。Pa>Pamaxbsのとき電力偏差は負値であり、Pa<Pamaxbsのとき電力偏差は正値である。最小値抽出部520は、偏差演算部514aによって演算された電力偏差と、「0」との最小値を出力する。したがって、最小値抽出部520aの出力値は、Pa<Pamaxbsのときには0になる一方で、Pa>Pamaxbsのとき(すなわち、放電電力上昇時)には電力偏差に従った負値となる。
偏差演算部516aは、直流電源10aの下限電圧Vaminから現在の出力電圧Vaを減算した電圧偏差を出力する。Va>Vaminのとき電圧偏差は負値であり、Va<Vaminのとき電圧偏差は正値である。最大値抽出部521aは、偏差演算部516aによって演算された電圧偏差と、「0」との最大値を出力する。したがって、最大値抽出部521aの出力値は、Va>Vaminのときには0になる一方で、Va<Vaminのとき(すなわち、電圧低下時)には電圧偏差に従った正値となる。
偏差演算部518aは、直流電源10aの上限電流Iamax(Iamax≧0)から現在の電流Iaを減算した電流偏差を出力する。Ia>Iamaxのとき電流偏差は負値であり、Ia<Iamaxのとき電流偏差は正値である。最小値抽出部522aは、偏差演算部518aによって演算された電流偏差と、「0」との最小値を出力する。したがって、最小値抽出部522aの出力値は、Ia<Iamaxのときには0になる一方で、Ia>Iamaxのとき(すなわち、放電電流上昇時)には電圧偏差に従った負値となる。
制御演算部524aは、最小値抽出部520aの出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。制御演算部526aは、最大値抽出部521aの出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。制御演算部528aは、最小値抽出部522aの出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。
演算部530aは、制御演算部524a,526a,528aの出力値に基づいて、電力上限値Pamaxに対する修正量Pamaxcmを演算する。演算部535aは、ベース上限値Pamaxbsから修正量Pamaxcmを減算することによって、直流電源10aの電力上限値Pamaxを設定する。
これにより、電力偏差に基づいて、Pa>Pamaxbsのときに、Pamaxを低下させるように修正量Pamaxcmが演算される。一方で、Pa<Pamaxbsのときには、ベース上限値Pamaxbsに対する修正が小さくなるように、電力上限値Pamaxは設定される。
同様に、電圧偏差に基づいて、Va<Vaminのときに、Pamaxを低下させるように修正量Pamaxcmが演算される。一方で、Va>Vaminのときには、ベース上限値Pamaxbsに対する修正が小さくなるように、電力上限値Pamaxは設定される。
また、電流偏差に基づいて、Ia>Iaminのときに、Pamaxを低下させるように修正量Pmaxcmが演算される。一方で、Ia<Iaminのときには、ベース上限値Pamaxbsに対する修正が小さくなるように、電力上限値Pamaxは設定される。
このように、電力上限値Pamaxは、直流電源10aの状態(SOCa,Ta)に基づくベース値を基本に、放電電力上昇時、放電電流上昇時または放電による電圧低下時には、放電電力を制限するように設定される。
図17には、電力上限値設定部510bの構成を説明するための機能ブロック図が示される。電力上限値設定部510bは、直流電源10bの電力上限値Pbmaxを設定する。直流電源10bの電力上限値Pbmaxについても、電力上限値設定部510aと同様の構成によって設定することができる。
図17を参照して、電力上限値設定部510bは、ベース上限値設定部512bと、偏差演算部514b,516b,518bと、最小値抽出部520b,522bと、最大値抽出部521bと、制御演算部524b,526b,528bと、演算部530b,535bとを有する。
電力上限値設定部510bは、電力上限値設定部510aと同様に、直流電源10bの状態(SOCb,Tb)に基づくベース値Pbmaxbsと、放電電力上昇(Pb>Pbmax)、放電電流上昇(Ib>Ibmax)または放電による電圧低下(Vb<Vbmin)に応じてPbmaxを低下させるための修正量Pbmaxcmとに基づいて、電力上限値Pbmaxを設定する。
このように、電力上限値設定部510によれば、直流電源10a,10bの状態に基づくベース上限値Pamaxbs,Pbmaxbsを超えた放電が継続しないように、電力上限値Pamax,Pbmaxを設定することができる。
さらに、電力下限値設定部510♯の詳細を図18および図19を用いて説明する。図18および図19は、電力下限値設定部510♯の構成を説明するための機能ブロック図である。電力下限値設定部510♯は、直流電源10aに対応する電力下限値設定部510a♯(図18)と、直流電源10bに対応する電力下限値設定部510b♯(図19)とを含む。
図18には、電力下限値設定部510a♯の構成を説明するための機能ブロック図が示される。電力下限値設定部510a♯は、直流電源10aの電力下限値Paminを設定する。
図18を参照して、電力下限値設定部510a♯は、ベース下限値設定部512a♯と、偏差演算部514a♯,516a♯,518a♯と、最小値抽出部520a♯,522a♯と、最大値抽出部521a♯と、制御演算部524a♯,526a♯,528a♯と、演算部530a♯,535a♯を有する。
ベース下限値設定部512a♯は、直流電源10aのSOC(SOCa)および温度Taに基づいて、ベース下限値Paminbs(Paminbs≦0)を設定する。たとえば、予め求められた直流電源10aの静的な特性に基づいて、SOCa,Taを変数としてベース下限値Paminbsを設定するための関数式ないしマップを設定することができる。
偏差演算部514a♯は、現在の電力Paからベース下限値Paminbsを減算した電力偏差を出力する。Pa>Paminbsのとき電力偏差は正値であり、Pa<Paminbsのとき電力偏差は負値である。最小値抽出部520a♯は、偏差演算部514a♯によって演算された電力偏差と、「0」との最小値を出力する。したがって、最小値抽出部520a♯の出力値は、Pa>Paminbsのときには0になる一方で、Pa<Pamaxbsのとき(すなわち、充電電力上昇時)には電力偏差に従った負値となる。
偏差演算部516a♯は、現在の出力電圧Vaから直流電源10aの上限電圧Vamaxを減算した電圧偏差を出力する。Va>Vamaxのとき電圧偏差は正値であり、Va<Vaminのとき電圧偏差は負値である。最大値抽出部521a♯は、偏差演算部516a♯によって演算された電圧偏差と「0」との最大値を出力する。したがって、最大値抽出部521a♯の出力値は、Va<Vamaxのときには0になる一方で、Va>Vamaxのとき(すなわち、電圧上昇時)には電圧偏差に従った正値となる。
偏差演算部518a♯は、現在の電流Iaから直流電源10aの下限電流Iamin(Iamin≦0)を減算した電流偏差を出力する。Ia<Iaminのとき電流偏差は負値であり、Ia>Iaminのとき電流偏差は正値である。最小値抽出部522a♯は、偏差演算部518a♯によって演算された電流偏差と「0」との最小値を出力する。したがって、最小値抽出部522a♯の出力値は、Ia>Iamaxのときには0になる一方で、Ia<Iamaxのとき(すなわち、充電電流上昇時)には電圧偏差に従った負値となる。
制御演算部524a♯は、最小値抽出部520a♯の出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。制御演算部526a♯は、最大値抽出部521a♯の出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。制御演算部528a♯は、最小値抽出部522a♯の出力値に対する比例積分(PI)演算の結果を出力する。
演算部530a♯は、制御演算部524a♯,526a♯,528a♯の出力値に基づいて、電力下限値Paminに対する修正量Pamincmを演算する。演算部535a♯は、ベース下限値Paminbsに修正量Pamincmを加算することによって、直流電源10aの電力下限値Paminを設定する。
これにより、電力偏差に基づいて、Pa<Paminbsのときに、Paminを上昇させるように修正量Pamincmが演算される。一方で、Pa>Paminbsのときには、ベース下限値Paminbsに対する修正が小さくなるように、電力下限値Paminは設定される。
同様に、電圧偏差に基づいて、Va>Vamaxときに、Paminを上昇させるように修正量Pamincmが演算される。一方で、Va<Vamaxのときには、ベース下限値Paminbsに対する修正が小さくなるように、電力下限値Paminは設定される。
また、電流偏差に基づいて、Ia<Iaminのときに、Paminを上昇させるように修正量Pamincmが演算される。一方で、Ia>Iaminのときには、ベース下限値Paminbsに対する修正が小さくなるように、電力下限値Paminは設定される。
このように、電力下限値Paminは、直流電源10aの状態(SOCa,Ta)に基づくベース値を基本に、充電電力上昇、充電電流上昇または充電による電圧上昇が発生すると、充電電力を制限するように設定される。
図19には、電力下限値設定部510b♯の構成を説明するための機能ブロック図が示される。電力下限値設定部510b♯は、直流電源10bの電力下限値Pbminを設定する。直流電源10bの電力下限値Pbminについても、電力下限値設定部510a♯と同様の構成によって設定することができる。
電力下限値設定部510b♯は、ベース下限値設定部512b♯と、偏差演算部514b♯,516b♯,518b♯と、最小値抽出部520b♯,522b♯と、最大値抽出部521b♯と、制御演算部524b♯,526b♯,528b♯と、演算部530b♯,535b♯を有する。
電力下限値設定部510b♯は、電力下限値設定部510a♯と同様に、直流電源10bの状態(SOCb,Tb)に基づくベース値Pbminbsと、充電電力上昇(Pb<Pbmax)、充電電流上昇(Ib<Ibmax)または充電による電圧上昇(Vb>Vbmax)に応じてPbmminを上昇させるための修正量Pbminxcmとに基づいて、電力下限値Pbminを設定する。
このように、電力下限値設定部510♯によれば、直流電源10a,10bの状態に基づくベース下限値Paminbs,Pbminbsを超えた充電が継続しないように、電力下限値Pamin,Pbminを設定できる。
再び図15を参照して、電力配分制御部550は、直流電源10a,10b全体での総電力PHの指令値PH*(以下、総電力指令値PH*とも称する)に応じて、予め設定された効率優先マップ560に従って、電源システム効率が最大となる電力分配比率k♯を設定する。たとえば、実施の形態1では、総電力指令値PH*は、動作指令生成部505によって設定された負荷動作指令値(トルク指令値Tqcom)に従う負荷電力PL*と同等に設定される(PH*=PL*)。
図20は、効率優先マップ560の構成を説明するための概略図である。
図20を参照して、縦軸に直流電源10aの電力Pa、横軸に直流電源10bの電力Pbを取った二次元平面上において、電力Paおよび電力Pbの組合せで得られる各動作点(以下、電力動作点とも称する)における電源システム効率ηが、実機試験ないしシミュレーション結果によって予め求められる。
ここで、電源システム効率ηは、下記(7)式に従って定義される。
1−η=(Plcv+Pla+Plb)/(Pa+Pb) …(7)
式(7)中のPlcvは、電力変換器50で生じる電力損失(以下、コンバータ損失)である。コンバータ損失Plcvには、各スイッチング素子S1〜S4での、ターンオン時おおよびターンオフ時に生じる電力損失(スイッチング損失)ならびに導通時に生じる電力損失(導通損失)と、リアクトルL1,L2で生じる電力損失(リアクトル損失)とが含まれる。また、直流電源10a,10bによる電源損失Pla,Plbは、直流電源10a,10bの内部抵抗による損失である。
特に、直流電源10a,10bが二次電池およびキャパシタでそれぞれ構成される等、直流電源間で内部抵抗が異なる場合には、同一の総電力PH(PH=Pa+Pb)に対しても、電力Pa,Pbの組み合わせ(すなわち、電力分配比率k)に応じて電源損失(Pla+Plb)が大きく変化することが理解される。
また、上述したように、電力変換器50のPBモードでは、直流電源10aの電力変換経路に流れる電流と、直流電源10bの電力変換経路に流れる電流とが、スイッチング素子S1〜S4で打ち消し合うことによって、スイッチング損失および/または導通損失が低減される効果が発現する。このため、同一の総電力PH(PH=Pa+Pb)に対しても、電力Pa,Pbの組み合わせ(すなわち、電力分配比率k)が変わると、各電流経路での電流の大きさ、位相についても変化するので、スイッチング素子S1〜S4での電力損失が変化する。同様に、リアクトル損失も電力分配比率kに応じて変化することが理解される。これらの電力損失Plcv,Pla,Plbは、実機試験ないしシミュレーションによって求めることができる。
図20に示されるように、電源システム効率ηが等しい各電力動作点を結ぶことによって、等効率線を求めることができる。さらに、総電力PH(ここでは、負荷電力PL*)をパラメータに、Pa=PH−Pbの等電力線を引くことができる。たとえば、図20中において、等電力線561は、PH(PL*)=Pa+Pb=0のときの等電力線であり、等電力線562,563は、PH(PL*)=P1,P2のときの、すなわち力行動作時の等電力線である。同様に、等電力線564,565は、PH(PL*)=−P1,−P2のときの、すなわち回生動作時の等電力線である。
各等電力線上で、電源システム効率ηが最大となる電力動作点の集合として、効率最適動作線600を定義することができる。すなわち、効率最適動作線600上の各電力動作点は、同一の総電力PH(PL*)に対して、電源システム全体の電力損失が最小となる、電力PaおよびPbの組み合わせ(すなわち、電力分配比率)を示している。
したがって、負荷電力PL*(すなわち、総電力指令値PH*)が決まると、当該PH*に対応した等電力線と効率最適動作線600との交点が、電源システム効率ηを最大とする電力動作点(Pb♯,Pa♯)が得られる。図20では、PL*=P2のときの電力動作点601が例示される。電力動作点601は、効率最適動作線600および等電力線563(PL*=P2)の交点となる。
この結果、電源システム効率ηを最大とする、すなわち、効率優先のための電力分配比率k♯を、下記(8)式に従って求めることができる。
k♯=Pa♯/(Pa♯+Pb♯) …(8)
したがって、総電力指令値PH*が入力されると、効率最適動作線600上の電力動作点(Pb♯,Pa♯)に対応する電力分配比率k♯が出力されるように、総電力指令値PH*と電力分配比率k♯とを対応付けた効率優先マップ560を予め作成することができる。
なお、電力Pa,Pbが同一であっても、電圧Va,Vbが変わると、電流Ia,Ibが変化するため、電源システム効率ηも変化することが懸念される。したがって、好ましくは、効率優先マップ560は、直流電源10a,10bの電圧をさらに考慮して、電力分配比率k♯を設定するように構成されることが好ましい。たとえば、直流電源10a,10bの各SOCは管理されるため、電圧Va,VbについてもSOC制御目標に対応した標準的な電圧範囲が存在する。したがって、電圧Va,Vbが当該標準範囲内であるときの特性に基づいて電力分配比率k♯のベース値を決定するとともに、電圧Va,Vbが標準範囲から外れたときには、電力分配比率k♯を補正するように効率優先マップ560を作成することができる。あるいは、電圧Va,Vbに応じて、使用する効率優先マップ560を切換えるように、効率優先マップ560を複数用意することも可能である。
再び図15を参照して、電力配分制御部550によって設定された効率優先の電力分配比率k♯は、電力配分修正部580へ入力される。電力配分修正部580は、効率優先の電力分配比率k♯に従って直流電源10a,10b間で電力を配分したときに、各直流電源10a,10bで過電力が生じないか否かをチェックする。
すなわち、電力配分修正部580は、PH*に従う直流電源10aの電力Pa(Pa=k♯・PH*)が、Pamax〜Paminの範囲内であるか否かを判定する。同様に、電力配分修正部580は、PH*に従う直流電源10bの電力Pb(Pa=(1.0−k♯)・PH*)が、Pbmax〜Pbminの範囲内であるか否かを判定する。
図21は、電力配分修正部580の動作例を説明するための概念図である。
図21を参照して、Pa>Pamax、Pb>Pbmax、Pa<PaminおよびPb<Pbminの各領域では、効率最適動作線600は点線で表記される。すなわち、直流電源10a,10bを過電力から保護するために、効率最適動作線600上の点線領域には、電流動作点を設定することができない。図21では、電力動作点601は、Pa>Pamaxの領域に位置するため、実現することができない。この場合には、総電力指令値PH*が維持される等電力線563と、電力上限値Pamaxとの交点となる電力動作点602が設定されるように、電力分配比率kが、効率優先の電力分配比率k♯から修正される。図20の例では、電力配分修正部580は、Pa=Pamax,Pb=PH*−Pamaxとなるように、電力分配比率kを修正する。
一方で、電力配分修正部580は、総電力指令値PH*に対応する等電力線と、効率最適動作線600との交点となる電力動作点が、Pamax〜PaminかつPbmax〜Pbminの範囲内であるときには、効率優先の電力分配比率k♯を、そのまま電力分配比率kに設定する(k=k♯)。
電力指令値設定部590は、電力配分修正部580によって設定された電力分配比率kと、総電力指令値PH*とに基づいて、直流電源10aの電力指令値Pa*を設定する。
図22は、本実施の形態1による電力配分制御に従った電力変換器50の制御構成を説明するための機能ブロック図である。図22に示された、デューティ比演算部300およびPWM(Pulse Width Modulation)制御部400は、「電力変換器制御部」に対応する。
図22を参照して、デューティ比演算部300は、電力指令値設定部590によって設定された電力指令値Pa*、電圧指令値VH*に従って、直流電源10aの電力Pa(電圧Va,電流Ia)および出力電圧VHのフィードバック制御により、式(1),(2)のデューティ比Da,Dbを演算する。
上述のように、PBモードでは、電流制御される直流電源(ここでは直流電源10a)の電流指令値Ia*を、Ia*=Pa*/Vaと設定することにより、電流Iaのフィードバック制御によるデューティ比Daの演算によって、電力Paを電力指令値Pa*に制御することができる。
一方で、電圧制御される直流電源(ここでは直流電源10b)については、出力電圧VHのフィードバック制御によるデューティ比Dbの演算によって、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。
PWM制御部400は、デューティ比演算部300によって設定されたデューティ比Da,Db、ならびに、キャリア波発生部410からのキャリア波CWa,CWbに基づくパルス幅変調制御によって、スイッチング素子S1〜S4の制御信号SG1〜SG4を生成する。PWM制御部400によるパルス幅変調制御および制御信号SG1〜SG4の生成は、図9および図10で説明したのと同様に実行されるので、詳細な説明は繰り返さない。
これにより、出力電圧VHを電圧指令値VH*にフィードバック制御するとともに、直流電源10aの電力Paを、基本的には電力分配比率k♯に従って設定された電力指令値Pa*にフィードバック制御することができる。また、直流電源10bの電力Pbについても、間接的にPH*−Pa*に制御される。すなわち、一方の直流電源の電力を制御することにより、直流電源10a,10b間の電力分配を電力分配比率k♯に従って制御することができる。
したがって、実施の形態1に従う電力変換器の電力配分制御によれば、複数の直流電源10a,10bおよび電力変換器50を含む電源システムにおける全体効率が最大となるように、直流電源10a,10b間の電力配分を制御することが可能となる。すなわち、複数の直流電源を含む電源システムとすることによって、特許文献1,2にも記載されるように、直流電源間の電力分配比率が制御可能なファクターとして出現することになるが、本発明によれば、電源システム全体の効率を優先するという観点から、電力分配制御を最適化することができる。
さらに、電力配分修正部580により、直流電源10a,10bに電力上下限値を超えた充放電が生じないように電力分配比率を修正できるので、直流電源10a,10bの過電力を回避した上で、電源システム全体の効率を向上するように、直流電源間での電力配分を適切に設定することができる。
なお、実施の形態1に従う電力配分制御では、複数の直流電源のいずれかでのSOC低下時に、SOCが低下した当該直流電源を、他の直流電源からの出力によって充電するための電力循環を実行するように、効率優先の電力分配比率k♯に従う電力配分を修正することも可能である。
図23は、電力循環のための制御構成を説明するための機能ブロック図である。
図23を参照して、電力循環制御部587は、直流電源10a,10bのSOCa,SOCbに基づいて、直流電源10a,10b間での電力循環のための循環電力値Prを設定する。循環電力値Prは、SOCaまたはSOCbを上昇または低下させる必要がある場合に設定される。たとえば、SOCa,SOCbの各々について、所定の制御目標(制御中心値および/または制御範囲)へ近付けるためのSOC制御のために、循環電力値Prが設定される。
循環電力値Prが正値に設定されると、電力Paは正方向にシフトされる一方で、電力Pbは負方向にシフトされる。したがって、SOCaの上昇により直流電源10aを強制的に放電したい場合、または、SOCbの低下により直流電源10bの充電を促進したい場合には、Pr>0の正値に設定される。反対に、循環電力値Prが負値に設定されると、電力Paは負方向にシフトされる一方で、電力Pbは正方向にシフトされる。したがって、SOCaの低下により直流電源10aの充電を促進したい場合、または、SOCbの上昇により直流電源10bの放電を促進したい場合には、Pr<0の負値に設定される。また、SOC制御のために直流電源10a,10bの充放電を促進する必要が無い場合には、Pr=0に設定される。
一例として、SOCbが基準値(下限側)よりも低下した場合には、循環電力値Pr(Pr>0)を設定することによって、Paを放電側にPrだけシフトするとともに、電力Pbを充電側にPrだけシフトさせることができる。PH*>0(力行動作時)であっても、Pamax>PHのときには、直流電源10aからの電力によって、総電力指令値PH*を確保するとともに直流電源10bを充電することができる。特に、Pr+PH*<Pamaxであれば、Pbmin≦−Prの範囲内で、循環電力値Prに従って直流電源10bを充電することができる。反対に、SOCaが基準値(下限側)よりも低下した場合には、上記とは正負を逆転させるように循環電力値Prを設定することができる。
また、SOCbが基準値(上限側)よりも上昇した場合には、循環電力値Pr(Pr<0)を設定することによって、Paを充電側に|Pr|だけシフトするとともに、電力Pbを放電側に|Pr|だけシフトさせることができる。PH*<0(回生動作時)であっても、Pamin<PH*のときには、総電力指令値PH*を直流電源10aで受け入れるとともに、直流電源10bを放電することが可能である。特に、Pamin<Pr+PH*であれば、−Pr≦Pbmaxの範囲内で、循環電力値|Pr|に従って直流電源10bを放電することができる。SOCaが基準値(上限側)よりも上昇した場合には、上記とは正負を逆転させるように循環電力値Prを設定することができる。
電力配分修正部585は、図15に示された、電力配分修正部580および電力指令値設定部590に代えて配置される。電力配分修正部585は、Pr=0のときには、電力配分制御部550によって設定された電力分配比率k♯に従って、電力指令値Pa*を設定する。すなわち、Pa*=k♯・PH*に設定される。図23の構成において、電力配分修正部585は「第2の電力配分修正部」に対応する。
一方で、電力配分修正部585は、Pr>0ないしPr<0(すなわち、Pr≠0)に設定されている場合には、循環電力値Prに従って、電力分配比率k♯に従った電力配分を修正することにより、電力指令値Pa*を設定する。
図24には、電力配分修正部585の動作例が示される。
図24を参照して、PL*=P3(すなわち、PH*=P3)である状態で、SOCbが基準値よりも低下したものとする。この場合、効率優先の電力分配比率k♯に従うと、等電力線564および効率最適動作線600の交点である、直流電源10bからも放電するような電力動作点603が設定されることになる。しかしながら、SOC制御の面からは、直流電源10bの充電を促進することが必要である。この例では、電力上限値Pamaxは総電力指令値PH*に対して余裕があるので、直流電源10aの電力を用いて、総電力PHを確保しつつ直流電源10bを充電することが可能である。このような電力循環を行なうと、放電が進んだ直流電源のSOCを速やかに回復することができる。
図24の例では、直流電源10bの充電(すなわち、直流電源10aの放電)を促進するように電力循環値Pr(Pr>0)を設定することにより、電力動作点は、等電力線564上で、直流電源10aの配分を増加させる方向にシフトされる。これにより、直流電源10bの電力Pbは、負方向(充電側)に修正される。特に、直流電源10bからの放電が停止される電力動作点604を超えて、Pa>PH*の領域の電力動作点605を選択するように電力循環値Prを設定することにより、電力Pb<0となる。すなわち、直流電源10aからの出力によって、直流電源10bを充電することが可能となる。
電力配分修正部585は、効率優先の電力分配比率k♯に従う電力配分を循環電力値Prによって修正するように、電流制御の対象である直流電源10aの電力指令値Pa*を下記(9)式に従って設定する。
Pa*=PH*・k♯+Pr …(9)
すなわち、直流電源10aの電力指令値Pa*は、総電力指令値PH*を電力分配比率k♯に従って配分した電力に循環電力値Prに加えた電力となる。電流制御の対象である直流電源10aの出力が電力指令値Pa*に従って制御される一方で、直流電源10bの出力が出力電圧VHのフィードバックによって制御される結果、直流電力10a,10b全体で、総電力指令値PH*(すなわちPL*)相当の電力が出力される。この結果、直流電源10bの電力Pbは、総電力指令値PH*を電力分配比率k♯に従って配分した電力((1−k)・PH*)から循環電力値Prを差し引いた電力となる。
このような電力循環制御を組み合わせると、基本的には、効率優先の電力分配比率k♯に従って直流電源間の電力配分を制御する一方で、一部の直流電源のSOCが上昇ないし低下したときに、当該直流電源のSOCを適正レベルまで速やかに回復することができる。なお、図23に示された電力配分修正部585は、電力配分修正部580の機能と組み合わせて用いることも可能である。この場合には、循環電力値Prによる修正後の電力指令値Pa*がPamin〜Pamaxの範囲外であるとき、または、(PH*−Pa*)がPbmin〜Pbmaxの範囲外であるときには、電力配分修正部580と同様に電力指令値Pa*を修正するように、電力配分修正部580を構成することができる。
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1の変形例では、直流電源10a,10bの両方を使用するPBモードでのパルス幅変調制御におけるキャリア波の位相制御(以下、キャリア位相制御)について説明する。上述した、直流電源10aの電力変換による電流と、直流電源10bの電力変換による電流との打ち消し合いによる電力損失低減効果は、以下に説明するキャリア位相制御によって最大化される。
図25には、キャリア波CWa,CWb間に意図的に位相差を設けた場合におけるPBモードの制御動作例が示される。
図25を参照して、キャリア波CWaおよびキャリア波CWbは、同一周波数であるが、両者の間には位相差φが設けられている。図25の例では、位相差φ=180度である。
図9に示されたφ=0度のときと同様に、キャリア波CWaおよびデューティ比Daの比較に基づいて制御パルス信号SDaが生成されるとともに、キャリア波CWbおよびデューティ比Dbの比較に基づいて、制御パルス信号SDbが生成される。
図25において、デューティ比Da,Dbは図9と同一値である。したがって、図25の制御パルス信号SDaは、図9の制御パルス信号SDaと比較して、位相は異なるもののHレベル期間の長さは同じである。同様に、図25での制御パルス信号SDbは、図9の制御パルス信号SDbと比較して、位相は異なるもののHレベル期間の長さは同じである。
したがって、キャリア波CWa,CWb間に位相差φを設けることにより、図25の制御信号SG1〜SG4は、図9の制御信号SG1〜SG4とは異なった波形となる。図9および図25の比較から、キャリア波CWa,CWbの間の位相差φを変化させることにより、電流I(L1)および電流I(L2)の位相関係(電流位相)が変化することが理解される。
一方で、同一のデューティ比Da,Dbに対して、電流I(L1),I(L2)の平均値は、図9および図25の間で同等となることが理解される。すなわち、直流電源10a,10bの出力は、デューティ比Da,Dbによって制御されるものであり、キャリア波CWa,CWbの位相差φを変化させても影響が生じない。
このため、実施の形態1の変形例では、PBモードにおいて、キャリア波CWaおよびCWbの間の位相差φを適切に調整するキャリア位相制御によって、スイッチング素子S1〜S4のスイッチング損失の低減を図る。
以下では、代表的な例として、直流電源10aおよび10bの両方が力行状態、すなわち電流I(L1)>0かつ電流I(L2)>0である状態での制御について説明する。
図26は、電力変換器50においてPBモードにおけるキャリア位相制御による電流位相を説明する波形図である。
図26を参照して、時刻Taまでは、スイッチング素子S2〜S4がオンされるので、直流電源10a,10bの両方に対して、昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオンされた状態となる、このため、電流I(L1)およびI(L2)の両方は上昇する。
時刻Taにおいて、スイッチング素子S2がターンオフされることにより、直流電源10bに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオフされた状態となるので、電流I(L2)が下降を開始する。スイッチング素子S2のターンオフと入替わりに、スイッチング素子S1がターンオンされる。
時刻Ta以降では、直流電源10aに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオンされ、直流電源10bに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオフされた状態となる。すなわち、電流I(L1)が上昇する一方で、電流I(L2)が下降する。このとき、電力変換器50での電流経路は、図27(a)のようになる。
図27(a)から理解されるように、時刻Ta以降では、スイッチング素子S4には、電流I(L1)およびI(L2)の差電流が通過することになる。すなわち、スイッチング素子S4の通過電流が小さくなる。
再び図26を参照して、時刻Ta以降の状態から、スイッチング素子S4がターンオフすると、直流電源10aに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオフされた状態となるので、電流I(L1)が下降を開始する。また、スイッチング素子S2がターンオンすると、直流電源10bに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオンされた状態となるので、電流I(L2)が再び上昇を開始する。すなわち、電力変換器50での電流経路が、図27(a)の状態から、図27(b)の状態に変化する。図27(b)の状態では、スイッチング素子S2には、電流I(L1)およびI(L2)の差電流が通過することになるため、スイッチング素子S2の通過電流が小さくなる。
図27(a)の状態でスイッチング素子S4をターンオフさせることにより、スイッチング素子S4のターンオフ時の電流、すなわち、スイッチング損失を低減できる。また、図27(b)の状態でスイッチング素子S2をターンオンさせることにより、スイッチング素子S2のターンオン時の電流、すなわち、スイッチング損失を低減できる。
したがって、電流I(L1)の下降開始タイミング(極大点)と、電流I(L2)の上昇タイミング(極小点)とが重なるように、電流位相、すなわち、キャリア波CWa,CWbの位相差φを調整する。これにより、図26の時刻Tbにおいて、スイッチング素子S2がターンオンされるとともに、スイッチング素子S4がターンオフされる。
再び図26を参照して、時刻Tcでは、スイッチング素子S1がターンオフされるとともに、スイッチング素子S4がターンオンされる。これにより、直流電源10a,10bの各々に対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオンされた状態となる。これにより、上述した時刻Ta以前の状態が再現されて、電流I(L1)およびI(L2)の両方が上昇する。
図28には、図26に示した電流位相におけるスイッチング素子S2,S4の電流波形が示される。図28(a)には、スイッチング素子S2の電流I(S2)の波形が示され、図28(b)には、スイッチング素子S4の電流I(S4)の波形が示される。
図28(a)を参照して、電流I(S2)は、時刻Taまでの期間および時刻Tc以降の期間では、I(S2)=I(L2)となる。時刻Ta〜Tbの期間では、スイッチング素子S2がオフされるので、I(S2)=0である。そして、時刻Tb〜Tcの期間では、図27(b)に示したように、I(S2)=−(I(L1)−I(L2))となる。
図28(b)を参照して、電流I(S4)は、時刻Taまでの期間および時刻Tc以降の期間では、I(S4)=I(L1)となる。時刻Ta〜Tbの期間では、図27(a)に示したように、I(S4)=−(I(L2)−I(L1))となる。そして、時刻Tb〜Tcの期間では、スイッチング素子S4がオフされるので、I(S4)=0である。
図29には、図26と比較するための、図26と同等のデューティ比の下でキャリア波間の位相差φ=0としたときの電流位相が示される。
図29を参照して、キャリア波CWa,CWbの位相差φ=0のときには、電流I(L1),I(L2)が上昇/下降するタイミング(Tx,Ty,Tz,Tw)はそれぞれ別個のものとなる。
具体的には、時刻Tx以前での、スイッチング素子S1がオフしスイッチング素子S2〜S4がオンしている状態では、電流I(L1)およびI(L2)の両方が上昇する。そして、時刻Txでスイッチング素子S4がターンオフすることによって、電流I(L1)が下降を開始する。スイッチング素子S1は、スイッチング素子S4のターンオフと入替わりにターンオンする。
そして、時刻Tyでは、スイッチング素子S3がターンオフすることによって、電流I(L2)が下降を開始する。スイッチング素子S4は、スイッチング素子S3のターンオフと入替わりにターンオンする。これにより、電流I(L1)およびI(L2)の両方が下降する。
時刻Tzでは、スイッチング素子S2がターンオフするとともに、スイッチング素子S3がターンオンする。これにより、直流電源10aに対して昇圧チョッパ回路の下アーム素子がオンした状態となるので、電流I(L1)が再び上昇する。さらに、時刻Twでは、スイッチング素子S1がターンオフするとともに、スイッチング素子S2がターンオンする。これにより、時刻Tx以前の状態が再現されるので、電流I(L1)およびI(L2)の両方が上昇する。
図30には、図29に示した電流位相におけるスイッチング素子S2,S4の電流波形が示される。図30(a)には、スイッチング素子S2の電流I(S2)の波形が示され、図30(b)には、スイッチング素子S4の電流I(S4)の波形が示される。
図30(a)を参照して、電流I(S2)は、時刻Txまでの期間および時刻Tw以降の期間では、I(S2)=I(L2)となる。時刻Tx〜Tyの期間では、図27(b)と同様の電流経路が形成されるので、I(S2)=−(I(L1)−I(L2))となる。そして、時刻Ty〜Tzの期間では、直流電源10aに対する上アーム素子として動作するので、I(S2)=−I(L1)となる。電流I(L1),I(L2)の両方が下降する時刻Ty〜Tzの期間では、スイッチング素子S2は直流電源10aに対して上アーム素子として動作するので、I(S2)=−I(L1)となる。時刻Tz〜Twの期間では、スイッチング素子S2がオフされるので、I(S2)=0である。
図30(b)を参照して、電流I(S4)は、時刻Txまでの期間および時刻Tw以降の期間では、I(S4)=I(L1)となる。時刻Tx〜Tyの期間では、スイッチング素子S4がオフされるので、I(S4)=0である。電流I(L1),I(L2)の両方が下降する時刻Ty〜Tzの期間では、スイッチング素子S4は直流電源10bに対する上アーム素子として動作するので、I(S4)=−I(L2)となる。時刻Tz〜Twの間では、図27(a)と同様の電流経路が形成されるので、I(S2)=−(I(L2)−I(L1))となる。
図30(a)の時刻Tbで生じる電流I(S2)と、図30(a)の時刻Twで生じる電流I(S2)との比較から、図28の電流位相となるように位相差φを調整することによって、スイッチング素子S2のターンオン電流、すなわち、ターンオン時のスイッチング損失が低減されることが理解される。さらに、図28(a)の時刻Tb〜Tcでの電流I(S2)と、図30(a)の時刻Ty〜Tzでの電流I(S2)との比較から、スイッチング素子S2の導通損失についても低減されることが理解される。
同様に、図28(b)の時刻Tbでの電流I(S4)と、図30(b)の時刻Txでの電流I(S4)との比較から、図26の電流位相となるように位相差φを調整することによって、スイッチング素子S4のターンオフ電流、すなわち、ターンオフ時のスイッチング損失が低減されることが理解される。さらに、図28(b)の時刻Ta〜Tbでの電流I(S4)と、図30(a)の時刻Ty〜Tzでの電流I(S4)との比較から、スイッチング素子S4の導通損失についても低減されることが理解される。
このように、キャリア波CWa,CWbの間に位相差φを設けることにより、スイッチング素子S1〜S4での損失を低減できる。図26に示したように、直流電源10aおよび10bの両方が力行となる状態では、電流I(L1)の下降開始タイミング(極大点)と、電流I(L2)の上昇タイミング(極小点)が重なるように、すなわち、スイッチング素子S2のターンオンタイミングと、スイッチング素子S4のターンオフタイミングとが一致するように、位相差φを設定することによって、スイッチング素子S1〜S4での損失が抑制される。
この結果、直流電源10aおよび10bと電力線20(負荷30)との間の直流電力変換を高効率で実行することができる。このような位相差φでは、制御パルス信号SDaの立下りタイミング(または立上りタイミング)と、制御パルス信号SDbの立上りタイミング(または立下りタイミング)とが重なることになる。言い換えると、制御パルス信号SDaおよびSDbの間でパルスの遷移タイミング(すなわち、パルスのHレベル/Lレベルが切り換わるタイミング)を合わせるように、位相差φを調整することが必要となる。
図9および図25からも理解されるように、制御パルス信号SDa,SDbは、デューティ比Da,Dbによって変化する。したがって、図26のような電流位相が実現できる位相差φ、すなわち、キャリア位相制御による位相差φについても、デューティ比Da,Dbに応じて決定されることが理解できる。このため、デューティ比Da,Dbと、キャリア位相制御による位相差φとの関係を予め求めるとともに、その対応関係を予めマップ(以下、「位相差マップ」とも称する)あるいは関数式(以下、「位相差算出式」とも称する)として制御装置40に記憶することが可能である。
そして、PBモードにおける直流電源10a,10bでの電流制御のためのPWM制御では、算出されたデューティ比Da,Dbに基づいて、キャリア位相制御のための位相差φを算出することができる。そして、算出された位相差φを有するようにキャリア波CWa,CWbを発生させることにより、スイッチング素子S1〜S4での損失を抑制した高効率のDC/DC変換を実現することができる。
図26〜図30では、直流電源10aおよび10bの両方が力行の状態を説明したが、その他の状態においても、同様のキャリア位相制御が実行できる。
図31は、直流電源の各動作状態における本発明の実施の形態1に従うキャリア位相制御を説明するための図表である。
図31を参照して、状態Aでは、上述した、直流電源10aおよび10bの両方が力行状態である。図26に示したように、電流I(L1)の下降タイミング(極大点)と、電流I(L2)の上昇タイミング(極小点)とが図中のTbで重なるような電流位相となるように、キャリア波の位相差φを調整する。これにより、Tbにおけるスイッチング素子S2のターンオン損失およびスイッチング素子S4のターンオフ損失を低減できる。さらに、上述のように、Ta〜Tbの期間におけるスイッチング素子S4の導通損失および、Tb〜Tcの期間におけるスイッチング素子S2の導通損失を低減することができる。
状態Bでは、直流電源10aおよび10bの両方が回生状態である。この状態では、電流I(L1)の上昇タイミング(極小点)と、電流I(L2)の下降タイミング(極大点)とが図中のTbで重なるような電流位相となるように、キャリア波の位相差φを調整する。これにより、Tbにおけるスイッチング素子S4のターンオン損失およびスイッチング素子S2のターンオフ損失を低減できる。さらに、上述のように、Ta〜Tbの期間におけるスイッチング素子S2の導通損失および、Tb〜Tcの期間におけるスイッチング素子S4の導通損失を低減することができる。
状態Cでは、直流電源10aが回生状態である一方で、直流電源10bは力行状態である。この状態では、電流I(L1)の下降タイミング(極大点)と、電流I(L2)の下降タイミング(極小点)とが図中のTaで重なるような電流位相となるように、キャリア波の位相差φを調整する。これにより、Taにおけるスイッチング素子S3のターンオン損失およびスイッチング素子S1のターンオフ損失を低減できる。さらに、上述のように、Ta〜Tbの期間におけるスイッチング素子S1の導通損失および、Tc〜Taの期間におけるスイッチング素子S3の導通損失を低減することができる。
さらに、状態Dでは、直流電源10aが力行状態である一方で、直流電源10bは回生状態である。この状態では、電流I(L1)の上昇タイミングと、電流I(L2)の上昇タイミングとが図中のTcで重なるような電流位相となるように、キャリア波の位相差φを調整する。これにより、Tcにおけるスイッチング素子S1のターンオン損失およびスイッチング素子S3のターンオフ損失を低減できる。さらに、上述のように、Tb〜Tcの期間におけるスイッチング素子S1の導通損失および、Tc〜Taの期間におけるスイッチング素子S3の導通損失を低減することができる。
このように、直流電源10aおよび10bの力行/回生状態の組合せによって、スイッチング素子S1〜S4での損失を低減するための位相差φが異なる。したがって、力行/回生状態の組合せ(図31での状態A〜D)ごとに、上述した、位相差マップまたは位相差算出式を設定することが好ましい。
このように、実施の形態1の変形例に従えば、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するためのPBモードでのDC/DC変換において、上述のキャリア位相制御を組み合わせることができる。これにより、実施の形態1で説明した、直流電源10a,10bのそれぞれによるDC/DC変換での電流同士が打ち消し合う効果を最大限に享受して、スイッチング素子S1〜S4の損失が低減された高効率のDC/DC変換を実行することができる。したがって、電力変換器50の制御ではキャリア位相制御を適用することが好ましい。このため、実施の形態1で説明した効率優先マップ560(図15)についても、上記のキャリア位相制御が適用された状態でのコンバータ損失Plcvに基づいて作成されることになる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、実施の形態1に従う電力配分制御が適用される、直流電源10a,10bの出力を制御するための電力変換器制御の好ましい変形例について説明する。
図32は、本実施の形態2に従う電力変換器制御の基本的な概念を説明する図である。
図32を参照して、出力電圧VHは、総電力PHが負荷電力PLよりも大きい状態(PH>PL)では上昇する一方で、PH<PLの状態では低下する。したがって、本実施の形態2に従う電力変換器制御では、出力電圧VHの電圧指令値VH*に対する電圧偏差ΔVHに応じて総電力PHの指令値を設定する。さらに、総電力PHを電力PaおよびPbの間で分配することにより、各直流電源10a,10bの出力を電力制御(電流制御)する。
実施の形態2では、電力変換器50の複数の動作モード(図3)のうち、電力配分制御が可能であるPBモードにおける電力変換器制御について説明する。
図33および図34は、実施の形態2に従う電力変換器制御を説明するためのブロック図である。図33には、各直流電源の電力指令値を設定する制御演算のための構成が示されるとともに、図34には、設定された電力指令値に従って各直流電源の出力を制御する制御演算のための構成が示される。
図33を参照して、パワー管理部500は、図15および図20に示された、動作指令生成部505、電力上限値設定部510、電力下限値設定部510♯、電力配分制御部550、効率優先マップ560、電力配分修正部580、および、電力循環制御部587を有する。なお、図33の構成では、電力配分修正部585(図23)および電力指令値設定部590(図15)の機能は、電圧制御部200によって実行される。
パワー管理部500は、電圧制御部200に対して、電力上限値PHmax,Pamax、電力下限値PHmin,Pamin、電力分配比率kおよび、循環電力値Prを出力する。
電圧制御部200は、出力電圧VHの電圧偏差に基づいて、直流電源10a,10bの電力指令値Pa*,Pb*を設定する。電圧制御部200は、偏差演算部210と、制御演算部220と、リミッタ230と、電力分配部240と、循環電力加算部250と、リミッタ260と、減算部270とを有する。図33の構成において、リミッタ230は「第1の保護手段」に対応し、リミッタ260は「第2の保護手段」に対応する。
偏差演算部210は、電圧指令値VH*および出力電圧VHの検出値の差に従って電圧偏差ΔVH(ΔVH=VH*−VH)を算出する。制御演算部220は、電圧偏差ΔVHに基づいて、電圧制御のために要求される総電力PHrを算出する。たとえば、制御演算部220は、PI演算によって、下記(10)式に従ってPHrを設定する。
PHr=Kp・ΔVH+Σ(Ki・ΔVH) …(10)
式(10)中のKpは比例制御ゲインであり、Kiは積分制御ゲインである。これらの制御ゲインには、平滑コンデンサCHの容量値も反映される。式(10)に従って総電力PHrを設定することにより、電圧偏差ΔVHを低減するためのフィードバック制御を実現できる。負荷30の動作状態および動作指令値に従って予測された負荷電力PL*を反映して、式(11)に従って要求される総電力PHrを設定することも可能である。このようにすると、負荷30での電力消費をフィードフォワードする形で出力電圧VHを制御することができる。
PHr=Kp・ΔVH+Σ(Ki・ΔVH)+PL* …(11)
このように、実施の形態2に従う電力変換制御では、総電力指令値PH*が、パワー管理部500よりも下位の電圧制御部200において定義される。実施の形態2において、パワー管理部500で電力分配比率を決定する際の総電力指令値PH*については、負荷電力PL*に従って設定されるものとする(PH*=PL*)。
リミッタ230は、パワー管理部500によって設定されたPHmax〜PHminの範囲内となるように、電力指令値PH*を制限する。もし、PHr>PHmaxのときには、リミッタ230によりPH*=PHmaxに設定される。同様に、PHr<PHmimのときには、リミッタ230は、PH*=PHminに設定する。また、PHmax≧PHr≧PHminのときには、そのままPH*=PHrに設定される。これにより、総電力指令値PH*が確定する。
電力分配部240は、総電力指令値PH*と、パワー管理部500からの電力分配比率kに基づいて、直流電源10aが分担すべき電力k・PH*を算出する。循環電力加算部250は、電力分配部240によって算出されたk・Pa*と、パワー管理部500内の電力循環制御部587によって設定された循環電力値Prとを加算することによって、直流電源10aが要求される電力Parを算出する(Par=k・Pa*+Pr)。
リミッタ260は、パワー管理部500によって設定されたPamax〜Paminの範囲内となるように、直流電源10aの電力指令値Pa*を制限する。もし、Par>Pamaxのときには、リミッタ260によりPa*=Pamaxに修正される。同様に、PHa<Pamimのときには、リミッタ260は、Pa*=Paminに修正する。また、Pamax≧Par≧Paminのときには、そのままPa*=Parとされる。これにより、直流電源10aの電力指令値Pa*が確定する。
減算部270は、総電力指令値PH*から電力指令値Pa*を減算することによって、直流電源10bの電力指令値Pb*を設定する(Pb*=PH*−Pa*)。
図35は、図33に従って設定された電力指令値による電源システム内のパワーフローを説明するための概念図である。
図35を参照して、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するために必要な総電力指令値PH*は、電力分配比率kに従って電力指令値Pa*,Pb*に分配される。すなわち、基本的には、Pa*=k・PH、Pb*=(1−k)・PH*に設定される。これにより、直流電源10a,10b間での電力配分を制御した上で、出力電圧VHを制御するための総電力指令値PH*に従った電力を、電力線20へ入出力することができる。
さらに、循環電力値Prを設定することにより、直流電源10aからの出力電力によって直流電源10bを充電(Pr>0)、あるいは、直流電源10bからの出力電力によって直流電源10aを充電(Pr<0)することができる。
また、電力指令値Pa*がリミッタ260によってPamax〜Paminの範囲内に確実に制限されるので、直流電源10aを過電力から保護できる。すなわち、直流電源10aの過充電および過放電を防止できる。
また、負荷電力PLが、パワー管理部500(動作指令生成部505)によってPHmin〜PHmaxの範囲内に制限されるとともに、総電力指令値PH*がリミッタ230によってPHmax〜PHminの範囲内に確実に制限されることにより、直流電源10bについても過電力からの間接的な保護を図ることができる。
図34を参照して、制御装置40は、電力指令値Pa*,Pb*に従って直流電源10a,10bからの出力を制御するための、デューティ比演算部300、PWM制御部400、およびキャリア波発生部410を含む。デューティ比演算部300は、電流制御によって直流電源10aの出力を制御するための電流制御部301および、電流制御によって直流電源10bの出力を制御する電流制御部310を含む。図34においても、デューティ比演算部300およびPWM制御部400は、「電力変換器制御部」に対応する。
電流制御部301は、電流指令生成部302と、偏差演算部304と、制御演算部306と、FF加算部308とを有する。
電流指令生成部302は、電力指令値Pa*と、電圧Vaの検出値とに基づいて、直流電源10aの電流指令値Ia*を設定する(Ia*=Pa*/Va)。偏差演算部304は、電流指令値Ia*および電流Iaの検出値の差に従って電流偏差ΔIa(ΔIa=Ia*−Ia)を算出する。制御演算部306は、電流偏差ΔIaに基づいて、電流フィードバック制御の制御量Dfbaを算出する。たとえば、制御演算部306は、PI演算によって、下記(12)式に従って制御量Dfbaを算出する。
Dfba=Kp・ΔIa+Σ(Ki・ΔIa) …(12)
式(12)中のKpは比例制御ゲインであり、Kiは積分制御ゲインである。これらの制御ゲインは、式(10)とは別個に設定される。
一方で、電圧フィードフォワード制御のFF制御量Dffaは、式(1)をDaについて解くことで得られるDa=(VH−Va)/VHに沿って、式(13)に従って設定される。
Dffa=(VH*−Va)/VH* …(13)
FF加算部308は、FB制御量DfbaおよびFF制御量Dffaを加算することによって、直流電源10aの出力制御に関するデューティ比Daを算出する。デューティ比Daは、式(1)と同様に、直流電源10aの電圧Vaと出力電圧VHとの間でDC/DC変換を行なう際の、昇圧チョッパ回路(図7)の下アーム素子(スイッチング素子S3,S4)がオンされる期間のデューティ比に相当する。
同様に、直流電源10bに対応する電流制御部310は、電流指令生成部312と、偏差演算部314と、制御演算部316と、FF加算部318とを有する。
電流指令生成部312は、電力指令値Pb*と、電圧Vbの検出値とに基づいて、直流電源10bの電流指令値Ib*を設定する(Ib*=Pb*/Vb)。偏差演算部314は、電流指令値Ib*および電流Ibの検出値の差に従って電流偏差ΔIb(ΔIb=Ib*−Ib)を算出する。制御演算部316は、電流偏差ΔIbに基づいて、電流フィードバック制御の制御量Dfbbを算出する。たとえば、制御演算部316は、PI演算によって、下記(14)式に従って制御量Dfbbを算出する。
Dfbb=Kp・ΔIb+Σ(Ki・ΔIb) …(14)
式(14)中のKpは比例制御ゲインであり、Kiは積分制御ゲインである。これらの制御ゲインは、式(10)および式(12)とは別個に設定される。
一方で、電圧フィードフォワード制御のFF制御量Dffbは、式(2)をDbについて解くことで得られるDb=(VH−Vb)/VHに沿って、式(15)に従って設定される。なお、式(15)中において、電圧指令値VH*は出力電圧VHの検出値としてもよい。
Dffb=(VH*−Vb)/VH* …(15)
FF加算部318は、FB制御量DfbbおよびFF制御量Dffbを加算することによって、直流電源10bの出力制御に関するデューティ比Dbを算出する。デューティ比Dbは、式(2)と同様に、昇圧チョッパ回路(図8)の下アーム素子(スイッチング素子S2,S3)がオンされる期間のデューティ比に相当する。
PWM制御部400は、電流制御部301,310によって設定されたデューティ比Da,Db、ならびに、キャリア波発生部410からのキャリア波CWa,CWbに基づくパルス幅変調制御によって、スイッチング素子S1〜S4の制御信号SG1〜SG4を生成する。PWM制御部400によるパルス幅変調制御および制御信号SG1〜SG4の生成は、図9および図10で説明したのと同様に実行されるので、詳細な説明は繰り返さない。なお、キャリア波発生部410は、実施の形態1の変形例で説明したキャリア位相制御を適用してキャリア波CWa,CWbを生成することが好ましい。
このように、実施の形態2に従う電力変換器制御によれば、PBモードでのDC/DC変換において、出力電圧VHの電圧偏差を電力指令値に変換して、各直流電源10a,10bの出力を電流制御することによって、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御することができる。特に、実施の形態2に従う電力変換器制御は、電力分配比率kに従って各直流電源10a,10bの電力指令値が設定されるので、実施の形態1で説明した電力配分制御との組み合わせに適している。また、循環電力値Prについても、各直流電源10a,10bの電力指令値への反映が容易である。
また、実施の形態2に従う電力変換器制御では、直流電源10a,10bの一方に対しては、パワー管理部500による過電力保護に加えて、電力指令値が電力上限値および電力下限値を超えないように直接制限することができる。図33の構成例では、電圧制御部200のリミッタ260により、直流電源10aの電力指令値Pa*を、Pamin≦Pa*≦Pamaxの範囲内に確実に制限することができる。これにより、直流電源10aの過電力を厳密に防止できる。一方で、図33の構成では、パワー管理部500による電力分配比率の設定後に、電圧制御部200によって電力指令値Pa*が制限されることになる。
図36は、電圧制御部200によって電力指令値が制限された場合における直流電源10a,10b間での電力配分の変化を説明するための概念図である。
図36を参照して、PL*=P4のとき、対応する等電力線565と効率最適動作線600との交点となる電力動作点606は、Pa<Pmaxである一方で、Pb>Pbmaxの領域に位置している。このため、直流電源10bの過電力を回避するためには、電力動作点606に従って電力指令値Pa*,Pb*を設定することはできない。すなわち、Pbmin≦Pb≦PbmaxかつPamin≦Pa≦Pamaxとなる、図36中で点線により囲まれる長方形の領域内に電力動作点を修正する必要がある。
ここで、パワー管理部500において、電力配分修正部580を配置せずに、効率優先マップ560に従う電力分配比率k♯が電圧制御部200に直接出力される構成とすると、過電力回避のための電力指令値の制限が、電圧制御部200のリミッタ230,260のみ実行される。このような構成とすると、電圧制御部200では制限の対象とはされない電力指令値Pb*が電力上下限値Pbmax,Pbminを超えるケースで、以下に説明するような問題点が懸念される。
電力動作点606では、Pamaxに対するPaの余裕量(Pamax−Pa)は、Pbmaxに対するPbの超過量(Pb−Pbmax)よりも大きい。このため、負荷電力PL*(総電力指令値PH*)については、PHmin〜PHmaxの範囲内である。したがって、電圧制御部200において、リミッタ230によってPH*は制限されない。さらに、Pa<Pamaxのため、リミッタ260によってPa*も制限されない。したがって、減算部270によって、Pb*=PH*−Pa*に設定されると、Pb*>Pbmaxとなってしまう。
Pb>Pbmaxの状態が継続すると、直流電源10bが過放電となる可能性がある。このため、図16に示した電力上限値設定部510では、Pb>Pbmaxになると、Pbmaxの修正量Pbmaxcm(図17)が負方向に増大するようにフィードバックが作用する。これにより、電力動作点606が選択されると、直流電源10bを過電力から保護するために、電力上限値Pbmaxは、ベース値Pbmaxbs(図17)よりも低い値へ修正される。これに伴い、総電力上限値PHmaxは、電力動作点606が設定されたときの値から、(Pbmaxbs−Pbmax)だけ低下する。電力指令値Pa*の上限はPHmax・k♯になるので、総電力上限値PHmaxが低下すると、電力分配比率k♯が同じであればPaも電力動作点606よりも低下することになる。
図36上のPbmaxは、電力動作点606が設定された際、すなわち、フィードバックが作用する前のベース値Pbmaxbsに相当する上限値を示しているものとする。図17に示された電力上限値のフィードバックでは、Pb=Pbmaxbsとなるように、Pbmaxが修正される。この結果、効率優先の電力分配比率k♯を維持すると、電力動作点は、606から607に変化することになる。しかしながら、電力動作点607においては、直流電源10bが保護されるように電力上限値Pbmaxで制御される一方、総電力PHが、フィードバックによるPHmaxの低下量に対応して低下していることが理解される。それに対して、直流電源10aは、電力動作点607においては電源保護のための電力上限値Pamaxに対してまだ余裕がある。このように、効率優先の電力分配比率k♯を維持したままにしてしまうと、出力電力にまだ電力的に余裕があるにも関わらず直流電源10aを有効に使用できなくなることにより、総電力PHを満足しないことになってしまう。
したがって、実施の形態2に従う電力変換器制御と組み合わされた場合には、パワー管理部500は、図37に示された制御処理に従って電力分配比率を修正する。
図37を参照して、パワー管理部500は、ステップS100により、直流電源10a,10bの電源状態より、電力制限値を設定する。電力上限値は上述のように電力上限値Pamax,Pbmax,PHmaxと、電力下限値Pamin,Pbmin,PHminが含まれる。ステップS100の機能は、図15〜図18に示した電力上限値設定部510,510♯の機能に対応する。
パワー管理部500は、ステップS110では、負荷電力PL*に応じて、効率優先の電力分配比率k♯を決定する。ステップS110の機能は、図15に示された電力配分制御部550および効率優先マップ560の機能に対応する。
パワー管理部500は、ステップS120では、ステップS110で決定された電力分配比率k♯に従った、仮の電力指令値Pa0,Pb0を算出する。すなわち、Pa0=PL*・k♯で算出され、Pb0=PL*・(1.0−k♯)で算出される。
パワー管理部500は、ステップS130により、電圧制御部200では電力指令値のリミッタが配置されていない直流電源10bに関して、電力指令値Pb0がPbmin〜Pbmaxの範囲であるか否かを判定する。
パワー管理部500は、Pbmin≦Pb0≦Pbmaxのとき(S130のYES判定時)には、ステップS140に処理を進めて、効率優先の電力分配比率k♯を、電圧制御部200へ出力される電力分配比率kに設定する。
一方で、パワー管理部500は、Pbmin≦Pb0≦Pbmaxではないとき(S130のNO判定時)には、ステップS150に処理を進めて、電力指令値Pa0がPamin〜Pamaxの範囲であるか否かを判定する。これにより、直流電源10bから直流電源10aに電力配分を回す余地があるかどうかが判定される。
そして、パワー管理部500は、Pamin≦Pa0≦Pamaxのとき(S150のYES判定時)には、ステップS160に処理を進めて、効率優先の電力分配比率k♯よりも直流電源10aの配分を大きくするように修正して、電圧制御部200へ出力される電力分配比率kを設定する。これにより、電力分配比率kは、効率優先の電力分配比率k♯より高い値に修正される。この結果、図36において、電力動作点が、等電力線565上を606から608に向かって移動するように、すなわち、総電力PHを低下させることなく直流電源10a,10b間の電力分配を修正することができる。
一方で、パワー管理部500は、Pamin≦Pa0≦Pamaxではないとき(S150のNO判定時)には、ステップS140に処理を進めて、効率優先の電力分配比率k♯を維持して、電圧制御部200へ出力される電力分配比率kを設定する。この場合には、直流電源10aを過電力から保護することが優先される。
なお、ステップS160における電力分配比率kの修正は、直流電源10aの余力を最大限活用するように、すなわち、Pa=Pamaxとなるように行なうことができる。このようにすると、電力動作点は606から608に変更されることになる。あるいは、制御周期毎での電力分配比率の変化量に制限を設けて、電力動作点が606から608へ向けて徐々に移動するように、電力分配比率kを徐々に修正することも可能である。
ステップS120〜S160の機能は、図15に示された電力配分制御部550および電力配分修正部580による機能に対応する。
図37に示した制御処理によって設定された電力分配比率kは、電圧制御部200に出力されて、電力指令値Pa*の設定に用いられる。そして、電力指令値Pb*は、減算部270(図33)が、総電力指令値PH*からリミット処理後の電力指令値Pa*を減算することによって求められる。
この結果、直流電源10aの電力指令値Pa*については、電圧制御部200でのリミッタ260によって、確実にPamin≦Pa*≦Pamaxの範囲内とすることができる。すなわち、直流電源10aを過電力から保護することができる。
また、電圧制御部200でリミッタが設けられていない電力指令値Pb*についても、図37に示した処理に従って、電力上下限値Pbmax,Pbminに対して直流電源10bの配分が過大である場合には、効率優先の電力分配比率k♯を修正することにより、直流電源10a,10b間の電力分配を適切に制御することができる。これにより、図37において電力動作点を606から、607ではなく608へ修正する態様により、各直流電源の蓄積エネルギを有効に活用して、総電力PH(Pa+Pb)の確保を図ることができる。
このように実施の形態2による電力変換制御によれば、出力電圧VHを電圧指令値VH*に制御するとともに、各直流電源10a,10bの電力を電流フィードバックにより制御できるので、パワー管理部500による電力分配比率kの設定に従って、直流電源10a,10bの出力を制御することができる。したがって、本実施の形態1による電力配分制御を円滑に実現することが可能な電力変換器制御を実現することができる。
なお、実施の形態2において、実施の形態1での電力配分修正部580(過電力保護)の機能のうちの電力指令値Pa*をPamin〜Pamaxの範囲内に制限する機能は、リミッタ260(図33)によっても一部実現されている。また、実施の形態1での電力配分修正部585(電力循環制御)の機能は、循環電力加算部250によって実現されている。
[実施の形態3]
実施の形態3では、図1に示した電力変換器50とは異なる構成の電力変換器に対する、実施の形態1で説明した電力配分制御の適用について説明する。
図38は、本発明の実施の形態3に従う電力変換器を含む電源システム5♯の構成例を示す回路図である。
図38を参照して、電源システム5♯では、電力変換器50に代えて、電力変換器50♯が配置される。実施の形態3に従う電力変換器50♯は、昇圧チョッパ回路6,7を有する。昇圧チョッパ回路6は、直流電源10aと、負荷30と接続された電力線20との間で双方向のDC/DC変換を実行する。昇圧チョッパ回路6は、スイッチング素子S5,S6およびリアクトルL1を含む。
昇圧チョッパ回路7は、直流電源10bと、直流電源10aと共通の電力線20との間で双方向のDC/DC変換を実行する。昇圧チョッパ回路7は、スイッチング素子S7,S8およびリアクトルL2を含む。
スイッチング素子S5〜S8に対しては、逆並列ダイオードD5〜D8が配置されている。また、スイッチング素子S5〜S8は、制御装置40からの制御信号SG5〜SG8にそれぞれ応答して、オンオフを制御することが可能である。
電力変換器50♯は、本実施の形態に従う電力変換器50とは異なり、直流電源10aおよび10bのそれぞれに対して独立に昇圧チョッパ回路6,7が設けられた構成となっている。昇圧チョッパ回路6および7は、独立に制御することができる。
制御装置40は、出力電圧VHを制御するために、スイッチング素子S5〜S8のオンオフを制御する制御信号SG5〜SG8を生成する。スイッチング素子S5〜S8は、制御信号SG5〜SG8がHレベルのときにオンする一方で、Lレベルのときにオフする。
図39には、図38に示された電力変換器50♯が有する複数の動作モードが示される。
図39を参照して、電力変換器50♯では、電力変換器50におけるSBモードおよびSDモードを除く、他の昇圧モードおよび直結モードを選択することができる。すなわち、電力変換器50♯の動作モードは、昇圧モードに属するPBモード、aBモードおよびbBモード、ならびに、直結モードに属するPDモード、aDモードおよびbDモードを有する。
PBモードでは、昇圧チョッパ回路6,7を独立に制御することにより、実施の形態1または2でのPBモードと同様に、直流電源10a,10bの出力を制御することができる。このため、PBモードでは、電力変換器50でのPBモードと同様に、直流電源10a,10b間での電力配分を制御することができる。
たとえば、実施の形態1と同様に、直流電源10a,10bの一方の直流電源の出力を電圧制御する一方で、他方の直流電源の出力を電流制御(すなわち、電力制御)することができる。この場合には、図18,20,21の構成を適用して、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御するとともに、実施の形態1と同様に設定され電力分配比率kに従って直流電源10a,10b間の電力分配を制御するように、デューティ比Da,Dbを算出することができる。
あるいは、実施の形態2と同様に、図33および図34の構成に従って、出力電圧VHの電圧偏差を電力指令値に変換して電力指令値Pa*,Pb*を設定することによって、各直流電源10a,10bの出力を電流制御することができる。これにより、出力電圧VHを電圧指令値VH*に従って制御するとともに、図37に示した制御処理により設定された電力分配比率kに従って直流電源10a,10b間の電力分配を制御するように、デューティ比Da,Dbを算出することができる。
電力変換器50♯では、昇圧チョッパ回路6,7が独立に制御されるので昇圧チョッパ回路6のスイッチング素子S5,S6の制御信号SG5,SG6は、制御パルス信号SDaに基づいて生成される。具体的には、下アーム素子を構成するスイッチング素子S6の制御信号SG6=/SGaとなり、上アーム素子を構成するスイッチング素子S5の制御信号SG5=SGaとなる。
同様に、昇圧チョッパ回路7のスイッチング素子S7,S8の制御信号SG7,SG8は、制御パルス信号SDbに基づいて生成される。具体的には、下アーム素子を構成するスイッチング素子S8の制御信号SG8=/SGbとなり、上アーム素子を構成するスイッチング素子S7の制御信号SG7=SGbとなる。
なお、電源システム5♯では、電力変換器50♯の特性を反映した効率優先マップ560を作成することが必要である。たとえば、電力変換器50♯のPBモードでは、スイッチング素子S5,S6の電流経路と、スイッチング素子S7,S8の電流経路が重なっていないので、実施の形態1の変形例に従うキャリア位相制御を適用してもスイッチング素子S5〜S8の電力損失を低減することはできない点が、電力変換器50とは異なる。このため、電力変換器50♯では、キャリア位相制御の適用は不要であり、位相差φは固定(代表的には、φ=0に固定)することができる。
電源システム5♯においても、各電力動作点での電源システム効率ηを実機試験ないしシミュレーションによって求めることによって、効率最適動作線600(図20)を予め求めることが可能である。そして、効率最適動作線600上の電力動作点に対応する電力分配比率k♯が出力されるように、総電力指令値PH*と電力分配比率k♯とを対応付けた効率優先マップ560を予め作成することができる。
これにより、実施の形態3に従う電源システム5♯においても、電力損失を最小とするための電力分配比率k♯を求めることが可能となる。さらに、直流電源10a,10b間の電力配分について、効率優先の電力分配比率k♯に従った電力配分をベースとしつつ、過電力からの保護ないし電力循環制御のために適宜修正することができる。
なお、電力変換器50♯のPBモード以外での動作は以下のようになる。
aBモードでは、昇圧チョッパ回路6のみを動作させることにより、直流電源10bを不使用とする一方で、直流電源10aおよび電力線20の間での双方向のDC/DC変換によって、出力電圧VHを電圧指令値VH*へ制御することができる。昇圧チョッパ回路6は、電圧指令値VH*に従う出力電圧VHのフィードバック制御によって動作させてもよく、実施の形態2で説明した制御構成に従って制御してもよい。
具体的には、図33および図34の制御構成において、電力分配比率k=1.0かつ循環電力値Pr=0とすることにより、リミッタ230または260によりPamin≦Pa*≦Pamaxの電力保護を行なった上で、使用される直流電源10aの電力指令値Pa*を設定することができる(Pa*=PH*)。さらに、図34の構成において、直流電源10aに対応する電流制御部301は、電力変換器50のPBモードと同様に動作して、電流フィードバック制御(電流指令値Ia*)と、電圧比に基づくフィードフォワード制御とによって、デューティ比Daを算出する(Da=Dfba+Dfba)。これに対して、aBモードでは、制御パルス信号SDbの算出は不要であるので、電流制御部310の動作は停止することができる。
aBモードでは、昇圧チョッパ回路7を構成するスイッチング素子S7,S8はオフに維持される。一方で、昇圧チョッパ回路6を構成するスイッチング素子S5,S6は、デューティ比Daに基づくパルス幅変調制御によって生成される制御パルス信号SDa(/SDa)に従ってオンオフされる。
bBモードでは、昇圧チョッパ回路7のみを動作させることにより、直流電源10aを不使用とする一方で、直流電源10bおよび電力線20の間での双方向のDC/DC変換によって、出力電圧VHを電圧指令値VH*へ制御することができる。昇圧チョッパ回路7についても、電圧指令値VH*に従う出力電圧VHのフィードバック制御によって動作させてもよく、実施の形態2で説明した制御構成に従って制御してもよい。たとえば、図33および図34の構成において、電力分配比率k=0かつ循環電力値Pr=0とすることにより、リミッタ230によりPbmin≦Pb*≦Pbmaxの電力保護を行なった上で、使用される直流電源10bの電力指令値Pb*を設定することができる(Pb*=PH*)。このとき、直流電源10bに対応する電流制御部310は、電力変換器50のPBモードと同様に動作して、電流フィードバック制御(電流指令値Ib*)と、電圧比に基づくフィードフォワード制御とによって、デューティ比Dbを算出する(Db=Dfbb+Dfbb)。これに対して、bBモードでは、制御パルス信号SDaの算出は不要であるので、電流制御部301の動作は停止することができる。
bBモードでは、昇圧チョッパ回路6を構成するスイッチング素子S5,S6はオフに維持される。一方で、昇圧チョッパ回路7を構成するスイッチング素子S7,S8は、デューティ比Dbに基づくパルス幅変調制御によって生成される制御パルス信号SDb(/SDb)に従ってオンオフされる。
PDモードでは、スイッチング素子S5,S7をオンに固定する一方で、スイッチング素子S6,S8がオフに固定される。これにより、電力変換器50でのSDモードと同様に、出力電圧VHは、直流電源10a,10の出力電圧Va,Vb(厳密にはVa,Vbのうちの高い方の電圧)と同等となる。電力変換器50と同様に、Va,Vb間の電圧差は直流電源10a,10bに短絡電流を生じされるので、当該電圧差が小さいときに限定して、PDモードを適用することができる。
aDモードでは、スイッチング素子S5がオンに固定される一方で、スイッチング素子S6〜S8がオフに固定される。これにより、電力変換器50でのaDモードと同様に、直流電源10bは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10aの電圧Vaと同等となる(VH=Va)。上述のように、aDモードの適用には、Va>Vbが必要条件となる。
bDモードでは、スイッチング素子S7がオンに固定される一方で、スイッチング素子S5,S6,S8がオフに固定される。これにより、電力変換器50でのbDモードと同様に、直流電源10aは電力線20から切り離された状態となり、出力電圧VHは、直流電源10bの電圧Vbと同等となる(VH=Vb)。上述のように、bDモードの適用には、Vb>Vaが必要条件となる。
なお、実施の形態2に従う電力変換器制御において、電力分配比率kを動作モード間で切替えることによって、図33および図34に従った共通の制御演算を、各動作モード間で適用することが可能となる。このため、複数の動作モードを選択的に適用する電力変換器50♯の制御における制御演算負荷を軽減することが可能である。さらに、昇圧チョッパ回路6,7のデューティ比Da,Dbを電流Ia,Ibのフィードバック制御によって演算できるので、出力電圧VHのフィードバック制御によって演算する制御と比較して、発生した電圧偏差ΔVHを速やかに解消することができる。
このように、実施の形態3に従う電力変換器50♯を含む電源システム5♯においても、PBモードにおいて、実施の形態1,2で説明した電力変換器50を含む電源システム5と同様に、複数の直流電源10a,10b間の電力配分を制御することが可能となる。すなわち、電源システム5♯における全体効率が最大となるように、直流電源10a,10b間の電力配分を制御することが可能となる。さらに、直流電源10a,10b間の電力配分について、効率優先の電力分配比率k♯に従った電力配分をベースとしつつ、過電力からの保護ないし電力循環制御のために適宜修正することができる。
なお、本実施の形態では、2個の直流電源10a,10bと、共通の電力線20との間でDC/DC変換を実行する電力変換器50,50♯を例示したが、3個以上の直流電源が設けられる構成に対しても、同様に動作モード選択を制御することが可能である。たとえば、n個(n≧3)の直流電源のそれぞれに対応して昇圧チョッパ回路を並列に設けるように電力変換器50♯を拡張することができる。特に、実施の形態2で説明した制御構成(図33および図34)についても、n個(n≧3)の直流電源間での電力分配比を設定するとともに、(n−1)個の直流電源に対してはリミッタ260(図33)によるのと同等の電力指令値の制限を実行することができる。このときの残りの1個の直流電源に対する電力保護は、リミッタ230(図33)および負荷電力のリミッタ(図示せず)による総電力指令値PH*の制限によって間接的に担保されることになる。また、電力変換器50♯の構成については、並列配置されるコンバータについて、例示した昇圧チョッパのみならず、少なくとも1つの直流電源に対して昇圧チョッパに代えて昇降圧コンバータを適用することも可能である。
さらに、負荷30は、直流電圧VHによって動作する機器であれば、任意の機器によって構成できる点について確認的に記載する。すなわち、本実施の形態では、電動車両の走行用電動機を含むように負荷30が構成される例を説明したが、本発明の適用はこのような負荷に限定されるものではない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。