JP6095513B2 - 農薬用展着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、農薬有効成分を農薬散布液として対象作物に散布した際に、作物表面に効率的に伸展・付着させることができ、また対象作物に対して、薬害の発生のリスクが極めて低いポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物で構成された農薬用展着剤組成物に関するものである。
展着剤としては特許文献1に、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた農薬用展着剤が開示されている。該ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素鎖の炭素数が4〜30の直鎖又は分岐のアルキル基、アルキレン基であり、ポリグリセリンの平均重合度が2〜30のものが提示され、表面張力や浸透力に関して評価を行っている。
また特許文献2では、脂肪酸と三価以上の多価アルコールとのエステルを含有する展着剤が開示されている。具体的には、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル等が挙げられ、これも表面張力のデータや感水紙での葉裏への付着性等をデカグリセリンモノラウリン酸エステル等で評価している。
しかしながら、特許文献1で示された表面張力や浸透性のデータや特許文献2での感水紙でのデータは、必ずしも、実際の作物表面への効果的な伸展・付着性を示すものではない。例えば、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル等を用いて、農薬散布液を調製し、動力噴霧機で散布を実施しても、対象作物への濡れ性は芳しくなく、作物表面への効率的な伸展・付着性は観察されない。このため、農薬用展着剤としては十分な効果を達成していない。
更に、特許文献3では、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルより選ばれた少なくとも1種を含有する展着剤が開示されている。
ここで示されたショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等は、作物表面への伸展・付着性は、既存のノニルフェニルエーテルのような高機能な炭化水素系界面活性剤と比較してかなり劣るものである。
特開2000−327507 特開2001−172104 特開2001−302410
農薬用展着剤は、病害虫・雑草を効率的に防除するために設計された農薬製剤とともに、希釈水に加え、農薬散布液を調製し、対象とする作物へ散布する補助剤であり、農薬散布液を対象作物に流亡やバウンド等をなくすことで効率的に伸展・付着させる作用がある。このような背景から、農薬用展着剤は、広い場面で使用されている。北海道等の大規模農業では、難付着性の作物である小麦、タマネギ、ネギ、キャベツ等で幅広く適応され、またハウス栽培では、果菜類への散布等でも使用されている。このような場合、特に機能性が高い農薬用展着剤が使用されている。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ノニルフェニルエーテル、やシリコーン系界面活性剤等の高機能の界面活性剤が使用されているが、植物表面への影響があり、コルク斑やワックス相への薬害等が課題となっている。特にブロッコリー、チンゲンサイ等のアブラナ科野菜、ナス、トマト、ピーマン等のナス科野菜、キヌサヤ、エンドウマメ、スナップエンドウ等のマメ科野菜等への薬害が課題である。
このような背景から、現在の機能的に優れた農薬展着剤を用いると、薬害の発生が懸念される作物等にも、適応可能な、機能的に優れ、薬害の懸念の無い展着剤の開発が望まれている。有力な候補として食品添加物にも使用され、環境への影響が少ないポリグリセリン脂肪酸エステルに注目した展着剤として、前記した公知文献等が見られるが、何れも前記の高い機能を有する展着剤と同等な性能を達成することができていない。
本発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステルに着目し、伸展・付着性が十分にありながら、課題作物等への薬害も軽減された農薬用展着剤組成物を提供するものである。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく検討した結果、炭素数8〜12の飽和脂肪酸で、平均重合度が2.0以上3.0未満のポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、炭素数8〜14の飽和脂肪酸で、平均重合度が3.0以上14.0未満のポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル(B)とを組み合わせることで、伸展・付着性が十分にありながら、課題作物等への薬害も軽減された農薬用展着剤組成物が得られることを見いだし、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、下記の1〜11に関するものである。
1. 以下の(A)及び(B)、
(A)炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度が2.0以上3.0未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A))、
(B)炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度が3.0以上14.0未満のポリグリセリンから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B))、
を、質量割合で(A)/(B)=1/9〜9/1で含有することを特徴とする農薬用展着剤組成物。
2. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)のHLBが7.5〜11であり、且つポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のHLBが9.5〜16であることを特徴とする上記1記載の農薬用展着剤組成物。
3. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の飽和脂肪酸の炭素数が8〜10であることを特徴とする上記1又は2に記載の農薬用展着剤組成物。
4. ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の飽和脂肪酸の炭素数が12〜14であることを特徴とする上記1〜3の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
5. ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のポリグリセリンの平均重合度が6〜12であることを特徴とする上記1〜4の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
6. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)が、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル及びラウリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル及びミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つである上記1〜4の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
7. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、平均重合度が2.0以上3.0未満のポリグリセリンとカプリル酸から得られ、かつ、HLBが7.5〜11以下のポリグリセリンカプリル酸エステルを含む上記1〜6の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
8. ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、HLBが13〜16であり、ポリグリセリンの平均重合度6〜12である、ポリグリセリンラウリン酸エステルを含む、上記1〜7の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
9. 更に、有機溶媒をポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計に対して、5〜100質量%含む、上記1〜8何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
10. 農薬有効成分を含む希釈液に、更に、上記1〜9のいずれか一項記載の農薬用展着剤組成物を含む農薬散布液。
11. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計濃度が100〜2000ppmである上記10に記載の農薬散布液。
本発明の農薬用展着剤組成物は、それを農薬散布液に加えることにより、農薬散布液の対象作物への効率的な伸展・付着性を可能にするとともに、対象作物への薬害のおそれがないことから、これまで農薬散布液の付着性が不十分であった薬害のリスクのある対象作物への農薬成分の付着性を向上させ、農薬効果を安定させる効果がある。
以下に、本発明の農薬用展着剤組成物、それを添加した農薬散布液、その農薬散布液を散布する方法についてより詳しく説明する。
本発明の農薬用展着剤は、以下に示すポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及び(B)を含有する組成物である。
(A)炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度が2.0以上3.0未満のポリグリセリンから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A))
(B)炭素数8〜14の飽和脂肪酸と平均重合度が3.0以上14.0未満のポリグリセリンから構成されるポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B))
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)を構成するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2.0以上3.0未満のものを使用する。このようなポリグリセリンとしては、ジグリセリンS(商品名、平均重合度2,阪本薬品工業株式会社製)が挙げられる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を構成するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が3.0以上14.0未満のものを使用する。
このようなポリグリセリンとしては、ポリグリセリン#310(商品名、平均重合度4,阪本薬品工業株式会社製)、ポリグリセリン#500(商品名、平均重合度6,阪本薬品工業株式会社製)、ポリグリセリン#750(商品名、平均重合度10,阪本薬品工業株式会社製)等が挙げられる。
また、上記のポリグリセリンは常法により合成することも出来る。例えば、グリセリンの脱水縮合反応、又は、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン(ハロゲノ−1,2−プロパンジオール)等のグリシドール若しくはその反応性誘導体から合成することもできる。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)、及び(B)においては、それぞれの平均重合度の範囲のポリグリセリンを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)であり、詳しくは、次式(式1)および(式2)から平均重合度が算出する。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、2003年度版」に準じて算出される。
また、前記の水酸基価から算出される平均重合度が2.0以上、且つ3.0未満のポリグリセリン、及び平均重合度が3.0以上のポリグリセリンにおいては、一般には、上記の平均重合度となる、分子量分布を有する組成物が使用される。また、これらの異なる分子量分布を有する(通常平均重合度の異なる)ポリグリセリンを2種以上混合して目的の平均重合度としてもよい。また、ポリグリセリン混合物の水酸基価から算出される重合度が、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の合成に使用されるものにおいては、2.0以上3.0未満、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合成に使用されるものにおいては3.0以上14.0未満であれば、それぞれの上限及び下限を超えるようなポリグリセリンが含まれていても、農薬展着剤組成物としての機能を妨げなければ支障は無い。通常、上記の範囲に入るポリグリセリンは種々販売されているのでそれを使用することが出来る。
また、平均重合度が2であるジグリセリンの場合には、高純度のジグリセリンも販売されているので、それを使用することが出来る。
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸である。炭素数8〜12の飽和脂肪酸であれば何れも使用しうるが、好ましい脂肪酸としては、炭素数8のカプリル酸、炭素数10のカプリン酸、炭素数12のラウリン酸等が挙げられる。このような脂肪酸の中でも、カプリル酸が好ましい。なお、炭素数8〜12の飽和脂肪酸は95%以上の純度を有することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)は、上記の平均重合度が2.0以上、且つ3.0未満のポリグリセリンを、上記炭素数8〜12の飽和脂肪酸で常法によりエステル化することにより、得ることが出来る。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)のHLBは、通常、7.5〜11の範囲が好ましい。該(A)成分のより好ましいHLBの下限は、8であり、更に好ましい下限は8.3であり、最も好ましい下限は8.5であり、上限は通常11以下であり、好ましくは10以下である。より好ましいHLBの範囲は、8〜11であり、最も好ましいHLBの範囲は8.5〜10である。
なお、HLBは、Hydrophile−LipophileBalanceの頭文字をとった略称であり、界面活性剤(本発明ではポリグリセリン脂肪酸エステル(A)又は(B))の水と油への親和性の程度を表す値である。一般に、HLBを算出する方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法と種々の方法が知られている。
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、次に示すグリフィンの式より算出したものである。
(式)HLB=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×20
本発明で使用できるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の好ましい具体例としては、上記のHLBを有する、上記ポリグリセリンの、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル及びラウリン酸エステル等を挙げることが出来、より好ましくはカプリル酸エステル及びラウリン酸エステルであり、最も好ましくはカプリル酸エステルである。
より具体的には、上記のHLBを有するジグリセリンモノカプリル酸エステル、ジグリセリンモノカプリン酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)との混合で、農薬用展着剤組成物として、伸展・付着性の効果の向上が特に優れるジグリセリンモノカプリル酸エステルが好ましい。
これらは単独で用いても、又、2種以上併用しても支障は無い。
なお、本発明において、ジグリセリンモノカプリル酸エステル等のように、モノ・・・エステルといった場合、必ずしも、完全にモノエステルになっていることを意味するものではなく、平均値において、ポリグリセリンの水酸基の0.1個〜2個未満がエステル化されていることを意味する。以下本明細書においては同じである。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)においては、炭素数8〜12の飽和脂肪酸と平均重合度が2.0以上3.0未満のポリグリセリンとから得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステルで、HLBが上記の範囲に入るものが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の好ましいものとしては、カプリル酸と平均重合度2.0以上3.0未満のポリグリセリンとから得られる、HLBが7.5以上、好ましくは8以上、より好ましくは8.3以上、最も好ましくは8.5以上で、かつ、11以下、好ましくは10以下のポリグリセリンカプリル酸エステルを挙げることができる。より好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル(A)としてはカプリル酸と2.0以上3.0未満のポリグリセリンとから得られる、HLBが8.5〜10のポリグリセリンカプリル酸エステルをあげることでき、更に好ましくは、同ジグリセリンモノカプリル酸エステルである。
本発明における農薬用展着剤組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、例えば、ポリグリセリンカプリル酸エステル等の好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル(A)の何れかを含む場合、該(A)成分の総量に対して、該好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル、例えばポリグリセリンカプリル酸エステルを、少なくとも30質量%以上含む方が好ましく、50質量%以上含む場合より好ましく、70〜100質量%含む場合、更に好ましい。残部は、他のポリグリセリン脂肪酸エステル(A)である。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の構成脂肪酸は、炭素数8〜14の飽和脂肪酸である。炭素数8〜14の飽和脂肪酸であれば何れも使用しうる。好ましい脂肪酸としては、炭素数8のカプリル酸、炭素数10のカプリン酸、炭素数12のラウリン酸、炭素数14のミリスチン酸が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、ラウリン酸又はミリスチン酸がより好ましく、更にラウリン酸が特に好ましい。また、これらの脂肪酸は95%以上の純度を有することが好ましい。しかし、これらに限定されるものではない。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、平均重合度が3以上14未満のポリグリセリンを炭素数8〜14の飽和脂肪酸で、常法によりエステル化して得られる。該ポリグリセリンの平均重合度は3以上14未満であれば何れも使用できるが、好ましくは4〜12、より好ましくは6〜12、更に好ましくは10〜12であり、最も好ましいのは10である。
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル(B)としては、平均重合度が4〜12、より好ましくは6〜12、更に好ましくは10〜12のポリグリセリンC8−C14飽和脂肪酸エステルで、HLBが9.5〜16であるものを挙げることが出来る。該HLBが13〜16である場合より好ましく、最も好ましくは14〜15である。
また、該脂肪酸エステルが、上記好ましい飽和脂肪酸とのエステル、即ち、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル又はミリスチン酸エステルである場合もより好ましく、更に好ましくは、カプリル酸エステル、ラウリン酸エステル又はミリスチン酸エステルであり、最も好ましくはラウリン酸エステルである。
該ラウリン酸エステルにおいては、平均重合度6〜12,より好ましくは6〜10、更に好ましくは、10のポリグリセリンラウリン酸エステルで、HLBが13〜16の場合より好ましく、最も好ましくは14〜15である。
本発明における農薬用展着剤組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、ポリグリセリンラウリン酸エステルのような、好ましい又はより好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルを含む場合、該(B)成分の総量に対して、該好ましい又はより好ましいポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばポリグリセリンラウリン酸エステル)を少なくとも30質量%以上含む方が好ましく、50質量%以上含む場合より好ましく、70〜100質量%含む場合、更に好ましい。残部は、他のポリグリセリン脂肪酸エステル(B)である。
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の好ましい具体例としては、テトラグリセリンモノカプリル酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノカプリル酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルなどが挙げられる。この中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)との混合で、農薬用展着剤組成物として、伸展・付着性の効果の向上が特に優れるヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステルが好ましい。
本発明の展着剤組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)との組合せは、前記(A)と前記(B)との任意の組合せでよい。
好ましい組合せとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)が、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル及びラウリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)が、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル及びミリスチン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つである組合せである。更に、好ましい組み合わせとしては、前記(A)がラウリン酸エステルの場合、前記(B)がカプリル酸エステルの組合せ、前記(A)がカプリル酸エステルの場合、前記(B)がラウリン酸エステル又はミリスチン酸エステルの組合せを挙げることが出来る。後者の組合せがより好ましく、更に好ましくは前記(A)がカプリル酸エステルで、前記(B)がラウリン酸エステルの組合せである。
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、農薬用展着剤としての機能性を発揮する範囲内で任意に混合調製することができるが、農薬散布液の付着性がよくない、ワックス相のあるキャベツ等の作物への付着性を良好にするためには、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の質量割合が、(A)/(B)=1/9〜9/1の範囲が適している。より好ましい質量割合としては(A)/(B)=3/7〜8/2が好ましく、更に、(A)/(B)=4/6〜7/3がより好ましい。また、(B)の含量を基準とした場合には、(B)成分1質量部に対して、(A)成分0.5〜3質量部の割合も好ましい。このような割合の場合、農薬散布液の対象作物への伸展・付着性が良好であり、尚かつ農薬展着剤組成物としての物理化学性(散布液中への農薬展着剤組成物の短時間での溶解性や保存時の安定性)が良好となるのでより好ましい。
本発明の農薬用展着剤組成物には、農薬用展着剤としての機能を妨げない範囲で、溶剤やポリグリセリン脂肪酸エステル以外の界面活性剤も使用することができる。
溶剤の例としては、グリコール類、アルコール類、水等が挙げられ、グリコール類の具体的な例としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、アルコール類としてはメタノール、イソプロピルアルコール、エタノール等が挙げられる。溶媒としては水混和性の炭素数1〜3のアルコール又はグリコール類が好ましく、溶媒の含量は前記(A)及び前記(B)の総量に対して、0〜100質量%程度、好ましくは2〜60質量%程度であり、より好ましくは10〜50質量%程度である。
また使用可能な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフエート、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。通常これらの界面活性剤は含む必要が無い。必要に応じて、前記(A)及び前記(B)の総量に対して、0〜30質量%程度の範囲で使用される。
本発明の農薬用展着剤組成物は、農薬有効成分を含む希釈液に添加し農薬散布液を作製する際に使用できる。ここでの農薬有効成分を含む希釈液とは、既に製剤化された農薬製剤を、散布用に水で希釈した希釈液を意味する。農薬製剤としては、例えばフロアブル剤、乳剤、水和剤、顆粒水和剤、マイクロカプセル剤等が挙げられ、希釈水で充分に分散や乳化することができるものを指す。本発明の農薬用展着剤組成物はいずれの農薬製剤にも使用可能である。また本発明の農薬用展着剤組成物を含む農薬散布液の作製方法は、農薬製剤に前もって本発明の農薬用展着剤組成物を添加し、その後水を加える方法でも作製できるし、農薬製剤の希釈液に後から添加することにより作製することもできる。本発明の農薬用展着剤組成物の添加量は、対象となる作物への付着性を充分に考慮し、付着性の悪い稲、麦、キャベツ等では添加量を多めに設定し、また付着性の良好なキュウリ等は添加量を少な目に設定ができ、ある程度任意に調製することができる。希釈液10Lあたり、農薬用展着剤組成物を1-20ml添加することが好ましく、さらに希釈液10Lあたり、農薬用展着剤組成物を2-10ml添加することがより好ましい。
農薬散布液中に含まれる、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計濃度は、対象作物への農薬成分の付着性の向上や、農薬効果の安定化に影響を与える。その濃度は対象作物の種類や散布ノズル等の散布条件により異なるが、通常、100〜2000ppm程度が好ましい。さらに好ましくは、200〜1000ppmである。
上記の農薬有効成分及び農薬用展着剤組成物を含有する農薬散布液は、そのまま通常の散布方法で散布することができる。散布方法としては動噴散布、ブームスプレーヤ散布、スピードスプレーヤ散布及び無人ヘリコプター散布が挙げられる。
本発明の農薬用展着剤組成物とその散布方法は各種農薬製剤(殺菌剤、殺虫剤、除草剤等)が登録を取得している作物へ適応することができ、例えば、稲、麦等の穀類、キャベツ、じゃがいも、キュウリ、ナス等の野菜類、茶、リンゴ、柑橘等の果樹類等に殺菌剤、殺虫剤、除草剤等とともに使用が可能である。
本発明の農薬用展着剤組成物とその散布方法に適応可能な農薬製剤の成分は、例えば「社団法人 日本植物防疫協会 農薬要覧2006 平成18年10月19日発行」に記載されているものが使用することができ、1種もしくは2種以上の組み合わせで農薬登録の範疇での使用方法とともに使用することができる。それら農薬製剤の有効成分としては、殺虫剤では、アクリナトリン、アセキノシル、アセタミプリド、アセフェート、アミトラズ、アラニカルブ、アレスリン、イソキサチオン、イミダクロプリド、インドキサカルブMP、エスフェンバレレート、エチオフェンカルブ、エチプロール、エチルチオメトン、エトキサゾール、エトフェンプロックス、エマメクチン安息香酸塩、塩酸レバミゾール、オキサミル、カズサホス、カルタップ塩酸塩、カルボスルファン、クロチアニジン、クロフェンテジン、クロマフェノジド、クロルピリホス、クロルフェナピル、クロルフルアズロン、シクロプロトリン、ジノテフラン、シフルトリン、ジメトエート、スピノサド、ダイアジノン、チアクロプリド、チアメトキサム、チオジカルブ、チオシクラムシュウ酸塩、テブフェノジド、テブフェンピラド、テフルトリン、テフルベンズロン、トラロメトリン、トルフェンピラド、ノバルロン、ハルフェンプロックス、ビフェナゼート、ビフェントリン、ピメトロジン、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、ピリダベン、ピリダリル、ピリプロキシフェン、ピリミジフェン、ピリミホスメチル、ピレトリン、フィプロニル、フェニソブロモエート、フェノチオカルブ、フルアクリピリム、フルシトリネート、フルバリネート、フルフェノクスロン、プロパホス、プロフェノホス、ヘキシチアゾクス、ペルメトリン、ベンスルタップ、ベンゾエピン、ベンフラカルブ、ボーベリア・バシアーナ、ボーベリア・ブロンニアティ、ホサロン、マシン油、マラソン、メスルフェンホス、メソミル、メトキシフェノジド、ルフェヌロン、BPMC、BT(バチルス・チューリンゲンシス菌)、メチダチオン、フェニトロチオン、イソプロカルブ、フェンチオン、NAC等が挙げられ、作物や害虫に併せて適切に選択することができる。また殺菌剤との組み合わせ使用も可能である。
殺菌剤としては、アシベンゾランSメチル、アゾキシストロビン、アンバム、硫黄、イソプロチオラン、イプコナゾール、イプロジオン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、イミベンコナゾール、エクロメゾール、オキサジキシル、オキシテトラサイクリン、オキスポコナゾールフマル酸塩、オキソリニック酸、カスガマイシン、カルプロパミド、キノメチオナート、キャプタン、クレソキシムメチル、クロロネブ、シアゾファミド、ジエトフェンカルブ、ジクロシメット、ジクロメジン、ジチアノン、ジネブ、ジフェノコナゾール、シフルフェナミド、ジフルメトリム、シプロコナゾール、シプロジニル、シメコナゾール、ジメトモルフ、シモキサニル、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナスCAB−02、ジラム、水和硫黄、ストレプトマイシン、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、チアジアジン、チアジニル、チアベンダゾール、チウラム、チオファネートメチル、チフルザミド、テクロフタラム、テトラコナゾール、テブコナゾール、銅、トリアジメホン、トリアジン、トリコデルマ・アトロビリデ、トリシクラゾール、トリフルミゾール、トリフロキシストロビン、トリホリン、トルクルホスメチル、バチルスズブチリス、バリダマイシン、ビテルタノール、ヒドロキシイソキサゾール、ピラゾホス、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピロキロン、ファモキサドン、フェナリモル、フェノキサニル、フェリムゾン、フェンブコナゾール、フェンヘキサミド、フサライド、フラメトピル、フルアジナム、フルオルイミド、フルジオキソニル、フルスルファミド、フルトラニル、プロシミドン、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、プロベナゾール、ヘキサコナゾール、ベノミル、ペフラゾエート、ペンシクロン、ボスカリド、ホセチル、ポリカーバメート、マンゼブ、マンネブ、ミクロブタニル、ミルディオマイシン、メタスルホカルブ、メトミノストロビン、メパニピリム、有機銅、硫酸亜鉛、硫酸銅、エジフェンホス、イプロベンホス、クロロタロニル等が挙げられる。作物や害虫に併せて適切に選択することができる。また殺虫剤との組み合わせ使用も可能である。
除草剤としては、アイオキシニル、アジムスルフロン、アシュラム、アトラジン、アニロホス、アラクロール、イソウロン、イソキサベン、イマザキン、イマザピル、イマゾスルフロン、インダノファン、エスプロカルブ、エトキシスルホン、エトベンザニド、塩素酸塩、オキサジアゾン、オキサジアルギル、オキサジクロメホン、オルソベンカーブ、オリザリン、カフェンストロール、カルフェントラゾンエチル、カルブチレート、キザロホップメチル、クミルロン、グリホサートアンモニウム塩、グリホサートイソプロピルアミン塩、グリホサートカリウム塩、グリホサートトリメシウム塩、グルホシネート、クレトジム、クロメプロップ、クロルフタリム、シアナジン、シアン酸塩、シクロスルファムロン、ジクワット、ジチオピル、シデュロン、シノスルフロン、シハロホップブチル、ジフルフェニカン、ジメタメトリン、ジナテナミド、シメトリン、シンメトリン、セトキシジム、ダイムロン、ダゾメット、チフェンスルフロンメチル、デスメディファム、テトラピオン、テニルクロール、テプラロキシジム、トリアジフラム、トリクロピル、トリフルラリン、トリフロキシスルフロンナトリウム塩、ナプロパミド、ニコスルフロン、パラコート、ハロスルフロンメチル、ビアラホス、ビスピリバックナトリウム塩、ビフェノックス、ピラゾキシフェン、ピラゾスルフロンメチル、ピラゾエート、ピラフルフェンチオン、ピリフタリド、ピリブチカルブ、ピリミノバックメチル、フェノチオール、フェントラザミド、フェンメディファム、ブタクロール、ブタミホス、フラザスルフロン、フルアジホップ、フルチアセットメチル、フルミオキサジン、プレチラクロール、プロジアミン、プロピサミド、ブロマシル、プロメトリン、ブロモブチド、フロラスラム、ベスロジン、ベンスルフロンメチル、ベンゾフェナップ、ベンゾビシクロン、ベンタゾンナトリウム塩、ベンチオカーブ、ペンディメタリン、ペントキサゾン、ベンフレセート、メタミトロン、メトスルフロンメチル、メトラクロール、メトリブジン、メフェナセット、モリネート、リニュロン、リムスルフロン、レナシル、ACN,シマジン、ジクロベニル、クロルチアミド、ジウロン、プロパニル、MCP,MCPイソプロピルアミン塩、MCPB,MCPP,MDBA、MDBAイソプロピルアミン塩、PAC、SAP、2,4-PA等が挙げられる。
本発明の農薬用展着剤組成物は、具体的に以下の工程により製造することができるが、類似の機械や工程を適応することができ、これに限定されるものではない。
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルに関しては以下に例示する方法で合成することができるが、これに限定されるものではない。
工程:ポリグリセリンの合成
ポリグリセリン脂肪酸エステルに使用するポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン等のグリセリン類縁物質を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られるが、一般的には、グリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて200℃以上の高温に加熱し、生成する水を除去しながら重縮合させる方法によって得られる。反応は逐次的な分子間脱水反応により、順次高重合体が生成するが、反応組成物は均質なものではなく、未反応グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等の複雑な混合組成物となり、反応温度が高いほど、あるいは反応時間が長いほど反応は高重合度側にシフトする。また、未反応のグリセリンは減圧蒸留による蒸留が可能であり、ジグリセリンは分子蒸留による蒸留が可能であるため、一般的にはジグリセリンは高純度品が使用され、それ以上の重合度のポリグリセリンは、複雑な多成分の混合物や、グリセリン、ジグリセリンを蒸留した残分が使用される。
工程:ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成
ポリグリセリンと脂肪酸に水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えた後、エステル化反応を常圧もしくは減圧下において、常法に従って行い、仕込んだ脂肪酸のほとんど全てがエステル化するまで反応させ、遊離の脂肪酸がほとんどなくなるまで十分に反応させる。脂肪酸の仕込み量は、目的のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルにおけるHLBになるように、予め算出することが出来る。
工程:農薬用展着剤組成物の調製
ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)、必要により溶剤等を釜に入れ、常温もしくは加温し、混合溶解することで所望の農薬用展着剤組成物を得る。
本発明品の農薬用展着剤組成物の容器としては、落下試験等を考慮して、必要な強度を有するものであれば、適宜選択して使用することが可能である。汎用として使用されるプラスチックボトルでは具体的には、多層ナイロンボトルが挙げられる。好ましくは高密度ポリエチレン(炭酸カルシウム入り)/ナイロンで構成される多層ナイロンボトル(北酸株式会社製)が挙げられ、本発明の農薬乳剤を該ボトルに充填したものは長期の耐久性にすぐれているため好ましい。尚、ボトル材質の記号である“/”は接着剤で接合されていることを意味している。
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、今回使用したポリグリセリンの平均重合度は、それぞれ2、4、4.5、6、10である。以下、本発明の実施例及び比較例を示す。ただし、%は質量基準であり、HLBは上述の計算式により算出される値である。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)の合成)
ジグリセリンSを436.0gと、カプリル酸416.0gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて180℃で2時間、220℃に昇温して3時間反応させ、酸価が0.1mgKOH/gであるジグリセリンモノカプリル酸エステル(PGFE1)を得た。以下同様に、ポリグリセリンと脂肪酸の種類及び、ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み量、反応温度、反応時間を、下記表Aに示す通り変化させてPGFE2〜12を製造した。
また、重合度4.5のポリグリセリンは下記合成例1に記載の方法で合成した。
合成例1(重合度4.5のポリグリセリンの合成)
温度計、撹拌装置を付した四ツ口フラスコに精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)、及び触媒として水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて250℃で反応させ、ポリグリセリン組成物を得た。次いで、この組成物を減圧蒸留して水酸基価から算出される平均重合度が4.5であるポリグリセリンを得た。
Figure 0006095513

注:表A中におけるHLB及び酸価は得られたポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるHLB及び酸価である。
得られたポリグリセリン脂肪酸エステル(A)を表1に、得られたポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を表2に示す。
Figure 0006095513
Figure 0006095513
(展着剤の調製)
200mL共栓付三角フラスコに、表3に示す組成でポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)及び溶剤としてメタノールを表3〜5で示した組成で合計100g入れ、54℃恒温槽に入れ、加温溶解させ調製し、70%界面活性剤成分(前記(A)及び(B))含有展着剤を得た。本発明の農薬用展着剤組成物は実施例1〜13、比較例は比較例1〜9で示した。
Figure 0006095513
Figure 0006095513
Figure 0006095513
試験例1:作物表面濡れ性評価試験(キャベツ)
上記の実施例1〜13及び比較例1〜9で得られた組成物(供試剤)について以下の試験方法にて作物表面の濡れ性の評価を行った。その結果を表6に示した。
(1)散布液の調製方法
散布1:供試剤の3mLを10Lの水道水に添加し、充分攪拌し、散布液を調製した(界面活性剤濃度:233ppm)。
散布2:供試剤の10mLを10Lの水道水に添加し、充分攪拌し、散布液を調製した(界面活性剤濃度:700ppm)。
(2) 散布方法
種まき後約2ヶ月を経たキャベツ(12−15期)を地面に置き、スプレーガンANEST IWATA PS95(アネスト岩田株式会社製)を用いて作物より約45cmの高さから散布圧0.24MPaで400ml/1平方メートル(400L/10a相当)を散布し、水滴の付着状況を目視評価した。評価基準は後記表7に記載した。
また、散布作物への薬害は見られなかった。
Figure 0006095513
目視評価基準: 農薬散布液の付着状況を目視で確認した。
Figure 0006095513
表7より本発明の実施例は、比較例と比較し、キャベツ作物表面の濡れ性が顕著に向上している。実施例では特に、古い葉や中位の葉だけでなく付着性が悪い若い葉や垂直面への葉への濡れ性も認められた。この結果、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)のみの成分で単独もしくは複数成分で構成された比較例1及び9、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のみの成分で単独もしくは複数成分構成された比較例2〜8は、キャベツ表面への散布液の付着が不十分であり、農薬用展着剤組成物としての機能を充分に果たしていないが、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の混合で構成された組成物は、キャベツ葉に対して、効率的に伸展・付着する有効な展着剤であることが確認された。これはポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の混合組成物が、散布液のキャベツ表面等の植物表面への親和性の向上をもたらしたものと想定される。
試験例2:きゅうりうどんこ病効果試験(きゅうり)
上記の実施例1〜13及び比較例1〜9で得られた組成物(供試剤)について以下の試験方法にてきゅうりうどんこ病に対する効果試験を行った。その結果を表10に示した。
(1)散布液の調製方法
モレスタン水和剤2000倍希釈液(希釈液水道水)1Lに供試剤の0.3mLを添加し、充分攪拌し、散布液を調製した。散布液における農薬濃度は、125ppmであり、供試剤由来の界面活性剤濃度は233ppmであった。
(2) 散布方法
播種30日のきゅうり(展開葉2.5〜3枚)に手動式加圧スプレーヤーを用いて作物に150L/10aの割合で葉の表裏に散布した。
(3)調査方法
散布14日後にうどんこ病の発生状況を調査し、防除価を算出した。また、薬害についても目視で観察し、薬害の有無を調査した。
防除価は、下記表8の基準で発病指数を出し、発病度を下記式により算出し、該発病度を用いて、下記式により防除価を算出し、その防除価に基づき、下記表9に示した効果の判定基準により、評価した。
発病度={各キュウリ苗の発病の指数の合計/(4×苗数)}×100
防除価={[(無処理区の発病度)−(処理区の発病度)]/(無処理区の発病度)}×100
Figure 0006095513

Figure 0006095513
(4)試験結果
上記の基準で評価したキュウリうどんこ病での防除効果及び薬害の有無について、試験結果を下記の表10に示した。
Figure 0006095513
表10より本発明の実施例は、比較例と比較し、きゅうりうどんこ病に対し安定した効果を示し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の混合で構成された本発明の農薬用展着剤組成物は、きゅうりうどんこ病に対して、安定した効果を発揮する展着剤であることが確認された。一方、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)のみの成分で単独もしくは複数成分で構成された比較例1及び9、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)のみの成分で単独もしくは複数成分構成された比較例2〜8は、きゅうりうどんこ病に対し効果が不十分であり、農薬用展着剤組成物としての機能を充分に果たしていないことが確認された。
本発明の農薬用展着剤組成物は、薬害の出やすい作物に対しても、薬害が出ることが無く、且つ、農薬散布液を対象作物へ十分に付着させることができるので、農薬効果を安定して発揮させることができ、農業分野の産業上非常に有用である。

Claims (6)

  1. 以下の(A)及び(B)、
    (A)炭素数の飽和脂肪酸と平均重合度がのポリグリセリンとから得られる、HLBが7.5〜11のポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(A))、
    (B)炭素数12の飽和脂肪酸と平均重合度が10のポリグリセリンから構成される、HLBが9.5〜16のポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B))、
    を、質量割合で(A)を30〜50質量部、(B)を17.5〜40質量部含有することを特徴とする農薬用展着剤組成物。
  2. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)として、平均重合度がのポリグリセリンとカプリル酸から得られ、かつ、HLBが〜11以下のポリグリセリンカプリル酸エステルを含む請求項1に記載の農薬用展着剤組成物。
  3. ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、HLBが13〜16であり、ポリグリセリンの平均重合度10である、ポリグリセリンラウリン酸エステルを含む、請求項1又は2に記載の農薬用展着剤組成物。
  4. 更に、有機溶媒をポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計に対して、5〜100質量%含む、請求項1〜の何れか一項に記載の農薬用展着剤組成物。
  5. 農薬有効成分を含む希釈液に、更に、請求項1〜のいずれか一項に記載の農薬用展着剤組成物を含む農薬散布液。
  6. ポリグリセリン脂肪酸エステル(A)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の合計濃度が100〜2000ppmである請求項に記載の農薬散布液。
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