以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
(構成の説明)
図1に、本発明の第1実施形態による非接触給電システム1の構成例を示す。
非接触給電システム1は、送電装置100と、複数の受電装置3001〜300n(nは任意の自然数)と、受電モニタ装置400とを備えている。本実施形態では、非接触給電システム1は、複数の受電装置3001〜300nを備えるものとするが、このうちの任意の一つの受電装置を備えるものとしてもよく、受電装置の数は任意である。また、受電モニタ装置400は、必要に応じて省略することも可能である。
送電装置100は、電力を電磁エネルギーに変換して空間に送出するものであり、送電側コイルL1、共振用コンデンサC1、電源部110を備える。電源部110は、送電側コイルL1を励磁するための電力を発生させるためのものである。本実施形態では、電源部110は、交流電力を発生させるものとするが、交流電力には、電圧または電流の振幅の極性が時間的に変化するもののほか、極性は変化せずに振幅の大きさのみが時間的に変化するものも含まれる。
電源部110は、安定化電圧回路ST、周波数制御回路FC、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1,Q2を備えている。安定化電圧回路STは、交流電源(例えば、商用電源)ACから所定の直流電圧を発生させるものである。安定化電圧回路STは、高電圧出力端子および低電圧出力端子を備え、これら高電圧出力端子と低電圧出力端子との間に上記直流電圧を発生させる。
Nチャネル型電界効果トランジスタQ1,Q2は、送電側コイルL1を駆動するためのドライバを構成する。Nチャネル型電界効果トランジスタQ1のドレインには、安定化電圧回路STの高電圧出力端子が接続され、そのソースには、Nチャネル型電界効果トランジスタQ2のドレインが接続されている。Nチャネル型電界効果トランジスタQ2のソースには、安定化電圧回路STの低電圧出力端子が接続されている。
Nチャネル型電界効果トランジスタQ1のソースとNチャネル型電界効果トランジスタQ2のドレインとの間の接続点は、電源部110の出力部を形成し、この出力部には、送電側コイルL1の一端が接続されている。送電側コイルL1の他端には、共振用コンデンサC1の一端が接続され、共振用コンデンサC1の他端には、Nチャネル型電界効果トランジスタQ2のソース(安定化電圧回路STの低電圧出力端子)が接続されている。即ち、電源部110の出力部と電源部110を構成する安定化電圧回路STの低電圧出力端子との間に、送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とが直列接続されている。これら送電側コイルL1と共振用コンデンサC1は、LC直列共振回路を形成している。
周波数制御回路FCは、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1とNチャネル型電界効果トランジスタQ2とを交互にオン/オフさせてスイッチング動作させるためのものである。Nチャネル型電界効果トランジスタQ1,Q2がスイッチング動作することにより、安定化電圧回路STで発生された直流電圧が送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とから構成されるLC直列共振回路に対して間欠的に供給される。これにより送電側コイルL1に対し交流電力が供給され、送電側コイルL1が交流的に励磁されて空間に磁束MFを発生させる。
受電装置3001〜300nは、それぞれ、送電装置100が発生させた磁束MFによる電磁エネルギーを受け取って電力に変換するためのものである。受電装置3001〜300nの出力部には、それぞれ、負荷LD1〜LDnが接続されている。負荷LD1〜LDnは、それぞれ、受電装置3001〜300nによって変換された電力を電源として作動する任意の装置である。
受電装置3001は、受電側コイルL31、共振用コンデンサC31、変換部3101を備えている。受電側コイルL31は、給電時に、送電側コイルL1のループの外方の位置であって送電側コイルL1によって形成される磁束MFが鎖交する位置に配置され、この鎖交により送電側コイルL1と磁気結合される。ここで、送電側コイルL1のループの外方とは、送電側コイルL1によって形成されるループで閉じられた領域の外側を指す。また、本実施形態では、磁気結合の概念には、共振現象に基づく結合が含まれる。後述する第2実施形態および第3実施形態でも同様である。
また、磁束MFが受信側コイルL31に鎖交する位置とは、例えば、送電側コイルL1を含む仮想平面(送電側コイルL1が備えられた後述の図2に示すテーブルの甲板TUと平行な平面)と受電側コイルL31のループの中心を通る軸(以下、「軸線」と称す。)が略平行をなし、且つ、受電側コイルL31の軸線が送電側コイルL1の一部と交差する状態となる位置を指す。このような送電側コイルL1と受電側コイルL31との間の配置関係に関する条件は、例えば、後述の図2に示すように、上述の受電装置3001を備えた端末の利用者が、送電側コイルL1を含む後述のテープバンドコイルTBCが取り付けられたテーブルの甲板TUの周囲に配置された椅子に着座した場合に満たされる。この場合、利用者は、受電側コイルL31の軸線が身体の前後方向と略一致するようにして、受電装置3001が備えられた端末を所持しているものとする。なお、上述の受電側コイルL31の軸線が送電側コイルL1の一部と交差する状態となる位置とは、例えば、送電側コイルL1のループに受電側コイルL31の軸線を投影した投影線が送電側コイルL1の一部と交差する状態を指す。
共振用コイルC31は、受電側コイルL31とLC直列共振回路を形成している。これら受電側コイルL31と共振用コイルC31とによるLC直列共振回路の共振周波数は、送電装置100の送電側コイルL1と共振用コイルC1とによるLC直列共振回路の共振周波数と略一致している。従って、上述の送電装置100の電源部110から見て、送電側コイルL1、共振用コンデンサC1、受電側コイルL31、共振用コンデンサC31が一体となって共振回路を形成しており、これにより、送電装置100から受電装置3001への給電効率を高めている。
変換部3101は、受電側コイルL31に誘起された交流電力を所望の電力に変換するためのものであり、ダイオードD11,D21,D31,D41、コンデンサC41、定電圧回路PT1、コンデンサC51を備えている。このうち、ダイオードD11〜D41はフルブリッジ整流回路(符号なし)を構成している。即ち、ダイオードD11のカソードは、フルブリッジ整流回路の高電圧出力ノードに接続され、そのアノードはダイオードD21のカソードに接続され、ダイオードD21のアノードは、フルブリッジ整流回路の低電圧出力ノードに接続されている。ダイオードD31のカソードは、フルブリッジ整流回路の高電圧出力ノードに接続され、そのアノードはダイオードD41のカソードに接続され、ダイオードD41のアノードは、フルブリッジ整流回路の低電圧出力ノードに接続されている。
ダイオードD11のアノードとダイオードD21のカソードとの間の接続点には、受電側コイルL31の一端が接続されている。受電側コイルL31の他端には、共振用コンデンサC31の一端が接続されている。共振用コンデンサC31の他端は、ダイオードD31のアノードとダイオードD41のカソードとの間の接続点に接続されている。
上述のダイオードD11〜D41により形成されるフルブリッジ整流回路の高電圧出力ノードと低電圧出力ノードとの間には、コンデンサC41と定電圧回路PT1が並列接続され、定電圧回路PT1の出力部は、受電装置3001の出力部となっている。定電圧回路PT1の出力部と、上記フルブリッジ整流回路の低電圧出力ノードとの間には、コンデンサC51が接続されている。定電圧回路PT1の出力部(即ち受電装置3001の出力部)には、負荷LD1が接続されている。本実施形態では、定電圧回路PT1は、電圧安定化回路から構成される。
他の受電装置3002(図示なし)〜300nのそれぞれについても、受電装置3001と同様に構成されている。図1の例では、受電装置300nが備える受電側コイルL3n、共振用コイルC3n、変換部310nは、それぞれ、受電装置3001が備える受電側コイルL31、共振用コイルC31、変換部3101に相当する要素である。また、受電装置300nの変換部310nが備えるダイオードD1n〜D4n、コンデンサC4n、定電圧回路PTn、コンデンサC5nは、受電装置3001の変換部3101が備えるダイオードD11〜D41、コンデンサC41、定電圧回路PT1、コンデンサC51に相当する要素である。定電圧回路PTnの出力部(即ち、受電装置300nの出力部)には負荷LDnが接続されている。
本実施形態では、受電装置3001〜300nの受電側コイルL31〜L3nは、それぞれ、送電装置100の送電側コイルL1と磁気的に結合される。
受電モニタ装置400は、上述した受電装置3001〜300nが備える受電側コイルL31〜L3nのぞれぞれに誘起された電力をモニタするモニタ部として機能するものである。受電モニタ装置400は、例えば受電装置3001が備える受電側コイルL31および共振用コンデンサC31に相当する受電側コイルL3mおよび共振用コンデンサC3mを備えている。また、受電モニタ装置400が備える変換部410は、例えば受電装置3001の変換部3101が備えるダイオードD11〜D41、コンデンサC41に相当するダイオードD1m〜D4m、コンデンサC4mを備えると共に、定電圧回路PT1に代えて電圧検出回路DTを備えている。
電圧検出回路DTは、ダイオードD1m〜D4mにより形成されるフルブリッジ整流回路の高電圧出力ノードと低電圧出力ノードとの間に発生される直流電圧を検出して、その直流電圧の電圧値を示す電圧モニタ信号SDCを出力する。この電圧モニタ信号SDCにより示される電圧値は、受電装置3001〜300nの受電側コイルL31〜L3nのそれぞれに相当する受電側コイルL3mに誘起される交流電圧の振幅の2分の1の電圧値に対応している。これにより、電圧モニタ信号SDCから、上述した受電装置3001〜300nが備える受電側コイルL31〜L3nに誘起される電力を推定することができる。
本実施形態では、送電装置100の電源部110を構成する周波数制御回路FCは、受電モニタ装置400によりモニタされた電力が所定値となるように、送電側コイルL1を励磁する交流電力の周波数を調整する。即ち、周波数制御回路FCは、受電モニタ装置400から出力される電圧モニタ信号SDCにより示される電圧値が所定電圧値となるように、送電側コイルL1を励磁する交流電力の周波数を調整する。この所定電圧値は、例えば、受電装置3001〜300nの出力部にそれぞれ接続される負荷LD1〜LDnの電源仕様に応じて任意に設定し得る。
なお、送電側コイルL1を励磁する上記交流電力の周波数は、一定の周波数(固定周波数)に設定されてもよい。
図2は、本発明の第1実施形態による非接触給電システム1が備える送電側コイルL1の配置例を示す図である。ここで、図2(A)は、送電側コイルL1をテーブルの甲板TUに配置した場合の送電側コイルL1と受電側コイルL31〜L34との位置関係の一例を示す上視図であり、図2(B)は、甲板TUに送電側コイルL1が配置されたテーブルの外観を示す斜視図である。本実施形態では、受電側コイルL31〜L34を備えた受電装置3001〜3004は、テーブルの甲板TUの周囲に配置された4脚の椅子にそれぞれ着座する4人の利用者が所持する端末に組み込まれているものとする。ただし、図2(B)では、1脚の椅子に着座する1人の利用者のみが例示的に示されており、他の3脚の椅子に着座する3人の利用者は省略されている。以下では、説明の簡略化のため、図2に例示する4脚の椅子にそれぞれ着座する4人の利用者が所持する4個の受電装置3001〜3004を例に説明するが、受電装置の個数は任意である。
本実施形態では、送電側コイルL1は、テープバンド状に加工されたコイル(以下、「テープバンドコイル」と称す。)TBCとして形成され、テープバンドコイルTBCは、テーブルの甲板TUの外縁に沿って周回するようにテーブルに配置される。これにより、テーブルには、その甲板TUの外縁に沿って周回するように送電側コイルL1が取り付けられる。テープバンドコイルTBCとして形成された送電側コイルL1には電源部110が接続され、送電側コイルL1は電源部110により励磁される。図2では省略されているが、共振用コンデンサC1が送電側コイルL1と直列に接続されている。
ただし、図2の例に限定されることなく、送電側コイルL1は、受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34と磁気的に結合することを限度に、任意の形態で配置することが可能である。また、受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34についても、送電側コイルL1と磁気的に結合することを限度に、任意の形態で配置することが可能である。
図2から理解されるように、本実施形態では、各椅子に着座する利用者が所持する受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34は、テープバンドコイルTBCとして形成された送電側コイルL1のループの外方に位置する。テーブルの周囲に配置された椅子に利用者が着座すると、利用者が備える受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34が、テーブルの甲板TUに配置されたテープバンドコイルTBCとして備えられた送電側コイルL1と磁気的に結合される。
テーブルの甲板TUの中心部からテープバンドコイルTBCまでの距離aに等しい距離bによって規定される領域Aの内部であれば、テーブル周辺の任意の位置で受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34と送電側コイルL1とが磁気的に結合し、送電装置100と受電装置3001〜3004との間で非接触による給電が可能である。従って利用者は、送電側コイルL1と受電側コイルL31〜L34との間の位置関係を意識することなく、テープバンドコイルTBCが取り付けられたテーブルの甲板TUの周囲に配置された椅子に座るだけで、送電装置100から受電装置3001〜3004に対して非接触により電力を伝送して負荷LD1〜LD4に給電することが可能になる。
図2において、距離aは、送電側コイルL1が配置されるテーブルの形状を円形とした場合には、その半径に相当する距離である。領域Aは、送電側コイルL1と受電側コイルL31〜L34との間で磁気的結合が可能な領域を示し、テーブルの甲板TUの外縁から外方に向かって距離bまでの範囲である。本実施形態では、距離bは距離aに等しい。従って、例えばテーブルの甲板TUの形状を1辺が1mの四角形とした場合、距離aは
、テーブルの中心からそのテーブルの或る1辺と直交する方向において約50cmとなり、磁気的結合が可能な領域Aを規定する距離bも距離aの延長方向において約50cmとなる。このような領域Aの大きさは、テーブルの周囲に椅子を配置するのに充分である。従って、各利用者が領域Aに配置された椅子に着座すれば、受電装置3001〜300nが領域Aの内部に存在するため、各受電装置に対して効率よく受電を実施することができる。
図3は、本発明の第1実施形態による非接触給電システム1が備える送電側コイルL1を含むテープバンドコイルTBCの構成例を示す図である。ここで、図3(A)は、テープバンドコイルTBCが配置された甲板TUの外観を示す斜視図であり、図3(B)は、図3(A)に示すC−D線での断面構造を示す図であり、図3(C)は、図3(A)に示すA−B線での断面構造を示す図である。
テープバンドコイルTBCは、送電側コイルL1の線材を樹脂等の柔軟性を有する絶縁体で被覆した構造を有している。本実施形態では、図3(B)に示す断面構造から理解されるように、テーブルの甲板TUの外縁側面に磁気シールド材MM(磁性体)としてフェライト材を取り付け、このフェライト材を挟んでテープバンドコイルTBCをテーブルの甲板TUの外縁に配置する。これにより、送電側コイルL1のループの外方へ向かう送電側コイルL1の磁束の分布の指向性を高め、椅子に着座する利用者が所持する受電装置に対する給電効率を改善する。
また、本実施形態では、テープバンドコイルTBCは、受電側コイルL31〜L34との磁気結合に寄与しない領域が磁気シールド材MMで覆われている。図3(A)に示す例では、椅子(図示なし)と対向しないテーブルのコーナー付近の領域が、受電側コイルL31〜L34との磁気結合に殆ど寄与しない領域であり、甲板TUの4辺のそれぞれにおいて、椅子と対向する領域が受電側コイルL31〜L3nとの磁気結合に実質的に寄与する領域である。このような磁気結合に寄与しない領域は、例えば、テーブルの利用形態に応じて任意に設定することができる。
本実施形態では、椅子と対向しないテーブルのコーナー付近の領域に位置するテープバンドコイルTBCの一部が磁気結合に寄与しない領域として設定されている。このため、図3(C)に示す断面構造から理解されるように、本実施形態では、椅子と対向しないテーブルのコーナー付近の領域に位置するテープバンドコイルTBCの一部(即ち、磁気結合に寄与しない領域)が磁気シールド材MMで覆われている。このように、テーブルのコーナー付近の領域に位置するテープバンドコイルTBCの一部を磁気シールド材MMで覆うことにより、磁性結合領域を限定し、磁気結合に実質的に寄与しない領域からの磁束の漏えいを抑制する。これにより、送電側コイルL1と受電側コイルL31〜L34との間の磁気結合に寄与する磁束密度を高め、給電効率を高めている。
なお、図2(A)に示す領域Aは、テーブルのコーナー付近での磁束を磁気シールド材MMにより抑制しない場合を示している。
(動作の説明)
次に、第1実施形態による非接触給電システム1の動作を説明する。
送電装置100において、電源部110の安定化電圧回路STは、交流電源ACから直流電圧を発生させる。周波数制御回路FCは、受電モニタ装置400から供給される電圧モニタ信号SDCにより示される電圧値が所定電圧値になるように、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1,Q2をスイッチングさせる。これにより、安定化電圧回路STにより発生された直流電圧が間欠的に電源部110から送電側コイルL1に供給され、電源部110が送電側コイルL1を励磁する。
初期状態では、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mには電圧が誘起されていないので、電圧モニタ信号SDCが示す電圧値はゼロである。この場合、周波数制御回路FCは、例えば、Nチャネル電界効果トランジスタQ1,Q2のスイッシングの周波数を所定値に設定し、受電側コイルL3mに誘起される電圧の上昇を促す。
送電装置100において、電源部110が送電側コイルL1を励磁すると、送電側コイルL1のループの中心を通る軸線方向に磁束MFが形成される。この場合、図2に示すテーブルの甲板TUの外縁に配置されたテープバンドコイルTBCを回り込むように磁束MFが形成される。本実施形態では、テープバンドコイルTBCは磁気シールド材MMを挟んでテーブルの甲板TUの外縁に取り付けられているので、磁束MFは甲板TUの内部には侵入せず、その殆どがテープバンドコイルTBCから距離bの範囲内の領域Aに分布する。
このように磁束MFが形成された状態で、例えば受電装置3001を所持した利用者が領域Aに配置された椅子に着座すると、受電装置3001の受電側コイルL31が送電装置100の送電側コイルL1のループの外方に位置した状態となり、受電側コイルL31と磁束MFとが鎖交する。これにより、受電側コイルL31がテープバンドコイルTBCを構成する送電側コイルL1と磁気的に結合され、送電装置100と受電装置3001との間で非接触による給電が可能な状態になる。
このような状態で、磁束MFが変化すると、この磁束の変化を補償するように受電装置3001の受電側コイルL31に交流電力が誘起される。受電側コイルL31に誘起された交流電力は、変換部3101のダイオードD11〜D14から構成されるフルブリッジ整流回路により整流されてコンデンサC41を充電し、定電圧回路PT1に供給される。
定電圧回路PT1は、上記フルブリッジ整流回路により整流された電力を所望の一定電圧に変換して出力する。定電圧回路PT1から出力された電圧は、コンデンサC51により平滑化されて変換部3101から負荷LD1に供給される。
以上により、送電装置100から受電装置3001に対して非接触による給電が開始され、負荷LD1に電力が供給される。他の受電装置3002〜300nについても受電装置3001と同様に、利用者がテーブルの周囲の領域Aに配置された椅子に着座すると、受電側コイルL32〜L34が送電側コイルL1と磁気的に結合され、送電装置100から受電装置3002〜3004に非接触による給電が開始され、負荷LD2〜LD4に電力が供給される。
上述の送電装置100から受電装置3001〜3004への非接触給電による電力の供給状態は、受電モニタ装置400によりモニタされる。本実施形態では、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mと送電側コイルL1との間の位置関係は、例えば、図2に示す領域Aにおいて、椅子に着座した利用者が所持する受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34のそれぞれとテープバンドコイルTBCとの間の距離の平均的な位置関係に設定される。
例えば、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mと送電装置100の送電側コイルL1との間の距離は、椅子に着座した利用者が所持する受電装置3001〜300nの受電側コイルL31〜L34のそれぞれとテープバンドコイルTBCとの間の距離の平均値に相当する距離に設定される。この場合、受電モニタ装置400は、受電装置3001〜3004の受電側コイルL31〜L34に誘起される平均的な電力をモニタする。ただし、この例に限定されることなく、例えば、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mは、図2に示す領域AにおいてテープバンドコイルTBCから最も遠い位置に配置してもよい。この場合、領域Aにおいて最も磁気的結合度が小さい受電装置の受電電力をモニタすることができる。
受電モニタ装置400は、送電側コイルL1からの受電電力をモニタし、その受電電力に関する情報を電圧モニタ信号SDCとして送電装置100の電源部110にフィードバックする。電源部110は、電圧モニタ信号SDCによって示される受電側での受電電力に関する情報に基づき、送電側コイルL1と受電側コイルL3mとの間の距離に応じて、送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とから構成されるLC直列共振回路を共振状態とし、受電側で所望の受電電力が得られるように送電側コイルL1を励磁する交流電力の周波数を調整してフィードバック制御を実施する。これにより、受電装置3001〜3004の負荷LD1〜LD4に対し、所望の電力が安定的に供給される。
上述した第1実施形態によれば、送電側コイルL1をテーブルの甲板TUの外縁に配置したので、例えば家庭内において非接触による給電を容易に実施することができる。
また、受電装置3001〜3004が取り付けられた端末を所持する利用者は、テープバンドコイルTBCが取り付けられたテーブルの甲板TUの周囲に配置された椅子に着座する都度、利用者の端末に対する給電を実施することができる。この場合、利用者は、送電装置100と受電装置3001〜3004との間の位置関係を意識する必要がなく、また、給電自体を意識する必要もない。従って、利用者に煩わしさを与えることなく、給電を実施することができる。
また、第1実施形態によれば、テーブルの甲板TUの周囲の領域Aの内部であれば、受電装置を備えた不特定多数の利用者の端末に対して給電を実施することができる。
<変形例>
上述の第1実施形態の変形例として、受電装置3001〜300nから、各受電装置の状態を送電装置100へ無線で送信する構成を採用してもよい。この場合、受電装置に固有の識別番号を割り付け、この識別番号と受電状態に関する情報(例えば、満充電などに関する情報)や、受電装置の有無を判定するための情報を各受電装置から送電装置100に送信してもよい。このような情報を各受電装置から送電装置100に送信することにより、送電装置100において、受電装置が存在しない場合に給電動作を停止するための制御、或いは、一時的に送電側コイルに対する通電を停止する制御などを実施することにより、消費電力を低減させることが可能になる。
なお、本変形例では、各受電装置から受電状態に関する情報を送信するものとしたが、利用形態に応じて任意の情報を送信することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態では、屋内の出入口に送電装置の送電側コイルを配置し、屋内の出入口を通る利用者が所持する受電装置に対して送電装置から非接触による給電を実施する。
なお、第2実施形態では、屋内の出入口に送電側コイルL1を配置する場合を例として説明するが、この例に限定されず、利用者の動線上であれば、任意の通路に送電側コイルL1を配置してもよい。
図4は、本発明の第2実施形態による非接触給電システム2の構成例を示す図である。
図4において、非接触給電システム2は、送電装置102と受電装置302とを備えている。送電装置102は、図1に示す第1実施形態による送電装置100の構成において、起動スイッチ111と、固体識別受信器(RFID受信器)120とを更に備えている。本実施形態では、固体識別受信器120は、安定化電圧回路STが発生させる直流電圧から派生的に生成された電圧を電源電圧として動作する。起動スイッチ111は、出入口のドアのノブに取り付けられており、利用者がドアのノブを操作すると、起動スイッチ111が電源部110の周波数制御回路FCを作動させる。送電装置102のその他の構成は、送電側コイルL1が出入口に配置される点を除いて、第1実施形態による送電装置100と同様である。
受電装置302は、受電側コイルL3、共振用コンデンサC3、変換部310、ツェナーダイオードDZ、固体識別送信器(RFID送信器)320を備えている。ここで、受電側コイルL3、共振用コンデンサC3、変換部310は、図1に示す例えば受電装置3001の受電側コイルL31、共振用コンデンサC31、変換部3101に相当する要素である。また、変換部310のダイオードD1〜D4、コンデンサC4,C5、定電圧回路PTは、それぞれ、図1に示す例えば受電装置3001の変換部3101のダイオードD11〜D41、コンデンサC41,C51、定電圧回路PT1に相当する要素である。第2実施形態では、ダイオードD1〜D4から構成されるフルブリッジ整流回路の高電圧出力ノードには、ツェナーダイオードDZのカソードが接続され、このツェナーダイオードDZのアノードには固体識別送信器320の電源ノードが接続され、固体識別送信器320のグランドノードは、ダイオードD1〜D4から構成されるフルブリッジ整流回路の低電圧出力ノードに接続されている。また、受電装置302の出力部をなす定電圧回路PTの出力部には、負荷LDが接続されている。即ち、受電装置302は、ツェナーダイオードDZおよび固体識別送信器320を更に備える点を除けば、前述した図1に示す第1実施形態における受電装置3001〜300nのそれぞれと同様に構成されている。また、負荷LDは、前述した図1に示す負荷LD1〜LDnのそれぞれに対応する。
図5は、第2実施形態による非接触給電システム2の送電装置102が備える送電側コイルL1の配置例を示す図である。
第2実施形態では、図5(A)に示すように、送電側コイルL1は、利用者が通る出入口を送電側コイルL1のループが取り囲むようにして壁の内部に配置されている。送電側コイルL1は、送電装置102の電源部110により励磁される。起動スイッチ111は、利用者によるドアのノブの操作に連動して電源部110を起動させる。このような送電側コイルL1の配置により、本実施形態では、受電側コイルL3は、給電時においては、送電側コイルL1のループの内方の位置であって送電側コイルL1によって形成される磁束が鎖交する位置に配置される。ここで、本実施形態では、送電側コイルL1のループの内方とは、送電側コイルL1のループで閉じられた領域の内側を指す。
また、第2実施形態では、図5(B)に示すように、送電側コイルL1のループの外方にフェライト材等の磁気シールド材MMが取り付けられている。この図5(B)に示す磁気シールド材MMは、図3に示す第1実施形態における磁気シールド材MMと同様の目的で備えられたものである。本実施形態では、送電側コイルL1のループの外方にフェライト材等の磁気シール材MMを取り付けたことにより、送電側コイルL1のループの内方に向かう磁束の分布、即ち、出入口の開口部に向かう磁束の分布の指向性を高めている。また、本実施形態でも、送電側コイルL1は、第1実施形態と同様のテープバンドコイルTBCとして形成され得る。
図5(B)に示す例によれば、利用者が通過し得ない壁側に形成される磁束を無くし、出入口付近での磁束が高まるので、出入口を通過する利用者が所持する受電装置に対する給電を効率的に実施することができる。
また、図5(C)に示すように、図5(B)の例と同様に送電側コイルL1のループの外方にフェライト材等の磁気シール材MMを取り付けると共に、出入口の上部側に位置する送電側コイルL1の一部と、出入口の下部側に位置する送電側コイルL1の一部を覆うようにして磁気シールド材MMを設けてもよい。この例によれば、送電側コイルL1のループの全周のうち、出入口を通る利用者が所持する受電装置から遠い部分(出入口の水平方向の辺に位置する送電コイルL1の一部)から発生される磁束を抑制することにより、この利用者が所持する受電装置に近い領域(出入口の垂直方向の辺に位置する送電コイルL1の一部)の磁束を高めることができる。従って、出入口を通る利用者が所持する受電装置302の受電側コイルL3と送電側コイルL1との間の磁気的結合度が高まり、給電を効率化することができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、第2実施形態の動作を説明する。
受電装置302を備えた利用者が、送電側コイルL1が配置された屋内の出入口のドアのノブを操作すると、このノブの操作に連動して、起動スイッチ111が電源部110を作動させる。これにより、電源部110が送電側コイルL1を励磁し、送電側コイルL1が出入口付近に磁束を発生させる。
受電装置302を備えた利用者がドアを開けて出入口を通過する際、受電側コイルL3が送電側コイルL1のループの内部に位置する。このとき、送電側コイルL1が発生させる磁束が受電側コイルL3のループ内を通り、受電側コイルL3が送電側コイルL1と磁気的に結合される。これにより、受電側コイルL3に電圧が誘起される。受電側コイルL3に誘起された電圧は、ダイオードD1〜D4からなるフルブリッジ整流回路により整流され、コンデンサC4を充電する。コンデンサC4に充電された電圧は定電圧回路PTに供給され、定電圧回路PTが一定電圧を出力する。定電圧回路PTから出力された電圧はコンデンサC5を充電し、負荷LDに供給される。
また、上記フルブリッジ整流回路により整流された電圧が、ツェナーダイオードDZにより規定される規定電圧Vz以上になると、受電装置302に備えられた固体識別送信器320に供給され、固体識別送信器320が動作する。この場合、固体識別送信器320は、例えば利用者を識別するための所定の識別番号を含む識別情報を送信する。送電装置102に備えられた固体識別受信器120は、固体識別送信器320から送信された上記識別情報を受信すると、この識別情報により示される識別番号により特定される利用者が、送電側コイルL1が配置された出入口を通過した旨を記録する。これにより、例えば、利用者が出入口を通過したことの履歴を記録し、その履歴を管理することができる。送電装置102は、起動スイッチ111が操作されてから一定時間が経過すると、送電側コイルL1の励磁を停止し、給電を停止する。
第2実施形態によれば、利用頻度の高い屋内の出入口や通路に送電側コイルL1を配置したことにより、利用者が出入口を通過する都度、受電装置302に対して給電を自動的に実施することができる。従って、第2実施形態によっても、利用者に意識させることなく、受電装置302に対する給電を実施することができる。
なお、本実施形態では、固体識別送信器320は、例えば利用者を識別するための所定の識別番号を含む識別情報を送信するものとしたが、第1実施形態と同様に受電状態に関する情報を送信するものとしてもよく、利用形態に応じて任意の情報を送信することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
(構成の説明)
図6に、本発明の第3実施形態による非接触給電システム3の構成例を示す。
非接触給電システム3は、送電装置103、n(nは任意の自然数)個の中継器2001〜200n、(n+1)個の受電装置3030〜303n、受電モニタ装置400を備えている。
なお、図6に示す例では、n個の中継器2001〜200nのうち、代表的に、中継器2001と中継器200nとが示されているが、中継器2001と中継器200nとの間には、図示しない中継器2002,2003,…,200n−1が存在する。同様に、受電装置3031と受電装置303nとの間には、図示しない受電装置3032,3033,…,303n−1が存在する。
また、本実施形態では、非接触給電システム3は、n個の中継器2001〜200nを備えるものとするが、その数は任意である。また、非接触給電システム3は、送電装置103に対応した受電装置3030を備えるとともに、n個の中継器2001〜200nに対応したn個の受電装置3031〜303nを備えるものとするが、その数は任意であり、単数でもよく、複数でもよい。また、一つの中継器に対して備えられる受電装置の数も任意である。
送電装置103は、電力を電磁エネルギーに変換して空間に送出するものであり、前述した図1に示す第1実施形態における送電装置100の構成において、前述した図4に示す第2実施形態における送電装置102の固体識別受信器120を更に備えたものに相当する。即ち、固体識別受信器120を備えた点を除けば、第3実施形態における送電装置103は、第1実施形態の送電装置100と同様に構成される。
中継器2001〜200nは、送電装置103から送出された電磁エネルギー(電力)を中継して受電装置3031〜303nに伝送するためのものであり、送電装置103に対して従属的に磁気結合される。即ち、送電側コイルL1に対して中継器2001が磁気結合され、この中継器2001に対して図示しない中継器2002が磁気結合され、この中継器2002に対して図示しない中継器2003が磁気結合され、以下同様にして、図示しない中継器200n−1に対して中継器200nが磁気結合される。なお、中継器2001〜200nと受電装置3031〜303nとの位置関係によっては、1つの受電装置が複数の中継器と磁気結合される場合もあり得る。また、1つの中継器に複数の受電装置が磁気結合される場合もあり得る。
ここで、中継器2001は、中継用コイルL21と共振用コンデンサC21との閉ループ回路から構成される。即ち、中継用コイルL21の一端には共振用コンデンサC21の一端が接続され、共振用コンデンサC21の他端には、中継用コイルL21の他端が接続されている。これら中継用コイルL21と共振用コンデンサC21とはLC直列共振回路を形成しており、このLC直列共振回路の共振周波数は、送電装置103の送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とによるLC直列共振回路の共振周波数と概ね一致している。他の中継器2002(図示なし)〜200nについても中継器2001と同様に構成される。例えば、中継器200nは、中継器2001の中継用コイルL21および共振用コンデンサC21に相当する中継用コイルL2nおよび共振用コンデンサC2nから構成される。なお、図1では、簡略化のため、中継用コイルL21〜L2nのそれぞれは1巻のループを形成するものとして模式的に示されているが、その巻数は任意である。
受電装置3030,3031〜303nは、送電装置103が発生させた磁束による電磁エネルギーを、直接又は中継器2001〜200nを介して受け取って電力に変換するためのものであり、それぞれ、前述の図1に示す第1実施形態における受電装置3001〜300nの構成において固体識別送信器3200〜320nを更に備えている。例えば、受電装置3031は、第1実施形態における受電装置3001の構成において、固体識別送信器(RFID送信器)3201を更に備えている。この固体識別送信器3201の電源ノードには定電圧回路PT1の出力部が接続され、固体識別送信器3201のグランドノードは、ダイオードD11〜D41から構成されたフルブリッジ整流回路の低電圧出力ノードに接続されている。他の受電装置3030,3032(図示なし)〜303nの固体識別送信器3200,3202(図示なし)〜320nについても同様である。
本実施形態では、受電装置3031に備えられた受電側コイルL31は、送電装置103から受電装置3031への給電時に、中継用コイルL21のループの外方の位置であって中継用コイルL21によって形成される磁束が鎖交する位置に配置され、中継用コイルL21と磁気結合される。ここで、中継用コイルL21のループの外方とは、中継用コイルL21によって形成されるループで閉じられた領域の外側を指す。
また、磁束が受信側コイルL31に鎖交する位置とは、中継用コイルL21を含む仮想平面(中継用コイルL21が備えられたテーブルの甲板と平行な平面)と受電側コイルL31のループの中心を通る軸線が略平行をなし、且つ、受電側コイルL31の軸線が中継用コイルL21の一部と交差する状態となる位置を指す。このような中継用コイルL21と受電側コイルL31との間の配置関係に関する条件は、例えば、後述の図7に示すように、上述の受電装置3031を備えた端末の利用者が、中継用コイルL21を有する中継器2001が設けられたテーブルの甲板の周囲に配置された椅子に着座した場合に満たされる。この場合、利用者は、受電側コイルL31の軸線が自身の身体の前後方向と略一致するようにして、受電装置3031が備えられた端末を所持しているものとする。
なお、本実施形態では、受電装置3031の受電用コイルL31は、中継器2001の中継用コイルL21と磁気結合されるものとするが、受電用コイルL31は送電装置103の送電用コイルL1または他の中継器2002(図示なし)〜200nの中継用コイルL22(図示なし)〜L2nと磁気結合されてもよい。
共振用コンデンサC31は、受電側コイルL31とLC直列共振回路を形成している。これら受電側コイルL31と共振用コンデンサC31とによるLC直列共振回路の共振周波数は、送電装置103の送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とによるLC直列共振回路の共振周波数と概ね一致している。ここで、前述のように、中継器2001の中継用コイルL21と共振用コンデンサC21とにより形成されるLC直列共振回路の共振周波数は、送電装置103の送電側コイルL1と共振用コンデンサC1とによるLC直列共振回路の共振周波数と概ね一致している。従って、送電装置103の電源部110から見れば、送電装置103の送電側コイルL1および共振用コンデンサC1と、中継器2001の中継用コイルL21および共振用コンデンサC21と、受電装置3031の受電側コイルL31および共振用コンデンサC31とが一体となって共振回路を形成し、これにより、送電装置103から受電装置3031への給電効率を高めている。
また、本実施形態では、変換部3101の出力部(即ち、定電圧回路PT1の出力部)には、固体識別送信器(RFID送信器)3201が接続されている。本実施形態では、固体識別送信器3201は、第1実施形態の変形例で述べたように、受電の有無等の受電に関する受電情報を送信するものであるが、この例に限定されず、任意の情報を送信し得る。
受電装置3031のその他の構成は、第1実施形態の受電装置3001と同様である。
他の受電装置3030,3032(図示なし)〜303nのそれぞれについても、受電装置3031と同様に構成されている。例えば、受電装置303nが備える受電側コイルL3n、共振用コンデンサC3n、変換部310n、固体識別送信器320nは、それぞれ、受電装置3031が備える受電側コイルL31、共振用コンデンサC31、変換部3101、固体識別送信器3201に相当する。また、受電装置303nの変換部310nが備えるダイオードD1n〜D4n、コンデンサC4n、定電圧回路PTn、コンデンサC5nは、受電装置3031の変換部3101が備えるダイオードD11〜D41、コンデンサC41、定電圧回路PT1、コンデンサC51に相当する。
本実施形態では、受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nは、それぞれ、中継器2001〜200nと磁気結合される。即ち、受電装置3031の受電側コイルL31は中継器2001の中継用コイルL21と磁気結合され、受電装置3032の受電側コイルL32は中継器2002の中継用コイルL22と磁気結合され、以下同様にして、受電装置303nの受電側コイルL3nは中継器200nの中継用コイルL2nと磁気結合される。また、本実施形態では、受電装置3030の受電側コイルL30は、送電装置103の送電側コイルL1と直接的に磁気結合される。
受電モニタ装置400は、第1実施形態と同様のものであるが、本実施形態では、上述の中継器2001〜200nにより電磁エネルギーを中継する際の伝送電力が下流側で減少する傾向があり、下流側での受電電力をモニタする目的から、受電モニタ装置400を最終段の中継器200nと磁気結合させる。ただし、この例に限らず、中継器2001〜200nのうちの任意のものに対して受電モニタ装置400を磁気結合させてもよく、また、複数の受電モニタ装置を分散配置してもよい。
図7は、本発明の第3実施形態による非接触給電システム3が備える上述の図6に示す送電装置103の送電側コイルL1および中継器2001〜200nの中継用コイルL21〜L2nの配置例を示す図である。図7に示す送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nは、それぞれ、図6に示す送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nを示している。ここで、図7(A)は、テーブルの甲板に取り付けられた上述の図6に示す送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nをテーブルの上方から見た図である。図7(B)は、図7(A)に示す送電側コイルL1または中継用コイルL2(L21〜L2n)から非接触給電が可能な領域PFx(図7(A)のPF1〜PF4)を説明するための図である。図7(A)では、上述の図6に示す送電装置103を構成する送電側コイルL1は、送電部103L1としてテーブルに備えられている。なお、送電側コイルL1から非接触給電が可能な領域も、中継用コイルL2から非接触給電が可能な領域と同様である。
図7(A)に示す例では、送電部103L1(送電側コイルL1)と、中継器2001〜200n(中継用コイルL21〜L2n)は、概ね数珠状に配置されている。即ち、中継器2001は送電部103L1の隣に位置し、中継器2002は中継器2001と中継器2003の隣に位置する。以下同様にして、中継器2003〜200nが配置されている。なお、隣に位置する中継器は必ずしも接する必要はなく、受電側コイルL31〜L3nがテーブルの周囲に位置する際に、いずれかの中継用コイルL21〜L2nと磁気結合できる範囲内に位置すればよい。受電側コイルL30〜L3nを備えた受電装置3030〜303nは、送電部103L1および中継器2001〜200nの周囲に配置された椅子にそれぞれ着座する利用者が所持する端末に組み込まれているものとする。
本実施形態では、送電部103L1および中継器2001〜200nはテーブルクロスに取り付けられる。即ち、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nは、それぞれ、テーブルの甲板上に敷かれるテーブルクロスの形状に沿ってそのテーブルクロスに取り付けられたコイルとして形成される。本実施形態では、説明の便宜上、テーブルクロスに取り付けられた中継用コイルL21〜L2nのループの形状は、テーブルの甲板の外周形状と略一致するものとする。従って、中継用コイルL21〜L2nが取り付けられたテーブルクロスをテーブルに敷いた場合、中継用コイルL21〜L2nは、テーブルの甲板の外周に沿って周回するようにテーブルに配置される。
なお、テーブルクロスに対するコイルの取り付け方法は任意である。例えば、自由度の有するテーブルクロスにするために送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nの各線材をテーブルクロス(不織布)に繊維と共にコイルを織り込んでもよい。また、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nをテーブルクロスの表面または裏面に接着剤等で張り合わせてもよい。
送電側コイルL1には送電装置103の電源部110が接続され、送電側コイルL1は電源部110により励磁される。なお、図7(A)では省略されているが、共振用コンデンサC1が送電側コイルL1と直列に接続されている。また、中継用コイルL2nには、前述したように、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mが磁気結合される。
ただし、図7(A)の例に限定されることなく、送電装置103の送電側コイルL1、中継器2001〜200nの中継用コイルL21〜L2nは、相互に磁気結合が可能であることを限度として、任意の形態で配置可能である。また、受電装置3030〜303nの受電側コイルL30〜L3nについても、送電側コイルL1または中継用コイルL21〜L2nと磁気結合することを限度に、任意の形態で配置可能である。
図7(A)から理解されるように、本実施形態では、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nの周囲に配置された椅子に利用者が着座すると、各利用者が所持する受電装置3030〜303nの受電側コイルL30〜L3nは、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nの各ループの外方に位置する。これにより、受電装置3030の受電側コイルL30が、送電部103L1として備えられた送電側コイルL1と磁気結合され、受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nが、それぞれ、中継器2001〜200nに備えられた中継用コイルL21〜L2nと磁気結合される。
本実施形態では、図7(B)に示すように、中継器200x(図7(A)の2001〜200n)の中継用コイルL2(図7(A)のL21〜L2n)から距離bによって規定される領域PFxの内部であれば、受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nと中継用コイルL21〜L2nとが磁気結合し、これにより送電装置103と受電装置3031〜303nとの間で非接触による給電が可能になる。ここで、図7(B)において、距離bは距離aに等しく、距離aは、テーブルの中心(例えば、テーブルの長手方向に沿った中心軸)からテーブルの外縁に位置する中継用コイルL2(テーブルの長手方向の外縁に位置する部分)までの距離である。従って、例えばテーブルの甲板の1辺の長さを50cmとした場合、距離aは約25cmとなり、磁気結合が可能な領域PFxを規定する距離bも約25cmとなる。このような領域PFxの大きさは、テーブルの周囲に椅子を配置するのに可能な大きさである。また、送電部103L1として備えられた送電側コイルL1についても同様に、送電側コイルL1から距離bによって規定される領域の内部であれば、受電装置3030の受電側コイルL30と送電部103L1の送電用コイルL1とが磁気結合し、送電装置103と受電装置3030との間で非接触による給電が可能になる。従って、受電装置3030〜303nを備えた各利用者が領域PFxに配置された椅子に着座すれば、受電装置3030〜303nが領域PFxの内部に存在するため、各受電装置に対して効率よく非接触給電を実施することができる。
なお、図7(A)に示す領域PF1は、送電部103L1の送電側コイルL1に対する磁気結合が可能な領域と、中継器2001に取り付けられた中継用コイルL21に対する磁気結合が可能な領域とを合成した領域を模式的に示している。他の領域PF2,PF3,PF4についても同様である。
利用者は、上述の領域PFx(PF1〜PF4)の内部にいる限りにおいて、送電側コイルL1と受電側コイルL31〜L3nとの間の位置関係を意識することなく、送電部103L1または中継器2001〜200nが設けられたテーブルクロスが敷かれたテーブルの周囲に配置された椅子に座るだけで、送電装置103から直接又は中継用コイルL21〜L2nを介して受電装置3030〜303nへ非接触により電力を伝送して負荷LD0〜LDnに給電することが可能になる。
図8は、本発明の第3実施形態による非接触給電システム3が備える中継用コイルL21〜L2nを実現する中継器200x(図7(A)の2001〜200n)の構成例を示す図である。ここで、図8(A)は、中継器200xの中継用コイルL2の構成を示す5面図であり、図8(B)は、隣接した中継器の中継用コイルL2間の磁気結合を説明するための図である。図8(A)において、中継用コイルL2の線材LLはテーブルクロス(不織布)に繊維と共にコイルを織り込んだものやテーブルクロスの表面または裏面に接着剤等で張り合わせたものがある。その他、樹脂等の柔軟性を有する絶縁体(図示なし)で被覆した構造を有していることも挙げられる。送電側コイルL1を実現する送電部103L1についても同様である。
本実施形態では、図8(A)に示すように、磁気結合に寄与しない領域からの磁束の漏えいを抑制するため、例えばフェライト材等の板状(薄層)の磁気シールド材MM(磁性体)の一面側に、中継用コイルL2(L21〜L2n)の線材LLを配置している。本実施形態では、複数の中継器200xがテーブル上に設けられた状態では、磁気シールド材MMは、中継用コイルL21〜L2nの各線材LLとテーブルの甲板の上面との間に位置する。このため、磁気シールド材MMは、中継用コイルL21〜L2nが形成する磁束の分布に指向性を持たせるように作用する。送電側コイルL1も中継用コイルL2と同様に、板状(薄層)の磁気シールド材の一面側に配置されており、このような配置により、送電側コイルL1によって形成される磁束の分布に指向性を持たせている。
また、図8(A)の例では、上方から見て概略四角形の中継用コイルL2の4辺のうち、磁気結合に寄与しない1辺(例えば、図8(A)に示す概略四角形の中継用コイルL2の上辺)が磁気シールド材MMで覆われている。このように、磁気結合に寄与しない部分を磁気シールド材MMで覆うことにより、第1実施形態と同様に、磁性結合領域を限定し、磁気結合に実質的に寄与しない領域からの磁束の漏えいを抑制する。これにより、中継用コイルL21〜L2nと受電側コイルL31〜L34との間の磁気結合に寄与する磁束密度を更に高め、給電効率を改善する。送電側コイルL1も中継用コイルL2と同様に、磁気結合に寄与しない部分が磁気シールド材で覆われ、磁気結合に寄与しない部分での磁束の漏えいが抑制されている。
また、図8(A)に示す中継用コイルL2の例によれば、隣接して配置された2つの中継器にそれぞれ配置される中継用コイルL2間の磁気結合を効果的に得ることができる。即ち、図8(B)に示すように、或るテーブルに配置された中継器200m(図7の中継器2001〜200nのうちの何れか1つ)の中継用コイルL2を構成する磁気シールド材MMm上の線材LLmは、その一方側に配置された中継器200m−1の中継用コイルL2を構成する磁気シールド材MMm−1上の線材LLm−1と隣接すると共に、その他方側に配置された中継器200m+1の中継用コイルL2を構成する磁気シールド材MMm+1上の線材LLm+1と隣接する。ここで、例えば、線材LLmとLLm+1は、磁気シールド材MMmと磁気シールド材MMm+1から形成される薄層の磁性体の上に隣接して位置する。このため、一方の線材LLm+1により形成された磁束が他方の線材LLmと効率的に鎖交し、隣り合う2つの中継用コイルL2間の磁気結合を高めることができ、磁気エネルギーの伝達を効率的に実施することができる。
(動作の説明)
次に、第3実施形態による非接触給電システム3の動作を説明する。
第1実施形態と同様に、送電装置103において、電源部110が送電側コイルL1を励磁すると、送電側コイルL1のループの中心を通る軸線方向に磁束が形成される。この場合、図7に示す送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nの線材を回り込むように磁束が形成される。本実施形態では、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nは磁気シールド材MM上に配置されるので、磁束はテーブルの甲板の内部には侵入せず、その殆どがテーブルの甲板の外部であって送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nから距離bの範囲内の領域PFx(PF1〜PF4)に分布する。
このように磁束が形成された状態で、例えば受電装置3031を所持した利用者が領域PF1に配置された椅子に着座すると、受電装置3031の受電側コイルL31が中継用コイルL21の外方に位置した状態となり、中継用コイルL21によって形成される磁束が受電側コイルL31と鎖交する。これにより、受電側コイルL31が中継用コイルL21と磁気的に結合された状態になる。
このような状態で、送電装置103の送電側コイルL1により形成される磁束が変化すると、この磁束の変化が中継用コイルL21を介して受電装置3031の受電側コイルL31に伝達され、この磁束の変化に従って受電装置3031の受電側コイルL31に交流電力が誘起される。受電側コイルL31に誘起された交流電力は、変換部3101のダイオードD11〜D41から構成されるフルブリッジ整流回路により整流されてコンデンサC41を充電し、定電圧回路PT1に供給される。定電圧回路PT1は、上記フルブリッジ整流回路により整流された電力を所望の一定電圧に変換して出力する。定電圧回路PT1から出力された電圧は、コンデンサC51を充電して受電装置3031から負荷LD1に供給される。
また、受電装置3031の固体識別送信器3201は、例えば、第1実施形態の変形例と同様に、受電の有無等に関する受電情報を送電装置103に送信してフィードバックする。即ち、固体識別送信器3201は、受電装置3031に予め割り付けられた固有の識別番号と共に、受電の有無等の受電に関する受電情報(例えば、充電中、過充電、満充電などに関する情報)を送信する。送電装置103の固体識別受信器120は、受電装置3031から送信された受電情報を受信する。電源部110は、固体識別受信器120によって受信された受電情報に基づいて、給電を必要とする受電装置の有無を判定する。そして、給電を必要とする受電装置の有無に応じて、送電を停止したり、送電側コイルL1の交流電力の周波数を最適に制御したり、間欠動作を実施したり、等々、動作モードを切り替えることにより効率的に送電する。
また、受電装置3031の固体識別送信器3201は、第2実施形態と同様に、利用者の識別番号に関する情報を無線により送電装置103へ送信してもよい。
以上により、送電装置103から受電装置3030に対して非接触による給電が実施され、負荷LD0に電力が供給されるとともに、送電装置103から中継器2001を介して受電装置3031に対して非接触による給電が実施され、負荷LD1に電力が供給される。他の受電装置3032(図示なし)〜303nについても受電装置3031と同様に、利用者がテーブルの周囲に配置された椅子に着座すると、受電側コイルL32(図示なし)〜L3nが中継器2002(図示なし)〜200nとそれぞれ磁気的に結合され、送電装置103から中継器2002(図示なし)〜200nを介して受電装置3032〜303nに非接触による給電が開始され、負荷LD2〜LDnに電力が供給される。図6の例では、例えば、終端に位置する受電側コイルL3nは中継器2001〜200nの全てを介して送電側コイルL1と磁気結合され、送電装置103から受電装置303nに非接触による給電が開始される。
上述の送電装置103から中継器2001〜200nを介した受電装置3031〜303nへの非接触給電による電力の供給状態は、受電モニタ装置400により逐次モニタされる。本実施形態では、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mと中継用コイルL2nとの間の位置関係は、例えば、図7に示す領域PF1〜PF4において、椅子に着座した利用者が所持する受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nと中継用コイルL21〜L2nとの間の距離の平均的な位置関係に設定される。
例えば、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mと中継用コイルL2nとの間の距離は、受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nと、中継用コイルL21〜L2nとの間の距離の平均値に相当する距離に設定される。この場合、中継用コイル間の伝送率が一定と仮定すれば、受電モニタ装置400は、受電装置3031〜303nの受電側コイルL31〜L3nに誘起される平均的な電力をモニタする。ただし、この例に限定されることなく、例えば、受電モニタ装置400の受電側コイルL3mは、図7に示す領域PF1〜PF4において中継用コイルから最も遠い位置に配置してもよい。この場合、領域PF1〜PF4において最も磁気的結合度が小さい受電装置の受電電力をモニタすることができる。
受電モニタ装置400は、中継用コイルL2nからの受電電力をモニタし、その受電電力に関する情報を電圧モニタ信号SDCとして送電装置103の電源部110にフィードバックする。電源部110は、電圧モニタ信号SDCによって示される受電側での受電電力に関する情報に基づき、受電側で所望の受電電力が得られるように例えば送電側コイルL1を励磁する交流電力の周波数を調整してフィードバック制御を実施する。これにより、受電装置3031〜303nの負荷LD1〜LDnに対し、所望の電力が安定的に供給される。
上述した第3実施形態によれば、送電装置103から、中継器2001〜200nに取り付けられた中継用コイルL21〜L2nを介して受電装置3031〜303nに電力を供給するので、受電装置ごとに送電装置103を準備する必要がない。従って、受電装置3031〜303nの数が増えたとしても、1つの送電装置103から多数の受電装置3031〜303nに対して非接触給電を実施することができる。
また、受電装置3030〜303nが組み込まれた端末を所持する利用者は、送電側コイルL1や複数の中継用コイルL21〜L2nが設けられたテーブルの甲板の周囲の椅子に着座する都度、自身が所持する端末に対する給電を実施することができる。この場合、利用者は、送電装置103の送電側コイルL1または中継用コイルL21〜L2nと受電装置3030〜303nとの間の位置関係を意識する必要がない。従って、利用者に煩わしさを与えることなく、利用者の端末に対する給電を実施することができる。
また、第3実施形態によれば、テーブルの甲板の周囲の領域PF1〜PF4の内部であれば、受電装置を備えた不特定多数の利用者の端末に対して非接触給電を実施することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形、変更、修正、置換等が可能である。例えば、上述の実施形態では、テーブルの甲板、出入口に送電側コイルL1を配置するものとしたが、受電側コイルL30〜L3nが、送電側コイルL1または中継用コイルL21〜L2nによって形成される磁束と鎖交する位置に配置され得ることを限度として、送電側コイルL1および中継用コイルL21〜L2nはどのような場所に配置されてもよい。