JP6093567B2 - ニッケル基超合金の劣化診断方法 - Google Patents
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Description
請求項2に記載の発明のニッケル基超合金の劣化診断方法は、請求項1に係る発明において、前記加熱処理は、加熱処理温度が1200〜1350℃、加熱処理時間が4〜24時間の範囲で前記式(1)を満たす条件下に行われることを特徴とする。
本発明のニッケル基超合金の劣化診断方法では、ニッケル基超合金に対して加熱処理を行った後、ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定するものである。このため、再結晶による結晶の有無を測定するに際し、前処理として加熱処理という操作を行うことにより、ニッケル基超合金が使用限界に達している場合には、再結晶に導くことができる。
加えて、前記加熱処理の前には、ニッケル基超合金に対し、強制荷重としてクリープ荷重が、クリープひずみが3%に到るまで負荷された状態であることから、再結晶による結晶を明らかに生成させることができる。
この実施形態におけるニッケル基超合金の劣化診断方法は、ニッケル基超合金に対して加熱処理を行った後、ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定するものである。上記加熱処理は、下記の式(1)で定められる加熱処理温度〔T(℃)〕と加熱処理時間〔t(h)〕との関係を満たす条件下に行われる。
この式(1)の値が31.0以下の場合には、加熱処理温度T又は加熱処理時間tの条件設定が不十分であり、ニッケル基超合金の劣化が進行していても、加熱処理で再結晶による結晶が認められないおそれがある。その一方、式(1)の値が33.5以上の場合には、加熱処理温度Tと加熱処理時間tの少なくとも一方の条件設定が過剰であり、ニッケル基超合金の溶解が始まる可能性があって再結晶が得られなくなり、或いは低い加熱処理温度Tで加熱処理時間tを過剰に長くすることもできるが、現実的ではない。
(a)温度760℃、圧力490MPa(図2の□印)
(b)温度760℃、圧力415MPa(図2の△印)
(c)温度850℃、圧力294MPa(図2の×印)
(d)温度980℃、圧力113MPa(図2の◇印)
(e)温度980℃、圧力65MPa(図2の○印)
図2に示すように、いずれの場合にもニッケル基超合金がクリープ寿命に近づくと、クリープひずみが次第に大きくなるクリープ曲線を描く。そして、図2の二点鎖線に示すように、各クリープ曲線において、クリープひずみが2%のときのクリープ寿命比はほぼ0.5〜0.8の範囲である。すなわち、クリープひずみが2%のときには、ニッケル基超合金の寿命の50〜80%に達することが示された。
一般に、クリープ負荷と破断時間との関係を示すパラメータとして下記に示すラーソンミラーパラメータが知られている。
但し、T0は絶対温度(K)、trは破断時間(h)、Cは材料定数である。
このラーソンミラーパラメータを用いることにより、高温、短時間のクリープ破断データからより低温、長時間のクリープ破断寿命を予測することができる。
また、一般に、クリープ破壊強度、破壊時間、温度の関係について、応力依存型速度過程の起こる速度(ひずみ速度)rは、下記の式(2)で表される(アレイニウスの式)。
但し、Aは常数、Qは活性化エネルギー、Sは外部からの応力、Rは気体定数、T0は絶対温度を表す。
そして、前記式(2)を変形すると、下記の式(3)が得られる。
但し、C=log10(A/ε)である。
すなわち、T0(log10t1+C)が外部からの応力例えばクリープ荷重の関数であることを示している。この場合、Cはニッケル基超合金等のときには、通常20が用いられる。なお、T0(K)=T(℃)+273である。
さて、ニッケル基超合金の劣化を診断する場合には、ニッケル基超合金に対して予め加熱処理を施す。この加熱処理は前記の式(1)で規定される加熱処理温度Tと加熱処理時間tとの関係を満たす条件下に行われる。すなわち、加熱処理温度Tが高い場合には加熱処理時間tを短く設定し、加熱処理温度Tが低い場合には加熱処理時間tを長く設定して式(1)の条件を満たすように加熱処理を行う。例えば、1200℃で12時間、或いは1350℃で4時間という条件で加熱処理を行う。
(1)本実施形態のニッケル基超合金の劣化診断方法は、ニッケル基超合金に対して加熱処理を行った後、ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定するものである。このため、再結晶による結晶の有無を測定するに際し、前処理として加熱処理という簡単な操作を行うことにより、ニッケル基超合金が使用限界に達している場合には、再結晶に導くことができ、劣化の判断をすることができる。
(2)前記加熱処理は、加熱処理温度Tが1200〜1350℃、加熱処理時間tが4〜24時間の範囲で前記式(1)を満足する条件下に行われる。この場合には、加熱処理条件の設定を容易に行うことができ、ニッケル基超合金の劣化診断を迅速に進めることができる。
(3)前記加熱処理は、式(1)を満たす条件下に複数回行うことが好ましい。この場合、ニッケル基超合金の再結晶を促進することができ、ニッケル基超合金の劣化診断を一層的確に行うことができる。
(4)前記ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定する方法は、走査電子顕微鏡及び解析装置に基づいて測定する方法である。そのため、ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を容易に認識することができ、ニッケル基超合金の劣化診断を速やかに行うことができる。
(5)前記ニッケル基超合金はタービン用ニッケル基超合金であり、そのタービン用ニッケル基超合金はガンマプライム相を有するガンマプライム析出強化型ニッケル基超合金である。このため、タービン用のニッケル基超合金について、劣化診断を適切かつ効果的に行うことができる。
(実施例1及び比較例1)
ニッケル基超合金として前述したインコネルIN-738LCを使用し、強制劣化のためにクリープ荷重を負荷するクリープ試験を行った。クリープ試験の条件は、温度850℃、圧力294MPaに設定した。そして、ひずみゲージを内蔵し、炉外に設置されたひずみ計によって測定されたクリープひずみが2.0%に到るまでクリープ試験を継続した。
(実施例2及び比較例2)
実施例2では、ニッケル基超合金として前述したGTD111(DS)を使用し、クリープ荷重を負荷するクリープ試験を行った。クリープ試験の条件は、温度980℃、圧力147MPaに設定した。そして、ひずみゲージによるクリープひずみが3.0%に到るまでクリープ試験を継続した。
得られたニッケル基超合金について、加熱処理温度Tが1200℃、加熱処理時間tが12時間という条件で加熱処理を2回実施した後、加熱処理温度Tが1250℃、加熱処理時間tが24時間という条件で加熱処理を実施した。なお、加熱処理温度Tが1200℃、加熱処理時間tが12時間の場合、前記式(1)における〔(T+273)(log10t+20)〕/1000の値は、31.05であった。また、加熱処理温度Tが1250℃、加熱処理時間tが24時間の場合、前記式(1)における〔(T+273)(log10t+20)〕/1000の値は、32.56であった。
図5に示すように、実施例2ではニッケル基超合金の母材11中に再結晶による多くの結晶12が認められた。従って、クリープひずみが3.0%の場合には、式(1)に示す条件下に加熱処理を施すことにより、再結晶を確認することができ、ニッケル基超合金が劣化していると判断することができた。
(比較例3)
前記実施例2において、クリープひずみが3.4%に到るまでとした以外は、実施例2と同様にしてクリープ試験を行った。得られたニッケル基超合金について、加熱処理温度Tが1200℃、加熱処理時間tが4時間という条件で加熱処理を実施した。この場合、前記式(1)における〔(T+273)(log10t+20)〕/1000の値は、30.3であった。
・ 前記ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定する方法として、光学顕微鏡を用いる方法、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる方法、電子後方散乱解析像法(EBSP)等を採用してもよい。
・ 前記式(1)における加熱処理温度Tと加熱処理時間tとを、加熱処理温度Tを決めてから式(1)の条件を満たすように加熱処理時間tを設定したり、加熱処理時間tを決めてから式(1)の条件を満たすように加熱処理温度Tを設定したりしてもよい。
Claims (6)
- ニッケル基超合金に対し、強制荷重としてクリープ荷重が、クリープひずみが3%に到るまで負荷された状態で、下記の式(1)で定められる加熱処理温度(T)と加熱処理時間(t)との関係を満たす条件下に加熱処理を行い、その後ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定することを特徴とするニッケル基超合金の劣化診断方法。
31.0<〔(T+273)(log10t+20)〕/1000<33.5 …(1) - 前記加熱処理は、加熱処理温度が1200〜1350℃、加熱処理時間が4〜24時間の範囲で前記式(1)を満たす条件下に行われることを特徴とする請求項1に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
- 前記加熱処理は、式(1)を満たす条件下に複数回行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
- 前記ニッケル基超合金中の再結晶による結晶の有無を測定する方法は、走査電子顕微鏡及び解析装置に基づいて測定する方法であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
- 前記ニッケル基超合金は、タービン用ニッケル基超合金であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
- 前記タービン用ニッケル基超合金は、ガンマプライム相を有するガンマプライム析出強化型ニッケル基超合金であることを特徴とする請求項5に記載のニッケル基超合金の劣化診断方法。
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