JP6092840B2 - 植物由来タンパク質を回収する方法 - Google Patents

植物由来タンパク質を回収する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6092840B2
JP6092840B2 JP2014500218A JP2014500218A JP6092840B2 JP 6092840 B2 JP6092840 B2 JP 6092840B2 JP 2014500218 A JP2014500218 A JP 2014500218A JP 2014500218 A JP2014500218 A JP 2014500218A JP 6092840 B2 JP6092840 B2 JP 6092840B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
plant
cell wall
superstructure
vlp
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014500218A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014510087A (ja
JP2014510087A5 (ja
Inventor
マノン・クチュール
ダニー・パケ
ルイ−フィリップ・ヴジナ
Original Assignee
メディカゴ インコーポレイテッド
メディカゴ インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by メディカゴ インコーポレイテッド, メディカゴ インコーポレイテッド filed Critical メディカゴ インコーポレイテッド
Publication of JP2014510087A publication Critical patent/JP2014510087A/ja
Publication of JP2014510087A5 publication Critical patent/JP2014510087A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6092840B2 publication Critical patent/JP6092840B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K1/00General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length
    • C07K1/14Extraction; Separation; Purification
    • C07K1/145Extraction; Separation; Purification by extraction or solubilisation

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Description

[発明の分野]
本発明は、植物由来タンパク質を回収する方法に関する。より具体的には、本発明は、植物および植物組織から、タンパク質超構造体を含むタンパク質を得る方法を提供する。
[発明の背景]
大腸菌(E.coli)、昆虫細胞培養、および哺乳動物細胞培養などの宿主細胞における現在の組換え発現戦略は、培養培地中で、タンパク質を極めて高レベルに発現させ、分泌させる。これらの系を使って、高レベルな発現、適正なタンパク質フォールディングおよびタンパク質の翻訳後修飾が達成される。さらにまた、細胞内タンパク質は他の構成要素(DNA、小胞、膜、色素など)から容易に隔離することができるので、発現したタンパク質の精製が簡単になる。植物発現系または酵母発現系の場合は、細胞壁が、発現したタンパク質の培養培地への分泌を妨げる。
科学界では細胞抽出物を生成するために、さまざまなアプローチが広く使用されている。細胞壁を破砕してその内容物を遊離させるための機械的アプローチは、通常、一定の種類のタンパク質または細胞構成要素に対して選択的ではない。目的タンパク質の発現を細胞培養培地に向かわせて、遠心分離または濾過によって細胞内夾雑物を除去できるようにすれば、目的タンパク質の簡単かつ迅速な濃縮が可能になる。また、目的のタンパク質またはタンパク質超構造体をワクチン製剤に使用する前に、タンパク質ロゼット、ナノ粒子、大きなタンパク質複合体、抗体またはウイルス様粒子(VLP)などを含む目的のタンパク質またはタンパク質超構造体を、植物または植物質中に存在するタンパク質、DNA、膜フラグメント、小胞、色素、糖質などの一部または全てから分離することも望ましいだろう。
免疫グロブリン(IgG)は、さまざまな性質の対応する特異的抗原に対して特徴的なアフィニティを有する複雑なヘテロ多量体タンパク質である。今日、IgG産生細胞株の日常的な単離と、IgGの指向的進化および分子工学のための技術の出現は、バイオ治療薬としての、そしてまた一般ライフサイエンス市場における、それらの進化に、著しい影響を与えている。治療用モノクローナルIgG(モノクローナル抗体、mAb)は、新しい抗炎症薬および抗がん薬の現在の市場を支配しており、何百という新しい候補が、改良された応用または新規な応用を求めて、現在、研究および臨床開発中である。mAbの年間市場需要は、数グラム(診断薬)、数キログラム(抗毒素)から、百〜数百キログラム(生物テロ防御、抗がん、抗感染、抗炎症)までにわたる。植物から修飾糖タンパク質を生産するための方法はWO2008/151440に記載されている(この文献は出典明示により本明細書に組み込まれる)。
植物の細胞間隙からタンパク質を抽出するための方法であって、目的のタンパク質を含む間質液抽出物を得るための減圧および遠心分離プロセスを含む方法が、PCT公開WO00/09725(Turpenら)に記載されている。このアプローチは、減圧および遠心分離下でマイクロファイバーのネットワークを通過する小さなタンパク質(50kDa以下のもの)には適しているが、より大きなタンパク質、超構造タンパク質、タンパク質ロゼット、ナノ粒子、大きなタンパク質複合体、例えば抗体またはVLPには適していない。
McCormickら,1999(Proc Natl Acad Sci USA 96:703−708)は、発現したタンパク質を細胞外コンパートメントにターゲティングし、次に、葉および茎組織の減圧浸潤によってscFvポリペプチドを回収するための、一本鎖Fv(scFv)エピトープに融合されたイネアミラーゼシグナルペプチドの使用を開示している。Moehnkeら,2008(Biotechnol Lett 30:1259−1264)は、アポプラスト抽出を使ってタバコから組換え植物アレルゲンを得るための、McCormickの減圧浸潤法の使用を記述している。PCT公開WO2003/025124(Zhangら)は、マウスシグナル配列を使ってアポプラスト間隙にターゲティングする、植物におけるscFv免疫グロブリンの発現を開示している。
ウイルス様粒子(VLP)は、例えばインフルエンザワクチンなどのワクチンを調製するために使用しうる。VLPなどの超構造体はウイルスキャプシドの構造を模倣しているが、ゲノムを欠くので、複製することも、二次感染のための手段を提供することもできない。VLPは、強い免疫応答を刺激するための、単離された(可溶性)組換え抗原に代わる改良された代替物を提供する。VLPは、特異的ウイルスタンパク質の発現時にアセンブルされ、そのコグネイトウイルスのものに似た外表面を提示するが、真のウイルス粒子とは異なり、遺伝物質は組み込まれていない。ネイティブウイルスのものに似た粒子状多価構造物における抗原の提示により、体液性構成要素と細胞性構成要素とのバランスがとれた、免疫応答の刺激の強化が達成される。単離された抗原による刺激と比べた上述の改良点は、エンベロープウイルスの場合には特に当てはまると考えられる。というのも、エンベロープVLPは、表面抗原を、それ本来の膜結合状態で提示するからである(GrgacicおよびAnderson,2006,Methods 40,60−65)。さらにまた、インフルエンザVLPは、そのナノ粒子構成により、組換えヘマグルチニンHA(すなわちモノマーHA、またはロゼットへと組織化したHA;3〜8個のHA三量体のアセンブリ)と比較して、より良いワクチン候補であることが示されており、それらは、体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を活性化することができる(Bright,R.A.ら,2007,Vaccine 25,3871−3878)。
脂質エンベロープを含むインフルエンザHA VLPの生産は、WO2009/009876およびWO2009/076778(D’Aoustら)の発明者らによって、以前に記述されている(これらの文献はどちらも出典明示により本明細書に組み込まれる)。エンベロープウイルスの場合、脂質層または脂質膜は、ウイルスによって保持されていることが有利であるだろう。脂質の組成は系によって異なり(例えば植物が生産するエンベロープウイルスは、植物脂質またはフィトステロールをエンベロープ中に含むであろう)、改良された免疫応答の一因になりうる。
HBV表面抗原(HBsAg)を発現するトランスジェニックタバコにおけるエンベロープVLPのアセンブリは、Masonら(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,11745−11749)によって記載されている。植物が生産するHBV VLPは、非経口的に投与した場合は、マウスにおいて、強力なB細胞およびT細胞免疫応答を誘導することが示されたが(Huangら,2005,Vaccine 23,1851−1858)、給餌試験による経口免疫処置は、あまり大きな免疫応答を誘導しなかった(Smithら,2003,Vaccine 21,4011−4021)。Greco(2007,Vaccine 25,8228−8240)は、HBsAgと融合したヒト免疫不全ウイルス(HIV)エピトープが、トランスジェニックタバコおよびアラビドプシス(Arabidopsis)で発現させると、VLPとして蓄積することを示して、二価VLPワクチンを創製した。
トランスジェニックタバコ植物およびトランスジェニックジャガイモ植物におけるウイルスキャプシドタンパク質(NVCP)の発現は、非エンベロープVLPのアセンブリをもたらした(Masonら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,5335−5340)。NVCP VLPは、アグロインフィルトレートしたベンサミアナタバコ(N.benthamiana)葉(Huangら,2009,Biotechnol.Bioeng. 103,706−714)において生産され、経口投与時のそれらの免疫原性が、マウスにおいて実証された(Santiら,2008,Vaccine 26,1846−1854)。215〜751μgのNVCPをVLPの形態で含有する生ジャガイモを、健常成人ボランティアに2回または3回投与したところ、免疫処置されたボランティアの95%において、免疫応答が発生した(Tacketら,2000,J.Infect.Dis. 182,302−305)。非エンベロープVLPは、HBVコア抗原(HBcAg;Huangら,2009,Biotechnol.Bioeng. 103,706−714)およびヒトパピローマウイルス(HPV)主要キャプシドタンパク質L1(Varsaniら,2003,Arch. Virol. 148,1771−1786)の発現からも得られている。
より単純なタンパク質またはタンパク質超構造体生産系、例えば1つまたは数個のタンパク質のみの発現に依拠するものが望ましい。植物系におけるタンパク質またはタンパク質超構造体、例えば限定するわけではないが、タンパク質ロゼット、ナノ粒子、大きなタンパク質複合体、例えば抗体またはVLPなどの生産は、植物を温室または圃場において栽培することができ、無菌的な組織培養法や取り扱いを必要としないという点で、有利である。
植物タンパク質を実質的に含まないか、植物タンパク質から容易に分離され、それでもなお、タンパク質またはタンパク質超構造体の構造および特徴を保っている、タンパク質またはタンパク質超構造体を回収する方法が望ましい。
本発明は、植物由来タンパク質を回収する方法に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質超構造体を含むタンパク質を、植物および植物組織から回収するための方法を提供する。
植物由来タンパク質を回収する改良された方法を提供することが、本発明の目的である。
本発明は、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を調製する方法(A)であって、アポプラスト内に局在する植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を含む植物または植物質を取得すること;細胞壁が弛緩するように植物または植物質を処理して、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を含むアポプラスト内容物画分と、植物細胞画分とを生産すること;およびアポプラスト内容物画分を回収することを含む方法を提供する。本方法は、アポプラスト内容物画分から植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を精製するステップを、さらに含みうる。植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質は、キメラ植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質でありうる。植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質、その植物にとって異種でありうる。植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質は、タンパク質ロゼット、タンパク質複合体、プロテアソーム、メタボロン、転写複合体、組換え複合体、光合成複合体、膜輸送複合体、核膜孔複合体、タンパク質ナノ粒子、糖タンパク質、抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖モノクローナル抗体、ウイルス様粒子(VLP)、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質、キメラタンパク質、キメラタンパク質複合体、キメラタンパク質ナノ粒子、キメラ糖タンパク質、キメラ抗体、キメラモノクローナル抗体、キメラ一本鎖モノクローナル抗体、キメラヘマグルチニン、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質を含みうる。植物由来モノクローナル抗体は、キメラマウスヒトモノクローナル抗体、例えば、限定するわけではないがC2B8を含みうる。植物由来VLPはインフルエンザヘマグルチニンを含みうる。
アポプラスト内容物画分と細胞画分は、植物または植物質を化学的、酵素的、もしくは物理的に処理することによって、またはそれらの組み合わせによって、生産しうる。例えば植物または植物質を細胞壁弛緩組成物(cell wall loosening composition)で処理しうる。細胞壁弛緩組成物は、キレーター、ヒドロキシラジカル、インドール−3−酢酸、エクスパンシン、ペクチナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、およびそれらの組み合わせから選択される1つまたは2つ以上の化合物を含みうる。当業者には理解されるであろうとおり、セルラーゼは酵素の混合物であり、1つ以上のエンド−1,4−ベータ−グルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ(エキソセルラーゼ)、ベータ−グルコシダーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ(酸化的セルラーゼ)、セルロースホスホリラーゼ、およびヘミセルラーゼを含みうる。
さらにまた、アポプラスト内容物画分と細胞画分は、加圧または減圧浸潤法で細胞壁弛緩組成物を植物または植物質に浸潤させることによって生産することもできる。より具体的には、細胞壁弛緩組成物は、1つ以上の酵素、例えば1つもしくは2つ以上のペクチナーゼ、1つもしくは2つ以上のセルラーゼ、または1つもしくは2つ以上のペクチナーゼおよび1つまたは2つ以上のセルラーゼを含みうる。それゆえに、アポプラスト内容物画分と細胞画分は、例えば酵素浸潤などによって生産しうる。
アポプラスト内容物画分と細胞画分は、植物または植物質をソニケーションで処理することによって、またはソニケーションと組み合わせた細胞壁弛緩組成物で処理することによって生産することもできる。
植物または植物質(plant matter)は、植物を栽培するか、収穫するか、または栽培しかつ収穫することによって得ることができる。植物質は、植物の一部または全部、1つまたは2つ以上の植物細胞、葉、茎、根または培養植物細胞を含みうる。
本発明は、上述のような植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を調製する方法であって、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質をコードする核酸が植物中に一過性に導入される方法を提供する。あるいは、核酸が植物のゲノム内に安定に組み込まれる。
本発明は、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質をアポプラスト内容物画分から精製するステップをさらに含む、上述のような植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を調製する方法も提供する。精製ステップは、深層濾過を使ってアポプラスト内容物画分を濾過することで、清澄化抽出物を生産し、次に陽イオン交換樹脂、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせを使った清澄化抽出物のクロマトグラフィーを行うことを含みうる。
理論に束縛されることは望まないが、アポプラスト内容物画分から得られるタンパク質は、さまざまな細胞内コンパートメント、例えばミトコンドリア、クロロプラスト、および他の細胞小器官中に見いだされる中間体型の翻訳後修飾タンパク質または他のタイプのプロセシングを含むタンパク質が共抽出されないので、より均一である。典型的には、組換えタンパク質の均一度が高いほど、そのタンパク質を含む調製物の品質は高くなり、より高い力価、より長い半減期、またはより良い免疫原能を含む有益な性質を有する産物をもたらしうる。例えば、高マンノース型グリコシル化を含有する血液タンパク質は、複合型グリコシル化を含むタンパク質よりも迅速に血液循環から排除される。アポプラスト内容物画分中のグリコシル化タンパク質産物は、より複合型のグリコシル化を示す。それゆえに、細胞壁弛緩を伴う本明細書に記載の方法を使って調製されたタンパク質は、例えば、より良い循環半減期を示す。
植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質は、タンパク質ロゼット、タンパク質複合体、タンパク質ナノ粒子、抗体、モノクローナル抗体、VLPを含みうる。VLPは1つ以上のインフルエンザHAポリペプチドを含みうる。超構造体タンパク質はキメラ超構造体タンパク質であることができ、例えば、モノクローナル抗体はキメラモノクローナル抗体でありうるし、インフルエンザHAポリペプチドはキメラHAポリペプチドでありうる。超構造体タンパク質がVLPである場合、植物由来VLPは血球凝集活性をさらに含みうる。植物または植物質は、植物を栽培するか、収穫するか、または栽培しかつ収穫することによって得ることができる。植物質は、植物の一部もしくは全部、または1つもしくは2つ以上の植物細胞、葉、茎、根もしくは培養細胞を含みうる。
本発明は、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を調製する方法(B)であって、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を含む植物または植物質を取得すること、細胞壁弛緩組成物、ソニケーション、またはそれらの組み合わせを使って植物質を処理することで、植物細胞画分およびアポプラスト内容物画分を生産すること、およびアポプラスト内容物画分を濾過して、濾過画分を生産し、その濾過画分から植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を回収することを含む方法も提供する。
理論に束縛されることは望まないが、植物由来脂質を含む植物製VLPは、他の製造系で作られたVLPより強い免疫反応を誘導することができ、これらの植物製VLPによって誘導される免疫応答は、生または弱毒化全ウイルスワクチンによって誘導される免疫反応と比較しても、さらに強い。
宿主細胞から得られるタンパク質抽出物の組成は複雑であり、典型的には、単離すべき目的のタンパク質または超構造体と共に、細胞間および細胞内の構成要素を含む。アポプラスト内容物画分の調製と、それに続いて、細胞壁構成要素を細胞内のタンパク質および構成要素と一緒に隔離するためのステップは、目的のタンパク質または超構造体が製造プロセス内で濃縮され、効率を向上させることができるので、有利であるだろう。工程数の少ない、効率のよいステップを含む、より簡単なプロセスにすることは、有意な収率増加とコスト削減をもたらしうる。細胞壁を弛緩するプロセスでは、消化された細胞壁が関与する方法(例えばPCT/CA2010/001489またはPCT/CA2010/001488)と比較して、類似するまたは増加した超構造体タンパク質収率が得られることもわかった。理論に束縛されることは望まないが、細胞壁弛緩のステップは、細胞壁のポリマー構成要素を弛緩させ、タンパク質または超構造体タンパク質、その他、細胞壁内で結合しているものの放出を補助しうる。このプロトコールは、細胞内構成要素によるタンパク質、または超構造体タンパク質の汚染も最小限に抑えうる。
ホモジナイゼーション、ブレンディングまたは粉砕を伴う植物由来超構造体タンパク質の調製方法と比較すると、本明細書に記載の方法では、植物由来超構造体タンパク質抽出物の破壊および汚染が少なくなる。本明細書に記載の方法は、プロトプラストおよびそれらの構成要素の完全性を維持したまま、植物組織のアポプラスト内容物画分を提供する。本明細書に記載の方法は、プロトプラストまたはプロトプラストの一部分がその完全性を失ってもはや無傷(intact)ではなくなった場合でも、タンパク質または超構造体タンパク質の精製に有効である。
これらの方法は、標準的な組織破壊技法、例えばホモジナイゼーション、ブレンディングまたは粉砕を伴う超構造体タンパク質抽出の方法と比較して、タンパク質または超構造体タンパク質の収率の増加をもたらす。収率の増加は、一つには、タンパク質または超構造体タンパク質、そしてVLPの場合は脂質エンベロープの、構造的完全性を破壊する剪断力の低減によるものでありうる。アポプラスト内容物画分は細胞質タンパク質が著しく減少しているかまたは細胞質タンパク質を含まないので、アポプラスト内容物画分からのタンパク質または超構造体タンパク質の調製は有利であるだろう。それゆえに、アポプラスト内容物画分では、超構造体タンパク質の単量体、二量体、三量体またはフラグメントを含む超構造体タンパク質が、他のタンパク質および物質から、容易に分離される。しかし、たとえプロトプラスト調製物またはプロトプラスト調製物の一部分が無傷ではない場合でも、本明細書に記載の方法を使って、タンパク質または超構造体タンパク質を、増加した収率で得ることができる。
アポプラストへと分泌される、超構造体糖タンパク質を含む糖タンパク質、例えばモノクローナル抗体は、細胞壁を弛緩させない抽出方法、例えばブレンダー抽出した植物と比較して、成熟が完了していて末端N−アセチルグルコサミンまたはガラクトース残基を含むN−グリカン(複合型N−グリカン)のパーセンテージが高い。複合型N−グリカンを含む超構造体糖タンパク質、例えばモノクローナル抗体は、末端マンノース残基(未熟(immature)Nグリカン)を含むモノクローナル抗体と比較すると、血流中での増加した半減期という有益な性質を示すことがわかっている。
細胞壁の弛緩により、成熟が完了しているN−グリカンを含むアポプラスト抗体のプールを遊離させることが可能だろう。この抽出方法は、プロトプラスト画分中の未熟型グリコシル化抗体を分離して、複合型N−グリカンを保持するグリコシル化抗体の濃縮された集団または均一な集団を回収することを可能にしうる。未熟N−グリカンを保持する抗体のプールが望まれる場合は、プロトプラスト画分をとっておいて、そのプロトプラスト画分から抗体を精製することができる。
本発明のVLPは、標準的な組織破壊技法を使って得られるものより強い血球凝集活性を示すとも特徴づけられる。この改良された血球凝集活性は、無傷のVLPの収率が高い(溶解した状態の遊離のHA単量体または三量体が少ない)こと、無傷の脂質エンベロープを有する無傷のVLPの収率が高いこと、またはそれらの組み合わせに起因するのだろう。
VLPを使って作られたワクチンには、全ウイルスでできたワクチンと比較して、それらが非感染性であるという利点がある。それゆえに、生物学的封じ込めは問題ではなく、それは生産にとって必要でない。植物製VLPは、発現系を温室または圃場で栽培することが可能であり、それゆえに、著しく経済的であり、スケールアップにも適していることによって、さらなる利点を提供する。
加えて、植物は、シアル酸残基の合成とタンパク質への付加に関与する酵素を含まない。VLPをノイラミニダーゼ(NA)の非存在下で生産することができ、植物におけるVLP生産を保証するために、NAを共発現させる必要や、生産細胞または抽出物をシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)で処理する必要はない。
この発明の概要は、必ずしも、本発明の特徴の全てを述べたものではない。
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面を参照しながらなされる以下の説明から、より明白になるであろう。
H5 A/Indonesia/5/05ヘマグルチニンを発現させるためのCPMVHT系発現カセット(コンストラクト685)の概略図である。
A)H5/Indoを発現させるためのコンストラクト(コンストラクト番号685)の一部分、PacI(35Sプロモーターの上流)からAscI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列(配列番号1)を示す図である。A/Indonesia/5/2005由来のH5のコード配列に下線を引く。図2Bは、コンストラクト番号685がコードするH5 A/Indonesia/5/05ヘマグルチニンのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるヘマグルチニン(HA)含有構造物のキャラクタリゼーションを示す図である。消化された植物抽出物の遠心分離後に、ペレットを再懸濁し、SECで分画した。図3Aは、1画分あたりの全可溶性タンパク質含有量を示す(黒い三角形;最大に対する%、左側のY軸;ブラッドフォード法を使って決定)。集めた画分の血球凝集活性(黒いバー;右側のY軸)も示されている。図3BはSEC溶出画分のSDS−PAGE分析を示す。分析に先だって、画分をアセトンで沈殿させ、1/40体積の還元性試料ローディング緩衝液に再懸濁した。ゲルは0.1%クマシーR−250溶液で染色した。精製VLPを対照として流した。HA0単量体に対応するバンドを矢印で示す。MW−分子量標準(kDa);C−精製VLP(対照);レーン7〜10および14〜16は、図3Aに示すSEC分析から溶出した画分番号に対応する。
酵素消化後に得られたタンパク質プロファイルと、Comitrol(商標)ホモジナイザーを使った機械的ホモジナイゼーションによって得られたタンパク質プロファイルとの比較を示す図である。試料を変性試料ローディング緩衝液で処理し、溶出画分のSDS−PAGE分析によって、タンパク質を分離した。ゲルを0.1%クマシーR−250溶液で染色した。MW−分子量標準(kDa);レーン1−酵素混合物25μl;レーン2−植物組織の酵素消化物25μl、およびレーン3−Comitrolホモジナイザーで得られた抽出物5μl。
アルファルファプラストシアニンプロモーターおよび5’UTR、A/Indonesia/5/2005由来のH5のヘマグルチニンコード配列(コンストラクト番号660)、アルファルファプラストシアニン3’UTRおよびターミネーター配列を含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号9)を示す図である。
アポプラスト画分中のHA−VLPを分離するための、陽イオン交換樹脂でのHA−VLPの直接的な捕捉を示す図である。試料を非還元性変性試料ローディング緩衝液で処理し、タンパク質をSDS−PAGEで分離した。ゲルを0.1%クマシーR−250溶液で染色した。レーン1:遠心分離後のアポプラスト画分、レーン2〜3:連続的精密濾過後のアポプラスト画分;レーン4:陽イオン交換の負荷試料;レーン5:陽イオン交換のフロースルー画分。レーン6;陽イオン交換からの溶出物、10倍濃縮;レーン7:分子量標準(kDa)。
消化緩衝液にNaClを添加せずに清澄化した後のH5/Indo VLP(図7A)およびH1/Cal VLP(図7B)ならびにこれを添加した場合のH1/Cal VLP(図7C)のナノ粒子トラッキング解析(NTA)プロファイルを示す図である。NTA実験はNanoSight LM20(NanoSight、英国エームズベリー)で行った。この装置は、青レーザー(405nm)、試料チャンバーおよびVitonフルオロエラストマーOリングを装備している。ビデオを室温で記録し、NTA2.0ソフトウェアを使って解析した。試料を60秒間記録した。シャッターとゲインは、最適な粒子解像度が得られるように、手動で選択した。
異なる緩衝液を使った酵素消化によって生成したH3/Brisbane VLPの抽出物のウェスタンブロットを示す図である。レーン1)純粋な組換えHA標準(5μg、Immune Technology Corp.から入手、IT−003−0042p)。レーン2〜5は、以下の緩衝液で行われた、遠心分離済みの酵素抽出物7μlを含んでいる:レーン2)600mMマンニトール+125mMクエン酸塩+75mM NaPO+25mM EDTA+0.04%重亜硫酸塩(pH6.2)、レーン3)600mMマンニトール+125mMクエン酸塩+75mM NaPO+50mM EDTA+0.04%重亜硫酸塩(pH6.2)、レーン4)200mMマンニトール+125mMクエン酸塩+75mM NaPO+25mM EDTA+0.03%重亜硫酸塩(pH6.2)、レーン5)200mMマンニトール+125mMクエン酸塩+75mM NaPO+50mM EDTA+0.03%重亜硫酸塩(pH6.2)。矢印は、HA0の免疫検出シグナルを表す。
コンストラクト番号590のアセンブリのために合成されたDNAフラグメント(LCフラグメント)(配列番号15)の配列を示す図である。
コンストラクト番号592のアセンブリのために合成されたDNAフラグメント(HCフラグメント)(配列番号16)の配列を示す図である。
図11Aおよび図11Bは、それぞれ、コンストラクト番号595(図11A)およびコンストラクト番号R472(図11B)の概略図である。
細胞壁の機械的破壊(ブレンダー抽出)および酵素消化によって生産された抽出物から精製した抗体のSDS−PAGE比較。各抽出法につき2つのロットを、独立して加工し、精製した。
図13Aは、細胞壁の機械的破壊(ブレンダー抽出)および酵素消化によって精製されたC2B8上のオリゴマンノシドN−グリカンの比率を示す図である。図13Bは、細胞壁の機械的破壊(ブレンダー抽出)および酵素消化によって精製されたC2B8上の複合型N−グリカンの比率を示す図である。
図14Aは植物細胞壁のモデル(共有結合的架橋モデル)を示している。このモデルでは、細胞壁マトリックスポリマー(キシログルカン、ペクチン、および糖タンパク質)が共有結合で互いに連結されている。セルロースミクロフィブリルへのキシログルカンの結合は、壁に引張強さを与える非共有結合的架橋セルロース−ヘミセルロースネットワークをもたらす。図14Bは、植物細胞壁の代替モデル(テザーモデル)を示している。このモデルでは、キシログルカン分子がセルロースミクロフィブリルに水素結合し、セルロースミクロフィブリルを架橋している。セルロース−キシログルカンネットワークは、非共有結合的架橋ペクチンネットワーク中に網目を作っている。図14Cは、植物細胞壁のもう一つの代替モデル(拡散層モデル)を示している。このモデルでは、キシログルカン分子はセルロースミクロフィブリルの表面に水素結合しているものの、それらを直接的には架橋していない。強固に結合したキシログルカンは、それほど強固には結合していない多糖の層によって囲まれている。セルロースとキシログルカンはペクチンマトリックスに埋め込まれている。図14Dは、植物細胞壁の代替モデル(成層モデル)を示している。このモデルでは、キシログルカン分子がセルロースミクロフィブリルに水素結合し、セルロースミクロフィブリルを架橋している。セルロース−キシログルカンのラメラが、ペクチン多糖の層によって分離されている。
細胞壁解重合酵素の使用を伴うまたは伴わないEDTA含有緩衝液による植物処理時に放出されるタンパク質を示す図である。図15A:ブラッドフォードアッセイを使ってタンパク質濃度を測定した。図15B:赤血球を凝集させる最低量の抽出可能なタンパク質の逆数としてHA活性を表す。
図16Aは、酵素溶液/消化溶液を浸潤させた葉から4時間後(時間0.25t)に放出されるタンパク質(実施例17参照)を、同じ酵素溶液/消化溶液に16時間(時間t)浸漬し振とうした葉と比較して示す図である。図16Bは、酵素溶液/消化溶液を浸潤させた全植物体/葉から放出されるタンパク質を、同じ酵素溶液/消化溶液を浸潤させた切断葉と比較して示す図である。図16Cは、Multifect CXCGおよびMultifect CX B(Genencor)を使用して、または使用せずに、1つまたは2つ以上のペクチナーゼ(例えばBiocatalysts 162Lおよび/またはBiocatalysts 444L)で全葉を処理した時に放出されるタンパク質を示す図である。さらにまた、Biocatalysts PDN33で全葉を処理した時のタンパク質放出も示されている。図16Dは、pH5.8、pH6.0またはpH6.2の緩衝液でアグロフィルトレーションの5日後に全葉を処理した時に放出されるタンパク質またはpH6.2もしくはpH6.5のさまざまな緩衝液でアグロインフィルトレーションの7日後に全葉を処理した後に放出されるタンパク質を示す図である。
詳細な説明
本発明は、植物由来タンパク質を回収する方法に関する。より具体的には、本発明は、植物および植物組織から、タンパク質またはタンパク質超構造体を回収する方法を提供する。
以下の説明は好ましい実施形態の説明である。
本発明は、目的の植物由来タンパク質またはタンパク質超構造体を回収するための方法を提供する。目的のタンパク質は、プロトプラスト/スフェロプラストコンパートメントを除く植物細胞部分に相当するアポプラストまたは細胞外コンパートメント中に存在しうる。本方法では、例えば細胞壁内で細胞壁ポリマー構成要素およびそれらに関連する連結を分解し、部分的に分解し、切断し、部分的に切断し、または他の形で構造的に変化させ、細胞壁ポリマー内または細胞壁ポリマー間の分子間非共有結合または共有結合を破断することなどによって、細胞壁を弛緩させる。本方法は、植物細胞からのプロトプラストまたはスフェロプラストの放出を伴っても、伴わなくてもよい。
「プロトプラスト」という用語は、その細胞壁が完全にまたは著しく除去されている植物細胞を意味し、例えば細胞壁の約50%〜約100%またはその間の任意の量が除去されうる。例えば、細胞壁の約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%またはその間の任意の量が除去されうる。スフェロプラストでは細胞壁が部分的に除去されうる。例えば細胞壁の10%〜約49%またはその間の任意の量が除去されうる。例えば細胞壁の約10、15、20、25、30、35、40、45、49%またはその間の任意の量が除去されうる。
「アポプラスト」は、形質膜と細胞壁の間に含まれる植物細胞の一部分であり、植物の細胞壁および細胞間隙を含む。消化およびさらなる加工中にプロトプラスト(および/またはスフェロプラスト)の完全性は維持されることが好ましいが、本明細書に記載するタンパク質または超構造体タンパク質を濃縮するために、プロトプラストが無傷のままであることは要求されない。プロトプラストまたはスフェロプラストの形質膜は、分解、部分的に分解、切断、部分的に切断されていないこと、もしくは他の形で構造的に変化していないこと、弛緩していないこと、またはその完全性が変化していないことが好ましいが、形質膜の例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%またはその間の任意の量は、分解され、切断され、構造的に変化し、弛緩し、または除去されていてもよい。
「細胞壁」という用語は、植物細胞の外側細胞コンパートメントを形成する構造であって、形質膜の外側に位置してアポプラストの境界を成している構造を意味する。理論に束縛されるわけではないが、細胞壁は、ポリマーのマトリックス、例えばセルロースミクロフィブリルがヘミセルローステザーによって連結されて、ペクチンマトリックスに埋め込まれたセルロース−ヘミセルロースネットワークを形成しているものでできていると考えられる(植物細胞壁のいくつかの非限定的なモデルについては図14A〜14Dを参照されたい)。細胞壁構成要素には、非限定的な例として、多糖、セルロース、ヘミセルロース(例えばキシラン、キシログルカン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、グルクロノアラビノキシラン、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ガラクトグルコマンナン)、ペクチン(例えばホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナンI、ラムノガラクツロナンII、オリゴガラクツロニド、置換ガラクツロナン、キシロガラクツロナン、アピオガラクツロナン)、ポリマー、リグニン、クチン、スベリン、糖タンパク質、ヒドロキシプロリンリッチ糖タンパク質、アラビノガラクタンタンパク質、グリシンリッチタンパク質、プロリンリッチタンパク質、エクステンシン、エクスパンシン、ミネラル、カルシウム、ペクチン酸カルシウム、マグネシウム、ペクチン酸マグネシウム、ホウ酸塩、フェノールエステル、フェルラ酸、クマル酸を含めることができる。
構造上、細胞壁構成要素、特にペクチンマトリックスに埋め込まれたセルロース−ヘミセルロースネットワークは、細胞壁の半透性に貢献する。生理的環境において、細胞壁は通常、細胞壁構成要素によって形成されるメッシュを通して、小分子の通過を許す。細胞壁の弛緩は、細胞壁構成要素同士の相互作用の弛緩を伴い、直接的または間接的にメッシュの拡大または伸張をもたらすことで、細胞壁を通過することを通常許されるものより大きな分子の通過を可能にする。大きな分子による、弛緩した細胞壁の通過は、小さな分子による、弛緩していない細胞壁の通常の通過に作用する力、例えば膨圧、浸透圧および静水圧などによって促進することができる。本方法は、それらの力の1つ以上に作用して大きな分子の通過をさらに容易にするであろう試薬、化学薬品または生物製剤の使用を含みうる。
「細胞壁弛緩」とは、壁張力の緩和、壁応力緩和、不可逆的壁伸張(壁クリープ)、または細胞壁の1つ以上の構成要素の部分的なまたは完全な分解をもたらしうる細胞壁の構造的変化をもたらす、細胞壁の修飾を意味する。例えば、理論に束縛されることは望まないが、細胞壁弛緩は、細胞壁内のさまざまな構成要素間の結合、例えば細胞壁内の荷重負荷結合が破断される結果として生じうる。構造的変化は、例えば細胞壁構成要素の切断、部分的切断、分解または部分的分解、細胞壁構成要素内または細胞壁構成要素間の分子間非共有結合または共有結合の破断、または細胞壁を弱める他の修飾、細胞壁マトリックスの破壊、またはそれらの組み合わせによって起こりうる。弛緩は、壁の限局的領域において、細胞壁内のターゲット構成要素で起こりうるか、または弛緩は細胞壁全体に広く散在しうる。細胞壁弛緩は、例えばソニケーショなどの植物細胞の物理的処理、細胞壁弛緩組成物による化学的処理、酵素的処理、化学的処理と酵素的処理の両方、またはソニケーションと細胞壁弛緩組成物による処理との組み合わせ、または浸潤(減圧または加圧を用いるもの)と細胞壁弛緩組成物による処理との組み合わせで起こりうる。細胞壁の弛緩は細胞壁の部分的消化をもたらしうる。細胞壁を弛緩させるための処理を受けた植物細胞は、依然として、植物細胞壁または植物細胞壁の一部を、修飾された形態で含みうる。さらにまた、細胞壁の弛緩には、細胞壁の部分的分解または除去、例えば細胞壁の0%〜約60%またはその間の任意の量が分解または除去されるもの、細胞壁の0%〜約30%またはその間の任意の量が分解または除去されるもの、あるいは細胞壁の0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90%またはその間の任意の量が分解または除去されるものも含めることができる。しかし、プロトプラスト、スフェロプラスト、またはプロトプラストとスフェロプラストの両方が生産されてもよい。細胞壁を弛緩させるために本明細書に記載の処理を1つ以上行った後の細胞の集団内にある一部の植物細胞は、プロトプラストを含みうる、例えば、細胞集団の約0%〜約50%またはその間の任意の量がプロトプラストを含みうるか、細胞集団の例えば0%〜約30%またはその間の任意の量、0%〜約10%またはその間の任意の量がプロトプラストを含みうるか、細胞集団の0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50%またはその間の任意の量がプロトプラストを含みうる。同様に、一部の植物細胞はスフェロプラストを含みうる、例えば、細胞集団の約0%〜約90%またはその間の任意の量がスフェロプラストを含みうるか、細胞集団の例えば0%〜約60%またはその間の任意の量、0%〜約30%またはその間の任意の量がスフェロプラストを含みうるか、細胞集団の0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90%またはその間の任意の量がスフェロプラストを含みうる。
「細胞壁弛緩組成物(cell wall loosening composition)」という用語は、細胞壁弛緩をもたらす任意の組成物、例えば細胞壁内の構成要素が切断され、部分的に切断され、分解され、または部分的に分解されるように細胞壁を修飾する任意の組成物、または細胞壁構成要素内もしくは細胞壁構成要素間の分子間非共有結合または共有結合を破断する任意の組成物、または細胞壁を弱くし、細胞壁マトリックスを破壊する他の修飾をもたらす任意の組成物、またはそれらの組み合わせを意味する。細胞壁弛緩組成物の例には、細胞壁構成要素を破壊または加水分解する化学薬品、細胞壁構成要素を破壊または加水分解する酵素、細胞壁構成要素を破壊または加水分解する生物製剤、または細胞壁構成要素を破壊または加水分解する化学薬品、生物製剤および酵素のうちの少なくとも2つの任意の組み合わせなどがある。化学薬品の非限定的な例には、キレーター、例えばEDTAまたはEGTAなどの二価カチオンキレーター、プロトン供与体、ヒドロキシラジカル、水酸化カリウム、インドール−3−酢酸、イミダゾール、およびそれらの組み合わせなどがある。生物製剤の非限定的な例には、オーキシン、エクスパンシン、例えば1つ以上のアルファ−エクスパンシンまたはベータ−エクスパンシン、およびそれらの組み合わせなどがある。酵素の非限定的な例には、グリカナーゼ、ガラクツロナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、ペクトリアーゼ、ペクトザイム(pectozyme)、ペクチンエステラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、エンド−1,4−ベータ−グルカナーゼ、キシログルカントランスグリコシルヒドロラーゼ、キシログルカンエンドグルカナーゼ、キシログルカンエンドトランスグルコシラーゼ、セロビオヒドロラーゼ(セキソセルラーゼ)、グリコシドヒドロラーゼ、ベータ−グルコシダーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ(酸化的セルラーゼ)、セルロースホスホリラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、およびそれらの組み合わせなどがある。下記実施例(例えば実施例1)で述べるように、使用しうる酵素混合物の非限定的な例には、ペクチナーゼであるマセロチーム(MACEROZYME)(ヤクルト薬品工業)およびセルラーゼ組成物であるオノズカ(ONOZUKA)R−10(ヤクルト薬品工業)がある。もう一つの非限定的な例(実施例17;図16)では、使用しうる酵素混合物が、例えばBiocatalysts 162L、Biocatalysts 444L、Biocatalysts PDN33などといった、単独でまたは組み合わせて使用されるペクチナーゼを含む。ペクチナーゼまたはペクチナーゼ組成物を、例えばMultifect CX CG、Multifect CX B(Genencor)またはその組合せなどといったセルラーゼと共に使用してもよい。細胞壁弛緩組成物がプロトプラストの調製に使用しうる酵素混合物を含む場合(例えば下記実施例の「細胞壁消化によるVLP抽出」、実施例1および実施例17で述べるような場合;また、出典明示により本明細書に組み込まれるPCT/CA2010/001489またはPCT/CA2010/001488も参照されたい)、使用する酵素の量および/または消化時間または他の任意の消化パラメータは、プロトプラストを調製するために典型的に使用されるものより少ない。例えば、使用される酵素の量は、プロトプラストを調製するために通常使用されるであろう量の0.1〜約75%またはその間の任意の量でありうる。例えば、細胞壁弛緩組成物として使用される酵素の量は、0〜約50%またはその間の任意の量のプロトプラストを含む植物細胞組成物を生産するであろう。あるいは、細胞壁弛緩組成物として使用される酵素の量は、プロトプラストを調製するために使用されるもの(例えば実施例「細胞壁消化によるVLP抽出」および実施例1;ならびに出典明示により本明細書に組み込まれるPCT/CA2010/001489またはPCT/CA2010/001488に記述されているもの)に似ていてもよいが、インキュベーションの継続時間は、プロトプラストを調製するために通常使用されるであろう継続時間の約30〜約80%またはその間の任意の量だけ、短縮される。
細胞壁弛緩組成物、例えば酵素溶液または消化溶液は、例えば減圧浸潤(実施例17参照;例えば出典明示により本明細書に組み込まれるD’Aoustら,2008 Plant Biotechnology J. 6:930−940;WO00/063400;WO00/037663に記載の条件と類似する条件を使用)または加圧浸潤(例えば約1〜約150kPaまたはその間の任意の量の圧力を、約1分〜10時間使用)を使って、全植物体(whole plant)、植物器官、または全葉に浸潤させうる。全植物体とは、根、茎および葉を含む植物を意味する。植物器官とは、根系、植物の地上部分(葉を伴う茎)、葉が除かれた茎、花、または1つ以上の葉(葉柄を伴うものまたは葉柄を伴わないもの)を意味する。全葉(単数または複数)とは、植物から取り出されているが、それ以外の点では小片に切り刻まれていないという点で無傷な、葉または1枚以上の葉(葉柄を伴うものまたは葉柄を伴わないもの)を意味する。本明細書において述べるように、例えば全植物体または1つ以上の全葉における細胞壁弛緩組成物の浸潤は、全植物体または葉からのタンパク質、超構造体タンパク質またはVLPの放出を可能にする。理論に束縛されることは望まないが、細胞壁弛緩組成物を全葉内に浸潤させない場合は、酵素組成物が組織を徐々に消化することができるように、組成物のための葉内の侵入点を増加させる必要がある。例えば細胞壁弛緩組成物が溶液として用意され、そこに葉が浸漬される場合、酵素消化は、露出した周縁部から葉組織の内部に向かって起こる。この過程を機械的撹拌を使って強化すると、ペクトセルロースマトリックスからプロトプラストまたはスフェロプラストの放出が起こる。細胞壁弛緩組成物の浸潤により、必要とされる機械的撹拌が強さと継続時間の両面で低減され、プロトプラストの完全性の維持が助長され、プロトプラスト収量が増加しうる。酵素を葉(または器官もしくは全植物体)に浸潤させる場合は、葉(器官または植物)の連続的な撹拌を行ってもよいが、撹拌は必要ないだろう。
細胞壁を細胞壁弛緩組成物で処理することにより、目的の植物由来タンパク質またはタンパク質超構造体は、より容易に放出されうる。細胞壁弛緩のステップを含む方法を使用することにより、宿主細胞タンパク質の大部分を含有する細胞壁およびプロトプラストコンパートメントが、放出された目的の植物由来タンパク質またはタンパク質超構造体から隔離されるので、目的の植物由来タンパク質またはタンパク質超構造体を濃縮することができる。
「植物由来タンパク質」、「タンパク質」または「目的のタンパク質」(これらの用語は区別なく使用される)とは、植物内または植物の一部分内で発現させるべき、ヌクレオチド配列またはコード領域によってコードされるタンパク質またはタンパク質サブユニットであり、その植物または植物の一部分にとって外因性であるタンパク質およびタンパク質サブユニットを含む。タンパク質は、約1〜約100kDaまたはその間の任意の量、例えば1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100kDaまたはその間の任意の量の分子量を有しうる。タンパク質は単量体、二量体、三量体または多量体でありうる。
タンパク質超構造体(protein suprastructure)は、超構造体タンパク質(suprastructure protein)、タンパク質超構造(protein superstructure)、または超構造タンパク質(superstructure protein)とも呼ばれ、2つ以上のポリペプチドで構成されるタンパク質構造体である。それらのポリペプチドは同じであっても異なってもよく、異なる場合は約1:1〜約10:1またはそれより大きな比で存在しうる。超構造体タンパク質には、タンパク質ロゼット、タンパク質複合体、タンパク質ナノ粒子、糖タンパク質、抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖モノクローナル抗体、またはウイルス様粒子、プロテアソーム、メタボロン、転写複合体、組換え複合体、光合成複合体、膜輸送複合体、核膜孔複合体、キメラタンパク質、キメラタンパク質複合体、キメラタンパク質ナノ粒子、キメラ糖タンパク質、キメラ抗体、キメラモノクローナル抗体、キメラ一本鎖モノクローナル抗体、またはキメラヘマグルチニン(HA)を含めることができるが、これらに限るわけではない。タンパク質超構造体がVLPである場合、VLPは、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択しうる。植物由来VLPはインフルエンザ(HA)を含みうる。
典型的には、タンパク質超構造体(タンパク質超構造)は、アセンブルされた時には大きく、例えば75kDaより大きい分子量、例えば約75〜約1500kDaまたはその間の任意の分子量を有する。例えば、タンパク質超構造体は、約75、80、85、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、850、900、950、1000、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500kDaまたはその間の任意の量の分子量を有しうる。一体となってタンパク質超構造体を構成するサブユニットは、より小さい分子量のものであることができ、例えば各サブユニットは約1kDa〜約500kDaまたはその間の任意の量の分子量を有しうる。タンパク質超構造体は、1つ以上のアミノ酸が、例えばタンパク質ヘリックス中の残基と水素結合している二次構造、三次元コンフィギュレーションを有する三次構造、またはマルチサブユニット複合体を形成する多重に折りたたまれたタンパク質分子またはコイル状タンパク質分子の配置を有する四次構造を示すタンパク質を含みうる。
マルチタンパク質複合体(またはタンパク質複合体)は、2つ以上の会合した(associated)ポリペプチド鎖の群を含みうる。異なるポリペプチド鎖が異なるタンパク質ドメインを含有している場合、結果として生じるマルチタンパク質複合体は、多数の触媒機能を有することができる。タンパク質複合体は、単一ポリペプチド鎖内に多数の触媒ドメインを含むマルチ酵素ポリペプチドであってもよい。タンパク質複合体は典型的には四次構造の形態にある。標準的なタンパク質単離プロトコールを使用すると典型的には無傷のままで乗り切ることはできないが、本明細書に記載する方法を使用すれば取得することができるタンパク質複合体の例には、プロテアソーム(ペプチドまたはタンパク質の分解のため)、メタボロン(酸化的エネルギー生産のため)、リボソーム(タンパク質合成のため;例えばPereira−Leal,J.B.ら,2006,Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.,361(1467):507−517に記載されている)、転写複合体、組換え複合体、光合成複合体、膜輸送複合体、核膜孔複合体などがある。本方法は、安定なまたは弱いタンパク質ドメイン−タンパク質ドメイン相互作用を有すると特徴づけられるタンパク質複合体を取得するために使用することができる。
タンパク質またはタンパク質超構造体の例には、例えば工業用酵素、例えばセルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ、サブチリシン、飼料用もしくは食品用の、または飼料食品両用の、タンパク質サプリメント、栄養補助食品、付加価値製品、またはそれらのフラグメント、医薬活性タンパク質、例えば限定するわけではないが、成長因子、成長調節物質、抗体、抗原、およびそれらのフラグメント、または免疫処置もしくはワクチン接種などに有用なそれらの誘導体などがあるが、これらに限るわけではない。他の目的タンパク質には、インターロイキン、例えばIL−1〜IL−24、IL−26およびIL−27の1つまたは2つ以上、サイトカイン、エリスロポエチン(EPO)、インスリン、G−CSF、GM−CSF、hPG−CSF、M−CSFまたはそれらの組み合わせ、インターフェロン、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−γ、血液凝固因子、例えば第VIII因子、第IX因子、またはtPA hGH、受容体、受容体アゴニスト、抗体、神経ポリペプチド、インスリン、ワクチン、成長因子、例えば限定するわけではないが、上皮成長因子、ケラチノサイト成長因子、トランスフォーミング成長因子、成長調節物質、抗原、自己抗原、それらのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含めることができるが、これらに限るわけではない。
タンパク質超構造体の非限定的な例は抗体である。抗体は、約100〜約1000kDaまたはその間の任意の量の分子量を有する糖タンパク質である。抗体は、ジスルフィド結合によってつながれた4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの軽鎖と2つの重鎖を含む。例えば、限定であるとみなしてはならないが、各軽鎖は、約25kDaの分子量、例えば約20〜約30kDaまたはその間の任意の量の分子量、さらには例えば約20〜約300kDaまたはその間の任意の量の分子量を有することができ、2つのドメイン、すなわち1つの可変ドメイン(V)と1つの定常ドメイン(C)で構成されている。各重鎖は、約50kDaの分子量、例えば約30〜約75kDaまたはその間の任意の量の分子量、さらには例えば約30〜約500kDaまたはその間の任意の量の分子量を持つことができ、定常領域と可変領域とからなる。重鎖および軽鎖は、類似しているが同一ではないアミノ酸配列の群からなるいくつかの相同区域を含有する。これらの相同ユニットは約110アミノ酸からなり、免疫グロブリンドメインと呼ばれている。重鎖は、1つの可変ドメイン(V)と、3つまたは4つの定常ドメイン(抗体クラスまたは抗体アイソタイプに応じてC1、C2、C3、およびC4)とを含有する。C1ドメインとC2ドメインの間の領域はヒンジ領域と呼ばれ、Y字状の抗体分子の2つのFabアームの間に柔軟性を与えることで、それらが開閉して固定された距離だけ離れた2つの抗原性決定基への結合に適応することを可能にする。
タンパク質超構造体のもう一つの非限定的な例はVLPである。VLPは、HA0前駆体型、またはジスルフィド架橋によって互いに保持されたHA1もしくはHA2ドメインを含みうる。VLPは、約20nm〜1μmまたはその間の任意の量、例えば60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150 160、170、180、190、もしくは200nmまたはその間の任意の量、例えば100nmの平均サイズを有することができ、脂質膜を含みうる。
タンパク質または超構造体タンパク質は、さらに1つ以上の脂質、リン脂質、核酸、膜なども含みうる。2つ以上のポリペプチドは、共有結合、ジスルフィド架橋、電荷相互作用、疎水性引力、ファンデルワールス力、水素結合などでつながりうる。タンパク質超構造体の一例は、モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、一本鎖モノクローナル抗体、またはエンベロープ型でも非エンベロープ型でもよいウイルス様粒子(VLP)、例えばウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、またはウイルスコートタンパク質である。
タンパク質または超構造体タンパク質は、植物宿主細胞を含む適切な宿主細胞において生産することができ、所望であれば、さらに精製することができる。本明細書では、キメラモノクローナル抗体、インフルエンザVLP、およびキメラインフルエンザVLPを例示するが、本明細書に記載の方法は、任意のサイトゾル植物由来タンパク質もしくは超構造体タンパク質、またはアポプラスト中に局在するかアポプラストに分泌される任意の植物由来タンパク質もしくは超構造体タンパク質に使用することができる。
本発明は、植物または植物質から植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を回収する方法であって、アポプラスト内容物内に局在した植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を含む植物または植物質を取得すること;その植物または植物質を細胞壁弛緩組成物、ソニケーション、または細胞壁弛緩組成物とソニケーションの両方で処理して、弛緩した細胞壁を有する植物または植物質を生産し、よって細胞壁を通したアポプラスト内容物の放出を可能にし、刺激し、増加させ、または強化し、それによってアポプラスト内容物画分を生産すること;アポプラスト内容物画分を濾過して濾過画分を生産し、その濾過画分から植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を回収することを伴う方法も提供する。所望であれば、植物由来タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質を、濾過画分から精製することができる。アポプラスト内容物画分からタンパク質または超構造体タンパク質を回収するには、例えば遠心分離およびデカンテーションを含む、当技術分野において知られる代替的方法を使用することができる。
本発明は、タンパク質または超構造体タンパク質を回収する方法であって、タンパク質または超構造体タンパク質が植物由来脂質エンベロープを含むもの、例えば植物由来脂質エンベロープを含むVLPである方法も提供する。本方法は、目的の超構造体タンパク質、例えばVLPを含む植物または植物質を得ること、その植物または植物質を細胞壁弛緩組成物、ソニケーション、または細胞壁弛緩組成物とソニケーションの両方で処理して、弛緩した細胞壁を有する植物または植物質を生産し、よって細胞壁を通したアポプラスト内容物の放出を可能にし、刺激し、増加させ、または強化し、それによってアポプラスト内容物画分を生産すること、およびそのアポプラスト内容物画分から植物由来脂質エンベロープを含む目的の超構造体タンパク質を分離することを含む。
植物組織培養、培養植物細胞、およびプロトプラスト、スフェロプラストの生産などの一般原理について説明している標準的参考資料には、次に挙げるものがある:MK Razdan「Introduction to Plant Tissue Culture」第2版(Science Publishers,2003;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)、あるいは例えば以下のURLも参照されたい:molecular−plant−biotechnology.info/plant−tissue−culture/protoplast−isolation.htm。プロトプラスト(またはスフェロプラスト)の生産および操作に関する方法および技法については、例えばDavey MRら,2005(Biotechnology Advances 23:131−171;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)に総説がある。タンパク質生化学、分子生物学などの一般的方法および原理を説明している標準的参考資料には、例えばAusubelら「Current Protocols In Molecular Biology」John Wiley & Sons,ニューヨーク(1998および2001年までの追補;これは出典明示により本明細書に組み込まれる);Sambrookら「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州プレーンビュー,1989(これは出典明示により本明細書に組み込まれる);Kaufmanら編「Handbook Of Molecular And Cellular Methods In Biology And Medicine」CRC Press,ボカラトン,1995(これは出典明示により本明細書に組み込まれる);McPherson編「Directed Mutagenesis:A Practical Approach」IRL Press,オックスフォード,1991(これは出典明示により本明細書に組み込まれる)などがある。
細胞壁を修飾し、それによって細胞壁を弛緩させるのに有用な酵素は、当業者には知られており、例えばセルラーゼ(EC3.2.1.4)、ペクチナーゼ(EC3.2.1.15)、キシラナーゼ(EC3.2.1.8)、キチナーゼ(EC3.2.1.14)、ヘミセルラーゼ、キシログルカンエンドトランスグリコシラーゼグルカナーゼ、キシログルカンエンドトランスグリコシラーゼ、エンドグリカナーゼ、例えばβ−1,3−グルカナーゼおよびβ−1,4−マンナナーゼ、キシログルカンエンドトランスグルコシラーゼ/ヒドロラーゼ、またはそれらの組み合わせなどを挙げることができる。セルラーゼは酵素の混合物であり、1つ以上のエンド−1,4−ベータ−グルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ(エキソセルラーゼ)、ベータ−グルコシダーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ(酸化的セルラーゼ)、セルロースホスホリラーゼ、およびヘミセルラーゼを含みうる。細胞壁弛緩組成物として使用しうる適切な酵素の非限定的な例には、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびペクチナーゼを含む多成分酵素混合物、例えばマセロチーム(商標)(おおよそ次の成分を含有する:セルラーゼ:0.1U/mg、ヘミセルラーゼ:0.25U/mg、およびペクチナーゼ:0.5U/mg)などがある。市販酵素、酵素混合物および供給者の他の例を表1に列挙する(MK Razdan「Introduction to Plant Tissue Culture」第2版,Science Publishers,2003参照)。
セルラーゼの別名およびタイプには、エンド−1,4−β−D−グルカナーゼ;β−1,4−グルカナーゼ;β−1,4−エンドグルカンヒドロラーゼ;セルラーゼA;セルロシンAP;エンドグルカナーゼD;アルカリセルラーゼ;セルラーゼA3;セルデキストリナーゼ;9.5セルラーゼ;アビセラーゼ;パンセラーゼSSおよび1,4−(1,3;1,4)−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼなどがある。ペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)の別名およびタイプには、ペクチンデポリメラーゼ;ペクチナーゼ;エンドポリガラクツロナーゼ;ペクトラーゼ(pectolase);ペクチンヒドロラーゼ;ペクチンポリガラクツロナーゼ;エンド−ポリガラクツロナーゼ;ポリ−α−1,4−ガラクツロニドグリカノヒドロラーゼ;エンドガラクツロナーゼ;エンド−D−ガラクツロナーゼおよびポリ(1,4−α−D−ガラクツロニド)グリカノヒドロラーゼなどがある。キシラナーゼの別名およびタイプには、ヘミセルラーゼ、エンド−(1→4)−β−キシラン4−キシラノヒドロラーゼ;エンド−1,4−キシラナーゼ;キシラナーゼ;β−1,4−キシラナーゼ;エンド−1,4−キシラナーゼ;エンド−β−1,4−キシラナーゼ;エンド−1,4−β−D−キシラナーゼ;1,4−β−キシランキシラノヒドロラーゼ;β−キシラナーゼ;β−1,4−キシランキシラノヒドロラーゼ;エンド−1,4−β−キシラナーゼ;β−D−キシラナーゼなどがある。キチナーゼの別名およびタイプには、キトデキストリナーゼ;1,4−β−ポリ−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ポリ−β−グルコサミニダーゼ;β−1,4−ポリ−N−アセチルグルコサミジナーゼ;ポリ[1,4−(N−アセチル−β−D−グルコサミニド)]グリカノヒドロラーゼなどがある。
[表1]細胞壁弛緩用の市販酵素の非限定的な例
Figure 0006092840
Figure 0006092840
特定の酵素または酵素の組合せならびに濃度および反応条件の選択は、VLPを含む細胞および弛緩画分を得るために使用する植物組織のタイプに依存しうる。セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼの混合物、例えば、ペクチナーゼ・マセロチーム(商標)またはMultifectを、0.01%〜2.5%(v/v)の範囲、例えば0.01、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、もしくは2.5%(v/v)またはその間の任意の量の濃度で使用しうる。マセロチーム(商標)またはMultifectは、単独で使用するか、他の酵素、例えばセルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、またはそれらの組合せと組み合わせて使用することができる。セルラーゼは、0.1%〜5%の範囲の濃度、例えば0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0%(w/v)またはその間の任意の量で使用しうる。さらにまた、ペクチナーゼ、例えば限定するわけではないが、Biocatalysts 162Lおよび144L(ポリガラクツロニダーゼおよびペクチンリアーゼ活性を含む)を、単独で使用するか、他の酵素、例えばセルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、またはそれらの組み合わせと組み合わせて使用することができる。ペクチナーゼ(ポリガラクツロニダーゼおよびペクチンリアーゼ活性を含む)は、0.1%〜5%の範囲の濃度、例えば0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0%(w/v)またはその間の任意の量で使用しうる。
酵素溶液(細胞壁弛緩組成物ともいう)は、一般に、緩衝液または緩衝液系、浸透圧調節物質、および1つまたは2つ以上の塩、二価カチオンまたは他の添加剤を含むであろう。緩衝液または緩衝液系は、酵素活性または精製すべきタンパク質もしくはVLPの安定性にとってpHが適切な範囲に、例えば約pH5.0〜約8.0の範囲内またはそれらの間の任意の値に維持されるように選択される。選択される使用pHは、回収すべきVLPに依存して変動し、例えばpHは、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0またはその間の任意のpHでありうる。緩衝液または緩衝液系の例には、MES、リン酸塩、クエン酸塩などがあるが、これらに限るわけではない。酵素溶液(細胞壁弛緩溶液)では1つ以上の緩衝液または緩衝液系を組み合わせることができ、それら1つ以上の緩衝液は、0mM〜約200mMまたはその間の任意の量、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180もしくは190mMまたはその間の任意の量の濃度で存在しうる。適宜、所望であれば、浸透圧調節物質構成要素を加えることができる。浸透圧調節物質とその濃度は、酵素溶液の浸透力が上がるように選択される。浸透圧調節物質の例には、マンニトール、ソルビトールまたは他の糖アルコール、さまざまなポリマー長のポリエチレングリコール(PEG)などがある。浸透圧調節物質の濃度範囲は、植物の種、使用する浸透圧調節物質のタイプ、選択した植物組織のタイプ(種、元の器官、例えば葉または茎)に依存して変動しうる−一般的には範囲は、0M〜約0.8M、例えば0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.5、0.6、0.7、もしくは0.75Mまたはその間の任意の量、例えば0、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600nMマンニトール、またはその間の任意の量である。浸透圧調節物質の濃度は、パーセンテージ(w/v)として表すこともできる。一部の植物または組織タイプについては、細胞壁からの植物細胞形質膜の分離を容易にしうるわずかに高張性の調製物を使用することが有益であるだろう。細胞壁弛緩のステップ中は浸透圧調節物質を省くこともできる。
細胞壁を修飾しそれによって細胞壁を弛緩させるのに有用な化学薬品組成物および化学化合物は、例えば限定するわけではないが、キレーター、二価キレーター、ヒドロキシラジカル、インドール−3−酢酸およびエクスパンシンを含む。キレーターの例には、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチレングリコール四酢酸(EGTA)などがあるが、これらに限るわけではない。キレーターは、0mM〜約500mMまたはその間の任意の量、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500mMまたはその間の任意の量の濃度で存在しうる。1つまたは2つ以上のキレーターを、追加の化学化合物、酵素溶液、または追加の化学化合物と酵素溶液との組み合わせと組み合わせて細胞壁弛緩組成物としてもよい。エクスパンシンの例には、例えばエクスパンシンA、エクスパンシンB、エクスパンシン様A、エクスパンシン様Bおよびエクスパンシン様Xなどがあるが、これらに限るわけではない。エクスパンシンは、0.1%〜5%の範囲、例えば0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0%(w/v)の濃度で使用しうる。1つまたは2つ以上のエクスパンシンを酵素溶液と組み合わせて細胞壁弛緩組成物としてもよい。
細胞壁は、壁ポリマーの非酵素的切断によって弛緩されるかもしれない。そのような非酵素的切断の例には、ヒドロキシラジカルによる切断が含まれる。ヒドロキシラジカルは、例えば触媒量のCuまたはFeイオンの存在下でアスコルビン酸によるHの還元(フェントン試薬)によって生産されうる。ヒドロキシラジカル誘発性細胞壁弛緩に関する方法および技法については、例えばSchopf,Peter (出典明示により本明細書に組み込まれるThe Plant Journal,2001,28(6),679−688)に総説がある。
あるいは、細胞壁は、約0〜約200μMまたはその間の任意の量、例えば5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200μMまたはその間の任意の量のインドール−3−酢酸(オーキシン)添加によって弛緩されるかもしれない。インドール−3−酢酸を酵素溶液と組み合わせて細胞壁弛緩組成物としてもよい。
細胞壁はさらに、植物細胞の物理的処理、例えばソニケーションなどによって弛緩されるかもしれない。さまざまな超音波浴が市販されており、本発明にはそれらを使用しうる。超音波という用語は、ヒトの可聴域のすぐ上の周波数、したがって約20kHzを指す。あるいは、超音波エネルギーを、例えば振動子によって、細胞の溶液または懸濁液に直接送達することもできる。細胞の溶液または懸濁液を、例えば、超音波エネルギーを伝達することができる媒質が入っている容器もしくはウェルまたは一連の容器もしくはウェルに入れることができる。媒質の非限定的な例は細胞壁弛緩組成物である。入力エネルギーを超音波エネルギーに変換することができる適切な振動子または他のデバイスにウェルを取り付けるか、近づける。細胞は、試料ホルダーとして機能するウェルまたは一連のウェルに直接入れるか、あるいは細胞を容器に入れて、ウェル内に含まれている液体に沈めることができる。漏出またはエアロゾル化を防ぐために、適切な覆いでウェルに蓋をすることができる。ある範囲のソニケーション周波数が植物試料のソニケーションには適しており、約5KHZ〜約60KHZの範囲またはその間の任意の量、例えば10、15、20、25、30、35、40、45、50、55KHZの超音波エネルギーを使用しうる。ソニケーションは、約5秒〜約10分間またはその間の任意の時間、続けうる。
細胞壁の弛緩を助けるために調節しうるもう一つのパラメータは温度である。温度は細胞壁弛緩ステップ中に制御しうる。有用な温度範囲は4℃〜40℃またはその間の任意の温度、例えば約4℃〜約15℃またはその間の任意の量、または約4℃〜約22℃もしくはその間の任意の温度である。選択した温度に応じて、最適な抽出条件を維持するために、他の細胞壁弛緩実験パラメータを調節することができる。
形質膜の安定性を改善するために、カチオン、塩またはその両方、例えば0.5〜50mMまたはその間の任意の量の二価カチオン、例えばCa2+またはMg2+、約0〜約750mMまたはその間の任意の量、例えば10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700または750mMの塩、例えばCaCl、NaCl、CuSO、KNOなど加えることができる。他の添加剤、例えば、約0〜約200mMまたはその間の任意の量、例えば5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200mMまたはその間の任意の量のキレーター、例えば限定するわけではないがEDTA、EGTA、0.005〜0.4%またはその間の任意の量、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0,25、0.3、0.35、0.4%またはその間の任意の量の、酸化を防止するための還元剤、例えば限定するわけではないが、重亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸、特異的酵素阻害剤(下記参照)、および所望であれば、葉の老化の阻害剤、例えばシクロヘキシミド、カイネチン、または1つ以上のポリアミンも加えうる。
細胞壁弛緩組成物は、1つ以上の浸透圧調節物質、例えば約0〜約600mMのマンニトール、約0〜約500mMのNaCl、約0〜約50mMのEDTA、約1%〜約2%v/vのセルラーゼ、約0〜約1%v/vのペクチナーゼ、約0.03〜約0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウム、約0〜約125mMのクエン酸塩、または約0〜75mMのNaPOも含みうる。ただし、本明細書に記載する方法は、細胞壁を完全に消化するのではなく、細胞壁を弛緩させるものであるから、細胞壁弛緩組成物における浸透圧調節物質の使用は、任意である。
植物細胞壁への酵素または酵素組成物のアクセスが強化されるように植物質を処理しうる。例えば、酵素組成物による処理の前に、葉の表皮を除去または「剥離」することができる。植物質は(手作業で、またはUrschelスライサーなどの裁断具もしくは切断具で)小片に切り分けることができ;切り刻んだ植物質に、さらに、化学薬品組成物、酵素組成物、または化学薬品と酵素の混合物を、部分減圧下で浸潤させうる(NishimuraおよびBeevers,1978,Plant Physiol 62:40−43;Newellら,1998,J.Exp Botany 49:817−827)。植物組織には、酵素組成物による処理の前または処理中に、植物質の機械的撹乱も適用することができる(Giridharら,1989. Protoplasma 151:151−157)。さらにまた、液体培養または固形培養の培養植物細胞を使って、弛緩した細胞壁を含む植物調製物を調製してもよい。
リパーゼまたはプロテアーゼを欠くか、リパーゼまたはプロテアーゼが不活化されている酵素組成物を使用することが望ましいだろう。例えば、1つ以上のプロテアーゼ阻害剤またはリパーゼ阻害剤を、酵素組成物に含めることができる。リパーゼ阻害剤の例にはRHC80267(SigmaAldrich)があり;プロテアーゼ阻害剤の例には、E−64、NaEDTA、ペプスタチン、アプロチニン、PMSF、ペファブロック、ロイペプチン、ベスタチンなどがある。
酵素組成物中の植物質を混合または撹拌する任意の適切な方法を使用しうる。例えば植物質は、トレイもしくはパンに入れて、またはロータリーシェーカーを使って、穏やかに旋回または振とうするか、回転式または振動式ドラム中でタンブリングすることができる。
非限定的な例として、500mMマンニトール、10m CaClおよび5mM MES(pH5.6)中に1.5%セルラーゼ(オノズカR−10)および0.375%マセロチーム(商標)を含む酵素組成物を、植物組織、例えばタバコ属(Nicotiana)組織に使用するための細胞壁弛緩組成物として、使用することができる。本明細書で述べるように、マンニトールの濃度は約0〜約500mMまたはその間の任意の量でさまざまであることができる。本明細書に開示する情報を考慮すれば、当業者は、そのタバコ属の齢および株に適した、またはVLPの生産に使用される他の植物種に適した酵素組成物を、決定することができるであろう。もう一つの非限定的な例として、600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中に、1〜4%(v/v)またはその間の任意の量、例えば1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0%(v/v)またはその間の任意の量の1つ以上のペクチナーゼ、例えば1〜4%またはその間の任意の量のBiocatalysts 162L、Biocatalysts 444Lのそれぞれ、またはそれらの組み合わせを含む酵素組成物を、植物組織、例えばタバコ属組織に使用するための細胞壁弛緩組成物として、使用することができる。さらにまた、600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中に、1つ以上のペクチナーゼ(例えばそれぞれ1%〜4%v/vまたはその間の任意の量のBiocatalysts 162L、Biocatalysts 444L、またはそれらの組み合わせ)を、それぞれ1%〜4%(v/v)またはその間の任意の量の1つ以上のセルラーゼ、例えばMultifect CX CG、Multifect CX B(Genencor)、またはそれら組み合わせと共に含む組成物を、植物組織、例えばタバコ属組織に使用するための細胞壁弛緩組成物として、使用することができる。
「アポプラスト内容物画分」とは、細胞壁弛緩組成物を使って、または他の方法、例えばソニケーションで細胞壁が弛緩するように細胞壁を修飾することによって、または細胞壁弛緩組成物とソニケーションとの組み合わせを使って、細胞壁を弛緩または部分的に弛緩させた後に、得られる画分を意味する。アポプラスト内容物画分は、植物または植物材料を細胞壁弛緩組成物と共にインキュベーションするか、ソニケーションするか、またはそれらを組み合わせることで植物インキュベーション混合物を得て、その植物インキュベーション混合物を濾過するか、遠心分離するか、またはそれらを組み合わせることでアポプラスト内容物画分を生産した後に、得ることができる。アポプラスト内容物画分は、典型的には、アポプラスト中に存在する可溶性構成要素を含む。アポプラスト内容物画分は、細胞壁の破壊から生じるいくつかの構成要素も含みうる。
理論に束縛されることは望まないが、細胞壁弛緩のステップは、細胞壁のポリマー構成要素を弛緩させ、植物タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質、その他、細胞壁内に捕捉されているものの放出を助長しうる。このプロトコールは、細胞内構成要素による植物タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質の汚染も最小限に抑える。細胞壁の弛緩後に、低速遠心分離と、それに続く濾過、深層濾過、沈降、沈殿、例えば限定するわけではないが硫酸アンモニウム沈殿、またはそれらの組み合わせを使って、目的の植物タンパク質、タンパク質または超構造体タンパク質を、細胞破片から分離することで、目的の植物タンパク質、タンパク質または超構造体タンパク質を含むアポプラスト内容物画分を得ることができる。
本明細書に記載する方法は、細胞壁を完全に消化するのではなく、細胞壁を弛緩させるものであるから、浸透圧調節物質は必要ないだろう。浸透圧調節物質を使用する場合は、任意の適切な技法、例えば限定するわけではないが、遠心分離、濾過、深層濾過、沈降、沈殿、またはそれらの組み合わせを使って、細胞小器官、プロトプラストおよび細胞壁を含む細胞画分をアポプラスト内容物画分から分離することで、目的の植物タンパク質または超構造体タンパク質を含み、かつ/または目的のタンパク質または超構造体タンパク質を含むプロトプラスト/スフェロプラストを含む、弛緩したプロトプラスト画分を得ることができる。
分離された画分は、例えば上清(遠心分離、沈降、または沈殿を行った場合)、または濾液(濾過した場合)であることができ、タンパク質、または超構造体タンパク質が濃縮されている。タンパク質、または超構造体タンパク質の単離、精製、濃縮、またはそれらの組み合わせのために、例えばさらなる遠心分離ステップ、沈殿、クロマトグラフィーステップ(例えばサイズ排除、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー)、タンジェンシャルフロー濾過、またはそれらの組み合わせによって、分離された画分をさらに加工することができる。精製されたタンパク質または超構造体タンパク質の存在は、例えば未変性PAGEまたはSDS−PAGE、適当な検出抗体を使ったウェスタン分析、キャピラリー電気泳動、または当業者には明白であるだろう他の任意の方法によって確認することができる。
目的の植物タンパク質、タンパク質、または超構造体タンパク質は、合成時に、形質膜の外へ分泌されうる。超構造体タンパク質がVLPである場合、その平均サイズは、約20nm〜1μmまたはその間の任意の量である。超構造体タンパク質が抗体である場合、その分子量は、約100kDa〜約1000kDaまたはその間の任意の量である。タンパク質、または超構造体タンパク質がひとたび合成されると、それらはそのサイズゆえに、形質膜と細胞膜の間に捕捉されたままになって、植物タンパク質を得るために使用される標準的な機械的方法を使った単離またはさらなる精製を受け付けない場合がある。収量を最大にし、細胞性タンパク質による超構造体タンパク質画分の汚染を最小限に抑え、タンパク質または超構造体タンパク質の完全性と、必要であれば、会合している(associated)脂質エンベロープまたは膜の完全性とを維持するために、タンパク質または超構造体タンパク質を放出させるために細胞壁を弛緩させる方法であって、プロトプラストおよび/またはスフェロプラストへの機械的ダメージが最小限に抑えられるもの、例えば本明細書に記載する化学的方法、酵素的方法、またはそれらの組み合わせは、有用でありうる。ただし、この手法の間に、全てのプロトプラストの完全性が保たれる必要はない。
植物で生産される超構造体タンパク質、例えばVLPは、植物由来脂質との複合体を形成しうる。植物由来脂質は脂質二重層の形態をとることができ、さらに、VLPを取り囲むエンベロープを含みうる。植物由来脂質は、限定するわけではないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、グリコスフィンゴリピド、フィトステロール、またはそれらの組み合わせなど、VLPが生産される植物の形質膜の脂質構成要素を含みうる。植物由来脂質は「植物脂質」と呼ばれる場合もある。フィトステロールの例は当技術分野において知られており、例えばスチグマステロール、シトステロール、24−メチルコレステロールおよびコレステロールなどがある(Mongrandら,2004,J.Biol.Chem 279:36277−86)。
ポリペプチド発現は、植物の任意の細胞内もしくは細胞外間隙、細胞小器官または組織に、望みどおりにターゲティングすることができる。発現されたポリペプチドを特定の場所に局在化させるには、そのポリペプチドをコードする核酸を、シグナルペプチドまたはリーダー配列をコードする核酸配列に連結することができる。シグナルペプチドは、輸送ペプチド、シグナル配列、またはリーダー配列と呼ばれる場合もある。発現されたポリペプチドのアポプラストへの局在化を指示するためのシグナルペプチドまたはペプチド配列には、(そのタンパク質に関して)ネイティブなシグナルもしくはリーダー配列、または異種シグナル配列、例えば限定するわけではないが、イネアミラーゼシグナルペプチド(McCormick 1999,Proc Natl Acad Sci USA 96:703−708)、アミノ酸配列:
MAKNVAIFGLLFSLLLLVPSQIFAEE;配列番号10
を有するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼシグナルペプチド(PDI)、植物感染特異的(pathogenesis related)タンパク質(PRP;Szyperskiら,PNAS 95:2262−2262)、例えばタバコ植物感染特異的タンパク質2(PRP)、ヒトモノクローナル抗体シグナルペプチド(SP、またはリーダー配列)、またはそのタンパク質に関してネイティブな任意のシグナルペプチドなどがあるが、これらに限るわけではない。
いくつかの例では、例えばシグナルペプチドまたは輸送ペプチドの非存在下でポリペプチドを発現させ分泌させた場合に、発現されたポリペプチドが、特異的細胞間もしくは細胞外間隙(アポプラストなど)、細胞小器官または組織に蓄積しうる。
「ウイルス様粒子」(VLP)または「ウイルス様粒子」または「VLP」という用語は、自己集合(self−assemble)し、ウイルス表面タンパク質、例えばインフルエンザHAタンパク質、またはキメラインフルエンザHAタンパク質を含む、構造を指す。VLPおよびキメラVLPは、一般に、感染時に生産されるウイルス粒子に形態的および抗原的に似ているが、複製するのに十分な遺伝情報を欠くので、非感染性である。
「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」とは、単一ポリペプチドとして融合された2つまたは3つ以上の供給源、例えば限定するわけではないが、2つ以上のインフルエンザ型または亜型に由来するアミノ酸配列を含む、タンパク質またはポリペプチドを意味する。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、そのポリペプチドもしくはタンパク質の残りの部分と同じ(すなわちネイティブの)またはそのポリペプチドもしくはタンパク質の残りの部分とは異種のシグナルペプチドを含みうる。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、キメラヌクレオチド配列からの転写産物として生産されて、無傷のままであることができ、あるいは必要であれば、キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、合成後に切断されうる。無傷のキメラタンパク質、またはキメラタンパク質の切断された一部分は、会合して、多量体型タンパク質を形成しうる。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドには、ジスルフィド架橋によって会合したサブユニットを含むタンパク質またはポリペプチド(すなわち多量体型タンパク質)も含まれうる。例えば、2つまたは3つ以上の供給源に由来するアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドはサブユニットに加工され、それらのサブユニットがジスルフィド架橋を介して会合することで、キメラタンパク質またはキメラポリペプチドを生産しうる。キメラタンパク質の非限定的な例は、キメラモノクローナル抗体、例えばC2B8、またはキメラVLP、例えば限定するわけではないが、米国仮特許出願US61/220,161およびPCT/CA2010/000983(これらは出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されている690、691、696、734、737、745または747と番号付けされたコンストラクト(表2)によって生産されるタンパク質およびVLPである。
タンパク質または超構造体タンパク質は糖タンパク質であってもよく、細胞壁弛緩による抽出を伴う本明細書に記載の方法は、WO20008/151440(「Modifying glycoprotein production in plants」;この文献は出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されているような糖タンパク質とNグリコシル化プロファイルを修飾するための1つ以上の酵素とを共発現する植物にも、修飾された成熟N−グリカンを保持する糖タンパク質の回収に有利に働くように応用することができる。例えば、成熟N−グリカンはキシロース残基およびフコース残基が除外されているか、またはフコシル化度、キシロシル化度、もしくはフコシル化度とキシロシル化度の両方が低いN−グリカンであることができる。あるいは、フコシル化、キシロシル化、またはその両方を欠き、ガラクトシル化が増加している、修飾されたグリコシル化パターンを含む目的のタンパク質を得ることもできる。
修飾されたNグリコシル化プロファイルは、WO20008/151440に記載されているように、植物、植物の一部分、または植物細胞内で、ベータ−1,4ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)の触媒ドメインに融合されたN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GNT1)のCTSドメイン(すなわち細胞質テール、膜貫通ドメイン、ステム領域)を含むハイブリッドタンパク質(GNT1−GalT)をコードする第1ヌクレオチド配列(第1ヌクレオチド配列は当該植物中で活性な第1調節領域と作動的に連結されている)と、目的の超構造体タンパク質をコードするための第2ヌクレオチド配列(第2ヌクレオチド配列は当該植物中で活性な第2調節領域と作動的に連結されている)とを含むヌクレオチドチド配列を共発現させ、第1および第2ヌクレオチド配列を共発現させることで、修飾されたN−グリコシル化プロファイルを有するグリカンを含む目的の超構造体タンパク質を合成することによって、得ることができる。
超構造体タンパク質はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であってもよく、キメラHAまたはキメラインフルエンザHAを生産するために、ポリペプチドを構成している2つまたは3つ以上のアミノ酸配列を異なるHAから得てもよい。キメラHAは、合成後に切断される異種シグナルペプチドを含むアミノ酸配列も含みうる(キメラHAプレタンパク質)。本明細書に記載する発明において使用しうるHAタンパク質の例は、WO2009/009876;WO2009/076778;WO2010/003225(これらは出典明示により本明細書に組み込まれる)に見いだしうる。キメラポリペプチドをコードする核酸は、「キメラ核酸」または「キメラヌクレオチド配列」と記載しうる。キメラHAで構成されるウイルス様粒子は「キメラVLP」と記載しうる。キメラVLPは、2010年6月25日出願されたPCT出願番号PCT/CA2010/000983および米国仮特許出願第61/220,161号(2009年6月24日;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)に、さらに記載されている。VLPはネイティブHAまたはキメラHAの発現から得ることができる。
本発明が提供する方法に従って調製されるVLPのHAには、既知の配列と、今後開発または同定されうる変異体HA配列とが含まれる。さらにまた、本明細書において記載するように生産されるVLPは、ノイラミニダーゼ(NA)または他の構成要素、例えばM1(Mタンパク質)、M2、NSなどを含まない。ただし、HAとNAとを含むVLPが望まれる場合には、NAやM1をHAと共発現させうる。
一般に「脂質」という用語は脂溶性(親油性)の天然分子を指す。本発明のいくつかの態様に従って植物中で生産されるキメラVLPは、植物由来脂質との複合体を形成しうる。植物由来脂質は、脂質二重層の形態をとることができ、さらに、VLPを取り囲むエンベロープを含みうる。植物由来脂質は、例えばリン脂質、トリ−、ジ−およびモノグリセリド、ならびに脂溶性ステロールまたはステロールを含む代謝産物など、VLPが生産される植物の形質膜の脂質構成要素を含みうる。その例には、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、グリコスフィンゴリピド、フィトステロールまたはそれらの組み合わせなどがある。植物由来脂質を「植物脂質」と呼ぶこともできる。フィトステロールの例には、カンペステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、デルタ−7−スチグマステロール、デルタ−7−アベナステロール、ダウノステロール(daunosterol)、シトステロール、24−メチルコレステロール、コレステロールまたはベータ−シトステロールなどがある(Mongrandら,2004,J.Biol Chem 279:36277−86)。当業者には容易に理解されるであろうとおり、細胞の形質膜の脂質組成は、細胞の培養条件もしくは成長条件、またはその細胞の由来である生物または種と共に変動しうる。
形質膜は、一般に、脂質二重層と、さまざまな機能のためのタンパク質とを含む。脂質二重層には「脂質ラフト」と呼ばれる特定脂質の局所的濃縮が見られる場合がある。これらの脂質ラフト微小領域はスフィンゴリピドおよびステロールに富むだろう。理論に束縛されることは望まないが、脂質ラフトは、エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシス、ウイルスまたは他の感染性因子の侵入または放出、細胞間シグナル伝達、その細胞または生物の他の構造構成要素、例えば細胞内および細胞外マトリックスとの相互作用に重要な役割を有しうる。
脂質エンベロープを含むVLPは、以前に、WO2009/009876;WO2009/076778、およびWO2010/003225(これらは出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されている。インフルエンザウイルスについていえば、本明細書において使用する「ヘマグルチニン」または「HA」という用語は、インフルエンザウイルス粒子の構造糖タンパク質を指す。本発明のHAは任意の亜型から得ることができる。例えばHAは、亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16のものであるか、インフルエンザB型またはC型のものであることができる。本発明の組換えHAは任意のヘマグルチニンの配列に基づくアミノ酸配列も含みうる。インフルエンザヘマグルチニンの構造は詳しく研究されており、二次、三次および四次構造に高度の保存を示す。アミノ酸配列にはばらつきがありうるにもかかわらず、この構造的保存は観察される(例えばSkehelおよびWiley,2000 Ann Rev Biochem 69:531−69;Vaccaroら,2005参照;これらは出典明示により本明細書に組み込まれる)。HAをコードするヌクレオチド配列はよく知られており、例えばURL:biohealthbase.org/GSearch/home.do?decorator=Influenza)のBioDefense and Public Health Database(現在はInfluenza Research Database;Squiresら,2008 Nucleic Acids Research 36:D497−D503)から、または国立バイオテクノロジー情報センターによって維持されているデータベース(NCBI;例えばURL:ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=nuccore&cmd=search&term=influenza)から入手することができる(これらはどちらも出典明示により本明細書に組み込まれる)。
本発明は、ヒト、または宿主動物、例えば霊長類、ウマ、ブタ、鳥(bird)、ヒツジ、水鳥(avian water fowl)、渡り鳥、ウズラ、カモ、ガチョウ、家禽、ニワトリ、ラクダ、イヌ科動物(canine)、イヌ、ネコ科動物(feline)、ネコ、トラ、ヒョウ、ジャコウネコ、ミンク、ムナジロテン、フェレット、家庭用ペット、家畜、マウス、ラット、鰭脚類、クジラなどに感染するウイルスのインフルエンザVLPなどといった、VLPを調製、回収もしくは単離する方法、またはVLPを調製し、回収しかつ単離する方法にも関係する。一部のインフルエンザウイルスは2種類以上の宿主動物に感染しうる。インフルエンザウイルスのヘマグルチニンではアミノ酸変異が許容される。この変異が、同定され続けている新しい株をもたらす。感染性は新しい株の間でさまざまでありうる。しかし、引き続いてVLPを形成するヘマグルチニン三量体の情報は維持される。本発明には、HAの亜型もしくは配列、またはそのVLPを構成するキメラHA、または起源の種とは無関係に、任意の植物由来VLPを回収する方法も含まれる。
超構造体タンパク質の正しいフォールディングは、タンパク質の安定性、多量体の形成、タンパク質の形成および機能にとって重要でありうる。タンパク質のフォールディングは、例えば限定するわけではないが、タンパク質の配列、タンパク質の相対的存在量、細胞内密集度、フォールディングされたタンパク質、部分的にフォールディングされたタンパク質またはフォールディングされていないタンパク質に結合するか、それらと一過性に会合しうる補因子の利用可能性、1つ以上のシャペロンタンパク質の存在などといった、1つ以上の因子によって左右されうる。
熱ショックタンパク質(Hsp)またはストレスタンパク質は、タンパク質合成、細胞内輸送、ミスフォールディングの防止、タンパク質凝集の防止、タンパク質複合体の集合および解体、タンパク質フォールディング、およびタンパク質脱凝集を含むさまざまな細胞プロセスに参加しうるシャペロンタンパク質の例である。そのようなシャペロンタンパク質の例には、Hsp60、Hsp65、Hsp70、Hsp90、Hsp100、Hsp20−30、Hsp10、Hsp100−200、Hsp100、Hsp90、Lon、TF55、FKBP、シクロフィリン、ClpP、GrpE、ユビキチン、カルネキシン、およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどがあるが、これらに限るわけではない(例えばMacario,A.J.L.,Cold Spring Harbor Laboratory Res. 25:59−70,1995;Parsell,D.A.およびLindquist,S.,Ann.Rev.Genet. 27:437−496(1993);米国特許第5,232,833号を参照されたい)。キメラHAのフォールディングを保証するために、シャペロンタンパク質、例えば限定するわけではないが、Hsp40およびHsp70を使用することができる(2010年6月25日に出願されたPCT出願番号PCT/CA2010/000983、および2009年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/220,161号;WO2009/009876およびWO2009/076778;これらは全て出典明示により本明細書に組み込まれる)。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI;アクセッション番号Z11499)も使用することができる。
回収されたら、タンパク質または超構造体タンパク質を、構造、サイズ、力価または活性について、例えば限定するわけではないが、電子顕微鏡法、光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLC、ウェスタンブロット分析、電気泳動、ELISA、活性に基づくアッセイ、例えば血球凝集アッセイ、または他の任意の適切なアッセイによって評価することができる。VLPのサイズ、濃度、活性および組成を評価するためのこれらの方法および他の方法は、当技術分野では知られている。
分取用サイズ排除クロマトグラフィーのために、タンパク質または超構造体タンパク質を含む調製物を、本明細書に記載の方法によって得て、不溶物を遠心分離によって除去することができる。PEGまたは硫酸アンモニウムによる沈殿も有益でありうる。回収されたタンパク質は従来の方法(例えばブラッドフォードアッセイ、BCA)を使って定量し、抽出物を例えばSEPHACRYL(商標)、SEPHADEX(商標)または類似の媒質を使ったサイズ排除カラム、イオン交換カラムを使ったクロマトグラフィー、またはアフィニティカラムを使ったクロマトグラフィーに通し、活性画分を集める。アフィニティに基づく磁気分離を使って、例えばDynabeads(商標)(Invitrogen)で、タンパク質複合体を得て、そのDynabeads(商標)からタンパク質複合体を溶離させることもできる。クロマトグラフィープロトコールと分離プロトコールの組み合わせも使用しうる。クロマトグラフィーまたは分離に続いて、所望により、タンパク質電気泳動、イムノブロット、ELISA、活性に基づくアッセイによって、画分をさらに分析することで、超構造体タンパク質の存在を確認しうる。
超構造体タンパク質がVLPである場合は、血球凝集アッセイを使用することで、当技術分野において周知の方法を使ってVLP含有画分の血球凝集活性を評価することができる。理論に束縛されることは望まないが、異なる動物に由来するRBCに結合するHAの能力は、シアル酸α2,3またはα2,3に対するHAのアフィニティとRBCの表面にこれらのシアル酸が存在することとによる。インフルエンザウイルス由来のウマおよびトリHAが、シチメンチョウ、ニワトリ、カモ、モルモット、ヒト、ヒツジ、ウマおよびウシを含むいくつかの種の全てに由来する赤血球を凝集させるのに対し、ヒトHAは、シチメンチョウ、ニワトリ、カモ、モルモット、ヒトおよびヒツジの赤血球に結合するであろう(Ito T.ら,1997,Virology,227:493−499;Medeiros Rら,2001,Virology 289:74−85)。
キメラHAまたはキメラVLPを含むワクチンまたはワクチン組成物によって誘導される抗体の効力が、組換えHAによる赤血球(RBC)の凝集を阻害できることを実証するために、血球凝集阻害(HIまたはHAI)アッセイも使用しうる。血清試料の血球凝集阻害抗体価は、マイクロタイターHAI(Aymardら,1973)によって評価しうる。いくつかの種−例えばウマ、シチメンチョウ、ニワトリなど−のどれに由来する赤血球でも使用しうる。このアッセイは、VLP表面でのHA三量体のアセンブリに関する間接的情報を与えて、HA上の抗原部位の適正な提示を裏付ける。
交差反応性HAI価を使って、そのワクチン亜型に関連する他のウイルス株に対する免疫応答の効力を実証することもできる。例えば、第1インフルエンザ型または亜型のHDCを含むキメラヘマグルチニンを含むワクチン組成物で免疫処置された対象からの血清を、HAIアッセイにおいて第2の株の全ウイルスまたはウイルス粒子と共に使用して、HAI価を決定することができる。
本発明の方法によって調製されるインフルエンザVLPを、既存のインフルエンザワクチンと一緒に使用することで、そのワクチンを補完(supplement)し、それをより有効にするか、必要な投与量を減らすことができる。当業者には知られているであろうとおり、ワクチンは1つまたは2つ以上のインフルエンザウイルスに指向させることができる。適切なワクチンの例には、Sanofi−Pasteur、ID Biomedical、Merial、Sinovac、Chiron、Roche、MedImmune、GlaxoSmithKline、Novartis、Sanofi−Aventis、Serono、Shire Pharmaceuticalsなどから市販されているものがあるが、これらに限るわけではない。所望であれば、本発明のVLPは、当業者には知られているであろうとおり、適切なアジュバントと混合することができる。さらにまた、本発明に従って生産されたVLPは、他のタンパク質構成要素と共発現させるか、他のVLPまたはインフルエンザタンパク質構成要素、例えばノイラミニダーゼ(NA)、M1、およびM2と共に再構成させうる。例えばマラリア抗原、HIV抗原、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原などのワクチンタンパク質でできた他のVLPと共発現または再構成させることもできる。
タンパク質または超構造体タンパク質を含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物質または種子の形質転換および再生のための方法は、当技術分野では確立されており、当業者に知られている。形質転換植物および再生植物を取得する方法は、本発明にとって決定的な問題ではない。
「形質転換」とは、遺伝子型もしくは表現型またはその両方によって発露される遺伝情報(ヌクレオチド配列)の種間移動を意味する。キメラコンストラクトから宿主への遺伝情報の種間移動は、遺伝性(すなわち宿主のゲノム内への組込み)であって遺伝情報の移動が安定であると見なされる場合も、移動が一過性であって遺伝情報の移動が遺伝性でない場合もある。
「植物質(plant matter)」という用語は、植物に由来する任意の物質を意味する。植物質は、植物全体、組織、細胞、またはその任意の画分を含みうる。さらに、植物質は、細胞内植物構成要素、細胞外植物構成要素、植物の液状もしくは固形抽出物、またはそれらの組合せを含みうる。さらに、植物質は、植物の葉、茎、果実、根またはそれらの組合せから得られる植物、植物細胞、組織、液状抽出物、またはそれらの組合せを含みうる。植物質は、何の加工ステップにも付されていない植物またはその一部を含みうる。植物の一部分は植物質を含みうる。植物または植物質は、任意の方法で収穫または取得することができ、例えば全植物体を使用するか、葉または他の組織を、ここに記載する方法で使用するために、特に取り出すことができる。VLPを発現し分泌するトランスジェニック植物も、本明細書に記載する加工のための出発材料として使用しうる。
本発明のコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、浸潤などを使って、植物細胞中に導入することができる。そのような技法の総説としては、例えばWeissbachおよびWeissbach「Methods for Plant Molecular Biology」Academy Press,ニューヨーク,VIII,pp.421−463(1988);GeiersonおよびCorey「Plant Molecular Biology」第2版(1988);ならびにDT. Dennis,DH Turpin,DD Lefebrve,DB Layzell編「Plant Metabolism」第2版(Addison−Wesley,Langmans Ltd.,ロンドン)のpp.561−579、MikiおよびIyer「Fundamentals of Gene Transfer in Plants」(1997)を参照されたい。他の方法には、例えばプロトプラストを使った、直接DNA取り込み、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイルまたはウィスカーの使用、および減圧浸潤などがある。例えば、Bilangら(Gene 100:247−250(1991)、Scheidら(Mol.Gen.Genet.228:104−112,1991)、Guercheら(Plant Science 52:111−116,1987)、Neuhauseら(Theor.Appl Genet. 75:30−36,1987)、Kleinら,Nature 327:70−73(1987);Howellら(Science 208:1265,1980)、Horschら(Science 227:1229−1231,1985)、DeBlockら,Plant Physiology 91:694−701,1989)、Methods for Plant Molecular Biology(WeissbachおよびWeissbach編,Academic Press Inc.,1988)、Methods in Plant Molecular Biology(SchulerおよびZielinski編,Academic Press Inc.,1989)、LiuおよびLomonossoff(J.Virol Meth,105:343−348,2002)、米国特許第4,945,050号;同第5,036,006号;同第5,100,792号;同第6,403,865号;同第5,625,136号(これらは全て出典明示により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
本発明のコンストラクトを発現させるには一過性の発現方法を使用しうる(LiuおよびLomonossoff,2002,Journal of Virological Methods,105:343−348;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)。あるいは、PCT公開WO00/063400、WO00/037663(出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されているような減圧に基づく一過性の発現方法も使用しうる。これらの方法には、例えばアグロイノキュレーション(Agro−inoculation)またはアグロインフィルトレーション(Agro−infiltration)の方法を挙げることができるが、これらに限るわけではなく、他の一過性の方法を上述のように使用することもできる。アグロイノキュレーションまたはアグロインフィルトレーションのいずれかにより、所望の核酸を含むアグロバクテリアの混合物は、組織、例えば葉、植物の地上部分(茎、葉および花を含む)、植物の他の部分(茎、根、花)、または全植物体の細胞間隙に進入する。表皮を横切った後、アグロバクテリウムは感染し、細胞内にt−DNAコピーを導入する。t−DNAはエピソームとして転写され、mRNAが翻訳されて、感染細胞における目的のタンパク質の生産をもたらすが、核内へのt−DNAの通過は一過性である。
本明細書に記載する配列を以下に要約する。
Figure 0006092840
本発明を以下の実施例でさらに例示する。ただし、これらの実施例は例示を目的とするに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するために使用されてはならないと理解すべきである。
発現カセットのアセンブリ
VLPの生産に使用しうるコンストラクトは、米国仮特許出願第61/220,161号およびPCT/CA2010/000983(これらは出典明示により本明細書に組み込まれる)、WO2009/009876、WO2009/076778およびWO2010/003225(これらは全て出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されている。コンストラクトには、表2に列挙するものも含めることができる。これらのコンストラクトのアセンブリは、WO2009/009876、WO2009/076778、WO2010/003225およびUS61/220,161に記載されている。既知のHA(表2に記載するものを含むが、これらに限るわけではない)を含み、類似するまたは異なる調節要素およびプロモーターと組み合わされた、他のコンストラクトも、本明細書に記載するように、VLPの生産に使用しうる。
[表2]ヘマグルチニン生産に使用することができるコンストラクトの非限定的な例
Figure 0006092840
Figure 0006092840
CPMV−HT発現カセットは、目的のコード配列(位置115および161に突然変異したATGを有するササゲモザイクウイルス(CPMV)RNA2由来のヌクレオチド1〜512が5’側に隣接し、CPMV RNA2由来のヌクレオチド3330〜3481(3’UTRに相当)とそれに続くNOSターミネーターが3’側に隣接しているもの)を含むmRNAの発現を制御するために、35Sプロモーターを含んでいた。CPMV−HTベースのヘマグルチニン発現カセットのアセンブリにはプラスミドpBD−C5−1LC(Sainsburyら,2008;Plant Biotechnology Journal 6:82−92およびPCT公開WO2007/135480)を使用した。CPMV RNA2の位置115および161にあるATGの突然変異は、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77−85 (1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法を使って行った。テンプレートとしてpBD−C5−1LCを使用して、2つの別々のPCRを行った。第1増幅用のプライマーはpBinPlus.2613c(配列番号3)およびMut−ATG115.r(配列番号4)とした。第2増幅用のプライマーはMut−ATG161.c(配列番号5)およびLC−C5−1.110r(配列番号6)とした。次に2つのフラグメントを混合し、pBinPlus.2613c(配列番号3)およびLC−C5−1.110r(配列番号6)をプライマーとして用いる第3増幅のためのテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをPacIとApaIで消化し、同じ酵素で消化したpBD−C5−1LCにクローニングした。生成した発現カセットを828と名付けた。
CPMV−HT発現カセットにおけるH5 A/Indonesia/5/2005のアセンブリ(コンストラクト番号685)
このカセットのアセンブリは出典明示により本明細書に組み込まれるWO2009/009876, WO2009/076778およびWO2010/003325に記載されている。
簡単に述べると、A/Indonesia/5/2005由来のH5のコード配列を、次のようにしてCPMV−HTにクローニングした:テンプレートとしてコンストラクト番号660(D’Aoustら,Plant Biotechnology Journal 6:930−940(2008))を使用し、プライマーApaI−H5(A−Indo).1c(配列番号7)およびH5(A−Indo)−StuI.1707r(配列番号8)によるPCR増幅を行うことにより、制限部位ApaI(開始ATGのすぐ上流)およびStuI(停止コドンのすぐ下流)を、ヘマグルチニンコード配列に付加した。コンストラクト660は、アルファルファプラストシアニンプロモーターおよび5’UTR、A/Indonesia/5/2005由来のH5のヘマグルチニンコード配列(コンストラクト番号660)、アルファルファプラストシアニン3’UTRおよびターミネーター配列を含む(配列番号9;図5)。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、前もって同じ酵素で消化しておいたコンストラクト番号828にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号685と名付けた(図1、2)。
サイレンシングのサプレッサー
植物における導入遺伝子の発現の制限には転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)が関与する場合があり、導入遺伝子mRNAの特異的分解に対抗するために、ジャガイモウイルスY由来のサイレンシングのサプレッサー(HcPro)の共発現を使用することができる(Brignetiら,1998)。これに代わるサイレンシングのサプレッサーは、例えば限定するわけではないが、TEV−p1/HC−Pro(タバコエッチウイルス−p1/HC−Pro)、BYV−p21、トマトブッシースタントウイルスのp19(TBSV p19)、トマトクリンクルウイルスのキャプシドタンパク質(TCV−CP)、キュウリモザイクウイルスの2b;CMV−2b)、ジャガイモXウイルスのp25(PVX−p25)、ジャガイモウイルスMのp11(PVM−p11)、ジャガイモウイルスSのp11(PVS−p11)、ブルーベリースコーチウイルスのp16(BScV−p16)、カンキツトリステザウイルのp23(CTV−p23)、ブドウリーフロール病関連ウイルス−2のp24(GLRaV−2 p24)、ブドウウイルスAのp10(GVA−p10)、ブドウウイルスBのp14(GVB−p14)、ハナウド(Heracleum)潜伏ウイルスのp10(HLV−p10)、またはニンニク潜伏ウイルス(Garlic common latent virus)のp16(GCLV−p16)など、当技術分野ではよく知られており、本明細書において述べるように使用することができる(Chibaら,2006,Virology 346:7−14;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)。それゆえに、植物内での高レベルなタンパク質生産をさらに確実にするために、サイレンシングのサプレッサー、例えば限定するわけではないが、HcPro、TEV −p1/HC−Pro、BYV−p21、TBSV p19、TCV−CP、CMV−2b、PVX−p25、PVM−p11、PVS−p11、BScV−p16、CTV−p23、GLRaV−2 p24、GBV−p14、HLV−p10、GCLV−p16またはGVA−p10を、目的のタンパク質をコードする核酸配列と一緒に共発現させることができる。
p19の構築は、WO2010/0003225(これは出典明示により本明細書に組み込まれる)に記述されている。簡単に述べると、トマトブッシースタントウイルス(TBSV)のp19タンパク質のコード配列を、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77−85(1995))に掲載されているPCRベースのライゲーション法によってアルファルファプラストシアニン発現カセットに連結した。1ラウンド目のPCRでは、テンプレートとしてコンストラクト660(出典明示により本明細書に組み込まれるWO2010/0003225に記載されている)を使用し、プライマーPlasto−443c:
GTATTAGTAATTAGAATTTGGTGTC(配列番号11)
とsupP19−plasto.r
CCTTGTATAGCTCGTTCCATTTTCTCTCAAGATG(配列番号12)
とを使って、プラストシアニンプロモーターのセグメントを増幅した。これと並行して、Voinnetら(The Plant Journal 33:949−956(2003))に記載のコンストラクト35S:p19をテンプレートとして使用し、プライマーsupP19−1c
ATGGAACGAGCTATACAAGG(配列番号13)
とSupP19−SacI.r
AGTCGAGCTCTTACTCGCTTTCTTTTTCGAAG(配列番号14)
とを使って、p19のコード配列を含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に、増幅産物を混合し、プライマーPlasto−443cとSupP19−SacI.rとによる2ラウンド目の増幅(アセンブリング反応)のテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)とSacI(p19コード配列の末端)とで消化し、前もって同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号660にクローニングすることで、コンストラクト番号R472を得た。これらのプラスミドを使用して、エレクトロポレーション(Mattanovichら,1989)により、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacteium tumefaciens)(AGL1;ATCC、米国バージニア州マナッサス20108)を形質転換した。全てのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の完全性を制限酵素マッピングによって確認した。R472(図11B)を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を「AGL1/R472」と名付けた。
HcProコンストラクト(35HcPro)はHamiltonら(2002)に記載されているように調製した。全てのクローンを配列決定して、コンストラクトの完全性を確認した。これらのプラスミドを使って、エレクトロポレーション(Mattanovichら,1989)により、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(AGL1;ATCC、米国バージニア州マナッサス20108)を形質転換した。全てのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の完全性を制限酵素マッピングによって確認した。
植物バイオマスの調製、接種材料、アグロインフィルトレーション、および収穫
市販のピートモス基質で満たした平箱においてベンセミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物を種子から生長させた。植物は、温室において、16/8光周期および日中25℃/夜間20℃の温度レジーム下で生長させた。播種の3週間後に、個々の小植物を選定し、鉢に移植して、温室中、同じ環境条件下でさらに3週間生長させた。6週間後に、植物の平均重量は80g、高さは30cmである。
D’Aoustら,2008(Plant Biotechnology Journal 6:930−940)に記載された方法を使って、アグロバクテリウム株AGL1に、以下に示すコンストラクトをトランスフェクト(エレクトロポレーション)した。トランスフェクトされたアグロバクテリウムを、10mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、20μMアセトシリンゴン、50μg/mlカナマイシンおよび25μg/mlのカルベニシリンを補足したYEB培地(pH5.6)中で、OD600が0.6〜1.6になるまで成長させた。アグロバクテリウム懸濁液を使用前に遠心分離し、浸潤培地(10mM MgClおよび10mM MES、pH5.6)に再懸濁した。
植物を、D’Aoustら(前掲)に記載されているように、アグロインフィルトレートした。簡単に述べると、減圧浸潤のために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス懸濁液を遠心分離し、浸潤培地に再懸濁し、4℃で終夜保存した。浸潤当日、培養バッチを2.5培養体積に希釈し、使用前に温めておいた。気密ステンレス鋼タンク中の細菌懸濁液に20〜40Torrの減圧下で2分間、ベンサミアナタバコの全植物体を上下逆さまにして入れた。別段の指定がない限り、浸潤は全て、R472で形質転換された細菌(AGL1/R472株)との比率1:1での共浸潤として行った。減圧浸潤後に、植物を室温に戻し、4〜6日間のインキュベーション期間を経てから、収穫した。
葉のサンプリングおよび全タンパク質抽出(機械的ホモジナイゼーション)
4、5、6、7および8日間のインキュベーション後に、植物の地上部分を収穫し、直ちに使用した。1%Triton X−100および0.004%メタ重亜硫酸ナトリウムを含有する3体積の冷50mM Tris(pH8.0)、0.15M NaCl中で植物組織をホモジナイズすることによって全可溶性タンパク質を抽出した。植物組織は、1体積の冷50mM Tris(pH8)、0.15M NaCl中で、POLYTRON(商標)を使用するか、乳鉢と乳棒で粉砕するか、またはCOMITROL(商標)を使って、機械的にホモジナイズした。COMITROL(商標)と共に使用した緩衝液は、0.04%メタ重亜硫酸ナトリウムも含有していた。ホモジナイゼーション後に、粉砕した植物材料のスラリーを、4℃、5,000gで、5分間遠心分離し、粗抽出物(上清)を分析のためにとっておいた。清澄化した粗抽出物の総タンパク質含量は、参照標準としてウシ血清アルブミンを使用するブラッドフォードアッセイ(Bio−Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)によって決定した。
細胞壁消化によるVLP抽出
ベンサミアナタバコ植物から葉組織を収集し、〜1cmの小片に切断した。葉小片を500mMマンニトールに室温(RT)で30分間浸漬した。次に、マンニトール溶液を除去し、プロトプラスト化溶液(500mMマンニトール、10mM CaClおよび5mM MES/KOH(pH5.6))中の酵素混合物(トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)由来のセルラーゼ(オノズカR−10;3%v/v)およびクモノスカビ(Rhizopus)属由来のペクチナーゼの混合物(マセロチーム(商標);0.75%v/v)(どちらもヤクルト薬品工業))と交換した。使用した比は、溶液100mLあたり葉小片20gである。この調製物を浅い容器(〜11×18cm)に均等に拡げ、40rpmおよび26℃のロータリーシェーカー上で16時間インキュベートした。
あるいはVLP抽出を次のように行ってもよい。実施例1で述べるように、AGL1/#685を植物にアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目にベンサミアナタバコ植物から葉組織を集め、〜1cmの小片に切断した。比が1:2.5(w/v)の新鮮バイオマス;消化緩衝液を使って、MultifectペクチナーゼFE、Multifect CX CGおよびMultifect CX B(Genencor)を、600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液に、それぞれ1.0%(v/v)になるように加えた。バイオマスをオービタルシェーカーにおいて室温で15時間消化した。
インキュベーション後に、葉破片を濾過(250または400μmメッシュのナイロンフィルター)によって除去した。懸濁状態のプロトプラストを200×gでの遠心分離(15分)によって収集した後、上清をさらに清澄化するために、上清を5000×gで遠心分離(15分間)した。あるいは、5000×gで15分間の1回の遠心分離ステップを使用してもよい。次に、70mLの上清を70,000×gで30分間遠心分離した。その結果生じたペレットを1.7mLのPBSに再懸濁し、直ちに分析するか、または凍結した。
タンパク質分析
H5に関する血球凝集アッセイは、NayakおよびReichl(2004)に記載の方法に基づいた。簡単に述べると、試験試料の連続二倍希釈液(100μL)を、100μLのPBSが入っているV底96ウェルマイクロタイタープレートに作成し、各ウェルに100μLの希釈試料が残るようにした。100μlの0.25%シチメンチョウ赤血球懸濁液(Bio Link Inc.、ニューヨーク州シラキュース)を各ウェルに加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。完全な血球凝集を示す最高希釈度の逆数を血球凝集活性として記録した。並行して、組換えHA5標準(A/Vietnam/1203/2004 H5N1)(Protein Science Corporation、コネティカット州メリデン)をPBSに希釈し、各プレート上で対照として処理した。
ELISA
1%Triton X−100による処理とそれに続くTissue Lyser(商標)(Qiagen)での1分間の機械的撹拌によって破壊した精製ウイルス様粒子で、HA5標準を調製した。U底96ウェルマイクロタイタープレートを、4℃、16〜18時間において、50mM炭酸塩−重炭酸塩コーティング緩衝液(pH9.6)中の10μg/mLの捕捉抗体(Immune Technology Corporation、#IT−003−005I)でコーティングした。洗浄は全て0.1%Tween−20を含有する0.01M PBS(リン酸緩衝食塩水)(pH7.4)で行った。インキュベーション後に、プレートを3回洗浄し、37℃において1時間、PBS中の1%カゼインでブロッキングした。インキュベーション後に、プレートを3回洗浄し、37℃において1時間、PBS中の1%カゼインでブロッキングした。ブロッキングステップ後に、プレートを3回洗浄した。500〜50ng/mLの標準曲線を作成するために、HA5標準をモック抽出物(AGL1/R472のみを浸潤させた葉組織から調製したもの)に希釈した。定量するための試薬を1%Triton X−100中で処理してから、マイクロプレートにローディングした。プレートを37℃で1時間、さらにインキュベートした。洗浄後に、HA5に対するヒツジポリクローナル抗体(CBER/FDA)の1:1000希釈液を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。洗浄後に、1:1000希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗ヒツジ抗体を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。最後の洗浄後に、プレートをSureBlue TMBペルオキシダーゼ基質(KPL)と共に室温で20分間インキュベートした。1N HClの添加によって反応を停止させ、Multiskan Ascentプレートリーダー(Thermo Scientific)を使って、A450値を測定した。
実施例1:植物組織の酵素抽出は、相対的活性が上昇している大量のHAを放出する
本酵素抽出法から得られるHAの量および相対的活性を、一般的な機械的抽出法から得られるHAのものと比較した。ベンサミアナタバコ植物にAGL1/685を浸潤させ、5〜6日のインキュベーション期間後に、葉を収穫した。葉ホモジネートを次のように調製した:2gの葉をポリトロンホモジナイザーでホモジナイズし;4gの葉を乳鉢と乳棒で粉砕し;25kgの葉を、抽出緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、pH8.0、比1:1w/v)中、COMITROL(商標)プロセッサー(Urschel Laboratories)でホモジナイズした。酵素抽出は次のように行った:収穫した葉20グラムを、上述のマセロチームペクチナーゼおよびオノズカR−10セルラーゼによる消化に付した。消化後に、葉破片を濾過(ナイロンフィルター、250μmメッシュ)によって除去した。懸濁状態のプロトプラストを200×gでの遠心分離(15分)によって除去し、5000×gでの遠心分離(15分)によって上清をさらに清澄化した。
これらの植物抽出物のそれぞれにおけるHAの相対的活性および量を表3に示す。細胞壁の酵素消化によって放出されるHAの量は、使用した他の技法と比較すると、有意に上回っている。
[表3]異なる機械的方法または酵素的方法によって生成した植物抽出物から回収されるHA−VLP。活性に基づく比較およびELISA比較のために、新鮮バイオマスの液体抽出の相対的体積に応じてデータを標準化した。Comitrol抽出を使って得られたタンパク質を100%とし、他の方法をこの値と比較した。
Figure 0006092840
量はELISA分析によって評価した。
実施例2:植物組織の酵素消化は、VLPに組織化されたHAを放出する
分画遠心分離とサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)とを併用して、本明細書に記載する酵素抽出法によって得られるHAが、VLPとして組織化されていることを実証した。ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、AGL1/685をアグロインフィルトレートした。実施例1で述べたように、浸潤の6日後に植物から葉を収集し、〜1cmの小片に切断した後、消化し、粗濾過し、遠心分離した。
次に、VLPの隔離を可能にするために、清澄化した試料を70,000×gで遠心分離した。VLPを含有する遠心分離ペレットを1/50体積のリン酸緩衝食塩水(PBS;0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.2)に静かに再懸濁してから、SECカラムにローディングした。
SEPHACRYL(商標)S−500高分離能ビーズ(S−500HR:GE Healthcare、スウェーデン国ウプサラ、カタログ番号17−0613−10)32mlのSECカラムを、平衡化/溶出緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、pH8)で調製した。平衡化したカラムに1.5mLのVLP試料をローディングし、45mLの平衡化/溶出緩衝液でそれを溶出させることによって、SECクロマトグラフィーを行った。溶出物を1.7mLの画分ずつに収集し、10μLの溶出物画分を200μLの希釈Bio−Radタンパク質色素試薬(Bio−Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)と混合することによって、各画分のタンパク質含有量を評価した。各分離に先だって、Blue Dextran 2000(GE Healthcare Bio−Science Corp.、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)によるキャリブレーションを行った。分離の一様性を保証するために、各分離ごとにBlue Dextran 2000と宿主タンパク質の両方の溶出プロファイルを比較した。
SEC溶出画分のタンパク質分析
清澄化粗抽出物の総タンパク質含有量は、参照標準としてウシ血清アルブミンを使用するブラッドフォードアッセイ(Bio−Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)によって決定した。SEC溶出物画分中に存在するタンパク質をアセトンで沈殿させ(Bollagら,1996)、それぞれSDS−PAGE分析用またはイムノブロット用に0.25体積または0.05体積の変性試料ローディング緩衝液(0.1M Tris pH6.8、0.05%ブロモフェノールブルー、12.5%グリセロール、4%SDSおよび5%ベータ−メルカプトエタノール)に再懸濁した。SDS−PAGEによる分離は還元条件下で行い、タンパク質染色にはクマシーブリリアントブルーR−250を使用した。
H5に関する血球凝集アッセイは、NayakおよびReichl(2004)に記載の方法に基づいて行った。簡単に述べると、試験試料の連続二倍希釈液(100μL)を、100μLのPBSが入っているV底96ウェルマイクロタイタープレートに作成し、各ウェルに100μLの希釈試料が残るようにした。100μlの0.25%シチメンチョウ赤血球懸濁液(Bio Link Inc.、ニューヨーク州シラキュース)を各ウェルに加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。完全な血球凝集を示す最高希釈度の逆数を血球凝集活性として記録した。並行して、組換えH5標準(A/Vietnam/1203/2004 H5N1)(Protein Science Corporation、コネティカット州メリデン)をPBSに希釈し、各プレート上で対照として処理した。
図3Aは、血球凝集活性がカラムの空隙容量に相当する画分に濃縮されることを示しており、血球凝集活性が高分子量の構造的組織化によって発生していることが確認される。SDS−PAGE分析(図3B)により、同じ空隙容量画分(画分7〜10)が最も高いHA含有量も示し、HA0モノマーに対応するバンドを約75kDaに検出できることが明らかになった。
実施例3:植物組織の酵素消化は夾雑物の少ないHA−VLPを放出する
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、AGL1/685をアグロインフィルトレートした。実施例1で述べたように、浸潤後6日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、消化し、粗濾過し、遠心分離した。
葉の制御された酵素消化は細胞壁を少なくとも部分的に除去することで、細胞壁と形質膜の間の空隙に存在するタンパク質および構成要素の抽出媒質への放出を可能にした。大半の細胞内タンパク質および細胞内構成要素は依然として損傷を受けず、ほとんど無傷のプロトプラスト内に含まれていたので、最初の遠心分離ステップでそれらを除去することが可能になり、したがって、図4に示すように、細胞外植物タンパク質および細胞外植物構成要素(アポプラスト内容物画分)に加えて細胞壁分解酵素を含む溶液が、結果として得られた。
図4は、先に述べた葉組織の制御された酵素消化後に結果として得られる溶液のSDS−PAGE分析を示しており、レーン1は、使用した酵素混合物を示し、レーン2は酵素消化後に得られた溶液を示す。Comitrol(商標)からの粗抽出物のタンパク質内容物が、比較のためにレーン3に提示されている。レーン2に提示した抽出物に関するバイオマス:緩衝液比は1:5(w/v)であったが、レーン3の場合はそれが1:1(w/v)だった。それゆえにレーン2とレーン3のそれぞれは、等量の出発材料から得られたタンパク質を含有している。ほぼ同じ緩衝液:植物比では、機械的植物抽出物が、約3.5〜4mg/mlのタンパク質濃度を含有していたのに対し、本発明に従って得られた酵素植物抽出物は、約1mg/mlのタンパク質濃度を示した。
レーン3中に存在する主要夾雑物は、2タイプのタンパク質サブユニット、すなわちラージ鎖(L、約55kDa)とスモール鎖(S、約13kDa)でできているRubisoCo(リブロース−1,5−ビスホスフェートカルボキシラーゼオキシゲナーゼ)であることがわかった。合計8つのラージ鎖二量体と8つのスモール鎖とが通常は互いに集合して、540kDaのより大きな複合体RubisCoになっている。この植物タンパク質夾雑物は機械的抽出法によって生じる植物抽出物中に大量に見いだされるが(図4の矢印参照)、本明細書に記載する酵素消化法によって得られる植物抽出物には事実上存在しない。それゆえに、本方法では、なかんずく、この主要植物タンパク質夾雑物を、プロセスの初期段階で、排除することが可能になる。
実施例4:植物組織の酵素消化は、HA−VLPを陽イオン交換樹脂で直接捕捉することができるような条件下で、HA−VLPを放出する
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、AGL1/685をアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、オービタルシェーカーにおいて室温で15時間消化した。消化緩衝液は、1.0%(v/v)MultifectペクチナーゼFE、1.0%(v/v)Multifect CX CGおよび/または1.0%(v/v)Multifect CX B(いずれもGenencor製)を、それぞれ600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中に含有し、1:2.5(w/v)のバイオマス:消化緩衝液比で使用した。
消化後に、アポプラスト内容物画分を400μmナイロンフィルターで濾過することで、粗未消化植物組織を除去した(<出発バイオマスの5%)。次に、プロトプラストおよび細胞内夾雑物(タンパク質、DNA、膜、小胞、色素など)を除去するために、濾過した抽出物を室温において5000×gで15分間、遠心分離した。次に、0.65μmガラス繊維フィルター(Sartopore GF plus/Sartorius Stedim)および0.45/0.2μmフィルター(Sartopore 2/Sartorius Stedim)を使って、上清を(清澄化のため)深層濾過してから、クロマトグラフィーに付した。
清澄化したアポプラスト内容物画分を、平衡化/溶出緩衝液(50mM NaPO、100mM NaCl、0.005%Tween 80、pH6.0)で平衡化した陽イオン交換カラム(Poros HS Applied Biosystems)にローディングした。UVがゼロに戻ったら、含有するNaCl濃度(500mM)が増加する平衡化/溶出緩衝液で、抽出物を段階的に溶出させた。必要な場合は、10kDa MWCOを備えたAmicon(商標)デバイスを使って、クロマトグラフィー画分を10倍濃縮した。タンパク質分析は先の実施例で述べたように行った。
上記の条件下では、大半の酵素および植物タンパク質が陽イオン交換樹脂に結合しなかったのに対し、HA−VLPは結合したので、溶出画分ではHA−VLPがかなり濃縮された(図6)。加えて、図6に示すように、レーン4およびレーン5では、セルラーゼおよびペクチナーゼが、7未満のpHにおいて陽イオン交換カラムに結合しなかった。HA血球凝集活性に基づくHA−VLPの回収率は陽イオン交換カラム後に92%だった。陽イオン交換樹脂からの溶出画分では194という精製倍率が測定された。
実施例5:消化緩衝液へのNaClの添加
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(H1/Cal WT、B/Flo、H5/IndoまたはH1/Cal X179A)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、以下に注記する点以外は実施例4に従って消化した。濾過、遠心分離および清澄化は、実施例4で述べたように行った。
消化緩衝液にNaClを加えることで、それがHA−VLP回収率に及ぼす潜在的効果を評価した。推測された利点は、HAと、植物細胞または清澄化時に除去される懸濁状態にある粒子との、非特異的会合の潜在的防止、ならびにHA−VLPのコロイド安定性の達成および/または維持および/または改善に対する潜在的効果であった。
消化緩衝液への500mM NaClの添加は、遠心分離によってプロトプラストと細胞破片を除去した後の、バイオマス1グラムあたりのHA−VLP回収収量の増加をもたらした。しかしこの増加は、H1/Cal WT株およびB/Flo株についてのみ認められ、H5の回収収量はこのアプローチでは有意に増加しなかった(表4)
[表4]消化ステップへのNaClの添加が、HA−VLPの回収収量に及ぼす効果(血球凝集活性単位で測定;dil:希釈度の逆数)
Figure 0006092840
NaClありの収量(dil/g)をNaClなしの収量(dil/g)で割ったもの
消化時に500mM NaClを添加すると、さらに、消化中のHA−VLPの放出の増加が起こり、それが結果として、H1/Cal WT株とH1/Cal X−179A株の両者について清澄化後の回収率の増加をもたらしたが(表5)、H5/Indo株ではそうならなかった。
[表5]消化ステップへのNaClの添加が清澄化ステップ後のHA−VLP回収収量に及ぼす効果(血球凝集活性単位によって測定)
Figure 0006092840
回収率は、遠心分離した消化抽出物中に見いだされる活性と比較した、深層濾過後に得られた血球凝集活性のパーセンテージとして表す。
酵素消化時にNaClの添加を行った場合と行わない場合のHA−VLPの会合状態を、H5/IndoおよびH1/Cal WTについて、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)を使って調べた(それぞれ図7Aおよび7B)。H5については、NaClの非存在下で消化を行った場合に、粒子の単分散調製物が観察されたが、H1/Cal調製物は、はるかに大きな一連の粒子種を示した。消化緩衝液へのNaClの添加は、図7Cに見いだされるかなり単分散性の粒子分布によって示されるとおり、H1/Calに関して、HA−VLP自己会合を減少させた。H1/Cal WT−VLPの場合、150nmにおける粒子数は、消化緩衝液への500mM NaClの添加によって、増加(約5倍)した。
実施例6:色素放出の制御
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(H5/Indo)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目に葉を収集し、約1cmの小片に切断し、消化緩衝液に500mM NaClを加えるか、500mM NaClと25mM EDTAとを加えて、実施例4で述べたように消化した。濾過、遠心分離および清澄化は実施例4で述べたように行った。
酵素消化ステップ中に起こる緑色を有する構成要素の放出は、緑色に着色したVLPの精製調製物をもたらす。そこで、細胞壁消化溶液の組成を調べて、緑色の着色が少なく、したがって純度が向上しているVLP精製調製物が得られるように、細胞壁消化溶液の組成を調節した。理論に束縛されることは望まないが、Ca2+は、細胞壁の中層の構成成分を一まとめにしておくことに極めて重要な役割を果たすので、植物細胞壁中には通常は高濃度のCa2+が存在するという事実を考慮すると、Ca2+キレーターであるEDTAは、細胞壁の酵素的解重合を容易にし、それによって、無傷の細胞内細胞小器官、例えばクロロプラストを保護し、緑色色素構成要素の放出を防止することができるかもしれない。
表6に示すように、調製物の吸収(OD672nm〜OD650nm)の相違を測定することによって評価した場合、消化緩衝液への25mM EDTAの添加により、精製H5−VLP調製物の緑色の着色を低減することが可能になった。緑色構成成分が大量に放出されるか、適切に除去されなかった場合は、VLP調製物がΔOD>0.040を示した。
[表6]消化緩衝液への25mM EDTAの添加がH5−VLP調製物の緑色着色に及ぼす効果
Figure 0006092840
実施例7:代替的消化緩衝液組成物
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(H5/Indo)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、実施例4に従って消化した、ただし、消化緩衝液は、表7〜9に記すとおり、0%、0.25%、0.5%、0.75%または1%v/vのMultifectペクチナーゼFE、Multifect CX−CGセルラーゼおよびMultifect CX Bセルラーゼを含むように改変した。濾過、遠心分離および清澄化は、実施例4で述べたように行った。
下記の表7および表8に示すように、ペクチナーゼは、消化緩衝液中には必須でないことが実証された。ペクチナーゼの存在下でも、非存在下でも、類似するレベルのH5/IndoまたはH1/Cal WT VLPを、本方法で抽出することができる。さらにまた、先の実施例と比較してセルラーゼの濃度を減らしても、抽出の量に有意な影響はないこともわかった(表9)。
[表7]ベンサミアナタバコ葉の消化によるH5/Indo VLPの放出。どの条件も多重に試験した。(血球凝集活性によって測定したHA−VLPの濃度、dil:希釈度の逆数)
Figure 0006092840
Multifect CX GC
[表8]ベンサミアナタバコ葉の消化によるH1/Cal WT VLPの放出。どの条件も多重に試験した。(血球凝集活性によって測定したHA−VLPの濃度、dil:希釈度の逆数)
Figure 0006092840
各1%のMultifect CX GCおよびMultifect CX B
[表9]ベンサミアナタバコ葉の消化によるH1/Cal WT VLPの放出。どの条件も多重に試験した。(血球凝集活性によって測定したHA−VLPの濃度、dil:希釈度の逆数)
Figure 0006092840
Multifect CX GC
実施例8:中性pHに近い条件での酵素消化
消化中のpHの制御は、一部のVLPの抽出にとって極めて重要でありうる。消化ステップ中に起こる細胞壁の解重合が、適当な緩衝液の存在下で溶液を酸性化(すなわちpH6〜5)させうる酸性糖を放出しうること、および一部のVLP(例えばH3/BrisおよびB/Flo HAを含むもの)が温和な酸性条件に対して強い感受性を示していることを考慮して、そのような潜在的酸性化が生産されるVLPの収量に及ぼす影響を調べた。
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(B/Flo、H5/Indo、H3/Bris)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後6日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、実施例4に従って消化した、ただし、消化条件は、500mM NaCl;25または50mM EDTA;0.03または0.04%重亜硫酸ナトリウム;0、100、200または600mMマンニトール、75、125または150mMクエン酸塩;および/または75mM NaPOを含むように改変し、消化緩衝液のpHは表10〜14に説明するように調節した。濾過、遠心分離および清澄化は、実施例4で述べたように行った。
クエン酸塩濃度の増加(pH3.0とpH5.4の間の緩衝効果)およびリン酸ナトリウムの添加(6.0を上回るpHでの緩衝効果)を含めて、酵素消化の最後までに約5.5のpHが達成されるように、さまざまな消化緩衝液組成を調べた。表10は、消化後pHがpH6.0に近い場合に、B株からのVLPが、より効率よく抽出されることを示している。
[表10]B/Flo VLPの抽出収量に対する消化緩衝液組成の効果
Figure 0006092840
緩衝液はいずれも600mMマンニトール、メタ重亜硫酸ナトリウム0.04%を含有した。
次に、pH6.0に近い最終pH値に到達するように、より高いpHで消化を開始した場合の効果を調べた。表11に示すように、そのようなほぼ中性条件での植物細胞壁の消化は可能であり、H5/Indo VLPに関して、抽出収量を損なわなかった。
[表11]H5/Indo VLPの抽出収量に対する消化緩衝液の初期pHの効果
Figure 0006092840
緩衝液はいずれも600mMマンニトール、メタ重亜硫酸ナトリウム0.04%、125mMクエン酸塩+75mM NaPO+500mM NaCl+25mM EDTAを含有した。
VLPの抽出収量に負の影響を及ぼさずに消化溶液の他の構成要素を改変しうることも示された。表12に、5.4〜5.7の消化後pHを得つつ、B/Flo VLPの抽出収量を向上させるために消化溶液に適用することができる改変を例示する。そのような改変には、クエン酸塩の濃度を増加させること、およびPO緩衝液を加えることが含まれる。EDTA濃度の増加は、一般に、より酸性化された抽出物と、より低いVLP抽出収量につながることがわかった。
[表12]B/Flo VLPの抽出収量に対するさまざまな消化緩衝液構成要素の効果
Figure 0006092840
緩衝液はいずれも500mM NaClおよびメタ重亜硫酸ナトリウム0.04%を含有した。
H3/Brisbane VLPの抽出収量を改善するために、緩衝液組成をさらに改変した(表13)。
[表13]H3/Bris VLPの抽出収量に対する消化溶液中のマンニトールおよび重亜硫酸ナトリウムの濃度の効果
Figure 0006092840
緩衝液はいずれも125mMクエン酸塩、75mM NaPO、500mM NaClを含有した。
表12および13に示すように、マンニトール濃度は、VLP抽出収量に有意な影響を及ぼすことなく、200mMまで下げることができた。マンニトール濃度を100mMまでさらに下げても、さらにはマンニトールを消化溶液から完全に省いても、得られるHA−VLPのレベルに有意な影響はなかった(表14)。
[表14]マンニトールの濃度が異なる緩衝液中で行われたバイオマスの消化によるH5/Indo VLPの放出
Figure 0006092840
緩衝液はいずれも75mMクエン酸塩pH6.0+メタ重亜硫酸ナトリウム0.04%を含有している。
マンニトールなし(試行1)およびマンニトール100mM(試行2)とマンニトール600mMとを対比してVLPの抽出収量を比較するために、2つの試行を行った。
実施例9:多種多様なHA−VLPへの酵素消化の適合性
本明細書に記載する植物バイオマスの酵素消化法は、多種多様なHA−VLPの抽出に応用できる可能性を有している。先の実施例で示したH5/Indo、H1/Cal WT VLP、H3/BrisおよびB/Floを含むHA−VLPの抽出に加えて、本明細書に記載の方法は、表15に示すように、季節性H1/BrisおよびH1/NCからのHA−VLPの抽出に適していることも示された。
[表15]アグロインフィルトレートされたベンサミアナタバコ葉の消化による季節性H1/BrisおよびH1/NC VLPの放出(血球凝集活性によって測定されたHAの濃度、dil:希釈度の逆数)。
Figure 0006092840
実施例10:抗体の調製、発現および分析
C2B8発現カセット(コンストラクト番号595)のアセンブリ
C2B8は、非ホジキンリンパ腫(NHL)上に発現するB細胞特異的抗原CD20に対するキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体である。C2B8は、補体および抗体依存性細胞性細胞傷害を媒介し、インビトロで悪性B細胞株に対して直接的な抗増殖効果を有する(N Selenkoら,Leukemia,October 2001,15(10);1619−1626)。
84bpのアルファルファプラストシアニンプロモーター、完全なC2B8軽鎖コード配列および完全なアルファルファプラストシアニンターミネーターを含むDNAフラグメントを合成した(LCフラグメント)。このLCフラグメントは、DraIII制限部位(プラストシアニンプロモーター中に見いだされるもの)とプラストシアニンターミネーターの下流にあるEcoRI部位に挟まれていた。LCフラグメントの配列を図9(配列番号15)に示す。LCフラグメントを含有するプラスミドをDraIIIおよびEcoRIで消化し、前もって同じ酵素で消化しておいたコンストラクト番号660(D’Aoustら,Plant Biotechnol.J. 2008,6:930−940)にクローニングした。その結果生じたプラスミドをコンストラクト番号590と名付けた。84bpのアルファルファプラストシアニンプロモーター、完全なC2B8重鎖コード配列および完全なアルファルファプラストシアニンターミネーターを含む第2のDNAフラグメントを合成した(HCフラグメント)。このHCフラグメントは、DraIII制限部位(プラストシアニンプロモーター中に見いだされるもの)とプラストシアニンターミネーターの下流にあるEcoRI部位とに挟まれていた。HCフラグメントの配列を図16(配列番号16)に示す。HCフラグメントを含有するプラスミドをDraIIIおよびEcoRIで消化し、前もって同じ酵素で消化しておいたコンストラクト番号660 (D’Aoustら,Plant Biotechnol.J. 2008,6:930−940)にクローニングした。その結果生じたプラスミドをコンストラクト番号592と名付けた。592を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスを「AGL1/592」と呼ぶ。
C2B8発現用に二つの発現カセットを含むプラスミド(コンストラクト番号595)を次のように組み立てた。コンストラクト番号592をEcoRIで消化し、平滑末端を生成させるためにKlenowフラグメントで処理し、SbfIで消化した。その結果生じたフラグメント(これは、SbfI部位と平滑末端とに挟まれた、C2B8重鎖を発現させるための完全なカセットを含む)を、前もってSbfIとSmaIで消化しておいたコンストラクト番号590に挿入した。図11Aは、植物中でC2B8を発現させるために使用したコンストラクト番号595の概略図を表す。
P19発現カセット(コンストラクト番号R472)のアセンブリ
p19タンパク質をコードするコンストラクトR472については上で説明した(「サイレンシングのサプレッサー」;図11B参照)。
植物バイオマスの調製、細菌接種材料、アグロインフィルトレーション、および収穫
ベンサミアナタバコ植物は、上述のように(「植物バイオマスの調製、接種材料、アグロインフィルトレーション、および収穫」)、温室において、16/8光周期および日中25℃/夜間20℃の温度レジーム下で生長させた。播種の3週間後に、個々の小植物を選定し、鉢に移植して、温室中、同じ環境条件下でさらに3週間生長させた。
コンストラクト番号595またはコンストラクト番号R472を保持するアグロバクテリウムを、10mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、50μg/mlカナマイシンおよび25μg/mlのカルベニシリンを補足したBBL Select APS LBブロス培地(pH5.6)中で、OD600>2.0に達するまで成長させた。使用前にアグロバクテリウム懸濁液を遠心分離し、浸潤培地(10mM MgClおよび10mM MES、pH5.6)に再懸濁し、4℃で終夜保存した。浸潤当日、培養バッチを6.7培養体積に希釈し、使用前に温めておいた。気密ステンレス鋼タンク中の細菌懸濁液に20〜40Torrの減圧下で1分間、ベンサミアナタバコの全植物体を上下逆さまにして入れた。浸潤後、植物を温室に戻し、5日間のインキュベーション期間を経てから、収穫した。浸潤は、AGL1/595株とAGL1/R472株による、比率1:1での共浸潤として行った
葉のサンプリングおよび全タンパク質抽出(機械的抽出)
インキュベーション後に、植物の地上部分を収穫し、直ちに使用した。家庭用ブレンダーにおいて、1.5体積の冷20mM NaPO(pH6.0)、0.15M NaClおよび2mMメタ重亜硫酸ナトリウムで3分間、植物組織をホモジナイズすることによって、全可溶性タンパク質を抽出した。ホモジナイゼーション後に、大きな不溶性破片を除去するために、粉砕された植物材料のスラリーをMiraclothで濾過した。1M HClの添加によって抽出物のpHを4.8に調節し、非可溶性材料を、18000gで15分間(4℃)の遠心分離によって除去した。上清を集め、2MのTris塩基でpHを8.0に調節した。4℃、18000gで15分間の遠心分離によって不溶物を除去し、粗抽出物(上清)を集めた。清澄化粗抽出物のタンパク質含有量は、参照標準としてウシ血清アルブミンを使用するブラッドフォードアッセイ(Bio−Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)によって決定した。
細胞壁消化によるタンパク質抽出
ベンサミアナタバコ植物から葉組織を収集し、〜1cmの小片に切断した。葉小片を2.425体積の消化溶液(75mMクエン酸塩pH6.9、600mMマンニトール、1%MultifectペクチナーゼFE、1%Multifect CXG、1%Multifect B)に入れた。この調製物を浅い容器に均等に拡げ、120rpmおよび18℃のオービタルシェーカー上で16時間インキュベートした。インキュベーション後に、葉破片をナイロンフィルター(250μmメッシュ)での濾過によって除去した。抽出物を5000gで15分間(22℃)遠心分離し、上清を集め、0.65μmガラス繊維で濾過した。抽出物を0.5M Tris塩基でpH6.0に調節し、PESメンブレン0.45/0.22μmで濾過した。
硫酸アンモニウム沈殿および抗体精製
タンパク質抽出物に硫酸アンモニウムをゆっくり加えて45%飽和にした。抽出物を60分間氷上に保ち、18000gで20分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、使用時までペレットを凍結保存(−80℃)した。
凍結したタンパク質ペレットを融解し、1/10体積(沈殿前の体積との比較)のタンパク質再懸濁溶液(50mM Tris pH7.4、150mM NaCl)に懸濁した。タンパク質溶液を12000gで20分間(4℃)遠心分離することで、可溶化されなかった物質を除去した。タンパク質溶液をMabSelect Sure樹脂(GE Healthcare、カナダ国ベーダーフェ)にローディングした。カラムを10CVの50mM Tris(pH7.4)、150mM NaClで洗浄し、抗体を6CVの100mMクエン酸ナトリウム(pH3.0)で溶出させた。1/10CVの2M Tris(pH7.4)、NaCl 150mMが入っているチューブに、溶出液を1CVずつ集めた。溶出画分をそのタンパク質含有量(ブラッドフォード法によって測定)に基づいて選択し、選択した画分を合わせて、分析まで凍結保存(−80℃)した。
タンパク質定量およびSDS−PAGE分析
総タンパク質含有量は、参照標準としてウシ血清アルブミン(粗タンパク質抽出物用)または市販のリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Hoffmann−La Roche、カナダ国ミシソーガ)(精製抗体用)を使用するブラッドフォードアッセイ(Bio−Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)によって決定した。クマシー染色SDS−PAGEはLaemmli(Nature 1970,227:680−685)に記述されているとおりに行った。
ELISAによるC2B8定量
マルチウェルプレート(Immulon 2HB、ThermoLab System、マサチューセッツ州フランクリン)を、50mM炭酸塩緩衝液(pH9.6)中、4℃で、16〜18時間、2.0μg/mlのモノクローナルマウス抗ヒトIgG(Abcam、Ab9243)でコーティングした。次に、マルチウェルプレートを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の1%カゼイン(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)において、37℃で1時間インキュベートすることにより、ブロッキングした。リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Hoffmann−La Roche、カナダ国ミシソーガ)の希釈液を使って標準曲線を作成した。イムノアッセイを行う際は、マトリックス効果を排除するために、全ての希釈(対照および試料)を、モック接種材料(AGL1/R472のみ)を使って浸潤およびインキュベーションを行った植物組織から得られる植物抽出物で行った。プレートをタンパク質試料および標準曲線希釈液と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS中の0.1%Tween−20(PBS−T)で3回洗浄した後、プレートをペルオキシダーゼコンジュゲートロバ抗ヒトIgG抗体(ブロッキング溶液中に1/4000希釈)(Jackson ImmunoResearch 709−035−149)と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS−Tによる洗浄を繰り返し、プレートを、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)Sure Blueペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)と共にインキュベートした。1N HClを加えることによって反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。各試料を三重にアッセイし、濃度を標準曲線の直線部分に内挿した。
N−グリカン分析
C2B8(Rituxan(商標);50μg)を含む試料を15%SDS/PAGEで分離した。重鎖および軽鎖をクマシーブルーで明らかにし、重鎖に対応するタンパク質バンドを切り出し、小さな断片に切断した。断片を0.1M NHHCO/CHCN(1/1)の溶液600μLで3回、各15分間洗浄し、乾燥した。
ジスルフィド架橋の還元は、ゲル断片を、0.1M NHHCO中の0.1M DTT溶液600μLにおいて、56℃で45分間インキュベートすることによって行った。アルキル化は、0.1M NHHCO中の55mMヨードアセトアミド溶液600μLを室温で30分間加えることによって行った。上清を捨て、ポリアクリルアミドの断片をNHHCO 0.1M/CHCN(1/1)中でもう一度洗浄した。
次にタンパク質を、600μLの0.05M NHHCO中、7.5μgのトリプシン(Promega)により、37℃で16時間、消化した。200μLのCHCNを加え、上清を集めた。次に、ゲルの断片を200μLの0.1M NHHCOで洗浄し、次に200μL CHCNで再び洗浄し、最後に200μLのギ酸5%で洗浄した。全ての上清を合わせて凍結乾燥した。
Sep−Pack C18カートリッジでのクロマトグラフィーによって糖ペプチドをペプチドから分離した。糖ペプチドを水中の10%CHCNで特異的に溶出させた後、337nm窒素レーザーを備えたVoyager DE−Pro MALDI−TOF計器(Applied Biosystem、米国)でのMALDI−TOF−MSによって分析した。質量分析は、マトリックスとしてジヒドロ安息香酸(Sigma−Aldrich)を用いるリフレクター遅延引き出しモードで行った。
実施例11:C2B8抗体抽出収量の比較
C2B8抗体の抽出について酵素消化を機械的抽出と比較した。ベンサミアナタバコ植物にAGL1/595とAGL1/R472をアグロインフィルトレートした。6日間のインキュベーション後に、葉を収穫し、タンパク質を酵素消化または機械的抽出によって抽出した。抽出は2回行い、その結果生じた抽出物を、体積、タンパク質濃度および抗体(C2B8)含有量について比較した。結果を表16に示す。
[表16]細胞壁の機械的破壊(ブレンダー抽出)と酵素消化についての抽出収量の比較
Figure 0006092840
700gのバイオマスから、機械的抽出は平均1440mlのタンパク質抽出物を生成したのに対して、消化は2285mlのタンパク質抽出物を生成した。C2B8抗体のパーセンテージは、ブレンダーで生産された抽出物(平均値は抽出されたタンパク質の3.49%)よりも、消化からの抽出物の方が高かった(平均値は抽出されたタンパク質の479%)。総合すると、抽出物の体積が多く、かつ抽出物中に見いだされる抗体の濃度が高いことから、消化(240.75mg C2B8/kg新鮮重量)の方が機械的抽出(175.95mg C2B8/kg新鮮重量)より、抽出収量は37%高くなる。
実施例13:精製C2B8抗体の比較(タンパク質内容物)
C2B8抗体を、実施例10で述べたように、アフィニティークロマトグラフィーによって抽出物から精製した。機械的抽出または消化によって得られた抽出物から精製された産物を、そのタンパク質内容物に基づいて比較した。各抽出ロットから精製された抗体の電気泳動プロファイルを図12に示す。これらの結果は、ブレンダー抽出または細胞壁消化から精製された産物のプロファイルが類似していることを示している。
実施例14:精製C2B8抗体の比較(N−グリコシル化)
タンパク質のN−グリコシル化の本質は、N−X−S/T配列(ここで、Nはアスパラギンであり、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、S/Tはセリンまたはスレオニンである)を有する分泌タンパク質のアスパラギン上の複合型グリカン構造の付加にある。前駆体グリカンは、タンパク質の翻訳に際し、早期に、小胞体において付加され、それらが分泌経路を移行する間に、N−グリカンは成熟を起こす。小胞体(ER)中の高マンノース型N−グリカンから始まる植物におけるN−グリカン成熟には、グルコース残基の付加および除去、遠位にあるマンノースの除去、ならびにN−アセチルグルコサミン、キシロース、フコースおよびガラクトース残基の付加が含まれる。植物におけるN−グリカン成熟については、Gomordらが、「Post−translational modification of therapeutic proteins in plants」(Curr.Opin.Plant Biol. 2004,7:171−181)に記載している。N−グリコシル化経路の酵素は、分泌経路の各コンパートメント中の正確な場所、すなわち小胞体、シスゴルジ、中間ゴルジおよびトランスゴルジに配置されている。それゆえにタンパク質のN−グリコシル化パターンは、抽出の瞬間におけるその位置に依存して異なるであろう。本発明者らは、ベンサミアナタバコのアグロインフィルトレーションを使って生産された抗体が、アポプラストへのターゲティングにもかかわらず、一定の比率で高マンノース型の未熟N−グリカンを保持することを、以前に観察していた(Vezinaら,Plant Biotechnol.J. 2009 7:442−455)。同様の観察が、他でも報告されている(Sriramanら,Plant Biotechnol.J. 2004,2,279−287)。どちらの場合も、一定比率の抗体上に未熟N−グリカンが存在することは、抽出の瞬間に分泌経路の初期コンパートメント中に抗体が存在した結果と解釈された。
下記の研究では、細胞壁消化による分泌糖タンパク質の抽出が、複合型N−グリカンを保持する組換えタンパク質を優先的に抽出しているかどうかを調べた。アポプラストに分泌される抗体および他の糖タンパク質は、その成熟が完了したN−グリカンを保持していると予想される。成熟N−グリカンは、ほとんどの場合、末端N−アセチルグルコサミンまたはガラクトース残基を保持し、複合型N−グリカンとも呼ばれる。これに対して、主に分泌経路の途中にあるタンパク質上に見いだされる未熟N−グリカンは、末端マンノース残基を含んでいる。C2B8(Rituxan(商標))上のN−グリカンの高いマンノース含有量は、血流における低下した半減期と関連付けられている(Kandaら,Glycobiology 2006,17:104−118)。この点で、複合型N−グリカンを保持するアポプラスト糖タンパク質の植物からの抽出に有利に働きうる抽出方法は望ましいであろう。
精製C2B8抗体のN−グリコシル化の比較分析を実施例10で述べたように行った。これらの結果は、消化されたバイオマスから精製された抗体では、オリゴマンノシドN−グリカンの比率が有意に低いこと(図13A)と、それに伴う当然の結果として、複合型N−グリカンの比率が有意に高いこと(図13B)とを実証している。
細胞壁消化による抽出は、修飾成熟N−グリカンを保持する糖タンパク質の回収を有利にするために、WO20008/151440(「Modifying glycoprotein production in plants」;これは出典明示により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、糖タンパク質とN−グリコシル化プロファイルを修飾するための1つ以上の酵素とを共発現する植物にも、適用することができるだろう。例えば成熟N−グリカンは、キシロース残基およびフコース残基が少ないか、キシロース残基およびフコース残基が除去されていてもよい。
N−グリコシル化を修飾するための方法は、目的のタンパク質を、ベータ−1.4ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT;WO20008/151440の配列番号14として記載)、例えば限定するわけではないが哺乳動物GalTまたはヒトGalT(ただし他の供給源に由来するGalTも使用しうる)をコードするヌクレオチド配列と共に共発現させることを伴いうる。GalTの触媒ドメイン(例えばWO20008/151440に記載の配列番号14のヌクレオチド370〜1194)を、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GNT1;例えばWO20008/151440に記載の配列番号17のヌクレオチド34〜87を含むもの)のCTSドメインに融合して、GNT1−GalTハイブリッド酵素を生産してもよい。このハイブリッド酵素を、目的の超構造体タンパク質をコードする配列と共発現させることができる。さらには、目的の超構造体をコードする配列を、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT−III;WO20008/151440に記載の配列番号16)をコードするヌクレオチドと共発現させることもできる。哺乳動物GnT−IIIまたはヒトGnT−III、他の供給源に由来するGnT−IIIも使用することができる。さらに、GnT−IIIに融合されたGNT1のCTSを含む、GNT1−GnT−IIIハイブリッド酵素(WO20008/151440に記載の配列番号26)も使用しうる。
実施例15:植物細胞壁を弛緩させるための植物バイオマスの処理
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(H1/CA07)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後5日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、実施例4に従って、75mMクエン酸塩、500mM NaCl(pH6.1)緩衝液を使用し、0、25、100または250mM EDTAを含むように改変を加えて、消化した。細胞破片の粗濾過および遠心分離は実施例4で述べたように行った。この遠心分離からの上清を、タンパク質濃度および血球凝集活性について試験した。植物を、タンパク質の放出に対するEDTAの効果を例証するために、実施例4で述べたように、消化酵素ありまたは消化酵素なしで処理した。消化緩衝液に添加した酵素が約0.8mg/mlを占めることに注目すべきである。図15は、植物にEDTAを添加すると、酵素なしで、アポプラストからタンパク質を抽出することができ、それがH1 VLPを含有することを示している。
図15は、EDTAが、H1 VLPの放出を強化する効果を有することも示しており、最大効果は20〜100mMにある。EDTAは、植物細胞壁の重要な構成成分であるCa++のスカベンジャーとして作用することで、植物細胞壁の解重合を助けると考えられる。
実施例16:植物細胞壁を弛緩させるための植物バイオマスの処理
ベンサミアナタバコ植物に、実施例1で述べたように、目的のヘマグルチニン(H1/CA07)を発現するコンストラクトを保有するアグロバクテリウムAGL1株をアグロインフィルトレートした。浸潤後5日目に葉を収集し、〜1cmの小片に切断し、実施例4に従って消化した。対照消化緩衝液は、1.0%(v/v)MultifectペクチナーゼFE、1.0%(v/v)Multifect CX CGおよび/または1.0%(v/v)Multifect CX B(いずれもGenencor製)を、それぞれ600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、25mM EDTA、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液の溶液中に含有し、1:2.5(w/v)のバイオマス:消化緩衝液比で使用した。同じ消化緩衝液中に3%MultifectペクチナーゼFE(v/v)を含有する比較消化を行った。細胞破片の粗濾過および遠心分離は実施例4で述べたとおりとした。この遠心分離からの上清をタンパク質濃度および血球凝集活性について調べた。表17は、ペクチナーゼ構成要素がタンパク質およびHA VLPの放出を可能にすることを示している。
表17は、セルロース特異的およびヘミセルロース特異的酵素を使用して、または使用せずに、3%ペクチナーゼで植物を処理した時のタンパク質およびVLPの放出を示している。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイを使って測定した。HA活性は、赤血球を凝集させる最低量の抽出可能なタンパク質の逆数として表す。
[表17]
Figure 0006092840
実施例17:酵素浸潤による葉および植物の処理
酵素浸潤は全葉からのVLP放出を増加させうる。このアプローチを検討するために、減圧下または加圧下で細胞壁弛緩組成物を浸潤させた葉からVLPを抽出した。
VLP抽出
植物に、実施例1で述べたように、AGL1/#685をアグロインフィルトレートした。葉組織は、ベンサミアナタバコ植物から、浸潤後5日目または7日目に収集した。全植物体および/または全葉を、600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中に1つ以上のペクチナーゼ(1%〜4%(v/v)のBiocatalyst 162L、1%〜4%(v/v)のBiocatalysts 444L、またはそれぞれ1%〜4%(v/v)のそれらの組み合わせ、1%〜4%(v/v)のBiocatalysts PDN33を含む酵素溶液に、比が1:2.5(w/v)の新鮮バイオマス:消化緩衝液を使って、浸漬するか、または浸潤(アグロインフィルトレーションについて上述したものと同様の条件を使用;「植物バイオマスの調製、接種材料、アグロインフィルトレーション、および収穫」参照)に付した。全植物体または全葉を、600mMマンニトール、75mMクエン酸塩、0.04%重亜硫酸ナトリウム(pH6.0)緩衝液中にペクチナーゼ(1%〜4%(v/v)のBiocatalyst 162Lおよび1%〜4%(v/v)のBiocatalysts 444L)およびセルラーゼ(Multifect CX CGおよび/またはMultifect CX B(Genencor)、それぞれ1%〜4%(v/v))を含む酵素溶液でも、比が1:2.5(w/v)の新鮮バイオマス:消化緩衝液を使って、浸漬または浸潤させた。ある例では、Biocatalyst 162Lを1%になるように加え、Biocatalyst 44Lを4%444Lになるように加えたが、消化期間に応じてこれらのパーセンテージを変更しうることは、当業者には理解されるであろう。ペクチナーゼ活性が高いほど、消化期間は短い。また当業者には、この手法のペクチン分解要件が満たされる限り、当技術分野で知られる広範囲にわたる酵素を使用しうることも理解される。緩衝液は5.0〜6.5のpHまたはその間の任意の量に調節して、消化の継続期間中はそのままにしておくか、または緩衝溶液の添加によって初期値(すなわち5.0〜6.5の範囲またはその間の任意の量)が保たれるようにpHを調節することができる。さらにまた、場合によっては、緩衝液に、さまざまな酸化防止剤、例えばメタ重亜硫酸塩などを補足してもよい。酵素溶液からの酵素は、減圧浸潤または加圧浸潤によって全植物体または全葉に浸潤させる。
酵素浸潤後は全葉および/または全植物体を消化緩衝液中に放置して手順の最後に振とうするか、全消化期間にわたってゆっくり振とう(容器のタイプに応じて40〜80rpm)することができる。異なる撹拌は、特に脈管組織(葉脈)については、異なるレベルの消化につながるだろう。酵素を浸潤させていない葉は長時間(実施例4で概説したように15時間法)を要し、より強い撹拌が要求される。
図16Aは、酵素溶液を浸潤させた葉からは、同じ酵素溶液中に葉を浸漬して振とうしただけの場合の16時間(時間t)後と同じぐらいのVLP(溶液へのHA放出)が、4時間(時間0.25t)で放出されることを示している。反復浸潤が長時間の単回浸潤ステップより有益であることも観察された(未掲載の結果)。酵素浸潤は、同じ酵素溶液に浸漬して振とうするが浸潤はさせない葉と比較して、同じ量のHA/VLPを4分の1の消化時間で放出させることを可能にする。
HA放出を決定した場合、酵素浸潤は、切断葉より全葉の方が効果的であることも観察された(図16B参照)。酵素浸潤は、全葉または全植物体を使用することができ、それゆえに植物または植物材料を切断するステップを省略することができるので、より簡単な抽出プロセスを可能にする。
葉組織の液化は、ペクチナーゼのみを使用して得ることができ、効率のよいHA/VLPの放出が起こる。ペクチナーゼの酵素浸潤も、ペクチナーゼのみで行う方が上手く機能し、Biocatalyst 444Lのみの場合と比較して、高い相対的ポリガラクツロナーゼ含有量を有する酵素(例えばBiocatalyst 162L/144L)では特にそうである(図16C)。どのペクチナーゼでも、それらがポリガラクツロニダーゼ活性もしくはペクチンリアーゼ活性またはその両方を有する限り、単独で、または互いに組み合わせて使用することができる。適切なペクチナーゼは、例えば「Biocatalyst 162L」および/または「Biocatalyst 144L」である。酵素浸潤は、より簡単な消化溶液、例えばペクチナーゼのみを含む溶液の使用を可能にする。理論に束縛されることは望まないが、この溶液はプロトプラストにはそれほど有害でないだろう。
図16Dからわかるように、適正な緩衝液および酵素混合物を使えば、HA/VLPの酵素支援抽出は、ほぼ中性のpHで起こりうる。それゆえに、酵素浸潤の使用は、pH感受性タンパク質の精製を可能にする。
全ての引例は、個々の刊行物が出典明示により本明細書に組み込まれることを個別に明記したかのように、そして本明細書に完全に記載されているかのように、出典明示により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の引用を、それらの参考文献が本発明に対する先行技術であるとの自認であると見なしてはならない。
現時点において好ましい本発明の実施形態を、例示のために、いくつか説明した。本発明は、実施例および図面を参照して上に実質的に記載されている、全ての実施形態、改変および変形を包含する。特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなくいくつかの変形および改変を加えうることは、当業者には明白であるだろう。そのような改変の例には、実質的に同じ方法で同じ結果が達成されるように、本発明の任意の態様を既知の等価物で置き換えることが含まれる。

Claims (22)

  1. 植物または植物質から超構造体タンパク質またはウイルス様粒子(VLP)を回収する方法であって、
    a.アポプラスト局在性VLPまたは75〜1500kDaの分子量を有するアポプラスト局在性超構造体タンパク質を含む植物または植物質を取得すること、
    b.細胞壁が弛緩するように植物または植物質を20〜250mM EDTAまたはEGTAを含む組成物で処理して、弛緩した細胞壁を有する植物または植物質を生産し、それによって、アポプラスト局在性超構造体タンパク質またはアポプラスト局在性VLPを放出して植物インキュベーション混合物を生産し、植物インキュベーション混合物を分離して植物細胞画分およびアポプラスト画分を生産すること、および
    c.アポプラスト画分から超構造体タンパク質またはVLPを回収すること
    を含む方法。
  2. 処理ステップ(ステップb)がソニケーションをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 処理ステップ(ステップb)において組成物が酵素混合物をさらに含む、請求項1に記載の方法であって、酵素混合物を酵素浸潤によって植物または植物質に導入して、弛緩した細胞壁を有する植物または植物質を生産するものである、方法
  4. 処理ステップ(ステップb)が繰り返される、請求項1に記載の方法。
  5. 酵素浸潤が減圧浸潤または加圧浸潤の群から選択される、請求項に記載の方法。
  6. 酵素混合物が、1つもしくは2つ以上のペクチナーゼ、1つもしくは2つ以上のセルラーゼ、または1つもしくは2つ以上のペクチナーゼと1つもしくは2つ以上のセルラーゼを含む、請求項に記載の方法。
  7. 組成物が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項に記載の方法。
  8. 組成物が、リパーゼ、プロテアーゼまたはペクチナーゼの1つ以上を含まない、請求項に記載の方法。
  9. 取得ステップ(ステップa)において、植物が、タンパク質、タンパク質ロゼット、タンパク質複合体、プロテアソーム、メタボロン、転写複合体、組換え複合体、光合成複合体、膜輸送複合体、核膜孔複合体、タンパク質ナノ粒子、糖タンパク質、抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖モノクローナル抗体、ウイルス様粒子、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質、キメラタンパク質、キメラタンパク質複合体、キメラタンパク質ナノ粒子、キメラ糖タンパク質、キメラ抗体、キメラモノクローナル抗体、キメラ一本鎖モノクローナル抗体、およびキメラヘマグルチニンの群から選択されるタンパク質または超構造体タンパク質をコードする核酸配列で形質転換され、植物または植物質が収穫される、請求項1に記載の方法。
  10. 核酸が一過性に植物に導入される、請求項9に記載の方法。
  11. 核酸が植物のゲノム内に安定に組み込まれる、請求項9に記載の方法。
  12. 取得ステップ(ステップa)において、植物を生長させ、植物または植物質が収穫される、請求項1に記載の方法。
  13. 核酸がモノクローナル抗体またはインフルエンザヘマグルチニンをコードする、請求項9に記載の方法。
  14. 構造体タンパク質がノイラミニダーゼもMタンパク質も含まない、請求項1に記載の方法。
  15. 植物質が葉および培養植物細胞の群から選択される、請求項1に記載の方法。
  16. 植物質が全葉を含む、請求項1に記載の方法。
  17. d)アポプラスト画分から超構造体タンパク質またはVLPを精製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  18. d)精製ステップが、深層濾過を使ってアポプラスト画分を濾過することで、清澄化抽出物を生産し、次にサイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換樹脂もしくはアフィニティークロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせを使って清澄化抽出物のクロマトグラフィーを行うことを含む、請求項17に記載の方法。
  19. 処理ステップ(ステップb)において分離が、遠心分離、深層濾過、またはそれらの組み合わせによって行われる、請求項に記載の方法。
  20. 酵素浸潤が中性pHで行われる、請求項に記載の方法。
  21. 1つもしくは2つ以上のペクチナーゼの濃度が0.01%(v/v)〜2.5%(v/v)である、請求項6に記載の方法。
  22. 1つもしくは2つ以上のセルラーゼの濃度が0.1%(w/v)〜5%(w/v)である、請求項6に記載の方法。
JP2014500218A 2011-03-23 2012-03-23 植物由来タンパク質を回収する方法 Active JP6092840B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201161466889P 2011-03-23 2011-03-23
US61/466,889 2011-03-23
PCT/CA2012/050180 WO2012126123A1 (en) 2011-03-23 2012-03-23 Method of recovering plant-derived proteins

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2014510087A JP2014510087A (ja) 2014-04-24
JP2014510087A5 JP2014510087A5 (ja) 2015-03-26
JP6092840B2 true JP6092840B2 (ja) 2017-03-08

Family

ID=46878587

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014500218A Active JP6092840B2 (ja) 2011-03-23 2012-03-23 植物由来タンパク質を回収する方法

Country Status (9)

Country Link
US (1) US9815873B2 (ja)
EP (1) EP2688903B1 (ja)
JP (1) JP6092840B2 (ja)
CN (2) CN110041397A (ja)
AU (2) AU2012231717A1 (ja)
CA (1) CA2831000C (ja)
ES (1) ES2682066T3 (ja)
TW (1) TWI620816B (ja)
WO (1) WO2012126123A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
PL2480658T3 (pl) 2009-09-22 2017-12-29 Medicago Inc. Sposób otrzymywania VLP pochodzenia roślinnego
TWI620816B (zh) 2011-03-23 2018-04-11 苜蓿股份有限公司 植物衍生蛋白回收方法
US11390878B2 (en) 2011-09-30 2022-07-19 Medicago Inc. Increasing protein yield in plants
EP2978848B1 (en) 2013-03-28 2020-05-06 Medicago Inc. Influenza virus-like particle production in plants
RU2699982C2 (ru) 2014-01-10 2019-09-11 Медикаго Инк. Энхансерные элементы cpmv
JP6599354B2 (ja) 2014-03-27 2019-10-30 メディカゴ インコーポレイテッド 改変されたcpmvエンハンサーエレメント
FR3054547B1 (fr) * 2016-07-29 2020-06-05 Angany Inc. Particules pseudo-virales et leurs utilisations
CN110483616B (zh) * 2019-07-31 2021-06-04 中国农业科学院农产品加工研究所 从感染病原菌的植物组织中分离病原菌分泌的质外体效应蛋白的方法
EP3808854A1 (de) * 2019-10-17 2021-04-21 eleva GmbH Verfahren zur gewinnung von material von pflanzenzelloberflächen

Family Cites Families (69)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4945050A (en) 1984-11-13 1990-07-31 Cornell Research Foundation, Inc. Method for transporting substances into living cells and tissues and apparatus therefor
US5100792A (en) 1984-11-13 1992-03-31 Cornell Research Foundation, Inc. Method for transporting substances into living cells and tissues
US5036006A (en) 1984-11-13 1991-07-30 Cornell Research Foundation, Inc. Method for transporting substances into living cells and tissues and apparatus therefor
WO1986003224A1 (en) 1984-11-29 1986-06-05 Scripps Clinic And Research Foundation Polypeptides and antibodies related to deglycosylated viral glycoproteins
US6846968B1 (en) * 1988-02-26 2005-01-25 Large Scale Biology Corporation Production of lysosomal enzymes in plants by transient expression
US5232833A (en) 1988-09-14 1993-08-03 Stressgen Biotechnologies Corporation Accumulation of heat shock proteins for evaluating biological damage due to chronic exposure of an organism to sublethal levels of pollutants
US6403865B1 (en) 1990-08-24 2002-06-11 Syngenta Investment Corp. Method of producing transgenic maize using direct transformation of commercially important genotypes
DE69213804T2 (de) 1991-03-28 1997-03-27 Rooperol Na Nv Zusammensetzungen von Phytosterolen mit Phytosterolinen als Immunmodulatoren
UA48104C2 (uk) 1991-10-04 2002-08-15 Новартіс Аг Фрагмент днк, який містить послідовність,що кодує інсектицидний протеїн, оптимізовану для кукурудзи,фрагмент днк, який забезпечує направлену бажану для серцевини стебла експресію зв'язаного з нею структурного гена в рослині, фрагмент днк, який забезпечує специфічну для пилку експресію зв`язаного з нею структурного гена в рослині, рекомбінантна молекула днк, спосіб одержання оптимізованої для кукурудзи кодуючої послідовності інсектицидного протеїну, спосіб захисту рослин кукурудзи щонайменше від однієї комахи-шкідника
US6326470B1 (en) 1997-04-15 2001-12-04 The Penn State Research Foundation Enhancement of accessibility of cellulose by expansins
US5762939A (en) 1993-09-13 1998-06-09 Mg-Pmc, Llc Method for producing influenza hemagglutinin multivalent vaccines using baculovirus
US6020169A (en) 1995-07-20 2000-02-01 Washington State University Research Foundation Production of secreted foreign polypeptides in plant cell culture
ES2326705T3 (es) * 1995-09-14 2009-10-16 Virginia Tech Intellectual Properties, Inc. Produccion de enzimas lisosomicas en sistemas de expresion basados en plantas.
US20010006950A1 (en) 1998-02-11 2001-07-05 Juha Punnonen Genetic vaccine vector engineering
US6489537B1 (en) 1998-08-07 2002-12-03 The Trustees Of The University Of Pennsylvania Phytochelatin synthases and uses therefor
JP2002522559A (ja) 1998-08-11 2002-07-23 ラージ スケール バイオロジー コーポレイション 植物組織の間質液からタンパク質を回収するための方法
AU2594300A (en) 1998-12-23 2000-07-12 Samuel Roberts Noble Foundation, Inc., The Plant transformation process
FR2791358B1 (fr) 1999-03-22 2003-05-16 Meristem Therapeutics Promoteurs chimeriques d'expression, cassettes d'expression, plasmides, vecteurs, plantes et semences transgeniques les contenant et leurs methodes d'obtention
NZ513993A (en) 1999-04-21 2001-09-28 Samuel Roberts Noble Found Inc Plant transformation process
US7125978B1 (en) 1999-10-04 2006-10-24 Medicago Inc. Promoter for regulating expression of foreign genes
US7449188B2 (en) 2001-01-18 2008-11-11 Vlaams Interuniversitair Instituut Voor Biotechnologie Recombinant oligometric protein complexes with enhanced immunogenic potential
DE10143205A1 (de) * 2001-09-04 2003-03-20 Icon Genetics Ag Verfahren zur Proteinproduktion in Pflanzen
US20050037420A1 (en) 2001-09-14 2005-02-17 Mei-Yun Zhang Immunoglobulin having particular framework scaffold and methods of making and using
EP3009507B1 (en) 2002-02-13 2020-06-24 Wisconsin Alumini Research Foundation Signal for packaging of influenza virus vectors
AU2003219760A1 (en) 2002-02-14 2003-09-04 Novavax, Inc. Optimization of gene sequences of virus-like particles for expression in insect cells
CA2819867A1 (en) 2002-03-19 2003-09-25 Stichting Dienst Landbouwkundig Onderzoek Gntiii (udp-n-acetylglucosamine:beta-d mannoside beta (1,4)-n-acetylglucosaminyltransferase iii) expression in plants
WO2004098530A2 (en) 2003-05-05 2004-11-18 Dow Agrosciences Llc Stable immunoprophylactic and therapeutic compositions derived from transgenic plant cells and methods for production
US7132291B2 (en) 2003-05-05 2006-11-07 Dow Agro Sciences Llc Vectors and cells for preparing immunoprotective compositions derived from transgenic plants
CA2816222A1 (en) 2003-06-16 2005-03-03 Medimmune Vaccines, Inc. Influenza hemagglutinin and neuraminidase variants
US8592197B2 (en) 2003-07-11 2013-11-26 Novavax, Inc. Functional influenza virus-like particles (VLPs)
US7901691B2 (en) 2004-08-13 2011-03-08 Council Of Scientific And Indistrial Research Chimeric G protein based rabies vaccine
EP2374892B1 (en) 2005-04-29 2018-02-14 University of Cape Town Expression of viral proteins in plants
EP1909829A4 (en) 2005-07-19 2009-11-11 Dow Global Technologies Inc RECOMBINANT GRIP VACCINES
US7871626B2 (en) 2005-08-04 2011-01-18 St. Jude Children's Research Hospital Modified influenza virus for monitoring and improving vaccine efficiency
PT1937301E (pt) 2005-10-18 2015-09-14 Novavax Inc Partículas idênticas a vírus (vlps) da gripe funcionais
ES2514316T3 (es) 2005-11-22 2014-10-28 Novartis Vaccines And Diagnostics, Inc. Partículas similares a virus (VLPs) de Norovirus y Sapovirus
BRPI0707733B1 (pt) 2006-02-13 2019-12-31 Fraunhofer Usa Inc antígeno isolado, composição de vacina, uso da referida composição e método para produção de uma proteína de antígeno
US20070250003A1 (en) 2006-04-03 2007-10-25 Bare Rex O Fluid activated retractable safety syringe
AR060565A1 (es) 2006-04-21 2008-06-25 Dow Agrosciences Llc Vacuna para la gripe aviaria y metodos de uso
US8778353B2 (en) 2006-05-01 2014-07-15 Technovax, Inc. Influenza virus-like particle (VLP) compositions
DK2023952T3 (en) 2006-05-18 2015-10-19 Epimmune Inc Induction of immune responses to influenza virus using polypeptide and nucleic acid compositions
EP2029755A1 (en) 2006-05-22 2009-03-04 Plant Bioscience Limited Bipartite system, method and composition for the constitutive and inducible expression of high levels of foreign proteins in plants
US20070286873A1 (en) 2006-05-23 2007-12-13 Williams John V Recombinant Influenza H5 Hemagluttinin Protein And Nucleic Acid Coding Therefor
RU2404057C2 (ru) 2006-07-13 2010-11-20 Ска Хайджин Продактс Аб Шов, соединяющий вместе, по меньшей мере, два рулонных материала
WO2008088813A1 (en) 2007-01-17 2008-07-24 Lerner Medical Devices, Inc. Fiber optic phototherapy device
US7730950B2 (en) 2007-01-19 2010-06-08 Halliburton Energy Services, Inc. Methods for treating intervals of a subterranean formation having variable permeability
US20110008837A1 (en) 2007-06-15 2011-01-13 Marc-Andre D-Aoust Modifying glycoprotein production in plans
KR100964462B1 (ko) 2007-07-10 2010-06-16 성균관대학교산학협력단 형질전환 식물 유래의 조류독감 바이러스 백신 및 그 제조방법
CA2615372A1 (en) * 2007-07-13 2009-01-13 Marc-Andre D'aoust Influenza virus-like particles (vlps) comprising hemagglutinin
CA2696764A1 (en) 2007-08-20 2009-02-26 Fraunhofer Usa, Inc. Prophylactic and therapeutic influenza vaccines, antigens, compositions, and methods
MX2010007962A (es) 2007-11-27 2010-11-10 Medicago Inc Particulas tipo virus de influenza recombinante (vlp) producidas en plantas transgenicas que expresan hemaglutinina.
US8933013B2 (en) 2007-12-05 2015-01-13 Nono Inc. Co-administration of an agent linked to an internalization peptide with an anti-inflammatory
EP2235165A1 (en) * 2007-12-21 2010-10-06 Cytos Biotechnology AG Process for clarifying cell homogenates
JP2011508034A (ja) 2007-12-28 2011-03-10 ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ 茶から香気成分を回収する方法
US8799801B2 (en) 2008-01-16 2014-08-05 Qualcomm Incorporated Interactive ticker
KR101956910B1 (ko) 2008-01-21 2019-03-12 메디카고 인코포레이티드 헤마글루티닌을 발현하는 트랜스제닉 식물에서 생산된 재조합 인플루엔자 바이러스-유사 입자(VLPs)
US8771703B2 (en) 2008-07-08 2014-07-08 Medicago Inc. Soluble recombinant influenza antigens
CN101626276A (zh) 2008-07-10 2010-01-13 华为技术有限公司 广告替换方法、装置及系统
MX370690B (es) 2008-07-18 2019-12-19 Medicago Inc Epitopo de inmunizacion de nuevo virus de la influenza.
WO2010025285A1 (en) 2008-08-27 2010-03-04 Arizona Board Of Regents For And On Behalf Of Arizona State University A dna replicon system for high-level rapid production of vaccines and monoclonal antibody therapeutics in plants
WO2010042551A2 (en) 2008-10-06 2010-04-15 Genvault Corporation Methods for providing cellular lysates from cell wall-containing samples
WO2010077712A1 (en) 2008-12-09 2010-07-08 Novavax, Inc. Bovine respiratory syncytial virus virus-like particle (vlps)
JP2012516452A (ja) 2009-01-30 2012-07-19 エイディーライフ インコーポレイティッド 立体構造的に動的なペプチド
AU2010259984B2 (en) 2009-06-10 2017-03-09 Arbutus Biopharma Corporation Improved lipid formulation
US10272148B2 (en) 2009-06-24 2019-04-30 Medicago Inc. Chimeric influenza virus-like particles comprising hemagglutinin
PL2480658T3 (pl) 2009-09-22 2017-12-29 Medicago Inc. Sposób otrzymywania VLP pochodzenia roślinnego
DK2635257T3 (en) 2010-11-05 2017-09-04 Novavax Inc Rabies virus-like glycoprotein particles (VLP)
TWI526539B (zh) 2010-12-22 2016-03-21 苜蓿股份有限公司 植物中生產類病毒顆粒(vlp)的方法及以該方法生產之vlp
TWI620816B (zh) 2011-03-23 2018-04-11 苜蓿股份有限公司 植物衍生蛋白回收方法

Also Published As

Publication number Publication date
CA2831000A1 (en) 2012-09-27
EP2688903A4 (en) 2014-10-08
CA2831000C (en) 2022-02-22
JP2014510087A (ja) 2014-04-24
ES2682066T3 (es) 2018-09-18
CN110041397A (zh) 2019-07-23
WO2012126123A8 (en) 2012-12-20
EP2688903A1 (en) 2014-01-29
AU2017202473B2 (en) 2018-12-20
TW201245443A (en) 2012-11-16
AU2017202473A1 (en) 2017-05-04
AU2012231717A1 (en) 2013-09-26
CN103502261A (zh) 2014-01-08
WO2012126123A1 (en) 2012-09-27
US20140024104A1 (en) 2014-01-23
US9815873B2 (en) 2017-11-14
TWI620816B (zh) 2018-04-11
EP2688903B1 (en) 2018-06-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5551780B2 (ja) 植物由来のタンパク質を調製する方法
JP6092840B2 (ja) 植物由来タンパク質を回収する方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150205

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150205

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160209

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160506

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160708

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160808

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170209

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6092840

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250