JP6089718B2 - 液状物の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液状食品などの液状物の処理方法に関する。本発明の処理方法は、液状物の殺菌、液状物中に含まれる酵素の失活、液状物の品質向上などを目的として行われるものである。
従来、二酸化炭素を用いて食品や飲料などの殺菌を行うことが知られている。この際、使用される二酸化炭素は気体状態のものだけでなく、超臨界状態(液体と気体の中間の状態)のものも使用される。また、二酸化炭素をマイクロナノバブルにすることによって殺菌をする方法も知られている。このようなマイクロナノバブルを利用した殺菌方法としては、特許文献1や特許文献2に記載されている方法が知られている。
特許文献1には、耐圧容器内において、二酸化炭素と液体との存在下に負圧を利用して発生した二酸化炭素の微小気泡を、0.2〜2MPa下に微生物又は酵素を含む液状食品に接触させ、これにより食品中の微生物の殺菌又は酵素の失活を行うことを特徴とする食品の処理方法が記載されている。
また、特許文献2には、微生物の殺菌と酵素の失活との少なくともいずれかの処理を液状の被処理物に対して行う処理方法であって、第一温度且つ第一圧力のもとで二酸化炭素の微細気泡を前記被処理物と混合する気泡混合工程と、前記第一温度より高い第二温度且つ前記第一圧力よりも高い第二圧力のもとで前記被処理物を保持する処理工程とを備えることを特徴とする処理方法が記載されている。
国際公開WO2009/016998 特開2012-19729号公報
清酒のような食品では、少しの加熱でも品質の劣化が起きることがある。このため、このような食品に対して品質を劣化させることなく、短時間で殺菌等を行う方法が望まれていた。本発明は、このような背景の下になされたものであり、液状物の品質を劣化させることなく、殺菌等を行う手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特許文献2に記載された二酸化炭素をマイクロナノバブルとすることによって殺菌する方法(以下、「MNB-CO2処理」という)において、第二温度を65℃にすることにより極めて短時間で液状物中に含まれる酵素を失活できることを見出した(図2)
また、MNB-CO2処理において、第二温度を65℃とした処理を行った清酒は、標準的な熱処理(65℃、3分)を行った清酒よりも香りや味が優れていることも見出した(図5〜8)。
更に、MNB-CO2処理において、第二温度を65℃とした処理により、清酒中の有機酸等の組成が著しく変化すること(リン酸の減少、乳酸の増加、コハク酸の増加、フマル酸の減少、酢酸の減少、ピログルタミン酸の増加等)も見出した(図9〜12)。特に、コハク酸の増加はMNB-CO2処理において、第二温度を65℃とした処理に特異的にみられたもので、標準的な熱処理ではもちろん、65℃以外のMNB-CO2処理でもみられなかったものである。
本発明は、以上の知見に基づき、完成されたものである。
即ち、本発明者は、以下の(1)〜(7)を提供する。
(1)第一温度且つ第一圧力のもとで二酸化炭素の微細気泡を液状物と混合する気泡混合工程と、前記気泡混合工程後の液状物を前記第一温度より高い第二温度且つ前記第一圧力よりも高い第二圧力のもとで保持する処理工程とを有する液状物の処理方法であって、前記第二温度が60℃以上であることを特徴とする液状物の処理方法。
(2)前記第二温度が、60℃以上75℃以下であることを特徴とする(1)に記載の液状物の処理方法。
(3)前記第二温度且つ第二圧力のもとで液状物を保持する時間が、35秒以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の液状物の処理方法。
(4)前記液状物が、液状食品であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の液状物の処理方法。
(5)前記液状物が、エタノールを含有する液状食品であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の液状物の処理方法。
(6)前記液状物が、アルコール飲料の製造中間物であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の液状物の処理方法。
(7)前記液状物が、火入れ前の清酒及び醸造酒、亜硫酸若しくは亜硫酸塩添加前のワイン、又はろ過若しくは加熱処理前のビール系飲料であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の液状物の処理方法。
本発明の処理方法は、液状物の品質を低下させることなく、あるいは液状物の品質を向上させて、極めて短時間で、液状物の殺菌や液状物中の酵素の失活を行うことができる。
本発明の処理方法に用いる装置の構成例を示す模式図である。 MNB-CO2処理において、第二温度を65℃とした場合における第二容器の滞留時間と酵素の残存活性との関係を示す図である。比較のため、図中には、65℃で熱処理のみを行なった場合の加熱時間と酵素の残存活性との関係も示した。 MNB-CO2処理において、第二温度を45℃とした場合における第二容器の滞留時間と酵素の残存活性との関係を示す図である。比較のため、図中には、45℃で熱処理のみを行なった場合の加熱時間と酵素の残存活性との関係も示した。 MNB-CO2処理において、第二温度を55℃とした場合における第二容器の滞留時間と酵素の残存活性との関係を示す図である。比較のため、図中には、55℃で熱処理のみを行なった場合の加熱時間と酵素の残存活性との関係も示した。 第二温度別の清酒の香りの官能評価(被験者は3名)を示す図である。 第二温度別の清酒の味の官能評価(被験者は3名)を示す図である。 第二温度別の清酒の香りの官能評価(被験者は10名)を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒(火入れ前の清酒)及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の香りの官能評価も示した。 第二温度別の清酒の味の官能評価(被験者は10名)を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の味の官能評価も示した。 第二温度別の清酒中のリン酸及び乳酸の含有量を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の結果も示した。 第二温度別の清酒中のリンゴ酸及びコハク酸の含有量を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の結果も示した。 第二温度別の清酒中のフマル酸、酢酸、及びクエン酸の含有量を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の結果も示した。 第二温度別の清酒中のピルビン酸及びピログルタミン酸の含有量を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の結果も示した。 第二温度別の清酒中のグルコース及びイソマルトースの含有量を示す図である。比較のため、図中には、未処理の生酒及び標準的な熱処理(65℃、3分)のみを行った清酒の結果も示した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の液状物の処理方法は、第一温度且つ第一圧力のもとで二酸化炭素の微細気泡を液状物と混合する気泡混合工程と、前記気泡混合工程後の液状物を前記第一温度より高い第二温度且つ前記第一圧力よりも高い第二圧力のもとで保持する処理工程とを有する液状物の処理方法であって、前記第二温度が60℃以上であることを特徴とするものである。
この方法は、第二温度(又は第二温度とその温度での保持時間)を除いて、特許文献2(特開2012-19729号公報)と同様に行うことができる。
本発明において、液状物とは、液体に不溶の固形物が実質的に含まれない液体、又は液体に微生物や酵素、粉粒体等の液体に溶解しない微細な固形物が液体に分散して流動性のあるものを意味する。
処理対象とする液状物は、飲料水、温泉若しくは浴場の湯、プールの水、液体肥料などであってもよいが、液状食品であることが好ましい。液状食品としては、エタノールを含有するものが好ましく、例えば、アルコール飲料の製造中間物を好適な具体例として挙げることができる。食品中のエタノール存在量は特に限定されないが、液状食品中の0.1〜30質量%程度であることが好ましい。アルコール飲料の製造中間物の具体例としては、火入れ前の清酒、亜硫酸若しくは亜硫酸塩添加前のワイン、又はろ過若しくは加熱処理前のビール系飲料などを挙げることができ、これらの中でも火入れ前の清酒が好適な具体例である。
本発明において、微細気泡とは、一般に「マイクロバブル」、「マイクロナノバブル」、又は「ナノバブル」と呼ばれる気泡を意味する。「マイクロバブル」等の用語は、当業者間で広く用いられている。例えば、「マイクロバブル」という用語は、高橋正好, 化学と生物, Vol.44 No.3, p.205-207, 2006、松尾克美ら, 混相流研究の進展 I, p.279-286, 2006、M. Takahashi, J. Phys. Chem. B, 109, p.21858-21864, 2005、M. Takahashi et al., J. Phys. Chem. B, 107, p.2171-2173, 2003、H. Ohnari, Journal of MMIJ, 123, p89-96, 2007において使用されており、「マイクロナノバブル」という用語は、松尾克美ら, 混相流研究の進展 I, p.279-286, 2006、H. Ohnari, Journal of MMIJ, 123, p89-96, 2007において使用されており、「ナノバブル」という用語は、松尾克美ら, 混相流研究の進展 I, p.279-286, 2006において使用されている。従って、当業者は、本発明における微細気泡の意味を明確に理解できる。
「マイクロバブル」は10〜数十μmの気泡径を有する気泡と定義され、「マイクロナノバブル」は数百nm〜10μm前後の気泡径を有する気泡と定義され、「ナノバブル」は数百nm以下の気泡径を有する気泡と定義される(松尾克美ら, 混相流研究の進展 I, p.279-286, 2006)。本発明の微細気泡は、「マイクロバブル」、「マイクロナノバブル」、「ナノバブル」のいずれも含むので、その気泡径は数十μm以下ということになる。
微細気泡の発生方法は特に限定されない。例えば、液状物と二酸化炭素との混合物の旋回流を発生させて二酸化炭素の気泡をマイクロナノバブル化する方法(例えば、特許第3682286号公報に記載された旋回流方式の微細気泡発生器を用いる方法)や加圧溶解方式、特開2007-229674号公報に開示されたようにフリップフロップ流によって生じるラム効果を用いてマイクロナノバブルを発生させる方法でもよい。
第一温度は、通常-15℃以上50℃以下とすることができる。第一温度は、液状物が固化したり凍結したりする温度域よりも高い範囲においてより低い温度であることが好ましく、この場合には、第一温度は-5℃以上20℃以下の範囲で定められた一定の温度であることが好ましい。さらに好ましくは、第一温度は、-5℃以上10℃以下の範囲で定められた一定の温度である。
第一圧力は、通常、0.0MPa以上2.0MPa以下の範囲にある一定の圧力とすることができる。より好ましくは、第一圧力は、0.5MPa以上2.0MPa以下の範囲にある一定の圧力である。なお、本明細書では、圧力の表記としてゲージ圧を用いる。
第一温度且つ第一圧力のもとで液状物を保持する時間は特に制限されないが、通常、二酸化炭素が液状物に飽和するまで、第一温度且つ第一圧力のもとで液状物を保持する。
第二温度は、第一温度よりも高い温度で、且つ60℃以上とする。第二温度の上限は特に制限されないが、75℃以下とすることが好ましい。好ましい第二温度は65℃付近(63℃〜67℃)である。第二温度を65℃付近とした場合、それよりも低温の場合に比べ、著しく酵素不活化作用が高まるからである。また、火入れ前の清酒を処理対象とした場合、第二温度を65℃付近とすることにより、香りや味を向上させる効果もある。
第二圧力は、第一圧力よりも大きな値に設定されていればよく、例えば第一圧力を常圧(0.0MPa)に設定して動作させる場合には、第二圧力はたとえば0.1MPa以上6MPa以下の範囲で一定の圧力に設定することができる。
第二温度且つ第二圧力のもとで液状物を保持する時間は特に制限されないが、35秒以下であることが好ましく、15秒付近(13秒〜17秒)であることがより好ましい。なお、第二温度且つ第二圧力での保持時間は、極めて短い時間、例えば、1秒又はそれ以下であってもよい。また、第二温度且つ第二圧力での処理を開始するとほぼ同時にその処理を停止してもよい。
本発明の液状物の処理方法は、液状物の殺菌、液状物中に含まれる酵素の失活、液状物の品質向上などを目的とするものである。殺菌対象とする微生物の種類は特に限定されず、人体に有害な微生物、食品の品質を劣化させる微生物などを殺菌対象とすることができる。具体的には、大腸菌、乳酸菌、サルモネラ菌、リステリア菌、レジオネラ菌、麹菌、酢酸菌などの細菌、ビール酵母、清酒酵母、ワイン酵母、醤油酵母などの酵母を殺菌対象とすることができる。失活の対象とする酵素も特に限定されず、例えば、酸性プロテアーゼ、酸性カルボキシペプチダーゼ、α-グルコシダーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチンエステラーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼなどを対象とすることができる。
本発明の液状物の処理方法は、公知の装置を用いて実施することができる。好適な装置としては、特許文献2(特開2012-19729号公報)の図1又は図4に記載されている装置を例示できる。特許文献2の図4に記載されている装置の模式図を本願の図1に示し、また、この装置について以下に説明する。
図1に示すように、この装置1は、被処理物貯蔵容器2と、第一送液部3と、飽和処理部(気泡混合部)4と、第二送液部5と、殺菌失活処理部6と、被処理物回収容器7と、二酸化炭素回収部8と、冷却器36とを備える。
被処理物貯蔵容器2は、液状物を内部に収容するための容器である。被処理物貯蔵容器2は、後述する第一容器11及び殺菌失活処理部6と同様に液状物の温度変化を抑えるために断熱性を有することが好ましい。
第一送液部3は、被処理物貯蔵容器2の内部と、後述する第一容器11の内部とにそれぞれ内部が連通する送液管路9と、送液管路9に取り付けられた送液ポンプ10とを備える。
送液ポンプ10は、被処理物貯蔵容器2の内部に収容された液状物を第一容器11へと送液するためのものである。送液ポンプ10の構造は、ロータリーポンプやシリンジポンプ等どのような構造であってもよい。また、液状物が食品の場合には、送液ポンプ10としては食品用ポンプが用いられる。
飽和処理部4は、被処理物貯蔵容器2から送液ポンプ10によって送液される液状物を内部に収容する第一容器11と、第一容器11内に二酸化炭素の微細気泡を供給するマイクロナノバブル発生装置12とを備える。
第一容器11は、内部に液状物を収容可能な耐圧容器である。また、第一容器11には、温度調整部13と、分岐管路14と、大気開放弁15と、第一圧力計16と、ドレイン管路17とが設けられている。
温度調整部13は、第一容器11の内部の温度を一定の第一温度に保つものである。温度調整部13によって、第一容器11の内部に二酸化炭素が供給されて第一容器11の内部で二酸化炭素が断熱圧縮された場合でも、第一容器11の内部の温度を第一温度に保つことができるようになっている。
分岐管路14は、一端14aが第一容器11内に開口され、後述するマイクロナノバブル発生装置12の二酸化炭素供給管路21に他端14bが連通された管路である。また、分岐管路14は、第一容器11の上部に開口されている。また、分岐管路14には、分岐管路14を開閉することによって第一容器11の内圧を一定の第一圧力に保つ圧力調整弁18が設けられている。
この装置では、第一容器11に液状物が供給されたときに上側にできる気体層(以下、「ヘッドスペース」と称する。)へ気体状の二酸化炭素が分岐管路14を通じて供給される。
大気開放弁15は、開閉動作することによって第一容器11の内外の連通状態を切り替える弁である。大気開放弁15は、第一容器11の内圧が第一容器11を破裂させるおそれがある圧力まで上がると第一容器11の内部と外部とを自動的に連通させる安全装置である。
第一圧力計16は、第一容器11の内部の圧力を操作者が確認するためのものである。
ドレイン管路17は、第一容器11の内部の液状物を外部に取り出すための管路である。ドレイン管路17には、開閉動作することによりドレイン管路17の内外の連通状態を切り替えるドレイン弁19が取り付けられている。なお、ドレイン管路17は、第一容器11から後述する第二容器28へ液状物を移すときにはドレイン弁19によって閉じられている。
マイクロナノバブル発生装置12(二酸化炭素供給部)は、二酸化炭素貯蔵タンク20、二酸化炭素供給管路21、被処理物循環管路22、循環ポンプ23及び微細気泡発生器24を備える。循環ポンプ23、微細気泡発生器24及び後述の供給量調整弁25は、それぞれが連通して独立して配置されていてもよく、一体として構成されていてもよい。循環ポンプ23、微細気泡発生器24及び後述の供給量調整弁25が一体として構成されている場合には、第一容器11内で液状物にマイクロナノバブルを混合することに代えて、循環ポンプ23、微細気泡発生器24及び後述の供給量調整弁25における各流路内を流れる液状物に対して、微細気泡発生器24における液状物の出口部分において測定した温度及び圧力が第一温度且つ第一圧力となる条件のもとで、微細気泡を混合することも可能である。
二酸化炭素貯蔵タンク20は、気体状あるいは液体状の二酸化炭素が内部に収容された容器である。
二酸化炭素供給管路21は、二酸化炭素貯蔵タンク20に一端が接続され、被処理物循環管路22に他端が接続された管路である。二酸化炭素供給管路21には、二酸化炭素を被処理物循環管路22へ供給する量を調整する供給量調整弁25が設けられている。供給量調整弁25は、二酸化炭素供給管路21と分岐管路14との分岐部よりも下流側に設けられている。
被処理物循環管路22は、第一容器11に接続された管路であり、管路の中間部には液状物を送液するための循環ポンプ23が取り付けられている。また、二酸化炭素供給管路21には供給量調整弁25が配置され、被処理物循環管路22に接続されている。これにより、供給量調整弁25が開放されたときに二酸化炭素供給管路21から被処理物循環管路22へ二酸化炭素が供給されるようになっている。
循環ポンプ23は、被処理物循環管路22内で液状物を一方向へ送液するポンプである。循環ポンプ23の構造は、ロータリーポンプやシリンジポンプ等どのような構造であってもよい。循環ポンプ23によって、被処理物循環管路22の一端22aから液状物が吸引され、二酸化炭素が混合された液状物が被処理物循環管路22の他端22bから微細気泡発生器24へ送られるようになっている。なお、液状物が食品である場合には、循環ポンプ23には食品用ポンプが用いられる。液状物が食品でない場合には循環ポンプ23が食品用ポンプである必要はない。
微細気泡発生器24は、第一容器11の内部又は外部に配置され、被処理物循環管路22の他端22bに接続される。
図1は、微細気泡発生器24が第一容器11の内部に配置されている場合の構成を示している。図1に示すように、微細気泡発生器24が第一容器24の内部に配置されている場合には、被処理物循環管路22から排出された液状物と二酸化炭素との混合物は、微細気泡発生器24の内部に供給されるようになっている。
このように、飽和処理部4は、第一温度且つ第一圧力のもとで二酸化炭素のマイクロナノバブルを液状物に混合することができるようになっている。
第二送液部5は、一端9aが第一容器11内に開口し、他端9bが第二容器28内に開口し、中間部に加圧ポンプ26及び流量調整弁27が取り付けられた送液管路9を備える。
加圧ポンプ26は、送液管路9の内部の液状物を第二容器28側へ圧送するものである。加圧ポンプ26の構造は、ロータリーポンプやシリンジポンプ等どのような構造であってもよい。液状物が食品である場合には加圧ポンプ26として食品用ポンプが用いられる。
流量調整弁27は、送液管路9のうち第一容器11と加圧ポンプ26との間に取り付けられており、送液管路9の内部における液状物の流量を調整するものである。流量調整弁27は、送液管路9を完全に閉鎖することができ、第一容器11の内部に液状物を収容しているときに第一容器11から第二容器28へ液状物が移動しないようにせき止めることができる。また、流量調整弁27は、時間当たり一定量の液状物が第一容器11から第二容器28へ移動するようにその開閉動作が制御されるものであってもよい。流量調整弁27としては、例えば電磁弁を採用することができる。
第二送液部5によって、第一容器11の内部の液状物を後述する第二容器28へ移すことができるようになっている。
殺菌失活処理部6は、第二容器28と、加熱部29とを備える。
第二容器28の形状は槽状でもよく管状であってもよく、所要の温度と圧力が加えられる機能を有していればその形状は特に限定されない。第二容器28の形状が管状の場合は、設置スペース及び熱管理の観点から、第二容器28はらせん状に巻かれた管形状であることが好ましい。以下の記述では、第二容器28としてらせん状に巻かれた管路からなる容器を使用する例を述べる。
第二容器28の一端28a側には加圧ポンプ26が設けられ、第二容器28の他端28b側には減圧弁30が設けられている。第二容器28は断面積が一定とされた管状であり、単位時間あたり一定流量で加圧ポンプ26が液状物を第二容器28側へ送ることによって、液状物を一端28aから他端28bへ向かって一定速度で移動させるようになっている。これにより、この装置では、第二容器28の内部に液状物が一定時間だけ保持(以下、「滞留」という場合がある。)され、一定時間経過後に第二容器28から連続して排出されるようになっている。
また、第二容器28の他端28bには、第二容器28から後述する被処理物回収容器7へ液状物を送るための排出管路31が取り付けられている。また、排出管路31には、管路の他端から排出されて後述する被処理物回収容器7へ送られる液状物にかかる圧力を下げるための減圧弁30が設けられている。
この装置では、加圧ポンプ26と減圧弁30とによって、第二容器28の管路内の圧力は一定の第二圧力に維持されるようになっている。なお、この装置では、排出管路31において減圧弁30よりも上流側に第二圧力計32が設けられており、第二容器28の内部の圧力を操作者が確認することができるようになっている。
加熱部29は、第二容器28の内部の温度を、第二温度に維持するものである。加熱部29の構成としては、ガス等の燃料を燃焼させて加熱するものや、バンドヒーター、電熱器等によって加熱するもの、あるいは誘導加熱や誘電加熱により管路を一定温度に保持させるもの等を適宜採用することができる。
このように、殺菌失活処理部6は、第二温度且つ第二圧力のもとで液状物を保持することができるようになっている。
被処理物回収容器7は、排出管路31の内部を通って排出された液状物(ここでいう「液状物」とは、第一容器11と第2容器28内で処理された液状物をいう。以後、同様にいう場合がある。)を内部に収容する容器である。被処理物回収容器7には、液状物に混合された二酸化炭素の少なくとも一部を回収するための二酸化炭素回収部8が着脱可能に取り付けられている。
二酸化炭素回収部8は、被処理物回収容器7と二酸化炭素貯蔵タンク20とのそれぞれの内部に連通された二酸化炭素回収管路33と、二酸化炭素回収管路33の中間部に取り付けられた流量調整弁34とを備える。
二酸化炭素回収管路33は、二酸化炭素のマイクロナノバブルが混合された液状物から放出された二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵タンク20へ移動させるための管路である。
流量調整弁34は、二酸化炭素回収管路33を流れる二酸化炭素の流量を調整するためのものである。なお、流量調整弁34は、被処理物回収容器7の内圧が上がりすぎた場合に被処理物回収容器7内の気体を二酸化炭素貯蔵タンク20内あるいは大気へ送る安全装置としての機能をさらに備えていてもよい。流量調整弁34の下流には、二酸化炭素を圧縮して二酸化炭素貯蔵タンク20に移動させるための加圧ポンプ35が配置されている。
冷却器36は、第二容器28内で第二温度まで加熱された液状物を、たとえば第一温度まで下げるものである。冷却器36の構造は特に限定されるものでなく、公知の冷却器を適宜採用することができる。
たとえば、冷却器36としては、ヒートポンプによって熱交換を行うものや、ペルチェ素子を用いて熱交換を行うものなどを適宜採用することができる。この場合、冷却器36における放熱側のラジエータ等を第二容器28に接続してもよい。
また、冷却器36として熱交換を行うものを用いた場合、液状物から奪った熱を第二容器28内の液状物を加熱するための熱として用いることができる。これにより、加熱部29が消費するエネルギーを低減することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕 α-グルコシダーゼの残存活性の測定
本実施例は、生酒中のα-グルコシダーゼに与える第二温度の影響を検討したものである。α-グルコシダーゼは、特許文献2においてMNB-CO2処理により生酒中で最も失活しにくい酵素であったため、測定対象とした。
(試料の調製)
本実施例では、旭酒造株式会社製の生酒(品名:獺祭50)を試料として用いた。(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した処理装置1を使用した。具体的な構成を以下に示す。
第一容器11:内容量15Lの円筒状のタンク
送液ポンプ10及び加圧ポンプ26:日本精密科学製NP-KX-500
循環ポンプ23:帝国電機製作所製F42-119F2AM-0204R1-BV
微細気泡発生器24:オーラテック社製マイクロ・ナノバブル発生器
第二容器28:内径0.3cm、長さ370cmのらせん状の管路、内容量100mL(滞留時間1分、5分、10分、30分、50分で使用)、もしくは内径0.3cm、長さ110cmのらせん状の管路、内容量30mL(滞留時間1秒、5秒、10秒、15秒、20秒で使用)
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度: 65℃及び75℃
第二圧力:6MPa
第二容器28内における試料の滞留時間:1秒、5秒、10秒、15秒、20秒、1分、5分、10分、30分、50分
実験は以下の手順で行った。まず、内容量15Lの第一容器11に12Lの試料を供給し、供給した12Lの試料を上記温度に維持し、第一容器11のヘッドスペース部分に上記圧力に達するまで二酸化炭素を供給した。
次に、MNB-CO2を次の手順で発生させた。循環ポンプ23により、被処理物循環管路22内で試料を15mL/分で循環させつつ、供給量調整弁25を開き、二酸化炭素を循環ポンプ23の出口付近から被処理物循環管路22内へ供給し、試料と二酸化炭素が混合された混合流体を微細気泡発生器24へ供給した。
MNB-CO2は、試料中のMNB-CO2量が飽和に至るまで発生させた。本実施例では、MNB-CO2の供給を開始してから一定間隔で溶存二酸化炭素濃度を測定し、約6分でMNB-CO2が飽和したことを確認した。MNB-CO2が飽和した後、流量調整弁27を開き、第一容器11内の試料を加圧ポンプ26によって第二容器28の管路内へ連続的に供給した。なお、第一容器11の内圧は、第一容器11のヘッドスペース部分に圧力調整弁18を介して二酸化炭素を供給することで一定に維持した。第二容器28内の試料滞留時間は、各温度に達してからの時間であり、加圧ポンプ26により試料の流速を2〜100mL/分の範囲で変えることによって調節した。排出管路31から排出される試料をそれぞれ採取し、これらの試料中のα-グルコシダーゼの残存活性を測定した。
また、比較のため、第二温度を45℃又は55℃としたMNB-CO2処理を行った場合、及び熱処理のみを行った場合のα-グルコシダーゼの残存活性も測定した。
(試料中の残存酵素活性の測定)
本実施例では、各温度におけるMNB-CO2処理及び熱処理後のα-グルコシダーゼの残存活性を、糖化力分別測定キット(キッコーマン株式会社製)を使用して測定した。α-グルコシダーゼの残存活性は、温度ごとのMNB-CO2処理及び熱処理をしていない試料におけるα-グルコシダーゼの活性に対する相対活性として、百分率(%)で表示した。実験は全て3反復行い、3反復において得られたデータの平均値と標準誤差をそれぞれ算出し、グラフ化した。
(結果と考察)
図2にMNB-CO2処理における第二温度を65℃とした場合(■)及び65℃の熱処理のみをした場合(●)のα-グルコシダーゼ活性の測定結果を示す。図3にMNB-CO2処理における第二温度を45℃とした場合(■)及び45℃の熱処理のみをした場合(●)の結果を、図4にMNB-CO2処理における第二温度を55℃とした場合(■)及び55℃の熱処理のみをした場合(●)とした場合のα-グルコシダーゼの測定結果を示す。なお、MNB-CO2処理における第二温度を75℃とした場合、及び75℃で熱処理のみを行った場合は1秒でα-グルコシダーゼが失活したので、これらの結果は図に示さない。
これらの図において、横軸は第二容器28内における試料の滞留時間を、縦軸はα-グルコシダーゼの残存活性を示している。
MNB-CO2処理における第二温度を65℃とした場合(図2)では、α-グルコシダーゼの残存活性が0%(失活)までの時間が15秒であるのに対し、MNB-CO2処理における第二温度を45℃とした場合(図3)では、失活までの時間が50分、MNB-CO2処理における第二温度を55℃とした場合(図4)では失活までの時間が5分であり、MNB-CO2処理における第二温度を65℃とした場合、他の温度に比べ、失活までの時間が著しく短くなった。この結果は、MNB-CO2処理における第二温度を65℃とすることにより、極めて短時間でα-グルコシダーゼ失活させることができることを示している。最も失活しにくいα-グルコシダーゼの失活作用が見られたことで、グルコアミラーゼ、酸性カルボキシペプチターゼなどその他の酵素に対する失活作用もあるものといえる。
〔実施例2〕 清酒の香り及び味の官能評価
本実施例は、清酒の香り及び味に与える第二温度の影響を検討したものである。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度及びその温度における滞留時間: 65℃で15秒、75℃で1秒
第二圧力:6MPa
なお、第二容器28内の滞留時間が第二温度によって異なるのは、実施例1の結果から酵素失活までの時間を第二温度ごとに推定し、その時間を滞留時間としたからである。
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(官能評価)
本実施例では、上記MNB-CO2処理をした清酒と標準的な熱処理(65℃、3分の加熱)した清酒を被験者に試飲させ、清酒の香り及び味について下記の7段階の評価基準に基づいて官能評価を行った。
3:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも非常に良い。
2:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも良い。
1:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも少し良い。
0:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒と同じ。
−1:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも少し悪い。
−2:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも悪い。
−3:MNB-CO2処理清酒は、熱処理清酒よりも非常に悪い。
各被験者の評価スコアを、香り及び味のそれぞれについて温度ごとに合計し、グラフ化した。本実施例では、旭酒造株式会社の3名(うち代表取締役社長1名、製造部長1名、技術顧問1名)を被験者とした。
なお、比較のため、第二温度を45℃とし、第二容器の滞留時間を50分としたMNB-CO2処理を行った清酒、及び第二温度を55℃とし、第二容器の滞留時間を5分としたMNB-CO2処理を行った清酒についての官能評価も行った。
(結果)
図5は香りの官能評価結果を示し、図6は味の官能評価結果を示す。
〔実施例3〕 清酒の香り及び味の官能評価
本実施例は、清酒の香り及び味に与える第二温度の影響を検討したものである。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度及びその温度における滞留時間: 65℃で15秒、75℃で1秒
第二圧力:6MPa
なお、第二容器28内の滞留時間が第二温度によって異なるのは、実施例1の結果から酵素失活までの時間を第二温度ごとに推定し、その時間を滞留時間としたからである。
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(官能評価)
本実施例では、上記MNB-CO2処理をした清酒と標準的な熱処理(65℃、3分の加熱)した清酒を被験者に試飲させ、清酒の香り及び味について下記の7段階の評価基準に基づいて実施し、未処理の生酒及び熱処理清酒についての官能評価も行なった。
3:非常に良い。
2:良い。
1:少し良い。
0:どちらとも言えない。
−1:少し悪い。
−2:悪い。
−3:非常に悪い。
各被験者の評価スコアを、香り及び味のそれぞれについて温度ごとに合計し、グラフ化した。本実施例では、日本獣医生命科学大学応用生命科学部食品科学科の大学生10名を被験者とした。
なお、比較のため、第二温度を45℃とし、第二容器の滞留時間を50分としたMNB-CO2処理を行った清酒、及び第二温度を55℃とし、第二容器の滞留時間を5分としたMNB-CO2処理を行った清酒、未処理の生酒及び熱処理清酒についての官能評価も行なった。
(結果)
図7は香りの官能評価結果を示し、図8は味の官能評価結果を示す。
(実施例2及び実施例3の考察)
図5〜図8において、横軸は第二温度(第二容器の温度)を示し、縦軸は評価スコアを示している。香り及び味のいずれの官能評価結果においても、65℃が最も評価スコアが高く、65℃を超えると評価スコアは低くなった。この結果は、MNB-CO2処理における第二温度を65℃とすることにより、香り及び味の良い酒が得られることを示している。
〔実施例4〕 清酒の加熱臭の官能評価
生酒は加熱処理することにより生酒の持つみずみずしさや新鮮度が損なわれるが、その際に加熱臭と呼ばれる特有の臭いが発生することが酒造業界では知られているため、生酒の加熱臭に与える第二容器28における被処理物の滞留時間の影響を検討した。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度:65℃
第二圧力:6MPa
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(官能評価)
本実施例では、上記MNB-CO2処理をした清酒を被験者に試飲させ、下記の3段階の評価基準に基づいて官能評価を行った。
○:加熱臭を感じない。
△:加熱臭をわずかに感じる。
×:加熱臭を感じる。
なお、本実施例における被験者は、旭酒造株式会社の3名(うち代表取締役社長1名、製造部長1名、技術顧問1名)であった。
(結果と考察)
下表に、加熱臭についての官能評価の結果を示す。
表1に示すように、第二容器28における滞留時間が20秒を超えると加熱臭をわずかに感じるようになり、35秒を超えるとはっきりと加熱臭を感じるようになった。この結果は、MNB-CO2処理における第二温度を65℃とした場合は、第二容器28における滞留時間を35秒以内とするのが好ましく、20秒以内とするのがより好ましいことを示している。
〔実施例5〕 アミノ酸含有量の測定
一般に、酒の官能評価とアミノ酸量が負の相関であることが知られており、アミノ酸量が増加すると酒の風味が損なわれると知られているため、清酒中のアミノ酸含有量に与える第二温度の影響を検討した。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度:45℃、55℃、65℃、及び75℃
第二圧力:6MPa
第二容器28内における試料の滞留時間:上記実施例2と同じであり、各温度に達してからの時間である。
第二温度及びその温度における滞留時間:45℃で50分(MB45)、55℃で5分(MB55)、65℃で15秒(MB65)、75℃で1秒(MB75)
なお、第二容器28内の滞留時間が第二温度によって異なるのは、実施例1の結果から酵素失活までの時間を第二温度ごとに推定し、その時間を滞留時間としたからである。
また、比較のため、MNB-CO2処理を行わず、熱処理(65℃、3分)のみ行った清酒(熱処理)及びMNB-CO2処理も熱処理も行わなかった生酒(未処理)でも測定した。
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(アミノ酸含有量の測定)
各試料および3%スルホサリチル酸溶液を1:1で混合し、冷蔵で1晩静置後、0.45μmのフィルターでろ過したものを全自動アミノ酸分析機(JLC500-500/V2, 日本電子株式会社製)により分析した。結果は3反復の平均値であり、μmol/lの単位で表した。
(結果と考察)
下表にアミノ酸含有量の測定結果を示す。
この表において、P-Serはホスホセリンを、Ureaは尿素を、Aspはアスパラギン酸を、Thrはトレオニンを、Serはセリンを、Asnはアスパラギンを、Gluはグルタミン酸を、Glnはグルタミンを、AAAはα-アミノアジピン酸を、Glyはグリシンを、Alaはアラニンを、Valはバリンを、Cysはシステインを、Metはメチオニンを、Cystaはシスタチオニンを、Ileはイソロイシンを、Leuはロイシンを、Tyrはチロシンを、Pheはフェニルアラニンを、GABAはγ-アミノ酪酸を、MEAはモノエタノールアミンを、Ornはオルニチンを、Hisはヒスチジンを、Lysはリジンを、Argはアルギニンを、Proはプロリンを、それぞれ示している。
表2に示すように、全アミノ酸量(Total)は未処理が最も多く、次いで熱処理、MB75、MB45、MB65、MB55の順となった。未処理のTotalが多い理由は残存酵素の働きによるタンパク質もしくはペプチドの分解によると考えられる。MB75および熱処理でTotalが多い理由は過加熱によるタンパク質もしくはペプチドの分解によると考えられる。一般に、酒の官能評価とアミノ酸量が負の相関にあることから、MB65、MB55の官能評価が高いといえるが、(実施例2、3)の結果からMB65の官能評価が高いことが示されている。
〔実施例6〕 有機酸含有量の測定
本実施例は、生酒中の有機酸含有量に与える第二温度の影響を検討したものである。
有機酸を測定した理由は清酒中の有機酸含有量を把握することで清酒の酸味の特徴をとらえることができるためである。有機酸のうち、乳酸は渋味、コハク酸は旨味、リンゴ酸は爽やかな酸味、クエン酸は酸味への寄与が大きいことが知られている。そこで、これらの有機酸とその他酒の風味への影響があると考えられる酢酸、フマル酸、ピルビン酸及びピログルタミン酸を対象とした。なお、無機酸であるリン酸についても測定対象とした。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度:45℃、55℃、65℃、及び75℃
第二圧力:6MPa
第二容器28内における試料の滞留時間:上記実施例2と同じであり、各温度に達してからの時間である。
第二温度及びその温度における滞留時間:45℃で50分(MB45)、55℃で5分(MB55)、65℃で15秒(MB65)、75℃で1秒(MB75)
なお、第二容器28内の滞留時間が第二温度によって異なるのは、実施例1の結果から酵素失活までの時間を第二温度ごとに推定し、その時間を滞留時間としたからである。
また、比較のため、MNB-CO2処理を行わず、熱処理(65℃、3分)のみ行った清酒(熱処理)及びMNB-CO2処理も熱処理も行わなかった生酒(未処理)でも測定した。
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(有機酸含有量の測定)
0.45μmのフィルターでろ過した各試料0.5mlをSep-Pak C18カラムに通し、2mlの5%リン酸水溶液で溶出したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC, 島津製作所製)により測定した。HPLCの分析条件は以下の通り。カラム:ODS-3(4.6×250mm I.D.)、移動相:0.02Mリン酸水素二アンモニウム-MeOH=97:3(pH2.35)、流速:0.5ml/min、検出器:UV検出器(SPD-20A, 210nm)、オーブン温度:25℃。結果は3反復の平均値と標準偏差を示す。
(結果と考察)
図9は、リン酸及び乳酸の含有量の測定結果を示す。図9に示すように、MNB-CO2処理及び熱処理によって、リン酸は減少し、乳酸は増加した。乳酸含有量の増加は、第二温度を65℃としたMNB-CO2処理(MB65)において最も増加した。
図10は、リンゴ酸及びコハク酸の含有量の測定結果を示す。図10に示すように、コハク酸の含有量は、第二温度を65℃としたMNB-CO2処理(MB65)によって著しく増加した。コハク酸は旨味に影響を与えるため、MB65での旨味が高いことが示された。
図11は、フマル酸、酢酸、及びクエン酸の含有量の測定結果を示す。図11に示すように、フマル酸と酢酸の含有量は、MNB-CO2処理により減少し、クエン酸の含有量は、第二温度を45℃又は55℃としたMNB-CO2処理(MB45/MB55)により減少した。
図12は、ピルビン酸、及びピログルタミン酸の含有量の測定結果を示す。図12に示すように、ピログルタミン酸の含有量は、第二温度を65℃としたMNB-CO2処理(MB65)により著しく増加したが、ピルビン酸及びピログルタミン酸は味への影響は少ないものと考えられる。
これらの図において、縦軸は酒100mL中の有機酸含有量(mg)を示している。
〔実施例7〕 糖含有量の測定
清酒中の糖は清酒の甘みに寄与するため、生酒中の糖含有量に与える第二温度の影響を検討した。
(試料の調製)
本実施例では、実施例1と同一の試料を用いた。
(MNB-CO2処理)
本実施例では、図1に示した装置を使用した。具体的な構成は上記実施例1において採用した構成と同一である。
第一容器11の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第一温度:5℃
第一圧力:2MPa
第一容器11への二酸化炭素供給量:2.0L/分
第二容器28の温度条件及び圧力条件等の諸条件は、以下のように設定した。
第二温度:45℃、55℃、65℃、及び75℃
第二圧力:6MPa
第二容器28内における試料の滞留時間:上記実施例2と同じであり、各温度に達してからの時間である。
第二温度及びその温度における滞留時間:45℃で50分(MB45)、55℃で5分(MB55)、65℃で15秒(MB65)、75℃で1秒(MB75)
なお、第二容器28内の滞留時間が第二温度によって異なるのは、実施例1の結果から酵素失活までの時間を第二温度ごとに推定し、その時間を滞留時間としたからである。
また、比較のため、MNB-CO2処理を行わず、熱処理(65℃、3分)のみ行った清酒(熱処理)及びMNB-CO2処理も熱処理も行わなかった生酒(未処理)でも測定した。
MNB-CO2を発生させる手順については上記実施例1と同様の手順で行った。
(糖含有量の測定)
蒸留水により3倍希釈した各試料を0.45μmのフィルターでろ過したものをHPLC(日本分光製)により測定した。HPLCの分析条件は以下の通り。カラム:Shodex Sugar SC1011(8×300mm I.D.)、移動相:蒸留水、流速:1ml/min、検出器:RI検出器(RI-930)、オーブン温度:80度。結果は3反復の平均値と標準偏差を示す。
(結果と考察)
図13に、MNB-CO2処理を行った清酒の糖含有量の測定結果を示す。この図において、縦軸は酒50mL中の糖含有量(g)を示している。
図13に示すように、MNB-CO2処理の有無及び第二温度の違いにより、糖(グルコース及びイソマルトース)の含有量に大きな違いはみられなかった。
本発明は、極めて短時間での食品の殺菌及び酵素失活などの用途に用いることができるので、食品製造業などの産業分野において利用可能である。
1 処理装置
2 被処理物貯蔵容器
3 第一送液部
4 飽和処理部(気泡混合部)
5 第二送液部
6 殺菌失活処理部
7 被処理物回収容器
8 二酸化炭素回収部
9 送液管路
10 送液ポンプ
11 第一容器
12 マイクロナノバブル発生装置
13 温度調整部
14 分岐管路
15 大気開放弁
16 第一圧力計
17 ドレイン管路
18 圧力調整弁
19 ドレイン弁
20 二酸化炭素貯蔵タンク
21 二酸化炭素供給管路
22 被処理物循環管路
23 循環ポンプ
24 微細気泡発生器
25 供給量調整弁
26 加圧ポンプ
27 流量調整弁
28 第二容器
29 加熱部
30 減圧弁
31 排出管路
32 第二圧力計
33 二酸化炭素回収管路
34 流量調整弁
35 加圧ポンプ
36 冷却器

Claims (1)

  1. 第一温度且つ第一圧力のもとで二酸化炭素の微細気泡を液状物と混合する気泡混合工程と、前記気泡混合工程後の液状物を前記第一温度より高い第二温度且つ前記第一圧力よりも高い第二圧力のもとで保持する処理工程とを有する液状物の処理方法であって、前記第二温度が60℃以上75℃以下であること、前記第二温度且つ第二圧力のもとで液状物を保持する時間が35秒以下であること、及び液状物が火入れ前の清酒であることを特徴とする液状物の処理方法。
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