そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、屋根下地への取付作業性の良い屋根上設置物の固定具、及び、その固定具を用いた屋根上設置物の固定構造の提供を課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る屋根上設置物の固定具(以下、単に固定具とも称す)は、「平板状の基体部、該基体部を貫通している基体開口部、該基体開口部の周縁から上方に立設されている筒壁部、該筒壁部の上端から内側へ平板状に延びて前記基体開口部よりも小さい上面開口部を形成している上面部、及び、前記上面開口部の周縁辺から互いに対向するように下方に夫々垂設されている平板状の一対の案内面部を有しており、屋根材に代替して使用され、金属又は合成樹脂により形成されている代替屋根材と、該代替屋根材の前記上面開口部を通過する大きさに列設されている一対の平板状の底板部、一対の該底板部夫々の内側の辺の全長に亘り上方に立設されている一対の立壁部、一対の該立壁部夫々の上辺を連結している連結部、及び、該連結部の上面に開放されておりボルト又はナットが取付けられる固定部材取付部を有している取付台とを具備している」ものである。
「屋根上設置物」としては、太陽電池モジュール、太陽熱温水器、屋根上緑化体、空調用室外機、等を例示することができる。
「屋根材」は、瓦に代表される屋根の仕上げを行うための部材を指しており、瓦の他に、スレート板材、金属屋根板、木製屋根板、等を例示することができる。屋根材に代替して使用される代替屋根材の「基体部」は、外形を屋根材と同一の形状及び寸法とすれば、周囲の屋根材と共に屋根下地に葺設し易いと共に、周囲の屋根材から目立ち難く屋根の外観が良いものとなる。
代替屋根材を形成する「金属」としては、アルミ合金、鉄、真鍮、洋白、青銅、亜鉛、等を例示することができ、「合成樹脂」としては、ポリカーボネイト、塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、合成樹脂内にガラス繊維や炭素繊維を含有させた繊維強化樹脂、等を例示することができる。代替屋根材は、ダイカスト鋳造、射出成形、切削加工、絞り加工を含むプレス加工、3Dプリンタ成形、等により成形することができる。
取付台の「固定部材取付部」としては、「連結部の上面及び少なくとも一方の立壁部に開放されておりボルトの頭部又はナットがスライド可能に取付けられるTスロット」、「連結部を貫通して上面に開放されておりボルトのネジ軸部のみが通過する孔」、「連結部の下面から上方に凹みボルトの頭部又はナットが収容される収容部と、収容部の中心で連結部を貫通して上面に開放されておりボルトのネジ軸部のみが通過する孔と、を有している段付孔」、等を例示することができる。「ボルト」としては、六角ボルト、根角ボルト、六角穴付きボルト、寸切りボルト、等を例示することができる。「ナット」としては、六角ナット、四角ナット、Tスロット用ナット、等を例示することができる。
本構成の固定具は、次のように使用することができる。まず、代替屋根材を屋根材に代替して屋根下地に取付け、代替屋根材の上面開口部に取付台を挿通して、取付台の底板部を屋根下地に当接させ、取付台を屋根下地に留め付ける。この際に、上方から見て、代替屋根材の上面開口部と取付台との隙間が偏りなく均一になるようにして、屋根下地に留め付ける。その後、取付台の固定部材取付部にボルト又はナットを取付け、そのボルト又はナットを用いて屋根上設置物の一部を取付台に留め付けることにより、取付台を介して屋根上設置物を屋根下地に固定することができる。
本構成の固定具によれば、代替屋根材を金属又は合成樹脂により形成していることから、陶器で形成したものと比較して、製品寸法のばらつきが小さく製品の寸法精度が高くなるため、上面開口部と取付台との隙間が可及的に小さくなるように代替屋根材を形成することができる。これにより、代替屋根材の上面開口部と取付台との隙間が小さくなることで、上面開口部に対する取付台の偏りが判り易くなるため、代替屋根材に対する取付台の位置決めが行い易い。
また、代替屋根材に備えられている一対の案内面部により、取付台を上面開口部から屋根下地付近まで案内することができるため、上面開口部に対して取付台を位置決めしたままの状態で屋根下地に当接させ易く、屋根下地への取付作業性が良い。
ところで、代替屋根材を金属又は合成樹脂により形成することによって、代替屋根材の寸法精度が高くなることから、筒壁部の内周の寸法を取付台の外周の寸法に近付け、上面部、上面開口部、及び案内面部を有していない代替屋根材とすることが考えられる。この場合でも、取付台との隙間が小さくなるため、上記と同様に、代替屋根材に対する取付台の位置決めが行い易い。しかしながら、このような代替屋根材では、筒壁部の上端面の幅が、筒壁部の厚さと同じで薄くなる。そのため、筒壁部の上端開口から雨水等が浸入しないように、シール部材を介してカバー部材で覆う場合、上端面においてシールされる幅が狭いため、シール性を十分に確保できず、雨水等が浸入してしまう虞がある。これに対して、本構成では、筒壁部の上端に平板状の上面部を備えているため、筒壁部の上端側の上面開口部をシール部材を介してカバー部材で覆う場合、筒壁部の厚さよりも広い幅の上面部により、シール部材とのシール性を十分に確保することができる。
また、特許文献1の技術のように、取付台の外形を直方体とすることが考えられる。しかしながら、取付台を直方体とした場合、代替屋根材の上面開口部を挿通して取付台を屋根下地に当接させた時に、取付台における上面開口部よりも上方に突出している部分が少ないと、作業者が取付台を掴み難くなり、代替屋根材に対する取付台の位置決め作業がし辛くなる問題がある。これに対して、本構成では、取付台において、一対の底板部の内側の辺から立壁部を立設しているため、立壁部が底板部の外側の辺よりも内側に位置し、取付台を代替屋根材の上面開口部に挿通した時に、上面開口部と立壁部との間に作業者の指等が入る空間が形成される。これにより、代替屋根材の上面開口部に挿通して取付台を屋根下地に当接させた状態でも、作業者が一対の立壁部を掴むことができるため、代替屋根材に対する取付台の位置決め作業が行い易い。
本発明に係る屋根上設置物の固定具は、上記の構成に加えて、「前記代替屋根材は、前記上面部における一対の前記案内面部の間を通る部位に形成されており、前記上面開口部の周縁辺における前記案内面部が垂設されている辺と平行に延びている識別部を更に有している」ものとすることができる。
「識別部」としては、溝、突起、塗装された塗料、貼付けられたシール、等を例示することができる。
本構成の固定具によれば、代替屋根材の上面部に、一対の案内面部と平行に延びている識別部を備えているため、識別部によっても上面開口部に対する取付台の位置の目安とすることができ、代替屋根材に対する取付台の位置決めが行い易い。
本発明に係る屋根上設置物の固定具は、上記の構成に加えて、「前記代替屋根材は、前記筒壁部よりも軒側で前記基体部の上面から突出していると共に軒端と棟端とを結ぶ方向に延びており、軒端と棟端とを結ぶ方向に対して直角方向の中央から夫々離間している一対の突条部を、更に有している」ものとすることができる。
ところで、屋根材を屋根の傾斜方向へ千鳥状に葺設している屋根では、一つの屋根材に対してその棟側と軒側において、傾斜方向に対して直角方向における屋根材同士が重ね合わされている部位が、一つの屋根材の棟側端縁及び軒側端縁の夫々略中央に位置している。そして、これら屋根材同士が互いに重ね合わされている部位上に、雨水等が流下すると、屋根材同士の隙間を通って屋根材の下方(屋根下地)に雨水等が浸入し易くなる問題がある。
これに対して、本構成の固定具では、屋根の棟側から代替屋根材の基体部上へ雨水等が流入すると、基体部の中央から突出している筒壁部により筒壁部の外壁に沿って流れた後に、筒壁部の軒側へ回り込もうとするが、一対の突条部により回り込みが阻まれ、一対の突条部の間(内側)に流入することなく、一対の突条部の外側を流れて軒側端縁から代替屋根材の軒側の屋根材上へ放出させることができる。
従って、棟側から代替屋根材に流入してきた雨水等が、代替屋根材の軒側において屋根材同士が互いに重ね合わされている部位上に放出されないため、屋根材同士の間を通った屋根下地への雨水等の浸入を防止することができる。
本発明に係る屋根上設置物の固定構造(以下、固定構造とも称す)は、上記の屋根上設置物の固定具を用いて屋根上設置物を屋根下地に固定している屋根上設置物の固定構造であり、「前記代替屋根材が屋根材に代替して前記屋根下地に取付けられていると共に、前記取付台が前記代替屋根材の前記上面開口部との間で隙間が形成されている状態で前記屋根下地に取付けられており、前記取付台の前記固定部材取付部に取付けられている前記ボルト又は前記ナットを介して前記屋根上設置物が固定されている」ものである。
「屋根下地」は、屋根材を葺設する下地部分であり、一般的には、垂木の上に取付けられた平板状の野地板に、防水シートが敷設された構成である。
以上のように、本発明の効果として、屋根上設置物を屋根下地に固定するための固定具であって、屋根下地への取付作業性の良い屋根上設置物の固定具、及びその固定具を用いた屋根上設置物の固定構造を提供することができる。
本発明の一実施形態である屋根上設置物の固定具1及び屋根上設置物の固定構造について、図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態の固定具1は、代替屋根材10と、取付台30と、カバー部材50と、を主に備えている。
具体的には、代替屋根材10は、屋根材65に代替して使用されるものであり、ダイカスト鋳造を用いてアルミ合金により形成されている。この代替屋根材10は、平板状の基体部11と、基体部11を貫通している基体開口部12と、基体開口部12の周縁から上方に立設されている筒壁部13と、筒壁部13の上端から内側へ平板状に延びて基体開口部12よりも小さい上面開口部15を形成している上面部14と、上面開口部15の周縁辺から互いに対向するように下方に夫々垂設されている平板状の一対の案内面部16と、を有している。
基体部11は、軒端と棟端とを結ぶ屋根の傾斜方向に対して直角方向(以下、屋根の横方向と称す)となる両端部のうち、隣接する屋根材65の下方へ重ね合わされる端部側(図2において左側の端部)の軒側端部が、残りの部位の軒側端部よりも棟側に後退している。この基体部11は、外形及び上面の形状が、屋根材65としての平型の瓦と同一の形状及び寸法に形成されている。従って、図示は省略するが、屋根材65も、該当する部位の軒側端部が棟側に後退している。
基体開口部12は、基体部11の中央に形成されており、屋根の傾斜方向に延びた略矩形で、棟側となる辺はその中央が棟へ突出するように屈曲している。筒壁部13は、基体開口部12の周縁から立設されているため、外周面のうちの棟を向いている面が屈曲している。筒壁部13は、上端の高さが、基体部11の上面に対して棟側から軒側へ向かって低くなるように傾斜している。この筒壁部13の上端の傾斜角度は、代替屋根材10が屋根下地60に取付けられた時に、屋根下地60と略平行となる角度に設定されている。
上面開口部15は、屋根の傾斜方向に延びている略矩形に形成されており、棟側となる辺の中央が内側(軒方向)へ台形に突出している。一対の案内面部16は、上面開口部15の周縁辺における屋根の傾斜方向に平行に延びている二辺において、棟側の端部から全長の約1/4の長さの範囲から下方に基体部11の上面と略同じ高さまで垂設されている。一対の案内面部16は、夫々の上辺同士の間隔に対して、下辺同士の間隔が狭くなるように夫々が傾斜している。
また、代替屋根材10は、上面部14で屋根の傾斜方向と平行に延びている識別部17と、筒壁部13よりも軒側で基体部11の上面から突出していると共に屋根の傾斜方向に延びており屋根の横方向の中央から夫々離間している一対の突条部18と、基体部11の棟側となる端部の下面から下方に突出している台座部19と、台座部19の棟側となる端部から下方に突出している突起部20と、基体部11の下面の略全面において下方へ格子状に突出している補強リブ21と、基体部11における棟側となる端部付近で貫通している二つの固定孔22と、二つの固定孔22よりも軒側で基体部11の上面から突出していると共に屋根の横方向に延びており、屋根の横方向に列設されている四つの堰部23と、を有している。
識別部17は、上面部14における一対の案内面部16の間を通る屋根の横方向の中央で、上面開口部15の周縁辺における案内面部16が垂設されている辺と平行に延びた溝状に形成されており、上面開口部15よりも棟側と軒側に夫々形成されている。一対の突条部18は、筒壁部13の外周面における屋根の横方向を向く面の延長線よりも、屋根の横方向の中央に寄った位置に夫々形成されている。二つの固定孔22は、台座部19の上方に位置しており、基体部11の上面側の孔縁が、基体部11の上面よりも膨出している。四つの堰部23は、基体部11の中央に近い側の端部が、反対側の端部よりも軒側に位置するように夫々傾斜している。基体部11における二つの固定孔22と四つの堰部23が備えられている部位は、隣接して棟側に配置される屋根材65により上方から被覆される。この代替屋根材10は、補強リブ21の存在により、全体の各部の厚さを薄くして軽量化しつつ、強度・剛性を維持している。
なお、本実施形態では、基体部11は平型(F型)の瓦と同一の形状に形成されているが、瓦に代替して代替屋根材10を使用する場合、基体部11はF型の他に、J型、S型、スパニッシュ型、本葺き型、等の瓦と同一の形状にすることができる。また、代替屋根材10をアルミ合金(アルミダイカスト)で形成しているため、陶器で形成した場合と比較して、軽量であると共に、搬送時や取付作業時に破損し難い。
取付台30は、一対の平板状の底板部31と、一対の底板部31夫々の内側の辺の全長に亘り上方に立設されている一対の立壁部32と、一対の立壁部32夫々の上辺を連結している連結部33と、連結部33に形成されている複数(三つ)の固定部材取付部34と、一対の立壁部32の上下に延びている辺同士を連結している平板状の側壁部35と、一対の立壁部32夫々から側方に向かって底板部31の外側の辺まで延設されている一対の張出部36と、一対の張出部36夫々の側方端辺から底板部31の外側の辺に沿って短く延出している一対の被案内面部37と、を有している。
また、取付台30は、連結部33の上面から突出している複数の載置突部38と、一部の載置突部38において連結部33の上面まで凹んでいる凹部39と、一対の底板部31の夫々の上面から上方へ突出している複数のボス部40と、各ボス部40及び底板部31を貫通している取付孔41と、を有している。
一対の底板部31は、外形が夫々長方形に形成されており、代替屋根材10の上面開口部15を通過する大きさに列設されている。一対の立壁部32は、下端から上端までの高さが、屋根下地60に取付けられている代替屋根材10の上面開口部15に取付台30を挿通して、一対の底板部31を屋根下地60に当接させた時に、一対の立壁部32の上端が上面開口部15よりも上方に位置する高さに設定されている。
複数の固定部材取付部34は、連結部33において一対の底板部31が列設されている方向に対して直角方向に、等間隔で三つ並んでいる。各固定部材取付部34は、逆T字形で一対の立壁部32の一方側から反対側に貫通するように延びていると共に、連結部33の上面に開放されている溝、つまり、Tスロットである。固定部材取付部34は、一対の立壁部32の一方側において、溝の底から上方へ突出しているストッパ42により閉塞されている。また、固定部材取付部34は、一対の立壁部32の間に架け渡されている架橋部43により、溝の底が閉塞されている。これにより、固定部材取付部34には、ストッパ42が突出していない側の立壁部32側から溝内にボルトの頭部又はナットを挿入させてスライドさせることができ、ストッパ42により反対側から抜けるのが防止されると共に、架設部43によりボルトの頭部又はナットの落下が防止される。
一対の側壁部35は、上辺が連結部33と接続されており、下辺が底板部31よりも高く位置している。これにより、取付台30を屋根下地60に取付けた時に、側壁部35と屋根下地60との間に取付台30を貫通する空間が形成される。一対の張出部36は、一対の立壁部32の夫々上下に延びている二つの辺の一方の辺から底板部31の端辺に沿って延びている。また、一対の張出部36は、底板部31から立壁部32より低い高さ(立壁部32の約2/3の高さ)まで延設されている。
複数の載置突部38は、連結部33の上面において、一対の側壁部35側の二つ端辺の位置と、三つの固定部材取付部34同士の間の位置に、夫々備えられており、一対の立壁部32が対向している方向へ延びている。複数の載置突部38は、夫々の上面が同一面上にある。凹部39は、連結部33の上面の軒側端辺と棟側端辺の載置突部38に設けられており、載置突部38の長手方向(屋根の横方向)の中央で凹んでいる。複数のボス部40は、一対の立壁部32夫々の外側で底板部31の外側の辺が延びている方向に、等間隔で三つ夫々備えられている。ボス部40は、上面における取付孔41の周囲が一段高く盛り上がっている。本実施形態の取付台30は、アルミ合金のダイカスト鋳造により形成されている。
カバー部材50は、平板状の天板部51と、天板部51の周縁から下方へ延出している周壁部52と、天板部51を貫通している貫通孔53と、を有している。天板部51及び周壁部52は、外周形状が代替屋根材10の筒壁部13の外周形状と相似形状であり、全体が略矩形で、一つの辺の中央が外方へ突出するように屈曲した形状である。天板部51及び周壁部52は、代替屋根材10の筒壁部13よりもひと回り大きく形成されている。これにより、カバー部材50によって、代替屋根材10の筒壁部13の上部を上方から覆うことができる。
貫通孔53は、天板部51の周縁辺のうち平行に延びている二辺と直交する方向へ延びた長孔である。また、貫通孔53は、カバー部材50の下方且つ中央に取付台30を位置させた時に、取付台30の三つの固定部材取付部34のうち、外側の二つの固定部材取付部34の夫々の中央と対応する位置に形成されている。本実施形態のカバー部材50は、ステンレス鋼やアルミ合金等の金属板、耐候性に優れた合成樹脂、等によって形成されている。
次に、本実施形態の固定具1の使用方法について、主に図4を参照して説明する。なお、図4では、取付台30の上部のみを断面で表しており、取付台30の下部は側面を表している。
まず、固定具1が取付けられる屋根の屋根下地60は、野地板61と、野地板61の上面に敷設された防水シート62とで構成されている。この屋根下地60には、屋根の横方向に延びている長尺の桟木63が、屋根の傾斜方向に等間隔で取付けられている。この桟木63に屋根材65としての瓦が引掛け係止されることにより、多数の瓦が屋根下地60の上面に葺設されている。また、図示は省略するが、多数の瓦(屋根材65)は、屋根の傾斜方向へ千鳥状に葺設されている。
屋根に固定具1を取付ける際は、その取付位置に該当する屋根材65に代替して、代替屋根材10を屋根下地60に取付ける。この時、代替屋根材10の台座部19を、桟木63に載置すると共に、突起部20を桟木63の棟側を向いている面に当接させた状態とし、上方から固定孔22を通した釘を桟木63に打込んで固定する。これにより、代替屋根材10の上面開口部15の部分で、屋根下地60が上方に開放された状態となる。
続いて、取付台30を代替屋根材10の上面開口部15に挿入するが、その前に、固定部材取付部34に固定部材としてのボルト70を取付けておく。本実施形態では、三つの固定部材取付部34のうち、外側の二つの固定部材取付部34に対して、開放されている一方の立壁部32側から、倒立させたボルト70の頭部71を挿入し、ボルト70のネジ軸部72を連結部33の上面から上方に突出させる。固定部材取付部34に取付けられたボルト70は、頭部71における四角柱状の部位の平行な二面が固定部材取付部34の溝の内面に当接することでネジ軸部72の軸周りに対して回転不能となると共に、固定部材取付部34の延びている方向へのみスライド可能となる。なお、本実施形態では、ボルト70として、根角ボルトを図示しているが、六角ボルトとすることもできる。
上記のようにボルト70が取付けられた取付台30を、一対の底板部31における張出部36と接続している端辺を屋根の棟方向へ向けた状態で、代替屋根材10の上面開口部15に挿通し、一対の底板部31を屋根下地60に当接させる。この際に、取付台30の一対の被案内面部37が、代替屋根材10の一対の案内面部16に夫々案内される。
そして、代替屋根材10の上面開口部15の中央に取付台30を位置させる。具体的には、代替屋根材10の二つの識別部17を結んだ直線(図5における一点鎖線)に対して、取付台30の二つの凹部39が同一線上となると共に、上面開口部15との隙間(案内面部16と被案内面部37との隙間)が均一になるように取付台30を位置させることで、代替屋根材10に対して取付台30を容易に位置決めすることができる。なお、代替屋根材10の一対の案内面部16と、取付台30の一対の被案内面部37とが、面で向き合っているめ、案内面部16と被案内面部37との隙間を見ることでも、代替屋根材10に対する取付台30の偏りが判り易く、位置決めの目安とすることができる。
代替屋根材10に対して取付台30を位置決めしたら、各取付孔41にビス73を挿通して一対の底板部31を屋根下地60に留め付ける。この際に、取付孔41が上方に突出したボス部40に形成されているため、取付孔41に挿通したビス73が倒れることなく自立し、ビス73による屋根下地60への留め付け作業が行い易い。なお、取付台30を屋根下地60に取付ける前に、底板部31と屋根下地60との間にブチルゴム等により形成されたシールシート74を介装させる。このシールシート74により、ビス73を伝った屋根下地60の下方への雨水等の浸入が防止される。
取付台30を屋根下地60に取付けたら、連結部33から上方に突出しているボルト70のネジ軸部72を、円環状のシールリング75、及び、カバー部材50の貫通孔53に、夫々下方から順次挿通する。そして、カバー部材50の周壁部52が、代替屋根材10の筒壁部13の上端外周を囲むように、天板部51を取付台30の載置突部38に載置する。この際に、カバー部材50の内側に、発泡ゴム等の弾性を有するシール部材76を取付けた(接着した)状態で、カバー部材50を載置する。
これにより、シールリング75が、連結部33と天板部51との間に形成された隙間内に、天板部51により一定の圧縮量で収容された状態となり、カバー部材50の貫通孔53が良好な状態でシールされる。また、代替屋根材10の上面開口部15がカバー部材50で被覆されると共に、カバー部材50と筒壁部13との間がシール部材76でシールされる。この際に、シール部材76が、筒壁部13の上端の上面部14に対して、面で接触するため、シール部材76によるシール性が十分に確保される。従って、上面開口部15を介した代替屋根材10よりも下方への雨水等の浸入を防止することができる。
このように、代替屋根材10の上面開口部15をカバー部材50で被覆することで、天板部51の上面から上方へ向かって二つのボルト70のネジ軸部72が突出している状態となる。そして、これら突出しているネジ軸部72を用いて、屋根上設置物を固定具1に対して取付ける。具体的には、屋根上設置物の一部を構成している桟部材80に形成された孔部(図示は省略)に、ネジ軸部72を下方から挿通し、桟部材80をカバー部材50の天板部51に載置して、ネジ軸部72に螺合させたナット77で締付ける。これにより、桟部材80が固定具1(取付台30及びカバー部材50)に対して取付けられた状態となり、屋根上設置物が固定具1を介して屋根下地60に固定された状態となる。
なお、ネジ軸部72の突出位置が、屋根下地60に対して桟部材80を固定すべき位置から屋根の横方向へずれている時は、固定部材取付部34に沿ってボルト70をスライドさせることにより、ネジ軸部72の突出位置を調整することができる。
本実施形態では、上記のように固定具1を用いることで、以下のような固定構造を形成している。すなわち、代替屋根材10が屋根材65に代替して屋根下地60に取付けられていると共に、取付台30が代替屋根材10の上面開口部15との間で隙間が形成されている状態で屋根下地60に取付けられており、取付台30の固定部材取付部34に取付けられているボルト70を介して屋根上設置物が固定されている屋根上設置物の固定構造である。
このように、本実施形態によれば、代替屋根材10を、金属としてアルミ合金により形成していることから、陶器で形成したものと比較して、製品寸法のばらつきが小さく製品の寸法精度が高くなるため、上面開口部15と取付台30との隙間が可及的に小さくなるように代替屋根材10を形成することができる。従って、代替屋根材10の上面開口部15と取付台30との隙間が小さくなることで、上面開口部15に対する取付台30の偏りが判り易くなるため、代替屋根材10に対する取付台30の位置決めが行い易い。
また、代替屋根材10に備えられている一対の案内面部16により、取付台30を上面開口部15から屋根下地60付近まで案内することができるため、上面開口部15に対して取付台30を位置決めしたままの状態で屋根下地60に当接させ易く、屋根下地60への取付作業性が良い。
更に、取付台30の形態を、一対の底板部31の内側の辺から立壁部32を立設しているため、立壁部32が底板部31の外側の辺よりも内側に位置し、取付台30を代替屋根材10の上面開口部15に挿通した時に、上面開口部15と立壁部32との間に作業者の指などが入る空間が形成される。これにより、代替屋根材10の上面開口部15に挿通して取付台30を屋根下地60に当接させた状態でも、作業者が一対の立壁部32を掴むことができるため、代替屋根材10に対する取付台30の位置決め作業が行い易い。
加えて、代替屋根材10の上面部14に、屋根の傾斜方向と平行に延びている識別部17を備えているため、識別部17に対して取付台30の凹部39を合わせることで、代替屋根材10に対した取付台30を容易に位置決めできる。
また、代替屋根材10に一対の突条部18を備えているため、屋根下地60への雨水等の浸入を防止することができる。詳述すると、固定具1を屋根下地60に取付けた状態で、屋根の棟側から雨水等が代替屋根材10の基体部11上に流下してくると、筒壁部13における屈曲して棟を向いている面により、筒壁部13で堰き止められることなく、筒壁部13の外壁に沿って流れた後に、筒壁部13の軒側へ回り込もうとするが、一対の突条部18により回り込みが阻まれ、一対の突条部18の間から軒側へは雨水等が殆ど放出されない。従って、千鳥状に葺設されている屋根材65において、互いに重ね合わされている部位上に、代替屋根材10からは雨水等が放出されないため、屋根材同士の間に雨水等が浸入し難くなり、代替屋根材10の軒側の屋根材65において屋根下地60への雨水等の浸入を防止することができる。
また、取付台30の複数の載置突部38に、カバー部材50の天板部51を載置して桟部材80を取付けていることから、載置突部38、天板部51、及び、桟部材80が順次当接している状態となり、載置突部38と天板部51との間にシールリング75のような弾性を有した部材が介装されないため、桟部材80の取付けにがたつきが生じることはなく、屋根上設置物を安定した状態で固定することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、代替屋根材10の一対の案内面部16を、上面開口部15の周縁辺の対向している辺の一部から下方に垂設している場合を示したが、これに限定されず、対向している辺の全体から案内面部16が下方に垂設された構成とすることもできる。
また、上記の実施形態では、溝状の識別部17を示したが、これに限定されず、突起、或は、シール等により識別部を構成することもできる。
更に、上記の実施形態では、取付台30の固定部材取付部34に、ボルト70を取付ける例を示したが、これに限定されず、固定部材取付部34に、固定部材として六角ナット、四角ナット、Tスロット用ナット、等のナットを取付ける構成とすることもできる。この場合、固定部材取付部34に取付けたナットに、桟部材80側からボルトを螺合させて締付けることで、固定具1に桟部材80を取付けることができる。
更に、上記の実施形態では、屋根の横方向に隣接する屋根材65の下方に重ね合わされる端部側の軒側端部が、残りの部位の軒側端部よりも棟側に後退している屋根材65と対応している構成の代替屋根材10を示したが、これに限定されず、図6乃至図9に示すように、残りの部位の軒側端部と同じ位置まで形成されている屋根材66と対応している構成の代替屋根材10Bとすることもできる。この代替屋根材10Bは、基体部11における屋根の横方向の両端部のうち、屋根材66の上方に重ね合わされる端部側(図7において右側の端部)の軒側端部に、残りの軒側端部よりも軒方向へ向かって内側から膨出している膨出部24を有している。この膨出部24により、屋根材66(図9において二点鎖線で示す)の該当部分を削り落とさなくても、代替屋根材10Bを重ね合わせることができ、屋根下地60への固定具1の取付作業が容易になる。
なお、代替屋根材10Bは、屋根の横方向における膨出部24とは反対側の端部の軒側端部が、代替屋根材10(屋根材65)と同様に棟側に後退している。これにより、代替屋根材10Bを、屋根材65の代替にも使用することができる。また、図6乃至図9の実施形態では、取付台30の三つの固定部材取付部34のうち、中央の固定部材取付部34にボルト70を取付けていると共に、カバー部材50に貫通孔53を一つのみ形成している。この実施形態でも、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記の実施形態では、代替屋根材10に代替される屋根材65として、屋根の横方向の両端部のうち、隣接する屋根材65の下方に重ね合わされる端部側の軒側端部が、残りの部位の軒側端部よりも棟側へ後退している構成の屋根材65と代替する例を示したが、これに限定されず、当該軒側端部が、残りの部位の軒側端部と同じ位置まで形成されている構成の屋根材66と代替屋根材10を代替する構成とすることもできる。この場合、代替屋根材10の屋根の横方向に隣接する屋根材66のうち、代替屋根材10の下方に重ね合わされる端部側を有している屋根材66では、当該端部側の軒側端部を棟側に向かって削り落とすことで代替屋根材10と重ね合わせることができる。