JP6087460B1 - 歯科用成形体及び歯科用樹脂材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】他の種類の樹脂との接着力を確保できるとともに、患者の口腔内の環境に適した歯科用成形体及び歯科用樹脂材料を提供する。【解決手段】歯科用成形体は、口腔内に使用される所定形状を有し、耐衝撃性ポリスチレンと、酸化チタンと、チタンイエローと、酸化鉄と、ステアリン酸亜鉛と、を備える。耐衝撃性ポリスチレンは主成分として99%以上である。酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%である。チタンイエローは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%である。酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%である。ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%である。【選択図】図1

Description

本発明は、歯科用成形体及び歯科用樹脂材料に関する。
義歯(入れ歯)の義歯床、暫間被覆冠、人工歯及び歯科矯正器具等の歯科用成形体が知られる。例えば、特許文献1には、歯科用成形体にポリプロピレン樹脂材料を用いたものが開示される。
特許第5055397号公報
このようなポリプロピレン樹脂製の歯科用成形体を口腔内に装着した患者が飲食を繰り返すと、その成形体の表面が次第に粗造になり、その成形体の表面にプラークが付着しやすくなる。そのため、予め成形体の表面に歯科用の表面滑沢剤(コーティング材)を接着させ、成形体を保護することが考えられる。しかし、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのアクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂等の既存のコーティング材では、ポリプロピレン樹脂製の歯科用成形体との接着力が弱く、成形体の表面を十分に保護することができない。
本発明の課題は、他の種類の樹脂との接着力を確保できるとともに、患者の口腔内の環境に適した歯科用成形体及び歯科用樹脂材料を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の歯科用成形体は、
口腔内に使用される所定形状を有した歯科用成形体であって、
主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%の酸化チタンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%のチタンイエローと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%のステアリン酸亜鉛と、
を備えることを特徴とする。
また、本発明の別の歯科用成形体は、
口腔内に使用される所定形状を有した歯科用成形体であって、
主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0005〜0.045%の酸化チタンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の顔料と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%のステアリン酸亜鉛と、
を備えることを特徴とする。
なお、本明細書において、主成分とは、99%以上の含有率を有する成分をいう。本発明の歯科用成形体は、主成分の耐衝撃性ポリスチレンと、この耐衝撃性ポリスチレン以外の残部を有する。この残部は、酸化チタンと、チタンイエロー又は顔料と、酸化鉄と、ステアリン酸亜鉛と、不可避的不純物と、からなる。
本発明の歯科用成形体は、耐衝撃性ポリスチレン製である。よって、本発明の歯科用成形体は、非結晶性樹脂である歯科用アクリル樹脂(PMMA)、歯科用エポキシ樹脂、歯科用紫外線硬化樹脂などの他の樹脂と化学的に接合させることが可能であり、他の樹脂との間の接着力を確保することができる。それ故、ポリプロピレン樹脂製の歯科用成形体では困難である歯科用成形体の修正研磨といった修理、補修等の作業を簡易に行うことができ、歯科用成形体を柔軟に加工できる。また、本発明の歯科用成形体は、耐衝撃性ポリスチレン製であることからポリスチレンの脆さが改善され、患者の口腔内の環境にも適合できる。更に、本発明の歯科用成形体は、耐衝撃性ポリスチレン製であるため、吸水性が極めて低く、雑菌の繁殖を抑制することができ、そして、比重が小さく(軽く)、患者の装着感を無くすことができる。したがって、本発明の歯科用成形体を患者に衛生的かつ快適に長期に渡り使用させることが可能となる。
口腔内に使用される歯科用成形体では、歯科用成形体を口腔内の歯牙等の色に近づける場合には、樹脂が黄色から白色の中間的な色が着色される。酸化チタン、チタンイエロー(ニッケルチタンイエローともいう)、及び、酸化鉄は、色付け(発色)のために添加される。例えば、実際の歯牙に近い色(黄色)を生じさせるためには、酸化チタン(白系)とチタンイエロー(黄色)との混合比が調整され、この場合には顔料を添加しない。酸化鉄は、これらに加えられることにより色の彩度や明度を落として自然な歯牙の色に近づける。
酸化チタン、チタンイエロー、及び、酸化鉄の含有量は、主に染色をどのようにするかによって定められる。酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%である。この重量比率が0.001%未満であると、チタンイエローに対する色調整の役割が果たせず、他方、0.09%を超えると逆に色調整の機能を逸脱し、樹脂材料の強度等の物性を阻害する。そのため、重量比率が0.001〜0.09%の範囲に設定される。
チタンイエローについては、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%である。この重量比率が0.001%未満であると、歯牙に近い色にする染色効果が得られず、他方、0.09%を超えると却って目的とする染色性を損なうとともに、樹脂材料の物性上も好ましくない。そのため、重量比率が0.001〜0.09%の範囲に設定される。
酸化鉄については、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%である。この重量比率が0.0001%未満であると、色の彩度、明度を落とすのに不十分であり、他方、0.01%を超えると自然な色合いが損なわれる。そのため、重量比率が0.0001〜0.01%の範囲に設定される。
ステアリン酸亜鉛は、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂を均一に混ぜる撹拌性、ひいては均一に発色させる均一染色性に寄与する。そして、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂の相互の撹拌性及び混合性を向上させる。このステアリン酸亜鉛は、チタンイエローが添加されている場合には、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%である。この重量比率が0.01%未満であると、染色における撹拌性及び混合性を向上させる効果が期待できず、他方、0.8%を超えると、撹拌及び混合自体が困難になる。そのため、重量比率が0.01〜0.8%の範囲に設定される。
このような口腔内の歯牙等の色に近づける歯科用成形体の場合には、
酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
チタンイエローは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.04〜0.2%であることが好ましい。
これによれば、ステアリン酸亜鉛の重量比率により、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂との撹拌性が一層良好になり、より均一な染色性が得られる。また、酸化チタン、チタンイエロー、及び、酸化鉄の含有率により、ステアリン酸亜鉛との効果も相まって、歯科用成形体に更に良好な発色・染色効果を付与することができる。
ステアリン酸亜鉛、酸化チタン、チタンイエロー、及び、酸化鉄の添加の効果について付言すれば、これらを添加することにより、例えば、歯科用成形体にふさわしい染色が可能となる。更に、射出成形時の樹脂の流動性が増すことにより、歯科用成形体の細部の再現度が向上する。その上、口腔内で歯科用成形体を着脱させる場合には、上記の添加剤により患者の口腔内の残存組織及び歯牙と、歯科用成形体との間の摩擦による抵抗を軽減でき、滑りが良好となる。そのため、患者の口腔内で歯科用成形体の装着及び取外しが容易になる。
一方、歯科用成形体を口腔内の歯肉等の色に近づける場合には、樹脂がピンク色に染色される。酸化チタン、顔料(例えば、赤系顔料)、及び、酸化鉄は、色付け(発色)のために添加される。例えば、実際の歯肉に近い色(ピンク色)を生じさせるには、赤系顔料と酸化チタン(白系)との混合比が調整され、この場合にはチタンイエローを添加しない。酸化鉄は、これらに加えられることにより色の彩度や明度を落として自然な歯肉の色に近づける。
酸化チタン、顔料、及び、酸化鉄の含有量は、主に染色をどのようにするかによって定められる。酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0005〜0.045%である。この重量比率が0.0005%未満であると、顔料に対する色調整の役割が果たせず、他方、0.0045%を超えると逆に色調整の機能を逸脱し、樹脂材料の強度等の物性を阻害する。そのため、重量比率が0.0005〜0.045%の範囲に設定される。
顔料(例えば、赤系)については、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%である。この重量比率が0.0001%未満であると、歯肉に近い色にする染色効果が得られず、他方、0.01%を超えると却って目的とする染色性を損なうとともに、樹脂材料の物性上も好ましくない。そのため、重量比率が0.0001〜0.01%の範囲に設定される。
酸化鉄については、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%である。この重量比率が0.0001%未満であると、色の彩度、明度を落とすのに不十分であり、他方、0.01%を超えると自然な色合いが損なわれる。そのため、重量比率が0.0001〜0.01%の範囲に設定される。
ステアリン酸亜鉛は、酸化チタン、顔料、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂を均一に混ぜる撹拌性、ひいては均一に発色させる均一染色性に寄与する。そして、酸化チタン、顔料、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂の相互の撹拌性及び混合性を向上させる。このステアリン酸亜鉛は、顔料(例えば、赤系顔料)が添加されている場合には、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%である。この重量比率が0.005%未満であると、染色における撹拌性及び混合性を向上させる効果が期待できず、他方、0.2%を超えると、撹拌及び混合自体が困難になる。そのため、重量比率が0.005〜0.2%の範囲に設定される。
このような口腔内の歯肉等の色に近づける歯科用成形体の場合は、
酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.03%であり、
顔料は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.1%であることが好ましい。
これによれば、ステアリン酸亜鉛の重量比率により、酸化チタン、顔料(例えば、赤系顔料)、酸化鉄、及び、耐衝撃性ポリスチレン樹脂との撹拌性が一層良好になり、より均一な染色性が得られる。また、酸化チタン、顔料(例えば、赤系顔料)、及び、酸化鉄の含有率により、ステアリン酸亜鉛との効果も相まって、歯科用成形体に更に良好な発色・染色効果を付与することができる。
ステアリン酸亜鉛、酸化チタン、顔料、及び、酸化鉄の添加の効果について付言すれば、これらを添加することにより、例えば、歯科用成形体にふさわしい染色が可能となる。更に、射出成形時の樹脂の流動性が増すことにより、歯科用成形体の細部の再現度が向上する。その上、口腔内で歯科用成形体を着脱させる場合には、上記の添加剤により患者の口腔内の残存組織及び歯牙と、歯科用成形体との間の摩擦による抵抗を軽減でき、滑りが良好となる。そのため、患者の口腔内で歯科用成形体の装着及び取外しが容易になる。
ところで、本発明の実施態様では、耐衝撃性ポリスチレンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が2〜15%のポリブタジエンを含有する。好ましくは、ポリブタジエンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が5〜12%である。より好ましくは、ポリブタジエンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が7〜10%である。
耐衝撃性ポリスチレンに対するポリブタジエンの重量比率が2〜15%であると、歯科用成形体を折り曲げても白い折り目が付きにくくなるとともに、耐衝撃性ポリスチレン樹脂の剥離、割れといった剥離破折が発生しにくくなる。そして、耐衝撃性ポリスチレン樹脂を射出成形した後における冷却時の樹脂の収縮率を抑制でき、歯科用成形体を患者の口腔内に精密に適合させることが可能になる。また、歯科用成形体を人体に対して適度な硬さにすることができる。これらの効果は、耐衝撃性ポリスチレンに対するポリブタジエンの重量比率が5〜12%であると効果的であり、その重量比率が7〜10%であると、より効果的である。
一方で、耐衝撃性ポリスチレンに対するポリブタジエンの重量比率が2%に満たないと、折り曲げにより白い折り目が付き易くなるとともに、剥離破折が発生し易くなる。そして、耐衝撃性ポリスチレンの射出成形後に樹脂の収縮率が高まることで、患者の口腔内に精密に歯科用成形体を適合させにくくなる。耐衝撃性ポリスチレンに対するポリブタジエンの重量比率が15%を超えると、患者の口腔内に装着させる歯科用成形体として不向きな特性となる。
なお、歯科用成形体に対して、歯科用成形体の表面に接着した状態で表面を被覆して位置するアクリル樹脂又はエポキシ樹脂のコーティング層を設けてもよい。これによれば、歯科用成形体の表面をアクリル樹脂又はエポキシ樹脂で覆うことができ、患者の口腔内で歯科用成形体の表面が粗造になるのを抑制できる。また、コーティング層がアクリル樹脂又はエポキシ樹脂であるため、耐衝撃性ポリスチレンにコーティング層を接着させることも可能となる。具体的には、アクリル系、エポキシ系の既存の歯科用表面滑沢剤を使用することで、歯科用成形体の表面が粗造になるのを抑制することができる。
歯科用成形体としては、例えば、義歯床(ぎししょう)、人工歯、被覆冠、審美ラミネート、暫間被覆冠(ざんかんひふくかん)、及び、歯科矯正器具から選ばれたいずれか1の形態を有するものとすることができる。
義歯床は、総義歯の義歯床、部分義歯の義歯床等があり、人工歯を支持するとともに、口腔内への装着部としての機能を果たす。更に詳しく言えば、針金(口腔内維持装置:クラスプとも言う)及び金属を使用しない有床義歯床(ノンクラスプ義歯床)などを含む。このような義歯床では、一般に歯肉の色に対応してピンク色に着色され、その着色のために赤系顔料が用いられ、これに混ざり合う白系添加剤として酸化チタンが用いられる。また、赤系顔料に対して、くすんだ色添加剤として酸化鉄を加え、実際の歯肉の色に近い自然な色を出すこともできる。
人工歯は、義歯床と一体化されて義歯を構成するもの、口腔に直接的に植歯されるもの等がある。被覆冠は、歯が大きく壊れた場合に修復する修復物であり、歯の全部又は一部を修復する人工歯冠、抜けた歯の隣の歯を削って支台歯にして橋渡しをするようにして被せるブリッジ等を含む。審美ラミネートは、患者の前歯に貼り合わせる非常に薄い補綴物であり、患者の審美的な要件を満たすための補綴物である。人工歯、被覆冠及び審美ラミネートは、黄色から白色の中間的な色が着色されるのが普通であり、その場合には白系顔料を用い、これに黄色系のチタンイエローを加えることにより、樹脂に対し歯の色に近い「黄白系」の色付けが可能となる。
暫間被覆冠は、長時間装着でなく一定の限られた間(暫間)に使用される、例えば、マウスピース、抜歯後に仮に装着する仮歯、インプラントの施術後にインプラントが安定するまで被せる被覆冠等である。歯科矯正器具は、例えば、上顎と下顎のかみ合わせの矯正、歯床の矯正、歯並び及び歯の角度の矯正等のために口腔内に装着されるものである。暫間被覆冠及び矯正器具の場合には、必ずしも歯肉の色に対応する赤系色に着色する必要はないが、そのものの存在を目立ちにくくする等の目的がある場合には、義歯床と同様に歯肉に対応する着色を施すことができる。暫間被覆冠及び矯正器具を歯肉の色に対応させない場合には、所望の色の顔料を酸化チタンや酸化鉄とともに用いて、適宜の色に着色すればよい。
その他にも部分床義歯(部分入れ歯)を維持するための維持装置(クラスプ)、上顎の奥歯の間を橋渡しする装置(パラタルバー)等の代用品として本発明の歯科用成形体を用いることが可能である。
上記の義歯床、人工歯、被覆冠、審美ラミネート、暫間被覆冠、歯科矯正器具等の歯科用成形体を耐衝撃性ポリスチレン製とすることで、金属アレルギーの心配がない。そして、吸水性が極めて低いために含水しにくく、雑菌停滞がなく衛生的である。一方、ポリプロピレン、ポリアミド、ナイロン製の、例えば、ノンスクラプ義歯(針金、金属を留め金として使用しない義歯床)の場合には、人工歯と義歯床との間の接着力が十分でないために人工歯と義歯床の境に食物残渣が侵入停滞して雑菌が繁殖することで非衛生的になりがちである。それに対して、本発明の耐衝撃性ポリスチレン製の歯科用成形体ならば、溶剤を使用して人工歯と義歯床とを化学的に結合させることが可能であり、雑菌の繁殖を抑えることが可能となる。
また、本発明の耐衝撃性ポリスチレン製の歯科用成形体として被覆冠(人工歯冠又はブリッジ)を作製した場合には、作製した被覆冠の表面にUV系歯科用レジン、アクリル系歯科用レジン、UV系歯科用塗料を化学的に溶着、接合させることが可能である。そのため、被覆冠に天然歯に近い色調を付与させ、患者の審美的要求を満たすことが可能である。被覆冠を装着した患者が飲食を繰り返すことで、咬合摩擦により被覆冠が摩耗しても歯科医師がUV系レジン、アクリル系レジン、UV系歯科用塗料を使用することで、被覆冠の形状及び咬合機能を簡易に回復させることが可能となる。
同様に、耐衝撃性ポリスチレン製の歯科用成形体としてノンスクラプ義歯(針金、金属を留め金として使用しない義歯床)を作製した場合においても、作製した成形物を築造して補修することが可能である。例えば、ノンスクラプ義歯の作製後に、患者に顎堤吸収(欠損部顎堤の形態的変化)が発生したとしても、歯科医師自らがレジン、塗料等を使用して義歯床内面の形状等を築造して補修することが可能である。また、耐衝撃性ポリスチレンは、寸法の安定性に優れているため、歯科医師が採取する歯型(印象)に対して綿密に適合させることが可能であり、特にノンスクラプ義歯の場合には、装着感に優れたものを患者に提供できる。耐衝撃性ポリスチレン製のノンスクラプ義歯であるため、弾性率が高く義歯床の安定性に優れたものとなる。
以上のような各種の歯科用成形体は、ペレット状、シート状、ブロック状等の各種の形態の歯科用樹脂材料を溶融し、例えば、射出成形により製造される。
本発明の歯科用樹脂材料は、
口腔内において使用される歯科用成形体を製造するために使用される歯科用樹脂材料であって、
主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%の酸化チタンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%のチタンイエローと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%のステアリン酸亜鉛と、
を備えることを特徴とする。
また、本発明の歯科用樹脂材料は、
口腔内において使用される歯科用成形体を製造するために使用される歯科用樹脂材料であって、
主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0005〜0.045%の酸化チタンと、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の顔料と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%のステアリン酸亜鉛と、
を備えることを特徴とする。
本発明は、歯科用樹脂材料として構成したものである。本発明の歯科用樹脂材料により歯科用成形体を製造する際は、耐衝撃性ポリスチレン製の樹脂材料を溶融して歯科用成形体が製造される。耐衝撃性ポリスチレン製の樹脂材料であるため、人体に樹脂アレルギーを発生させるアクリル樹脂を材料とした場合と異なり、人体に樹脂アレルギーを発生させない。同様に、耐衝撃性ポリスチレンを樹脂材料とするため、ビスフェノールA等を溶出させるポリカーボネート樹脂等を材料とした場合と異なり、ビスフェノールAなどの溶出のない安全性に優れた歯科用成形体を製造することが可能となる。そして、このような歯科用樹脂材料により製造された歯科用成形体は、上記と同様に他の樹脂との接着力を確保でき、かつ、患者の口腔内の環境に適合できる。
本発明の実施態様では、耐衝撃性ポリスチレンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が2〜15%のポリブタジエンを含有する。好ましくは、ポリブタジエンは、重量比率が5〜12%である。より好ましくは、ポリブタジエンは、重量比率が7〜10%である。これによれば、このような歯科用樹脂材料により歯科用成形体を製造した際に、耐衝撃性ポリスチレン樹脂の剥離破折が発生しにくく、かつ、その樹脂の収縮も抑えることができる。
口腔内の歯牙等の色に近づけた歯科用成形体を製造するために用いる歯科用樹脂材料では、
酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
チタンイエローは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.04〜0.2%であることが好ましい。
一方、口腔内の歯肉等の色に近づけた歯科用成形体を製造するために用いる歯科用樹脂材料では、
酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.03%であり、
顔料は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.1%である。
上記2つの歯科用樹脂材料によれば、歯科用成形体を製造した際に、均一な染色性を得ることができる。
本発明に係る歯科用成形体の一例としての部分義歯を示す図。 図1の義歯を人の口腔内に装着した例を示す図。 本発明の歯科用成形体の一例としての人工歯の一例を示す図。 被覆冠の一例であるクラウンを示す図。 審美ラミネートの一例である補綴物を示す図。 図5の補綴物を前歯に装着した例を示す図。 噛合わせ矯正装置の一例としての矯正器具を示す図。 図7の矯正器具を人の口腔内に装着した例を示す図。 暫間被覆冠の一例であるマウスピースを示す図。
図1は、本発明の歯科用成形体の一例である部分義歯1の義歯床2、図2は、部分義歯1を人の口腔内に装着した例である。図3は人工歯3の例を、図4はクラウン4(被覆冠)の例を、図5は補綴物5(審美ラミネート)の例を、図6は補綴物5を人の前歯に装着した例である。図7は噛合わせ矯正装置の一例である歯科矯正器具6、図8はその歯科矯正器具6を人の口腔内に装着した例を示している。さらに図9は暫間被覆冠の一例であるマウスピース7を示している。
次に、このような各種の歯科用成形体の材料組成、つまりは、その歯科用成形体を製造するための樹脂材料の実施例を説明する。
歯科用樹脂材料を製造するのに先立って、スチレンとポリブタジエンをグラフト共重合させて精製した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS:high impact polystyrene)を得る。この耐衝撃性ポリスチレンは、この耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が8%のポリブタジエンと、この耐衝撃ポリスチレンに対する重量比率が92%のスチレンを共重合させて精製した。なお、耐衝撃性ポリスチレンに対するポリブタジエンの重量比率は2〜15%、好ましくは5〜12%、より好ましくは7〜10%であり、その他の残部にスチレン(重量比率が80%以上)及び不可避的不純物(重量比率で数%以下)が含有するように精製される。不可避的不純物としては、不可避的に混入する不純物に加えて、所定の添加目的の添加剤も含まれる。この不可避的不純物は、本発明の本質的要件及び効果とは関係なく、それらに影響しないものであるから無視してよい。
次に精製された耐衝撃性ポリスチレンが主成分となるように、この耐衝撃性ポリスチレンと各種の材料を混ぜ合わせて歯科用樹脂材料を精製する。そこで、上記で精製した耐衝撃性ポリスチレン(50kg)に対して、所定の重量比率となる酸化チタン、チタンイエロー又は赤系の有機顔料、酸化鉄、及び、ステアリン酸亜鉛を準備する。ここで、歯牙の代わりとなる人工歯等の歯科用成形体を成形する場合には、チタンイエローが使用される。一方、歯肉等の代わりとなる義歯床等の歯科用成形体を成形する場合には、チタンイエローに代えて赤系の有機顔料が使用される。例えば、人工歯の歯科用成形体を形成する場合には、次の酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄及びステアリン酸亜鉛を準備する。具体的には、酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.04%(20g)である。チタンイエローは、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.034%(17g)である。酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.001%(0.5g)である。ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.065%(32.5g)である。
耐衝撃性ポリスチレン(50kg)に対して混ぜ合わせる酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、及び、ステアリン酸亜鉛の量は、上記の分量以外にも次の分量であってもよい。酸化チタンならば、0.5〜45gである(耐衝撃性ポリスチレン樹脂に対する重量比率が0.001〜0.09%)。チタンイエローならば、0.5〜45gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%)。酸化鉄ならば、0.05〜5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%)。ステアリン酸亜鉛ならば、5〜400gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%)。好ましくは、酸化チタンならば、10〜30gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%)。チタンイエローならば、10〜30gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%)。酸化鉄ならば、0.1〜2.5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%)。ステアリン酸亜鉛ならば、20〜100gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.04〜0.2%)。
一方、例えば、歯肉等の代わりになる義歯床の歯科用成形体を成形する場合には、次の、酸化チタン、赤系の顔料、酸化鉄及びステアリン酸亜鉛を準備する。具体的には、酸化チタンは、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.009%(4.5g)である。赤系顔料は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.0015%(0.75g)である。酸化鉄は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.0015%(0.75g)である。顔料は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.0015%(0.75g)である。ステアリン酸亜鉛は、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(50kg)に対する重量比率が0.018%(9g)である。なお、顔料としては、法定色素であるアルミニウムレーキやベンガラ等の有機又は無機顔料等の中から1つ又は複数を選択した。
耐衝撃性ポリスチレン(50kg)に対して混ぜ合わせる酸化チタン、赤系顔料、酸化鉄、及び、ステアリン酸亜鉛の量は、上記の分量以外にも次の分量であってもよい。酸化チタンならば、0.25〜22.5gである(耐衝撃性ポリスチレン樹脂に対する重量比率が0.0005〜0.045%)。赤系顔料ならば、0.05〜5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%)。酸化鉄ならば、0.05〜5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%)。ステアリン酸亜鉛ならば、2.5〜100gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%)。好ましくは、酸化チタンならば、5〜15gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.03%)。赤系顔料ならば、0.1〜2.5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%)。酸化鉄ならば、0.1〜2.5gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%)。ステアリン酸亜鉛ならば、5〜50gである(耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.1%)。
以上の各材料(耐衝撃性ポリスチレン、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄、及びステアリン酸亜鉛)を押出機により混ぜ合わせ、色付きのペレット状の歯科用樹脂材料(歯牙等の代わりとなる歯科用成形体を製造するのに用いる歯科用樹脂材料)を得た。同様に、各材料(耐衝撃性ポリスチレン、酸化チタン、赤系顔料、酸化鉄及びステアリン酸亜鉛)を押出機により混ぜ合わせ、色付きのペレット状の歯科用樹脂材料(歯肉等の代わりとなる歯科用成形体を製造するのに用いる歯科用樹脂材料)を得た。これらの歯科用樹脂材料には、歯科用樹脂材料に対する重量比率で数%以下の不可避的不純物が混入するが、本発明の本質的要件、効果とは関係なく、それらに影響しないものであるから無視してよい。
精製した歯科用樹脂材料により、図1〜図9に示す義歯床2、人工歯3、クラウン4(被覆冠)、補綴物5(審美ラミネート)、歯科矯正器具6、マウスピース7(暫間被覆冠)の歯科用成形体が成形される。このような歯科用成形体を成形する際には、射出成形法、コンプレッション成形法及び真空加圧成形法等のいずれでも、一般汎用成形機を使用して容易に加工が可能である。なお、図1に示す義歯床2と人工歯3は、耐衝撃性ポリスチレン製であるため、溶剤を使用して化学的に結合させることで、義歯床2と人工歯3の境に食物残滓が侵入停滞して雑菌が繁殖することを抑制することができる。
射出成形により本発明の歯科用成形体を製造する場合、本発明の歯科用樹脂材料は一般にはペレット状原料とされ、これを汎用樹脂成形機のバレルに入れ、ファーネス温度を180℃〜240℃に設定して原料を軟化・溶解させ射出成形を行う。本発明の歯科用樹脂材料には、ステアリン酸亜鉛が配合されているため、樹脂流動性が高く、成形体の細部に至るまで精密に再現することが可能である。なお、補綴物4(審美ラミネート)を成形する際は、補綴物4のフレーム(歯科用成形体)のみを本発明の歯科用樹脂材料により作製してもよい。具体的には、本発明の歯科用樹脂材料を板状に加工して吸引加圧装置を用いて歯型(石膏模型)に圧接して前歯の形に切り抜き、耐衝撃性ポリスチレン樹脂で薄いフレームを作製する。そして、作製したフレームに歯科用UVレジン、歯科用UV塗料を用いて天然歯状に薄く築造形成することで、図5の補綴物4を作製してもよい。耐衝撃性ポリスチレンを補綴物4のフレームに用いることにより、セラミック製の類似製品(例えば、ラミネートべニア)に比べて割れにくい特性を有する。
以上のような歯科用樹脂材料から製造される歯科用成形体は、次に列挙するように極めて有利な特長・特性を備えている。
1.人体での樹脂アレルギー反応が無い。
2.内分泌撹乱作用物質であるビスフェノールAの溶出がないため、人体に使用しても安全性が高い。
3.全ての添加剤に対して、この樹脂成分は口腔内での溶出がないため安全性が高く、また、添加剤、顔料についても安全面で心配はない(本発明の歯科用成形樹脂材料の融点は例えば240℃程度であるため)。
4.義歯床の審美的自然感を増すために、成形体中に人間の口腔内の血管を模した色に着色されたポリエステル繊維体が埋設されてもよい。
5.ステアリン酸亜鉛を添加剤として配合することにより、樹脂染色時において顔料が全てにまんべんなく混ざり、染色性が非常に高まる。
6.ステアリン酸亜鉛を配合することにより、樹脂自体の表面の滑沢度が増し、滑りが良くなるため、義歯床体の脱着に有効的である。
7.酸化チタン、酸化鉄を添加剤として配合することにより、義歯床染色時において人体歯肉に合った自然観のある色合いを再現できる。
8.本発明の歯科用成形体によれば、従来から使用されている歯科用成形樹脂材料(ポリカーボネート、ポリアミド、ナイロン、アクリル等)に比べ、機械的強度、曲げ強度、耐熱性が同等あるいは優れているため、義歯床の破折も生じにくく、かつ非常にコンパクトで口腔内での違和感のない義歯床製作が可能であり、吸水性も従来からの樹脂材料に比べ非常に低いため、吸水による雑菌の繁殖や樹脂物性劣化が極めて少ない。
9.本発明の歯科成形樹脂材料は、空気中の水分を吸収しにくいため、常温での保管状態においても問題がなく、射出成形時においても水分を除去するために熱乾燥させる必要もなく、作業効率性においても優れている。
10.なお、本発明の歯科用成形樹脂材料はペレット状のものが一般的であるが、これに限定されるものではなく、シート状等のものであっても良い。
以上のような本発明に係る歯科用成形樹脂材料により成形された歯科用成形体(歯肉等の代わりとなる歯科用成形体)について評価試験を行い、その結果を表1に示した。
Figure 0006087460
評価結果はその表1に示すとおりである。例えば繰返し折曲げ試験においては、吸水前後を測定した結果、本発明品ではともに他の歯科用樹脂材料(ポリプロピレンを除くポリアミド及びポリカーボネート)よりも優れた結果が得られた。例えば吸水前の繰返し折曲げ試験で、ポリカーボネートは5回で折れ、ポリアミドは120回で折れたが、本発明品では曲げている所が白くなるだけで、130回の折曲げでも裂け目や折損は生じなかった。
また,吸水後の繰返し折曲げ試験では、ポリカーボネートは6回で折れ、ポリアミドは118回で折れたが、本発明品では曲げている所が白くなるだけで、130回で裂け目なしであった。また本発明の樹脂材料(成形体)においては曲げ強度が80MPa、伸度12mm以上、吸水率0.05〜0.3wt%であり、非常に良好な数値が得られた。その他、作業性、着色等の実験結果も、添付するように良好な結果が得られた。
着色の試験に関して補足すれば、表1の下から2段目の「着色ΔEカレー」とは、カレー粉を溶解した湯中に37℃で1週間、試料としての樹脂片を浸漬し、その後試料の樹脂片を取り出して、専用の試験機でカレー粉溶液によってどれだけ着色されたかを検査し、その検査結果を数値化したものであり、数値が小さいほど着色の程度が低い、換言すれば変色が少ないことを意味する。また、「着色ΔEフクシン」とは、カレー粉の代わりに着色料のフクシンを用いて同様の検査を行ったものであり、検査数値が小さいほど変色が少ないことを意味する。これらの結果から明らかなように、本発明品では「着色ΔEカレー」の検査値が1.29、「着色ΔEフクシン」の検査値が5であって、ポリアミド、ポリカーボネートの検査値に比べて充分小さく、変色しにくいことがわかる。
さらに、耐熱試験も次のとおり行った。
本発明の樹脂材料を、射出成形により20mm×20mm×3mmのサイズの板材に製作し調整し、沸騰水(約100℃)中に1時間浸漬し、成形体の外観を確認した結果、面荒れ白濁等は見られなかった。
以上、歯肉の代わりとなる歯科用成形体及び歯科用樹脂材料の効果について説明したが、歯牙等の代わりとなる歯科用成形体及び歯科用樹脂材料についても同様の効果を得ることができる。よって、本発明の歯科用樹脂材料を用いて製造された義歯床2、人工歯3、クラウン4(被覆冠)、補綴物5(審美ラミネート)、歯科矯正器具6、マウスピース7(暫間被覆冠)においても同様の結果が得られる。
なお、本発明の歯科用樹脂材料を用いて製造される歯科用補綴物は、射出成形、圧接成形、CAD/CAM成形などの全ての製造方法に対応可能である。CAD/CAM成形により製造する場合には、歯科用樹脂材料の形状をCAD/CAM成形に準じた円盤型、円柱型にしてもよい。
1 部分義歯 2 義歯床
3 人工歯 4 クラウン(被覆冠)
5 補綴物(審美ラミネート) 6 歯科矯正器具
7 マウスピース(暫間被覆冠)

Claims (12)

  1. 口腔内に使用される所定形状を有した歯科用成形体であって、
    主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%の酸化チタンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%のチタンイエローと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%のステアリン酸亜鉛と、
    を備えることを特徴とする歯科用成形体。
  2. 前記酸化チタンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
    前記チタンイエローは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
    前記酸化鉄は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記ステアリン酸亜鉛は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.04〜0.2%である請求項1に記載の歯科用成形体。
  3. 口腔内に使用される所定形状を有した歯科用成形体であって、
    主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0005〜0.045%の酸化チタンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の顔料と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%のステアリン酸亜鉛と、
    を備えることを特徴とする歯科用成形体。
  4. 前記酸化チタンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.03%であり、
    前記顔料は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記酸化鉄は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記ステアリン酸亜鉛は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.1%である請求項3に記載の歯科用成形体。
  5. 前記耐衝撃性ポリスチレンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が2〜15%のポリブタジエンを含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の歯科用成形体。
  6. 前記ポリブタジエンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が5〜12%である請求項5に記載の歯科用成形体。
  7. 口腔内において使用される歯科用成形体を製造するために使用される歯科用樹脂材料であって、
    主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%の酸化チタンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.001〜0.09%のチタンイエローと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.8%のステアリン酸亜鉛と、
    を備えることを特徴とする歯科用樹脂材料。
  8. 前記酸化チタンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
    前記チタンイエローは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.02〜0.06%であり、
    前記酸化鉄は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記ステアリン酸亜鉛は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.04〜0.2%である請求項7に記載の歯科用樹脂材料。
  9. 口腔内において使用される歯科用成形体を製造するために使用される歯科用樹脂材料であって、
    主成分として99%以上の耐衝撃性ポリスチレンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0005〜0.045%の酸化チタンと、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の顔料と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0001〜0.01%の酸化鉄と、
    前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.005〜0.2%のステアリン酸亜鉛と、
    を備えることを特徴とする歯科用樹脂材料。
  10. 前記酸化チタンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.03%であり、
    前記顔料は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記酸化鉄は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.0002〜0.005%であり、
    前記ステアリン酸亜鉛は、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が0.01〜0.1%である請求項9に記載の歯科用樹脂材料。
  11. 前記耐衝撃性ポリスチレンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が2〜15%のポリブタジエンを含有する請求項7ないし10のいずれか1項に記載の歯科用樹脂材料。
  12. 前記ポリブタジエンは、前記耐衝撃性ポリスチレンに対する重量比率が5〜12%である請求項11に記載の歯科用樹脂材料。
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