JP6086530B2 - D−グルコサミン酸又はその類縁体の製造方法、並びにそのための触媒組成物 - Google Patents

D−グルコサミン酸又はその類縁体の製造方法、並びにそのための触媒組成物 Download PDF

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本発明は、D-グルコサミン又はその類縁体を酸化して、対応するD-グルコサミン酸又はその類縁体を生成するのに適した触媒組成物に関する。
本発明はまた、当該触媒組成物を用いたD-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体の製造方法に関する。
D-グルコサミン酸はD-グルコサミンの1位炭素を含むアルデヒド基がカルボキシル基に変換された構造を有しており、ヒトの成長に生理学的に必要なアミノ酸の一種である。D-グルコサミン酸は調味料、甘味料、医薬品原料、老化防止剤等の用途において有用である。また、化学的な観点からは、種々の金属イオンの補修剤、アミノ酸合成の出発原料、糖の分離剤として使用される有用性の高い化合物である。
Figure 0006086530
D-グルコサミン酸を製造する方法としては以下のものが例示できる。
非特許文献1では白金アダムス触媒を用いてD-グルコサミンからD-グルコサミン酸を合成することが報告されている。
特許文献1〜3及び非特許文献2〜4では、酵素を用いて、D-グルコサミンからD-グルコサミン酸を合成することが報告されている。
更に水銀化合物(非特許文献5)、白金系触媒(非特許文献6及び7)、電極触媒(非特許文献8)等を用いてD-グルコサミン酸を合成することも検討されている。
一方、キチンはエビやカニの甲殻から得られる天然多糖類であり、非可食系バイオマスとして自然界に大量に存在するバイオマス資源である。甲殻からのキチンの抽出には、甲殻の粉砕、脱石灰(脱Ca)、脱タンパク質、脱色が必要であり、塩酸や水酸化ナトリウムを用いた手法が確立している。本発明の原料化合物の一つであるグルコサミン塩酸塩は、キチンを濃塩酸で処理することで製造されることも知られている。しかし、漁業、飲食産業等から排出される甲殻の大部分は、現在未利用のまま処分されており、その有効活用が望まれている。
特開昭59-14785号公報 特開昭59-14786号公報 特開昭59-14787号公報
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従来のD-グルコサミン酸の合成方法は以下のような問題があり、なお改善の余地がある。
白金アダムス触媒を不均一系触媒として使用する非特許文献1の方法は反応を水素雰囲気下で行う必要がある。しかも、反応に長時間を要し、D-グルコサミン酸の選択率が低いという問題がある。
特許文献1〜3及び非特許文献2〜4に開示されている酵素を用いたD-グルコサミン酸合成方法では、水酸化ナトリウム、金属硫酸塩、リン塩化合物、金属炭酸塩を加えて反応系のpHを調整する必要があり、しかも反応に長時間を要するという問題がある。また、酵素のような均一系触媒は反応生成物との分離が困難であり、再使用することができず、触媒の廃棄に伴い大量の廃棄物を生じるという問題がある。
非特許文献5で使用される水銀化合物は毒性があるという点で望ましくない。
白金系触媒を使用する非特許文献6、7の方法では、水酸化ナトリウム及び炭酸水素カリウムを反応系に添加する必要がある。
非特許文献8のように電極を使用する場合でも水酸化ナトリウムや、H3PO4の反応系への添加が不可欠である。また特殊な設備を要するという問題がある。
従来から市販されているD-グルコサミン酸は一般的に高価である。
そこで本発明は、簡便で効率的にD-グルコサミン酸又はその類縁体を製造するための手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、驚くべきことに、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金の微粒子とを含む触媒組成物の存在下において、D-グルコサミン塩酸塩又はその類縁体と酸素とを水中で反応させたとき、D-グルコサミン塩酸塩又はその類縁体の1位炭素が選択的に酸化されてカルボキシル基に変換され、高効率で対応するD-グルコサミン酸又はその類縁体が得られることを見出した。本発明の方法では酸化剤として酸素を用いることができ、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤の添加が必要ないという点で有利である。具体的には、本発明は以下の発明を包含する。
(1) D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体を製造する方法であって、
ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金粒子とを含む触媒組成物の存在下において、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体である原料化合物と酸化剤とを反応させ、前記原料化合物の1位炭素を酸化してカルボキシル基に変換する工程を含む、前記方法。
(2) (1)に記載の方法に使用するための、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金粒子とを含む触媒組成物。
本発明の触媒組成物を用いることにより、D-グルコサミン酸又はその類縁体を簡便かつ効率的に製造することができる。
本発明の触媒組成物は反応生成物からの分離回収が容易であり、再使用が可能である。
本発明の触媒組成物の製造方法の一例を示す図である。 2wt% 金担持ハイドロタルサイト触媒組成物の再使用回数と、D-グルコサミン酸の収率との関係を示す図である。 合成されたD-グルコサミン酸の1H-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-グルコサミン酸の13C-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-グルコサミン酸のHMQC-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-グルコサミン酸のESI-MSによる分析結果を示す図である。 合成されたD-グルコサミン酸のESI-MSによる分析結果を示す図である。 本発明の触媒組成物におけるエックス線回折(XRD)による回折パターンを示す図である。 本発明の触媒組成物の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察像を示す図である。 本発明の触媒組成物における金粒子の粒子径の分布を示す図である。 合成されたN-アセチルD-グルコサミン酸の1H-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-グルコサミン酸の13C-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-グルコサミン酸のHMQC-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-グルコサミン酸のFT-ICR MSによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-マンノサミン酸の1H-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-マンノサミン酸の13C-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-マンノサミン酸のHMQC-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-マンノサミン酸のFT-ICR MSによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-ガラクトサミン酸の1H-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-ガラクトサミン酸の13C-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-ガラクトサミン酸のHMQC-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたN-アセチルD-ガラクトサミン酸のFT-ICR MSによる分析結果を示す図である。 合成されたD-ガラクトサミン酸の1H-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-ガラクトサミン酸の13C-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-ガラクトサミン酸のHMQC-NMRによる分析結果を示す図である。 合成されたD-ガラクトサミン酸のFT-ICR MSによる分析結果を示す図である。 使用前及び使用後の各金担持触媒のXANESスペクトルを示す図である。
1.触媒組成物
本発明の触媒組成物は、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金粒子とを含むことを特徴とする。当該触媒組成物は、前記担体及び金粒子を少なくとも含んでいればよく、任意に他の成分を更に含んでいてもよい。
本発明の触媒組成物は、酸化剤の存在下でD-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体等のアルドース化合物を酸化して、D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸又はD-マンノサミン酸、若しくはそれらのN-アシル誘導体等の、アルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体若しくはそれらの塩に変換するための触媒、すなわち、アルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体若しくはそれらの塩の製造用触媒として有用である。
本発明に使用することができるハイドロタルサイトとしては、一般式:
[(M2+)1-x(M3+)x(OH)2]x+[(An-)x/n・mH2O]x-
〔M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオンを表し、xは、0<x≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
で表されるものが挙げられる。前記一般式において、M2+としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が例示でき、M3+としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等が例示できる。またAn-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3 -、CO3 2-、SO4 2- 12、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等が挙げられ、特に好ましい例としてはCO3 2-、OH-が挙げられる。
具体的には、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.5H2Oで表される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で表される合成ハイドロタルサイト等を使用することができる。
ハイドロタルサイトは塩基性の固体触媒担体である。本発明の触媒組成物を用いる場合、従来必要とされていた、可溶性の塩基(NaOHやKHCO3等)の添加を必要としない。しかも本発明の触媒組成物は反応系からの分離回収が容易であり、再利用が可能である。
ハイドロタルサイトの粒子の寸法や形状は特に限定されない。ハイドロタルサイトの形状としては細粒状、粉末状等の形状があり、いずれも使用することができるが、粉末状のものが特に好ましい。
担体として、固体塩基触媒である酸化マグネシウムや酸化カルシウムを使用することもできる。酸化マグネシウムの粒子の寸法や形状は特に限定されない。
担体は、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムのうち、少なくとも1種を含むものであればよく、前記3種のうち1種のみを含むものであってもよいし、2種又は3種を組み合わせて含むものであってもよい。
担体に担持される金粒子は、平均粒子径の範囲が1 nm〜5 nmであることが好ましく、2 nm〜3 nmであることが特に好ましい。平均粒子径の定義:透過型電子顕微鏡(TEM)により、無作為に金粒子を300個観察し、その粒径の平均値。本発明において金粒子は触媒活性点として作用する。
金粒子の担持量は特に限定されない。収率向上のためには、担体(特にハイドロタルサイト)の重量を基準としたときの担持された金粒子の重量が0.1 wt%〜5 wt%であることが好ましく、1 wt%〜3 wt%であることがより好ましい。単位量の金あたりのターンオーバー数の向上のためには、担体(特にハイドロタルサイト)の重量を基準としたときの担持された金粒子の重量が0.1 wt%〜1.6 wt%であることが好ましく、0.3 wt%〜1.0 wt%であることがより好ましい。
本発明の金担持触媒組成物の製造方法は特に限定されないが、好適な方法としては、水等の溶媒中に、当該溶媒中で可溶性の金イオン(典型的には塩化金酸の形態で添加)と、担体と、アルカリ物質(例えばアンモニア水)とを添加して金水酸化物を担体上に析出させ、続いて加熱により還元し金粒子を形成することにより製造することができる。
2. D-グルコサミン酸の製造方法
本発明のD-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体の製造方法は、本発明の触媒組成物の存在下において、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体である原料化合物と酸化剤とを反応させ、前記原料化合物の1位炭素を酸化してカルボキシル基に変換する工程を特徴とする。本発明の方法によって製造されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体は、該化合物自体だけでなく、アルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体の塩も包含する。
本発明の方法では、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体である原料化合物を用いることが必要である。ここで、前記原料化合物は、該原料化合物自体だけでなく、前記アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩も包含する。前記原料化合物が塩の形態の場合、その対イオンの種類は特に限定されない。前記アルドースの塩としては、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンの塩酸塩を挙げることができる。本発明の方法では特に、原料化合物としてD-グルコサミン塩酸塩を用いることが好ましい。D-グルコサミン塩酸塩はカニ殻や、エビ殻等から生成される海洋バイオマス由来資源であり、安価に入手可能である。
Figure 0006086530
塩酸塩以外のアルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩としては、例えば該化合物の硫酸塩等が挙げられる。アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩は水溶性の塩であることが好ましい。
アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩を原料化合物として使用する場合、反応溶媒は適宜選択すればよく、例えば水、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(AN)等が溶媒として使用でき、特に水が好ましい。例えば、D-グルコサミン塩酸塩は水に溶解するが、他の溶媒には難溶性である。本発明の触媒組成物は、水中において酸化反応を触媒することができるため、アルドース又はそれらのN-アシル誘導体の塩酸塩を原料とする場合に特に適している。
原料化合物としては、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドースのN-アシル誘導体も利用することができる。前記N-アシル誘導体としては、アシルとしてアセチル基を有するN-アセチルD-グルコサミン、N-アセチルD-ガラクトサミン及びN-アセチルD-マンノサミン等が挙げられる。ここで、前記アルドースのN-アシル誘導体は、該化合物自体だけでなく、前記アルドースのN-アシル誘導体の塩も包含する。前記アルドースのN-アシル誘導体を原料化合物として使用する場合、反応溶媒は適宜選択すればよく、例えば水、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(AN)等が溶媒として使用でき、特に水が好ましい。
酸化剤としては、酸素(O2)、空気(air)、過酸化水素(H2O2)等を使用することができ、特に酸素が好ましい。反応系に酸素を流通させることにより添加することができる。酸素の流量及び気圧は特に限定されないが、流量は好ましくは1 ml/min〜1000 ml/min、より好ましくは10 ml/min〜100 ml/minであり、気圧は好ましくは1atm〜10atm、より好ましくは1atm〜2atmである。
反応の条件はスケール等を考慮して適宜決定することができ特に限定されないが、好ましい条件について以下に説明する。
触媒組成物の使用量は、原料化合物4 mmolに対して好ましくは10 mg〜5000mg、より好ましくは100mg〜2000mg、さらに好ましくは300mg〜900mg、特に好ましくは300mg〜700mgである。ここで、触媒組成物の重量は、担体として使用されるハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムの合計重量と、担持された金粒子の重量との合計重量とする。
反応を水中で行う場合のpHは特に調整する必要はないが、前記アルドースの塩酸塩を用い、担体としてハイドロタルサイトを使用した場合の反応系のpH値(40℃における)は、通常は3〜7の範囲となる。
反応時間は触媒組成物の使用量に応じて適宜決定することができ、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜15時間、さらに好ましくは2〜10時間とすることができる。
反応温度は原料化合物の加熱による損失を抑えるために低いことが好ましく、例えば1〜90℃で行うことが好ましく、10〜55℃で行うことがより好ましく、20〜50℃で行うことがさらに好ましく、20〜43℃で行うことが特に好ましい。
反応により生じたD-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体は、条件を適宜調整して塩の形態として取得することもできる。D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸はカルボキシル基とアミノ基とを有するため、塩基又は酸との塩、或いは金属イオンとの錯体を形成することができる。本明細書において、前記アルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体の塩は、塩基又は酸との塩だけでなく、金属イオンとの錯体も包含する。前記アルドン酸のN-アシル誘導体としては、N-アセチルD-グルコサミン酸、N-アセチルD-ガラクトサミン酸及びN-アセチルD-マンノサミン酸等が挙げられる。前記N-アシル誘導体は、塩基との塩及び/又は金属イオンとの錯体を形成することができる。D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸若しくはD-マンノサミン酸の塩、又は、D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸若しくはD-マンノサミン酸のN-アシル誘導体の塩が製造される場合、その対イオン及び/又は金属イオンの種類は特に限定されない。
本発明の触媒組成物は水等の溶媒に不溶性の不均一触媒であるため、反応系からの分離が容易である。前記工程による反応後に分離された触媒組成物は、適宜洗浄し、更なる反応に再使用可能である。このとき触媒組成物の洗浄に用いる洗浄液としては、水、メタノール、アセトン及びアンモニア水溶液から選択される1種又は2種以上の混合液が挙げられ、特に、水又はアンモニア水溶液が好ましい。洗浄液として用いるアンモニア水溶液中のアンモニア濃度としては2〜25%が例示できる。
実験1: 各種金担持触媒の合成、比較
金担持触媒の合成
図1に示す手順に従い、以下の各種担体材料に、金を担持させた。
担体材料:ハイドロタルサイト(HT; 以下、Mg/Al=3のものをHT(3), Mg/Al=5のものをHT(5)と記載する)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、ハイドロキシアパタイト(HAP)、アルミナ(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、活性炭(C)。
HT(5)の分析値(含量値);酸化マグネシウム(44.1%)、酸化アルミニウム(11.3%)、二酸化炭素(9.2%)
HT(3)の分析値(含量値);酸化マグネシウム(37.3%)、酸化アルミニウム(16.2%)、二酸化炭素(8.2%)
水80 ml中に塩化金酸2.0 mmolを含む溶液に、担体2.0 gと25%アンモニア水溶液0.8 mlを添加し、500 rpmで6時間、室温にて撹拌し、次いで、100℃で30分間還流加熱した。ろ過し、固形分を水1000 mlで洗浄した。洗浄後、加熱乾燥(200℃,4時間)し、1日真空条件で乾燥させて金担持担体(Au/担体)を得た。
各金担持担体の、担体あたりの金担持量 (wt%) を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)により求めた。
比較のため、金を担持していないハイドロタルサイト(HT(5))も用意した。
各種金担持触媒によるグルコサミン酸の合成反応の触媒活性
実験手順:
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量150mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるグルコサミン塩酸塩(4 mmol)と溶媒である水(20 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、仕込み担持量2 wt%のAu/担体触媒を500 mg加えた。反応は、40℃、酸素流通下(50 ml/min, 1 atm)にて3時間撹拌(500 rpm)することで行った。
結果:
グルコサミン塩酸塩からグルコサミン酸への収率をHPLCにより求めた。金担持ハイドロタルサイト(Au/HT(5))および金担持酸化マグネシウム(Au/MgO)を使用した場合に高い収率でグルコサミン酸を得ることができた。
Figure 0006086530
実験2: 金担持量の検討
金の担持量が異なる金担持ハイドロタルサイト(Au/HT(5))を以下の手順で調製した。
水80 ml中に塩化金酸(0.25〜3 mmol) を含む溶液に、ハイドロタルサイト(HT(5)) 2.0 gと25%アンモニア水溶液0.8 mlを添加し、500 rpmで6時間、室温にて撹拌し、次いで、100℃で30分間還流加熱した。その後、ろ過し、固形分を水1000 mlで洗浄した。洗浄後、加熱乾燥(200℃,4時間)し、1日真空条件で乾燥させて金担持ハイドロタルサイト(Au/HT(5))を得た。
製造された金担持ハイドロタルサイトの金担持量を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)により求めた。ハイドロタルサイト担体重量に対して、金の重量が0.3wt%、0.6wt%、1.0wt%、1.4wt%、1.6wt%、2.0wt%、2.8wt%であることが確認された。
以下の手順に従い金の担持量が異なる金担持ハイドロタルサイト(Au/HT(5))を用いてグルコサミン塩酸塩からグルコサミン酸を製造した。
実験手順:
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量150mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるグルコサミン塩酸塩(2 mmol)と溶媒である水(10 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、様々な担持量のAu/HT(5)触媒を250 mg加えた。反応は、40℃、酸素流通下(50 ml/min, 1 atm)にて3時間撹拌(500 rpm)することで行った。
結果:
グルコサミン塩酸塩からグルコサミン酸への収率を求めた。更にターンオーバー数(TON;活性点1個当たりに何回反応を進行させることができるかを見積もる尺度)を求めた。TONの算出の定義:(生成したグルコサミン酸の量(mol))/(使用した触媒中(250 mg)に含まれる金の量(mol; ICP基準))。金が担体に対して1.0wt%〜2.8wt%担持された触媒において特に高い収率が実現された。TONでは、0.3wt% AuHT(5)において、TON >353を達成した。
Figure 0006086530
実験3: 触媒量およびハイドロタルサイトのMg/Al比の検討
実験手順:
前記「実験1: 各種金担持触媒の合成」の手順に従い調製した2wt%Au/HT(3)および2wt%Au/HT(5)の触媒活性について、比較検討した。触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量150mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるグルコサミン塩酸塩(2 mmol)と溶媒である水(10 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、Au/HT触媒を所定量加えた。反応は、40℃、酸素流通下(50 ml/min, 1 atm)にて3時間撹拌(500 rpm)することで行った。
結果:
Mg/Al比が異なるHT担持を用いた場合でも、Au/HT触媒が優れた触媒活性を示した。触媒量0.25gの場合、HT(3)およびHT(5)では大きな違いは認められなかった。0.05gの場合、HT(5)を用いた方がHT(3)よりも活性が高かった。
Figure 0006086530
実験4: 触媒の再使用1
実験手順:
グルコサミン塩酸塩(2 mmol)、AuHT(5) 触媒(250mg)、水溶媒(10 ml)、反応温度40℃、反応時間3h、酸素流通下(50 ml/min)、撹拌(500 rpm)の条件で反応を行った触媒を遠心分離し、上澄みを分取後、得られた使用後の触媒を水で洗浄後、減圧乾燥し、再使用した。
結果:
水で洗浄したAu/HT(5)触媒は、再利用1回目での失活は10%程度だった。
Figure 0006086530
実験5: 触媒の再使用2
実験手順:
グルコサミン塩酸塩(4 mmol)、2.0 wt% AuHT触媒(500mg)、水溶媒(20 ml)、反応温度40℃、反応時間3h、酸素流通下(50 ml/min)、撹拌(500 rpm)の条件で反応を行った触媒を、水で洗浄後、各種溶媒でさらに洗浄し、減圧乾燥後、再使用した。
結果:
アンモニア水で洗浄した場合に失活が少ないことが確認された(結果を図2に示す)。
Figure 0006086530
実験6: 生成されたグルコサミン酸の分析
以下の手順でグルコサミン塩酸塩からグルコサミン酸を合成した。
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量150mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるグルコサミン塩酸塩(2 mmol)と溶媒である水(10 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、2 wt%のAu/HT触媒を250 mg加えた。反応は、40℃、酸素流通下(50 ml/min, 1 atm)にて3時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応後、触媒を遠心分離で取り除き、溶媒を減圧濃縮することで、合成グルコサミン酸水溶液を得た。さらに、濃縮して得られた合成グルコサミン酸水溶液を大過剰のメタノールに加え、得られた沈殿を減圧乾燥することで、グルコサミン酸の精製を行った。
機器分析を行い、前記で得られた生成物がグルコサミン酸であることが確認された。
1 H-NMR (図3)
グルコサミン酸水溶液の1H-NMRの結果を図3に示す。水のピークを基準に補正すると、補正後のピークは、1H-NMR (400MHz, D2O) 4.45 (d, 1H, H-3), 3.90 (d, 1H, H-2), 3.85 (dd, 1H, H-6b), 3.78 (s, 1H, H-4), 3.77 (dt, 1H, H-5), 3.67 (dd, 1H , H-6a)となり、グルコサミン酸のプロトンの位置と一致する。
13 C-NMR (図4)
グルコサミン酸水溶液の13C-NMRの結果を図4に示す。アセトンのピークを基準に補正すると、13C-NMR (101MHz, D2O) 174.7(C-1), 72.8 (C-3), 70.8 (C-5), 68.0 (C-4), 62.8 (C-6), 58.4 (C-2)となり、グルコサミン酸の炭素の位置と一致する。
HMQC-NMR (図5)
グルコサミン酸水溶液の1Hと13Cの2次元NMRの結果を図5に示す。これは、グルコサミン酸の構造中のHとCの関係と一致する。
ESI-MS (図6, 7)
精製処理したグルコサミン酸のESI-MS分析の結果を図6に示す。m/z=196.07の所に最大強度のピークが認められ、生成後の主成分はグルコサミン酸と同じ分子量であることが分かった。また、m/z=196.07周辺を拡大したものを図7に示す。m/zが196.08211、197.08547、198.08636の所にそれぞれピークが確認され、その強度比は100.0:6.7:1.2だった。これは、グルコサミン酸の同位体の存在比と一致した。
実験7: 金担持ハイドロタルサイト触媒の解析
実験1と同様にハイドロタルサイト担体あたりの金担持量が2wt%である金担持ハイドロタルサイト触媒を得た。
エックス線回折(XRD)の結果を図8に示す。ハイドロタルサイト構造由来の回折パターンが得られ、金担持後の触媒はハイドロタルサイト構造を有する。
金担持ハイドロタルサイト触媒を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。観察像の一例を図9に示す。金のナノ粒子がハイドロタルサイトの表面に分散し担持されていることが確認された。金のナノ粒子がハイドロタルサイトの表面に分散し担持されていることが確認された。
TEMの観察像から、任意に300個の粒子を選び、それぞれの粒子サイズをまとめたグラフを図10に示す。横軸は粒子の直径であり、1,2,3,4,5, >5はそれぞれ、0.5 nm超1.4 nm以下、1.5 nm超2.4 nm以下、2.5 nm超3.4 nm以下、3.5 nm超4.4 nm以下、4.5 nm超5.4 nm以下、5.4nm超の範囲を示している。縦軸は、個数の割合を示す。平均粒子径(透過型電子顕微鏡(TEM)により、無作為に金粒子を300個観察し、その粒径の平均値)は3.1nmであった。
実験8: 生成されたN-アセチルD-グルコサミン酸の分析
前記「実験1: 各種金担持触媒の合成」の手順に従い調製した2wt%Au/HT(5)触媒を用いて、以下の手順でN-アセチルD-グルコサミンからN-アセチルD-グルコサミン酸を合成した。
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量60mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるN-アセチルD-グルコサミン(0.1 mmol)と溶媒である水(1 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、2wt%Au/HT(5)触媒を20 mg加えた。反応は、40℃、酸素流通下(30 ml/min, 1 atm)にて2時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応後、触媒を遠心分離で取り除き、溶媒を減圧濃縮することで、合成N-アセチルD-グルコサミン酸水溶液を得た。さらに、濃縮して得られた合成N-アセチルD-グルコサミン酸水溶液を大過剰のアセトンに加え、得られた沈殿を遠心分離で回収した後、減圧乾燥することで、N-アセチルD-グルコサミン酸の精製を行った。
機器分析を行い、前記で得られた生成物がN-アセチルD-グルコサミン酸であることが確認された。1H-NMR分析に基づく収率は、96%であった。
1 H-NMR (図11)
N-アセチルD-グルコサミン酸水溶液の1H-NMRの結果を図11に示す。水のピークを基準に補正すると、補正後のピークは、1H-NMR (400MHz, D2O) 4.34 (d, J = 5.2 Hz, 1H, H-1), 4.16 (dd, J = 5.2, 3.2 Hz, 1H, H-2), 3.81 (dd, J = 11.6, 2.8 Hz, 1H, H-5), 3.70 (ddd, J = 7.5, 6.7, 2.8 Hz, 1H, H-4), 3.62 (dd, J = 11.8, 6.8 Hz, 1H, H-5), 3.58 (dd, J = 7.6, 3.2 Hz, 1H, H-5), 2.05 (s, 3H, H-6)となり、N-アセチルD-グルコサミン酸のプロトンの位置と一致する。
13 C-NMR (図12)
N-アセチルD-グルコサミン酸水溶液の13C-NMRの結果を図12に示す。13C-NMR (101MHz, D2O) 176.69 (C-1), 173.79 (C-7), 71.86 (C-4), 71.22 (C-5), 69.94 (C-3), 62.66 (C-6), 58.01 (C-2), 21.97 (C-8)となり、N-アセチルD-グルコサミン酸の炭素の位置と一致する。
HMQC-NMR (図13)
N-アセチルD-グルコサミン酸水溶液の1Hと13Cの2次元NMRの結果を図13に示す。これは、N-アセチルD-グルコサミン酸の構造中のHとCの関係と一致する。
FT-ICR MS (図14)
精製処理したN-アセチルD-グルコサミン酸のFT-ICR MS分析の結果を図14に示す。m/z=236.07759の所に最大強度のピークが認められた。N-アセチルD-グルコサミン酸のm/z計算値が236.07758であり、誤差0.04 ppmである。誤差が1 ppm以下であるため、生成物はN-アセチルD-グルコサミン酸であることが支持された。
実験9: 生成されたN-アセチルD-マンノサミン酸の分析
前記「実験1: 各種金担持触媒の合成」の手順に従い調製した2wt%Au/HT(5)触媒を用いて、以下の手順でN-アセチルD-マンノサミンからN-アセチルD-マンノサミン酸を合成した。
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量60mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるN-アセチルD-マンノサミン(0.1 mmol)と溶媒である水(1 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、2wt%Au/HT(5)触媒を20 mg加えた。反応は、80℃、酸素流通下(30 ml/min, 1 atm)にて12時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応後、触媒を遠心分離で取り除き、溶媒を減圧濃縮することで、合成N-アセチルD-マンノサミン酸水溶液を得た。さらに、濃縮して得られた合成N-アセチルD-マンノサミン酸水溶液を大過剰のアセトンに加え、得られた沈殿を遠心分離で回収した後、減圧乾燥することで、N-アセチルD-マンノサミン酸の精製を行った。
機器分析を行い、前記で得られた生成物がN-アセチルD-マンノサミン酸であることが確認された。1H-NMRスペクトルに基づく収率は、87%であった。
1 H-NMR (図15)
N-アセチルD-マンノサミン酸水溶液の1H-NMRの結果を図15に示す。水のピークを基準に補正すると、補正後のピークは、1H-NMR (400MHz, D2O) 4.43 (d, J = 7.0 Hz, 1H, H-1), 4.14 (dd, J = 7.0, 1.4 Hz, 1H, H-2), 3.84 (dd, J = 11.7, 2.8 Hz, 1H, H-5), 3.74 (ddd, J = 8.9, 6.3, 2.8 Hz, 1H, H-4), 3.64 (dd, J = 11.8, 6.3 Hz, 1H, H-5), 3.59 (dd, J = 8.7, 1.4 Hz, 1H, H-3), 2.06 (s, 3H, H-6)となり、N-アセチルD-マンノサミン酸のプロトンの位置と一致する。
13 C-NMR (図16)
N-アセチルD-マンノサミン酸水溶液の13C-NMRの結果を図16に示す。13C-NMR (101MHz, D2O) 176.67 (C-1), 173.81 (C-7), 70.84 (C-4), 70.56 (C-5), 69.10 (C-3), 63.00 (C-6), 57.49 (C-2), 22.10 (C-8)となり、N-アセチルD-マンノサミン酸の炭素の位置と一致する。
HMQC-NMR (図17)
N-アセチルD-マンノサミン酸水溶液の1Hと13Cの2次元NMRの結果を図17に示す。これは、N-アセチルD-マンノサミン酸の構造中のHとCの関係と一致する。
FT-ICR MS (図18)
精製処理したN-アセチルD-マンノサミン酸のFT-ICR MS分析の結果を図18に示す。m/z=236.07758の所に最大強度のピークが認められた。N-アセチルD-マンノサミン酸のm/z計算値が236.07758であり、誤差0.0 ppmである。誤差が1 ppm以下であるため、生成物はN-アセチルD-マンノサミン酸であることが支持された。
実験10: 生成されたN-アセチルD-ガラクトサミン酸の分析
前記「実験1: 各種金担持触媒の合成」の手順に従い調製した0.6wt%Au/MgO触媒を用いて、以下の手順でN-アセチルD-ガラクトサミンからN-アセチルD-ガラクトサミン酸を合成した。
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量60mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるN-アセチルD-ガラクトサミン(0.1 mmol)と溶媒である水(4 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、0.6wt%のAu/MgO触媒を20 mg加えた。反応は、40℃、酸素流通下(30 ml/min, 1 atm)にて2時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応後、触媒を遠心分離で取り除き、溶媒を減圧濃縮することで、合成N-アセチルD-ガラクトサミン酸水溶液を得た。さらに、濃縮して得られた合成N-アセチルD-ガラクトサミン酸水溶液を大過剰のアセトンに加え、得られた沈殿を遠心分離で回収した後、減圧乾燥することで、N-アセチルD-ガラクトサミン酸の精製を行った。
機器分析を行い、前記で得られた生成物がN-アセチルD-ガラクトサミン酸であることが確認された。HPLC分析に基づく変換率は、99%であった。
1 H-NMR (図19)
N-アセチルD-ガラクトサミン酸水溶液の1H-NMRの結果を図19に示す。水のピークを基準に補正すると、補正後のピークは、1H-NMR (400MHz, D2O) 4.57 (d, J = 1.8 Hz, 1H, H-1), 4.22 (dd, J = 9.8, 1.8 Hz, 1H, H-2), 3.92 (ddd, J = 7.1, 5.8, 1.4 Hz, 1H, H-4), 3.65 (dd, J = 6.4, 2.9 Hz, 2H, H-5), 3.36 (dd, J = 9.8, 1.4 Hz, 1H, H-3), 2.07 (d, J = 7.7 Hz, 3H, H-6)となり、N-アセチルD-ガラクトサミン酸のプロトンの位置と一致する。
13 C-NMR (図20)
N-アセチルD-ガラクトサミン酸水溶液の13C-NMRの結果を図20に示す。13C-NMR (101MHz, D2O) 177.20 (C-1), 174.23 (C-7), 70.88 (C-3), 69.88 (C-5), 69.79 (C-4), 63.26 (C-6), 55.85(C-2), 21.97 (C-8)となり、N-アセチルD-ガラクトサミン酸の炭素の位置と一致する。
HMQC-NMR (図21)
N-アセチルD-ガラクトサミン酸水溶液の1Hと13Cの2次元NMRの結果を図21に示す。これは、N-アセチルD-ガラクトサミン酸の構造中のHとCの関係と一致する。
FT-ICR MS (図22)
精製処理したN-アセチルD-ガラクトサミン酸のFT-ICR MS分析の結果を図22に示す。m/z=236.07772の所に最大強度のピークが認められた。N-アセチルD-ガラクトサミン酸のm/z計算値が236.07758であり、誤差0.59 ppmである。誤差が1 ppm以下であるため、生成物はN-アセチルD-ガラクトサミン酸であることが支持された。
実験11: 生成されたD-ガラクトサミン酸の分析
前記「実験1: 各種金担持触媒の合成」の手順に従い調製した0.6wt%Au/MgO触媒を用いて、以下の手順でD-ガラクトサミン塩酸塩からD-ガラクトサミン酸を合成した。
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量60mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるD-ガラクトサミン塩酸塩(0.1 mmol)と溶媒である水(4 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、0.6wt%のAu/MgO触媒を20 mg加えた。反応は、20℃、酸素流通下(30 ml/min, 1 atm)にて2時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応後、触媒を遠心分離で取り除き、溶媒を減圧濃縮することで、合成D-ガラクトサミン酸水溶液を得た。さらに、濃縮して得られた合成D-ガラクトサミン酸水溶液を大過剰のメタノール及びアセトンの混合溶液(メタノール:アセトン=1:6(体積比))に加え、得られた沈殿を遠心分離で回収した後、減圧乾燥することで、D-ガラクトサミン酸の精製を行った。
機器分析を行い、前記で得られた生成物がD-ガラクトサミン酸であることが確認された。HPLC分析に基づく収率は、99%であった。
1 H-NMR (図23)
D-ガラクトサミン酸水溶液の1H-NMRの結果を図23に示す。水のピークを基準に補正すると、補正後のピークは、1H-NMR (400MHz, D2O) 4.30 (dd, J = 7.8, 1.9 Hz, 1H, H-1), 4.07 (d, J = 1.9 Hz, 1H, H-2), 3.92 (ddd, J = 6.6, 5.9, 2.0 Hz, 1H, H-4), 3.70 (d, J = 6.7 Hz, 2H, H-5), 3.68 (dd, J = 7.9, 2.1 Hz, 1H, H-3)となり、D-ガラクトサミン酸のプロトンの位置と一致する。
13 C-NMR (図24)
D-ガラクトサミン酸水溶液の13C-NMRの結果を図24に示す。13C-NMR (101MHz, D2O) 173.89 (C-1), 70.82 (C-4), 70.21 (C-5), 69.07 (C-3), 62.98 (C-6), 56.02 (C-2)となり、D-ガラクトサミン酸の炭素の位置と一致する。
HMQC-NMR (図25)
D-ガラクトサミン酸水溶液の1Hと13Cの2次元NMRの結果を図25に示す。これは、D-ガラクトサミン酸の構造中のHとCの関係と一致する。
FT-ICR MS (図26)
精製処理したD-ガラクトサミン酸のFT-ICR MS分析の結果を図26に示す。m/z=194.06711の所に最大強度のピークが認められた。D-ガラクトサミン酸のm/z計算値が194.06701であり、誤差0. 52ppmである。誤差が1 ppm以下であるため、生成物はD-ガラクトサミン酸であることが支持された。
実験12: 各種金担持触媒上の金ナノ粒子の分析
実験手順:
触媒反応は、パイレックスガラス製のシュレンク管(容量150mL、40φ)を用いて行った。反応基質であるD-グルコサミン塩酸塩(2 mmol)と溶媒である水(10 ml)をシュレンク管に入れ、次いで、各種金担持触媒を250 mg加えた。金担持触媒として、2.0wt%Au/HT(5)、0.9wt%Au/MgO又は1.1wt%Au/CaOを用いた。反応は、40℃、酸素流通下(50 ml/min, 1 atm)にて3時間撹拌(500 rpm)することで行った。反応終了後、反応液を遠心分離し、上澄みを分取して、使用後の触媒を得た。使用前及び使用後の触媒について、Au-L3端のX線吸収微細構造解析(XANES; SPring-8 BL01B1, Proposal No. 2012B1610)を測定し、金の酸化還元状態を評価した。各金担持触媒のXANESスペクトルを図27に示す。
結果:
図27に示すように、いずれの各金担持触媒においても、反応前の触媒上のAu種は、金箔と同様のAu-L3端XANESスペクトル波形を示した。このことから、いずれの各金担持触媒においても、金は金属状態で担持されていることが確認された。また、それぞれの金担持触媒について、反応前後のXANESスペクトルの波形を対比すると、実質的な変化は見られなかった。このことから、それぞれの金担持触媒において、担体上に担持された金ナノ粒子は、反応前後に亘って、酸化還元状態が実質的に変化しないことが示された。

Claims (4)

  1. D-グルコサミン酸、D-ガラクトサミン酸及びD-マンノサミン酸からなる群より選択されるアルドン酸又はそれらのN-アシル誘導体を製造する方法であって、
    ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金粒子とを含む触媒組成物の存在下において、可溶性の塩基を添加することなく、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン及びD-マンノサミンからなる群より選択されるアルドース又はそれらのN-アシル誘導体である原料化合物と酸化剤とを20〜50℃の範囲の温度及びpH 3〜7の範囲で反応させ、前記原料化合物の1位炭素を酸化してカルボキシル基に変換する工程を含む、前記方法。
  2. 前記担体がハイドロタルサイトである、請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1に記載の方法に使用するための、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含む担体と、該担体に担持された金粒子とを含む触媒組成物。
  4. 前記担体がハイドロタルサイトである、請求項3に記載の触媒組成物。
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