<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は実施の形態1にかかる無線通信システムを示すブロック図である。図1に示すように本実施の形態にかかる無線通信システムは、第1の無線機器1と、第2の無線機器2と、データ送信機(RFID用の無線タグに対応する)3と、を備える。第1の無線機器1は、第1のデータを第1の電波12、13を用いて送信する。データ送信機3は、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調して第2の電波14を生成し出力する。第2の無線機器2は、第1の電波12および第2の電波14を受信すると共に、当該受信した電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータとを分離し復調する分離復調回路24を備える。本実施の形態にかかる無線通信システムの特徴は、従来技術ではノイズとして除去されていたRFID等のデータ送信機3からの外乱が、第2の無線機器2の分離復調回路24において分離され、データとして取り出すことができる点である。以下、本実施の形態にかかる無線通信システムを構成する各要素について詳細に説明する。
第1の無線機器1は、第2の無線機器2との無線通信を実現するための内部回路(不図示)とアンテナ11とを備え、第1のデータを第1の電波12、13を用いて送信する。ここで、第1の電波12は第2の無線機器2に直接送信される直接波である。また、第1の電波13はデータ送信機3で受信される電波である。
第2の無線機器2は、第1の無線機器1との無線通信を実現するための内部回路(不図示)とアンテナ23とを備える。また、第2の無線機器2が備える分離復調回路24は、受信した第1および第2の電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータとを分離する。更に、分離復調回路24は、第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータをそれぞれ復調する。
ここで、第1の無線機器1と第2の無線機器2は、無線ネットワーク(WLAN)を構成しており、例えば第1の無線機器1はWLAN基地局(WLAN親機)であり、第2の無線機器2はWLAN受信機(WLAN子機)とすることができる。また、例えば第1の無線機器1と第2の無線機器2は双方向の通信ができるように構成されている。なお、本実施の形態では第1の無線機器1と第2の無線機器2との間の通常のデータ通信は、第1の無線機器1と第2の無線機器2がそれぞれ備える内部回路を用いて実施される。第1の無線機器1と第2の無線機器2の通常のデータ通信については、従来の技術と同様であるので詳細な説明を省略する。
また、本実施の形態にかかる無線通信システムはWLANに限定されるものではなく、WLAN以外にもBluetooth(登録商標)や携帯電話などの既存の無線規格の機器に対しても広く適用することができる。
データ送信機3は、アンテナ31と、変調回路32と、センサ33とを備える。データ送信機3は、第1の無線機器1から出力された第1の電波13をアンテナ31で受信し、変調回路32を用いて送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調して第2の電波14を生成し出力する。ここで、データ送信機3が送信する第2のデータは、例えばセンサ33を用いて収集されたデータである。センサ33は、例えば人の体温を測定する温度センサ、人の血圧を測定する圧力センサ等である。例えば、温度センサ内蔵のデータ送信機を被測定対象に貼り付け、被測定対象の温度情報を無線送信し無線ネットワークで受信することで、被測定対象の温度を逐次チェックすることができる。
なお、センサ33は温度センサ、圧力センサに限定されることはなく、所定のデータを取得できるセンサであればどのようなセンサであってもよい。
変調回路32は、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調することで第2の電波14を生成する。ここで、変調回路32は、例えば送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を負荷変調することで第2の電波14を生成することができる。すなわち、データ送信機3のアンテナ31に接続された変調回路32を負荷変調回路で構成し、アンテナ31で受信した第1の電波13に対するマッチングを変化させることで、第2の無線機器2に対してデータを送信することができる。
例えば、アンテナ31の出力側および変調回路32の入力側のそれぞれのインピーダンスにおいて、実数部が一致し、虚部の符号については反転しつつも絶対値が一致するように変調回路32でインピーダンスを設定する。すると、アンテナ31からデータ送信機3の内部への電力伝達効率は最大化され、アンテナ31が受信した電波は理想的には再反射されることはない。つまり、アンテナ31から第2の電波が出力されない。
一方、アンテナ31の出力側および変調回路32の入力側のそれぞれのインピーダンスにおいて、上記の様なインピーダンスの設定を外せば、アンテナ31から入力された第1の電波13はインピーダンスのミスマッチにより反射される。この反射波はアンテナ31から第2の電波14として放射される。
そして、この反射波(第2の電波14)は第1の電波12に対する外乱として働くので、第2の無線機器22においてこの外乱の有無を検知することで、データ送信機3から第2の無線機器2へ2値のデータを送信することができる。
しかしながら、上記の様な負荷変調は、データ送信機3が外部から電源供給を受けることなく実施しているため、アンテナ31で受信した第1の電波13の強度よりも大きな強度を有する第2の電波14をアンテナ31から送信することはできない。換言すると、インピーダンスのミスマッチにより反射された反射波(第2の電波14)は、アンテナ31で受信した第1の電波13の強度よりも弱くなる。このため、変調回路32として負荷変調回路を用いた場合は、消費電力は低く抑えることができるものの、データ送信機3と第2の無線機器2との間の通信距離が短いものに限定されるという問題がある。
そこで、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、このような問題を解決するために、データ送信機3として図2に示すデータ送信機3を用いることができる。図2に示すデータ送信機3は、アンテナ31、変調回路32、およびセンサ33を備える。変調回路32は増幅器(可変利得増幅器)35および分離素子37を備える。変調回路32は、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調することで第2の電波14を生成する。
このとき、変調回路32が備える増幅器35は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15を第2のデータに応じて増幅して第2の信号16を生成する。生成された第2の信号16はアンテナ31から第2の電波14として放射される。増幅器35は、利得制御信号36に応じて増幅率を変化させることができる。ここで、利得制御信号36の値は、送信対象である第2のデータに対応している。
また、分離素子37は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15を増幅器35に入力する経路17(図3A参照)と、増幅器35で増幅された第2の信号16を増幅器35からアンテナ31に出力する経路18(図3A参照)とを分離する機能を有する。分離素子37として、例えば方向性結合器を用いることができる。つまり、分離素子37は、アンテナ31から増幅器35の入力までの電力の伝達、および増幅器35の出力からアンテナ31までの電力の伝達ができるように構成されている。換言すると、分離素子37は、増幅器35の出力から増幅器35の入力までの電力の伝達、増幅器35の入力から増幅器35の出力までの電力の伝達、増幅器35の入力からアンテナ31までの電力の伝達、およびアンテナ31から増幅器35の出力までの電力の伝達、を遮断することができるように構成されている。
例えば、図3Aに示すように、送信対象である第2のデータが"1"である場合(つまり、利得制御信号36が"1"(活性状態)である場合)、増幅器35は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15を増幅して、振幅の大きい第2の信号16を生成する。生成された第2の信号16はアンテナ31から第2の電波14として放射され、第1の電波12に対する外乱として働く。このとき、増幅器35における増幅率を大きくすることで、より強い第2の電波14をアンテナ31から出力することができる。このようにして、データ送信機3から第2の無線機器2に"1"のデータが送信される。
一方、図3Bに示すように、送信対象である第2のデータが"0"である場合(つまり、利得制御信号36が"0"(非活性状態)である場合)、増幅器35は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15の振幅を十分に小さい値とする。よって、この場合、増幅器35から出力される第2の信号16の振幅は十分に小さいので、アンテナ31から放射される第2の電波14は第1の電波12に対する外乱としては働かない。このようにして、データ送信機3から第2の無線機器2に"0"のデータが送信される。なお、利得制御信号36が"0"である場合、増幅器35は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15の振幅をゼロとしてもよい。このとき、増幅器35から第2の信号16は出力されないので、アンテナ31から第2の電波14は出力されない。
図4は、図2に示すデータ送信機3の具体例を示す回路図である。なお、図4に示すデータ送信機3は一例であり、本実施の形態では、上記で説明した動作を実現することができるデータ送信機であれば、図4に示すデータ送信機に限定されることはない。
図4に示すように、増幅器(シングルエンド増幅器)35は、N型トランジスタTr1、Tr2、容量C1、C2、および抵抗R1、R2、R3を備える。容量C1の一端にはアンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号15が供給され、他端は抵抗R1の一端およびN型トランジスタTr2のゲートと接続されている。抵抗R1の他端にはバイアス電圧bias_1が供給されている。N型トランジスタTr2のドレインはN型トランジスタTr1のソースと接続され、ソースは接地されている。
N型トランジスタTr1のゲートには利得制御信号36が供給され、ドレインは抵抗R2の一端および容量C2の一端と接続されている。抵抗R2の他端は電源VDDに接続されている。容量C2の他端は抵抗R3の一端と接続されている。抵抗R3の他端にはバイアス電圧bias_2が供給されている。増幅器35で増幅された第2の信号16は、容量C2の他端および抵抗R3の一端が接続されたノードnode_1から出力される。
図4に示す増幅器35において、利得制御信号36が"0"の場合はN型トランジスタTr1がオフ状態となるので、増幅された信号はノードnode_1から出力されない。一方、利得制御信号36が"1"の場合はN型トランジスタTr1がオン状態となる。このとき、N型トランジスタTr2のゲートには、第1の信号15をバイアス電圧bias_1だけ上昇させた信号が供給される。これにより、N型トランジスタTr2は第1の信号15に応じて動作をするので、第1の信号15を増幅した第2の信号16がノードnode_1から出力される。増幅された信号は分離素子37を経由してアンテナ31に供給され、アンテナ31から第2の電波14として放射される。
上記で説明した増幅器35を備えるデータ送信機3を用いることで、データ送信機3と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機3から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。例えば、増幅器35の利得を10dBとし、増幅器35を用いない場合におけるデータ送信機3と第2の無線機器2との通信距離をr、増幅器35を用いた場合におけるデータ送信機3と第2の無線機器2との通信距離をr'とする。そして、r、r'それぞれの通信距離の減衰の差が10dBとなること、および距離の減衰がフリスの伝播公式にしたがうと仮定すると、以下の式を導くことができる。
20log(4πr'/λ)−20log(4πr/λ)=10 ・・・ 式1
よって、上記式1からr'=3.2rとなり、変調回路32に増幅器35を用いた場合は、データ送信機3と第2の無線機器2との通信距離を3.2倍に向上させることができる。
データ送信機3が送信する第2のデータは、データ送信機3が予め備えるデータであってもよい。この場合、図5に示すように、データ送信機3はセンサを備えている必要はなく、データを格納するデータ格納部38を備える構成とすることができる。また、データ送信機3が送信する第2のデータは、データ送信機3が外部から取得したデータであってもよい。この場合、図6に示すように、データ送信機3は入力端子39を備え、データ送信機3はこの入力端子39を介して外部データ40を取得することができる。ここで、取得した外部データ40の値は、利得制御信号36に対応している。
データ送信機3は、図8に示す本実施の形態にかかる無線通信システムの他の例のように、電力生成回路34を備えていてもよい。すなわち、図8に示すデータ送信機30が備える電力生成回路34は、アンテナ31を用いて第1の電波(環境電波)13を受信し、この第1の電波(環境電波)13を全波整流器で交流から直流に整流する。そして、内部電圧制御回路やブースタ回路を用いて回路電源として好適な電圧に昇降圧した後、この電力を変調回路32やセンサ33等に供給することができる。この場合、データ送信機30は電池を搭載する必要はなく、いわゆるパッシブ型のデータ送信機を構成する。一方、データ送信機3は電池を内蔵していてもよく、この場合はいわゆるアクティブ型のデータ送信機を構成する。なお、アクティブ型の場合はデータ送信機3が送信する第2のデータとして電池の残量を含めてもよい。この場合も、変調回路32に増幅器35を設けることで、データ送信機3と第2の無線機器2との通信距離を更に延ばすことができる。
次に、本実施の形態にかかる無線通信システムの動作について説明する。
図1に示す第1の無線機器1と第2の無線機器2は無線ネットワーク(WLAN)を構成している。このとき、第1の無線機器1と第2の無線機器2は規格に準拠した変調要素を備える第1の電波12を用いて通信ができるように構成されている。
図7は、第2の無線機器2が受信する電波(第1の電波12と第2の電波14)のビット誤り率を説明するための図である。データ送信機3からのデータ送信がない場合は、第1の電波12はデータ送信機3から送信された第2の電波14の影響を受けない。つまりこの場合は、データ送信機3から送信された第2の電波14が第1の電波12に対する外乱として働かないため、図7の符号71に示すようにビット誤り率は上昇しない。よって、第1の無線機器1と第2の無線機器2は、図7に示す低いビット誤り率(符号71)で通信することができる。そして、第2の無線機器2は第1の電波12をアンテナ23で受信し、分離復調回路24は第1の無線機器1から送信された第1のデータを復調する。
次に、データ送信機3がデータを送信する場合について説明する。この場合は、まずデータ送信機3は第1の無線機器1から出力された第1の電波13を受信する。また、センサ33はセンサ33で取得したデータを変調回路32へ出力する。そして、変調回路32はセンサ33で取得したデータ(送信対象である第2のデータ)に応じて、受信した第1の電波13を変調し、変調後の電波を第2の電波14として出力する。
データ送信機3がデータを送信する場合、図7に示すように第1の電波12はデータ送信機3から送信された第2の電波14の影響を受ける。よって、この場合は、データ送信機3から送信された第2の電波14が第1の電波12に対する外乱として働くため、図7の符号72に示すようにビット誤り率が上昇する。
すなわち、データ送信機3において変調されることで生成された第2の電波は、第1の無線機器1から送信された第1の電波12を撹乱して受信SN比を低下させるため、ビット誤り率を上昇させる。つまり、データ送信機3においてon/offキーイングの変調をかければ、図7に示すようにビット誤り率の時間変動を用いて第2のデータを送信することができる。そして、第2の受信機器2においてこのビット誤り率の時間変動を検出することで、データ送信機3から送信された第2のデータを復調することができる。
なお、この時のビット誤り率72は、第1の無線機器1と第2の無線機器2の通信に悪影響を及ぼさないように、ビット誤り率の無線規格値よりも低い範囲内としている。つまり、ビット誤り率71とビット誤り率72は、共にビット誤り率の無線規格値よりも低い範囲内としている。一般的に、通信環境は常に変化し様々な外乱が混入するため、このような外乱に対する通信のロバストネスが保障されるように無線規格が策定される。
第2の無線機器2は第1の電波12および第2の電波14をアンテナ23で受信する。そして、分離復調回路24は、受信したこれらの電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータを分離すると共に、これらのデータを復調して第1の無線機器1からの復調データ25およびデータ送信機3からの復調データ26を生成する。
ここで、第1の無線機器1が送信する第1のデータは、第1の無線機器1と第2の無線機器2の規格に準拠した変調要素を備える第1の電波12(つまり、規格に準拠した搬送波周波数を備える電波)を用いて伝送される。一方、データ送信機3が送信する第2のデータは、第2の無線機器2が受信した電波(第1および第2の電波)におけるビット誤り率の変化(つまりビット誤り率の高低)を用いて伝送される。
この時、第2の無線機器2が受信した電波のビット誤り率の変化の周期(つまりビット誤り率の変調周期)は、規格に準拠した搬送波周波数を備える第1の電波12の変調周期よりも遅い。このため、分離復調回路24を用いて、第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータを分離することができる。
例えば、分離復調回路24はローパスフィルタ(LPF)を有し、当該ローパスフィルタ(LPF)を用いることで、ビット誤り率の変調周期が遅い第2のデータを分離することができる。また、例えば分離復調回路24はバンドパスフィルタ(BPF)を備えていてもよく、この場合もバンドパスフィルタ(BPF)を用いることで、ビット誤り率の変調周期が遅い第2のデータを分離することができる。ここで、バンドパスフィルタ(BPF)は、ローパスフィルタ(LPF)とハイパスフィルタ(HPF)を組み合わせることで構成することができる。このとき、ハイパスフィルタ(HPF)を用いることで、変調周期が第2のデータの変動周期よりも遅い環境電波の変動成分を第2のデータから除去することができる。
なお、分離復調回路24はアナログ信号に対するフィルタ回路でもよく、またA/D変換後のデジタル信号に対するフィルタ回路であってもよい。
図8は、本実施の形態にかかる無線通信システムの他の例を示すブロック図である。図8に示すように、第2の無線機器2のアンテナ23で受信された第1の電波12および第2の電波14は、増幅器27で増幅してもよい。また、図8に示すように、分離復調回路24としてベースバンドフィルタ28を用いてもよい。また、周辺の電波状況に応じて適宜フィルタを追加してもよく、第2の電波14の強い周波数帯域でフィルタ処理を行なってもよい。増幅器27やフィルタ処理により、後段の分離復調回路24(ベースバンドフィルタ28)で分離復調処理ができる程度まで信号振幅を増加させることができる。
また、図1に示した第2の無線機器2が備える分離復調回路24は、次のように構成することもできる。図9は本実施の形態にかかる無線通信システムの第2の無線機器22の構成を示す図である。図9に示す第2の無線機器22は、アンテナ23、受信回路81、プロトコル処理部82を備えており、この構成は既存の無線機器と同様である。そして、第2の無線機器22のプロトコル処理部82が上記分離復調回路24として動作するように、プロトコル処理部82に対してソフトウェア処理を施す。このように、プロトコル処理部82に対してソフトウェア処理を施すことで、図1に示した第2の無線機器2を既存の無線機器を用いて構成することができる。なお、本実施の形態では図9に示すプロトコル処理部の一部をハードウェアで構成してもよく、この場合はプロトコル処理部のハードウェアで構成した部分以外にソフトウェア処理を施すことで第2の無線機器2を構成することができる。
つまり、第1の無線機器1が送信する第1のデータは、第1の無線機器1と第2の無線機器2の規格に準拠した変調要素を備える第1の電波12(つまり、規格に準拠した搬送波周波数を備える電波)を用いて伝送される。一方、データ送信機3が送信する第2のデータは、第2の無線機器2が受信した電波(第1および第2の電波)におけるビット誤り率の変化(つまりビット誤り率の高低)を用いて伝送される。そして、プロトコル処理部82に対して、第1の無線機器1が送信する第1のデータ(つまり、規格に準拠した搬送波周波数で送信されるデータ)とデータ送信機3が送信する第2のデータ(つまり、所定の変調周波数で変調されたビット誤り率を用いて送信されるデータ)をそれぞれ分離し復調するようにソフトウェア処理を施すことで、第1の無線機器1からの復調データ25とデータ送信機3からの復調データ26を得ることができる。プロトコル処理部82におけるこのような処理はベースバンドドメインで行なわれている。
従来では、無線ネットワーク環境下において、RFID用の無線タグ(データ送信機)が保持するデータを読み出すためには、無線ネットワークと有線または無線で接続された専用のRFIDリーダ・ライタが必要であった。このため、無線ネットワーク環境下においてRFID技術を利用したシステムを導入するにはコストがかかるという問題があった。
しかしながら、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、第1の無線機器1と第2の無線機器2とで構成される無線ネットワーク環境下において、データ送信機3が、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調することで第2の電波14を生成し出力している。ここで、変調された第2の電波14は第1の電波12に対する外乱として働く。そして、第2の無線機器2の分離復調回路24において、第1の電波12に対する外乱の有無を用いて第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータを分離し、第1および第2のデータを復調している。
このような構成を備える本実施の形態にかかる無線通信システムでは、RFID用の無線タグ(データ送信機3)が保持するデータを読み出すために、専用のRFIDリーダ・ライタを設ける必要がない。よって、本実施の形態にかかる発明により、無線ネットワーク環境下においてRFID技術を利用したシステムを導入する際のコストを低減することが可能な無線通信システムを提供することができる。
また、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、図9に示した既存のハードウェア構成を備える第2の無線機器22のプロトコル処理部82に対して、図1に示した分離復調回路24として動作するようにソフトウェア処理を施すことで、第2の無線機器を構成することができる。よって、既存のハードウェア構成にソフトウェアを導入するのみで本実施の形態にかかる第2の無線機器を構成することができるので、無線ネットワーク環境下においてRFID技術を利用したシステムを導入する際のコストを低減することができる。
また、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、図2に示すように、データ送信機3の変調回路32に増幅器35を設けている。このように、変調回路32に増幅器35を設けることで、生成される第2の電波14の出力を高めることができる。よって、データ送信機3と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機3から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。
また、無線の電波を用いて電源電圧を生成するパッシブ型のデータ送信機3では、専用のRFIDリーダ・ライタからデータ送信機3に給電する場合、データ送信機3に向かわない電波も存在していた。つまり、RFIDリーダ・ライタのアンテナに指向性がない場合はデータ送信機3に向かわずに無駄になる電力が存在していた。また、RFIDリーダ・ライタのアンテナに指向性を持たせて電力伝達効率を高めたとしても、電力を電波で送電する以上は空間で無駄に捨てられる電力が存在していた。
これに対して図8に示した本実施の形態にかかる無線通信システムでは、第1の無線機器1と第2の無線機器2の通信に用いられる電波(環境電波)を用いて、データ送信機30の電力生成回路34が電力を生成している。よって、新たにRFIDリーダ・ライタを導入し、給電用の電波を出力する必要がないため無線通信システムの消費電力を低減することができる。
また、特許文献1に開示されている技術は、外乱の有無を検知するのみであり、時間的に変動する外乱をデータと区別すること、および所望でない外乱発生源を所望の外乱と判別することはできなかった。つまり、このような無線通信システムでは、通信環境の変化により様々な外乱が混入し、ビット誤り率もこれに伴い変化していた。そして、特許文献1に開示されている技術は、単にビット誤り率に基づき外乱の変化の有無を検知するのみで、所望の外乱を意味のあるデータとして取り出してはいない。
これに対して本実施の形態にかかる無線通信システムでは、ビット誤り率の変調周期が遅い第2のデータ(データ送信機から送信されたデータ)を、分離復調回路を用いて分離し、この第2のデータを復調している。
よって、特許文献1に開示されている技術では不可能であった、所望の外乱からの通信データの取得、無線データ通信の成立にとって必須であるノイズ除去、および1対複数通信での通信相手の選別(詳細は実施の形態9を参照)が可能となる。
また、本実施の形態にかかる無線通信方法は、第1のデータを送信する第1の無線機器1と当該第1のデータを受信する第2の無線機器2とを備える無線ネットワークにデータ送信機3を用いて第2のデータを送信する無線通信方法であって、次のステップを有する。(1)第1の無線機器1から第1のデータを第1の電波12、13を用いて送信するステップ。(2)データ送信機3において第2のデータに応じて第1の電波13を変調して第2の電波14を生成すると共に、当該第2の電波14を出力するステップ。(3)第2の無線機器2において第1の電波12および第2の電波14を受信すると共に、当該受信した電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータとデータ送信機3から送信された第2のデータとを分離し復調するステップ。そして、データ送信機3において第2の電波14を生成し出力する際、第1の電波13に応じた第1の信号15を第2のデータに応じて増幅して第2の信号16を生成し、当該第2の信号16を第2の電波14として放射する。ここで、第1の電波13を第2のデータに応じて増幅する場合は、例えば図2に示す増幅器35を用いることができる。
以上で説明した本実施の形態にかかる本発明により、無線ネットワーク環境下においてRFID技術を利用したシステムを導入する際のコストを低減することが可能な無線通信システムおよび無線通信方法を提供することができる。更に、本実施の形態にかかる発明では、データ送信機3の変調回路32に増幅器35を設けているので、データ送信機3と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機3から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、実施の形態2にかかる無線通信システムが備えるデータ送信機503を示すブロック図である。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、データ送信機503の変調回路532が、2つの増幅器534、535およびスイッチ536を備えている点が、実施の形態1にかかる無線通信システム(特に、図2参照)と異なる。これ以外は実施の形態1にかかる無線通信システムと同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図10に示すデータ送信機503は、アンテナ31、変調回路532、およびセンサ33を備える。変調回路532は2つの増幅器(可変利得増幅器)534、535、スイッチ536、および分離素子538を備える。分離素子538は、実施の形態1で説明した分離素子37と基本的に同様である。つまり、分離素子538は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号515を増幅器534に入力する経路517(図11A参照)と、増幅された第2の信号516を増幅器535からアンテナ31に出力する経路518(図11A参照)とを分離する機能を有する。分離素子538として、例えば方向性結合器を用いることができる。
また、増幅器534と増幅器535との間にはスイッチ536が設けられている。スイッチ536は、送信対象である第2のデータに対応する制御信号537に応じて、増幅器534と増幅器535との接続を切り替える。
例えば、図11Aに示すように、送信対象である第2のデータが"1"である場合(つまり、制御信号537が"1"である場合)、スイッチ536は導通状態となり増幅器534と増幅器535とがスイッチ536を介して互いに接続される。このとき、増幅器534および増幅回路535は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号515を増幅して第2の信号516を生成する。生成された第2の信号516はアンテナ31から第2の電波14として放射され、第1の電波12に対する外乱として働く。このとき、増幅器534および増幅回路535を用いて第1の電波13の振幅を増幅することで、より強い第2の電波14をアンテナ31から出力することができる。このようにして、データ送信機503から第2の無線機器2に"1"のデータが送信される。
一方、図11Bに示すように、送信対象である第2のデータが"0"である場合(つまり、制御信号537が"0"である場合)、スイッチ536は非導通状態となり増幅器534と増幅器535とが接続されていない状態となる。よって、増幅器535には増幅器534で増幅した後の信号が供給されないので、増幅器535から第2の信号516は出力されない。よって、アンテナ31から第2の電波14は放射されない。このようにして、データ送信機503から第2の無線機器2に"0"のデータが送信される。
このとき、アンテナ31の直後の増幅器534を低雑音の増幅器で構成し、アンテナ31へ第2の信号516を出力する増幅器535をアンテナ31と整合をとった高利得の増幅器で構成することで、信号中のSN比を最小化することができ、データ送信機503と第2の無線機器2との通信距離を延ばすことができる。
以上で説明したように、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、図10に示すように、データ送信機503の変調回路532に増幅器534、535を設けている。このように、変調回路532に増幅器534、535を設けることで、生成される第2の電波14の出力を高めることができる。よって、データ送信機503と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機503から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図2に示したデータ送信機3では、分離素子37を用いて第2の信号16が増幅器35に帰還されることを防いでいる。しかしながら、分離素子37の機能が不十分な場合、第2の信号16の一部が増幅器35に帰還されるおそれもある。この場合、回路設計のパラメータ(増幅率等や位相余裕など)の設定によっては、変調回路において発振するおそれもある。
実施の形態3にかかる無線通信システムでは、変調回路において発振することを抑制することができるデータ送信機について説明する。なお、これ以外は実施の形態1にかかる無線通信システムと同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図12は、本実施の形態にかかる無線通信システムで用いられるデータ送信機を示すブロック図である。図12に示すデータ送信機603は、変調回路632とセンサ33とを備える。変調回路632は、分離素子633、増幅器634、減衰器635、信号強度検知器638、639、およびオペアンプAMP11を備える。
分離素子633は、実施の形態1で説明した分離素子37と基本的に同様である。つまり、分離素子633は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611を増幅器634に入力する経路と、増幅された第2の信号613を増幅器634からアンテナ31に出力する経路とを分離する機能を有する。分離素子633として、例えば方向性結合器を用いることができる。
増幅器634としては、例えば2入力可変利得増幅器を用いることができる。増幅器634は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611と、減衰器635から出力された信号(第3の信号)612とを入力し、利得制御信号637に応じて増幅された第2の信号613を生成する。生成された第2の信号613は、分離素子633を経由してアンテナ31に供給され、アンテナ31から第2の電波14として放射される。
例えば、増幅器634は、利得制御信号637が"1"である場合、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611と、減衰器635から出力された信号612とを入力し、増幅された第2の信号613を生成する。生成された第2の信号613は、第2の電波14としてアンテナ31から放射され、第1の電波12に対する外乱として働く。このようにして、データ送信機603から第2の無線機器に"1"のデータが送信される。
一方、増幅器634は、利得制御信号637が"0"である場合、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611と、減衰器635から出力された信号612とを入力し、振幅の小さい第2の信号613を生成する。この場合、増幅器634から出力される第2の信号613は十分に振幅が小さい信号であるので、第1の電波12に対する外乱としては働かない。このようにして、データ送信機603から第2の無線機器に"0"のデータが送信される。なお、利得制御信号637が"0"である場合、増幅器3634は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611の振幅をゼロとしてもよい。このとき、増幅器634から第2の信号613は出力されないので、アンテナ31から第2の電波14は放射されない。
減衰器635は、増幅器634から出力された第2の信号613を第1の信号611と同程度の強度となるように減衰させ、減衰後の信号612を増幅器634に出力する。つまり、増幅器634から出力された第2の信号613は、減衰器635を経由して増幅器634に帰還される。
信号強度検知器638は、減衰器635から出力された信号612の強度を検知し、検知した信号強度に応じた信号をオペアンプAMP11の反転入力端子に出力する。信号強度検知器639は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611の強度を検知し、検知した信号強度に応じた信号をオペアンプAMP11の非反転入力端子に出力する。信号強度検知器638、639は、例えば信号611、612の振幅レベルを直流電圧に変換することができる回路である。
オペアンプAMP11は、信号強度検知器639で検知した第1の信号611の強度と、信号強度検知器638で検知した信号612の強度とが等しくなるように、減衰器635の減衰量を調整する。
つまり、図12に示す変調回路632では、増幅器634から出力された第2の信号613を第1の信号611と同程度の強度となるように減衰させ、減衰した後の信号612を増幅器634に帰還させている。そして、増幅器634の出力値を、信号612を用いて減算している。これにより、増幅器634におけるフィードバックループを安定化させることができ、変調回路632が発振することを抑制することができる。このとき、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号611の強度と、減衰器635から出力された信号612の強度とが等しくなるように、信号強度検知器638、639、オペアンプAMP11、および減衰器635を用いてフィードバックループを構成している。
図13は、図12に示すデータ送信機603の具体例を示す回路図である。なお、図13に示すデータ送信機603は一例であり、本実施の形態では、上記で説明した動作を実現することができるデータ送信機であれば、図13に示すデータ送信機に限定されることはない。
図13に示すように、増幅器634は、P型トランジスタTr11、Tr12、およびN型トランジスタTr13〜Tr15を有する。P型トランジスタTr11のソースは電源VDDに接続され、ゲートおよびドレインはP型トランジスタTr12のゲートに接続されている。P型トランジスタTr12のソースは電源VDDに接続され、ゲートはP型トランジスタTr11のゲートおよびドレインと接続され、ドレインはN型トランジスタTr14のドレインと接続されている。
N型トランジスタTr13のドレインはP型トランジスタTr11のゲートおよびドレイン、並びにP型トランジスタTr12のゲートと接続されている。N型トランジスタTr13のゲートには第1の信号611が供給される。N型トランジスタTr14のドレインはP型トランジスタTr12のドレインと接続されている。N型トランジスタTr14のゲートには信号612が供給される。N型トランジスタTr13とN型トランジスタTr14のソースは、N型トランジスタTr15のドレインと接続されている。N型トランジスタTr15のソースは接地されており、ゲートには利得制御信号637が供給される。P型トランジスタTr12のドレインとN型トランジスタTr14のドレインとが接続されているノードからは第2の信号613が出力される。つまり、増幅器634は差動増幅器を構成する。
信号強度検知器638は、半波整流を行なうダイオードD11と容量C11とで構成されている。ダイオードD11のアノードには信号612が供給され、カソードは容量C11の一端と接続されている。容量C11の他端は接地されている。
信号強度検知器639は、半波整流を行なうダイオードD12と容量C12とで構成されている。ダイオードD12のアノードには第1の信号611が供給され、カソードは容量C12の一端と接続されている。容量C12の他端は接地されている。
減衰器635は、可変抵抗VR11で構成されている。可変抵抗VR11の一端には第2の信号613が供給され、他端からは信号612が出力される。可変抵抗VR11の抵抗値はオペアンプAMP11から出力される信号に基づき調整される。
図13に示すデータ送信機603において、利得制御信号637が"0"の場合はN型トランジスタTr15がオフ状態となる。この場合は、増幅された第2の信号613は増幅器634から出力されない。一方、利得制御信号637が"1"の場合はN型トランジスタTr15がオン状態となる。この場合は、第1の信号611と信号612に応じて増幅された第2の信号613が増幅器634から出力される。増幅された第2の信号613は分離素子333を経由してアンテナ31に供給され、アンテナ31から第2の電波14として放射される。
信号強度検知器638は、信号612の振幅を強度信号(直流成分)に変換し、当該強度信号をオペアンプAMP11の反転入力端子に出力する。信号強度検知器639は、第1の信号611の振幅を強度信号(直流成分)に変換し、当該強度信号をオペアンプAMP11の非反転入力端子に出力する。オペアンプAMP11は、信号強度検知器639で検知した第1の信号611の強度と、信号強度検知器638で検知した信号612の強度とが等しくなるように、減衰器635の抵抗値を調整する。なお、信号強度検知器638、639、オペアンプAMP11、および可変抵抗VR11で扱われる各信号はアナログ値を想定しているが、デジタル値を扱う回路に変更してもよい。
以上で説明したように、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、増幅器634から出力された第2の信号613を第1の信号611と同程度の強度となるように減衰させ、減衰した後の信号612を増幅器634に帰還させている。そして、増幅器634の出力値を、信号612を用いて減算している。これにより、増幅器634におけるフィードバックループを安定化させることができ、変調回路632が発振することを抑制することができる。
また、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、図12に示すように、データ送信機603の変調回路632に増幅器634を設けている。このように、変調回路632に増幅器634を設けることで、生成される第2の電波14の出力を高めることができる。よって、データ送信機603と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機603から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図2に示したデータ送信機3では、データ送信機3の内部に設けられた増幅器35を用いることで、強度の大きい第2の電波14を送信することを可能にしていた。しかしながら、増幅器35の設定によっては、データ送信機3から出力される第2の電波14の強度が大きくなり過ぎて、他の電子機器に影響を及ぼす可能性がある。
本実施の形態にかかる無線通信システムでは、データ送信機から出力される第2の電波の強度を所定の強度に抑えることができるデータ送信機について説明する。なお、これ以外は実施の形態1にかかる無線通信システムと同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図14は、本実施の形態にかかる無線通信システムで用いられるデータ送信機703を示す回路図である。図14に示すデータ送信機703は、変調回路732とセンサ33とを備える。変調回路732は、増幅器(シングルエンド増幅器)733、734、降圧回路735、および分離素子737を備える。ここで、増幅器(シングルエンド増幅器)733、734と、降圧回路735は、振幅制限機能付の可変利得増幅器を構成する。
分離素子737は、実施の形態1で説明した分離素子37と基本的に同様である。つまり、分離素子737は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号711を増幅器733に入力する経路と、増幅された第2の信号713を増幅器734からアンテナ31に出力する経路とを分離する機能を有する。分離素子737として、例えば方向性結合器を用いることができる。
図14に示すように、増幅器733は、N型トランジスタTr21、Tr22、容量C21、C22、および抵抗R21、R22、R23を備える。容量C21の一端にはアンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号711が供給され、他端は抵抗R21の一端およびN型トランジスタTr22のゲートと接続されている。抵抗R21の他端にはバイアス電圧bias_21が供給されている。N型トランジスタTr22のドレインはN型トランジスタTr21のソースと接続され、ソースは接地されている。
N型トランジスタTr21のゲートには利得制御信号736が供給され、ドレインは抵抗R22の一端および容量C22の一端と接続されている。抵抗R22の他端は電源VDD_1に接続されている。容量C22の他端は抵抗R23の一端と接続されている。抵抗R23の他端にはバイアス電圧bias_22が供給されている。増幅器733で増幅された信号712は、容量C22の他端および抵抗R23の一端が接続されたノードnode_21から増幅器734に出力される。
増幅器734は、N型トランジスタTr23、Tr24、容量C23、および抵抗R24、R25を備える。N型トランジスタTr24のドレインはN型トランジスタTr23のソースと接続され、ゲートには増幅器733から出力された信号712が供給され、ソースは接地されている。N型トランジスタTr23のゲートには利得制御信号736が供給され、ドレインは抵抗R24の一端および容量C23の一端と接続されている。抵抗R24の他端は電源VDD_2に接続されている。容量C23の他端は抵抗R25の一端と接続されている。抵抗R25の他端にはバイアス電圧bias_23が供給されている。増幅器734で増幅された第2の信号713は、容量C23の他端および抵抗R25の一端が接続されたノードnode_22から出力される。
降圧回路735は、電源電圧VDD_1を、電源電圧VDD_1よりも低い電源電圧VDD_2に変換する。
図14に示す増幅器733、734において、利得制御信号736が"0"の場合は、増幅器733のN型トランジスタTr21および増幅器734のN型トランジスタTr23がオフ状態となるので、増幅された第2の信号713は増幅器734から出力されない。
一方、利得制御信号736が"1"の場合は、増幅器733のN型トランジスタTr21がオン状態となる。このとき、N型トランジスタTr22のゲートには、第1の信号711をバイアス電圧bias_21だけ上昇させた信号が供給される。これにより、N型トランジスタTr22は第1の信号711に応じて動作をするので、第1の信号711を増幅した信号712がノードnode_21から出力される。
また、利得制御信号736が"1"の場合は、増幅器734のN型トランジスタTr23がオン状態となる。このとき、N型トランジスタTr24のゲートには増幅器733から出力された信号712が供給されるので、N型トランジスタTr24は信号712に応じて動作をし、信号712を増幅した第2の信号713がノードnode_22から出力される。このとき、電源電圧VDD_2は電源電圧VDD_1よりも低い電圧であるので、ノードnode_22から出力される第2の信号713の振幅値は、増幅器733から出力された信号712の振幅値よりも小さくなる。増幅された第2の信号713は分離素子737を経由してアンテナ31に供給され、アンテナ31から第2の電波14として放射される。
すなわち、本実施の形態にかかるデータ送信機703では、降圧回路735を用いて増幅器734の電源電圧VDD_2を電源電圧VDD_1よりも低い電圧に設定している。これにより、増幅器734において増幅された第2の信号713の振幅値を、電源電圧VDD_2よりも低い値にすることができるので、データ送信機から出力される第2の電波の強度を所定の強度に抑えることができる。
図15は、本実施の形態にかかる発明の効果を説明するための図である。実施の形態1にかかるデータ送信機3では、増幅器35の設定によっては、データ送信機3から出力される第2の電波14の強度が、規格値よりも大きくなる場合があった(符号715参照)。これに対して本実施の形態にかかるデータ送信機3では、振幅制限機能付の可変利得増幅器を用いているので、第2の電波14の強度を規格値以下にすることができる(符号716参照)。このとき、データ送信機から出力される第2の電波の強度は、降圧回路735で設定される電源電圧VDD_2の値を変更することで、調整することができる。
なお、上記で説明した、増幅器733、734と、降圧回路735とで構成される振幅制限機能付の可変利得増幅器は一例であり、第2の電波の強度を所定の強度に抑えることができる増幅器であれば、どのような増幅器を用いてもよい。
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図2に示したデータ送信機3では、データ送信機3の内部に設けられた増幅器35を非線形領域で動作させると高調波歪みが生じる場合があった。この高調波歪みの電力強度が大きすぎると、他の電子機器に影響を及ぼす可能性があった。
本実施の形態にかかる無線通信システムでは、この高調波歪みの電力強度を規格値以下に抑えることができるデータ送信機について説明する。なお、これ以外は実施の形態1にかかる無線通信システムと同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図16は、本実施の形態にかかる無線通信システムで用いられるデータ送信機803を示す回路図である。図16に示すデータ送信機803は、変調回路832とセンサ33とを備える。変調回路832は、増幅器(シングルエンド増幅器)833、高調波除去回路(ローパスフィルタ)834、および分離素子837を備える。ここで、増幅器833と、高調波除去回路834は、高調波除去機能付の可変利得増幅器を構成する。
分離素子837は、実施の形態1で説明した分離素子37と基本的に同様である。つまり、分離素子837は、アンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号811を増幅器833に入力する経路と、増幅された第2の信号813を高調波除去回路834からアンテナ31に出力する経路とを分離する機能を有する。分離素子837として、例えば方向性結合器を用いることができる。
図16に示すように、増幅器833は、N型トランジスタTr31、Tr32、容量C31、C32、および抵抗R31、R32、R33を備える。容量C31の一端にはアンテナ31で受信した第1の電波13に応じた第1の信号811が供給され、他端は抵抗R31の一端およびN型トランジスタTr32のゲートと接続されている。抵抗R31の他端にはバイアス電圧bias_31が供給されている。N型トランジスタTr32のドレインはN型トランジスタTr31のソースと接続され、ソースは接地されている。
N型トランジスタTr31のゲートには利得制御信号836が供給され、ドレインは抵抗R32の一端および容量C32の一端と接続されている。抵抗R32の他端は電源VDDに接続されている。容量C32の他端は抵抗R33の一端と接続されている。抵抗R33の他端にはバイアス電圧bias_32が供給されている。増幅器833で増幅された信号812は、容量C32の他端および抵抗R33の一端が接続されたノードnode_31から高調波除去回路834に出力される。
高調波除去回路834は、P型トランジスタTr33、Tr34、N型トランジスタTr35〜Tr37、容量C33、および抵抗R34を備える。P型トランジスタTr33のソースは電源VDDに接続され、ゲートおよびドレインはP型トランジスタTr34のゲートに接続されている。P型トランジスタTr34のソースは電源VDDに接続され、ゲートはP型トランジスタTr33のゲートおよびドレインと接続され、ドレインはN型トランジスタTr36のドレインと接続されている。
N型トランジスタTr35のドレインはP型トランジスタTr33のゲートおよびドレイン、並びにP型トランジスタTr34のゲートと接続され、ゲートは接地されている。N型トランジスタTr36のドレインはP型トランジスタTr34のドレインと接続されている。N型トランジスタTr36のゲートには信号812が抵抗R34を介して供給される。N型トランジスタTr35とN型トランジスタTr36のソースは、N型トランジスタTr37のドレインと接続されている。N型トランジスタTr37のソースは接地されており、ゲートは電源VDDと接続されている。容量C33は、N型トランジスタTr36のゲートとドレインとの間に接続されている。図16に示す高調波除去回路(ローパスフィルタ)834は、図17の符号815に示す周波数特性を有するように構成されている。
図16に示す増幅器833において、利得制御信号836が"0"の場合は、N型トランジスタTr31がオフ状態となるので、増幅された第2の信号813は出力されない。
一方、利得制御信号836が"1"の場合は、増幅器833のN型トランジスタTr31がオン状態となる。このとき、N型トランジスタTr32のゲートには、第1の信号811をバイアス電圧bias_31だけ上昇させた信号が供給される。これにより、N型トランジスタTr32は第1の信号811に応じて動作をするので、第1の信号811を増幅した信号812がノードnode_31から出力される。
増幅器833から出力された信号812は、図17の符号815で示す周波数特性を有する高調波除去回路834において高調波成分が除去される。そして、増幅器833で増幅され、且つ高調波除去回路834において高調波成分が除去された第2の信号813が、ノードnode_32から出力される。第2の信号813は分離素子837を経由してアンテナ31に供給され、アンテナ31から第2の電波14として放射される。
図17は、本実施の形態にかかる発明の効果を説明するための図である。実施の形態1にかかるデータ送信機3では、データ送信機3の内部に設けられた増幅器35を非線形領域で動作させると高調波歪み(符号816に示す)が生じる場合があった。この高調波歪みの電力強度が大きすぎると、他の電子機器に影響を及ぼす可能性があった。これに対して本実施の形態にかかるデータ送信機3では、高調波除去機能付の可変利得増幅器を用いているので、高調波歪みの電力強度を規格値以下に抑えることができる。つまり、図17に示すように、2次高調波の電力強度を規格値以下とすることができ(符号817参照)、また3次高調波の電界強度をゼロにすることができる。
なお、上記で説明した、増幅器833と高調波除去回路834とで構成される振幅制限機能付の可変利得増幅器は一例であり、高調波歪みの電力強度を規格値以下に抑えることができる増幅器であれば、どのような増幅器を用いてもよい。
<実施の形態6>
次に、本発明の実施の形態6について説明する。図18は、実施の形態6にかかる無線通信システムを示すブロック図である。また、図19は、実施の形態6にかかる無線通信システムで用いられるデータ送信機903を示すブロック図である。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、データ送信機903の受信用アンテナ931_1で第1の電波13を受信し、送信用アンテナ931_2から第2の電波14を送信している点が、実施の形態1にかかる無線通信システムと異なる。これ以外は実施の形態1にかかる無線通信システムと同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図19に示すデータ送信機903は、受信用アンテナ931_1、送信用アンテナ931_2、変調回路932、およびセンサ33を備える。変調回路932は増幅器(可変利得増幅器)935を備える。変調回路932は、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13を変調することで第2の電波14を生成する。
このとき、変調回路932が備える増幅器935は、受信用アンテナ931_1で受信した第1の電波13に応じた第1の信号915を第2のデータに応じて増幅して第2の信号916を生成する。生成された第2の信号916は送信用アンテナ931_2から第2の電波14として放射される。増幅器935は、利得制御信号936に応じて増幅率を変化させることができる。ここで、利得制御信号936の値は、送信対象である第2のデータに対応している。
例えば、図20Aに示すように、送信対象である第2のデータが"1"である場合(つまり、利得制御信号936が"1"である場合)、増幅器935は、受信用アンテナ931_1で受信した第1の電波13に応じた第1の信号915を増幅して、振幅の大きい第2の信号916を生成する。生成された第2の信号916は送信用アンテナ931_2から第2の電波14として放射され、第1の電波12に対する外乱として働く。このとき、増幅器935における増幅率を大きくすることで、より強い第2の電波14を送信用アンテナ931_2から出力することができる。このようにして、データ送信機903から第2の無線機器2に"1"のデータが送信される。
一方、図20Bに示すように、送信対象である第2のデータが"0"である場合(つまり、利得制御信号936が"0"である場合)、増幅器935は、受信用アンテナ931_1で受信した第1の電波13に応じた第1の信号915の振幅を十分に小さい値とする。よって、この場合、増幅器935から出力される第2の信号916の振幅は、十分に小さいので、送信用アンテナ931_2から出力される第2の電波14は第1の電波12に対する外乱としては働かない。このようにして、データ送信機903から第2の無線機器2に"0"のデータが送信される。なお、利得制御信号936が"0"である場合、増幅器935は、受信用アンテナ931_1で受信した第1の電波13に応じた第1の信号915の振幅をゼロとしてもよい。このとき、増幅器935から第2の信号916は出力されないので、送信用アンテナ931_2から第2の電波14は出力されない。
図21は、図19に示すデータ送信機903の具体例を示す回路図である。なお、図21に示すデータ送信機903は一例であり、本実施の形態では、上記で説明した動作を実現することができるデータ送信機であれば、図21に示すデータ送信機に限定されることはない。
図21に示すように、増幅器(シングルエンド増幅器)935は、N型トランジスタTr41、Tr42、容量C41、C42、および抵抗R41、R42、R43を備える。容量C41の一端には受信用アンテナ931_1で受信した第1の電波13に応じた第1の信号915が供給され、他端は抵抗R41の一端およびN型トランジスタTr42のゲートと接続されている。抵抗R41の他端にはバイアス電圧bias_41が供給されている。N型トランジスタTr42のドレインはN型トランジスタTr41のソースと接続され、ソースは接地されている。
N型トランジスタTr41のゲートには利得制御信号936が供給され、ドレインは抵抗R42の一端および容量C42の一端と接続されている。抵抗R42の他端は電源VDDに接続されている。容量C42の他端は抵抗R43の一端と接続されている。抵抗R43の他端にはバイアス電圧bias_42が供給されている。増幅器935で増幅された第2の信号916は、容量C42の他端および抵抗R43の一端が接続されたノードnode_41から送信用アンテナ931_2に出力される。
図21に示す増幅器935において、利得制御信号936が"0"の場合はN型トランジスタTr41がオフ状態となるので、増幅された信号はノードnode_41から出力されない。一方、利得制御信号936が"1"の場合はN型トランジスタTr41がオン状態となる。このとき、N型トランジスタTr42のゲートには、第1の信号915をバイアス電圧bias_41だけ上昇させた信号が供給される。これにより、N型トランジスタTr42は第1の信号915に応じて動作をするので、第1の信号915を増幅した第2の信号916がノードnode_41から出力される。増幅された信号は送信用アンテナ931_2に供給され、送信用アンテナ931_2から第2の電波14として放射される。
上記で説明した増幅器935を備えるデータ送信機903を用いることで、データ送信機903と第2の無線機器2との距離が離れている場合であっても、データ送信機903から第2の無線機器2に対して第2のデータを送信することができる。また、本実施の形態にかかるデータ送信機903では、受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2とを設けているので、実施の形態1の変調回路32において用いていた分離素子37を省略することができる。また、増幅器935において発振することを防止することができる。
また、本実施の形態において、データ送信機903は受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2とを備えているので、送信用アンテナ931_2から放射された第2の電波14が受信用アンテナ931_1で再度受信されないようにする必要がある。つまり、送信用アンテナ931_2から放射された第2の電波14が受信用アンテナ931_1で再度受信されると、受信用アンテナ931_1、増幅器935、および送信用アンテナ931_2を経由するループが形成され、変調回路932が発振するおそれがある。
よって、本実施の形態では、データ送信機903の受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2を、図22に示すように構成することが好ましい。すなわち、受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2をループアンテナで構成すると共に、受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2をそれぞれ同一面内において90度回転させて配置する。受信用アンテナ931_1と送信用アンテナ931_2をこのように配置することで、送信用アンテナ931_2から放射された第2の電波が受信用アンテナ931_1で再度受信されることを回避することができる。なお、図22に示す符号951、952は受信用アンテナ931_1の空間放射特性を示し、符号953、954は送信用アンテナ931_2の空間放射特性を示している。
なお、本実施の形態にかかる発明は、上記で説明した実施の形態2乃至5にかかる発明と適宜組み合わせてもよい。
<実施の形態7>
次に、本発明の実施の形態7について説明する。図23は、実施の形態7にかかる無線通信システムを示すブロック図である。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、第2の無線機器21が、分離復調回路24として復調回路41と誤り率評価回路42を有する点が、図1で説明した実施の形態1にかかる無線通信システムと異なる。これ以外は実施の形態1の場合と同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
図23に示すように、本実施の形態にかかる無線通信システムの第2の無線機器21は、増幅器27と、復調回路41と、誤り率評価回路42とを備える。なお、増幅器27は、第1の電波12と第2の電波14の信号レベルが高い場合、つまり後段の分離復調回路24で処理をすることができる信号レベルであれば、適宜省略することができる。
復調回路41は、受信した電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータを復調し、復調後のデータを第1の無線機器1からの復調データ25として出力する。誤り率評価回路42は、第1の無線機器1から送信された第1のデータを復調した後にビット誤り率の評価を行ない、このビット誤り率の時間変動に基づいてデータ送信機3からのデータを読み取り復調を行ない、データ送信機3からの復調データ26を生成する。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、復調を行なう回路が、第1の無線機器1から送信された第1のデータを復調する復調回路41のみであり、データ送信機3から送られたデータは、その後段のベースバンド処理の中で復調される。
例えば、このような構成の無線通信システムに対して第三者の妨害波がさらに入った場合、またデータ送信機3からの第2の電波14に比べて第1の無線機器1からの第1の電波(直接波)12が優勢である位置関係にある場合は、データ送信機3からの第2のデータの受信SN比が低下する。このような場合は、多数決処理や符号拡散処理を実施することで、データ送信機3からの第2のデータの受信SN比を高くすることができ、第2の無線機器21においてデータ送信機3からの第2のデータの受信を可能にすることができる。
例えば、第1の無線機器1と第2の無線機器21の距離、および第1の無線機器1とデータ送信機3の距離が等しく、かつ第2の無線機器21とデータ送信機3の距離がそれらの半分である二等辺三角形として配置されており、データ送信機3においては、第1の無線機器1からの電波を変調して第2の電波として放射する際の減衰係数が約0.5であるとする(ここでは、データ送信機3から送信された信号のSN比が低下する場合を例示するために、第2の電波の減衰係数を低く設定している)。この場合、第1の無線機器1から第2の無線機器21へ直接入る距離に比べて、データ送信機を経由して第2の無線機器21へ間接的に入る距離は1.5倍となり、到達電力が距離自乗の逆数に比例すると仮定すれば、間接波は直接波に比べて10*log(1/(1.5*1.5))=−4dBの分、距離減衰が加わる。さらに減衰係数が0.5であるので、10*log(0.5)=−3dBの減衰が加わる。これによって、第1の無線機器1からの電波が直接第2の無線機器21にノイズとして入る電力Nと、データ送信機3を経由してデータとして第2の無線機器21に入る電力Sの比は、信号成分の減衰量=距離減衰+変調減衰、かつノイズ電力は増減なしとしてS/N=−3dB−4dB=−7dBとなり、ノイズに埋もれてしまう。
しかし、例えばデータ送信機3から同じデータを12回送信し、第2の無線機器2において多数決処理を行いランダムノイズを抑制すると、
H(z-1)=1+z-1+z-2+…+z-11
で定義される12タップの有限インパルス応答フィルタS/Nは、図26に示されるように7.6dB向上するので、S/N=−7dBのデータを受信することが可能となる。
ここで、図27に示すようにWLAN搬送波の周波数2.4GHz帯ではデータレートは最低でも1Mbps以上である。よって、データレートが1Mbpsを下る低周波での周期性が環境電波には無いため、データ送信機3の通信帯域内で十分白色的に拡散していると考えられる。よって、多数決処理を実施することでSN比を向上させることができる。なお、多数決処理や符号拡散処理は冗長性を必要とするため、実効的なデータ通信速度は低下する。この場合は、従来のRFIDシステムに比べて扱えるデータの規模が小さくなる。
次に、図24を用いて本実施の形態にかかる無線通信システムに用いられる第2の無線機器21に関して具体的に説明する。図24に示す第2の無線機器21の復調回路41は、復調部51、デマッピング処理部52、軟判定デインターリーブビタビ復調処理部53、フレーム処理部54を含む。
デマッピング処理部52からのデマッピング出力は、軟判定デインターリーブビタビ復調処理部53および誤り率評価回路42に出力される。軟判定デインターリーブビタビ復調処理部53からの軟判定・ビタビ出力はフレーム処理部54および誤り率評価回路42に出力される。フレーム処理部54からのフレーム処理出力は、第1の無線機器1からの復調データ25として出力される。また、フレーム処理部54からのフレーム処理出力は、誤り率評価回路42にも出力される。
また、誤り率評価回路42は記憶部61を含む。誤り率評価回路42は、デマッピング出力、軟判定・ビタビ出力、およびフレーム処理出力のうちの少なくとも一つに基づいてデータ送信機3からの第2のデータを復調し、データ送信機3からの復調データ26を出力する。
図25は、図24に示す第2の無線機器21の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、第1の無線機器1から送信された第1のデータが復調部51で復調される。復調部51で復調された復調データは、デマッピング処理後のビット列、軟判定・ビタビ処理後のビット列、フレーム処理後のビット列のようにプロトコル処理の各階層から分岐されて復調回路41から出力される。デマッピング処理部52、軟判定デインターリーブビタビ復調処理部53、フレーム処理部54におけるプロトコル処理が進むにつれて妨害波などの外乱の影響が緩和される。このため、デマッピング処理後のビット列は、フレーム処理後のビット列に比べて外乱の影響が大きい。
次に、フレーム処理出力でのビット誤り率をサンプリングする(ステップS1)。この時、データ送信機3から送られるデータのシンボルレート以上の速度でこのビット誤り率をサンプリングする。そして、得られたサンプリング結果を配列で記憶部に保持する(ステップS2)。
次に、ステップS1、S2で取得した配列に対して符号逆拡散処理を施しSN比を向上させる(ステップS3)。この時、第2の無線機器21内に予め保持しておいた拡散符号と保持しているサンプリング結果との間で相関を取り逆拡散処理を実施し、得られた結果のビット列をさらに記憶部に保持する。
また、データ送信機3から同じデータが繰り返し送信されているので、これらの間で多数決処理を実施し、この結果を記憶部に保持する(ステップS4)。
次に、この多数決処理の後で得られた結果の中で、パリティビットが反転している等の明確な誤りがあるか否か判断する(ステップS5)。ステップS5において明確な誤りがないと判断された場合、得られた結果をデータ送信機3から送信されたデータ(第2のデータ)として出力する(ステップS6)。一方、ステップS5において明確な誤りがあると判断された場合、データ送信機3からのデータがノイズに埋もれやすい伝送環境にあるといえる。
このような場合は、より外乱の影響が大きい軟判定・ビタビ出力でのビット誤り率をサンプリングする(ステップS7)。そして、上記のステップS2からステップS4までの処理と同様の処理を、軟判定・ビタビ出力でのビット誤り率のサンプリング結果に対して実施する(ステップS8)。さらに、多数決処理後の結果の中で、パリティビットが反転している等の明確な誤りがあるか否か判断する(ステップS9)。ステップS9において明確な誤りがないと判断された場合、得られた結果をデータ送信機3から送信されたデータ(第2のデータ)として出力する(ステップS6)。
一方、ステップS9において明確な誤りがあると判断された場合は、より外乱の影響が大きいデマッピング出力でのビット誤り率をサンプリングする(ステップS10)。そして、上記のステップS2からステップS4までの処理と同様の処理を、デマッピング出力でのビット誤り率のサンプリング結果に対して実施する(ステップS11)。そして、得られた結果をデータ送信機3から送信されたデータ(第2のデータ)として出力する(ステップS6)。
サンプリングの対象を、フレーム処理出力でのビット誤り率、軟判定・ビタビ出力でのビット誤り率、デマッピング出力でのビット誤り率とするにつれてノイズに敏感になる。この場合は、上記の拡散符号の長さを増加させたり、多数決処理におけるサンプリングの回数を増加させたりすることでノイズの影響を低減することができる。
なお、ノイズの少ない環境、例えばデータ送信機3と第2の無線機器2との距離が近い環境での使用に限定される場合は、上記のような複雑な構成をとる必要はなく、フレーム処理後の誤り率のみをトレースすることでデータ送信機3から送信された第2のデータを復調することができる。
本実施の形態にかかる無線通信システムにおいても、無線ネットワーク環境下においてRFID技術を利用したシステムを導入する際のコストを低減することが可能な無線通信システムを提供することができる。
なお、本実施の形態にかかる無線通信システムおける第2の無線機器21も、既存の無線機器にソフトウェア処理を実施すことで構成することができる。つまり、図24に示した第2の無線機器21におけるデマッピング処理以降の処理はプロトコル処理であるため、例えば図9に示すプロトコル処理部にソフトウェア処理を実施することで、図24に示す第2の無線機器21を構成することができる。なお、本実施の形態では図9に示すプロトコル処理部の一部をハードウェアで構成してもよく、この場合はプロトコル処理部のハードウェアで構成した部分以外にソフトウェア処理を施すことで第2の無線機器21を構成することができる。
<実施の形態8>
次に、本発明の実施の形態8について説明する。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、図24に示した第2の無線機器21における処理が実施の形態7における処理と異なる。これ以外は実施の形態7の場合と同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
図28は、本実施の形態にかかる第2の無線機器21の処理を説明するためのフローチャートである。実施の形態7で説明した図25に示すフローと図28に示すフローとの違いは、図28に示すフローでは図25で説明したパリティビットを用いた判別(ステップS5、S9)が不要となっている点である。
すなわち、図28に示すフローでは、まず、フレーム処理出力でのビット誤り率をサンプリングする(ステップS21)。そして、得られたサンプリング結果を配列で記憶部に保持する(ステップS22)。
次に、ステップS21、S22で取得した配列に対して符号逆拡散処理を施しSN比を向上させる(ステップS23)。この時、第2の無線機器21内に予め保持しておいた拡散符号と保持しているサンプリング結果との間で相関を取り逆拡散処理を実施し、得られた結果のビット列をさらに記憶部に保持する。そして、繰り返し送信されているデータ送信機3からのデータを用いて多数決処理を実施し、この結果(結果1)を記憶部に保持する(ステップS24)。
また、上記ステップS21からS24の処理と並行して以下の処理を実施する。
まず、デマッピング出力でのビット誤り率をサンプリングする(ステップS25)。そして、得られたサンプリング結果を配列で記憶部に保持する(ステップS26)。
次に、ステップS25、S26で取得した配列に対して符号逆拡散処理を施しSN比を向上させる(ステップS27)。この時、第2の無線機器21内に予め保持しておいた拡散符号と保持しているサンプリング結果との間で相関を取り逆拡散処理を実施し、得られた結果のビット列をさらに記憶部に保持する。そして、繰り返し送信されているデータ送信機3からのデータを用いて多数決処理を実施し、この結果(結果2)を記憶部に保持する(ステップS28)。
最後に、多数決処理結果1と多数決処理結果2の差分を、データ送信機から送信されたデータ(第2のデータ)として出力する(ステップS29)。
このように、デマッピング出力よりも外乱の影響が小さいフレーム処理出力と、デマッピング出力と、の差分をとることで、データ送信機3から外乱として送信されたデータを取り出すことができる。また、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、第2の無線機器21の処理を実施の形態7にかかる処理と比べて簡単にすることができる。
<実施の形態9>
次に、本発明の実施の形態9について説明する。本実施の形態にかかる無線通信システムでは、実施の形態1乃至8で説明した無線通信システムと比べて、複数のデータ送信機3_1〜3_Nを備えている点が異なる。これ以外は、実施の形態1乃至8と同様であるので、同一の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
図29Aは、本実施の形態にかかる無線通信システムを示すブロック図である。図29Aに示すように、本実施の形態にかかる無線通信システムでは、第1の無線機器1から出力された第1の電波を受信することができる範囲内に複数のデータ送信機3_1〜3_Nを有する。データ送信機3_1は、第1の無線機器1から出力された第1の電波13_1を受信し、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13_1を変調し、第2の電波14_1を出力する。同様に、データ送信機3_2は、第1の無線機器1から出力された第1の電波13_2を受信し、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13_2を変調し、第2の電波14_2を出力する。同様に、データ送信機3_Nは、第1の無線機器1から出力された第1の電波13_Nを受信し、送信対象である第2のデータに応じて第1の電波13_Nを変調し、第2の電波14_Nを出力する。
図29Bは、複数のデータ送信機3_1〜3_Nのそれぞれが、第1の電波13_1〜13_Nに与える外乱の一例を示す図である。図29Bに示すように、複数のデータ送信機3_1〜3_Nのそれぞれは、送信対象であるデータに拡散符号などの識別情報をヘッダとして追加している。
第2の無線機器2は、第1の電波12および第2の電波14_1〜14_Nを受信すると共に、当該受信した電波に含まれている第1の無線機器1から送信された第1のデータと各データ送信機3_1〜3_Nから送信された各データとを、分離復調回路24を用いて分離し復調する。ここで、分離復調回路24は、送信対象であるデータにヘッダとして追加された識別情報に基づいて、各データ送信機3_1〜3_Nから送信された各データを区別することができる。分離復調回路24で分離・復調されたデータは、第1の無線機器1からの復調データ25および各データ送信機3_1〜3_Nからの復調データ26_1〜26_Nとして出力される。
なお、上記例では識別情報として拡散符号を用いたが、識別情報は各データを区別できる情報であればどのような情報であってもよい。また、拡散符号としては例えばM系列を用いることができる。しかし、自己相関性の高い擬似乱数であれば特にM系列に限定されるものではなく、例えばGOLD符号を用いることもできる。また、実施の形態7、8では逆拡散処理を実施している例を示したが、この場合はこの逆拡散処理よりも先に、データ識別のための拡散処理が必要となる。
例えば、拡散符号として自己相関が小さい符号系列である擬似乱数パターンを用いる場合、PN4であれば、M系列に対し許される初期値により擬似乱数系は1組である。これに対してPN5、PN7とすれば、それぞれ3組、9組と増加する。また図30に示すように、PN4、PN5のそれぞれの自己相関を取った場合、相関強度のピーク値と底値との差はそれぞれ16、32となり、これはそれぞれ24dB、30dBである。これにより、別の拡散符号を持ったデータに対して、ビット誤り率>10−2のon/offキーイングの復調に要求されるSN比よりも高い精度で区別することができる。
上記ヘッダとしてPN5を採用し、データ受信時の冒頭でマッチドフィルタをかけることにより所望のデータ送信機と第2の無線機器2との同期を取れば、第2の無線機器2内に3組の無線チップがあっても、所望の1つのデータ送信機からのデータのみを選択的に受信できる。4組以上のデータ送信機がある場合はPN7以上の拡散符号を用いることで各データ送信機からのデータを選択的に受信することができる。
このような無線通信システムにより、複数のデータ送信機3_1〜3_Nが存在する場合であっても、混信を回避して各データ送信機から送信された各データを区別して受信することができる。
<実施の形態10>
次に、本発明の実施の形態10について説明する。実施の形態10では、実施の形態1乃至9で説明した無線通信システムを自動車の車内ネットワークに適用した場合について説明する。
本実施の形態では、図31に示すように、実施の形態1乃至9で説明した第1の無線機器1と第2の無線機器2とを用いて、自動車90の車内ネットワークを構築する。第1の無線機器1は、第1の電波12を用いて第2の無線機器2に第1のデータを送信する。ここで、第1の電波12は第1の無線機器1から第2の無線機器2に直接送信される直接波である。
例えば、第1の無線機器1は、エンジン制御用ECU、トランスミッション制御用ECU、エアコン制御用ECU等と接続され、これらの制御情報を第1の無線機器1を用いて第2の無線機器2に送信するように構成してもよい。また、例えば第2の無線機器2はカーナビゲーションシステムと接続されており、第1の無線機器1から送信された制御情報をカーナビゲーションシステムの画面に表示するように構成してもよい。
なお、上記例は一例であり、本実施の形態では第1の無線機器1と第2の無線機器2とを用いてどのような車内ネットワークを構築してもよい。
本実施の形態では、データ送信機3は自動車の任意の場所に設置することができる。例えば、データ送信機A(3_1)は、自動車のタイヤ91の空気圧を監視するためにタイヤ91に設置してもよい。このとき、データ送信機A(3_1)は圧力センサを備えていてもよく、この圧力センサで取得したタイヤ91の空気圧の情報を第2の無線機器2に送信するようにしてもよい。
データ送信機A(3_1)から第2の無線機器2に空気圧の情報を送信する際は、実施の形態1乃至9で説明した方法を用いることができる。すなわち、データ送信機A(3_1)は、第1の無線機器1から送信された第1の電波13_1を、送信対象である空気圧の情報に応じて変調して第2の電波14_1として出力する。ここで、変調された第2の電波14_1は、第1の無線機器1から第2の無線機器2に送信された第1の電波(直接波)12に対する外乱として働く。そして、第2の無線機器2において、第1の電波12に対する外乱の有無を判断して、第1の無線機器1から送信されたデータとデータ送信機A(3_1)から送信された空気圧の情報とを分離し、これらのデータを復調する。
また、例えば、データ送信機B(3_2)は、自動車の窓92の開閉状態を監視するために窓92に設置してもよい。このとき、データ送信機B(3_2)は窓92の開閉状態を検知する位置センサを備えていてもよく、この位置センサで取得した窓92の開閉状態に関する情報を第2の無線機器2に送信するようにしてもよい。
データ送信機B(3_2)から第2の無線機器2に窓92の開閉状態に関する情報を送信する際は、実施の形態1乃至9で説明した方法を用いることができる。すなわち、データ送信機B(3_2)は、第1の無線機器1から送信された第1の電波13_2を、送信対象である窓92の開閉状態に関する情報に応じて変調して第2の電波14_2として出力する。ここで、変調された第2の電波14_2は、第1の無線機器1から第2の無線機器2に送信された第1の電波(直接波)12に対する外乱として働く。そして、第2の無線機器2において、第1の電波12に対する外乱の有無を判断して、第1の無線機器1から送信されたデータとデータ送信機B(3_2)から送信された窓92の開閉状態に関する情報とを分離し、これらのデータを復調する。
また、例えば、データ送信機C(3_3)は、車内の温度を監視するために車内の任意の場所に設置してもよい。このとき、データ送信機C(3_3)は温度センサを備えていてもよく、この温度センサで取得した車内の温度に関する情報を第2の無線機器2に送信するようにしてもよい。
データ送信機C(3_3)から第2の無線機器2に車内の温度に関する情報を送信する際は、実施の形態1乃至9で説明した方法を用いることができる。すなわち、データ送信機C(3_3)は、第1の無線機器1から送信された第1の電波13_3を、送信対象である車内の温度に関する情報に応じて変調して第2の電波14_3として出力する。ここで、変調された第2の電波14_3は、第1の無線機器1から第2の無線機器2に送信された第1の電波(直接波)12に対する外乱として働く。そして、第2の無線機器2において、第1の電波12に対する外乱の有無を判断して、第1の無線機器1から送信されたデータとデータ送信機C(3_3)から送信された車内の温度に関する情報とを分離し、これらのデータを復調する。
例えば、第2の無線機器2は、データ送信機3_1〜3_3から異常を示す情報が送信された場合、第2の無線機器2と接続されているカーナビゲーションシステムに警告を表示することで、運転者に異常を通知することができる。
なお、上記で説明した、データ送信機3を設置する場所は一例であり、データ送信機3は他の任意の箇所に設置することができる。また、データ送信機3を複数設置する場合は、各データ送信機3_1〜3_3から送信されたデータを区別する必要がある。この場合は、例えば実施の形態9で説明したように、送信対象であるデータに拡散符号などの識別情報をヘッダとして追加することで、複数のデータ送信機3_1〜3_3から送信されたデータの送信元を区別することができる。
本実施の形態において、データ送信機3は外部から電源供給を受けることなく動作をすることができる。よって、本発明は、例えばタイヤの空気圧の測定など、電源の配線が困難な場所の状態をセンサで測定する場合に特に有効である。
<その他の実施の形態>
以下、その他の実施の形態について説明する。
上記実施の形態で説明したデータ送信機は、半導体チップに作製されていてもよい。つまり、データ送信機を構成する各回路(変調回路、センサ等)を半導体チップに作製してもよい。この場合、データ送信機が有する各回路が形成された半導体チップと同一のチップにアンテナを形成してもよい。また、データ送信機が有する各回路が形成された半導体チップとは別に、アンテナを形成してもよい。
図32Aに示すように、半導体チップを用いて作製されたデータ送信機591は、粘着部材594を用いて被測定対象に貼り付けることができる。粘着部材594として、例えば絆創膏を用いることができる。ここで、データ送信機591は、データ送信機を構成する各回路592とアンテナ593とを含む。例えば、データ送信機591が温度センサを備える場合、粘着部材594にチップ状のデータ送信機591を取り付け、この粘着部材594を被測定対象に貼り付けることで、容易に被測定対象の温度を測定することができる。
なお、粘着部材は経時的に粘着力が低下するため所定の時間が過ぎた後は使用することができない。これに対して、データ送信機591の製品寿命は長い。よって、データ送信機591を取り外すことができるように粘着部材594を構成することで、データ送信機591を再利用することができる。例えば、粘着部材594にポケットを形成することで、データ送信機591を取り外すことができる。
図32Bは、粘着部材の断面図である。図32Bに示すように、データ送信機591が温度センサを備える場合は、粘着部材594に貼り付けられたデータ送信機591と被測定対象との間に位置する部材595として熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。このように、熱伝導率の高い材料を用いることで被測定対象の温度を正確に測定することができる。ここで、熱伝導率の高い材料としては、銅等の金属材料、高熱伝導率を有する樹脂材料などを用いることができる。
また、データ送信機は体温計に設けてもよい。この場合、体温計が備える温度センサをデータ送信機のセンサとして用いてもよい。データ送信機を体温計に設けることで、被測定対象の体温の履歴を第2の無線機器2に送信することができる。
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。