JP6082550B2 - 有害物質の吸入抑制製品 - Google Patents

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本発明は、例えばアレルゲンや病原性ウイルス等の有害物質を人間が吸入してしまうのを抑制する有害物質の吸入抑制製品に関するものである。
例えば特許文献1には、人間の鼻孔内に空気中の汚染体が吸入されるのを抑制する局所点鼻製品が開示されている。特許文献1の記載によれば、電荷を持った物質を人間の鼻孔やその周辺に塗布することによって鼻孔の周辺に静電気領域を作り、これにより空気中の汚染体を鼻孔に寄せ付けないようにしたり、吸着して汚染体の吸入を抑制するというものである。
特許第4870431号公報
ところで、特許文献1の局所点鼻製品によれば、鼻孔の周辺においてダニの死骸や糞、花粉等のアレルゲンや、病原性ウイルス等の有害物質を吸着させ、このことによって人間が吸入してしまうのを抑制することが可能になると考えられる。
しかしながら、鼻孔の周辺に吸着した有害物質は依然として活性状態にあると考えられる。この活性状態の有害物質は、例えば人間が移動する際の気流の影響や、手で顔を触ったときに、鼻孔の周辺から離れてしまい、それが口から吸入されたり、目に入る恐れがあり、こうなると有害物質による症状が現れることになり、結果として吸入抑制効果は不十分なものとなる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一旦吸着した有害物質が仮に離れて人間に吸入されたとしても、その有害物質による症状が現れないようにし、有害物質の吸入抑制効果を十分に得ることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、吸着した有害物質を失活させるようにした。
第1の発明は、アレルゲンや病原性ウイルス等の有害物質を人間が吸入してしまうのを抑制する有害物質の吸入抑制製品において、
上記有害物質をクーロン力により吸着する電荷を持った電荷物質と、
上記電荷物質に吸着された上記有害物質を失活させるルチル型の酸化チタンからなる失活剤とを含み、
上記電荷物質及び上記失活剤は液体に分散しており、
上記有害物質の吸入抑制製品は、上記電荷物質及び上記失活剤が分散した液体を人間の顔へ噴霧する噴霧機構を有していることを特徴とするものである。
この構成によれば、電荷物質を顔に付着させると、空気中の有害物質がクーロン力により電荷物質に吸着されることになる。そして、電荷物質に吸着された有害物質は失活剤により失活する。従って、電荷物質に一旦吸着された有害物質が仮にその電荷物質から離れて人間に吸入されたとしても、その有害物質による症状が現れないようになる。
また、人間の顔において高い安全性を担保しながら、有害物質を失活させることが可能になる。
また、電荷物質及び失活剤を顔の広い範囲にムラができないように簡単に塗布することが可能になる。
第1の発明によれば、有害物質を失活させる失活剤を含んでいるので、電荷物質に吸着された有害物質を失活させることができる。これにより、電荷物質に一旦吸着された有害物質が仮にその電荷物質から離れて人間に吸入されたとしても、その有害物質による症状が現れないようすることができ、有害物質の吸入抑制効果を十分に得ることができる。
また、ルチル型の酸化チタンを失活剤としたので、人間の顔に対して使用する際の高い安全性を担保しながら、有害物質を失活させることができる。
また、電荷物質及び失活剤が分散した液体を噴霧するようにしたので、電荷物質及び失活剤を顔の広い範囲にムラができないように簡単に塗布することができ、有害物質の吸入抑制効果をより一層高めることができる。
本発明の実施形態にかかる有害物質の吸入抑制製品を示す図である。 有害物質の吸入抑制製品の使用要領を説明する図である。 薬剤を指で塗布した場合と噴霧機構で塗布した場合との電位差を示すグラフである。 薬剤の作用を模式的に示す図である。 薬剤を塗布しない場合と塗布した場合の症状の差を示すグラフである。 薬剤を塗布しない場合と塗布した場合の花粉吸入量を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態にかかる有害物質の吸入抑制製品1を示すものである。有害物質の吸入抑制製品1は、有害物質を人間が吸入してしまうのを抑制するためのものであり、主に顔に対して使用するものである。有害物質とは、空気中に浮遊するダニの死骸や糞、花粉等のアレルゲンや、病原性ウイルス等である。これら有害物質は、吸入されて体内に取り込まれると、喘息、皮膚炎、花粉症等の症状が現れることがある。本発明が対象とする有害物質は上記に限られるものではなく、その他、体内に取り込まれることによって何らかの症状が現れる物質を含んでいる。上記した有害物質は、通常、プラスかマイナスの電荷を持ったものが殆どである。
有害物質の吸入抑制製品1は、容器1と、容器1に収容された液状の薬剤と、容器1内の薬剤を噴霧する噴霧機構(付着手段)3とを備えている。噴霧機構3は、使用者が指で押すことによって容器1内の薬剤を吸い上げて噴霧するように構成されたプッシュスプレータイプのものであり、薬剤を人間の顔に指を用いることなく、直接付着させることができるようになっている。噴霧機構3としては、薬剤を噴霧させることができればよく、例えばトリガータイプのものであってもよい。1度の操作で噴射される薬剤の量は、例えば0.15mlに設定し、1回当たりの使用量としては、2度の噴射操作によって0.3mlとしている。1度の操作で噴射される量や、1回当たりの使用量は上記に限られるものではなく、例えば0.1ml以上0.5ml以下の範囲で設定することができる。
薬剤は、上記有害物質に対してクーロン力を与える電荷を持った電荷物質と、有害物質を失活させる失活剤と、電荷物質及び失活剤が分散する水とを含んでいる。電荷物質としては、プラスの電荷を持つ電荷物質であってもよいし、マイナスの電荷を持つ電荷物質であってもよい。この実施形態では、カチオン化セルロースを、プラスの電荷を持つ電荷物質として使用している。プラスの電荷を持つ電荷物質としては、その他、例えば、カチオン化デンプン、ポリ塩化メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、第4級アンモニウム塩、その他陽イオン系界面活性剤等を挙げることができ、これらを1種だけ、又は2種以上混合して使用することができる。マイナスの電荷を持つ電荷物質としては、例えば、リン酸エステルやドデシル硫酸ナトリウムなどの陰イオン系界面活性剤等を挙げることができる。電荷物質は、顔に付着させても炎症等を起こす心配のない安全性の高い物質が好ましく、また、電荷が多い方が好ましい。また、電荷物質の混合量としては、0.01〜10.0重量部が好ましい。
失活剤としては、例えば、酸化チタンやヘクトライト等を挙げることができる。酸化チタンによれば、酸化チタンの持つ光触媒機能によって有害物質を失活(不活化)できる。すなわち、酸化チタンに光エネルギーを与えることにより、酸化チタンの表面で強い酸化力が発現し、この酸化力を利用して酸化チタンに触れている有害物質を分解して失活させることが可能である。
酸化チタンの結晶型はアナタース型とルチル型とがあるが、顔に対する安全性と、失活性能との両立を考慮すると、ルチル型が好ましい。また、酸化チタンの平均粒子径は、十分な失活性能を得る観点から、1nm以上200nm以下が好ましい。より好ましくは、10nm以上100nm以下である。平均粒子径が1nmよりも小さいと、有害物資との接触部分が小さくなり、十分な失活性能を得ることが難しくなるという問題があり、また、平均粒子径が200nmよりも大ききと、薬剤中で沈殿が生じやすくなるため製剤化が困難になるという問題がある。平均粒子径の異なる複数種の酸化チタンを混合して失活剤として用いてもよい。また、用いる酸化チタンは、例えば、ケイ酸やアルミ、シリカなどの表面処理剤でコーティングしてあるものでもよい。
失活剤がヘクトライトの場合には、ヘクトライトの持つ層状構造の内部に有害物質が取り込まれ、その結果、有害物質が失活する。失活剤としては、酸化チタンとヘクトライトの両方を用いてもよい。また、失活の混合量としては、0.01〜10.0重量部が好ましい。
薬剤には、電荷物質及び失活剤の他に、香料等の添加剤を加えてもよい。添加剤の種類としては、例えば、パウダー、保湿剤、防腐剤等を挙げることができる。また、添加剤の添加量は、その種類等に応じて異なるので一概には決定できないが、その種類などに応じて、本発明の目的が阻害されない範囲内で決定することが好ましい。
また、薬剤には、日焼け止めとしての成分、抗炎症成分等を添加してもよい。これらの添加量も任意に設定することができる。
上記噴霧機構3は、噴霧する薬剤の平均粒子径が50μm以上200μm以下となるように構成されている。薬剤の平均粒子径は、噴霧機構3が有する噴射口の形状や大きさ等で任意に設定することができる。平均粒子径が50μmよりも小さいと、薬剤噴霧時に飛散しやすくなり、目的の場所への付着量が減ってしまうという問題があり、また、平均粒子径が200μmよりも大ききと、薬剤が液滴で肌に付着するため、均一な塗布が難しくなり、使用感も著しく悪くなるという問題がある。
薬剤の平均粒子径の測定方法は次のとおりである。薬剤を、噴射機構3から水平方向に噴射し、噴射口から噴射方向(水平方向)に直線距離で20cm離れた箇所における平均粒子径を測定した。雰囲気温度は25℃である。平均粒子径の測定装置として、粒度分布測定装置(レーザー光散乱方式、東日コンピューターアプリケーションズ株式会社製 LDSA−1400A)を用いた。平均粒子径は、上記粒度分布測定装置で測定して処理装置によって自動的に演算されて解析されたD50を意味するものである。D50とは、体積積算値が50%を占める時の粒子径のことである。尚、上記直線距離の起算点は、噴射口の中心点である。
尚、この実施形態では、使用者の押圧操作によるポンプ作用を利用して薬剤を噴霧するようにしているが、これに限らず、いわゆるエアゾール缶に噴射剤と共に薬剤を収容しておき、ボタン操作によって薬剤を噴射剤と一緒に噴射するようにしてもよい。噴射剤としては、窒素や二酸化炭素等の圧縮気体、LPG、DMEなどの液化ガス等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
次に、上記のように構成された有害物質の吸入抑制製品1を使用する場合について説明する。有害物質の吸入抑制製品1は上述のように噴霧機構3を備えているので、使用者が噴霧機構3を操作することで薬剤を霧状にして顔に噴射することができる(図2参照)。つまり、本実施形態では、薬剤を顔に直接塗布することができる。このことの利点について図3に基づいて説明する。
図3は、薬剤を人間の皮膚に指で塗布した場合と、上記噴霧機構3で塗布した場合とで、電位の経時的変化量にどのくらい差が現れるかを示すグラフである。横軸は経過時間(分)を示し、縦軸は皮膚表面の電位の変化量を示している。電位の変化量は、何も塗布しない皮膚表面の電位との相対比較をした指数で示している。
塗布直後において、指で塗布した場合には1.5であるのに対し、噴霧機構3を使用した場合には2.5であり、大きな電位差が生じている。そして、指で塗布した場合には時間の経過とともに、電位が急激に低下しているのに対し、噴霧機構3を使用した場合には低下度合いが緩やかで、塗布後10分経過時点では、指で塗布した場合の7倍程度の電位が保たれている。
指で塗布する場合には、指に付着している物質が電荷物質に触れた際、電荷物質の持つ電荷を少なくする方向に作用することがあり、そのため、指で塗布した場合の電位が低くなる。
本実施形態では、指で塗布しないので、例えば外出先のように手を洗うことができない状況で、電荷物質の持つ電荷を少なくする物質が指に付着していても、図3に示すように高い電位を長時間に亘って維持することができる。
また、噴霧機構3を用いたことで、薬剤を顔の頬やおでこ等、広範囲にムラ無く塗布することができる。
顔の皮膚上では、図4に模式的に示すように、電荷物質A及び酸化チタンBが広範囲に存在することになる。空気中にマイナスの電荷を持った花粉Cが浮遊している場合には、電荷物質Aが持っている電荷が、花粉Cに対してクーロン力を与える。電荷物質Aと花粉Cとが異符号であるため、花粉Cは電荷物質Aに吸着される。電荷物質Aに吸着された花粉Cは、光が当たる環境下では酸化チタンBの酸化力によって分解されて失活する。このように花粉Cを吸着するだけでなく、失活することにより、例えば電荷物質Aに一旦吸着された花粉Cが何らかの原因によって電荷物質Aから離れて口等から体内に吸入された場合に、その花粉Cは既に失活しているのでアレルギー症状が現れない。
一方、空気中にプラスの電荷を持った花粉Dが浮遊している場合にも、電荷物質Aが持っている電荷が、花粉Dに対してクーロン力を与える。このときのクーロン力は、電荷物質Aと花粉Dとが同符号であるため反発力となる。従って、花粉Dは電荷物質A(顔の表面)から離れていくので、体内に吸入されない。図3に示すように顔の表面で高い電位を維持しているので、花粉Cの吸着力及び花粉Dの反発力は大きなものとなり、上記した作用は十分に得られる。尚、病原性ウイルス等も同様に吸着されて失活するか、顔の表面から離れていく。
花粉やウイルス等が皮膚の表面で失活するので、花粉やウイルス等による肌への攻撃が少なくなる。よって、有害物質の吸入抑制製品1は肌に対しても効果がある。
本実施形態の効果について図5及び図6に基づいて説明する。図5は、花粉アレルギーの目の症状と鼻の症状のそれぞれについて、薬剤を塗布しない場合と塗布した場合とで症状にどれだけ変化が現れるかを示すものである。被験者は12人であり、試験方法は、7日間の無処理期間(薬剤を塗布しない期間)、7日間の薬剤処理期間(薬剤を塗布する期間)を設け、その間、花粉症日誌を被験者に毎日記入してもらう方法である。症状スコアは、鼻の症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ)、目の症状(目のかゆみ、涙目)いずれも5段階(0を症状がない、1を軽い、2を軽いとひどいの間、3をひどい、4をとてもひどい)で評価した。
同図から明らかなように、薬剤を塗布することによって目の症状及び鼻の症状の両方が緩和される。これは、花粉が電荷物質に吸着されるだけでなく、吸着後に失活しているので、吸い込まれたとしても症状に現れにくいことを示している。
図6は、薬剤を塗布しない場合と塗布した場合とで花粉の吸入量を比較したグラフである。試験方法は、シリコンゴム製の人間の鼻の模型を用意し、花粉が浮遊する空気中にその模型を置き、模型の鼻部分から空気を吸い込んで捕捉された花粉量をカウントした。花粉量は指数で示している。薬剤は模型の鼻部分の周囲に塗布している。この図から明らかなように、薬剤による花粉の吸着性能は十分に高く、塗布しないものに比べて花粉吸入量が3割以上も低減している。
以上説明したように、この実施形態にかかる有害物質の吸入抑制製品1によれば、有害物質を失活させる失活剤を含んでいるので、電荷物質に吸着された有害物質を失活させることができる。これにより、電荷物質に一旦吸着された有害物質が仮にその電荷物質から離れて人間に吸入されたとしても、その有害物質による症状が現れないようすることができ、有害物質の吸入抑制効果を十分に得ることができる。
また、ルチル型の酸化チタンを失活剤としたので、人間の顔に対して使用する際の高い安全性を担保しながら、有害物質を失活させることができる。
また、電荷物質が分散した液体を噴霧するようにしたので、電荷物質を顔の広い範囲にムラができないように簡単に塗布することができ、有害物質の吸入抑制効果をより一層高めることができる。
尚、有害物質の吸入抑制製品1は、例えば髪に対して使用することもできるし、耳や首等に対して使用することもできる。
また、上記実施形態では、薬剤を噴霧するようにしているが、これに限らず、例えば、薬剤をクリーム状、ゲル状、ムース状にして指で塗布するようにしてもよい。
以上説明したように、本発明にかかる有害物質の吸入抑制製品は、例えばアレルゲンや、病原性ウイルス等の有害物質の吸入を抑制するのに使用できる。
1 有害物質の吸入抑制製品
2 容器
3 噴霧機構
A 電荷物質
B 酸化チタン(失活剤)
C 花粉
D 花粉

Claims (1)

  1. アレルゲンや病原性ウイルス等の有害物質を人間が吸入してしまうのを抑制する有害物質の吸入抑制製品において、
    上記有害物質をクーロン力により吸着する電荷を持った電荷物質と、
    上記電荷物質に吸着された上記有害物質を失活させるルチル型の酸化チタンからなる失活剤とを含み、
    上記電荷物質及び上記失活剤は液体に分散しており、
    上記有害物質の吸入抑制製品は、上記電荷物質及び上記失活剤が分散した液体を人間の顔へ噴霧する噴霧機構を有していることを特徴とする有害物質の吸入抑制製品。
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