JP6080147B2 - 水中長筒部材吊持装置及び該装置を用いた水中リラッキング工法 - Google Patents

水中長筒部材吊持装置及び該装置を用いた水中リラッキング工法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば原子力発電施設(プラント)に適用して有効な水中長筒部材吊持装置及び該装置を用いた水中リラッキング工法に関する。
原子力発電に使用された使用済燃料は、原子力発電施設内に定設された使用済燃料貯蔵ピット(プール)の床に設置されている使用済燃料貯蔵ラックに貯蔵され、ここで一定期間冷却した後、施設外の再処理施設に運び出される。
近年、原子力発電の発電量の増加に伴い、使用済燃料が増加しており、原子力発電所内において使用済燃料の貯蔵能力を増強する必要性が高まってきている。使用済燃料の貯蔵能力の増強は、使用済燃料を収容するラックセルをより密に再配置する所謂リラッキングを行うことによって実施される。
リラッキング工法としては、例えば特許文献1や特許文献2で開示されたものが有る。これは、先ず複数のラックセルより構成される既存の使用済燃料貯蔵ラックを使用済燃料貯蔵ピットの床面に埋め込まれた基礎ボルトから取り外した後、当該既存の使用済燃料貯蔵ラックを吊り上げて撤去する。そして、既存の使用済燃料貯蔵ラックを撤去した位置に架台ブロックを設置した後に、当該架台ブロック上にスタッドボルトによりラックセルの密度が既存の使用済燃料貯蔵ラックと比較して高く設定された使用済燃料貯蔵ラックを設置するものである。
また、特許文献3に開示されているように、使用済燃料ラックの改造において、取替用使用済燃料ラック本体外周部に固定用板を具備した補強用板を取り付け、かつ上記固定用板と、予めボルト穴が明けられた後切断されて残置した旧ラックのサポートプレートとの間にボルト固定用のねじが切られた連結用板を介装して、それら固定用板と連結用板及び連結用板と旧ラックのサポートプレートを夫々ボルトで固定することにより、取替用使用済燃料ラックを使用済燃料貯蔵ピットの側壁面に強固に固定するものもある。
そして、これらのリラッキング工法においては、使用済燃料貯蔵ピット内に、旧ラックに代えて、設置された新ラック等の格子内に新たな角筒状のラックセルを挿入・据え付ける必要がある。この際のラックセルの吊上具として、従来、例えば特許文献4に開示されたものがある。
これは、クレーンにより水平に吊り上げられる吊梁の両端部にそれぞれラックセルのラックガイド外周に係止する吊金具を具え、該吊金具は上記ラックガイドの一方の外周面に沿って当接するコ字状の固定フックと、上記ラックガイドの他方の外周に沿って当接及び離脱可能なストッパフックとにより構成され、ラックセルのラックガイドが固定フックとストッパフックにより係止されて2本のラックセルが同時に吊り上げられるようにしたものである。
特開2003−270381号公報 特開平4−285895号公報 特開2003−307586号公報 実開昭63-151489号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2で開示されたリラッキング工法にあっては、水中で行うリラッキング工法であることの明示が無いと共に、ボルト穴を明けること無くナットを細長い締結工具で取外し又は取付けすることで既存のラックと新設のラックを使用済燃料貯蔵ピットの床面上で取替え可能にするものであるが、水中でリラッキング工法を実施する場合に必要とされる、締結工具における遠隔操作の具体的な構成が開示されていない。
また、特許文献3に開示されたリラッキング工法にあっては、旧ラックのサポートプレートに対するボルト穴加工や切断加工は、「水中にて実施する必要が生じる」と記載されているが、特にボルト穴加工を実施するのにあたっては、「水中で、かつ遠隔操作となるため専用治具を使用し」と記載されているだけで、専用治具の具体的な構成が開示されていないため、実施可能であるか否かは不明である。
また、特許文献4に開示されたラックセルの吊上具にあっては、ラックセルのラックガイド外周の対称な二箇所でそれぞれのフックが係止するようになっているため、新ラック等においてラックセルピッチが小さくなるリラッキング工事には、フックを係止するスペースがなく適用できない場合が生じるという問題があった。
加えて、ラックセルを上端部でのみ把持することになるため、バランスが悪く、ラックセルがふらつくなどして鉛直度を保ちながら新ラック等の格子内に挿入・据付けることが困難となり、これは特に水中で顕著となることから、到底、水中リラッキング工事には適用できないという問題があった。
そこで、本発明は、簡単な操作と構造で長筒部材を鉛直度を保ちながら小スペースで水中で確実に吊持することができる水中長筒部材吊持装置と、該装置を用いて高線量環境下の使用済燃料貯蔵ピットにおいて安全に水中リラッキング工事を施工できる水中リラッキング工法を提供することを目的とする。
斯かる目的を達成するための本発明に係る水中長筒部材吊持装置は、
ピット内で長筒部材を水中で吊持可能な水中長筒部材吊持装置であって、
地上から吊り下げられて前記長筒部材に挿入される工具本体と、
前記工具本体の吊下げ基端部に開閉可能に組み付けられて前記長筒部材の開口縁部を把持するクランプ機構と、
前記クランプ機構を開閉駆動するクランプシリンダと、
前記工具本体の吊下げ時に前記クランプ機構を閉方向に動作させる吊金具と、
前記工具本体の吊下げ先端部に組み付けられ前記クランプ機構の把持部と反対側の長筒部材内面であって前記長筒部材の長手方向において前記把持部と離間した位置に押し付けられる押付けシリンダと、
前記クランプシリンダ及び押付けシリンダを遠隔操作で駆動制御する操作ユニットと、
を備え
前記工具本体の吊下げ基端部は、少なくとも前記クランプ機構の把持部と反対側の前記長筒部材の開口縁部と当接し得るものである
ことを特徴とする。
また、
前記工具本体の一側部に設けられ、前記クランプ機構の把持部と反対側の前記長筒部材内面を転動するローラを備えたことを特徴とする。
また、
前記工具本体の吊下げ先端部に前記長筒部材への挿入時に当該工具本体の芯出しを行う挿入ガイドを備えたことを特徴とする。
また、
前記工具本体にクランプ機構を機械的に開閉する調整ねじ機構を組み付けたことを特徴とする。
斯かる目的を達成するための本発明に係る水中リラッキング工法は、
使用済燃料貯蔵ピット内に設置された複数のラックセルより構成される既設使用済燃料貯蔵ラックをその外周に設けたサポート板を切断して吊上げ撤去した後、ラックセルの密度が既設使用済燃料貯蔵ラックと比較して高く設定された新設使用済燃料貯蔵ラックを吊下げ設置する水中リラッキング工事において、
前記使用済燃料貯蔵ピット内に設置された新設使用済燃料貯蔵ラックの格子内に地上に横置きされたラックセルを吊持して挿入・据付ける際に、
前記水中長筒部材吊持装置の工具本体を地上から吊り下げた状態で横置きされたラックセル内に挿入してクランプ機構と押付けシリンダでラックセルに固定した後、
前記工具本体を介してラックセルを地上から一端吊り上げて前記使用済燃料貯蔵ピットへ移動し、そこから前記新設使用済燃料貯蔵ラックの格子内へ水中で挿入・据付ける、
ことを特徴とする。
本発明に係る水中長筒部材吊持装置によれば、工具本体が地上から吊り下げられて、遠隔操作されるクランプ機構と押付けシリンダにより長筒部材の上,下二箇所で固定されるので、簡単な操作と構造で、長筒部材をピット内で鉛直度を保ちながら水中で安定して吊持することができる。また、クランプ機構の一部が長筒部材の一側方にのみ張り出す構造であるので、工具本体をコンパクトに形成することができる。
本発明に係る水中リラッキング工法によれば、水中長筒部材吊持装置を用いて、遠隔操作によりラックセルを鉛直度を保ちながら新設使用済燃料貯蔵ラックの格子内に円滑に挿入・据付けることができるので、高線量環境下の使用済燃料貯蔵ピットにおいて安全に水中リラッキング工事を施工できる。また、工具本体がコンパクトであるため、小スペースでリラッキング工事を行える。
本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、工具本体がラックセルに挿入される状態を示す図である。 本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、工具本体がラックセルに固定された状態を示す図である。 本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、ラックセルの挿入・据付け状態を示す図である。 本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、ラックセルの着床状態を示す図である。 リラッキング工事における既設使用済燃料貯蔵ラックとサポート板の取合い構造図である。 リラッキング工事における新サポートストラクチャとサポート板の取合い構造図である。 リラッキング工事全般の工程図である。 リラッキング工事全般の工程図である。
以下、本発明に係る水中長筒部材吊持装置及び該装置を用いた水中リラッキング工法を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、工具本体がラックセルに挿入される状態を示す図、図2は本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、工具本体がラックセルに固定された状態を示す図、図3は本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、ラックセルの挿入・据付け状態を示す図、図4は本発明の一実施例を示す水中長筒部材吊持装置の概略構成図で、ラックセルの着床状態を示す図、図5はリラッキング工事における既設使用済燃料貯蔵ラックとサポート板の取合い構造図、図6はリラッキング工事における新サポートストラクチャとサポート板の取合い構造図、図7はリラッキング工事全般の工程図、図8はリラッキング工事全般の工程図である。
本実施例は、本発明の水中長筒部材吊持装置を原子力発電施設(プラント)におけるリラッキング工事に用いる例である。そこで、リラッキング工事全般の工程を図7及び図8で説明する。
先ず、工程1で、並設された使用済燃料貯蔵ピット(プール)100A,100Bの両側に敷設されて使用済燃料貯蔵ピットクレーン101が走行する既設レール102上に仮設クレーン103を設置する。この仮設クレーン103は、使用済燃料貯蔵ピットクレーン101より大型の架構体からなり、四つのワイヤジャッキ104とラック受台105等を備えている。
尚、図中106は燃料集合体やその取扱い工具等を検査する燃料検査ピットで、107は使用済燃料貯蔵ピット(プール)100A又は100Bから吊上げ撤去された既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109(工程2参照)を除染し、かつ細断する除染場ピットである。また、図中108は新設使用済燃料貯蔵ラックとしての新サポートストラクチャ116(工程5参照)を仮置く仮設床である。尚、既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109は、既設使用済燃料貯蔵ラック111に多数本(例えば150本)のラックセル110が据え付けられたものを言い(工程2参照)、新サポートストラクチャ116は多数本(例えば300本)のラックセル121が据え付け可能な架構体を言う(工程6参照)。
次に、工程2で、例えば使用済燃料貯蔵ピット100Aにおいて、吊上げ撤去する既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109内の全ての燃料集合体を使用済燃料貯蔵ピットクレーン101により他の空きの既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109内に一時的に移動・保管させた後、仮設クレーン103を、吊上げ撤去する既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109の真上に移動させる。そして、この仮設クレーン103の補助ホイスト120にマニピュレータ又は伸縮ポール113を介して水中穴明け装置における工具本体129を組み込んだ後、これを吊り下ろして、上,下二つの既設使用済燃料貯蔵ラック111の外周に設けられて使用済燃料貯蔵ピット100Aの側壁面に連結・固定されたサポート板112に所要数の連接板取付用のボルト穴を明ける。
次に、工程3で、仮設クレーン103の補助ホイスト120に、水中穴明け装置の工具本体129に代えて、同じくマニピュレータ又は伸縮ポール113を介して水中放電加工切断装置の工具本体114を組み込み、上,下二つの既設使用済燃料貯蔵ラック111の外周に設けたサポート板112を、局部シールボックス等を用いて、ボルト穴を有したサポート板部分(ピット側壁面側)112aを残置するようにして切断する。
次に、工程4で、仮設クレーン103上から既設使用済燃料貯蔵ラック吊具115を吊上げ撤去する既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109にセットした後、ワイヤジャッキ104を操作して当該既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109を吊り上げ、ラック受台105に移載する。そして、仮設クレーン103を走行させて既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109を除染場ピット107に吊り下ろして当該既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109を除染し、かつ細断して廃棄処分する。
次に、工程5で、仮設クレーン103内に仮設床108に保管してあった新サポートストラクチャ116を取り込んだ後、当該新サポートストラクチャ116に新サポートストラクチャ吊具117をセットする。そして、ワイヤジャッキ104を操作して新サポートストラクチャ116を前述した既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109が吊上げ撤去された位置に吊り下ろし、当該新サポートストラクチャ116の外周に上,下二箇所に亘って設けたサポート板118を、前述した既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109の残置されたサポート板部分112aに、図示しない連接板(図6の連接板119参照)を介してボルト結合する。これにより、新サポートストラクチャ116は使用済燃料貯蔵ピット100Aの側壁面に固定される。
最後に、工程6で、仮設クレーン103上から補助ホイスト120及び後述する水中長筒部材吊持装置を用いて新しい多数本のラックセル(長筒部材)121を新サポートストラクチャ116の格子内にそれぞれ挿入し、据え付ければ、所定の検査を受検することで、リラッキング工事が終了する。そして、この後、使用済燃料貯蔵ピットクレーン101で他の既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109内に一時的に移動・保管しておいた燃料集合体が新サポートストラクチャ116の各ラックセル121内にそれぞれ収容されるのである。
また、図5に示すように、前述した既設使用済燃料貯蔵ラック111のサポート板112は多数の角穴122を列設して当該既設使用済燃料貯蔵ラック111と一体形成されると共に、その外縁部が使用済燃料貯蔵ピット100Aの側壁面に設置されている埋め込み板に溶接された支持金具123に連結・固定されるようになっている。
そして、水中穴明け装置の工具本体129を吊り下ろしてサポート板112に連接板取付用のボルト穴124を明ける前に、工具本体129の吊り下ろしを円滑に行うために、ラックセル(本体部)110の案内ガイド110aに付設されたアドレスプレート(プレート材)125を水平状態から垂れ下がり状態にするべく、水中プレート折曲げ装置を用いて、アドレスプレート125に折曲げ加工を施すようになっている。
また、既設使用済燃料貯蔵ラック111のサポート板112にボルト穴124が縦方向の2箇所に亘って明けられた後、水中放電加工切断装置の工具本体114(図7の工程3参照)を用いて、サポート板112の図中破線で示す部分が切断されて当該既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109が吊上げ撤去される。
一方、図6に示すように、新サポートストラクチャ116のサポート板118は当該新サポートストラクチャ116とは別体に形成されて、前述した既設使用済燃料貯蔵ラック111のサポート板112(厳密には残置されたサポート板部分112a)に対応した位置に付設される。このサポート板118には予め気中で連接板取付用のボルト穴126が横方向に二箇所に亘って形成される。
そして、新サポートストラクチャ116を使用済燃料貯蔵ピット100A内に吊下げ据付けた後、水中穴計測装置を用いて、サポート板118のボルト穴126を基準に、残置されたサポート板部分112aのボルト穴124の位置を計測する。即ち、この計測によって連接板119には気中で前記ボルト穴124に対応した正確な位置にボルト穴が形成可能となるのである。また、連接板119には前記ボルト穴126に対応するボルト穴が出荷時に予め形成されている。
前記穴位置計測後に、使用済燃料貯蔵ピット100Aの側壁面に連結・固定されたサポート板部分112aと新サポートストラクチャ116のサポート板118とが、水中ボルト・ナット締結装置を用いて、連接板119を介してボルト・ナット128で結合され、使用済燃料貯蔵ピット100A内に新サポートストラクチャ116が堅固に位置決め固定される。尚、新サポートストラクチャ116におけるラックセル121の間隔Cは例えば300mmで、既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ109におけるラックセル110の間隔が例えば400mmであるのに比べて小さくなっている。
前述した水中長筒部材吊持装置は、図1に示すように、仮設クレーン103上の補助ホイスト120から吊り下げられて、同じく仮設クレーン103上のラック受台105に横置きに載置された角筒状のラックセル121に、作業者による手作業で横倒した状態で挿入される工具本体10を備える。この工具本体10は、頂板10aと底板10bとが左,右両側板10cで連結された枠状体で形成される。
前記工具本体10の頂板10a部(吊下げ基端部)には、ラックセル121のテーパ筒状の案内ガイド(開口縁部)121aを把持するクランプ機構11が組み付けられる一方、底板10b部(吊下げ先端部)には、前記クランプ機構11による把持部と反対側のラックセル121内面に押し付けられる押付けシリンダ12が組み付けられる。
前記クランプ機構11は、頂板10a上に位置して左,右両側板10cの一側に一体形成された左,右両ブラケット13間に左,右一対のベルクランク14が同軸に枢支され、この左右一対のベルクランク14の一端部間に架設されたクランプ爪11aと工具本体10の左,右両側板10cの一側にそれぞれ設けた二つの爪部11bとで案内ガイド121aを把持し得るようになっている。
そして、左右一対のベルクランク14はその他端寄りに位置してブラケット15で連結され、このブラケット15に、底板10bにヘッド部の基端が枢支されたクランプシリンダ16のピストンロッド先端が枢支される。また、ブラケット15のクランプシリンダ16と反対側には補助ホイスト120のフックが係合するリング状の吊金具17が枢支される。
従って、例えば補助ホイスト120を緩めた状態下でクランプシリンダ16を伸長させると左右一対のベルクランク14が図中時計方向に回動してクランプ可能となる一方、クランプシリンダ16を収縮させると左右一対のベルクランク14が図中反時計方向に回動してアンクランプ可能となる(図中枢支点P参照)。
また、頂板10aの他側には、クランプ機構11を機械的に開閉する調整ねじ機構18が組み付けられる。この調整ねじ機構18は、頂板10aに固設された雌ねじ部材18aとこの雌ねじ部材18aにねじ込まれたねじ軸18bとこのねじ軸18bに軸方向へ移動自在に嵌合した可動筒18cとを有し、この可動筒18cの左,右両部外面に突設したピン18dが左右一対のベルクランク14の他端部に形成した長孔14aにそれぞれ挿入される。
前記クランプシリンダ16と押付けシリンダ12は、エア(流体圧)シリンダで構成され、操作床19(図3参照)上に設置した操作ユニット20により遠隔操作で駆動制御される。つまり、操作ユニット20のバルブ操作でクランプシリンダ16と押付けシリンダ12に対するエアの給排が行われるのである。図中23はエアチューブ束である。
また、工具本体10の左,右両側板10c間には、両側板10cの他側に位置して、ラックセル121の内面を転動する左右一対のローラ21が長手方向に離間して二箇所設けられている。
また、工具本体10の底板10bには、ラックセル121への挿入時に当該工具本体10の芯出しを行う板状の挿入ガイド22が突設される。
このように構成された水中長筒部材吊持装置を用いてリラッキング工事を行う際は、先ず、図1に示すように、水中長筒部材吊持装置の工具本体10を仮設クレーン103上の補助ホイスト120から吊り下げて、同じく仮設クレーン103上のラック受台105に横置きに載置されたラックセル121に、作業者による手作業で横倒した状態で挿入する。この際、工具本体10は挿入ガイド22で芯出しされつつローラ21により速やかに挿入される。
次に、図2に示すように、工具本体10がラックセル121内に深く押し込まれ、頂板10a部(厳密にはブラケット13の根元)が案内ガイド121aの開口端に当接したら、操作ユニット20のバルブ操作でクランプシリンダ16を伸長させてクランプ機構11によりラックセル121の案内ガイド121aをクランプすると共に、押付けシリンダ12を伸長させてそのスプレッダ部をラックセル121の内面に押し付ける。
これにより、工具本体10はラックセル121の上,下二箇所で固定される。尚、クランプ状態が不完全な場合は、調整ねじ機構18のねじ軸18bを手動操作で緩める方向(反時計方向)に回すことで、可動筒18cの移動量が増大し、その分クランプシリンダ16もより伸長可能となってクランプ爪11aを案内ガイド121aへより密着させられる。
この後、ラックセル121の工具本体10が挿入されない側の端部を仮設クレーン103上の他の補助ホイスト等で若干持ち上げながら、補助ホイスト120で工具本体10を介してラックセル121をラック受台105から一端吊り上げて使用済燃料貯蔵ピット100Aへ移動する。
次に、図3に示すように、補助ホイスト120を操作してラックセル121を使用済燃料貯蔵ピット100A内に吊り下ろして新サポートストラクチャ116の格子内に挿入する。このラックセル121の挿入中、クランプシリンダ16に対するエア供給停止やエアチューブからのエアリーク等が発生しても、クランプ機構11のベルクランク14には補助ホイスト120の吊上げにより常に時計方向への回動力が作用するため、クランプ力が機械的に保持されるので、ラックセル121が落下することはない。
そして、図4に示すように、ラックセル121の着床後に、操作ユニット20のバルブを操作してクランプシリンダ16によるクランプ及び押付けシリンダ12を開放し、補助ホイスト120を上昇させてラックセル121から工具本体10を抜き取れば良い。
また、この際、隣り合うラックセル121は近接しており、クランプできるスペースがないため、ラックセル121と隣接していない側をクランプ機構11で一点支持することで隣り合うラックセル121と干渉しないで吊り込むことができる。
また、ラックセル121の着床後に、クランプシリンダ16に対するエア供給停止やエアチューブからのエアリーク等が発生してクランプシリンダ16によるクランプが開放不能となった場合、簡易ボルト締結工具24を仮設クレーン103上の別の補助ホイスト120Aで使用済燃料貯蔵ピット100A内に吊り込み、本工具24で調整ねじ機構18のねじ軸18bを時計方向に締めこむことでベルクランク14を強制的に反時計方向に回動させてアンクランプすることができる。
このようにして、本実施例によれば、工具本体10が仮設クレーン103上から吊り下げられて、遠隔操作されるクランプ機構11と押付けシリンダ12によりラックセル121の上,下二箇所で固定されるので、簡単な操作と構造で、ラックセル121を使用済燃料貯蔵ピット100A内で鉛直度を保ちながら水中で安定して吊持することができる。また、クランプ機構11の一部がラックセル121の一側方にのみ張り出す構造であるので、工具本体10をコンパクトに形成することができる。
これらの結果、ラック受台105に横置きされていたラックセル121を一旦立て起こした後、使用済燃料貯蔵ピット100A内に吊り込み、鉛直度を保ちながら新サポートストラクチャ116の格子内に円滑に挿入・据付けることができるので、高線量環境下の使用済燃料貯蔵ピット100Aにおいて安全にかつ小スペースで水中リラッキング工事を施工できる。
また、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種機構の構造変更と各種駆動手段の変更や各種構成部材の数量と寸法変更等各種変更が可能であることは言うまでもない。
本発明に係る水中長筒部材吊持装置は水中リラッキング工事に限らず、原子力発電施設(プラント)の他の水中工事や原子力発電施設(プラント)以外の水中工事に適用して有効である。
10 工具本体
10a 頂板
10b 底板
10c 側板
11 クランプ機構
11a クランプ爪
11b 爪部
12 押付けシリンダ
13 ブラケット
14 ベルクランク
14a 長孔
15 ブラケット
16 クランプシリンダ
17 吊金具
18 調整ねじ機構
18a 雌ねじ部材
18b ねじ軸
18c 可動筒
18d ピン
19 操作床
20 操作ユニット
21 ローラ
22 挿入ガイド
23 エアチューブ束
24 簡易ボルト締付工具
100A,100B 使用済燃料貯蔵ピット(プール)
101 使用済燃料貯蔵ピットクレーン
102 既設レール
103 仮設クレーン
104 ワイヤジャッキ
105 ラック受台
106 燃料検査ピット
107 除染場ピット
108 仮設床
109 既設使用済燃料貯蔵ラックアッセンブリ
110 ラックセル
110a 案内ガイド
111 既設使用済燃料貯蔵ラック
112 サポート板
112a サポート板部分(ピット側壁面側)
114 水中放電加工切断装置の工具本体
115 既設使用済燃料貯蔵ラック吊具
116 新サポートストラクチャ(新設使用済燃料貯蔵ラック)
117 新サポートストラクチャ吊具
118 サポート板
119 連接板
120 補助ホイスト
120A 第2の補助ホイスト
121 ラックセル
121a 案内ガイド
122 角穴
123 支持金具
124 ボルト穴
125 アドレスプレート
126 ボルト穴
128 ボルト・ナット
129 水中穴明け装置の工具本体
C 新サポートストラクチャにおけるラックセルの間隔
P ベルクランクの枢支点

Claims (5)

  1. ピット内で長筒部材を水中で吊持可能な水中長筒部材吊持装置であって、
    地上から吊り下げられて前記長筒部材に挿入される工具本体と、
    前記工具本体の吊下げ基端部に開閉可能に組み付けられて前記長筒部材の開口縁部を把持するクランプ機構と、
    前記クランプ機構を開閉駆動するクランプシリンダと、
    前記工具本体の吊下げ時に前記クランプ機構を閉方向に動作させる吊金具と、
    前記工具本体の吊下げ先端部に組み付けられ前記クランプ機構の把持部と反対側の長筒部材内面であって前記長筒部材の長手方向において前記把持部と離間した位置に押し付けられる押付けシリンダと、
    前記クランプシリンダ及び押付けシリンダを遠隔操作で駆動制御する操作ユニットと、
    を備え
    前記工具本体の吊下げ基端部は、少なくとも前記クランプ機構の把持部と反対側の前記長筒部材の開口縁部と当接し得るものである
    ことを特徴とする水中長筒部材吊持装置。
  2. 前記工具本体の一側部に設けられ、前記クランプ機構の把持部と反対側の前記長筒部材内面を転動するローラを備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中長筒部材吊持装置。
  3. 前記工具本体の吊下げ先端部に前記長筒部材への挿入時に当該工具本体の芯出しを行う挿入ガイドを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水中長筒部材吊持装置。
  4. 前記工具本体にクランプ機構を機械的に開閉する調整ねじ機構を組み付けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の水中長筒部材吊持装置。
  5. 使用済燃料貯蔵ピット内に設置された複数のラックセルより構成される既設使用済燃料貯蔵ラックをその外周に設けたサポート板を切断して吊上げ撤去した後、ラックセルの密度が既設使用済燃料貯蔵ラックと比較して高く設定された新設使用済燃料貯蔵ラックを吊下げ設置する水中リラッキング工事において、
    前記使用済燃料貯蔵ピット内に設置された新設使用済燃料貯蔵ラックの格子内に地上に横置きされたラックセルを吊持して挿入・据付ける際に、
    前記請求項1乃至4のいずれか一つに記載された水中長筒部材吊持装置の工具本体を地上から吊り下げた状態で横置きされたラックセル内に挿入してクランプ機構と押付けシリンダでラックセルに固定した後、
    前記工具本体を介して前記ラックセルを地上から一端吊り上げて前記使用済燃料貯蔵ピットへ移動し、そこから前記新設使用済燃料貯蔵ラックの格子内へ水中で挿入・据付ける、
    ことを特徴とする水中リラッキング工法。
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