JP6076358B2 - 加圧流体形成を用いたバルク金属ガラスシート接合 - Google Patents

加圧流体形成を用いたバルク金属ガラスシート接合 Download PDF

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Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第12/984,433号(2011月4日出願)及び同第12/984,440号(2011年1月4日出願)に関連し、これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、バルク凝固アモルファス合金シートを使用し、加圧流体を用いて接合部を形成する方法と、そのような接合部を有するコンポーネントに関する。
バルク凝固アモルファス合金は、様々な金属系で作製されている。それらの合金は、一般的には、融解温度を超える温度から周囲温度へと急冷することによって調製される。一般的には、アモルファス構造を達成するためには、約105℃/秒などの、高冷却速度が必要である。バルク凝固合金が、結晶化を回避するよう冷却され、これによって冷却中にアモルファス構造を構築し、維持することができる最低速度は、その合金に関する「臨界冷却速度」と称される。この臨界冷却速度よりも高速の冷却速度を達成するためには、サンプルから熱を抽出しなければならない。それゆえ、アモルファス合金から作製される物品の厚さは、一般に「臨界(鋳造)厚さ」と称される、限界寸法になる場合が多い。鋳造臨界厚さは、臨界冷却速度を考慮に入れた、熱流計算によって得ることができる。
90年代前半までは、アモルファス合金の加工性は極めて限定されたものであり、容易に入手可能なアモルファス合金は、粉末の形態、又は100マイクロメートル未満の鋳造臨界厚さを有する極薄の箔若しくはストリップのみであった。主にZr及びTi合金系をベースとするアモルファス合金の新しい部類が、90年代に開発され、それ以来、種々の元素をベースとする、より多くのアモルファス合金系が開発されている。これらの合金の種類は、103℃/秒未満の、遙かに低速の臨界冷却速度を有するため、それらは、それらの以前の対応物よりも遙かに大きい臨界鋳造厚さを有する。しかしながら、これらの合金系を利用、及び/又は成形して消費者向け電子デバイスにおける構成要素などの構造的構成要素にするための方法に関しては、殆ど示されていない。よって、アモルファス合金を利用し、これを成形して、2つの物品を接合するのに有用であり得る構造コンポーネントにするための方法を開発する必要性がある。
米国特許出願公開第2011/0079940号は、過冷却液体状態におけるバルク金属ガラスを吹込成形するための方法を開示しており、この方法は、バルク金属ガラスの成形済みパリソンを膨らませることにより、従来の成形技法に生じていた摩擦付着力を回避し、これによって、最終物品を形成するのに必要な横方向の変形のほぼ全てを達成してから、その表面が成形装置の表面に接触するようになっている。この出願では、バルク金属ガラスを金型内で成形するための空気又は不活性ガスの使用を開示している。
米国特許第7,947,134号は、バルク金属ガラス(BMG)を用いた金属対金属又は材料対材料の接合のための方法及び組成物を開示している。この方法は、BMGの機械的特性、及び/又は温度−時間加工空間での過冷却液体領域における金属ガラスの軟化作用に依存するものであり、ハンダ付け、鑞付け、又は溶接に使用される典型的な温度範囲よりも低い温度でさまざまな材料を接合することが可能であるとされている。この材料は、接合されるコンポーネント間にBMG組成物を配置し、BMGを加熱し、コンポーネントを押し合わせることによって、互いに接合される。
物品の接合方法の、本明細書の実施形態により提示される解決策は、バルク凝固アモルファス合金を物品接合材料として使用し、この合金に流体圧力を適用して、この合金を、物品を互いに十分に結合させる形状に変形させることである。これら及び他の実施形態により、物品を互いに接合する方法が提供され、この方法は、画定された空間をそれらの間に備える、少なくとも第1及び第2物品を提供する工程であって、第1及び第2物品はそれぞれ、少なくとも第1表面と、物品の第1表面と反対側の、少なくとも第2表面とを有している、工程と、第1物品の第1及び第2表面のうち少なくとも一方に隣接し、かつ第2物品の少なくとも一表面に隣接してバルク凝固アモルファス合金材料を配置することによって、第1物品と第2物品との間に少なくとも部分的にバルク凝固アモルファス合金を配置する工程と、を含む。本方法は、バルク凝固アモルファス合金に対して流体圧力を適用して、第1物品と第2物品との間の合金の少なくとも一部分に力をかけ、これにより合金の少なくとも一部分が、第1及び第2物品の第1及び第2表面両方に隣接して配置される、工程を更に含む。
追加的な実施形態によると、物品を互いに接合する方法が提供され、この方法は、画定された空間をそれらの間に備える、少なくとも第1及び第2物品を提供する工程であって、第1及び第2物品はそれぞれ、少なくとも第1表面と、物品の第1表面と反対側の、少なくとも第2表面とを有している、工程と、第1物品の第1及び第2表面のうち少なくとも一方に隣接し、かつ第2物品の少なくとも一表面に隣接してバルク凝固アモルファス合金材料を配置することによって、第1物品と第2物品との間に少なくとも部分的にバルク凝固アモルファス合金を配置する工程と、を含む。本方法は、バルク凝固アモルファス合金に対して流体圧力を適用して、第1物品と第2物品との間の合金の少なくとも一部分に力をかける工程と、第1及び第2物品の他方の表面の少なくとも一部分に隣接してバルク凝固アモルファス合金を配置するために、流体圧力の方向とは反対の力を適用する工程と、を更に含む。
例示的なバルク凝固アモルファス合金の温度−粘度図である。
例示的なバルク凝固アモルファス合金に関する、時間−温度−変態(TTT)図の概略図である。
好ましい実施形態による、2つの物品を接合する方法の例示的部分の図である。
図3に示す方法の続きの図である。
図4に示す方法の続きの図である。
特に好ましい実施形態の任意の最終部分の図である。
接合される物品の間に空間がない、完全に成形された機械的連結部の図である。
特に好ましい実施形態により接合された2つの物品の断面図である。
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的対象語を指すために使用される。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、小規模な変動を記述及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下などの、±5%以下を指すことができる。
バルク凝固アモルファス合金、すなわちバルク金属ガラス(「BMG」)は、最近開発された部類の金属材料である。これらの合金は、比較的穏やかな速度で、凝固及び冷却させることができ、それらはアモルファスの、非晶質(すなわち、ガラス質)状態を室温で保持する。アモルファス合金は、それらの結晶性の対応物よりも、多くの優れた特性を有する。しかしながら、冷却速度が十分に高速ではない場合には、冷却の間に、その合金の内部で結晶が形成される恐れがあり、そのため、アモルファス状態の利益が失われる恐れがある。例えば、バルクアモルファス合金部品の製作に伴う1つの重要な課題は、徐冷又は合金原材料中の不純物のいずれかによる、それらの部品の部分的な結晶化である。BMG部品内では、高い程度のアモルファス化度(また反対に、低い程度の結晶化度)が望ましいため、制御された量のアモルファス化度を有するBMG部品を鋳造するための方法を、開発する必要性がある。
図1(米国特許第7,575,040号より入手)は、Liquidmetal Technologyにより製造された、Zr−−Ti−−Ni−−Cu−−Beの種類のVIT−001シリーズからの、例示的なバルク凝固アモルファス合金の粘度−温度グラフを示す。アモルファス固体の形成の間、バルク凝固アモルファス金属に関しては、明確な液体/固体変態が存在しないことに留意するべきである。この溶融合金は、ガラス転移温度近傍で固体形態に近づくまで、過冷却の増大と共に、ますます粘稠になる。したがって、バルク凝固アモルファス合金に関する凝固前面の温度は、ガラス転移温度近傍であり得、その温度近傍で、この合金は、急冷アモルファスシート製品を取り出すために、実際に固体として作用する。
図2(米国特許第7,575,040号より入手)は、例示的なバルク凝固アモルファス合金の、時間−温度−変態(TTT)冷却曲線、すなわちTTT図を示す。バルク凝固アモルファス金属は、従来の金属と同様に、冷却の際の液体/固体の結晶化変態を起こさない。その代わりに、高温で(「融解温度」Tm近傍で)観察される、流動性の高い、非晶質形態の金属は、温度が低減されるにつれて(ガラス転移温度Tg近傍まで)、より粘稠になり、最終的に、従来型の固体の外面的な物理的特性を呈する。
バルク凝固アモルファス金属に関しては、液体/結晶化変態は存在しないにも関わらず、対応する結晶相の熱力学的液相温度として、「融解温度」Tmを定義することができる。この体系の下では、バルク凝固アモルファス合金の融解温度での粘度は、約0.1ポアズ〜約10,000ポアズの範囲に、更に場合によっては、0.01ポアズ未満にあることが可能である。この「融解温度」でのより低い粘度は、BMG部品を成形するためのバルク凝固アモルファス金属による、シェル/金型の複雑な部分のより速く完全な充填をもたらす。更には、BMG部品を成形するための溶融金属の冷却速度は、冷却の間の時間−温度プロファイルが、図2のTTT図内の結晶化領域を境界付けるノーズ形状領域境界を横断しないようなものでなければならない。図2では、Tノーズは、結晶化が最も急速であり、かつ最短の時間スケールで生じる、臨界結晶化温度Txである。
過冷却液体領域、すなわちTg〜Txの温度領域は、バルク凝固合金の結晶化に対する極度の安定性を明示するものである。この温度領域内では、バルク凝固合金は、高粘度の液体として存在し得る。この過冷却液体領域内でのバルク凝固合金の粘度は、ガラス転移温度での1012Pa・sから、結晶化温度である過冷却液体領域の高温限界での105Pa・sに至るまでの間で変化し得る。そのような粘度を有する液体は、加圧力の下で、実質的な塑性歪みを経験し得る。本明細書の実施形態は、成形及び分離方法として、この過冷却液体領域内での大きい塑性成形性を利用する。
Txについて明確にする必要がある。技術的には、TTT図に示されるノーズ形状の曲線は、Txを温度及び時間の関数として説明する。それゆえ、金属合金を加熱又は冷却する間に辿る軌跡とは関係なく、このTTT曲線に当る場合に、Txに到達している。図2(b)では、Txは破線として示されるが、これは、Tmの近位からTgの近位まで、Txが変化し得るためである。
図2の概略的なTTT図は、時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(1)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tm以上〜Tg未満のダイキャストの加工処理方法を示す。ダイキャストの間、この成形は、軌跡がTTT曲線に当ることを回避するために、実質的に急速冷却と同時に行われる。時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(2)、(3)及び(4)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tg以下からTm未満までの超塑性成形(SPF)に関する加工処理方法。SPFでは、アモルファスBMGは、過冷却液体領域内へと再加熱され、利用可能な加工処理ウインドウは、ダイキャストよりも遙かに大きく、より良好なプロセスの可制御性をもたらすことが可能である。SPFプロセスは、冷却の間の結晶化を回避するための急速冷却を必要としない。また、例示的軌跡(2)、(3)、及び(4)によって示されるように、SPFの間の最高温度が、Tノーズ超又はTノーズ未満、最大約Tmとなる状態で、SPFを実施することができる。アモルファス合金の断片を昇温させつつ、TTT曲線に当ることを回避させた場合には、「Tg〜Tm」に加熱しても、Txには到達していない。
20℃/分の加熱速度で得られる、バルク凝固アモルファス合金の典型的な示差走査熱量計(DSC)加熱曲線は、大部分は、TTTデータを横切る具体的な軌跡を説明するものであり、特定温度でのTgと、DSC加熱傾斜がTTT結晶化開始と交差する場合のTxと、最終的に、同じ軌跡が融解に関する温度範囲と交差する場合の融解ピークとが認められるであろう。図2の軌跡(2)、(3)、及び(4)の上り傾斜部分によって示されるような急速な加熱速度で、バルク凝固アモルファス合金を加熱する場合には、TTT曲線を完全に回避することが可能であり、DSCデータは、加熱の際、ガラス転移を示すが、Txは示さない。このことについての別の考察方法は、軌跡(2)、(3)、及び(4)は、結晶化曲線に当らない限り、TTT曲線のノーズ(及び更にその上方)〜Tg線の温度内の、いずれの場所にも収まることができる点である。そのことは、加工処理温度が上昇するにつれて、軌跡内の水平な平坦部が遙かに短くなり得ることを単に意味する。

本明細書での用語「相」は、熱力学状態図内で見出すことができるものを指すことができる。相は、その全体にわたって、材料の全ての物理的特性が本質的に均一である、空間の領域(例えば、熱力学系)である。物理的特性の例としては、密度、屈折率、化学組成、及び格子周期性が挙げられる。相の単純な説明は、化学的に均一で、物理的に異なっており、及び/又は機械的に分離可能な材料の領域である。例えば、ガラスジャー内の、氷及び水からなる系では、その角氷が1つの相であり、水が第2の相であり、その水の上の湿り空気が第3の相である。ジャーのガラスは、別の分離相である。相は、2成分、3成分、4成分以上の溶体などの固溶体、又は金属間化合物などの化合物を指すこともある。別の例としては、アモルファス相は、結晶相とは異なる。
金属、遷移金属、及び非金属
用語「金属」は、電気陽性の化学元素を指す。本明細書での用語「元素」は、全般的には、周期表に見出すことができる元素を指す。物理的には、基底状態の金属原子は、占有状態に近い、空状態を有する部分的充満帯を含む。用語「遷移金属」とは、不完全な内部電子殻を有し、一連の元素内の、最も電気陽性のものと最も電気陽性ではないものとの間の遷移リンクとして役立つ、周期表の第3族〜第12族の範囲内の金属元素のうちのいずれかである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、及び安定な錯イオンを形成する能力によって特徴付けられる。用語「非金属」は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を指す。
用途に応じて、任意の好適な非金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金(又は「合金組成物」)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の非金属元素などの複数の非金属元素を含み得る。非金属元素は、周期表内の第13族〜第17族内に見出される、いずれかの元素とすることができる。例えば、非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、及びBのうちの、いずれか1つとすることができる。場合により、非金属元素はまた、第13族〜第17族内の特定の半金属(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びPo)を指すこともある。一実施形態では、非金属元素としては、B、Si、C、P、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。したがって、例えば、その合金は、ホウ化物若しくは炭化物、又は双方を含み得る。
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、及びウンウンビウムのうちのいずれかとすることができる。一実施形態では、遷移金属元素含有BMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、及びHgのうちの少なくとも1つを有し得る。用途に応じて、任意の好適な遷移金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の遷移金属元素などの、複数の遷移金属元素を含み得る。
本明細書で説明される、合金又は合金「サンプル」又は「試料」合金は、任意の形状又はサイズを有し得る。例えば、合金は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの形状を有し得る、微粒子の形状を有し得る。この微粒子は、任意のサイズを有し得る。例えば、その微粒子は、約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルなど、約10マイクロメートル〜約60マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約50マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約45マイクロメートルなど、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルなど、約25マイクロメートル〜約35マイクロメートルなどの、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均直径を有し得る。例えば、一実施形態では、微粒子の平均直径は、約25マイクロメートル〜約44マイクロメートルである。一部の実施形態では、ナノメートルの範囲のものなどの、より小さい微粒子、又は100マイクロメートルよりも大きいものなどの、より大型の微粒子を使用することができる。
合金のサンプル又は試料はまた、遙かに大きい寸法のものにすることもできる。例えば、インゴットなどのバルク構造構成要素、電子デバイスの筺体/ケーシング、又は更にミリメートル、センチメートル、又はメートルの範囲の寸法を有する構造的構成要素の一部分とすることができる。
固溶体
用語「固溶体」は、溶体の固体形態を指す。用語「溶体」は、固体、液体、気体、又はこれらの組み合わせとすることができる、2種以上の物質の混合物を指す。この混合物は、均質又は不均質とすることができる。用語「混合物」とは、互いに組み合わされ、一般的には分離することが可能である、2種以上の物質の組成物である。一般的には、それらの2種以上の物質は、互いに化合されない。
合金
一部の実施形態では、本明細書で説明される合金組成物は、完全に合金化することができる。一実施形態では、「合金」とは、一方の原子が他方の原子に置き換わるか、又は原子間の格子間位置を占有する、2種以上の金属の均質な混合物又は固溶体を指すものであり、例えば、黄銅は、亜鉛及び銅の合金である合金とは、複合材料とは対照的に、金属マトリックス中の1種以上の化合物などの、金属マトリックス中の1種以上の元素の部分的又は完全な固溶体を指すことができる。本明細書での合金という用語は、単一の固相の微細構造を呈し得る全率固溶合金、及び2つ以上の相を呈し得る部分的溶体の双方を指すことができる。本明細書で説明される合金組成物は、合金を含むもの、又は合金含有複合材料を含むものを指すことができる。
それゆえ、完全に合金化した合金は、固溶体相であれ、化合物相であれ、又は双方であれ、その構成成分の均質な分布を有し得る。本明細書で使用される用語「完全に合金化された」は、許容誤差範囲内の僅かな変異を説明することができる。例えば、その用語は、少なくとも95%の合金化など、少なくとも99%の合金化など、少なくとも99.5%の合金化など、少なくとも99.9%の合金化などの、少なくとも90%の合金化を指すことができる。本明細書での百分率は、文脈に応じて、体積百分率又は重量百分率のいずれかを指すことができる。これらの百分率は、合金の部分ではない組成又は相の観点によるものとすることができる不純物によって均衡させることができる。
アモルファス、すなわち非晶質固体
「アモルファス」すなわち「非晶質固体」は、結晶に特徴的な格子周期性を欠く固体である。本明細書で使用するとき、「アモルファス固体」は、ガラス転移を通じて、加熱されると液体状の状態へと軟化及び変態するアモルファス固体である、「ガラス」を含む。一般的には、アモルファス材料は、結晶に特徴的な長距離秩序を欠くが、それらのアモルファス材料は、化学結合の性質による、原子の長さスケールでの何らかの短距離秩序を保有し得る。アモルファス固体と結晶性固体との区別は、X線回折及び透過型電子顕微鏡検査などの構造特性評価技術によって判定される、格子周期性に基づいて行なうことができる。
用語「秩序」及び「無秩序」とは、多粒子系内での何らかの対称性又は相関性の有無を指示する。用語「長距離秩序」及び「短距離秩序」は、長さスケールに基づいて、材料内の秩序を区別する。
固体における秩序の最も厳密な形態は格子周期性であり、特定のパターン(単位セル内の原子配列)が何度も繰り返され、空間の並進的な一様の空間充填を形成する。この格子周期性は、結晶の定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子及び230種の空間群に分類されている。
格子周期性は、長距離秩序を示唆するものである。1つの単位格子のみが知られる場合には、その並進対称性によって、任意の距離での、全ての原子配置を正確に予測することが可能である。一般に逆も真であるが、ただし、例えば、完全に確定的な充填を有するが、格子周期性を保有しない、準結晶の場合は例外である。
長距離秩序は、同じサンプルの遠隔の部分が、相関する挙動を呈する、物理系を特徴付ける。この長距離秩序は、相関関数、すなわち次のスピン−スピン相関関数として表現することができる。
上記の関数では、sはスピン量子数であり、xは特定の系内の距離関数である。この関数は、x=x’である場合、単位元に等しく、距離|x−x’|が増大するにつれて減少する。典型的には、この関数は、長距離で、指数関数的にゼロまで減衰し、その系は無秩序であると見なされる。しかしながら、この相関関数が大きい|x−x’|で一定値へと減衰する場合には、その系は長距離秩序を保有すると述べることができる。この関数が、距離の累乗でゼロまで減衰する場合には、準長距離秩序と呼ぶことができる。大きい値の|x−x’|を構成するものは、相対的であることに留意されたい。
系は、その挙動を定義する一部のパラメータが、経時的に進展しないランダム変数である(すなわち、それらが急冷又は凍結される)場合、急冷無秩序、例えば、スピングラスを呈すると延べることができる。この急冷無秩序は、ランダム変数自体が進展することが可能な、焼鈍無秩序とは反対である。本明細書の実施形態は、急冷無秩序を含む系を包含する。
本明細書で説明される合金は、結晶性、部分結晶性、アモルファス、又は実質的アモルファスとすることができる。例えば、合金サンプル/試料は、少なくともある程度の結晶化度を含み得るものであり、結晶粒/結晶は、ナノメートル及び/又はマイクロメートルの範囲のサイズを有する。あるいは、合金は、完全にアモルファスであるなどの、実質的アモルファスとすることができる。一実施形態では、合金組成物は、実質的に結晶性であるなど、完全に結晶性であるなどの、少なくとも実質的にアモルファスではない。
一実施形態では、他のアモルファス合金中の1種の結晶又は複数種の結晶の存在は、その合金中の「結晶相」として解釈することができる。合金の結晶化度の程度(又は一部の実施形態では、略して「結晶化度」)とは、その合金中に存在する結晶相の量を指すことができる。その程度とは、例えば、合金中に存在する結晶の分率を指すことができる。この分率は、文脈に応じて、体積分率又は重量分率を指すことができる。アモルファス合金がどの程度「アモルファス」であるかの尺度を、アモルファス化度とすることができる。アモルファス化度は、結晶化度の程度の観点により測定することができる。例えば、一実施形態では、低い程度の結晶化度を有する合金は、高い程度のアモルファス化度を有すると述べることができる。一実施形態では、例えば、60体積%の結晶相を有する合金は、40体積%のアモルファス相を有し得る。
アモルファス合金又はアモルファス金属
「アモルファス合金」とは、50体積%超のアモルファス含有量、好ましくは90体積%超のアモルファス含有量、より好ましくは95体積%超のアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超〜ほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。上述のように、アモルファス化度が高い合金は、結晶化度の程度が同等に低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有するアモルファス金属材料である。結晶性であり、したがって高度に秩序化した原子配置を有する殆どの金属とは対照的に、アモルファス合金は非晶質である。そのような無秩序構造が、冷却の間に液体状態から直接作り出される材料は、「ガラス」と称される場合がある。したがって、アモルファス金属は、一般に「金属ガラス」又は「ガラス金属」と称される。一実施形態では、バルク金属ガラス(「BMG」)とは、その微細構造が少なくとも部分的にアモルファスである合金を指すことができる。しかしながら、アモルファス金属を作り出すためには、極度な急速冷却の他にも、物理蒸着、固相反応、イオン照射、メルトスピニング、及び機械的合金化を含めた、幾つかの方法が存在する。アモルファス合金は、それらが調製される方法とは関係なく、単一の部類の材料とすることができる。
アモルファス金属は、様々な急冷法を通じて作り出すことができる。例えば、アモルファス金属は、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによって、作り出すことができる。1秒当り約数百万度の急冷は、結晶が形成するには過度に高速である得るため、その金属は、ガラス状態で「固定」される。また、アモルファス金属/合金は、厚い層のアモルファス構造、例えば、バルク金属ガラスの形成を可能にするための、十分に低速な臨界冷却速度で作り出すこともできる。
用語「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金(「BAA」)、及びバルク凝固アモルファス合金は、本明細書で互換的に使用される。それらの用語は、少なくともミリメートルの範囲の最小寸法を有する、アモルファス合金を指す。例えば、その寸法は、少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなどの、少なくとも約0.5mmとすることができる。幾何学形状に応じて、その寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さなどを指すことができる。BMGはまた、少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなどの、センチメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、金属ガラスとすることもできる。一部の実施形態では、BMGは、少なくともメートルの範囲の、少なくとも1つの寸法を有し得る。BMGは、金属ガラスに関連する、上述の形状又は形態のうちの、いずれかを呈することができる。したがって、本明細書で説明されるBMGは、一部の実施形態では、重要な一態様での従来の堆積技術によって作製される薄膜とは異なるものとすることができ、前者のBMGは、後者の薄膜よりも遙かに大きい寸法のものとすることができる。
アモルファス金属は、純金属ではなく、合金とすることができる。この合金は、著しく異なるサイズの原子を含有し得ることにより、溶融状態で、低い自由体積がもたらされる(またそれゆえ、他の金属及び合金よりも、桁違いとなるまでの高い粘度を有する)。この粘度は、原子が、規則格子を形成するために十分に移動することを防ぐ。この材料構造は、冷却の間の低収縮性、及び塑性変形に対する抵抗性をもたらし得る。一部の場合には結晶性材料の弱点である、この結晶粒界の不在は、例えば、磨耗及び腐食に対する、より良好な抵抗性をもたらし得る。一実施形態では、技術的にはガラスであるが、アモルファス金属はまた、酸化物ガラス及びセラミックよりも遙かに強靭であり、脆性ではないものにすることもできる。
アモルファス材料の熱伝導率は、それらの結晶性対応物の熱伝導率よりも低いものにすることができる。より緩徐な冷却の間でも、アモルファス構造の形成を達成するために、3種以上の構成成分で合金を作製して、より高いポテンシャルエネルギー、及びより低い形成の確率を有する、複合結晶単位をもたらすことができる。アモルファス合金の形成は、以下の幾つかの因子:合金の構成成分の組成、構成成分の原子半径(好ましくは、高い充填密度及び低い自由体積を達成するために、12%超の有意差を有する)、並びに結晶核生成を阻止し、溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長する、構成成分の組み合わせの負の混合熱によって決まり得る。しかしながら、アモルファス合金の形成は、多種多様な変数に基づくものであるため、合金組成物がアモルファス合金を形成するか否かを事前に判定することは、困難な場合がある。
例えば、ホウ素、ケイ素、リン、及び他のガラス形成剤と、磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は、低い保磁力及び高い電気抵抗を有する、磁性のものとすることができる。この高い抵抗は、例えば、トランス用磁心として有用な特性である、交番磁界に晒された場合の渦電流による低損失をもたらす。
アモルファス合金は、潜在的に有用な様々な特性を有し得る。具体的には、アモルファス合金は、同様の化学組成の結晶性合金よりも強固である傾向にあり、それらは結晶性合金よりも大きい可逆性(「弾性」)変形に耐え得る。アモルファス金属は、それらの強度を、それらの非晶質構造から直接導き出すものであり、この非晶質構造は、結晶性合金の強度を制限する欠陥(転位などの)を全く有し得ない。例えば、Vitreloy(商標)として知られる、1つの最新のアモルファス金属は、高級チタンのほぼ2倍の引張り強さを有する。一部の実施形態では、室温での金属ガラスは延性ではなく、張力が負荷されると突然破損するが、このことは、差し迫った破壊が明白ではないため、信頼性が重要な用途での、その材料の適用性を制限する。それゆえ、この課題を克服するために、延性の結晶性金属の樹枝状の粒子又は繊維を含有する金属ガラスマトリックスを有する、金属マトリックス複合材料を使用することができる。あるいは、障害を生じる傾向がある元素(例えば、Ni)が少ないBMGを使用することができる。例えば、Niを含まないBMGを使用することにより、そのBMGの延性を改善することができる。
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、これらが真のガラスであり、換言すれば、加熱により軟化かつ流動し得ることである。これは、ポリマーと同様に射出成形などの容易な加工処理を可能にする。結果として、アモルファス合金は、スポーツ用品、医療用デバイス、電子部品及び電子装備、並びに薄膜を作製するために使用することができる。アモルファス金属の薄膜は、高速酸素燃料技術を介して、保護コーティングとして堆積させることができる。
材料は、アモルファス相、結晶相、又は双方を有し得る。これらのアモルファス相及び結晶相は、同じ化学組成を有し、微細構造のみが異なる(すなわち、一方はアモルファスであり、他方は結晶質である)ものとすることができる。一実施形態での微細構造は、25×以上の倍率の顕微鏡によって明らかとなるような材料の構造を指す。あるいは、これらの2つの相は、異なる化学組成及び微細構造を有し得る。例えば、組成物は、部分的アモルファス、実質的アモルファス、又は完全アモルファスとすることができる。
上述のように、アモルファス化度の程度(また反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定することができる。その程度とは、合金中に存在する結晶相の体積分率又は重量分率を指すことができる。部分的アモルファス組成物とは、少なくとも約10体積%など、少なくとも約20体積%など、少なくとも約40体積%など、少なくとも約60体積%など、少なくとも約80体積%など、少なくとも約90体積%などの、少なくともその約5体積%がアモルファス相である組成物を指すことができる。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書中の他の場所で定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスである組成物とは、少なくとも約95体積%など、少なくとも約98体積%など、少なくとも約99体積%など、少なくとも約99.5体積%など、少なくとも約99.8体積%など、少なくとも約99.9体積%などの、少なくともその約90体積%がアモルファスであるものを指すことができる。一実施形態では、実質的アモルファス組成物は、その中に存在する、何らかの付随的な少量の結晶相を有し得る。
一実施形態では、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質とすることができる。組成が均一である物質は、均質である。このことは、不均質である物質とは対照的である。用語「組成」とは、物質中の化学組成及び/又は微細構造を指す。物質は、その物質の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ組成を有する場合に均質である。例えば、微粒子懸濁液は、その微粒子懸濁液の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ体積の粒子を有する場合に均質である。しかしながら、顕微鏡下で個々の粒子を視認することが可能な場合もある。均質な物質の別の例は、空気であり、その空気中の種々の成分は等しく浮遊するが、空気中の粒子、気体、及び液体は、個別に分析することができ、又は空気から分離することもできる。
アモルファス合金に関して均質である組成とは、その微細構造の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス相を有するものを指すことができる。換言すれば、その組成物は、組成物の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス合金を巨視的に含む。代替の実施形態では、この組成は、非アモルファス相をその中に有する、アモルファス相を有する複合材料のものとすることができる。この非アモルファス相は、1つの結晶又は複数の結晶とすることができる。それらの結晶は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの、任意の形状の微粒子の形態とすることができる。一実施形態では、結晶は、樹枝状形態を有し得る。例えば、少なくとも部分的にアモルファスの複合組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散する樹枝状結晶の形状の結晶相を有し得るものであり、この分散は、均一又は不均一なものとすることができ、アモルファス相と結晶相とは、同じ化学組成又は異なる化学組成を有し得る一実施形態では、それらの相は実質的に同じ化学組成を有し得る。別の実施形態では、結晶相は、BMG相よりも延性とすることができる。
本明細書で説明される方法は、任意のタイプのアモルファス合金に適用可能とすることができる。同様に、組成物又は物品の成分として、本明細書で説明されるアモルファス合金は、任意のタイプのものとすることができる。このアモルファス合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beの元素、又はこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、この合金は、その化学式又は化学組成中に、これらの元素のいずれかの組み合わせを含み得る。それらの元素は、種々の重量百分率又は体積百分率で存在し得る。例えば、鉄「ベース」合金とは、その中に存在する有意な重量百分率の鉄を有する、合金を指すことができ、その重量百分率は、例えば、少なくとも約40重量%など、少なくとも約50重量%など、少なくとも約60重量%など、少なくとも約80重量%などの、少なくとも約20重量%などとすることができる。あるいは、一実施形態では、上述の百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。したがって、アモルファス合金は、ジルコニウムベース、チタンベース、白金ベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどとすることができる。この合金はまた、特定の目的に適合するように、上述の元素のうちのいずれかを含まない場合もある。例えば、一部の実施形態では、この合金、又はこの合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、この合金又は複合材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを全く含まない。
例えば、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu,Fe)b(Be,A1,Si,B)cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは30〜75の範囲であり、bは5〜60の範囲であり、cは0〜50の範囲である。あるいは、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは40〜75の範囲であり、bは5〜50の範囲であり、cは5〜50の範囲である。この合金はまた、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有し得るものでもあり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは7.5〜35の範囲であり、cは10〜37.5の範囲である。あるいは、この合金は、式(Zr)a(Nb,Ti)b(Ni,Cu)c(A1)dを有し得るものでもあり、式中、a、b、c、及びdはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは0〜10の範囲であり、cは20〜40の範囲であり、dは7.5〜15の範囲である。上述の合金系の例示的一実施形態は、Liquidmetal Technologies(CA,USA)によって製作されるような、Vitreloy−1及びVitreloy−101などの、商品名Vitreloy(商標)の、Zr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金である。種々の系のアモルファス合金の一部の実施例が、表1に記載される。
これらのアモルファス合金はまた、(Fe,Ni,Co)ベース合金などの、鉄合金とすることもできる。そのような組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号、及び同第5,735,975、Inoueら、Appl.Phys.Lett.,Volume 71,p 464(1997)、Shenら、Mater.Trans.,JIM,Volume 42,p 2136(2001)、及び日本特許出願第200126277号(公開番号第2001303218 A号)に開示されている。1つの例示的な組成物は、Fe72A15Ga2P11C6B4である。別の実施例は、Fe72A17Zr10Mo5W2B15である。本明細書でのコーティングに使用することができる、別の鉄ベース合金系が、米国特許出願公開第2010/0084052号で開示されており、そのアモルファス金属は、例えば、括弧内に記される組成の範囲で、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)、及びケイ素(0.3〜3.1原子%)を含有し、また括弧内に記される組成の指定範囲で以下の元素:クロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)、及び残部の鉄を含有する。
上述のアモルファス合金系は、Nb、Cr、V、及びCoを含めた添加遷移金属元素などの、添加元素を更に含み得る。これらの添加元素は、約20重量%以下など、約10重量%以下など、約5重量%など、約30重量%以下で存在し得る。一実施形態では、この任意選択の添加元素は、コバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つであり、炭化物を形成して、耐摩耗性及び耐食性を更に改善する。更なる任意選択の元素としては、融点を低下させるための、合計で最大約2%の、好ましくは1%未満の、リン、ゲルマニウム、及びヒ素を挙げることができる。他の少量の不純物は、約2%未満、好ましくは0.5%未満とするべきである。

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一部の実施形態では、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素を意図的に添加することにより、機械的特性(例えば、硬度、強度、破壊機構など)の改善、及び/又は耐食性の改善などの、その組成物の特性を修正することができる。あるいは、それらの不純物は、加工処理及び製造の副生成物として得られるもののような、不可避の付随的な不純物として存在し得る。これらの不純物は、約5重量%など、約2重量%など、約1重量%など、約0.5重量%など、約0.1重量%などの、約10重量%以下とすることができる。一部の実施形態では、これらの百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。一実施形態では、この合金サンプル/組成物は、アモルファス合金から本質的になる(少量の付随的な不純物のみを有する)。別の実施形態では、この組成物はアモルファス合金を含む(観察可能な微量の不純物を全く有さない)。
一実施形態では、最終部品は、バルク凝固アモルファス合金の臨界鋳造厚さを超過するものであった。
本明細書の実施形態では、バルク凝固アモルファス合金が高粘度の液体として存在することができる、過冷却液体領域の存在により、超塑性成形が可能となる。大きい塑性変形を得ることができる。過冷却液体領域内で大きく塑性変形する能力は、成形プロセス及び/又は切断プロセスに使用される。固体とは対照的に、この液体のバルク凝固合金は、局所的に変形し、このことが、切断及び成形のために必要とされるエネルギーを大幅に低下させる。切断及び成形の容易性は、合金、金型、及び切断工具の温度に応じて変化する。温度が高くなるにつれて、粘度が低下し、その結果として、切断及び成形が容易になる。
本明細書の実施形態は、例えば、Tg〜Txで実施される、アモルファス合金を使用する熱可塑性成形プロセスを利用することができる。本明細書では、Tx及びTgは、結晶化の開始の温度、及びガラス転移の開始の温度として、典型的な加熱速度(例えば、20℃/分)での標準的なDSC測定から決定される。
アモルファス合金構成要素は、臨界鋳造厚さを有し得るものであり、最終部品は、その臨界鋳造厚さよりも厚い厚さを有し得る。更には、加熱及び整形操作の時間並びに温度は、アモルファス合金の弾性歪み限界が、1.0%以上、好ましくは1.5%以上であることを実質的に維持し得るように選択される。本明細書の実施形態との関連では、ガラス転移近傍の温度とは、成形温度がガラス転移温度未満、ガラス転移温度若しくはガラス転位温度近傍、及びガラス転移温度超とすることができることを意味するが、結晶化温度Txより低い温度である好ましい。冷却工程は、加熱工程での加熱速度と同様の速度で、好ましくは、加熱工程での加熱速度を超える速度で実施される。冷却工程はまた、好ましくは、形成荷重及び成形荷重が依然として維持されている間にも達成される。
電子デバイス
本明細書の実施形態は、BMGを使用する電子デバイスの製作で有用であり得る。本明細書での電子デバイスとは、当該技術分野において既知の任意の電子デバイスを指すことができる。例えば、この電子デバイスは、携帯電話及び固定電話などの電話、あるいは、例えばiPhone(商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信デバイスなどの、いずれかの通信デバイスとすることができる。この電子デバイスは、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、携帯ウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))、及びコンピュータモニタなどの、ディスプレイの一部とすることができる。この電子デバイスはまた、携帯DVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、携帯音楽プレーヤ(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽デバイスとすることもできる。この電子デバイスはまた、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御することなどの、制御を提供するデバイス(例えば、Apple TV(商標))の一部とすることもでき、又は電子デバイス用の遠隔制御装置とすることができる。この電子デバイスは、コンピュータ、あるいはハードドライブタワーの筺体若しくはケーシング、ラップトップ筺体、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカーなどの、コンピュータ付属品の一部とすることができる。この物品はまた、腕時計又は時計などのデバイスにも適用することができる。
実施形態
好ましい実施形態は、物品を互いに接合する方法を含み、この方法は、画定された空間をそれらの間に備える、少なくとも第1及び第2物品を提供する工程であって、第1及び第2物品はそれぞれ、少なくとも第1表面と、物品の第1表面と反対側の、少なくとも第2表面とを有している、工程と、第1物品の第1及び第2表面のうち少なくとも一方に隣接し、かつ第2物品の少なくとも一表面に隣接してバルク凝固アモルファス合金材料を配置することによって、第1物品と第2物品との間に少なくとも部分的にバルク凝固アモルファス合金を配置する工程と、を含む。本方法は、バルク凝固アモルファス合金に対して流体圧力を適用して、第1物品と第2物品との間の合金の少なくとも一部分に力をかけ、これにより合金の少なくとも一部分が、第1及び第2物品の第1及び第2表面両方に隣接して配置される、工程を更に含む。
別の好ましい実施形態は、物品を互いに接合する方法を提供し、この方法は、画定された空間をそれらの間に備える、少なくとも第1及び第2物品を提供する工程であって、第1及び第2物品はそれぞれ、少なくとも第1表面と、物品の第1表面と反対側の、少なくとも第2表面とを有している、工程と、第1物品の第1及び第2表面のうち少なくとも一方に隣接し、かつ第2物品の少なくとも一表面に隣接してバルク凝固アモルファス合金材料を配置することによって、第1物品と第2物品との間に少なくとも部分的にバルク凝固アモルファス合金を配置する工程と、を含む。本方法は、バルク凝固アモルファス合金に対して流体圧力を適用して、第1物品と第2物品との間の合金の少なくとも一部分に力をかける工程と、第1及び第2物品の他方の表面の少なくとも一部分に隣接してバルク凝固アモルファス合金を配置するために、流体圧力の方向とは反対の力を適用する工程と、を更に含む。
本明細書全体にわたり、「流体圧力」という表現は、水又はその他の液体などの流体、並びに気体などの流体により作用する圧力を示す。いくつかの実施形態において、この流体は好ましくは液体のみであり、気体を含まない。動作理論に束縛されるものではないが、発明者らは、液体圧力を使用して物品間の結合を形成することは、物品を互いに押し付けること、又は真空若しくは空気を利用して接合される物品の間の合金に力を加えることに対し、独自の利点をもたらし得ると考える。この実施形態では、容易に押し合わせられない、又は押し合わせることができない物品(例えば非常に小型でデリケートな電子部品、大型物品、縁に隙間がある接合物品など)を接合することが可能になる。流体圧力を使用することにより、バルク凝固アモルファス合金に対して、より均一に力を分布させ、合金材料が物品の周囲に形成し得る連結部の形成が実現する。流体の水力学的性質により、流体全体にわたって実質的に等しい圧力分布が得られ、これにより、本明細書に記述される連結接合部の形成が可能になる。流体が、バルク凝固アモルファス合金を使用してシールを形成することによって、接合される物品に変形を引き起こし得る高温の必要なしに、物品間又は2つの表面間に強い接合部を形成することが可能になる。
バルク凝固アモルファス合金系は、いくつかの望ましい特性を呈し得る。例えば、高硬度及び/又は硬さを有し得る。鉄系アモルファス合金は、特に高い降伏強度及び硬度を有することができる。一実施形態において、アモルファス合金は、約3.04MPa(200ksi)以上、例えば3.80MPa(250ksi)以上、例えば6.08MPa(400ksi)以上、例えば7.60MPa(500ksi)以上、例えば9.12MPa(600ksi)以上の降伏強度を有することができる。硬度に関しては、一実施形態において、アモルファス合金は、ビッカース硬さ(100mg)が約400超、例えば約450超、例えば約600超、例えば約800超、例えば約1000超、例えば約1100超、例えば約1200超の硬度値を有し得る。アモルファス合金はまた、例えば少なくとも約1.2%、例えば少なくとも約1.5%、例えば少なくとも約1.6%、例えば少なくとも約1.8%、例えば少なくとも約2.0%の非常に高い弾性ひずみ限界を有し得る。アモルファス合金はまた、特にTi系及びFe系合金の場合に、高い強度対重量比を呈することができる。これらはまた、特に例えばZr系及びTi系合金の場合、高い耐腐食性及び高い耐候性を有することができる。
連結接合部を形成するのに有用なバルク凝固アモルファス合金は、好ましくは、ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tx、及び融解温度Tmを含む、いくつかの特性温度を有し得る。いくつかの実施形態において、Tg、Tx、及びTmはそれぞれ、好ましくは個別の値ではなく、温度範囲を指す場合がある。よって、いくつかの実施形態において、ガラス転移温度、結晶化温度、及び融解温度という用語は、それぞれガラス転移温度範囲、結晶化温度範囲、及び融解温度範囲と互換可能に使用される。これらの温度は周知であり、さまざまな技法により測定することができる。この技法の1つが示差走査熱量測定(DSC)であり、これは例えば約20℃/分の加熱速度で実施することができる。
一実施形態において、温度が上昇する際、アモルファス合金のガラス転移温度Tgとは、そのアモルファス合金が軟化し始め、原子が可動性になる温度(又はいくつかの実施形態においてそのような温度範囲)を指すことがある。アモルファス合金は、ガラス転移温度を上回る温度で、その温度未満の時よりも高い熱容量を有することができ、したがって、この転移によりTgの特定が可能となる。温度が増加するにつれて、アモルファス合金は結晶化温度Txに達し得、ここで結晶が形成され始める。いくつかの実施形態において結晶化は全般に発熱反応であるため、結晶化はDSC曲線の一時的減少として観察することができ、Txはその減少部分の最低温度として定義することができる。Vitreloyの例示的なTxは、例えば約500℃であり得、白金系アモルファス合金の例示的なTxは、例えば約300℃であり得る。他の合金系では、このTxはこれより高い場合又は低い場合があり得る。Txは一般にTmより低いため、Txでは、アモルファス合金は一般に融解せず、また融解した状態ではないことに注意されたい。
最後に、温度が上昇し続けて融解温度Tmに達すると、結晶の融解が始まり得る。融解は吸熱反応であり、熱は結晶を融解するのに使用され、結晶が融解して液相になるまでの間、温度変化はわずかである。したがって、融解相転移はDSC曲線のピークに似たものとなり得、Tmはピークの最大値の温度として観察することができる。アモルファス合金の場合、TxとTgの間の温度差ΔTを使用して超臨界領域(すなわち、「超臨界液体領域」又は「超臨界領域」)を示すことができ、アモルファス合金の少なくとも一部分が、結晶質合金ではなく、アモルファス合金の特性を維持し、そのような特性を呈する。この割合は可変であり、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも99重量%を含み、又はこれらのパーセンテージは重量パーセンテージではなく体積パーセンテージであってもよい。
このような好ましい特性により、バルク凝固アモルファス合金は、加圧流体形成技法を用いて2つの物品を接合する好ましい方法における使用を含め、さまざまな用途に使用することができる。バルク凝固アモルファス合金の量又は厚さは、形成される具体的な接合部に応じて、幅広く可変であり得る。加えて、この接合部は固体の接合部であってよく、又は接合される物品の表面を覆って形成されたシートであってよく、これらは両方とも、物品を接合するのに使用されるバルク凝固アモルファス合金材料の厚さを変化させることで形成することができる。バルク凝固アモルファス合金材料は、均一の厚さを有していてよく、又は、例えば接合される表面間の領域をより厚くすることなどにより、厚さが異なっていてもよい。バルク凝固アモルファス合金の厚さは、約10cm未満であってよく、例えば約5cm未満、例えば約1cm未満、例えば約5mm未満、例えば約2mm未満、例えば約1mm未満、例えば約500μm未満、例えば約200μm未満、例えば約100μm未満、例えば約50μm未満、例えば約20μm未満、例えば約10μm未満、例えば約1μm未満であってもよい。
好ましい実施形態の方法は、第1及び第2物品を互いに接合するが、この第1及び第2物品は、単一物品の第1及び第2部分を指す場合もある。加えて、「バルク凝固アモルファス合金を配置する工程」という表現は、別個のバルク凝固アモルファス合金を配置することを指すことがあり、あるいは、このバルク凝固アモルファス合金は、接合される1つ以上の物品に一体となっているか又は一緒に成形されていてもよい。例えば、一物品を、一体成形されているバルク凝固アモルファス合金延長部(例えばフランジ、フラップ、又は同様物)を備えて製造することができ、これにより別の物品とその物品との接合を促進することができる。あるいは、1つ以上の物品を更に加工して、接合を促進するためのバルク凝固アモルファス合金延長部を含めるようにすることができる。当業者には、1つ以上の物品が一体型延長部を備えて製造することができ、あるいは更に加工して、1つ以上のバルク凝固アモルファス合金材料を含む延長部を含めるようにすることが可能な、数多くの実施形態を構想することが可能であろう。
バルク凝固アモルファス合金は、複数の部品の間に機械的なロックを形成して、その2つの部品の間に緊密なシールを形成することができる。一実施形態において、このシールは、部品間の接着エレメントとして作用し得る。2つを超える部品、例えば3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の部品を使用することができる。図3は、特に好ましい実施形態による、最初のシール形成方法の図を示す。図3に示すように、方法100を使用して、空間50をそれらの間に有する、2つの隣接する物品10及び20を接合することができる。空間の大きさは多様であってもよく、好ましい実施形態の本方法は、非常に小さな空間(例えば0.05〜0.10mm)を有する物品、又ははるかに大きな空間50を有する物品を接合することができる。物品10は第1表面12及び第2表面14を有し得、物品20は対応する第1表面22及び第2表面24を有し得る。これらの実施形態は、接合される物品の特定の形状に限定されるものではなく、物品は複数の表面を有し得ることが、当業者には理解されよう。加えて、第1表面(12、22)及び第2表面(14、24)は、本明細書において互換可能に使用され得る。
添付の図に示されている方法には、接合される物品の少なくとも1つの表面に隣接して、バルク凝固アモルファス合金材料30を配置する工程が含まれる。ここでも、バルク凝固アモルファス合金の配置には、別の合金材料30を配置する工程が含まれてもよく、あるいは、この材料は物品10、20(又は他の物品)の一体型部分であってよく、あるいは物品10、20(又は他の物品)は、合金材料30を含めるよう加工されてもよい。図3は、物品10の第1表面12、及び物品20の第1表面22に隣接して配置されている合金材料30を示している。隣接して配置されているとは、その材料が、表面近くに、又は場合によっては表面に接して配置されることを示す。バルク凝固アモルファス合金材料30は、本明細書に示されるガイドラインを用いて物品を接合するのに好適な任意の形状であり得る。上述のように、合金材料30は均一の厚さを有していてよく、又は厚さは変化していてもよく、ここにおいて厚さは、第1物品10と第2物品20との間に形成される空間50の位置又はその近くでより厚くなっていてもよい。合金材料30はまた、シート、ワイヤ、円筒、矩形又は正方形のパッチ、小塊、又は物品10と物品20との間に接合部を形成するのに好適なその他の任意の形状であり得る。
本方法は、形成済みのバルク凝固アモルファス合金材料30を、その組成物のTxより下である第1温度まで加熱する工程を含んでもよい。好ましい実施形態においては、加熱をほとんど又は全く必要とせず、この熱は加圧流体によって供給され得る。物品10と物体20との間に接合部を形成する方法100の最中に熱が適用される場合は、接合部を形成した後に、加熱されたバルク凝固アモルファス合金30を冷却して最終的シールを形成する工程がこの方法に含まれ得る。
方法100は、図4に示すように、必要に応じて、加熱されたバルク凝固アモルファス合金材料30に加圧流体を適用する工程を更に含む。図4は、流体圧力60がバルク凝固アモルファス合金材料30に適用され、これにより変形して、物品10及び20の間に存在していた空間50を通って押し込まれ、これにより空間が埋められる。流体圧力60は任意により、密封された収容システム110を使用して適用することができ、この場合においては、流体圧力90が、既知のハイドロホーミング技法に類似の液圧で適用され得る。任意の収容システムは好ましくは、バルク凝固アモルファス合金材料30を変形させる領域のみに流体圧力を導くよう、スペース50の位置又はその近くに配置される。
図5は、方法100の最終段階を示し、ここにおいてバルク凝固アモルファス合金材料30は完全に変形されて、物品10の第1表面12及び第2表面14、並びに物品20の第1表面22及び第2表面24の両方に隣接して配置されている。バルク凝固アモルファス合金材料は、図5に矢印で示されているように、バルク凝固アモルファス合金材料30全体にわたって比較的均一に作用する流体圧力により、図に示すように変形することができる。この接合部の構成が、物品10と20の間に機械的連結部を形成し、x面及びy面の両方の動きを拘束する。ハンダ様の材料を採用して物品を接合する多くの方法、並びに空気圧を採用して物品を接合する方法でさえも、x軸方向の動きのみを拘束するシール又は機械的ロックしか形成しない。したがって、既知の接合技法は、物品10及び20が互いに対してy方向に動いた場合に(そのような動きは熱膨張の差又は物理的動きにより生じる)、破断又は破損し得る接合部を形成する場合がある。バルク凝固アモルファス合金材料30に適用された流体圧力60を使用することにより実現した機械的連結部は、よって、従来の接合技法に比べ、顕著な改善を示す。
任意の最終プロセス手順は、図6に示すように実施することができ、ここで力70が元の流体力60に対して概ね反対方向に適用されて、変形したバルク凝固合金材料30の一部分を平らにし、物品10の第2表面14及び物品20の第2表面24にそれぞれ隣接したフランジ62、64を形成する。力70は、プレス機、流体又は空気流などを用いて加圧することを含め、当該技術分野において周知の任意の方法により適用することができる。図6はフランジ62、64を形成する比較的平らな上表面を有する接合部を示しているが、この上表面は、空間50に向かって内側に変形させることができる。加えて、図には、接合部が形成された後でも物品10と20との間に空間が依然として存在するよう示されているが、この空間は存在していてもいなくてもよい。更に、この接合部は、図に示されているようにシート状の材料として形成されてよく、あるいは、物品10及び20の間の空間は合金材料30で完全に充填されていてもよく、あるいは、場合によっては、他の好適な材料で裏込め充填されていてもよい。
図7は、図7に示す任意の圧縮を含む、完全に形成された連結部を示し、物品10と20との間にはスペース50は存在しない。図示されているように、フランジ62及び64は、物品10及び20が+y方向に動くのを妨げ、第1物品10及び第2物品20のそれぞれ第1表面12、22に隣接して配置されたバルク凝固アモルファス合金材料30は、−y方向の動きを制限し、物品10及び20の間に配置されたバルク凝固アモルファス合金材料は、x方向の動きを制限する。よって、好ましい実施形態によるバルク凝固アモルファス合金材料で形成された接合部は、x及びy方向の相対的な動きを妨ぐ、より確実な接合部を形成する。機械的連結部はバルク凝固アモルファス合金材料30を用いて形成されているため、この接合部は物品10及び20よりも可撓性が高い可能性があり、よって、疲労又は破断を引き起こすような、それぞれの材料(物品及びアモルファス合金)に対する歪みが過大になりすぎることなく、ある程度の相対的な動きを可能にする。バルク凝固アモルファス合金材料30は、結晶質材料よりもはるかに大きな程度で変形され得るため、物品10及び20が互いに対して動く場合であっても、より長期間にわたって完全性を維持できる確実な接合部を形成する。
図8は、第1物品710及び第2物品720を含む物品700が形成される、一実施形態を示す。これらの物品は例えば、回路素子を堆積させるための穴730を通じて、又はこれを介してもたらされる積層プリント基板であり得、あるいは、燃料又は空気の通路のための開口部730を備えた積層燃料セルであり得る。それぞれの開口部730は同一又は異なる形状であり得る。これらのタイプの材料に関する従来型の接着技法では、本発明の機械的連結部150を提供せず、したがって、x方向の顕著な相対的動きが可能になり、これにより接合部の疲労及び破断が生じ得る。好ましい実施形態の機械的連結部150は、そのような動きを妨げ、しかも接合部の形成に使用される合金材料のアモルファス性のため、連結部150の疲労又は破断を生じることなく、熱膨張率の差、物理的動きなどによるある程度の動きを可能にする。
薄いバルク凝固アモルファス合金材料30を使用してシールを形成する一実施形態において、このシールは、2つの部品を接合する接着エレメントとして、及びハーメチックシールとして、同時に機能し得る。ハーメチックシールとは、流体又は微生物を通さない気密シールを意味し得る。このシールは、シール内側の保護内容の適切な機能を保護及び維持するのに使用され得る。
用途に応じて、機械的連結部150の使用により接合されている物品10、20(又はその他)はそれぞれ、任意の材料で製造することができる。例えば、この材料は、金属、金属合金、セラミック、サーメット、ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み得る。部品又は基材は、任意の大きさ又は幾何学形状であり得る。例えば、物品10、20(又はその他)はそれぞれ、弾丸状、シート、プレート、円筒、立方体、長方体、球、楕円球、多面体、不規則形状、又はそれらの間の任意の形状であり得る。したがって、機械的連結部150が形成される物品の表面は、正方形、矩形、円、楕円、多角形、又は不規則形状を含む任意の形状を有し得る。
物品10、20(又はその他)は、凹んだ表面を有していてもよい。凹んだ表面には、アンダーカット又は空洞が含まれ得、また所定の幾何学形状を有し得る。この物品は中実であっても中空であってもよい。物品が中空(例えば中空の円筒)である一実施形態において、凹んだ表面は、その部品の内側表面であっても外側表面であってもよい。換言すれば、機械的連結部150は、物品の内側表面又は外側表面に形成することができ、好ましくは両方の表面に形成される。いくつかの実施形態において、物品表面は、機械的連結部150の形成を促進するため、任意の望ましい寸法の粗さを有し得る。例えば、第1物品は腕時計のベゼル、又はアンダーカットを備えた電子デバイス筐体であり得る。あるいは、不規則な寸法又は幾何学形状の空洞又はアンダーカットを少なくとも1つ有し得る。例えば、第1物品はその中に組成物を入れる金型又はダイ(例えば押出成形用)であり得、よってこの空洞は、金型又はダイの空洞スペースを指す。他の一実施形態において、第1物品は、中空円筒型を有する電気コネクタの外殻であり得る。
複数の物品を使用することができる。一実施形態において、本実施形態により製造された接合は、第1物品10の表面(12、14)及び同時に第2物品20の表面(22、24)とアモルファス合金材料30との間に、緊密なシールを形成することができる。このバルク凝固アモルファス合金材料30は、2つの物品の接着エレメントとして効果的に作用し得る。物品のそれぞれ又は一部の表面は、粗さ又は凹んだ表面(例えばアンダーカット又は空洞)を有し得る。
2つの物品は垂直に揃っていてよく、水平に揃っていてよく、又は揃っていなくてもよい。2つの物品は互いに垂直に、又は互いに平行に接合され得る。また、1つの物品が他方の内側であってもよい。例えば、第1物品は、中空形状(例えば円筒形又は矩形の箱)を有してもよく、第2物品は、第1物品の中空スペース内にあるワイヤ又はより小さな直径の円筒形であり得る。この実施形態において、機械的連結部150は、それぞれの円筒形物品の間に、円周シール(円周に沿って部分的に、又は全円周に沿って)を形成し得る。あるいは、機械的連結部150は、同じ寸法及び/又は幾何学形状の2つの物品(10、20、又は710、720)、あるいは、異なる寸法及び/又は幾何学形状の2つの物品を接合するのに使用され得る。例えば、一実施形態において、機械的連結部150は、電子デバイス筐体の2つのピースを接合するのに使用することができ、ここにおいて機械的連結部150は、2つの部品間の流体不浸透性シールとして同時に作用し得る。
用途に応じて、物品は、任意の好適な材料で製造することができる。例えば、物品それぞれ又は少なくとも1つが、結晶質、部分的にアモルファス、実質的にアモルファス、又は完全にアモルファスの材料を含み得る。物品は、接合部を形成するために配置される(又は一体成形される)バルク凝固アモルファス合金と、同じ微細構造又は異なる微細構造を有し得る。例えば、これらはアモルファス、実質的にアモルファス、部分的にアモルファス、又は結晶質であってよく、あるいはこれらは異なっていてもよい。物品のアモルファス組成物は、均質なアモルファス合金であってよく、又はアモルファス合金を有する複合物であってもよい。一実施形態において、複合物には、結晶質相(例えば複数の結晶)を取り囲むアモルファスマトリックス相が含まれ得る。この結晶は、樹状形状を有するものを含め、任意の形状であり得る。
この物品はまた、無機材料、有機材料、又はこれらの組み合わせを含み得る。この物品には、金属、金属合金、セラミック、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。この物品はまた、さまざまな材料を一緒に組み合わせた複合物であってよく、又は本質的に1つの材料であってもよい。用途に応じて、いくつかの実施形態において、物品は、接合部を形成するのに配置されるバルク凝固アモルファス合金材料30のTgより高い軟化温度を有する材料を含み得る。物品に関する軟化温度とは、そのTg(アモルファス材料の場合)又は融解温度Tm(結晶質材料の場合)を指し得る。アモルファス材料と結晶質材料の混合物の場合、軟化温度は、その材料内の原子が可動になり始める温度、例えばTg、又はTgとTmの間の温度を指し得る。一実施形態において、物品は、アモルファス合金材料30の結晶化温度、又はいくつかの実施形態において、融解温度よりも高い軟化温度を有し得る。一実施形態において、物品は、約300℃超、好ましくは約200℃超、より好ましくは約100℃超の軟化温度を有する材料を含み得る。例えばこの物品は、白金系合金と共に使用することができる。別の実施形態において、物品は、約500℃超の軟化温度を有する材料を含み得る。例えばこの物品は、ジルコニウム系合金と共に使用することができる。この物品は、ダイヤモンド、炭化物(例えば炭化ケイ素)、又はこれらの組み合わせを含み得る。
用途に応じて、物品は、上述の機械的連結部150を有する利点を利用できるような、電子デバイス又は任意のタイプの物品の一部であり得る。機械的連結部及びシールにより緊密な接触が提供されるため、これはさまざまな用途に使用することができる。機械的連結部150は、ハンダ塊、ケースシール、気密性又は耐水性用途用の電気導線、リベット、接着、部品の締結として機能し得る。例えば、バルク凝固アモルファス合金を含む機械的連結部が中空円筒の外に突き出ている金属含有ワイヤの間に形成される一実施形態において、このシールが、耐水性かつ気密性のシールを提供し得る。そのようなシールはハーメチックシールであり得る。また、上述のワイヤ及び円筒形のアセンブリは、さまざまなデバイスの一部であり得る。例えば、生体インプラントの一部であり得る。例えば、人工内耳の場合、このシールは、水/空気を通さないシール及び電気/信号伝導体に使用される。あるいは、このシールは、分析機器のダイヤモンドウィンドウのシールに使用することもできる。別の実施形態において、このシールは、例えば外殻となる第1中空部品との電気的コネクタの一部である。
あるいは、この機械的連結部は、例えば、デバイスの筐体の一部又はその電気的な相互コネクタなどの、電子デバイスを形成し得る。例えば、一実施形態において、この機械的連結部は、電子デバイスの筐体の2つの部分を接続かつ接着し、かつ流体がデバイスの内部に入り込まないように、流体を通さないシールを形成して、装置を効果的に耐水性かつ気密性にするために使用することができる。
本発明は、特に好ましい実施形態を参照して詳述されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から大きく逸脱することなく、さまざまな改変が可能であることが、当業者には理解されよう。

Claims (20)

  1. 第1物品を第2物品と接近しかつ前記第2物品から間隙をおいて切り離して配置する工程であって、前記第1物品及び前記第2物品はそれぞれ、第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面と、を有する、工程と、
    前記第1物品の前記第1表面に隣接し、前記第2物品の前記第1表面に隣接し、前記間隙にわたり、バルク凝固アモルファス合金から形成された部材を配置する工程と、
    加圧流体を前記部材の上に導いて前記部材を前記間隙の中に入り込ませ、かつ前記第1物品及び前記第2物品の前記第2表面に接触するよう変形させて、前記第1物品と前記第2物品との間に接合部を形成する工程と、を含む、方法。
  2. 前記部材を変形する工程の前に、前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の温度まで、前記部材を加熱する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記加圧流体を前記部材の上に導く工程で、ガラス転移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の温度まで、前記部材を加熱する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記加圧流体を前記部材の上に導く工程が、密封された収容システム内で行われる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記部材が、前記第1物品及び前記第2物品とは別の成分である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記接合部が、少なくとも前記第1物品又は前記第2物品の一部分を形成する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記接合部が、前記第1物品及び前記第2物品のうち少なくとも一方の前記第1表面又は前記第2表面に隣接する少なくとも1つのフランジを形成する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記接合部が、前記第1物品の前記第1表面又は前記第2表面に隣接する少なくとも1つのフランジと、前記第2物品の前記第1表面又は前記第2表面に隣接する少なくとも1つのフランジと、を形成する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記バルク凝固アモルファス合金が、持続する永久変形又は破損もなしに、最高1.5%又はそれ以上の歪みを維持できる、請求項1に記載の方法。
  10. 前記部材の少なくとも第1部分を、前記第1物品の前記第2表面の少なくとも一部分に隣接して配置し、かつ、前記部材の少なくとも第2部分を、前記第2物品の前記第2表面の少なくとも一部分に隣接して配置するために、前記加圧流体の適用方向とは概ね反対の方向に前記部材に力を適用する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
  11. 第1物品を第2物品と接近しかつ前記第2物品から間隙をおいて切り離して配置する工程であって、前記第1物品及び前記第2物品はそれぞれ、第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを有する、工程と、
    前記第1物品の前記第1表面に隣接し、前記第2物品の前記第1表面に隣接し、前記間隙にわたり、バルク凝固アモルファス合金の部材を配置する工程と、
    流体を前記部材の第1表面上に導いて前記部材を前記間隙の中にかつ前記第1物品及び前記第2物品の前記第2表面を越えて変形させる工程と、
    前記部材の前記第1表面とは反対側の第2表面上に力をかけて前記部材を前記第1物品及び前記第2物品の前記第2表面に接触するよう変形させて、前記第1物品と前記第2物品との間に接合部を形成する工程と、を含む方法。
  12. 前記部材の前記第2表面上に前記力をかける操作は、流体を前記部材の前記第2表面上に導くことを含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記部材の前記第2表面上に前記力をかける操作は、前記第2表面に圧力を加えることを含む、請求項11に記載の方法。
  14. 前記部材の前記第2表面上に前記力をかける操作は、前記部材の少なくとも一部を前記間隙の中に押し込む、請求項11に記載の方法。
  15. 前記部材を変形する工程の前に、前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の温度まで、前記部材を加熱する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
  16. 第1物品を第2物品に対して前記第1物品と前記第2物品との間に間隙を画定するように配置する工程であって、前記第1物品及び前記第2物品はそれぞれ、第1表面と、前記第1表面と反対側の第2表面とを有する、工程と、
    バルク凝固アモルファス合金のシートを、前記バルク凝固アモルファス合金のガラス転移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の温度まで加熱する工程と、
    前記間隙にわたり前記シートを配置する工程と、
    流体を介して前記シートの第1表面上に力をかけて前記シートを前記間隙の中にかつ前記第1物品及び前記第2物品の前記第2表面を越えて変形させる工程と、
    前記シートの前記第1表面とは反対側の第2表面上に力をかけて前記シートを前記間隙にわたって前記第1物品及び前記第2物品の前記第2表面に接触するよう変形させて、前記第1物品と前記第2物品との間に接合部を形成する工程と、を含む方法。
  17. 前記シートは、前記第1物品の前記第1表面に隣接する領域で第1の厚みを有し、前記シートは、前記間隙にまたがる領域で前記第1の厚みとは異なる第2の厚みを有する、請求項16に記載の方法。
  18. 前記第2の厚みは、前記第1の厚みより大きい、請求項17に記載の方法。
  19. 前記流体を介して前記力をかける操作、前記シートを前記温度まで加熱することを引き起こす、請求項16に記載の方法。
  20. 前記流体を介して前記力をかける操作は、前記シートの前記間隙にまたがる領域上にのみ前記流体を導くことを含む、請求項16に記載の方法。
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